説明

記録装置及び記録方法

【課題】1つのコンテンツデータに基づき、オリジナルのままのコンテンツデータの記録と、ある程度内容を変更したコンテンツデータの記録とを効率よく行う技術を提供する。
【解決手段】記録装置において、供給されるコンテンツデータを、実質的な変更を加えることなく第1の記録媒体21に記録する第1の記録手段11と、供給されるコンテンツデータに対して所定の変更を加える信号処理を施す信号処理手段12と、前記信号処理手段による信号処理が施されたコンテンツデータを第2の記録媒体に記録する第2の記録手段とを設け、供給される同一のコンテンツデータについて、前記第1の記録手段による記録、並びに前記信号処理手段による信号処理及び第2の記録手段による記録を同時に並行して行うようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテンツデータを記録する記録装置及び記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図2は従来の記録再生装置の構成を示すブロック図である。同図に示すように、この装置は、CDから記録データを読み出し、リニアPCMデータに変換して出力するCDメカ25、CDメカ25からのデジタル信号に対してデータ形式の変換等の処理を施すDSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)26、DSP26からの信号を記録するための記録媒体27を備える。
【0003】
この装置において、記録媒体27として複数のSDカードが存在する場合、CDメカ25にセットされた1枚のCDから該複数のSDカードへリッピングを行う場合には、各SDカードには同一内容のデータが記録される。その際、CDメカ25はCDに記録されているデータを読み出し、デコードしてリニアPCMデータに変換する。DSP26はこのデータをMP3やAAC等のデータ形式の信号に変換する。変換されたデータは、リッピングデータとして、各SDカードに記録される。
【0004】
一方、DSPとして、入力される楽音信号を、ボーカル成分を減衰させることによりカラオケ状態の信号として出力するものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。同文献の技術においては、さらに、ボーカル成分の音量を調整することができるようにしている。
【0005】
また、発話が聞き取りやすくなるように、発話データについて、音程を変化させることなく、音声速度のみを遅くする技術が知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平06−342295号公報
【特許文献2】特開2006−38956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述図2の従来技術によれば、CDから読み出した信号として、CDメカ25からは1種類のデジタル信号しか出力されない。そして、その信号についてDSP26により処理された同一の信号が各記録媒体に記録されるので、複数の記録媒体を有している場合であっても、各記録媒体に同時に記録されるのは同一内容のデータとなる。
【0008】
また、CDから読み出したデータに対してある程度の変更を加えたデータ、たとえば上述のボーカル成分を減衰させたカラオケ用のデータや、音声速度のみを遅くしたデータを記録する場合には、リッピングとは別個のタイミングにおいて、CDからデータを読み出し、DSP26によりボーカル成分を減衰させたり、音声速度を遅くしたりする処理を行いながら記録媒体27に記録する必要がある。したがって、同じCDからリッピングを行うとともに、カラオケ用等のデータの記録を行う場合には、CDを2度再生する必要があるので、手間がかかる。
【0009】
本発明の目的は、このような従来技術の問題点に鑑み、1つのコンテンツデータに基づき、オリジナルのままのコンテンツデータ記録と、ある程度内容を変更したコンテンツデータ記録とを効率よく行う技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するため、第1の発明に係る記録装置は、供給されるコンテンツデータを、第1の記録媒体に記録する第1の記録手段と、供給されるコンテンツデータに対して所定の変更を加える信号処理を施す信号処理手段と、前記信号処理手段による信号処理が施されたコンテンツデータを第2の記録媒体に記録する第2の記録手段とを具備し、供給される同一のコンテンツデータについて、前記第1の記録手段による記録を行う際に前記信号処理手段による信号処理及び第2の記録手段による記録をを行うことを特徴とする。
【0011】
第2の発明に係る記録装置は、第1発明において、前記第1の記録手段は、供給されるコンテンツデータに対してデータを圧縮して保存し、前記第2の記録手段は、コンテンツの内容の変更を伴う処理を行ったデータを保存することを特徴とする。
【0012】
第3の発明に係る記録装置は、第1又は第2発明において、前記所定の変更を加える信号処理は、ボーカル成分を除去する信号処理であることを特徴とする。
【0013】
第4の発明に係る記録装置は、第1又は第2発明において、前記所定の変更を加える信号処理は、再生時の再生速度が前記供給されるコンテンツデータと異なる信号処理であることを特徴とする。
【0014】
第5の発明に係る記録方法は、供給されるコンテンツデータを、第1の記録媒体に記録する第1の記録工程と、供給されるコンテンツデータに対して所定の変更を加える信号処理を施す信号処理工程と、前記信号処理工程による信号処理が施されたコンテンツデータを第2の記録媒体に記録する第2の記録工程とを具備し、供給される同一のコンテンツデータについて、前記第1の記録工程による記録を行う際に前記信号処理工程による信号処理及び第2の記録工程による記録をを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、供給される1つのコンテンツデータに基づき、実質的な変更がされていないコンテンツデータ、及び所定の変更が加えられたコンテンツデータの2つコンテンツデータを2つの媒体に記録することができる。したがって、1つのコンテンツデータに基づいて、オリジナルのままのコンテンツデータの記録と、データ内容を変更したコンテンツデータの記録とを効率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る記録再生装置の構成を示すブロック図である。同図
に示すように、この装置は、装置各部の制御や必要な情報処理を行うシステムマイコン11、システムマイコン11の指示に基づき、入力される信号についてエンコード、デコード等の信号処理を施すデジタル・シグナル・プロセッサ(以下、「DSP」という。)12、システムマイコン11の指示に基づき、CDを再生して再生信号をDSP12に供給するCDメカ部13、DSP12に接続された2つのメモリカードスロット14及び15、DSP12からのデジタルオーディオ信号をアナログ信号に変換するDAコンバータ17、DAコンバータ17からのアナログオーディオ信号を増幅する増幅部18、増幅部18において増幅されたオーディオ信号をスピーカ等により音声に変換して出力する出力部19、システムマイコン11に対して指示を与える操作を行うための操作部20、及びシステムマイコン11がユーザに対して提示する情報を表示する表示部21を備える。
【0017】
CDメカ13はCDの駆動や読取りを行うための機構を備えており、CDから読み出した楽曲コンテンツのデータをデコードしてリニアPCMに変換し、楽曲コンテンツのデジタル音声信号を出力する。
【0018】
システムマイコン11は操作部20を介して与えられる指示に応じ、CDメカ部13、DSP12等を制御し、CDメカ部13にセットされたCD、メモリカードスロット14又は15にセットされたメモリカード22又は23等から読み出した音声信号に基づき、出力部19から再生音を出力させることができる。また、CDからリッピングする楽曲データをメモリカード22や23に記録することもできる。DSP12はその際に、CDメカ部11や、DAC17、メモリカードスロット14又は15等の間に介在し、これらの間で送受される信号についてのエンコードやデコード等の必要な信号変換処理を行う。
【0019】
メモリカード22及び23には、MP3、WMA、AAC等の形式の楽曲コンテンツのファイルを格納することができる。メモリカード22及び23としては、たとえば、SDカード等のフラッシュメモリを用いることができる。CDからリッピングされる楽曲データは、MP3、WMA、AAC等の形式の楽曲ファイルに変換され、メモリカード22又は23に記録される。どの形式のファイルに変換するかはユーザが設定することができるようになっている。
【0020】
ユーザは、CDから読み出される同一の楽曲コンテンツについて、メモリカード22へのリッピングを行うと同時に、並行して他方のメモリカード23に対し、ボーカル成分を除去したり、再生速度を遅くしたりすることにより変更を加えたコンテンツを記録させることができる。つまり、DSP12は、CDメカ部13からの再生信号に対し、ボーカル成分を除去したり、再生速度を遅くしたりする変更を加える処理を施し、メモリカード23に対して記録を行う機能を備える。どのような変更を加えるかはユーザが設定できるようになっている。変更を加える処理を施したコンテンツのデータは所定の形式、たとえばMP3や、ACC、WMAのような形式で、メモリカード23に記録される。
【0021】
この構成において、ユーザが所望のCDをCDメカ部13にセットし、かつメモリカード22及び23をそれぞれメモリカードスロット14及び15にセットした後、操作部20により、CDからメモリカード22へのリッピングを行うとともに、CDの楽曲コンテンツについて所定の変更を加えてメモリカード23への記録を行う旨の指示を受けると、システムマイコン11は指示に従った処理を開始する。
【0022】
すなわち、システムマイコン11はCDメカ部13に対し、CDの再生を行い、再生信号を出力するように指示する。また、これと同時に、DSP12に対し、CDメカ部13からの再生信号を、指示されたMP3、ACC、又はWMAのファイル形式に変換してメモリカード22に記録するようにし、また、該再生信号について、ユーザ指示に応じてボーカル成分の除去したもの又は再生速度を遅くしたものを、メモリカード23に記録するように指示する。
【0023】
CDメカ部13は、システムマイコン11からの指示に応じ、セットされているCDから楽曲コンテンツのデータを読み出してPWM信号に変換し、再生信号として出力する。また、DSP12はシステムマイコン11からの指示に応じ、CDメカ部13からの再生信号をMP3や、ACC、又はWMAのファイル形式に変換し、当該楽曲コンテンツのオリジナルとしてメモリカード22に記録する。また、これと同時に、並行して、該再生信号に対し、ボーカル成分を除去し、又は再生速度を遅くする処理を行い、得られる信号をMP3、ACC、又はWMAの形式に変換して、メモリカード23に記録する。
【0024】
ボーカル成分を除去する処理は、たとえば、ボーカル成分はステレオ信号の各チャンネルにおいて同じ波形で存在することを利用し、各チャンネルの信号から他方のチャンネルの信号を減算することによって行うことができる。このような技術はボーカルキャンセラやボーカルリデューサとして周知のものである。
【0025】
再生速度を遅くする処理は、たとえば、再生速度に応じ、所定の単位でデータを重複させることによって、データを時間軸方向に膨張させることにより行うことができる。その際に、自己相関法によりピッチ周期を検出し、ピッチ周期に従って音声データの挿入を行うことによりピッチを維持したまま、話速のみを変更することができる。このような技術
は周知である。
【0026】
このようにしてメモリカード22には、データ形式の変換は行われているが、実質的な変更は加えられていないデータ、すなわち楽曲コンテンツのオリジナルのままのデータが記録される。一方、メモリカード23には、ボーカル成分が除去されたカラオケ用のデータ、又は再生速度を遅くする処理がなされたデータが記録される。ユーザは、メモリカード22に記録されたコンテンツデータに基づき、当該楽曲コンテンツを所望のときに再生し、享受することができる。また、メモリカード23に記録されたボーカル成分を除去したコンテンツデータに基づき、カラオケを楽しむことができる。あるいはメモリカード23に記録された再生速度を遅くする処理が施されたコンテンツデータに基づき、当該楽曲についての採譜を容易に行うことができる。
【0027】
本実施形態によれば、CDに記録されている楽曲コンテンツのデータを、実質的には変更が加えられていないオリジナルのままのデータとしてメモリカード22に記録すると同時に、これと並行して、DSP12により所定の変更処理を施してメモリカード23に記録することができる。したがって、オリジナルのままのコンテンツデータ、並びにボーカル成分を減衰させたカラオケ用のコンテンツデータや再生速度を遅くする処理をしたコンテンツデータを効率的に記録することができる。
【0028】
なお、本発明は上述実施形態に限定されることなく、適宜変形して実施することができる。たとえば、上述においては、記録を行うための記憶媒体としてメモリカード22及び23の2つを用いる場合について説明したが、これに限らず、3つ以上の記録媒体を用いるようにしてもよい。その場合、いずれか1つにはオリジナルのままのデータを記録すると同時に、他の各記録媒体には、カラオケ用のコンテンツや、再生速度を遅くする処理を施したコンテンツデータをそれぞれ一度に記録することができる。
【0029】
また、上述においては、CDメカ部13のCDに記録されたコンテンツのデータに基づいて記録を行うようにしているが、この代わりに、MDドライブやハードディスクドライブ、放送受信機等を設け、MDやハードディスクに記録されたコンテンツや、放送コンテンツのデータに基づいて記録を行うようにしてもよい。
【0030】
また、コンテンツの記録をメモリカードに対しデジタルで行うようにしているが、この代わりに、カセットテープ等に対しアナログで行うようにしてもよい。
【0031】
また、上述においては、ボーカル成分を除去する処理等を施すためにDSP12を用いているが、この代わりに、このような処理をソフトウェア及びCPUによって行うようにしてもよい。
【0032】
また、上述においては楽曲コンテンツの記録を行う場合について説明したが、本発明はこれ限らず、英会話等のコンテンツの記録を行う場合にも適用することができる。その場合には、コンテンツのオリジナルとともに、話速を遅くして聞き取りやすくした練習用のコンテンツを同時に記録することができる。
【0033】
また、上述においては、コンテンツデータを記録する記録媒体としてメモリカード22及び23を用いているが、この代わりに、たとえばUSBメモリや、CD−R、ハードディスク等の記録媒体を用いるようにしてもよい。それぞれの媒体に対し、それぞれのインタフェースを介して記録が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る記録再生装置の構成を示すブロック図である。
【図2】従来例に係る記録再生装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0035】
11:システムマイコン、12,26:DSP、13:CDメカ部、14,15:メモリカードスロット、17:DAコンバータ、18:増幅部、19:出力部、20:操作部、21:表示部、22,23:メモリカード、25:CDメカ、27:記録媒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給されるコンテンツデータを、第1の記録媒体に記録する第1の記録手段と、
供給されるコンテンツデータに対して所定の変更を加える信号処理を施す信号処理手段と、
前記信号処理手段による信号処理が施されたコンテンツデータを第2の記録媒体に記録する第2の記録手段とを具備し、
供給される同一のコンテンツデータについて、前記第1の記録手段による記録を行う際に前記信号処理手段による信号処理及び第2の記録手段による記録を行うことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記第1の記録手段は、供給されるコンテンツデータに対してデータを圧縮して保存し、前記第2の記録手段は、コンテンツの内容の変更を伴う処理を行ったデータを保存することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記所定の変更を加える信号処理は、ボーカル成分を除去する信号処理であることを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記所定の変更を加える信号処理は、再生時の再生速度が前記供給されるコンテンツデータと異なる信号処理であることを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
【請求項5】
供給されるコンテンツデータを、第1の記録媒体に記録する第1の記録工程と、
供給されるコンテンツデータに対して所定の変更を加える信号処理を施す信号処理工程と、
前記信号処理工程による信号処理が施されたコンテンツデータを第2の記録媒体に記録する第2の記録工程とを具備し、
供給される同一のコンテンツデータについて、前記第1の記録工程による記録を行う際に前記信号処理工程による信号処理及び第2の記録工程による記録を行うことを特徴とする記録方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−266310(P2009−266310A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115125(P2008−115125)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】