説明

記録用紙

【課題】寸法安定性に優れ、かつ高い不透明度を有する記録用紙を備える記録用紙を提供する。
【解決手段】パルプを主原料とする3層以上のパルプ繊維層を有し、灰分が7%以上12%以下の記録用紙であって、上記パルプ繊維層として、高灰分層及びこの高灰分層に隣接する低灰分層を有し、上記高灰分層の灰分と低灰分層の灰分との差が3%以上であることを特徴とする。上記パルプ繊維層として、表層1、2層以上の中間層2、3及び裏層4をこの順に有し、上記高灰分層と低灰分層とを共に中間層2,3に有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、大判の掲示物や壁紙用途に使用される記録材料(インクジェット用記録材料等)の基材には、合成樹脂シートや布帛が用いられている(特開平7−227941号公報、特開2005−256213号公報参照)。このような合成樹脂や布帛を基材に用いた記録材料は、大型化した場合も高い強度を有している。一方、コスト面やリサイクル性を考慮して、この基材として紙を用いた大型の記録用紙(以下、「ビルボード紙」ともいう)も提案されている(特開2002−200842号公報参照)。
【0003】
しかし、大型の記録材料の基材として紙が用いられた場合、上述の合成樹脂や布帛を用いたものに対して強度が低下しやすいことに加え、掲示時に塗布される水糊により寸法が変化しやすいことや、不透明度が低く、裏写りが生じやすいこと等の不都合を有する。このような不都合を解消するための方法としては、基材の表面に耐水性の高い塗料や、顔料等の配合により不透明度を高めることができる塗料等を塗工する方法が挙げられる。しかし、基材の表面に他の塗工層等を設けると、用途が限定されたり、インクジェット等の着色性等に影響を与えうる。そこで、塗工層を設けないで基材そのものの改良により上記不都合が解消可能な方法の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−227941号公報
【特許文献2】特開2005−256213号公報
【特許文献3】特開2002−200842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、寸法安定性に優れ、かつ高い不透明度を有する記録用紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた発明は、
パルプを主原料とする3層以上のパルプ繊維層を有し、灰分が7%以上12%以下の記録用紙であって、
上記パルプ繊維層として、高灰分層及びこの高灰分層に隣接する低灰分層を有し、
上記高灰分層の灰分と低灰分層の灰分との差が3%以上であることを特徴とする。
【0007】
当該記録用紙によれば、所定の灰分差を有する高灰分層と低灰分層とが隣接して設けられており、この構造により不透明度及び寸法安定性を高めることができる。なお、このような効果が発揮される理由は定かではないが、灰分差が大きい上記2層の界面で、反射や散乱等の光学的作用が発現されやすく、不透明度が高まると考えられる。また、上記低灰分層は、低密度であることから水分の浸透に対する膨張性が低く、このような低灰分層を設けることで、当該記録用紙の寸法安定性を高めることができると考えられる。
【0008】
上記パルプ繊維層として、表層、2層以上の中間層及び裏層をこの順に有し、上記高灰分層と低灰分層とを共に中間層に有することが好ましい。このように中間層に上記高灰分層と低灰分層とを設けることで、露出する表面及び裏面に与える影響を抑えつつ、寸法安定性及び高不透明度を高めることができる。
【0009】
上記高灰分層の坪量(1mあたりの質量)が40g/m以上70g/m以下であり、上記低灰分層の坪量(1mあたりの質量)が20g/m以上40g/m以下であることが好ましい。高灰分層の坪量を比較的大きい上記範囲とすることで、白色度及び紙全体の強度を高めることができる。また、低灰分層の坪量を上記範囲とすることで、水分の吸収能とこの低密度な層に起因する強度の低下の防止とを両立させ、その結果、寸法安定性をより高めることができる。
【0010】
当該記録用紙の厚みとしては120μm以上250μm以下が好ましく、坪量としては100g/m以上200g/m以下が好ましい。このような厚み及び坪量とすることで、寸法安定性及び高い不透明度がより効果的に発現され、例えばビルボード紙として好適に用いることができる。
【0011】
ここで、高灰分層及び低灰分層とは、隣接する二層における灰分に基づく相対的な概念である。従って、例えば、3層構造における中間の層が、表面側及び裏面側の層との関係で、高灰分層でありかつ低灰分層である場合もある。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明の記録用紙は、寸法安定性に優れ、かつ高い不透明度を有する。従って、本発明の記録用紙は、大型(例えば一辺の長さが350mm以上)の記録用紙であるビルボード紙等として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る模式的断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の記録用紙の実施の形態を説明する。
【0015】
(記録用紙)
図1の記録用紙10は、表層1、中間層(第1中間層2及び第2中間層3)及び裏層4がこの順に積層されてなる。この表層1、第1中間層2、第2中間層3及び裏層4が、パルプを主原料とする、すなわちパルプ繊維を主成分とするパルプ繊維層である。
【0016】
各層の主原料となる上記パルプとしては、例えば、古紙パルプ(DIP)、化学パルプ(例えば広葉樹クラフトパルプ:LBKP、針葉樹クラフトパルプ:NBKPなど)、機械パルプ(例えばサーモメカニカルパルプ:TMP、プレッシャライズトドクラフトパルプ:PGW、リファイナーグランドパルプ:RGP、グランドパルプ等)やケナフ、バガス、麻、コットンなどの非木材パルプなどのパルプを用いることができる。
【0017】
なお、好適な灰分及び不透明度とするために、上記パルプの中でも、古紙パルプが好ましい。また、古紙パルプは、古紙由来の灰分を含むため、フレッシュな内添用の填料を含有させた場合と異なり、古紙由来の灰分が古紙パルプ中で高い分散性とパルプ繊維との固着性とを有する。従って、古紙パルプは、本発明の課題である寸法安定性に優れ、かつ高い不透明度を有する記録用紙を得るために好ましい。なお、各層毎のより好適な古紙パルプの種類は後述する。
【0018】
当該記録用紙10の全体の灰分は、7%以上12%以下であり、8%以上11%以下が好ましく、9%以上10.5%以下がより好ましい。灰分を上記範囲とすることで、不透明度や寸法安定性等を好ましい性能とすることができる。なお、灰分は、JIS−P8251に記載の「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法」に準拠して測定した値である。なお、各層毎の好適な灰分は後述する。
【0019】
各層中の灰分としての内添用の填料には、例えば、重炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、石膏、タルク、カオリン、クレー、焼成カオリン、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、デラミカオリン、ケイソウ土、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛等を用いることができる。但し、発明者等の知見では、古紙パルプを原料パルプとして用いることが、古紙由来の填料を有効活用でき、本発明の課題である寸法安定性に優れ、かつ高い不透明度を有する記録用紙を得るに好ましい。更には、ここで、各層(好ましくは全層)において、古紙パルプを選別し、所望灰分となるような古紙由来の灰分成分を含有する古紙パルプを用い、灰分を調整することが好ましい。古紙パルプを用いることで、古紙由来の灰分成分が原料パルプに強固に固着しているため、不透明度の向上能等が効果的に発揮される。
【0020】
発明者等の知見では、古紙由来の填料成分を多く含有する地券古紙パルプ、上白古紙パルプ及び白アート古紙パルプを用いることで、上述の灰分差を有する2層を調整しやすくなる。
【0021】
上記パルプ繊維(全層に用いられるパルプ繊維全体)のフリーネスの下限としては、300ccが好ましく、350ccがさらに好ましい。このフリーネスの上限としては、例えば、500ccである。
【0022】
発明者等の知見では、バージンパルプを用いてパルプ繊維のフリーネスを調整した原料パルプを用いるより、古紙由来の古紙パルプを主原料に用いてフリーネスを300cc、より好ましくは350cc、フリーネスの上限としては、例えば、500ccの範囲に調整することが好ましい。このようにすることで、繰り返しの古紙のリサイクル処理にてパルプ繊維が扁平に短くカッティングされた状態になり、パルプ繊維の表面に灰分が固着している特性とパルプ繊維がカッテイングされていることによる高い寸法安定性を有することとなるため、本発明の課題である寸法安定性に優れ、かつ高い不透明度を有する記録用紙を得るに好ましい。
【0023】
フリーネスが上記下限未満の場合は、繊維長が短くなるため、強度や寸法安定性が低下するおそれがある。逆に、フリーネスが上記上限を超える場合は、インク吸収機能が低下するおそれがある。ここで、「フリーネス」とは、JIS−P8220に準拠して標準離解機にて試料を離解処理した後、JIS−P8121に準拠してカナダ標準濾水度試験機にて濾水度を測定した値である。
【0024】
(表層1)
表層1の灰分としては、特に限定されないが、6%以上10%以下が好ましい。表層1の灰分を上記範囲とすることで、印刷適性や不透明度等を高めることができる。
【0025】
表層1は、上白古紙パルプ及びコート古紙パルプを主原料とすることが好ましい。このような古紙パルプを用いることで、適度な灰分及び白色度とすることができる。なお、上記上白古紙パルプとコート古紙パルプとの配合比(質量比)としては、特に限定されないが、30:70以上70:30以下が好ましく、40:60以上60:40以下がさらに好ましい。なお、表層1に使用される全パルプ中の上白古紙パルプ及びコート古紙パルプの割合としては、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
【0026】
ここで、各古紙の分類は、「古紙の統計分類と主要銘柄」(財団法人古紙再生促進センター:平成22年4月22日改訂版)に従う。
【0027】
表層1の坪量(付け量)としては、特に限定されないが、20g/m以上50g/m以下とすることが好ましい。表層1の坪量を上記範囲とすることで、印刷適性や不透明度等を高めることができる。
【0028】
(第1中間層2)
第1中間層2は、低灰分層である。この第1中間層2は、低灰分であることから、低密度であり、水分の浸透に対する膨張性が低い。従って、当該記録用紙10にこのような第1中間層2を設けることで、当該記録用紙10の寸法安定性を高めることができると考えられる。第1中間層2の灰分としては、5%以上12%以下とすることができ、6%以上9%以下が好ましい。
【0029】
第1中間層2は、上白古紙パルプ及び白アート古紙パルプを主原料とすることが古紙由来の填料を多く含むことと、原料パルプの構成から好ましい。このような古紙パルプを用いることで、適度な灰分(比較的低灰分)及び白色度とすることができる。なお、上記上白古紙パルプと白アート古紙パルプとの配合比(質量比)としては、特に限定されないが、古紙由来の填料の含有割合から30:70以上70:30以下が好ましく、40:60以上60:40以下がさらに好ましい。なお、第1中間層2に使用される全パルプ中の上白古紙パルプ及び白アート古紙パルプの割合としては、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
【0030】
第1中間層2の坪量(付け量)としては、特に限定されないが、20g/m以上40g/m以下とすることが好ましく、25g/m以上35g/m以下とすることがより好ましい。第1中間層2の坪量を上記範囲のように比較的小さくすることで、低灰分層を設けたことによる寸法安定性の低下を抑制することができる。
【0031】
(第2中間層3)
第2中間層3は、高灰分層である。第2中間層3の灰分としては、8%以上15%以下とすることができ、9%以上13%以下が好ましい。当該記録用紙10によれば、このような高灰分な第2中間層3を有することで、不透明度等を特に高めることができる。
【0032】
第2中間層3は、機械パルプや針葉樹クラフトパルプの含有がありながら、古紙由来の填料を多く含有する地券古紙パルプを主原料とすることが好ましい。このような古紙パルプを用いることで、適度な灰分(比較的高灰分)とすることができ、本発明の課題である寸法安定性に優れ、かつ高い不透明度を有する記録用紙を得るに好ましい。なお、第2中間層3に使用される全パルプ中の地券古紙パルプの割合としては、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
【0033】
第2中間層3は、灰分をさらに高めるために、地券古紙パルプに加え、さらにフレッシュな填料(炭酸カルシウム等)を加えることも好ましい。
【0034】
第2中間層3の坪量(付け量)としては、特に限定されないが、40g/m以上70g/m以下とすることが好ましく、42g/m以上60g/m以下とすることがより好ましい。高灰分である第2中間層3の坪量を上記範囲のように比較的大きくすることで、寸法安定性をより高めることができる。
【0035】
(第1中間層2と第2中間層3との関係)
第1中間層2(低灰分層)の灰分と第2中間層3(高灰分層)の灰分との差の下限は、3%であり、3.5%が好ましい。一方、この灰分差の上限としては、特に限定されないが、例えば6%であり、5%が好ましい。
【0036】
当該記録用紙10によれば、所定の灰分差を有する第1中間層2と第2中間層3とが隣接して設けられており、この構造により不透明度及び寸法安定性を高めることができる。なお、このような効果が発揮される理由は定かではないが、灰分差が大きい上記2層の界面で、反射や散乱等の光学的作用が発現されやすく、不透明度が高まると考えられる。また、上記第1中間層2(低灰分層)は、低密度であることから水分の浸透に対する膨張性が低く、このような低灰分層を設けることで、当該記録用紙10の寸法安定性を高めることができると考えられる。
【0037】
第2中間層3(高灰分層)の坪量が40g/m以上70g/m以下であり、かつ、第1中間層2(低灰分層)の坪量(1mあたりの質量)が20g/m以上40g/m以下であることが好ましい。高灰分層の坪量を比較的大きい上記範囲とすることで、白色度及び紙全体の強度を高めることができる。また、低灰分層の坪量を上記範囲とすることで、水分の吸収能とこの低密度な層に起因する強度の低下の防止とを両立させ、その結果、寸法安定性をより高めることができる。
【0038】
また、当該記録用紙10によれば、このように中間層に高灰分層と低灰分層とを設けることで、露出する表面及び裏面に与える影響を抑えつつ、寸法安定性及び高不透明度を高めることができる。
【0039】
(裏層4)
裏層4の灰分としては、特に限定されないが、6%以上14%以下が好ましい。裏層4の灰分を上記範囲とすることで、印刷適性や不透明度等を高めることができる。
【0040】
裏層4は、上白古紙パルプ及びコート古紙パルプを主原料とすることが好ましい。このような古紙パルプを用いることで、適度な灰分及び白色度とすることができる。なお、上記上白古紙パルプとコート古紙パルプとの配合比(質量比)としては、特に限定されないが、30:70以上70:30以下が好ましく、40:60以上60:40以下がさらに好ましい。なお、裏層4に使用される全パルプ中の上白古紙パルプ及びコート古紙パルプの割合としては、70質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
【0041】
裏層4の坪量(付け量)としては、特に限定されないが、20g/m以上45g/m以下とすることが好ましい。裏層4の坪量を上記範囲とすることで、印刷適性や不透明度等を高めることができる。
【0042】
(他の添加剤等)
当該記録用紙10には、湿潤紙力剤(耐水化剤)、内添サイズ剤、硫酸バンド、紙力増強剤等の公知の添加剤を内添又は外添させることができる。
【0043】
各パルプ繊維層中には、湿潤紙力剤を含有させることが好ましい。湿潤紙力剤を含有させることで寸法安定性がさらに向上する。上記湿潤紙力剤としては、特に限定されず、公知のものを用いることができるが、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド−ポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、及びメラミン−ホルムアルデヒド樹脂を主成分とする湿潤紙力剤が好ましく、ポリアミド−ポリアミンエピクロルヒドリン樹脂を主成分とする湿潤紙力剤がより好ましい。
【0044】
この湿潤紙力剤の含有量としては、記録用紙10に対し、0.5質量%以上1.0質量%以下が好ましく、0.6質量%以上0.8質量%以下がより好ましい。湿潤紙力剤の含有量が0.5質量%未満の場合は、十分な湿潤紙力が得られないおそれがある。一方、この含有量が1.0質量%を超えても湿潤紙力はそれ以上は増強されにくく、効果が飽和する。
【0045】
上記湿潤紙力剤は、各層に含有させることができるが、第1中間層2(低灰分層)及び第2中間層3(高灰分層)のいずれかに含有させないことが好ましく、第2中間層3に含有させないことが好ましい。すなわち、低灰分層と高灰分層とで湿潤紙力剤の含有量が異なることが好ましい。このようにすることで、低灰分層と高灰分層とにおける光学的な物性にさらに差がつき、不透明度が高まる。
【0046】
当該記録用紙10には、内添サイズ剤として、ロジンサイズ剤を用いることが好ましい。本発明では、紙への水分の浸透を抑制するためにサイズ剤、及び紙の強度を増強するために紙力増強剤を使用することが好ましい。サイズ剤は、製紙薬品メーカーから各種のものが市販されているが、本発明ではロジンサイズ剤が好適に用いられる。ロジンサイズ剤の使用量は、原料パルプの絶乾質量に対して1.2〜1.9質量%、好ましくは、1.3〜1.8質量%である。サイズ剤の使用量が多いほど水分の浸透を抑制する効果が高く、当該用途での品質が向上するが、1.9%以上使用しても効果が頭打ちとなり、コストも高くなる。
【0047】
上記ロジンサイズ剤の代表例としては中性ロジンサイズと酸性ロジンサイズ剤があり、中性ロジンサイズ剤としては、pH6〜9の弱酸性〜弱アリカリ性領域(中性領域)で使用し、ロジン系物質を各種の乳化分散剤で分散させたエマルジョン型のロジンサイズ剤を挙げることができる。酸性ロジンサイズ剤としては、ケン化型(強化ロジンの石鹸)ロジンサイズ剤、中性領域に近づいても好適なサイズ性を得ることができる、ロジン物質を分散剤の存在下で水中に分散させた水中分散型ロジンサイズ剤等が挙げられる。
【0048】
これらのロジンサイズ剤の中でも、硫酸バンドの併用による酸性ロジンサイズ剤が好ましく、硫酸バンドの併用によるケン化型ロジンサイズ剤が特に好ましい。発明者等の知見では、このようなサイズ剤を用いることで、古紙由来の填料のパルプ繊維への固着を助長することができる。
【0049】
ここで、ロジン系物質としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等のロジン類をフマール酸、マレイン酸、アクリル酸等のα,β−不飽和カルボン酸あるいはその無水物で変性した強化ロジンや、上記ロジン類をグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の多価アルコールを反応させて得られるロジンエステルを挙げることができ、これらの単独又はその混合物をエマルジョン化したものや、単独でエマルジョン化した後に混合したものを使用可能である。さらに、上記ロジンエマルジョン中に、サイズ発現性をより向上させるために各種ポリマーを添加したものも使用できる。
【0050】
上記内添サイズ剤は、各層に含有させることができるが、表層1及び裏層4のみに含有させることが好ましい。このように低灰分層及び高灰分層の内添サイズ剤の含有量を低くすることで、理由は定かではないが2層の光学的物性差が顕著に表れること等により、不透明度が高まる。
【0051】
(品質等)
当該記録用紙10の厚みとしては、120μm以上250μm以下が好ましく、150μm以上180μm以下がより好ましい。このような厚みとすることで、寸法安定性及び高い不透明度がより効果的に発現され、例えばビルボード紙として好適に用いることができる。厚みが上記下限未満の場合は、搬送性や、糊塗布やインクジェット記録時の寸法安定性が低下するおそれがある。逆に、厚みが上記上限を超える場合は、インクジェットプリンターにおける搬送性の低下や、その他貼り付け作業等の作業性の低下を招くおそれがある。
【0052】
当該記録用紙10の坪量としては、100g/m以上200g/m以下が好ましく、120g/m以上190g/m以下がより好ましく、130g/m以上180g/m以下がさらに好ましい。このような坪量とすることで、寸法安定性及び高い不透明度がより効果的に発現され、例えばビルボード紙として好適に用いることができる。坪量が上記下限未満の場合は、剛度が低くなり、貼り付け時等における作業性が低下するおそれがある。逆に、坪量が上記上限を超える場合は、作業性や搬送性が低下するおそれがある。
【0053】
当該記録用紙10の不透明度としては、少なくとも坪量100g/mにおいて95%以上が好ましく、98%以上がより好ましい。不透明度が95%未満であると張付けるボードや壁に文字や模様が入っている場合等に、裏映りが生じるおそれがある。なお、不透明度を高めるためには、表面に染料を添加して着色したり、着色されたパルプ繊維層を設けてもよい。なお、上記不透明度は、JIS−P8149に準じて測定した値である。
【0054】
当該記録用紙10の吸水度(JIS−P8140の吸水度試験法に準じた表面の2分後の吸水量)としては、30.0g/m以下、より好ましくは27g/m以下であることが好ましい。吸水度が30.0g/mを超えると、表面の波うちが大きくなるため、貼付後の仕上がりに支障が生ずるおそれがある。
【0055】
当該記録用紙10の湿潤強度(JIS−P8135に準じて測定した湿潤引張強度)は、縦方向(流れ方向)で1.0mN以上、横方向(幅方向)で0.4mN以上であることが好ましく、縦方向と横方向の湿潤強度の関係において、縦方向が1.0〜1.4mN、横方向が0.4〜0.8mNの範囲が本発明の課題である寸法安定性の向上に好ましい。縦方向の湿潤強度が1.0mN未満であると、強度が弱すぎて貼付け時に当該記録用紙が破れるおそれがある。また、湿潤強度の関係において、縦方向が1.0〜1.4mN、横方向が0.4〜0.8mNの範囲を外れると寸法安定性が低下し、本発明の好適な用途である大型の記録用紙では寸法変化が助長されるため問題が生じる場合がある。
【0056】
当該記録用紙10の水中伸度(JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.27:2000に準じて測定した水中伸度)は2.0以下が好ましく、1.6%以下がより好ましい。水中伸度が2.0%を超えると貼付け時の紙のカールを防止することができないおそれがある。
【0057】
当該記録用紙は、寸法安定性や不透明度が高く、大判の掲示物や壁紙用途(いわゆる、ビルボード紙)等に好適に用いることができる。
【0058】
(記録用紙の製造方法)
当該記録用紙10は公知の方法で製造することができる。例えば、各パルプ繊維層毎にパルプスラリーを調整し、公知の抄紙機を用いて多層抄きすることによって得ることができる。
【0059】
なお、抄紙後、表面及び裏面にカレンダー塗工などの処理を行うことも好ましい。上記カレンダー塗工に用いる塗工液としては、例えば、PVA及び表面サイズ剤を含有する溶液等を挙げることができる。上記溶液におけるPVAの濃度としては、例えば0.1〜1質量%が好ましく、表面サイズ剤の濃度としては、例えば0.5質量%〜2質量%が好ましい。また、塗工液の塗工量としては、溶液基準で、5g/m以上20g/m以下が好ましい。
【0060】
なお、本発明の記録用紙は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、当該記録用紙が、3層又は5層以上のパルプ繊維層を有していてもよい。また、高灰分層や低灰分層が表層又は裏層となるような層構造を有していてもよい。さらには、複数の高灰分層及び低灰分層やパルプ繊維層以外の他の層を備えていてもよい。
【実施例】
【0061】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0062】
なお、得られた記録用紙(ビルボード紙)の評価は以下の方法で行った。
【0063】
[灰分(単位:%)]
JIS−P8251に記載の「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法」に準拠して測定した。
【0064】
[フリーネス(単位:cc)]
JIS−P8220に準拠して標準離解機にて試料を離解処理した後、JIS−P8121に準拠してカナダ標準濾水度試験機にて濾水度を測定した。
【0065】
[坪量(単位:g/m)]
JIS−P8124(1998)「紙及び板紙−坪量測定方法」に準拠して測定した。
【0066】
[厚み(単位:μm)]
JIS−P8118「厚さ及び密度の試験方法」に準拠して平均厚みを測定した。
【0067】
[不透明度(単位:%)]
JIS−P8149(2000)「紙及び板紙−不透明度試験方法(紙の裏当て)−拡散照明法」に準拠して測定した。
【0068】
[湿潤引張強度(単位:mN)]
JIS−P8135に準拠して測定した。
【0069】
[水中伸度(単位:%)]
JAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.27:2000に準じて測定した。
【0070】
[耐コックリング性]
コックリングを評価することで、ビルボード紙の濡れによるボコツキ具合を確認した。A4サイズにカットしたビルボード紙の耐水化剤層面に水糊(PVA−417、固形分10%)20gをまんべんなく塗布した。30分後、コックリングの状態を目視し、以下のいずれに該当するかを評価した。
5:コックリングが全くない
4:コックリングが少し目立つ
3:コックリングやや目立つ
2:コックリング多く目立つ
1:コックリングかなり多く目立つ
なお評価3〜5であれば、ビルボード紙として使用可能であると評価した。
【0071】
[表面ハジキ]
A4サイズにカットしたビルボード紙の耐水化剤層面に水糊(PVA−417、固形分10%)20gをまんべんなく塗布した。30分後、表面ハジキの状態を目視し、以下のいずれに該当するかを評価した。
5:表面ハジキが全くない
4:表面ハジキが少し目立つ
3:表面ハジキがやや目立つ
2:表面ハジキが多く目立つ
1:表面ハジキがかなり多く目立つ
なお評価3〜5であれば、ビルボード紙として使用可能であると評価した。
【0072】
[吸水度(単位:g/m)]
JIS−P8140の吸水度試験法に準じて、表層表面における2分後の吸水量を測定した。
【0073】
(実施例1)
表層及び裏層用の原料パルプとして、上白古紙パルプ50質量部とコート古紙パルプ50質量部とを混合して用いた。第1中間層用の原料パルプとして、上白古紙パルプ50質量部と白アート古紙パルプ50質量部とを混合して用いた。第2中間層用の原料パルプとして、地券古紙パルプを用いた。なお、内添サイズ剤(酸性ロジンサイズ剤)を表層及び裏層の原料パルプに対してそれぞれ1.3質量%となるように、また、湿潤紙力増強剤(ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン)を表層、第1中間層及び裏層の原料パルプに対してそれぞれ2.0質量%となるように添加した。なお、全原料パルプに対する内添サイズ剤の含有量は0.7質量%、湿潤紙力増強剤の含有量は1.6質量%となる。
【0074】
このように調整した原料パルプを用いて、抄紙し、表層、第1中間層、第2中間層及び裏層がこの順に積層された4層構造の記録用紙を得た。なお、表層の坪量が40g/m、第1中間層の坪量が30g/m、第2中間層の坪量が45g/m、裏層の坪量が35g/mとなるように調整して抄紙した。また、抄紙後の両面には、PVA(クラレ社製ポバール117K)0.5質量%溶液に1.2質量%の濃度となるように表面サイズ剤(ハリマ化成社製KN−275P)を添加した塗工液を塗工(10g(wet)/m)し、カレンダー処理した。
【0075】
(実施例2〜16、比較例1〜4)
各層の坪量、各層のパルプ種、内添サイズ剤の種類及び使用量、湿潤紙力増強剤の種類及び使用量を表1に示すようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜16及び比較例1〜4の各記録用紙を得た。
【0076】
【表1】

【0077】
得られた各記録用紙の品質評価を表2及び表3に示す。
【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

【0080】
表3に示されるように、実施例1〜16の記録用紙は、低灰分層としての第1中間層と高灰分層としての第2中間層とを隣接して有するため、不透明度が高く、また、寸法安定性にも優れる。特に、実施例1を比較例1、2及び4と比べると、全体の灰分はやや低い又は同じであるにもかかわらず、高い不透明度等を有していることが分かる。さらに、これらの記録用紙は、他の評価結果も満足されるものであり、ビルボード紙等として好適であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上説明したように、本発明の記録用紙は、寸法安定性に優れ、かつ高い不透明度を有すため、ビルボード紙などの大判の記録用紙として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0082】
1 表層
2 第1中間層
3 第2中間層
4 裏層
10 記録用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプを主原料とする3層以上のパルプ繊維層を有し、灰分が7%以上12%以下の記録用紙であって、
上記パルプ繊維層として、高灰分層及びこの高灰分層に隣接する低灰分層を有し、
上記高灰分層の灰分と低灰分層の灰分との差が3%以上であることを特徴とする記録用紙。
【請求項2】
上記パルプ繊維層として、表層、2層以上の中間層及び裏層をこの順に有し、
上記高灰分層と低灰分層とを共に中間層に有する請求項1に記載の記録用紙。
【請求項3】
上記高灰分層の坪量が40g/m以上70g/m以下であり、
上記低灰分層の坪量が20g/m以上40g/m以下である請求項1又は請求項2に記載の記録用紙。
【請求項4】
厚みが120μm以上250μm以下であり、坪量が100g/m以上200g/m以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の記録用紙。


【図1】
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