説明

設備保全支援装置

【課題】水処理設備の安全性を確保しつつ水処理設備の保全作業に必要な費用を削減すること。
【解決手段】設備優先度算出部7aが、機場評価データベース4内に記憶されている機場評価データ及び設備評価データベース5内に記憶されている設備評価データに基づいて、複数の機場間における保全作業を実行する上での設備の優先度を算出し、設備選定部7bが、設備優先度算出部7aによって算出された優先度に従って保全作業を実行する設備を選択し、機器選定部7cが、設備選定部7bによって選択された設備に設けられている機器の機器評価データを機器評価データベース6から読み出し、読み出された機器評価データに基づいて、保全作業を行うべき機器を選択し、保全順位・方式決定部7dが、機器選定部7cによって選択された機器について、保全作業を実行する優先順位及び方式を決定、出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理設備の保全作業を支援する設備保全支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理設備の保全作業は、安心で安全な社会を実現する上で必要不可欠な作業である。このため、従来より、水処理設備に設けられたポンプ等の機器単体の状態を監視し、監視結果に基づいて機器単位で実行すべき保全作業の内容を決定することが行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−294911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の保全作業では、複数の水処理設備について重要度を評価せずに、設備又は機器単位での重要度評価から実行すべき保全作業の内容を決定していた。このため、従来の保全作業によれば、設備や機器単体のみの重要度を考慮した場合には優先度が低い保全作業が行われることによって、保全作業が過剰になることがあった。このような背景から、設備の安全性を確保しつつ設備の保全作業に必要な費用を削減可能な技術の提供が期待されていた。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、水処理設備の安全性を確保しつつ水処理設備の保全作業に必要な費用を削減可能な設備保全支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る設備保全支援装置は、水処理設備が設けられている複数の機場について、保全作業を実行する上での該機場の優先度を機場評価データとして記憶する機場評価データベースと、各機場に設けられている水処理設備について、該水処理設備の重要度及び健全度のデータを設備評価データとして記憶する設備評価データベースと、各水処理設備に設けられている機器の重要度及び健全度のデータを機器評価データとして記憶する機器評価データベースと、前記機場評価データベース内に記憶されている機場評価データ及び前記設備評価データベース内に記憶されている設備評価データに基づいて、複数の機場間における保全作業を実行する上での水処理設備の優先度を算出する設備優先度算出部と、前記設備優先度算出部によって算出された優先度に従って保全作業を実行する水処理設備を選択する設備選定部と、前記設備選定部によって選択された水処理設備に設けられている機器の機器評価データを前記機器評価データベースから読み出し、読み出された機器評価データに基づいて、保全作業を行うべき機器を選択する機器選定部と、前記機器選定部によって選択された機器について、保全作業を実行する優先順位を決定、出力する決定部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る設備保全支援装置によれば、水処理設備の安全性を確保しつつ水処理設備の保全作業に必要な費用を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である設備保全支援システムの処理対象となる水処理システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態である設備保全支援システムの構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、機場健全度評価表の一例を示す図である。
【図4】図4は、機場評価データベースに格納される機場評価データの一例を示す図である。
【図5】図5は、設備重要度評価表及び設備健全度評価表の一例を示す図である。
【図6】図6は、設備評価データベースに格納される設備評価データの一例を示す図である。
【図7】図7は、機器重要度評価表及び機器健全度評価表の一例を示す図である。
【図8】図8は、機器評価データベースに格納される機器評価データの一例を示す図である。
【図9】図9は、本発明の一実施形態である設備保全支援処理の流れを示すフローチャートである。
【図10】図10は、複数の機場間における設備の優先度を算出する方法の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である設備保全支援システムの構成及び動作について説明する。
【0010】
〔水処理システムの構成〕
始めに、図1を参照して、本発明の一実施形態である設備保全支援システムの処理対象となる水処理システムの構成について説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態である設備保全支援システムの処理対象となる水処理システムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、本発明の一実施形態である設備保全支援システムの処理対象となる水処理システムは、水処理に関する複数の機場A〜Cを有し、各機場には複数の設備が設けられている。各設備には、各設備で行われる処理に関する機器が設けられている。設備としては、最初沈殿池設備,最終沈殿池設備,多段ターボブロワ等を例示でき、設備が曝気槽設備である場合、機器としては、電動機,送風機本体,制御盤等を例示することができる。
【0012】
〔設備保全支援システムの構成〕
次に、図2乃至図8を参照して、本発明の一実施形態である設備保全支援システムの構成について説明する。図2は、本発明の一実施形態である設備保全支援システムの構成を示すブロック図である。図3は、機場健全度評価表の一例を示す図である。図4は、機場評価データベースに格納される機場評価データの一例を示す図である。図5は、設備重要度評価表及び設備健全度評価表の一例を示す図である。図6は、設備評価データベースに格納される設備評価データの一例を示す図である。図7は、機器重要度評価表及び機器健全度評価表の一例を示す図である。図8は、機器評価データベースに格納される機器評価データの一例を示す図である。
【0013】
図2に示すように、本発明の一実施形態である設備保全支援システム1は、入力装置2,出力装置3,機場評価データベース4,設備評価データベース5,機器評価データベース6,及び設備保全支援装置7を備える。入力装置2は、キーボード,マウスポインタ,テンキー等の入力装置によって構成され、オペレータの操作入力情報を設備保全支援装置7に入力する。出力装置3は、表示装置や印刷装置等の出力装置によって構成され、設備保全支援装置7の各種処理情報を出力する。機場評価データベース4,設備評価データベース5,及び機器評価データベース6は、設備保全支援装置7が読取/書換可能な状態で各種データを記憶する。なお、これらのデータベースを1つのデータベースに統合してもよい。
【0014】
機場評価データベース4は、各機場について定められた保全作業を行う優先順位を決定するためのデータを機場評価データとして記憶する。具体的には、各機場には予め図3に示す機場健全度評価表に基づいて優先度のランクが付与されており、機場評価データベース4には、図4に示すように各機場に付与された固有の識別情報(機場ID)とその機場に付与された優先度のランクの情報とが関連付けされたデータが機場評価データとして記憶されている。
【0015】
なお、評価対象の機場がどの優先度のランクに対応するかは、オペレータが、機場の主要設備老朽化率,主要設備余裕率(平均処理量/最大処理能力),主要設備稼働率,処理量,設置環境(例えば設置場所が大都市であるか否か等),敷地条件(例えば施設の増設の余地があるか否か等),他設備からの影響度(例えば電力供給が停止すると直ちに機能低下するか否か等),設備保全の信頼性(故障頻度),保全費用,予備機の有無,機能低下した場合の他機場への影響度等の項目に基づいて総合的に決定する。またこの際、オペレータは、各項目の評価点に適当な重み係数を乗算することにより評価対象の機場がどの優先度のランクに対応するかを決定してもよい。
【0016】
設備評価データベース5は、各設備の重要度及び健全度のデータを設備評価データとして記憶する。具体的には、各設備には予め図5(a),(b)に示す重要度評価表及び健全度評価表に基づいて重要度及び健全度のランクが付与されており、設備評価データベース5には、図6に示すように各設備に付与された固有の識別情報(設備ID)とその設備に付与された重要度及び健全度のランクの情報とが関連付けされたデータが設備評価データとして記憶されている。
【0017】
なお、評価対象の設備がどの重要度のランクに対応するかは、オペレータが、設備が故障した場合の影響度(例えば被害や品質低下の度合い等),配置されている施設の重要度,稼働率,負荷率,設備保全の信頼性,設備保全に要する労力,予備設備の有無,保全費用等の項目に基づいて総合的に決定する。また、評価対象の設備がどの健全度のランクに対応するかは、オペレータが、設備の供用年数、重要度、健全度、及び更新効果等の項目に基づいて総合的に決定する。またこの際、オペレータは、各項目の評価点に適当な重み係数を乗算することによって評価対象の設備がどの重要度及び健全度のランクに対応するかを決定してもよい。
【0018】
機器評価データベース6は、各機器の重要度及び健全度のデータを機器評価データとして記憶する。具体的には、各機器には予め図7(a),(b)に示す重要度評価表及び健全度評価表に基づいて重要度及び健全度のランクが付与されており、機器評価データベース5には、図8に示すように各機器に付与された固有の識別情報(機器ID)とその機器に付与された重要度及び健全度のランクの情報とが関連付けされたデータが機器評価データとして記憶されている。
【0019】
なお、評価対象の機器がどの重要度のランクに対応するかは、オペレータが、修理が可能な機器であるか否か,故障した場合の影響度,劣化状況,劣化検知の容易度,機器保全の信頼性,機器保全に要する労力,保全費用,障害復旧に要する時間,年度価格等の項目に基づいて総合的に決定する。また、評価対象の機器がどの健全度のランクに対応するかは、オペレータが、機器の設置環境,保全履歴,機器保全に要する労力,故障頻度,運転状態,劣化度等の項目に基づいて総合的に決定する。また、オペレータは、各項目に適当な重み付け係数を乗算することによって評価対象の機器がどの重要度及び健全度のランクに対応するかを決定してもよい。
【0020】
設備保全支援装置7は、ワークステーションやパーソナルコンピュータ等の汎用の情報処理装置によって構成され、設備保全支援システム1全体の動作を制御する。具体的には、設備保全支援装置7は、内部のCPU等の演算処理装置が制御プログラムを実行することによって、設備優先度算出部7a,設備選定部7b,機器選定部7c,及び保全順位・方式決定部7dとして機能する。これら各部の機能については後述する。
【0021】
〔設備保全支援処理〕
このような構成を有する設備保全支援システム1では、設備保全支援装置7が以下に示す設備保全支援処理を実行することによって、設備の保全作業の作業計画を作成する。以下、図9に示すフローチャートを参照して、この設備保全支援処理を実行する際の設備保全支援装置7の動作について説明する。
【0022】
図9は、本発明の一実施形態である設備保全支援処理の流れを示すフローチャートである。図9に示すフローチャートは、オペレータが入力装置2を操作することによって、保全作業の作業計画の作成を指示したタイミングで開始となり、設備保全支援処理はステップS1の処理に進む。
【0023】
ステップS1の処理では、設備優先度算出部7aが、設備評価データベース5内に格納されている設備評価データに基づいて、各機場内における設備の優先度を算出する。具体的には、設備優先度算出部7aは、以下に示す数式(1)に設備の重要度及び健全度に対応する値と供用年数及び更新効果に対応する値とを代入することによって、各機場内における設備の優先度を算出する。なお、供用年数に対応する値とは、法定耐用年数に対する設備の供用年数の比に応じて決められた値であり、設備評価データベース5内に予め格納されている。また、更新効果に対応する値とは、設備を更新することによる維持管理性、省スペース、省エネルギー、及び環境負荷の面での効果を評価した値であり、設備評価データベース5内に予め格納されている。これにより、ステップS1の処理は完了し、設備保全支援処理はステップS2の処理に進む。
【0024】
【数1】

【0025】
ステップS2の処理では、設備優先度算出部7aが、機場評価データベース4内に格納されている機場評価データとステップS1の処理結果に基づいて、複数の機場間における設備の優先度を算出する。具体的には、設備優先度算出部7aは、以下に示す数式(2)に設備が属する機場の優先度(機場優先度)及びステップS1の処理によって算出された機場内における設備の優先度(設備優先度(機場内))に対応する値を代入することによって、複数の機場間における設備の優先度を算出する。なお、数式中のパラメータα,βは和が1となる任意の係数である。これにより、ステップS2の処理は完了し、設備保全支援処理はステップS3の処理に進む。
【0026】
【数2】

【0027】
ステップS3の処理では、設備選定部7bが、ステップS2の処理によって算出された優先度の高い順に設備を選択する。そして、機器選定部7cが、設備選定部7bによって選択された設備内に設置されている機器に関する機器評価データを機器評価データベース6から読み出し、読み出された機器評価データに基づいて保全作業を行うべき機器のリストを作成する。これにより、ステップS3の処理は完了し、設備保全支援処理はステップS4の処理に進む。
【0028】
ステップS4の処理では、保全順位・方式決定部7dが、ステップS3の処理によって選択された機器について、保全作業を行うべき機器の優先順位及び保全方式を決定し、決定した情報を出力装置3に出力する。保全作業を行うべき機器の優先順位は、例えば上述した数式(1)を用いて機器の重要度及び健全度から算出するとよい。以後、サービスマンは、出力装置3に出力された情報に従って保全作業を実施し、保全作業の完了後、必要に応じて機場評価データベース4,設備評価データベース5,及び機器評価データベース6内のデータを更新する。これにより、ステップS4の処理は完了し、一連の設備保全支援処理は終了する。
【0029】
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態である設備保全支援処理によれば、設備優先度算出部7aが、機場評価データベース4内に記憶されている機場評価データ及び設備評価データベース5内に記憶されている設備評価データに基づいて、複数の機場間における保全作業を実行する上での設備の優先度を算出し、設備選定部7bが、設備優先度算出部7aによって算出された優先度に従って保全作業を実行する設備を選択し、機器選定部7cが、設備選定部7bによって選択された設備に設けられている機器の機器評価データを機器評価データベース6から読み出し、読み出された機器評価データに基づいて、保全作業を行うべき機器を選択し、保全順位・方式決定部7dが、機器選定部7cによって選択された機器について、保全作業を実行する優先順位及び方式を決定、出力するので、水処理設備の安全性を確保しつつ水処理設備の保全作業に必要な費用を削減することができる。
【0030】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。例えば、本実施形態では数式(2)を用いて複数の機場間における設備の優先度を算出したが、機場及び各機場における設備の優先度に従って図10に示すようなマップMの各枠に設備をマッピングし、設備がマッピングされた枠に予め付与されている優先度(図中の枠内の数字)を複数の機場間における設備の優先度としてもよい。このように、本実施形態に基づいて当業者などによりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術などは全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
1 設備保全支援システム
2 入力装置
3 出力装置
4 機場評価データベース
5 設備評価データベース
6 機器評価データベース
7 設備保全支援装置
7a 設備優先度算出部
7b 設備選定部
7c 機器選定部
7d 保全順位・方式決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理設備が設けられている複数の機場について、保全作業を実行する上での該機場の優先度を機場評価データとして記憶する機場評価データベースと、
各機場に設けられている水処理設備について、該水処理設備の重要度及び健全度のデータを設備評価データとして記憶する設備評価データベースと、
各水処理設備に設けられている機器の重要度及び健全度のデータを機器評価データとして記憶する機器評価データベースと、
前記機場評価データベース内に記憶されている機場評価データ及び前記設備評価データベース内に記憶されている設備評価データに基づいて、複数の機場間における保全作業を実行する上での水処理設備の優先度を算出する設備優先度算出部と、
前記設備優先度算出部によって算出された優先度に従って保全作業を実行する水処理設備を選択する設備選定部と、
前記設備選定部によって選択された水処理設備に設けられている機器の機器評価データを前記機器評価データベースから読み出し、読み出された機器評価データに基づいて、保全作業を行うべき機器を選択する機器選定部と、
前記機器選定部によって選択された機器について、保全作業を実行する優先順位を決定、出力する決定部と、
を備えることを特徴とする設備保全支援装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記機器選定部によって選択された機器について、保全作業の方式を決定、出力することを特徴とする請求項1に記載の設備保全支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−208930(P2012−208930A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−56741(P2012−56741)
【出願日】平成24年3月14日(2012.3.14)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】