説明

記録装置

【課題】 ギャップ調整手段によってキャリッジがプラテンに対して接離移動した場合であっても、接離移動範囲において、常に前記キャリッジの姿勢を安定させることができる記録装置を提供すること。
【解決手段】 記録装置(11)は、キャリッジ13を被記録媒体(P)の幅方向Xに案内する第1ガイド部(14)と、被記録媒体(P)を支持するプラテン15と、駆動プーリ(22)と従動プーリ(24)とに巻回され、前記キャリッジ13と係合する無端ベルト30と、前記キャリッジ側を移動させ、記録ヘッド19と前記プラテン15との間の距離を変化させるギャップ調整手段(50)と、を備え、前記ギャップ調整手段(50)による前記キャリッジ13の前記プラテン15に対する接離移動範囲(S)において、前記無端ベルト30は、前記キャリッジ13を前記接離移動の一方向に付勢し、該一方向の向きは変化しない構成であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドを有するキャリッジと、該キャリッジを被記録媒体の幅方向に案内するガイド部と、前記記録ヘッドと対向し、被記録媒体を支持するプラテンと、幅方向の一端側に設けられた駆動プーリと、幅方向の他端側に設けられた従動プーリと、前記駆動プーリと前記従動プーリとに巻回され、前記キャリッジと係合する無端ベルトと、前記キャリッジ側を移動させ、前記記録ヘッドと前記プラテンとの間の距離を変化させるギャップ調整手段と、を備えた記録装置に関する。
【0002】
本願において、記録装置には、インクジェットプリンタ、ワイヤドットプリンタ、レーザープリンタ、ラインプリンタ、複写機、ファクシミリ等の種類が含まれるものとする。
【背景技術】
【0003】
従来では、特許文献1に示す如く、記録装置は、キャリッジと、ガイド部と、プラテンと、駆動プーリと、従動プーリと、無端ベルトと、ギャップ調整手段と、を備えていた。このうち、前記キャリッジは、用紙にインクを吐出する記録ヘッドを有していた。また、前記ガイド部は、前記キャリッジを用紙の幅方向に案内するように設けられていた。またさらに、前記プラテンは、前記記録ヘッドと対向し、被記録媒体を支持するように設けられていた。
【0004】
また、前記駆動プーリは、幅方向の一端側に設けられていた。またさらに、前記従動プーリは、幅方向の他端側に設けられていた。また、前記無端ベルトは、前記駆動プーリと前記従動プーリとに巻回され、前記キャリッジと係合するように構成されていた。またさらに、前記キャップ調整手段は、前記キャリッジ側を移動させ、前記記録ヘッドと前記プラテンとの間の距離を変化させることができるように構成されていた。
従って、用紙の厚みに応じて前記キャリッジ側を移動させ、前記記録ヘッドと前記プラテンとの間の距離を所望の距離に変化させることができた。
【特許文献1】特開平5-220969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記ギャップ調整手段によって前記キャリッジが変位した際、前記無端ベルトが前記キャリッジを付勢する方向が変化する虞がある。例えば、前記記録ヘッドと前記プラテンとの間の距離が大のとき、前記無端ベルトが前記キャリッジを前記プラテンに接近する方向へ付勢していたとする。そして、前記記録ヘッドと前記プラテンとの間の距離が小へ変化したとき、前記無端ベルトが前記キャリッジを前記プラテンから離間する方向へ付勢する虞がある。また、付勢力が無になる虞がある。係る場合、前記キャリッジの用紙に対する姿勢が不安定になる虞がある。前記キャリッジが軽い場合、該キャリッジが前記ガイド部から離間して浮き上がり、前記キャリッジの姿勢が不安定になる虞がある。所謂、キャリッジの浮き現象である。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、ギャップ調整手段によってキャリッジがプラテンに対して接離移動した場合であっても、接離移動範囲において、常に前記キャリッジの姿勢を安定させることができる記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様の記録装置は、記録ヘッドを有するキャリッジと、該キャリッジを被記録媒体の幅方向に案内する第1ガイド部と、前記記録ヘッドと対向し、被記録媒体を支持するプラテンと、幅方向の一端側に設けられた駆動プーリと、幅方向の他端側に設けられた従動プーリと、前記駆動プーリと前記従動プーリとに巻回され、前記キャリッジと係合する無端ベルトと、前記キャリッジ側を移動させ、前記記録ヘッドと前記プラテンとの間の距離を変化させるギャップ調整手段と、を備え、前記ギャップ調整手段による前記キャリッジの前記プラテンに対する接離移動範囲において、前記無端ベルトは、前記キャリッジを前記接離移動の一方向に付勢し、該一方向の向きは変化しない構成であることを特徴とする。
【0008】
本発明の第1の態様によれば、前記ギャップ調整手段による前記キャリッジの前記プラテンに対する接離移動範囲において、前記無端ベルトは、前記キャリッジを前記接離移動の一方向に付勢し、該一方向の向きは変化しない構成である。即ち、常に同じ方向へ付勢している。従って、前記ギャップ調整手段による前記キャリッジが前記接離移動した場合であっても、該接離移動範囲において、常に前記キャリッジの姿勢を安定させることができる。即ち、前記第1ガイド部と前記キャリッジとの間の隙間であるガタによって姿勢が不安定になる虞がない。その結果、良好な記録を実行することができる。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記一方向は、前記プラテンに接近する方向であることを特徴とする。
本発明の第2の態様によれば、第1の態様と同様の作用効果に加え、前記一方向は、前記プラテンに接近する方向である。
ここで、前記プラテンに接近する方向は、通常、前記キャリッジの自重が多少は作用する方向である。従って、前記キャリッジの自重作用と相俟って該キャリッジの姿勢を安定させることができる。即ち、前記一方向への付勢力が、自重によって相殺、減殺される虞がない。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様において、前記一方向は、鉛直方向下方であることを特徴とする。
本発明の第3の態様によれば、第1または第2の態様と同様の作用効果に加え、前記一方向は、鉛直方向下方である。従って、前記キャリッジの自重作用と相俟って、より確実に該キャリッジの姿勢を安定させることができる。
【0011】
本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれか一の態様において、前記従動プーリは、幅方向に変位可能に設けられ、付勢手段によって幅方向における外側へ付勢されていることを特徴とする。
本発明の第4の態様によれば、第1から第3のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、前記従動プーリは、幅方向に変位可能に設けられ、付勢手段によって幅方向における外側へ付勢されている。即ち、前記従動プーリは、前記無端ベルトの張力を一定に保つ所謂、テンションローラの役割を果たす。従って、前記ギャップ調整手段による前記キャリッジの前記接離移動を妨げる虞がない。
また、前記無端ベルトの張力を一定に保つことができるので、前記一方向の付勢力の大きさを安定させることができる。その結果、前記第1ガイド部と前記キャリッジとの間に生じる摺動負荷を安定させることができる。
【0012】
本発明の第5の態様は、第1から第4のいずれか一の態様において、被記録媒体の送り方向において、前記第1ガイド部と異なる位置に設けられ、前記キャリッジを幅方向に案内する第2ガイド部を備え、送り方向における前記第1ガイド部と前記第2ガイド部との間において、前記無端ベルトは、前記キャリッジを前記一方向へ付勢する構成であることを特徴とする。
【0013】
本発明の第5の態様によれば、第1から第4のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、被記録媒体の送り方向において、前記第1ガイド部と異なる位置に設けられ、前記キャリッジを幅方向に案内する第2ガイド部を備え、送り方向における前記第1ガイド部と前記第2ガイド部との間において、前記無端ベルトは、前記キャリッジを前記一方向へ付勢する構成である。従って、前記第1ガイド部および前記第2ガイド部によって、前記キャリッジの姿勢を精度良く決めることができる。
【0014】
具体的には、前記記録ヘッドのノズル形成面の姿勢を、前記幅方向に延設された前記第1ガイド部の軸を支点とした回動方向に安定させることができる。そして、前記キャリッジの重量が軽い場合であっても、前記キャリッジが前記ギャップ調整手段によらないで前記プラテンから離間する方向へ変位する所謂、浮きの発生を防止することができる。また、前記記録ヘッドが前記支点とした回動変位する大きさである所謂、おじぎ量を無にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すのは、本実施形態に係る画像形成装置としてのプリンタを示す斜視図である。
図1に示すように、プリンタ11は、四角箱状の本体12を有しており、本体12の中央領域には、キャリッジ13が、図1における左右方向(主走査方向)に沿って延びるように架設されたガイド主軸14に案内されて、主走査方向に往復移動自在に設けられている。
【0016】
図1に示すように、本体12の中央領域にはキャリッジ13と対向する下側位置に、長尺板状のプラテン15がその長手方向が主走査方向と平行となる状態で配置されている。プリンタ11の前面(図1における手前側の面)下部には、給紙用のカセット16が、前面側が開口するように本体12に形成された凹状の被装着部12Aに挿抜可能な状態で装着(挿入)されている。また、本体12の右端部前面を覆っているカバー12Bの内側には、複数個のインクカートリッジ17が装填されている。
【0017】
各インクカートリッジ17のインクは、フレキシブル配線板18に付設された図示しない複数本のインク供給チューブを通じてキャリッジ13にそれぞれ供給され、キャリッジ13の下部に設けられた記録ヘッド19(図2〜図7に示す)からインク滴が噴射(吐出)される。なお、記録ヘッド19には、インクを噴射させるための圧力をインクに付与する加圧素子(圧電素子、静電素子、発熱素子等)がノズル毎に内蔵され、加圧素子に所定の電圧が印加されることで対応するノズルからインク滴が噴射(吐出)される構成となっている。
【0018】
印刷時は、カセット16から給紙されてプラテン15上に位置する用紙Pに対して、キャリッジ13と共に主走査方向へ移動する過程の記録ヘッド19からインク滴が噴射されることにより、1ライン分の印刷が施される。こうしてキャリッジ13の一走査による印字動作と、次行までの用紙搬送動作とが交互に繰り返されることにより、用紙Pに対する印刷が進められる。また、本体12の左端前面下部には、電源スイッチを含む各種の操作スイッチ20が設けられている。
【0019】
図2に示すのは、本発明に係る記録部を示す斜視図である。また、図3に示すのは、本発明に係る記録部を示す平面図である。またさらに、図4に示すのは、本発明に係る記録部を1桁側からみた側面図である。また、図5に示すのは、本発明に係る記録部を示す正面図である。
【0020】
図2〜図5に示す如く、記録部40は、キャリッジ13と、記録ヘッド19と、キャリッジモータ21と、第1プーリ24と、第2プーリ27と、第3プーリ28と、無端ベルト30と、主軸としてのガイド主軸14と、副軸としてのガイドレール部33とを有する。
このうち、キャリッジモータ21は、基体部としてのモータステイ29に固定されている。また、キャリッジモータ21の軸には、モータピニオン22が設けられている。
尚、本実施例では、プリンタ11の正面からみて右側を幅方向1桁側、左側を幅方向80桁側とする。
【0021】
また、第1プーリ24は、用紙Pの幅方向Xにおける80桁側の80桁側プーリホルダ23に回動自在に保持されている。さらに、80桁側プーリホルダ23は、第1プーリ24を幅方向Xに所定範囲内において移動可能に保持している。そして、80桁側プーリホルダ23はコイルばね25を有し、コイルばね25によって第1プーリ24が幅方向外側に付勢されている。従って、後述する無端ベルト30にテンションを与えることができる。即ち、テンションローラの役割を果たすことができるように設けられている。
【0022】
またさらに、幅方向Xにおける1桁側には、第2プーリ27および第3プーリ28が回動自在に1桁側プーリホルダ26によって保持されている。
尚、1桁側プーリホルダ26は、モータステイ29と一体に形成されている。
また、無端ベルト30は、モータピニオン22と第1プーリ24と第2プーリ27とに巻回されている。即ち、無端ベルト30の内周面は、モータピニオン22、第1プーリ24および第2プーリ27の外周と接触するように巻回されている。そして、無端ベルト30の下側ベルト32の外周面は、第3プーリ28の外周と接触するように巻回されている。
【0023】
ここで、「下側ベルト」とは、無端ベルト30のうち、幅方向Xに張られた第1プーリ24および第2プーリ27間の高さ方向Zにおける下側のベルトをいう。
また、無端ベルト30の上側ベルト31の一部は、キャリッジ13に設けられた係合部36と係合している。
ここで、「上側ベルト」とは、無端ベルト30のうち、幅方向Xに張られた第1プーリ24および第2プーリ27間の高さ方向Zにおける上側のベルトをいう。
【0024】
従って、キャリッジモータ21が駆動すると、無端ベルト30が送られてキャリッジ13に動力が伝達される。また、キャリッジ13は、軸挿通孔37と、凸部34とを有する。
このうち、軸挿通孔37にはガイド主軸14が挿通される。一方、凸部34は、ガイド主軸14と平行に設けられたガイドレール部33の溝部33aと係合し案内されるように設けられている。
【0025】
またさらに、キャリッジ13には、エンコーダセンサ35が設けられている。エンコーダセンサ35は、ガイド主軸14と平行に設けられたエンコーダスケール38を読み、幅方向Xにおけるキャリッジ13の位置を検出することができるように設けられている。
本実施形態のキャリッジ13は、用紙Pの幅方向Xおよび送り方向Yに対して直交する高さ方向Zにおいて、薄い薄型に設けられている。従って、ガイド主軸14と、ガイドレール部33との位置関係は、高さ方向Zに大きく異なるのでははく、送り方向Yに大きく異なる位置関係となる(図4参照)。
【0026】
具体的には、キャリッジ13における送り方向上流端近傍に、ガイド主軸14が挿通される軸挿通孔37が設けられている。一方、キャリッジ13における送り方向下流端近傍に、ガイドレール部33と係合する凸部34が設けられている。その結果、記録ヘッド19の姿勢は、ガイド主軸14を支点として下流側(凸部側)が下がるように回動する量である所謂、おじぎ量を殆ど無にすることができる。
【0027】
また、送り方向Yにおけるガイド主軸14とガイドレール部33との間において、無端ベルト30とキャリッジ13とが係合部36によって係合するように構成されている。
ここで、高さ方向Zにおいて、第1プーリ24の上端と第2プーリ27の上端との位置を同じにすることによって、上側ベルト31の姿勢を幅方向Xと略平行にすることができる。ここで、「略平行」とは、厳密な意味で平行ではないことをいう。厳密には、上側ベルト31の姿勢は後述するように水平線H(図6および図7参照)に対して傾いている。
【0028】
そして、キャリッジ13を薄型に設けたことによって、上側ベルト31のすぐ近傍にガイド主軸14が配設されている。
そこで、キャリッジモータ21を高さ方向Zにおいて、第1プーリ24および第2プーリ27の位置と異なる位置に設けると共に、第2プーリ27および第3プーリ28を用いて、無端ベルト30をL字状に引き回す構成としている。従って、幅方向Xにおいて、キャリッジモータ21をキャリッジ13の移動範囲内(W)に設けることができる(図2、図3および図5参照)。
その結果、キャリッジ13を薄型に設けた場合であっても、幅方向Xにおいて、プリンタ11が大型化する虞がない。即ち、キャリッジモータ21をキャリッジ13の移動範囲の外側に設けることによるプリンタ11の大型化を防止することができる。
【0029】
尚、キャリッジモータ21を上側ベルト31および下側ベルト32より下方に設けたが、下方にはプラテン15やカセット16等を設けた際の空きスペースがある。従って、該空きスペースを利用することにより、高さ方向Zにプリンタ11が大型化する虞はない。
またさらに、第3プーリ28を設けることによって、無端ベルト30の一周の領域を小さくすることができる。従って、該小さくした分、スペースを有効利用することができる。その結果、さらにプリンタ11を小型化することができる。
【0030】
また、記録部40は、記録ヘッド19とプラテン15との間の距離(PG:プラテンギャップ)を調整するPG調整手段50を有する。具体的にはPG調整手段50は、第1カム51と、第2カム52と、第1基準部53と、第2基準部54と、ガイド基部55とを有する。
このうち、第1カム51は、ガイド主軸14と一体に設けられ、ガイド主軸14を支点に回動するように構成されている。そして、第1カム51は、図示しないPG用モータの動力によって回動するように設けられている。
【0031】
また、第2カム52は、ガイド基部55に設けられ、カム支点52aを支点に回動するように構成されている。さらに、第2カム52は、図示しないリンクバーによって第1カム51と連結されている。従って、第2カム52は、PG用モータの動力を受けて回動することができる。
またさらに、ガイド基部55は、ガイド主軸14、ガイドレール部33およびエンコーダスケール38を保持すると共に、高さ方向Zに変位可能に設けられている。
【0032】
また、プリンタ11の本体12の基体部には、第1基準部53および第2基準部54が設けられている。このうち、第1基準部53は、第1カム51と当接するように設けられている。一方、第2基準部54は、第2カム52と当接するように設けられている。
尚、第1カム51、第2カム52、第1基準部53および第2基準部54は、幅方向Xの両側に一対設けられているものとする。本願説明において、片側についてのみ説明し他方についての説明は同様であるので省略する。
【0033】
そして、用紙Pの厚みが変わる等の記録仕様が変更される際、図示しない制御部によってPG用モータ(図示せず)が駆動される。従って、第1カム51および第2カム52が回動する。
このとき、第1基準部53および第2基準部54の位置は固定されているので、ガイド基部55が高さ方向Zに変位する。これに伴い、ガイド主軸14およびガイドレール部33もガイド基部55と一体に高さ方向Zに変位する。その結果、記録ヘッド19とプラテン15との間の距離PGを変更調整することができる。即ち、用紙Pの厚みに応じて所望の前記距離PGを得ることができる。
【0034】
図6に示すのは、本発明に係るPG最大状態における無端ベルトを示す正面断面図である。また、図7に示すのは、本発明に係るPG最小状態における無端ベルトを示す正面断面図である。
図6および図7に示す如く、PG調整手段50によって、キャリッジ13は高さ方向ZへPG調整移動可能距離Sの範囲内において変位することができる。
ここで、キャリッジ13の「PG調整移動可能距離の範囲」とは、高さ方向Zにおいて、前記距離PGが最小のときのキャリッジ13の位置(図6参照)から、前記距離PGが最大のときのキャリッジ13の位置(図7参照)まで距離Sの範囲をいう。
【0035】
そして、キャリッジ13は、PG調整移動可能距離Sの範囲において、無端ベルト30の上側ベルト31によって常にPG調整移動方向である高さ方向Zに付勢されるように設けられている。具体的には、上側ベルト31が、係合部36を介してキャリッジ13を高さ方向下側であるプラテン側へ付勢している。
ここで、高さ方向下側は、鉛直方向下側である。
従って、無端ベルト30の上側ベルト31による高さ方向下側への付勢力が、キャリッジ13の自重によって減殺、相殺される虞がない。キャリッジ13の自重作用と相俟って、より確実にキャリッジ13の姿勢を安定させることができる。
【0036】
より具体的には、上側ベルト31は、正面からみて、係合部36を山頂とした山形状に僅かに屈曲することによって、高さ方向下側へキャリッジ13を付勢することができる。即ち、左右の斜め下に向かう張力の合力によって、キャリッジ13を高さ方向下側へ付勢することができる。
ここで、図6および図7には、上側ベルト31が、図6および図7の符号Hに示す水平線に対して、左右斜め下へ傾いていることがはっきりと記載されている。
従って、キャリッジ13の軸挿通孔37と、ガイド主軸14との間の僅かな隙間である所謂、ガタによってキャリッジ13の姿勢が変化する虞がない。
【0037】
また、上側ベルト31がキャリッジ13を付勢する箇所は、送り方向Yにおいて、ガイド主軸14とガイドレール部33との間である(図4参照)。従って、キャリッジ13の凸部34と、ガイドレール部33の溝部33aとを安定して接触させることができる。即ち、軸挿通孔37とガイド主軸14との接触および凸部34と溝部33aとの接触の両方を安定させることができる。その結果、凸部34が溝部33aから離間する所謂、浮き現象が発生する虞がない。キャリッジ13が小型化、軽量化されている場合にキャリッジ13の姿勢を安定させることができ、特に有効である。また、プリンタ11の全体が振動した場合にも、キャリッジ13の姿勢を安定させることができ有効である。
【0038】
尚、係合部36を基準として幅方向左右の上側ベルト31の姿勢が左右対称でなくてもよい。左右対称でなくても、高さ方向下側への付勢力を発生させることができるからである。
また、左右対称でなくても、キャリッジ13の幅方向Xにおける姿勢が不安定になる虞はない。ガイド主軸14によって規制されているからである。
【0039】
さらに、上側ベルト31がキャリッジ13を付勢する方向は、PG調整移動可能距離Sの範囲において、常に高さ方向下側である。即ち、上側ベルト31が高さ方向Zにおいてキャリッジ13を付勢する方向は、常に同じである。
従って、PG調整を実行した際、キャリッジ13の姿勢が不安定になる虞がない。また、PG調整と実行したことによって、キャリッジ13の姿勢が不安定になる虞がない。
【0040】
また、前述したように、第1プーリ24は幅方向Xに変位可能に設けられており、コイルばね25によって幅方向外側へ付勢されている。即ち、テンションローラの役割を果たすように設けられている。従って、距離PGが最小の状態(図6参照)から距離PGが最大の状態(図7参照)へ変化した際、第1プーリ24は、コイルばね25の付勢力に抗して幅方向内側へ変位することができる。
【0041】
その結果、上側ベルト31がキャリッジ13を高さ方向下側へ付勢する付勢力の変化を小さくすることができる。即ち、PG調整が実行された場合であっても、上側ベルト31がキャリッジ13を高さ方向下側へ付勢する付勢力を安定させることができる。これにより、キャリッジ13がガイド主軸14およびガイドレール部33と接触する箇所の摩擦抵抗の大きさを安定させることができる。その結果、PG調整を行った場合であっても、良好な記録を実現することができる。
【0042】
また、上側ベルト31がキャリッジ13を高さ方向下側へ付勢する付勢力によって、前述したPG調整手段50の精度を安定させることができる。具体的には、第1カム51と第1基準部53とを確実に接触させることができる。同様に第2カム52と第2基準部54とを確実に接触させることができる。即ち、第1カム51および第2カム52が、第1基準部53および第2基準部54から離間する虞がない。
【0043】
本実施形態の記録装置の一例であるプリンタ11は、記録ヘッド19を有するキャリッジ13と、キャリッジ13を被記録媒体の一例である用紙Pの幅方向Xに案内する第1ガイド部としてのガイド主軸14と、記録ヘッド19と対向し、用紙Pを支持するプラテン15と、幅方向Xの一端側に設けられた駆動プーリとしてのモータピニオン22と、幅方向Xの他端側に設けられた従動プーリである第1プーリ24と、モータピニオン22と第1プーリ24とに巻回され、キャリッジ13と係合する無端ベルト30と、キャリッジ側を移動させ、記録ヘッド19とプラテン15との間の距離を変化させるギャップ調整手段であるPG調整手段50と、を備え、PG調整手段50によるキャリッジ13のプラテン15に対する接離移動可能距離Sの範囲において、無端ベルト30は、キャリッジ13を接離移動の一方向に付勢し、該一方向の向きは変化しない構成であることを特徴とする。
【0044】
また、本実施形態において、前記一方向は、プラテン15に接近する方向であることを特徴とする。
またさらに、本実施形態において、前記一方向は、鉛直方向下方であることを特徴とする。
また、本実施形態において、第1プーリ24は、幅方向Xに変位可能に設けられ、付勢手段の一例であるコイルばね25によって幅方向Xにおける外側へ付勢されていることを特徴とする。
【0045】
またさらに、本実施形態において、用紙Pの送り方向Yにおいて、ガイド主軸14と異なる位置に設けられ、キャリッジ13を幅方向Xに案内する第2ガイド部であるガイドレール部33を備え、送り方向Yにおけるガイド主軸14とガイドレール部33との間において、無端ベルト30は、キャリッジ13を前記一方向へ付勢する構成であることを特徴とする。
【0046】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係るプリンタの全体を示す斜視図。
【図2】本発明に係る記録部を示す斜視図。
【図3】本発明に係る記録部を示す平面図。
【図4】本発明に係る記録部を示す側面図。
【図5】本発明に係る記録部を示す正面図。
【図6】本発明に係るPG最大状態における無端ベルトを示す正面断面図。
【図7】本発明に係るPG最小状態における無端ベルトを示す正面断面図。
【符号の説明】
【0048】
11 プリンタ、12 本体、12A 被装着部、12B カバー、13 キャリッジ、
14 ガイド主軸、15 プラテン、16 カセット、17 インクカートリッジ、
18 フレキシブル配線板、19 記録ヘッド、20 操作スイッチ、
21 キャリッジモータ、22 モータピニオン、23 80桁側プーリホルダ、
24 第1プーリ、25 コイルばね、26 1桁側プーリホルダ、27 第2プーリ、
28 第3プーリ、29 モータステイ、30 無端ベルト、31 上側ベルト、
32 下側ベルト、33 ガイドレール部、33a 溝部、34 凸部、
35 エンコーダセンサ、36 係合部、37 軸挿通孔、38 エンコーダスケール、
40 記録部、50 PG調整手段、51 第1カム、52 第2カム、
52a カム支点、53 第1基準部、54 第2基準部、55 ガイド基部、
H 水平線、P 用紙、S PG調整移動可能範囲、X 幅方向、Y 送り方向、
Z 高さ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ヘッドを有するキャリッジと、
該キャリッジを被記録媒体の幅方向に案内する第1ガイド部と、
前記記録ヘッドと対向し、被記録媒体を支持するプラテンと、
幅方向の一端側に設けられた駆動プーリと、
幅方向の他端側に設けられた従動プーリと、
前記駆動プーリと前記従動プーリとに巻回され、前記キャリッジと係合する無端ベルトと、
前記キャリッジ側を移動させ、前記記録ヘッドと前記プラテンとの間の距離を変化させるギャップ調整手段と、を備え、
前記ギャップ調整手段による前記キャリッジの前記プラテンに対する接離移動範囲において、前記無端ベルトは、前記キャリッジを前記接離移動の一方向に付勢し、
該一方向の向きは変化しない構成である記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、前記一方向は、前記プラテンに接近する方向である記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の記録装置において、前記一方向は、鉛直方向下方である記録装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の記録装置において、前記従動プーリは、幅方向に変位可能に設けられ、付勢手段によって幅方向における外側へ付勢されている記録装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の記録装置において、被記録媒体の送り方向において、前記第1ガイド部と異なる位置に設けられ、前記キャリッジを幅方向に案内する第2ガイド部を備え、
送り方向における前記第1ガイド部と前記第2ガイド部との間において、前記無端ベルトは、前記キャリッジを前記一方向へ付勢する構成である記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−233931(P2009−233931A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80590(P2008−80590)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】