記録装置及び廃インク推定方法

【課題】 全面記録の際にインク吸収体に対して吐出されるインク滴の量をより安価で簡単な構成で高精度に推定することのできる記録装置及び廃インク推定方法を提供することである。
【解決手段】 記録媒体の搬送方向の後端をはみ出してインクを吐出して記録を行う際には、カウントされたプリントバッファ内の画像データに所定の係数を乗じることで得られる、見かけ上データ量が減少した計数値に基づいて、全面記録により記録媒体の後端をはみ出して記録ヘッドから吐出される廃インク量を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録装置及び廃インク推定方法に関し、特に、例えば、インクジェット方式によりインクを吐出して記録を行なう記録ヘッドにより、記録媒体上の全面に対して記録を行う記録装置及び廃インク推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりプリンタ、複写機、ファクシミリ等の記録装置として、画像情報に基づいたドットパターンを、紙やプラスチック薄板等の記録媒体上に形成することで画像を記録する記録装置が知られている。このような記録装置は、インクジェット式、ワイヤドット式、サーマル式、レーザビーム式等、様々な記録方式に従う記録装置がある。
【0003】
近年、このような記録装置に対しては、高速記録、高画質(高解像度)、低騒音などが要求されている。これらの要求に応える記録装置として、インクジェット方式を採用した記録装置(インクジェット記録装置)がある。インクジェット記録装置は、記録ヘッドの吐出口から吐出したインク(記録液)滴を記録媒体に付着させることにより画像が形成される。また、記録媒体とは非接触で記録を行うことが可能であるため、幅広い記録媒体に対して安定した画像を記録することができる。
【0004】
また、インクジェット記録装置の中でも記録媒体の搬送方向に垂直に往復運動する記録ヘッドを搭載したシリアルタイプの記録装置が広く知られている。シリアルタイプの場合には、記録ヘッドの大きさが小さくても良いため、様々な記録媒体のサイズに対応可能であること、複数ノズル列を持つことによる多色化が容易であること、重ね記録の回数により速度と記録画質の調整が容易であることなどの利点があるために、急速に知られることになった。
【0005】
さらに近年には、記録の際にインクを吐出する範囲を記録媒体の外側まで広げ、その記録媒体の周囲4辺からはみ出した範囲までインクを吐出させることで記録媒体の全面に対して記録を行う全面記録が可能な記録装置も知られている。なお、この全面記録は、記録媒体上の全面に対して記録を行うものであり、ふちを残して記録を行う方式と対比させて、「ふち無し記録」とも称されることがある。この全面記録は、具体的には、ホストから記録装置に対して、記録媒体のサイズよりも大きい領域を対象とした記録データを送るとともに、その記録媒体の先端部の前から記録を開始し、記録ヘッドを搭載したキャリッジの往復運動によりキャリッジ走査方向に関する記録範囲を記録媒体の外側まで広げ、さらに、記録媒体の後端部よりも外側まで記録を続けることによって記録媒体の4辺全てに余白がない全面記録を実現している。
【0006】
このような記録媒体の上下左右の余白をなくした全面記録が可能な記録装置では、記録媒体の上下左右の外側にはみ出して吐出されるインク滴により記録媒体を支持するプラテンなどへの汚染を防止するため、プラテン上に廃インク吸収体を設け、記録媒体以外にはみ出して吐出されるインク滴を吸収している。
【0007】
ここで、プラテン上の廃インク吸収体の記録媒体の搬送方向(副走査方向)の幅が記録ヘッドの記録幅よりも短い場合には、その記録媒体の先後端を記録するときに記録ヘッドで使用されるインク吐出ノズル(以下、ノズル)の数をプラテン上の廃インク吸収体の幅以下に制限する制御が行われている。
【0008】
このような全面記録時には、以下の2つの問題が生じる。1つは、プラテン上の廃インクに関するものであり、もう一つは使用ノズルを制限することによる画像記録時間の増加である。従って、従来からもそれらの問題に対処するための処置が講じられている。
【0009】
まず、1つ目の問題について述べる。
【0010】
即ち、プラテン上に設けられた廃インク吸収体の体積が限られているため、フチ無し記録枚数が増加するとその吸収体からインクがあふれ出してプラテンのインク汚れを引き起こしてしまうという問題である。
【0011】
従来から、このような全面記録が可能な記録装置においては、プラテン吸収体からのインクあふれを防止するための制御方法が提案されている。
【0012】
例えば、特許文献1には記録媒体の案内部にインクの受け穴を形成し、その受け穴内にインク吸収体を配置した上で、インク吸収体に吐出されるインク滴の量を積算計数する廃液量積算手段が具備されていることを特徴とする記録装置が提案されている。加えて、特許文献1には、吐出インク滴の量の替わりに所定値を積算する廃液量積算手段についても提案されている。
【0013】
さらに、記録媒体のサイズをキャリッジの移動方向(主走査方向)に分割してドットカウントウィンドウサイズを定め、インクジェット記録装置内の制御回路に備えられたプリントバッファ上でそのドットカウントウィンドウを用いてドットカウント行って、記録媒体外へはみ出して吐出される部分のインク量を計測する廃インク量計測手段も提案されている。
【0014】
次に、2つ目の問題について述べる。
【0015】
即ち、使用ノズル数が制限されることにより記録媒体の搬送方向に関し、記録媒体の先後端での記録速度が著しく低下してしまうという問題である。フチ無し記録の時には、前述のように、記録媒体よりも大きい範囲の画像データを生成する必要がある。このときのサイズは記録媒体の搬送精度や記録媒体サイズの誤差を考慮したうえで大きめに設定されるため、記録ヘッドの使用ノズル数を制限した状態でありながら、記録する領域が広くなるので、いっそう記録時間が増加してしまう。
【0016】
この問題に対応するため、従来より、記録装置本体で検知した記録媒体の後端位置に応じてホストから送られてくる画像データを切り捨て、もしくは記録を禁止する制御が提案されている。
【特許文献1】特開2001−301201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら上記従来例のように、記録媒体の4辺に余白のない全面記録を行う際、記録ヘッドの使用ノズルの制限による速度低下を防止するために、ホストから送られてくる画像データを記録装置本体内で切り捨てたり記録を禁止したりする制御を行なうと、記録装置のプリントバッファ中に保持されている画像データと、実際に記録媒体からはみ出して吐出されるインク量とで差が発生してしまう。
【0018】
このことは、全面記録において、プリントバッファ内の画像データに基づいてプラテン上の廃インク吸収体に吐出される廃インク量を推定する方法を用いた場合に、その推定精度が悪化するという問題が生じさせてしまう。
【0019】
本発明は上記従来例に鑑みてなされたもので、より安価で簡単な構成で高精度に全面記録の際にインク吸収体に対して吐出されるインク滴の量を推定することのできる記録装置及び廃インク推定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために本発明の記録装置は、以下のような構成からなる。
【0021】
即ち、記録ヘッドを記録媒体上を走査してインクを吐出し、記録媒体のサイズより大きなサイズの画像データを用いることで、記録媒体上の全面へ記録を行う全面記録が可能な記録装置であって、外部装置から入力した画像データを格納するプリントバッファと、前記記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段による前記記録媒体の搬送方向に関し、前記記録媒体の後端を検知する第1の検知手段と、前記記録ヘッドにより記録動作を生じさせる画像データを前記プリントバッファに格納された画像データに基づいてカウントする計数手段と、前記第1の検知手段によって検知した記録媒体後端から、一定の距離で前記プリントバッファに格納された画像データの記録を禁止する画像記録制限手段と、前記画像記録制限手段により制限された画像データを記録する際には、前記計数手段によりカウントされた画像データに所定の係数を乗じることで得られる、見かけ上データ量が減少した計数値を用いて、前記全面記録により前記記録媒体の後端からはみ出して前記記録ヘッドから吐出される廃インク量を推定する推定手段とを有することを特徴とする。
【0022】
さらに、前記全面記録により前記記録媒体の外側に吐出された廃インクを吸収する廃インク吸収体を有することが望ましい。
【0023】
なお、前記全面記録により記録媒体の後端からはみ出して記録を行う記録幅を変更可能な場合、その変更できる記録幅に従って前記所定の係数の値を変更する変更手段をさらに有することが望ましい。
【0024】
さらに、前記記録ヘッドを搭載したキャリッジを移動させる移動手段と、前記移動手段による前記記録ヘッドの移動方向に関し、前記記録媒体の端部を検知する第2の検知手段と、前記第2の検知手段によって検知した記録媒体の端部から、一定の距離で前記プリントバッファに格納された画像データの記録を禁止する画像記録制限手段とを有する場合には、前記推定手段が、前記第2の検知手段により検知された端部の記録の際には、前記計数手段によりカウントされた画像データに所定の係数を乗じることで得られる、見かけ上データ量が減少した計数値を用いて、前記全面記録により記録媒体の端部からはみ出して前記記録ヘッドから吐出される廃インク量を推定するようにもできる。
【0025】
またさらに、前記推定手段により推定された前記記録媒体をはみ出して前記記録ヘッドから吐出される廃インク量を累積する、例えば、その累積された廃インク量を格納する不揮発性メモリを含む累積手段を有することが望ましい。
【0026】
またさらに、前記不揮発性メモリに格納された累積廃インク量を所定の閾値と比較する比較手段と、前記比較手段により以降の記録動作を制御する記録制御手段とを有することが望ましい。
【0027】
また他の発明によれば、記録ヘッドを記録媒体上を走査してインクを吐出し、記録媒体のサイズより大きなサイズの画像データを用いることで、記録媒体上の全面へ記録を行う全面記録が可能な記録装置における全面記録時の廃インク推定方法であって、プリントバッファに格納された外部装置から入力した画像データに基づいて、前記記録ヘッドにより記録動作を生じさせる画像データをカウントする計数工程と、前記記録媒体の搬送方向に関し、前記記録媒体の後端を記録する際には、前記計数工程においてカウントされた画像データに所定の係数を乗じることで得られる、見かけ上データ量が減少した計数値に基づいて、前記全面記録により記録媒体の後端からはみ出して前記記録ヘッドから吐出される廃インク量を推定する推定工程とを有することを特徴とする廃インク推定方法を備える。
【発明の効果】
【0028】
従って本発明によれば、記録媒体の搬送方向の後端を記録する際には、カウントされたプリントバッファ内の画像データに所定の係数を乗じることで得られる、見かけ上データ量が減少した計数値に基づいて、全面記録の際に記録媒体の後端からはみ出して記録ヘッドから吐出される廃インク量を推定するので、プリントバッファ内の画像データからより正確に実際の全面記録により記録媒体をはみ出して吐出されるインク量を推定することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下添付図面を参照して本発明の好適な実施例について詳細に説明する。
【0030】
なお、この明細書において、「記録」(「プリント」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。
【0031】
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
【0032】
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録(プリント)」の定義と同様広く解釈されるべきもので、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
【0033】
またさらに、「ノズル」とは、特にことわらない限り吐出口ないしこれに連通する液路およびインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括して言うものとする。
【0034】
また、記録媒体の端部に余白を残さずに、記録媒体上の全面へ記録を行う方式を「全面記録」と称し、この全面記録の際に、記録媒体上以外、つまり記録媒体の外側に対してインクの吐出を行う部分を「はみ出し部」、或いは「ふち無し部」と称することとする。
【0035】
まず、本発明の実施例の説明に先立ち、本発明を適用可能なインクジェット記録装置の基本構成の一例を図1〜図3に基づいて説明する。
【0036】
図1は本発明の代表的な実施例であるインクジェット記録装置(以下、記録装置)の要部の概略構成図である。
【0037】
また、図2は、インクタンクを装着する記録ヘッドの斜視図である。
【0038】
図1において、記録装置の外装部材内に収納されたシャーシ3019は、所定の剛性を有する複数の板状金属部材によって構成されて、記録装置の骨格を成すものであり、次のような各記録動作機構を保持する。
【0039】
自動給送部3022は、用紙(記録媒体)を装置本体内へと自動的に給送する。搬送部3029は自動給送部3022から1枚ずつ送出される用紙を所定の記録位置へと導くと共に、その記録位置から排出部3030へと用紙を導く。矢印Yは、用紙の搬送方向(副走査方向)である。記録位置に搬送された用紙は、記録部によって所望の記録が行われる。この記録部に対しては、回復部5000によって回復処理が行われる。2015は紙間調整レバー、3006はLFローラ3001の軸受けである。
【0040】
記録部において、キャリッジ4001は、キャリッジ軸4021によって矢印Xで示されるキャリッジ移動方向(主走査方向)に移動可能に支持されている。キャリッジ4001には、図2に示すインクを吐出可能なインクジェット記録ヘッド(以下、記録ヘッド)1001が着脱可能に搭載される。記録ヘッド1001は、図2のように、インクを貯留するインクタンク1900と共に、ヘッドカートリッジ1000を構成する。インクタンク1900としては、写真調の高画質なカラー記録を可能とするために、例えば、ブラック、ライトシアン、ライトマゼンタ、シアン、マゼンタおよびイエロの各色独立の6つのインクタンクが用意されている。これら6つのインクタンク1900夫々は、記録ヘッド1001に対して着脱自在となっている。
【0041】
記録ヘッド1001はメイン基板1からフレキシブルケーブル12を経由して記録に必要なヘッド駆動信号を得る。また、インクを吐出するためのエネルギーとして、電気熱変換体から発生する熱エネルギーを利用するものが好ましい。その場合には、電気熱変換体の発熱によってインクに膜沸騰を生じさせ、そのときの発泡エネルギーによって、インク吐出口からインクを吐出することができる。
【0042】
回復部5000には、記録ヘッド1001におけるインク吐出口の形成面をキャップするキャップ(不図示)が備えられている。このキャップには、その内部に負圧を導入可能な吸引ポンプを接続してもよい。その場合には、記録ヘッド1001のインク吐出口を覆ったキャップ内に負圧を導入して、インク吐出口からインクを吸引排出させることにより、記録ヘッド1001の良好なインク吐出状態を維持すべく回復処理(吸引回復処理ともいう)をすることができる。また、キャップ内に向かって、インク吐出口から画像の記録に寄与しないインクを吐出させることによって、記録ヘッド1001の良好なインク吐出状態を維持すべく回復処理(吐出回復処理ともいう)を行なうことができる。
【0043】
また、キャリッジ4001には、図1に示すように、キャリッジ4001上の所定の装着位置に記録ヘッド1001を案内するためのキャリッジカバー4002が設けられている。さらに、キャリッジ4001には、記録ヘッド1001のタンクホルダ部と係合して、記録ヘッド1001を所定の装着位置にセットさせるヘッドセットレバー4007が設けられている。ヘッドセットレバー4007はキャリッジ4001の上部に位置するヘッドセットレバー軸に対して回動可能に設けられており、記録ヘッド1001と係合する係合部には、ばね付勢されるヘッドセットプレート(不図示)が備えられている。そのばね力によって、ヘッドセットレバー4007は記録ヘッド1001を押圧しながらキャリッジ4001に装着する。
【0044】
なお、キャリッジ4001の走査方向に沿って、記録ヘッド1001のインク吐出面とは対向してプラテン廃インク吸収体(不図示)が配され、全面記録にあたって、記録媒体の外側に吐出されたインク液滴を吸収するようにしている。また、プラテン廃インク吸収体は記録媒体が記録装置内に供給された場合には、その記録媒体の下側に位置するように配置されており、記録媒体が記録ヘッドとプラテン廃インク吸収体との間になるようになっている。
【0045】
図3は図1に示す記録装置の制御回路の概略構成を示すブロック図である。
【0046】
図3において、CPU100は記録装置の動作の制御処理やデータ処理等を実行する。ROM101はそれらの処理手順等のプログラムが格納され、また、RAM102はそれらの処理を実行するためのワークエリアなどとして用いられる。記録ヘッド1001からのインクの吐出は、CPU100が電気熱変換体などの駆動データ(記録データ)および駆動制御信号(ヒートパルス信号)をヘッドドライバ1001Aに供給することにより行われる。CPU100は、キャリッジ4001を主走査方向に駆動するためのキャリッジモータ103をモータドライバ103Aを介して制御し、また用紙(記録媒体)を副走査方向に搬送するための搬送モータ104をモータドライバ104Aを介して制御する。
【0047】
以上のような構成の記録装置において記録を行う場合には、まず、ホスト装置(以下、ホスト)200から外部I/F(不図示)を通して送出されてきた記録データをプリントバッファに一旦格納する。そして、キャリッジモータ103によってキャリッジ4001と共に記録ヘッド1001を主走査方向させつつ、記録データに基づいて記録ヘッド1001からインクを吐出させる記録動作と搬送モータ104によって用紙(記録媒体)を副走査方向に所定量搬送する搬送動作とを繰り返すことによって用紙(記録媒体)上に順次画像を記録する。
【0048】
次に、以上の構成の記録装置を共通実施例とした全面記録処理について説明する。
【実施例1】
【0049】
まず、図4〜図9を参照して、この実施例における全面記録処理で前提となる画像データと記録媒体の関係を説明する。
【0050】
図4は全面記録時の画像データと記録媒体の関係を示す図である。
【0051】
全面記録を行う場合、ホストでは画像データのサイズを記録媒体のサイズ(縦(記録媒体の搬送方向(副走査方向)):Y_media、横(キャリッジ走査方向(主走査方向)):X_media)より大きい縦(Y_data)と横(X_data)のサイズで生成し、記録装置に転送する。この時、画像データの縦横サイズは、確実に全面記録を実施するために、様々な誤差を考慮して決定される。例えば、横幅については記録媒体の給紙ずれや記録媒体の切断誤差を考慮し、キャリッジのホームポジション(HP)側のはみ出し量(X_1)を1mm、HPとは反対側のはみ出し量(X_2)を2mmなどと設定する。また、縦幅についても同様に先端頭だしの誤差、記録媒体の切断誤差、搬送量の誤差などを考慮し、先端はみ出し量(Y_1)を2mm、後端はみ出し量(Y_2)を3mmと設定する。
【0052】
図5は設定された4辺夫々のはみ出し量を表としてまとめた図である。
【0053】
図6は図4を用いて説明した各種誤差が中央値を取ったときの全面記録の画像データと記録媒体の関係を示す。
【0054】
図6から明らかなように、記録媒体よりも大きく画像データに基づく画像が記録され記録媒体の4辺に余白がない全面記録が実現されている。
【0055】
図7は記録媒体サイズの縦サイズが大きいときの全面記録の画像データと記録媒体の関係を示す図である。
【0056】
この場合、先端のはみ出し量(Y_1)は図6と同様であるが、記録媒体の縦サイズが長いため、図6と比較して後端はみ出し部分(Y_2)が小さくなっていることがわかる。記録媒体の搬送量の誤差が大きい場合にも同様な状態になってしまう。このような誤差があるために全面記録時には余分にはみ出して画像データを生成する必要があるのである。
【0057】
図8は図7に示すのとは逆に記録媒体が短かい場合の全面記録の画像データと記録媒体の関係を示す図である。
【0058】
この場合、図7に示すのとは逆に後端はみ出し部分(Y_2)が大きくなってしまう。記録媒体からはみ出して記録される部分はプラテン上に設けた廃インク吸収体にインクが吐出されるため、記録媒体の使用ノズルを制限する必要がある。しかし、その使用ノズルを制限した場合、画像記録に必要な時間が増加してしまう。はみ出して吐出される部分は画像形成には寄与していないにもかかわらず、使用ノズルを制限した状態で全画像データを吐出するまで記録動作は終了しないため、結果として記録時間が増加する。
【0059】
さて、図9は一般的な方法によって記録媒体後端部分の記録を禁止する様子を模式的に示す図である。
【0060】
図9に示すように、記録時間の短縮のため、ホストから送られてきた画像データによる記録を、検知した記録媒体の後端から所定の位置(この実施例では2mm)で禁止する制御を記録装置に実行するのが一般的であった。これは、記録媒体の後端検知を記録装置に設けられた媒体検知センサ(不図示)を用いて行うことで、搬送量誤差の影響や記録媒体のサイズ誤差などの影響を小さくすることが可能であるためである。この後端検知による画像データ切捨て制御によって、記録ヘッドの使用ノズルを制限して記録に時間のかかる部分の記録範囲を適切に狭めることが可能となっている。
【0061】
しかしながら、このような画像データ切捨て制御では、プリントバッファに展開された画像データの内、そのはみ出し部に相当する部分のドットカウントを行なってプラテン廃インク吸収体に吐出されるインク量を推定する場合、実際のインク吐出量が少なくなるので実際にプラテン吸収体に吐出されるインク量よりも多くのインク量が廃インク量として推定されてしまう。これは、プリントバッファを参照する時に、はみ出し部に対応する画像データが依然としてプリントバッファに残っているためである。このとき、ホスト側では記録装置で後端を検知する前に既に画像データの生成を行い、記録装置に転送し終えてしまっているため、記録媒体の後端検知によって画像データのサイズを変更することは困難である。
【0062】
以上のような検討を踏まえ、この実施例では全面記録における記録媒体の後端からはみ出す部分の廃インク推定誤差を少なくするために以下のような処理を行なう。
【0063】
図10は本発明の実施例1に従う記録媒体の後端の廃インク量推定処理を示すフローチャートである。
【0064】
まず、ステップS10では、記録媒体の後端はみ出し部に対応する画像データのドットカウント(インク吐出を生じさせる画像データ量をカウント)を行なう。この後端はみ出し部は上述した誤差がない場合の理想状態での画像データと記録媒体サイズから得ることができる。この実施例では、図5に示したように、後端はみ出し量は3mmである。
【0065】
次に、ステップS20ではステップS10で求めた後端はみ出し部のドットカウント値の合計(DIDEAL)に“2/3”を掛けて後端はみ出し部分のドットカウント値(Dest)を推定する。この係数は、この実施例では、画像データの後端はみ出し量(Y_2)が3mmであるのに対し、検知された記録媒体の後端部から2mmの位置で記録を禁止することから得られる値である。
【0066】
さらに、ステップS30では、ステップS20で得られた推定ドットカウント値(Dest)から後端はみ出し部分の廃インク量(RIwaste)を計算し、最後に、ステップS40において、その廃インク量を累積プラテン廃インク量(AIwaste)に加算する。
【0067】
図9に示したように、知られている一般的な方法では、3mmのはみ出し画像に対し無条件で記録媒体の後端部から2mmで記録動作を禁止していたため、後端はみ出し部で消費される廃インク量として実際にプラテン廃インク吸収体に吐出される量の1.5倍(3mm(画像データの後端はみ出し部の幅)/2mm(実際に記録される幅))の量を推定していたが、この実施例では、記録媒体の後端はみ出し部の廃インク量を正確に推定することができる。
【0068】
なお、ステップS40における廃インク量加算のタイミングは、キャリッジ走査毎、記録媒体の排紙後、記録ジョブ毎、記録ヘッドのキャッピング後、記録装置のパワーOFF時などとすることができる。そして、ステップS40で得られた累積廃インク量は記録装置のハードパワーOFF後も保持されている必要があるため、EEPROMなどの不揮発性メモリに記録する。
また、EEPROMは書き込み回数の上限が定められているため、記録装置の寿命や記録頻度によって、更新タイミングを予め決定しておく。例えば、記録装置の寿命が短い場合、キャリッジ走査毎にEEPROMへの書き込みを行なっても良いが、記録装置の寿命が長い場合には、より更新回数の少ない、記録媒体の排紙後や記録ヘッドのキャッピング後などに書込みを行なってEEPROMへの書き込み頻度を小さくすると良い。
【0069】
以上のような処理により、記録装置はプラテン廃インク量の数値が一定以上の場合、画像記録時にはホストを介して装置利用者に例えば警告メッセージを表示することで注意を促したり、或いは記録を許可しない制御を実行することで記録媒体へのインク汚れを未然に防止したりすることが可能となる。
【0070】
そして、以上のような処理により積算された廃インク量を所定の閾値(例えば、プラテン廃インク吸収体が吸収できるインク量、或いは、その吸収体からインクが溢れ出さない上限値など)と比較し、その比較結果、積算推定廃インク量がその閾値を越えたなら、CPUはこれ以後の全面記録は行なわないように、或いは記録動作を行なわないように制御する。
【0071】
以上述べたようにこの実施例に従えば、記録媒体の後端のはみ出し部に対応する画像データ量に一定の係数を掛けて、そのデータ量を見かけ上少なくし、その少なくしたデータに基づいて、記録媒体の後端はみ出し部で消費される廃インク量を推定するので、簡単な構成で、その推定精度を向上させることができる。
【実施例2】
【0072】
ここでは、図11〜図13を参照して、本発明の実施例2について説明する。
【0073】
全面記録では、はみ出して記録される部分の画像データが記録媒体上に記録されないため、元画像の一部が欠けてしまうこととなる。このため、この削除範囲を調整するためにはみ出し量の調節が可能な記録装置がある。このようなはみ出し量の調整が可能である記録装置においても、初期設定のはみ出し量を想定して実施例1に従うような制御を行なうことは可能であるが、はみ出し量に応じて掛け合わせる数値を変更可能であるほうが望ましい。
【0074】
図11ははみ出し量を大(5mm)/中(3mm)/小(1mm)として実施例1を適応した場合のドットカウント換算値と実際の記録幅との関係をまとめた図である。
【0075】
実施例1を適用した場合、後端はみ出し量が大(5mm)である場合、実際には検知された記録媒体の後端から2mmしか記録しないのに対して、後端はみ出し部分の画像幅(5mm)に2/3を掛けた画像幅が3.33mm相当のドットカウント値が得られてしまう。また、後端はみ出し量が小(1mm)の場合、実際には検知される記録媒体の後端からが1mm記録されるのに対して、後端はみ出し部分の画像幅(1mm)に2/3を掛けた画像幅が約0.67mmmm相当のドットカウント値がしか得られないことになる。
【0076】
いずれの場合にも、実施例1に従って、一定の係数を後端はみ出し部分の画像幅に乗じる処理では、実際に記録される画像幅(即ち、実際のインク消費量)とプリントバッファの画像データからカウントされるドットカウントとの間には差が発生し、正確な廃インク量の推定はできない。
【0077】
従って、はみ出し量を選択可能な記録装置では、選択されたはみ出し量に応じてドットカウント値に掛け合わせる係数を選択することが望ましい。
【0078】
図12は本発明の実施例2に従う記録媒体の後端はみ出し部の廃インク量推定処理を示すフローチャートである。なお、図12において既に実施例1で説明したのと同じ処理ステップには同じステップ参照番号を付し、その説明は省略する。
【0079】
まず、ステップ10では実施例1と同様に記録媒体の後端はみ出し部に対応する画像データのドットカウント(インク吐出を生じさせる画像データ量をカウント)を行なう。この実施例でも、記録媒体の後端はみ出し量は3mmとする。
【0080】
次に、ステップS15では記録装置に設定されたはみ出し量(Z)を取得し、さらにステップS18では設定はみ出し量(Z)が検知された記録媒体後端からの記録幅(WPrear、ここでは2mm)より大きいか否かを調べる。
【0081】
ここで、Z≧WPrearの場合、例えば、設定されたはみ出し量が大(Z=5mm)の場合、処理はステップS23に進み、ステップS10で得られたドットカウント値に記録媒体の後端からの記録幅と設定はみ出し量の比(WPrear/Z=(2/5))を掛けて記録媒体の後端フチ無し部分のドットカウント値を推定する。
【0082】
以下、実施例1と同様に、ステップS30とS40の処理を実行し推定されたドットカウント値から廃インク量を推定し、さらに推定廃インク量を累積プラテン廃インク量(AIwaste)に加算する。
【0083】
これに対して、Z<WPrearの場合、例えば、設定はみ出し量(Z)が小(1mm)で後端はみ出し量が検知された記録媒体の後端からの記録幅よりも小さかった場合、処理はステップS25に進み、ステップS10で得られたドットカウント値をそのまま記録媒体の後端はみ出し部分のドットカウント値として使用する。以下、実施例1と同様にステップS30〜S40を実行する。
【0084】
図13はフチなし量を大(5mm)/中(3mm)/小(1mm)として実施例2を適応した場合のドットカウント換算値と実際の記録幅との関係をまとめた図である。図13から明らかなように、この実施例では、後端からはみ出してインクを吐出する記録幅の設定が「大」「中」「小」のいずれにおいても、より正確に記録媒体の後端はみ出し部のドットカウントが行なわれている。
【0085】
以上説明した実施例に従えば、記録媒体の後端のはみ出し部に対応する画像データ量に設定された後端はみ出し記録幅に従った係数を掛けてそのデータ量を見かけ上少なくし、その少なくしたデータに基づいて、或いは、設定された後端はみ出し記録幅が短い場合にはその部分に対応する画像データに基づいて、記録媒体の後端はみ出し部で消費される廃インク量を推定するので、簡単な構成で、その推定精度を向上させることができる。
【0086】
なお、以上説明した実施例では、全面記録における記録媒体の後端部のはみ出し記録を例にとって説明したが本発明はこれによって限定されるものではない。
【0087】
本発明はホストで生成され記録装置に転送されてくる画像データ量と記録装置において実際の記録に用いる画像データ量とが異なる場合に、実際の記録に用いられた画像データ量にできるだけ近い値から全面記録において記録媒体の端部で消費される廃インク量を推定することに有効なものである。従って、キャリッジ移動方向(主走査方向)に関しても記録媒体の端部検知手段を備え、その端部からはみ出すような主走査方向の記録については画像データの使用を一部制限するような場合にも本発明を適用できることは言うまでもない。
【0088】
なお、この実施例では、プラテン廃インク吸収体を独立として扱ったが、プラテン吸収体が記録装置の内部に備えられたメインの廃インク吸収体と合体している場合にも、廃インク量管理の精度向上という点から本発明が有効であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の代表的な実施例であるインクジェット記録装置の全体構成の概要を示す外観斜視図である。
【図2】インクタンクを搭載する記録ヘッドの斜視図である。
【図3】図1に示した記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【図4】全面記録時の画像データと記録媒体の関係を示す図である。
【図5】実施例1における4辺はみ出し量の設定を示す図である。
【図6】一般的な方法において、各種誤差が中央値を取ったときの全面記録の画像データと記録媒体の関係を説明するための模式図である。
【図7】一般的な方法において、記録媒体の縦サイズが長い場合の全面記録の画像データと記録媒体の関係を説明するための模式図である。
【図8】一般的な方法において、記録媒体の縦サイズが短い場合の全面記録の画像データと記録媒体の関係を説明するための模式図である。
【図9】一般的な方法によって記録媒体後端部分の記録を禁止する様子を模式的に示す図である。
【図10】本発明の実施例1に従う記録媒体の後端はみ出し部の廃インク量推定処理を示すフローチャートである。
【図11】はみ出し量を変化させた場合で実施例1を適用した場合のドットカウントと実際の記録幅との関係を示す図である。
【図12】本発明の実施例2に従う記録媒体の後端はみ出し部の廃インク量推定処理を示すフローチャートである。
【図13】はみ出し量を変化させた場合で実施例2を適用した場合のドットカウントと実際の記録幅との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0090】
1 メイン基板
12 フレキシブルケーブル
100 CPU
101 ROM
102 RAM
103 キャリッジモータ
103A モータドライバ
104 搬送モータ
104A モータドライバ
1000 記録ヘッドカートリッジ
1001 インクジェット記録ヘッド
1001A ヘッドドライバ
1900 インクタンク
2015 紙間調整レバー
3001 LFローラ
3006 軸受け
3019 シャーシ
3022 自動給送部
3029 搬送部
3030 排出部
4001 キャリッジ
4007 ヘッドセットレバー
4021 キャリッジ軸
5000 回復部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドを記録媒体上を走査してインクを吐出し、記録媒体のサイズより大きなサイズの画像データを用いることで、記録媒体上の全面へ記録を行う全面記録が可能な記録装置であって、
外部装置から入力した画像データを格納するプリントバッファと、
前記記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段による前記記録媒体の搬送方向に関し、前記記録媒体の後端を検知する第1の検知手段と、
前記記録ヘッドにより記録動作を生じさせる画像データを前記プリントバッファに格納された画像データに基づいてカウントする計数手段と、
前記第1の検知手段によって検知した記録媒体後端から、一定の距離で前記プリントバッファに格納された画像データの記録を禁止する画像記録制限手段と、
前記画像記録制限手段により制限された画像データを記録する際には、前記計数手段によりカウントされた画像データに所定の係数を乗じることで得られる、見かけ上データ量が減少した計数値を用いて、前記全面記録により前記記録媒体の後端からはみ出して前記記録ヘッドから吐出される廃インク量を推定する推定手段とを有することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記全面記録により前記記録媒体の外側に吐出された廃インクを吸収する廃インク吸収体をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記全面記録により記録媒体の後端からはみ出して記録を行う記録幅を変更できる場合には、該変更できる記録幅に従って前記所定の係数の値を変更する変更手段をさらに有することを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記記録ヘッドを搭載したキャリッジを移動させる移動手段と、
前記移動手段による前記記録ヘッドの移動方向に関し、前記記録媒体の端部を検知する第2の検知手段と、
前記第2の検知手段によって検知した記録媒体の端部から、一定の距離で前記プリントバッファに格納された画像データの記録を禁止する画像記録制限手段とをさらに有し、
前記推定手段は、前記第2の検知手段により検知された前記端部の記録の際には、前記計数手段によりカウントされた画像データに所定の係数を乗じることで得られる、見かけ上データ量が減少した計数値を用いて、前記全面記録により記録媒体の端部からはみ出して前記記録ヘッドから吐出される廃インク量を推定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記録装置。
【請求項5】
前記推定手段により推定された前記記録媒体をはみ出して前記記録ヘッドから吐出される廃インク量を累積する累積手段をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項6】
前記累積手段は、前記累積された廃インク量を格納する不揮発性メモリを含むことを特徴とする請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記不揮発性メモリに格納された累積廃インク量を所定の閾値と比較する比較手段と、
前記比較手段により以降の記録動作を制御する記録制御手段とをさらに有することを特徴とする請求項6に記載の記録装置。
【請求項8】
記録ヘッドを記録媒体上を走査してインクを吐出し、記録媒体のサイズより大きなサイズの画像データを用いることで、記録媒体上の全面へ記録を行う全面記録が可能な記録装置における全面記録時の廃インク推定方法であって、
プリントバッファに格納された外部装置から入力した画像データに基づいて、前記記録ヘッドにより記録動作を生じさせる画像データをカウントする計数工程と、
前記記録媒体の搬送方向に関し、前記記録媒体の後端を記録する際には、前記計数工程においてカウントされた画像データに所定の係数を乗じることで得られる、見かけ上データ量が減少した計数値に基づいて、前記全面記録により記録媒体の後端からはみ出して前記記録ヘッドから吐出される廃インク量を推定する推定工程とを有することを特徴とする廃インク推定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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