説明

記録装置、及びその制御方法

【課題】記録装置が不揮発性メモリを備えない場合であっても、記録装置による記録媒体に対する操作シーケンスが途中で停止した場合に発生するデータ障害の修復を可能にする。
【解決手段】ファイルが保持する実データと管理データとを別々に記録媒体に記録するファイルシステムを使用する記録装置であって、ファイルに対する所定の操作の実行指示を受信する受信手段と、実行指示操作の内容と操作対象ファイルとを示す操作情報を記録し、記録後に当該操作を実行し、操作の完了後に当該操作情報を削除することを含むファイル操作制御を実行する制御手段と、前記記録媒体に操作情報が記録されているか否かを判定する判定手段とを備え、操作情報が記録されていると判定された場合に、前記中断したファイル操作制御の実行を再開するか、又は、当該操作対象ファイルの実データ及び管理データの状態を、実行開始前の状態に戻して当該操作情報を削除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置、及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
データをファイル単位で記録媒体に記録して管理する記録装置が知られている。また、記録装置が使用するファイルシステムとして、記録媒体にファイル管理領域及びファイル格納領域を持たせるファイルシステム(例えば、FAT(File Allocation Table))が知られている。ファイル管理領域は、ディレクトリエントリやファイルエントリなどの管理データを格納するための領域であり、ファイル格納領域は、ファイルが保持するデータの実体(実データ)を格納するための領域である。管理データは、ファイル名に関する情報や、記録媒体における実データの位置に関する情報などを含む。
【0003】
このような記録装置の一例であるデジタルビデオカメラ(DVC)は、動画像データを保持する動画像ファイルを記録媒体に記録して管理する。また、管理データとして、ファイル名及び実データの位置に関する情報に加えて、動画像のタイトルや撮影順序に関する情報なども記録可能なDVCも知られている。
【0004】
記録装置は、例えばファイルの削除、ファイルのコピー、及び管理データの編集などの操作を行うことができる。このような操作を行う場合、記録装置は、ファイル管理領域及びファイル格納領域に対して所定の順序でアクセスし、データの削除や更新などを行う。このような一連の処理を、操作シーケンスと呼ぶ。例えば、ファイルの削除を行う操作シーケンス(削除シーケンス)は、削除対象のファイルの実データをデータ格納領域から削除し、次いで、削除対象のファイルの管理データをファイル管理領域から削除する。
【0005】
このような操作シーケンスの実行中に電源の遮断等の異常が発生して操作シーケンスが中断すると、管理データと実データとの間に不整合が生じたり、管理データが破損したりするなどの、データ障害が発生する可能性がある。例えば、削除シーケンスの場合、実データの削除後に管理データが削除される前に削除シーケンスが停止すると、削除されたファイルに対応する管理データが残ったままになる。その結果、管理データに従ってファイルにアクセスしようとした場合に、そのファイルの実データが存在せずにエラーが発生する。
【0006】
このような不整合の発生を抑制する技術として、特許文献1が知られている。特許文献1は、不揮発性メモリに、不整合が発生した場合の対策のための情報(ログデータ)を保存しておき、異常検出時に、保存したログデータを用いて不整合の修復を行うことを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−115857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の技術を利用する場合、記録装置は、ログデータを保存するための不揮発性メモリを備える必要がある。このことは、記録装置の価格を上昇させる要因となる。
【0009】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、記録装置が不揮発性メモリを備えない場合であっても、記録装置による記録媒体に対する操作シーケンスが途中で停止した場合に発生するデータ障害の修復を可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、第1の本発明は、ファイルが保持する実データと当該ファイルを管理するための管理データとを別々に記録媒体に記録するファイルシステムを使用する記録装置であって、ファイルに対する所定の操作の実行指示を受信する受信手段と、前記受信手段で実行指示が受信された場合に、当該実行指示に関する操作の内容と操作対象ファイルとを示す操作情報を前記記録媒体に記録することと、前記操作情報の記録後に当該操作を実行することと、当該操作の完了後に当該操作情報を削除することと、を含むファイル操作制御を実行する制御手段と、前記ファイル操作制御の実行が中断したか否かを判定するために、前記ファイル操作制御を実行中ではないタイミングで、前記記録媒体に操作情報が記録されているか否かを判定する判定手段と、を備え、前記判定手段で前記記録媒体に操作情報が記録されていると判定された場合に、前記制御手段は、当該操作情報が示す操作の内容と操作対象ファイルとに基づいて、前記中断したファイル操作制御の実行を再開するか、又は、当該操作対象ファイルの実データ及び管理データの状態を、前記中断したファイル操作制御の実行開始前の状態に戻して当該操作情報を削除することを特徴とする記録装置を提供する。
【0011】
なお、その他の本発明の特徴は、添付図面及び以下の発明を実施するための形態における記載によって更に明らかになるものである。
【発明の効果】
【0012】
以上の構成により、本発明によれば、記録装置が不揮発性メモリを備えない場合であっても、記録装置による記録媒体に対する操作シーケンスが途中で停止した場合に発生するデータ障害の修復が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態に係るDVC100の構成を示すブロック図
【図2】第1の実施形態に係るファイルシステムの概略図
【図3】第1の実施形態に係る操作シーケンスを示すフローチャート
【図4】第1の実施形態に係るデータ修復処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせすべてが、本発明に必須とは限らない。
【0015】
[第1の実施形態]
本発明の記録装置をデジタルビデオカメラ(DVC)に適用した実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態に係るDVC100の構成を示すブロック図である。図1において、ユーザインタフェース106は、記録開始や記録終了などの指示をユーザから受け付けて制御部109へ通知する。制御部109はマイクロコンピュータやRAM、ROM等を備え、ROMに記憶されたプログラムに従い、ユーザインタフェース106からの入力に応じてDVC100全体を制御する。
【0016】
符号化復号化部101は、動画像データの符号化及び復号化を行う。符号化復号化部101は、動画像の記録時には、入出力部107から入力された動画像信号を圧縮符号化してストリームデータとしてRAM102へ出力する。また、符号化復号化部101は、圧縮符号化の結果等を制御部109へ通知する。また、符号化復号化部101は、動画像の再生時には、記録媒体104又は108から読み出された動画像データを復号し、入出力部107を介して出力する。
【0017】
RAM102は、符号化復号化部101から出力された符号化動画像データを一時的に格納するために使用される。また、RAM102は、記録媒体104又は108へアクセスするためのファイルシステムデータのキャッシュや、制御部109が行う処理のワークメモリ等の役割も果たす。
【0018】
記録媒体制御部103は、RAM102に格納された動画像データを記録媒体104又は108へ出力し、ファイルとして記録する。また、記録媒体制御部103は、動画像データを保持するファイルを管理するための情報(管理データ)を記録媒体104又は108に記録する。即ち、記録媒体104又は108には、動画像データ(実データ)と管理データとが別々に記録される。また、記録媒体制御部103は、動画像の再生時には、記録媒体104又は108から動画像ファイルを読み出す。管理データは、ファイル名や動画像データの記録順などを保持する。そのため、DVC100は、動画像の再生時に、動画像データの記録順に再生を行うことができる。
【0019】
記録媒体104及び108は、例えばフラッシュメモリであり、制御部109の制御プログラムが使用するファイルシステムに従ってデータをファイル単位で格納する。ファイルは、記録を直接の目的とする実データ(例えば、動画像データ)と、ファイルを管理するための管理データとを構成要素として含む。
【0020】
バス105は、制御部109、符号化復号化部101、RAM102、記録媒体制御部103、及び入出力部107を相互に接続する。
【0021】
動画像を記録する場合は、符号化復号化部101で生成された符号化動画像データがRAM102に一時的に格納される。所定サイズの符号化動画像データがRAM102に格納されると、制御部109は、記録媒体制御部103を制御し、RAM102上の符号化動画像データを記録媒体104又は108に書き込む。本実施形態では、ユーザがユーザインタフェース106を操作することにより、記録媒体104及び108のうちの一方を選択するものとする。記録媒体制御部103は、選択された方の記録媒体に対して動画像データを記録する。
【0022】
また、本実施形態のDVC100は、記録された動画像ファイルを操作する機能を有する。具体的な操作には、例えば、不要な動画像ファイルを削除する削除操作や、記録媒体104又は108の一方に記録されている動画像ファイルを他方の記録媒体へコピーするコピー操作などが含まれる。また、具体的な操作には、動画像ファイルにタイトルなどの補助情報を付加したり補助情報を変更したりする編集操作も含まれる。
【0023】
これらの各操作を行う場合、DVC100は、操作対象ファイルの管理データ及び実データに対して所定の順番でアクセスし(操作の内容によっては、実データに対するアクセスは発生しない)、所定の処理を行う。この一連の処理の流れを、操作シーケンスと呼ぶ。削除操作の操作シーケンスを削除シーケンス、コピー操作の操作シーケンスをコピーシーケンス、編集操作の操作シーケンスを編集シーケンスと呼ぶ。
【0024】
次に、図2を参照して、本実施形態のファイルシステムについて説明する。記録媒体制御部103は、例えばFAT(File Allocation Table)等のファイルシステム200を使用して、記録媒体104及び108にファイルを記録して管理する。ファイルシステム200は、記録媒体の中に、ファイル管理領域201及びファイル格納領域202を有する。ファイル管理領域201は、ディレクトリエントリやファイルエントリなどの管理データを格納するための領域である(前述の補助情報などもファイル管理領域に格納される)。管理データは、各ファイルのファイル名や、実データが記録されているファイル格納領域の位置などを保持する。ファイル格納領域202は、ファイルが保持するデータの実体(実データ)を格納するための領域である。
【0025】
データ(記録対象のデータ)をファイルとして記録媒体に記録する場合には、記録媒体制御部103は、ファイル管理領域201にファイルエントリを登録し、ファイル格納領域202に記録対象のデータ(実データ)を保存する。
【0026】
データを読み出す場合には、記録媒体制御部103は、ファイル管理領域201から管理データを読み出し、管理データが保持するファイルエントリからファイル格納領域202における記録位置を取得し、取得した記録位置から実データを読み出す。
【0027】
図2に示すファイル管理領域201には、3つのファイルエントリが記録されている。また、ファイル格納領域202には、2つの実データが記録されている。ファイル管理領域201のファイルエントリ203は、ファイル格納領域202の実データ204を指し示している。実データ204を読み出す場合には、記録媒体制御部103は、実データ204を保持するファイルのファイル名に対応するファイルエントリ203をファイル管理領域201から読み出す。そして、記録媒体制御部103は、ファイルエントリ203の指し示すファイル格納領域202における記録位置から実データ204を読み出す。
【0028】
また、図2において、ファイルエントリ205は、ファイル格納領域202を指し示しておらず、対応する実データを持たない。従って、ファイルエントリ205が示すファイルは、ファイルとしては存在しているが実データを持たない(即ち、ファイルサイズが0の)ファイルである。
【0029】
次に、図3を参照して、第1の実施形態に係る操作シーケンスについて説明する。本フローチャートに示す各ステップの処理は、特に断らない限り、制御部109が制御プログラムを実行すると共に必要に応じて他のユニット(例えば、記録媒体制御部103)を制御することにより、実現される。
【0030】
S301で、制御部109は、ファイルに対する所定の操作の実行指示を受信する。具体的には、例えば、ユーザはユーザインタフェース106を操作することにより、操作対象ファイルと操作の内容(例えば、削除)とを選択する。制御部109は、この選択を、実行指示として受信する。
【0031】
S302で、制御部109は実行指示を解析して、操作の内容、操作対象ファイル、及び操作対象ファイルを保持している記録媒体を特定する。そして、特定された記録媒体に、操作の内容と操作対象ファイルとを示す操作情報を記録する。例えば、制御部109は、操作情報として、操作の内容と操作対象ファイルとを示すファイル名を持つファイル(実データを持たないファイル)を記録媒体に記録してもよい。
【0032】
一例として、DVC100は、動画像を記録する際に、動画像ファイルに、記録順を示す数字と予め規定されている拡張子とを持つファイル名を付けて記録するものとする。この場合、例えば操作の内容が削除であり操作対象ファイルが1番目に記録されたファイルであれば、図2に示すファイルエントリ205が操作情報として記録される。ファイルエントリ205に対応するファイル名は、操作対象ファイルのファイル名を示す「000001」と、操作の内容を示す「DEL」(削除)と、両者を区切る「.」(ピリオド)とを含む。従って、記録媒体にファイルエントリ205が記録されているということは、1番目に記録されたファイルを操作対象ファイルとする削除操作が実行されるということを意味する。
【0033】
操作の内容がコピーの場合、ファイル名として例えば「000001.CPY」が使用され、操作の内容が編集の場合、ファイル名として例えば「000001.EDT」が使用される。ここで、「CPY」がコピーを示し、「EDT」が編集を示す。
【0034】
操作情報の記録後、S303で、制御部109は、操作の内容が「削除」「コピー」「編集」のいずれであるかを判定する。操作の内容が「削除」であれば処理はS304に進み、「コピー」であれば処理はS306に進み、「編集」であれば処理はS308に進む。
【0035】
S304及びS305は、削除シーケンスに対応する。S304で、制御部109は、操作対象ファイルの管理データに基づいて操作対象ファイルの実データの位置を確認し、実データを削除する。S305で、制御部109は、操作対象ファイルの管理データを削除する。
【0036】
S304及びS305は、コピーシーケンスに対応する。なお、一般的に、コピーには、操作対象の記録媒体から他の記録媒体へのコピーと、他の記録媒体から操作対象の記録媒体へのコピーとが含まれる。しかしながら、本実施形態では、他の記録媒体から操作対象の記録媒体(コピー先の記録媒体)へのコピーについてのみ説明する。操作対象の記録媒体から他の記録媒体へのコピーの場合、操作対象の記録媒体においては一般的にデータの変更は発生しないため、操作シーケンスが中断してもデータが破損等する可能性が低いからである。従って、S302における操作情報の記録も、コピー先の記録媒体に対して行われる。S306で、制御部109は、操作対象ファイルの管理データをコピー元の記録媒体から取得し、操作対象の記録媒体(コピー先の記録媒体)に記録する。S307で、制御部109は、操作対象ファイルの実データをコピー元の記録媒体から取得し、操作対象の記録媒体(コピー先の記録媒体)に記録する。
【0037】
S308乃至S310は、編集シーケンスに対応する。編集シーケンスでは、操作対象ファイルの管理データに含まれる補助情報(例えば、動画像のタイトル)が変更されるが、実データは変更されない。編集シーケンスは管理データの上書きを含むので、管理データの編集中に電源が遮断されるなどして編集シーケンスが中断した場合、管理データが破損する可能性がある。破損した管理データの修復を可能にするために、S308(編集の開始前)で、制御部109は、操作対象ファイルの管理データの複製を記録媒体に生成する。S309で、制御部109は、管理データの編集を実行する。S310(編集の完了後)で、制御部109は、この複製を削除する。即ち、編集シーケンスの実行時には、編集に加えて、複製の生成及び削除が行われる。
【0038】
上述した操作シーケンスの完了後に、S311で、制御部109は、S302で生成した操作情報を削除する。
【0039】
操作シーケンスの実行中に電源の遮断等の異常が発生して操作シーケンスが中断すると、管理データと実データとの間に不整合が生じたり、管理データが破損したりするなどの、データ障害が発生する可能性がある。例えば、動画像ファイルの実データを削除後、管理データの削除前(S304とS305の間)に削除シーケンスが中断すると、管理データには削除した実データの情報が残っていることとなる。
【0040】
このような状態になると、管理データに基づいて動画像の再生を実行しようとした場合に、再生対象の動画像ファイルの実データが存在せず、再生動作にエラーが発生する可能性がある。そこで、本実施形態のDVC100は、図4に示す修復処理を実行する。説明の簡略化のために、図4の説明においては、記録媒体として記録媒体104を用いる。
【0041】
S401でDVC100の電源がONになると、S402で、DVC100は、記録媒体104上のファイルシステムのマウント処理を行う。ファイルシステムのマウント処理は、記録媒体104の情報とファイルシステムの情報とを取得し、記録媒体104上でのファイル管理領域201とファイル格納領域202を認識してファイルにアクセス可能な状態とする処理である。
【0042】
S403で、制御部109は、記録媒体104に操作情報が記録されているか否かを判定する。ここで注意すべきことは、操作シーケンスが中断した場合だけではなく、図3のS302乃至S311における一連の制御(「ファイル操作制御」と呼ぶ)の実行が中断した場合は、操作情報が記録されたままになるということである。従って、S403における判定は、ファイル操作制御の実行が中断したか否かを判定することを意味する。
【0043】
なお、S403の判定が行われるタイミングは、ファイルシステムのマウントの直後には限定されない。S403の判定は、ファイル操作制御を実行中ではないタイミングであれば、いかなるタイミングで行われてもよい。
【0044】
また、操作情報としてファイル名を利用した場合、S403では、ファイル管理領域201に対するアクセスは行われるが、ファイル格納領域202に対するアクセスは不要である。そのため、S403における判定の処理が高速化される。また、操作情報自体にデータ障害が発生する可能性が低減される。
【0045】
記録媒体の中に操作情報が記録されていない場合、ファイル操作制御の中断は発生しなかったということであるので、処理はS409に進み、制御部109は動画像の記録や再生等の通常の処理を行う。記録媒体の中に操作情報が記録されている場合、処理はS404に進む。
【0046】
S404で、制御部109は操作情報を解析し、中断したファイル操作制御に関する操作の内容及び操作対象ファイルを特定する。例えば、操作情報がファイルエントリ205(図2)であれば、操作の内容は「削除」であり、操作対象ファイルは1番目に記録されたファイルである。
【0047】
S405で、制御部109は、操作の内容に基づいて処理を分岐させる。操作の内容が「削除」であれば処理はS406に進み、「コピー」であれば処理はS407に進み、「編集」であれば処理はS408に進む。
【0048】
以下、S406乃至S408を参照して修復処理の具体例を説明するが、本発明は、ここで説明する具体例に限定されない。重要なことは、データ障害(管理データと実データとの間の不整合や、管理データの破損など)を修復することであり、修復のための具体的な方策は、操作の内容及び操作対象ファイルに基づいて当業者が適宜決定することができる。例としては、中断したファイル操作制御の実行を再開することや、操作対象ファイルの実データ及び管理データの状態を、中断したファイル操作制御の実行開始前の状態に戻すことが挙げられる。
【0049】
S406で、制御部109は、削除の修復処理を行う。具体的には、制御部109は、操作情報が示す操作対象ファイルの実データ及び管理データが記録媒体104に存在するか否かを判定する。これにより、ファイル操作制御が中断したタイミング(例えば、管理データが存在し、実データが存在しない場合は、S304とS305の間)が特定される。制御部109は、特定されたタイミングに基づいて、ファイル操作制御を再開する。これにより、例えば、対応する実データが存在しない管理データが削除され、実データと管理データとの不整合が修復される。また、削除ストリームの完了後、操作情報の削除前のタイミング(S305とS311の間)にファイル操作制御が中断していた場合は、ファイル操作制御がS311から開始し、不要な操作情報が削除される。
【0050】
S407で、制御部109は、コピーの修復処理を行う。具体的には、制御部109は、操作対象ファイルの実データ及び管理データが記録媒体104に存在するか否かを判定し、存在すれば削除を行う。また、制御部109は、操作情報を削除する。これにより、操作対象ファイルの実データ及び管理データの状態は、中断したファイル操作制御の実行開始前の状態に戻り、実データと管理データとの不整合が修復される。
【0051】
S408で、制御部109は、編集の修復処理を行う。具体的には、操作対象ファイルの管理データが破損している可能性があるので、制御部109は、操作対象ファイルの管理データを、S308(図3)で生成した複製に置き換える。次いで、制御部109は、複製と操作情報とを削除する。これにより、操作対象ファイルの管理データの状態は、中断したファイル操作制御の実行開始前の状態に戻り、管理データの破損が修復される。なお、S310とS311の間にファイル操作制御が中断した場合、複製が存在しないが、この場合は管理データの編集は完了しており破損の可能性は低いので、制御部109は修復処理を行わずに操作情報を削除する。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、DVC100は、操作シーケンスの開始前に操作情報を記録し、操作シーケンスの完了後に操作情報を削除する。操作情報の記録先は、操作対象ファイルが記録されている記録媒体である。DVC100は、操作情報の記録及び削除と操作シーケンスとを含むファイル操作制御の実行中ではないタイミングで操作情報が検出された場合は、操作情報に従ってデータ修復処理を行う。
【0053】
これにより、記録装置が不揮発性メモリを備えない場合であっても、記録装置による記録媒体に対する操作シーケンスが途中で停止した場合に発生するデータ障害の修復が可能となる。
【0054】
[その他の実施形態]
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイルが保持する実データと当該ファイルを管理するための管理データとを別々に記録媒体に記録するファイルシステムを使用する記録装置であって、
ファイルに対する所定の操作の実行指示を受信する受信手段と、
前記受信手段で実行指示が受信された場合に、当該実行指示に関する操作の内容と操作対象ファイルとを示す操作情報を前記記録媒体に記録することと、前記操作情報の記録後に当該操作を実行することと、当該操作の完了後に当該操作情報を削除することと、を含むファイル操作制御を実行する制御手段と、
前記ファイル操作制御の実行が中断したか否かを判定するために、前記ファイル操作制御を実行中ではないタイミングで、前記記録媒体に操作情報が記録されているか否かを判定する判定手段と、
を備え、
前記判定手段で前記記録媒体に操作情報が記録されていると判定された場合に、前記制御手段は、当該操作情報が示す操作の内容と操作対象ファイルとに基づいて、前記中断したファイル操作制御の実行を再開するか、又は、当該操作対象ファイルの実データ及び管理データの状態を、前記中断したファイル操作制御の実行開始前の状態に戻して当該操作情報を削除する
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記操作情報として、前記受信手段で受信された実行指示に関する操作の内容と操作対象ファイルとを示すファイル名を持ち、実データを持たないファイルを前記記録媒体に記録することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記判定手段で前記記録媒体に操作情報が記録されていると判定され、当該操作情報が示す操作の内容がファイルの削除である場合に、前記制御手段は、当該操作情報が示す操作対象ファイルの実データ及び管理データが前記記録媒体に存在するか否かを判定することにより前記ファイル操作制御の実行が中断したタイミングを判定し、当該中断したファイル操作制御の実行を再開することを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記判定手段で前記記録媒体に操作情報が記録されていると判定され、当該操作情報が示す操作の内容が前記記録媒体に対するファイルのコピーである場合に、前記制御手段は、当該操作情報が示す操作対象ファイルの実データ及び管理データを削除することにより、当該操作対象ファイルの実データ及び管理データの状態を、前記中断したファイル操作制御の実行開始前の状態に戻すことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記受信手段で受信された実行指示に関する操作の内容がファイルの管理データの編集である場合、前記操作情報の記録後に当該操作を実行することは、当該管理データの編集の開始前に当該管理データの複製を前記記録媒体に生成することと、当該編集の完了後に当該複製を削除することと、を含み、
前記判定手段で前記記録媒体に操作情報が記録されていると判定され、当該操作情報が示す操作の内容がファイルの管理データの編集である場合に、前記制御手段は、当該操作情報が示す操作対象ファイルの管理データを前記複製に置き換えることにより、当該操作対象ファイルの管理データの状態を、前記中断したファイル操作制御の実行開始前の状態に戻すことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
ファイルが保持する実データと当該ファイルを管理するための管理データとを別々に記録媒体に記録するファイルシステムを使用する記録装置の制御方法であって、
受信手段が、ファイルに対する所定の操作の実行指示を受信する受信工程と、
制御手段が、前記受信工程で実行指示が受信された場合に、当該実行指示に関する操作の内容と操作対象ファイルとを示す操作情報を前記記録媒体に記録することと、前記操作情報の記録後に当該操作を実行することと、当該操作の完了後に当該操作情報を削除することと、を含むファイル操作制御を実行する制御工程と、
判定手段が、前記ファイル操作制御の実行が中断したか否かを判定するために、前記ファイル操作制御を実行中ではないタイミングで、前記記録媒体に操作情報が記録されているか否かを判定する判定工程と、
を備え、
前記判定工程で前記記録媒体に操作情報が記録されていると判定された場合に、前記制御手段が、当該操作情報が示す操作の内容と操作対象ファイルとに基づいて、前記中断したファイル操作制御の実行を再開するか、又は、当該操作対象ファイルの実データ及び管理データの状態を、前記中断したファイル操作制御の実行開始前の状態に戻して当該操作情報を削除する工程を更に備える
ことを特徴とする制御方法。
【請求項7】
コンピュータに、請求項6に記載の制御方法の各工程を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−198396(P2011−198396A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−61232(P2010−61232)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】