説明

記録装置

【課題】記録実行動作の長時間停止に基づく問題或いは記録後に熟成時間を要する場合の問題を解決することにある。
【解決手段】被記録材Pに記録を実行する記録実行部25と、前記記録実行部の動作を制御する制御部43とを備え、前記制御部43は、ユーザーが各記録ジョブデータ47についての記録終了時刻T2を入力可能に構成されており、前記記録終了時刻T2が入力されたときは、該記録終了時刻T2に記録を終了することを優先する終了時刻優先モード50で記録が実行されるように構成されている。前記制御部43は、前記記録終了時刻T2が入力されない場合に実行される通常記録モード49を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録材の被記録面に記録を実行する記録実行部と、該記録実行部の動作を制御する制御部と、を備えた記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の記録装置は、パーソナルコンピューター等のクライアントマシンから送信された記録ジョブデータ(以下「印刷ジョブデータ」とも言う)を受信したら記録を実行し、「先の記録ジョブデータ」の記録実行中に「次の記録ジョブデータ」が送られたときは、それを蓄積し、「先の記録ジョブデータ」についての記録が終了した後に、「次の記録ジョブデータ」についての記録を開始するようになっている。
【0003】
しかし、「次の記録ジョブデータ」がしばらく送られない場合は、記録装置は記録実行動作が長時間停止した状態に置かれる。この場合、前記停止中に所定時間毎に、また次の記録ジョブデータが送られたときに記録実行に先立ってウォーミングアップ動作が実施され、インクを無駄に消費していた。
【0004】
また、夜間は停止して朝起動すると、その起動立ち上げ時のウォーミングアップ動作に長い時間を要し、その結果記録開始待ち時間が長くなり、またインクも無駄に消費することになっていた。
また、寒冷地で使用される場合は、停止時間が長いとインクを含めて記録装置全体が温暖地よりもかなり低温になり、その分、起動立ち上げ時のウォーミングアップ動作に一層長時間を要し、また一層インクの無駄を増やすことになっていた。
【0005】
また、用いるインクの種類と被記録材の種類の組合せによっては、記録終了後に記録物を対候性確保のために一定時間置いて熟成させる必要のあるものがある。この場合、その記録物を屋外に持ち出して使用する時刻が迫っている場合は、通常の記録動作では時間的に間に合わないことになる。
【0006】
上記問題は、用紙サイズがA判でA2(420mm×594mm)以上、B判でB3(364mm×515mm)以上の被記録材に記録を行える大型の記録装置において、特に顕著に現れる。
【0007】
この種記録装置の従来技術として下記の特許文献1と特許文献2が一例として挙げられる。特許文献1には、ドットカウント等によって、印刷する時間とインク消費量とを算出し、インク切れが起きると判断された文書の印刷開始時刻を変更したり、印刷を中止するようにしたプリンターシステムが開示されている。
また、特許文献2には、クライアントマシンから送信される印刷ジョブデータに予約印刷時刻を含め、当該予約印刷時刻に応じて記録実行タイミングを設定するようにしたプリンターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−201708号公報
【特許文献2】特開2007−48303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来の問題、すなわち長時間停止に基づく問題或いは記録後に熟成時間を要する場合の問題は、記録終了時刻をユーザーが設定できるようにすることで解決できることを本発明者が見出した。
前記特許文献1と特許文献2には、前記問題に対し、記録終了時刻の設定という視点からの対処については、全く記載されていないし、示唆もない。
【0010】
本発明の目的は、記録実行動作の長時間停止に基づく問題或いは記録後に熟成時間を要する場合の問題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る記録装置の第1の態様は、被記録材に記録を実行する記録実行部と、前記記録実行部の動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、ユーザーが各記録ジョブデータについての記録終了時刻を入力可能に構成されており、前記記録終了時刻が入力されたときは、該記録終了時刻に記録を終了することを優先する終了時刻優先モードで記録が実行されるように構成されていることを特徴とするものである。
ここで、「終了時刻優先モード」とは、記録装置がデフォルトで備えている記録品質での記録を実行するための通常記録モードに代えて、ユーザーが入力した記録終了時刻に記録を終了できるように記録速度を変えて記録完了に要する時間を長く又は短くして記録を実行する記録モードを意味する。
【0012】
本態様によれば、前記制御部は、ユーザーによって記録終了時刻が入力されたときは、該記録終了時刻に記録を終了することを優先する終了時刻優先モードで記録が実行されるように構成されている。従って、その記録終了時刻まで記録装置は稼動状態を継続することになり、記録実行動作の停止状態が長時間続く事態の発生を防止することが可能になる。
【0013】
これにより、記録実行動作の停止中に所定時間毎に、また次の記録ジョブデータが送られたときに記録実行に先立ってウォーミングアップ動作が実施され、インクを無駄に消費する問題を軽減することができる。また、夜間は停止して朝起動する場合の起動立ち上げ時のウォーミングアップ動作に長い時間を要していた問題、更に寒冷地においてはインクを含めて記録装置が低温化する問題を軽減することが可能になる。
また、記録後に熟成時間を要する場合にも対処することができる。
【0014】
本発明に係る記録装置の第2の態様は、前記第1の態様において、前記制御部は、前記記録終了時刻が入力されない場合に実行される通常記録モードの他に前記終了時刻優先モードを備えていることを特徴とするものである。
【0015】
本態様によれば、記録終了時刻を設定しない通常の記録と、記録終了時刻を設定した記録の終了時刻を優先した記録をユーザーが切り換えて使用できるので、使い勝手がよい。
【0016】
本発明に係る記録装置の第3の態様は、前記第2の態様において、前記終了時刻優先モードは、記録完了に要する時間が長い低速記録モードと、記録完了に要する時間が短い高速記録モードとを備え、前記制御部は、前記入力された記録終了時刻に基づいて前記高速記録モードと前記低速記録モードを切り換えて実行するように構成されていることを特徴とするものである。
【0017】
本態様によれば、前記終了時刻優先モードは低速記録モードと高速記録モードとを備えており、前記制御部は、前記入力された記録終了時刻に基づいて前記低速記録モードと前記高速記録モードを切り換えて実行するように構成されている。従って、ユーザーが記録終了時刻を入力したときにレスポンス良く効果的に対応することができる。
低速記録モードと高速記録モードのそれぞれについて、記録完了に要する時間を段階的に異ならせた複数のモードを有する構成とすれば、一層効果的に対応することができる。
【0018】
本発明に係る記録装置の第4の態様は、前記第2の態様又は第3の態様において、前記制御部は、記録ジョブデータのデータ容量とユーザーの設定情報とに基づいて前記通常記録モードで当該記録ジョブデータの記録を実行すると、ユーザーの入力した記録終了時刻よりも早く記録が終了する場合に、記録完了に要する時間を長くする終了時刻優先モードで記録を実行するように構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
本態様によれば、通常記録モードに従って記録を実行すると、ユーザーの希望する記録終了時刻よりも早く記録の実行が終了してしまって、前記記録終了時刻まで長時間に亘って記録実行部の動作を停止しなければならないという事態が防止される。
【0020】
本発明に係る記録装置の第5の態様は、前記第2の態様または第3の態様において、前記制御部は、記録ジョブデータのデータ容量とユーザーの設定情報とに基づいて前記通常記録モードで当該記録ジョブデータの記録を実行すると、ユーザーの入力した記録終了時刻よりも遅く記録が終了する場合に、記録完了に要する時間を短くする終了時刻優先モードで記録を実行するように構成されていることを特徴とするものである。
【0021】
上記したように、用いるインクの種類と被記録材の種類の組合せによっては、記録終了後に記録物を対候性確保のために一定時間置いて熟成させる必要のあるものがある。この場合、その記録物を屋外に持ち出して使用する時刻が迫っている場合は、通常の記録動作では時間的に間に合わないことになる。
本態様によれば、このような場合に対処することができる。
【0022】
本発明に係る記録装置の第6の態様は、前記第1の態様から第5の態様のいずれか一つの態様において、前記制御部は、記録完了に要する時間の長い記録モードと、記録完了に要する時間の短い記録モードと、前記両モードの間の処理速度で記録を実行する中間記録モードと、を備えていることを特徴とするものである。
【0023】
本態様によれば、個々の記録ジョブデータの記録の実行に要する処理時間をより細かく調整できるようになり、ユーザーの希望する記録終了時刻に合わせて最適な処理速度の記録モードを選択できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例1に係る記録装置の概略構成を示す側断面図。
【図2】本発明の実施例1に係る記録装置の制御部の構成と、該制御部での制御内容を示すブロック図。
【図3】本発明の実施例1に係る記録装置を使用して低速記録モードを選択して記録を実行する場合の流れを示すフローチャート。
【図4】本発明の実施例1に係る記録装置を使用して高速記録モードを選択して記録を実行する場合の流れを示すフローチャート。
【図5】本発明の実施例2に係る記録装置の制御部の構成と、該制御部での制御内容を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1から図4に示す実施例1と、図5に示す実施例2に基づいて、本発明の記録装置1の構成と作動態様について具体的に説明する。最初に、図1に基づいて本発明の記録装置1の基本的な構成について説明し、その後、前記実施例1と実施例2に基づいて本発明の記録装置1の特徴的構成について説明する。
【0026】
図1に本発明の記録装置1の概略構成が、大型のインクジェットプリンター1(記録装置と同じ符号を使用する)を例にとって図示されている。このインクジェットプリンター1は、下端部に移動用のキャスター15を一例として有する側面視逆T字形の支持フレーム17を対向するように左右両端部に備えている。
前記支持フレーム17の上部には、記録装置本体の一例であるプリンター本体19が設けられている。該プリンター本体19の内部には、被記録材(以下、一般的に使用する場合には用紙P、後述するロール紙ホルダー3にセットされるロール状に巻かれた状態のものをロール紙Rともいう)の被記録面に記録を実行する記録実行部の一例である記録ヘッド25と、該記録ヘッド25による記録開始時刻T1と記録終了時刻T2とを管理できる計時部41と、前記記録ヘッド25の動作を制御する制御部43と、が設けられている。
【0027】
尚、前記計時部41は、計時部41自体に時計としての機能を備えているものであってもよいし、クライアントマシンとなるパーソナルコンピューターや電話線その他のネットワーク経由で時間を取得するものであってもよい。該計時部41は現在時刻又は経過時間を管理し、制御部43での制御実行に際して時間データを必要とする場合に、その時間データを提供する役割を成すものである。
更に、前記プリンター本体19の内部には、前記記録ヘッド25を一例として下面に搭載してキャリッジガイド軸21に沿って用紙Pの搬送方向Aと交差する幅方向に往復移動可能なキャリッジ23が配設されている。
また、前記キャリッジ23の下方には、前記記録ヘッド25の下面から所定のギャップPGを隔てて用紙Pを支持する支持部材27が設けられている。
【0028】
また、前記記録ヘッド25と支持部材27が設けられている記録実行領域の搬送方向Aの上流位置には、一対のニップローラーによって構成されている搬送用ローラー29が設けられている。
また、前記搬送用ローラー29の搬送方向Aの上流位置には、ロール紙Rを繰り出し可能に保持する軸部13とフランジ部9とを備えたロール紙ホルダー3が前記支持フレーム17から延びるサブフレーム35によって支持されて設けられている。
この他、前記記録実行領域の搬送方向Aの下流位置には、記録が実行された用紙Pを巻き取る巻取り装置37が前記支持フレーム17から前記サブフレーム35と逆方向に延びるサブフレーム36によって支持されて設けられている。
【0029】
[実施例1](図1から図4参照)
また、実施例1に係るインクジェットプリンター1Aにあっては、被記録材Pに記録を実行する記録実行部(記録ヘッド)25と、記録実行部25の動作を制御する制御部43とを備えている。そして、前記制御部43は、ユーザーが希望する記録の終了時刻T2、すなわち各印刷ジョブデータ45についての記録終了時刻(以下、「印刷終了時刻」とも言う)T2を入力可能に構成されており、該記録終了時刻T2が入力されたときは、該記録終了時刻T2に記録を終了することを優先する終了時刻優先モード50で記録が実行されるように構成されている。
前記制御部43は、本実施例では更に、記録終了時刻T2が入力されない場合に実行される通常記録モード(以下、「通常印刷モード」とも言う)49が前記終了時刻優先モード50とは別に設けられている。
【0030】
更に具体的に説明すると、通常印刷モード49、印刷ジョブデータ45の受信の順番でユーザーの設定情報47(設定情報の中身は後述する)に基づいて、印刷終了時刻T2とは無関係に記録を実行する動作モードである。また、本実施例では、前記終了時刻優先モード50は、記録完了に要する処理時間tの長い低速記録モード(以下「低速印刷モード」とも言う)53と、記録完了までに要する処理時間tの短い高速記録モード(以下「高速印刷モード」とも言う)51と、を備える構成になっている。
【0031】
このように、前記終了時刻優先モード50が低速印刷モード53と高速印刷モード51とを予め備える構成にすることによって、ユーザーが印刷終了時刻T2を入力したときにレスポンス良くいずれかのモードで記録が開始されるようになっている。
本実施例では、低速印刷モード53と高速印刷モード51のそれぞれについて、印刷完了に要する時間を段階的に異ならせた複数のモード(図示せず)を有する構成になっている。
【0032】
尚、前記終了時刻優先モード50は、本実施例のように、予め低速印刷モード53と高速印刷モード51とを備える構成ではなく、ユーザーが印刷終了時刻T2を入力したときに、その都度、制御部43の演算部(図示せず)において、前記印刷終了時刻T2に印刷を終えるための対応する印刷モードを演算して設定する構成であっても勿論よい。
ここで、「印刷終了時刻T2に印刷を終える」とは、厳密にその時刻T2丁度に終了する必要はなく実効性を保てる範囲で幅を有する意味で使われている。
【0033】
そして、前記制御部43は、印刷ジョブデータ45のデータ容量とユーザーの設定情報47とに基づいて前記通常印刷モード49で当該印刷ジョブデータ45の印刷を実行すると、ユーザーの入力した印刷終了時刻T2よりも早く印刷が終了する場合に、印刷完了に要する時間を長くする終了時刻優先モード50として前記低速印刷モード53を選択して印刷を実行するように構成されている。
これにより、ユーザーの希望する印刷終了時刻T2よりも早く印刷の実行が終了してしまって、前記印刷終了時刻T2まで長時間に亘って記録実行部25の動作を停止しなければならないという事態が防止されるようになっている。
【0034】
一方、前記制御部43は、印刷ジョブデータ45のデータ容量とユーザーの設定情報47とに基づいて前記通常印刷モード49で当該印刷ジョブデータ45の印刷を実行すると、ユーザーの入力した印刷終了時刻T2よりも遅く印刷が終了する場合に、印刷完了に要する時間を短くする終了時刻優先モード50として前記高速印刷モード51を選択して印刷を実行するように構成されている。
通常、用いるインクの種類と被記録材の種類の組合せによっては、印刷終了後に印刷物を対候性確保のために一定時間待機させて熟成させる必要のあるものがある。この場合、その印刷物を屋外に持ち出して使用する時刻が迫っている場合は、通常の記録動作モードでは時間的に間に合わないことになる。本実施例によれば、このような場合に対処することができる。
【0035】
次に、前記設定情報47には、記録の実行に際してユーザーが設定する用紙Pの紙種やサイズあるいは印刷枚数に関する情報、モノクロ2階調、グレートーン、CMYKフルカラー等の色や、色補正に関する情報及び、粗い、高精細、写真品質等画質に関する情報等が含まれる。
また、前記印刷ジョブデータ45のデータ容量には、前記設定情報47とは別にデータ自体が持っているデータサイズ、解像度、色のかけ合わせ等に関する情報が含まれ、該情報に基づいて算出されるデータの大きさを「データ容量」と定義する。
【0036】
また、前記ユーザーの希望する印刷終了時刻T2の指定の仕方については、前記計時部41によって管理されている具体的な時刻に基づいて何時何分というように絶対的な時間を指定してもよいし、印刷ジョブデータ45を受信してから何時間何分後というように相対的な時間を指定してもよい。
そして、前記印刷終了時刻T2を指定するタイミングは、一般に前記設定情報47の入力時となる。
【0037】
次に、図3、図4に示すフローチャートに基づいて、(1)低速印刷モードを選択して印刷を実行する場合と、(2)高速印刷モードを選択して印刷を実行する場合に分けて、前記制御部43による制御の流れを具体的に説明する。
【0038】
(1)低速印刷モードを選択して印刷を実行する場合(図3参照)
例えば、ユーザーが残業して深夜に帰宅する時点で、未だ翌日使われる印刷物の全部の印刷が終わっていないが、残りの印刷は通常印刷モードでは3〜4時間で終わると感じる場合、ユーザーが印刷終了時刻T2として朝の出勤時刻を入力する。これにより、夜中に印刷が終わり、その後朝まで長時間に亘って記録動作が停止する事態の発生を防止することができる。いか、図4に基づいて具体的に説明する。
【0039】
先ず、ステップS1において、前記印刷ジョブデータ45のデータ容量とユーザーの設定情報47とに基づいて通常印刷モード49で印刷を実行した時の印刷完了に必要な処理時間tを算出する。
次に、ステップS2において、ユーザーが入力したユーザーの希望する当該印刷ジョブデータ45の印刷終了時刻T2を取得する。
【0040】
次に、ステップS3に移行して前記ステップS1で算出した処理時間tと、前記ステップS2で取得した印刷終了時刻T2とを比較し、ステップS4で前記処理時間tによれば、前記印刷終了時刻T2よりも早く記録の実行が終了するか否かの判断が行われる。
【0041】
そして、ステップS4で印刷終了時刻T2よりも早く記録の実行が終了すると判断された場合には、ステップS5に移行して最適な低速印刷モード53が選択され、前記通常印刷モード49の処理時間tよりも長い処理時間で記録が実行され、前記ユーザーの出勤時刻まで記録が継続される。
従って、当該低速印刷モード53によって印刷ジョブデータ45の記録の実行後、長時間にわたって記録ヘッド25の動作の停止した状態の発生が防止される。
【0042】
一方、前記ステップS4で印刷終了時刻T2よりも早く記録の実行が終了しないと判断された場合には、ステップS6に移行し、前記処理時間tにより印刷終了時刻T2と同じタイミングで記録の実行が終了する場合には通常印刷モード49で、また前記印刷終了時刻T2よりも遅く記録の実行が終了する場合には後述する高速記録モード51がそれぞれ選択されて記録の実行が行われるようになっている。
ステップS6は、ユーザーが感じる印刷に要する時間が不正確な場合もあることから用意されている工程である。このステップS6はあくまでユーザーの入力した印刷終了時刻T2に印刷を終えることを重視するものであるが、記録装置の停止時間の発生防止を重視する観点に立てば、ユーザーの入力した印刷終了時刻を無視して通常印刷モード49で記録を実行してもよい。
【0043】
(2)高速印刷モードを選択して印刷を実行する場合(図4参照)
例えば、ユーザーの希望する印刷終了時刻T2まで残り時間が少なく、通常印刷モード49で記録を実行すると、前記印刷終了時刻T2に間に合わない場合である。この場合に印刷終了時刻T2が入力されると高速印刷モード51が選択される。
【0044】
先ず、ステップS7において、前記印刷ジョブデータ45のデータ容量とユーザーの設定情報47とに基づいて通常印刷モード49で印刷を実行した時の印刷完了に必要な処理時間tを算出する。
次に、ステップS8において、ユーザーが入力したユーザーの希望する当該印刷ジョブデータ45の印刷終了時刻T2を取得する。
【0045】
次に、ステップS9に移行して前記ステップS7で算出した処理時間tと、前記ステップS8で取得した印刷終了時刻T2とを比較し、ステップS10で前記処理時間tによれば、前記印刷終了時刻T2よりも遅く印刷が終了するか否かの判断が行われる。
【0046】
ステップS10で印刷終了時刻T2よりも遅く記録の実行が終了すると判断された場合には、ステップS11に移行して最適な高速印刷モード51が選択され、ユーザーの設定した設定情報47よりもユーザーの希望する印刷終了時刻T2を優先して、前記通常印刷モード49の処理時間tよりも短い処理時間で記録が実行される。
従って、当該高速印刷モード51によって、通常印刷モード49の実行時よりも画質等が落ちる状態になることが多いが、通常印刷モード49では間に合わなかった当該印刷ジョブデータ45の記録の実行がユーザーの希望する印刷終了時刻T2に間に合うようになり、インクジェットプリンター1の利便性が向上する。
【0047】
一方、前記ステップS10で印刷終了時刻T2よりも遅く記録の実行が終了しないと判断された場合には、ステップS12に移行し、前記処理時間tが記録終了時刻T2と同じタイミングで記録の実行が終了する場合には通常印刷モード49で、また前記印刷終了時刻T2よりも早く記録の実行が終了する場合には、前述した低速記録モード53がそれぞれ選択されて記録の実行が行われるようになっている。これにより、記録実行動作が停止した状態の発生をできるだけ少なくするようになっている。
【0048】
[実施例2](図5参照)
実施例2に係るインクジェットプリンター1Bは、前記実施例1に係るインクジェットプリンター1Aの構成に加えて、前記制御部43において選択可能な記録モードとして、一つまたは複数の中間記録モード(以下「中間印刷モード」とも言う)55を追加した構成になっている。
従って、ここでは本実施例で新たに追加した中間印刷モード55の構成と、該中間印刷モード55を備えることによって付加された作用、効果を中心にして説明する。
【0049】
即ち、本実施例では、前記制御部43の終了時刻優先モード50は、前記高速印刷モード51と低速印刷モード53に加えて、これらの中間の処理速度の一つまたは複数の中間印刷モード55を備える構成が採用されている。
そして、制御部43では前記実施例1と同様、ユーザーの希望する印刷終了時刻T2と印刷ジョブデータ45のデータ容量の大小に基づいて前記高速印刷モード51と中間印刷モード55と低速印刷モード53とを切り換えて当該印刷ジョブデータ45の記録が実行されるようになっている。
【0050】
このようにして構成される実施例2に係るインクジェットプリンター1Bによっても、前記実施例1と同様の作用、効果が発揮される。また、本実施例では、中間印刷モード55の採用によって、個々の印刷ジョブデータ45の記録の実行に要する処理時間をより細かく調整できるようになり、ユーザーの希望する記録終了時刻T2に合わせて最適な処理速度で記録を実行できるようになる。
【0051】
[他の実施例]
本発明に係る記録装置1は、以上述べたような構成を基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
【0052】
例えば、本発明の記録装置1は、大型のインクジェットプリンターに限らず、小型、中型のインクジェットプリンターに適用することが可能であり、更にはインクジェットプリンター以外のレーザープリンターや複写機、あるいはファクシミリ等の他の記録装置に適用することが可能である。
従って、用紙Pもロール紙Rに限らず、単票紙でもよく、被記録材Pには、普通紙、専用紙、写真用の光沢紙の他、ポリエステルフィルム等の樹脂フィルム等が含まれる。また、被記録材Pの厚さには、例えば0.3〜1.3mmというように種々の厚さが含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1 インクジェットプリンター(記録装置)、3 ロール紙ホルダー、
9 フランジ部、13 軸部、15 キャスター、17 支持フレーム、
19 プリンター本体(記録装置本体)、 21 キャリッジガイド軸、
23 キャリッジ、25 記録ヘッド(記録実行部)、27 支持部材、
29 搬送用ローラー、35 サブフレーム、36 サブフレーム、
37 巻取り装置、41 計時部、43 制御部、45 印刷ジョブデータ、
47 設定情報、49 通常記録モード、51 高速記録モード、
53 低速記録モード、55 中間記録モード、P 用紙(被記録材)、
R ロール紙(被記録材)、A 搬送方向、T2 記録終了時刻、PG ギャップ、
t 処理時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録材に記録を実行する記録実行部と、
前記記録実行部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
ユーザーが各記録ジョブデータについての記録終了時刻を入力可能に構成されており、
前記記録終了時刻が入力されたときは、該記録終了時刻に記録を終了することを優先する終了時刻優先モードで記録が実行されるように構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載された記録装置において、
前記制御部は、前記記録終了時刻が入力されない場合に実行される通常記録モードの他に前記終了時刻優先モードを備えていることを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載された記録装置において、
前記終了時刻優先モードは、記録完了に要する時間が長い低速記録モードと、記録完了に要する時間が短い高速記録モードと、を備え、
前記制御部は、前記入力された記録終了時刻に基づいて前記低速記録モードと前記高速記録モードを切り換えて実行するように構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載された記録装置において、
前記制御部は、記録ジョブデータのデータ容量とユーザーの設定情報とに基づいて前記通常記録モードで当該記録ジョブデータの記録を実行すると、ユーザーの入力した記録終了時刻よりも早く記録が終了する場合に、記録完了に要する時間を長くする終了時刻優先モードで記録を実行するように構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項2又は3に記載された記録装置において、
前記制御部は、記録ジョブデータのデータ容量とユーザーの設定情報とに基づいて前記通常記録モードで当該記録ジョブデータの記録を実行すると、ユーザーの入力した記録終了時刻よりも遅く記録が終了する場合に、記録完了に要する時間を短くする終了時刻優先モードで記録を実行するように構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載された記録装置において、
前記制御部は、記録完了に要する時間の長い記録モードと、記録完了に要する時間の短い記録モードと、前記両モードの間の処理速度で記録を実行する中間記録モードと、を備えていることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−213990(P2012−213990A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82047(P2011−82047)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】