説明

記録装置

【課題】搬送経路を樹脂で形成する場合に、負荷や衝撃が加わっても、緩和して、搬送経路あるいはその周囲の部品に対して破損しにくい記録装置を提供すること。
【解決手段】記録装置(1)は、記録媒体の搬送経路の内周を形成する下部搬送経路部(12)と、下部搬送経路部(12)に係合し、搬送経路の内周を形成する上部搬送経路部(13)とを備える。下部搬送経路部(12)と上部搬送経路部(13)との係合部は、搬送経路の幅方向に対して斜めに形成された係合部(17、21、26、27)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関し、特に、記録媒体を搬送する搬送経路の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来では、特許文献1に示す如く、記録装置は、記録媒体を収容するカセットを記録装置の正面から挿入し、カセットに載置された記録媒体を搬送経路に給紙する。搬送経路は、上方に向けて折り返す経路を成し、記録ヘッドで記録され、正面に記録された記録媒体が排紙される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−57354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
記録装置は、コスト低減の1つとして、金属に代わり、プラスチックなどの合成樹脂が用いられる。記録装置の上方から負荷が加えられ、あるいは、記録装置が落下し衝撃が加えられると、負荷や衝撃は記録装置内に伝播することになる。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、搬送経路を樹脂で形成する場合に、負荷や衝撃が加わっても、緩和して、搬送経路あるいはその周囲の部品に対して破損しにくい記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様の記録装置は、筐体と、前記筐体に設けられ、記録媒体の搬送経路の内周を形成する下部搬送経路部と、前記筐体に設けられ、前記下部搬送経路部に係合し、前記搬送経路の内周を形成する上部搬送経路部と、を備え、
前記下部搬送経路部と前記上部搬送経路部との係合部は、搬送経路の幅方向に対して斜めに形成された端部を有することを特徴とする。
【0007】
本態様によれば、筐体に対して負荷や衝撃が加えられ、下部搬送経路部あるいは上部搬送経路部に負荷や衝撃が伝播する。しかし、下部搬送経路部と前記上部搬送経路部とは、搬送経路の幅方向に対して斜めに形成された端部を有する係合部であるため、負荷や衝撃は分散され、部分的に負荷や衝撃が集中して、係合部の一部が破損する、あるいは組みずれを起こすことがない。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、
前記下部搬送経路部と前記上部搬送経路部により、搬送方向を折り返す搬送経路を構成し、折り返す搬送経路に前記係合部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明の第3の態様は、第2の態様において、前記下部搬送経路部は、前記上部搬送経路部に対して、記録媒体の搬送方向の上流側であることを特徴とする。
【0010】
本発明の第4の態様は、第3の態様において、前記下部搬送経路部側の係合部分は、前記上部搬送経路部側の係合部分より突き出すように係合していることを特徴とする。この態様によれば、記録媒体が係合部で引っかかることを防止することができる。
【0011】
本発明の第5の態様は、第2または第3の態様において、前記折り返す搬送経路に対向し、前記筐体に対して開閉自在で、閉状態のとき前記搬送経路の外周の一部を形成する搬送経路ユニットを備え、記録媒体が前記搬送経路ユニットの搬送面に当接する部分に前記係合部が対向し、前記係合部は、前記上部搬送経路部側の係合部分が前記下部搬送経路部側の係合部分より突き出すように係合していることを特徴とする。この態様によれば、記録媒体が係合部で引っかかることを防止することができる。
【0012】
本発明の第6の態様は、上記態様において、前記係合部は、三角形状に並び互いに噛合うように係合していることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】プリンターを示す正面から見た斜視図。
【図2】プリンターを示す背面から見た斜視図。
【図3】プリンターを示す背面から見た斜視図で、搬送経路ユニットを開いた斜視図。
【図4】搬送経路の示す断面図。
【図5】図4の部分拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る記録装置の一例であるプリンターを示す正面から見た斜視図である。図2は、プリンターを示す背面から見た斜視図である。図3は、プリンターを示す背面から見た斜視図で、搬送経路ユニットを開いた斜視図である。図4は、搬送経路の示す断面図である。図5は、図4の示す部分拡大図である。
【0015】
図1に示すように、プリンター1は、プラスチックなどの合成樹脂でなる筐体を成す本体2を備えている。本体2は、正面に、給紙カセット挿入口3と、記録された記録媒体である用紙が排紙される排紙口4が形成されている。給紙カセット挿入口3に給紙カセット5が着脱自在に装着される。本体の2の上面には、記録の入力指示や、記録状態を表示するための操作パネル6が設けられている。
【0016】
図2に示すように、本体2は、背面に、搬送経路ユニットの装着口7が形成されている。この装着口7に、開閉自在の搬送経路ユニット8が装着されている。搬送経路ユニット8の外表面は、取っ手として機能する凹部9が形成されている。搬送経路ユニット8は、本体2の内側と対向する内面に、後述する搬送経路を成す搬送面が形成されている。
【0017】
搬送経路ユニット8は、下部に回転軸31(図4参照)を備え、回動自在に本体2に対して開閉する。
図3は、搬送経路ユニット8を開いた状態を示す。搬送経路ユニット8が開くと、装着口7が開口し、搬送経路を成すプラスチックなどの合成樹脂でなる内周側搬送経路形成部11を露出させることができる。搬送経路ユニット8は、本体2の背面に対して90度回動させる構成にすることで、装着口7の開口をより大きく開口させることができ、内周側搬送経路形成部11を露出量も大きくすることができる。
【0018】
搬送経路ユニット8を開き、装着口7を開口させることで、用紙が詰まった場合に、この装着口7から詰まった用紙を取り除くことができる。
【0019】
図4は、搬送経路を示す概略の断面図である。本体2の高さ方向における給紙カセット挿入口3と排紙口4との間に、本体2に連結され、搬送経路を構成する内周側搬送経路形成部11が配置される。内周側搬送経路形成部11は、下部内周側搬送経路形成部12と、上部内周側搬送経路形成部13とを、上下組み合わせて構成される。
【0020】
下部内周側搬送経路形成部12は、装着された給紙カセット5の分離斜面14側に開口部15が形成されている。この開口部15を介して、揺動可能な給紙ローラー16が突出する。給紙ローラー16は、図示しないモーターによる駆動手段の動力に基づいて、給紙カセット5に載置された用紙の最上位の用紙を給紙する。給紙ローラー16は、給紙カセット5の載置された最後の一枚を給紙できるように、揺動可能である。また、給紙ローラー16は、給紙カセット5を装着口7より着脱する際に、給紙カセット5の移動を阻害しないように、退避する機能を備えている。また、下部内周側搬送経路形成部12は、本体2の正面側に、第1立上り部17が形成されている。下部内周側搬送経路形成部12の本体2の背面側は、搬送経路ユニット8の外周側搬送経路面20に沿って湾曲して立上る、第2立上り部21が形成されている。
【0021】
上部内周側搬送経路形成部13は、上面に記録ヘッド22が所定の隙間を保ち、対向配置される。この記録ヘッドは、用紙の搬送方向に対して幅方向に往復動する記録ヘッドや、用紙の幅方向に渡り延在するライン型記録ヘッドが好ましい。記録ヘッド22に対して搬送方向の上流側、すなわち搬送経路ユニット8側には、搬送ローラー23が配置され、搬送方向の下流側、すなわち排紙口4側には、排紙ローラー24が配置される。搬送ローラー23および排紙ローラー24は、各々1つで構成されているが、上下でニップするように対を成す搬送ローラーおよび排紙ローラーで構成しても良い。その場合は、下側の搬送ローラーおよび排紙ローラーは、上部内周側搬送経路形成部13より露出するように配置するのが好ましい。
【0022】
また、上部内周側搬送経路形成部13は、本体2の正面側に、低い段差で形成された排紙受け面25と、この排紙受け面25の端部より立下り、第1立上り部17に係合する第1立下り部26が形成されている。また、上部内周側搬送経路形成部13の搬送ローラー23より、本体2の背面側は、搬送経路ユニット8の外周側搬送経路面20に沿って湾曲して立下がり、第2立上り部21に係合する第2立下り部27が形成されている。
【0023】
下部内周側搬送経路形成部12と上部内周側搬送経路形成部13が係合することで、内周側搬送経路を成す内周側搬送経路形成部11が形成される。第2立上り部21と第2立下り部27が係合することで、搬送経路ユニット8の外周側搬送経路面20に沿って湾曲した内周側搬送経路が形成される。
【0024】
図5は、下部内周側搬送経路形成部12の第1立上り部17と上部内周側搬送経路形成部13の第1立下り部26とが係合する係合部、および下部内周側搬送経路形成部12の第2立上り部21と上部内周側搬送経路形成部13の第2立下り部27とが係合する係合部を示す。
各係合部の構成は同じなので、1つの図で示している。係合部は、ジグザグ、すなわち鋸の歯のように、三角形状が並び互いに噛合うように係合している。この三角形状の先端は、鋭利でなく、丸味を持たせても良い。
【0025】
この係合部は、第1立上り部17と第1立下り部26との係合部と、第2立上り部21と第2立下り部27との係合部の一方が、三角形状が並び互いに噛合うように係合させてもよい。
【0026】
上記構成により、本体2に装着された給紙カセット5に載置された用紙30は、操作パネル6により記録指示が出されると、駆動部により駆動される給紙ローラー16が最上位の用紙30を給紙し、給紙された用紙は給紙カセット5の分離斜面により、最上位の用紙30のみが搬送経路に給送される。給送された用紙30は、搬送経路ユニット8の外周側搬送経路面20と、下部内周側搬送経路形成部12の第2立上り部21と上部内周側搬送経路形成部13の第2立下り部27で形成された湾曲した搬送経路により、搬送ローラー23に向けて折り返される。用紙30は、搬送ローラー23により、記録ヘッド22に向けて搬送され、記録ヘッド22により文字や画像などのデータが用紙に記録される。そして、用紙30は、排紙ローラー24により排紙受け面25に排出される。
【0027】
用紙30が給紙ローラー16と搬送ローラー23との間で詰まりが生じた場合には、図3に示すように、搬送経路ユニット8を回動させ、装着口7を開口させることで、用紙30を除去することができる。
【0028】
次に、プリンター1の上方から負荷が加えられ、あるいは、プリンター1が落下し衝撃が加えられると、負荷や衝撃は、本体2を介して内周側搬送経路形成部11に伝播する。下部内周側搬送経路形成部12と上部内周側搬送経路形成部13の係合部は、三角形状が並び互いに噛合うように係合されているので、三角形状の係合部、すなわち、幅方向に対して斜めとなる端部により負荷や衝撃は分散されることになる。したがって、部分的に負荷や衝撃が集中して、係合部の一部が破損する、あるいは組みずれを起こすことがない。よって、合成樹脂を含む樹脂などの金属と比較して強度の低い材料で内周側搬送経路形成部11を形成しても、耐久性のある搬送経路構造を実現することができる。
【0029】
なお、下部内周側搬送経路形成部12の第2立上り部21と上部内周側搬送経路形成部13の第2立下り部27が係合部は、用紙の引っかかりを防止するために、段差のないように係合することが好ましい。合成樹脂で形成するために組みずれが発生しやすい場合は、下部内周側搬送経路形成部12の第2立上り部21が上部内周側搬送経路形成部13の第2立下り部27より突き出すように係合させることで、用紙の係合部での引っかかりを防止することができる。また、上部内周側搬送経路形成部13の第2立下り部27が下部内周側搬送経路形成部12の第2立上り部21より突き出すように係合せざるを得ない場合は、用紙は搬送経路ユニット8の外周側搬送経路面20に当接する部分と対向する位置に配置することで、用紙の係合部での引っかかりを防止することができる。
【0030】
下部内周側搬送経路形成部12および上部内周側搬送経路形成部13は、少なくとも一方が、1つの部材で構成されていても、分割されてもよい。また、両者12,13の少なくとも一方が本体2と一体に成形されてもよいし、本体2と分離されたものでもよい。
【0031】
本発明は上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0032】
1 プリンター、2 本体、5 給紙カセット、8 搬送経路ユニット、11 内周側搬送経路形成部、12 下部内周側搬送経路形成部、13 上部内周側搬送経路形成部、14 排出口、15 第1カバー、16 給紙ローラー、17 第1立上り部、20 外周側搬送経路面、21 第2立上り部、22 記録ヘッド、26 第1立下り部、27 第2立下り部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に設けられ、記録媒体の搬送経路の内周を形成する下部搬送経路部と、
前記筐体に設けられ、前記下部搬送経路部に係合し、前記搬送経路の内周を形成する上部搬送経路部と、を備え、
前記下部搬送経路部と前記上部搬送経路部との係合部は、搬送経路の幅方向に対して斜めに形成された端部を有することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記下部搬送経路部と前記上部搬送経路部により、搬送方向を折り返す搬送経路を構成し、折り返す搬送経路に前記係合部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の記録装置。
【請求項3】
前記下部搬送経路部は、前記上部搬送経路部に対して、記録媒体の搬送方向の上流側であることを特徴とする請求項2記載の記録装置。
【請求項4】
前記下部搬送経路部側の係合部分は、前記上部搬送経路部側の係合部分より突き出すように係合していることを特徴とする請求項3記載の記録装置。
【請求項5】
前記折り返す搬送経路に対向し、前記筐体に対して開閉自在で、閉状態のとき前記搬送経路の外周の一部を形成する搬送経路ユニットを備え、
記録媒体が前記搬送経路ユニットの搬送面に当接する部分に前記係合部が対向し、
前記係合部は、前記上部搬送経路部側の係合部分が前記下部搬送経路部側の係合部分より突き出すように係合していることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の記録装置。
【請求項6】
前記係合部は、三角形状に並び互いに噛合うように係合していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−59978(P2013−59978A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201481(P2011−201481)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】