説明

設定診断システム、空気調和機、センサ装置、計測器及び電気機器

【課題】消費電力、コスト及び処理負担を増大させず、装置の大型化を招くことなく、情報漏洩を防止しつつ、電子装置の設定及び診断を容易とする。
【解決手段】電源回路32は、外部電源35から供給される交流電圧を直流電圧に変換する。受電コイル22は、電磁誘導結合により外部から電力を受給する。受電回路23は、受電コイル22を介して受給された交流電力を受電し、直流電力に変換する。送受信コイル24は、電磁誘導結合により外部との間でデータを送受信する。送信回路25及び受信回路26は、送受信コイル24を介して、データを送受信する。メモリ29は、送受信されるデータを記憶する。電源回路32からの電力は、主機能部31、送信回路25、受信回路26、制御部27、メモリ29に供給される。受電回路23からの電力は、送信回路25、受信回路26、制御部27、メモリ29に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子装置及び設定診断装置を備える設定診断システム、前記電子装置を備える空気調和機、センサ装置、計測器及び電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
設定器を用いて、非接触に、ネットワークの端末装置にデータを設定する非接触設定システムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。この非接触設定システムでは、設定器が1次コイルを備え、端末装置が2次コイルを備えている。この1次、2次コイルを介して、設定器から端末装置に電力が供給される。これにより、端末装置に電源装置が接続されていない状態であっても、設定器から端末装置に電力が供給されるので、データ設定作業を行うことができる。
【0003】
また、RFID(Radio Frequency Identification)システムを用いて、外部から受信した情報を、制御部に書き込むことにより、仕様を設定する電気機器が開示されている(例えば、特許文献2参照)。この電気機器では、その筐体に、電気機器の各構成要素を制御する制御部に接続されるタグが取り付けられている。出荷先において、リーダ/ライタは、電気機器を構成する表示手段や駆動手段などの動作条件を規定する情報を、タグを介して制御部に送信する。制御部は、その情報に従って、表示手段や駆動手段を制御する。
【0004】
この電気機器では、特定のタグとリーダ/ライタの組み合わせでしか、情報交換ができないため、情報の漏洩を防止することができる。また、電気機器が梱包材で梱包された状態でも情報の送信が可能であるため、梱包材を取り外す手間を省くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−252579号公報
【特許文献2】特開2006−092385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に係る非接触設定システムでは、設定器が、データを設定している間、端末装置全体を動作させるだけの電力を端末装置に供給する必要がある。設定情報を設定するだけなのに、本来動作する必要のない部分にも電力が供給されるようになるため、その電力が無駄になる。さらに、装置側の主機能部分にも電力が供給され、その部分が動作することにより、設定作業中の安全性が低下するおそれがある。また、設定器を、端末装置全体を動作させるのに必要な電力を供給するものとする必要があるため、設定器が、大型かつ高コストなものとなってしまう。
【0007】
上記特許文献2に記載の電気機器では、RFIDを用いるので、電気機器に設定された情報の確認や変更が容易となるうえ、情報の漏洩を防止することができる。しかしながら、この電気機器では、電気機器の制御部とリーダ/ライタとの間にタグを介しているため、制御部の有する情報をリーダ/ライタへ送信するには、電気機器内において、リーダ/ライタとタグとの間の通信仕様に従って、その情報を変換する必要がある。
【0008】
このような変換は、電気機器の処理負担の増大につながる。動作状態の計測結果や動作状態のログなどの大量のデータをリアルタイムに変換し、送信しようとすると、電気機器の処理負荷が増大する。
【0009】
また、上記特許文献2に記載の電気機器では、電気機器にRFIDのタグ及びタグと制御部とを接続するインターフェイスが必要となるので、電気機器のコストが増大する。
【0010】
この発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、消費電力、コスト及び処理負担を増大させることなく、また、装置の大型化を招くことなく、情報の漏洩を防止しつつ、電子装置の設定及び診断を、容易に行うことができる設定診断システム、空気調和機、センサ装置、計測器及び電気機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、この発明に係る設定診断システムは、電子装置と設備診断装置とを備える。この設定診断システムにおいて、電子装置は、所定の機能を発揮するための通常動作を行う主機能部と、外部電源から供給される交流電力を直流電力に変換する電源回路と、電磁誘導結合により外部から電力を受給する第1のコイルと、第1のコイルを介して受給された交流電力を受電し、直流電力に変換する受電回路と、電磁誘導結合により外部との間で情報を送受信する第2のコイルと、第2のコイルを介して、情報を送受信する送受信回路と、送受信回路により送受信される情報を記憶する記憶部と、電源回路で変換された直流電力を、主機能部と、送受信回路と、記憶部とに供給する第1の電力供給路と、受電回路で変換された直流電力を、送受信回路と、記憶部とに供給する第2の電力供給路と、を備える。第1のコイルと、第2のコイルとが、個別に設けられている。設備診断装置は、第3のコイルと、電磁誘導結合により電力を供給する給電回路と、第4のコイルと、電磁誘導結合により情報を送受信するために設けられた送受信回路と、第3のコイル及び第4のコイルの電磁誘導結合により、給電回路により給電及び送受信回路によりデータ送受信が可能となった電子装置に電力が供給されているか否かを判定する給電状態判定部と、を備え、給電状態判定部により、電力が供給されていないと判定された場合に、給電回路を用いて、電子装置に電力を供給しつつ、送受信回路を用いて情報を送受信する。第3のコイルと、第4のコイルとが、個別に設けられている。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、外部電源から供給され、電源回路で変換された電力は、電子装置全体に供給される一方、第1のコイル及び受電回路で受電され変換された電力は、送受信回路と、記憶部とに供給される。これにより、電子装置への電力の供給状態に応じて、電子装置が動作する範囲を必要な範囲に限定することができるので、電子装置及び設定診断装置の消費電力及びコストを低減し、それらの小型化を実現することができる。
【0013】
また、この発明によれば、送受信回路を通じて、非接触で、外部との情報交換が可能となる。これにより、電子装置に、タグ及びタグと制御部とを接続するインターフェイスを組み込む必要がなくなるので、消費電力やコストの増大を抑制することができる。また、電磁誘導結合による情報交換は至近距離で行われるので、情報の漏洩を防止することができる。
【0014】
また、情報交換に当たって、通信仕様に従った特別な変換をマイクロプロセッサで行う必要がなくなるので、電子装置の処理負担を軽減することができる。また、外部電源から電力が供給されていない状態においても、受電回路を用いて電力を受給し、外部との情報交換が可能となる。
【0015】
また、この発明によれば、外部装置を入出力部として機能させることができるので、入出力部が不要となる。この結果、消費電力、コスト及び処理負担を軽減することができる。
【0016】
以上のことから、本発明によれば、消費電力、コスト及び処理負担を増大させることなく、また、装置の大型化を招くことなく、情報の漏洩を防止しつつ、電子装置の設定又は診断を、容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の実施の形態1に係る設定診断システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1の設定診断システムの電力系の回路構成図である。
【図3】図1の設定診断システムの送受信系の回路構成図である。
【図4】図4(A)は、デジタル信号の信号パターンの一例であり、図4(B)は、図4(A)の信号パターンに対応するASK方式の伝送信号であり、図4(C)は、図4(A)の信号パターンに対応するFSK方式の伝送信号であり、図4(D)は、図4(A)の信号パターンに対応するPSK方式の伝送信号である。
【図5】図5(A)乃至図5(H)は、コイルの配置を説明するための模式図である。
【図6】図1の設定診断装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】図6の応答内容解析のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態2に係る設定診断システムの構成を示すブロック図である。
【図9】図8の設定診断システムの電力系及び送受信系の回路構成図である。
【図10】この発明の実施の形態3に係る設定診断システム及びその設定診断システムが適用される空調システムの構成を示す斜視図である。
【図11】この発明の実施の形態4に係る設定診断システム及びその設定診断システムが適用されるセンサ装置の構成を示す斜視図である。
【図12】この発明の実施の形態5に係る設定診断システム及びその設定診断システムが適用されるセンサ装置の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
実施の形態1.
まず、この発明の実施の形態1について説明する。
【0020】
図1に示すように、この実施の形態に係る設定診断システム200は、設定診断装置1を中心にして構築されている。設定診断装置1は、電子装置21の設定及び診断を行う。
【0021】
まず、設定診断装置1の構成について説明する。設定診断装置1は、第1のコイルとしての給電コイル2と、給電回路3と、第2のコイルとしての送受信コイル4と、送信回路5と、受信回路6と、を備える。
【0022】
給電コイル2は、電子装置21に電力を給電するために設けられている。給電回路3は、給電コイル2の電磁誘導結合により、電子装置21に電力を供給する。
【0023】
送受信コイル4は、電子装置21との間で、情報を送受信するために設けられている。送信回路5は、送受信コイル4の電磁誘導結合により、電子装置21に情報を送信する。受信回路6は、送受信コイル4の電磁誘導結合により、送受信コイル4の電磁誘導結合により、電子装置21から情報を受信する。送信回路5と、受信回路6とが、送受信回路に対応する。
【0024】
設定診断装置1は、制御部7と、メモリ9と、入力部10と、出力部11と、をさらに備える。制御部7は、給電状態判定部8を備える。
【0025】
制御部7は、例えばマイクロコンピュータを備える。メモリ9は、例えば、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリである。メモリ9は、制御部7に内蔵されていてもよいし、制御部7に外付けされていてもよい。
【0026】
入力部10は、外部から情報を入力する。入力部10は、設定診断装置1を使用する使用者からの操作指示等を入力する。入力部10には、例えば、キーやスイッチ、タッチパネル、マウスのような操作入力手段が設けられている。入力部10は、この操作入力手段の操作内容に応じた操作情報を制御部7に出力する。
【0027】
出力部11は、情報を外部に出力する。出力部11は、液晶パネルなどの文字又は画像等を表示するディスプレイや発光ダイオード、音声データを出力するスピーカなどの発音素子、振動モータなどの振動素子などを備える。出力部11は、使用者の操作指示、電子装置21の内部情報などの各種情報を外部に表示、音声出力又は振動出力等する。
【0028】
設定診断装置1は、電源回路12と、電力供給路13と、をさらに備える。電源回路12は、交流の外部電源14から供給された交流電力を直流電力に変換して、電力供給路13を介して、設定診断装置1の各構成要素(送信回路5、受信回路6、制御部7、メモリ9、入力部10、出力部11)に供給する。
【0029】
電源回路12は、直流電圧を給電回路3にも供給する。給電回路3は、直流電圧を、交流電圧に変換して、給電コイル2に出力する。給電回路3は、制御部7の制御の下で、給電コイル2への電力供給の実行・停止の切り替えを行うことが可能である。
【0030】
なお、この実施の形態では、外部電源14を、有線接続された交流電源としたが、直流電源や、無線接続されたものや、設定診断装置1に搭載可能な電池を用いるようにしてもよい。
【0031】
設定診断装置1の各構成要素について、さらに詳細に説明する。
【0032】
メモリ9は、制御部7によって用いられる情報を記憶する。メモリ9は、制御部7で実行されるプログラムや、制御部7によって管理される電子装置21の内部情報、すなわち電子装置21の動作を規定するパラメータの設定値(動作情報)や電子装置21の動作状態、動作ログを示す動作情報などを記憶する。
【0033】
制御部7は、メモリ9に保持されたプログラムを実行することにより、設定診断装置1の各構成要素を統括制御する。給電状態判定部8は、制御部7によってプログラムが実行されることにより実現される機能の1つである。給電状態判定部8は、電子装置21の電源との接続状態を判定する。この他、制御部7で実行されるプログラムには、例えば、電子装置21の診断処理や、送信回路5及び受信回路6を用いたデータ送受信処理、入力部10や出力部11を用いた入出力処理などがある。
【0034】
続いて、診断対象となる電子装置21の構成について説明する。電子装置21は、第1のコイルとしての受電コイル22と、受電回路23と、電源回路28と、第2の電力供給路としての電力供給路34と、を備える。
【0035】
受電コイル22は、設定診断装置1の給電コイル2と電磁誘導結合することにより電力を受給する。受電回路23は、受電コイル22で受給された交流電力を受電し、直流電力に変換する。電源回路28は、受電回路23から出力された直流電力を、電力供給路34を介して、後述する送信回路25と、受信回路26と、制御部27と、メモリ29と、に供給する。
【0036】
電子装置21は、送受信コイル24と、送信回路25と、受信回路26と、をさらに備える。
【0037】
送受信コイル24は、設定診断装置1のコイル2と電磁誘導結合し、データ送受信を行うために設けられている。送信回路25は、送受信コイル24を介して設定診断装置1に情報を送信する。受信回路26は、送受信コイル24を介して設定診断装置1から情報を受信する。
【0038】
電子装置21は、制御部27と、メモリ29と、インターフェイス(I/F)回路30と、主機能部31と、電源回路32と、第1の電力供給路としての電力供給路33と、をさらに備える。
【0039】
制御部27は、例えばマイクロプロセッサを備える。メモリ29は、例えば、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリである。メモリ29は、制御部27に内蔵されるようにしてもよいし、外付けされるようにしてもよい。
【0040】
I/F回路30は、電子装置21が他の電子装置と接続するための通信用インターフェイスである。ここで、I/F回路30の通信方式として、有線としてLAN(Local Area Network)、RS−232C、RS−485や、無線ではWireless LAN、UWB(Ultra Wide Band)、ZigBee、Blueetooth、特定省電力無線など、どのような方式を採用してもよい。
【0041】
主機能部31は、電子装置21の機能を実現する各構成要素をまとめたものである。主機能部31は、電子装置21によって実現される所定の機能を発揮するための通常動作を行う。
【0042】
電源回路32は、外部電源35と接続されると、外部電源35から供給される交流電圧を、直流電圧に変換する。電力供給路33は、電源回路32からの直流電力を供給するために配設されている。電源回路32から出力された直流電圧は、電力供給路33により、I/F回路30や、主機能部31に供給される。
【0043】
さらに、電源回路32は、直流電力を、電源回路28にも供給する。電力回路28は、この直流電力を、電力供給路34を介して、送信回路25と、受信回路26と、制御部27と、メモリ29と、に供給する。すなわち、電子装置21に外部電源35が接続されると、その電力が、電子装置21の全体の構成要素に供給されるようになる。
【0044】
電子装置21の各構成要素について、さらに詳細に説明する。
【0045】
メモリ29は、制御部27によって用いられる情報を記憶する。より具体的には、メモリ29は、制御部27によって実行されるプログラムや主機能部31の動作を規定するパラメータの設定値や電子装置21の動作情報、動作ログなどの動作情報を記憶する。
【0046】
制御部27は、メモリ29に保持されたプログラムを実行することにより、外部の機器と通信を行うためのI/F回路30、送信回路25、受信回路26及び主機能部31を含めた電子装置21全体の統括制御を行う。このようなプログラムには、例えば、主機能部31の処理や、送信回路25及び受信回路26を用いたデータ送受信処理、I/F回路30を介しての他の電子装置とのデータ送受信処理などがある。
【0047】
上述のように、診断装置1は給電コイル2を備え、電子装置21は受電コイル22を備えている。給電コイル2及び受電コイル22は互いに対向している。
【0048】
給電コイル2に電流が流れると、受電コイル22が電磁誘導結合により接続され、設定診断装置1から電子装置21へ、お互いに電気的な接点を有することなく、電力が供給される。
【0049】
さらに、診断装置1は送受信コイル4を備え、電子装置21は送受信コイル24を備えている。送受信コイル4及び送受信コイル24は互いに対向している。
【0050】
送受信コイル4に電流が流れると、送受信コイル24が電磁誘導結合により接続され、送受信コイル4、送受信コイル24が、電磁誘導結合通信用インターフェイスとなって、設定診断装置1と電子装置21との間のデータ送受信が実現される。この結果、設定診断装置1及び電子装置21は、お互いに電気的な接点を有することなく、双方向のデータ送受信が可能となる。
【0051】
なお、受電コイル2、給電コイル22の間、送受信コイル4、24の間に、樹脂などの非磁性体があっても、お互いのコイルが電磁誘導により結合できていれば給電や通信が可能である。
【0052】
ここで、給電状態判定部8について詳細に説明する。
【0053】
通常状態において、電子装置21は、外部電源35から電力を供給されて動作する。電子装置21は、外部電源35が接続されていない状態では通常動作を行うことはできない。
【0054】
給電状態判定部8は、電子装置21から、外部電源35の給電情報を取得し、その取得された給電情報に基づいて、電子装置21に電力が供給されているか否かを判定する。給電情報とは、電子装置21に対して外部電源35から給電がされているか否かを示す情報である。
【0055】
給電状態判定部8が、電子装置21が外部電源35から給電されていないと判定すると、制御部7は、給電回路3に、給電コイル2への電力供給を実行させる。給電コイル2に供給された交流電力は、受電コイル22を介して、受電回路23により受電され、直流電圧に変換されて、電源回路28に出力される。電源回路28により得られた直流電圧は、電力供給路34を介して、送信回路25と、受信回路26と、制御部27と、メモリ29と、に供給される。
【0056】
給電状態判定部8が、電子装置21が外部電源35から給電されていると判定すると、電子装置21への給電を行う必要がないので、制御部7は、給電回路3に、給電コイル2への電力供給を停止させる。
【0057】
このように、設定診断装置1では、給電状態判定部8の判定結果に応じて、電子装置21へ電力を給電することができるようになっている。設定診断装置1から給電を行う場合には、電子装置21は、その電力を用いて、データ送受信機能のみ使用可能である。
【0058】
次に、給電コイル2、給電回路3、受電コイル22、受電回路23の回路構成について、さらに詳細に説明する。
【0059】
図2に示すように、給電回路3は、直流電圧入力端子40、直流交流変換回路41、共振コンデンサ42、駆動信号入力部43(端子43P、43N)を備える。受電回路23は、共振コンデンサ50、交流直流変換回路51、平滑コンデンサ52、直流電圧出力端子53を備える。
【0060】
直流電圧入力端子40には、電源回路12から出力される直流電圧が印加される。
【0061】
直流交流変換回路41は、複数のスイッチング素子41P、41Nを備えている。駆動信号入力部43の端子43P、43Nから入力される駆動信号に応じて、スイッチング素子41P、41Nが交互にオン/オフ制御されることにより、直流電圧入力端子40に入力される直流電圧が交流電圧に変換される。
【0062】
直流交流変換回路41により得られる交流電力は、共振コンデンサ42を介して給電コイル2に供給される。駆動信号入力部43の端子43P、43Nから入力される駆動信号は、制御部7より供給される。
【0063】
直流交流変換回路41の回路構成としては、図2に示すように、ハーフブリッジ方式が採用されている。しかしながら、フルブリッジ方式を採用することも可能である。
【0064】
給電コイル2、受電コイル22間の電磁誘導により、給電コイル2に供給された交流電力が、受電コイル22に伝達される。伝達された交流電力により、受電コイル22に生じた交流電圧は、共振コンデンサ50を介して交流直流変換回路51及び平滑コンデンサ52により直流電圧に変換され、直流電力出力部50から出力される。
【0065】
交流直流変換回路51として、図2に示すように、ダイオードブリッジからなる全波整流回路方式が採用されている。しかしながら、半波整流回路方式を採用するようにしてもよい。
【0066】
共振コンデンサ42、50は、電子回路の共振現象を利用して、出力側の電圧を上昇させるために用いられている。これらを用いれば、電磁誘導結合の効率を向上することができる。また、ここでは、共振コンデンサ42を直列共振方式とし、共振コンデンサ50を並列共振方式としている。しかしながら、使用する回路や使用環境に応じて、直列共振方式又は並列共振方式のいずれが採用されるようにしてもよい。
【0067】
次に、設定診断システム200の送受信系、すなわち送信回路5及び受信回路6、送信回路25、受信回路26の回路構成について、さらに詳細に説明する。
【0068】
まず、送信回路5の構成について説明する。図3に示すように、送信回路5は、送信信号入力端子61、搬送波発生部62、変調回路63及び共振コンデンサ64を備える。
【0069】
送信信号入力端子61は、送信されたシリアル信号を入力する。搬送波発生部62は、所定の周波数の搬送波である矩形波信号を発生させる。変調回路63は、送信信号入力端子61から入力されたシリアル信号を、矩形波信号を用いて変調する。共振コンデンサ64は、矩形波信号と同じ周波数成分に対して共振を発生させる。この共振コンデンサ64により、送受信回路のクオリティファクタを向上させることができる。
【0070】
続いて、受信回路6の構成について説明する。受信回路6は、検波回路65、復調回路66及び受信信号出力端子67を備える。
【0071】
検波回路65は、コイル2で受信された信号(コイル2で誘起された電圧信号)から搬送波成分を除去する。復調回路66は、検波回路65から出力された信号からシリアル信号を復調する。受信信号出力端子67は、復調回路66で復調されたシリアル信号を出力する。
【0072】
送信回路25及び受信回路26は、送信回路5及び受信回路6と対称的に配置されている。また、送信回路25、すなわち送信信号入力端子61、搬送波発生部62、変調回路63及び共振コンデンサ64の構成及び動作は、送信回路5のそれと同じである。また、受信回路26、すなわち検波回路65、復調回路66及び受信信号出力端子67の構成及び動作は、受信回路6のそれと同じである。
【0073】
ここで、送信回路5、25及び受信回路6、26の動作について、図3を参照して説明する。送信時において、送信信号入力端子61より入力されたシリアル信号は、搬送波発生部62より出力された所定の周波数の矩形波信号を用いて変調回路63により変調され、送受信コイル4に伝送される。
【0074】
このとき、電磁誘導により電磁誘導結合された送受信コイル24にシリアル信号に対応する誘起電圧が発生する。この誘起電圧に基づく信号は、受信回路26の検波回路65における搬送波成分の除去、復調回路66における復調を経てシリアル信号となり、受信信号出力端子67を介して制御部27に出力される。このようにして、シリアル信号が、設定診断装置1から電子装置21に伝送される。
【0075】
また、送信回路25では、送信時において、送信信号入力端子61より入力されたシリアル信号が、搬送波発生部62より発生された所定の周波数の矩形波信号を用いて変調回路63で変調され、コイル24に伝送される。
【0076】
変調されたシリアル信号がコイル24に伝送されると、電磁誘導により結合されたコイル4にシリアル信号に応じた誘起電圧が発生する。この誘起電圧に基づく信号は、受信回路6の検波回路65における搬送波成分の除去、復調回路66における復調を経てシリアル信号となり、受信信号出力端子67を介して制御部7に出力される。このようにして、シリアル信号が、電子装置21から設定診断装置1に伝送される。
【0077】
送信回路5、受信回路6、送信回路25及び受信回路26の通信方式としては、振幅変調方式(ASK、Amplitude Shift Keying)方式が採用されている。ASK方式を採用すれば、送受信系の回路構成を、図2に示すように、比較的簡単なものにできる。
【0078】
例えば、図4(A)に示すような1、0、1と変化するデジタル信号を送信する場合、ASK方式では、送信される信号は、例えば図4(B)に示すようになる。図4(B)に示すように、ASK方式は、搬送波の振幅を変えて1、0を表現する方式である。ASK方式は、外来ノイズなどの影響により振幅成分のノイズが信号に重畳された場合、通信品質が低下するなどの特徴がある。
【0079】
これよりも通信品質を向上する方式として、他に、図4(C)に示すようなFSK(Frequency Shift Keying)方式や、図4(D)に示すPSK(Phase Shift Keying)方式などがあるが、いずれの方式を採用するようにしてもよい。FSK方式は、搬送波の周波数を変えて1,0を表現する方式であり、PSK方式は、搬送波の周波数を変えて1,0を表現する方式である。
【0080】
次に、給電コイル2及び送受信コイル4の配置、受電コイル22及び送受信コイル24の配置について説明する。ここでは、給電コイル2および受電コイル22を「電力用コイル」とし、送受信コイル4及び送受信コイル24を通信コイルとして説明する。
【0081】
図5(A)乃至図5(H)には、電力用コイルと通信用コイルの組の配置例が示されている。図5(A)乃至図5(H)に示される配置例では、左右のどちらを電力用コイルとしても構わない。いずれにしても、設定診断装置1と電子装置21との間では、それぞれの電力用コイルと通信用コイルが対向するように配置される。
【0082】
図5(A)乃至図5(H)では、コイルの実装面に対してコイルの長さ方向が垂直となるように配置されたコイルを、コイルAとして示している。また、その実装面に対してその長さ方向が水平となるように配置されたコイルを、コイルBとして示している。コイルA、コイルBはソレノイド状のコイルである。
【0083】
電力用コイルと通信用コイルとは、お互いが干渉を起こさないように干渉の影響がなくなる距離を保持した状態で配置する必要がある。例えば、図5(A)、図5(D)、図5(E)には、同形状のコイルを同じ向きに配置した例が示されているが、これらについては、お互いのコイルから発生する磁束間に干渉が起きないように、コイル間に十分な距離を設けるか、干渉を起こさないように磁気シールドを設ける必要がある。
【0084】
なお、図5(A)、図5(D)、図5(E)に示す配置を採用しつつ、コイル間の距離を短くしたい場合には、電力と通信とで異なる周波数を使用するとよい。
【0085】
また、図5(B)、図5(C)、図5(F)に示すように、お互いのコイルが発生する磁束の発生方向が直交するような位置に配置すれば、お互いのコイルの距離を短くすることが可能となる。
【0086】
また、図5(G)、図5(H)に示すように、磁束の発生する方向が直交するような配置であれば、双方のコイルの中心が一致した位置に配置することが可能である。図5(G)、図5(H)に示す配置を採用すれば、コイルの実装面積を小さくすることができる。
【0087】
なお、各コイルについては、さらに磁性体からなるコア(図示せず)を用いて、対向するコイルとの結合度を高めてもよい。
【0088】
次に、この実施の形態に係る設定診断システム200の動作について説明する。
【0089】
電子装置21は、通常は、外部電源35から給電される電力により設定診断装置1とは独立して動作する。より具体的には、電子装置21は、外部電源35からの給電により、制御部27、メモリ29、主機能部31、インターフェイス回路30が動作し、各種機能を発揮している。
【0090】
設定診断装置1は、電子装置21の定期診断時、異常診断時又は設定変更時等に、電子装置21の近傍に設置される。電子装置21は、詳細なデータを表示可能な出力部や入力部を備えていないため、設定診断装置1を設置することによって、これらの機能が追加されることとなる。
【0091】
設定診断装置1は、使用する際に、給電コイル2及び送受信コイル4が受電コイル4及び送受信コイル24と対向するように配置される。
【0092】
設定診断装置1において、入力部10より、電子装置21を診断する旨の操作信号が入力されると、制御部7は、図6に示す設定診断処理を開始する。
【0093】
図6に示すように、制御部7は、給電回路3を駆動して、給電コイル2を介して電子装置21への給電を開始する(ステップS1)。
【0094】
続いて、制御部7は、給電動作開始後の設定診断動作の前処理として、電子装置21の動作の確認を行う。まず、制御部7は、機器確認要求の送信回数Nsを0に初期化する(ステップS2)。続いて、制御部7は、機器確認要求を、送信回路5、送受信コイル4を介して電子装置21に送信する(ステップS3)。
【0095】
続いて、制御部7は、送信回数Nsに1を加える(ステップS4)。続いて、制御部7は、電子装置21からの応答が有ったか否かを判定する(ステップS5)。電子装置21の制御部27は、送受信コイル24、受信回路26を介して機器確認要求を受信すると、電子装置21の給電情報状態を含む応答を返信する。ここでは、この応答が有ったか否かが判定される。
【0096】
電子装置21から応答がなかった場合(例えば、正常なデータを受信できなかった場合)には(ステップS5;No)、制御部7は、送信回数Nsが最大回数Ns_max以上であるか否かを判定する(ステップS6)。送信回数Nsが最大回数Ns_max以上でない場合(ステップS6;No)、制御部7は、機器確認要求を再送し(ステップS7)、ステップS4に戻る。
【0097】
まだ、応答がなく(ステップS5;No)、送信回数Nsが最大回数Ns_max以上でない限り(ステップS6;No)、ステップS4→S5→S6→S7が繰り返され、送信回数Nsがカウントアップされていく。
【0098】
そして、送信回数Nsが最大回数Ns_max以上になると(ステップS6;Yes)、制御部7は、通信異常が発生した、あるいは電子装置21が設定診断装置1に非対応であるなどと判定し、出力部11に異常状態を出力する(ステップS8)。その後、制御部7は、異常が発生したとして異常終了とし、すべての設定・診断処理を終了する。
【0099】
一方、電子装置21から応答があった場合(ステップS5;Yes)、制御部7の給電状態判定部8は、受信した電子装置21からの応答内容を解析するサブルーチンを実行する(ステップS9)。
【0100】
このサブルーチンでは、図7に示すように、給電状態判定部8は、電子装置21から受信したデータから、給電情報を抽出する(ステップS101)。続いて、給電状態判定部8は、抽出された給電情報に基づいて、外部電源35から給電されているか否かを判定する(ステップS102)。
【0101】
外部電源35から給電されていると判定された場合(ステップS102;Yes)、給電状態判定部8は、給電状態フラグPs_flgを1にセットし(ステップS103)、サブルーチンを終了する。一方、外部電源35から給電されていないと判定された場合(ステップS102;No)、給電状態判定部8は、給電状態フラグPs_flgを0にセットし(ステップS104)、サブルーチンを終了する。
【0102】
図6に戻り、給電状態判定部8は、給電状態フラグPs_flgに基づいて、電子装置21が給電状態にあるか否かを判定する(ステップS10)。ここで、「給電状態」とは、外部電源35により電子装置21が動作している状態か、設定診断装置1からの給電により動作している状態か、のいずれかの状態を示す。
【0103】
電子装置21が給電状態にないと判定されると(ステップS10;No)、外部電源35が接続されていないことになるので、制御部7は、給電回路3からの電力供給を維持し、設定・診断処理を実行する(ステップS11)。設定・診断処理の実行が完了した後、制御部7は、設定診断装置1から給電回路3に給電を停止させる(ステップS12)。その後、制御部7は、処理を終了する。
【0104】
一方、電子装置21が給電状態にあると判定されると(ステップS10;Yes)、電子装置21には、既に外部電源35より電源が供給されていることになるので、制御部7は、給電回路3に給電を停止させる(ステップS13)。続いて、給電動作を停止した状態で、制御部7は、設定・診断処理を実行する(ステップS14)。その後、制御部7は、処理を完了する。
【0105】
このように、外部電源35が接続されている状態では、電子装置21は、主機能部31を含めたすべての構成要素に電力が供給されている。一方で、外部電源35が接続されておらず、設定診断装置1より電力が供給されている場合には、電子装置21の設定診断に関連する構成要素のみに電力が供給されている。
【0106】
電子装置21は、設定診断装置1が設置されると、外部電源35から給電されているか否かを、応答として、設定診断装置1に返信する。設定診断装置1は、電子装置21が外部電源35からの給電により動作している場合は、給電を停止する。
【0107】
電子装置21が外部電源35から給電されていない場合としては、電子装置21の製造工程時や、電子装置21設置後の初期設定時などがある。電子装置21が動作するために最低限設定されるべきパラメータとしては、例えば、外部機器と接続されるI/F回路30におけるアドレスやプロトコルなどのパラメータや、電子装置21の主機能部31の機能選択のパラメータや、構成選択のパラメータなどがある。これらのパラメータの設定が適切に行われていなければ、外部電源35に接続し、電子装置21を動作させても正常な動作が見込めないため、設定診断装置1から電力を供給し、電子装置21の一部の機能のみを動作させてこれらのパラメータの設定を行う。
【0108】
一方、電子装置21が外部電源35から給電されている状態では、設定診断装置1は、電子装置21に給電を行う必要はないので、給電動作を停止し、データ送受信による設定診断だけを行う。このような動作は、定期診断や異常発生時の診断、経年変化による性能補正などのパラメータの設定値を変更する場合などに行われる。
【0109】
以上詳細に説明したように、この実施の形態によれば、外部電源35から供給され、電源回路32で変換された電力は、電子装置21全体に供給される一方、受電コイル22で受電され受電回路23で変換された電力は、送信回路25、受信回路26と、制御部27、メモリ29に供給される。これにより、電子装置21への電力の供給状態に応じて、電子装置21が動作する範囲を必要な範囲に限定することができるので、電子装置21及び設定診断装置1の消費電力及びコストを低減し、それらの小型化を実現することができる。
【0110】
また、この実施の形態によれば、電磁誘導結合により、非接触で、設定診断装置1と電子装置21とのデータ送受信が可能となる。これにより、電子装置21に、タグ及びタグと制御部とを接続するインターフェイスを組み込む必要がなくなるので、消費電力やコストの増大を抑制することができる。また、電磁誘導結合によるデータ送受信は至近距離で行われるので、情報の漏洩を防止することができる。
【0111】
また、データ送受信にあたって、通信仕様に従った特別な変換をマイクロプロセッサで行う必要がなくなるので、電子装置21の処理負担を軽減することができる。また、外部電源35から電力が供給されていない状態においても、受電回路23を用いて電力を受給し、データ送受信が可能となり、パラメータの設定が可能となる。
【0112】
また、この実施の形態によれば、設定診断装置1を入出力部として機能させることができるので、電子装置21に入出力部が不要となる。この結果、電子装置21の消費電力、コスト及び処理負担を軽減することができる。
【0113】
以上のことから、この実施の形態によれば、消費電力、コスト及び処理負担を増大させることなく、また、装置の大型化を招くことなく、情報の漏洩を防止しつつ、一般的な電子装置21の設定又は診断を、容易に行うことができる。
【0114】
また、この実施の形態によれば、インターフェイスの電気的な接点を不要とすることで、接点の信頼性を向上するとともに、取り扱いを容易にすることが可能となる。
【0115】
また、設定診断システム200を用いれば、データ送受信のための電気的な接点が不要となるので、電子装置21と設定診断装置1との間の絶縁が確保される。これにより、設定診断装置1を使用する者の安全を確保することができる。また、インターフェイスの機械的な欠損等がないので、データ通信の信頼性が向上する。また、非接触であるので、設定診断装置1の取り扱いも容易となる。
【0116】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2について説明する。
【0117】
図8に示すように、この実施の形態に係る設定診断装置1は、送受信コイル及び給電コイルが、給電コイル2として1つのコイルにまとめられている点と、送信回路5の代わりに、送信回路15を備えている点が、上記実施の形態1に係る設定診断装置1と異なる。また、電子装置21は、送受信コイル及び受電コイルが、受電コイル22にまとめられている点と、送信回路25の代わりに、送信回路36を備えている点が、上記実施の形態1に係る電子装置21と異なる。
【0118】
この実施の形態では、1対の受電コイル2と給電コイル22とを用いて、データ送受信及び電力の給電の両方が行われる。より具体的には、電力の給電に用いる搬送波を利用して、データ送信が行われる。
【0119】
図9には、電力供給の搬送波を利用してデータ送受信を行うための回路構成が示されている。
【0120】
図9に示すように、給電回路3は、信号入力部82を備えている点が上記実施の形態1と異なる。信号入力部82は、直流電圧入力端子40と、直流交流変換回路41との間に挿入されている。信号入力部82は、入力端子82iと、電圧振幅変更用の抵抗82rと、スイッチング素子82sとを備えている。送信回路15は、入力端子82iに接続されている。
【0121】
一方、受電回路23は、信号入力部72を備えている点が上記実施の形態1と異なる。信号入力部72は、平滑コンデンサ52と、直流電圧出力端子53の間に挿入されている。信号入力部72は、入力端子72iと、抵抗72rと、スイッチング素子72sとを備える。送信回路36は、入力端子72iに接続されている。
【0122】
次に、この実施の形態に係る設定診断システム200の動作について説明する。
【0123】
まず、設定診断システム200における給電に関連する動作については、上記実施の形態1と同じである。
【0124】
設定診断装置1から電子装置21へのデータ送信は、次のようにして行われる。
【0125】
直流交流変換回路41は、制御部7から出力される駆動信号入力部43の端子43P、43Nに入力される駆動信号により動作し、電子装置21に電力を供給する。この給電を行っている間に、制御部7から入力端子82iにデータ信号が入力される。このデータ信号に応じて、スイッチング素子82sがオン/オフ動作を繰り返すと、そのオン/オフ動作に応じて抵抗82rの両端が開放と短絡を繰り返す。
【0126】
これにより、直流交流変換回路41から出力される電圧が変化し、電子装置21の受電コイル22に発生する誘起電圧が変化する。この変化を受信回路26で検出、復調することで、データ信号が、設定診断装置1から電子装置21に伝送される。すなわち、この実施の形態では、電力を給電するための搬送波にデータ信号が重畳され、電力とともにデータ信号が送信される。すなわち、この実施の形態に係る、データ信号の通信方式は、ASK変調方式(図4(B))となる。
【0127】
また、電子装置21から設定診断装置1へのデータ送信は次のようにして行われる。
【0128】
直流交流変換回路41は、制御部7から出力される駆動信号入力部43の端子43P、43Nに入力される駆動信号により動作し、電子装置21に電力を供給する。この給電を行っている間に、送信回路36から入力端子72iにデータ信号が入力される。この送信信号に応じて、スイッチング素子72sがオン/オフ動作を繰り返すと、そのオン/オフ動作に応じて、抵抗72rの両端が開放と短絡とを、繰り返す。
【0129】
これにより、電子装置21で消費される負荷電流が変化し、その変化に応じて、設定診断装置1の給電コイル2に電圧の変化が生じる。この変化が、受信回路6で検出、復調されることで、データ信号が電子装置21から設定診断装置1へ伝送される。
【0130】
このように、設定診断システム200は、設定診断装置1の電子装置21への電力搬送波にデータ信号を重畳するので、コイルの数を半減させることができる。ただし、通信速度が給電のための搬送波に依存するので、上記実施の形態1に係る設定診断システム200と比較すると、通信速度が低くなる。
【0131】
この実施の形態に係る設定診断システム200の設定診断処理については、上記実施の形態1と同様である。
【0132】
なお、この実施の形態では、ステップS10(図6参照)で電子装置21が給電状態となっている場合(ステップS10;Yes)、電子装置21への給電が不要であることから、搬送波の条件を電力給電に必要な条件とは異なる条件としてもよい。例えば、給電用の搬送波周波数より高い周波数で、給電と同時の場合よりも高速に通信するようにしてもよい。
【0133】
また、搬送波の振幅を給電時よりも低くして、消費電力を抑制するようにしてもよい。
【0134】
以上詳細に説明したように、この実施の形態によれば、コイルの数を減らすことができるので、電子装置21及び設定診断装置1の小型化、低コスト化が実現可能となる。
【0135】
また、コイルが一対となるため、コイルを対向させるのが容易になる。
【0136】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3について説明する。
【0137】
図10には、この実施の形態に係る設定診断システム200が適用される空調システム100の構成が示されている。図10に示すように、空調システム100は、設定診断装置1、室外機101、室内機102、リモコン21b、冷媒配管103、電源通信線104、通信線105及び設定診断部106を備える。
【0138】
電源通信線104は、室外機101と室内機102とを接続する。通信線105は、室内機102とリモコン21bとを接続する。
【0139】
設定診断装置1が、給電コイル2及び送受信コイル4を備えている点は、上記各実施の形態と同じである。
【0140】
図10では、給電コイル2及び送受信コイル4が1つにまとめられ、コイル2/4として示されている。以下では、簡略化してコイル2/4とも呼ぶ。実際に、給電コイル2と送受信コイル4とを、1つのコイルで共用化することができる。この場合、設定診断装置1は、上記実施の形態2と同様に、給電コイル2のみを備えるようにすればよい。
【0141】
設定診断装置1は、上記各実施の形態と同様に、入力部10及び出力部11をさらに備える。入力部10は、複数のボタン又はキーボードを備える。出力部11は、液晶ディスプレイを備える。
【0142】
室外機101は、制御基板21aを備えている。この実施の形態では、制御基板21aが、電子装置21に相当する。制御基板21aは、受電コイル22a及び送受信コイル24aを備えている。受電コイル22a及び送受信コイル24aが、上記各実施の形態に係る受電コイル22及び送受信コイル24に相当する。
【0143】
給電コイル22a及び送受信コイル24aは、制御基板21a上か、室外機101の筐体に設置されている。図10では、給電コイル22a及び送受信コイル24aが1つにまとめられ、コイル22a/24aとして示されている。以下では、簡略化してコイル22a/24aとも呼ぶ。実際に、受電コイル22aと送受信コイル24aとを、1つのコイルで共用化することができる。この場合、設定診断装置1は、上記実施の形態2と同様に、受電コイル2のみを備えるようにすればよい。
【0144】
受電コイル22aが給電コイル2と対向するように設定診断装置1を配置させることにより、設定診断装置1から制御基板21aへ電力が供給される。また、送受信コイル24aが、送受信コイル4に対向するように、設定診断装置1を配置させることにより、制御基板21aと設定診断装置1との間でデータ送受信が可能となり、この状態で、空調システム100の初期設定や診断などが行われる。
【0145】
室外機101は、一般的に、筐体がメッキ鋼板などの金属で形成されている。このため、電磁誘導方式では、受電コイル2、送受信コイル4と、給電コイル22a、送受信コイル24aとの間に金属があると、電磁誘導結合ができなくなる。そこで、この実施の形態では、設定診断部106に、開閉可能な扉が設けられている。このようにすれば、その扉を開けば、金属製の筐体で給電及び通信が妨げられないようにすることができる。
【0146】
なお、設定診断部106の部分だけ、筐体を樹脂のような非磁性体材料とし、給電コイル2a、送受信コイル4aと、受電コイル4a、送受信コイル24aとの間に金属が挿入されることのないようにしてもよい。
【0147】
なお、ここでは、設定診断装置1が、制御基板21aと接続する場合について説明するが、設定診断装置1を、リモコン21bに接続させるようにしてもよい。この場合には、図10に示すように、受電コイル22、送受信コイル24に相当する受電コイル22b及び送受信コイル24bを、リモコン21b内に設け、それらに、設定診断装置1のコイル2/4を対向させることにより、リモコン21bへの電力供給及び空調システム100の設定又は診断を行うようにしてもよい。この場合には、リモコン21bが、電子装置21に相当する。
【0148】
次に、設定診断装置1が適用される空調システム100の動作について説明する。
【0149】
ここでは、店舗やビルなどの建物の設備として空調システム100を設置する場合を想定する。すでに、室外機101及び室内機102が、冷媒配管103と、電源通信線104とで接続されており、室内機102とリモコン21bとが、通信線105で接続され、建物への設置が完了しているものとする。
【0150】
(初期設定動作)
この段階で、空調システム100の初期設定動作が行われる。まず、この初期設定動作について説明する。初期設定動作では、空調システム100の各種パラメータを設定する。
【0151】
初期設定動作で設定される主なパラメータには、例えば、室外機101の能力制限値、電流制限値、室内機102の接続台数、室内機102の風向ベーンの動作や固定時の設定角度、室外機101と室内機102とリモコン21bとの間の通信で使用される通信用アドレス、リモコン21bが接続された室内機102のアドレスなどがある。これらのパラメータが未設定であれば、電源を投入しても、空調システム100を通常動作させることができないため、初期設定動作が必要となる。
【0152】
空調システム100の電源を投入し、空調システム100を起動させて初期設定動作を行うことも可能ではあるが、空調システム100を起動すると、空調システム100の全体に電源が供給されるようになる。この結果、初期設定動作に関係のない部分にも電力が供給されることとなる。この部分に供給される電力は、無駄な電力となるうえ、作業者が感電するおそれもある。そこで、この実施の形態では、設定診断装置1を用いて、空調システム100の電源を投入する前に初期設定動作が行われる。
【0153】
初期設定動作では、必要であれば、設定診断部106を用いて(例えば、扉を開けて)、設定診断装置1を設定診断部106に近づけて、給電コイル2と受電コイル22aを対向させ、送受信コイル4と送受信コイル24aとを対向させる。その後、設定診断装置1から制御基板21aに対して、上述した各種パラメータの設定値が伝送される。
【0154】
設定診断装置1から制御基板21aに対する、上述の各種パラメータの初期設定動作について、図1等を参照して、より詳細に説明する。
【0155】
設定診断装置1のコイル2/4と、制御基板21aのコイル22a/24aとを対向させた状態で、入力部10が操作されると(例えばその電源ボタンが押下されると)、設定診断装置1が起動され、制御部7が動作を開始する。
【0156】
その後、外部電源14から供給される交流電力が、電源回路12で所定の直流電力に変換され、設定診断装置1の各構成要素へと供給される。設定診断装置1の動作状態は、出力部11に出力される。出力部11(例えば液晶ディスプレイ)には、設定診断装置1の動作状態が表示される。
【0157】
一方、制御部7は、メモリ9に保持されたプログラムを実行することにより、パラメータの設定値の入力や変更を行うのか、診断処理を行うのかを入力するように、出力部11に、指示入力を促す旨の表示をさせる。
【0158】
また、制御部7は、電源回路12から供給される直流電圧を交流電圧に変換して、給電コイル2に供給するように給電回路3を駆動する。給電コイル2に供給された交流電力は、給電コイル2と電磁誘導結合した受電コイル22を介して受電回路23に供給される。
【0159】
受電回路23は、供給された交流電力を直流電圧に変換して電源回路28に出力する。電源回路28は、この直流電力を、電力供給路34を介して、電子装置21の設定動作に必要な構成要素に供給する。電力が供給される構成要素は、制御部27、メモリ29、送信回路25、受信回路26である。
【0160】
I/F回路30や主機能部31(図1参照)に対しては、電力は供給されない。空調システム100においては、I/F回路30は、室内機102との通信用インターフェイスに相当する。I/F回路30は、データ信号を送受信するとともに、室内機102への電力供給も行う。さらには、I/F回路30は、室内機102に接続されたリモコン21bへの電力供給も行う。初期設定動作においては、I/F回路30が動作する必要はないため、電力は供給されない。
【0161】
また、空調システム100において、主機能部31に相当する機能とは、冷房や暖房などの空調機能である。空調を行う際に駆動される空調システム100の構成要素には、室外機101に搭載された圧縮機やファンモータ、電磁弁や、電源通信線104の先に接続された室内機102のファンモータや風向制御用のベーンなどがある。初期設定動作においては、主機能部31を動作させる必要はないため、電力は供給されない。
【0162】
電子装置21への給電が開始された後、制御部7は、送信回路5、送受信コイル4を介して、電子装置21にデータ信号を送信する。制御部7は、送受信コイル4、受信回路6を介して、この送信に対する電子装置21の応答を受信し、設定診断装置1により設定診断が可能な電子装置21であるか否かを判定する。
【0163】
設定診断装置1からの給電動作が開始された後、設定診断装置1から送信された信号は、送受信コイル4を介して受信回路6で受信され、制御部27へ伝送される。制御部27は、給電情報を含む応答信号を、送信回路25、送受信コイル24を介して、設定診断装置1に返信する。
【0164】
空調システム100が設置された後の初期設定動作においては、設定診断装置1からの給電により動作しており、外部電源35から電力が供給されていないため、このときの給電情報は、外部電源35からの給電がないことを示す情報となる。
【0165】
設定診断装置1では、電子装置21からの応答信号が、送受信コイル4を介して受信回路6で受信され、制御部7に伝送される。制御部7の給電状態判定部8は、この応答信号に含まれる電子装置21の給電情報を取得し、取得された給電情報に基づいて、電子装置21の給電状態を判定する。ここでは、給電情報は、外部電源35からの給電なしを示しているため、外部電源35からの給電がないと判定し、給電を停止せずに、設定動作が行われる。
【0166】
その後、制御部7は、パラメータの設定又は診断処理を促す表示を、出力部11に出力する。この表示を見た使用者は、入力部10を操作して、設定を選択し、各パラメータの設定値を入力する。なお、入力部10の操作により、メモリ9に予め保存されたパラメータの設定値を読み出して、パラメータの設定を行うようにしてもよい。
【0167】
その後、入力部10が操作され(例えば、設定実行ボタンが押下され)、設定実行指令が入力されると、制御部7は、パラメータ設定指示とともに、パラメータの設定値を、送信回路5、送受信コイル4を介して、電子装置21に伝送する。
【0168】
電子装置21では、設定診断装置1から送信されたパラメータ設定指示とパラメータの設定値とが、送受信コイル24を介して受信回路26で受信され、制御部27に伝送される。制御部27は、受信したパラメータ設定指示に従って、パラメータの設定値をメモリ29に格納する。
【0169】
制御部27は、設定診断装置1からのパラメータの設定値等の送信がすべて完了し、パラメータの設定値等の受信及び設定が正常に完了すると、正常完了応答を、送信回路25、送受信コイル24を介して、設定診断装置1へ伝送する。一方、受信されたパラメータの設定値の誤りや、パラメータの設定の失敗が検出されると、制御部27は、異常終了応答を、送信回路25、送受信コイル24を介して、設定診断装置1へ送信する。
【0170】
設定診断装置1の制御部7は、電子装置21からの応答(正常完了応答又は異常終了応答)に応じて、その後の処理を変更する。正常完了応答を受信すると、制御部7は、設定が完了したと判定し、出力部11に正常完了した旨を出力し、電子装置21への給電動作を停止し、設定処理を終了する。その一方、異常終了応答を受信すると、制御部7は、パラメータの設定値を再送する。
【0171】
設定処理が完了した後、空調システム100の電源が投入されると、制御基板21aには、外部電源35からの給電が開始され、空調システム100全体に電力が供給される。より具体的には、外部電源35から供給された交流電力が、電源回路32で直流電力に変換され、電力供給路33を介してI/F回路30や主機能部31に供給される。さらに、この直流電力は、電源回路28にも供給されるので、制御部27、メモリ29、送信回路25、受信回路26へもその直流電力が供給される。
【0172】
給電開始後、制御部27は、メモリ29に保存されたプログラムを実行する。このプログラムの実行により、パラメータの設定値が読み出され、読み出されたパラメータの設定値に従って、後続のプログラムが実行される。
【0173】
このようなパラメータには、例えば、室外機101の能力制限値、電流制限値、室内機102の接続台数、室内機102の風向ベーンの動作や固定時の角度などが含まれる。さらに、室外機101と室内機102とリモコン21bとの間の通信で使用される通信用アドレス、リモコン21bが接続された室内機102のアドレスなどが含まれる。
【0174】
また、制御部27は、メモリ29に保持されたパラメータの設定値のうち、室内機102やリモコン21bで使用するものについては、I/F回路30を介して室内機102やリモコン21bに送信する。
【0175】
なお、ここでは、制御基板21aを電子装置21とする場合について説明したが、電子装置21をリモコン21bとした場合についても、同様の手順で、初期設定動作が行われる。
【0176】
(診断動作)
次に、空調システム100の診断動作について説明する。診断動作には、例えば、初期設定動作が完了した後に行われる初期診断や、定期的に行われる定期診断や、故障や異常が発生した時に行われる異常診断などがある。
【0177】
空調システム100の診断は、空調システム100からもたらされる様々な情報に基づいて行われる。このような情報としては、例えば、空調システム100の運転状態(圧縮機、ファン、ベーン、電磁弁の状態)、通信状態、冷凍サイクルの状態、異常情報、冷媒量、各構成要素の故障状態、これらの履歴などがある。
【0178】
初期設定が完了していれば、空調システム100は、外部電源35からの給電により動作可能であり、診断動作では、主機能部31である空調機能を動作させた状態で情報が取得される。
【0179】
診断動作では、必要であれば、設定診断部106を用いて(例えば、扉を開けて)、設定診断装置1を設定診断部106に近づけて、給電コイル2と受電コイル22aを対向させ、送受信コイル4と送受信コイル24aとを対向させる。その後、設定診断装置1は、制御基板21aから、上述のような情報を取得して、空調システム100の診断を行う。
【0180】
まず、設定診断装置1のコイル2/4と、制御基板21aのコイル22a/24aとを対向させた状態で、入力部10が操作されると(例えばその電源ボタンが押下されると)、設定診断装置1が起動され、制御部7が動作を開始する。
【0181】
その後、外部電源14から供給される交流電力が、電源回路13で所定の直流電力に変換され、設定診断装置1の各構成要素へと供給される。設定診断装置1の動作状態は、出力部11に出力される。出力部11の例えば液晶ディスプレイには、設定診断装置1の動作状態が表示される。
【0182】
一方、制御部7は、メモリ9に保持されたプログラムを実行することにより、パラメータの設定値の入力や変更を行うのか、診断処理を行うのかを入力するように、出力部11に、指示入力を促す旨の表示をさせる。
【0183】
また、制御部7は、給電回路3に、電源回路12から供給される直流電圧を交流電圧に変換して、給電コイル2に供給させる。給電コイル2に供給された交流電力は、給電コイル2と電磁誘導結合した受電コイル22を介して受電回路23に供給される。
【0184】
受電回路23は、供給された交流電力を直流電圧に変換して電源回路28に出力する。電源回路28は、この直流電力を、電力供給路34を介して、電子装置21の設定動作に必要な構成要素に供給する。このとき、電力が供給される構成要素は、制御部27、メモリ29、送信回路25、受信回路26である。
【0185】
電子装置21への給電が開始された後、制御部7は、送信回路5、送受信コイル4を介して、電子装置21にデータ信号を送信する。制御部7は、送受信コイル4、受信回路6を介して、この送信に対する電子装置21の応答を受信し、設定診断装置1により設定診断が可能な電子装置21であるか否かを判定する。
【0186】
設定診断装置1からの給電動作が開始された後、設定診断装置1から送信された信号は、送受信コイル4を介して受信回路6で受信され、制御部27へ伝送される。制御部27は、給電情報を含む応答信号を、送信回路21、送受信コイル24を介して、設定診断装置1に返信する。
【0187】
設定診断装置1では、制御基板21aからの応答信号が、送受信コイル4を介して受信回路6で受信され、制御部7に伝送される。制御部7の給電状態判定部8は、この応答信号に含まれる電子装置21の給電情報を取得し、取得された給電情報に基づいて、電子装置21の給電状態を判定する。ここでは、給電情報は、外部電源からの給電有りを示しているため、外部電源35からの給電があると判定され、制御部7は、給電回路3の動作を停止する。
【0188】
その後、制御部7は、パラメータの設定動作又は診断動作を選択する旨の表示を、出力部11に出力する。この表示を見た使用者は、入力部10を操作して、診断動作を選択する。なお、入力部10の操作により、メモリ9に予め保存された診断パラメータの設定値を読み出して、診断動作を開始するようにしてもよい。
【0189】
その後、入力部10が操作され(例えば、診断実行ボタンが押下され)、診断実行指令が入力されると、制御部7は、設定された診断指示(空調機制御指示や情報取得指示)を、送信回路5、送受信コイル4を介して、電子装置21に伝送する。
【0190】
電子装置21では、設定診断装置1から送信された診断指示が、送受信コイル24aを介して、受信回路26で受信され、制御部27に伝送される。制御部27は、受信した診断指示に従って、主機能部31を制御するとともに、診断情報を取得して、設定診断装置1へ送信する。一方で、受信されたデータの誤り等が検出されると、制御部27は、異常発生応答を、送信回路25、送受信コイル24を介して、設定診断装置1へ送信する。
【0191】
制御部7は、電子装置21からの応答(診断情報又は異常終了応答)に応じて、その後の処理を変更する。制御部7は、診断情報を受信すると、その診断情報を出力部11に出力し、使用者に情報を提示する。なお、メモリ9に保存されたプログラムやデータを用いて、受信した診断情報の分析処理をおこない、使用者にその分析結果を提示するようにしてもよい。
【0192】
一方、異常終了応答を受信すると、制御部7は、診断指示を再送する。
【0193】
診断処理が完了するまで、設定診断装置1と電子装置21との間でデータ送受信が繰り返される。診断処理が完了すると(例えば、使用者が入力部10の操作により終了操作を実行すると)、制御部7は、制御部27に対して、診断終了通知を送信する。制御部27は、その診断終了通知を受信すると、その応答を設定診断装置1に送信した後、診断動作から通常動作に移行する。
【0194】
制御部7は、制御部27からの応答を受信した後、診断処理を終了する。
【0195】
ここでは、空調システム100が外部電源35から給電されている場合について説明した。しかしながら、空調システム100が外部電源35から給電されていない場合であっても空調システムの診断は可能である。
【0196】
空調システム100の動作時には、制御部27がその動作(異常動作を含む)の履歴をメモリ29に保持している。外部電源35から給電されていない場合であっても、診断処理として、メモリ29に保持された履歴を、制御基板21aから取得して、取得された履歴を用いて空調システム100を診断することが可能である。
【0197】
また、外部電源35から給電されている場合のパラメータの設定動作については、上記した診断動作と同様であり、選択される指示内容が、診断指示ではなく設定指示となる点だけが異なる。
【0198】
また、空調システム100に外部電源35から給電されている場合においても、空調システム100の性能や安全性に対して影響のないパラメータの設定値を変更することは可能である。これに該当するパラメータとしては、例えば室内機102のルーバの動作や角度などがある。外部電源35から給電されている場合のパラメータの設定動作については、上記した診断動作と同様であり、選択される指示内容が、診断指示ではなく設定指示となる点だけが異なる。
【0199】
上述のように、この設定診断装置1を用いれば、空調システム100の設置後の空調システム100のパラメータの初期設定が可能になる。また、この設定診断装置1を用いれば、定期診断を行って、経年劣化等による構成部品の劣化状況や冷媒の漏洩状態を診断したり、パラメータの設定値を更新して運転プログラムを変更したりすることができる。また、この設定診断装置1を用いれば、非定期に診断を行って、空調システム100に異常や故障が発生した時のその原因究明と対策を行うことができる。
【0200】
また、この設定診断装置1を用いれば、複数の空調システム100に対してそれぞれ同一のパラメータの設定値を設定することができる。
【0201】
さらには、この設定診断装置1を用いれば、ある空調システム100におけるパラメータの設定値を、その空調システム100から取得して、その設定値を、別の空調システム100に設定することができる。すなわち、この設定診断装置1は、パラメータの設定値の他の空調システムへのコピーにも好適である。
【0202】
以上詳細に説明したように、この実施の形態によれば、設定診断装置1を、空調システム100に適用することにより、空調システム100の導入時の初期設定や定期的な診断、異常発生時や故障時の診断作業を簡略化することが可能となる。
【0203】
また、この実施の形態によれば、室外機101の筐体を開き内部回路を露出させた上で、設定診断装置1を、有線接続する必要がなくなるので、作業者が高電圧部に触れて感電するなどの危険を低減することができるうえ、作業が簡略化されるので、作業者の作業負担を軽減することができる。
【0204】
また、リモコン21bは、空調システム100を操作する上での入力ボタンや、表示出力などを有しているものの、そのようなリモコン21bや室内機102に、複雑なシステム診断機能を搭載すると、コストが増大する。この実施の形態によれば、システム診断機能を、設定診断装置1に搭載するので、空調システム100のコストの増大を抑制することができる。
【0205】
実施の形態4.
次に、この発明の実施の形態4について説明する。
【0206】
図11には、この実施の形態における電子装置の診断装置が適用されるセンサ装置21cの構成が示されている。
【0207】
図11に示すように、センサ装置21cは、電気機器111と外部電源110との間に設置されている。センサ装置21cは、電気機器111の消費電力、消費電力量、電圧、電流、力率などを計測する電力計測センサである。
【0208】
センサ装置21cは、計測値を表示する機能を有していない。センサ装置21cは、計測値を、外部インターフェイスを介して伝送路113を経由して他の機器、例えば、計測データの集約装置112に送信する。伝送路113は、有線であってもよいし、無線であってもよい。
【0209】
センサ装置21cは受電コイル22c及び送受信コイル24cを備えている。また、センサ装置21cは、簡易的な表示手段として、発光ダイオード114を複数備えている。
【0210】
なお、上記実施の形態で説明したように、センサ装置21cにおいて、コイルを共用化する場合には、受電コイル22cのみを備えればよい。この場合には、設定診断装置1としても、上記実施の形態2に係るものが用いられる。
【0211】
コイル22c/24cがコイル2/4と対向するように、設定診断装置1を配置させることにより、センサ装置21cと設定診断装置1とが接続される。コイル2/4、コイル22c/24cは、むき出しで設置されるのではなく、電磁誘導の特性を生かし、非磁性体からなる、設定診断装置1及びセンサ装置21cの筐体の内側にそれぞれ配置される。
【0212】
次に、設定診断装置1が適用されるセンサ装置21cの動作について説明する。
【0213】
センサ装置21cが、外部電源110から給電されていない状態での初期設定動作と、センサ装置21cへの外部電源110が給電されている状態での診断動作とについては、上記実施の形態3で説明した空調システム100における動作と同じである。
【0214】
この実施の形態では、初期設定時に送受信されるパラメータと、診断時に送受信される診断情報が、上記実施の形態3と異なる。
【0215】
このようなパラメータには、集約装置112のような他の機器と接続する際にネットワークを組む場合に必要となるアドレスや、センサ装置21cの識別情報などがある。また、センサ装置21cの計測対象の計測範囲(電流計測範囲)、電源仕様(単相か三相か、100Vか200Vかなど)、外部に接続される要素たとえばカレントトランスなどの電流センサの特性の補正用データ(オフセット、線形成、ゲイン等)などが、初期設定動作において設定されるパラメータとなる。また、センサ装置21cにおける主機能部31は、いわゆる電力計測回路である。
【0216】
外部電源110とセンサ装置21cの間には、ブレーカ(図示せず)が通常設置される。センサ装置21cの初期設定時には、電源が必要となるため、センサ装置21cに対して外部電源110から電力が供給されると、その先に接続された電気機器111も通電してしまう。このため、センサ装置21cでは、外部電源110から給電される以前に初期設定を行う必要がある。
【0217】
設定診断装置1を用いれば、設定診断装置1から給電しつつ、センサ装置21cの初期設定を行うことができる。この結果、電気機器111に電力を供給することなく、センサ装置21cの初期設定を行うことができる。また、作業者に対しても、外部電源110から電力を給電することなく、センサ装置21cの初期設定ができるので、感電を防止して、作業の安全性を向上することができる。
【0218】
また、診断時に送受信される診断情報には、例えば、センサ装置21cの動作状態や動作履歴、検出精度(ゲイン、オフセット)等がある。設定診断装置1は、これらの情報を非接触で取得して、取得された情報に基づいてセンサ装置21cを診断する。診断内容としては、定期的な診断においては、経年劣化等による構成部品の劣化状況の診断などがある。非定期的な診断としては、センサ装置21cにおいて、異常や故障が発生した時の原因究明などがある。究明された原因に基づいて、対策法を抽出することができる。
【0219】
電子装置21としてのセンサ装置21cと設定診断装置1との間の通信動作については、上記実施の形態1で説明した通信動作と同じである。
【0220】
設定診断装置1は、センサ装置21cから、その動作状態や動作履歴などの情報を診断情報として取得し、取得された診断情報に基づいて、センサ装置21cの診断を行う。
【0221】
上述のように、この設定診断装置1を用いれば、設置後の空調システム100のパラメータの初期設定が可能になる。また、この設定診断装置1を用いれば、定期診断を行って、経年劣化等による構成部品の劣化状況や冷媒の漏洩状態を診断したり、パラメータの設定値を更新して運転プログラムを変更したりすることができる。また、この設定診断装置1を用いれば、非定期的に診断を行って、空調システム100に異常や故障が発生した時のその原因究明と対策を行うことができる。
【0222】
実施の形態5.
次に、この発明の実施の形態5について説明する。
【0223】
センサ装置21cのような計測器では、定期的な校正が必要なものもある。その校正に対しても設定診断装置1を適用可能である。
【0224】
図12には、センサ装置21cの校正用の設定診断装置1が示されている。図12に示すように、設定診断装置1は、基準機能部125を備えている。基準機能部125は、センサ装置21cの機能部、ここでは消費電力、消費電力量などの計測機能と同じ機能を有しており、さらには基準として用い得る計測精度や計測能力を有する。
【0225】
また、設定診断装置1には、センサ装置21cを搭載するための切欠構造120が設けられている。切欠構造120にセンサ装置21cのような計測器を搭載すると、設定診断装置1の給電コイル2とセンサ装置21cの受電コイル22cとが対向するようになっている。
【0226】
設定診断装置1とセンサ装置21cとを接続することにより、同一条件となる電力を、センサ装置21cと設定診断装置1(基準機能部125)とで計測する。センサ装置21cの計測値は、給電コイル2、受電コイル22cを介して、設定診断装置1に伝送され、基準機能部125が計測した計測値と比較される。
【0227】
その比較結果に基づき、校正が可能であれば、設定診断装置1は、センサ装置21cに、パラメータの補正値を送信し、センサ装置21cに設定されているパラメータを補正する。これにより、センサ装置21cの校正が行われる。
【0228】
なお、校正に先だって、設定診断装置1により診断動作を行って、経年劣化などにより校正不可と判定された場合には、その結果を作業者に対して出力するなどして、センサ装置21cの交換を促すようにすることも可能である。
【0229】
なお、実施の形態4、5では、センサ装置21cを、消費電力、消費電力量、電圧、電流、力率を計測する電力計測センサとした。しかしながら、センサ装置21cは、他の物理量を計測するセンサであってもよい。センサ装置として、温度センサ、湿度センサ、照度センサ、赤外線センサ、音声センサ、振動センサ、加速度センサ、重量センサなど、どのようなセンサに対して用いてもよい。また、これらのセンサ装置21cの製造過程において、シリアル番号やアドレス設定の書き込みに設定診断装置1を用いてもよい。
【0230】
以上詳細に説明したように、この実施の形態によれば、センサ装置21cの定期的な校正作業を簡略化することが可能となる。センサ装置21cの筐体を開き、内部回路を露出させた上で設定診断装置1を電気的接点で接続する必要がないため、高電圧部に触れるなどの作業者に対する危険を低減することが可能となるとともに作業の簡略化が可能となる。
【0231】
なお、上記各実施の形態では、メモリ9を、制御部7と別構成として図示しているが、これらは、マイクロプロセッサ等のようにパッケージ化されたものであってもよい。また、メモリ9は、設定診断装置1の電源をオフした際に記録した情報が残るように不揮発性であることが望ましいが、揮発性メモリであってもよい。
【0232】
なお、上記各実施の形態では、メモリ29を、制御部27と別構成として図示しているが、これらは、マイクロプロセッサ等のようにパッケージ化されたものであってもよい。また、メモリ29は、電子装置21の電源をオフした際に記録した情報が残るように不揮発性であることが望ましいが、揮発性メモリであってもよい。
【0233】
なお、上記各実施の形態では、外部電源35を交流電源としたが、電子装置21には、直流電力を供給するようにしてもよい。直流電力が供給される場合には、電源回路32において、DC/DC変換を行って、要求される所定の直流電圧へ変換すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0234】
この発明は、給電されていない状態でパラメータ設定を行う必要のある電子装置や、設定診断時に絶縁が必要な電子装置、空調システムや照明システムなどのビルシステムへ利用が可能である。
【符号の説明】
【0235】
1 設定診断装置
2 給電コイル
3 給電回路
4 送受信コイル
5 送信回路
6 受信回路
7 制御部
8 給電状態判定部
9 メモリ
10 入力部
11 出力部
12 電源回路
13 電力供給路
14 外部電源
15 送信回路
21 電子装置
21a 制御基板
21b リモコン
21c センサ装置
22、22a、22b、22c 受電コイル
23 受電回路
24、24a、24b、24c 送受信コイル
25 送信回路
26 受信回路
27 制御部
28 電源回路
29 メモリ
30 インターフェイス(I/F)回路
31 主機能部
32 電源回路
33 電力供給路
34 電力供給路
35 外部電源
36 送信回路
40 直流電圧入力端子
41 直流交流変換回路
41P、41N スイッチング素子
42 共振コンデンサ
43 駆動信号入力部
43P、43N 端子
50 共振コンデンサ
51 交流直流変換回路
52 平滑コンデンサ
53 直流電圧出力端子
61 送信信号入力端子
62 搬送波発生部
63 変調回路
64 共振コンデンサ
65 検波回路
66 復調回路
67 受信信号出力端子
72 信号入力部
72i 入力端子
72r 抵抗
72s スイッチング素子
82 信号入力部
82i 入力端子
82r 抵抗
82s スイッチング素子
100 空調システム
101 室外機
102 室内機
103 冷媒配管
104 電源通信線
105 通信線
106 設定診断部
110 外部電源
111 電気機器
112 集約装置
113 伝送路
114 発光ダイオード
120 切欠構造
125 基準機能部
200 設定診断システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子装置と設備診断装置とを備える設定診断システムであって、
前記電子装置は、
所定の機能を発揮するための通常動作を行う主機能部と、
外部電源から供給される交流電力を直流電力に変換する電源回路と、
電磁誘導結合により外部から電力を受給する第1のコイルと、
前記第1のコイルを介して受給された交流電力を受電し、直流電力に変換する受電回路と、
電磁誘導結合により外部との間で情報を送受信する第2のコイルと、
前記第2のコイルを介して、情報を送受信する送受信回路と、
前記送受信回路により送受信される情報を記憶する記憶部と、
前記電源回路で変換された直流電力を、前記主機能部と、前記送受信回路と、前記記憶部とに供給する第1の電力供給路と、
前記受電回路で変換された直流電力を、前記送受信回路と、前記記憶部とに供給する第2の電力供給路と、
を備え、
前記第1のコイルと、前記第2のコイルとが、個別に設けられ、
前記設備診断装置は、
第3のコイルと、
電磁誘導結合により電力を供給する給電回路と、
第4のコイルと、
電磁誘導結合により情報を送受信するために設けられた送受信回路と、
前記第3のコイル及び前記第4のコイルの電磁誘導結合により、前記給電回路により給電及び前記送受信回路によりデータ送受信が可能となった電子装置に電力が供給されているか否かを判定する給電状態判定部と、
を備え、
前記給電状態判定部により、電力が供給されていないと判定された場合に、前記給電回路を用いて、前記電子装置に電力を供給しつつ、前記送受信回路を用いて情報を送受信し、
前記第3のコイルと、前記第4のコイルとが、個別に設けられている、
設定診断システム。
【請求項2】
前記設定診断装置は、
前記給電状態判定部により、電力が供給されていると判定された場合に、
前記給電回路を用いて、前記電子装置に電力を供給せずに、前記送受信回路を用いて情報を送受信する、
ことを特徴とする請求項1に記載の設定診断システム。
【請求項3】
前記給電状態判定部は、
前記電子装置に電力が供給されているか否かの確認要求を、前記送受信回路を用いて送信し、
前記確認要求に対する応答を、前記送受信回路を用いて受信し、
受信された応答に基づいて、判定を行う、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の設定診断システム。
【請求項4】
前記給電状態判定部は、
所定時間内に、前記確認要求に対する応答が返信されない場合に、
前記送受信回路を用いた情報の送受信を停止する、
ことを特徴とする請求項3に記載の設定診断システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の設定診断システムを構成する電子装置を備える空気調和機。
【請求項6】
室外機、室内機又はリモコンに、前記電子装置が設けられている、
ことを特徴とする請求項5に記載の空気調和機。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の設定診断システムを構成する電子装置を備えるセンサ装置。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の設定診断システムを構成する電子装置を備える計測器。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の設定診断システムを構成する電子装置を備える電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−130246(P2012−130246A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−1665(P2012−1665)
【出願日】平成24年1月6日(2012.1.6)
【分割の表示】特願2009−255360(P2009−255360)の分割
【原出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】