説明

記録装置

【課題】シリアル方式の記録装置においてもメンテナンス部材の寿命を延ばすことができるようにすること。また、光硬化インクを用いた記録装置においては、記録実行中の光照射の影響を受けにくくしてメンテナンス部材の寿命を延ばすことができるようにすること。
【解決手段】記録実行エリア23とメンテナンスエリア24とを移動するキャリッジ17に搭載され、前記記録実行エリアにおいて被記録材Pに液体C1,C2を吐出して記録を実行する記録ヘッド15と、前記メンテナンスエリアに配設され、離間配置された駆動プーリー71と従動プーリー73との間に巻回される一端を180度捻った状態で他端に接続することによって構成されている帯状の無端ベルト53と、前記無端ベルトの第1面と第2面に適宜の間隔を空けて配設されている複数のメンテナンス部材55と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録ヘッドが被記録材の搬送方向と交差する幅方向に往復移動するシリアル方式の記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から被記録材(以下、単に一例の「用紙」という場合もある)の被記録面にインクを吐出して所望の記録を実行するインクジェットプリンター等の記録装置では、記録ヘッドのノズル形成面に付着したインクをワイパーで払拭するワイピング、記録ヘッドのノズル口からインクを吹き飛ばしてノズル口をリフレッシュするフラッシング、キャップで被ってノズル口の乾燥を防いだり、ノズル口への異物の進入を防止するキャッピングといったメンテナンス動作が実行されている。
【0003】
これらのメンテナンス動作は、用紙の被記録面に直接インクを吐出して記録を実行する記録実行エリアとは別に設けられているメンテナンスエリアで多く実行されており、前記ワイピングを行うワインピング部材や前記キャッピングを行うキャッピング部材といったメンテナンス部材は一組のみが設けられていて、これらをメンテナンス動作のその都度、繰り返して使用するようになっている。
【0004】
また、下記の特許文献1では、用紙の被記録面の全幅に亘って記録ヘッドが配設されている、いわゆる「ラインプリンター」に適用したものであるが、チェーンによって構成されている無端状の搬送経路に対して複数のキャッピング部材を配設した構造の記録装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−247363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記メンテナンス動作は、一定品質の記録を実行する上において欠かすことができない。そのため、記録開始時、記録実行中、インクカートリッジ装着時、ヘッドクリーニング時等の各タイミングにおいて実行されている。
前記メンテナンスエリアで、一組のワイピング部材とキャッピング部材を繰り返して使用していた前記従来の構成では、メンテナンス部材(ワイピング部材、キャッピング部材)の使用頻度が高いことから消耗が激しく、当該メンテナンス部材の寿命が短いという問題が指摘されていた。
【0007】
一方、前述した特許文献1のように複数のキャッピング部材を配設し、これらを切り換えて使用すれば、メンテナンス部材(キャッピング部材)の消耗が抑えられて、当該メンテナンス部材の寿命の延びが期待できる。
しかし、特許文献1は前述したようにラインプリンターに適用したものである。その構造は、メンテナンスエリアが記録実行エリアと共通する構造である。即ち、メンテナンスエリアが記録実行エリアとは別に設けられ、且つ記録実行エリアよりもコンパクトに設けられる、いわゆるシリアル方式の記録装置とは基本的構造が相違している。更に、特許文献1においては、複数のメンテナンス部材を高密度で無駄なく配設することを意図する記載は見当たらない。従って、シリアル方式の記録装置においては、該メンテナンス部材の個数を効果的に増やすことができず、当該メンテナンス部材の寿命が依然として短いという問題が残る。
【0008】
本発明の目的は、シリアル方式の記録装置においてもメンテナンス部材の寿命を延ばすことができるようにすることにある。
また、紫外線(UV)硬化インク等の光硬化インクを用いた記録装置においては、記録実行中の光照射の影響を受けにくくしてメンテナンス部材の寿命を延ばすことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために本発明に係る記録装置の第1の態様は、記録実行エリアとメンテナンスエリアとを移動するキャリッジに搭載され、前記記録実行エリアにおいて被記録材に液体を吐出して記録を実行する記録ヘッドと、前記メンテナンスエリアに配設され、離間配置された駆動プーリーと従動プーリーとの間に巻回される一端を180度捻った状態で他端に接続することによって構成されている帯状の無端ベルトと、前記無端ベルトの第1面と第2面に適宜の間隔を空けて配設されている複数のメンテナンス部材と、を備えていることを特徴とするものである。
【0010】
ここで、「一端を180度捻った状態で他端に接続することによって構成されている帯状の無端ベルト」とは、メビウスの輪の構造であることを意味する。従って、当該無端ベルトは表裏両面が一連のものでありその全面を利用することができる。
また、ここで、「無端ベルトの第1面と第2面」とは、当該ベルトの各面を全体としてではなく部分的に見たときにできる表裏両面を区別したものである。
【0011】
本態様によれば、帯状の無端ベルトはメビウスの輪の構造であるため、当該無端ベルトを搬送方向に1回転させると、当初無端ベルトの第1面側、例えばその部位における表面側に位置していたメンテナンス部材は第2面、即ち前記表面側に対する裏面側に位置するようになる。そして、当該無端ベルトを同方向に更に1回転させると、今度は裏面側に位置していた当該メンテナンス部材が再び表面側に位置するようになる。
従って、メビウスの輪の無端ベルトは、メビウスの輪になっていない通常の無端ベルトの2倍の長さ、即ち通常の無端ベルトの表面側の長さに裏面側の長さを加えた長さを一連に利用してメンテナンス部材を複数配設することが可能である。これにより、複数のメンテナンス部材を高密度で無駄なく配設することができ、以ってシリアル方式の記録装置に対してもメンテナンス部材の寿命を延ばすことが可能になる。
【0012】
本発明に係る記録装置の第2の態様は、前記第1の態様に係る記録装置において、前記記録ヘッドから吐出される液体は、光照射部から照射される光に反応して硬化する光硬化インクであり、前記無端ベルトの回動を制御する制御部を備え、前記無端ベルトは、隣り合うメンテナンス部材の間隔が他より大きい非配設部位を備え、前記制御部は、前記光照射部から光が照射されている記録実行時には、前記非配設部位が前記記録ヘッドと対向する領域に位置し、前記メンテナンス部材は前記記録ヘッドと対向する領域から退避した待避位置に位置するように当該無端ベルトの回動を制御するように構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
ここで、本明細書中で使用する「光」とは、一般に短波長側が360nm〜400nm、長波長側が760nm〜830nmとされている可視光、該可視光よりも波長の短い1nm〜380nm程度の紫外線、該可視光よりも波長の長い780nm〜1mm程度の赤外線を含む範囲に加えて、更に、前記紫外線よりも波長の短い電磁波や前記赤外線よりも波長の長い電磁波を含んだ広汎な意味で使用する。
従って、「光硬化インク」といった場合には、一般に光の範囲とされている可視光、紫外線、赤外線の範囲に加えて、これらの範囲外に属する短波長ないし長波長の電磁波に反応して、硬化する種々のインクを意味するものとする。
【0014】
本態様によれば、前記制御部は、前記光照射部から光が照射されている記録実行時には、前記非配設部位が前記記録ヘッドと対向する領域に位置し、前記メンテナンス部材は前記記録ヘッドと対向する領域から退避した待避位置に位置するように当該無端ベルトの回動を制御する。従って、記録実行時に光照射部から照射される光の一部がメンテナンスエリア側に漏れても、その光は無端ベルトのメンテナンス部材が設けられていない非配設部位に当たり、退避位置に位置するメンテナンス部材には当たりにくい。
これにより、メンテナンス部材に付着している光硬化インクに前記漏れ光が作用することによって、当該インクがメンテナンス部材に硬化定着する事態が未然に防止される。従って、良好なメンテナンス動作の実行状態が維持されるようになり、以って記録品質の安定性維持が図られる。
【0015】
本発明に係る記録装置の第3の態様は、前記第2の態様に係る記録装置において、前記制御部は、前記各メンテナンス部材の消耗情報が送られ、該消耗情報と前記各メンテナンス部材の位置情報に基づいて、各メンテナンス部材によるメンテナンス動作と使用するメンテナンス部材の選定を制御するように構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
メンテナンス動作を繰り返すことで、複数のメンテナンス部材の内のいずれかのメンテナンス部材の消耗が他の物よりも進行して使用困難となるが他の物は使用可能である状態が起こり得る。
本態様によれば、送られるメンテナンス部材の消耗情報に基づいて使用するメンテナンス部材を消耗の少ない使用可能なメンテナンス部材だけに絞ることができる。従って、メンテナンス性能を一定以上に維持することができる。
また、前記消耗情報と位置情報に基づいて、使用するメンテナンス部材の切り換えは勿論、使用する順番及び使用回数の管理、変更を行うことが可能である。
【0017】
本発明に係る記録装置の第4の態様は、前記第3の態様に係る記録装置において、前記制御部は、複数設けられているメンテナンス部材のすべてを前記無端ベルトの搬送方向に従って順番に使用してメンテナンス動作を実行し、前記消耗情報が送信されたとき、消耗が進んだメンテナンス部材の使用を停止して残りのメンテナンス部材でメンテナンス動作を実行するように構成されていることを特徴とするものである。
【0018】
本態様によれば、複数のメンテナンス部材を順番に使用することによって、各メンテナンス部材の消耗速度を遅くしてメンテナンス部材の寿命を延ばすことが可能になる。また、いずれかのメンテナンス部材の消耗が他の物よりも多く進んでいるときには、当該消耗の進んだメンテナンス部材の使用を停止して残りのメンテナンス部材によってメンテナンス動作を実行することでメンテナンス性能を一定以上に維持することができる。
【0019】
本発明に係る記録装置の第5の態様は、前記第3の態様に係る記録装置において、前記制御部は、複数設けられているメンテナンス部材の一部を使用してメンテナンス動作を実行し、前記消耗情報が送信されたとき、消耗が進んだメンテナンス部材の使用を停止して、他のメンテナンス部材に切り換えてメンテナンス動作を実行するように構成されていることを特徴とするものである。
【0020】
本態様によれば、第4の態様とほぼ同様の効果が得られる。即ち、全体としてのメンテナンス部材の消耗を少なくしてメンテナンス部材の寿命を延ばすことが可能になる。また、使用を続けたメンテナンス部材の消耗が多く進んだときは、当該消耗の進んだメンテナンス部材の使用を停止して他のメンテナンス部材に変えてメンテナンス動作を実行することでメンテナンス性能を一定以上に維持することができる。
【0021】
本発明に係る記録装置の第6の態様は、前記第2の態様又は第3の態様に係る記録装置において、前記メンテナンス部材は、前記記録ヘッドのノズル形成面を払拭する複数のワイパーと、記録非実行時に前記ノズル形成面を隔離する一つ又は複数のキャップとを備え、前記制御部は、前記ワイパーによる払拭動作実行時には、二個以上のワイパーを使用するように、又は一個のワイパーの使用状態から二個以上のワイパーの使用状態への変更が可能に構成されていることを特徴とするものである。
【0022】
メンテナンス動作の内、ワイパーによるワイピングは1回よりも2回以上の複数回行った方が効果的である。
本態様によれば、前記ワイパーによる払拭動作実行時には、二個以上のワイパーを使用して複数回のワイピングを実行するように構成されているので、高いワイピング性能でワイピングを実行することができる。
【0023】
また、経時的にワイパーが磨耗し、当初は1個のワイパーによる1回のワイピングで足りていたが、次第にそれだけではワイピングが足りなくなることが起こり得る。
本態様によれば、一個のワイパーの使用状態から二個以上のワイパーの使用状態への変更が可能に構成されているので、経時的な変化に対応してワイピング性能を維持することができる。
【0024】
本発明に係る記録装置の第7の態様は、前記第2の態様から第6の態様のいずれか一つの態様に係る記録装置において、前記制御部は、前記キャリッジが記録実行エリアからメンテナンスエリアに移る際に前記光照射部をOFF状態にするように構成されていることを特徴とするものである。
【0025】
本態様によれば、キャリッジが記録実行エリアからメンテナンスエリアに移る際には、前記光照射部をOFF状態にするので、メンテナンス部材に付着しているインクの硬化定着を防止することができる。
また、キャリッジがメンテナンスエリアに向けての移動を開始した時には、それに合わせて無端ベルトを駆動してメンテナンス部材をメンテナンスポジションに移動させることで速やかにメンテナンス動作を実行できるようになる。
【0026】
本発明に係る記録装置の第8の態様は、前記第1の態様から第7の態様のいずれか一つの態様に係る記録装置において、前記無端ベルトによって構成される前記メンテナンス部材の搬送経路の途中には、メンテナンス部材によって捕捉されたインクを回収するインク受けと、インクが付着したメンテナンス部材をクリーニングするクリーナーの少なくとも一方が設けられていることを特徴とするものである。
【0027】
本態様によれば、メンテナンス部材によって捕捉されたインクを回収するインク受けと、インクが付着したメンテナンス部材をクリーニングするクリーナーの少なくとも一方が設けられている。従って、メンテナンス部材におけるインク溜まりの発生を防止でき、メンテナンス部材に付着したインクに起因するメンテナンス性能の低下を未然に防止して、安定したメンテナンス性能を発揮し得るようになる。
また、前記メンテナンス性能の安定によって記録装置の記録品質の安定性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る記録装置の一実施例の内部構造の概略構成を示す要部正面図。
【図2】本発明に係る記録装置の一実施例の内部構造の概略構成を示す要部平面図。
【図3】本発明に係る記録装置の一実施例のメンテナンス部材とその搬送経路に設けられる諸部材を示す斜視図。
【図4】同上、メンテナンス部材のキャップがキャッピング位置に位置し、キャッピング動作の実行途中の状態を示す正面図。
【図5】同上、図4中のA−A線断面図(A)とB−B線断面図(B)。
【図6】同上、メンテナンス部材のワイパーがワイピング位置に位置し、ワイピング動作を実行している状態を示す正面図。
【図7】同上、メンテナンス部材が待避位置に位置し、非配設部位が前記記録ヘッドと対向する領域に位置する状態を示す正面図であるが、本図は相互の位置関係の説明を解り易くするために、このときは記録実行エリアに位置することになる記録ヘッドをメンテナンスエリアに残して記載してある。
【図8】同上、メンテナンス部材の移動の様子を段階的(A)〜(E)に示す斜視図。
【図9】本発明に係る記録装置の実施例で、無端ベルトの表面と裏面に対するメンテナンス部材の異なる配設態様(A)〜(C)を示す正面図。
【図10】本発明に係る記録装置の一実施例の連続運転モード実行時の動作の流れを示すフローチャート。
【図11】本発明に係る記録装置の一実施例の個別運転モード実行時の動作の流れを示すフローチャート。
【図12】本発明に係る記録装置の一実施例のワイピング動作を複数回実施モードで実行する場合の動作の流れを示すフローチャート。
【図13】本発明に係る記録装置の一実施例のキャリッジの位置に対応した動作の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図1〜図13に示す実施例に基いて、本発明の記録装置1の構成と、該記録装置1の作動態様について具体的に説明する。
尚、以下の説明では、最初に図1、図2に基づいて本発明に係る記録装置1の基本的構成について説明し、次いで本発明の特徴的構成について図示の実施例を例にとって順番に説明する。
【0030】
図示の記録装置1は、一例としてバンド送り印刷が可能で、キャリッジ17が用紙Pの搬送方向Aと交差する幅方向Bに往復移動するシリアル方式のインクジェットプリンター1(「記録装置」と同じ符号を使用する)である。
【0031】
そして、このインクジェットプリンター1には、用紙Pを搬送方向Aに所定のバンド送り量Dずつ間欠的に搬送し得る搬送機構3(図2)と、前記幅方向Bに並ぶノズル列5をノズル形成面6(図1)に有し、該ノズル列5を形成している複数のノズル口7から吐出される光硬化インクの一例である紫外線(UV)硬化インクC1、C2によって用紙Pの被記録面9に所望の記録を実行して下地11ないし画像13を形成する記録ヘッド15と、が設けられている。
尚、「記録ヘッド15」は、後述するように二種類存在するが、その種類の区別を要しないときは単に算用数字「15」のみが付され、その種類を区別する場合は前記算用数字に異なるアルファベットが付されて「15A」「15B」のようにして区別される。この区別の仕方は、他の構成部材についても適宜適用される。
【0032】
更に、このインクジェットプリンター1は、前記記録ヘッド15を搭載して一例として幅方向Bに並ぶ記録実行エリア23とメンテナンスエリア24との間を往復移動するキャリッジ17と、前記記録ヘッド15の走査方向の側傍に並設されるように前記キャリッジ17に対して搭載され、前記各ノズル口7から吐出されたUV硬化インクC1、C2に光の一例である紫外線(UV光)Eを照射させて該UV硬化インクC1、C2を硬化させる発光素子の一例である複数の発光ダイオード(以下、「LED」ともいう)41によって形成される発光素子列39によって構成されている光照射部19と、を備えている。
【0033】
図1、図2に示すように、搬送機構3は、実際に記録が実行される搬送方向Aの領域である記録実行領域33の上流位置に設けられる一対のニップローラーによって構成されている搬送用ローラー25と、前記記録実行領域33の下流位置に設けられる同じく一対のニップローラーによって構成されている排出用ローラー27と、を備えることによって一例として構成されている。
そして、前記搬送用ローラー25と排出用ローラー27を駆動するモーター29には、後述する制御部21から前記バンド送り量Dの搬送を指令する信号31が送信されて用紙Pが前記バンド送り量Dずつ間欠的に送られるように構成されている。
【0034】
記録ヘッド15は、下地用のインクC1を吐出する第1の記録ヘッド15Aと、画像形成用インクC2を吐出する第2の記録ヘッド15Bの二種類が設けられている。本実施例では、図1、図2中の左方に第1の記録ヘッド15Aが配設されていて、図1、図2中の右方に第2の記録ヘッド15Bが配設されている。
尚、このうち第1の記録ヘッド15Aには、例えばホワイト(W)、ゴールド(G)、シルバー(S)等の下地用インクC1を吐出するノズル列5Wが設けられている。また、第2の記録ヘッド15Bには、一例としてシアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色の画像形成用インクC2を個別に吐出する4つのノズル列5C、5M、5Y、5Kが幅方向Bに所定の間隔を隔てて並設されている。
【0035】
そして、これらの各ノズル列5W、5C、5M、5Y、5Kには、後述する制御部21から各ノズル口7の位置に対応したインク吐出量及び吐出タイミングを指令する信号31が送信されてインク吐出量の調整が図られている。
また、図示のインクジェットプリンター1では、前記ノズル列5W、5C、5M、5Y、5Kの各ノズル口7から吐出されるインクC1、C2が前述したようにUV光Eの照射を受けて、硬化するUV硬化インクによって構成されている。
【0036】
「UV硬化インク」は、UV光Eを照射することによって硬化、定着する速硬性に優れたインクで、ヒーター加熱によって溶媒を蒸発させることによって硬化、定着する顔料インクに比べて硬化後の体積収縮率が格段に小さいという特長を有している。
また、「UV硬化インク」は、溶剤成分を含んでいないため環境に優しく、UV光Eを照射することによって瞬時に硬化するためインク吸収性の低いフィルム系の被記録材Pに好適なインクである。
【0037】
キャリッジ17は、幅方向Bに延びるキャリッジガイド軸37に沿って、実際に記録が実行される幅方向Bの範囲である記録実行エリア23と、そのホームポジション側の側傍に一例として設けられているメンテナンスエリア24と、の間を往復移動する前記記録ヘッド15と光照射部19の往復搬送機構である。
前記キャリッジ17を往復移動するための動力は、正逆転可能で単位ステップ毎の精密な送り制御が可能な図示しないモーターから受けており、該モーターの回転が図示しない歯付きベルトを介して前記キャリッジ17に伝達されるようになっている。
【0038】
また、前記キャリッジ17の位置は、該キャリッジ17の搬送経路に沿うように配置されたリニアエンコーダーや前記キャリッジ17の駆動用のモーターの回転角度を検出するロータリーエンコーダー等によって一例として構成される第1検出部51(図示は簡略化されている)によって位置検出される。
【0039】
光照射部19は、前記下地用インクC1を硬化させる前記第1の記録ヘッド15Aの図1、図2中、一例として左側傍に配置されている第1光照射部19Aと、前記画像形成用インクC2を硬化させる前記第2の記録ヘッド15Bの図1、図2中、一例として右側傍に配置されている第2光照射部19Bの二種類が設けられている。
そして、図示のインクジェットプリンター1では、前記二種類の光照射部19A、19Bが用紙Pの被記録面9に吐出された前記UV硬化インクC1、C2に所定の照射量のUV光Eを照射させることでUV硬化インクC1、C2の硬化、定着を実行している。
【0040】
また、前記二種類の光照射部19A、19Bは、前記二種類の記録ヘッド15A、15Bにおける各ノズル列5Wと5C、5M、5Y、5Kのノズル口7の配列に対応した配列の複数のLED41を備えた発光素子列39によって構成されている。
そして、これらの各LED41には、後述する制御部21から各LED41の位置に対応したUV光Eの照射量や照射の有無を指令する信号31が送信されてUV光Eの照射量の調整と照射の有無の切り換えとが行われている。
【0041】
更に、図示のインクジェットプリンター1には、本発明に係る帯状の無端ベルト53が前記メンテナンスエリア24に配設されている。該無端ベルト53に対して適宜の間隔を空けて一例として四組のメンテナンス部材55A〜55Dが配設されている。本実施例では、メンテナンス部材55A〜55Dは、四組のワイピング装置59A〜59Dとキャッピング装置61A〜61Dで構成されている。
そして、前記無端ベルト53によって形成される搬送経路79の適宜の位置に前述した第1検出部51と同様、リニアエンコーダーやロータリーエンコーダー等によって一例として構成されている第2検出部57(図示は簡略化されている)が設けられている。該第2検出部57によって前記メンテナンス部材55A〜55Dの位置が検出される。
【0042】
また、図示のインクジェットプリンター1は、各メンテナンス部材55A〜55Dの消耗状態に関する情報69を制御部21に送るための消耗情報送信部63を備えている。該消耗情報送信部63は、各メンテナンス部材55A〜55Dの経時的な消耗の進行をユーザーが目視により確認してその情報を入力して制御部21に送る構造が挙げられる。
【0043】
前記制御部21は、前記各メンテナンス部材55A〜55Dの消耗情報69が送られ、該消耗情報69と前記各メンテナンス部材55A〜55Dの位置情報67に基づいて、各メンテナンス部材55A〜55Dによるメンテナンス動作と使用するメンテナンス部材55A〜55Dの選定を制御するように構成されている。
これにより、制御部21は、送られるメンテナンス部材55A〜55Dの消耗情報69に基づいて使用するメンテナンス部材55A〜55Dを消耗の少ない使用可能なメンテナンス部材55A〜55Dだけに絞ることができる。また、当該制御部21は、前記消耗情報69と位置情報67に基づいて、使用するメンテナンス部材55A〜55Dの切り換えは勿論、メンテナンス部材55A〜55Dの使用する順番及び使用回数の管理、変更を行うことが可能である。
【0044】
また、前記制御部21は、前記第1位置検出部51によって検出されたキャリッジ17の位置情報65が送られるようになっており、前記キャリッジ17が記録実行エリア23からメンテナンスエリア24に移る際に前記光照射部19A、19BをOFF状態にするように構成されている。
このようにキャリッジ17が記録実行エリア23からメンテナンスエリア24に移る際には、前記光照射部19A、19BをOFF状態にするので、メンテナンス部材55A〜55Dに付着しているインクの硬化定着を防止することができる。
また、キャリッジ17がメンテナンスエリア24に向けての移動を開始した時には、それに合わせて無端ベルト53を駆動してメンテナンス部材55A〜55Dをメンテナンスポジションに移動させることで速やかにメンテナンス動作を実行できるようになる。
【0045】
[実施例1](図1〜図13参照)
本実施例では、離間配置された駆動プーリー71と従動プーリー73との間に、一端を180度ひねった状態で他端に接続することによって構成されている帯状の無端ベルト53が巻回されている。
図3、図5(A)(B)に示すように、前記駆動プーリー71と従動プーリー73は、プーリー軸72の両端にフランジ部74、74を設けたボビン状のプーリーが一例として採用でき、前記両端のフランジ部74、74とプーリー軸72と、無端ベルト53とによって区画された空間が無端ベルト53に配設されたメンテナンス部材55との干渉を防ぐ逃げ部97になっている。
【0046】
このような無端ベルト53の形状は、メビウスの輪と呼ばれているが、本実施例では、記録ヘッド15のノズル形成面6と対向する側である図4〜図6中の上側に、該ノズル形成面6と平行な平担経路75が形成され、前記ノズル形成面6から離間する側である図4〜図6中の下側に、180度捻られた捻り経路77が位置するように搬送経路79が形成されている。
【0047】
また、図示は省略するが、前記捻り経路77での無端ベルト53の円滑な捩り変形を容易にするためのガイドプーリーやガイドローラーあるいはガイドロッド等を設けることも可能である。
また、前記無端ベルト53の第1面(表面)53aと第2面(裏面)53bには、適宜の間隔Sを空けて一例として四組のメンテナンス部材55A〜55Dと、これらのメンテナンス部材55が一定範囲に亘って設けられていない非配設部位81(図8(E))とが配設されている。
【0048】
具体的には、本実施例の無端ベルト53によれば、無端ベルト53が搬送経路79上を1周回転すると、当初記録ヘッド15のノズル形成面6と対向する表面側に位置していたメンテナンス部材55は、無端ベルト53を挟んで前記ノズル形成面6と反対の裏面側に位置するようになる。
更に無端ベルト53が搬送経路79上をもう1周回転し、合計2周回転すると、前記メンテナンス部材55は再び無端ベルト53の表面側に位置し、元に戻る。
【0049】
従って、無端ベルト53を2周回転させたときの搬送経路79の経路長さの範囲、即ち、無端ベルト53の第1面53aの長さに第2面53bの長さを加えた長さの範囲で前記四組のメンテナンス部材55A〜55Dと、非配設部位81とを割り当てることができるようになっており、限られた狭いメンテナンスエリア24に効率良く複数組のメンテナンス部材55を配設できるように構成されている。
【0050】
そして、本実施例では、前記無端ベルト53の第1面53aの長さに第2面53bの長さを加えた長さの範囲を同一の間隔Sで5つに区画して、それぞれの区画に無端ベルト53の搬送方向Fに沿って図8(A)〜(E)に示すように、第1メンテナンス部材55A、第2メンテナンス部材55B、第3メンテナンス部材55C、第4メンテナンス部材55D、非配設部位81の順で配設されている。
【0051】
尚、無端ベルト53の材質は、柔軟な捩り変形が可能な帯状の合成ゴムや軟質の合成樹脂材料等が一例として適用できる。該無端ベルト53の幅寸法Wは、記録ヘッド15のノズル形成面6の大きさに対応した所定の幅寸法に設定されている。
【0052】
前記各区画に設けられるメンテナンス部材55は、本実施例ではワイピング装置59とキャッピング装置61とを備えている。そして、無端ベルト53の搬送方向Fの上流側(図4〜図6中の右方)にワイピング装置59、無端ベルト53の搬送方向Fの下流側(図4〜6中の左方)にキャッピング装置61がそれぞれ位置するように配設されている。
【0053】
このうち、ワイピング装置59は、無端ベルト53の幅方向に延びる弾性変形可能な矩形平板状のワイパー60によって構成されている。そして、該ワイパー60の高さは、前記平担経路75に移動した時に前記記録ヘッド15のノズル形成面6に当接できる高さに設定されている。
また、該ワイパー60の材質としては、弾性変形が可能な合成ゴムや合成樹脂材料等が一例として適用可能である。
【0054】
一方、キャッピング装置61は、前記記録ヘッド15のノズル形成面6を覆うことができる大きさの矩形枠状のキャップ62によって構成されている。そして、該キャップ62の材質としては、圧縮変形が可能な合成ゴムや合成樹脂材料等が一例として適用可能である。
前記ワイパー60及びキャップ62は、本実施例では、無端ベルト53と同素材で一体成形により作られているが、ワイパー60とキャップ62を別体で作り、無端ベルト53に接着或いは締結固定したものでもよい。
【0055】
前記ワイピング装置59を構成するワイパー60は、前記記録ヘッド15のノズル形成面6を払拭して該ノズル形成面6に付着したインクCをかき取って取り除くという役割を有している。前記キャッピング装置61を構成するキャップ62は、記録非実行時に前記ノズル形成面6を外部と隔離してノズル口7の乾燥や内部への異物の進入を防止する等の役割を有している。
【0056】
また、前記記録ヘッド15がメンテナンスエリア24に位置している状態における記録ヘッド15の下方位置には、前記無端ベルト53を挟んで上下機構83が配設されている。該上下機構83は、キャッピング位置に到達したキャップ62を無端ベルト53と共に上方に押し上げて、前記キャップ62を前記記録ヘッド15のノズル形成面6に押し当てて覆う役割をする機構である。
そして、前記上下機構83を動作させない状態では、前記ノズル形成面6とキャップ62との間に僅かな間隙が形成されて、両者は非接触状態になっている。
【0057】
尚、前記メンテナンス部材55A〜55Dに対応して各組のワイピング装置59及びキャッピング装置61を区別する場合には、無端ベルト53の搬送方向Fに沿って図8(A)〜(E)に示すように、第1ワイピング装置59A及び第1キャッピング装置61A(図8(A))、第2ワイピング装置59B及び第2キャッピング装置61B(図8(B))、第3ワイピング装置59C及び第3キャッピング装置61C(図8(C))、第4ワイピング装置59D及び第4キャッピング装置61D(図8(D))としてこれらを識別する。
【0058】
図9(A)〜(C)は、前記メンテナンス部材55における無端ベルト53の第1面53aである表面と第2面53bである裏面に対する異なる配設態様を説明する正面図である。図9(A)は表面側のメンテナンス部材55と裏面側のメンテナンス部材55が完全にオーバーラップしない配設態様である。図9(B)は表面側のメンテナンス部材55と裏面側のメンテナンス部材55の一部がオーバーラップする配設態様である。図9(C)はこれらが完全にオーバーラップする配設態様である。これらは、要求仕様に基いて適宜選定される。
【0059】
また、前記非配設部位81は、前記光照射部19からUV光Eが照射されている記録実行時の状態において、前記メンテナンス部材55を前記光照射部19からの光Eの照射を受ける平担経路75から当該光Eの照射を受けない捻り経路77側の待避位置に移動させるために設けられている構成である(図7、図8(E))。尚、図7は各部材の相互の位置関係の説明を解り易くするために、記録実行時には記録実行エリアに位置することになる記録ヘッドをメンテナンスエリアに残して記載してある。
【0060】
この他、前記無端ベルト53によって構成される前記メンテナンス部材55A〜55Dの搬送経路79の途中には、メンテナンス部材55A〜55Dによって捕捉されたインクC1,C2を回収するインク受け85と、インクC1,C2が付着したメンテナンス部材55A〜55Dをクリーニングするクリーナー87が適宜の位置に配設されている。
【0061】
前記インク受け85としては、前記キャップ62の凹部62aに溜まったインクC1,C2を受け止めるトレイ状の容器が一例として採用できる。前記クリーナー87としては、前記ワイパー60の先端部に当接する洗浄液を含んだ吸液スポンジ等が一例として採用可能である。
【0062】
また、前記消耗情報送信部63としては、各組のメンテナンス部材55A〜55Dを個別に選択して記録が実行できる後述する個別運転モード91等を利用して、各組のメンテナンス部材55A〜55Dを順番に選択してテストパターンを印刷することで各組のメンテナンス部材55A〜55Dの消耗状態を確認し、その消耗情報を入力する構造が可能である。
【0063】
或いは、前記消耗情報送信部63は、インクジェットプリンター1の上面を覆っている図示しないカバーを拡開し、記録ヘッド15を記録実行エリア23に移動させた状態で、図示しないテストボタンを押して、各組のメンテナンス部材55A〜55Dをメンテナンスエリアに順番に移動させて目視によって各組のメンテナンス部材55A〜55Dの消耗状態を確認して、その消耗情報を入力する構造が可能である。
この他、後述する個別運転モード91を採用する場合には、予め設定しておいたメンテナンス部材55の耐久時間ないし使用回数が所定の時間ないし回数に達した時に当該メンテナンス部材55が消耗したと自動的に判断する消耗情報送信部63を採用することも可能である。
【0064】
次に、図10〜図13に示すフローチャートに従って、(1)連続運転モード実行時の動作の流れと、(2)個別運転モード実行時の動作の流れと、(3)ワイピング動作を複数回繰り返すときの動作の流れと、(4)キャリッジの位置に対応した動作の流れと、を順番に説明する。
【0065】
(1)連続運転モード実行時の動作の流れ(図10参照)
ユーザーが連続運転モード89を選択した場合には、制御部21は、四組のメンテナンス部材55A〜55Dのすべてを前記無端ベルト53の搬送方向Fに従って順番に使用してメンテナンス動作を実行する。
そして、前記消耗情報送信部63によってメンテナンス部材55の消耗情報69が送信されたとき、当該消耗が確認されたメンテナンス部材55の使用を停止するように制御部21は動作制御を実行する。
【0066】
例えば、第1メンテナンス部材55Aから順番に使用する場合には、無端ベルト53を駆動して図10中のステップS1において第1メンテナンス部材55Aをメンテナンスポジションに移動させる。
次に、ステップS2に移行して第1メンテナンス部材55Aを使用してメンテナンス動作を実行し、ステップS3で第1メンテナンス部材55Aに消耗があるか否かの判断が行われる。
【0067】
ステップS3で第1メンテナンス部材55Aが消耗していると判断された場合には、ステップS4に移行して第1メンテナンス部材55Aの使用を停止する。
次に、ステップS5に移行して次のメンテナンス動作を実行するか否かの判断が行われ、次のメンテナンス動作を実行すると判断された場合には、ステップS1に戻り、第2メンテナンス部材55Bをメンテナンスエリアに移動させて、ステップS2で第2メンテナンス部材55Bを使用してメンテナンス動作を実行する。
【0068】
尚、順次、第3メンテナンス部材55C、第4メンテナンス55Dを使用したメンテナンス動作が実行され、次のサイクルでは、ステップS3においてメンテナンス部材55に消耗があると判断されたメンテナンス部材55Aを除いた残りのメンテナンス部材55を使用してメンテナンス動作が実行される。
また、前記ステップS3でメンテナンス部材55に消耗がないと判断された場合には、ステップS6に移行し、当該メンテナンス部材55を使用してメンテナンス動作を実行する。
【0069】
次にステップS7に移行して次のメンテナンス動作を実行するか否かの判断が行われ、次のメンテナンス動作を実行すると判断された場合には、ステップS1に戻り、前記ステップS1〜S7の処理が繰り返される。
また、前記ステップS5及びステップS7において、次のメンテナンス動作を実行しないと判断された時には、以上述べた連続運転モード89によるメンテナンス動作は終了する。
【0070】
(2)個別運転モード実行時の動作の流れ(図11参照)
ユーザーが個別運転モード91を選択した場合には、制御部21は、四組設けられているメンテナンス部材55A〜55Dの一部を使用してメンテナンス動作を実行する。
そして、前記消耗情報送信部段63によって当該メンテナンス部材55の消耗情報69が送信された時、当該消耗が確認されたメンテナンス部材55の使用を停止して、消耗していない他のメンテナンス部材55に切り換えてメンテナンス動作を実行するように制御部21は動作制御を実行する。
【0071】
例えば、第1メンテナンス部材55Aから順番に一組ずつ使用するように選択した場合には、無端ベルト53を駆動して図11中のステップS11において選択した第1メンテナンス部材55Aをメンテナンスポジションに移動させる。
次に、ステップS12に移行して第1メンテナンス部材55Aを使用してメンテナンス動作を実行し、ステップS13で第1メンテナンス部材55Aに消耗があるか否かの判断が行われる。
【0072】
ステップS13で第1メンテナンス部材55Aが消耗していると判断された場合には、ステップS14に移行して他のメンテナンス部材55である第2メンテナンス部材55Bに切り換えて次からのメンテナンス動作を実行する状態にする。
次に、ステップS15に移行して次のメンテナンス動作を実行するか否かの判断が行われ、次のメンテナンス動作を実行すると判断された場合には、ステップS11に戻り、第2メンテナンス部材55Bをメンテナンスポジションに移動させて、ステップS12で第2メンテナンス部材55Bを使用してメンテナンス動作を実行する。
【0073】
尚、前記第2メンテナンス部材55Bを使用したメンテナンス動作は、ステップS13で第2メンテナンス部材55Bに消耗があると判断されるまで続く。第2メンテナンス部材55Bに消耗があると判断された場合には、ステップS14で第3メンテナンス部材55Cに切り換えられ、同様にステップS13で第3メンテナンス部材55Cに消耗があると判断された場合には、ステップS14で第4メンテナンス部材55Dに切り換えられる。
【0074】
また、前記ステップS13でメンテナンス部材55に消耗がないと判断された場合には、ステップS16に移行し、当該メンテナンス部材55を使用してメンテナンス動作を実行する。
次に、ステップS17に移行して次のメンテナンス動作を実行するか否かの判断が行われ、次のメンテナンス動作を実行すると判断された場合には、ステップS11に戻り、前記ステップS11〜S17の処理が繰り返される。
また、前記ステップS15及びステップS17において、次のメンテナンス動作を実行しないと判断された時には、以上述べた個別運転モード91によるメンテナンス動作は終了する。
【0075】
(3)ワイピング動作を複数回繰り返すときの動作の流れ(図12参照)
例えばキャッピング装置61のキャップ62によるキャッピング動作実行時には後述する組別独立運転モード93を実行し、ワイピング装置59のワイパー60によるワイピング動作実行時には後述する組間ジャンプモード95を実行するように設定されている場合には、制御部21は、前記キャップ62によるキャッピング動作実行時には各組のキャッピング装置61A〜61Dをそれぞれ単独で使用する。
一方、前記ワイパー60によるワイピング動作実行時には、四組のワイピング装置59A〜59Dを連続的に複数組を跨って複数回に亘って使用するように制御部21は動作制御を実行する。
【0076】
例えば、ワイピング装置59が2つの組を跨って連続的に2回使用してワイピング動作を実行するように構成されている場合には、図12中のステップS21で実行するメンテナンス動作がキャッピングか否かの判断が行われ、キャッピングと判断された場合には、ステップS22に移行して組別独立運転モード93でキャッピングが実行される。
ここで、組別独立運転モード93とは、当該回のメンテナンス動作を実行する時、キャッピング装置61A〜61Dの内の一つだけを使用してメンテナンス動作を実行するモードである。
【0077】
次に、ステップS23に移行して次のメンテナンス動作を実行するか否かの判断が行われ、次のメンテナンス動作を実行すると判断された時には、ステップS21に戻ってステップS21〜S23の処理が繰り返される。
また、前記ステップS21で実行するメンテナンス動作がキャッピングでないと判断された場合には、ワイピングと判断され、ステップS24で組間ジャンプモード95でワイピングが実行される。
ここで、組間ジャンプモード95とは、当該回のメンテナンス動作を実行する時、ワイピング装置59A〜59Dの組を跨いで、複数の組の各ワイパー60を使用して複数回のワイピング動作を繰り返して実行するモードである。
【0078】
従って、本実施例ではワイピングの実行に際して二組のワイピング装置(例えば59A、59B)を使用して2回に亘ってワイピングを実行する。
次に、ステップS25に移行して次のメンテナンス動作を実行するか否かの判断が行われ、次のメンテナンス動作を実行すると判断された場合には、ステップS21に戻ってステップS21〜S24の処理が繰り返される。
また、前記ステップS23及びステップS25において、次のメンテナンス動作を実行しないと判断された時には、以上述べたワイピング動作を複数回繰り返すメンテナンス動作は終了する。
【0079】
(4)キャリッジの位置に対応した動作の流れ(図13参照)
前記第1位置検出部51によってキャリッジ17がメンテナンスエリアに位置している、あるいはメンテナンスエリアに向けて移動を開始したと検出された場合には、制御部21はON状態の前記光照射部19をOFF状態に切り換えるように動作制御を実行する。
具体的には、図13中のステップS31でキャリッジ17が記録実行エリア23に位置しているか否かの判断が行われ、記録実行エリア23にキャリッジ17が位置していると判断された時には、ステップS32に移行して無端ベルト53が駆動し、無端ベルト53の非配設部位81をメンテナンスエリアに移動させる(図8(E))。
【0080】
次に、ステップS33に移行して、記録を実行するか否かの判断が行われ、記録を実行しない場合には、後述するステップS36に移行する。
また、ステップS33で記録を実行すると判断された場合には、ステップS34に移行して光照射部19をON状態にして記録を実行する。
次に、ステップS35に移行して記録の実行が終了したか否かの判断が行われ、記録の実行が終了したと判断された場合には、記録実行動作が終了し、光照射部19をOFF状態にしてキャリッジ17をメンテナンスエリアに向けて移動させる。
【0081】
更に、前記ステップS31〜S36の処理をステップS31でキャリッジ17が記録実行エリア23に位置していないと判断されるまで継続し、ステップS31でキャリッジ17が記録実行エリア23に位置していないと判断されたときには、キャリッジ17がメンテナンスエリア24ないし記録実行エリア23とメンテナンスエリア24の中間の移行エリアに位置していると判断してステップS37に移行する。
ステップS37では光照射部19がON状態か否かの判断が行われ、OFF状態であると判断された場合には、後述するステップS39に移行する。一方、光照射部19がON状態であると判断された場合には、ステップS38に移行して光照射部19をOFF状態に切り換える。
【0082】
次にステップS39に移行し、メンテナンス動作を実行するか否かの判断が行われ、メンテナンス動作を実行しないと判断されたときには、メンテナンス動作を終了し、メンテナンス動作を実行すると判断したときには、該当する図10〜図12の各モードでのメンテナンス動作が実行される。
そして、このようにして構成される本実施例によれば、複数組のメンテナンス部材55A〜55Dを効率良く配設してシリアル方式のインクジェットプリンター1に対してもメンテナンス部材55の寿命を延ばすことが可能になる。
【0083】
[他の実施例]
本発明に係る記録装置1は、以上述べたような構成を有することを基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。
例えば、メンテナンス部材55の組数は、前記実施例のような四組に限らず、二組、三組であってもよいし、五組以上設けても構わない。また、1つの組にキャッピング装置61とワイピング装置59を1つずつ設ける他、1つの組にキャッピング装置61を1つとワイピング装置59を複数配設して、ワイパー60によるインクCのかき取りが連続して複数回実行されるようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 インクジェットプリンター(記録装置)、3 搬送機構、5 ノズル列、
6 ノズル形成面、7 ノズル口、9 被記録面、11 下地、13 画像、
15 記録ヘッド、17 キャリッジ、19 光照射部、21 制御部、
23 記録実行エリア、24 メンテナンスエリア、25 搬送用ローラー、
27 排出用ローラー、29 モーター、 31 信号、33 記録実行領域、
37 キャリッジガイド軸、39 発光素子列、
41 発光ダイオード(LED)(発光素子)、47 バンド、51 第1検出部、
53 無端ベルト、53a 第1面、53b 第2面、55 メンテナンス部材、
57 第2検出部、59 ワイピング装置、60 ワイパー、
61 キャッピング装置、62 キャップ 、62a 凹部、63 確認手段、
65 位置情報、67 位置情報、69 消耗情報、71 駆動プーリー、
72 プーリー軸、73 従動プーリー、 74 フランジ部、75 平担経路、
77 捻り経路、79 搬送経路、81 非配設部位、83 上下機構、
85 インク受け、87 クリーナー、89 連続運転モード、
91 個別運転モード、93 組別独立運転モード、95 組間ジャンプモード、
97 逃げ部、P 用紙(被記録材)、A 搬送方向、B 幅方向、
C 紫外線(UV)硬化インク(光硬化インク)、D バンド送り量、
E 紫外線(UV光)(光)、S 間隔、 W 幅寸法、F 搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録実行エリアとメンテナンスエリアとを移動するキャリッジに搭載され、前記記録実行エリアにおいて被記録材に液体を吐出して記録を実行する記録ヘッドと、
前記メンテナンスエリアに配設され、離間配置された駆動プーリーと従動プーリーとの間に巻回される一端を180度ひねった状態で他端に接続することによって構成されている帯状の無端ベルトと、
前記無端ベルトの第1面と第2面に適宜の間隔を空けて配設されている複数のメンテナンス部材と、を備えていることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載された記録装置において、
前記記録ヘッドから吐出される液体は、光照射部から照射される光に反応して硬化する光硬化インクであり、
前記無端ベルトの回動を制御する制御部を備え、
前記無端ベルトは、隣り合うメンテナンス部材の間隔が他より大きい非配設部位を備え、
前記制御部は、前記光照射部から光が照射されている記録実行時には、前記非配設部位が前記記録ヘッドと対向する領域に位置し、前記メンテナンス部材は前記記録ヘッドと対向する領域から退避した待避位置に位置するように当該無端ベルトの回動を制御するように構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載された記録装置において、
前記制御部は、前記各メンテナンス部材の消耗情報が送られ、該消耗情報と前記各メンテナンス部材の位置情報に基づいて、各メンテナンス部材によるメンテナンス動作と使用するメンテナンス部材の選定を制御するように構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載された記録装置において、
前記制御部は、複数設けられているメンテナンス部材のすべてを前記無端ベルトの搬送方向に従って順番に使用してメンテナンス動作を実行し、前記消耗情報が送信されたとき、消耗が進んだメンテナンス部材の使用を停止して残りのメンテナンス部材でメンテナンス動作を実行するように構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項3に記載された記録装置において、
前記制御部は、複数設けられているメンテナンス部材の一部を使用してメンテナンス動作を実行し、前記消耗情報が送信されたとき、消耗が進んだメンテナンス部材の使用を停止して、他のメンテナンス部材に切り換えてメンテナンス動作を実行するように構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項2又は3に記載された記録装置において、
前記メンテナンス部材は、前記記録ヘッドのノズル形成面を払拭する複数のワイパーと、記録非実行時に前記ノズル形成面を隔離する一つ又は複数のキャップとを備え、
前記制御部は、前記ワイパーによる払拭動作実行時には、二個以上のワイパーを使用するように、又は一個のワイパーの使用状態から二個以上のワイパーの使用状態への変更が可能に構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項2から請求項6のいずれか一項に記載された記録装置において、
前記制御部は、前記キャリッジが記録実行エリアからメンテナンスエリアに移る際に前記光照射部をOFF状態にするように構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載された記録装置において、
前記無端ベルトによって構成される前記メンテナンス部材の搬送経路の途中には、メンテナンス部材によって捕捉されたインクを回収するインク受けと、インクが付着したメンテナンス部材をクリーニングするクリーナーの少なくとも一方が設けられていることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−889(P2013−889A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130638(P2011−130638)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】