説明

設備機器の保守管理システム

【課題】GPSが有効に機能しなくなっても作業者の現在の位置を容易に把握することができる設備機器の保守管理システムの提供。
【解決手段】昇降機K1〜K4の保守作業を行う作業者ME1〜ME3が巡回中に携帯し、作業者ME1〜ME3の位置を知らせるGPSを有する携帯端末G1〜G3と、昇降機K1〜K4の位置P1〜P4を登録すると共に、作業者ME1が昇降機K1〜K4の保守作業に要する時間を示す実績作業時間を登録する登録手段と、携帯端末G1のGPSによって作業者ME1の現在の位置が取得されなかったとき、携帯端末G1のGPSによって取得された作業者ME1の過去の位置、登録手段によって登録された昇降機K1〜K4の位置P1〜P4、及び実績作業時間に基づいて作業者ME1の現在の位置を推定する現在位置推定手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備機器の保守作業を行う作業者の現在の位置を管理する設備機器の保守管理システムに係り、特に故障が発生した設備機器を復旧させるのに好適な設備機器の保守管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、各建物に設置された昇降機等の設備機器は管理業者によって保守管理されており、管理業者は、顧客の設備機器に故障が発生すると、保守作業を行うために各建物間を巡回している作業者に連絡をとり、連絡を受けた作業者は作業現場へ向かって故障が発生した設備機器の復旧作業を行う。このとき、管理業者は、当該設備機器の復旧作業に迅速に取り掛かるために作業現場の最寄にいる作業者に連絡を取ることが望ましく、巡回中の作業者の現在の位置、すなわち顧客の建物の設備機器のうち作業者が現在どの設備機器の保守作業を行っているかどうかを把握する必要がある。
【0003】
そこで、管理者が作業者の現在の位置を把握する従来技術の1つとして、コンピュータ、このコンピュータの演算制御の結果を表示する表示部、グローバル・ポジショニング・システム、すなわちGPS、及び通信装置で構成される携帯用保守情報装置を用い、この携帯用保守情報装置に、GPSの信号を受信しこれをコンピュータ及び通信装置を介して所定部署へ送信する現位置送信手段を設けた異常状態処理支援装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この従来技術の異常状態処理支援装置では、作業者が携帯する携帯用保守情報装置のGPSによって受信した作業者の位置データを携帯用保守情報装置のコンピュータで処理し、処理したデータを現位置送信手段で所定部署、例えば作業者を管理する管理者のPC等のコンピュータへ送信することにより、管理者が作業者の現在の位置をコンピュータの画面上に表示して管理することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−105774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した特許文献1に開示された従来技術の異常状態処理支援装置では、作業者が例えば地下街、山間部、及び建物内部等のGPS衛星からの信号を受信し難い場所、すなわち携帯用保守情報装置のGPSが有効に機能しない場所にいる場合には、携帯用保守情報装置のGPSによって作業者の位置データを取得できず、位置データが管理者のコンピュータへ送信されなかったり、あるいは位置データが送信されても作業者の正確な位置がコンピュータの画面上に表示され難くなる。従って、GPSによる位置の測定における精度が低下するので、管理者が作業者の現在の位置を正確に把握できない虞がある。このように、GPSによって作業者の現在の位置が取得されなければ、設備機器の故障復旧等の早急な対応が望まれる保守作業に迅速に対処することができず、良質なサービスを顧客に提供できないことが懸念されている。
【0007】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、GPSが有効に機能しなくなっても作業者の現在の位置を容易に把握することができる設備機器の保守管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の設備機器の保守管理システムは、複数の位置にそれぞれ設けられた複数の設備機器と、これらの設備機器の保守作業を行う作業者が巡回中に携帯する携帯端末とを備え、この携帯端末は、前記作業者の位置を知らせるGPSを有し、前記作業者の位置を前記複数の設備機器の位置の中から前記GPSによって取得して管理する設備機器の保守管理システムにおいて、前記各設備機器の位置を登録すると共に、前記作業者が前記各設備機器の保守作業に要する時間を示す実績作業時間を登録する登録手段と、前記GPSによって前記作業者の現在の位置が取得されなかったとき、前記GPSによって取得された前記作業者の過去の位置、前記登録手段によって登録された前記各設備機器の位置、及び前記実績作業時間に基づいて前記作業者の現在の位置を推定する現在位置推定手段とを備えたことを特徴としている。
【0009】
このように構成した本発明は、各設備機器の保守作業を行う作業者の現在の位置を携帯端末のGPSで取得しており、作業者が携帯端末のGPSが有効に機能しない場所に移動して作業者の現在の位置が取得されなくなった場合には、現在位置推定手段が、取得した作業者の過去の位置、登録手段によって登録された各設備機器の位置、及び実績作業時間に基づいて作業者の現在の位置を推定することにより、各設備機器の保守作業を管理する管理者が推定された作業者の現在の位置を確認することができる。従って、GPSが有効に機能しなくなっても作業者の現在の位置を容易に把握することができる。これにより、顧客の要望に応じて、管理者が巡回中の作業者の中から設備機器の保守作業を担当するのに適した作業者を選定して現場へ向かわせることができるので、設備機器の故障復旧等の早急な対応が望まれる保守作業にも迅速に対処することができる。
【0010】
また、本発明に係る設備機器の保守管理システムは、前記発明において、前記現在位置推定手段は、前記GPSによって前記作業者の過去の位置が取得されてから経過した経過時間と、前記各設備機器のうち前記作業者の過去の位置として取得された設備機器の前記実績作業時間とを比較し、前記経過時間が当該実績作業時間を超えていないとき、前記取得された設備機器の位置を前記作業者の現在の位置に推定し、前記経過時間が当該実績作業時間を超えているとき、前記各設備機器の位置のうち前記取得された設備機器の後に予定されている設備機器の位置を前記作業者の現在の位置に推定することを特徴としている。
【0011】
このように構成した本発明は、GPSによって作業者の過去の位置が取得されてから経過した経過時間が各設備機器のうち作業者の過去の位置として取得された設備機器の実績作業時間を超えていないときには、作業者が当該設備機器の保守作業を行っており、保守作業がまだ完了していないので、作業者は当該設備機器の位置にいることが推定される。一方、GPSによって作業者の過去の位置が取得されてから経過した経過時間が各設備機器のうち作業者の過去の位置として取得された設備機器の実績作業時間を超えているときには、当該設備機器の保守作業は既に完了しており、作業者はこの設備機器の後に予定されている設備機器の保守作業を行っているので、当該設備機器の位置が作業者の現在の位置に推定される。従って、現在位置推定手段は、GPSによって作業者の過去の位置が取得されてから経過した経過時間が各設備機器のうち作業者の過去の位置として取得された実績作業時間を超えているかどうかを判断することにより、作業者の現在の位置を精度良く推定することができる。
【0012】
また、本発明に係る設備機器の保守管理システムは、前記発明において、前記GPSによって前記作業者の現在の位置が取得されたとき、前記現在位置推定手段によって推定された前記作業者の現在の位置をこの取得された作業者の現在の位置に更新する現在位置更新手段を備えたことを特徴としている。
【0013】
このように構成した本発明は、現在位置推定手段が作業者の現在の位置を推定しても、その後にGPSによって作業者の現在の位置が取得された場合には、現在位置更新手段が作業者の現在の位置をGPSによって取得された作業者の現在の位置に更新することにより、GPSが有効に機能した時点で作業者の現在の位置をGPSで取得した正確な位置に修正できるので、現在位置推定手段によって推定された作業者の現在の位置と実際の作業者の現在の位置との誤差を抑えることができる。
【0014】
また、本発明に係る設備機器の保守管理システムは、前記発明において、前記登録手段は、前記各設備機器のうち第1の設備機器の位置とこの第1の設備機器の後に巡回することが予定されている第2の設備機器の位置との間に仮想的な設備機器の位置を登録すると共に、前記第1の設備機器の位置から前記第2の設備機器の位置までの前記作業者の移動時間を前記仮想的な設備機器の実績作業時間として登録する移動時間登録手段を有することを特徴としている。
【0015】
このように構成した本発明は、登録手段の移動時間登録手段によって第1の設備機器の位置と第2の設備機器との間に仮想的な設備機器の位置を登録すると共に、第1の設備機器の位置から第2の設備機器の位置までの作業者の移動時間を仮想的な設備機器の実績作業時間として登録しておくことにより、現在位置推定手段が第1の設備機器と第2の設備機器の保守作業に要する時間だけでなくこれらの各設備機器間の移動時間も考慮して作業者の現在の位置を推定するので、作業者の現在の位置の推定誤差を低減することができる。特に、第1の設備機器と第2の設備機器との間の移動距離が長い場合に推定誤差を効果的に抑えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の設備機器の保守管理システムは、作業者が携帯する携帯端末のGPSによって作業者の現在の位置が取得されなくなっても、現在位置推定手段がGPSによって取得された作業者の過去の位置、登録手段によって登録された各設備機器の位置、及び実績作業時間に基づいて作業者の現在の位置を推定することにより、各設備機器の保守作業を管理する管理者が推定された作業者の現在の位置を確認することができる。従って、GPSが有効に機能しなくなっても作業者の現在の位置を容易に把握することができる。これにより、顧客の要望に応じて、管理者が巡回中の作業者の中から設備機器の保守作業を担当するのに適した作業者を選定して現場へ向かわせることができるので、設備機器の故障復旧等の早急な対応が望まれる保守作業にも迅速に対処することができ、顧客に対するサービス性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る設備機器の保守管理システムの一実施形態の構成を示す図である。
【図2】図1に示す本実施形態に備えられた作業時間記憶部に登録された作業者の実績作業時間を説明する図である。
【図3】本実施形態に備えられた現在位置推定手段によって推定された作業者の現在の位置と実際の作業現場との関係を説明する図である。
【図4】本実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る設備機器の保守管理システムを実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0019】
本発明に係る設備機器の保守管理システムの一実施形態は、図1に示すように複数の位置にそれぞれ設けられた複数の設備機器として例えば昇降機K1〜Kn(nは自然数)と、これらの昇降機K1〜Knの保守作業を行う各作業者ME1〜ME3が巡回中に携帯する携帯端末G1〜G3とを備え、これらの各携帯端末G1〜G3は作業者ME1〜ME3の位置を知らせる図示しないGPSを有している。
【0020】
すなわち、各携帯端末G1〜G3は、図示しないGPS受信機を搭載し、これらのGPS受信機がGPS衛星から受信するGPS受信機の位置に関する経度及び緯度等の位置情報に基づいて作業者ME1〜ME3の位置情報を作成して後述の監視センターへ送信するようになっている。そして、本実施形態は、作業者ME1〜ME3が各自担当する昇降機K1〜Knの保守作業を行うために各昇降機K1〜Knの作業現場を巡回しており、作業者ME1〜ME3の位置を複数の昇降機K1〜Knの位置P1〜Pnの中から各携帯端末G1〜G3のGPSによって取得して管理するようになっている。
【0021】
ここで、本実施形態では、昇降機K1〜Knの数nを例えば4として以下、具体的に説明する。本実施形態は、各昇降機K1〜K4の位置P1〜P4から離れた位置に設置され、各昇降機K1〜K4を遠隔的に監視する図示しない監視センターを備えており、この監視センター内に作業者ME1〜ME3の位置を管理する管理者が待機している。また、監視センターは、携帯端末G1〜G3に無線通信回線網4aを介して接続され、携帯端末G1〜G3から送信される情報等を処理するサーバー装置1と、このサーバー装置1に接続され、各種の情報を表示して管理者へ報知するクライアント端末2とを有している。
【0022】
また、本実施形態は、昇降機K1〜K4にそれぞれ取付けられ、各昇降機K1〜K4を遠隔的に監視する遠隔監視端末t1〜t4を備えており、上述したサーバー装置1は、通信装置3及び公衆電話回線網4bを介して各昇降機K1〜K4の遠隔監視端末t1〜t4に接続されている。そして、遠隔監視端末t1〜t4は、例えば昇降機K3において閉じ込め等の故障を検出すると、昇降機K3の遠隔監視端末t3がサーバー装置1へ昇降機K3が故障した旨の故障情報を送信し、サーバー装置1は、例えば受信した故障情報を参考にして故障が発生した昇降機K3の位置P3を判定し、判定された昇降機K3の位置P3を後述のデータベース1aに登録するようにしている。
【0023】
また、携帯端末G1〜G3は、GPSによって作業者の現在の位置を取得すると、取得した作業者ME1〜ME3の現在の位置をサーバー装置1へ送信し、サーバー装置1は、例えば受信した作業者ME1〜ME3の現在の位置をクライアント端末2の表示画面に表示するようになっている。ここで、上述したサーバー装置1は、昇降機K1〜K4、作業者ME1〜ME3、及び携帯端末G1〜G3に関する各種の情報を登録する登録手段を含んでおり、この登録手段は、例えば各昇降機K1〜K4の位置P1〜P4を登録するデータベース1aと、各作業者ME1〜ME3が昇降機K1〜K4の保守作業に要する時間を示す実績作業時間を登録する作業時間記憶部1bとから構成されている。なお、サーバー装置1は、各作業者ME1〜ME3が担当する昇降機K1〜K4の作業計画を記憶する図示しない記憶手段を含んでいる。
【0024】
上述した作業時間記憶部1bに登録された実績作業時間は、例えば各作業者ME1〜ME3が過去の昇降機K1〜K4の保守作業において、作業者ME1〜ME3の携帯端末G1〜G3から送信された作業開始信号及び作業終了信号を監視センターが受信した時刻、あるいは携帯端末G1〜G3のGPSによって取得された時刻に基づいてサーバー装置1によって算出されている。例えば、作業者ME1の実績作業時間は、図2に示すように作業者ME1が過去に各昇降機K1〜K4に対する保守作業の各種類S1〜Sm(mは自然数)に要した作業時間T11〜T44として記録されている。同様に、作業者ME2,ME3の各実績作業時間は、作業者ME2,ME3が過去に各昇降機K1〜K4に対する保守作業の各種類S1〜Smに要した作業時間T11〜T44として記録されている。
【0025】
そして、本実施形態は、携帯端末G1〜G3のうち例えば携帯端末G1のGPSによって作業者ME1の現在の位置が取得されなかったとき、GPSによって取得された作業者ME1の過去の位置、データベース1aによって登録された各昇降機K1〜K4の位置、及び実績作業時間に基づいて作業者ME1の現在の位置を推定する図示しない現在位置推定手段を備えている。この現在位置推定手段は、例えばサーバー装置1内に格納されており、携帯端末G1のGPSによって作業者ME1の過去の位置が取得されてから経過した経過時間と、昇降機K1〜K4のうち作業者ME1の過去の位置として取得された昇降機の実績作業時間とを比較し、経過時間が当該実績作業時間を超えていないとき、取得された昇降機の位置を作業者ME1の現在の位置に推定し、経過時間が当該実績作業時間を超えているとき、各昇降機K1〜K4の位置P1〜P4のうち取得された昇降機の後に予定されている昇降機の位置を作業者ME1の現在の位置に推定するようになっている。なお、現在位置推定手段は、携帯端末G1〜G3のうち携帯端末G2,G3のGPSによって作業者ME2,ME3の現在の位置が取得されなかったときも、同様に作業者ME2,ME3の現在の位置を推定するようになっている。
【0026】
また、本実施形態は、例えばサーバー装置1内に格納されており、携帯端末G1〜G3のGPSによって作業者ME1〜ME3の現在の位置が取得されたとき、現在位置推定手段によって推定された作業者ME1〜ME3の現在の位置をこの取得された作業者ME1〜ME3の現在の位置にそれぞれ更新する図示しない現在位置更新手段を備えている。さらに、本実施形態では、登録手段は、各昇降機K1〜K4のうち第1の昇降機の位置とこの第1の昇降機の後に巡回することが予定されている第2の昇降機の位置との間に仮想的な昇降機の位置を登録すると共に、第1の昇降機の位置から第2の昇降機の位置までの作業者の移動時間を仮想的な昇降機の実績作業時間として登録する図示しない移動時間登録手段を有している。
【0027】
次に、本実施形態の動作を図4に示すフローチャートに基づいて説明し、適宜図3を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態では、作業者ME1〜ME3のうち作業者ME1が昇降機K1〜K4を巡回する場合について説明するが、作業者ME2,ME3が昇降機K1〜K4を巡回する場合についても同様であり、重複する説明を省略する。
【0028】
図3は本実施形態に備えられた現在位置推定手段によって推定された作業者の現在の位置と実際の作業現場との関係を説明する図、図4は本実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【0029】
本実施形態では、監視センターのサーバー装置1の記憶手段に記憶された作業計画は、例えば作業者ME1が昇降機K1〜K4の保守作業を担当し、昇降機K1,K2,K3,K4の順に巡回するように設定されている。まず、作業者ME1は、図3に示すように最初の現場1として昇降機K1を巡回すると、携帯する携帯端末G1が有効に機能している場合には、作業者ME1の現在の位置が携帯端末G1のGPSによって取得され、取得された作業者ME1の現在の位置の情報がサーバー装置1へ送信される。一方、サーバー装置1は、図4に示すように携帯端末G1から作業者ME1の現在の位置を示す位置情報の受信の有無を確認しており(ステップ(以下、Sと記す)1)、携帯端末G1から位置情報の受信があったことを確認すると、作業者ME1の現在の位置を更新し(S2)、手順S1の動作に戻る。
【0030】
ここで、仮に作業者ME1が昇降機K1の保守作業中に携帯端末G1のGPSが有効に機能しなくなり、手順S1においてサーバー装置1が携帯端末G1から位置情報の受信がないことを確認すると、作業者ME1の現在の位置から昇降機K1の位置P1(現場1)、保守作業を行う昇降機K1、作業種類S1〜Smのうち例えば作業種類S1、及び対応する実績作業時間T11を特定する(S3)。
【0031】
次に、現在位置推定手段は、携帯端末G1のGPSによって作業者ME1の過去の位置が取得されてから経過した経過時間、すなわちサーバー装置1が、作業者ME1が昇降機K1の位置P1にいることを示す位置情報を受信してから経過した経過時間と、昇降機K1の作業S1に対する実績作業時間T11とを比較する(S4)。そして、現在位置推定手段は、経過時間が実績作業時間T11を超えていないとき、昇降機K1の位置P1を作業者ME1の現在の位置に推定し、経過時間が実績作業時間T11を超えているとき、昇降機K1の後に予定されている昇降機K2の位置P2を作業者ME1の現在の位置に推定して更新し(S5)、手順S1に戻って手順S1〜S5の動作を繰り返す。
【0032】
ここで、手順S1に戻った後、手順S1においてサーバー装置1が再度、携帯端末G1から位置情報の受信がないことを確認した場合には、作業者ME1の現在の位置から昇降機K2の位置P2(現場2)、保守作業を行う昇降機K2、作業種類S1〜Smのうち例えば作業種類S2、及び対応する実績作業時間T22を特定する(S3)。
【0033】
次に、現在位置推定手段は、携帯端末G1のGPSによって作業者ME1の過去の位置が取得されてから経過した経過時間、すなわち作業者の現在の位置が昇降機K2の位置P2に更新されてから経過した経過時間と、昇降機K2の作業S2に対する実績作業時間T22とを比較する(S4)。そして、現在位置推定手段は、経過時間が実績作業時間T22を超えていないとき、昇降機K2の位置P2を作業者ME1の現在の位置に推定し、経過時間が実績作業時間T22を超えているとき、昇降機K2の後に予定されている昇降機K3の位置P3を作業者ME1の現在の位置に推定して更新し(S5)、手順S1に戻って手順S1〜S5の動作を繰り返す。
【0034】
さらに、手順S1に戻った後、サーバー装置1が再度、携帯端末G1から位置情報の受信がないことを確認した場合には(S1)、作業者ME1の現在の位置から昇降機K3の位置P3(現場3)、保守作業を行う昇降機K3、作業種類S1〜Smのうち例えば作業種類S1、及び対応する実績作業時間T31を特定する(S3)。ここで、例えば昇降機K3の位置P3から昇降機K4の位置P4への移動距離が大きい場合には、登録手段によって各昇降機K3,K4を上述した第1、第2の設備機器として各位置P3,P4間の中間位置に仮想的な昇降機が登録されると共に、昇降機K3の位置P3から昇降機K4の位置P4までの移動時間が仮想的な昇降機の実績作業時間として登録されている。
【0035】
このように仮想的な昇降機が登録されている場合には、現在位置推定手段は、携帯端末G1のGPSによって作業者ME1の過去の位置が取得されてから経過した経過時間、すなわち作業者の現在の位置が昇降機K3の位置P3に更新されてから経過した経過時間と、昇降機K3の作業S1に対する実績作業時間T31に仮想的な昇降機の実績作業時間を加えた時間T31’とを比較する(S4)。そして、現在位置推定手段は、経過時間が時間T31’を超えていないとき、昇降機K3の位置P3を作業者ME1の現在の位置に推定し、経過時間が時間T31’を超えているとき、昇降機K3の後に予定されている昇降機K4の位置P4を作業者ME1の現在の位置に推定して更新し(S5)、手順S1に戻って手順S1〜S5の動作を繰り返す。
【0036】
なお、本実施形態では、作業者ME1は、手順S5において作業者ME1の現在の位置が昇降機K4の位置P4に更新された時刻に、昇降機K4の保守作業を実際に開始していない。従って、仮に作業者ME1が昇降機K4を巡回した際に携帯端末G1のGPSが有効に機能し、手順S1においてサーバー装置1が携帯端末G1から位置情報の受信があったことを確認した場合には、現在位置更新手段は、携帯端末G1のGPSによって作業者の現在の位置、例えば昇降機K4の位置P4が取得されたとき、現在位置推定手段によって推定された昇降機K4の位置P4をこの取得された作業者の現在の位置P4に改めて更新する(S2)。
【0037】
このとき、例えばサーバー装置1の記憶手段が作業者ME1の現在の位置の更新履歴を記憶している場合には、記憶手段は、現在位置推定手段によって作業者ME1の現在の位置として昇降機K4の位置P4が更新された時刻から現在位置更新手段によって作業者ME1の現在の位置として昇降機K4の位置P4が更新された時刻までの作業者ME1の現在の位置を昇降機K4の位置P4から昇降機K3の位置P3に修正する。
【0038】
一方、仮に手順S5において作業者ME1の現在の位置が昇降機K3の位置P3に更新されてから時間T31’が経過しないうちに、手順S1においてサーバー装置1が携帯端末G1から位置情報の受信があったことを確認した場合には、現在位置更新手段は、携帯端末G1のGPSによって作業者の現在の位置、例えば昇降機K4の位置P4が取得されたとき、現在位置推定手段によって推定された昇降機K3の位置P3をこの取得された作業者の現在の位置P4に更新し(S2)、手順S1の動作に戻る。
【0039】
従って、本実施形態では、携帯端末G1のGPSによって取得された作業者の現在の位置を現在位置推定手段によって推定された作業者の現在の位置よりも優先することにより、昇降機K1,K2,K3の位置P1,P2,P3(現場1,2,3)において作業時間が長引くと、作業者の現在の位置は、昇降機K4の位置P4に推定されても携帯端末1のGPSが有効に機能した時点で昇降機K1,K2,K3の位置P1,P2,P3に改めて更新される。
【0040】
このように構成した本実施形態は、各昇降機K1〜K4の保守作業を行う作業者ME1〜ME3の現在の位置を各携帯端末G1〜G3のGPSで取得しており、作業者ME1〜ME3のうち例えば上述した作業者ME1が携帯端末G1のGPSが有効に機能しない場所に移動して作業者ME1の現在の位置が取得されなくなった場合には、現在位置推定手段が、取得した作業者ME1の過去の位置、登録手段によって登録された各昇降機K1〜K4の位置、及び実績作業時間に基づいて作業者ME1の現在の位置を推定することにより、各昇降機K1〜K4の保守作業を管理する管理者が推定された作業者ME1の現在の位置を確認することができる。従って、作業者ME1〜ME3の携帯端末G1〜G3のGPSが有効に機能しなくなっても作業者ME1〜ME3の現在の位置を容易に把握することができる。これにより、顧客の要望に応じて、管理者はクライアント端末2の表示画面に表示された作業者ME1〜ME3の現在の位置を確認することにより、巡回中の作業者ME1〜ME3の中から昇降機K1〜K4の保守作業を担当するのに適した作業者を選定して現場へ向かわせることができるので、昇降機K1〜K4の故障復旧等の早急な対応が望まれる保守作業にも迅速に対処することができ、顧客に対するサービス性を向上させることができる。
【0041】
また、本実施形態は、携帯端末G1のGPSによって作業者ME1の過去の位置が取得されてから経過した経過時間が作業者ME1の過去の位置として取得された昇降機の実績作業時間を超えていないときには、作業者ME1が当該昇降機の保守作業を行っており、保守作業がまだ完了していないので、作業者ME1は当該昇降機の位置にいることが推定される。一方、携帯端末G1のGPSによって作業者ME1の過去の位置が取得されてから経過した経過時間が作業者ME1の過去の位置として取得された昇降機の実績作業時間を超えているときには、当該昇降機の保守作業は既に完了しており、作業者ME1はこの昇降機の後に予定されている昇降機の保守作業を行っているので、当該昇降機の位置が作業者ME1の現在の位置に推定される。従って、現在位置推定手段は、携帯端末G1のGPSによって作業者ME1の過去の位置が取得されてから経過した経過時間が作業者ME1の過去の位置として取得された実績作業時間を超えているかどうかを判断することにより、作業者ME1の現在の位置を精度良く推定することができる。
【0042】
また、本実施形態は、現在位置推定手段が作業者ME1の現在の位置を推定しても、その後に携帯端末G1のGPSによって作業者ME1の現在の位置が取得された場合には、現在位置更新手段が作業者ME1の現在の位置をGPSによって取得された作業者ME1の現在の位置に更新することにより、GPSが有効に機能した時点で作業者ME1の現在の位置をGPSで取得した正確な位置に修正できるので、現在位置推定手段によって推定された作業者ME1の現在の位置と実際の作業者ME1の現在の位置との誤差を抑えることができる。
【0043】
また、本実施形態は、登録手段の移動時間登録手段によって昇降機K3の位置P3と昇降機K4の位置P4との間に仮想的な昇降機の位置を登録すると共に、昇降機K3の位置P3から昇降機K4の位置P4までの作業者ME1の移動時間を仮想的な昇降機の実績作業時間として登録しておくことにより、現在位置推定手段が昇降機K3,K4の保守作業に要する時間だけでなくこれらの昇降機K3,K4間の移動時間も考慮して作業者ME1の現在の位置を推定するので、作業者ME1の現在の位置の推定誤差を低減することができる。特に、昇降機K3,K4間の移動距離が長い場合に推定誤差を効果的に抑えることができ、現在位置推定手段による推定に対する信頼性を高めることができる。
【0044】
なお、上述した本実施形態では、昇降機の数nが4である場合について説明したが、この場合に限らず、昇降機の数は1〜3あるいは5以上であっても良い。また、本実施形態では、作業者の人数が3人である場合について説明したが、この場合に限らず、作業者の人数は1もしくは2人、又は4人以上であっても良い。さらに、サーバー装置1の記憶手段に記憶された作業計画における作業者の巡回地域が複数の地域に分けられている場合には、例えば保守作業が行われる昇降機の現場がある領域を巡回する作業者について現在の位置を推定し、管理者は故障復旧等の保守作業に対応する作業者を選定しても良い。
【符号の説明】
【0045】
1 サーバー装置
1a データベース
1b 作業時間記憶部
2 クライアント端末
3 通信装置
4a 無線通信回線網
4b 公衆電話回線網
G1〜G3 携帯端末
K1〜Kn 昇降機
ME1〜ME3 作業者
P1〜Pn 昇降機の位置
S1〜Sm 作業の種類
t1〜tn 遠隔監視端末
Tnm 実績作業時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の位置にそれぞれ設けられた複数の設備機器と、これらの設備機器の保守作業を行う作業者が巡回中に携帯する携帯端末とを備え、この携帯端末は、前記作業者の位置を知らせるGPSを有し、前記作業者の位置を前記複数の設備機器の位置の中から前記GPSによって取得して管理する設備機器の保守管理システムにおいて、
前記各設備機器の位置を登録すると共に、前記作業者が前記各設備機器の保守作業に要する時間を示す実績作業時間を登録する登録手段と、
前記GPSによって前記作業者の現在の位置が取得されなかったとき、前記GPSによって取得された前記作業者の過去の位置、前記登録手段によって登録された前記各設備機器の位置、及び前記実績作業時間に基づいて前記作業者の現在の位置を推定する現在位置推定手段とを備えたことを特徴とする設備機器の保守管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の設備機器の保守管理システムにおいて、
前記現在位置推定手段は、
前記GPSによって前記作業者の過去の位置が取得されてから経過した経過時間と、前記各設備機器のうち前記作業者の過去の位置として取得された設備機器の前記実績作業時間とを比較し、前記経過時間が当該実績作業時間を超えていないとき、前記取得された設備機器の位置を前記作業者の現在の位置に推定し、前記経過時間が当該実績作業時間を超えているとき、前記各設備機器の位置のうち前記取得された設備機器の後に予定されている設備機器の位置を前記作業者の現在の位置に推定することを特徴とする設備機器の保守管理システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の設備機器の保守管理システムにおいて、
前記GPSによって前記作業者の現在の位置が取得されたとき、前記現在位置推定手段によって推定された前記作業者の現在の位置をこの取得された作業者の現在の位置に更新する現在位置更新手段を備えたことを特徴とする設備機器の保守管理システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の設備機器の保守管理システムにおいて、
前記登録手段は、前記各設備機器のうち第1の設備機器の位置とこの第1の設備機器の後に巡回することが予定されている第2の設備機器の位置との間に仮想的な設備機器の位置を登録すると共に、前記第1の設備機器の位置から前記第2の設備機器の位置までの前記作業者の移動時間を前記仮想的な設備機器の実績作業時間として登録する移動時間登録手段を有することを特徴とする設備機器の保守管理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−50891(P2013−50891A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189288(P2011−189288)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000232955)株式会社日立ビルシステム (895)