説明

記録装置

【課題】人がいる時間帯と人がいない時間帯とを記録装置に把握させて該記録装置の稼働率を向上させること。
【解決手段】本発明の記録装置1は、被記録材Pの被記録面に記録を実行する記録実行部25と、留守になる時間帯51を指定できる時間指定部53と、前記記録実行部25の動作を制御する制御部43とを備え、前記制御部43では、前記時間指定部53からの時間指定情報55に基づいて実行される記録優先モード57と、指定された時間帯51以外及び時間帯51が指定されなかった場合に実行される通常記録モード49とを切り換えて記録を実行するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録材の被記録面に記録を実行する記録実行部と、該記録実行部の動作を制御する制御部と、を備えた記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の記録装置は、パーソナルコンピューター等のクライアントマシンから送信された記録ジョブデータをデータ容量の大小や緊急性の大小に関係なく、受信した順番で処理して記録を実行していた。
しかし、大型のインクジェットプリンターのようにインク消費量が多く、高い稼働率が求められる記録装置の場合には、一律に受信した順番で処理するのではなく前記記録ジョブデータのデータ容量の大小や緊急性の大小をも勘案して記録ジョブデータを処理する順番を決めることが望しい場合がある。
【0003】
そして、下記の特許文献1では、ドットカウント等によって、印刷する時間とインク消費量とを算出し、インク切れが起きると判断された文書の印刷開始時刻を変更したり、印刷を中止するようにしたプリンターシステムが開示されている。
また、下記の特許文献2では、クライアントマシンから送信される記録ジョブデータに予約印刷時刻を含め、当該予約印刷時刻に応じて記録実行タイミングを設定するようにしたプリンターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−201708号公報
【特許文献2】特開2007−48303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、人がいる時間帯であればインク切れや被記録材(以下、「用紙」ともいう)の補充に対応できるので、記録ジョブデータを受信した順番で処理した方が分かり易い。
一方、人がいない時間帯であれば、前記インク切れや用紙の補充に直ちに対応することはできない。そのため、前記インク切れや用紙切れの虞れの少ない記録ジョブデータを優先して処理した方が無駄が少ない。
【0006】
ところが、前記特許文献1、2においては、人がいる時間帯と人がいない時間帯とを分けて、各々の時間帯で記録ジョブデータの処理の順番を切り換えるようにする構成については何ら記載されていない。
また、ユーザーが外出前に記録ジョブデータを送信し、外出先から戻って来た時に、前記インク切れや用紙切れが原因で印刷途中になっている用紙が記録装置本体(以下、「プリンター本体」ともいう)中に残留している場合には、次の記録ジョブデータの記録を直ちに実行したくても、仕掛かっている記録ジョブデータの記録を終了させるか中止させた後でなければ、次の記録ジョブデータの記録を実行することはできない問題がある。
【0007】
本発明の目的は、人がいる時間帯と人がいない時間帯とを記録装置に把握させて該記録装置の稼働率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る記録装置の第1の態様は、被記録材に記録を実行する記録実行部と、留守になる時間帯を指定できる時間指定部と、前記記録実行部の動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記時間指定部からの時間指定情報に基づいて指定された時間帯において実行される記録優先モードと、指定された時間帯以外及び時間帯が指定されなかった場合に実行される通常記録モードとを切り換えて記録を実行可能に構成されていることを特徴とするものである。
ここで、「記録優先モード」とは、ユーザーが帰宅や外出などによって記録装置の在る場所に不在状態の時間帯にはインク切れや被記録材の補充に直ちに対応できないので、そのような人が不在状態において各記録ジョブデータの受信順、すなわち受付順に囚われずに記録を実行できることを優先し、その時点における装置状態で記録完了品を多く得ることができるように記録装置が動作することを意図して予め設定されている記録モードである。
一方、「通常記録モード」とは、記録ジョブデータの受付順に記録を実行する通常行われている記録モードである。
【0009】
本態様によれば、人がいる時間帯では、通常行われている通常記録モードが選択されるので、ユーザーは、通常実施している操作を行い、設定情報を入力するだけで記録ジョブデータを送信して記録を実行することができる。
一方、留守になる時間帯では、外出ないし帰宅前にユーザーは、時間指定部から留守になる時間帯を指定して前記通常の操作と設定情報の入力を行えば、制御部は前記通常記録モードに代えて前記記録優先モードに従って当該記録ジョブデータに対する記録を実行する。
【0010】
従って、本態様によれば、人がいる時間帯と人がいない時間帯とを明確に区分けし、それぞれの時間帯で最適な記録ジョブデータの処理が行われるようになり、記録装置の稼働率を向上させることができる。また、前記ユーザーの意に即した記録実行制御によって記録装置の稼働率を向上させることができる。
【0011】
本発明に係る記録装置の第2の態様は、前記第1の態様において、前記記録優先モードは、受信した記録ジョブデータのデータ容量とユーザーの設定情報とに基づいて前記留守になる時間帯で処理できる記録ジョブデータを選定し、選定した記録ジョブデータの記録を実行するように構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
本態様によれば、受信した各記録ジョブデータのデータ容量とユーザーの設定情報とによって、制御部において、受信された各記録ジョブデータの記録の実行に必要な処理時間が算出される。そして、当該算出した処理時間から留守になる時間帯内で処理できる記録ジョブデータが選定される。
これに伴い、データ容量の大きな記録ジョブデータを先に処理することによって、留守中に処理される記録ジョブデータの数が少なくなるのを防止することができる。
【0013】
本発明に係る記録装置の第3の態様は、前記第1の態様または第2の態様において、前記記録優先モードは、消耗品の残量情報に基づいて前記留守になる時間帯で処理できる記録ジョブデータを選定し、選定した記録ジョブデータの記録を実行するように構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
本態様によれば、制御部は、消耗品の残量情報に基づいて消耗品の残量との関係で留守になる時間帯内で処理できる記録ジョブデータが選定できるようになる。
これに伴い、消耗品の消費量の多い記録ジョブデータを先に処理することによって、留守中に消耗品が切れて記録ジョブデータの処理が途中で中断されて停止しているという事態が防止される。
【0015】
本発明に係る記録装置の第4の態様は、前記第3の態様において、前記消耗品はインクと被記録材のいずれか一方または双方であることを特徴とするものである。
【0016】
本態様によれば、留守中にインク切れや被記録材が足りなくなる虞れがある場合に、インク切れや被記録材が足りなくなることによって生じる留守中にインクや被記録材が切れて記録ジョブデータの処理が途中で中断されて完了できないという事態が防止される。
【0017】
本発明に係る記録装置の第5の態様は、前記第1の態様から第4の態様のいずれか一つの態様において、前記記録優先モードが選択されたことを知らせる表示部が設けられており、前記記録優先モード実行時には、記録を実行する記録ジョブデータに関する情報を前記表示部に表示するように構成されていることを特徴とするものである。
ここで、記録を実行する記録ジョブデータに関する情報としては、記録を実行する記録ジョブデータと記録を実行しない記録ジョブデータの別や記録ジョブデータの記録実行順序等が挙げられる。
【0018】
本態様によれば、指定した留守になる時間帯内にユーザーが戻って来たときには、現在、記録を実行している記録ジョブデータが何であるのか、記録を中止した記録ジョブデータが何であるのか、或いは次に記録を実行する記録ジョブデータが何であるのか等を表示部の表示によって知ることを可能になる。
また、これらの表示が留守になる時間帯を過ぎた後も表示されているようにすれば、ユーザーが留守になる時間帯を過ぎて戻って来たときに、当該記録装置の留守中の記録経過を確認することが可能になる。
【0019】
本発明に係る記録装置の第6の態様は、前記第1の態様から第5の態様のいずれか一つの態様において、前記記録優先モードは、記録の実行を完了させることができる記録ジョブデータのみの記録が実行されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0020】
本態様によれば、ユーザーが留守になる時間帯を過ぎて戻って来たときに記録途中の被記録材が記録装置本体内に残留している状態で記録装置が停止している事態を防止することができる。
従って、ユーザーは仕掛かっている残りの記録ジョブデータの記録を実行したり、新たな記録ジョブデータの記録の実行に向けての作業を速やかに開始できるようになる。
【0021】
本発明に係る記録装置の第7の態様は、前記第1の態様から第6の態様のいずれか一つの態様において、前記記録優先モードは、前記留守になる時間帯で処理できる記録ジョブデータのうち受信した順番で記録を実行する受信優先モードと、前記留守になる時間帯で処理できる記録ジョブデータのうち処理時間の速いものから順番に記録を実行する処理優先モードと、を選択可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0022】
本態様によれば、記録優先モード実行中に処理する記録ジョブデータの優先順序を選択する自由度が増加する。従って、ユーザーの意に即した順序で記録ジョブデータの記録を実行することが可能になる。
そして、受信優先モードが選択された場合には、一般に先に記録を実行したい場合に採用される受信順で記録が実行され、処理優先モードが選択された場合には、できるだけ多くの記録ジョブデータの記録を実行し完了したい場合に採用されるデータ容量の小さな順で記録が実行されるようになる。
【0023】
本発明に係る記録装置の第8の態様は、前記第1の態様から第7の態様のいずれか一つの態様において、前記通常記録モードは、記録ジョブデータの受信の順番に記録を実行するように構成されていることを特徴とするものである。
【0024】
本態様によれば、通常記録モードでは、受信した順番で当該記録ジョブデータ毎の設定情報に基づいて記録ジョブデータの処理が実行されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例1に係る記録装置の概略構成を示す側断面図。
【図2】本発明の実施例1に係る記録装置の制御部の構成と、該制御部での制御内容を示すブロック図。
【図3】本発明の実施例1に係る記録装置を使用して記録優先モードを選択して記録を実行する場合に対応するタイムチャート。
【図4】本発明の実施例1に係る記録装置を使用して記録を実行する場合の制御の流れを示すフローチャート。
【図5】本発明の実施例2に係る記録装置の制御部の構成と、該制御部での制御内容を示すブロック図。
【図6】本発明の実施例3に係る記録装置の制御部の構成と、該制御部での制御内容を示すブロック図。
【図7】本発明の実施例3に係る記録装置を使用して記録を実行する場合の制御の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図1から図4に示す実施例1と、図5に示す実施例2と、図6から図7に示す実施例3に基づいて、本発明の記録装置1の構成と作動態様について具体的に説明する。最初に、図1に基づいて本発明の記録装置1の基本的な構成について説明し、その後、前記実施例1から実施例3に基づいて本発明の記録装置1の特徴的構成について説明する。
【0027】
図1に本発明の記録装置1の概略構成が、大型のインクジェットプリンター1(「記録装置」と同じ符号を使用する)を例にとって図示されている。このインクジェットプリンター1は、下端部に移動用のキャスター15を一例として有する側面視逆T字形の支持フレーム17を対向するように左右両端部に備えている。
前記支持フレーム17の上部には、プリンター本体19が設けられている。該プリンター本体19の内部には、被記録材(以下、一般的に使用する場合には用紙P、後述するロール紙ホルダー3にセットされるロール状に巻かれた状態のものをロール紙Rともいう)の被記録面に記録を実行する記録実行部の一例である記録ヘッド25と、該記録ヘッド25による印刷開始時刻T1と印刷終了時刻T2とを管理できる計時部41と、留守になる時間帯51を指定できる時間指定部53と、前記記録ヘッド25の動作を制御する制御部43と、が設けられている。
【0028】
尚、前記計時部41は、計時部41自体に時計としての機能を備えているものであってもよいし、クライアントマシンとなるパーソナルコンピューターや電話線その他のネットワーク経由で時間を取得するものであってもよい。該計時部41は現在時刻又は経過時間を管理し、制御部43での制御実行に際して時間データを必要とする場合に、その時間データを提供する役割を成すものである。
更に、前記プリンター本体19の内部には、前記記録ヘッド25を一例として下面に搭載してキャリッジガイド軸21に沿って用紙Pの搬送方向Aと交差する幅方向に往復移動可能なキャリッジ23が配設されている。
また、前記キャリッジ23の下方には、前記記録ヘッド25の下面から所定のギャップPGを隔てて用紙Pを支持する支持部材27が設けられている。
【0029】
また、前記記録ヘッド25と支持部材27が設けられている記録実行領域の搬送方向Aの上流位置には、一対のニップローラーによって構成されている搬送用ローラー29が設けられている。
また、前記搬送用ローラー29の搬送方向Aの上流位置には、ロール紙Rを繰り出し可能に保持する軸部13とフランジ部9とを備えたロール紙ホルダー3が前記支持フレーム17から延びるサブフレーム35によって支持されて設けられている。
この他、前記記録実行領域の搬送方向Aの下流位置には、記録が実行された用紙Pを巻き取る巻取り装置37が前記支持フレーム17から前記サブフレーム35と逆方向に延びるサブフレーム36によって支持されて設けられている。
【0030】
[実施例1](図1〜図4参照)
実施例1に係るインクジェットプリンター1Aは、前記制御部43は、前記時間指定部53からの時間指定情報55に基づいて指定された時間帯51において実行される記録優先モード(「印刷優先モード」ともいう)57と、指定された時間帯51以外及び当該時間帯51が指定されなかった場合に実行される通常記録モード(「通常印刷モード」ともいう)49とを切り換えて記録を実行するように構成されている。
【0031】
尚、前記時間指定部53に対する留守になる時間帯51の指定は、パーソナルコンピュ−ター等の設定画面からの入力や、インクジェットプリンター1Aの図示しない操作パネルからの入力によって行い、「何時何分〜何時何分」というように具体的な時刻で指定しても良いし、「何時何分から何時間」というように時間で指定することも可能である。
そして、前記時間指定部53から指定した留守になる時間帯51は、時間指定情報55として前記制御部43に向けて送信される。
【0032】
また、前記記録優先モード57では、受信した記録ジョブデータ(「印刷ジョブデータ」とも言う)45のデータ容量とユーザーの設定情報47とに基づいて、前記留守になる時間帯51で処理できる記録ジョブデータ45を選定し、選定した記録ジョブデータ45を優先して記録を実行するように構成されている。
また、本実施例では前記記録優先モード57の実行時に消耗品59となるインクや用紙Pの残量情報61に基づいて前記留守になる時間帯51で処理できる記録ジョブデータ45を選定し、選定した記録ジョブデータ45を優先して記録を実行するように構成されている。
【0033】
尚、前記設定情報47には、記録の実行に際してユーザーが設定する用紙Pの紙種やサイズあるいは印刷枚数に関する情報、モノクロ2階調、グレートーン、CMYKフルカラー等の色や、色補正に関する情報及び、粗い、高精細、写真品質等画質に関する情報等が含まれる。
また、前記記録ジョブデータ45のデータ容量には、前記設定情報47とは別にデータ自体が持っているデータサイズ、解像度、色のかけ合わせ等に関する情報が含まれ、該情報に基づいて算出されるデータの大きさを「データ容量」と定義する。
【0034】
また、前記消耗品59の残量情報61は、インクと用紙Pの両方の残量情報61の他、インクと用紙Pのいずれか一方の残量情報61であってもよい。
具体的には、用紙Pの残量が十分にあって、留守中の印刷によって用紙Pがなくなる虞れがない場合には、インクの残量情報61のみに基づいて記録を実行する記録ジョブデータ45を選定することが可能である。
【0035】
また、前記消耗品59の残量情報61は、一例としてインクの場合にはインクカートリッジに付属している電子基板から前記制御部43に向けて送信され、用紙Pの場合には、セットされている用紙P全体の厚さを計測するエンコーダーや光センサ等の位置センサあるいはセットされている用紙Pの重量を計測するロードセル等の重量センサ等から前記制御部43に向けて送信される。
【0036】
また、本実施例では、前記記録優先モード57において、記録の実行を完了することができる記録ジョブデータ45のみの記録を実行するように構成されている。
従って、ユーザーが外出先や自宅から戻って来たときに印刷途中の用紙Pがプリンター本体19内に残留してインクジェットプリンター1Aが停止している事態が防止される。これに伴って、ユーザーは仕掛かっている残りの記録ジョブデータ45の記録を実行したり、新たな記録ジョブデータ45の記録の実行に向けての作業を速やかに開始することができるようになっている。
【0037】
一方、前記通常記録モード49では、記録ジョブデータ45が受信された順番によりユーザーの設定情報47に基づいて記録が実行されるように構成されている。
従って、ユーザーが一般に先に記録を実行したい受信の順番が優先され、記録ジョブデータ45ごとに設定されているユーザーの設定情報47を忠実に実行して記録が実行されることになる。
尚、当該通常記録モード49の実行時には、印刷トラブルや消耗品59の補充に対応できる人がいるので、前記印刷トラブルや消耗品59の欠如等が生じて印刷が中断された場合には、当該中断事由をユーザーの措置によって解消させることになる。
【0038】
次に、図3に示すタイムチャートと図4に示すフローチャートに従って、記録優先モード57を選択して記録を実行する場合の流れについて具体的に説明する。
最初に、図3に示すタイムチャートについて説明する。図3(A)では、12月17日の21時〜12月18日の21時までの24時間の留守になる時間帯51を示している。
尚、図3中の(1)で示す時間帯51は、12月17日の21:00に退社し、12月18日の9:00に出勤するまでの帰宅に伴って生じる留守になる時間帯51を示しており、(2)で示す時間帯51は、12月18日の13:00に外出し、12月18日の15:00に戻って来るまでの外出に伴って生じる留守になる時間帯51を示している。
【0039】
また、図3(B)では、図3(A)の(2)で示す時間帯51に入る12月18日13:00時点で受信しているデータ(1)〜データ(4)の4つの記録ジョブデータ45のデータ容量と設定情報47とから算出される各々の処理時間tと、消耗品59の残量から導かれる消耗品59の使用が可能な残量時間Uを示している。該残量時間は図3(B)中の(1)、(2)で示す2種類用意されている。
因みに、データ(1)の処理時間tが90分、データ(2)の処理時間tが60分、データ(3)の処理時間tが40分、データ(4)の処理時間tが20分に一例として設定されておいる。また、(1)で示す消耗品59の残量時間Uが120分、(2)で示す消耗品59の残量時間Uが一例として80分になっている。
【0040】
そして、このような図3に示すタイムチャートに基づいて記録の実行が指令されると、図4に示すフローチャートに従って、以下詳述するような流れで記録が実行される。
先ず、図4中のステップS1で時間指定部53から留守になる時間帯51が指定されたか否かの判断が行われる。尚、留守になる時間帯51が指定されていない場合には、ステップS9に移行して通常記録モード49が選択されて記録が実行される。一方、留守になる時間帯51が指定されている場合には、ステップS2に移行して印刷優先モード57が選択される。本実施例の場合には、留守になる時間帯51を指定する場合には、例えば図3(A)に示すタイムチャートに従って、12月18日の13:00〜15:00の(2)で示す時間帯51を指定することになる。
【0041】
次に、ステップS3に移行して図3(B)に示すデータ(1)〜(4)の4つの記録ジョブデータ45のそれぞれの処理時間tを各記録ジョブデータ45のデータ容量とユーザーの設定情報47とから算出する。
次に、ステップS4に移行して前記ステップS1で指定した時間帯51で処理できる印刷ジョブデータ45を、前記ステップS3で算出した個別の処理時間tに基づいて選定する。
【0042】
具体的には、記録ジョブデータ45の処理時間tの和が前記(2)で示す時間帯51の120分以内に収まるデータ(1)と(4)の組み合わせと、データ(2)と(3)と(4)の組み合わせの2組の組み合わせが選定される。
次に、ステップS5に移行して例えばインクカートリッジに付属の電子基板から送信される残量情報61に基づいて消耗品59の残量時間Uを算出する。尚、図3に示すタイムチャートでは、前述したように(1)の残量時間Uが80分、(2)の残量時間Uが120分と算出された場合が図示されている。
【0043】
次に、ステップS6に移行し、前記ステップS5で算出した各消耗品59の残量時間Uが前記ステップS1で指定した留守になる時間帯51より少ないか否かの判断が行われる。
例えば、消耗品59の残量時間Uとして、図3(B)中の(1)で示す80分の残量時間Uが算出された場合には、図3(A)中の(2)で示す120分の時間帯51より少ないから、ステップS7に移行して、図3(B)中の(1)で示す80分の残量時間Uで処理できる記録ジョブデータ45を選定して記録を実行する。
【0044】
具体的には、当該80分の残量時間U内に収まるデータ(2)と(4)の組み合わせと、
データ(3)と(4)組み合わせが選定され、このうち先に受信したデータ(2)を含むデータ(2)と(4)の組み合わせを一例として採択して、これらの記録ジョブデータ45をデータ(2)、データ(4)の順番で記録の実行をする。
一方、消耗品59の残量時間Uが図3(B)中の(2)で示すように120分あると算出された場合には、図3(A)中の(2)で示す120分の時間帯51と同じであり、該時間帯51よりも少なくないから、ステップS8に移行して、前記ステップS1で指定した図3(A)中の(2)で示す120分の時間帯51で処理できる記録ジョブデータ45を選定して記録を実行する。
【0045】
具体的には、前記ステップS4で選定した記録ジョブデータ45の処理時間tの和が前記120分の時間帯51に収まるデータ(1)と(4)の組み合わせと、データ(2)と(3)と(4)の組み合わせの2組の組み合わせが選定され、このうち先に受信したデータ(1)を含むデータ(1)と(4)の組み合わせを一例として採択して、これらの記録ジョブデータ45をデータ(1)、データ(4)の順番で記録の実行をする。
【0046】
そして、このようにして構成される実施例1に係るインクジェットプリンター1Aによれば、人がいる時間帯と人がいない留守になる時間帯51とが明確に区分けされて、それぞれの時間帯で最適な記録ジョブデータ45の処理を行うことが可能になる。
また、前記記録優先モード57が選択された場合には、インク切れ等が原因で印刷途中の用紙Pがプリンター本体19内に残留する状態を防止することができ、ユーザーの意に即した記録実行制御によりインクジェットプリンター1Aの記録の稼働率を向上させることができる。
【0047】
[実施例2](図5参照)
実施例2に係るインクジェットプリンター1Bは、前記実施例1に係るインクジェットプリンター1Aの構成に加えて、前記記録優先モード57の実行時に該記録優先モード57が選択されたことを知らせる表示部67が追加された構成になっている。
従って、ここでは本実施例で追加された表示部67の構成と、該表示部67を備えることによって発揮される作用、効果を中心にして説明する。
【0048】
前記表示部67としては、インクジェットプリンター1Bの操作パネルに設けられているモニターやランプ類が一例として使用でき、モニターの場合には記録優先モード57の実行時に記録を実行する記録ジョブデータ45と記録を実行しない記録ジョブデータ45の別や記録ジョブデータ45の記録実行順序等を文字によって表示し、ランプ類を使用する場合には、当該ランプ類の点灯や点滅によって表示する。
【0049】
そして、このようにして構成される実施例2に係るインクジェットプリンター1Bによっても、前記実施例1と同様の作用、効果が発揮される。また、本実施例では、ユーザーが外出先等から戻って来た時に記録を中止した記録ジョブデータ45が何であるのか、また記録を実行した記録ジョブデータ45が何であるのか等をその表示によって知ることができ、留守中の記録経過を確認することが可能になる。
【0050】
[実施例3](図6、図7参照)
実施例3に係るインクジェットプリンター1Cは、前記実施例1に係るインクジェットプリンター1Aの構成に加えて、前記記録優先モード57を実行するに当たって、更に受信優先モード63と処理優先モード65とを選択できるように構成されている。
従って、ここでは本実施例において新たに採用した受信優先モード63と処理優先モード65の構成と、これらの受信優先モード63と処理優先モード65を選択して使用できるようにした制御部43の制御の流れを中心にして説明する。
【0051】
即ち、本実施例では、前記記録優先モード57において、前記留守になる時間帯51で処理できる記録ジョブデータ45のうち受信した順番で記録を実行する受信優先モード63と、前記留守になる時間帯51で処理できる記録ジョブデータ45のうち、処理時間tの速いものから順番に記録を実行する処理優先モード65と、を選択できるように構成されている。
これに伴い、受信優先モードが選択された場合には、一般に先に記録を実行したい場合の順番となる受信順で記録ジョブデータ45の記録が実行される。一方、処理優先モード65が選択された場合には、できるだけ多くの記録ジョブデータ65の記録を実行したい場合の順番となる記録ジョブデータ65のデータ容量が小さく、インク消費量が少なくなる順番で処理されるようになる。
【0052】
そして、このようにして構成される受信優先モード63と処理優先モード65とを使用して記録を実行する場合には、図7に示すような制御部43での制御の流れとなる。
尚、図7において、ステップS10〜S18までの制御の流れは、前記実施例1の図4に示したステップS1〜S9までの制御の流れと同様であるので、その説明は省略し、ここではステップS19〜S21の構成を中心にして説明する。
【0053】
ステップS16により消耗品59の残量時間Uで処理できる記録ジョブデータ45が選択された場合と、ステップS17により留守になる時間帯51で処理できる記録ジョブデータ45が選択された場合には、ステップS19に移行して処理優先モード65が選択されたか否かの判断が行われる。
ステップS19で処理優先モード65が選択されたと判断された場合には、ステップS20に移行して前記処理優先モード65に従って記録を実行する。
【0054】
具体的には、ステップS16経由でステップS19に移行し、図3(B)中、(1)で示す80分の残量時間Uが算出された場合には、処理優先モード65では当該残量時間Uの80分以内に収まるデータ(3)と(4)の組み合わせが採用され、データ(4)、(3)の順で記録ジョブデータ45の記録が実行される。
一方、ステップS16経由でステップS19に移行し、図3中、(2)で示す120分の残量時間Uが算出された場合と、ステップS17経由でステップS19に移行した場合には、処理優先モード65では当該残量時間Uないし留守になる時間帯51の120分以内に収まるデータ(2)と(3)と(4)の組み合わせが採用され、データ(4)、(3)、(2)の順で記録ジョブデータ45の記録が実行される。
【0055】
また、ステップS19で処理優先モード65が選択されていないと判断された場合には、ステップS20に移行して前記受信優先モード63に従って記録を実行する。
具体的には、ステップS16経由でステップS19に移行し、図3(B)中、(1)で示す80分の残量時間Uが算出された場合には、受信優先モード63では当該残量時間Uの80分以内に収まるデータ(2)と(4)組み合わせが採用され、(2)、(4)の順で記録ジョブデータ45の記録が実行される。
【0056】
一方、ステップS16経由でステップS19に移行し、図3(B)中、(2)で示す120分の残量時間Uが算出された場合と、ステップS17経由でステップS19に移行した場合には、受信優先モード63では当該残量時間Uないし留守になる時間帯51の120分内に収まるデータ(1)と(4)の組み合わせが採用され、データ(1)、(4)の順で記録ジョブデータ45の記録が実行される。
【0057】
そして、このようにして構成される実施例3に係るインクジェットプリンター1Cによっても前記実施例1と同様の作用、効果が発揮される。また、本実施例では、記録優先モード57実行中に処理する記録ジョブデータ45の優先順序を選択する自由度が増加するから、ユーザーの意に即した順序で記録ジョブデータ45の記録を実行することが可能になる。
【0058】
[他の実施例]
本発明に係る記録装置1は、以上述べたような構成を基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
例えば、留守になる時間帯51が短くて、消耗品59の残量を心配する必要がない場合には、前記残量情報61を省略し、実施例1においては、図4中のステップS5〜S8を省略し、実施例3においては、図7中のステップS14〜S17を省略することが可能である。
【0059】
また、消耗品59は、インクと用紙Pに限らず、レーザープリンターや複写機等であればトナーであっても良いし、紫外線(UV)硬化インクを使用している場合には、当該(UV)硬化インクに光を照射して硬化させる発光ダイオード(LED)やメタルハライドランプ等であっても良い。また、多段の給紙フィーダーを備える記録装置1であれば、サイズ、紙種の異なる複数の被記録材Pを異なる消耗品59として個別に残量の管理を行うようにすることも可能である。
【0060】
この他、本発明の記録装置1は、大型のインクジェットプリンターに限らず、小型、中型のインクジェットプリンターに適用することが可能であり、更にはインクジェットプリンター以外のレーザープリンターや複写機、あるいはファクシミリ等の他の記録装置に適用することが可能である。
従って、用紙Pもロール紙Rに限らず、単票紙でもよく、被記録材Pには、普通紙、専用紙、写真用の光沢紙の他、ポリエステルフィルム等の樹脂フィルム等が含まれる。また、被記録材Pの厚さには、例えば0.3〜1.3mmというように種々の厚さが含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1 インクジェットプリンター(記録装置)、3 ロール紙ホルダー、
9 フランジ部、13 軸部、15 キャスター、17 支持フレーム、
19 プリンター本体(記録装置本体)、 21 キャリッジガイド軸、
23 キャリッジ、25 記録ヘッド(記録実行部)、27 支持部材、
29 搬送用ローラー、35 サブフレーム、36 サブフレーム、
37 巻取り装置、41 計時部、43 制御部、45 記録ジョブデータ、
47 設定情報、49 通常記録モード、51 (留守になる)時間帯、
53 時間指定部、55 時間指定情報、 57 記録優先モード、59 消耗品、
61 残量情報、63 受信優先モード、 65 処理優先モード、67 表示部、
P 用紙(被記録材)、R ロール紙(被記録材)、A 搬送方向、
T1 印刷開始時刻、T2 印刷終了時刻、PG ギャップ、t 処理時間、
U 残量時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録材に記録を実行する記録実行部と、
留守になる時間帯を指定できる時間指定部と、
前記記録実行部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記時間指定部からの時間指定情報に基づいて指定された時間帯において実行される記録優先モードと、指定された時間帯以外及び時間帯が指定されなかった場合に実行される通常記録モードとを切り換えて記録を実行可能に構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載された記録装置において、
前記記録優先モードは、受信した記録ジョブデータのデータ容量とユーザーの設定情報とに基づいて前記留守になる時間帯で処理できる記録ジョブデータを選定し、選定した記録ジョブデータの記録を実行するように構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載された記録装置において、
前記記録優先モードは、消耗品の残量情報に基づいて前記留守になる時間帯で処理できる記録ジョブデータを選定し、選定した記録ジョブデータの記録を実行するように構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載された記録装置において、
前記消耗品はインクと被記録材のいずれか一方または双方であることを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載された記録装置において、
前記記録優先モードが選択されたことを知らせる表示部が設けられており、
前記記録優先モード実行時には、記録を実行する記録ジョブデータに関する情報を前記表示部に表示するように構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載された記録装置において、
前記記録優先モードは、記録の実行を完了させることができる記録ジョブデータのみの記録が実行されるように構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載された記録装置において、
前記記録優先モードは、
前記留守になる時間帯で処理できる記録ジョブデータのうち受信した順番で記録を実行する受信優先モードと、
前記留守になる時間帯で処理できる記録ジョブデータのうち処理時間の速いものから順番に記録を実行する処理優先モードと、を選択可能に構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載された記録装置において、
前記通常記録モードは、記録ジョブデータの受信の順番に記録を実行するように構成されていることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−213989(P2012−213989A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82042(P2011−82042)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】