説明

記録装置

【課題】例えば医療用のリストバンドの作成において、ある種のアレルギーを有する者に禁忌薬の情報が誤って入力された場合、あるいは通信過程でエラーが生じた場合などにおいて、不適切な情報が記録されたリストバンドの作成を未然に防止する。
【解決手段】少なくとも2種の情報(例えば傷病者のアレルギー情報および当該傷病者に投与すべき薬剤情報)を入力し、それらを記録媒体(リストバンド)に記録する場合において、当該2種の情報の適合性を記録装置への登録情報に基いて検証する。そして、不適合の場合(投与薬剤がアレルギーの禁忌薬である場合)には、記録媒体への記録が許容されないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関し、特に記録すべきものとして入力される情報の記録の可否を定めることが可能な記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
記録装置は、一般に、パーソナルコンピュータ(PC)その他の装置から送信された記録データに基いて記録を行うように構成されている。従って、ユーザが本来記録すべきでない情報のデータを作成・入力した場合や、送信過程で何らかの理由により当該データの破損が生じた場合などでも、記録装置は受信したデータに基いて情報の記録動作を行ってしまうことになる。
【0003】
一方、記録装置は、オフィスや家庭などにおいて文書や画像を一般的な用紙に記録するだけでなく、様々な分野に幅広く適用されるようになってきており、医療分野におけるリストバンドへの記録もその適用例の一つである。かかるリストバンドには、傷病者の氏名、血液型、アレルギーの有無やその種類、傷病の種類および投与すべき薬剤などが記録可能であり、医療事故ないし医療過誤の防止の効果が期待される。しかし、そもそもリストバンドに誤った情報が記録されてしまっていては意味がない。
【0004】
そのため、特許文献1では、リストバンド作成時における人手による入力をできるだけ抑制し、既に登録されている個人医療情報に基づいてリストバンドを作成する構成が提案されている。具体的には、個人医療情報を取得し、当該取得した情報からカラー表示情報および文字記号表示情報を抽出し、これらに基いてリストバンドに記録すべき情報のデータを作成して、記録動作を行うインクジェットプリンタに供給するシステムが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−58805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、医療情報データベースへのアクセスまたはカルテに表示されたコードの読み取りを通じて個人医療情報が取得されることが記載されている。このことから、特許文献1は、ある程度の設備を持つ医療機関で通常の医療業務を行うことを想定しているものと考えられ、またその状況下では有効であると考えられる。
【0007】
しかしながら、医療の分野においては、実際には様々な状況が存在し得る。例えば、災害が発生したとき、その発生現場もしくは搬送先の医療機関で傷病者に対し診療を行うことも考えられる。そのように、緊急を要し、また傷病者も多数あるような状況では、特許文献1に記載のシステムが有効に対応できるとは限らない。そのような状況では、やはり人手によるデータ入力に頼らざるを得ない場合が多いと考えられる。また、初診その他の理由で個人医療情報が存在していない場合にも、人手によるデータ入力を行わざるを得ない。
【0008】
そしてこの過程で誤入力が生じた場合、従来の一般的な記録装置で記録を行うと、誤った情報が記録されたリストバンドが作成されてしまうことになる。そして、例えば傷病者がある種のアレルギーを有しているにも拘らず、投与すべき薬剤としてそのアレルギーの禁忌薬の情報が記録されてしまったような場合、重大な医療事故につながる恐れがある。また、たとえ入力が適切であったとしても、記録装置への送信の過程でデータが破損してしまった場合、誤った情報が記録されてしまったり、逆に記録されるべきであった情報が記録されていなかったりすることになるので、同様に問題である。
【0009】
本発明は、以上のような問題に鑑みてなされたもので、記録媒体への誤った情報の記録を未然に防止できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのために、本発明は、入力された少なくとも2種類の情報に基いて、記録媒体に対し記録を行う記録装置であって、
前記少なくとも2種類の情報の適合性を判定する判定部と、
当該判定された適合性の有無に応じて前記記録の可否を制御する制御部と、
を具えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、少なくとも2種の情報を入力し、少なくともその一方を記録媒体に記録する場合において、当該2種の情報の適合性の有無を判定し、不適合の場合には記録媒体への記録が許容されないように処理される。従って、例えば医療用のリストバンドの作成において、ある種のアレルギーを有する者に禁忌薬の情報が誤って入力された場合や、記録装置への通信過程でエラーが生じた場合において、不適切な情報が記録されたリストバンドの作成を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0013】
(記録装置の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置形態の記録装置の構成を説明するための模式的側面図である。また、図2および図3はそのインクジェット記録装置の記録ヘッド周辺の構成を説明するための模式的側面図、図4はその模式的上面図である。
【0014】
全体を符号で示すインクジェット記録装置101の筐体上には、ロール状に巻かれたリストバンドウェブ102がセットされ、そのセット位置から巻き出されたリストバンドウェブは、ローラ107を介して装置内に連続的に搬送される。そして、記録ヘッド103K、103C、103Mおよび103Yと対向する記録位置を通過した後、装置外に排出される。リストバンドウェブ102には、記録動作後にリストバンドとして利用できるようにするために、1枚ずつ分離し易くするためのミシン目が設けられている。またリストバンド(ページ)の境界部を記録装置が認識できるよう、被記録面とは反対側の面のミシン目近傍には予めマークが印刷されている。記録装置は、マーク検知センサ108によりこのマークを検知することで、各記録ヘッドによりリストバンドの適正な位置に記録を行うことができる。またリストバンドの境界部に切り欠きを設け、マーク検知センサ108でページ境界部を検出する。
【0015】
本例の装置には、記録媒体であるリストバンドウェブ102に対してフルカラー記録を行うべく、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)のインクを吐出する記録ヘッド103K、103C、103Mおよび103Yが設けられる。なお、特定しない場合には、記録ヘッドを符号103で総括的に参照する。
【0016】
記録ヘッド103K、103C、103Mおよび103Yは記録ユニット201に設けられ、図4に示すように、印刷方向(リストバンドウェブ102の搬送方向)に並置される。そして、各記録ヘッド103は、搬送方向に交差する方向に、使用され得るリストバンドウェブ102の被記録幅に対応した範囲に所定密度で配列されたインクの吐出口を有する。例えば、各記録ヘッド103は、600dpi(ドット/インチ;参考値)の密度で616個の吐出口が配列され、約1インチ幅を記録できるものとすることができる。リストバンドは、記録後にウェブから切り離されて使用され、この際被装着部位の寸法(例えば傷病者などの手首の太さ)に合わせて長さが調節される。図4における802および803は留め穴であり、留め穴802についてはリストバンドの一端部から中央に向けて複数設けられ、留め穴803については他端部に1つ設けられている。そして、被装着部位の寸法(手首の太さ)に合わせて複数の留め穴802のいずれかと留め穴803との位置合わせを行い、それらに留め具を挿通することで調節を行うことができる。なお、複数の留め穴802の両側には所要の情報が記録される領域800があり、例えば情報の種類に応じて背景色を適宜記録することができる。
【0017】
記録ヘッド103は保持部202により保持されるとともに、保持部202とともに鉛直方向に昇降可能である。また、各記録ヘッド103に対応するキャップ207aを有した回復ユニット207は水平方向に移動可能に保持されている。
【0018】
図2は、保管状態もしくは記録待機中など非記録時の状態であり、各記録ヘッド103の吐出口形成面にキャップ207aが接合している。非記録時に記録ヘッドの吐出口形成面が大気に曝されていると、吐出口付近のインクの溶剤が蒸発してインクの増粘・固化が生じたり、塵埃が付着したりして吐出不良が生じる恐れがある。これを防ぐために、非記録時には吐出口形成面にキャッピングが施されるようにしている。また、インクを吐出する記録ヘッドはその特性上、安定したインク吐出状態が継続して得られるようにするために、吐出回復処理を行うことが望ましい。図2は回復ユニット207によるそのような回復処理を可能とする状態でもある。吐出回復処理には、記録ヘッドへのインク供給系を加圧してインクを循環させたり、インクを吐出口からキャップ内に強制排出させたりする加圧回復動作や、記録前にキャップに向けて記録ヘッドに予備的な吐出動作を行わせる予備吐出動作が含まれる。また、ゴム等の弾性部材でなるワイパーブレードで記録ヘッドの吐出口形成面をワイピングすることで清浄化する動作も含まれる。回復ユニット207は、これらの動作が行われるようにするための部分を有している。
【0019】
図2の状態から記録動作が可能な状態に移行する場合には、保持部202を一旦上昇させてから回復ユニット207を左方に退避させ、さらに回復ユニット207のキャップ207a間に設けた開口に各記録ヘッド103が対向するようにする。そして保持部202を下降させ、図3に示すように、回復ユニット207の開口から記録ヘッド103を下方に突出させ、リストバンドウェブ102と所定の間隙をもって対向する位置に設定することで、記録動作(インク吐出)が可能な状態となる。この状態から非記録時の状態に設定する場合は、逆の動作を行えばよい。
【0020】
(記録システムの構成例)
図5は、記録すべき情報に対応したデータの供給源をなす外部装置であるパーソナルコンピュータ(PC)形態のホスト装置501と、上述したインクジェット記録装置形態の記録装置101とを具えた記録システムの一実施形態を示すブロック図である。ユーザがホスト装置501に対して入力したデータは、ホスト装置501において適宜圧縮処理等が施され、例えばUSBケーブル503を介して記録装置101に送信される。
【0021】
図6は、本実施形態に係る記録装置101の制御系の構成例を示すブロック図である。制御部601は、CPU602、フラッシュメモリ603、受信データ展開用のメモリ604、USB制御部605、ASIC606、記録すべき情報の格納用のメモリ607、ヘッドドライバ608、モータドライバ609および表示ドライバ610を具える。
【0022】
CPU602は、フラッシュメモリ603に格納されている制御プログラムに対応した処理を実行し、各部を制御する。フラッシュメモリ603には、その制御プログラムのほか、固定のデータ、例えば後述する登録情報テーブルが格納される。PC501からUSB制御部605を介して受信したコマンドおよび圧縮データは一旦メモリ604に格納され、ASIC606に転送される。ASIC606は、自らに接続された記録データ格納用のメモリ607に対し、転送データをビットマップ展開しながら保存するとともに、保存データを適宜読み出しながらヘッドドライバ608に転送する。またASIC606は、記録の際にモータや搬送系のエンコーダ(図示しない)や、マーク検知センサ108の状態を確認しながら、モータドライバ609を制御する。さらに、ASIC606は、記録装置101の状態をユーザに報知するべく、表示ドライバ610を介して、表示部であるLCDなどの表示器612に表示を行わせる。
【0023】
ヘッドドライバ608は、記録すべき情報に対応したデータ等に基いて記録ヘッド103K〜103Yを駆動する。モータドライバ609は、各種モータを駆動する。各種モータとは、記録ヘッド103および吐出回復ユニット207の移動を行わせるためのモータ、インク供給系内でのインク循環やインクの強制排出を行わせるポンプ等の駆動源をなすモータ、およびリストバンドウェブ102の搬送駆動源をなすモータ等である。
【0024】
図7は、ホスト装置501で稼動するプリンタドライバの構成図であり、記録装置101に送信されるデータはプリンタドライバのソフトウェアによって処理される。
【0025】
ユーザがアプリケーションソフトウェア702で作成した画像は、ユーザにより記録処理が指示された場合に、プリンタドライバ701にRGBの記録データとして提供される。これにあたって、まず、アプリケーションソフトウェア702より提供されたデータから、記録パラメータ処理部703によって記録媒体(リストバンド)のサイズや記録画像サイズなどが取り出される。そして、記録装置101で処理できるよう、記録パラメータのコマンドに変換される。
【0026】
次に、記録しようとする情報の中で規定の画像を記録する部分については、記録データコマンド生成部704により、その画像の大きさ、色コードおよび文字コードなどを指定するデータコマンドとして生成される。一方、規定画像以外の画像を記録する部分については、色変換・2値化処理部705により、記録装置101で用いるインク色に対応したCMYKの画像データに変換される。さらに、吐出口からの吐出の有無を定めるために2値化処理され、データ圧縮処理部706で圧縮される。
【0027】
そして、記録パラメータコマンド、データコマンドおよび圧縮データは、記録すべき情報を示す記録データとして、ランゲージモニタ,ポートモニタと呼ばれるUSBポートドライバ708などとのポート通信を制御するポート通信処理部707に送信される。そしてさらに、USBケーブル503を介して記録装置101に送信される。
【0028】
なお、上述の構成では、記録データはPC形態のホスト装置501からUSBケーブルを介して供給されるものとしたが、ネットワーク等種々の通信方式でも同様に実現可能である。また、通信は有線で行われるものでも、無線で行われるものでもよく、またその双方を可能としてもよい。
【0029】
さらに、データの供給源をなす情報入力手段は適宜のものを採用できる。本発明を医療用のリストバンドの作成に使用する場合を考慮すると、かかる使用は整った環境下で行われるとは限らず、また図8について後述するようなリストバンドに記録される情報は上述した圧縮を要するような精細な情報は少ないと考えられる。このため、記録装置101は簡便な入力手段の接続が可能であることが好ましい。簡便な入力手段としては、入力パッドであってもよいし、図6に示すように、文字・数字・記号などのキャラクタキーを配列したキーボード616であってもよい。特に、キーボード616は、汎用性が高く、現在では相当数の者が操作に習熟しているため、多数の傷病者に関する情報を緊急に入力しなければならないような場合に使用されて好適なものである。その意味で、キーボードインターフェース614を記録装置に具えることは有効である。キーボード616がUSBに対応したものであれば、USB制御部605に対して接続を行うこともできる。
【0030】
(記録処理)
図8および図9は、記録装置101で記録されたリストバンドの2例を示す。
【0031】
リストバンド801は、ウェブ102から切り離されて使用され、この際被装着部位に巻き付けられ、その寸法(例えば傷病者などの手首の太さ)に合わせて長さが調節される。その調節位置では留め穴802のいずれかと留め穴803とが合わされ、これらに留め具が挿通されることで、環状となった状態で留められる。
【0032】
留め穴802および803がない領域には、例えば装着者の個人情報(氏名、住所など)の記録部分804と、その情報の管理用のバーコード805の記録部分とがある。留め穴802の両側には、血液型の記録部分806、アレルギー情報の記録部分807、治療等に使用される薬剤808および809の記録部分があり、必要に応じてこれらの部分には適宜の背景色が記録される。例えば、アレルギー情報の記録部分807には、装着者が何らかのアレルギーを持つ場合に、背景色とともにそのアレルギーの種類を記録することができる。なお、これらの情報の種類および配置は単なる例示であることは言うまでもない。
【0033】
図8および図9を比較すると、薬剤情報の記録部分809に記録される薬剤名が異なっている。すなわち、図8では「Medicine B」と記録される一方、図9では「Medicine C」と記録されている。例えば、傷病者の持つアレルギーに対して薬剤「Medicine C」が禁忌薬であったとすると、図9のリストバンドは誤った情報を担持しており、明らかに不適切なものである。これは、ユーザが誤ったデータを入力したことに起因するが、従来の一般的な記録装置で記録を行った場合、そのように不適切なリストバンドが作成されてしまうのである。
【0034】
図10は、本実施形態に係る記録処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0035】
ホスト装置501においてアプリケーションプログラム702を用いて記録データが作成される。そして、記録装置101が起動されているときに(ステップS1001)、プリンタドライバ701を介して記録が指示されると、ホスト装置501から記録装置101へ記録データが送信される。記録装置101がその記録データを受信すると(ステップS1002)、その記録データが適正なものであるか否か、すなわちこれが示す情報の記録を行ってよいものであるか否かが判定(検証)される(ステップS1003)。すなわち、例えば今記録しようとする情報を担持するリストバンドの装着者がある種のアレルギーを有している場合、そのアレルギーに対する禁忌薬が投与薬剤として指定されていないことの検証を行う。つまり、このステップS1003が本発明の判定部をなす。
【0036】
図11(a)は、その検証に供されるテーブルの一例であり、これは例えばフラッシュメモリ603に登録しておくことができる。このテーブルには、アレルギーの種類(アレルギー名)に禁忌薬を対応付けたデータが格納される。すなわち、入力された2種の情報(アレルギー名および薬剤)に関し、一方の情報に他方の情報が適合しないことを示すテーブルを用意するのである。
【0037】
なお、そのような適合性の有無の検証に供されるテーブルとしては、種々のものを用意しておくことができる。例えば、図11(b)に示すように、併用禁忌の薬剤同士を示すテーブルが用意されていてもよい。また、現在または過去の疾病に対して禁忌となる薬剤を示したテーブルや、妊娠時の禁忌薬を示したテーブルを用意することもできる。
【0038】
また、これらのようなテーブルを構成するデータとしては、記録に係る情報を示すデータが文字列を示すコマンドとして送信されてくるものであれば、当該コマンドに対応したものとすることができる。あるいは、記録に係る情報を示すデータが画像の圧縮データとして送信されてくるものであれば、当該圧縮データ、またはこれをビットマップ展開したデータ、またはその特徴を抽出したデータに対応したものとすることができる。あるいは、PC形態のホスト装置501やキーボード616など種々の情報入力手段が接続されることを考慮して、コマンドおよび画像の双方に対応したものとすることも可能である。
【0039】
以上のようなテーブルを参照して検証を行った結果、情報間の不適合がなく、記録を行っても問題ないと判断された場合には(ステップS1004)、そのままリストバンド(リストバンドウェブ102の一部)への記録を行う(ステップS1005)。そして、本手順を終了して次のリストバンドに対する処理に備える。
【0040】
一方、情報間の不適合がある場合には(ステップS1004)、表示器612と、PC形態のホスト装置501が通常備えるディスプレイとの少なくとも一方にエラーメッセージを表示する(ステップS1006)。そして、記録データを破棄して記録中止処理を行う(ステップS1007)。すなわち、この場合は記録が拒否されることになる。なお、エラーメッセージには、情報間の不適合がある旨と、その内容との報知を含めることができる。また、報知の態様としては、表示に替え、または表示とともに、音声により行うものであってもよい。
【0041】
以上説明したように、本実施形態においては、特定の情報を記録する場合において、適合性のない少なくとも2つの情報の組み合わせがあった場合、記録が拒否されることになる。従って、不適切な記録媒体、すなわち禁忌薬が投与薬剤として記録されたような医療用リストバンドが作成されず、医療過誤または医療事故を未然に防止することができる。
【0042】
(その他)
なお、上記実施形態においては、ユーザが誤ったデータを入力したことに起因して適合性のない情報の組み合わせが送信されてきた場合の例について説明した。しかしデータ入力は適切に行われたにも拘らず、USB503の通信異常等によって受信データが別のデータとして認識されてしまったような場合にも、不適切なリストバンドの作成を未然に防ぐことができる。これは、通信の過程で一部のデータが消失してしまったような場合、例えばアレルギーに関する情報を示すデータが消失してしまったような場合でも同様である。すなわち本発明は、機械が行う最終的なフェイルセーフの機能を提供するものであり、これはいずれの情報入力装置が採用される場合であっても有効なものである。
【0043】
また、上述したようなキーボード616を直結して情報入力する場合、すべての入力が完了してから検証を行い、エラーある場合はその報知を行うのではなく、入力過程で入力情報の適否を判定し、その時点で報知を行うようにすることも可能である。
【0044】
また、上記実施形態においては、適合性のない情報の組み合わせを予めテーブル化して登録し、これを参照することで検証を行うようにしたが、適合性のある情報の組み合わせを予めテーブル化して登録し、これを参照することで検証を行うようにしてもよい。すなわち、適合性のある情報の組み合わせのテーブル(例えば、アレルギーに対して使用可能な薬剤のリストを対応付けたテーブル)を用意する。そしてその参照により、比較される2つの情報がこのテーブルの条件に合致したとき(例えば、あるアレルギーに対して使用が許される薬剤の指定が認識されたとき)には記録を許容し、合致しない場合には記録を拒否するのである。
【0045】
なお、上述のようにキーボード616より印刷すべき情報を入力する場合に、この登録されたテーブルを参照して、患者の個人情報である血液型806、アレルギー情報807を入力した段階でその対象薬剤を候補として表示器612に表示することができる。これによれば早い段階で誤入力防止、およびユーザ補助を行うことができる。
【0046】
加えて、それらのような参照情報は書き換え可能(更新可能)とすることを前提としない場合にはROM等に格納しておくこともできる。しかし、最新の情報へ適宜更新できるようにするためには上述したフラッシュメモリを含むEEPROMなどのメモリに格納することが好ましい。これらのような不揮発性メモリを用いる場合、装置の電源がオフとなっても格納情報を保持しておくことが可能である。また、参照情報を予め記録装置側のメモリに登録しておくのではなく、適宜のタイミングで、例えば記録データの送信時に同時に送信されるようにしてもよい。この場合には、RAMなどの揮発性メモリを用いることも可能である。
【0047】
また、本実施形態では参照情報は記録装置内部のメモリに送信して保存するものとして説明したが、USBフラッシュメモリ等の外部記憶装置から提供するものでもよい。また、本実施形態の記録装置をシステムに接続する場合を考慮し、記録装置にLAN制御部618を設けてLAN接続を行い、図11のテーブルデータをネットワーク上の外部記憶装置(例えばデータベースサーバ620)から取得するように構成してもよい。
【0048】
さらに、上述の実施形態では、環状に巻かれた状態で対象の所定部位に装着される帯状記録媒体であるリストバンドに本発明を適用した場合について説明した。しかしそのような帯状記録媒体としては、必ずしもリスト(手首)に装着されるものに限られない。例えば足首に装着されるものでもよいし、必要に応じ首、胴その他の部位に装着されるものでもよい。また、装着対象は、「ヒト」に限らず、動物でもよいし、物品でもよい。また、本発明は、そのような帯状の記録媒体に限らず、例えば薬剤容器のラベルを作成するために適用しても有効である。例えば、容器に収容する薬剤情報と、これが禁忌薬となるアレルギー情報とを入力し、両者を併記する場合において、これら情報の適合性の有無を判定して記録の可否を定めることもできる。これによれば、当該アレルギーを持つヒトにはその薬剤が誤用されてしまうような事態の発生を未然に防止することができる。
【0049】
また、本発明は、上述したような医療用途だけでなく、少なくとも2種類の情報についてその適合性の判定を必要とし、それら情報の少なくとも一方を担持する記録媒体を作成する場合に適用して有効である。例えば飲食物の提供の場合にも上述と同様にして適用が可能である。また、特定の場所に立ち入りできる特定者(劇場、遊園地またはその一部に入場できる正当な権利者、あるいは、感染症蔓延地域に立ち入りできる予防注射済みの者または免疫保持者)以外の者に、立ち入りを許可する旨の情報が記録されたリストバンド、カード、タグなどの記録媒体が誤って発行されてしまうのを防ぐ目的で適用することもできる。
【0050】
また、上例では、Y,M,CおよびKの4色のインクを記録剤として用いる例を示したが、用いる色調(色,濃度)の種類や数はこれらに限られない。
【0051】
さらに、上例では、インクジェット記録装置形態の記録装置に本発明を適用した場合について説明したが、熱転写方式その他の種々の記録方式を採用した記録装置に対しても同様に実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置形態の記録装置の構成を説明するための模式的側面図である。
【図2】図1の記録装置の記録ヘッド周辺の構成を説明するための模式的側面図であり、非記録時の状態を示している。
【図3】図1の記録装置の記録ヘッド周辺の構成を説明するための模式的側面図であり、記録動作が可能な状態を示している。
【図4】図1の記録装置の記録ヘッド周辺の構成を説明するための模式的上面図である。
【図5】記録装置を用いる記録システムの構成例を示すブロック図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る記録装置の制御系の構成例を示すブロック図である。
【図7】図6の情報入力装置で行われるデータ処理の例を説明するための図である。
【図8】記録媒体(リストバンド)への記録例を示す説明図であり、正しい情報が記録された状態を示している。
【図9】記録媒体(リストバンド)への記録例を示す説明図であり、誤った情報が記録された状態を示している。
【図10】本発明の一実施形態に係る記録装置が実行する記録処理手順の一例を示すブロック図である。
【図11】(a)および(b)は、図10の手順において参照され、情報の適合性検証のために利用されるテーブルの2例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0053】
101 記録装置
103、103K、103C、103M、103Y 記録ヘッド 101 印刷装置
102 リストバンドウェブ
501 ホスト装置
601 記録装置制御部
603 フラッシュメモリ
612 表示器
616 キーボード
801 リストバンド
802、803 留め穴
804〜809 リストバンド上の情報記録部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された少なくとも2種類の情報に基いて、記録媒体に対し記録を行う記録装置であって、
前記少なくとも2種類の情報の適合性を判定する判定部と、
当該判定された適合性の有無に応じて前記記録の可否を制御する制御部と、
を具えたことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記判定部は、一方の種類の情報と、該情報に対して適合する、または適合しない他方の種類の情報を対応づけたテーブルを参照して前記判定を行うことを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記テーブルを更新可能に格納する不揮発性メモリを具えたことを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記テーブルは前記少なくとも2種類の情報とともに入力されることを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項5】
前記判定部は外部記憶装置に設けられている前記テーブルを参照することを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項6】
前記少なくとも2種類の情報はコマンドおよび画像データの少なくとも一方の形態として入力され、前記テーブルは当該形態に合わせて構成されていることを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれかに記載の記録装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記適合性がないために記録が行われないように制御する場合には、その旨を報知することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の記録装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記記録装置に設けられた表示部と、前記情報を入力する外部装置が有する表示部との少なくとも一方を介して前記報知が行われるようにすることを特徴とする請求項7に記載の記録装置。
【請求項9】
前記記録媒体は医療用のリストバンドであることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の記録装置。
【請求項10】
前記2種類の情報はアレルギーの種および薬剤の種類であることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれかに記載の記録装置。
【請求項11】
インクジェット記録装置の形態を有することを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれかに記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−52373(P2010−52373A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221828(P2008−221828)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】