説明

記録装置

【課題】用紙の厚さが増しても給送ローラーが用紙上を滑ってしまわないように、センサーや、カムの回転動作を制御する制御部などを備えなくてはならないので、装置が複雑となったり、大型化するという課題がある。
【解決手段】入力歯車20と、伝達歯車21〜24と、出力歯車25と、用紙を給送する給送ローラー11と、回動するピックアップレバー12と、曲面32が形成された固定カム31と、ピックアップレバー12の回動に伴って、曲面32上を摺動しながら回動し、スライドするスライダー41と、スライダー41のスライドにより、伝達歯車22の回転駆動に対して負荷をかける回転負荷機構40と、を備え、回転負荷機構40は、ピックアップレバー12の回動によって、入力歯車20の回転中心S1と出力歯車25の回転中心S2を結ぶ線方向と給送方向とが交差する角度が小さくなると、負荷を大きくさせる記録装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンターなど記録装置には、積層された用紙の最上位の用紙に回転しながら当接し、記録部側に用紙を一枚ずつ給送する給送ローラーが備えられる。このような記録装置においては、回動するピックアップレバーの回転中心と反対側に、この給送ローラーを備えたものがある。
【0003】
図8(a)は、厚さL1の用紙Pに当接する給送ローラー87を備えた従来の給送装置80の側面を示す模式図である。図8(a)の給送装置80のピックアップレバー88には、歯車81〜86が備えられる。歯車81は、図示しないモーターによって回転方向D1に回転駆動され、歯車82〜85を介して回転駆動力が歯車86に伝達される。
【0004】
給送ローラー87は、歯車86の回転軸89と直結して備えられ、給送ローラー87が、積層された用紙Pの最上部に当接しながら、回転方向D2に回転することにより、最上部にある一枚の用紙Pが、給送方向D3に給送される。
【0005】
ピックアップレバー88は、積層された用紙Pの厚さに応じて、歯車81の回転中心S1を支点として回動する。従って、歯車81の回転中心S1と歯車86の回転軸89の回転中心S2を結ぶ線方向をD4とすると、線方向D4と給送方向D3とが交差する角度は、積層された用紙Pの厚さに応じて変化する。
【0006】
給送ローラー87が用紙Pに当接して給送方向D3に給送しようとすると、給送ローラー87には、給送方向D3と反対方向に搬送反力Fが作用する。図8(a)の給送ローラー87は、搬送反力Fにおける線方向D4に対して垂直方向となる分力F1で用紙Pを押し付ける。
【0007】
図8(a)の給送ローラー87と用紙Pとの当接部Kには、分力F1と給送装置80の自重Wとによって、給送方向D3と直交する方向に給送ローラー87が用紙Pを押す力N1が作用する。
【0008】
図8(b)は、厚さL2の用紙Pに当接する給送ローラー87が備えられた従来の給送装置80の側面を示す模式図である。図8(b)の厚さL2は、図8(a)の厚さL1より厚い。図8(b)の給送ローラー87は、搬送反力Fにおける線方向D4に対して垂直方向となる分力F2で用紙Pを押し付ける。
【0009】
図8(b)の給送ローラー87と用紙Pとの当接部Kには、分力F2と給送装置80の自重Wとによって、給送方向D3と直交する方向に給送ローラー87が用紙Pを押す力N2が作用する。
【0010】
図8(a)の用紙Pの厚さがL1であるとき、線方向D4と給送方向D3とが交差する角度はθ1である。図8(b)の用紙Pの厚さがL2であるとき、線方向D4と給送方向D3とが交差する角度はθ2である。
【0011】
用紙Pの厚さL2が用紙Pの厚さL1より厚くなると、交差する角度θ2は交差する角度θ1より小さくなる。すると、分力F2は、分力F1より小さくなってしまう。そのため、図8(b)の給送方向D3と直交する方向に給送ローラー87が押す力N2は、図8(a)の給送方向D3と直交する方向に給送ローラー87が押す力N1より小さくなるので、給送ローラー87は、用紙P上を滑ってしまい、用紙Pを給送することができない場合がある。
【0012】
そこで、特許文献1では、用紙Pの搬送の有無を検知するセンサーと、バネとカムなどから構成された圧力調整部を備え、用紙の厚みの変化に対応する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−19069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、用紙の厚さが増しても給送ローラーが用紙上を滑ってしまわないように、用紙が給送されたか否かを検知するセンサーや、センサーからの検出結果に基づいてカムの回転動作を制御する制御部などを備えなくてはならないので、装置が複雑となったり、大型化するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0016】
[適用例1]回転駆動力が入力される入力歯車と、前記入力歯車の回転駆動力を順次伝達する偶数個の伝達歯車と、前記伝達歯車から伝達された回転駆動力を出力する出力歯車と、前記出力歯車の回転軸と直結し、記録媒体に当接しながら回転し、前記入力歯車と反対側となる給送方向に前記記録媒体を給送する給送ローラーと、前記入力歯車、前記伝達歯車、前記出力歯車、前記給送ローラーを軸支し、前記入力歯車の回転中心を支点として回動する回動支持部と、前記回転中心に対する位置が固定され、前記回転中心からの距離が変動する曲面が形成された固定カムと、前記曲面に当接して前記回動支持部に備えられ、前記回動支持部の回動に伴って、前記曲面上を摺動しながら回動し、前記入力歯車の前記回転中心と前記出力歯車の回転中心を結ぶ線方向にスライドするスライダーと、前記スライダーの前記線方向へのスライドにより、前記偶数個の伝達歯車の少なくとも一つの前記伝達歯車の回転駆動に対して負荷をかける回転負荷機構と、を備え、前記回転負荷機構は、前記回動支持部の回動によって、前記線方向と前記給送方向とが交差する角度が小さくなると、前記負荷を大きくさせ、前記給送ローラーが前記記録媒体を押す力を増加させることを特徴とする記録装置。
【0017】
本適用例によれば、回転負荷機構は、回動支持部の回動によって、入力歯車の回転中心と出力歯車の回転中心を結ぶ線方向と給送方向とが交差する角度が小さくなると、伝達歯車の回転駆動に対してかける負荷を大きくさせ、給送ローラーが記録媒体を押す力を増加させる。これにより、伝達歯車に負荷がかかったことにより伝達歯車側に伝達されない回転駆動力の分だけ、記録媒体を押す方向に回動支持部を回動させようとするモーメントが増大し、給送ローラーが記録媒体を押す力が増加する。これにより、給送ローラーが記録媒体上を滑って、記録媒体が搬送されなくなってしまうことが抑制される。従って、記録媒体の厚さが増しても給送ローラーが用紙上を滑ってしまわないように、記録媒体が給送されたか否かを検知するセンサーや、センサーからの検出結果に基づいてカムの回転動作を制御する制御部などを備えなくてもよいので、給送装置が複雑となったり、大型化することを抑制できる。
【0018】
[適用例2]回転駆動力が入力される入力歯車と、前記入力歯車の回転駆動力を順次伝達する偶数個の伝達歯車と、前記伝達歯車から伝達された回転駆動力を出力する出力歯車と、前記出力歯車の回転軸と直結し、記録媒体に当接しながら回転し、前記入力歯車と反対側となる給送方向に前記記録媒体を給送する給送ローラーと、前記入力歯車、前記伝達歯車、前記出力歯車、前記給送ローラーを軸支し、前記入力歯車の回転中心を支点として回動する回動支持部と、前記回転中心に対する位置が固定され、前記回転中心からの距離が変動する曲面が形成された固定カムと、前記曲面に当接して前記回動支持部に備えられ、前記回動支持部の回動に伴って、前記曲面上を摺動しながら回動し、前記入力歯車の前記回転中心と前記出力歯車の回転中心を結ぶ線方向にスライドするスライダーと、前記スライダーの前記線方向へのスライドにより、前記偶数個の伝達歯車の少なくとも一つの前記伝達歯車の回転駆動に対して負荷をかける回転負荷機構と、を備え、前記回転負荷機構は、前記回動支持部の回動によって、前記線方向と前記給送方向とが交差する角度が小さくなると、前記負荷を大きくさせ、前記給送ローラーの回転速度を低下させることを特徴とする記録装置。
【0019】
本適用例によれば、回転負荷機構は、回動支持部の回動によって、入力歯車の回転中心と出力歯車の回転中心を結ぶ線方向と給送方向とが交差する角度が小さくなると、負荷を大きくさせ、給送ローラーの回転速度を低下させる。これにより、給送ローラーが記録媒体上を滑って、記録媒体が搬送されなくなってしまうことが抑制される。従って、記録媒体の厚さが増しても給送ローラーが用紙上を滑ってしまわないように、記録媒体が給送されたか否かを検知するセンサーや、センサーからの検出結果に基づいてカムの回転動作を制御する制御部などを備えなくてもよいので、給送装置が複雑となったり、大型化することを抑制できる。
【0020】
[適用例3]回転駆動力が入力される入力歯車と、前記入力歯車の回転駆動力を順次伝達する偶数個の伝達歯車と、前記伝達歯車から伝達された回転駆動力を出力する出力歯車と、前記出力歯車の回転軸と直結し、記録媒体に当接しながら回転し、前記入力歯車と反対側となる給送方向に前記記録媒体を給送する給送ローラーと、前記入力歯車、前記伝達歯車、前記出力歯車、前記給送ローラーを軸支し、前記入力歯車の回転中心を支点として回動する回動支持部と、前記回転中心に対する位置が固定され、前記回転中心からの距離が変動する曲面が形成された固定カムと、前記曲面に当接して前記回動支持部に備えられ、前記回動支持部の回動に伴って、前記曲面上を摺動しながら回動し、前記入力歯車の前記回転中心と前記出力歯車の回転中心を結ぶ線方向にスライドするスライダーと、前記スライダーの前記線方向へのスライドにより、前記偶数個の伝達歯車の少なくとも一つの前記伝達歯車の回転駆動に対して負荷をかける回転負荷機構と、を備え、前記回転負荷機構は、前記回動支持部の回動によって、前記線方向と前記給送方向とが交差する角度が小さくなると、前記負荷を大きくさせ、前記給送ローラーが前記記録媒体を押す力を増加させるとともに、前記給送ローラーの回転速度を低下させることを特徴とする記録装置。
【0021】
本適用例によれば、回転負荷機構は、回動支持部の回動によって、入力歯車の回転中心と出力歯車の回転中心を結ぶ線方向と給送方向とが交差する角度が小さくなると、負荷を大きくさせ、給送ローラーが記録媒体を押す力を増加させるとともに、給送ローラーの回転速度を低下させる。これにより、給送ローラーが記録媒体上を滑って、記録媒体が搬送されなくなってしまうことが抑制される。従って、記録媒体の厚さが増しても給送ローラーが用紙上を滑ってしまわないように、記録媒体が給送されたか否かを検知するセンサーや、センサーからの検出結果に基づいてカムの回転動作を制御する制御部などを備えなくてもよいので、給送装置が複雑となったり、大型化することを抑制できる。
【0022】
[適用例4]前記回転負荷機構は、前記伝達歯車の回転軸の軸方向から前記負荷をかけることを特徴とする上記記録装置。
【0023】
本適用例によれば、伝達歯車の軸方向における側面に負荷をかけることができるので、回転する伝達歯車と当接する面積を増やし、伝達歯車の回転を抑制できる。
【0024】
[適用例5]前記回転負荷機構は、前記伝達歯車の回転軸の軸方向と交差する方向から前記負荷をかけることを特徴とする上記記録装置。
【0025】
本適用例によれば、伝達歯車の回転軸の半径方向において、回転中心から離れた位置で回転軸と当接するので、伝達歯車の回転を抑制しようとするモーメントを増加させ、伝達歯車の回転駆動に対する負荷を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】記録装置の内部構造の概略を示す側断面図。
【図2】給送装置の斜視図。
【図3】給送装置の平面図。
【図4】伝達歯車、回転負荷機構、スライダー、固定カム、軸受け部の斜視図。
【図5】伝達歯車、回転負荷機構、スライダー、固定カム、軸受け部の斜視図。
【図6】給送装置を模式的に示す図。
【図7】実施形態2における給送装置の一部の斜視図。
【図8】従来の給送装置の側面を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
(実施形態1)
図1は、記録装置としてのインクジェット式プリンター(以降は、プリンターという)1の内部構造の概略を示す側断面図である。プリンター1は、給紙カセット7が入口6から挿入されて装着部15に装着されるようになっている。給紙カセット7には、記録媒体としての用紙Pが積載した状態で収容可能である。
【0028】
装着部15の図面右側には、給送ローラー11を含んで構成する給送装置10が備えられる。給送ローラー11は、回転中心S1を支点として回転方向D5,D6に回動する回動支持部としてのピックアップレバー12に軸支される。給送ローラー11は、給紙カセット7に積載された最上位にある用紙Pに回転しながら当接し、用紙Pを給送方向D3に給送する。
【0029】
給紙カセット7の入口6と反対側には、分離斜面13が設けられ、給送ローラー11によって用紙Pが分離斜面13に沿って送り出されるとき、一枚ずつ分離される。
【0030】
分離斜面13によって分離された用紙Pは、回転ドラム14等を介して記録実行部2の搬送方向上流側に位置する搬送用ローラー9に搬送されるように構成されている。
【0031】
記録実行部2は、図1の紙面に垂直な方向に往復移動するキャリッジ4と、キャリッジ4に搭載された記録ヘッド3とを含んで構成される。記録実行部2は、搬送される用紙Pに対して記録ヘッド3からインクを吐出して記録を実行する。記録ヘッド3による記録が実行された用紙Pは、排出用ローラー8によって用紙受け部5上に排出されるようになっている。
【0032】
図2は、給送装置10を図1の給紙カセット7に積載された用紙Pの反対側から見た斜視図である。ピックアップレバー12には、入力歯車20、入力歯車20と噛み合う伝達歯車21、伝達歯車21と噛み合う伝達歯車22、伝達歯車22と噛み合う伝達歯車23、伝達歯車23と噛み合う伝達歯車24、伝達歯車24と噛み合う出力歯車25が軸支される。
【0033】
入力歯車20には、図示しないモーターによって回転方向D1に回転させようとする回転駆動力が入力される。伝達歯車21〜24は、入力歯車20の回転駆動力を出力歯車25に順次伝達する。
【0034】
出力歯車25は、回転中心S2の位置において回転方向D1と反対方向となる回転方向D2に回転駆動される。一対の給送ローラー11は、出力歯車25を挟んで出力歯車25の回転軸16に直結して備えられ、回転方向D2に回転駆動する。
【0035】
回転中心S1、回転中心S2に直交する線Aの線方向をD4とする。ピックアップレバー12には、スライダー41、スライダー42、コイル形状のバネ部材43、ディスク44を含んで構成される回転負荷機構40が備えられる。
【0036】
スライダー41、スライダー42、バネ部材43、ディスク44、伝達歯車22は、伝達歯車22の軸方向D7に並んで備えられる。バネ部材43は、スライダー42とディスク44に挟まれて備えられ、バネ部材43の付勢力によって、伝達歯車22は、ディスク44によって軸方向D7に押圧される。
【0037】
図3は、給送装置10を図1の給紙カセット7に積載された用紙Pの反対側から見た平面図である。図4は、図2のピックアップレバー12が、回転中心S1を支点として回転方向D5側に回動した状態における、伝達歯車22、回転負荷機構40、スライダー41、固定カム31、軸受け部30の斜視図である。
【0038】
図3、図4の軸受け部30は、プリンター1の筐体に固定されて備えられる。軸受け部30には、線方向D4においてスライダー41側に突出する固定カム31が設けられている。
【0039】
スライダー41は、線方向D4においてスライド可能にピックアップレバー12に備えられ、スライダー42は、軸方向D7においてスライド可能にピックアップレバー12に備えられる。
【0040】
スライダー41のスライダー42側の面410と、スライダー42のスライダー41側の面420とは、摺動可能である。面410と面420とは、線方向D4に対して傾斜している。面410,420は、面410,420における位置が軸受け部30に近いほど、伝達歯車22との距離が短くなるように傾斜している。
【0041】
そのため、バネ部材43によって軸方向D7の付勢力がスライダー42に作用していると、スライダー41は、固定カム31の曲面32を線方向D4に押圧する。
【0042】
図4の軸受け部30には、図2の入力歯車20の回転軸17の軸受けを構成する上側内周面33、下側内周面34が形成されている。これにより、軸受け部30は、図2の入力歯車20を回転自在に支持する。
【0043】
また、図4の軸受け部30には、図2のピックアップレバー12の回動軸18の軸受けを構成する上側内周面35、下側内周面36が形成されている。これにより、軸受け部30は、ピックアップレバー12を回動自在に支持する。
【0044】
ピックアップレバー12が、回転中心S1を支点として回転方向D5,D6に回動すると、ピックアップレバー12に備えられたスライダー41は、曲面32を押圧した状態で曲面32上を摺動しながら回転方向D5,D6に回動する。
【0045】
入力歯車20の回転軸17の回転中心S1は、ピックアップレバー12の回動軸18の回転中心S1と同じ位置に設けられる。これにより、ピックアップレバー12が、回転中心S1を支点として回動しピックアップレバー12の回動位置が変動しても、入力歯車20は、回転中心S1を回転中心として回転できるので、入力歯車と噛み合う歯車(不図示)を介して、モーターからの回転駆動力が入力される。
【0046】
図4の固定カム31に形成された曲面32は、曲面32の位置における回転中心S1からの距離L3が変動するように形成されている。曲面32において図1の記録ヘッド3側すなわち図4の図面上側に位置するほど、回転中心S1からの距離L3が長くなるように形成されている。
【0047】
これにより、図2のピックアップレバー12が、回転中心S1を支点として回転方向D5に回動すると、図4のスライダー41が、曲面32上を摺動しながら回転方向D5に回動し、スライダー41は、図2の給送ローラー11側にスライドする。そして、スライダー41は、図3、図4の面410と面420とを摺動させながら、スライダー42を、軸方向D7における伝達歯車22側に押す。
【0048】
そのため、バネ部材43が圧縮され、ディスク44をバネ部材43によって軸方向D7に付勢する力が増加する。これにより、ディスク44が伝達歯車22の側面を軸方向D7に押す力が大きくなり、伝達歯車22の回転方向D1への回転駆動に対してかかる負荷が増加する。
【0049】
図5は、図2のピックアップレバー12が、回転中心S1を支点として回転方向D6側に回動した状態における、伝達歯車22、回転負荷機構40、スライダー41、固定カム31、軸受け部30の斜視図である。
【0050】
図2のピックアップレバー12が、回転中心S1を支点として回転方向D6に回動し、図4の状態にあるスライダー41が、図5に示すように、曲面32上を摺動しながら回転方向D6に回動すると、スライダー41は、図2の給送ローラー11と反対側にスライドする。これにより、スライダー42は、バネ部材43の軸方向D7における付勢力によって、図3、図4の面410と面420とを摺動させながら、軸方向D7における伝達歯車22と反対側に押される。
【0051】
そのため、バネ部材43が弛緩し、ディスク44をバネ部材43によって軸方向D7に付勢する力が減少する。これにより、ディスク44が伝達歯車22の側面を軸方向D7に押す力が小さくなり、伝達歯車22の回転方向D1への回転駆動に対してかかる負荷が減少する。
【0052】
図6は、給送装置10を模式的に示す図である。給送装置10のピックアップレバー12には、偶数個である4個の伝達歯車21〜24が備えられる。これにより、出力歯車25は、入力歯車20の回転方向D1と反対方向である回転方向D2に回転駆動され、用紙Pは、入力歯車20と反対側の給送方向D3に給送される。
【0053】
ピックアップレバー12は、積層された用紙Pの厚さに応じて、回転中心S1を支点として回動する。線方向D4と給送方向D3とが交差する角度は、積層された用紙Pの厚さに応じて変化する。
【0054】
図6は、図8(b)と同じように、厚さL2の用紙Pが積載され、線方向D4と給送方向D3とが交差する角度がθ2である。給送ローラー11には、給送方向D3と反対側に搬送反力Fが作用し、搬送反力Fにおける線方向D4に対して垂直方向となる分力F2は、用紙Pを押す方向に作用する。
【0055】
図2、図3、図4を用いて説明したように、回転負荷機構40は、線方向D4と給送方向D3とが交差する角度が小さくなると、伝達歯車22の回転方向D1の回転駆動力に対してかかる負荷Bを大きくさせる。
【0056】
図6の伝達歯車22に負荷Bがかかると、入力歯車20に入力された回転駆動力Tの一部が、伝達歯車22側に伝達されなくなる。すなわち、回転駆動力Tのうちの回転駆動力T1は、伝達歯車21を介して伝達歯車22を回転させる回転駆動力となり、残りの回転駆動力T2は、ピックアップレバー12を、回転中心S1を支点として回動させるモーメントとなる。
【0057】
ピックアップレバー12を、回転中心S1を支点として回転方向D6に回動させようとするモーメントMは、上述の回転駆動力T2によって生じるモーメント、給送方向D3と反対方向に作用する搬送反力F、給送装置10の自重Wによって生じる。
【0058】
そこで、図6に示すように、線方向D4と給送方向D3とが交差する角度θ2であるときは、回転負荷機構40が、伝達歯車22にかける負荷Bを大きくさせることによって、ピックアップレバー12を回動させようとするモーメントMが増加する。
【0059】
これにより、給送ローラー11が用紙Pに当接する当接部分Kにおいて、給送方向D3と直交する方向に給送ローラー11が押す力N3が増加するので、給送ローラー11が用紙P上を滑ってしまい、用紙Pを給送できなくなることを抑制できる。
【0060】
以上、本実施形態のプリンター1に備えられた給送装置は、図2の回転駆動力が入力される入力歯車20と、入力歯車20の回転駆動力を順次伝達する偶数個である4個の伝達歯車21〜24と、伝達歯車21〜24から伝達された回転駆動力を出力する出力歯車25と、出力歯車25の回転軸16と直結し、記録媒体としての用紙Pに当接しながら回転し、入力歯車20と反対側となる給送方向D3に用紙Pを給送する給送ローラー11と、入力歯車20、伝達歯車21〜24、出力歯車25、給送ローラー11を軸支し、入力歯車20の回転中心S1を支点として回動する回動支持部としてのピックアップレバー12と、回転中心S1に対する位置が固定され、回転中心S1からの距離L3が変動する曲面32が形成された固定カム31と、曲面32に当接してピックアップレバー12に備えられ、ピックアップレバー12の回動に伴って、曲面32上を摺動しながら回動し、入力歯車20の回転中心S1と出力歯車25の回転中心S2を結ぶ線方向D4にスライドするスライダー41と、スライダー41の線方向D4へのスライドにより、伝達歯車22の回転駆動に対して負荷Bをかける回転負荷機構40と、を備える。
【0061】
そして、回転負荷機構40は、ピックアップレバー12の回動によって、線方向D4と給送方向D3とが交差する角度θ2が小さくなると、負荷Bを大きくさせ、給送方向D3と直交する方向に給送ローラー11が押す力N3を増加させる(図6参照)。
【0062】
この構成によれば、図6の伝達歯車22に負荷Bがかかったことにより伝達歯車21〜24側に伝達されない回転駆動力T2の分だけ、回転中心S1を支点として用紙Pを押す方向にピックアップレバー12を回動させようとするモーメントMが増大する。そのため、給送方向D3と直交する方向に給送ローラー11が押す力N3が増加するので、給送ローラー11が用紙P上を滑って、用紙Pが搬送されなくなってしまうことが抑制される。従って、用紙Pの厚さが増しても給送ローラー11が用紙P上を滑ってしまわないように、用紙Pが給送されたか否かを検知するセンサーや、センサーからの検出結果に基づいてカムの回転動作を制御する制御部などを備えなくてもよいので、給送装置が複雑となったり、大型化することを抑制できる。
【0063】
また、回転負荷機構40は、ピックアップレバー12の回動によって、線方向D4と給送方向D3とが交差する角度θ2が小さくなると、伝達歯車22にかける負荷Bを大きくさせ、給送ローラー11の回転速度を低下させてもよい。これにより、給送ローラー11が用紙P上を滑って、用紙Pが搬送されなくなってしまうことが抑制される。
【0064】
また、回転負荷機構40は、ピックアップレバー12の回動によって、線方向D4と給送方向D3とが交差する角度θ2が小さくなると、伝達歯車22にかける負荷Bを大きくさせ、給送方向D3と直交する方向に給送ローラー11が押す力N3を増加させるとともに、給送ローラー11の回転速度を低下させてもよい。これにより、給送ローラー11が用紙P上を滑って、用紙Pが搬送されなくなってしまうことが抑制される。
【0065】
また、本実施形態における回転負荷機構40は、伝達歯車22の回転軸の軸方向D7から負荷Bをかける。
【0066】
これによれば、伝達歯車22の軸方向D7における側面に負荷Bをかけることができるので、回転する伝達歯車22と当接する面積を増やし、伝達歯車22の回転を抑制できる。
【0067】
(実施形態2)
実施形態1では、伝達歯車22の回転軸の軸方向D7から負荷Bをかける回転負荷機構40について説明したが、実施形態2では、伝達歯車の回転軸の軸方向D7と交差する方向から負荷Bをかける回転負荷機構について説明する。
【0068】
図7は、実施形態2における給送装置の一部の斜視図である。軸受け部30の構成は、実施形態1で説明した構成と同じである。また、実施形態2における入力歯車20、伝達歯車21〜24、出力歯車25、給送ローラー11、固定カム31が備えられた軸受け部30の構成は、実施形態1で説明した構成と同じである。
【0069】
回動支持部であるピックアップレバー12aには、軸受け部30、スライダー60、コイル状のバネ部材51、当接部材52、伝達歯車22の回転軸26が線方向D4に並んで備えられる。
【0070】
スライダー60は、バネ部材51の線方向D4の付勢力によって固定カム31の曲面32を押圧した状態で、線方向D4にスライド可能にピックアップレバー12aに備えられる。当接部材52は、バネ部材51の付勢力によって回転軸26を線方向D4に押圧する。
【0071】
このように、本実施形態における回転負荷機構50は、伝達歯車22の回転軸26の軸方向D7と交差する線方向D4から負荷Bをかける。本実施形態における回転負荷機構50は、バネ部材51、当接部材52を含んで構成される。
【0072】
この構成により、伝達歯車22の回転軸26の半径方向において、回転中心から離れた位置で回転軸26の外周面と当接するので、伝達歯車22の回転を抑制しようとするモーメントを増加させ、伝達歯車22の回転駆動に対してかかる負荷Bを大きくすることができる。
【0073】
本実施形態におけるインクジェット式プリンターのその他の構成は、実施形態1で説明したプリンター1の構成と同じである。
【0074】
実施形態1、実施形態2では、伝達歯車22に負荷Bをかけたが、伝達歯車21〜24のうちの少なくとも一つの伝達歯車に負荷Bをかけてもよい。また、実施形態1、実施形態2では、4個の伝達歯車21〜24を備えたが、偶数個の伝達歯車を備え、入力歯車20から出力歯車25に回転駆動力を伝達する構成でもよい。
【0075】
実施形態1、実施形態2では、インクジェット式プリンター1に備えた給送装置10について説明したが、このような給送装置10を、感光体を備え、レーザーなどによって画像を形成する電子写真方式の記録装置に備えてもよい。また、用紙Pに文字や画像を記録する複写機やファクシミリなどの記録装置に備えてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…インクジェット式プリンター、10…給送装置、11…給送ローラー、12,12a…ピックアップレバー、16…回転軸、20…入力歯車、21〜24…伝達歯車、25…出力歯車、26…回転軸、31…固定カム、32…曲面、40…回転負荷機構、41,42…スライダー、43…バネ部材、44…ディスク、50…回転負荷機構、51…バネ部材、52…当接部材、B…負荷、D3…給送方向、D4…線方向、D7…軸方向、L3…距離、N3…給送ローラーが押す力、S1,S2…回転中心、T,T1,T2…回転駆動力、M…モーメント、θ2…交差する角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動力が入力される入力歯車と、
前記入力歯車の回転駆動力を順次伝達する偶数個の伝達歯車と、
前記伝達歯車から伝達された回転駆動力を出力する出力歯車と、
前記出力歯車の回転軸と直結し、記録媒体に当接しながら回転し、前記入力歯車と反対側となる給送方向に前記記録媒体を給送する給送ローラーと、
前記入力歯車、前記伝達歯車、前記出力歯車、前記給送ローラーを軸支し、前記入力歯車の回転中心を支点として回動する回動支持部と、
前記回転中心に対する位置が固定され、前記回転中心からの距離が変動する曲面が形成された固定カムと、
前記曲面に当接して前記回動支持部に備えられ、前記回動支持部の回動に伴って、前記曲面上を摺動しながら回動し、前記入力歯車の前記回転中心と前記出力歯車の回転中心を結ぶ線方向にスライドするスライダーと、
前記スライダーの前記線方向へのスライドにより、前記偶数個の伝達歯車の少なくとも一つの前記伝達歯車の回転駆動に対して負荷をかける回転負荷機構と、を備え、
前記回転負荷機構は、前記回動支持部の回動によって、前記線方向と前記給送方向とが交差する角度が小さくなると、前記負荷を大きくさせ、前記給送ローラーが前記記録媒体を押す力を増加させることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
回転駆動力が入力される入力歯車と、
前記入力歯車の回転駆動力を順次伝達する偶数個の伝達歯車と、
前記伝達歯車から伝達された回転駆動力を出力する出力歯車と、
前記出力歯車の回転軸と直結し、記録媒体に当接しながら回転し、前記入力歯車と反対側となる給送方向に前記記録媒体を給送する給送ローラーと、
前記入力歯車、前記伝達歯車、前記出力歯車、前記給送ローラーを軸支し、前記入力歯車の回転中心を支点として回動する回動支持部と、
前記回転中心に対する位置が固定され、前記回転中心からの距離が変動する曲面が形成された固定カムと、
前記曲面に当接して前記回動支持部に備えられ、前記回動支持部の回動に伴って、前記曲面上を摺動しながら回動し、前記入力歯車の前記回転中心と前記出力歯車の回転中心を結ぶ線方向にスライドするスライダーと、
前記スライダーの前記線方向へのスライドにより、前記偶数個の伝達歯車の少なくとも一つの前記伝達歯車の回転駆動に対して負荷をかける回転負荷機構と、を備え、
前記回転負荷機構は、前記回動支持部の回動によって、前記線方向と前記給送方向とが交差する角度が小さくなると、前記負荷を大きくさせ、前記給送ローラーの回転速度を低下させることを特徴とする記録装置。
【請求項3】
回転駆動力が入力される入力歯車と、
前記入力歯車の回転駆動力を順次伝達する偶数個の伝達歯車と、
前記伝達歯車から伝達された回転駆動力を出力する出力歯車と、
前記出力歯車の回転軸と直結し、記録媒体に当接しながら回転し、前記入力歯車と反対側となる給送方向に前記記録媒体を給送する給送ローラーと、
前記入力歯車、前記伝達歯車、前記出力歯車、前記給送ローラーを軸支し、前記入力歯車の回転中心を支点として回動する回動支持部と、
前記回転中心に対する位置が固定され、前記回転中心からの距離が変動する曲面が形成された固定カムと、
前記曲面に当接して前記回動支持部に備えられ、前記回動支持部の回動に伴って、前記曲面上を摺動しながら回動し、前記入力歯車の前記回転中心と前記出力歯車の回転中心を結ぶ線方向にスライドするスライダーと、
前記スライダーの前記線方向へのスライドにより、前記偶数個の伝達歯車の少なくとも一つの前記伝達歯車の回転駆動に対して負荷をかける回転負荷機構と、を備え、
前記回転負荷機構は、前記回動支持部の回動によって、前記線方向と前記給送方向とが交差する角度が小さくなると、前記負荷を大きくさせ、前記給送ローラーが前記記録媒体を押す力を増加させるとともに、前記給送ローラーの回転速度を低下させることを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の記録装置であって、
前記回転負荷機構は、前記伝達歯車の回転軸の軸方向から前記負荷をかけることを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の記録装置であって、
前記回転負荷機構は、前記伝達歯車の回転軸の軸方向と交差する方向から前記負荷をかけることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−6649(P2013−6649A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139556(P2011−139556)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】