説明

記録装置

【課題】記録ヘッドと用紙との間の間隔の精度を考慮した記録装置を提供すること。
【解決手段】記録装置(2)は、記録ヘッド27を有し、所定の方向(X)へ移動可能なキャリッジ26と、前記キャリッジを案内するガイド部材(4)と、前記キャリッジと共に移動し、前記ガイド部材と接触して摺動する摺動部材5と、該摺動部材と、前記キャリッジの一部とによって挟まれ、前記キャリッジに対して相対的に移動することにより前記挟まれた方向(Z)における前記挟まれた箇所の長さが変わることによって、前記記録ヘッドと被記録媒体との間の間隔PGを変えるカム部材6と、を備え、前記摺動部材における前記カム部材と接触し該カム部材を支持する第1接触部5aの接触領域は、前記挟まれた方向(Z)から見て、前記摺動部材における前記ガイド部材と接触する第2接触部5bの接触領域と、重なる構成であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の方向へ移動可能なキャリッジを有する記録装置に関する。
本願において、記録装置には、インクジェットプリンター、複写機、ファクシミリ等の種類が含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
従来では、特許文献1に示す如く、記録装置は、用紙の幅方向に移動可能なキャリッジと、該キャリッジを案内するガイド部とを備えていた。
図7に示すのは、従来技術のキャリッジ40周辺の構成を示す図である。
図7に示す如く、従来技術のキャリッジ40は、ガイド部42に案内されるように構成されていた。
【0003】
また、キャリッジ40と共に移動する摺動部43が設けられており、摺動部43が、直接ガイド部42と接触し摺動する構成であった。またさらに、摺動部43と、キャリッジ40との間に間隔制御部材44が挟まれていた。そして、間隔制御部材44がキャリッジ40に対して相対的に用紙の幅方向Xに移動することにより、キャリッジ40に設けられた記録ヘッド41と、用紙との間の間隔が切り替わるように設けられていた。
【0004】
具体的には、摺動部43における二箇所の摺動面43a、43aにおいてガイド部42と直接接触するように設けられていた。また、摺動部43における二箇所の支持面43b、43bにおいて間隔制御部材44と直接接触するように設けられていた。そして、間隔制御部材44が、キャリッジ40に対して幅方向Xに移動することにより、摺動部43の支持面43b、43bと、キャリッジ40との間における間隔制御部材44の厚みが変化する。これにより、記録ヘッド41と、用紙との間の間隔が切り替わるように設けられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−23501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、摺動部43における支持面43b、43bの位置は、摺動面43a、43aの位置より幅方向Xの内側に設けられている。そのため、キャリッジ40および間隔制御部材44の自重が摺動部43に対して作用する際、支持面43b、43b近傍が下がるように撓む虞がある。係る場合、記録ヘッド41と用紙との間の間隔が、設定された距離より小さくなる虞がある。つまり、記録ヘッド41と用紙との間の間隔の精度が低下する虞がある。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、記録ヘッドと用紙との間の間隔の精度を考慮した記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様の記録装置は、被記録媒体に対して記録する記録ヘッドを有し、所定の方向へ移動可能なキャリッジと、前記キャリッジを前記所定の方向へ案内するガイド部材と、前記キャリッジと共に移動し、前記ガイド部材と接触して摺動する摺動部材と、該摺動部材と、前記キャリッジの一部とによって挟まれ、前記キャリッジに対して相対的に移動することにより前記挟まれた方向における前記挟まれた箇所の長さが変わることによって、前記記録ヘッドと被記録媒体との間の間隔を変えるカム部材と、を備え、前記摺動部材は、前記カム部材および該カム部材を介して前記キャリッジを支持する構成であり、前記摺動部材における前記カム部材と接触し該カム部材を支持する第1接触部の接触領域は、前記挟まれた方向から見て、前記摺動部材における前記ガイド部材と接触する第2接触部の接触領域と、重なる構成であることを特徴とする。
【0009】
ここで、「重なる」とは、少なくとも一部が重なることをいう。つまり、全部が完全に一致するように重なっていなくてもよい。
本態様によれば、前記第1接触部に作用する前記キャリッジおよび前記カム部材の自重が、直ぐ下の前記第2接触部を介して前記ガイド部材に作用する。従って、前記摺動部材が、前記キャリッジおよび前記カム部材の自重によって撓む虞がない。その結果、前記記録ヘッドと被記録媒体との間の間隔を安定させることができる。つまり、前記間隔が勝手に変化する虞がなく、前記間隔の精度が低下する虞がない。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記摺動部材における前記第2接触部は、複数設けられており、前記キャリッジの移動方向において、前記摺動部材における前記複数の第2接触部より外側に、回転規制部が設けられており、前記ガイド部材に対して前記キャリッジが傾いた際に、前記回転規制部が前記ガイド部材と接触するように、前記第2接触部以外の箇所と比較して前記回転規制部と前記ガイド部材との間隔が狭く設けられている構成であることを特徴とする。
【0011】
本態様によれば、第1の態様と同様の作用効果に加え、急な加速や減速で前記キャリッジが前記ガイド部材に対して傾こうとした場合、前記回動規制部が前記ガイド部材と接触する。従って、前記ガイド部材に対する前記キャリッジの傾きを極僅かにすることができる。その結果、記録品質に殆ど影響がないようにすることができる。
例えば、前記キャリッジの重心の位置と、前記キャリッジが無端ベルト等で引っ張られる際の前記キャリッジにおける前記無端ベルトと接続された箇所の位置とが、前記挟まれた方向においてずれている場合に前記キャリッジが前記傾こうとする。係る場合に、前記回転規制部を有する構成は、特に有効である。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様において、前記カム部材における前記キャリッジの前記一部と接触している箇所の接触領域は、前記挟まれた方向から見て、前記第1接触部の接触領域および前記第2接触部の接触領域が重なる範囲と、重なる構成であることを特徴とする。
ここで、「重なる」とは、少なくとも一部が重なることをいう。つまり、全部が完全に一致するように重なっていなくてもよい。
本態様によれば、第1または第2の態様と同様の作用効果に加え、前記接触している箇所に作用する前記キャリッジの自重が、直ぐ下の前記第1接触部を介して前記摺動部材に作用する。従って、前記カム部材が、前記キャリッジの自重によって撓む虞がない。その結果、前記記録ヘッドと被記録媒体との間の間隔を、より安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施例のプリンター複合機の概略を示す側断面図。
【図2】本実施例のキャリッジを送り方向上流側から見た背面断面図。
【図3】図2の要部を拡大した拡大背面断面図。
【図4】(A)(B)は本実施例の第1レバー部材の突出、退避した様子を示す側面図。
【図5】(A)(B)はPGを大きくする際の動作を説明する図。
【図6】(A)(B)はPGを小さくする際の動作を説明する図。
【図7】従来技術のキャリッジ周辺の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すのは、本実施例のプリンター複合機1の概略を示す側断面図である。
図1に示す如く、本実施例のプリンター複合機1は、プリンター本体2と、媒体搬送装置33とを備えている。このうち、プリンター本体2は、スキャナー部12と、載置部13と、送り手段16と、送り経路23と、記録部25と、第1排出スタッカー31と、ケース3と、を備えている。
【0015】
スキャナー部12は、プリンター本体2における媒体搬送装置33側である上方(Z軸の矢印方向)に配設されている。ここで、Z軸は、鉛直方向である。
そして、スキャナー部12は、媒体搬送装置33によって、送られた用紙の面に記録された写真や文書等の情報を読み取ることができるように構成されている。
またさらに、載置部13は、被記録媒体の一例である用紙Pを載置することができるように設けられている。
【0016】
本実施例では第1載置部14と、第2載置部15とがある。第1載置部14は、プリンター本体2の後方に設けられたペーパーサポート14aおよびホッパー14bである。このうち、ホッパー14bは、上方(Z軸の矢印方向)を中心に下方が後述する第1ローラー17に対して接離移動することができるように構成されている。一方、第2載置部15は、プリンター本体2の下方に着脱可能に設けられたカセット部15aである。
【0017】
また、送り手段16は、載置部13に載置された用紙Pを記録部25へ送ることができるように設けられている。具体的に、本実施例の送り手段16は、第1ローラー17と、第2ローラー18と、第3ローラー19と、第1ローラー対21と、第2ローラー対22とを有している。このうち、第1ローラー17は、第1ローラー17に対してホッパー14bの下方が接近したとき、最上位の用紙Pと接触し、送り方向下流側の第2ローラー18へ送ることができるように設けられている。
【0018】
また、第3ローラー19は、カセット部15aに対して接離移動可能なアーム部20の自由端に設けられている。そして、カセット部15aにおける最上位に用紙Pと接触し、用紙Pを送り方向下流側の第2ローラー18へ送ることができるように設けられている。またさらに、第2ローラー18は、第1ローラー17および第3ローラー19によって送られてきた用紙Pをさらに下流側の第1ローラー対21へ送ることができるように設けられている。
【0019】
また、第1ローラー対21は、記録時の送り方向下流側(Y軸の矢印方向)の記録部25および第2ローラー対22へ用紙Pを送ることができるように設けられている。またさらに、第2ローラー対22は、記録部25より記録時の送り方向下流側に設けられており、記録部25によって記録された用紙Pを第1排出スタッカー31へ排出することができるように設けられている。
【0020】
またさらに、送り経路23は、用紙Pが送られる経路であり、案内部材によって構成されている。具体的には、用紙Pを載置部13から記録部25を介して第1排出スタッカー31まで案内することができるように構成されている。
また、記録部25は、送り手段16によって送られた用紙Pに対してインクを吐出して記録を実行することができるように構成されている。具体的には、記録部25は、キャリッジ26と、記録ヘッド27と、媒体支持部28とを有している。
【0021】
このうち、キャリッジ26は、一例として図示しないモーターの動力によって用紙Pの幅方向Xに延設されたガイド部材であるガイドレール4にガイドされながら移動することができるように構成されている。また、記録ヘッド27は、キャリッジ26における用紙Pと対向する側に設けられている。さらに、記録ヘッド27における用紙Pと対向する面には、インクを吐出するノズル(図示せず)が形成されている。
【0022】
尚、インクカートリッジ(図示せず)からキャリッジ26の記録ヘッド27へインクを供給するために、インクカートリッジ側から延びたインクチューブ29がキャリッジ26に接続されている。
またさらに、媒体支持部28は、記録ヘッド27と対向する位置に設けられており、用紙Pと記録ヘッド27との間の距離PG(図2参照)を所定の長さに保つことができるように構成されている。
またさらに、第1排出スタッカー31は、記録された用紙Pを載置することができるように設けられている。また、第1排出スタッカー31は伸縮自在に設けられている。
【0023】
尚、送り経路23とは別に、用紙Pの裏表を反転させるための表裏反転用経路24が設けられている。両面記録モードの場合、用紙Pの表面に対しての記録後に、第1ローラー対21および第2ローラー対22によって用紙Pは、記録時の送り方向Yと逆方向へ逆送りされる。そして、表裏反転用経路24へ送られ、第2ローラー18の下側から上側へ回り込んで再び第1ローラー対21へ送られる。この際、既に記録された表面が媒体支持部28側となり、まだ記録されていない裏面が記録ヘッド27側となる。そして、第1ローラー対21によって記録時の送り方向下流側へ送られ、記録部25によって裏面に対して記録が実行されるように構成されている。
【0024】
また、ケース3は、プリンター本体2の筐体である。送り経路23等を覆うように構成されている。
一方、媒体搬送装置33は、プリンター本体2の上方(Z軸の矢印方向)に配設されている。詳しい図示は省略するが、プリンター本体2側のスキャナー部12と対向する第2所定位置に対して第3載置部(図示せず)に載置された用紙を搬送経路(図示せず)によって送ることができるように設けられている。そして、スキャナー部12によって用紙の面に記録された情報が読み取られる。その後、媒体搬送装置33は、用紙を第2排出スタッカー(図示せず)まで送って排出することができるように設けられている。
【0025】
続いて、キャリッジ26と、ガイドレール4との間の構造について詳しく説明する。
図2に示すのは、本実施例のキャリッジ26を送り方向上流側から見た背面断面図である。また、図3に示すのは、図2の要部を拡大した拡大背面断面図である。
図2および図3に示す如く、記録部25は、キャリッジ26と、ガイドレール4と、摺動部材5と、カム部材6と、を有している。前述したようにキャリッジ26は、ガイドレール4に案内されながら幅方向Xへ移動可能に設けられている。
【0026】
また、摺動部材5は、キャリッジ26と共に幅方向Xへ移動し、ガイドレール4と接触して摺動するように構成されている。
またさらに、カム部材6は、摺動部材5と、キャリッジ26とによって挟まれている。また、カム部材6は、外力が付与された際、キャリッジ26に対して幅方向Xへ相対的に移動することができるように構成されている。そして、カム部材6がキャリッジ26に対して幅方向Xへ移動することにより、摺動部材5と、ガイドレール4とによって挟まれている箇所の挟まれている方向の長さが変化する。これにより、前述した記録ヘッド27と用紙Pとの間の距離PGを変えることができるように構成されている。
【0027】
具体的には、摺動部材5は、第1接触部(第1接触箇所)5a、5aと、第2接触部(第2接触箇所)5b、5bと、回転規制部5c、5cと、を有している。このうち、第1接触部(第1接触箇所)5a、5aは、摺動部材5におけるガイドレール4と接触する箇所である。本実施例では、幅方向Xにおける異なる位置に二つ設けられている。
また、第2接触部(第2接触箇所)5b、5bは、摺動部材5におけるカム部材6と接触する箇所である。本実施例では、幅方向Xにおける異なる位置に二つ設けられている。
【0028】
そして、前記挟まれている方向である鉛直方向Zから見て、第1接触部5a、5aの接触領域と、第2接触部5b、5bの接触領域とが少なくとも一部において重なるように構成されている。
これにより、キャリッジ26およびカム部材6の自重が、比較的大きく摺動部材5に作用する場合であっても、摺動部材5が、撓むように変形することを防止することができる。その結果、前述した記録ヘッド27と用紙Pとの間の距離PGの精度を、従来の構成と比較して、向上させることができる。
【0029】
またさらに、回転規制部5c、5cは、ガイドレール4に対するキャリッジ26の姿勢がY軸を中心として傾こうとした際、ガイドレール4に対するキャリッジ26の傾きを最小にすることができるように設けられている。具体的には、回転規制部5c、5cは、摺動部材5における複数の第1接触部5a、5aより、幅方向Xの外側に設けられている。そして、摺動部材5における第2接触部5b、5b以外の箇所と比較して、ガイドレール4との間隔が狭くなるように構成されている。これにより、キャリッジ26の姿勢が傾いていない通常時は、ガイドレール4と接触しないが、キャリッジ26の姿勢が極僅かに傾くと、ガイドレール4と接触する。そして、傾きがそれ以上大きくなることを規制することができるように構成されている。
【0030】
また、カム部材6は、第1段部6cと、第2段部6dと、第3段部6eと、第4段部6fと、第3接触箇所6b、6bと、突部6aとを有しており、第1段部6c〜第4段部6fのいずれかが、摺動部材5の第1接触部5a、5aと接触するように構成されている。そして、第1接触部5a、5aと接触する第1段部6c〜第4段部6fの選択を変えることにより、前述した記録ヘッド27と用紙Pとの間の距離PGを変えることができる。
【0031】
また、第3接触箇所6b、6bは、カム部材6におけるキャリッジ26と接触する箇所である。本実施例では、幅方向Xにおける異なる位置に二つ設けられている。そして、鉛直方向Zから見て、第1接触部5a、5aの接触領域と第2接触部5b、5bの接触領域とが重なる範囲Aと、第3接触箇所6b、6bの接触領域とが少なくとも一部において重なるように構成されている。
これにより、キャリッジ26の自重が、比較的大きくカム部材6に作用する場合であっても、カム部材6が、撓むように変形することを防止することができる。その結果、前述した記録ヘッド27と用紙Pとの間の距離PGの精度を、従来の構成と比較して、より向上させることができる。
【0032】
またさらに、突部6aは、後述する第1レバー部材7(図4参照)の当接部7aと当接可能に設けられている。そして、突部6aと当接部7aとが当接した状態で、キャリッジ26が幅方向Xへ移動することにより、キャリッジ26に対して相対的にカム部材6を幅方向Xへ移動させることができる。これにより、前述した記録ヘッド27と用紙Pとの間の距離PGを変えることができる。
【0033】
続いて、記録ヘッド27と用紙Pとの間の距離PGの切り換え方について説明する。
図4(A)(B)に示すのは、本実施例の第1レバー部材7の突出、退避した様子を示す側面図である。このうち、図4(A)は第1レバー部材7が突出した状態である。一方、図4(B)は第1レバー部材7が退避した状態である。
ここで、「第1レバー部材7が突出した状態」とは、第1レバー部材7がカム部材6と当接可能な状態をいう。一方、「第1レバー部材7が退避した状態」とは、第1レバー部材7がカム部材6と当接しない状態をいう。
【0034】
図4(A)(B)に示す如く、幅方向Xにおけるキャリッジ26の移動可能な範囲の一方の側端近傍には、第1レバー部材7および第2レバー部材8が設けられている。このうち、第1レバー部材7は、当接部7aと、揺動軸7bと、二股部7cとを有している。揺動軸7bを中心に揺動することにより、第1レバー部材7の一端側である当接部7aは、ガイドレール4に案内されてキャリッジ26が移動する際に一緒に移動するカム部材6の突部6aの移動軌跡に対して突出、退避することができるように構成されている。
【0035】
また、二股部7cは、第1レバー部材7の他端側に設けられており、第2レバー部材8の突起部8aと係合するように構成されている。第2レバー部材8は、例えば、前述した第1ローラー対21の駆動側のローラー軸上に設けられており、所謂、トルクリミッターを介して動力を受けて揺動することができるように構成されている。
尚、第2レバー部材8は、図示しない度当て部によって図4(A)の姿勢と、図4(B)の姿勢との間において揺動可能に設けられているものとする。つまり、前記ローラー軸が正転方向または逆転方向で回転し続けた場合であっても、第2レバー部材8は、突出した状態または退避した状態のままである。
【0036】
例えば、第1ローラー対21を逆転駆動させると、第2レバー部材8は図4(A)における反時計方向へ揺動する。
ここで、逆転駆動とは、用紙Pを送り方向上流側へ送ることが可能な回転方向をいう。
すると、第1レバー部材7は、時計方向へ揺動する。従って、当接部7aは、カム部材6の突部6aの移動軌跡に対して突出した状態となる。
【0037】
一方、第1ローラー対21を正転駆動させると、第2レバー部材8は図4(B)における時計方向へ揺動する。
ここで、正転駆動とは、用紙Pを送り方向下流側へ送るときの回転方向をいう。
すると、第1レバー部材7は、反時計方向へ揺動する。従って、当接部7aは、カム部材6の突部6aの移動軌跡に対して退避した状態となる。
【0038】
図5(A)(B)に示すのは、記録ヘッド27と用紙Pとの間の距離PGを大きくする際の動作を説明する図である。このうち、図5(A)は距離PGを大きくする前である。一方、図5(B)は距離PGを大きくしたときである。
図5(A)に示す如く、用紙Pを送っていない状態において、先ず、キャリッジ26を、幅方向Xにおける第1レバー部材7が設けられている一端側であるX軸の矢印方向へ移動させる。
【0039】
そして、カム部材6の突部6aが、第1レバー部材7より幅方向Xの外側となる位置まで、キャリッジ26を移動させて停止させる。その後、第1ローラー対21を逆転駆動させる。すると、前述したように、第1レバー部材7の当接部7aが、カム部材6の突部6aの移動軌跡に対して突出した状態となる。つまり、第1レバー部材7の当接部7aがカム部材6の突部6aと当接可能な状態となる。
【0040】
そして、図5(B)に示す如く、キャリッジ26をX軸の矢印と逆方向へ移動させる。この際、カム部材6は、キャリッジ26の移動によってX軸の矢印と逆方向へ移動しようとするが、第1レバー部材7の当接部7aがカム部材6の突部6aと当接することにより、移動が妨げられる。これにより、キャリッジ26に対してカム部材6が、相対的にX軸の矢印方向へ移動することとなる。そして、カム部材6における摺動部材5の第1接触部5a、5aとの接触箇所を、第1段部6cから第2段部6d〜第4段部6fのいずれかに変えることができる。尚、一例として、図5(B)には、第4段部6fに変えた様子を示す。
【0041】
そして、キャリッジ26を停止させてから、第1ローラー対21を正転駆動させる。すると、前述したように、第1レバー部材7の当接部7aが、カム部材6の突部6aの移動軌跡に対して退避した状態となる。つまり、第1レバー部材7の当接部7aがカム部材6の突部6aと当接しない状態となる。そして、第1ローラー対21を停止させる。
その結果、摺動部材5の第1接触部5a、5aと、カム部材6の第3接触箇所6b、6bとの間の箇所の長さを長くすることができ、記録ヘッド27と用紙Pとの間の距離PGを大きくすることができる。
【0042】
尚、第1段部6cから第2段部6d〜第4段部6fのいずれに変えるかは、キャリッジ26の移動量を制御することにより行う。また、一例として、第1段部6cから第2段部6d〜第4段部6fのいずれかに変えることについて説明したが、第2段部6dから第3段部6eまたは第4段部6fに変えてもよいし、第3段部6eから第4段部6fに変えてもよい。係る場合も動作は同様であるので、その説明は省略する。
【0043】
図6(A)(B)に示すのは、記録ヘッド27と用紙Pとの間の距離PGを小さくする際の動作を説明する図である。このうち、図6(A)は距離PGを小さくする前である。一方、図6(B)は距離PGを小さくしたときである。
図6(A)に示す如く、用紙Pを送っていない状態において、先ず、第1ローラー対21を逆転正転させる。
【0044】
すると、前述したように、第1レバー部材7の当接部7aが、カム部材6の突部6aの移動軌跡に対して突出した状態となる。つまり、第1レバー部材7の当接部7aがカム部材6の突部6aと当接可能な状態となる。
次に、キャリッジ26を、幅方向Xにおける第1レバー部材7が設けられている一端側であるX軸の矢印方向へ移動させる。そして、カム部材6の突部6aを、第1レバー部材7の当接部7aに当接させる。
【0045】
そして、図6(B)に示す如く、キャリッジ26をX軸の矢印方向へ移動させる。この際、カム部材6は、キャリッジ26の移動によってX軸の矢印方向へ移動しようとするが、第1レバー部材7の当接部7aがカム部材6の突部6aと当接していることにより、移動が妨げられる。これにより、キャリッジ26に対してカム部材6が、相対的にX軸の矢印と逆方向へ移動することとなる。そして、カム部材6における摺動部材5の第1接触部5a、5aとの接触箇所を、第4段部6fから第1段部6c〜第3段部6eのいずれかに変えることができる。尚、一例として、図6(B)には、第1段部6cに変えた様子を示す。
【0046】
そして、キャリッジ26を停止させてから、第1ローラー対21を正転駆動させる。すると、前述したように、第1レバー部材7の当接部7aが、カム部材6の突部6aの移動軌跡に対して退避した状態となる。つまり、第1レバー部材7の当接部7aがカム部材6の突部6aと当接しない状態となる。そして、第1ローラー対21を停止させる。
その結果、摺動部材5の第1接触部5a、5aと、カム部材6の第3接触箇所6b、6bとの間の箇所の長さを短くすることができ、記録ヘッド27と用紙Pとの間の距離PGを小さくすることができる。
【0047】
尚、第4段部6fから第1段部6c〜第3段部6eのいずれに変えるかは、キャリッジ26の移動量を制御することにより行う。また、一例として、第4段部6fから第1段部6c〜第3段部6eのいずれかに変えることについて説明したが、第3段部6eから第1段部6cまたは第2段部6dに変えてもよいし、第2段部6dから第1段部6cに変えてもよい。係る場合も動作は同様であるので、その説明は省略する。
【0048】
また、本実施例では、カム部材6の第1段部6c〜第4段部6fが摺動部材5の第1接触部5a、5aと接触する構成としたが、第1段部6c〜第4段部6fがキャリッジ26と接触する構成でもよい。係る場合も同様の作用効果を得ることができるからである。
またさらに、本実施例では、第1段部6c〜第4段部6fの四段階としたが、四段階に限らない。段数を増減してもよいのは勿論である。
【0049】
また、本実施例では、鉛直方向Zから見て、第1接触部5a、5aの接触領域と第2接触部5b、5bの接触領域との重なる範囲Aと、第3接触箇所6b、6bの接触領域とが少なくとも一部において重なる構成としたが、鉛直方向Zに限らない。技術的思想としては、キャリッジ26の自重が摺動部材5に対して作用する構成であればよい。従って、鉛直方向Zの成分を有する方向であればよい。
【0050】
本実施例の記録装置としてのプリンター本体2は、被記録媒体の一例である用紙Pに対して記録する記録ヘッド27を有し、所定の方向である幅方向Xへ移動可能なキャリッジ26と、キャリッジ26を幅方向Xへ案内するガイド部材としてのガイドレール4と、キャリッジ26と共に移動し、ガイドレール4と接触して摺動する摺動部材5と、摺動部材5と、キャリッジ26の一部とによって挟まれ、キャリッジ26に対して相対的に移動することにより前記挟まれた方向である鉛直方向Zにおける前記挟まれた箇所の長さが変わることによって、記録ヘッド27と用紙Pとの間の間隔PGを変えるカム部材6と、を備え、摺動部材5は、カム部材6およびカム部材6を介してキャリッジ26を支持する構成であり、摺動部材5におけるカム部材6と接触しカム部材6を支持する第1接触部5a、5aの接触領域は、鉛直方向Zから見て、摺動部材5におけるガイドレール4と接触する第2接触部5b、5bの接触領域と、重なる構成であることを特徴とする。
【0051】
また、本実施例において、摺動部材5における第2接触部5b、5bは、複数設けられており、キャリッジ26の移動方向において、摺動部材5における複数の第2接触部5b、5bより外側に、回転規制部5c、5cが設けられており、ガイドレール4に対してキャリッジ26が傾いた際に、回転規制部5c、5cがガイドレール4と接触するように、第2接触部5b以外の箇所と比較して回転規制部5c、5cとガイドレール4との間隔が狭く設けられている構成であることを特徴とする。
【0052】
またさらに、本実施例において、カム部材6におけるキャリッジ26の前記一部と接触している箇所である第3接触箇所6b、6bの接触領域は、鉛直方向Zから見て、第1接触部5a、5aの接触領域および第2接触部5b、5bの接触領域が重なる範囲Aと、重なる構成であることを特徴とする。
【0053】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0054】
1 プリンター複合機、2 プリンター本体、3 ケース、
4 ガイドレール(ガイド部材)、5 摺動部材、5a 第1接触部(第1接触箇所)、
5b 第2接触部(第2接触箇所)、5c 回転規制部、6 カム部材、6a 突部、
6b 第3接触箇所、6c 第1段部、6d 第2段部、6e 第3段部、
6f 第4段部、7 第1レバー部材、7a 当接部、7b 揺動軸、7c 二股部、
8 第2レバー部材、8a 突起部、12 スキャナー部、13 載置部、
14 第1載置部、14a ペーパーサポート、14b ホッパー、15 第2載置部、
15a カセット部、16 送り手段、17 第1ローラー、18 第2ローラー、
19 第3ローラー、20 アーム部、21 第1ローラー対、22 第2ローラー対、
23 送り経路、24 表裏反転用経路、25 記録部、26 キャリッジ、
27 記録ヘッド、28 媒体支持部、29 インクチューブ、
31 第1排出スタッカー、33 媒体搬送装置、40 (従来技術の)キャリッジ、
41 記録ヘッド、42 ガイド部、43 摺動部、43a 摺動面、43b 支持面、
44 間隔制御部材、A 第1接触部と第2接触部とが重なる範囲、
P プリンター本体で送られる用紙、PG 記録ヘッドと用紙との間の距離(間隔)、
X 幅方向、Y 記録時の送り方向、Z 鉛直方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体に対して記録する記録ヘッドを有し、所定の方向へ移動可能なキャリッジと、
前記キャリッジを前記所定の方向へ案内するガイド部材と、
前記キャリッジと共に移動し、前記ガイド部材と接触して摺動する摺動部材と、
該摺動部材と、前記キャリッジの一部とによって挟まれ、前記キャリッジに対して相対的に移動することにより前記挟まれた方向における前記挟まれた箇所の長さが変わることによって、前記記録ヘッドと被記録媒体との間の間隔を変えるカム部材と、を備え、
前記摺動部材は、前記カム部材および該カム部材を介して前記キャリッジを支持する構成であり、
前記摺動部材における前記カム部材と接触し該カム部材を支持する第1接触部の接触領域は、前記挟まれた方向から見て、前記摺動部材における前記ガイド部材と接触する第2接触部の接触領域と、重なる構成である記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、前記摺動部材における前記第2接触部は、複数設けられており、前記キャリッジの移動方向において、前記摺動部材における前記複数の第2接触部より外側に、回転規制部が設けられており、
前記ガイド部材に対して前記キャリッジが傾いた際に、前記回転規制部が前記ガイド部材と接触するように、前記第2接触部以外の箇所と比較して前記回転規制部と前記ガイド部材との間隔が狭く設けられている構成である記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の記録装置において、前記カム部材における前記キャリッジの前記一部と接触している箇所の接触領域は、前記挟まれた方向から見て、前記第1接触部の接触領域および前記第2接触部の接触領域が重なる範囲と、重なる構成である記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−213986(P2012−213986A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82023(P2011−82023)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】