説明

設備監視装置

【課題】所定の設備内の監視対象について、計測センサによる測定と目視による観測(監視)を同時に行うことができる設備監視装置を提供すること。
【解決手段】設備E内の監視対象を観察する設備監視装置に、監視対象を観察するために用いられる可視光とマイクロ波との共通の経路L上に設けられ、可視光及びマイクロ波のいずれか一方を透過させると共に、他方を該透過方向とは異なる方向に向けて反射させる分離器22と、分離器22によるマイクロ波の透過方向又は反射方向に設けられ、マイクロ波に基づいて監視対象の状態を検出するマイクロ波検出部24と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応装置、高温炉、熱処理炉等の設備内の監視対象について、マイクロ波による状態検出や目視による監視を行うための設備監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製造業における各種製造プロセスは、その操業にあたってプロセスの進行状況を監視する必要がある。そのため、種々の計測センサ(温度計、圧力計等)が用いられている。しかし、計測センサの値だけでは把握しにくく、人が目視で観察しないと正しく判断できない事象もある。
図8(a)に示すように、例えば、反応装置のタンク中で液体を反応させている場合、液面の状況(液面の泡立ちや波立ちなど)は各種計測センサでは捉えがたく、直接目視あるいはカメラの画像を見る等の観察(監視)方法がとられる。この監視のために、タンクの上方に監視用の窓が設けられる。
【0003】
一方、人の目視による観察(監視)は、連続して継続的に行われるわけではなく、必要に応じ、あるいは予め定められた定時のタイミング(見回り)で行われることが殆どである。他方、液面のレベルは、プロセスの制御に重要な指標であるので、連続的に計測(監視)されることが望ましい。
例えば、高温あるいは粉塵の多いプロセスでは超音波、光を利用したレベル計は使用しがたく、マイクロ波のレベル計が使用される。レベル計の設置には、取り付けるための測定孔が当然必要である。しかし設備に設ける開口は少ない方がよく、常時使用されるものではない目視用の監視孔は、他の用途のものと兼用することが望ましい。これは、温度計、圧力計のように小さい開口で済むセンサは別にして、目視用あるいはレベル計用の孔は大きなものが必要であり、強度的、コスト的な制約が設備に生じるからである。
【0004】
そこで、2種類の装置(計測センサ)あるいは観測手段を兼用するには、何らかの切り替え機構あるいは同時使用機構(経路共用機構)が必要である。図8(b)に示すように、観察孔を共通にし、要求される機能に応じてセンサ移動レール上の2種類の装置(計測センサ)を交互に観察孔上に移動させることも可能である。しかし、大きな計測センサでは移動させるのに手間がかかるだけでなく、計測センサの使用後に切り替えを忘れるともう片方の計測センサが使えない等の問題がある。特に目視の方向が水平方向である場合は、計測センサの移動方向が重力方向に沿っているなど、計測センサを重力に抗して移動させなくてはならない場合がある。その場合、計測センサを移動させるのに大きな力が必要となるので、重力の影響をキャンセルする機構を加える等で計測センサの構成が大がかりなものになるので好ましくはない。
【0005】
なお、上記説明では液体を用いるプロセスを例に挙げたが、高温炉内の物体、焼成装置内の粉体等、計測センサによる測定と目視による監視を必要とする産業上のプロセス範囲は広い。
上記したような計測センサと目視とを組み合わせた監視が必要とされる対象としては、例えば、高炉(溶鉱炉)がある。
【0006】
高炉(特に高炉のレースウェイ)の監視技術としては、特許文献1,2に開示されたものがある。この特許文献1,2では、マイクロ波をレースウェイに向けて照射すると共に、該レースウェイから反射したマイクロ波を受信する。そして、その受信されたマイクロ波に基づいてレースウェイの深度が検出される。このような構成では、レースウェイの深度を測定する測定棒を、高炉内に熱風を送風する羽口から挿入する必要がない。そのため、高炉の操業中でも連続的にレースウェイの深度を監視することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭53−48004号公報
【特許文献2】特開平06−25720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1,2のようにマイクロ波センサを用いて高炉のレースウェイの深度を検出することができる構成においても、やはり作業者が高炉内の燃焼状態を目視で監視することのできる構成が望まれる。しかしながら、従来は、目視による監視とマイクロ波による状態検出との両方を同時に行うことはできなかった。
「計測センサによる測定と目視による監視とを同時に実施する」ことが、反応液体の監視、焼成装置内の粉体の監視など産業上の様々なプロセス監視において必要とされるのは、前述した通りである。
【0009】
従って、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、所定の設備内の監視対象について、計測センサ(赤外線カメラ、放射温度計の使用)による測定と目視による観測(監視)を同時に行うことができる設備監視装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、以下の技術的手段を採用した。
本発明に係る設備監視装置は、所定の設備内の監視対象を観察するために用いられる光とマイクロ波との共通の経路上に設けられ、前記光及びマイクロ波のいずれか一方を透過させると共に、他方を前記透過方向とは異なる方向に向けて反射させる分離手段と、前記分離手段による前記マイクロ波の透過方向又は反射方向に設けられ、該マイクロ波に基づいて前記監視対象の状態を検出するマイクロ波検出手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
ここで、好ましくは、前記分離手段は、網状又はすだれ状に形成された導体により前記可視光を透過させると共に前記マイクロ波を反射させるものであるとよい。
また、好ましくは、前記分離手段は、所定間隔で平行配置された前記マイクロ波の波長の1/2の長さの導体により前記可視光を透過させると共に前記マイクロ波を反射させるものであるとよい。
【0012】
また、好ましくは、前記分離手段は、導体薄膜により前記可視光を透過させると共に前記マイクロ波を反射させるものであるとよい。
また、好ましくは、前記分離手段は、積層された光学薄膜により前記可視光を反射させると共に前記マイクロ波を透過させるものであるとよい。
また、好ましくは、前記所定の設備は、前記監視対象を観察するための監視窓を有するものであり、前記監視窓は、前記所定の設備の内外を仕切ると共に、少なくとも前記可視光を透過させる仕切部材であって、前記分離手段が、前記仕切部材を兼ねてなるとよい。
【0013】
ここで、好ましくは、前記経路に沿って設けられた導波管の前記監視対象とは反対側の端部に設けられて前記所定の設備の内外を仕切ると共に、少なくとも前記可視光を透過させる仕切部材を備えてなり、前記分離手段が、前記仕切部材の内側に設けられてなるとよい。
また、好ましくは、前記経路に沿って設けられた導波管の前記監視対象とは反対側の端部に設けられて前記所定の設備の内外を仕切ると共に、前記可視光及び前記マイクロ波を透過させる仕切部材を備えてなり、前記分離手段が、前記仕切部材の外側に設けられてなるとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、監視対象で反射される可視光とマイクロ波とを分離手段を用いて異なる方向に導くことができるため、その各々の位置で監視対象についての目視とマイクロ波による状態検出との両方による監視を同時に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る設備監視装置の概略構成を示す図であり、(a)はマイクロ波が反射される場合を示す図、(b)は可視光が反射される場合を示す図である。
【図2】分離器の一例を示す模式図である。
【図3】分離器の他の例を示す模式図である。
【図4】分離器のさらに他の例を示す模式図である。
【図5】本発明の実施例3に係る設備監視装置Xの概略構成を示す図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図6】本発明の実施例3に係る設備監視装置Xの他の概略構成を示す図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図7】本発明の実施例4に係る設備監視装置Xの概略構成を示す図であり、(a)は設備監視装置Xが導波管内に配置されている場合の構成を示す図、(b)は設備監視装置Xが導波管外に配置されている場合の構成を示す図である。
【図8】従来の設備監視方法を示す図であり、(a)は目視による監視方法を示す図、(b)は目視と計測センサの併用による監視方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
まず、図1を参照しつつ、本発明の実施形態に係る設備監視装置Xが利用される設備Eの概略構成について説明する。設備Eは、例えば、反応装置のタンク、高温炉、熱処理炉など、内部での製造プロセス(過程)の進行を監視する必要のある設備装置である。
【0017】
例えば、設備Eが化学反応装置のタンクであれば、内部の液体の反応や発酵などが進行すると、液面の状況(液面の泡立ちや波立ちなど)が変化し、この変化を監視することで、作業者は製造プロセスの進行を把握することができる。高温炉や熱処理炉などにおいても、炉内で処理される製品の変化を監視することで、作業者は製造プロセスの進行を把握することができる。設備Eは、これら製造業の設備装置以外にも、例えば、石油タンカーのオイルタンクなど、内部に存在する液体の量や状態を監視する必要のある設備装置であってもかまわない。
【0018】
図1(a)及び図1(b)に示すように、設備Eの外壁には、設備Eの内部から外部に向かって突出した略円筒状の開口突部11が設けられている。その円筒状の開口突部11の外部側には、開口形状に対応した略円板状の監視窓23が取り付けられていて、外部から監視窓23を通して設備E内部の監視対象の様子を目視することができる。この監視窓23は、例えば耐熱ガラスなどからできている。
【0019】
続いて、図1を参照しながら、設備Eの観察窓23の前方に設けられ、設備Eの内部状態を監視対象とする設備監視装置Xについて説明する。
図1(a)に示すように、設備監視装置Xは、分離器22(分離手段の一例)、及びマイクロ波検出部24(マイクロ波検出手段の一例)などを含んで構成されている。
分離器22は、設備Eの外部であって監視窓23の前方に設けられている。分離器22は、光(可視光、紫外線及び赤外線を含む)を透過させ、マイクロ波を反射させるものである。本実施形態は、分離器22を透過する光として可視光を用いて説明する。特に、設備監視装置Xでは、分離器22が、監視窓23の軸心に沿った監視方向(経路)Lに対して45°傾斜した状態で監視窓23の前方に配置されている。これにより、分離器22は、監視方向Lに平行又は垂直な方向から入力されるマイクロ波を、90°の反射角で可視光の透過(進行)方向とは異なる方向に向けて反射させる。ここで、図1(a)に示した監視方向Lは、可視光及びマイクロ波が進行する共通の経路でもあり、以下、経路Lと示すこともある。
【0020】
具体的に、分離器22は、マイクロ波検出部24から出射されるマイクロ波を設備E内部の監視対象に向けて反射させ、設備Eの監視対象で反射された後のマイクロ波をマイクロ波検出部24に向けて反射させる。
なお、本発明における可視光及びマイクロ波の透過及び反射の概念は、100%の透過及び反射のみならず目視可能あるいは検出可能な程度の透過率又は反射率があることを含むものである。
【0021】
図2は、分離器22の構成例を具体的に示す模式図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図2に示すように、分離器22は、格子状を成す網状に形成された導体からなる反射部22aと、透明な誘電体で形成され、反射部22aを支持する基板22bとを有している。反射部22aは、例えば金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム等の金属である。また、基板22bは、例えばフッ化カルシウムや石英ガラス、サファイア(単結晶酸化アルミニウム)などである。また、赤外線での観察まで含めるのであれば、可視光は透過しないが、反射部22aをシリコンで形成することもできる。
【0022】
このように構成された分離器22では、分離器22に入射される可視光はその大部分が反射部22aを透過するが、分離器22に入射されるマイクロ波は反射部22aで反射されることになる。また、反射部22aは、格子状の網状を成す導体であるため、マイクロ波の偏波方向(直線偏波、円偏波)にかかわらず、該マイクロ波を反射させることができる。なお、金属で形成される反射部22aは耐熱性に優れるため、基板22bを省略して反射部22aを自立配置させることで、分離器22が配置される環境についての制約を少なくすることも考えられる。
【0023】
また、反射部22aにおける網目の間隔(導体の間隔)は、少なくともマイクロ波の波長の1/10未満であることが望ましい。これにより、反射部22aで、金属板のような導体の板部材を設けた場合と同様の反射能力を発揮することができる。もちろん、分離器22におけるマイクロ波の反射能力を落としてもよい場合には、反射部22aにおける網目の間隔がマイクロ波の波長の1/10以上であってもよい。
【0024】
また、図2に示した分離器22の外周形状は矩形(ここでは正方形)であるが、その外周形状は、監視窓23の形状に応じて適宜変更したものを用いればよい。例えば、監視窓23が円形や楕円形であれば、分離器22の外周形状も円や楕円などとすることが考えられる。また、監視窓23が矩形であれば、分離器22の外周形状も矩形とすることが考えられる。もちろん、円形や楕円形の監視窓23の前方に外周形状が矩形の分離器22を設けることや、矩形の監視窓23の前方に外周形状が円形や楕円形の分離器22を設けることも考えられる。
【0025】
ところで、図1に示すように、監視窓23は、設備Eの外壁に形成された略円筒状の開口突部11に設けられている。監視窓23は、設備Eの内側の環境と外側の環境とを仕切ると共に、少なくとも可視光を透過させるものである。監視窓23は、例えば透明な耐熱ガラスなどである。なお、監視窓23と設備Eの開口突部11との間はシール部材で封止されている。
【0026】
設備監視装置Xでは、前述したように分離器22が可視光を透過するものであるため、設備E内部の監視対象で反射した可視光は、分離器22を透過して監視窓23に導かれる。これにより、作業者は、監視窓23から監視対象の状態を目視により監視することができる。なお、監視窓23から外部に出射される可視光を、ミラーなどの補助反射部材を用いて任意の位置に反射させ、該位置で作業者による監視対象の目視を可能とする構成も他の実施例として考えられる。
【0027】
マイクロ波検出部24は、設備E内部の監視対象で反射した後のマイクロ波が分離器22で反射される方向(図1(a)における上方向)に設けられている。
マイクロ波検出部24は、所定周波数のマイクロ波を照射すると共に、マイクロ波検出部24に入射されるマイクロ波を受信するマイクロ波センサを有している。なお、マイクロ波検出部24には、例えばパルスレーダやFM−CWレーダ、その他の各種方式のレーダを用いることができる。そして、マイクロ波検出部24は、マイクロ波センサにより受信されたマイクロ波に基づいて設備E内部における監視対象の位置(監視対象の状態の一例)を検出する。
【0028】
具体的に、設備監視装置Xでは、前述したように分離器22がマイクロ波を反射するものである。そのため、マイクロ波検出部24から分離器22の反射部22aに対して45°の角度で照射されたマイクロ波は、該反射部22aにより90°の反射角で監視対象に向けて反射される。その後、監視対象で反射して監視方向(経路)Lに沿って進行するマイクロ波は、分離器22の反射部22aにより90°の反射角でマイクロ波検出部24に向けて反射される。これにより、マイクロ波検出部24では、受信されたマイクロ波に基づいて、マイクロ波検出部24から監視対象までの距離を測定することができる。なお、マイクロ波検出部24は、例えば出射したマイクロ波と受信したマイクロ波との周波数の差分に基づいて距離を測定する。一方、マイクロ波検出部24から分離器22を経て監視窓23(又は、設備Eの外壁位置)に至るまでの距離は既知であり、その距離は予めマイクロ波検出部24にパラメータとして記憶されている。そして、マイクロ波検出部24は、マイクロ波に基づいて測定したマイクロ波検出部24から監視対象までの距離と、既知であるマイクロ波検出部24から監視窓23(又は、設備Eの外壁位置)までの距離との差分により、監視窓23(又は、設備Eの外壁位置)から監視対象までの距離、例えば、反応装置内における液面の高さや、高温炉や熱処理炉内の処理対象までの距離を検出することができる。なお、マイクロ波検出部24で検出された距離(反応装置内における液面の高さや、高温炉や熱処理炉内の処理対象までの距離)は、不図示のコンピュータ等に転送されて表示され、また、設備Eの内部温度制御や送風量制御などの各種稼働制御の指標としても用いられる。
【0029】
以上説明したように、設備監視装置Xでは、分離器22によって監視対象で反射される可視光及びマイクロ波をそれぞれ異なる方向に分岐することができる。従って、設備監視装置Xによれば、作業者による監視対象の目視と、マイクロ波検出部24からのマイクロ波による監視対象の深度検出(距離検出)との両方による監視を同時に行うことが可能である。なお、設備E内に測定棒などを挿入する必要もないため、該監視対象の深度検出を設備Eの操業中にも行うことができる。
【0030】
ところで、本実施形態では、分離器22の反射部22aが矩形状を成す網状の導体である場合について説明した。一方、反射部22aが、導体薄膜によってマイクロ波を反射させると共に可視光を透過させるものであることも他の実施例として考えられる。
具体的には、基板22bがガラスであって、反射部22aが基板22bに金属を蒸着することによって該基板22b上に形成される導体薄膜であることが考えられる。このように構成された反射部22aでも、マイクロ波を反射させると共に可視光を透過させることができる。
【0031】
さらに、反射部22aが導体薄膜である構成では、可視光が反射部22aを透過する際に減衰することとなる。そのため、設備E内で強い発光がある場合に、監視窓23から監視対象を目視する作業者に強い光が直接届くことを防止し、作業者の目を保護することができる。
【実施例1】
【0032】
実施例1では、図3を参照しつつ、分離器22の他の例として分離器221について説明する。なお、図3の(a)は正面図、(b)は側面図である。実施例1で説明する分離器221は、マイクロ波検出部24が直線偏波のマイクロ波を送受信する構成に適応可能である。
図3に示すように、分離器221は、複数の導体が所定間隔で平行に配置されたすだれ状の反射部221aと、透明な誘電体で形成され、反射部221aを支持する基板221bとを有している。反射部221aは、例えば金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム等の金属である。また、基板221bは、例えば、フッ化カルシウムや石英ガラス、サファイア(単結晶酸化アルミニウム)などである。なお、金属で形成される反射部22aは耐熱性に優れるため、基板22bを省略して反射部22aを自立配置させることで、分離器22が配置される環境についての制約を少なくすることも考えられる。
【0033】
そして、分離器221は、分離器22と同様に監視方向Lに対して45°傾斜した状態で導波管21内に配置されている。このとき、分離器221は、反射部221aにおいてすだれ状に配置された導体がマイクロ波の直線偏波方向と平行になる状態で配置される。これにより、分離器221においても、分離器22と同様に、反射部221aによってマイクロ波を反射させ、可視光を透過させることができる。
【0034】
また、図3に示す反射部221aでは、平行に配置された複数の導体の上端部及び下端部が連結されているが、これに限らず、複数の導体を連結せずに単に基板221b上に並べて配置することも他の実施例として考えられる。このとき、マイクロ波は、その直線偏波の方向に平行に配置された導体の長さが該マイクロ波の波長の1/2の長さである場合に効率良く反射される。そのため、反射部221aにおける各導体の長さはマイクロ波の波長の1/2であることが望ましい。
【実施例2】
【0035】
図1(b)を参照しながら、実施例2について説明する。
実施例2では、可視光を反射させてマイクロ波を透過させる構成について説明する。ここに、図1(b)は、実施例2に係る設備監視装置Xの概略構成を示す図である。なお、図1と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
図1(b)に示すように、実施例2に係る設備監視装置Xでは、図1(a)と比較して、分離器に対する目視の位置とマイクロ波検出部24の位置が逆転している。つまり、設備監視装置Xは、分離器22に代えて、可視光を反射させると共に、マイクロ波を透過させる分離器222を備えている。
【0036】
これによって、実施例2に係る設備監視装置Xは、可視光が分離器222で反射した可視光を作業者が目視でき、且つ分離器222を透過したマイクロ波をマイクロ波検出部24で検出できる構成となっている。
ここに、図4は分離器222の構成例を具体的に示す模式図であって、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【0037】
図4に示すように、分離器222は、例えばフッ化カルシウム等の誘電体で形成された基板223と、基板223の表面上に数層から数十層の光学薄膜が積層されることにより形成された誘電体多層膜224とを有している。
具体的に、誘電体多層膜224は、図4(a)に示すように、フッ化カルシウムやフッ化マグネシウム、二酸化ケイ素、二酸化チタンなどの透明誘電体材料の薄膜224a及び薄膜224bを交互に積層することによって形成されている。なお、基板223には最下層の薄膜224aが接触している。
【0038】
ここで、薄膜224a及び薄膜224bは、共に光学的厚み(=屈折率×膜厚)が可視光の1/4波長となるように形成されているが、薄膜224aは薄膜224bよりも光の屈折率が高い材料で形成されている。なお、屈折率は誘電率の平方根により求まる。
このように構成された分離器222では、屈折率が異なる薄膜224a、224bを交互に積層した誘電体多層膜224により任意の光学反射特性を得ることができ、可視光を反射させることが可能である。なお、薄膜224a、224bの積層数が多いほど誘電体多層膜224における可視光の反射率は高まる。
【0039】
一方、誘電体多層膜224を構成する薄膜224a、224bの厚みは光の波長(約500nm程度)以下であるため、波長が可視光の約1万倍ほどのマイクロ波から見た薄膜224a、224bの厚みは0に等しい。また、誘電体多層膜224は誘電体である。そのため、誘電体多層膜224におけるマイクロ波の反射は生じない。さらに、基板223を、マイクロ波に対する屈折率と基板223の厚み(幾何学的厚み)との積が該マイクロ波の1/2波長の整数倍となるように形成すれば、基板223におけるマイクロ波の反射も抑制される。
【0040】
以上、説明したように、設備監視装置Xにおいても、分離器222によって監視対象からの可視光及びマイクロ波を異なる方向に分岐することができる。従って、設備監視装置Xによれば、作業者による監視対象の目視と、マイクロ波検出部24からのマイクロ波による監視対象の深度検出(距離検出)との両方による監視を同時に行うことが可能である。
【0041】
なお、誘電体多層膜224の反射特性を、マイクロ波を反射させて可視光を透過させるように構成すれば、該誘電体多層膜224の厚みが大きくなるが、設備監視装置Xの分離器22,221に代えて用いることも可能である。
【実施例3】
【0042】
実施例3では、監視窓23に可視光及びマイクロ波の分離機能を持たせる構成について説明する。ここに、図5,図6は、実施例3に係る設備監視装置Xの要部構成図である。なお、図1と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
まず、図5(a)に示すように、実施例3に係る設備監視装置Xでは、図1を用いて説明した設備Eの略円筒状の開口突部11の代わりに、略T字型の開口突部12(以下、T字開口突部12という)が設けられている。T字開口突部12は、略円筒状の開口突部11の長手方向におけるほぼ中央に上方に向かう開口を有している。図5(b)に示すように、T字開口突部12における開口の断面は略円形である。
【0043】
T字開口突部12には、監視窓23及び分離器22(図1参照)に代えて監視窓231(仕切部材の一例)が設けられている。具体的に、監視窓231は、マイクロ波を反射させて可視光を透過させる反射部231aと、透明な誘電体で形成され、反射部231aを支持する基板231bとを有している。また、監視窓231は、該監視窓231をT字開口突部12内に45°傾斜させて配置したときに基板231bの外周面がT字開口突部12の内壁と平行になるように形成されている。そして、監視窓231は、基板231bの外周面とT字開口突部12の内壁との間がシールされることにより設備Eの内外を仕切る。
【0044】
即ち、設備監視装置Xは、監視窓231とマイクロ波検出部24を含んで構成されており、一つの監視窓231が分離器22及び監視窓23の機能を兼ねている。従って、T字開口突部12の開口側にマイクロ波検出部24を配置すれば、監視窓231で反射したマイクロ波を検出することができる。
このように、分離器22及び監視窓23の機能を一つの監視窓231によって実現することで、設備監視装置Xの構成部品を削減し低コスト化を図ることができる。
【0045】
一方、図6に示すように、実施例3に係る設備監視装置Xでは、図1を用いて説明した設備Eの略円筒状の開口突部11の代わりに、略L字型の開口突部13(以下、L字開口突部13という)が設けられている。L字開口突部13は、L字の両端と該L字の屈曲部に開口を有しており、一端の開口で設備Eと接続されている。このL字開口突部13の屈曲部の開口に、監視方向Lに垂直であってL字開口突部13の内径方向に突出するシール壁部21cが設けられている。そして、監視窓23及び分離器22(図1参照)に代えて監視窓232(仕切部材の一例)が設けられている。即ち、設備監視装置Xでは、一つの監視窓232が分離器22及び監視窓23の機能を兼ねている。
【0046】
具体的に、監視窓232は、マイクロ波を反射させて可視光を透過させる反射部232aと、透明な誘電体で形成され、反射部232aを支持する透明な基材232b及び円筒状に形成されたシール部232cとを有している。
基材232bは、反射部232aを45°傾斜した状態で内包する直方体、立方体、円柱などに形成されたものである。これにより、図6に示すように、L字開口突部13内に監視窓232が設置されたとき、反射部232aは監視方向Lに対して45°傾斜して配置される。また、L字開口突部13内に配置された監視窓232では、基材232b及びシール部232cの全体形状における可視光の入射面及び出射面が、該可視光の入射方向に対して垂直な平行平面となるため、該監視窓232における可視光の屈折の影響を抑制することができる。
【0047】
一方、図6(b)に示すように、基材232bは、直方体又は立方体の部材であり、シール壁部21cの内径よりも大きな径を有している。また、シール部232cは、円柱状の部材であり、シール壁部21cの内径とほぼ同じ径を有している。そして、監視窓232は、基材232bとシール壁部21cとが接触し、シール部232cの外周面とシール壁部21cの内面とが接触した状態でシールされることにより該監視窓232の内外を仕切る。これにより、監視窓232に、設備Eの内外を仕切るシール機能を持たせることができる。
【0048】
設備監視装置Xと同様に、設備監視装置Xは、監視窓232とマイクロ波検出部24を含んで構成されており、一つの監視窓232が分離器22及び監視窓23の機能を兼ねている。従って、L字開口突部13の開口側にマイクロ波検出部24を配置すれば、監視窓232で反射したマイクロ波を検出することができる。
このように、分離器22及び監視窓23の機能を一つの監視窓232によって実現することで、設備監視装置Xの構成部品を削減し低コスト化を図ることができる。
【0049】
なお、実施例3では監視窓231や監視窓232がマイクロ波を反射させて可視光を透過させる場合を例に挙げて説明したが、もちろんその逆の構成であっても同様に構成することが可能である。
【実施例4】
【0050】
実施例4では、上述の設備監視装置Xを高炉Zに適用した例を示している。当然ながら、本実施例は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
図7(a)に示すように、設備監視装置Xは、分離器22(分離手段の一例)、及びマイクロ波検出部24(マイクロ波検出手段の一例)などを含んで構成されており、監視窓23(仕切部材の一例)を有する導波管21に配置されている。
【0051】
導波管21は、高炉Zのブローパイプ4に延設されている。分離器22は、監視方向(経路)L上であって導波管21の内部且つ監視窓23の手前側(高炉Z側)に設けられている。分離器22は、マイクロ波検出部24から出射されるマイクロ波を高炉Zのレースウェイ5に向けて反射させ、レースウェイ5で反射された後のマイクロ波をマイクロ波検出部24に向けて反射させる。
【0052】
図7(a)に示すように、監視窓23は、監視方向Lに沿って設けられたブローパイプ4及び導波管21のレースウェイ5とは反対側の端部の壁面21aに設けられている。監視窓23は、高炉Zの内側の環境と外側の環境とを仕切ると共に、少なくとも可視光を透過させるものである。
この設備監視装置Xによれば、作業者によるレースウェイ5の目視と、マイクロ波検出部24によるマイクロ波によるレースウェイ5の深度検出との両方による監視を同時に行うことが可能である。
【0053】
なお、図7(b)に示すように、高炉Zに対する設備監視装置Xでは、分離器22(221)が、監視方向L上ではあるが、監視窓23の外側に設けられていてもよい。
ところで、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特に、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用している。
【0054】
再度述べるが、本発明に係る設備監視装置(設備監視技術)は、産業上の様々なプロセスに適用可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、産業上の様々なプロセスで用いられる設備内部の状態を監視する設備監視装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 :高炉壁
2 :羽口
3 :熱風支管
4 :ブローパイプ
11:開口突部
12:T字開口突部
13:L字開口突部
21:導波管
21a:端部壁
22:分離器(分離手段の一例)
22a:反射部
22b:基板
23:監視窓(仕切部材の一例)
24:マイクロ波検出部(マイクロ波検出手段の一例)
E :設備
L :監視方向
X :設備監視装置
Z :高炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の設備内の監視対象を観察するために用いられる光とマイクロ波との共通の経路上に設けられ、前記光及びマイクロ波のいずれか一方を透過させると共に、他方を前記透過方向とは異なる方向に向けて反射させる分離手段と、
前記分離手段による前記マイクロ波の透過方向又は反射方向に設けられ、該マイクロ波に基づいて前記監視対象の状態を検出するマイクロ波検出手段と、
を備えてなることを特徴とする設備監視装置。
【請求項2】
前記分離手段は、網状又はすだれ状に形成された導体により前記可視光を透過させると共に前記マイクロ波を反射させるものである請求項1に記載の設備監視装置。
【請求項3】
前記分離手段は、所定間隔で平行配置された前記マイクロ波の波長の1/2の長さの導体により前記可視光を透過させると共に前記マイクロ波を反射させるものである請求項1に記載の設備監視装置。
【請求項4】
前記分離手段は、導体薄膜により前記可視光を透過させると共に前記マイクロ波を反射させるものである請求項1に記載の設備監視装置。
【請求項5】
前記分離手段は、積層された光学薄膜により前記可視光を反射させると共に前記マイクロ波を透過させるものである請求項1に記載の設備監視装置。
【請求項6】
前記所定の設備は、前記監視対象を観察するための監視窓を有するものであり、
前記監視窓は、前記所定の設備の内外を仕切ると共に、少なくとも前記可視光を透過させる仕切部材であって、
前記分離手段が、前記仕切部材を兼ねてなる請求項1〜5のいずれかに記載の設備監視装置。
【請求項7】
前記経路に沿って設けられた導波管の前記監視対象とは反対側の端部に設けられて前記所定の設備の内外を仕切ると共に、少なくとも前記可視光を透過させる仕切部材を備えてなり、
前記分離手段が、前記仕切部材の内側に設けられてなる請求項1〜5のいずれかに記載の設備監視装置。
【請求項8】
前記経路に沿って設けられた導波管の前記監視対象とは反対側の端部に設けられて前記所定の設備の内外を仕切ると共に、前記可視光及び前記マイクロ波を透過させる仕切部材を備えてなり、
前記分離手段が、前記仕切部材の外側に設けられてなる請求項1〜5のいずれかに記載の設備監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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