説明

記録装置及びその消費電力の制御方法

【課題】通信デバイスには省電力モード中に応答可能とするパケットを登録する機能があるが、登録可能なパケットの数は有限であるため特定のプロトコルのパケットのみを登録している。そのため他のプロトコルを使用する環境では通信デバイスが省電力状態に移行できず、電力の節約度合いが低くなっている。
【解決手段】機器でのプロトコルの使用状況を観測し、特定のプロトコルのみを使用する環境であった場合は、通信デバイスに登録するパケットの内容を使用中のプロトコルのパケットに置き換えてから通信デバイスも含めて省電力モードへ移行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録装置及びその電力消費制御方法に関し、特に、ネットワークと接続された記録装置及びその消費電力の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器における課題の一つとして、省資源化対策に伴う省電力化が求められている。省電力の基準としてはいくつかのガイドラインが設けられており、その規格に対応することにより省電力化が図られている。
【0003】
ホストコンピュータ(以下、ホスト)に接続して動作するような周辺機器、例えば、プリンタ装置なども常時動作するわけではないので特に省電力処理が必要とされている。この時考慮しなくてはいけない事項として、たとえ機器が省電力状態であってもユーザがその機器を使用したくなった場合はその指示に直ちに反応できるようにする必要がある。具体的な指示の方法として、機器の操作部を操作して指示を行う場合もあるが、近年ではホストから、例えば、LANなどのネットワークなどを介して指示を行うことが一般的になっており、通信部での省電力処理が求められている。
【0004】
現在でも、一部の通信デバイスにはこれらの事情を考慮したものがあり、装置が省電力状態であっても外部からの信号入力に反応可能なように構成されたものがある。そのようなデバイスでは装置に特定の入力信号パターンを登録しておくと、装置が省電力状態であっても登録したパターンと同じ信号を入力した場合に割り込み信号を発生させる機能を有している。
【0005】
しかしながら、そのようなデバイスにも登録可能なパターンの数に限りがあるという制限事項がある。通常は数個のパターンしか登録できないため、一部の入力信号パターンを選別して登録して使用している。従って、登録していない入力信号パターンに対しても機器を反応させたい場合は、通信デバイスを省電力状態に移行しないままに使用せざるを得ない。このような事態を改善するために、装置が省電力状態である場合に応答不要とする通信内容をユーザにより指定可能とするように構成して、登録するパターンを限定しようとするものがある(例えば、特許文献1参照)。また逆に、装置が省電力状態である場合に応答可能とする通信内容をユーザにより指定可能とするように構成して、登録するパターンを限定しようとするものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
このような技術により装置が省電力状態である場合に応答可能とする通信内容をユーザにより限定することが可能となるため、その設定内容によっては通信デバイスを省電力状態に移行可能であり、その結果、省電力の効果が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−191570号公報
【特許文献2】特開2006−309731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら上記従来例では、機器の使用環境が変化すると設定条件を見直さなくてはならなくなり、そのたび設定を更新しないと省電力効果が得られなくなるという問題点がある。加えて、そのためにはユーザ操作が必要とされるため、通信技術や機器に関してある程度の専門的な知識がユーザに必要となる。従って、このような技術や知識を有していないユーザにとっては適切な対応がとれないという問題がある。
【0009】
本発明は上記従来例に鑑みてなされたもので、ユーザが機器の使用環境の変化に煩わされることなく、ネットワークの使用環境に合わせて電力消費を削減可能な記録装置及びその消費電力の制御方法をを提供すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の記録装置は次のような構成からなる。
【0011】
即ち、ネットワークを介してパケット通信により他の装置との通信を行なう通信手段を介して受信したパケットに基いて記録媒体への記録を行い、前記通信の状況に応じて省電力状態への移行と前記省電力状態から通常電力状態への復帰が可能な記録装置であって、前記省電力状態でも前記他の装置からの通信に対して応答可能なパケットを記憶する記憶手段と、前記通信手段により受信されたパケットの通信に用いられたプロトコルの種別を判別する判別手段と、前記通信手段による通信に用いられるプロトコルの数が1種類であり、前記判別手段により判別されたプロトコルが前記記憶手段に記憶されたパケットに対応するプロトコルであれば、前記省電力状態への移行条件が満たされれば、前記記録装置を省電力モードに移行させる一方、前記判別手段により判別されたプロトコルが前記記憶手段に登録されたパケットに対応するプロトコルでないなら、前記記憶手段の内容を前記判別されたプロトコルに対応する応答可能なパケットで置換した後、前記記録装置を省電力モードに移行させるよう制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【0012】
また本発明を別の側面から見れば、ネットワークを介してパケット通信により他の装置との通信を行なう通信手段を介して受信したパケットに基いて記録媒体への記録を行い、前記通信の状況に応じて省電力状態への移行と前記省電力状態から通常電力状態への復帰が可能な記録装置の消費電力の制御方法であって、前記省電力状態でも前記他の装置からの通信に対して応答可能なパケットを記憶部に記憶する記憶工程と、前記通信手段により受信されたパケットの通信に用いられたプロトコルの種別を判別する判別工程と、前記通信手段による通信に用いられるプロトコルの数が1種類であり、前記判別工程において判別されたプロトコルが前記記憶部に記憶されたパケットに対応するプロトコルであれば、前記省電力状態への移行条件が満たされれば、前記記録装置を省電力モードに移行させる一方、前記判別工程において判別されたプロトコルが前記記憶部に登録されたパケットに対応するプロトコルでないなら、前記記憶部の内容を前記判別されたプロトコルに対応する応答可能なパケットで置換した後、前記記録装置を省電力モードに移行させるよう制御する制御工程とを有することを特徴とする記録装置の消費電力の制御方法を備える。
【発明の効果】
【0013】
従って本発明によれば、ユーザが使用環境のネットワーク状態を特に意識することなく使用環境、特に、使用されるプロトコルに合わせて装置を省電力状態に移行することができるという効果がある。また、ユーザによる設定処理も不要となるので、特に専門的な知識がユーザに無くても装置を省電力状態に移行することが可能になるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の代表的な実施例である記録装置が接続されるネットワーク環境の概要を示すブロック図である。
【図2】インクジェット記録装置の構成の概要を示す外観斜視図である。
【図3】図2に示したインクジェット記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示したネットワークに接続される各装置に備えられたネットワークインタフェースに対応する通信機能の構成を示す機能ブロック図である。
【図5】図1に示したネットワークに接続される各装置が実行するパケット受信時の制御手順の概要を示すフローチャートである。
【図6】本発明に従う装置での省電力モードへの移行時の制御手順の概要を示すフローチャートである。
【図7】本発明に係う装置での省電力モードからの復帰時の制御手順の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下添付図面を参照して本発明の好適な実施例について、さらに具体的かつ詳細に説明する。ただし、この実施例に記載されている構成要素の相対配置等は、特定の記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0016】
なお、この明細書において、「記録」(「プリント」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わない。さらに人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かも問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。
【0017】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
【0018】
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録(プリント)」の定義と同様広く解釈されるべきものである。従って、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
【0019】
図1は本発明の代表的な実施例である記録装置が接続されるネットワーク環境の概要を示すブロック図である。
【0020】
図1に示すシステム100にはN台のPCなどのホストコンピュータ(以下、ホスト)110、120、130と、M台のプリンタ140やMFP150がLAN160を介して相互に接続され、ネットワークシステムを構成している。
【0021】
LAN160には、TCP/IPを採用した、例えば、イーサネット(登録商標)、APPLETALK(登録商標)、ネットウェア(登録商標)などが用いられるが、他のネットワークが用いられてもよいことは言うまでもない。そして、LAN160に接続される各機器にはネットワークインタフェースが備えられている。このネットワークインタフェースは複数のプロトコルに対応したパケット通信が可能である。プリンタ140は、ホストからのデータを受信して記録媒体に画像や文字などを記録する。一方、MFP150はプリンタ140と同じ機能を果たすことに加え、画像原稿を読み取って得られた画像データをホストに送信したり、プリンタ140や自分自身のプリンタ部にその画像を記録することができる。これらネットワークに接続される各装置は、各装置に定められた条件が満足した場合に省電力モードに移行し、消費電力を節約できる機能を備えている。
【0022】
プリンタ140やMFP150には種々の記録方式(例えば、電子写真方式、インクジェット記録方式、熱転写方式など)に従った記録装置が内蔵されている。
【0023】
図2はインクジェット記録装置の構成の概要を示す外観斜視図である。
【0024】
図2に示すようにインクジェット記録装置(以下、記録装置)1はインクジェット方式に従ってインクを吐出して記録を行なうインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッド)3をキャリッジ2に搭載し、キャリッジ2を矢印A方向に往復移動させて記録を行う。記録紙などの記録媒体Pを給紙機構5を介して給紙し、記録位置まで搬送し、その記録位置において記録ヘッド3から記録媒体Pにインクを吐出することで記録を行なう。
【0025】
記録装置1のキャリッジ2には記録ヘッド3を搭載するのみならず、記録ヘッド3に供給するインクを貯留するインクカートリッジ6を装着する。インクカートリッジ6はキャリッジ2に対して着脱自在になっている。
【0026】
図2に示した記録装置1はカラー記録が可能であり、そのためにキャリッジ2にはマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロ(Y)、ブラック(K)のインクを夫々、収容した4つのインクカートリッジを搭載している。これら4つのインクカートリッジは夫々独立に着脱可能である。
【0027】
この実施例の記録ヘッド3は、熱エネルギを利用してインクを吐出するインクジェット方式を採用している。このため、電気熱変換体を備えている。この電気熱変換体は各吐出口のそれぞれに対応して設けられ、記録信号に応じて対応する電気熱変換体にパルス電圧を印加することによって対応する吐出口からインクを吐出する。
【0028】
図3は図2に示した記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【0029】
図2に示すように、コントローラ600は、MPU601、ROM602、特殊用途集積回路(ASIC)603、RAM604、システムバス605、A/D変換器606などで構成される。ここで、ROM602は後述する制御シーケンスに対応したプログラム、所要のテーブル、その他の固定データを格納する。ASIC603は、キャリッジモータM1の制御、搬送モータM2の制御、及び、記録ヘッド3の制御のための制御信号を生成する。RAM604は、画像データの展開領域やプログラム実行のための作業用領域等として用いられる。システムバス605は、MPU601、ASIC603、RAM604を相互に接続してデータの授受を行う。A/D変換器606は以下に説明するセンサ群からのアナログ信号を入力してA/D変換し、デジタル信号をMPU601に供給する。
【0030】
また、図3において、610は画像データの供給源となる図1に示したホストやMFPに対応するホスト装置である。ホスト装置610と記録装置1との間ではインタフェース(I/F)611を介して画像データ、コマンド、ステータス等をパケット通信により送受信する。このパケット通信については後で説明する。なお、インタフェース611としてUSBインタフェースをネットワークインタフェースとは別にさらに備え、ホストからシリアル転送されるビットデータやラスタデータを受信できるようにしても良い。
【0031】
さらに、620はスイッチ群であり、電源スイッチ621、プリントスイッチ622、回復スイッチ623などから構成される。
【0032】
630は装置状態を検出するためのセンサ群であり、位置センサ631、温度センサ632等から構成される。
【0033】
さらに、640はキャリッジ2を矢印A方向に往復走査させるためのキャリッジモータM1を駆動させるキャリッジモータドライバ、642は記録媒体Pを搬送するための搬送モータM2を駆動させる搬送モータドライバである。
【0034】
ASIC603は、記録ヘッド3による記録走査の際に、RAM604の記憶領域に直接アクセスしながら記録ヘッドに対して記録素子(吐出用のヒータ)を駆動するためのデータを転送する。加えて、この記録装置には、ユーザインタフェースとしてLCDやLEDで構成される表示部が備えられている。
【0035】
図4は図1に示したネットワークに接続される各装置に備えられたネットワークインタフェースに対応する通信機能の構成を示す機能ブロック図である。
【0036】
ネットワークインタフェースを構成する通信部501は各種インタフェースの一つまたは複数から構成される。通信部501には通信されるデータの一単位、これをパケットと表現するが、このパケットの送受信処理を行うパケット通信部511を備える。また通信部501が省電力状態であっても外部からのデータ受信を検知できるように、データ受信を検知可能となる特定のパケットを登録できる応答可能パケット登録部512を備える。
【0037】
応答可能パケット登録部512に登録できるパケットの数は無制限ではなく、ハードウェアの制限により限定した数になる。この実施例でのデバイスでは5個まで登録可能とする。
【0038】
制御部502は機器の各機能の実行を制御し、例えば、上述した記録装置1で言うならば、コントローラ600が対応する。制御部502は通信部501からの各種の入力動作に対応して各種処理の制御を行う制御ブロック521〜523などから構成される。パケット処理制御部521では、通信部501から入力されるパケットに対する処理を行い、必要ならその結果を通信部501へ返送する。プロトコル判定制御部522では、パケット処理制御部521で処理されるパケットのプロトコルの種類を判定する。その判定の結果は通信状況記憶部531に保存される。省電力制御部523では、機器全体の省電力制御を行う。例えば、記録装置のような機器では一定時間ユーザからの印刷指示入力が無いなどの特定の移行条件を満たした場合に通常電力状態から省電力状態への移行を制御する。省電力制御の対象とする部分及び内容は、通信状況記憶部531での内容により変化する。
【0039】
記憶部503は各種の記憶を行い、例えば、上述した記録装置1で言うならば、RAM604やROM602がこれに対応する。記憶部503は通信状況記憶部531、省電力設定記憶部532などの各種記憶部から構成される、各機器の仕様に依存するが、RAMやROMの他に、FeRAMやEEPROMなどの書き換え可能な不揮発性メモリを備えても良い。
【0040】
通信状況記憶部531には通信されるパケットの状態を記憶する。その記憶内容はプロトコル判定制御部522での判定結果を元に、通信されたパケットの数をプロトコル別に加算し、その累積数を記憶する。省電力設定記憶部532には、省電力状態時においても応答可能としたいプロトコルの種類や、各種のプロトコルにおいて省電力状態時に応答したいパケットをそれぞれ定義して記憶する。記憶するパケットの種類としては、例えば、プロトコルがTCP/IPの場合には、ARPパケットやブロードキャストパケットなどが挙げられる。
【0041】
表示部514は、上述のように、LCDやLEDで構成され、機器の状態や各種の処理結果をユーザに通知するために用いられる。
【0042】
図5は図1に示したネットワークに接続される各装置が実行するパケット受信時の制御手順の概要を示すフローチャートである。外部機器から通信部501を介して機器へのアクセスが行われてデータパケットを受信した場合に、このフローチャートに従って制御部502において処理が開始される。
【0043】
ステップS201では受信パケットを処理する。パケット処理制御部521はパケット通信部511を介して受信データを取得し、その内容に沿った処理を実行する。また処理の結果の返送が必要な場合はパケット通信部511を介してその返送データを外部機器へ送信する処理を行う。
【0044】
ステップS202では受信パケットのプロトコルの種別を判定する。パケット処理制御部521は受信データをプロトコル判定制御部522へ転送し、プロトコル判定制御部522ではそのデータから通信プロトコルの種別を判定する。
【0045】
ステップS203では通信状況記憶部531の内容を更新する。プロトコル判定制御部522は通信状況記憶部531の内容を読み取り、ステップS202での判定結果により該当するプロトコルの累積パケット数に今回の受信パケット数を加算して、その結果を通信状況記憶部531に記憶させて、処理を終了する。
【0046】
図6は図1に示したネットワークに接続される各装置が実行する省電力モードへの移行時の制御手順の概要を示すフローチャートである。各装置では一定時間ユーザからの入力が無いなどの特定の条件を満たした場合に通常電力状態から省電力状態へ移行する機能を有し、その条件が満たされた場合に、このフローチャートに従って制御部502において処理が開始される。
【0047】
ステップS301では装置がネットワークに接続中であるかどうかを調べる。省電力制御部523は通信部501の状態を調べ、ネットワークに接続中であれば、処理はステップS302へ進み、そうでなければステップS306へ進む。
【0048】
ステップS302では複数の種類のプロトコルが使用されているかどうかを調べる。通信状況記憶部531の記憶内容を調べることにより、各種のプロトコルの現在までの受信パケット数が分かる。これらの値を見て“0”でない値が複数あるかどうかを調べ、複数ある場合は複数の種類のプロトコルが使用されていると判断できる。複数の種類のプロトコルが使用されていると判別されたならば、処理はステップS309へ進み、そうでなければ(即ち、使用プロトコルは1種類なら)ステップS303へ進む。
【0049】
複数の種類のプロトコルが使用されている場合は、省電力状態時に応答したいパケット種類の数が多くなりすぎるために、その全てを応答可能パケット登録部512に登録できない。そのため、この場合は使用中の全てのプロトコルのパケットに対して応答可能なように、通信部501と制御部502と記憶部503に関しては省電力状態に設定することなく処理を進める。
【0050】
ステップS303ではさらに、現在省電力状態時に応答可能の対象としているプロトコルが使用されているかどうかを調べる。現在省電力状態時に応答可能の対象としているプロトコルの種類は省電力設定記憶部532に変数として記憶されており、その内容とステップS302で現在使用されていると判別された唯一のプロトコルとを比較する。その結果、両方のプロトコルの種類が同じであったならば、処理はステップS306へ進み、そうでなければステップS304へ進む。
【0051】
両方のプロトコルの種類が同じであるならば応答可能パケット登録部512の設定を変更する必要がないので、その処理(即ち、ステップS304〜S305)はスキップするのである。
【0052】
ステップS304では現在使用されているプロトコルの種類を応答対象プロトコルとして設定する。このことは、省電力制御部523は省電力設定記憶部532に記憶している変数を、ステップS302で現在使用されていると判断されたプロトコルの種類を示す値に変更することによりなされる。次に、ステップS305では応答可能パケットの登録を新しいプロトコル用に変更する。即ち、省電力制御部523は応答可能パケット登録部512に登録されているパケットの内容を、ステップS302で現在使用されていると判断されたプロトコルに対応したパケットに置換する。各プロトコルに対応する省電力時に応答したいパケットの情報は省電力設定記憶部532に記憶されており、省電力制御部523はその内容を参照する。
【0053】
ステップS306では通信部501を省電力状態に移行させる。省電力制御部523は各種のハードウェアの制御により、通信部501を省電力状態に設定する。
【0054】
ステップS307では通信部501、制御部502、記憶部503以外の部分を省電力状態に移行する。図4の例では表示部514をハードウェア制御により省電力の状態に設定する。
【0055】
ステップS308では記憶部503と制御部502を省電力状態に移行する。省電力制御部523は各種のハードウェアの制御により、まず、記憶部503を省電力の状態に設定し、その後、制御部502を省電力の状態に設定する。この結果、制御部502自身の動作は停止する。その後、外部からのイベントが発生すると、ハードウェア的にそれを検知して処理を継続する構成となっている。その処理内容について図7に示すフローチャートを参照して後述する。
【0056】
なお、省電力状態から復帰し、処理再開時点での処理が可能なように、制御部502と記憶部503の一部は通常の電力供給が行われた状態を保持する。
【0057】
ステップS309ではステップS307と同様に通信部501、制御部502、記憶部503以外の部分を省電力状態に移行し、処理を終了する。この場合は、通信部501、制御部502、記憶部503は省電力状態に移行しないため、ステップS303〜S308での処理の場合に比べて消費電力は大きくなる。
【0058】
図7は図1に示したネットワークに接続される各装置が実行する省電力モードからの復帰時の制御手順の概要を示すフローチャートである。装置が省電力状態の時に、例えば、外部機器から通信部501を介して省電力時も応答が可能なデータパケットを受信した場合に、このフローチャートに従った処理が制御部502において開始される。なお、省電力状態においての処理が可能なように、各装置の制御部502と記憶部503の一部は通常の電力供給が保持された状態になっている。
【0059】
ステップS401では制御部502が省電力状態にあるかどうか調べる。ここで、省電力状態であったならば、処理はステップS402へ進み、そうでなければステップS405へ進む。
【0060】
ステップS402では制御部502と記憶部503を省電力状態から通常電力状態に復帰させる。省電力制御部523は各種のハードウェアの制御により、まず、制御部502を通常電力の状態に設定し、その後、記憶部503を通常電力の状態に設定する。次に、ステップS403では通信状況記憶部531の記憶内容を初期化する。具体的には、通信状況記憶331に記憶された各種のプロトコルの現在までの受信パケット数を全て“0”に設定する。この処理により、次に装置が省電力状態に移行するまでにネットワークの使用状況が変化しても、その状況に応じて本発明の効果を維持することが可能となる。さらに、ステップS404では通信部501を省電力状態から通常電力状態に復帰させる。省電力制御部523は各種のハードウェアの制御により、通信部501を通常電力の状態に設定する。
【0061】
ステップS405では通信部501、制御部502、記憶部503以外の部分を省電力状態から通常電力状態に復帰させる。図4の例では表示部514の状態をハードウェアの制御により、通常電力の状態に設定する。
【0062】
最後に、ステップS406では省電力モードからの復帰トリガとなったイベントを処理して復帰処理を終了する。例えば、そのイベントが外部機器からのパケット受信であり、これが復帰トリガである場合は、そのパケットに対する処理を実施する。その処理内容は図5に示したフローチャートの処理に従う。
【0063】
従って以上説明した実施例によれば、ネットワークを介して1つのプロトコルでパケット通信を行なっている場合で、一定の条件が満たされたなら、装置を省電力状態に自動的に移行させることができる。特に、この移行において、通信部に登録されている省電力状態において応答可能なパケットが上記1つのプロトコルに従うパケットではない場合にもその登録を上記1つのプロトコルに従うパケットに自動的に置換することができる。これにより、ネットワークでの使用環境、特に、使用するプロトコルが変更された場合にも、ユーザ操作を行なわずとも、自動的に変更されたプロトコルに対応することができる。
【0064】
なお、以上説明した実施例では、LANに接続された装置を例として説明したが、本発明はこれによって限定されるものではない。接続されるネットワークはLANに限定されるものではなく、パケットにより情報を通信できるなら、WLANでも良いし、WANでも、LAN−WANでも良く、特定の種類のネットワークに限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介してパケット通信により他の装置との通信を行なう通信手段を介して受信したパケットに基いて記録媒体への記録を行い、前記通信の状況に応じて省電力状態への移行と前記省電力状態から通常電力状態への復帰が可能な記録装置であって、
前記省電力状態でも前記他の装置からの通信に対して応答可能なパケットを記憶する記憶手段と、
前記通信手段により受信されたパケットの通信に用いられたプロトコルの種別を判別する判別手段と、
前記通信手段による通信に用いられるプロトコルの数が1種類であり、前記判別手段により判別されたプロトコルが前記記憶手段に記憶されたパケットに対応するプロトコルであれば、前記省電力状態への移行条件が満たされれば、前記記録装置を省電力モードに移行させる一方、前記判別手段により判別されたプロトコルが前記記憶手段に登録されたパケットに対応するプロトコルでないなら、前記記憶手段の内容を前記判別されたプロトコルに対応する応答可能なパケットで置換した後、前記記録装置を省電力モードに移行させるよう制御する制御手段とを有することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記移行条件は、前記ネットワークを介して印刷指示入力が一定時間、ないことを含むことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記判別手段によりパケットの通信に用いられるプロトコルの数が複数あると判別された場合には、前記省電力状態への移行を行なわないことを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記通信手段は、前記省電力状態にある場合にも、前記記憶手段に記憶されたパケットが受信された場合には応答可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
ネットワークを介してパケット通信により他の装置との通信を行なう通信手段を介して受信したパケットに基いて記録媒体への記録を行い、前記通信の状況に応じて省電力状態への移行と前記省電力状態から通常電力状態への復帰が可能な記録装置の消費電力の制御方法であって、
前記省電力状態でも前記他の装置からの通信に対して応答可能なパケットを記憶部に記憶する記憶工程と、
前記通信手段により受信されたパケットの通信に用いられたプロトコルの種別を判別する判別工程と、
前記通信手段による通信に用いられるプロトコルの数が1種類であり、前記判別工程において判別されたプロトコルが前記記憶部に記憶されたパケットに対応するプロトコルであれば、前記省電力状態への移行条件が満たされれば、前記記録装置を省電力モードに移行させる一方、前記判別工程において判別されたプロトコルが前記記憶部に登録されたパケットに対応するプロトコルでないなら、前記記憶部の内容を前記判別されたプロトコルに対応する応答可能なパケットで置換した後、前記記録装置を省電力モードに移行させるよう制御する制御工程とを有することを特徴とする記録装置の消費電力の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−187827(P2012−187827A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53553(P2011−53553)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】