説明

記録装置

【課題】ローラ対の圧接状態を解除可能な可動部材を備えると共に、記録部と媒体支持部との位置関係を一定に維持する。
【解決手段】プリンタは、用紙を挟持しつつ搬送するローラ対23、ローラ対23の圧接状態を保持する圧接位置とローラ対23の圧接状態を解除する圧接解除位置とを取り得るレバー70、ヘッドを支持する上筺体、プラテン及びローラ対23を支持する下筺体を有する。上筺体を回動させて下筐体から離隔した離隔位置に配置し、レバー70を圧接解除位置に配置して、ジャム処理を行うことができる。ジャム処理完了後に上筺体を下筺体に近接した近接位置に戻す際、上筺体の当接部1axがレバー70と当接し、レバー70が圧接位置に戻る。上筺体が近接位置にあるとき、レバー70は上筺体と接触せず、レバー70に作用する付勢力がレバー70を介して上筐体に作用しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙等の記録媒体に対して記録を行う記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
記録装置に関する技術文献として、特許文献1が知られている。特許文献1は、ローラ21,22からなるローラ対、ローラ対の圧接状態を保持する位置(図2)とローラ対の圧接状態を解除する位置(図3)との間で移動可能なレバー25、ジャム処理時に開放される右ドア7等を有する画像形成装置を開示している。レバー25は、右ドア7が閉じられた位置にあるとき、ローラ対の圧接状態を保持する位置を取り、ガイド8を介して右ドア7と当接している(図4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−201975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、記録装置の筐体を、記録部を支持する第1筐体と、媒体支持部及びローラ対を支持する第2筐体とで構成し、第1筐体を第2筐体に対して移動可能とすることが考えられる。本発明者等は、このような筐体の構成を採用した場合に、上記のような可動部材を設けると、以下のような問題が生じ得ることに着眼した。即ち、記録部と媒体支持部との位置関係は、記録品質を確保する観点から一定に維持することが望まれるところ、第1筐体が第2筐体に近接した近接位置にあるとき、可動部材に作用する付勢力が可動部材を介して第1筐体に作用すると、第1筐体の位置が変動し、記録部の位置も変動してしまい、ひいては記録部と媒体支持部との位置関係が変動してしまう。特許文献1では、右ドア7が閉じられた位置にあるとき、圧縮バネ30の付勢力がレバー25を介して右ドア7に対して作用するため、上記問題が生じ得る。
【0005】
本発明の目的は、ローラ対の圧接状態を解除可能な可動部材を備えると共に記録部と媒体支持部との位置関係を一定に維持することができる、記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の観点によると、記録媒体に対して記録を行う記録部と、前記記録部と対向する記録位置において記録媒体を支持する媒体支持部と、記録媒体が前記記録位置を通るように記録媒体を挟持しつつ回転することにより当該記録媒体を搬送するローラ対と、前記記録部を支持する第1筐体と、前記媒体支持部及び前記ローラ対を支持する第2筐体と、前記ローラ対の圧接状態を保持する圧接位置と前記ローラ対の圧接状態を解除する圧接解除位置とを取り得る可動部材と、を備え、前記第1筐体は、前記第2筐体に対して移動可能であり、当該移動によって前記第2筐体に近接した近接位置と前記近接位置のときよりも前記第2筐体から離隔した離隔位置とを取り得るものであり、前記可動部材は、前記第1筐体が前記離隔位置にあるとき前記圧接解除位置を取り得ると共に、前記第1筐体が前記近接位置にあるとき前記圧接位置を取り、前記第1筐体が前記近接位置にあるとき、前記可動部材に作用する付勢力が前記可動部材を介して前記第1筐体に作用しないことを特徴とする、記録装置が提供される。
【0007】
ここで、「ローラ対の圧接状態」とは、記録媒体を挟持しつつ搬送可能な圧力で、ローラ対のローラ同士が接触している状態をいう。「ローラ対の圧接状態を解除する」とは、ローラ対のローラ同士を離隔させる、又は、ローラ同士が接触した状態で、圧接状態のときよりもローラ間の圧力を低減させることをいう。
【0008】
上記観点によれば、第1筐体が近接位置にあるとき、可動部材に作用する付勢力が可動部材を介して第1筐体に作用しない。したがって、ローラ対の圧接状態を解除可能な可動部材を備えると共に、記録部と媒体支持部との位置関係を一定に維持することができる。
【0009】
前記可動部材が、前記ローラ対を構成する第1ローラ及び第2ローラのうち前記第1ローラの回転軸に取り付けられており、前記回転軸を中心として前記回転軸に対して回転可能であってよい。この場合、可動部材の回転軸を新たに設ける場合に比べ、構成を簡素化することができる。
【0010】
前記第2ローラを支持する第2ローラ支持部を備え、前記可動部材は、前記回転軸と平行な方向から見て、前記回転軸を中心とした回転方向に沿って順に、前記第2ローラ支持部と接触可能な第1カム面、及び、前記第1カム面と交差する第2カム面を有し、前記第1カム面と前記第2カム面との境界部分を除き、前記回転軸の中心から前記第1カム面までの長さが前記回転軸の中心から前記第2カム面までの長さよりも大きくてよい。この場合、第1カム面を第2ローラ支持部と接触させることでローラ対の圧接状態を解除することができる一方、第2カム面を第2ローラ支持部と接触させないようにしてローラ対の圧接状態を保持することができる。したがって、簡単な構成で、確実に、可動部材の機能を実現することができる。
【0011】
前記可動部材が前記圧接解除位置にあるとき前記第1カム面が前記第2ローラ支持部と対向し、前記可動部材が前記圧接位置にあるとき前記第2カム面が前記第2ローラ支持部と対向してよい。
【0012】
前記可動部材は、前記圧接位置にあるとき、前記第1筐体と接触しなくてよい。この場合、可動部材を介して第1筐体に力が作用しないことから、記録部と媒体支持部との位置関係をより確実に一定に維持することができる。
【0013】
本発明に係る記録装置は、前記可動部材を前記圧接解除位置から前記圧接位置に向かう方向に付勢する付勢手段をさらに備えてよい。この場合、可動部材が圧接位置にあるときに第1筐体と接触しないという構成を確実に実現することができる。
【0014】
前記可動部材は、前記第1筐体が前記離隔位置から前記近接位置に移動するとき、前記第1筐体に連動して、前記圧接解除位置から前記圧接位置に移動してよい。この場合、第1筐体の移動と可動部材の移動とを個別に行う場合に比べ、ユーザの操作性が向上する。
【0015】
本発明に係る記録装置は、前記第2筐体に取り付けられ、前記ローラ対を覆うカバー位置と前記ローラ対を露出させる露出位置とを取り得る、カバーをさらに備え、前記カバーは、前記第1筐体が前記離隔位置から前記近接位置に移動するとき、前記第1筐体と当接することにより、前記第1筐体に連動して、前記露出位置から前記カバー位置に移動し、前記可動部材は、前記第1筐体が前記離隔位置から前記近接位置に移動するとき、前記カバーが前記第1筐体と当接するタイミングとは異なるタイミングで前記第1筐体と当接することにより、前記第1筐体に連動して、前記圧接解除位置から前記圧接位置に移動してよい。カバーや可動部材が第1筐体と当接すると、第1筐体に、離隔位置に向かう方向の力が作用する。ここで、カバー及び可動部材が同じタイミングで第1筐体と当接する場合、第1筐体に上記方向の力が一時に作用するため、第1筐体を近接位置に移動させるのに大きな力が必要となる。これに対し、上記のように、カバー及び可動部材が互いに異なるタイミングで第1筐体と当接する場合、第1筐体に上記方向の力が一時に作用せずに時間的に分散して作用することとなる。これにより、比較的小さな力で第1筐体を近接位置に移動させることができる。
【0016】
前記可動部材は、前記第1筐体が前記近接位置から前記離隔位置に移動するとき、前記第1筐体に連動して、前記圧接位置から前記圧接解除位置に移動してよい、この場合、第1筐体の移動と可動部材の移動とを個別に行う場合に比べ、ユーザの操作性が向上する。
【0017】
前記ローラ対が、前記ローラ対によって記録媒体が搬送される方向である搬送方向に関して前記記録位置よりも上流側に設けられ、記録媒体に付着した紙粉を除去してよい。特にインクジェット式の記録装置においては、紙粉が付着したまま記録媒体が記録位置に搬送されると、記録部に形成されたノズル内に紙粉が入り込み、ノズルからのインク吐出性能が悪化し得る。上記構成によれば、当該問題を軽減することができる。
【0018】
前記ローラ対が、前記ローラ対によって記録媒体が搬送される方向である搬送方向に関して前記記録位置よりも上流側に設けられ、記録媒体の斜行を補正してよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、第1筐体が近接位置にあるとき、可動部材に作用する付勢力が可動部材を介して第1筐体に作用しない。したがって、ローラ対の圧接状態を解除可能な可動部材を備えると共に、記録部と媒体支持部との位置関係を一定に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係るインクジェット式プリンタを示す斜視図であって、上筐体が近接位置にある状態を示す斜視図である。
【図2】上筐体が離隔位置にある状態を示す斜視図である。
【図3】プリンタの内部を示す概略図である。
【図4】レバー及びローラ対を示す斜視図であり、(a),(b)はそれぞれローラ対の圧接状態及び圧接解除状態を示す。
【図5】上筐体が離隔位置から近接位置に向かう過程を段階的に示す、図1のV−V線に沿った部分断面図であり、(a),(b),(c)はそれぞれ上筐体の下筐体に対する角度θが1°,0.5°,0°のときの状態を示す。
【図6】(a),(b),(c)はそれぞれ図5(a),(b),(c)の一点鎖線で囲んだ領域VIA,VIB,VICを示す拡大図である。
【図7】カバーが露出位置にある状態を示す斜視図である。
【図8】プリンタの電気的構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係るインクジェット式プリンタにおいて、上筐体が近接位置から離隔位置に向かう過程を段階的に示す、図6に対応する部分断面図であり、(a),(b),(c)はそれぞれ上筐体の下筐体に対する角度θが0°,1°,0.5°のときの状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
先ず、図1〜図3を参照し、本発明の第1実施形態に係るインクジェット式プリンタ1の全体構成について説明する。
【0023】
プリンタ1は、共に直方体形状である上筐体1a及び下筐体1bを有する。上筐体1aは下面が開口し、下筐体1bは上面が開口している。筐体1a,1bが互いの開口面を封止することで、プリンタ1の内部空間が画定される。
【0024】
上筐体1aは、主走査方向に沿った回動軸1xを中心として、図3に示すA方向に、下筐体1bに対して回動可能である。回動軸1xの中心は、鉛直方向の直線Vと副走査方向の直線Hとが交差する点である。上筐体1aは、下筐体1bと所定角度(例えば略30°)をなす位置まで回動可能であり、当該回動によって、下筐体1bに近接した近接位置(図1及び図3に示す位置)と、近接位置のときよりも下筐体1bから離隔した離隔位置(図2に示す位置)とを取り得る。図2に示すように、上筐体1aが離隔位置にあるとき、用紙Pの搬送経路の一部が外部に露出され、上筐体1aと下筐体1bとの間にユーザの作業空間が確保される。ユーザは、当該作業空間を利用して、手動でジャム処理(搬送経路における用紙Pの詰まりを解消する作業)を行うことができる。
【0025】
上筐体1aの天板上部には、排紙部1eが設けられている。下筐体1b内の下部空間には、用紙収容ユニット1cが装着されている。用紙収容ユニット1cは、下筐体1bに対して副走査方向に着脱可能である。下筐体1bの正面(図1の紙面左手前側の面、図3の紙面左側の面)には、トレイユニット1dが取り付けられている。トレイユニット1dは、下筐体1bに対して開閉可能であり、開放状態において用紙Pを支持することができる。
【0026】
筐体1a,1bによって画定されるプリンタ1の内部空間には、用紙収容ユニット1c、搬送ユニット40、2つのヘッド10、2つのプラテン50、2つのヘッド10にそれぞれ対応する2つのカートリッジ(図示略)、及び、プリンタ1各部を制御する制御部100が配置されている。
【0027】
制御部100は、外部装置(プリンタ1に接続されたPC等)から供給された記録指令に基づいて、用紙Pに画像が記録されるよう、記録に係わる準備動作、用紙Pの供給・搬送・排出動作、用紙Pの搬送に同期した液体吐出動作等を制御する。制御部100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)に加え、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory:不揮発性RAMを含む)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、I/F(Interface)、I/O(Input/Output Port)等を有する。ROMには、CPUが実行するプログラム、各種固定データ等が記憶されている。RAMには、プログラム実行時に必要なデータ(画像データ等)が一時的に記憶される。ASICは、画像データの書き換え、並び替え等(例えば、信号処理や画像処理)を行う。I/Fは、外部装置とのデータ送受信を行う。I/Oは、各種センサの検出信号の入力/出力を行う。
【0028】
用紙収容ユニット1cは、ケース20及びローラ21を有する。ケース20は、上面が開口した箱であり、複数の用紙Pを収容可能である。ローラ21は、給紙モータ21M(図8参照)に接続されており、制御部100の制御により回転し、ケース20内に収容された複数の用紙Pのうち最上層の用紙Pを送り出す。
【0029】
2つのヘッド10は、副走査方向に互いに離隔して配置されており、用紙Pの搬送方向上流側から順に、前処理液を吐出するプレコートヘッド、及び、ブラックインクを吐出するインクジェットヘッドである。ヘッド10は、互いに同じ構造であって、主走査方向に長尺なライン型であり、略直方体の外形形状を有する。ヘッド10の下面は、多数の吐出口が開口した吐出面10aである。ヘッド10の内部には、カートリッジから供給された前処理液又はブラックインク(これらを「液体」と総称することがある。)が吐出口に至るまでの流路が形成されている。前処理液は、インクの滲みや裏抜けを防止する機能、インクの発色性や速乾性を向上させる機能等を有する液体である。
【0030】
ヘッド10はキャリッジ3に固定されており、キャリッジ3は上筺体1aに支持されている。即ち、ヘッド10はキャリッジ3を介して上筺体1aに支持されている。一方、用紙収容ユニット1c、搬送ユニット40、プラテン50、及びトレイユニット1dは、下筺体1bに支持されている。
【0031】
2つのプラテン50は、2つのヘッド10にそれぞれ対応し、吐出面10aと鉛直方向に対向しつつ用紙Pを支持する支持面50aを有する。
【0032】
搬送ユニット40は、用紙Pが搬送される経路を規定する。当該経路は、用紙収容ユニット1cから記録位置(吐出面10aに対向する位置)を通って排紙部1eに至る経路R1,R2,R3と、開放状態のトレイユニット1dから記録位置を通って排紙部1eに至る経路U,R1の一部,R2,R3と、を含む。搬送ユニット40は、当該経路を規定する下記の構成要素を有する。
【0033】
経路R1は、用紙収容ユニット1cから記録位置に至る経路であり、ガイド31a、ローラ対22、ガイド31b、ローラ対23、ガイド31c、ガイド31d、及びローラ対24によって規定されている。これら構成要素は、搬送方向(点線の太矢印で示す方向)上流側からこの順で配置されている。
【0034】
経路R2は、2つのヘッド10の記録位置を通る経路であり、ガイド32a、抑えローラ33、及びローラ対25によって規定されている。ガイド32a、抑えローラ33、及びローラ対25は、2つのヘッド10間に配置されている。抑えローラ33及びローラ対25は、搬送方向上流側からこの順で配置されている。
【0035】
経路R3は、記録位置から排紙部1eに至る経路であり、ガイド32b,33a,33b、抑えローラ35、及びローラ対26,27,28によって規定されている。ローラ対26〜28は、搬送方向上流側からこの順で配置されている。抑えローラ35は、経路R3に沿って複数設けられている。
【0036】
ローラ対22〜28は、それぞれ、搬送モータ40M(図8参照)に接続された駆動ローラと、駆動ローラの回転に伴って回転する従動ローラとから構成されている。ローラ対22〜28は、それぞれ、圧接状態で、用紙Pを挟持しつつ回転することにより、用紙Pを搬送する。ガイド31a〜31d,32a,32b,33a,33bは、それぞれ、搬送経路となる間隙を形成するように配置された部材からなる。
【0037】
ローラ対23は、用紙Pに付着した紙粉を除去する機能を有する。ローラ対23は、ローラ23a,23bからなる。ローラ23aは、少なくとも周面がフッ素樹脂等の帯電され易い材料で構成されている。ローラ23aの周面には、ウレタンフォーム等のローラ23aを帯電させ易い材料からなるスポンジ23sが圧接されている。この状態でローラ23aが回転すると、スポンジ23sとの摺擦によってローラ23aの周面が帯電し、ローラ23a,23bに挟持された用紙Pに付着している紙粉がローラ23aの周面に吸着される。ローラ23aの周面に吸着された紙粉は、スポンジ23sによってローラ23aの周面から掻き取られ、スポンジ23sの近傍に設けられた箱23cに溜められる。ローラ23bは、ゴム等からなり、駆動ローラであるローラ23aの回転に伴って回転する従動ローラである。なお、ローラ23aの軸23axの両端近傍にレバー70(図4参照)が取り付けられている。ローラ対23のさらなる説明及びレバー70の説明については、後述する。
【0038】
ローラ対24は、用紙Pの斜行(傾き)を補正する機能を有する。ローラ対24は、ローラ24a及びローラ24bからなる。ローラ24bは駆動ローラであり、ローラ24aは従動ローラである。ローラ24aは、ガイド31dに回転可能に支持されていると共に、電磁クラッチ24c(図8参照)と接続されている。電磁クラッチ24cがオンのときローラ24aは回転可能であり、電磁クラッチ24cがオフのときローラ24aは回転不能である。ローラ対24は、制御部100による電磁クラッチ24cのオンオフ制御によって、回転可能状態と回転不能状態とを選択的に取り得る。当該制御によって、ローラ対24は、ローラ対23によって搬送されてきた用紙Pの先端を所定時間無回転状態で挟持し、所定時間経過後に回転し始める。上記所定時間の間に、用紙Pの先端の辺全体がローラ対24に当接し、用紙Pの斜行が補正される。用紙Pは、このようにして斜行が補正された後、記録位置に送り込まれる。
【0039】
開放状態のトレイユニット1dから記録位置を通って排紙部1eに至る経路は、経路Uと、経路R1の搬送方向下流側部分と、経路R2,R3とからなる。経路Uは、搬送モータ40M(図8参照)に接続されたローラ29によって規定されている。
【0040】
制御部100による制御の下、ケース20からローラ21により送り出された用紙Pは、経路R1〜R3に沿って搬送され、排紙部1eに排出される。或いは、制御部100による制御の下、開放状態のトレイユニット1dからローラ29により送り出された用紙Pは、経路U、経路R1の搬送方向下流側部分、及び経路R2,R3に沿って搬送され、排紙部1eに排出される。用紙Pが支持面50a上に支持されつつヘッド10の真下(記録位置)を順次通過する際に、制御部100の制御により各ヘッド10が駆動し、吐出面10aの吐出口から用紙Pに向けて液体が吐出されることで、用紙P上に画像が形成される。
【0041】
次いで、図4〜図7を参照し、ローラ対23及びレバー70について説明する。
【0042】
ローラ対23のローラ23a,23bは、図4に示すように、それぞれ回転中心となる軸23ax,23bxを有する。軸23ax,23bxは、下筺体1bに回転可能に支持されている。ローラ23bは、軸23bxの両端近傍に設けられたバネ23bsによって、ローラ23aに向けて付勢されている。
【0043】
レバー70は、軸23axを中心として軸23axに対して回転可能である。即ち、レバー70は、軸23axに対してフリーに取り付けられており、ローラ23aとは独立して回転可能である。2つのレバー70は、ローラ23aの主走査方向の両側にそれぞれ配置されている。
【0044】
レバー70は、ローラ対23の圧接状態を保持する圧接位置(図4(a)及び図6(c))と、ローラ対23の圧接状態を解除する圧接解除位置(図4(b)及び図6(a))とを取り得る。ここで、「ローラ対23の圧接状態」とは、用紙Pを挟持しつつ搬送可能な圧力で、ローラ対23のローラ23a,23b同士が接触している状態をいう。換言すると、ローラ対23の圧接状態とは、ローラ対23によって用紙Pを搬送するために、ローラ23a,23b同士が所定の圧力によって圧接された状態である。「ローラ対23の圧接状態を解除する」とは、ローラ対23のローラ23a,23b同士を離隔させる、又は、ローラ23a,23b同士が接触した状態で、圧接状態のときよりもローラ23a,23b間の圧力を低減させることをいう。換言すると、ローラ対23の圧接状態が解除された状態とは、ローラ23a,23b同士が離隔された状態、又は、ローラ23a,23b同士の圧力が所定の圧力よりも低減された状態である。本実施形態では、レバー70が圧接解除位置にあるとき、ローラ23a,23b間に若干の隙間が生じ、ローラ23a,23b同士が離隔している。
【0045】
レバー70が圧接位置にあるとき、バネ23bsの付勢力によって、ローラ対23が圧接状態にある。このときレバー70は、軸23bxから離隔しているか、或いは、軸23bxと接触したとしても、バネ23bsの付勢力に抗して軸23bxを移動させるほどには軸23bxに対して力を付与しない。
【0046】
レバー70が圧接解除位置にあるとき、レバー70は軸23bxと接触し且つバネ23bsの付勢力に抗して軸23bxを押圧している。このとき軸23bxは、レバー70が圧接位置にあるときよりも、軸23axから離隔した位置にある。
【0047】
レバー70には、バネ70sが取り付けられている。バネ70sは、レバー70を、圧接解除位置から圧接位置に向かう方向(X方向)に付勢している。
【0048】
レバー70は、上筐体1aが近接位置にあるときは圧接位置にあり、ジャム処理の際に、ユーザの手動によって回転し、圧接位置から圧接解除位置に移動する。以下、ジャム処理の手順と共に、レバー70の構成について、詳細に説明する。
【0049】
ジャムの発生により記録が中断された場合、ユーザは、上筐体1aを回動させて近接位置(図1に示す位置)から離隔位置(図2に示す位置)に移動させる。上筐体1aが離隔位置に移動されると、レバー70の当接部70aが露出される。上筐体1aが近接位置から離隔位置に移動した直後は、レバー70は圧接位置にある。なお、上筐体1aが近接位置にあるとき、レバー70は露出されていない。そしてユーザは、上筺体1aが離隔位置に配置された状態で、圧接位置(図4(a))にあるレバー70を、バネ70sの付勢力に抗してY方向(X方向と逆の方向)に回転させ、圧接解除位置(図4(b))に移動させる。ユーザは、上筐体1aが離隔位置に配置され且つレバー70が圧接解除位置に配置された状態で、上筐体1aと下筐体1bとの間に形成された作業空間を利用して、ローラ23a,23b間に詰まっている用紙Pを取り出すことができる。レバー70が圧接解除位置にあるとき、ローラ対23の圧接状態が解除されているため、ローラ23a,23b間に位置する用紙Pを容易に取り出すことができる。
【0050】
ジャム処理が完了した後、ユーザは、上筐体1aを回動させて離隔位置から近接位置に移動させる。このときレバー70は、図5及び図6に示すように、上筐体1aに連動して、圧接解除位置から圧接位置に移動する。具体的には、レバー70は、上筐体1aが離隔位置から近接位置に移動する過程において、上筐体1aの当接部1axと当接し(図5(a)及び図6(a)参照)、その後当接部1axに押されてX方向に回転することにより、圧接解除位置から圧接位置に移動する(図5(b),(c)及び図6(b),(c)参照)。なお、当接部1axは、上筐体1aに固定された部材であり、上筐体1aが離隔位置から近接位置に移動する過程において、圧接解除位置にあるレバー70と当接する位置に配置されている。当接部1axは、圧接解除位置にあるレバー70と当接してから(図5(a))、上筐体1aが離隔位置に移動するまで(図5(c))、概ね鉛直方向下向きに移動する。
【0051】
上筐体1aが近接位置にあるとき、レバー70は圧接位置にある(図5(c)及び図6(c)参照)。このときレバー70は、上筐体1aと接触していない。この状態において、記録動作が行われる。
【0052】
レバー70は、カム面71,72と、凸部73,74と、当接部70aとを有する。カム面71は、ローラ23bを支持する軸23bxと対向可能であって、カム面71が軸23bxに対向するときカム面71は軸23bxと接触する。カム面72は、軸23bxと対向可能であって、カム面72が軸23bxに対向するときカム面72は軸23bxと接触しない。凸部73は、カム面71に隣接して配置されている。凸部74は、カム面72に隣接して配置されている。凸部73,74は、レバー70が圧接位置にあるときに、それぞれ下筺体1bの凹部1bx,1byに収容される。当接部70aは、上筐体1aの当接部1axと当接可能であって、レバー70が圧接解除位置にある状態で、上筐体1aが離隔位置から近接位置に移動する過程において当接部1axと当接する。カム面71,72、凸部73,74、及び、当接部70aについて、以下に詳述する。
【0053】
レバー70は、図6に示すように、主走査方向(軸23axと平行な方向)から見て、軸23axを中心とした回転方向に沿って順に、カム面71,72を有する。カム面71は、図6における反時計回り方向において、カム面72よりも上流側に配置されている。カム面71は、ローラ23bを支持する軸23bxと接触可能である(図6(a)参照)。カム面72は、カム面71と交差している。カム面71,72の境界部分79を除き、軸23axの中心Oからカム面71までの長さL1は、中心Oからカム面72までの長さL2よりも大きい。当該長さL1,L2の条件は、カム面71,72のどの部分においても満足される。なお、長さL1は、ローラ対23が圧接状態にあるときの、軸23bxにおける最も中心Oに近い点から中心Oまでの長さよりも大きい。一方、長さL2は、ローラ対23が圧接状態にあるときの、軸23bxにおける最も中心Oに近い点から中心Oまでの長さよりも小さい。カム面71は、中心Oの半径方向と直交する直交方向に延びている。なお、カム面71は、当該直交方向に対して、図6における時計回り方向に向かうにつれて中心Oに近づくように僅かに傾斜していても良い。カム面72は、当該直交方向に対して交差するように延びている。具体的には、カム面72は、境界部分79から図6における反時計回り方向に向かうにつれて中心Oに近づくように傾斜している。なお、カム面71が傾斜している場合において、カム面71の傾斜角度は、カム面72の傾斜角度よりも小さい。
【0054】
レバー70が圧接解除位置にあるとき、カム面71は軸23bxと対向し、カム面72は軸23bxと対向していない(図6(a)参照)。このとき軸23bxは、カム面71と接触すると共に、カム面71によりバネ23bsの付勢力に抗して軸23axから離隔する方向に押圧されている。このときカム面71には、バネ23bsの付勢力に対する反力が生じている。換言すると、カム面71には、バネ23bsの付勢力が作用している。カム面71は、中心Oの半径方向と直交する直交方向に延びている。そのため、レバー70に対してバネ23bsの付勢力が作用しても、その付勢力は、レバー70を図6のX方向に回転させる力としては作用しない。なお、カム面71が僅かに傾斜している場合であっても、バネ23bsの付勢力は、レバー70を図6のX方向に回転させる力としては作用しない。この場合、バネ23bsの付勢力は、レバー70を図6のX方向とは反対方向に回転させる力として、僅かに働いている。レバー70は、当該バネ23bsの付勢力とカム面71に生じた反力との相互作用により、バネ70sの付勢力によって回転せず、圧接解除位置に保持されている。また、このとき、レバー70の凸部73とカム面71とで形成された凹部内に、軸23bxが収容されている。
【0055】
レバー70の当接部70aは、中心Oよりも鉛直方向上側に位置している。当接部70aの先端は、レバー70が圧接解除位置にあるとき、レバー70が圧接位置にあるときよりも、鉛直方向上側に位置している。また、当接部70aの先端と中心Oとを結んだ直線は、レバー70が圧接解除位置にあるとき、鉛直方向に対して図6における時計回り方向に傾斜している。これにより、上筐体1aが離隔位置から近接位置に移動するのに伴って、当接部1axが圧接解除位置にあるレバー70の当接部70aの先端に当接し、当接部1axがさらに鉛直方向下向きに移動すると、当接部70aが鉛直方向下向きに移動する。つまり、当接部70aの先端が当接部1axによって押圧されて、レバー70がX方向に回動する。上筐体1aの近接位置への移動が完了したとき、レバー70は圧接位置をとる。即ち、レバー70は、上筐体1aの離隔位置から近接位置への移動に連動して、圧接解除位置から圧接位置へと移動する。
【0056】
なお、レバー70が圧接解除位置にある状態では、ローラ対23は互いに離隔している、又は、圧接力が低減された状態にある。この状態で、用紙Pが搬送されると、用紙Pのジャムや搬送精度の低下といった問題が生じ得る。つまり、ユーザが上筐体1aを離隔位置に移動させる共に、レバー70を圧接解除位置に移動させてジャム処理を行った後、レバー70を圧接位置に戻すのを忘れたまま、上筐体1aを近接位置に移動させた状態において、用紙Pが搬送されて用紙Pへの画像記録動作が行われると、用紙Pのジャムや搬送精度の低下といった問題が生じ得る。本発明では、上筐体1aが離隔位置から近接位置に移動するのに連動して、レバー70が圧接解除位置から圧接位置に移動するため、上記のような問題を抑制することができる。
【0057】
レバー70は、圧接解除位置から圧接位置に移動する際、カム面71を軸23bxと摺接させながら、X方向に回転する(図6(a),(b)参照)。そして、境界部分79が軸23bxと接触し(図6(b)参照)する。そしてさらに、レバー70がX方向に回転すると、カム面72が軸23bxと対向する。つまり、軸23bxは、カム面71と対向しつつカム面71と接触した状態から境界部分79を乗り越えるようにして、カム面72と対向するように移動する。カム面72が軸23bxと対向するときに、カム面72と軸23bxとは接触しないので、レバー70が軸23bxから離隔する(図6(c)参照)。このとき軸23bxは、レバー70からの押圧力がなくなることで、バネ23bsの付勢力により軸23axに近づく方向に移動する。これにより、ローラ対23が圧接状態となる。また、レバー70は、境界部分79が軸23bxと接触した後は、カム面72と軸23bxとが接触しないため、上述のようなバネ23bsの付勢力とカム面71に生じる反力との相互作用がなくなる。そのため、当接部1axからの押圧力によらず、バネ70sの付勢力により、X方向に迅速に回転する。そしてレバー70は、レバー70の凸部73,74がそれぞれ下筺体1bの凹部1bx,1byに収容されるのと同時に、圧接位置に配置される。
【0058】
レバー70が圧接位置にあるとき、カム面72は軸23bxと対向し、カム面71は軸23bxと対向していない(図6(c)参照)。このときレバー70は、凸部73,74と凹部1bx,1byとの係合及びバネ70sの付勢力により、圧接位置に保持されている。
【0059】
なお、下筺体1bには、図1及び図7に示すように、ローラ対23及びローラ29を覆うカバー60が、主走査方向と平行な軸60xを中心として、回動可能に取り付けられている。カバー60は、ローラ対23及びローラ29を覆うカバー位置(図1)と、ローラ対23及びローラ29を露出させる露出位置(図7)とを取り得る。
【0060】
カバー60は、上筐体1aが近接位置にあるときカバー位置にある。カバー60は、ジャム処理の際に、上筺体1aが離隔位置に配置された後且つレバー70が圧接解除位置に配置された後、又は、上筺体1aが離隔位置に配置された後且つレバー70が圧接解除位置に配置される前に、ユーザの手動によってZ方向に回動される。カバー位置にあるカバー60がZ方向に移動されることによって、カバー60は、カバー位置から露出位置に移動する。ユーザは、上筐体1aが離隔位置に配置され、カバー60が露出位置に配置され、且つレバー70が圧接解除位置に配置された状態で、ローラ23a,23b間に詰まっている用紙Pを取り出すことができる。
【0061】
カバー60は、上筐体1aが離隔位置から近接位置に移動するとき、上筐体1aと当接することにより、上筐体1aに連動して、露出位置からカバー位置に移動する。具体的には、鉛直方向に関して、露出位置にあるカバー60における上筐体1aと当接する部分が、圧接解除位置にあるレバー70における当接部1axと当接する部分よりも、高い位置にある。換言すると、離隔位置にある上筐体1aと露出位置にあるカバー60との間隔が、離隔位置にある上筐体1aの当接部1axと圧接解除位置にあるレバー70との間隔よりも小さい。したがって、カバー60は、ジャム処理完了後に上筐体1aが離隔位置から近接位置に移動する過程において、レバー70が当接部1axと当接するよりも前に、上筺体1aと当接する。カバー60は、上筐体1aとの当接と略同時にZ方向と逆の方向に回動を開始し、その後は自重によって当該方向に回動し、レバー70が当接部1axと当接するよりも前に、カバー位置に配置される。
【0062】
以上に述べたように、本実施形態のプリンタ1によると、上筐体1aが近接位置にあるとき、レバー70に作用する付勢力(例えばバネ70sの付勢力やバネ23bsの付勢力)がレバー70を介して上筐体1aに作用しない。したがって、ローラ対23の圧接状態を解除可能なレバー70を備えると共に、ヘッド10とプラテン50との位置関係を一定に維持することができる。
【0063】
レバー70が、ローラ対23を構成するローラ23aの軸23axに取り付けられており、軸23axを中心として軸23axに対して回転可能である。この場合、レバー70の回転軸を新たに設ける場合に比べ、構成を簡素化することができる。
【0064】
レバー70はカム面71,72を有し、カム面71,72の境界部分79を除き、軸23axの中心Oからカム面71までの長さL1は、中心Oからカム面72までの長さL2よりも大きい。この場合、カム面71を軸23bxと接触させることでローラ対23の圧接状態を解除することができる一方、カム面72を軸23bxと接触させないようにしてローラ対23の圧接状態を保持することができる。したがって、簡単な構成で、確実に、レバー70の機能を実現することができる。
【0065】
レバー70は、圧接位置にあるとき、上筐体1aと接触しない(図6(c)参照)。つまり、レバー70が圧接位置にあるとき、レバー70の当接部70aと、上筐体1aの当接部1axとが接触しない。この場合、レバー70を介して上筐体1aに力が作用しないことから、ヘッド10とプラテン50との位置関係をより確実に一定に維持することができる。
【0066】
プリンタ1は、レバー70を圧接解除位置から圧接位置に向かう方向に付勢するバネ70sをさらに備えている。この場合、レバー70が圧接位置にあるときに上筐体1aと接触しないという構成を確実に実現することができる。
【0067】
レバー70は、上筐体1aが離隔位置から近接位置に移動するとき、上筐体1aに連動して、圧接解除位置から圧接位置に移動する。この場合、上筐体1aの移動とレバー70の移動とを個別に行う場合に比べ、ユーザの操作性が向上する。
【0068】
レバー70は、上筐体1aが離隔位置から近接位置に移動するとき、カバー60が上筐体1aと当接するタイミングとは異なるタイミングで(本実施形態では、カバー60が上筐体1aと当接するタイミングよりも先に)、上筐体1aと当接することにより、上筐体1aに連動して、圧接解除位置から圧接位置に移動する。カバー60やレバー70が上筐体1aと当接すると、上筐体1aに、離隔位置に向かう方向の力が作用する。ここで、カバー60及びレバー70が同じタイミングで上筐体1aと当接する場合、上筐体1aに上記方向の力が一時に作用するため、上筐体1aを近接位置に移動させるのに大きな力が必要となる。これに対し、上記のように、カバー60及びレバー70が互いに異なるタイミングで上筐体1aと当接する場合、上筐体1aに上記方向の力が一時に作用せずに時間的に分散して作用することとなる。これにより、比較的小さな力で上筐体1aを近接位置に移動させることができる。
【0069】
ローラ対23が、搬送方向に関して記録位置よりも上流側に設けられ、用紙Pに付着した紙粉を除去する。特にインクジェット式の記録装置においては、紙粉が付着したまま用紙Pが記録位置に搬送されると、ヘッド10に形成されたノズル内に紙粉が入り込み、ノズルからのインク吐出性能が悪化し得る。上記構成によれば、当該問題を軽減することができる。仮に、上筐体1aが近接位置にあるときに、ローラ対23が圧接解除位置を取り得る構成である場合には、ローラ対23による紙粉除去性能が低下し得る。この場合、用紙Pがローラ対23によって紙粉が除去されないまま記録位置に搬送され、インク吐出性能の低下を招き得る。つまり、ユーザが上筐体1aを離隔位置に移動させる共に、レバー70を圧接解除位置に移動させてジャム処理を行った後、レバーを圧接位置に戻すのを忘れたまま、上筐体1aを近接位置に移動させた場合、上記のようにしてインク吐出性能の低下が生じ得る。これに対し、本発明では、上筐体1aが離隔位置から近接位置に移動させるのに連動して、ローラ対23が圧接解除位置から圧接位置に移動するため、このような問題を軽減することができる。
【0070】
続いて、図9を参照し、本発明の第2実施形態に係るプリンタについて説明する。
【0071】
第2実施形態のプリンタは、上筺体1aが近接位置から離隔位置に移動するとき、上筺体1aに連動して、レバー70が圧接位置から圧接解除位置に移動する点を除き、第1実施形態のプリンタ1と同じ構成である。
【0072】
第2実施形態のレバー70は、バネ70sが取り付けられていない点、及び、先端に突起70pが設けられている点において、第1実施形態のレバーと異なる。上筐体1aが近接位置にあるとき、レバー70は圧接位置にあり(図9(a)参照)、このとき突起70pは上筐体1aに設けられた壁1ayに支持されている。上筐体1aが近接位置から離隔位置に移動するとき、壁1ayと共に突起70pが上方に移動する。そして、レバー70がY方向に回転し(図9(b)参照)、突起70pが壁1ayから離隔する。つまり、上筐体1aが近接位置から離隔位置に移動するとき、壁1ayが突起70pを上方に押し上げることにより、レバー70がY方向に回転する。そして、カム面71が軸23bxと接触し、レバー70が圧接解除位置に配置される(図9(c)参照)。なお、上筐体1aが離隔位置から近接位置に移動するとき、壁1ayは突起70pと干渉しないように構成されている。
【0073】
第2実施形態によれば、上筐体1aの移動とレバー70の移動とを個別に行う場合に比べ、ユーザの操作性が向上する。その他、第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
続いて、本発明の第3実施形態に係るプリンタについて説明する。
【0075】
第3実施形態のプリンタは、ローラ対23が用紙Pに付着した紙粉を除去する機能のみならず用紙Pの斜行(傾き)を補正する機能をも有する点を除き、第1実施形態のプリンタ1と同じ構成である。
【0076】
第3実施形態では、ローラ23aに電磁クラッチ24c(図8参照)が接続されており、制御部100による電磁クラッチ24cのオンオフ制御によって、ローラ対23が回転可能状態と回転不能状態とを選択的に取り得る。そして、ローラ対24について上述したのと同様にローラ対23が制御されることで、用紙Pの斜行が補正される。なお、第3実施形態において、ローラ対24は用紙Pの斜行(傾き)を補正する機能を有さなくてよい。
【0077】
第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0079】
・本発明に係る記録装置は、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能である。また、記録装置は、インクジェット式に限定されず、レーザー式等であってもよい。レーザー式の場合、感光体が記録部に相当し、感光体と記録媒体との位置関係が変動すると、感光体の記録媒体に対する圧力が変動するため、記録品質に影響が生じ得る。
・記録装置に含まれる記録部の数は、1以上の任意の数であってよい。
・記録部は、前処理液やインク以外の任意の液体を吐出してよく、また上述のようにレーザー式の場合は感光体であってよい。
・記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な任意の媒体であってよい。
・第1筐体は、第2筐体に対して回動可能であることに限定されず、例えば第2筐体に対して水平方向又は鉛直方向に移動可能であってもよい。
・第1筐体は、ユーザの手動によらず、制御部が機械的な機構を制御することにより、第2筺体に対して移動してもよい。
・媒体支持部は、記録媒体を支持しつつ搬送方向に走行するベルトであってもよい。
【0080】
・ローラ対は、搬送方向に関して記録位置よりも下流側に設けられてもよい。
・ローラ対は、記録媒体の斜行を補正する機能のみを有してもよいし、また、記録媒体に付着した紙粉を除去する機能及び記録媒体の斜行を補正する機能のいずれも有さなくてもよい。
【0081】
・第1筐体が離隔位置から近接位置に移動するとき、カバーが第1筺体と当接するタイミングよりも後に、可動部材が第1筐体と当接してもよい。また、第1筐体が離隔位置から近接位置に移動するとき、カバーが第1筺体と複数回当接してもよい。
・第1筐体が離隔位置から近接位置に移動するとき、カバー及び可動部材が互いに同じタイミングで第1筐体と当接してもよい。
・カバーを省略してもよい。
【0082】
・可動部材は、ユーザの手動によらず、制御部が機械的な機構を制御することにより、移動してもよい。
・可動部材は、第1筐体が離隔位置から近接位置に移動するとき、第1筐体に連動せず、第1筐体とは独立して、圧接解除位置から圧接位置に移動してもよい。例えば、第1筐体が離隔位置から近接位置に移動する前に、ユーザの手動により、又は、制御部が機械的な機構を制御することにより、可動部材を圧接解除位置から圧接位置に移動させてもよい。
・可動部材は、圧接位置にあるとき、第1筐体と接触してもよい。この場合でも、可動部材に作用する付勢力が可動部材を介して第1筐体に作用しない限りは、本発明の課題を解決することができる。
・可動部材を圧接解除位置から圧接位置に向かう方向に付勢する付勢手段を省略してもよい。なお、この場合、付勢手段がある場合と比較して、可動部材が圧接位置にあるときに第1筐体と接触する可能性が高くなり得る。例えば、可動部材がローラ対に取り付けられた構成において、付勢手段を省略した場合、圧接位置にある可動部材が、ローラ対の回転に伴って生じるローラ対との間の摩擦力等により、回転し、第1筺体と接触し得る。しかしながら、このような場合でも、上記のとおり、可動部材に作用する付勢力が可動部材を介して第1筐体に作用しない限りは、本発明の課題を解決することができる。例えば、上述の実施形態においてバネ70sを省略した場合、圧接位置にあるレバー70が、ローラ対23の回転に伴って生じる軸23axとの間の摩擦力等により、回転し、上筺体1aに接触し得る。また、この場合において、レバー70が軸23bxとも接触し得る。しかしながら、このような場合でも、このときバネ23bsの付勢力と当該付勢力に対する軸23bxの反力との間で力の釣り合いがとれているため、バネ23bsの付勢力が軸23bxを介してレバー70に作用することはなく、バネ23bsの付勢力がレバー70を介して上筺体1aに作用することもない。
・可動部材の第1カム面が接触可能な第2ローラ支持部は、第2ローラを支持する部分であればよく、第2ローラの回転軸に限定されない。
また、可動部材の構成(カム面の構成を含む。)は、任意に変更可能である。
・可動部材は、ローラ対を構成する1のローラの回転軸に取り付けられることに限定されず、ローラ対とは別の部材に取り付けられてもよい。
・可動部材は、回転可能であることに限定されず、例えば水平方向又は鉛直方向に移動可能であってもよい。
・可動部材が圧接解除位置にあるとき、上述の実施形態ではローラ対のローラ同士が離隔しているが、ローラ同士が接触した状態で圧接状態のときよりもローラ間の圧力が低減していてもよい。
・記録装置に含まれる可動部材の数は、1以上の任意の数であってよい。
【符号の説明】
【0083】
1 インクジェット式プリンタ(記録装置)
1a 上筐体(第1筐体)
1b 下筐体(第2筐体)
10 ヘッド(記録部)
23 ローラ対
23a ローラ(第1ローラ)
23ax 軸(回転軸)
23b ローラ(第2ローラ)
23bx 軸(第2ローラ支持部)
50 プラテン(媒体支持部)
60 カバー
70 レバー(可動部材)
70s バネ(付勢手段)
71 カム面(第1カム面)
72 カム面(第2カム面)
P 用紙(記録媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対して記録を行う記録部と、
前記記録部と対向する記録位置において記録媒体を支持する媒体支持部と、
記録媒体が前記記録位置を通るように記録媒体を挟持しつつ回転することにより当該記録媒体を搬送するローラ対と、
前記記録部を支持する第1筐体と、
前記媒体支持部及び前記ローラ対を支持する第2筐体と、
前記ローラ対の圧接状態を保持する圧接位置と前記ローラ対の圧接状態を解除する圧接解除位置とを取り得る可動部材と、を備え、
前記第1筐体は、前記第2筐体に対して移動可能であり、当該移動によって前記第2筐体に近接した近接位置と前記近接位置のときよりも前記第2筐体から離隔した離隔位置とを取り得るものであり、
前記可動部材は、前記第1筐体が前記離隔位置にあるとき前記圧接解除位置を取り得ると共に、前記第1筐体が前記近接位置にあるとき前記圧接位置を取り、
前記第1筐体が前記近接位置にあるとき、前記可動部材に作用する付勢力が前記可動部材を介して前記第1筐体に作用しないことを特徴とする、記録装置。
【請求項2】
前記可動部材が、前記ローラ対を構成する第1ローラ及び第2ローラのうち前記第1ローラの回転軸に取り付けられており、前記回転軸を中心として前記回転軸に対して回転可能であることを特徴とする、請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記第2ローラを支持する第2ローラ支持部を備え、
前記可動部材は、前記回転軸と平行な方向から見て、前記回転軸を中心とした回転方向に沿って順に、前記第2ローラ支持部と接触可能な第1カム面、及び、前記第1カム面と交差する第2カム面を有し、前記第1カム面と前記第2カム面との境界部分を除き、前記回転軸の中心から前記第1カム面までの長さが前記回転軸の中心から前記第2カム面までの長さよりも大きいことを特徴とする、請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記可動部材が前記圧接解除位置にあるとき前記第1カム面が前記第2ローラ支持部と対向し、前記可動部材が前記圧接位置にあるとき前記第2カム面が前記第2ローラ支持部と対向することを特徴とする、請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記可動部材は、前記圧接位置にあるとき、前記第1筐体と接触しないことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記可動部材を前記圧接解除位置から前記圧接位置に向かう方向に付勢する付勢手段をさらに備えたことを特徴とする、請求項5に記載の記録装置。
【請求項7】
前記可動部材は、前記第1筐体が前記離隔位置から前記近接位置に移動するとき、前記第1筐体に連動して、前記圧接解除位置から前記圧接位置に移動することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記第2筐体に取り付けられ、前記ローラ対を覆うカバー位置と前記ローラ対を露出させる露出位置とを取り得る、カバーをさらに備え、
前記カバーは、前記第1筐体が前記離隔位置から前記近接位置に移動するとき、前記第1筐体と当接することにより、前記第1筐体に連動して、前記露出位置から前記カバー位置に移動し、
前記可動部材は、前記第1筐体が前記離隔位置から前記近接位置に移動するとき、前記カバーが前記第1筐体と当接するタイミングとは異なるタイミングで前記第1筐体と当接することにより、前記第1筐体に連動して、前記圧接解除位置から前記圧接位置に移動することを特徴とする、請求項7に記載の記録装置。
【請求項9】
前記可動部材は、前記第1筐体が前記近接位置から前記離隔位置に移動するとき、前記第1筐体に連動して、前記圧接位置から前記圧接解除位置に移動することを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項10】
前記ローラ対が、前記ローラ対によって記録媒体が搬送される方向である搬送方向に関して前記記録位置よりも上流側に設けられ、記録媒体に付着した紙粉を除去することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項11】
前記ローラ対が、前記ローラ対によって記録媒体が搬送される方向である搬送方向に関して前記記録位置よりも上流側に設けられ、記録媒体の斜行を補正することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の記録装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−112518(P2013−112518A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263001(P2011−263001)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】