説明

記録装置、および、記録装置の制御方法

【課題】複数のシートからなる感圧複写紙に押圧力を加えて記録を行う際に、上層のシートにおいて記録内容が認識しにくい形態で、下層のシートに記録を行うことが可能な記録装置、及び、記録装置の制御方法を提供する。
【解決手段】複写紙100に記録を行うプリンター2は、複写紙100を搬送する搬送機構と、複写紙100の表層に打圧力を加えて発色させる第1記録部4と、複写紙100の表層にインクを付着させる第2記録部5とを備え、CPU21により、第2記録部5による記録を実行する際に、少なくとも第1記録部4が記録する範囲の一部に重ねて記録を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インパクトヘッドにより記録を行う記録装置、および、この記録装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、感圧複写紙に記録を行う記録装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この複写紙は、複葉のシートで構成され、各シートには圧力により発色する発色剤や圧力を受けて他のシートに色移りするカーボン等が付着しており、上層のシートに押圧力が加わると、この押圧力を受けた箇所で発色剤やカーボンの作用により下層のシートが発色する構成となっている。このため、インパクトヘッドにより上層のシートに文字等が打突記録されると、同じ文字等が下層のシートにも現れるので、1回の打突により複数のシートに文字を記録できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−8526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、感圧複写紙においてはインパクトヘッドによる打突の跡が残るため、下層のシートのみに文字等を記録することは困難であった。すなわち、感圧複写紙にインパクトヘッドにより打突すれば、ほぼ全てのシートに打突力による凹みが形成されるため、仮にインパクトヘッドが上層のシートにインク等を付着させなかったとしても、凹みの形状等から記録された文字等を認識できてしまう可能性がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、複数のシートからなる感圧複写紙に押圧力を加えて記録を行う際に、上層のシートにおいて記録内容が認識しにくい形態で、下層のシートに記録を行うことが可能な記録装置、及び、記録装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、複数層のシートからなり、表面に対する圧力により少なくとも表層以外のシートの一部が発色するよう構成された感圧記録媒体に記録を行う記録装置であって、前記感圧記録媒体を搬送する搬送手段と、前記感圧記録媒体の表層に打圧力を加えて発色させる第1記録手段と、前記感圧記録媒体の表層にインクを付着させる第2記録手段と、前記第2記録手段による記録を実行する際に、少なくとも前記第1記録手段が記録する範囲の一部に重ねて記録を実行する記録制御手段とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、複数層のシートからなる感圧記録媒体の表層に打圧力を加えるとともに、この打圧力を加える範囲の少なくとも一部に重ねて、表層にインクを付着させることができる。これにより、打圧力により表層より下層のシートを発色させて文字、記号または画像等を記録する一方、表層のシートにおいては、記録された文字、記号または画像等をインクにより覆い隠し、認識しにくくすることができる。
【0006】
また、本発明は、上記記録装置において、前記第1記録手段は、記録ワイヤーと、前記記録ワイヤーを打突する機構とを備え、前記感圧記録媒体の表層に向け前記記録ワイヤーにより打突するドットインパクトヘッドを備えて構成されることを特徴とする。
本発明によれば、ドットインパクトヘッドが記録ワイヤーを打突することにより感圧記録媒体に圧力を加え、確実に発色させることができる。また、この記録ワイヤーによる打突の跡を、インクを付着させることにより、効果的に、視認しにくくすることができる。
【0007】
また、本発明は、上記記録装置において、前記記録制御手段は、前記感圧記録媒体の表層に前記第1記録手段が前記記録ワイヤーを打突する位置に応じて、前記第2記録手段によりインクを付着させる位置を決定することを特徴とする。
本発明によれば、記録ワイヤーが打突する位置に応じてインクを付着させる位置を決定することで、より一層、感圧記録媒体の表層における記録ワイヤーの打突跡を見にくくすることができる。
【0008】
また、本発明は、上記記録装置において、前記第1記録手段は、前記感圧記録媒体の搬送経路において前記第2記録手段よりも上流側に位置することを特徴とする。
本発明によれば、感圧記録媒体を打突してから、表層にインクを付着させるので、インクを付着させてから打突する場合に比べ、インクが打突時に剥落するおそれがなく、より確実に、打突した位置を視認しにくくすることができる。
【0009】
また、本発明は、上記記録装置において、前記第2記録手段は、前記感圧記録媒体の表層にインクを噴射するインクジェット式記録ヘッド、または昇華性若しくは熱溶融性のインクを加熱して前記感圧記録媒体の表層に付着させる熱昇華型若しくは熱転写型の記録ヘッドを備えて構成されることを特徴とする。
本発明によれば、打突しない方式の記録ヘッドを用いて、感圧記録媒体の表層にのみ、より確実にインクを付着させることができ、打突力が加わった痕跡を視認しにくくすることができる。また、感圧記録媒体以外の記録媒体に対してもインクを用いて記録を行うことができる。
【0010】
また、本発明は、上記記録装置において、外部の装置から送信される記録データを受信する受信手段を備え、前記記録制御手段は、前記第1記録手段が記録する記録データを前記受信手段によって受信した場合に、受信した前記記録データに基づいて前記第2記録手段が記録する記録データを生成することを特徴とする。
本発明によれば、インクを付着させるためのデータが外部の装置から入力されなくても、打突力によって感圧記録媒体に記録を行う場合に、この打突による記録の位置に重ねてインクを付着させることができる。
【0011】
また、上記目的を達成するために、本発明は、複数層のシートからなり、表面に対する圧力により少なくとも表層以外のシートの一部が発色するよう構成された感圧記録媒体に記録を行う記録装置の制御方法であって、前記感圧記録媒体を搬送する搬送手段と、前記感圧記録媒体の表層に打圧力を加えて発色させる第1記録手段と、前記感圧記録媒体の表層にインクを付着させる第2記録手段とを備える前記記録装置を制御し、前記第2記録手段による記録を実行する際に、少なくとも前記第1記録手段が記録する範囲の一部に重ねて記録を実行することを特徴とする。
本発明の制御方法を実行することにより、複数層のシートからなる感圧記録媒体の表層に打圧力を加えるとともに、この打圧力を加える範囲に重ねて、表層にインクを付着させることができる。これにより、打圧力により表層より下層のシートを発色させて文字、記号または画像等を記録する一方、表層のシートにおいては、記録された文字、記号または画像等をインクにより覆い隠し、認識しにくくすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数層のシートからなる感圧記録媒体の表層より下層のシートを発色させて、文字、記号または画像等を記録する一方、表層のシートにおいては、記録された文字、記号または画像等をインクにより覆い隠し、認識しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る記録システムの構成を示すブロック図である。
【図2】プリンターの記録部及び搬送機構の概略構成を示す要部側面図である。
【図3】プリンターにより記録される感圧複写紙の構成例を示す斜視図である。
【図4】記録後の感圧複写紙の状態を示す平面図である。
【図5】プリンターがダミー画像を形成する様子を示す説明図である。
【図6】記録されたドットとダミー画像のドットとの対比を示す側面視図である。
【図7】プリンターの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明を適用した実施形態に係る記録システム1の構成を示すブロック図である。
記録システム1は、プリンター2にホストコンピューター10を接続して構成され、プリンター2がホストコンピューター10の制御によって記録物(印刷物)を発行する。記録装置としてのプリンター2は、複数のシートを重ねて構成され、表面から押圧力を受けた場合に少なくとも1枚のシートが発色するよう構成された複写紙100(感圧記録媒体)に記録を行う。まず、プリンター2の機械的構成について概略を説明する。
【0015】
図2は、プリンター2の記録部及び搬送機構の概略構成を示す要部側面図である。
プリンター2は、複写紙100を搬送する搬送機構を構成する第1搬送部35,36及び第3搬送部37を備えている。第1搬送部35は、複写紙100の上面すなわち記録面側に位置する従動ローラー38と、複写紙100の下面側に位置する駆動ローラー39とが、複写紙100の搬送路を挟んで対向配置されて構成される。従動ローラー38と駆動ローラー39とは図示しないばね等の付勢機構により、互いに近接する方向に付勢されており、複写紙100は従動ローラー38と駆動ローラー39との間に挟持される。従動ローラー38は回転自在な従動ローラーである一方、駆動ローラー39は後述する搬送モーター33(図1)に連結され、搬送モーター33の回転力により駆動されて、複写紙100を図中符号Fで示す方向に搬送する。従動ローラー38は、直接または複写紙100を介して、駆動ローラー39に圧接しており、駆動ローラー39とともに回転して複写紙100を搬送する。このように、第1搬送部35は複写紙100を搬送し、第2搬送部36及び第3搬送部37は、第1搬送部35と同様に従動ローラー38及び駆動ローラー39を備えて構成され、同様に複写紙100を搬送する。つまり、プリンター2は、複写紙100を搬送する搬送機構(搬送手段)として、搬送モーター33により一斉に駆動される3つの第1搬送部35、第2搬送部36及び第3搬送部37を備えている。この搬送機構には搬送モーター33も含まれる。
【0016】
第1搬送部35と第2搬送部36との間には、ドットインパクトヘッド40を備えた第1記録部4(第1記録手段)が配置されている。ドットインパクトヘッド40は、記録ワイヤー41を突出させるワイヤー駆動部42を有し、このワイヤー駆動部42によってインクリボン(図示略)を介して記録ワイヤー41を複写紙100に対して打突することで、複写紙100の表面を打突する。ワイヤー駆動部42は、例えば複数本の記録ワイヤー41と、これら記録ワイヤー41を上昇位置に保持するばねと、記録ワイヤー41を図中下方へ押し出すソレノイド等を備える。
ドットインパクトヘッド40は、キャリッジ44に搭載されている。キャリッジ44は、後述するキャリッジ駆動モーター46(図1)の正転及び逆転動作によって、キャリッジガイド軸45に沿って往復走査される。キャリッジガイド軸45は、複写紙100の幅方向、すなわち搬送方向に直交する方向(図2中奥行き方向)に延設されているので、440は複写紙100の幅方向に走査しながら複写紙100の表面に記録ワイヤー41を突出する。また、複写紙100の下面側にはドットインパクトヘッド40の記録ワイヤー41が突出するワイヤー突出面に対向して、プラテン48が配置される。プラテン48はばね49によって上向きに付勢され、記録ワイヤー41の突出力を受け止める。また、キャリッジ44は、ワイヤー駆動部42の側方において従動ローラー38を押圧するガイドローラー43を備え、このガイドローラー43により、ワイヤー突出面と複写紙100との間のギャップが適正な大きさに保たれる。
【0017】
ドットインパクトヘッド40の下流側には第2搬送部36が配置され、さらに下流側にはインクジェット式記録ヘッド50を備えた第2記録部5(第2記録手段)が設けられている。インクジェット式記録ヘッド50は、インクカートリッジ52内の流動性のインクを、図示しないピエゾ素子により加圧して、ノズル部51から複写紙100の表面すなわち記録面に噴射することで、複写紙100に文字や画像等を記録する。インクジェット式記録ヘッド50はキャリッジ53に搭載され、キャリッジ53は、キャリッジ駆動モーター55(図1)の正転及び逆転動作によって、キャリッジガイド軸54に沿って往復走査される。キャリッジガイド軸54はキャリッジガイド軸45と平行に、複写紙100の搬送方向に直交する方向(図2中奥行き方向)に延設されている。このため、インクジェット式記録ヘッド50はドットインパクトヘッド40と同様に、複写紙100の幅方向に走査しながら複写紙100の表面にインクを噴射して付着させる。
ノズル部51が配置されたインク吐出面に対向して、複写紙100の下側には板状のプラテン58が配置されている。インクジェット式記録ヘッド50の下流には第3搬送部37が配置されており、ドットインパクトヘッド40及びインクジェット式記録ヘッド50の各々の上流側及び下流側に搬送部が位置する構成となっている。
【0018】
図1に示すように、プリンター2は、所定の制御プログラムを実行して各種データを処理することによりプリンター2の各部を制御するCPU21、CPU21が実行する制御プログラム、及び、プリンター2の動作に関する設定値等のデータを記憶した不揮発性メモリー22、CPU21が実行するプログラムや処理対象のデータ等を一時的に記憶するワークエリアを形成するRAM23、CPU21の制御に従って後述する各モーターを駆動するモータードライバー24、及び、CPU21の制御に従って後述するサーマルヘッドを駆動するヘッドドライバー25を備えている。
【0019】
モータードライバー24は、例えばステッピングモーターで構成される搬送モーター33、2つのキャリッジ駆動モーター46、55に接続されている。モータードライバー24は、CPU21の制御に従って搬送モーター33に駆動パルスと駆動電流を供給し、搬送モーター33を必要量だけ回転させて、第1搬送部35、第2搬送部36及び第3搬送部37を駆動し、複写紙100を搬送する。また、モータードライバー24は、キャリッジ駆動モーター46、55に駆動パルスと駆動電流を供給して、キャリッジ44及びキャリッジ53を複写紙100上で移動させる。なお、モータードライバー24は、図中の搬送方向Fに沿って複写紙100を搬送するだけでなく、逆方向に複写紙100を搬送することも可能である。
ヘッドドライバー25は、ドットインパクトヘッド40及びインクジェット式記録ヘッド50の2つの記録ヘッドに接続され、ドットインパクトヘッド40が備えるワイヤー駆動部42のソレノイド(図示略)、及び、インクジェット式記録ヘッド50が備えるピエゾ素子(図示略)に電力を供給して、複写紙100への記録を実行させる。
ドットインパクトヘッド40及びキャリッジ駆動モーター46は第1記録部4(第1記録手段)を構成し、インクジェット式記録ヘッド50及びキャリッジ駆動モーター55は第2記録部5(第2記録手段)を構成する。
【0020】
また、プリンター2は、本体外面に紙送りスイッチ等のスイッチ及びLED表示部を備えた操作パネル(図示略)を備えており、操作パネルのスイッチ操作を検出する入力部26及びLED表示部を制御して各種表示を行わせる表示部27がCPU21に接続されている。さらに、CPU21には、複写紙100の搬送路上において複写紙100の先端及び後端を検出する紙端センサー31と、複写紙100の幅方向の端部を検出する紙幅センサー32とが接続されている。これら紙端センサー31及び紙幅センサー32により、CPU21は、複写紙100の幅と長さとを検出できる。他にも、プリンター2は、ホストコンピューター10に接続され、ホストコンピューター10との間のコマンドやデータの送受信を制御する受信手段としてのインターフェース28、及び、その他の図示しない機能部を備え、これらはCPU21に接続されている。
【0021】
図3は複写紙100の構成例を示す斜視図である。
この図3に例示するように、プリンター2が記録媒体として使用する複写紙100は複数のシートを重ねて構成される。最も上すなわち表側に位置する上シート101は、ドットインパクトヘッド40及びインクジェット式記録ヘッド50による記録が可能であり、例えば普通紙またはインクジェット用紙など、インクによる記録が可能なシートで構成される。上シート101の下に配置される下シート102には、上シート101の表面に押圧力を加えることで記録可能となっている。図3の例では、下シート102に設けられた記録欄103に対応して、上シート101の裏面に、カーボンインク104が付着している。カーボンインク104は記録欄103に重なる位置に定着されていて、通常時において記録欄103に接触し、このカーボンインク104の裏側を記録ワイヤー41が打突すると、その打突力によりカーボンインク104が記録欄103に濃く付着する。これにより、ドットインパクトヘッド40によって下シート102の記録欄103に記録できる。
【0022】
なお、カーボンインク104を用いないで、複写紙100を構成することも可能である。上シート101の裏面に、染料を含んだマイクロカプセルを含む発色剤を付着させる一方、下シート102の表面に顕色剤を付着させた場合、上シート101が押圧力を受けることで発色剤と顕色剤との反応によって下シート102が発色する。また、複写紙100は2層の複写紙に限らず、より多層のシートからなる複写紙を用いることも可能である。この場合も、表層を除く各層に、ドットインパクトヘッド40の押圧力による記録が行える構成となっている。
【0023】
以上のように構成されるプリンター2が備えるCPU21は、記録制御手段として機能し、モータードライバー24及びヘッドドライバー25を制御することで、複写紙100に対する記録を行う。複写紙100は感圧複写紙であるから、ドットインパクトヘッド40によって下シート102の記録欄103に文字や画像等を記録できる。また、上シート101にはインクリボンのインクが付着するから、上シート101には、記録欄103に記録したものと同じ文字や画像が認識できる。仮に、ドットインパクトヘッド40にインクリボンを装着せず記録を行っても、上シート101の表面には記録ワイヤー41の打突跡が残る。
【0024】
ところで、個人情報やパスワード等の秘密にするべき情報を記録する場合に、上シート101に記録内容が見えないように、下シート102のみに記録を行うことができれば、上シート101が記録欄103を覆い隠すカバーとなるため、内容がわからないように文字等を記録できる。この場合、プリンター2から記録後の複写紙100が排出される時点で記録内容が視認できないので、高い秘匿性を確保できるという通常の記録装置では実現できない効果がある。
そこで、CPU21は、記録内容が下シート102においてのみ視認できるように、ドットインパクトヘッド40及びインクジェット式記録ヘッド50の両方を用いた記録を行う。すなわち、CPU21はドットインパクトヘッド40による記録欄103への記録を行った後に、記録欄103に対応する位置にインクジェット式記録ヘッド50によりインクを吐出し、記録内容を隠すようなダミー画像を記録する。このダミー画像により、上シート101に残ったインクリボンのインクや記録ワイヤー41の打突跡を隠蔽することができる。
【0025】
図4は、記録後の複写紙100の状態の一例を示す平面図であり、(A)は上シート101の状態を示し、(B)は下シート102の状態を示す。
図4(B)に示すように、下シート102の記録欄103には、カーボンインク104または発色剤によって鮮明に、例えば「ABC」という文字が記録されている。もちろん画像や記号等を記録欄103に記録することも可能である。一方、図4(A)に示すように、上シート101においては、ドットインパクトヘッド40が記録欄103に記録を行った位置に重なる領域(範囲)に、インクジェット式記録ヘッド50がインクを吐出して、ダミー画像105を形成している。ダミー画像105は、記録ワイヤー41が上シート101の表面を打突した痕跡を覆っているので、上シート101上からは、記録欄103に何が記録されたかを視認できない。
CPU21は、ダミー画像105のデータを、ホストコンピューター10からドットインパクトヘッド40による記録を行うために送信されたデータに基づき、自動的に生成する。
【0026】
上述のように、インクジェット式記録ヘッド50は、複写紙100の搬送路においてドットインパクトヘッド40よりも下流側に位置しているので、記録ワイヤー41の打突の後からインクが吐出される。このため、記録ワイヤー41の打突跡を確実に隠蔽できる。また、インクジェット式記録ヘッド50が吐出したインクに対して記録ワイヤー41が打突される場合とは異なり、ダミー画像105のインクが削れる等の懸念がない。
【0027】
さらに、ドットインパクトヘッド40が記録した位置に重ねて形成されるダミー画像105を、記録ワイヤー41の打突位置に合わせて調整することで、打突跡をより見にくくする効果が期待できる。
図5は、プリンター2がダミー画像105を形成する様子の一例を示す説明図であり、(A)は記録ワイヤー41が記録する画像110のドットの構成を示し、(B)は画像110のドットの構成に基づきダミー画像のドットを調整する様子を示し、(C)は形成されたダミー画像112のドットの構成を示す。
また、図6は複写紙100の記録欄103に記録された画像のドットとダミー画像105のドットとの対比を模式的に示す側面視図である。
【0028】
プリンター2のCPU21は、第1記録部4によって記録欄103に記録すべき文字、記号あるいは画像(ここでは画像と総称する)のデータを、インターフェース28を介してホストコンピューター10から受信すると、このデータに基づいてドットインパクトヘッド40が記録する画像をRAM23に展開する。
RAM23に展開された画像は、図5(A)に例示する画像110のように、ドットインパクトヘッド40が備える記録ワイヤー41により形成するドットの集合である。この画像110を記録すると、複写紙100の上シート101にも、記録ワイヤー41の打突により画像110が記録される。インクリボンの使用時にはインクによりドットが形成去れ、インクリボンの非使用時には記録ワイヤー41の打突跡によりドットが形成される。この上シート101の表面に形成される画像110に重ねて、第2記録部5がインクを一様に吐出してベタ塗り状態のダミー画像を形成すると、画像110の視認性は低下する。
【0029】
このダミー画像112はベタ塗り状態に限定されない。例えば、第2記録部5が吐出するインクによって複雑なドットパターンを有するダミー画像112を形成すると、記録ワイヤー41の打突による凹みや、第1記録部4が使用したインクの色み等がより一層目立たなくなり、上シート101上から記録欄103に記録された内容を認識することはほぼ不可能となる。
具体的には、図5(B)に示すように、画像110の周囲において、予め設定された割合でドットと空白とを配置し、配置されたドットと画像110のドットとを合わせることで、図5(C)に示すように、画像110を覆い隠すとともに適当な空白を有するダミー画像112のドットパターンを形成できる。なお、画像110の周囲にドットを配置する場合に、画像110のドットに隣接する位置と、画像110のドットから離れた位置とで、空白とドットの割合が変わるようにしてもよい。また、画像110の大きさに合わせてダミー画像112の大きさを調整してもよいし、記録欄103に合わせたサイズのダミー画像112を常に用いてもよい。
このようなダミー画像112を生成して、第1記録部4の記録後に第2記録部5がダミー画像112を記録すれば、第1記録部4による記録内容が外から見えないように、複写紙100の下シート102にのみ記録を行える。
【0030】
図7は、プリンター2の動作を示すフローチャートである。
プリンター2のCPU21は、ホストコンピューター10から送信される記録指示コマンドと、記録用のデータとを受信し(ステップS11)、記録対象の記録媒体が複写紙100のような感圧式の記録媒体であるか否かを判別する(ステップS12)。プリンター2が備えるドットインパクトヘッド40及びインクジェット式記録ヘッド50は、複写紙だけでなく、1枚の普通紙からなるカットシートにも、ロール状に巻かれたロール紙やファンフォールド紙などの連続シートにも、記録を行うことができる。CPU21は、ダミー画像105の要否を判別するため、記録を実行する前に記録媒体の種類を判別する。具体的な判別方法は、例えば、ホストコンピューター10から受信した記録指示コマンドが指定する記録媒体の種類に基づいて判別する方法、或いは、不揮発性メモリー22に記憶されている記録媒体の種類に関する設定値に基づいて判別する方法である。
【0031】
記録対象の記録媒体が複写紙である場合(ステップS12;Yes)、CPU21は、ホストコンピューター10から受信した記録指示コマンドにより指定された記録位置、或いは記録データに含まれる記録位置のデータ等に基づいて、記録する領域の位置およびサイズを取得する(ステップS13。さらに、CPU21は、ホストコンピューター10から受信した記録データをRAM23に展開して、ドットインパクトヘッド40及び/又はインクジェット式記録ヘッド50により記録する文字、記号あるいは画像のイメージを生成する(ステップS14)。
【0032】
ここで、CPU21は、ホストコンピューター10から受信した記録データの中に、ドットインパクトヘッド40が記録した領域に、インクジェット式記録ヘッド50が重ねて記録するデータがあるか否かを判別する(ステップS15)。重ねて記録するデータがない場合(ステップS15;No)、CPU21は、ドットインパクトヘッド40が記録する範囲をカバーする位置及びサイズのダミー画像のデータを生成し(ステップS16)、このデータを、例えば図5(A)〜(C)を参照して説明したように、ドットインパクトヘッド40が形成するドットに合わせて加工する(ステップS17)。この加工後のデータに従って、インクジェット式記録ヘッド50が、ドットインパクトヘッド40が記録した領域の少なくとも一部に重ねてダミー画像を記録することになる。
【0033】
その後、CPU21は、ドットインパクトヘッド40により記録を実行し(ステップS18)、記録媒体を搬送して、下流側に位置するインクジェット式記録ヘッド50により記録を実行し(ステップS19)、本処理を終了する。
【0034】
一方、ホストコンピューター10から受信した記録データの中に、ドットインパクトヘッド40が記録した領域に、インクジェット式記録ヘッド50によっても重ねて記録するデータがある場合(ステップS15;Yes)、CPU21は、そのままステップS18に移行する。この場合、ドットインパクトヘッド40が記録する領域に重なるようにインクジェット式記録ヘッド50が記録すべきデータがあり、このデータはダミー画像ではない。このため、ダミー画像を生成すると、本来インクジェット式記録ヘッド50が記録すべき文字や画像を記録できなくなる。
また、記録媒体が複写紙でない場合(ステップS12;No)、CPU21は、ホストコンピューター10から受信したデータをRAM23に展開して、ドットインパクトヘッド40及び/又はインクジェット式記録ヘッド50により形成するドットのイメージを生成し(ステップS20)、ステップS18に移行して記録を実行する。
【0035】
以上のように、本発明を適用した実施形態に係る記録システム1を構成するプリンター2は、複数層のシートからなり、表面に対する圧力により少なくとも表層以外のシートの一部が発色するよう構成された複写紙100に記録を行うプリンター2は、複写紙100を搬送する搬送機構と、複写紙100の表層に打圧力を加えて発色させる第1記録部4と、複写紙100の表層にインクを付着させる第2記録部5とを備え、CPU21により、第2記録部5による記録を実行する際に、少なくとも第1記録部4が記録する範囲の一部に重ねて記録を実行するので、複数層のシートからなる複写紙100の表層に打圧力を加えるとともに、この打圧力を加える範囲に重ねて、表層にインクを付着させることができる。これにより、打圧力によって下層のシートを発色させて文字、記号または画像等を記録する一方で、表層のシートにおいては、記録された文字、記号または画像等をインクにより覆い隠し、認識しにくくすることができる。
【0036】
また、第1記録部4は、記録ワイヤー41と、記録ワイヤー41を打突するワイヤー駆動部42とを備え、複写紙100の表層に向け記録ワイヤー41により打突するドットインパクトヘッド40を備えて構成されるので、記録ワイヤー41を打突することにより複写紙100に圧力を加え、確実に発色させることができる。また、この記録ワイヤー41による打突の跡に第2記録部5によってインクを付着させることで、効果的に、視認しにくくすることができる。
【0037】
また、CPU21は、複写紙100の表層に第1記録部4が記録ワイヤー41を打突する位置に応じて、第2記録部5によりインクを付着させる位置を決定するので、複写紙100の表層における記録ワイヤー41の打突跡を、より目立ちにくくすることができる。
また、第1記録部4は、複写紙100の搬送経路において第2記録部5よりも上流側に位置するので、複写紙100を打突してから表層にインクを付着させることになる。このため、インクを付着させてから打突する場合に比べ、インクが打突時に剥落するおそれがなく、より確実に、打突の跡を視認しにくくすることができる。
【0038】
また、第2記録部5は、複写紙100の表層にインクを噴射するインクジェット式記録ヘッド50を備えて構成されるので、より確実に、複写紙100の表層にインクを付着させることができ、打突力が加わった痕跡を視認しにくくすることができる。また、複写紙100以外の複写紙100に対してもインクを用いて記録を行うことができる。
ここで、インクジェット式記録ヘッド50に代えて、昇華性若しくは熱溶融性のインクを加熱して複写紙100の表層に付着させる熱昇華型若しくは熱転写型の記録ヘッドを用いてもよく、インクジェット式記録ヘッド50と同様の効果が得られる。これらの場合、記録ヘッドは、サーマル方式のものとなり、インクリボンを用い、インクリボンを搬送する機構も備える。
さらに、ホストコンピューター10から送信される記録データを受信するインターフェース28を備え、CPU21は、第1記録部4が記録する記録データをインターフェース28によって受信した場合に、受信した記録データに基づいて第2記録部5が記録する記録データを生成するので、インクを付着させるためのデータがホストコンピューター10から入力されなくても、ドットインパクトヘッド40によって複写紙100に記録を行う場合に、この打突による記録の位置に重ねてインクを付着させることができる。
【0039】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能である。例えば、上記実施の形態においては、直線状の搬送路の上流から、第1搬送部35、第1記録部4、第2搬送部36、第2記録部5、及び第3搬送部37の順に配置し、複写紙100が搬送方向Fに一方向で搬送される構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば一つの挿入排出口から複写紙100を挿入し、この複写紙100を往復搬送して上記挿入排出口から排出する構成としてもよく、この場合には、ドットインパクトヘッド40が記録する場合の搬送方向において、インクジェット式記録ヘッド50よりもドットインパクトヘッド40が上流側に位置していればよい。また、搬送機構を構成するモーター及びローラーの数は任意であり、例えば、第1記録部4がローラープラテンを備え、このローラープラテンが搬送機構の一部を構成してもよい。また、上記実施形態では、第2記録部5のインクジェット式記録ヘッド50によって記録する際に、第1記録部4のドットインパクトヘッド40により記録した記録欄103の全体を覆うように、ダミー画像105を記録する例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ドットインパクトヘッド40により記録した範囲の一部に重ねてインクジェット式記録ヘッド50によって記録を行ってもよい。例えば、ドットインパクトヘッド40によって秘匿する必要の無い情報と、秘匿すべき情報とを記録した場合に、秘匿すべき情報が記録された領域のみ、インクジェット式記録ヘッド50によってダミー画像を記録してもよい。さらに、上記実施形態では、ホストコンピューター10とプリンター2とが一対一で接続され、このホストコンピューター10から入力されるコマンド及びデータに従ってプリンター2が記録を行う構成を例に挙げて説明したが、プリンター2に対して複数のホストコンピューター10を接続する構成としてもよい。また、プリンター2においてCPU21が実行する動作を制御するプログラムを不揮発性メモリー22に記憶する構成に限らず、通信回線を介してプリンター2に接続された記憶装置や、外部の記録媒体からCPU21が上記プログラムを読み取って実行してもよい。
また、上記実施の形態においては、本発明をプリンター2及びプリンター2を有する記録システム1に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、他の機器(複写機等)に組み込まれた記録装置に適用することも可能である。その他、上記実施の形態に係る他の細部構成についても、任意に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0040】
1…記録システム、2…プリンター(記録装置)、5…ホストコンピューター(外部の装置)、4…第1記録部(第1記録手段)、5…第2記録部(第2記録手段)、21…CPU(記録制御手段)、28…インターフェース(受信手段)、33…搬送モーター(搬送手段)、35…第1搬送部(搬送手段)、36…第2搬送部(搬送手段)、37…第3搬送部(搬送手段)、40…ドットインパクトヘッド、41…記録ワイヤー、42…ワイヤー駆動部、50…インクジェット式記録ヘッド、100…複写紙(感圧式複写紙)、101…上シート、102…下シート、103…記録欄、105…ダミー画像、F…搬送方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数層のシートからなり、表面に対する圧力により少なくとも表層以外のシートの一部が発色するよう構成された感圧記録媒体に記録を行う記録装置であって、
前記感圧記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記感圧記録媒体の表層に打圧力を加えて発色させる第1記録手段と、前記感圧記録媒体の表層にインクを付着させる第2記録手段と、
前記第2記録手段による記録を実行する際に、少なくとも前記第1記録手段が記録する範囲の一部に重ねて記録を実行する記録制御手段と、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記第1記録手段は、記録ワイヤーと、前記記録ワイヤーを打突する機構とを備え、前記感圧記録媒体の表層に向け前記記録ワイヤーにより打突するドットインパクトヘッドを備えて構成されることを特徴とする請求項1記載の記録装置。
【請求項3】
前記記録制御手段は、前記感圧記録媒体の表層に前記第1記録手段が前記記録ワイヤーを打突する位置に応じて、前記第2記録手段によりインクを付着させる位置を決定することを特徴とする請求項2記載の記録装置。
【請求項4】
前記第1記録手段は、前記感圧記録媒体の搬送経路において前記第2記録手段よりも上流側に位置することを特徴とする請求項3記載の記録装置。
【請求項5】
前記第2記録手段は、前記感圧記録媒体の表層にインクを噴射するインクジェット式記録ヘッド、または昇華性若しくは熱溶融性のインクを加熱して前記感圧記録媒体の表層に付着させる熱昇華型若しくは熱転写型の記録ヘッドを備えて構成されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の記録装置。
【請求項6】
外部の装置から送信される記録データを受信する受信手段を備え、
前記記録制御手段は、前記第1記録手段が記録する記録データを前記受信手段によって受信した場合に、受信した前記記録データに基づいて前記第2記録手段が記録する記録データを生成することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の記録装置。
【請求項7】
複数層のシートからなり、表面に対する圧力により少なくとも表層以外のシートの一部が発色するよう構成された感圧記録媒体に記録を行う記録装置の制御方法であって、
前記感圧記録媒体を搬送する搬送手段と、前記感圧記録媒体の表層に打圧力を加えて発色させる第1記録手段と、前記感圧記録媒体の表層にインクを付着させる第2記録手段とを備える前記記録装置を制御し、
前記第2記録手段による記録を実行する際に、少なくとも前記第1記録手段が記録する範囲の一部に重ねて記録を実行すること、
を特徴とする記録装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−162054(P2012−162054A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25934(P2011−25934)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】