説明

記録材料

【課題】朱肉やスタンプインクによる捺印特性並びに耐擦傷性に優れる記録材料を提供する。
【解決手段】本発明の記録材料は、少なくとも一方の面がマット化された基材1のマット面上に、変性ウレタン樹脂及び無機顔料を含む表面層3を、付着量10〜400g/m2となるように積層してなるものである。前記基材1は、支持体11の表面にマット層2を設けたものの他、支持体11の表面をサンドブラスト法やケミカルエッチング法等により直接マット化したもののいずれのものでも良く、当該基材1のマット面の鉛筆硬度(JIS−K5600−5−4:1999)は、H以上であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、朱肉やスタンプインクによる捺印特性並びに耐擦傷性に優れる記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から記録材料としては、レーザービームプリンタ用、インクジェットプリンタ用、ペンプロッタ用、PPC用などのものがあるが、水性ペン、ボールペン、鉛筆などの筆記具で直接筆記する用途のものもある。このような各種筆記具で直接筆記可能な記録材料としては、例えば支持体上にバインダー樹脂とマット剤からなるマット層を設けたものがあり、製図用フィルムの他、近年では身分証明書、パスポート、外国人登録証、図書館利用カード、キャッシュカード、クレジットカード、自動車免許証等の免許証類、従業者証、社員証、会員証、医療カード及び学生証などのIDカードの裏面等に利用されている(特許文献1、2)。
【0003】
このような記録材料のマット層は、各種筆記具で筆記できることはもちろんのこと、IDカードの裏面に利用する際等に朱肉やスタンプインクによる捺印特性(インクの乾燥性、定着性)が求められる場合がある。したがって、マット層を構成する樹脂を吸水性に優れる樹脂とする手段が採用されている。
【0004】
しかしながら、上述の手段ではスタンプインクを吸収できるようになるものの、インクの定着性が不十分であり、滲み等が発生するものであった。そこで、インクの定着性を改善するためマット層上に、カチオン系樹脂が前記マット層内に少なくとも一部が染み込むように積層した記録材料が提案されている(特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】特開昭61−40197号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2003−313526号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2003−340363号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような記録材料は、カチオン系樹脂を使用していることからインクの定着性が改善されているが、インクの乾燥性が未だ適切なものとはいえず、擦れ等が生じるものであった。したがって、朱肉やスタンプインクによる滲み、擦れ等の生じない捺印特性に優れる記録材料が切望されていた。
【0007】
また、このような記録材料をIDカードとして利用する場合等においては、繰り返し財布に入れたりする行為に耐え得る程度の耐擦傷性も求められる。従って、上記のような朱肉やスタンプインクによる捺印特性だけでなく、耐擦傷性にも優れる記録材料が切望されていた。
【0008】
本発明は上述の事情に鑑みなされたもので、朱肉やスタンプインクによる捺印特性並びに耐擦傷性に優れたものとすることができる記録材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この点について本発明者は鋭意研究した結果、記録材料の表面層として特定の樹脂及び顔料を用い、当該表面層をごく薄くマット化された基材上に積層することでこの課題を解消し得ることを見いだした。
【0010】
即ち、記録材料の表面層として変性ウレタン樹脂及び無機顔料を含有することにより、無機顔料が表面層中に適度に分散し、インクの定着性を良好なものとしたままインクの乾燥性を向上させることができ、朱肉やスタンプインクによる捺印特性に優れたものとすることができることを見いだした。
【0011】
また、表面層を基材のマット面上に付着量10〜400g/m2となるように積層することにより、前記基材自体が持つ鉛筆硬度を間接的に利用して表面層の鉛筆硬度を向上させ、上述した朱肉やスタンプインクによる捺印特性を保持したまま耐擦傷性に優れた記録材料とすることができることをも見いだし、本発明に至ったものである。
【0012】
即ち、本発明の記録材料は、少なくとも一方の面がマット化された基材のマット面上に、変性ウレタン樹脂及び無機顔料を含む表面層を、付着量10〜400g/m2となるように積層してなることを特徴とするものである。
【0013】
好ましくは、前記基材のマット面の鉛筆硬度(JIS−K5600−5−4:1999)が、H以上であることを特徴とするものである。
【0014】
また、好ましくは前記無機顔料が、シリカであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、少なくとも一方の面がマット化された基材のマット面上に、変性ウレタン樹脂及び無機顔料を含む表面層を、付着量10〜400g/m2となるように積層してなるものであることから、朱肉やスタンプインクによる捺印特性並びに耐擦傷性に優れた記録材料を提供することができる。従って、製図用フィルムの他、身分証明書、パスポート、外国人登録証、図書館利用カード、キャッシュカード、クレジットカード、自動車免許証等の免許証類、従業者証、社員証、会員証、医療カード及び学生証などのIDカードの裏面等に利用した際にも、朱肉やスタンプインクによる滲み、擦れ等が生じず、繰り返し財布に入れたりする行為等にも十分耐えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の記録材料は、少なくとも一方の面がマット化された基材のマット面上に、変性ウレタン樹脂及び無機顔料を含む表面層を、付着量10〜400g/m2となるように積層してなることを特徴とするものである。
【0017】
以下、各構成要素の実施の形態について説明する。
【0018】
図1、図2は本発明の記録材料の実施の形態を示す断面図である。図1、図2において、符号1は基材、11は支持体、2はマット層、21は第一マット層、22は第二マット層、3は表面層を示す。なお、図2において支持体11は基材1を兼ねている。
【0019】
本発明の基材1は、少なくとも一方の面がマット化されたものであり、例えば基材1を構成する支持体11の表面にバインダー樹脂中にマット化剤を分散させてなるマット層2を設けたもの(図1)の他、支持体11の表面をサンドブラスト法やケミカルエッチング法等により直接マット化したもの(図2)が挙げられる。いずれのものも基材1の両面がマット化されていても良い。
【0020】
基材のマット面の表面粗さは、算術平均粗さRa(JIS B0601:2001)で0.2〜1.2μmとすることが好ましい。0.2μm以上とすることにより、表面層との接着力を十分なものとすることができる。また、1.2μm以下とすることにより、鉛筆などの各種筆記具で滑らかな筆記を可能なものとすることができる。
【0021】
支持体としては、紙、繊維布帛、合成紙、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のプラスチックフィルム等が挙げられる。支持体の厚みは、用途に応じて適宜使い分けられるが、通常50〜300μmのものが使用される。
【0022】
支持体11上に形成されるマット層2は、第一マット層21からなる単層構造或いは第一マット層21及び第二マット層22からなる多層構造によって構成され、主としてバインダー樹脂とマット化剤とから構成される。
【0023】
第一マット層のバインダー樹脂としては、例えば、飽和ポリエステル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ニトロセルロース、その他セルロース誘導体、ポリアミドポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及び電離放射線硬化性樹脂等が挙げられる。
【0024】
第一マット層のマット化剤としては、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、合成ゼオライト、アルミナ、スメクタイトなどの無機顔料の他、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂などからなる樹脂ビーズ、若しくはこれらを原料とする中空樹脂ビーズなどの有機顔料が挙げられ、これらを単独であるいは2種以上混合して使用することができる。これらマット化剤の粒径は、通常平均粒径0.01〜20μmのものを用いる。マット化剤の添加量は、バインダー樹脂100重量部に対し、10〜80重量部、好ましくは20〜70重量部であることが望ましい。10重量部以上とすることにより、表面層若しくは第二マット層との接着力を十分に向上できる程度に基材表面をマット化することができ、80重量部以下とすることにより、塗膜強度の低下を防止することができる。
【0025】
上述のような第一マット層は、記録材料とした際の耐擦傷性を向上させる観点から、硬化させることが好ましい。第一マット層を硬化させる方法としては、当該第一マット層中に熱硬化性樹脂を含むものである場合には、当該熱硬化性樹脂に熱を加えて硬化させることで、また当該第一マット層中に電離放射線硬化性樹脂を含むものである場合には、電離放射線を照射して硬化させること等により行うことができる。
【0026】
なお、一般的には第一マット層中に存在するバインダー樹脂を硬化させると耐擦傷性が向上するが、その反面インク吸収性が低下することになる。しかしながら本願の記録材料によれば、第一マット層上に変性ウレタン樹脂及び無機顔料を含む表面層を付着量10〜400g/m2でごく薄く積層してなることから、第一マット層中のバインダー樹脂を硬化させ耐擦傷性を付与させてもインク吸収性が低下することがない。したがって、朱肉やスタンプインクによる捺印特性並びに耐擦傷性に優れるという、従来にはなかった記録材料が得られる。
【0027】
第一マット層の厚みは、10〜20μmであることが好ましい。10μm以上とすることにより、耐擦傷性が良好なものとすることができる。また、20μm以下とすることにより、表面層との接着力が低下するのを防止することができる。
【0028】
また、記録材料とした際の耐擦傷性をより向上させる観点から、図1に示すようにマット層2は第一マット層21及び第二マット層22からなる多層構造とすることが好ましい。
【0029】
第二マット層のバインダー樹脂としては、第一マット層として用いられるバインダー樹脂と同様のものが用いられるが、これらの中でもポリビニルアルコール、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等がインク吸収性を向上させる観点から好ましく用いられる。
【0030】
マット化剤としては、第一マット層として用いられるマット化剤と同様のものが用いられる。
【0031】
また、このような第二マット層は、上述の第一マット層と同様に記録材料とした際の耐擦傷性を向上させる観点から、硬化させることが好ましい。第二マット層の鉛筆硬度(JIS−K5600−5−4:1999)は、上述の第一マット層の鉛筆硬度と同程度であることが好ましい。
【0032】
第二マット層の厚みは、10〜20μmであることが好ましい。10μm以上とすることにより、朱肉やスタンプインクによる捺印特性を良好なものとすることができる。また、20μm以下とすることにより、耐擦傷性が低下するのを防止することができる。
【0033】
第二マット層の表面粗さは、算術平均粗さRa(JIS B0601:2001)で0.6〜2.0μmとすることが好ましい。0.6μm以上とすることにより、表面層との接着力を十分なものとすることができる。また、2.0μm以下とすることにより、鉛筆などの各種筆記具で滑らかな筆記を可能なものとすることができる。
【0034】
基材のマット面の鉛筆硬度(JIS−K5600−5−4:1999)は、H以上であることが好ましく、2H以上であることがより望ましい。マット面の鉛筆硬度をH以上とすることにより、当該面上に形成される表面層の鉛筆硬度を間接的に十分に高くすることができ、耐擦傷性に優れる記録材料とすることができる。なお、鉛筆硬度の評価はJIS−K5600−5−4:1999の「塗膜の破れ」に準じて行った。マット層が存在するタイプについては、マット層が第一マット層及び第二マット層からなる多層構造の場合には第二マット層の鉛筆硬度を上述の範囲とした上で、さらに第一マット層の鉛筆硬度を第二マット層の鉛筆硬度より高くすることが本願発明の効果を顕著に発揮させる点でより好ましい。また、マット層が存在しないタイプのもの(サンドマット法やケミカルエッチング法によるもの)については、マット面がつぶれ筆記できなくなった鉛筆硬度を塗膜が破れた鉛筆硬度と擬制した。
【0035】
次に表面層は、変性ウレタン樹脂及び無機顔料を含有するものであり、前記基材のマット面上に付着量10〜400g/m2となるように積層してなるものである。このような表面層を用いることにより、記録材料を朱肉やスタンプインクによる捺印特性並びに耐擦傷性に優れたものとすることができる。
【0036】
本発明のように記録材料の表面層を変性ウレタン樹脂及び無機顔料とより構成することにより、無機顔料が表面層中に適度に分散することが可能となり、インクの定着性を良好なものとしたままインクの乾燥性を向上させることができ、朱肉やスタンプインクによる捺印特性に優れたものとすることができる。
【0037】
また、表面層が基材のマット面上に付着量10〜400g/m2とごく薄く積層してなることから、基材自体が持つ鉛筆硬度を間接的に利用して表面層の鉛筆硬度を向上させることができ、耐擦傷性に優れたものとすることができる。従って、本発明によれば、従来では容易には想定し得なかった朱肉やスタンプインクによる捺印特性及び耐擦傷性の両特性に優れたものとすることができる。なお、好ましくは付着量100〜300g/m2となるように積層することにより、本願発明のより優れた効果が発揮される。
【0038】
ここで変性ウレタン樹脂とは、分子中にポリカーボネート鎖、ポリエステル鎖、ポリエーテル鎖、ポリラクトン鎖等を有するウレタン樹脂を指し、これらの中でも特に分子中にポリカーボネート鎖及び/又はポリエステル鎖を有するウレタン樹脂であることが好ましい。このようなウレタン樹脂を用いることにより、本発明の表面層を積層してなる記録材料にインクジェットプリンタで印刷した際高精細な画像を得ることができ、朱肉やスタンプインクによる捺印特性並びに耐擦傷性に優れたものとすることができる。
【0039】
変性ウレタン樹脂は、具体的には、例えばポリカーボネート鎖及び/又はポリエステル鎖を含むポリオール(以下、「ポリカーボネートポリオール及び/又はポリエステルポリオール」という)とジイソシアネートとを溶剤中で反応させ、その後、エマルジョン化することにより製造することができる。
【0040】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールなどのグリコールとジフェニルカーボネート、ホスゲンとの反応によって得られる化合物等が挙げられる。これらを単独、または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0041】
ポリエステルポリオールとしては、低分子量ポリオールとカルボン酸とを脱水縮合反応させることによって得られるポリエステル、又はε−カプロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合反応によって得られるポリエステル及びこれらの共重合ポリエステル等が挙げられる。
【0042】
ジイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2'−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、3,3'−ジクロロ−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3'−ジメチル−4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられ、それぞれ単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。これらの中でも耐光性に優れる点から、脂肪族ジイソシアネートを用いることが好ましい。尚、本発明の効果を損なわない範囲で3価以上のポリイソシアネートを併用することもできる。
【0043】
無機顔料としては、上述のマット化剤として用いられるものと同様のものを用いることができる。これらの中でもインク吸収性を向上させる観点から、シリカ、アルミナ、クレー、タルクのような多孔質の無機顔料を用いることが好ましく、適度な白度を与えることができ生産性を向上させる観点からシリカを用いることがより好ましい。また、無機顔料の粒径は、通常平均粒径0.1〜10μmのものを用いることが好ましい。
【0044】
このような表面層を構成する変性ウレタン樹脂と無機顔料との含有割合は、変性ウレタン樹脂100重量部に対し、無機顔料を300〜1500重量部含有させることが好ましく、500〜1000重量部含有させることがより好ましい。無機顔料を300重量部以上含有させることにより、無機顔料を表面層中に適度に分散させることができ、インクの定着性を良好なものとしたままインクの乾燥性を向上させることができる。また、無機顔料を1500重量部以下含有させることにより、成膜性が低下するのを防止することができる。
【0045】
表面層中に占める変性ウレタン樹脂及び無機顔料の含有率は、前記表面層の全固形分中において50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上とすることがより好ましい。50重量%以上とすることにより、朱肉やスタンプインクによる捺印特性を良好なものとすることができる。
【0046】
上述した第一マット層、第二マット層及び表面層中には、他の樹脂、レベリング剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、キレート剤、帯電防止剤などの添加剤を添加してもよい。
【0047】
第一マット層、第二マット層及び表面層を形成する方法としては、各層の構成成分を適当な溶媒に溶解又は分散させて塗布液を調製し、当該塗布液をロールコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、エアナイフコーティング法等の公知の方法により支持体上に塗布・乾燥させる方法が挙げられる。
【0048】
なお、カールの発生を防止するため、基材の表面層とは反対側の面にバックコート層を設けたり、帯電を防止するため、表面層上や基材の表面層とは反対側の面に帯電防止層を設けることは何ら差し支えない。
【0049】
以上のように本発明の記録材料は、少なくとも一方の面がマット化された基材のマット面上に、変性ウレタン樹脂及び無機顔料を含む表面層を、付着量10〜400g/m2となるように積層してなるため、朱肉やスタンプインクによる捺印特性並びに耐擦傷性に優れた記録材料を提供することができる。このような記録材料は、製図用フィルムの他、身分証明書、パスポート、外国人登録証、図書館利用カード、キャッシュカード、クレジットカード、自動車免許証等の免許証類、従業者証、社員証、会員証、医療カード及び学生証などのIDカードの裏面等に好適に利用できる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
【0051】
1.記録材料の作製
[実施例1]
厚み100μmのポリエステルフィルム(ルミラーT60:東レ社)上に、下記の組成からなる第一マット層塗布液を乾燥後の厚みが10μmとなるようにバーコーティング法により塗布、乾燥して第一マット層を形成した。なお、第一マット層の鉛筆硬度は、3Hであった。
【0052】
<第一マット層塗布液>
・(メタ)アクリル酸エステル(固形分50%) 20部
(アクリディックA801:大日本インキ化学工業社)
・イソシアネート(固形分75%) 8部
(タケネートD160N:三井武田ケミカル社)
・シリカ 5部
(サイリシア740:富士シリシア化学社)
・トルエン 25部
・酢酸ブチル 25部
【0053】
次いで、第一マット層上に、下記の組成からなる第二マット層塗布液を乾燥後の厚みが10μmとなるようにバーコーティング法により塗布、乾燥して第二マット層を形成し、基材(マット化フィルム)を得た。なお、第二マット層の鉛筆硬度は、2Hであった。
【0054】
<第二マット層塗布液>
・ポリビニルピロリドン(固形分100%) 20部
(K−90:ISP社)
・ポリビニルアルコール(固形分100%) 5部
(UMR−150L:ユニチカ社)
・イソシアネート(固形分75%) 14部
(タケネートD160N:三井武田ケミカル社)
・シリカ 25部
(サイリシア740:富士シリシア化学社)
・n−プロピルアルコール 100部
・メチルエチルケトン 100部
【0055】
次いで、第二マット層上に、下記の組成からなる表面層塗布液を乾燥後の付着量が200g/m2となるようにバーコーティング法により塗布、乾燥して表面層を形成し、実施例1の記録材料を得た。
【0056】
<実施例1の表面層塗布液>
・ハイブリッド樹脂(変性ウレタン樹脂とシリカとの混合) 80部
(固形分20%)
(パテラコールIJ-150R:大日本インキ化学工業社)
・変性ウレタン樹脂(固形分18%) 20部
(パテラコールIJ-21:大日本インキ化学工業社)
・ポリビニルアルコール 25部
・水 25部
【0057】
[実施例2]
実施例1の表面層塗布液を下記処方の表面層塗布液に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2の記録材料を得た。
【0058】
<実施例2の表面層塗布液>
・変性ウレタン樹脂(固形分18%) 10部
(パテラコールIJ-21:大日本インキ化学工業社)
・シリカ 6部
(サイリシア430:富士シリシア化学社)
・ポリビニルアルコール 10部
・水 30部
【0059】
[比較例1]
実施例2の表面層塗布液で、変性ウレタン樹脂をアクリル系樹脂(固形分45%)(NEOCRYL A-639:DSM社)、シリカを酸化チタン(R−900:デュポン社)に変更した以外は実施例2と同様にして、比較例1の記録材料を得た。
【0060】
[比較例2]
実施例1の表面層塗布液を下記処方のカチオン系樹脂を含有する表面層塗布液に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例2の記録材料を得た。
【0061】
<比較例2のカチオン系樹脂を含有する表面層塗布液>
・第4級アンモニウム塩系アクリル樹脂 60部
(ST−2500:三菱樹脂社)(固形分34%)
・n−プロピルアルコール 100部
・水 100部
【0062】
2.評価
実施例及び比較例で得られた記録材料について、以下のようにして評価を行なった。評価結果を表1に示す。
【0063】
(1)耐擦傷性
実施例及び比較例で得られた記録材料を、JIS−K−5600−5−4:1999に従い測定した。引っ掻き強度の測定装置として、表面性測定器(HEIDON−14型:新東科学社)を用い、引掻距離100mm、速度600mm/sec、引掻き針0.1mm、角度60度(サファイア針)の条件で測定した。
【0064】
引っ掻き強度は、引っ掻き開始から荷重を順次変化させ、表面に傷がつき始めた点における荷重を測定し、その荷重値(g)が350g以上であったものを「○」、250g以上350g未満であったものを「△」、250g未満であったものを「×」とした。
【0065】
(2)朱肉及びスタンプインクの捺印特性
(a)インクの乾燥性
実施例及び比較例で得られた記録材料を朱肉(シヤチハタ社)及び赤色スタンプ(シヤチハタ社)を用いて捺印し、乾燥速度を確認した。捺印後1分以内に乾燥したものを「○」、1分から2分の間に乾燥したものを「△」、3分以上要したものを「×」とした。
【0066】
(b)インクの定着性
実施例及び比較例で得られた記録材料を朱肉(シヤチハタ社)及び赤色スタンプ(シヤチハタ社)を用いて捺印し、捺印後文字を鮮明に認識することができたものを「○」、文字を認識することができたものを「△」、文字を認識することができなかったものを「×」とした。
【0067】
【表1】

【0068】
実施例の記録材料は、少なくとも一方の面がマット化された基材のマット面上に、変性ウレタン樹脂及び無機顔料を含む表面層を付着量10〜400g/m2となるように積層してなるものであることから、朱肉やスタンプインクによる捺印特性並びに耐擦傷性に優れるものであった。
【0069】
一方、比較例1の記録材料は、表面層を構成する樹脂が変性ウレタン樹脂ではなかったため、表面層中に存在する顔料が適度に分散せず表面層の表面に偏在し、スタンプインクのインクの乾燥性および定着性に劣るものとなった。
【0070】
また、比較例2の記録材料は、表面層中にカチオン系樹脂が含有されていたことからスタンプインクの定着性が若干改善されたが、表面層を構成する樹脂が変性ウレタン樹脂ではなかったためインクの乾燥性が未だ適切なものとはいえず、擦れ等が生じるものであった。また、耐擦傷性に劣るものであった。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の記録材料の一実施例を示す断面図
【図2】本発明の記録材料の他の実施例を示す断面図
【符号の説明】
【0072】
1・・・・基材
11・・・支持体
2・・・・マット層
21・・・第一マット層
22・・・第ニマット層
3・・・・表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の面がマット化された基材のマット面上に、変性ウレタン樹脂及び無機顔料を含む表面層を、付着量10〜400g/m2となるように積層してなることを特徴とする記録材料。
【請求項2】
前記基材のマット面の鉛筆硬度(JIS−K5600−5−4:1999)が、H以上であることを特徴とする請求項1記載の記録材料。
【請求項3】
前記無機顔料が、シリカであることを特徴とする請求項1又は2記載の記録材料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−90559(P2007−90559A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−280129(P2005−280129)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000125978)株式会社きもと (167)
【Fターム(参考)】