説明

記録装置

【課題】ベルトを清掃する際に、駆動されるローラとベルトとの間でスリップを生じにくくする。
【解決手段】プリンタ1は、2つのベルトローラ6,7に巻回された搬送ベルト8を含む搬送機構21と、ワイパ41を有するメンテナンスユニット61と、これらを制御する制御装置とを含んでいる。ワイパ41は、搬送ベルト8の第2領域16の表面8aと離接可能に配置されている。そして、制御装置は、第1ワイピング動作を行う清掃モードの際に、ワイパ41を表面8aに当接させるようにモータを制御するとともに、ベルトローラ7を逆回転させるように搬送モータを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に画像を記録する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、駆動ローラとテンションローラと従動ローラとに巻き回される無端状のベルトを含む記録装置について記載されている。この記録装置において、記録ヘッドは、駆動ローラと従動ローラとにより規定される第1領域に対向して配置されている。ベルトの表面を清掃する清掃部材は、駆動ローラとテンションローラとにより規定される第2領域に当接するように配置されている。駆動ローラの回転によりベルトは、ベルトの走行方向に関して、第1領域がテンションローラよりも下流側かつ駆動ローラよりも上流側となると共に、第2領域が駆動ローラよりも下流側かつテンションローラよりも上流側となるように走行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−161477号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この記録装置において、清掃部材が当接する第2領域は、ベルトの走行方向に関して、駆動ローラよりも下流側かつテンションローラよりも上流側である。ここで、清掃部材は、ベルトの走行に対する抵抗となる。そのため、駆動ローラから送り出されたベルトは清掃部材により抵抗を受け、ベルトの駆動ローラと清掃部材との間の部分に弛みが生じる。すると、ベルトと駆動ローラとが部分的に離隔してベルトが駆動ローラに対してスリップする恐れがある。ベルトがスリップすると、ベルトの走行精度が低下し、清掃部材とベルトとの接触が不安定となり、清掃部材によるベルトの清掃性能が低下するという問題が生じ得る。
【0005】
ところで、仮に、清掃部材が、第1領域に当接する場合、駆動ローラから送り出されたベルトは、テンションローラを経由して清掃部材に至る。そのため、清掃部材の抵抗により、ベルトの駆動ローラと清掃部材との間の部分に弛みが生じようとしても、テンションローラがベルトにテンションを付与するため、ベルトに弛みが生じにくく、ベルトがスリップしにくい。従って、清掃部材を第1領域に配置させれば、清掃部材によるベルトの清掃性能の低下を抑制できる。
【0006】
しかしながら、この記録装置において、記録時にテンションローラよりも下流側かつ駆動ローラよりも上流側の領域である第1領域には記録ヘッドが配置されているように、記録時にテンションローラよりも下流側かつ駆動ローラよりも上流側の領域には清掃部材の配置スペースがない場合がある。当該領域にさらに清掃部材を配置しようとすると装置が大型化してしまう。第1領域は、弛みが生じにくい領域であるため、画質の低下を抑制するために、記録ヘッドは第1領域に対向するように配置されるのが好ましい。
【0007】
そこで、本発明の目的は、装置の大型化を防ぎつつ、ベルトを清掃する際に、駆動されるローラとベルトとの間でスリップが生じにくくなる記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の記録装置は、互いに離隔して配置されたテンションローラを含む複数のローラに巻回される無端状のベルトであって前記複数のローラのうちの2つのローラにより規定される第1領域及び前記複数のローラのうちの2つのローラにより規定されると共に前記第1領域とは異なる第2領域を有する無端状のベルトを含み、前記第1領域に支持された記録媒体を搬送する搬送機構と、前記第1領域に対向して配置され、記録媒体に液体を吐出して画像を記録する記録ヘッドと、前記第2領域に当接可能な第1清掃部材を含み、前記第1清掃部材が前記第2領域に当接する当接状態と前記第2領域から離隔する離隔状態とをとることができる清掃機構と、前記搬送機構及び前記清掃機構を制御する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記記録ヘッドにより画像を記録する記録モードにおいて、前記複数のローラのうちのいずれかであって前記テンションローラを除くローラを駆動させることにより、前記ベルトの走行方向に関して、前記第1領域を、前記テンションローラよりも下流側かつ駆動される当該ローラよりも上流側とすると共に、前記第2領域を、駆動される当該ローラよりも下流側かつ前記テンションローラよりも上流側とし、前記記録ヘッドによる画像の記録を行わずに前記第1清掃部材により前記ベルトを清掃する清掃モードにおいて、前記第1清掃部材を前記当接状態とすると共に、前記複数のローラのうちのいずれかであって前記テンションローラを除くローラを駆動させることにより、前記ベルトの走行方向に関して、前記第2領域を、前記テンションローラよりも下流側かつ駆動される当該ローラよりも上流側とする。
【0009】
これによると、清掃モードの際には、ベルトの第2領域は、ベルトの走行方向に関して、テンションローラよりも下流側かつ駆動されるローラよりも上流側であるため、駆動されるローラから送り出されたベルトは、テンションローラを経由して第1清掃部材に至る。そのため、駆動されるローラと第1清掃部材との間の部分に弛みが生じようとしても、テンションローラにより付与されるテンションによって、ベルトに弛みが生じにくい。このため、駆動されるローラとベルトとの間でスリップが生じにくくなり、清掃モードの際に第1清掃部材が高い清掃性能でベルトを清掃することが可能となる。
【0010】
本発明において、前記複数のローラには、1つの駆動ローラが含まれており、前記制御手段は、前記記録モードにおいて、前記駆動ローラを正回転させ、前記清掃モードにおいて、前記駆動ローラを逆回転させることが好ましい。これにより、清掃モードの際に、駆動ローラを逆回転させることでスリップを生じさせずに、ベルトを第1清掃部材で清掃することが可能となる。
【0011】
また、本発明において、前記複数のローラは、前記駆動ローラ及び前記テンションローラの2つのローラであることが好ましい。これにより、簡易な構成で、スリップを生じさせずに、ベルトを第1清掃部材で清掃することが可能となる。
【0012】
また、本発明において、前記複数のローラには、2つの駆動ローラが含まれており、前記制御手段は、前記記録モードにおいて、前記2つの駆動ローラのうちの一方を駆動させ、前記清掃モードにおいて、前記2つの駆動ローラのうちの他方を駆動させることが好ましい。これにより、清掃モードの際に、2つの駆動ローラのうちの他方のローラを駆動させることでスリップを生じさせずに、ベルトを第1清掃部材で清掃することが可能となる。
【0013】
また、本発明において、前記当接状態には、前記第1清掃部材の前記第2領域への押圧力が第1押圧力である第1押圧状態と、前記第2領域への押圧力が前記第1押圧力よりも小さい第2押圧力である第2押圧状態とがあり、前記制御手段は、前記清掃モードにおいて、前記第1清掃部材が前記第1押圧状態となるように前記清掃機構を制御し、前記記録ヘッドによる画像の記録を行いつつ前記第1清掃部材により前記ベルトを清掃する記録モードにおいて、前記第1清掃部材が前記第2押圧状態となるように前記清掃機構を制御することが好ましい。これにより、記録ヘッドにより画像の記録を行いつつ第1清掃部材によりベルトを清掃する記録モードにおいて、第1清掃部材のベルトに対する押圧力は、清掃モードにおいて第1清掃部材のベルトに対する押圧力よりも小さい。そのため、第1清掃部材とベルトとの摩擦力が小さくなってベルトが駆動されるローラに対してスリップしにくくなる。よって、記録ヘッドにより記録される画像品質を維持しつつベルトを清掃することが可能となる。
【0014】
また、本発明において、前記記録モードにおいて、前記当接状態にある前記第1清掃部材の前記第2領域への押圧力よりも小さい押圧力で前記ベルトを清掃する第2清掃部材をさらに備えていることが好ましい。これにより、記録モードにおいて第2清掃部材によりベルトを清掃しても、第2清掃部材とベルトとの摩擦力が小さいため、ベルトが駆動されるローラに対してスリップしにくくなる。このため、記録ヘッドにより記録される画像品質を維持しつつベルトを清掃することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の記録装置によると、清掃モードの際には、ベルトの第2領域が、テンションローラよりも下流側かつ駆動されるローラよりも上流側となるので第2領域に弛みが生じにくい。このため、駆動されるローラとベルトとの間でスリップが生じにくくなり、清掃モードの際に第1清掃部材が高い清掃性能でベルトを清掃することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態によるインクジェットプリンタの全体的な構成を示す概略側面図である。
【図2】図1に示す搬送機構の概略平面図である。
【図3】図1に示すメンテナンスユニットの概略斜視図である。
【図4】(a)は搬送機構及びメンテナンスユニットの概略側面図であり、(b)はメンテナンスユニットの部分拡大図である。
【図5】プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【図6】プリンタの制御装置が実行する記録モード及び清掃モードの内容を示すフローチャートである。
【図7】(a)は本発明の第2実施形態によるインクジェットプリンタの搬送機構及びメンテナンスユニットの概略側面図であり、(b)はメンテナンスユニットの部分拡大図である。
【図8】本発明の第3実施形態によるインクジェットプリンタの搬送機構及びメンテナンスユニットの概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
先ず、図1及び図2を参照し、本発明に係る記録装置の第1実施形態としてのインクジェットプリンタ1の全体構成について説明する。
【0019】
プリンタ1は、直方体形状の筐体1aを有する。筐体1aの天板上部には、排紙部31が設けられている。筐体1aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分されている。空間A,Bには、排紙部31に連なる用紙搬送経路が形成されている。空間Cには、インクジェットヘッド10に対するインク供給源としてのカートリッジ39が収容されている。
【0020】
空間Aには、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクをそれぞれ吐出する4つのヘッド10、用紙Pを搬送方向(図1中左から右に向かう方向)に搬送する搬送機構21、メンテナンスユニット61、用紙Pをガイドするガイドユニット等が配置されている。空間Aには、プリンタ1の各部の動作を制御してプリンタ1全体の動作を司る制御装置(制御手段)1pが配置されている。
【0021】
ここで、本実施形態では、プリンタ1が外部装置から供給された記録指令(例えば、画像データなどを含む記録信号)を受信した後、当該記録指令に伴う記録動作(用紙Pの搬送動作及び用紙Pの搬送に同期したインクの吐出動作)が完了するまでの間、プリンタ1は記録モードにある。制御装置1pは、記録モードにおいて、プリンタ1の各部による用紙Pの搬送動作、用紙Pの搬送に同期したインクの吐出動作等を制御する。なお、本実施形態では、記録モードにおいて、搬送ベルト8の表面8aを清掃する後述の第2ワイピング動作を行う。つまり、記録モードにおいては、搬送ベルト8の表面8aの清掃が行われつつ、記録動作が行われる。また、プリンタ1がワイピング指令を受信した後、当該ワイピング指令に基づくワイピング動作が完了するまでの間、プリンタ1は清掃モードにある。なお、本実施形態では、清掃モードにおいて、搬送ベルト8の表面8aを清掃する後述の第1ワイピング動作を行う。なお、清掃モードにおいては、記録動作は行われない。
【0022】
搬送機構21は、副走査方向に互いに離隔して配置された2つのベルトローラ6,7、両ローラ6,7間に巻回された無端状の搬送ベルト8、搬送ベルト8の外側に配置されたニップローラ4及び剥離プレート5、搬送ベルト8の内側に配置された吸着プラテン22等を有する。また、搬送機構21は、搬送モータ121(図5参照)及び搬送モータ121の回転力をベルトローラ7に伝達する複数のギア(不図示)を有している。ここで、副走査方向とは、搬送機構21による用紙Pの搬送方向に平行な方向であり、主走査方向とは、水平面に平行且つ副走査方向に直交する方向である。
【0023】
ベルトローラ7は、制御装置1pによって駆動された搬送モータ121によって回転し、搬送ベルト8を走行させる駆動ローラである。ベルトローラ7は、正逆回転可能であり、正回転したとき図1中時計回りに回転する。制御装置1pの制御により、記録モードが実行されると、ベルトローラ7は正回転され、清掃モードが実行されると、ベルトローラ7は逆回転される。ベルトローラ7が回転すると、搬送ベルト8がベルトローラ7と同方向に走行する。
【0024】
ベルトローラ6は、テンションローラであって、搬送ベルト8にテンションを付与しつつ、搬送ベルト8の走行に従動して回転する。ベルトローラ6は、図示しない付勢機構によって、副走査方向に平行であってベルトローラ7から離れる方向に付勢されている。これによって、搬送ベルト8にテンションが付与されている。
【0025】
搬送ベルト8は、例えば、ポリイミド、フッ素樹脂からなり、10〜1014Ωcm程度の体積抵抗率及び可撓性を有しているが、同様の体積抵抗率及び可撓性を有することが可能であれば、どのような材質であってもよい。
【0026】
吸着プラテン22は、図1及び図2に示すように、絶縁材料から構成された板状のベース部材32と、ベース部材32の上面32aに接着された2つの電極33,34と、これら電極33,34全体を覆うように上面32aに接着された保護フィルム23とを含んでいる。そして、吸着プラテン22は、搬送ベルト8を挟んで4つのヘッド10に対向配置され、搬送ベルト8の上側にある第1領域15を内側から支えている。
【0027】
ここでいう搬送ベルト8の第1領域15とは、2つのベルトローラ6,7により規定された2つの領域15,16のうちの上側にある領域である。これら2つの領域15,16は、各ベルトローラ6,7の中心を通る鉛直方向の仮想直線K1,K2間に存在する搬送ベルト8の領域であり、互いに平行に配置されている(図4(a)参照)。換言すると、2つの領域15,16は、ベルトローラ6,7と搬送ベルト8との接触境界部分間に存在する搬送ベルト8の領域であって、第1領域15は当該領域のうちの上側の部分であり、第2領域16は当該領域のうちの下側の部分である。また、第1領域15は、第2領域16よりもヘッド10に近い位置に存在する搬送ベルト8の領域であり、第1領域15の表面8aは吐出面10aと対向している。さらに、第1領域15の表面8aは、用紙Pを支持する面であり、吐出面10aと互いに平行な状態で対向している。第1領域15は、ベルトローラ7の正回転により走行する搬送ベルト8の走行方向において、ベルトローラ6(テンションローラ)よりも下流側かつベルトローラ7(駆動ローラ)よりも上流側となる。また、第2領域16は、ベルトローラ7の正回転により走行する搬送ベルトの走行方向において、ベルトローラ7よりも下流側かつベルトローラ6よりも上流側となる。一方、第2領域16は、ベルトローラ7の逆回転により走行する搬送ベルト8の走行方向において、ベルトローラ6よりも下流側かつベルトローラ7よりも上流となる。
【0028】
2つの電極33,34は、副走査方向に沿って延在する複数の長尺部33a,34aを有し、これら長尺部33a,34aが主走査方向に交互に配置された櫛歯形状となっている。また、電極33,34は、筐体1a内に設けられた電源36(図5参照)に接続されている。なお、電源36は、制御装置1pにより制御される。これら吸着プラテン22及び電源36によって、第1領域15の表面8aに用紙Pを吸着させる吸着部が構成されている。
【0029】
保護フィルム23は、例えば、ポリイミド、フッ素樹脂からなり、10〜1014Ωcm程度の体積抵抗率を有しているが、同様の体積抵抗率を有することが可能であれば、どのような材質であってもよい。
【0030】
ニップローラ4は、吸着プラテン22の上流端であって、電極33,34の長尺部33a,34aと対向する位置に配置されている。ニップローラ4は、給紙ユニット1bから送り出されてきた用紙Pを第1領域15の表面8aに押さえ付ける。また、ニップローラ4は、導電性材料から構成されたローラである。
【0031】
この構成において、記録モードにおいて、制御装置1pの制御によりベルトローラ7が正回転され、これに伴って搬送ベルト8の第1領域15が搬送方向に移動するように搬送ベルト8が走行される。このとき、搬送ベルト8の走行に伴ってベルトローラ6及びニップローラ4も回転する。また、このとき、制御装置1pの制御により、2つの電極33,34に互いに異なる電位(電極33は正又は負の電位、電極34はグランド電位)が印加される。なお、用紙Pを搬送ベルト8で搬送する際は、電極33に、例えば1kVの電位が印加される。
【0032】
このように2つの電極33,34に電位が印加されると、ニップローラ4が導電性であるため、ニップローラ4と対向する部分においては、電流が、電極33(長尺部33a)から保護フィルム23→搬送ベルト8→用紙Pを通ってニップローラ4に至り、ニップローラ4から用紙P→搬送ベルト8→保護フィルム23を通って電極34(長尺部34a)に流れる。そして、搬送ベルト8の用紙Pと対向する部分に正又は負の電荷が生じ、用紙Pの搬送ベルト8と対向する面に先の電荷とは極性の異なる電荷が誘起され、これらの電荷同士が引き合うことで用紙Pを搬送ベルト8に吸着させる吸着力が生じる。なお、2つの電極33、34に電圧が印加されることによって生じる電流により、搬送ベルト8を吸着プラテン22に吸着させる吸着力も生じる。
【0033】
一方、ニップローラ4と対向しない部分においては、電流が、電極33(長尺部33a)から保護フィルム23→搬送ベルト8→用紙Pに至り、用紙Pから搬送ベルト8→保護フィルム23を通って電極34(長尺部34a)に流れる。このときの用紙Pの抵抗値はニップローラ4に比して非常に高くなるため、当該経路における全体の抵抗値がニップローラ4を通る経路における全体の抵抗値よりも大きくなる。そのため、同じ電位を両電極33,34に印加していても電流値が、ニップローラ4を通る経路のときの方が大きくなる。そして、搬送ベルト8と用紙Pの間に働くジョンセン・ラーベック力、すなわち、吸着プラテン22による吸着力は、これらの間に流れる電流の増加に伴って増加する。したがって、電流値が大きくなることで、ニップローラ4と対向する部分においては吸着力が他の部位に比して大きくなる。
【0034】
こうして、給紙ユニット1bから送り出された用紙Pが、まずは吸着力が非常に大きくなった部位(ニップローラ4と対向する部分)で表面8aに吸着され、搬送されるに連れて他の部位(ニップローラ4と対向しない部分)で保持(吸着)されながら搬送方向に搬送される。さらにこのとき、第1領域15の表面8a上に吸着されつつ搬送されてきた用紙Pが4つのインクジェットヘッド10のすぐ下方(吐出面10aと対向する領域)を順に通過する際に、制御装置1pが各インクジェットヘッド10を制御し、用紙Pに向けて各色のインクを吐出する。こうして、用紙Pに所望のカラー画像が記録される。剥離プレート5は、ベルトローラ7に対向配置され、用紙Pを搬送ベルト8から剥離し、さらに搬送方向下流側へと導く。
【0035】
メンテナンスユニット61は、搬送機構21の下端近傍であって搬送ベルト8の第2領域16に対向した位置に配置されている。搬送ベルト8の内側であって、搬送ベルト8を挟んでワイパ41と対向する位置に、第2領域16を内側から支えるプラテン11が配置されている。プラテン11の存在により、ワイパ41が異物除去を行う際、ワイパ41による押圧力で搬送ベルト8が撓むのが抑制され、高いワイピング性能が確保される。メンテナンスユニット61のより具体的な構成については、図3及び図4を参照して後述する。
【0036】
各ヘッド10は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有するライン式のヘッドである。各ヘッド10の下面は、多数の吐出口が開口した吐出面10aである。記録に際して、4つのヘッド10の吐出面10aからそれぞれブラック、マゼンタ、シアン、イエローのインクが吐出される。ヘッド10は、副走査方向に所定ピッチで並び、ヘッドホルダ3を介して筐体1aに支持されている。ヘッドホルダ3は、吐出面10aが第1領域15の表面8aに対向し、且つ、吐出面10aと表面8aとの間に記録に適した所定の間隙が形成されるように、ヘッド10を保持している。
【0037】
ガイドユニットは、搬送機構21を挟んで配置された、上流側ガイド部及び下流側ガイド部を含む。上流側ガイド部は、2つのガイド27a,27b及び一対の送りローラ26を有する。当該ガイド部は、給紙ユニット1b(後述)と搬送機構21とを繋ぐ。下流側ガイド部は、2つのガイド29a,29b及び二対の送りローラ28を有する。当該ガイド部は、搬送機構21と排紙部31とを繋ぐ。
【0038】
空間Bには、給紙ユニット1bが筐体1aに対して着脱可能に配置されている。給紙ユニット1bは、給紙トレイ24及び給紙ローラ25を有する。給紙トレイ24は、上方に開口した箱体であり、複数の用紙Pを収納可能である。給紙ローラ25は、給紙トレイ24内で最も上方にある用紙Pを送り出し、上流側ガイド部に供給する。
【0039】
上述したように、空間A,Bに、給紙ユニット1bから搬送機構21を介して排紙部31に至る用紙搬送経路が形成されている。外部装置から受信した記録指令に基づいて、制御装置1pは、給紙ローラ25用の給紙モータ125(図5参照)、各ガイド部の送りローラ用の送りモータ127(図5参照)、搬送モータ121(図5参照)等を駆動する。給紙トレイ24から送り出された用紙Pは、送りローラ26によって、搬送機構21に供給される。このとき、上述のように制御装置1pは電源36を制御して搬送ベルト8上に搬送されてくる用紙Pを表面8aに吸着する。そして、用紙Pが各ヘッド10の真下を搬送方向に通過する際、ヘッド10から各色のインクが順に吐出され、用紙P上にカラー画像が記録される。なお、インクの吐出動作は、用紙センサ20からの検出信号に基づいて行われる。用紙Pは、その後、剥離プレート5により剥離され、2つの送りローラ28によって上方に搬送されて、上方の開口30から排紙部31に排出される。
【0040】
空間Cには、カートリッジユニット1cが筐体1aに対して着脱可能に配置されている。カートリッジユニット1cは、トレイ35、及び、トレイ35内に並んで収納された4つのカートリッジ39を有する。カートリッジ39はチューブ(図示せず)を介して対応するヘッド10にインクを供給する。
【0041】
次に、図3及び図4を参照し、メンテナンスユニット(清掃機構)61の構成について説明する。メンテナンスユニット61は、図3に示すように、ワイパ(第1清掃部材)41及びワイパクリーナー45を有する。ワイパ41は、後述の第1及び第2ワイピング動作時に用いられる、ゴム等の弾性材料からなる板状部材であり、主走査方向に延在している。また、ワイパ41は、第2領域16の表面8aと離接可能に配置されている。ワイパ41の基端(下端)は、シャフト42の周面に固定されている。シャフト42は、主走査方向に延在し、ワイパ41と共に主走査方向に沿った軸を中心として回転可能にフレーム63に支持されている。フレーム63は筐体1a(図1参照)に固定されている。
【0042】
メンテナンスユニット61は、図3に示すように、シャフト42を回転させる構成部材として、モータ41Mの出力軸に固定されたギア43a、ギア43aに噛合したギア43b、及び、ギア43bの回転に伴い回転するウォームギア43cを有する。シャフト42の一端には、ウォームギア43cの周面と噛合したウォームホイール42gが設けられている。モータ41Mの駆動に伴ってギア43a,43b,43cが回転すると、ウォームホイール42gが回転する。これにより、シャフト42が主走査方向に沿った軸を中心として回転し、水平面に対するワイパ41の傾斜角度が変化する。
【0043】
ワイパ41の傾斜角度は、第1及び第2ワイピング動作時にワイパ41の先端近傍が撓みながら搬送ベルト8の第2領域16の表面8aに接触し、且つ、第1及び第2ワイピング動作以外のときはワイパ41の先端が当該表面8aから離隔するよう、制御装置1pによって制御される。このようにメンテナンスユニット61は、ワイパ41が、第2領域16の表面8aに対して、当接状態と離隔状態とを選択的に取り得るように構成されている。
【0044】
清掃モードにおいて実行される第1ワイピング動作時においては、図4(b)において実線で示すように、ワイパ41の傾斜角度(表面8aと平行な水平面に対するワイパ41の角度)がθ1となるように制御装置1pによって制御される。このとき、ワイパ41は、ワイパ41の第2領域16の表面8aに対する押圧力が第1押圧力となる第1押圧状態となる。ここで、押圧力とは、単位面積当たりの圧力であり、以下の式で表される。
単位面積当たりの圧力=Q/S:
Q=表面8aにおけるワイパ41が接触する部分にかかる力,
S=表面8aにおけるワイパ41が接触する部分の面積;
S=l*d:
l=表面8aにおけるワイパ41が接触する部分の搬送ベルト8の幅方向の長さ(本実施形態では搬送ベルト8の主走査方向の長さ),
d=表面8aにおけるワイパ41が接触する部分の搬送ベルト8の副走査方向の長さ(第2ワイパ42の先端の撓み部分の長さ)
一方、記録モードにおいて実行される第2ワイピング動作時においては、図4(b)において2点鎖線で示すように、ワイパ41の傾斜角度がθ1よりも大きな鈍角のθ2となるように制御装置1pによって制御される。このとき、ワイパ41は、ワイパ41の第2領域16の表面8aに対する押圧力が第1押圧力よりも小さい第2押圧力となる第2押圧状態となる。また、第2押圧力は、ベルトローラ7の正回転により搬送ベルト8が走行されているときに、ワイパ41と第2領域16の表面8aとの間の摩擦力がベルトローラ7と搬送ベルト8との間の摩擦力よりも小さくなるように設定されている。
【0045】
このようにワイパ41の先端を第2領域16の表面8aに当接させる当接状態には、ワイピング動作毎に異なる2つの押圧状態が存在し、第1押圧状態におけるワイパ41の第2領域16の表面8aに対する押圧力(第1押圧力)は、第2押圧状態におけるワイパ41の第2領域16の表面8aに対する押圧力(第2押圧力)よりも大きい。このため、表面8aから異物をワイピングするワイピング性能(清掃性能)は、第1ワイピング動作を行うときの方が第2ワイピング動作のときよりも高くなる。しかしながら、第2ワイピング動作を行うときにおいても、ワイパ41と第2領域16の表面8aとが当接し、表面8aに対してある程度の押圧力が生じているため、第2ワイピング動作においても表面8aからインクなどの異物をワイピングすることができる。さらに第2ワイピング動作時におけるワイパ41による第2領域16の表面8aに対する押圧力は、第1ワイピング動作時よりも小さいため、第2ワイピング動作時におけるワイパ41と表面8aとの摩擦力が小さくなる。このため、用紙Pに対する記録動作が行われているときであっても、搬送ベルト8が弛みにくくなってベルトローラ7に対してスリップしにくくなる。このため、搬送ベルト8による用紙Pの搬送精度を維持しつつ搬送ベルト8の表面8aを清掃することが可能となる。
【0046】
また、ワイパ41の傾斜角度は、後述のワイパクリーニング時以外はワイパ41の先端がワイパクリーナー45から離隔するよう、制御装置1pによって制御される。
【0047】
また、ワイパ41は、主走査方向の長さが搬送ベルト8の幅より若干長く、搬送ベルト8の幅全体に亘って配置されている。つまり、ワイパ41は、主走査方向の中心が搬送ベルト8の幅方向の中心と一致し且つ平面視において搬送ベルト8の幅方向両側にワイパ41が突出するように配置されている。したがって、ワイピング動作時にワイパ41の先端は搬送ベルト8の幅全体に接触する。
【0048】
ワイパクリーナー45は、ワイパクリーニング時に用いられる部材であり、例えばスポンジ等の吸収体からなる。ワイパクリーナー45は、円筒状であり、主走査方向に延在し、シャフト46に軸支されている。シャフト46は、主走査方向に延在し、ワイパクリーナー45と共に主走査方向に沿った軸を中心として回転可能にフレーム63に支持されている。
【0049】
メンテナンスユニット61は、シャフト46を回転させる構成部材として、モータ45Mの出力軸に固定されたプーリ47、シャフト46の一端に固定されたプーリ46p、及び、プーリ46pとプーリ47との間に巻回されたベルト48を有する。モータ45Mの駆動に伴ってプーリ47が回転すると、ベルト48が走行し、プーリ46pが回転する。これにより、シャフト46がワイパクリーナー45と共に主走査方向に沿った軸を中心として回転する。
【0050】
また、プリンタ1には、ベルトローラ6との間において搬送ベルト8を挟む位置に配置されたクリーニングローラ(第2清掃部材)12が設けられている。このクリーニングローラ12の表層は、例えば、スポンジなどの吸収体からなる。クリーニングローラ12は、主走査方向に沿った軸を中心として回転可能であってクリーニングローラ12の中心とベルトローラ6の中心との位置関係が常に同じになるようにベルトローラ6の軸に支持されており、その表面12aと搬送ベルト8の表面8aとが常に接触している。そして、クリーニングローラ12は、搬送ベルト8の走行に伴って回転する。
【0051】
また、クリーニングローラ12は、第2押圧力よりも小さい押圧力が搬送ベルト8に対して生じるように配置されている。つまり、クリーニングローラ12は、表面12aがほとんど凹まずに搬送ベルト8の表面8aに当接するように配置されている。これにおいても、クリーニングローラ12は搬送ベルト8に接触しているので、搬送ベルト8の表面8aからインクなどの異物を吸収することができ、当該表面8aを清掃することが可能となる。さらに、クリーニングローラ12による搬送ベルト8に対する押圧力が小さいため、クリーニングローラ12と搬送ベルト8との摩擦力が小さくなる。このため、用紙Pに対する記録動作が行われているときであっても、搬送ベルト8が弛みにくくなってベルトローラ7に対してスリップしにくくなる。よって、搬送ベルト8による用紙Pの搬送精度を維持(すなわち、ヘッド10により記録される画像品質を維持)しつつ搬送ベルト8の表面8aを清掃することが可能となる。さらに、クリーニングローラ12は、搬送ベルト8の走行に伴って回転するため、回転しない清掃部材と比して、搬送ベルト8の走行負荷が大きくなるのを抑制することができる。
【0052】
変形例として、クリーニングローラ12を設けなくてもよい。また、別の変形例として、ワイパ41が第2押圧状態となるときよりも小さい押圧力が搬送ベルト8に対して生じるように配置されたワイパ部材を、クリーニングローラ12に代えて設けてもよい。この場合でも、上述と同様に、搬送ベルト8による用紙Pの搬送精度を維持しつつ搬送ベルト8の表面8aを清掃することが可能となる。また、別の変形例として、ワイパ41が第1押圧状態となるときよりも小さい押圧力が搬送ベルト8に対して生じるように配置されたワイパ部材を、クリーニングローラ12に代えて設けてもよい。これにおいても上述と同様な効果を得ることができる。また、別の変形例として、搬送ベルト8に対して非接触で搬送ベルト8の表面8aから異物を除去可能な非接触除去手段を、クリーニングローラ12に代えて設けてもよい。非接触除去手段としては、エア吸引力を用いて搬送ベルト8の表面8aから異物を除去するエア吸引手段や、静電吸着力を用いて搬送ベルト8の表面8aから異物を除去する静電吸着手段を採用することができる。これにおいても上述と同様な効果を得ることができる。加えて、非接触除去手段は、搬送ベルト8に対して非接触であるため、搬送ベルト8の走行に負荷を生じさせることなく、搬送ベルト8の表面8aから異物を除去することができる。
【0053】
次に、図5を参照し、プリンタ1の電気的構成について説明する。制御装置1pは、図5に示すように、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)101に加えて、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory:不揮発性RAMを含む)103、ASIC(Application Specific Integrated Circuit )104、I/F(Interface)105、I/O(Input/Output Port)106等を有する。ROM102には、CPU101が実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。RAM103には、プログラム実行時に必要なデータ(例えば、用紙Pに記録される画像に係る画像データ)が一時的に記憶される。ASIC104では、画像データの書き換え、並び替え等(例えば、信号処理や画像処理)が行われる。I/F105は、外部装置とのデータ送受信を行う。I/O106は、各種センサの検出信号の入力/出力を行う。制御装置1pは、各モータ121,125,127,41M,45M、用紙センサ20、電源36、各ヘッド10の制御基板等に接続されている。
【0054】
次に、図6を参照し、制御装置1pが実行する動作内容について説明する。以下の各処理は、ROM102に記憶されているプログラムにしたがって、CPU101が実行する。制御装置1pは、図6に示すように、先ず、記録指令又はワイピング指令の受信の有無を判断する(ステップ1:S1)。ワイピング指令は、例えば、第1領域15の表面8aに向けてパージや予備吐出が行われた後、及び、ジャムが生じたとき等に受信される。記録指令は、用紙Pに対して記録動作が行われるときに受信される。なお、記録指令を受信するとプリンタ1は記録モードとなり、ワイピング指令を受信するとプリンタ1は清掃モードとなる。
【0055】
制御装置1pは、ステップ1において、記録指令又はワイピング指令を受信しなければ(NO)、待機状態を継続する。制御装置1pは、ステップ1において、記録指令又はワイピング指令を受信すると(YES)、ステップ2(S2)に進む。
【0056】
ステップ2において、制御装置1pは、搬送ベルト8が停止した状態でモータ41Mを駆動し、ワイパ41を主走査方向に沿った軸を中心として図1中時計回りに一回転させる。この回転の際、ワイパ41の先端は、撓みながらワイパクリーナー45の周面に接触する。このとき、ワイパ41の先端に付着した異物がワイパクリーナー45に付着し、ワイパ41の先端から除去される(ワイパクリーニング)。
【0057】
なお、制御装置1pは、1又は数回のワイパクリーニング(S2)の完了の度に、ワイパクリーナー45を360度より小さい所定角度だけ回転させる。これにより、ワイパクリーニング時にワイパ41の先端が接触するワイパクリーナー45の部分が変化し、ワイパ41の先端に付着した異物を効果的に除去することができる。
【0058】
次に、ステップ3(S3)において、プリンタ1が清掃モードか否かを判定する。制御装置1pは、ステップ1においてワイピング指令が受信された場合はステップ4(S4)に進み、ステップ1において記録指令が受信された場合はステップ5(S5)に進む。
【0059】
ステップ4において、制御装置1pは、モータ41Mを駆動し、傾斜角度がθ1となるようにワイパ41を主走査方向に沿った軸を中心として回転させ、表面8aから離隔した位置にあるワイパ41の先端を表面8aに接触させる。制御装置1pは、ワイパ41の先端が撓みながら表面8aに接触したタイミングでモータ41Mの駆動を停止し、ワイパ41を第1押圧状態とする。そして、制御装置1pは、搬送モータ121の駆動によりベルトローラ7を逆回転させて搬送ベルト8を1又は数周走行させる。
【0060】
これにより、搬送ベルト8の表面8a上の異物が、ワイパ41によって第2領域16の表面8aの狭い範囲に集められながら除去されていく(第1ワイピング動作)。このとき、搬送ベルト8は、記録動作を行うときとは逆方向に走行されている。つまり、ベルトローラ7の逆回転により走行される搬送ベルト8の走行方向において、第2領域16は、ベルトローラ6(テンションローラ)よりも下流側かつベルトローラ7(駆動ローラ)よりも上流側となる。言い換えると、ベルトローラ7から送り出された搬送ベルト8は、ベルトローラ6を経由して第2領域16に至る。ここで、第2領域16に当接するワイパ41との摩擦により搬送ベルト8は抵抗を受け、ベルトローラ7よりも下流側かつワイパ41よりも上流側の搬送ベルト8の部分に弛みが生じようとする。しかし、ベルトローラ7よりも下流側かつワイパ41よりも上流側にはベルトローラ6が配置されており、ベルトローラ6が搬送ベルト8にテンションを付与するため、搬送ベルト8に弛みが生じにくい。このように搬送ベルト8に弛みが生じにくくなると、搬送ベルト8とベルトローラ7との間の接触が部分的に離れにくくなって、ベルトローラ7の駆動力が搬送ベルト8に効果的に加えられる。つまり、搬送ベルト8とベルトローラ7との間でスリップが生じにくくなる。
【0061】
制御装置1pは、搬送ベルト8が1又は数周走行した後、搬送モータ121の駆動を停止する。そして、搬送ベルト8が停止した状態で、モータ41Mを駆動し、ワイパ41を主走査方向に沿った軸を中心として若干回転させ、ワイパ41の先端を表面8aから離隔させる。こうして、第1ワイピング動作が終了する。
【0062】
次に、ステップ5においては、制御装置1pは、モータ41Mを駆動し、傾斜角度がθ2となるようにワイパ41を主走査方向に沿った軸を中心として回転させ、第2領域16の表面8aから離隔した位置にあるワイパ41の先端を表面8aに接触させる。制御装置1pは、ワイパ41の先端が撓みながら表面8aに接触したタイミングで、モータ41Mの駆動を停止し、ワイパ41を第2押圧状態とする。そして、制御装置1pは、搬送モータ121の駆動によりベルトローラ7を正回転させて搬送ベルト8を搬送方向に走行させる。これにより、搬送ベルト8の表面8a上の異物が、ワイパ41によって第2領域16の表面8aの狭い範囲に集められながら除去されていく(第2ワイピング動作)。このとき、ベルトローラ7の正回転により走行される搬送ベルト8の走行方向において、第2領域16は、ベルトローラ7(駆動ローラ)よりも下流側かつベルトローラ6(テンションローラ)よりも上流側となる。言い換えると、ベルトローラ7から送り出された搬送ベルト8は、第2領域16を経由してベルトローラ6に至る。ここで、第2領域16に当接するワイパ41との摩擦により搬送ベルト8は抵抗を受け、ベルトローラ7よりも下流側かつワイパ41よりも上流側の搬送ベルト8の部分に弛みが生じようとする。しかしながら、ワイパ41の第2押圧状態において、ワイパ41の第2領域16への押圧力(第2押圧力)は、小さく設定されているため、搬送ベルト8に弛みが生じにくい。このため、ベルトローラ7を正回転させても、ワイパ41によって搬送ベルト8が弛みにくくなって上述のようにベルトローラ7に対してスリップしにくくなる。なお、本実施形態においては、記録モードにおいて、第2ワイピング動作が必ず行われるが、変形例として第2ワイピング動作を行わずに記録動作だけを行ってもよい。
【0063】
また、ステップ5において、制御装置1pは記録動作を行う。具体的には、制御装置1pは、給紙トレイ24から搬送機構21に用紙Pが供給されるように給紙モータ125及び送りモータ127を制御するとともに、第1領域15の表面8aに用紙Pが吸着されるように電源36を制御する。そして、制御装置1pは、用紙センサ20から出力された用紙Pの前端を検出する検出信号を受信してから所定時間経過後(すなわち、用紙Pが各ヘッド10の真下を通過するとき)に、画像データに基づく吐出信号を各ヘッド10に出力する。これによって、4つのヘッドから各色のインクが順に吐出され、用紙P上にカラー画像が記録される。このとき、ベルトローラ7の正回転により走行される搬送ベルト8の走行方向において、第1領域15は、ベルトローラ6(テンションローラ)よりも下流側かつベルトローラ7(駆動ローラ)よりも上流側となる。ベルトローラ6よりも下流側かつベルトローラ7よりも上流側の第1領域15は、ベルトローラ7によって引っ張られる領域となるため、弛みが生じにくく、弛みに起因する振動が少ない。そのため、高い画像品質を確保することができる。さらに、第1領域15において、搬送ベルト8は吸着プラテン22による吸着力を受けている。そのため、ベルトローラ7よりも下流側かつ吸着プラテン22よりも上流側の搬送ベルト8の部分に弛みが生じようとする。しかしながら、ベルトローラ7よりも下流側かつ吸着プラテン22よりも上流側には、ベルトローラ6が配置されており、ベルトローラ6が搬送ベルト8にテンションを付与するため、搬送ベルトに弛みが生じにくい。このため、高い画像品質を確保することができる。
【0064】
また、記録モードの際には、第2ワイピング動作におけるワイパ41の表面8aに対する押圧力は小さくなっているので、搬送ベルト8による用紙Pの搬送精度を維持しつつ表面8aを清掃することが可能となる。したがって、ヘッド10により記録される画像品質を維持しつつ搬送ベルト8を清掃することが可能となる。その後、画像が記録された用紙Pが剥離プレート5により搬送ベルト8から剥離され、2つの送りローラ28によって上方に搬送されて、上方の開口30から排紙部31に排出される。
【0065】
そして、制御装置1pは、画像が記録された用紙Pが排紙部31に排出された後、搬送モータ121の駆動を停止する。そして、搬送ベルト8が停止した状態で、モータ41Mを駆動し、ワイパ41を主走査方向に沿った軸を中心として若干回転させ、ワイパ41の先端を表面8aから離隔させる。こうして、第2ワイピング動作が終了する。なお、クリーニングローラ12は、搬送ベルト8と常に接触しているので、常時、搬送ベルト8の表面8aをクリーニングしている。
【0066】
以上に述べたように、本実施形態に係るプリンタ1によると、記録モードの際には、搬送ベルト8の走行方向において、第1領域15がベルトローラ6(テンションローラ)よりも下流側かつベルトローラ7(駆動ローラ)よりも上流側となると共に、第2領域16がベルトローラ7よりも下流側かつベルトローラ6よりも上流側となる。このため、高い画像品質を確保することができる。また、清掃モードの際には、搬送ベルト8の走行方向において、第2領域16がベルトローラ6よりも下流側かつベルトローラ7よりも上流側となる。このため、ベルトローラ7と搬送ベルト8との間でスリップが生じにくくなり、清掃モードの際にワイパ41が高い清掃性能で搬送ベルト8の表面8aを清掃することが可能となる。
【0067】
また、ベルトローラ7は、記録モードの際には正回転し、清掃モードの際には逆回転する。このような簡易な制御でベルトローラ7に対する搬送ベルト8のスリップを抑制することができるとともに、搬送ベルト8の表面8aをワイパ41で清掃することができる。また、搬送機構21が有する複数のベルトローラ6,7が2つであることで、簡易な構成で、スリップを生じさせずに、搬送ベルト8の表面8aをワイパ41で清掃することが可能となる。
【0068】
続いて、本発明の第2実施形態によるインクジェットプリンタについて、図5及び図7を参照しつつ以下に説明する。本実施形態におけるインクジェットプリンタは、搬送機構321が2つのベルトローラ6,7に加えてローラ309をさらに有すると共に、搬送モータ122(図5中破線で示す)及び搬送モータ122からの回転力をローラ309に伝達する複数のギア(不図示)を有している。また、本実施形態におけるインクジェットプリンタは、メンテナンスユニット261の構成や第1ワイピング動作における搬送ベルト308の走行制御が第1実施形態と異なるだけで、これら以外は第1実施形態と同様な構成である。なお、第1実施形態と同様なものに関しては同符号で示し、説明を省略する。
【0069】
搬送機構321のローラ309は、図7に示すように、副走査方向に関して2つのベルトローラ6,7のちょうど中央に位置し、これらベルトローラ6,7よりも下方に位置している。また、ローラ309は、ベルトローラ6,7よりもその外径が小さくなっているが、主走査方向の長さはベルトローラ6,7と同じである。
【0070】
本実施形態における搬送ベルト308の第1領域315は、ベルトローラ6とベルトローラ7とにより規定されている。また、搬送ベルト308の第2領域316は、ベルトローラ7とローラ309とにより規定されている。第1領域315は、ベルトローラ7の上側部分における搬送ベルト308との接触境界部分L1と、ベルトローラ6の上側部分における搬送ベルト308との接触境界部分L2との間に存在する。一方、第2領域316は、第1領域315とは異なる領域であって、ベルトローラ7の下側部分における搬送ベルト308との接触境界部分L3と、ローラ309のベルトローラ7側部分における搬送ベルト308との接触境界部分L4との間に存在する。
【0071】
ベルトローラ7は、制御装置1pによって駆動された搬送モータ121によって回転する。記録モードにおいて、制御装置1pの制御により、ベルトローラ7は正回転(図7中時計周りに回転)される。ベルトローラ7の正回転により、搬送ベルト308は、第1領域315が搬送方向に移動するように走行する。なお、ベルトローラ6は、テンションローラであって、搬送ベルト308にテンションを付与しつつ、搬送ベルト308の走行に従動して回転する。
【0072】
ローラ309は、制御装置1pによって駆動された搬送モータ122によって回転する。清掃モードにおいて、制御装置1pの制御により、ローラ309は正回転(図7中時計周りに回転)される。ローラ309の正回転により、搬送ベルト308は、第1領域が搬送方向に移動するように走行する。
【0073】
本実施形態においては、搬送機構321には2つの駆動ローラが含まれており、記録モードにおいて搬送ベルト308が走行される場合と、清掃モードにおいて搬送ベルト308が走行される場合とで、駆動されるローラが異なる。つまり、記録モードにおいては、ベルトローラ7が駆動され、清掃モードにおいては、ローラ309が駆動される。本実施形態においても、記録モードの際には、搬送ベルト308の走行方向において、第1領域315はベルトローラ6(テンションローラ)よりも下流側かつベルトローラ7(駆動ローラ)よりも上流側となると共に、第2領域316はベルトローラ7よりも下流側かつベルトローラ6よりも上流側となる。一方、清掃モードの際には、搬送ベルト308の走行方向において、第2領域316は、ベルトローラ6よりも下流側かつローラ309(駆動ローラ)よりも上流側となる。
【0074】
メンテナンスユニット261は、図7に示すように、第1実施形態のメンテナンスユニット61と比して、ワイパ241とワイパクリーナー245との配置が互いに入れ替わっている。また、メンテナンスユニット261は、搬送ベルト308が第1及び第2ワイピング動作のいずれにおいても、第1領域315が搬送方向に移動するようにベルトローラ7及びローラ309の駆動が制御されるので、ワイパ241がいずれのワイピング動作においても同じ方向に傾斜した状態(図7に示す状態)で第2領域316の表面308aと接触するように、制御装置1pによって制御される。第2ワイピング動作を行うときのワイパ241の傾斜角度θ1´は、図7(b)に示すように、第1ワイピング動作をおこなうときのワイパ241の傾斜角度θ2´よりも大きい。つまり、第2ワイピング動作を行うときのワイパ241の表面308aに対する押圧力(第1押圧力)は、第1ワイピング動作を行うときのワイパ241の表面308aに対する押圧力(第2押圧力)よりも大きい。これにより、第1実施形態と同様な効果を得ることができる。なお、メンテナンスユニット261もワイパ241が第2領域16の表面308aと離接可能な位置に配置されており、メンテナンスユニット261は、第1実施形態のメンテナンスユニット61とほぼ同様な構成を有している。
【0075】
次に、本実施形態において、制御装置1pが実行する動作内容について、以下に説明する。本実施形態においても、第1実施形態と同様なステップ1〜ステップ5が行われる。
【0076】
ステップ4において、制御装置1pは、モータ41Mを駆動し、傾斜角度がθ1´となるようにワイパ241を主走査方向に沿った軸を中心として回転させ、ワイパ241の先端を表面308aに接触させる。制御装置1pは、ワイパ241の先端が撓みながら表面308aに接触したタイミングで、モータ41Mの駆動を停止し、ワイパ241を第1押圧状態とする。そして、制御装置1pは、搬送モータ121の駆動を停止させた状態で搬送モータ122を駆動させ、ローラ309を正回転させて搬送ベルト308を1又は数周走行させる。このとき、ベルトローラ7は従動ローラとして搬送ベルト308の走行に伴って正回転する。これにより、搬送ベルト308の表面308a上の異物が、ワイパ241によって第2領域316の表面308aの狭い範囲に集められながら除去されていく(第1ワイピング動作)。このとき、搬送ベルト308の走行方向において、第2領域316は、ベルトローラ6(テンションローラ)よりも下流側かつローラ309(駆動ローラ)よりも上流側となる。そのため、第2領域316に当接するワイパ241による抵抗により搬送ベルト308に弛みが生じようとしても、ベルトローラ6により付与されるテンションによって搬送ベルト308には弛みが生じにくい。このように搬送ベルト308に弛みが生じにくくなると、搬送ベルト308とローラ309との間の接触が部分的に離れにくくなって、ローラ309の駆動力が搬送ベルト308に効果的に加えられる。つまり、搬送ベルト308とローラ309との間でスリップが生じにくくなる。
【0077】
制御装置1pは、搬送ベルト308が1又は数周走行した後、搬送モータ122の駆動を停止する。そして、搬送ベルト308が停止した状態で、モータ41Mを駆動し、ワイパ241を主走査方向に沿った軸を中心として若干回転させ、ワイパ241の先端を表面308aから離隔させる。こうして、第1ワイピング動作が終了する。
【0078】
ステップ5において、制御装置1pは、モータ41Mを駆動し、傾斜角度がθ2´となるようにワイパ241を主走査方向に沿った軸を中心として回転させ、ワイパ241の先端を表面308aに接触させる。制御装置1pは、ワイパ241の先端が撓みながら表面308aに接触したタイミングで、モータ41Mの駆動を停止、ワイパ241を第2押圧状態とする。そして、制御装置1pは、搬送モータ122の駆動を停止させた状態で搬送モータ121を駆動させ、ベルトローラ7を正回転させて搬送ベルト308を搬送方向に走行させる。このとき、ローラ309は従動ローラとして搬送ベルト308の走行に伴って正回転する。これにより、搬送ベルト308の表面308a上の異物が、ワイパ241によって第2領域316の表面308aの狭い範囲に集められながら除去されていく(第2ワイピング動作)。このとき、ワイパ241による表面308aに対する押圧力が小さいため、第1実施形態と同様に、搬送ベルト308による用紙Pの搬送精度を維持しつつ表面308aを清掃することが可能となる。
【0079】
そして、第1実施形態と同様に、ステップ5において、制御装置1pは、記録動作を行う。具体的には、給紙トレイ24から搬送機構21に用紙Pが供給されるように給紙モータ125及び送りモータ127を制御するとともに、第1領域315の表面308aに用紙Pが吸着されるように電源36を制御する。そして、制御装置1pは、画像データに基づく吐出信号を各ヘッド10に出力し、ヘッド10から各色のインクを吐出して、用紙P上にカラー画像が記録する。このとき、第1領域315は、搬送ベルト308の走行方向において、ベルトローラ6(テンションローラ)よりも下流側かつベルトローラ7(駆動ローラ)よりも上流側となる。ベルトローラ6よりも下流側かつベルトローラ7よりも上流側の第1領域315は、ベルトローラ6によって引っ張られる領域となるため、弛みが生じにくく、弛みに起因する振動が少ない。そのため、高い画像品質を確保することができる。さらに、第1領域315において、搬送ベルト308は吸着プラテン22による吸着力を受けている。そのため、ベルトローラ7よりも下流側かつ吸着プラテン22よりも上流側の搬送ベルト308の部分に弛みが生じようとする。しかしながら、ベルトローラ7よりも下流側かつ吸着プラテン22よりも上流側には、ベルトローラ6が配置されており、ベルトローラ6が搬送ベルト308にテンションを付与するため、搬送ベルトに弛みが生じにくい。このため、高い画像品質を確保することができる。その後、画像が記録された用紙Pが剥離プレート5により表面308aから剥離され、2つの送りローラ28によって上方に搬送されて、上方の開口30から排紙部31に排出される。
【0080】
そして、制御装置1pは、画像が記録された用紙Pが排紙部31に排出された後、搬送モータ121の駆動を停止する。そして、搬送ベルト308が停止した状態で、モータ41Mを駆動し、ワイパ241を主走査方向に沿った軸を中心として若干回転させ、ワイパ241の先端を表面308aから離隔させる。こうして、第2ワイピング動作が終了する。なお、クリーニングローラ12は、搬送ベルト308と常に接触しているので、常時、表面308aをクリーニングしている。
【0081】
以上に述べたように、本実施形態によるプリンタによると、ベルトローラ7及びローラ309のそれぞれに回転力を付与することが可能な2つの搬送モータ121,122が設けられており、清掃モードの際にはローラ309を正回転させ、記録モードの際にはベルトローラ7を正回転させることで、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0082】
本実施形態の変形例として、搬送モータ122及び搬送モータ122からの回転力をローラ309に伝達する複数のギアを設けなくてもよい。この場合、ベルトローラ7は、第1実施形態と同様に、正逆転可能に構成する。そして、制御装置1pは、記録モードにおいてベルトローラ7を正回転させ、清掃モードにおいてベルトローラ7を逆回転させる。この構成においても、記録モードにおいて、第1領域315は、搬送ベルト308の走行方向において、ベルトローラ6(テンションローラ)よりも下流側かつベルトローラ7(駆動ローラ)よりも上流側となる。また、清掃モードにおいて、第2領域316は、搬送ベルトの走行方向において、ベルトローラ6よりも下流側かつベルトローラ7よりも上流側となる。また、ベルトローラ7を正逆転可能に構成した場合には、ベルトローラ6を介して搬送ベルト308にテンションを付与する付勢機構を設けずに、ローラ309を介して搬送ベルト308にテンションを付与する付勢機構を設けても良い。
【0083】
続いて、本発明の第3実施形態によるインクジェットプリンタについて、図8を参照しつつ以下に説明する。本実施形態におけるインクジェットプリンタは、搬送機構421が2つのベルトローラ6,7に加えてローラ409、410、412をさらに有しており、これ以外は第1実施形態とほぼ同様な構成である。なお、第1実施形態と同様なものに関しては同符号で示し、説明を省略する。
【0084】
搬送機構421のローラ409、410、412は、図8に示すように、ベルトローラ6,7よりも下方に位置している。また、ローラ409、410、412は、ベルトローラ6,7よりもその外径が小さくなっているが、主走査方向の長さはベルトローラ6,7と同じである。ローラ410は、表面408aに接触するように配置されている。また、ローラ409、412は、テンションローラであり、図示しない付勢機構によって、鉛直方向下方に付勢されている。これによって、搬送ベルト408にテンションが付与されている。本実施形態においては、ベルトローラ6を付勢する付勢機構は設けられていない。つまり、本実施形態において、ベルトローラ6はテンションローラでない。
【0085】
本実施形態における搬送ベルト408の第1領域415は、ベルトローラ6とベルトローラ7とにより規定されている。また、搬送ベルト408の第2領域416は、ベルトローラ7とローラ412とにより規定されている。第1領域415は、ベルトローラ7の上側部分における搬送ベルト408との接触境界部分M1と、ベルトローラ6の上側部分における搬送ベルト408との接触境界部分M2との間に存在する。一方、第2領域416は、第1領域415とは異なる領域であって、ベルトローラ7の下側部分における搬送ベルト408との接触境界部分M3と、ローラ412のベルトローラ7側部分における搬送ベルト408との接触境界部分M4との間に存在する。
【0086】
本実施形態においても、ベルトローラ7を正回転(図8中時計回りに回転)させると、搬送ベルト408の走行方向において、第1領域415は、ローラ409又はローラ412(テンションローラ)よりも下流側かつベルトローラ7(駆動ローラ)よりも上流側となると共に、第2領域416は、ベルトローラ7(駆動ローラ)よりも下流側かつローラ409又はローラ412(テンションローラ)よりも上流側となる。一方、ベルトローラ7を逆回転させると、第2領域416は、ローラ409又はローラ412(テンションローラ)よりも下流側かつベルトローラ7(駆動ローラ)よりも上流側となる。
【0087】
メンテナンスユニット61は、搬送ベルト408の第2領域416に対向した位置に配置されている。ワイパ41は、第2領域416の表面408aと離接可能に配置されている。
【0088】
本実施形態においても、第1実施形態と同様なステップ1〜ステップ5が行われる。ステップ4において、制御装置1pは、ワイパ41が第1押圧状態となるように、モータ41Mの駆動を制御する。その後、制御装置1pは、搬送モータ121の駆動によりベルトローラ7を逆回転させて搬送ベルト8を1又は数周走行させる。
【0089】
これにより、第1実施形態と同様に、第1ワイピング動作を行う。このように、搬送ベルト408の表面408aをワイピングする際にベルトローラ7を逆回転させることで、搬送ベルト408の走行方向において、第2領域416がローラ409又はローラ412(テンションローラ)よりも下流側かつベルトローラ7(駆動ローラ)よりも上流側となり、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。より具体的に説明すると、ベルトローラ7から送り出された搬送ベルト409は、ローラ409及びローラ412を経由して第2領域416に至る。ここで、第2領域416に当接するワイパ41との摩擦により搬送ベルト408は抵抗を受け、ベルトローラ7よりも下流側かつワイパ41よりも上流側の搬送ベルト408の部分に弛みが生じようとする。しかし、ベルトローラ7よりも下流側かつワイパ41よりも上流側には、ローラ409及びローラ412が配置されており、ローラ409及びローラ412が搬送ベルト408にテンションを付与するため、搬送ベルト408に弛みが生じにくい。したがって、搬送ベルト408とベルトローラ7との間でスリップが生じにくくなる。なお、本実施形態のように、テンションローラが複数(ローラ409、410)ある場合においても、搬送ベルトの走行方向において、第2領域416がいずれか1つのテンションローラ(ローラ409又はローラ410)よりも下流側かつ駆動ローラ(ベルトローラ7)よりも上流側となれば、搬送ベルト408のスリップを抑制できる。
【0090】
その後、制御装置1pは、搬送ベルト408が1又は数周走行した後、搬送モータ121の駆動を停止する。そして、制御装置1pは、ワイパ41の先端を表面408aから離隔させるように、モータ41Mの駆動を制御する。こうして、第1ワイピング動作が終了する。
【0091】
ステップ5において、制御装置1pは、ワイパ41が第2押圧状態となるように、モータ41Mの駆動を制御する。その後、制御装置1pは、搬送モータ121の駆動によりベルトローラ7を正回転させて搬送ベルト408を搬送方向に走行させる。このとき、ワイパ41による表面408aに対する押圧力が小さいため、第1実施形態と同様に、搬送ベルト408による用紙Pの搬送精度を維持しつつ表面408aを清掃することが可能となる。
【0092】
そして、第1実施形態と同様に、制御装置1pは、記録動作を行う。具体的には、給紙トレイ24から搬送機構21に用紙Pが供給されるように給紙モータ125及び送りモータ127を制御するとともに、第1領域415の表面408aに用紙Pが吸着されるように電源36を制御する。そして、制御装置1pは、画像データに基づく吐出信号を各ヘッド10に出力し、ヘッド10から各色のインクを吐出して、用紙P上にカラー画像が記録する。このとき、第1領域415は、搬送ベルト408の走行方向において、ローラ409又はローラ412(テンションローラ)よりも下流側かつベルトローラ7(駆動ローラ)よりも上流側となる。ローラ409又はローラ412よりも下流側かつベルトローラ7よりも上流側の第1領域415は、ベルトローラ7によって引っ張られる領域となるため、弛みが生じにくく、弛みに起因する振動が少ない。そのため、高い画像品質を確保することができる。さらに、第1領域415において、搬送ベルト408は吸着プラテン22による吸着力を受けている。そのため、ベルトローラ7よりも下流側かつ吸着プラテン22よりも上流側の搬送ベルト408の部分にたるみが生じようとする。しかしながら、ベルトローラ7よりも下流側かつ吸着プラテン22よりも上流側には、ローラ409及びローラ412が配置されており、ローラ409及びローラ412が搬送ベルト408にテンションを付与するため、搬送ベルト408に弛みが生じにくい。このため、高い画像品質を確保することができる。その後、画像が記録された用紙Pが剥離プレート5により搬送ベルト408から剥離され、2つの送りローラ28によって上方に搬送されて、上方の開口30から排紙部31に排出される。
【0093】
そして、制御装置1pは、画像が記録された用紙Pが排紙部31に排出された後、搬送モータ121の駆動を停止する。そして、搬送ベルト408が停止した状態で、モータ41Mを駆動し、ワイパ41を主走査方向に沿った軸を中心として若干回転させ、ワイパ41の先端を表面408aから離隔させる。こうして、第2ワイピング動作が終了する。なお、クリーニングローラ12は、搬送ベルト408と常に接触しているので、常時、表面408aをクリーニングしている。
【0094】
以上に述べたように、本実施形態によるプリンタによると、清掃モードの際にはベルトローラ7を逆回転させ、記録モードの際にはベルトローラ7を正回転させることで、このため、第1実施形態と同様な効果を得ることが可能となる。
【0095】
第3実施形態のプリンタの変形例として、搬送機構421が、第1実施形態のようにベルトローラ6を介して搬送ベルト408にテンションを付与する付勢機構を有していてもよい。さらに、ローラ409もしくはローラ412を介して搬送ベルト408にテンションを付与する付勢機構を有しない代わりに、ローラ409もしくはローラ412を回転させるモータ及びモータの回転力をローラ409もしくはローラ412に伝達する複数のギアを有していてもよい。この場合に、制御装置1pは、記録モードの際には、ベルトローラ7を正回転させ、清掃モードの際にはローラ409もしくはローラ412を正回転させる。ローラ412が駆動ローラである場合には、第2領域416は、接触境界部分M3と接触境界部分M4との間に存在する。一方、ローラ409が駆動ローラである場合には、第2領域416は、接触境界部分M3と接触境界部分M4との間でもよいし、ローラ412のローラ410側部分における搬送ベルト408との接触境界部分と、ローラ410のローラ412側部分における搬送ベルト408との接触境界部分との間でもよい。さらに、ローラ410のローラ409側部分における搬送ベルト408との接触境界部分と、ローラ409のローラ410側部分における搬送ベルト408との接触境界部分との間でもよい。
【0096】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の第2実施形態における搬送機構には、2つの搬送モータ121,122などが設けられていたが、1つの搬送モータと当該搬送モータの回転力を各ベルトローラ6,7に切り換えて伝達することが可能な動力伝達機構とが設けられていてもよい。この場合、モータの数が減るので製造コストを低下させることが可能となる。また、上述の第1〜第3実施形態及びこれらの変形例において、第2ワイピング動作が行われなくてもよい。つまり、記録動作中にワイピング動作が行われなくてもよい。この場合、第1清掃部材は、第2押圧状態をとらなくてもよい。また、ワイパ41,241は、シャフト42の回転で搬送ベルトの第2領域の表面に当接する位置と離隔する位置とに移動されていたが、例えば、ソレノイドなどの移動機構でワイパ41,241が当接位置と離隔位置との間を移動してもよい。また、ワイパ41,241は、主及び副走査方向に対して交差した方向に延在していてもよい。また、搬送機構は、5以上のローラを有していてもよい。また、搬送機構の構成及び、記録ヘッドの配置位置、メンテナンスユニット61の配置位置は、上述の実施の形態に限られずに、記録モードにおいて、搬送ベルトの走行方向に関して、第1領域がテンションローラよりも下流側かつ駆動ローラよりも上流側となり、清掃モードにおいて、搬送ベルトの走行方向に関して、第2領域がテンションローラよりも下流側かつ駆動ローラよりも上流側となれば、よい。
【0097】
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能であり、さらに、インク以外の液体を吐出させることで記録を行う記録装置にも適用可能である。本発明は、インクジェット式に限定されず、例えばレーザー式、サーマル式等の記録装置にも適用可能である。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。
【符号の説明】
【0098】
1 インクジェットプリンタ(記録装置)
1p 制御装置(制御手段)
6,7 ベルトローラ
8,308,408 搬送ベルト
8a,308a,408a 表面
10 インクジェットヘッド(記録ヘッド)
12 クリーニングローラ(第2清掃部材)
15,315,415 第1領域
16,316,416 第2領域
21,321,421 搬送機構
41,241 ワイパ(第1清掃部材)
61,261 メンテナンスユニット(清掃機構)
309、409、410、412 ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離隔して配置されたテンションローラを含む複数のローラに巻回される無端状のベルトであって前記複数のローラのうちの2つのローラにより規定される第1領域及び前記複数のローラのうちの2つのローラにより規定されると共に前記第1領域とは異なる第2領域を有する無端状のベルトを含み、前記第1領域に支持された記録媒体を搬送する搬送機構と、
前記第1領域に対向して配置され、記録媒体に液体を吐出して画像を記録する記録ヘッドと、
前記第2領域に当接可能な第1清掃部材を含み、前記第1清掃部材が前記第2領域に当接する当接状態と前記第2領域から離隔する離隔状態とをとることができる清掃機構と、
前記搬送機構及び前記清掃機構を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記記録ヘッドにより画像を記録する記録モードにおいて、
前記複数のローラのうちのいずれかであって前記テンションローラを除くローラを駆動させることにより、前記ベルトの走行方向に関して、前記第1領域を、前記テンションローラよりも下流側かつ駆動される当該ローラよりも上流側とすると共に、前記第2領域を、駆動される当該ローラよりも下流側かつ前記テンションローラよりも上流側とし、
前記記録ヘッドによる画像の記録を行わずに前記第1清掃部材により前記ベルトを清掃する清掃モードにおいて、
前記第1清掃部材を前記当接状態とすると共に、前記複数のローラのうちのいずれかであって前記テンションローラを除くローラを駆動させることにより、前記ベルトの走行方向に関して、前記第2領域を、前記テンションローラよりも下流側かつ駆動される当該ローラよりも上流側とすることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記複数のローラには、1つの駆動ローラが含まれており、
前記制御手段は、前記記録モードにおいて、前記駆動ローラを正回転させ、前記清掃モードにおいて、前記駆動ローラを逆回転させることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記複数のローラは、前記駆動ローラ及び前記テンションローラの2つのローラであることを特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記複数のローラには、2つの駆動ローラが含まれており、
前記制御手段は、前記記録モードにおいて、前記2つの駆動ローラのうちの一方を駆動させ、前記清掃モードにおいて、前記2つの駆動ローラのうちの他方を駆動させることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項5】
前記当接状態には、前記第1清掃部材の前記第2領域への押圧力が第1押圧力である第1押圧状態と、前記第2領域への押圧力が前記第1押圧力よりも小さい第2押圧力である第2押圧状態とがあり、
前記制御手段は、前記清掃モードにおいて、前記第1清掃部材が前記第1押圧状態となるように前記清掃機構を制御し、前記記録ヘッドによる画像の記録を行いつつ前記第1清掃部材により前記ベルトを清掃する記録モードにおいて、前記第1清掃部材が前記第2押圧状態となるように前記清掃機構を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記記録モードにおいて、前記当接状態にある前記第1清掃部材の前記第2領域への押圧力よりも小さい押圧力で前記ベルトを清掃する第2清掃部材をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−158421(P2012−158421A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18195(P2011−18195)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】