説明

記録装置、入力装置および記録システム

【課題】入力装置により形成される像と記録装置により形成される像との位置のずれを低減する。
【解決手段】取得手段11は、電子ペーパ20に光を照射する光ペン30の位置を取得する。取得手段12は、光ペン30の光軸の、電子ペーパ20の表面に対する傾きを取得する。算出手段13は、取得手段11により取得された光ペン30の位置、取得手段12により取得された傾き、および電子ペーパ20内の特定の層の厚みに基づいて、表示層における描画すべき位置(後述の結像位置)を算出する。露光手段14は、表示層のうち、算出手段13により算出された位置に対応する部分を露光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置、入力装置および記録システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ペン型の入力装置を用いて、表示装置に軌跡を表示したり、位置を検出したりする技術が知られている。特許文献1は、なぞられた位置に筆跡を表示する液晶パネルにおいて、光センサと画素電極とをマトリクス状に配置し、これらと対向電極基板とで液晶層を挟む構造を開示している。特許文献2は、ペンタブレットシステムにおいて、ペンの傾きを検出し出力電位を校正することにより、より正確な座標を算出する技術を開示している。特許文献3は、ペンタブレットシステムにおいて、ペンの傾きを検出し出力電位を校正することにより、ペン先の位置と検知した座標のずれを防ぐ技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−259346号公報
【特許文献2】特開平6−175771号公報
【特許文献3】特開平5−241715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、入力装置および記録装置を用いて追記を行う光書き込み型の記録媒体において、入力装置により形成される像と記録装置により形成される像との位置のずれを低減する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る記録装置は、表示面と、前記表示面の背面側に設けられ、印加される電圧および前記表示面を介して照射される光に応じて表示が変化する表示層と、前記表示面と前記表示層との間に設けられた他の層とを有する表示媒体に、前記光を照射する入力装置の位置を取得する第1の取得手段と、前記光の光軸の、前記表示面に対する傾きを取得する第2の取得手段と、前記第1の取得手段により取得された前記入力装置の位置、前記第2の取得手段により取得された前記傾き、および前記他の層の厚みに基づいて、前記表示層の描画すべき位置を算出する算出手段と、前記表示層のうち、前記算出手段により算出された位置に対応する部分を露光する露光手段とを有する。
【0006】
請求項2に係る記録装置は、請求項1に係る記録装置において、前記表示媒体が、前記光の照射に応じて電気的特性が変化する感光層を有し、前記算出手段は、前記入力装置の位置を通り前記傾きを有する直線が前記感光層とぶつかる領域が前記表示面上に射影される位置を、前記描画すべき位置として算出することを特徴とする。
【0007】
請求項3に係る記録装置は、請求項2に係る記録装置において、前記算出手段は、前記表示面上において、前記射影される位置と前記入力装置の位置とを結ぶ線分を前記表示層に射影した線分上の位置を、前記描画すべき位置として算出することを特徴とする。
【0008】
請求項4に係る記録装置は、請求項1−3のいずれかに係る記録装置において、前記入力装置が照射する前記光の強度を制御する制御手段を有し、前記傾きが、前記表示面の法線に対する前記光軸の傾きであり、前記制御手段は、前記傾きがa1およびa2のとき(a1<a2)の強度P1および強度P2が、P1<P2となるように前記光の強度を制御することを特徴とする。
【0009】
請求項5に係る入力装置は、表示面と、前記表示面の背面側に設けられ、印加される電圧および前記表示面を介して照射される光に応じて表示が変化する表示層と、前記表示面と前記表示層との間に設けられた他の層とを有する表示媒体に、前記光を照射する光照射手段と、前記光照射手段の位置を取得する第1の取得手段と、前記光の光軸の、前記表示面に対する傾きを取得する第2の取得手段と、前記第1の取得手段により取得された前記入力装置の位置、前記第2の取得手段により取得された前記傾き、および前記他の層の厚みに基づいて、前記表示層の描画すべき位置を算出する算出手段と、前記表示層のうち、前記算出手段により算出された位置に対応する部分を露光する露光手段に、前記算出手段により算出された位置を示す情報を出力する出力手段とを有する。
【0010】
請求項6に係る入力装置は、請求項5に係る入力装置において、前記表示媒体が、前記光の照射に応じて電気的特性が変化する感光層を有し、前記算出手段は、前記光照射手段の位置を通り前記傾きを有する直線が前記感光層とぶつかる領域が前記表示面上に射影される位置を、前記描画すべき位置として算出することを特徴とする。
【0011】
請求項7に係る入力装置は、請求項6に係る入力装置において、前記算出手段は、前記表示面上において、前記射影される位置と前記光照射手段の位置とを結ぶ線分を前記表示層に射影した線分上の位置を、前記描画すべき位置として算出することを特徴とする。
【0012】
請求項8に係る入力装置は、請求項5−7のいずれかに係る入力装置において、前記光照射手段が照射する前記光の強度を制御する制御手段を有し、前記傾きが、前記表示面の法線に対する前記光軸の傾きであり、前記制御手段は、前記傾きがa1およびa2のとき(a1<a2)の強度P1および強度P2が、P1<P2となるように前記光の強度を制御することを特徴とする。
【0013】
請求項9に係る記録システムは、請求項1−4のいずれかに係る記録装置と、前記入力装置とを有する。
【0014】
請求項10に係る記録システムは、請求項5−8のいずれかに係る入力装置と、前記露光手段を有する記録装置とを有する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る記録装置によれば、入力装置の位置に記録装置から追記を行う構成と比較して、入力装置により形成される像と記録装置により形成される像との位置のずれが低減される。
請求項2に係る記録装置によれば、記録装置により形成される像が、入力装置により形成される像と同じ位置に形成される。
請求項3に係る記録装置によれば、入力装置の位置に像が形成される。
請求項4に係る記録装置によれば、光の強度を制御する手段を有しない場合と比較して、記録媒体の単位面積あたりの光強度の変動が抑制される。
請求項5に係る入力によれば、入力装置の位置に記録装置から追記を行う構成と比較して、入力装置により形成される像と記録装置により形成される像との位置のずれが低減される。
請求項6に係る入力装置によれば、記録装置により形成される像が、入力装置により形成される像と同じ位置に形成される。
請求項7に係る入力装置によれば、入力装置の位置に像が形成される。
請求項8に係る入力装置によれば、光の強度を制御する手段を有しない場合と比較して、記録媒体の単位面積あたりの光強度の変動が抑制される。
請求項9に係る記録システムによれば、入力装置の位置に記録装置から追記を行う構成と比較して、入力装置により形成される像と記録装置により形成される像との位置のずれが低減される。
請求項10に係る記録システムによれば、入力装置の位置に記録装置から追記を行う構成と比較して、入力装置により形成される像と記録装置により形成される像との位置のずれが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1a】実施形態に係る記録装置の構成の一例を示す図である。
【図1b】実施形態に係る記録装置の構成の一例を示す図である。
【図2】実施形態に係る電子ペーパを上面から見た外観図である。
【図3】実施形態に係る電子ペーパの断面構造を示す図である。
【図4】カラー表示の原理を説明する図である。
【図5】表示層に印加される信号を例示する図である。
【図6】電子ペーパ20への追記を例示する図である。
【図7】実施形態に係る記録装置の構成を示す図である。
【図8】実施形態に係る記録装置の機能構成を示す図である。
【図9】実施形態に係る光ペンの構成を示す図である。
【図10】記録装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】デジタイザの検出位置と書き込み位置とのずれを示す図である。
【図12】光ペンの傾きと光強度の参照テーブルを例示する図である。
【図13】光ペンの光出力の特性を示す図である。
【図14】他の実施形態に係る入力装置の機能構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.構成
図1aおよび図1bは、本発明の一実施形態に係る記録システムの構成を示す図である。この記録システムは、記録装置10、電子ペーパ20および光ペン30を有する。電子ペーパ20は、記録装置10に着脱可能である。図1aは記録装置10から電子ペーパ20を外した状態を、図1bは記録装置10に電子ペーパ20を装着した状態を示している。電子ペーパ20は、光書き込み型の表示媒体である。「光書き込み型」の表示媒体とは、表示媒体に表示される情報の書き替えの際に光照射が用いられる表示媒体をいう。記録装置10は、電子ペーパ20に画像の記録(書き込み)、および記録された画像の消去(初期化)を行う装置である。光ペン30は、電子ペーパ20に記録された画像に利用者が追記を行う際に用いられる入力装置である。
【0018】
1−1.電子ペーパ20
図2は、電子ペーパ20を上面から見た外観図である。フレーム21は、電子ペーパ20の各構成を保持する。フレーム21は、機械的な剛性と、電気的な絶縁性と、光学的な遮光性を有する樹脂で作られている。表示体22は、画像の表示を行う構造体である。表示体22は、記憶性液晶であるコレステリック液晶を有している。コレステリック液晶は双安定の物質であり、電圧等によりエネルギーが与えられていない状態でも光の反射率が異なる2つの配向状態のいずれかを維持することができる。コレステリック液晶分子の安定な配向には、プレーナ配向とフォーカルコニック配向とがある。プレーナ配向において、コレステリック液晶分子は、特定の波長帯の光を反射(ブラッグ反射)する。フォーカルコニック配向において、コレステリック液晶分子は、光を透過する。表示体22は、原理的には、配向状態に応じた反射率の違いを利用して表示を行うものである。
【0019】
図3は、電子ペーパ20の断面、特に図2のIII−III線に沿った切断面の断面構造を示す図である。面22aは、表示体22の上面(表示面)すなわち表面(第1の面)である。利用者は、面22aから画像を見る。また、利用者は、光ペン30を用いて面22a側から追記を行う。面22bは、表示体22の下面すなわち裏面(第2の面)である。記録装置20は、面22b側から画像の消去や書き込みを行う。
【0020】
保護層210および保護層275は、表示体22の表面を保護する層である。この例において、保護層210および275は、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂で作られている。
【0021】
液晶層230と、液晶層260と、液晶層265は、特定の波長帯の光を反射する液晶分子を含む層である。この例で、液晶層230、液晶層260、および液晶層265は、それぞれ、赤、緑、青の光を反射する。液晶層230、液晶層260、および液晶層265においては、コレステリック液晶が用いられている。具体的には、これらの層において、バインダー樹脂中にマイクロカプセル状のコレステリック液晶表示素子が分散されている。光の反射率は、コレステリック液晶分子の配向状態に応じて変化する。コレステリック液晶分子の配向状態は、印加される電圧(より正確には、与えられる電力)に応じて変化する。
【0022】
図4は、カラー表示の原理を説明する図である。図4において、縦軸は正規化された反射率を、横軸は液晶層に印加される電圧(駆動電圧)を示す。ここでは、赤、青、緑の3色の液晶層が積層された構成の表示体において、これら3つの液晶層全体に対して駆動電圧が印加される場合を例に説明する。曲線CR、CBおよびCGは、それぞれ赤、青および緑の液晶層の反射率−電圧曲線を示す。電圧Va、Vb、Vc、Vd、Ve、VfおよびVgは、各曲線におけるしきい値電圧を示す。しきい値電圧とは、正規化反射率が所定の値(例えば90%および10%)になる電圧である。例えば、電圧Vaは、曲線CRにおいて、正規化反射率が90%になる電圧である。また、Vbは、曲線CRにおいて正規化反射率が10%になり、かつ曲線CBにおいて正規化反射率が90%になる電圧である。図4の例ではこれらの電圧値が一致するように液晶層が設計されているが、曲線CRにおいて正規化反射率が10%になる電圧と、曲線CBにおいて正規化反射率が90%になる電圧とは異なっていてもよい。例えば電圧Vfを印加すると、緑の光は透過されるが、赤および青は反射され、利用者には紫色に見える。このように、電圧値によって、各液晶層の反射/透過の組み合わせを選択できる。すなわち、しきい値が他の層とずれた反射率−電圧曲線を有する液晶層を複数積層し、一組の電極で挟むことで、この一組の電極間に与えられる信号によりカラー表示を行うことが、原理的には可能である。
【0023】
図5は、表示層に印加される信号を例示する図である。この例では、表示層に対し信号VLCが印加されている。信号VLCにおいて、縦軸は電圧を、横軸は時間を示す。期間t1および期間t2において、信号VLCはそれぞれ電圧値が異なっている。これらの電圧値の組み合わせにより、3つの液晶層の配向状態の組み合わせが決定される。
【0024】
再び図3を参照して説明する。図4で説明したように、原理的には赤、緑、青の3層を1組の電極で挟んだ構造によりカラー表示が可能である。しかし、この例で、電子ペーパ20は、液晶層260(緑)および液晶層265(青)が1組の電極(透明電極270および透明電極245)に挟まれ、液晶層230(赤)が別の一対の電極(透明電極235および215)に挟まれた構造を有している。以下、透明電極270および245に挟まれた層を「第1の光アドレス層」、透明電極235および215に挟まれた層を「第2の光アドレス層」という。第1の光アドレス層と第2の光アドレス層はそれぞれ独立に制御される。また、以下において必要に応じて液晶層および感光層を含む層を「表示層」という。第1の光アドレス層および第2の光アドレス層はそれぞれ表示層の一例である。
【0025】
第1の光アドレス層は、面22a側から順に、液晶層265(青)、液晶層260(緑)および感光層255を有する。透明電極270および245は、第1の光アドレス層に電圧を印加するための電極である。透明電極270および245は、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムすず)等、光を透過する(透明な)材料で作られている。感光層255は、特定の波長の光(例えば緑色の光)が照射されると電荷を生じて暗状態より低抵抗化する。この例で、感光層255は、有機感光体(Organic Photoconductor:OPC)により形成されている。緑色の光が照射されると、暗状態よりも感光層255が低抵抗化するので、液晶層260および265にかかる電圧が増加する。感光層255は、ジブロモアントアントロン(DBA)等の赤色(第1の光アドレス層で反射される色の補色)の光を透過する材料で形成されている。
【0026】
液晶層265(青)および液晶層260(緑)の配向状態の制御は例えば以下のように行われる。まず、暗状態においてVe<V1L<Vfなる電圧V1Lが、光照射状態においてVg<V1Hなる電圧V1Hが液晶層265(青)および液晶層260(緑)に印加されるような、電圧V1が第1の光アドレス層に印加される。暗状態の部分については液晶層の配向状態が(B,G)=(P,F)となり、光照射された部分については配向状態が(B,G)=(P,P)となる。ここで、Pはプレーナ配向を、Fはフォーカルコニック配向を示す。(B,G)=(P,F)は、液晶層265(青)の配向状態がプレーナ配向であり、液晶層260(緑)の配向状態がフォーカルコニック配向であることを示す(以下同様)。
【0027】
次に、暗状態においてV2L<Vbなる電圧V2Lが、光照射状態においてVb<V2H<Vcなる電圧V2Hが液晶層265(青)および液晶層260(緑)に印加されるような、電圧V2が第1の光アドレス層に印加される。暗状態の部分については電圧V1による配向状態が維持される。光照射された部分については、液晶層265(青)の配向状態がフォーカルコニック配向となる。
【0028】
第2の光アドレス層は、面22a側から順に、液晶層230(赤)および感光層225を有する。透明電極235および215は、第2の光アドレス層に電圧を印加するための電極である。透明電極235および215は、ITOで作られている。感光層225は、特定の波長の光(例えば赤色の光)が照射されると電荷を生じて、暗状態よりも低抵抗化する。感光層225は、感光層255と同様に、OPCにより形成されている。感光層225は、チタニルフタロシアニン(TiOPC)等の青〜緑色(第2の光アドレス層で反射される色の補色)の光を透過する材料で形成されている。液晶層230の配向状態の制御は、例えば以下のように行われる。暗状態においてV3L<Vcなる電圧V3Lが、光照射状態においてVd<V3Hなる電圧V3Hが液晶層230(赤)に印加されるような、電圧V3が第2の光アドレス層に印加される。
【0029】
以上のように、光照射と電圧印加を組み合わせることにより、特定の層の特定の領域の液晶の配向を制御すること、すなわち、画像を形成することができる。なお上記の方法は、電子ペーパに対する書き込み方法(記録方法または配向状態の制御)のあくまで一例であり、液晶層と感光層とのインピーダンスの比などの特性に応じて、他の書き込み方法が用いられてもよい。また、画像の書き込みの前に液晶層を所定の配向状態にする(すなわち、それまでに描かれていた画像を消去する)リセット処理が行われてもよい。
【0030】
絶縁層240は、透明電極245と透明電極235とを絶縁するための層である。この例で、絶縁層240はPETで形成されている。
【0031】
なお、光ペン30で追記を行わない記録システムにおいて、電子ペーパは、液晶層260と感光層255との間、および液晶層230と感光層225との間に、それぞれ光吸収層を有していてもよい。液晶層260と感光層255との間の光吸収層は、液晶層265および260で反射される波長帯の光(この例では青〜緑色)の光を吸収する層である。液晶層230と感光層225との間の光吸収層は、液晶層230で反射される波長帯の光(この例では赤色)の光を吸収する層である。本実施形態の電子ペーパ20は光ペン30で追記を行うためのものなので、光吸収層は有していない。
【0032】
電極23は、記録装置20等の外部装置からの電気信号を受ける接点である。この例で電極23は、電極23a、23bおよび23cの3つの電極を有する。電極23bは、グランド電位を与える電極である。電極23aおよび23bにより第1の光アドレス層に電圧が印加され、電極23bおよび23cにより第2の光アドレス層に電圧が印加される。電極23は、図1bに示すように電子ペーパ20が記録装置10に装着されると記録装置10側の電極145と電気的に接触する位置に配置されている。
【0033】
RFタグ24は、電子ペーパ20の個別情報を記憶する記憶装置である。個別情報とは、例えば「所有者名」や、「書き換え回数累計値」や、「シリアルナンバー」など、電子ペーパ20またはその利用者の属性を示す情報である。RFタグ24に記憶されている情報は、専用のリーダ/ライタにより読み出すことができる。
【0034】
図6は、光ペン30による電子ペーパ20への追記(表示の書き替え)を例示する図である。信号V4および信号V5は、それぞれ、第1の光アドレス層および第2の光アドレス層に印加される電圧を示している。この例では、信号V4および信号V5ともDC300Vの電圧が500msec印加されている。この電圧値は、第1の光アドレス層において液晶層260(緑)の配向をフォーカルコニックにするが、液晶層265(青)の配向は変化させない電圧値である。光強度LGおよび光強度LRは、それぞれ、緑色および赤色の光の強度を示している。この例では、100μW/cm2の強度の緑色光および赤色光が、表示体22に照射される。B−ChLC、G−ChLCおよびR−ChLCは、それぞれ、液晶層265(青)、液晶層260(緑)および液晶層230(赤)の配向状態を示している。Fはフォーカルコニック配向を、Pはプレーナ配向を示す。この例で、液晶層265(青)の配向状態は電圧印加および光照射の前後で変化しないが、液晶層260(緑)および液晶層230(赤)の配向状態は電圧印加および光照射によりフォーカルコニック配向に変化する。
【0035】
図6中、下段の図は、電圧印加および光照射の前後の表示状態を示している。B、C、G、Y、W、M、RおよびKは、それぞれ、黒、シアン、緑、黄、白、マゼンタ、赤および黒を示している。例えば、赤が表示されていた領域は、3つの液晶層の配向状態は、(R,G,B)=(P,F,F)である。この例では、電圧印加および光照射により液晶層260(緑)および液晶層230(赤)がフォーカルコニック配向となるので、3つの液晶層の配向状態は、(R,G,B)=(F,F,F)となる。すなわち、赤が表示されていた領域は黒となる。同様に、電圧印加および光照射により、緑および黄の領域は黒となり、シアン、白およびマゼンタの領域は青となる。青および黒の領域は変化しない。このように、光ペン30を用いることにより、黒または青の軌跡が電子ペーパ20に記録される。
【0036】
1−2.記録装置10
図1aを参照して、記録装置10について説明する。筐体11は、記録装置10の各構成を保持する機能と、記録装置10内部(特に電子ペーパ20に記録を行う部分)に外光が侵入しないように遮光を行う機能と、利用者が電子ペーパ20を記録装置10に装着したときに電子ペーパ20を保持する機能と有する。筐体11は、この例においてはエンジニアリングプラスチックなどの樹脂で製作されている。
【0037】
図7は、記録装置10の構成を示す図である。制御部110は、記録装置10の各要素を制御する制御装置である。この例で、制御部110は、演算装置としてのCPU(Central Processing Unit)や、記憶装置としてのHDD(Hard Disk Drive)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)や、入出力装置としてのI/Oポートを備えたコンピュータである。HDDやROMには、記録装置10を制御するためのプログラムや各種のデータが記憶されている。CPUは、HDDやROMからプログラムを読み込んで実行することで記録装置10の各部の動作を制御する。また、CPUは、プログラム実行時のワークエリアとしてRAMを使用する。
【0038】
操作パネル115は、利用者からの指示操作を受け付け、受け付けた操作に応じた信号を制御部110に出力する。操作パネル115は、ユーザが指示を入力するための装置、例えば電源スイッチやテンキーと、利用者への情報の提供を行うための表示装置、例えば表示ランプや液晶ディスプレイとを有する。
【0039】
通信I/F120は、記録装置10が光ペン30等の外部機器とデータのやりとりを行うためのインターフェースである。この例において、通信I/F120は、無線通信を行う。
【0040】
デジタイザ125は、光ペン30のペン先の位置を検出する。この例においては、デジタイザ125として電磁誘導方式のセンサ等、公知の技術が用いられる。制御部110のCPUは、デジタイザ125から取得した位置を示すデータを、光ペン30が移動した軌跡のデータとしてHDDに記憶する。デジタイザ125は、電子ペーパ20が記録装置10に装着された状態で、電子ペーパの表示面上の光ペン30の位置を検出できる位置に設けられている。
【0041】
RFタグリーダライタ130は、電子ペーパ20に内蔵されたRFタグ24に書き込まれた情報の読み書きを行う。RFタグリーダライタ130は、RFタグ24から読み出した情報を制御部110に出力する。また、RFタグリーダライタ130は、制御部110の制御下でRFタグ24に情報を書き込む。
【0042】
電源135は、制御部110や、電極145(すなわち電子ペーパ20)等に電力を供給する。着脱センサ140は、記録装置10に電子ペーパ20が装着されているか否かを検知し、検知した結果を電源135に出力する。この例においては、着脱センサ140として押しボタンスイッチが用いられる。図1aに示すように、記録装置10に電子ペーパ20が装着されてなければ押しボタンスイッチは押されていない。図1bに示すように電子ペーパ20が装着されると押しボタンスイッチは押される。電極145は、3つの端子を有する。各端子は、電子ペーパ20の23a、23bおよび23cにそれぞれ対応する。電極145は、電源135が発生した電圧の電子ペーパ20への供給に用いられる。電極145は、図1bに示すように電子ペーパ20が記録装置10に装着されたときに電子ペーパ20の電極23と電気的に接触する位置に配置されている。
【0043】
リアルタイムクロック150は、時間を計測する時計機能を有する。リアルタイムクロック150は、この情報を制御部110と、後述する環境温度履歴記録部155に出力する。環境温度履歴記録部155は、環境温度センサ160から取得した環境温度情報と、リアルタイムクロック150から取得した時間の情報を結びつけて内蔵メモリに記録する。また、環境温度履歴記録部155は、制御部110からの要求に応じて、記録した温度履歴情報を制御部110に出力する。環境温度センサ160は、記録装置10の環境温度を測定し、測定した環境温度を環境温度履歴記録部155に出力する。
【0044】
画像処理部170は、制御部110の制御下で、LCDパネル195に描画する画像を示す画像データを処理する。画像処理部170は、処理した画像データを画像バッファ175に出力する。画像処理部170における画像処理は、例えば、複数の画像や、画像と文字との重ね合わせや、表示色の変更などである。画像バッファ175は、画像データを記憶するVRAM(Video Random Access Memory)である。
【0045】
バックライト制御部180は、制御部110の制御下でバックライト185を駆動する。バックライト185は、バックライト制御部180の制御下で、LCDパネル195に照射する光を発生する。この例において、バックライト185の光は、赤色と緑色のスペクトルを含んでいる。具体的に、バックライト185は、白色光を発生する冷陰極管を含んでいる。
【0046】
LCD駆動190は、画像バッファ175に記憶された画像データを読み出し、読み出した画像データに従ってLCDパネル195を駆動することにより、画像を表示させる。すなわち、LCDパネル195は、バックライト185からの光を選択的に透過する、透過型のカラー液晶パネルである。
【0047】
図8は、記録装置10の機能構成を示す図である。取得手段11は、電子ペーパ20に光を照射する光ペン30の位置を取得する。取得手段12は、光ペン30の光軸の、電子ペーパ20の表面に対する傾きを取得する。算出手段13は、取得手段11により取得された光ペン30の位置、取得手段12により取得された傾き、および電子ペーパ20内の特定の層の厚みに基づいて、表示層における描画すべき位置(後述の結像位置)を算出する。露光手段14は、表示層のうち、算出手段13により算出された位置に対応する部分を露光する。この例で、算出手段13は、光ペン30から照射される光が感光層とぶつかる領域が表面上に射影される位置を、描画すべき位置として算出する。この例で、記録装置10は、光ペン30による追記に応じて、電子ペーパ20の裏面から追記を行う。
【0048】
制御手段15は、光ペン30が照射する光の強度を制御する。ここで、「傾き」は、電子ペーパ20の表面の法線に対する光ペン30の光軸の傾きである。制御手段15は、傾きがa1およびa2のとき(a1<a2)の強度P1および強度P2が、P1<P2となるように光の強度を制御する。
【0049】
この例で、光ペン30の位置を取得するための命令群を実行している制御部110は取得手段11の一例である。光ペン30の傾きを取得するための命令群を実行している制御部110は取得手段12の一例である。結増位置を算出するための命令群を実行している制御部110は算出手段の一例である。バックライト制御部180、バックライト185、LCD駆動190およびLCDパネル195は、露光手段の一例である。光ペン30の光強度を制御するための命令群を実行質得る制御部110は、制御手段の一例である。
【0050】
1−3.光ペン30
図9は、光ペン30の構成を示す図である。図9は、光ペン30の断面を模式的に示した図である。この例で、光ペン30は、ボールペンや鉛筆、万年筆といった筆記具に類似した形状をしており、利用者は筆記具を使う要領で電子ペーパ20に書き込み(記録)を行う。
【0051】
筐体305は、光ペン30の各構成を保持する。この例における筐体305は、機械的な剛性と、電気的な絶縁性と、光学的な遮光性を有する樹脂で作られている。スイッチ310は、利用者から光ペン30への指示の入力に用いられる。例えば、後述する手書き追記モードへの移行や、電源のオン・オフ、書き込み色の選択などの指示が、スイッチ310により入力される。スイッチ310は、操作に応じた信号を制御部335に出力する。バッテリ315は、光ペン30の各構成に電力を供給する電源である。
【0052】
通信モジュール320は、記録装置10と通信を行うための装置である。通信モジュール320は、制御部335の制御下でアンテナ325を介して記録装置10と無線通信を行う。アンテナ325は、通信に用いられる電波の送受信を行う。
【0053】
加速度センサ330は、光ペン30の光軸(すなわち、筐体305の長手方向)に対する加速度のX軸、Y軸およびZ軸成分を検出し、検出結果を制御部335に出力する3次元加速度センサである。制御部335は、制御や演算を行うCPUと、記憶装置であるROMやRAMと、入出力を行うI/Oポートを有する。CPUは、利用者が光ペン30の電源投入を行うと、予めROMに記憶されている制御プログラムを読み出し、読み出した制御プログラムを実行して光ペン30の制御を行う。CPUは作業領域としてRAMを使用する。例えば、制御部335は、加速度センサ330から出力される加速度を用いて、光ペン30の移動速度を算出する。
【0054】
センサ340は、光ペン30のペン先の筆圧を検出するセンサである。具体的には、センサ340は、光ペン30のペン先(この例ではレンズ360)に加えられている圧力を検出し、検出結果を示す信号を制御部335に出力する。利用者が、光ペン30を用いて電子ペーパ20に書き込み(記録)を行うときはレンズ360が電子ペーパ20に接触して圧力が加えられる。レンズ360に加わった圧力は、導光路355、光源350を介して、センサ340に伝えられる。センサ345は、光ペン30のペン先と電子ペーパ20の面22aとの距離があらかじめ決められたしきい値以下になったことを検出するセンサである。センサ345は、検出結果を制御部335に出力する。この例で、センサ345は、フォトダイオード等の受光素子を有する。センサ345は、電子ペーパ20の面22aで反射された、光源350の光を受け、光強度に応じた信号を制御部335に出力する。制御部335は、距離センサから出力される信号により示される光強度があらかじめ決められたしきい値を超えると、ペン先と電子ペーパ20との距離がしきい値(例えば5mm)以下になったと判断する。
【0055】
光源350は、利用者が電子ペーパ20に書き込み(記録)を行うための光を出力する。この例で、光源350は、電子ペーパ20に赤色の書き込み行うための赤色光を発生するための赤色LEDと、青色と緑色の書き込みを行うための緑色光を発生するための緑色LEDを含んでいる。導光路355は、光源350が発生した光をレンズ360に導く。この例において、導光路355は、光の透過率の高い透明樹脂で構成されている。レンズ360は、光源350から出力された光を集光する。この例において、レンズ360は、光学ガラスで作られている。レンズ360により集光された追記光361は電子ペーパ20の面22aに照射される。
【0056】
2.動作
2−1.追記
図10は、記録装置10の動作を示すフローチャートである。図10のフローは、例えば、ユーザが光ペン30のスイッチ310を操作して電源をオンにしたことを契機として開始される。電源がオンにされると、光ペン30は、その旨を示す信号を記録装置10に出力する。
【0057】
ステップS10において、記録装置10の制御部110は、初期化を行う。ここでいう「初期化」は、光ペン30の速度を初期化(速度=ゼロ)する処理を含む。この時点において、光源350から追記光361は照射されていない。
【0058】
ステップS20において、制御部110は、駆動電圧の印加を開始するように、電源135を制御する。駆動電圧は、記録装置10の電極145と電子ペーパ20の電極23を介して、透明電極245と透明電極270との間(第1の光アドレス層)、および透明電極215と透明電極235との間(第2の光アドレス層)に印加される。制御部110は、第1の光アドレス層および第2の光アドレス層に対し、異なる電圧を印加するように、電源135を制御することができる。
【0059】
ステップS30において、制御部110は、ペン先の位置を検出する。ユーザは、光ペン30を用いて電子ペーパ20に追記をするため、光ペン30のペン先を電子ペーパ20に接触させる。光ペン30のペン先が電子ペーパ20に接触すると、センサ340は、光ペン30のペン先に圧力が加えられていることを検出する。ペン先の圧力を検出すると、センサ340は、通信モジュール320を介して、ペン先に圧力が加えられた旨を示す信号を記録装置10に出力する。センサ340からの信号を受けると、記録装置10の制御部110は、光ペン30の位置を検出し、検出した位置を軌跡として記憶するようにデジタイザ125を制御する。
【0060】
ステップS40において、制御部110は、加速度センサ330からデータを取得する。加速度センサ330は、光ペン30の光軸に対する加速度のX軸、Y軸およびZ軸成分を検出する。制御部335は、検出した加速度を示す信号を、通信モジュール320を介して、記録装置10に出力する。
【0061】
ステップS50において、制御部110は、傾きを算出する。ここでいう「傾き」とは、光ペン30の重力の向き(鉛直下向き)に対する傾きをいう。制御部110は、加速度センサ330から出力された信号に基づいて傾きを算出する。3軸加速度センサの信号に基づく傾きの算出には、公知の技術が用いられる。
【0062】
ステップS60において、制御部110は、結像位置を算出する。「結像位置」とは、光ペン30の軌跡に応じて像(追記画像)を書き込む位置、すなわち液晶層の階調を変化させる位置をいう。制御部110は、傾き算出(ステップS50)において算出された光ペン30の傾きと、予め設定されている厚さとを用いて結像位置を算出する。ここでいう「厚さ」は、液晶層265(青)に像が書き込まれる場合には、面22aから感光層255までの距離(電子ペーパ20において、液晶層よりも表面側に位置し、その液晶層以外の他の層の厚み)をいい、液晶層230(赤)に像が書き込まれる場合には、面22aから感光層225までの距離をいう。「面22aから感光層255までの距離」とは、面22aから感光層225のあらかじめ決められた位置(例えば表面や中心)までの距離をいう。結像位置の算出の詳細は後述する。
【0063】
ステップS70において、制御部110は、LCDを制御する。制御部110は、光ペン30の軌跡を示す画像を生成するように、画像処理部170を制御する。画像処理部170は、制御部110の制御下で、光ペン30の軌跡を示す画像を生成する。光ペン30の軌跡は、ステップS60で算出された結像位置に対応する点を含む。この点の大きさはあらかじめ決められている。画像処理部170は、生成した画像データを画像バッファ175に出力する。
【0064】
この例において、バックライト185から照射される記録光186は、赤色と緑色のスペクトルを含んでいる。したがって、第1の光アドレス層と第2の光アドレス層の双方に対して、追記が行われる。
【0065】
ステップS80において、制御部110は、終了条件が満たされたか判断する。終了条件が満たされた場合(S80:YES)、制御部110は、図10の処理を終了する。終了条件が満たされていない場合(S80:NO)、制御部110は、処理を再びステップS30に移行する。終了条件は、例えば、光ペン30のスイッチが押されたという条件である。あるいは、例えば、光ペン30と電子ペーパ20の第1の面22aとの距離があらかじめ決められたしきい値以上になったことを、光ペン30のセンサ345が検出したという条件が終了条件として用いられてもよい。
【0066】
図11は、検出される位置と書き込み位置とのずれの一例を示す図である。図11は、説明の便宜のため、電子ペーパ20において、保護層210,275、液晶層260、感光層255、透明電極245および透明電極270のみを図示している。また、記録装置10において、デジタイザ125およびLCDパネル195のみを図示している。
【0067】
デジタイザ125は、光ペン30の先端部分の位置(照射位置363)を光ペン30の位置として検出する。図11の例のように、光ペン30が電子ペーパ20に対して傾斜している場合(光ペン30の光軸が電子ペーパ20の表面の法線に対して傾いている場合)、感光層255において追記光361が照射される位置は、照射位置363とは異なっている。このとき、追記光361により像が書き込まれるのは、結像位置365、すなわち追記光361が照射された感光層255の低抵抗化により印加される電圧が増加するの部分である。
【0068】
ここで、記録装置10から軌跡の書き込みを行う場合に、照射位置363において書き込みを行うと、像が形成されるのは結像位置369(光ペン30のペン先の、電子ペーパ20の表面への正射影に相当する位置)であり、結像位置365との間でずれが生じてしまう。
【0069】
本実施形態において、記録装置10は、ステップS60において、光ペン30の傾きθおよび感光層255の厚みdを考慮して、決像位置367を算出する。結像位置367は、結像位置365と一致するように算出される。表面から液晶層までの距離と光ペン30の傾きとを考慮して結像位置を算出することにより、結像位置367と結像位置365とのずれが低減される。
【0070】
ここで、図10のステップS60における結像位置の算出について説明する。以下の説明において、照射位置363、結像位置365、結像位置367、結像位置369を表すのにxy直交座標系が用いられる。例えば、x軸およびy軸は電子ペーパ20の表面の法線と直交する向きに設定される。いま、照射位置363を、(x0,y0)と表す。光ペン30の角度は、角度αと角度βとを用いて表される。角度αは、電子ペーパ20の法線と光ペン30の光軸との角度である。角度βは、光ペン30の光軸のxy平面上への正射影とx軸との角度である。また、電子ペーパ20の第1の面22aから感光層255までの厚みはdである。
【0071】
制御部110は、デジタイザ125からの上記の情報を基に、結合位置365の座標(x1、y1)を次式により計算する。
x1=x0+d・tanα×cosβ
y1=y0+d・tanα×sinβ
【0072】
2−2.光強度の制御
図12は、参照テーブルを例示する図である。この例で、制御部110は、光ペン30の傾きに応じて光強度を制御している。図12の参照テーブルは、この制御に用いられる。参照テーブルは、例えば、制御部110に設けられた不揮発性メモリに記憶される。参照テーブルは、傾きと、その傾きに対応する制御パラメータを含む。制御パラメータとは、光源350の制御に用いられるパラメータ、例えば出力電圧値である。
【0073】
制御部110は、角度αに対応するパラメータを参照テーブルから読み出す。図12の例では、例えば、傾きが10°以上20°未満の場合、傾き10°に対応するパラメータとして出力電圧102mVが読み出される。制御部110は、光ペン30の光強度を変化させる命令と、制御パラメータとを、通信I/F120を介して光ペン30に出力する。光ペン30の制御部335は、この命令を受けて、光強度を制御する。
【0074】
3.他の実施形態
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。以下、変形例をいくつか説明する。以下で説明する変形例のうち2つ以上のものが組み合わせて用いられてもよい。
【0075】
3−1.変形例1
制御手段15による光強度の制御は、実施形態で説明したものに限定されない。例えば、制御手段15は、光ペン30の移動速度に応じて光強度を制御してもよい。
【0076】
図13は、変形例1に係る光ペン30の光出力(光強度)の特性を示す図である。図13の縦軸は光源350の出力を、横軸はペン先の移動速度を示している。この例で、制御部110は、通信I/F120を介して、光ペン30の加速度センサ330から出力される信号を取得する。制御部110は、この信号から、ペン先の移動速度を算出する。あるいは、制御部110は、デジタイザ125により取得されたペン先の位置と、その位置を取得した時刻とから、ペン先の移動速度を算出してもよい。制御部110は、光ペン30が軌跡を描く速度に応じて、液晶層の単位面積あたりの光照射量があらかじめ決められた一定の値になるように、光源350の光強度を調整するための信号を、通信I/F120を介して光ペン30に出力する。この制御により、光ペン30により電子ペーパ20に記録される軌跡の濃度の変動が抑制される。なお、変形例1の光強度の制御が、実施形態で説明した光強度の制御とあわせて用いられてもよい。あるいは、光強度の制御は行われず、光強度は一定であってもよい。
【0077】
3−2.変形例2
算出手段13による結像位置の算出方法は、実施形態で説明したものに限定されない。光ペン30の傾きと、電子ペーパ20の表面から液晶層(または感光層)までの距離に応じて結像位置を算出するのであれば、どのような方法が用いられてもよい。例えば、算出手段13は、電子ペーパ20の表面上において、光ペン30の位置と結像位置365とを結ぶ線分を感光層に射影した線分上の位置を、結像位置として算出してもよい。この例によれば、光ペン30のペン先の位置にも像が形成されるので、利用者の操作性が向上する。
【0078】
3−3.変形例3
記録装置10と光ペン30との機能の分配は、実施形態で説明したものに限定されない。実施形態において記録装置10の機能として説明されたものの一部を、光ペン30が有していてもよい。
【0079】
図14は、変形例3に係る光ペン30の機能構成を示す図である。光照射手段31は、電子ペーパ20に光を照射する。取得手段32は、光照射手段31の位置を取得する。取得手段33は、デジタイザ125に相当する構成を有していてもよいし、デジタイザ125から(すなわち記録装置10から)光照射手段31の位置を示す情報を取得してもよい。取得手段33は、光ペン30の光軸の、電子ペーパ20の表面に対する傾きを取得する。算出手段34は、取得手段32により取得された光ペン30の位置、取得手段33により取得された傾き、および電子ペーパ20の表面から感光層までの距離に基づいて、結像位置を算出する。出力手段35は、記録装置10に対し、算出手段34により算出された結像位置を示す情報を出力する。
【0080】
光源350およびレンズ360は、光照射手段31の一例である。光ペン30の位置を取得するための命令群を実行している制御部335は、取得手段32の一例である。光ペン30の傾きを取得するための命令群を実行している制御部335は、取得手段33の一例である。結像位置を算出するための命令群を実行している制御部335は、算出手段34の一例である。通信モジュール320は、出力手段35の一例である。
【0081】
3−4.変形例4
図8に示される機能構成を実現するための装置構成は、図7で示されるものに限定されない。要求される機能を実現できるものであれば、どのような構成の装置が用いられてもよい。例えば、露光手段14は、バックライト185およびLCDパネル195に限定されない。発光色を変えられるバックライトと透過型モノクロ液晶パネルが、露光手段14として用いられてもよい。光ペン30についても同様である。実施形態において、赤色LEDと緑色LEDが、光照射手段31として用いられたが、これに代わり、白色光源および色フィルタが光照射手段31として用いられてもよい。
【0082】
また、実施形態においては、制御部110が、取得手段11、取得手段12、算出手段13および制御手段15としての機能を兼ね備えていた。しかし、これらの機能の一部は、制御部110とは別のハードウェア構成要素により実現されてもよい。変形例3の制御部335と、制御手段34a、34b、34c、34d、および調整手段36とについても同様である。
【0083】
3−5.変形例5
電子ペーパ20の具体的構成は、実施形態で説明したものに限定されない。電子ペーパ20は、例えば、一組の透明電極の間に、RGBの3つの液晶層を挟んだ構成を有していてもよい。あるいは、電子ペーパ20は、一組の透明電極の間に1つの液晶層を挟んだ光アドレス層を複数有していてもよい。また、液晶層の数も3つに限定されない。4層以上の液晶層が用いられてもよいし、モノクロ表示の電子ペーパであれば単一の液晶層が用いられてもよい。また、液晶層のしきい値の設計も図4で例示したものに限定されない。液晶層のしきい値は、表示層の構造や駆動方法に応じて設計される。
【0084】
3−6.変形例6
記録装置10または光ペン30による追記は、赤と緑の2色によるものに限定されない。RGBの3色、またはいずれかの単色の追記が行われてもよい。あるいは、記録装置10と光ペン30とで異なる色の追記が行われてもよい。
【符号の説明】
【0085】
10…記録装置、11…取得手段、11…筐体、12…取得手段、13…算出手段、14…露光手段、15…制御手段、20…電子ペーパ、21…フレーム、22…表示体、23…電極、24…RFタグ、30…光ペン、31…光照射手段、32…取得手段、33…取得手段、34…算出手段、35…出力手段、110…制御部、115…操作パネル、120…通信I/F、125…デジタイザ、130…RFタグリーダライタ、135…電源、140…着脱センサ、145…電極、150…リアルタイムクロック、155…環境温度履歴記録部、160…環境温度センサ、170…画像処理部、175…画像バッファ、180…バックライト制御部、185…バックライト、190…LCD駆動、195…LCDパネル、210…保護層、215…透明電極、225…感光層、230…液晶層、235…透明電極、240…絶縁層、245…透明電極、255…感光層、260…液晶層、265…液晶層、270…透明電極、275…保護層、305…筐体、310…スイッチ、315…バッテリ、320…通信モジュール、325…アンテナ、330…加速度センサ、335…制御部、340…センサ、350…光源、355…導光路、360…レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示面と、前記表示面の背面側に設けられ、印加される電圧および前記表示面を介して照射される光に応じて表示が変化する表示層と、前記表示面と前記表示層との間に設けられた他の層とを有する表示媒体に、前記光を照射する入力装置の位置を取得する第1の取得手段と、
前記光の光軸の、前記表示面に対する傾きを取得する第2の取得手段と、
前記第1の取得手段により取得された前記入力装置の位置、前記第2の取得手段により取得された前記傾き、および前記他の層の厚みに基づいて、前記表示層の描画すべき位置を算出する算出手段と、
前記表示層のうち、前記算出手段により算出された位置に対応する部分を露光する露光手段と
を有する記録装置。
【請求項2】
前記表示媒体が、前記光の照射に応じて電気的特性が変化する感光層を有し、
前記算出手段は、前記入力装置の位置を通り前記傾きを有する直線が前記感光層とぶつかる領域が前記表示面上に射影される位置を、前記描画すべき位置として算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記算出手段は、前記表示面上において、前記射影される位置と前記入力装置の位置とを結ぶ線分を前記表示層に射影した線分上の位置を、前記描画すべき位置として算出する
ことを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記入力装置が照射する前記光の強度を制御する制御手段を有し、
前記傾きが、前記表示面の法線に対する前記光軸の傾きであり、
前記制御手段は、前記傾きがa1およびa2のとき(a1<a2)の強度P1および強度P2が、P1<P2となるように前記光の強度を制御する
ことを特徴とする請求項1−3のいずれかの項に記載の記録装置。
【請求項5】
表示面と、前記表示面の背面側に設けられ、印加される電圧および前記表示面を介して照射される光に応じて表示が変化する表示層と、前記表示面と前記表示層との間に設けられた他の層とを有する表示媒体に、前記光を照射する光照射手段と、
前記光照射手段の位置を取得する第1の取得手段と、
前記光の光軸の、前記表示面に対する傾きを取得する第2の取得手段と、
前記第1の取得手段により取得された前記入力装置の位置、前記第2の取得手段により取得された前記傾き、および前記他の層の厚みに基づいて、前記表示層の描画すべき位置を算出する算出手段と、
前記表示層のうち、前記算出手段により算出された位置に対応する部分を露光する露光手段に、前記算出手段により算出された位置を示す情報を出力する出力手段と
を有する入力装置。
【請求項6】
前記表示媒体が、前記光の照射に応じて電気的特性が変化する感光層を有し、
前記算出手段は、前記光照射手段の位置を通り前記傾きを有する直線が前記感光層とぶつかる領域が前記表示面上に射影される位置を、前記描画すべき位置として算出する
ことを特徴とする請求項5に記載の入力装置。
【請求項7】
前記算出手段は、前記表示面上において、前記射影される位置と前記光照射手段の位置とを結ぶ線分を前記表示層に射影した線分上の位置を、前記描画すべき位置として算出する
ことを特徴とする請求項6に記載の入力装置。
【請求項8】
前記光照射手段が照射する前記光の強度を制御する制御手段を有し、
前記傾きが、前記表示面の法線に対する前記光軸の傾きであり、
前記制御手段は、前記傾きがa1およびa2のとき(a1<a2)の強度P1および強度P2が、P1<P2となるように前記光の強度を制御する
ことを特徴とする請求項5−7のいずれかの項に記載の入力装置。
【請求項9】
請求項1−4のいずれかの項に記載の記録装置と、
前記入力装置と
を有する記録システム。
【請求項10】
請求項5−8のいずれかの項に記載の入力装置と、
前記露光手段を有する記録装置と
を有する記録システム。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−231267(P2010−231267A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74954(P2009−74954)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】