説明

設備管理支援システム及びコンピュータプログラム

【課題】 管理対象設備の修理・交換依頼先に速やかに連絡できると共に、修理・交換に要する料金情報を容易に知る。
【解決手段】 管理対象設備の取り付け場所、耐用年数などの基礎データが記憶された管理対象設備基礎DBと、各管理対象設備の修理・交換依頼先情報及び料金情報が記憶された修理・交換情報DBと、各不具合情報毎に不具合対策情報が記憶された不具合対策情報DBとを備える。不具合対策情報DBから、管理対象設備の不具合情報に対応する不具合対策情報を抽出し、抽出された不具合対策情報に従って、修理・交換を要する管理対象設備を特定し、当該管理対象設備の修理・交換依頼先情報及び料金情報を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル、工場などの各種建物、並びに、それらに設置される機械、装置などの各種設備をコンピュータ管理するための設備管理支援システム及び該設備管理支援システムを稼働させるコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トイレ設備、空調設備、建物内に敷設されるカーペットなどの管理、あるいは、害虫駆除管理等を行うビル管理においては、定期点検や顧客からの連絡により不具合の生じた設備の修理・交換を行っている。
【0003】
一方、特開2005−148867号公報(特許文献1)には、鉄鋼や発電等のプラント設備に関するものであるが、プラント設備の故障発生時の故障対応保守支援装置が開示されている。この故障対応保守支援装置は、故障情報を基に、復旧手順データベース、故障解析データベース、事例データベース等を使用して、故障原因の特定、復旧手順の決定を行うものである。このため、故障情報が入力されれば、速やかな事故対策体制を敷くことができる。
【0004】
【特許文献1】特開2005−148867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された技術は、あくまで発電プラント等の運転可否を左右するプラント設備そのものについての故障対応保守支援を行うものである。このため、故障が発生した場合には、即座に対応しなければならない。すなわち、メンテナンス予算との関係から、故障対応時期(交換部品の発注時期)を翌月にする、といった対応をとる余地はない。
【0006】
ところが、一般のビルやその他の工場などにおいては、このように緊急に対応すべき設備ばかりではなく、不具合発生後、数ヶ月間の間に修理・交換すれば済む設備(例えば、カーペットの修繕など)もある。このような場合に、特に、メンテナンス予算との関係で、不具合対応時期を調整できると共に、緊急事態にも対応できる支援システムがあれば、管理可能な設備の種類、範囲が広がり、汎用性を高めることができる。また、修理・交換に要した実際の費用の各予算期間毎の平準化にも資する。
【0007】
本発明は、上記した点に鑑みなされたものであり、修理・交換を要する管理対象設備を速やかに特定すると共に、その設備の修理・交換費用を容易に知ることができ、メンテナンス予算との関係で、不具合対応時期の調整を可能とし、種々の設備の管理を可能とする汎用性の高い設備管理支援システム及び該設備管理支援システムを稼働させるコンピュータプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1記載の本発明では、管理対象設備の不具合情報を基に適切な不具合対策を施すために使用される設備管理支援システムであって、
前記各管理対象設備の取り付け場所、耐用年数及び設置年月を含む基礎データが記憶された管理対象設備基礎データベースと、
前記各管理対象設備の不具合発生時における、少なくとも修理・交換依頼先情報及び料金情報が記憶された修理・交換情報データベースと、
予想される不具合情報及び過去に発生した不具合情報が記憶されていると共に、各不具合情報毎に、修理・交換すべき管理対象設備を含む不具合対策情報が記憶されている不具合対策情報データベースと、
前記不具合対策情報データベースから、前記管理対象設備の不具合情報に対応する不具合対策情報を抽出する不具合対策情報抽出手段と、
前記不具合対策情報抽出手段により抽出された不具合対策情報に従って、修理・交換を要する管理対象設備を前記管理対象設備基礎データベースにアクセスして特定する修理・交換設備特定手段と、
前記修理・交換設備特定手段によって特定された管理対象設備について、前記修理・交換情報データベースにアクセスし、当該管理対象設備の修理・交換依頼先情報及び料金情報を出力する修理・交換情報出力手段と
を備えることを特徴とする設備管理支援システムを提供する。
【0009】
(用語説明)
「管理対象設備」とは、顧客が保有あるいは使用しているビル、工場などの建物自体、当該建物に付帯するトイレ(小便器・大便器)、カーペット、空調などの設備及びこれらの付随設備(トイレの排水管など)、さらには、顧客が建物内に設置した機械、装置、害虫駆除など、顧客が管理依頼した種々の物品のことである。
「不具合情報」とは、故障箇所をある程度具体的に特定した情報、例えば、水道の蛇口のパッキンの交換をしてほしい、といった情報のほか、2階のトイレ付近の臭いが急に激しくなった、といった漠然とした情報の双方を含む。「不具合情報」は、本発明の設備管理支援システムに通信網を介して接続された顧客の端末装置(コンピュータ)から入力され、それを受信することにより受け取ることもできるし、顧客先に派遣した作業員が当該建物で定期点検を行った際に発見した場合には、当該作業員の保持する端末装置から入力される場合もある。
「不具合対策情報」とは、例えば、「トイレ付近の臭いが急に激しくなった」という不具合情報に対して、「排水管の損傷を確認し、排水管を交換する」といった対策手段を記録した情報である。
【0010】
(作用)
例えば、顧客の端末装置から送信された不具合情報を受信する。不具合対策情報抽出手段は、その不具合情報を不具合対策情報データベースのデータと比較して関連性の高い不具合情報を特定すると共に、当該不具合情報に対応する不具合対策情報を抽出する。
次いで、修理・交換設備特定手段によって、不具合対策情報抽出手段により抽出された不具合対策情報の文章中に含まれる管理対象設備を、管理対象設備基礎データベースにアクセスして特定する。
修理・交換情報出力手段は、修理・交換情報データベースにアクセスし、上記修理・交換設備特定手段によって特定された管理対象設備の修理・交換依頼先情報及び料金情報を出力する。これにより、管理者は、当該管理対象設備の修理・交換依頼先に速やかに連絡できると共に、修理・交換に要する料金情報を容易に知ることができる。
【0011】
請求項2記載の本発明では、さらに、前記修理・交換設備特定手段によって抽出された修理・交換を要する管理対象設備について、前記管理対象設備基礎データベースにアクセスして、当該管理対象設備の耐用年数及び設置年月日に関するデータを読み込み、耐用年数との関係から、優先して修理・交換を実施すべき管理対象設備を特定する優先実施設備判定手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の設備管理支援システムを提供する。
【0012】
(作用)
修理・交換設備特定手段によって、修理・交換を要する管理対象設備が特定されるが、優先実施設備判定手段は、修理・交換を実施すべき管理対象設備の優先実施度合いを判定する。すなわち、当該管理対象設備の耐用年数及び設置年月日に関するデータを読み込み、耐用年数到達までの期間、あるいは、既に耐用年数を超えている場合には、どの程度超えているかを参照して、耐用年数を超えている場合には、超過期間のより長いもの、未到達の場合には、より耐用年数に近いものほど、優先度が高いものと判定する。これにより、例えば、既に、当該月の修理・交換の予算を上回っている場合に、優先度がそれほど高くないと判定された場合には、当該管理対象設備の修理・交換の実施時期を翌月以降にずらすことができ、修理・交換費用の平準化に資する。また、修理・交換を要する管理対象設備が複数ある場合には、優先度の高いものから順に修理・交換を実施することにより、修理・交換費用の平準化を図りつつ、不具合発生状況の速やかな解消も達成できる。
【0013】
請求項3記載の本発明では、前記優先実施設備判定手段は、さらに、前記不具合対策情報抽出手段により抽出された不具合対策情報が緊急対応を要するか否かを、前記各不具合対策情報に関連づけて記憶された緊急度データを読み込んで判定する緊急対応判定手段を備えていることを特徴とする請求項2記載の設備管理支援システムを提供する。
【0014】
(作用)
例えば、「東側トイレ付近の臭いが急に激しくなった」という不具合情報に対して、不具合対策情報である「排水管の交換」について、「緊急度:高い」という緊急度データを関連づけて記憶させておく。これにより、緊急対応判定手段が、当該不具合対策の緊急度を判断する。優先実施設備判定手段は、例えば、修理・交換の要する管理対象設備が複数存在する場合、この緊急対応判定手段の判定結果を基に、修理・交換の実施時期の優先順位を決定する。
【0015】
請求項4記載の本発明では、さらに、前記管理対象設備の修理・交換費用に関する所定期間毎の予算金額を顧客毎に記憶した予算金額データベースと、
前記修理・交換情報出力手段により出力された料金情報を、前記予算金額データベースの予算金額と比較し、当該修理・交換を実施した場合に、当期予算期間の予算金額の範囲内か否かを検証する修理・交換費用判定手段と、
前記修理・交換費用判定手段によって当期の予算金額の範囲外と判定された場合には、当該修理・交換の実施時期が次期以降の予算期間となるように実施時期を調整し、その実施時期を出力する実施時期調整手段と
を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の設備管理支援システムを提供する。
【0016】
(作用)
修理・交換費用判定手段は、当該修理・交換を実施した場合に、修理・交換情報出力手段により出力された料金を加えた当期に要した修理・交換費用が、予算金額の範囲内か否かを検証し、予算金額の範囲外と判定された場合には、実施時期調整手段により、当該修理・交換の実施時期を調整し、出力する。これにより、ある月において、修理・交換費用が突出することが少なくなり、予算使用の平準化が図れる。
【0017】
請求項5記載の本発明では、前記実施時期調整手段は、前記優先実施設備判定手段により、優先して修理・交換を実施すべきと判定された管理対象設備が存在する場合には、
前記修理・交換費用判定手段によって当期の予算金額の範囲外と判定された場合でも、当該修理・交換の実施時期を当期予算期間となるように出力する補正手段を備えることを特徴とする請求項4記載の設備管理支援システムを提供する。
【0018】
(作用)
優先実施設備判定手段により、耐用年数との関係、あるいは、不具合対策情報に記録された緊急度データとの関係から、優先して修理・交換を実施すべきと判定された管理対象設備が存在する場合には、実施時期調整手段によって、予算との関係で、翌月、とされるものであっても、補正手段により、当期予算期間に実施するように補正し、出力する。これにより、予算とのバランスをできるだけ図る一方で、緊急度合い等に応じて、より適切な対処をとることができる。
【0019】
請求項6記載の本発明では、前記管理対象設備は、建物自体、又は建物内部に設置される電気設備、トイレ設備もしくは空調設備などを含む建物関連設備であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の設備管理支援システムを提供する。
【0020】
(作用)
本発明は、ビル、工場などの建物自体、又は当該建物に付帯するトイレ、カーペット若しくは、空調などの設備、さらには、顧客が建物内に設置した機械、装置などの建物関連設備に適用すると好適である。従来、これらの設備は、電話連絡等により修理・交換がなされることが多かったが、本発明により、迅速に、しかも予算や緊急度等に照らして適切な対応をとることができる。
【0021】
請求項7記載の発明では、管理対象設備の不具合情報を基に適切な不具合対策を施す設備管理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
予想される不具合情報及び過去に発生した不具合情報が記憶されていると共に、各不具合情報毎に、修理・交換すべき管理対象設備を含む不具合対策情報が記憶されている不具合対策情報データベースから、前記管理対象設備の不具合情報に対応する不具合対策情報を抽出する不具合対策情報抽出手段と、
前記不具合対策情報抽出手段により抽出された不具合対策情報に従って、修理・交換を要する管理対象設備を、前記各管理対象設備の取り付け場所、耐用年数及び設置年月を含む基礎データが記憶された管理対象設備基礎データベースにアクセスして特定する修理・交換設備特定手段と、
前記修理・交換設備特定手段によって特定された管理対象設備について、前記各管理対象設備の不具合発生時における、少なくとも修理・交換依頼先情報及び料金情報が記憶された修理・交換情報データベースにアクセスし、当該管理対象設備の修理・交換依頼先情報及び料金情報を出力する修理・交換情報出力手段と
を備えることを特徴とするコンピュータプログラムを提供する。
【0022】
請求項8記載の発明では、さらに、前記修理・交換設備特定手段によって抽出された修理・交換を要する管理対象設備について、前記管理対象設備基礎データベースにアクセスして、当該管理対象設備の耐用年数及び設置年月日に関するデータを読み込み、耐用年数との関係から、優先して修理・交換を実施すべき管理対象設備を特定する優先実施設備判定手段を備えていることを特徴とする請求項7記載のコンピュータプログラムを提供する。
【0023】
請求項9記載の発明では、前記優先実施設備判定手段は、さらに、前記不具合対策情報抽出手段により抽出された不具合対策情報が緊急対応を要するか否かを、前記各不具合対策情報に関連づけて記憶された緊急度データを読み込んで判定する緊急対応判定手段を備えていることを特徴とする請求項8記載のコンピュータプログラムを提供する。
【0024】
請求項10記載の発明では、前記修理・交換情報出力手段により出力された料金情報を、前記管理対象設備の修理・交換費用に関する所定期間毎の予算金額を顧客毎に記憶した予算金額データベースの予算金額と比較し、当該修理・交換を実施した場合に、当期予算期間の予算金額の範囲内か否かを検証する修理・交換費用判定手段と、
前記修理・交換費用判定手段によって当期の予算金額の範囲外と判定された場合には、当該修理・交換の実施時期が次期以降の予算期間となるように実施時期を調整し、その実施時期を出力する実施時期調整手段と
を備えることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1に記載のコンピュータプログラムを提供する。
【0025】
請求項11記載の発明では、前記実施時期調整手段は、前記優先実施設備判定手段により、優先して修理・交換を実施すべきと判定された管理対象設備が存在する場合には、
前記修理・交換費用判定手段によって当期の予算金額の範囲外と判定された場合でも、当該修理・交換の実施時期を当期予算期間となるように出力する補正手段を備えることを特徴とする請求項10記載のコンピュータプログラムを提供する。
【0026】
(作用)
このコンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることで、上記した設備管理支援を実施することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、 修理・交換を要する管理対象設備を速やかに特定すると共に、その設備の修理・交換費用を容易に知ることができる。従って、メンテナンス予算等との関係で、不具合対応時期の調整を可能とし、種々の設備の管理に適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本願発明の実施形態について図1から図5を参照して説明する。図1は、設備管理支援システム10の全体構成を示した概略図であり、この図に示したようなハードウェア構成を有するコンピュータから構成される。図2は、端末装置20のハードウェア構成を示したブロック図であり、図3及び図4は、設備管理支援システム10の処理を示したフローチャートであり、図5は、予算金額の平準化処理を示したフローチャートである。
本実施形態では、設備管理支援システム10が管理する管理対象設備として「トイレ設備」を例に挙げて説明していく。
【0029】
図1に示すように、設備管理支援システム10は、各種演算処理を行うCPU11、RAM(メモリ)12、オペレーティングシステム、アプリケーションソフトおよび各種データが記憶される記憶部13、マウスやキーボード等の入力部14、ディスプレイ等の表示部15、インターネットやイントラネットなどの電気通信回線に接続可能な通信部16、各種データをプリンタ等に出力可能な出力部17各種データの入出力部である入出力ポート18を備えている。
【0030】
記憶部13には、設備管理支援システムを実行するためのプログラムがインストールされていると共に、管理対象設備基礎データベース40、修理・交換情報データベース50、不具合対策情報データベース60及び予算金額データベース70が形成されている。
【0031】
管理対象設備基礎データベース40には、小便器・大便器、これらに付随する洗浄水供給管、排水管、換気装置、芳香・消臭器などの各設備の取り付け場所、耐用年数及び設置年月日などの基礎データが記憶されている。
【0032】
修理・交換情報データベース50には、管理対象設備基礎データベース40に記憶された各管理対象設備に対応させて、不具合が発生した際に、修理又は交換依頼する修理会社等の依頼先が記憶されている。また、当該管理対象設備を修理した際の費用や交換した際の費用が人件費も含めて料金情報として記憶されている。
【0033】
不具合対策情報データベース60には、予想される不具合情報、過去に発生した不具合情報及び不具合対策情報、不具合の緊急度を示す緊急度データが記憶されている。「不具合情報」及び「不具合対策情報」は、上記したとおりであり、これらの情報が記憶されていることにより、受信した不具合情報をこの不具合情報データベース60に照らし合わせることで、適切な対策を講ずることができる。「不具合情報」には、「緊急度:高い」などの緊急度データを関連づけて記憶させておくことが好ましい。緊急度データを参照可能とすることで、優先実施すべき作業を容易に特定できる。
【0034】
予算金額データベース70は、顧客毎の修理・交換費用に関する所定期間毎の予算金額が記憶されている。所定期間とは、例えば、月額あるいは年額の予算であり、『顧客Aの月額予算:10万円』、『顧客Bの年額予算:250万円』などである。
【0035】
図2は、端末装置20を構成するコンピュータのハードウェア構成を示したブロック図である。端末装置20は、各種演算処理を行うCPU21、RAM22、オペレーティングシステム、アプリケーションソフトおよび各種データが記憶される記憶部23、マウスやキーボード等の入力部24、ディスプレイ等の表示部25、インターネットやイントラネットなどの電気通信回線に接続可能な通信部26、各種データをプリンタ等に出力可能な出力部27および各種データの入出力部である入出力ポート28を備えて構成されている。トイレ設備の不具合による修理依頼は、通信部26が保守管理コンピュータ10に接続して不具合情報を送信する。なお、端末装置20は、管理対象のトイレ設備を保有する顧客のビル・工場などに設置されているもののほか、顧客先に派遣した作業員が保持する端末装置を含む。例えば、トイレ設備で定期点検を行った際に不具合を発見した場合などには、作業員が保持する端末装置から不具合情報を送信する。
【0036】
図3に設備管理支援システム10の一連の処理を示す。トイレ設備のいずれかで不具合が生じた際は、端末装置20の通信部26が保守管理コンピュータ10の通信部16に接続し、その不具合情報を送信する(S101)。保守管理コンピュータ10は、端末装置20から送信された不具合情報を受信する(S102)。ここで受信した不具合情報は、コンピュータプログラムである不具合対策情報抽出手段が、トイレ設備の不具合情報に対応する不具合対策情報を、不具合対策情報データベース60から抽出する(S103)。
【0037】
例えば、「東側トイレ付近の臭いが急に激しくなった」という不具合情報であれば、その不具合情報を不具合対策情報データベース60のデータと比較する。不具合対策情報データベース60には、予想される不具合情報及び過去に発生した不具合情報が記憶されているので、上記の受信した不具合情報と比較して、双方の単語の一致率、シソーラスの比較などを行って、不具合対策情報データベース60に記録されているものの中から関連性の高い不具合情報を特定し、さらに、当該データベース60に記録された当該不具合情報に対応する不具合対策情報を抽出する。不具合対策情報データベース60に、例えば、「トイレの強い悪臭」という不具合情報と、それに対応して「排水管の交換」という不具合対策情報が記憶されている場合に、不具合対策情報抽出手段は、上記の「東側トイレ付近の臭いが急に激しくなった」という不具合情報に対して、これらの情報を抽出する。
【0038】
次いで、修理・交換設備特定手段が、不具合対策情報抽出手段により抽出された不具合対策情報の文章中に含まれる管理対象設備である排水管を、管理対象設備基礎データベース40にアクセスして特定する(S104)。上記の例では、例えば、「東側トイレ」に接続されている排水管の詳細な設置場所などを特定する。
【0039】
修理・交換を要する排水管の特定後、排水管の耐用年数及び設置年月日に関するデータを管理対象設備基礎データベース40から読み込み(S105)、その読み込んだデータに基づいて、優先実施設備判定手段が、修理・交換を実施すべき管理対象設備の優先実施度合いを判定する(S106)。上記した例では不具合が一つしかないか、顧客からの不具合情報を同じ予算期間内で複数受信している場合もある。耐用年数到達までの期間、あるいは、既に耐用年数を超えている場合には、どの程度超えているかを参照して、耐用年数を超えている場合には、超過期間のより長いもの、未到達の場合には、より耐用年数に近いものほど、優先度が高いものと判定する。
【0040】
この結果、例えば、排水管の耐用年数到達までに相当の期間があり、修理・交換を実施すべきとされた他の管理対象設備の耐用年数の期間が迫っている場合、排水管については、次の予算期間(翌月又は翌年)以降の修理・交換対象とする(S107)。一方、耐用年数の迫っている他の管理対象設備については、当期において修理・交換が実施されることになり、コンピュータプログラムである修理・交換情報出力手段が、修理・交換情報データベース50にアクセスし、修理・交換依頼先等の情報を出力する(S112)。これにより、修理・交換すべき管理対象設備が同時期に複数ある場合に、優先して修理・交換すべき管理対象設備が明確化されるため、予算期間毎の経費の平準化に資する。
【0041】
本実施形態の設備支援管理システム10は、さらに不具合対策情報データベース60の緊急度データを参照する構成とすることが好ましい。この場合には、図4に示したように、耐用年数との関係で優先して修理・交換する設備か否かを判定した後(S106、S107)、判定対象になった管理対象設備についてコンピュータプログラムである緊急対応判定手段が、各不具合対策情報に関連づけて記憶された緊急度データを不具合対策情報データベース60から読み込む(S108)。そして、読み込んだ不具合対策情報に緊急度データが付与されているか否かによって緊急対応を要するか否かを判定する(S109)。
【0042】
この結果、例えば、優先実施設備判定手段によるS106の工程で、翌月以降の修理・交換対象とされていた「排水管の交換」であっても、「緊急度:高い」という緊急度データが付されていた場合には、優先実施設備判定手段の判定結果に拘わらず、優先して修理・交換が実施される(S110)。次に、上記と同様、修理・交換情報出力手段が、修理・交換情報データベース50にアクセスし、上記修理・交換設備特定手段によって特定された排水管の修理・交換依頼先情報及び料金情報を出力する(S112)。これにより、管理者は、排水管の修理・交換依頼先に速やかに連絡できると共に、修理・交換に要する料金情報を容易に知ることができる。
【0043】
一方、緊急度データが付与されていない場合には、優先実施設備判定手段に従って、翌月以降の修理・交換対応とされる(S111)。耐用年数や予算のみに従うと、緊急事態が生じても速やかに対応できない場合があるが、緊急対応判定手段を有することにより、緊急対応すべき作業が、耐用年数や予算に拘わらず優先されることになるため、緊急事態にも適切に対応できる。
【0044】
図5は、予算金額の平準化処理を示したフローチャートである。予算金額の平準化は、まず、修理・交換情報出力手段によって料金情報が出力される(S201)。そして、この料金情報を、コンピュータプログラムである修理・交換費用判定手段が予算金額データベース70に記憶された顧客毎の予算金額と比較し、当該修理・交換を実施した場合に、当期予算期間の予算金額の範囲内か否かを検証する(S202)。ここで、当期の予算金額の範囲外と判定された場合には、コンピュータプログラムである実施時期調整手段が当該修理・交換の実施時期が次期以降の予算期間となるように実施時期を調整し(S203)、その実施時期を出力する(S205)。
【0045】
すなわち、顧客との間に、例えば、一月ごとの修理・交換費用が10万円という契約がなされているとする。この場合、修理・交換費用判定手段では、当該修理・交換を実施した場合に、修理・交換情報出力手段により出力された今回の料金(例えば、3万円)を加えた当期に要した修理・交換費用が、前記予算金額(10万円)の範囲内か否かを検証する。その結果、当期の予算金額の範囲外と判定された場合には、実施時期調整手段は、当該修理・交換の実施時期を、例えば、翌月になるように調整し、その時期を出力する。これにより、ある月において、修理・交換費用が突出することが少なくなり、予算使用の平準化が図れる。一方、当期の予算金額の範囲内と判定された場合には、そのまま修理・交換が行われる(S206)。
【0046】
但し、予算との関係で、翌月、とされるものであっても、緊急度データの付されたものについては、緊急に対応する必要がある。そこで、確認のため、不具合対策情報データベース60の緊急度データをここでもう一度読み込む(S204)。そして、緊急度データが付されている場合には、コンピュータプログラムとしての補正手段により、当期予算期間に実施するように補正し、出力する(S205,S206)。これにより、予算とのバランスをできるだけ図る一方で、緊急度合い等に応じて、より適切な対処をとることができる。
【0047】
なお、本実施形態の「管理対象設備」は、トイレ並びに、それに関連する設備を例に挙げて説明しているが、これらに限定されるものではない。すなわち、「管理対象設備」とは、顧客が保有あるいは使用しているビル、工場などの建物自体、当該建物に付帯するトイレ、カーペット、空調などの設備、さらには、顧客が建物内に設置した機械、装置、害虫駆除など、顧客が管理依頼した種々の物品などでもよい。
【0048】
例えば、害虫駆除管理に適用した場合には、害虫が頻繁に発生しやすい場所や時期などのデータを予めデータベースに記憶しておくことで、注目すべき設備が限定され、それらを集中管理することで害虫発生頻度を低減させるシステムとして機能する。
【0049】
また、カーペット管理に適用した場合には、カーペットの汚れ発生時期と、スペアのカーペットデータの数量などを予めデータベースに記憶しておくことで、より適切なクリーニング時期を抽出し、常時クリーンな状態を保つためのシステムとして機能させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】設備管理支援システムの全体構成を示した概略図である。
【図2】端末装置のハードウェア構成を示したブロック図である。
【図3】設備管理支援システムの処理を示したフローチャートである。
【図4】設備管理支援システムの処理を示したフローチャートである。
【図5】予算金額の平準化処理を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
10 設備管理支援システム
11、21 CPU
12、22 RAM
13、23 記憶部
14、24 入力部
15、25 表示部
16、26 通信部
17、27 出力部
18、28 入出力ポート
20 端末装置
40 管理対象設備基礎データベース
50 修理・交換情報データベース
60 不具合対策情報データベース
70 予約金額データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理対象設備の不具合情報を基に適切な不具合対策を施すために使用される設備管理支援システムであって、
前記各管理対象設備の取り付け場所、耐用年数及び設置年月を含む基礎データが記憶された管理対象設備基礎データベースと、
前記各管理対象設備の不具合発生時における、少なくとも修理・交換依頼先情報及び料金情報が記憶された修理・交換情報データベースと、
予想される不具合情報及び過去に発生した不具合情報が記憶されていると共に、各不具合情報毎に、修理・交換すべき管理対象設備を含む不具合対策情報が記憶されている不具合対策情報データベースと、
前記不具合対策情報データベースから、前記管理対象設備の不具合情報に対応する不具合対策情報を抽出する不具合対策情報抽出手段と、
前記不具合対策情報抽出手段により抽出された不具合対策情報に従って、修理・交換を要する管理対象設備を前記管理対象設備基礎データベースにアクセスして特定する修理・交換設備特定手段と、
前記修理・交換設備特定手段によって特定された管理対象設備について、前記修理・交換情報データベースにアクセスし、当該管理対象設備の修理・交換依頼先情報及び料金情報を出力する修理・交換情報出力手段と
を備えることを特徴とする設備管理支援システム。
【請求項2】
さらに、前記修理・交換設備特定手段によって抽出された修理・交換を要する管理対象設備について、前記管理対象設備基礎データベースにアクセスして、当該管理対象設備の耐用年数及び設置年月日に関するデータを読み込み、耐用年数との関係から、優先して修理・交換を実施すべき管理対象設備を特定する優先実施設備判定手段を備えていることを特徴とする請求項1記載の設備管理支援システム。
【請求項3】
前記優先実施設備判定手段は、さらに、前記不具合対策情報抽出手段により抽出された不具合対策情報が緊急対応を要するか否かを、前記各不具合対策情報に関連づけて記憶された緊急度データを読み込んで判定する緊急対応判定手段を備えていることを特徴とする請求項2記載の設備管理支援システム。
【請求項4】
さらに、前記管理対象設備の修理・交換費用に関する所定期間毎の予算金額を顧客毎に記憶した予算金額データベースと、
前記修理・交換情報出力手段により出力された料金情報を、前記予算金額データベースの予算金額と比較し、当該修理・交換を実施した場合に、当期予算期間の予算金額の範囲内か否かを検証する修理・交換費用判定手段と、
前記修理・交換費用判定手段によって当期の予算金額の範囲外と判定された場合には、当該修理・交換の実施時期が次期以降の予算期間となるように実施時期を調整し、その実施時期を出力する実施時期調整手段と
を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の設備管理支援システム。
【請求項5】
前記実施時期調整手段は、前記優先実施設備判定手段により、優先して修理・交換を実施すべきと判定された管理対象設備が存在する場合には、
前記修理・交換費用判定手段によって当期の予算金額の範囲外と判定された場合でも、当該修理・交換の実施時期を当期予算期間となるように出力する補正手段を備えることを特徴とする請求項4記載の設備管理支援システム。
【請求項6】
前記管理対象設備は、建物自体、又は建物内部に設置される電気設備、トイレ設備もしくは空調設備などを含む建物関連設備であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1に記載の設備管理支援システム。
【請求項7】
管理対象設備の不具合情報を基に適切な不具合対策を施す設備管理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムであって、
予想される不具合情報及び過去に発生した不具合情報が記憶されていると共に、各不具合情報毎に、修理・交換すべき管理対象設備を含む不具合対策情報が記憶されている不具合対策情報データベースから、前記管理対象設備の不具合情報に対応する不具合対策情報を抽出する不具合対策情報抽出手段と、
前記不具合対策情報抽出手段により抽出された不具合対策情報に従って、修理・交換を要する管理対象設備を、前記各管理対象設備の取り付け場所、耐用年数及び設置年月を含む基礎データが記憶された管理対象設備基礎データベースにアクセスして特定する修理・交換設備特定手段と、
前記修理・交換設備特定手段によって特定された管理対象設備について、前記各管理対象設備の不具合発生時における、少なくとも修理・交換依頼先情報及び料金情報が記憶された修理・交換情報データベースにアクセスし、当該管理対象設備の修理・交換依頼先情報及び料金情報を出力する修理・交換情報出力手段と
を備えることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項8】
さらに、前記修理・交換設備特定手段によって抽出された修理・交換を要する管理対象設備について、前記管理対象設備基礎データベースにアクセスして、当該管理対象設備の耐用年数及び設置年月日に関するデータを読み込み、耐用年数との関係から、優先して修理・交換を実施すべき管理対象設備を特定する優先実施設備判定手段を備えていることを特徴とする請求項7記載のコンピュータプログラム。
【請求項9】
前記優先実施設備判定手段は、さらに、前記不具合対策情報抽出手段により抽出された不具合対策情報が緊急対応を要するか否かを、前記各不具合対策情報に関連づけて記憶された緊急度データを読み込んで判定する緊急対応判定手段を備えていることを特徴とする請求項8記載のコンピュータプログラム。
【請求項10】
前記修理・交換情報出力手段により出力された料金情報を、前記管理対象設備の修理・交換費用に関する所定期間毎の予算金額を顧客毎に記憶した予算金額データベースの予算金額と比較し、当該修理・交換を実施した場合に、当期予算期間の予算金額の範囲内か否かを検証する修理・交換費用判定手段と、
前記修理・交換費用判定手段によって当期の予算金額の範囲外と判定された場合には、当該修理・交換の実施時期が次期以降の予算期間となるように実施時期を調整し、その実施時期を出力する実施時期調整手段と
を備えることを特徴とする請求項7〜9のいずれか1に記載のコンピュータプログラム。
【請求項11】
前記実施時期調整手段は、前記優先実施設備判定手段により、優先して修理・交換を実施すべきと判定された管理対象設備が存在する場合には、
前記修理・交換費用判定手段によって当期の予算金額の範囲外と判定された場合でも、当該修理・交換の実施時期を当期予算期間となるように出力する補正手段を備えることを特徴とする請求項10記載のコンピュータプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−59492(P2008−59492A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238461(P2006−238461)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(591047970)共立製薬株式会社 (20)