説明

設計水位給水装置

【課題】給水対象への給水に電源や人力を用いずに、給水対象の設計水位に自動的に常時給水する。装置費用が安価、ランニングコストも不要、作動時が静粛であり、道路、建屋の屋上等様々な場所で使用出来る設計水位給水装置及び設計水位給水方法を提供する。
【解決手段】給水源から給水対象に供給する水を一旦受容する水位調整タンク2と、給水対象の設計水位を維持するように水位調整タンク内の水位を制御しつつ給水対象に水を自動補給する設計水位給水機構4とからなる。設計水位給水機構4は、水位調整タンク2内に設けられて外力により回動可能なねじ軸5と、ねじ軸5の回動により上下動する昇降ガイド体9と、昇降ガイド体9に設けられ、可撓管11を介して給水源13から供給される水を吐出する給水口10と、水位調整タンク2内の水位に応じて給水口10を開閉するフロート弁12とから構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばヒートアイランド現象を抑制するための保水性舗装層、スポーツ用天然芝グランド、畑等において所定の設計水位を常時維持するように給水する設計水位給水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化や人口集中により都市部で生じているヒートアイランド現象を抑制する対策として、保水性舗装路を敷設してこれに水を供給し、気化熱により大気温度の上昇を低減するシステムが次第に使用されるようになっている。また、例えばサッカー競技場は天然芝を使用しており、芝の生育と補修には水の供給が不可欠であることから、保水性のある地盤に構成して定期的に電気を動力源として、或いは水道水の圧力により作動する散水器により散水することが行われている。また、ハウス栽培で地盤に所定の水を常時供給することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−161343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の給水装置は、送水にポンプを使用し、水位の管理・維持にセンサを使用する等、駆動源に電気を用いる構成であるため、装置が大型化して価格も高価であり、設置場所にも制約を受けるために使用上の自由度に欠けるという欠点がある。また、路面の凍結防止に使用する場合のように、温度変化等の外部環境の変化に弱いという欠点がある。
【0005】
特許文献1に示す先行技術も、保水性舗装材に水を供給する自動給水装置は、保水性舗装材に水を灌水する灌水手段と、水が貯留される貯水槽と、直流電源で作動し灌水手段に貯水槽に貯留された水を供給する給水手段と、給水手段に供給される電力を発電する太陽光発電機とを備えた構成からなるものであり、製造コスト、設置場所と設置コスト、操作性等を考慮すると普及性の面での問題がある。
【0006】
本発明は上述した従来技術の未解決の問題点に鑑みなされたもので、給水対象への給水に電源や人力を用いることなく給水対象の設計水位に自動的に常時給水することができ、装置費用が安価で、ランニングコストも不要であり、しかも作動時静粛なことから、道路、建屋の屋上、競技場、畑等、様々な場所に容易に設置して使用することが出来る設計水位給水装置及び設計水位給水方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために構成した請求項1に係る本発明の手段は、給水源から給水対象に供給する水を一旦受容する水位調整タンクと、該水位調整タンクに設けられ、前記給水対象の設計水位を維持するように水位調整タンク内の水位を制御しつつ前記給水対象に水を自動補給する設計水位給水機構とからなる。
【0008】
そして、前記設計水位給水機構は、前記水位調整タンク内に立設され、外力により回動可能なねじ軸と、該ねじ軸に螺合され、ねじ軸の回動により上下動する昇降ガイド体と、該昇降ガイド体に設けられ、可撓管を介して前記給水源から供給される水を吐出する給水口と、前記水位調整タンク内の水位に応じて該給水口を開閉するフロート弁とから構成したものからなる。
【0009】
また、前記給水対象に、不凍液を混合した水を供給するようにするとよい。
【0010】
また、請求項4に係る本発明は、給水源から給水対象に供給する水を水位調整タンクに一旦受容し、前記給水対象の設計水位を維持するように該水位調整タンク内の水位を制御しつつ水位調整タンクから給水対象に水を自動補給するようにしたものからなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は叙上の如く構成したから、下記の諸効果を奏する。
(1)水位調整タンク内に設けた水位維持機構により、給水対象に設計水位を維持するように調整して自動給水するから、給水対象に必要な給水を確実に行うことができる。
(2)水位調整タンク内に設ける設計水位給水機構は、外力によりねじ軸を回動操作して昇降ガイド体を上下動させて給水口を開閉するフロート弁の作動水位を設定出来る構成にしたから、簡単な操作できめ細かい水位設定を容易にかつ正確に行うことが出来るし、センサ等の精密電子機器を使用しないから、外部環境の変化特に外気温の変化に影響されることなく確実に作動する。
(3)設計水位給水装置は、電気を使用しないで作動可能であるから、自由に設置場所を選択することができる。
(4)給水対象に、不凍液を混合した水を供給することにより、冬期間の路面凍結を防止して歩行者や車両のスリップ事故を防止することができるし、不凍液混合水を常時自動給水するので道路の維持管理が容易である。
(5)給水源から給水対象に供給する水を水位調整タンクに一旦受容し、前記給水対象の設計水位を維持するように該水位調整タンク内の水位を調整しつつ水位調整タンクから給水対象に水を自動補給するようにしたから、水位設定管理が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る設計水位給水装置を用いる保水システムの構成図である。
【図2】設計水位給水装置の使用状態を示す縦断面図である。
【図3】設計水位給水装置の縦断面図である。
【図4】図3中のIV−IV矢示方向断面図である。
【図5】設計水位給水装置の作動状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳述する。図において、1は設計水位給水装置、2は該設計水位給水装置1を構成する水位調整タンクを示し、該水位調整タンクは底板2A、胴板2B及び天板2Cとから略円筒状に形成してあり、下部側には送水管3が接続してある。
【0014】
4は前記水位調整タンク2に設けた設計水位給水機構を示す。5は該設計水位給水機構4を構成し、水位調整タンク2内の片側に立設したねじ軸で、該ねじ軸5は丸棒の中間部に雄ねじ部5Aを刻設し、水位調整タンク2の天板2Cから外側上方に突出する上端側は横断面四角形のトルク掛け部5Bに形成したものからなり、下端は底板2Aに設けた軸受6により、上端側は天板2Cに設けたスリーブ7によって回動可能に支持されている。そして、ねじ軸5は図示しないハンドルを該トルク掛け部5Bに嵌合して回動することにより、正逆方向に回動可能になっている。
【0015】
8は前記ねじ軸5に対向して胴板2Bに固着した回動規制体で、該回動規制体8は前面8Aが平坦な平面略三日月形の縦長ブロックからなり、平坦面8Aには縦方向に案内溝8Bが形成してある。9はねじ軸5に螺合して設けた昇降ガイド体で、該昇降ガイド体9は一側端部9Aが前記案内溝8Bに摺動可能に挿嵌してあり、ねじ軸5の回動に供回りすることなく上下動するようにしてある。
【0016】
10は前記昇降ガイド体9の他側端に設けた給水口を示し、該給水口10には屈曲可能な可撓管11の先端が接続してある。12は給水口10に設けたフロート弁で、該フロート弁12は給水口10内に回動可能に設けた弁本体12Aと、該弁本体12Aに基端側を固着したフロートアーム12Bと、該フロートアーム12Bの先端に設けたフロートボール12Cとから構成してある。
【0017】
13は水位調整タンクに給水する給水源としての貯水タンクで、該貯水タンク13には前記可撓管11の後端が接続してあり、貯水タンク13には水道水や地下水が補給される。なお、貯水タンク13を用いずに水道水を給水源として使用してもよく、この場合には水道管14に可撓管11を直接接続する。
【0018】
15は給水対象として道路に敷設する保水性舗装部を示し、該保水性舗装部15は無数の空隙を形成したパネル状の透水性路盤15Aと、管壁に多数の孔を有し、該透水性路盤15Aに予め配管した複数本の通水管15Bと、該通水管15Bを水位調整タンク2と連通する分配管15Cと、透水性路盤15Aの上面を被覆する舗装層15Dとから構成してある。
【0019】
次に、上述の構成からなる設計水位給水装置1の設置について説明する。例えば道路に給水する場合を例に挙げると、ブロック状の透水性路盤15Aを道路に敷設し、透水性路盤15Aに予め埋設してある通水管15B、15B、15Bに接続した分配管15Cを送水管3に接続し、透水性路盤15Aの上面を舗装層15Dで被装する。また、透水性路盤15Aの高さに合わせて道路脇等の適宜の場所に水位調整タンク2を配置し、水位調整タンク2に給水する貯水タンク13との間に配管する。
【0020】
保水性舗装部15と水位調整タンク2の設置工事が完了したら、保水性舗装部15の保水に必要な設計水位Lに合わせて設計水位給水機構4の水位設定操作を行う。ねじ軸5のトルク掛け部5Bに図示しないハンドルを嵌着し、所望の方向に回転して昇降ガイド体9を昇降させ、フロートボール12Cが設計水位Lと略同じ位置で弁本体12Aが給水口10を閉弁するように設定する。これにより、保水性舗装部15に設計水位L以上の水が供給されることなく水位を保持する設定ができる。この状態で、貯水タンク13から可撓管11を介して水位調整タンク2に水が供給されると、フロートボール12Cは浮力により所定の位置に浮上して弁本体12Aが給水口10を閉弁し、貯水タンク13からの給水を停止する。
【0021】
保水性舗装部15の水が蒸発等で減少すると、水位調整タンク2から順次水が供給されて設計水位Lは保持されるが、水位調整タンク2内の水位は保水性舗装部15と略同一の水位に常時あるから、保水性舗装部15の水位低下に伴ってフロートボール12Cも降下し、弁本体15Aが開弁して水位調整タンク2内に水が補給され、速やかに設計水位Lに回復する。なお、図3及び図5は水位調整タンク2内の水位とフロートボール12Cの変化を夫々示すが、理解を助けるために変位量は過大に表してある。
【0022】
このように、保水性舗装部15に供給した水が設計水位Lより減少し、水位調整タンク2内の水位も低下してフロートボール12Cが降下すると、給水口10が開弁して貯水タンク13から水が補給されることで、保水性舗装層15は設計水位Lを常時保持することができる。
【0023】
以上の実施の形態の説明から明らかなように、本発明によれば、ねじ軸5を回動操作して給水口10の高さ、即ちフロート弁12の作動位置を給水対象の設計水位Lに合わせるという操作だけで、設計水位Lの水深が異なるどのような場所での使用にも対応できるし、時期によって設計水位Lの水深を変更する場所での使用にも対応することができるという優れた機能を有している。
【0024】
なお、本実施の形態では、ねじ軸5は手動で回動操作するものとして述べたが、ねじ軸5に駆動モーターを連結し、該駆動モーターを遠隔操作により回動操作するようにしてもよい。
【0025】
また、本実施の形態では、給水対象として道路に敷設する保水性舗装部15を例に挙げて説明したが、例えば屋上庭園、運動グランド、畑等給水が必要な適宜の場所に敷設してもよく、この場合には保水性舗装部の構造は必要な強度の構造にすればよい。
【0026】
なお、保水性舗装部15での路面凍結を防止する場合は、水位調整タンク2内に不凍液を適量ずつ常時供給する手段を設けるとよい。
【符号の説明】
【0027】
1 設計水位給水装置
2 水位調整タンク
4 設計水位給水機構
5 ねじ軸
9 昇降ガイド体
10 給水口
11 可撓管
12 フロート弁
13 貯水タンク(給水源)
15 保水性舗装部(給水対象)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水源から給水対象に供給する水を一旦受容する水位調整タンクと、該水位調整タンクに設けられ、前記給水対象の設計水位を維持するように水位調整タンク内の水位を制御しつつ前記給水対象に水を自動補給する設計水位給水機構とから構成してなる設計水位給水装置。
【請求項2】
前記設計水位給水機構は、前記水位調整タンク内に立設され、外力により回動可能なねじ軸と、該ねじ軸に螺合され、ねじ軸の回動により上下動する昇降ガイド体と、該昇降ガイド体に設けられ、可撓管を介して前記給水源から供給される水を吐出する給水口と、前記水位調整タンク内の水位に応じて該給水口を開閉するフロート弁とから構成してあることを特徴とする請求項1記載の設計水位給水装置。
【請求項3】
前記給水対象に、不凍液を混合した水を供給するようにしたことを特徴とする請求項1又は2記載の設計水位給水装置。
【請求項4】
給水源から給水対象に供給する水を水位調整タンクに一旦受容し、前記給水対象の設計水位を維持するように該水位調整タンク内の水位を制御しつつ水位調整タンクから給水対象に水を自動補給するようにしてなる設計水位給水方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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