説明

診断、予防および治療のための多発性硬化症に関与するウイルス性物質およびヌクレオチドフラグメント

【課題】生物学的および形態学的基準によって特徴づけられた上述の培養物および単離物から出発すると、次の段階は、これらの培養物中に生成されたウイルス粒子に関連する核酸物質を特徴づける努力を行うことである。
【解決手段】本発明は、最初に、単離または精製されたウイルス性物質に関し、種々の方法で認識もしくは特徴付けすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
診断、予防および治療のための多発性硬化症に関与するウイルス性物質およびヌクレオチドフラグメント 多発性硬化症(MS)は、原因不明の中枢神経系(CNS)の脱髄疾患である。
【背景技術】
【0002】
多くの研究が、ウイルスが原因と見られる疾患であるという説を支持しているが、調べられた既知のウイルスは、いずれも求める原因ではかった。MSに関して数年間探されたウイルスの評価が、E.Norrby(非特許文献1)とR.T.Johnson(非特許文献2)によってまとめられている。
【0003】
最近、既知のヒトレトロウイルスとは異なるレトロウイルスがMS患者から単離された(非特許文献3、4および5)。これらの著者は、このレトロウイルスがin vitroで伝達され得ること、MS患者がこのレトロウイルスによる軟膜細胞の感染に関連するタンパク質を認識しうる抗体を産生すること、および、この抗体の発現が、あるヘルペスウイルスの即時型初期遺伝子によって強烈に刺激され得ることを示した(非特許文献6)。
上記結果の全てが、少なくとも一つの未知のレトロウイルス、H.Perron(非特許文献3)によって公開された方法に基づいて検出され“LM7様RT”活性として特徴付けされる逆転写酵素活性を備えたウイルスの、MSにおける役割を示している。(非特許文献3)に特定された刊行物の内容を、参照として本明細書に取り込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際特許公開第93/20188号公報
【特許文献2】仏国特許第2716198
【特許文献3】仏国特許出願第95/02960
【特許文献4】仏国特許出願第92/04322号
【特許文献5】仏国特許出願第92/13447号
【特許文献6】仏国特許出願第92/13443号
【特許文献7】仏国特許出願第94/01529号
【特許文献8】仏国特許出願第94/01531号
【特許文献9】仏国特許出願第94/01530号
【特許文献10】仏国特許出願第94/01532号
【特許文献11】仏国特許出願第94/14322号
【特許文献12】仏国特許出願第94/15810号
【特許文献13】欧州特許公開第0569272号公報
【特許文献14】欧州特許公開第0569272号
【特許文献15】仏国特許文献FR2663040
【特許文献16】欧州特許公開第0569272号公報
【特許文献17】国際特許公開第93/20189
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Norrby E., Prog. Med. Virol., 1978; 24, 1-39.
【非特許文献2】Johnson R. T., “Handbook of clinical neurologym, 47 Demyelinating diseases”, Vinken P. and Bruym G.W., eds. Amsterdam, Elsevier Science Publishing, 1985, 319-336.
【非特許文献3】Perron H. et. al.., Res. Virol. 1989, 140, 551-561.
【非特許文献4】Perron H. et. al., “Current concepts in multiple sclerosis” Wietholter et al., eds. Amsterdam, Elsevier 1991, 111-116.
【非特許文献5】Perron H. et al., The Lancet 1991, 337, 862-863.
【非特許文献6】Perron H. et al., J. Gen. Virol. 1993, 74, 65-72.
【非特許文献7】Fields and Knipe, Fondamental Virology 1986, Rev Press N.Y.
【非特許文献8】Nielsen P.E. et al., Science 1991; 254, 1497-1500.
【非特許文献9】Maniatis et al., Molecular Cloning, Cold Spring Harbour, 1982.
【非特許文献10】Southern. E.M., J. Mol. Biol. 1975, 98, 503.
【非特許文献11】Dunn A.R. and Hassel J.A., Cell 1977, 12, 23.
【非特許文献12】Shin et al., J. Virol. 1989, 63, 64-75.
【非特許文献13】Perron H. et al., Res. Vir. 1992, 143, 337-350.
【非特許文献14】Meyerhans et al., Cell 1989, 58, 901-910.
【非特許文献15】Linial M.L. and Miller A.D., “Current topics in microbiology and immunology. Retroviruses, strategies of replication” vol. 157, 125-152; Swanstrom R. and Vogt P.K., editors, Spring-Verla-g, Heidelberg 1990.
【非特許文献16】Lori F. et al., J. Virol. 1992, 66, 5067-5074.
【非特許文献17】Sambrook J., Fritsch E.F. and Maniatis T., Molcular cloning, a laboratory manual. Cold Spring Harbour Laboratory Press, 1989.
【非特許文献18】La Mantia et al., Nucleic Acids Research 1991, 19, 1513-1520.
【非特許文献19】Gonzales-Quintial R, Baccala R, Pope R M and Theofilopoulos N, J. Clin. Invest. vol. 97, Number 5, pp1335-1343, 1996.
【非特許文献20】Chomzynski P. and N. Sacchi, Analytical Biochemistry 1987, 162, 155-159.
【非特許文献21】F. Mallet et al., Journal of Clinical Microbiology 1993; 31, 1444-1449.
【非特許文献22】G. Barany and R.B. Merrifielsd, 1980, In the Peptides, 2, 1-284, Gross E and Meienhofer J, Eds., Academic Press, New York.
【非特許文献23】Poser et al., Gbers G.C. eds. The diagnosis of multiple sclerosisi Thieme Stratton Inc, New York 1984: 225-229.
【非特許文献24】La Mantia et al., Nucleic Acid Research 1989, 17, 5913-22.
【非特許文献25】PLAZA, A; KONO, D.H.; THEOFILOPOULOS, A.N. NEW HUMAN Vβ 12DD GENES AND POLYMORPHIC VARIANTS. J. Imm; 147(12): 4360-4365, 1991.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最近、本出願人の研究により、二人の異なるMS患者に由来する天然の単離物で感染された二つの連続する細胞系統が、国際特許公開第93/20188号公報に記載された培養方法から得られるようになった。この文献の内容を、参照として本明細書中に取り込む。これらの二つの系統は、ヒト脈絡叢細胞から誘導され、LM7PCおよびPLI−2と称され、ブダペスト条約の規定により、それぞれ92072201および93010817の番号で、1992年7月22日および1993年1月8日にECACCに寄託された。さらに、LM7様RT活性を備えたウイルス単離物も、“株”の総称でECACCに寄託された。POL−2と称される、PLI−2系統に保有された“株”すなわち単離物は、1992年7月22日にV92072202の番号で寄託された。MS7PGと称される、LM7PC系統に保有された“株”すなわち単離物は、1993年1月8日にV93010816の番号でECACCに寄託された。
【0007】
生物学的および形態学的基準によって特徴づけられた上述の培養物および単離物から出発すると、次の段階は、これらの培養物中に生成されたウイルス粒子に関連する核酸物質を特徴づける努力を行うことである。
【0008】
感染および/またはウイルス発現と関わるエピトープに向けられた免疫反応を検出するために、既に特徴付けされたゲノムの部位は、ウイルスゲノムのヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を用いたウイルスゲノムの分子検出テストと免疫血清学テストを開発するために用いられている。
【0009】
これらの道具により、既に、MSと、後述する患者に同定された配列の発現との間の関係を確認することができた。しかしながら、出願人に見出されたウイルスシステムは、複合レトロウイルスシステムに関連する。実際に、MS患者の細胞の種々の培養によって生成された細胞外ウイルス粒子にエンキャプシデーションを受けた(encapsidated)ことが見出された配列は、関係はあるものの、感染ウイルス粒子を産生する“野生型”レトロウイルスゲノムとは異なるレトロウイルスゲノムのコエンキャプシデーション(coencapsidation)があることを明示した。この現象は、複製レトロウイルスと、同じファミリーに属する内在性レトロウイルス、もしくは非相同のレトロウイルスとの間にさえも観察された。MSRV−1の場合には、MSRV−1ゲノムに相同な配列を含む内在性レトロウイルス配列が、正常なヒトDNA中に存在することが確認されたので、我々の知見の脈絡において内在性レトロウイルスという観念は特に重要である。これらのゲノムの全てもしくは一部によるMSRV−1に関する内在性レトロウイルス要素(ERV)の存在は、ヒト細胞におけるMSRV−1レトロウイルスの発現が、密接に関連する内在配列と相互作用し得るという事実を説明する。これらの相互作用は、病原性および/または感染性内在性レトロウイルスの場合に見出され(例えばマウス白血病ウイルスのある種のエコトロピック(ecotropic)株)、かつ、外因性レトロウイルスの場合には、そのヌクレオチド配列が、ERVの形態で、部分的もしくは全体的に宿主動物のゲノムに見出される(例えば、ミルクを介して伝達されるマウスの外因性哺乳動物腫瘍ウイルス)。これらの相互作用は、主に、(i)複製レトロウィルスによるERVのトランスアクティベーション(trans-activation)もしくはコアクティベーション(coactivation)、(ii)ERVと関連する、すなわちERVのRNA、もしくは細胞性RNAの“非正統的”エンキャプシデーション、− 複製株の発現によって産生されるレトロウイルス粒子における調和したエンキャプシデーション配列を単に所有し、時には伝達可能であって、時にはそれ自身の病原性を備える、および(iii)特に逆転写の段階における、ハイブリッドゲノムの形成を導く、コエンキャプシ
デーションを受けたゲノムの間の、時に伝達性で時にそれ自身が病原性を備える、多かれ少なかれ実質的な組換え、から構成される。
【0010】
しかして、(i)MSRV−1に関連した種々の配列が、精製されたウイルス粒子に見出された;
(ii)MSRV−1レトロウイルス性ゲノムの種々の領域の分子分析は、MSRV−1の感染および/または発現によって生成された、コエンキャプシデーションを受けた、干渉および/または組み換えられた配列を系統的に分析することによって行われるべきであり;さらには、あるクローンは、レトロウイルス複製および鋳型のエラー、および/または逆転写酵素の転写エラーによって生成された不完全な配列部位を有することがある;
(iii)同じレトロウイルスゲノム領域に関連する配列のファミリーは、発現されたクローンの間の不変領域の同定によって、並びに、抗原性および/または病原性ポリペプチドの生成の原因である読み枠の同一性によって、最適化される総体的な診断検出手段を提供し、これは発現されたクローンの一部によってのみ、もしくはちょうど一つによってさえも生成され、そして、これらの条件下で、与えられた遺伝子の領域で発現されたクローンの総体的な分析により、この領域におけるMSRV−1ゲノムの変化および/または組換えの頻度を評価することができ、特に診断において適用の最適配列を定義することができる;
(iv)MSRV−1等のレトロウイルスによって引き起こされる病理は、その発現およびその結果として生成されたタンパク質もしくはペプチドの直接的影響であるが、関連したもしくは非相同のゲノムの、並びにその結果として生成されたタンパク質もしくはペプチドの活性化、エンキャプシデーションもしくは組換えの影響でもある;しかして、MSRV−1の発現および/または感染に係るゲノムは、このウイルスの潜在的な病原性の不可欠な部分であって、しかして、診断検出および特別な治療標的の手段を構成する。同様に、仏国特許第2716198に公開された特許出願に記載されたMSRV−2もしくはグリオトキシック(glyotoxic)ファクター等の問題の病気の原因であるこれらの相互作用と関連するあらゆる試薬もしくはコファクターは、特にMSであるが、同じ試薬と関わる他のあらゆる疾患の診断、予後、治療的観察および/または統合治療の総体的かつ非常に効果的な戦略の発展に関わる。
【0011】
この文脈中で、並行的な知見が他の自己免疫疾患、慢性関節炎リウマチ(RA)でなされ、仏国特許出願第95/02960に記載されている。この知見は、MSについて本出願人の研究で用いられたものと類似した方法的試みを適用することによって、MSにおけるMSRV−1に記載された配列を分けるRAに発現されたレトロウイルス、および、MSにも記載された関連するMSRV−2配列の共存も同定することができることを示す。MSRV−1について言えば、MSおよびRAに共通して検出された配列は、polおよびgag遺伝子に関連する。現在の知識では、これら二つの疾患に発現されたMSRV−1株で記載されたgagおよびpol配列を結びつけることができる。
【0012】
本特許出願は、以下の仏国特許出願によって既に保護されたものに付随する種々の結果に関する。
−1992年4月3日の第92/04322号、公開第2689519号
−1992年11月3日の第92/13447号、公開第2689521号
−1992年11月3日の第92/13443号、公開第2689520号
−1994年2月4日の第94/01529号、公開第2715936号
−1994年2月4日の第94/01531号、公開第2715939号
−1994年2月4日の第94/01530号、公開第2715936号
−1994年2月4日の第94/01532号、公開第2715937号
−1994年11月24日の第94/14322号、公開第2727428号
および−1994年12月23日の第94/15810号、公開第2728585号。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、最初に、単離または精製されたウイルス性物質に関し、種々の方法で認識もしくは特徴付けすることができる。
− そのゲノムは、配列SEQ ID NO:46、SEQ ID NO:51、SEQ ID NO:52、SEQ ID NO:53、SEQ ID NO:56、SEQ ID NO:58、SEQ ID NO:59、SEQ ID NO:60、SEQ ID NO:61、SEQ ID NO:89、これらの相補配列、およびこれらと等価の配列であって、特に、100個連なるモノマーのどこの配列に対しても、前記配列SEQ ID NO:46、SEQ ID NO:51、SEQ ID NO:52、SEQ ID NO:53、SEQ ID NO:56、SEQ ID NO:58、SEQ ID NO:59、SEQ ID NO:60、SEQ ID NO:61、SEQ ID NO:89と少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%の相同性を示すヌクレオチド配列を含む群から選択されたヌクレオチド配列、およびこれらの相補配列を含む;
− SEQ ID NO:1と同一もしくは等価の配列を含むサブ領域(subregion)を除く、envおよびpol遺伝子を含むそのゲノムの領域およびgag遺伝子の部位は、少なくとも30個連なるアミノ酸のどこの配列に対しても、SEQ ID NO:46、SEQ ID NO:51、SEQ ID NO:52、SEQ ID NO:53、SEQ ID NO:56、SEQ ID NO:58、SEQ ID NO:59、SEQ ID NO:60、SEQ ID NO:61、SEQ ID NO:89およびこれらの相補配列を含む群から選択されたいずれかのヌクレオチド配列にコードされたペプチド配列と少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%の相同性を示すあらゆるポリペプチドをコードする;
− pol遺伝子は、SEQ ID NO:1を除くSEQ ID NO:57と部分的もしくは全体的に同一もしくは等価のヌクレオチド配列を含む。
− gag遺伝子は、SEQ ID NO:88と全体的もしくは部分的に同一もしくは等価のヌクレオチド配列を含む。
【0014】
上述したように、本願発明によれば、上記ウイルス性物質はMSと関連する。
MSRV−1のpolもしくはgag遺伝子、特にSEQ ID NO:51、56、57、59、60、61、88および89に参照として定義されたように、このウイルス性物質はRAと関連する。
本発明は、もしこのヌクレオチドフラグメントがLA MANTIAら(非特許文献18)に記載された配列ERV−9を含まない、もしくはERV−9ではないならば、以下を含む群から選択されたヌクレオチド配列をそれぞれ含む種々のヌクレオチドフラグメントにも関する。
(a)SEQ ID NO:1によって定義されたヌクレオチドフラグメントの全配列を除く、MSRV−1ウイルスの部分的もしくは全体的なpol遺伝子の全てのゲノム配列;
(b)MSRV−1の部分的もしくは全体的なenv遺伝子の全てのゲノム配列;
(c)MSRV−1のgag遺伝子の全ての部分的なゲノム配列;
(d)MSRV−1ウイルスのpol遺伝子とenv遺伝子に重複する遺伝子配列の全て、および重複するpol遺伝子とgag遺伝子。
(e)SEQ ID NO:1によって定義付けられた配列と同一もしくはこの配列に内在するあらゆるヌクレオチド配列を除く、クローンFBd3(SEQ ID NO:46)、t pol(SEQ ID NO:51)、JLBc1(SEQ ID NO:52)、JLBc2(SEQ ID NO:53)およびGM3(SEQ ID NO:56)、GBd13(SEQ ID NO:58)、LB19(SEQ ID NO:59)、LTRGAG12(SEQ ID NO:60)、FP6(SEQ ID NO:61)、G+E+A(SEQ ID NO:89)を含む群から選択される部分的および全体的なクローンの全ての配列;
(f)前記ゲノム配列に相補的な配列;
(g)前記配列(a)〜(e)と同一の配列、特に、100個連なるモノマーのどこの配列に対しても、前記配列(a)〜(d)と少なくとも50%、好ましくは70%の相同性を示すヌクレオチド配列。
【0015】
ゲノム配列という用語は、部分的もしくは全体的にコエンキャプシデーションもしくは共発現(coexpression)に関連する全ての配列、もしくは組換え配列を含む。
【0016】
好ましくは、このようなフラグメントは以下を含む:− SEQ ID NO:1に定義されたヌクレオチドフラグメントの全配列を除く、MSRV−1ウイルスのpol遺伝子の部分的もしくは全体的なゲノム配列に等しいヌクレオチド配列、もしくは前記部分的もしくは全体的なゲノム配列と等価のあらゆる配列に等しいヌクレオチド配列、特にこれらに相同であるもの;
− または、MSRV−1ウイルスのenv遺伝子の部分的もしくは全体的なゲノム配列に等しいヌクレオチド配列、もしくは前記ヌクレオチド配列に相補的なあらゆる配列に等しいヌクレオチド配列、または前記ヌクレオチド配列と等価のあらゆる配列に等しいヌクレオチド配列、特にこれらに相同であるもの。
特に、本発明は、以下を含む群から選択されたヌクレオチド配列に部分的もしくは全体的に等しいヌクレオチド配列を含むヌクレオチドフラグメントに関する。
− SEQ ID NO:40、SEQ ID NO:62もしくはSEQ ID NO:89に定義されたヌクレオチド配列;
− SEQ ID NO:40、SEQ ID NO:62もしくはSEQ ID NO:89に相補的な配列;
− SEQ ID NO:40、SEQ ID NO:62もしくはSEQ ID NO:89に等価、および特に相同な配列;
− SEQ ID NO:39、SEQ ID NO:63もしくはSEQ ID NO:90に定義されたペプチド配列の全てまたは一部をコードする配列;
− SEQ ID NO:39、SEQ ID NO:63もしくはSEQ ID NO:90に等価、特に相同なペプチド配列の全てもしくは一部をコードする配列であって、MSRV−1ウイルスに感染した患者、あるいはMSRV−1ウイルスが再活性化された患者の血清で認識されうるもの。
【0017】
本発明は、前記病原性成分のゲノムに所属または内在し、上述したあらゆるフラグメントと特異的にハイブリダイズすることができる、MSに係る病原性および/または感染性成分の検出のためのあらゆる核酸プローブにも関連する。さらに、polおよびgag遺伝子として上述したあらゆるフラグメントと特異的にハイブリダイズすることができ、特に配列SEQ ID NO:40、51、56、59、60、61、62、89およびSEQ ID NO:39、63および90に関する、RAに係る病原性および/または感染性成分の検出のためのあらゆる核酸プローブにも関する。
また、本発明は、ウイルス性物質のRNAもしくはDNAの重合による増幅のためのプライマーにも関し、上記のあらゆるフラグメントのヌクレオチド配列の少なくとも一部に等しいまたは等価なヌクレオチド配列を含み、特に10個連なるモノマーのどこの配列に対しても、前記フラグメントの少なくとも前記部位と少なくとも70%の相同性を示すヌクレオチド配列を含む。好ましくは、このようなプライマーのヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:47〜SEQ ID NO:50、SEQ ID NO:55およびSEQ ID NO:64およびSEQ ID NO:86を含む群から選択されたいずれか一つの配列に等しい。
【0018】
一般的に、本発明はあらゆるRNAもしくはDNA、特に上述されたウイルス性物質のゲノムフラグメントもしくはヌクレオチドフラグメントを含む複製ベクターを内包する。
また本発明は、上述したヌクレオチドフラグメントに属するあらゆる読み枠フレームにコードされた種々のペプチド、特に、MSRV−1ウイルスに感染した患者の血清および/またはMSRV−1ウイルスが再活性化された患者の血清に認識される抗原決定基を形成もしくは含有するあらゆるオリゴヌクレオチド等のあらゆるポリペプチドにも関連する。好ましくは、このポリペプチドは抗原性であって、5’−3’の方向に、SEQ ID NO:1のヌクレオチド181から始まってヌクレオチド330で終わる読み枠にコードされる。
【0019】
特に、本発明は、MSRV−1ウイルスに感染した患者の血清および/またはMSRV−1ウイルスが再活性化された患者の血清に認識される抗原性ポリペプチドに関し、そのペプチド配列は、SEQ ID NO:39、SEQ ID NO:63およびSEQ ID NO:87に定義された配列に、部分的もしくは全体的に同一もしくは等価である。このような配列は、例えばSEQ ID NO:41〜SEQ ID NO:44、SEQ ID NO:63およびSEQ ID NO:87を含む群から選択されたあらゆる配列と同一である。
【0020】
また本発明は、MSRV−1ウイルスに対して向けられたモノクローナルもしくはポリクローナル抗体も提案する。これらは上記抗原性ポリペプチドからなる免疫原性成分に対するヒトもしくは動物の体の免疫学的反応によって得られる。
【0021】
次いで、本発明は以下のことにも関する。
− MSRV−ウイルスの検出、もしくはこのウイルスに対する暴露の検出のための試薬であって、反応性物質として、上述したような抗原性ペプチド等のペプチド、もしくは前記ペプチドに対する抗体等の抗リガンドを含む;
− 特に上述したような抗原性ペプチド等の一つ以上のペプチド、もしくは上述したペプチドに対する抗体等の一つ以上の抗リガンドを含む、全ての診断、予防もしくは治療組成物;このような組成物としては、好ましくは、そして例示的にはワクチン組成物である。
本発明は、上述のヌクレオチドフラグメントあるいはオリゴヌクレオチド等のポリヌクレオチドを含むMSに係る少なくとも一つの病原性および/または感染性試薬の発現を阻害するための、あらゆる診断、予防もしくは治療組成物にも関する。これらの配列は、ヌクレオチド配列SEQ ID NO:1を備えたフラグメントの配列を除く、前記フラグメントの配列と部分的に同一である。同様に、polおよびgag遺伝子として上述された、特に配列SEQ ID NO:40、51、56、59、60、61、62および89に関する、ヌクレオチドフラグメントを含むRAに係る少なくとも一つの病原性および/または感染性試薬の発現を阻害するための、あらゆる診断、予防もしくは治療組成物にも関する。
【0022】
本発明によれば、オリゴヌクレオチド等のこれらの同じフラグメントもしくはポリヌクレオチドは、適切な工程もしくは方法で、生物学的サンプル中のMSおよびRAに係る病原性および/または感染性成分を検出するための全ての適切な組成物と関係してもよい。このような方法では、前記病原性および/または感染性成分に属すると考えられる、もしくはこれらに由来するRNAおよび/またはDNA、および/またはこれらの相補的RNAおよび/またはDNAを、このような組成物と接触させる。
【0023】
本発明は、生物学的サンプルをペプチド、特に上述した抗原性ペプチド、もしくはこのペプチドに対する上述したような抗体等の抗リガンドと接触させることによって、生物学的サンプルにおける病原性および/または感染性成分の存在もしくは暴露を検出するあらゆる工程にも関する。
【0024】
実際には、そして例示的には、MSRV−1ウイルスを検出するための装置は、免疫学的に適合する固相支持体に支持された上述の試薬、および、免疫学的反応が起こる条件下で、抗MSRV−1抗体を含みそうな血液もしくは脳脊髄液のサンプル等の生物学的サンプルをこの試薬と接触させる手段とを含む。上記の道具は、この試薬と共に形成された免疫複合体を検出する手段を含む。
【0025】
最後に、本発明は、血液もしくは脳脊髄液のサンプル等の生物学的サンプル中の抗MSRV−1抗体の検出にも関し、この方法では、可能な免疫反応が起こる条件下で抗体からなる上記試薬とこのサンプルとを接触させ、それによって試薬と形成された免疫複合体の存在を検出する。
【0026】
本発明を詳細に記載する前に、明細書および請求の範囲で用いられる種々の用語を以下に定義する: − 株もしくは単離物とは、例えば、ウイルス及び/又はバクテリア及び/又は寄生虫等を含むあらゆる感染性および/または病原性生物学的フラクションを指し、病原性及び/又は抗原性能を作りだし、培養物または生きた宿主に保有されている;例えば上記の定義に係るウイルス株は、病原性の原生生物等の共感染成分を含むことができる、 − 本明細書中で使用される“MSRV”という用語は、MSに係るあらゆる病原性及び/又は感染性成分を示し、特にウイルス種、前記ウイルス種の弱毒化株、あるいは、この種から誘導されたコエンキャプシデーションを受けたゲノムもしくはMSRV−1ゲノムの一部と組換えられたゲノムを含む欠陥干渉粒子もしくは粒子を示す。ウイルス、特にRNAを有するウイルスは、特に比較的高い割合で自然変異(非特許文献7)による多様性を有することが知られており、これは等価物の観念を定義する上で考慮すべきことである、 − ヒトウイルスは、ヒトに感染する、もしくは保有されるウイルスを意味すると解する、 − 本発明を実施する際に遭遇する全ての天然あるいは誘導された変形物および/または組換えに鑑み、上記および請求の範囲に定義された発明の主題は、特に相同のヌクレオチドまたはペプチド配列の、以下に定義された種々の生物学的物質の等価物または誘導物を含むとされる、 − 本発明に係るウイルスまたは病原性及び/又は感染性の成分の変異体は、前記ウイルス及び/又は前記病原性及び/又は感染性の成分の少なくとも一つの対応する抗原向けの少なくとも一つの抗体によって認識される少なくとも一つの抗原、及び/又は、ゲノムであって、当業者によく知られた特定のハイブリダイゼーション条件下で、ゲノムのあらゆる部位が、前記ウイルスおよび/または病原性および/または感染性成分に特異的な少なくとも一つのハイブリダイゼーションプローブおよび/または少なくとも一つのヌクレオチド増幅プライマーによって検出され、例えばMSRV−1ウイルスであれば、このプライマーおよびプローブは、SEQ ID NO:20〜SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:16〜SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:31〜SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:45、SEQ ID NO:47、SEQ ID NO:48、SEQ ID NO:49、SEQ ID NO:50、SEQ ID NO:45およびこれらの相補配列から選択されたヌクレオチド配列を有する、 − 本発明によれば、ヌクレオチドフラグメントまたはオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、モノマーが並んだもの、もしくは生体高分子であって、天然の核酸の情報の配列によって特徴づけられ、予め決められた条件下でいかなる他のヌクレオチド断片ともハイブリダイズすることができ、この配列は、種々の化学構造のモノマーを含むように変更できるとともに、天然の核酸の分子から、およびまたは遺伝子組換え、および/または化学合成によって得ることができる;ヌクレオチドフラグメントは、本願発明に記載されたMSRV−1ウイルスのゲノムフラグメントと同一であってもよく、このウイルスの場合には、polまたはenv等のゲノムと同一でもよい。
【0027】
− しかして、モノマーは、構成要素が、糖、リン酸基および窒素塩基とされた、核酸の天然ヌクレオチドとすることができる;RNAでは糖がリボースであり、DNAでは糖が2−デオキシリボースである;核酸がDNAかRNAかによって窒素塩基はアデニン、グアニン、ウラシル、シトシンおよびチミンから選択される;またヌクレオチドは、三つの構成要素の少なくとも一つを修飾することができ、例えば、塩基を修飾した場合には、イノシン、5−メチルデオキシシチジン、デオキシウリジン、5−(ジメチルアミノ)デオキシウリジン、2,6−ジアミノプリン、5−ブロモデオキシウリジンおよびハイブリダイゼーションを促進する他の修飾された塩基等の修飾塩基を生じる;糖では、修飾は、少なくとも一つのデオキシリボースをポリアミドで置換すること(非特許文献8)からなる、および、リン酸基では、修飾は、特にジホスファート、アルキル−およびアリルホスホナートおよびホスホロチオアートエステルから選択されたエステルによって置換することからなる、 − “情報配列”は、モノマーが並んだ一連のものを意味し、その化学的特性および参照方向への並びは、天然の核酸と同質の機能情報の項目を構成すると否とに関わらない、 − ハイブリダイゼーションとは、適切な作用条件下で、十分相補的な配列を有する二つのヌクレオチド断片が対になって複合体構造、好ましくはヘリックスの形態で、特にダブルまたはトリプルの複合体構造を形成する間の工程を意味する、 − プローブとは、化学的に合成されたヌクレオチドフラグメント、あるいは長いヌクレオチドフラグメントを分解または酵素的に切断することによって得られたヌクレオチドフラグメントを含み、少なくとも6個のモノマー、有利的には10〜100個のモノマー、そして好ましくは10〜30個のモノマーを含み、特定の条件下でハイブリダイゼーションの特異性を有するもので;好ましくは、10個より少ないモノマーを有するプローブは単独で使用せずに、同じくらい短い、もしくはそのほかの他のプローブの存在下で用いられる;ある特定の条件下では、100個のモノマーより大きいサイズのプローブを使用することもできる;プローブは、特に診断の目的で使用することができ、このような分子は、例えば捕獲及び/又は検出プローブとされる、 − 捕獲プローブは、適切な手段、すなわち直接または間接的に、例えば共有結合または受動的な吸着によって固相支持体に固定することができる、 − 検出プローブは、特に放射性同位元素、特にペルオキシダーゼおよびアルカリホスファターゼから選択された酵素、および発色性、蛍光性または発光性の基質を加水分解することができる酵素、発色性の化学化合物、発色性、蛍光性または発光性化合物、ヌクレオチド塩基のアナログおよびビオチンから選択された標識手段によって標識することができる、 − 本発明の診断目的に使用されるプローブは、特に、“ドットブロット”( 非特許文献9)、“サザンブロット”( 非特許文献10)、標的にRNAを用いる以外は“サザンブロット”技術と同じ“ノーザンブロット”、およびサンドウィッチ技術(非特許文献11)と称される技術等の、既知のあらゆるハイブリダイゼーション技術に用いることができる;本発明では、捕獲プローブおよび検出プローブが少なくとも部分的に異なるヌクレオチド配列を持たなければならないという理解の上で、特異的な捕獲プローブ及び/又は特異的な検出プローブを含むサンドウィッチ技術を用いることが有利である、 − 本発明に係るあらゆるプローブは、特に翻訳及び/又は転写等の複製現象を妨げ、及び/又はDNA及び/又はRNAを分解するために、in vivoまたはin vitroでRNA及び/又はDNAとハイブリダイズすることができる、 − プライマーは、少なくとも6個のモノマー、有利的には10〜30個のモノマーを有し、例えばPCR(ポリメラーゼチェーン反応)等の増幅技術、シークエンシング等の延長工程、逆転写方法等において、酵素による重合反応の開始のために特定の条件下でハイブリダイゼーションの特異性を有するプローブである、 − 関係する技術における適用または使用に関して、機能的に対応する生体高分子が、同一ではなくても、実質的に同じ役割を果たすことができるならば、二つのヌクレオチド配列またはペプチド配列は、互いにまたは基準の配列に対して等価もしくは誘導されたものと称される;自然の可変性、特に変異が同定される種の自然変異、もしくは誘導された可変性の結果として得られた場合には、二つの配列は等価であるとされる。二つの相同な配列である場合の相同性に関しては以下に記載する。
【0028】
− “変異性”は、配列の自然または誘導された修飾を意味し、特にヌクレオチド及び/又はヌクレオチドフラグメントの置換及び/又は挿入及び/又は欠失、及び/又は一端または両端における配列の伸長または短縮を意味するものである:自然的でない変異性は、遺伝子工学技術によるもので、例えば、核酸の増幅用に選択された合成プライマーの選択、縮重物(デジェネレート)等である;この多様性は、対照と見なされるあらゆる出発配列の修飾に明らかにすることができ、前記対照配列に対する相同性の度合いで表すことができる。
【0029】
− 相同性は、比較される二つのヌクレオチドまたはペプチドフラグメントが同一である度合いを特徴づける;参照のヌクレオチドまたはペプチド配列と、ヌクレオチドまたはペプチド配列を直接比較することによって決定される同一部のパーセントで測定される。
− この同一のパーセントは、本発明で扱われるヌクレオチドフラグメント、クローンに対して特に調べられており、これらは、MSRV−1ウイルスに関しては、SEQ ID NO:1〜SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:46、SEQ ID NO:51〜SEQ ID NO:53、SEQ ID NO:40、SEQ ID NO:56およびSEQ ID NO:57に同定されたフラグメントに相同であり、また、SEQ ID NO:20〜SEQ ID NO:24、SEQ ID NO:26、SEQ ID NO:16〜SEQ ID NO:19、SEQ ID NO:31〜SEQ ID NO:33、SEQ ID NO:45、SEQ ID NO:47、SEQ ID NO:48、SEQ ID NO:49、SEQ ID NO:50、SEQ ID NO:55、SEQ ID NO:40、SEQ ID NO:56およびSEQ ID NO:57によって同定されたプローブおよびプライマーに相同なプローブおよびプライマーに関する。例えば、以下に詳述するプロトコルに基づいてLM7PCおよびPLI−2系を起源とするMSRV−1ウイルスRNAのフラグメントから得られた核酸の異なる遺伝的共通配列の間に観察される最小の同一の割合は、図1に記載された領域では67%とされる。
【0030】
− 参照フラグメントの配列に等価のヌクレオチド配列を所有するものであれば、どんなヌクレオチドフラグメントも、等価もしくは参照配列から誘導されたものと称する;この定義に基づけば、以下のものが参照のヌクレオチドフラグメントに等価である: a)参照フラグメントに相補的なものと少なくとも部分的にハイブリダイズすることができるフラグメント b)参照フラグメントを備えた並びが、他の分類学上のグループに由来する他のあらゆるフラグメントを備えたものより、多数の同一の隣接塩基であることを論証するあらゆるフラグメント c)種の天然の変異体から得られる、または得ることができるフラグメント d)参照フラグメントに適用された遺伝子工学技術から得ることのできるフラグメント e)参照フラグメントにコードされたペプチドに相同または同一であるペプチドをコードする少なくとも8個の連続したヌクレオチドを含むフラグメント、 f)少なくとも一つのモノマーの挿入、欠失または置換、もしくはその一方または両方の端における伸長または縮小により参照フラグメントと異なるフラグメント;例えば、ポリペプチドをコードしないヌクレオチド配列が、その一方または両方の端に隣接する参照フラグメントに対応したフラグメント、 − ポリペプチドは、少なくとも二つのアミノ酸のペプチド、人の介入によって、抽出され、分離され、本質的に単離され、もしくは合成されたオリゴペプチドまたはタンパク質、化学的合成または組換え生物体で発現することによって得られたものを意味すると解する、 − ヌクレオチドフラグメントに部分的にコードされたポリペプチドは、前記ヌクレオチドフラグメントに含まれた少なくとも9個の連続したモノマーによってコードされた少なくとも3個のアミノ酸を有するポリペプチドを意味する、 − 極性、疎水性及び/又は塩基性度及び/又は酸性度及び/又は中性度等の各物理化学的特性が実質的に同一であれば、アミノ酸を他方のアミノ酸の類似体(アナログ)と称する;しかして、ロイシンは、イソロイシンの類似体である。
【0031】
− 比較されるポリペプチドが、特に同じ抗原性、免疫学的、酵素学的及び/又は分子認識特性等の同じ特性を実質的に有するならば、ポリペプチドを等価または参照のポリペプチドから誘導されたものと称する;特に以下に挙げるものは、参照のポリペプチドに等価である: a)少なくとも一つのアミノ酸が、類似のアミノ酸によって置換された配列を有するポリペプチド、 b)前記参照ポリペプチド及び/又は前記ポリペプチドをコードするヌクレオチドフラグメントの、自然のまたは誘導された変異によって得られた等価のペプチド配列を有するポリペプチド c)前記参照ポリペプチドのミモトープ(mimotope)、 d)一つ以上のアミノ酸が、L型から、逆のD型に置換されたポリペプチド、 e)配列に、例えば、アミン基のアセチル化、チオール基のカルボキシル化、カルボキシル基のエステル化等のアミノ酸の側鎖の修飾が導入されたポリペプチド、 f)配列内の一つ以上のペプチド結合が、例えばcarba、retro、inverso、retro−inverso、還元されたおよびメチレンオキシ結合等で修飾されたポリペプチド、 g)その少なくとも一つの抗原が、参照ポリペプチドに対して向けられた抗体に認識されるポリペプチド。
【0032】
− 本発明では、比較された二つのペプチドフラグメントの相同性を特徴づける同一の割合が、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%である。
逆転写酵素活性を有するウイルスは、遺伝的にRNAおよびDNAの形態で同様に特徴づけられることから、ウイルスのDNAおよびRNAの両方を、本願発明ではMSRV−1と称される逆転写酵素活性を有するウイルスに係る配列を決めるために調べる。
“第一ヌクレオチド配列”等の、本明細書および請求の範囲に用いられた順序表現は、特別な順序を表すためのものではなく、本発明をより明確に記載するためのものである。
基質もしくは試薬の検出(detection)とは、以下において、前記基質もしくは試薬の同定および定量の両方、もしくは分離または単離を意味するものと解する。
添付された図面を参照して記載された以下の詳細な説明により、本発明をよりよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1は、LM7PCおよびPLI−2系統を起源とするウイルスDNAから、Shih(非特許文献12)によって定義された“pol”領域においてPCR技術で増幅されたMSRV−1Bクローンの一般的な核酸の共通配列を示し、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5およびSEQ ID NO:6に同定され、増幅プライマーと共通に一致するものはSEQ ID NO:7を有する。
【図2】図2は、各MSRV−1B/“PCR pol”型のファミリーに対する機能的な読み枠の定義を与えるもので、前記ファミリーA〜Dは、それぞれ図1記載のSEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5及びSEQ ID NO:6のヌクレオチド配列によって与えられたものである。
【図3】図3は、MSRV−2B配列の共通配列の例を与えるもので、SEQ ID NO:11に同定されている。
【図4】図4は、MS患者から得た培養物中のBリンパ球にから作られたビリオンの精製勾配から得たスクロース画分中の逆転写酵素(RT)活性を、dpm(1分当たりの崩壊)で示したものである。
【図5】図5は、図4と同じ実験条件下における、多発性硬化症ではない対照から得たBリンパ球系統の培養物中の逆転写酵素活性の分析を示す。
【図6】図6は、クローンPSJ17のヌクレオチド配列を示す(SEQ ID NO:9)。
【図7】図7は、M003−P004と称されるクローンのヌクレオチド配列SEQ ID NO:8を示す。
【図8】図8は、クローンF11−1のヌクレオチド配列SEQ ID NO:2を示し、プライマー領域の二つの矢印の間に位置する部分は、F11−1のクローニングに用いられたプライマーの選択によって負わされた可変性に対応している;同図には、アミノ酸への翻訳が示されている。
【図9】図9は、ヌクレオチド配列SEQ ID NO:1、およびSEQ ID NO:1の可能な機能的読み枠をアミノ酸で示しており、この配列では、pol遺伝子の共通配列に下線が施されている。
【図10】図10は、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:18およびSEQ ID NO:19によって同定されたプライマーから得られた増幅生成物のPCRの結果を、エチジウムブロミドに浸したアガロースゲルの紫外線照射写真の形態で与えるものである。
【図11】図11は、SEQ ID NO:16、SEQ ID NO:17、SEQ ID NO:18およびSEQ ID NO:19によって同定されたプライマーから得られた増幅生成物のPCRの結果を、エチジウムブロミドに浸したアガロースゲルの紫外線照射写真の形態で与えるものである。
【図12】図12は、MSRV−1のSEQ ID NO:1とHSERV9と称される内在性レトロウイルスのSEQ ID NO:1との間の相同性のマトリックス形態での表示を与えるもので、相同性が、少なくとも65%の箇所は連続した線で示され、線が欠けている箇所は65%より低い相同性を意味する。
【図13】図13は、クローンFBd3のヌクレオチド配列SEQ ID NO:46を示す。
【図14】図14は、クローンFBd3とHSERV−9レトロウイルスとの間の配列相同性を示す。
【図15】図15は、クローンt polのヌクレオチド配列SEQ ID NO:51を示す。
【図16】図16は、クローンJLBc1のヌクレオチド配列SEQ ID NO:52を示す。
【図17】図17は、クローンJLBc2のヌクレオチド配列SEQ ID NO:53を示す。
【図18】図18は、クローンJLBc1とクローンFBd3との間の配列相同性を示す。
【図19】図19は、クローンJLBc2とクローンFBd3との間の配列相同性を示す。
【図20】図20は、クローンJLBc1とJLBc2との間の配列相同性を示す。
【図21】図21は、HSERV−9レトロウイルスとクローンJLBc1との間の配列相同性を示す。
【図22】図22は、HSERV−9レトロウイルスとクローンJLBc2との間の配列相同性を示す。
【図23】図23は、クローンGM3のヌクレオチド配列SEQ ID NO:56を示す。
【図24】図24は、HSERV−9レトロウイルスとクローンGM3との間の配列相同性を示す。
【図25】図25は、研究された種々のクローンの、既知のレトロウイルスERV9のゲノムに対する局在を示す。
【図26】図26は、以降MSRV−1 pol*と称される領域におけるクローンF11−1、M003−P004、MSRV−1BおよびPSJ17の位置を示す。
【図27a】図27aは、3つの連続する図27a、27bおよび27cの1つであり、3つの連続する図27a、27bおよび27cはpol遺伝子の全体をカバーする可能な読み枠を示す。
【図27b】図27bは、3つの連続する図27a、27bおよび27cの1つであり、3つの連続する図27a、27bおよび27cはpol遺伝子の全体をカバーする可能な読み枠を示す。
【図27c】図27cは、3つの連続する図27a、27bおよび27cの1つであり、3つの連続する図27a、27bおよび27cはpol遺伝子の全体をカバーする可能な読み枠を示す。
【図28】図28は、SEQ ID NO:40に基づいて、SEQ ID NO:39で同定されたアミノ酸配列を備えたペプチドフラグメントPOL2Bをコードするヌクレオチド配列を示す。
【図29】図29は、抗IgG抗体を用いて試験された、29のMS患者の血清と32の健康な対照の血清に対して得られた492nmにおけるOD値(ELISA試験)を示す。
【図30】図30は、抗IgM抗体を用いて試験された、36のMS患者の血清と42の健康な対照の血清に対して得られた492nmにおけるOD値(ELISA試験)を示す。
【図31】図31は3つの連続する図31、32、および33の1つであり、3つの連続する図31、32、および33はスポットスキャン(Spotscan)技術に基づいて、MS血清、対照血清、および、対照血清を用いて少なくとも一つのオクタペプチドに検出された最大シグナルに対応するバックグラウンド(強度=1)を差し引いた後のMS血清を、それぞれ用いて、これらの血清が1/50まで希釈されたという理解のもとに、アミノ酸配列61−110をカバーする43の重複オクタペプチドに対して得られた結果(スポットの相対強度)を示す。最右端に位置する棒は、血清学的試験とは無関係のグラフィックスケール基準を示す。
【図32】図32は3つの連続する図31、32、および33の1つであり、3つの連続する図31、32、および33はスポットスキャン(Spotscan)技術に基づいて、MS血清、対照血清、および、対照血清を用いて少なくとも一つのオクタペプチドに検出された最大シグナルに対応するバックグラウンド(強度=1)を差し引いた後のMS血清を、それぞれ用いて、これらの血清が1/50まで希釈されたという理解のもとに、アミノ酸配列61−110をカバーする43の重複オクタペプチドに対して得られた結果(スポットの相対強度)を示す。最右端に位置する棒は、血清学的試験とは無関係のグラフィックスケール基準を示す。
【図33】図33は3つの連続する図31、32、および33の1つであり、3つの連続する図31、32、および33はスポットスキャン(Spotscan)技術に基づいて、MS血清、対照血清、および、対照血清を用いて少なくとも一つのオクタペプチドに検出された最大シグナルに対応するバックグラウンド(強度=1)を差し引いた後のMS血清を、それぞれ用いて、これらの血清が1/50まで希釈されたという理解のもとに、アミノ酸配列61−110をカバーする43の重複オクタペプチドに対して得られた結果(スポットの相対強度)を示す。最右端に位置する棒は、血清学的試験とは無関係のグラフィックスケール基準を示す。
【図34】図34は、免疫優勢を含む二つのポリペプチドSEQ ID NO:41とSEQ ID NO:42を示すが、SEQ ID NO:43と44は、MSに特異的な免疫応答性ポリペプチドを表す。
【図35】図35は、クローンLB19のヌクレオチド配列SEQ ID NO:59と、アミノ酸の見地からSEQ ID NO:59の3つの潜在的な読み枠を示す。
【図36】図36は、ヌクレオチド配列SEQ ID NO:88(GAG*)と、アミノ酸の見地からSEQ ID NO:88の潜在的な読み枠を示す。
【図37】図37は、クローンFBd13とHSERV−9レトロウイルスとの間の配列相同性を示す。この図では、連続な線は70%以上の相同性を意味し、線の無いところは、相同性のパーセントがそれ以下であることを意味する。
【図38a】図38aは、3つの連続する図38a、38bおよび38cの1つであり、3つの連続する図38a、38bおよび38cは、クローンFP6のヌクレオチド配列SEQ ID NO:61と、アミノ酸の見地からSEQ ID NO:61の3つの潜在的な読み枠を示す。
【図38b】図38bは、3つの連続する図38a、38bおよび38cの1つであり、3つの連続する図38a、38bおよび38cは、クローンFP6のヌクレオチド配列SEQ ID NO:61と、アミノ酸の見地からSEQ ID NO:61の3つの潜在的な読み枠を示す。
【図38c】図38cは、3つの連続する図38a、38bおよび38cの1つであり、3つの連続する図38a、38bおよび38cは、クローンFP6のヌクレオチド配列SEQ ID NO:61と、アミノ酸の見地からSEQ ID NO:61の3つの潜在的な読み枠を示す。
【図39a】図39aは、4つの連続する図39a、39b、39cおよび39dの1つであり、4つの連続する図39a、39b、39cおよび39dは、クローンG+E+Aのヌクレオチド配列SEQ ID NO:89と、アミノ酸の見地からSEQ ID NO:89の3つの潜在的な読み枠を示す。
【図39b】図39aは、4つの連続する図39a、39b、39cおよび39dの1つであり、4つの連続する図39a、39b、39cおよび39dは、クローンG+E+Aのヌクレオチド配列SEQ ID NO:89と、アミノ酸の見地からSEQ ID NO:89の3つの潜在的な読み枠を示す。
【図39c】図39aは、4つの連続する図39a、39b、39cおよび39dの1つであり、4つの連続する図39a、39b、39cおよび39dは、クローンG+E+Aのヌクレオチド配列SEQ ID NO:89と、アミノ酸の見地からSEQ ID NO:89の3つの潜在的な読み枠を示す。
【図39d】図39aは、4つの連続する図39a、39b、39cおよび39dの1つであり、4つの連続する図39a、39b、39cおよび39dは、クローンG+E+Aのヌクレオチド配列SEQ ID NO:89と、アミノ酸の見地からSEQ ID NO:89の3つの潜在的な読み枠を示す。
【図40】図40は、領域Eに見出され、かつ、SEQ ID NO:90に同定されたMSRV−1レトロウイルスのプロテアーゼをコードする読み枠を示す。
【図41】図41は、抗IgG抗体を用いて試験され、492nmにおける正味の光学密度として表された、記号(+)で示されたMS患者、および記号(−)で示された健康な患者の各血清の反応を示す。
【図42】図42は、抗IgM抗体を用いて試験され、492nmにおける正味の光学密度として表された、記号(+)で示されたMS患者、および記号(−)で示された健康な患者の各血清の反応を示す。
【実施例】
【0034】
実施例1:LM7PCおよびPLI−2系統を起源とするビリオン調製物のレトロウイルスの保存されたpol領域の“重ね合わせ(NESTED)”PCR増幅による、レトロウイルスMSRV−1および共感染性成分MSRV2をそれぞれ定義づける、MSRV−1BおよびMSRV−2Bと称されるクローンの調製 Shih(非特許文献12)によって公開された技術から誘導されたPCR技術を使用した。この技術は、DNアーゼで反応媒体の全ての構成要素を処理することによりわずかな混入DNAの全てを除去することができる。付随的に、異なるがオーバーラップするプライマーを二つの連続したPCR増幅サイクルに用いることにより、始めに少量であるとともに、RNAに対するDNアーゼの偽の作用が働くことによって試料中でさらに減少したRNA量から合成されたcDNAを増幅する機会を増すことができる。実際に、DNアーゼは、85℃で10分間熱して、試料中に残ったこの酵素が不活性化する前に全ての少量の混入DNAを除去することができるような過剰な活性の条件下で用いられる。Shih(非特許文献12)によって記載されたPCR技術のこの変形を、一方でPLI−2系統(ECACC No.92072201)で生成された“POL−2”単離物(ECACC No.
V92072202)、および一方でMS7PC系統(ECACC No.93010817)で生成されたMS7PG単離物(ECACC No.V93010816)からH.Perron(非特許文献13)によって記載された技術に基づいてスクロース勾配で精製された感染性粒子の画分の核酸から合成されたcDNAに用いた。これらの培養物は、国際特許公開WO93/20188およびWO93/20189の主題をなす方法に基づいて得られた。
【0035】
TAクローニングキット(商標)を用いた上記技術によって増幅された生成物をクローニングし、アプライド・バイオシステムズ・モデル373A オートマティック・シークエンサーを用いた配列の分析を行った後に、最新の利用可能なバージョンのジーンバンク(商標)データバンクでジーンワークス(商標)ソフトウエアを用いて配列を分析した。
【0036】
上記の試料からクローン化され、配列決定された配列は、特に二つの型の配列に対応する:第一の型の配列は、クローンの大半(PLI−2培養物のPOL−2単離物を起源とするクローンの55%、およびLM7PC培養物のMS7PG単離物を起源とするクローンの67%)に見出され、ERV−9またはHSERV−9と称される内在性ヒトレトロウイルスに似ているが別の“pol”配列のファミリーに対応しており、第二の型の配列は、MSRV−2と称される別の感染性及び/又は病原性の成分に帰する配列に非常に強い相同性を有する配列に対応する。
【0037】
クローンの大半を代表する第一の型の配列は、配列の可変性が、配列の4つのサブファミリーを定義することができる配列からなる。HIV−1レトロウイルス(非特許文献14)でよく知られているように、同じレトロウイルスを起源とする類似の種である、あるいは生産細胞内で共制御されたいくつかの内在性プロウイルスへの病変となった結果であると見なすことができるため、これらのサブファミリーは互いに十分に似ている。これらの多かれ少なかれ不完全な内在性の構成要素は、内在性レトロウイルスの同一のファミリーに属することから(非特許文献15)、複製し得るプロウイルスによって生成される同一の制御シグナルに敏感である。内在性レトロウイルスのこの新規のファミリー、もしくは、類似の種の世代を培養物中に得ることができ、以下の共通配列を含むレトロウイルスのこの新規の種は、MSRV−1Bと称される。
【0038】
図1は、この実験で配列決定された種々のMSRV−1Bの配列の一般的な共通配列を示しており、これらの配列は、それぞれSEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5およびSEQ ID NO:6に同定されている。これらの配列はジーンバンク(商標)データベースにX57147およびM37638に示されたHSERV9配列と70%〜88%の範囲の核酸の相同性を示す。おそらくは外因性のレトロウイルスMSRV−1Bの種々の類似の種、もしくは内因性のレトロウイルスMSRV−1Bの異なるサブファミリーを代表する4つの“共通”核酸配列が定義される。これらの代表的な共通配列は、アミノ酸への翻訳とともに図2に示されている。機能的な読み枠は、これらのMSRV−1B配列の各サブファミリーに対して存在し、機能的な読み取り枠が、それぞれの場合において、核酸配列の下の二行目に示されたアミノ酸配列に対応しているのがわかる。SEQ ID NO:7に同定され、“pol”領域におけるPCR技術によって得られたMSRV−1B配列の一般的な共通部分は、図1に示されている。
【0039】
配列決定されたクローンの大半を示す第二の型の配列は、図5に図示された配列MSRV−2Bに示され、SEQ ID NO:11に同定されている。PCRプライマーに対応する配列に観察される違いは、異なる技術条件下で用いられた混合形態における退化プライマーの使用により説明される。
【0040】
MSRV−2B配列(SEQ ID NO:11)は、データバンクに既に記載されたレトロウイルスの配列とは十分に異なるため、この配列領域は、MSRV−2と称される新規の感染性の成分に属すると考えられる。この感染性の成分は、原則としては、得られた第一の配列の分析に基づいて、レトロウイルスに係るものであるが、この配列を得るために用いた技術から、例えばB型肝炎ウイルス、HBV(非特許文献12)のように、逆転写酵素活性を付随的に備えた酵素をコードするゲノムを備えたDNAウイルスであるかもしれない。さらに、このPCR増幅技術に用いられた退化プライマーのランダムな性質は、予期せぬ配列の相同性または関連する酵素の遺伝子に保存された部位により、原核または真核の病原性及び/又は共感染性の成分(原生生物)を起源とする核酸の増幅を非常によく行うことができる。
【0041】
実施例2:新規のMSからBリンパ球の調製物のレトロウイルスの保存されたpol領域の“重ね合わせ”PCR増幅による、ファミリーMSRV−1およびMSRV2を定義づける、MSRV−1BおよびMSRV−2Bと称されるクローンの調製 シクロスポリンAの適切な濃度を有する適切な培養液に血液のリンパ系細胞を培養した後に、Epstein−Barrウイルス(EBV)にセロポジティブなMS患者のBリンパ球の培養における自己不朽化によって得られた自発的リンパ芽球系からH.Perron(非特許文献13)によって記載された技術、および実施例1に記載のプロトコルに基づいて、スクロース勾配の“LM7様”逆転写酵素活性のピークにおけるビリオンの精製された画分に存在するRNA核酸物質を増幅かつ配列決定するために、Shih(非特許文献12)の技術に基づいて修飾された同じPCR技術を使用した。この系で生産されたビリオンの精製勾配から得られたスクロース画分中の逆転写酵素活性を図4に示す。同様に、多発性硬化症ではない対照から同じ条件下で得られたB系統の培養液の上清を同じ条件下で処理し、スクロース勾配の画分中の逆転写酵素活性の検定は、一貫して否定的(バックグラウンド)であって、図5に示されている。MS B系の勾配の3番目の画分と非MS対照の勾配の逆転写酵素活性のない3番目の画分を、Shih(非特許文献12)によって導かれた上記と同じRT−PCR技術により分析し、実施例1に記載したものと同じクローニングおよび配列決定を行った。
【0042】
MSRV−1およびMSRV−2型の配列が、MS Bリンパ芽球系を起源とする“LM7様”逆転写酵素活性のピークに係る物質のみに見られるということは、特に注目するべきことである。これらの配列は、ランダムに選択された26個の組換えクローンの対照の(非MS)Bリンパ芽球系の物質には見られない。cDNA合成段階に用いられた商業的な逆転写酵素を起源とするMo−MuLV型混入配列、および特定のレトロウイルスの相似性が全くない配列のみが、このPCR技術によって生産された相同のポリメラーゼ配列の“共通の”増幅の結果として、この対照に見られた。さらに、対照試料中の増幅反応に競合する濃縮された標的が欠如しているために、わずかな混入物が増幅される。この結果の違いが、明らかに高い重要性を有する(カイ自乗、p<0.001)。
【0043】
実施例3:PLI−2系を起源とするビリオン調製物と内在性逆転写酵素を反応させることによる、レトロウイルスMSRV−1を定義するクローンPSJ17の調製 この試みは、これと同じ単離物に存在する逆転写酵素活性を用いて、単離物中のおそらくはレトロウイルスRNAから逆転写されたDNA配列を得ることを意図したものである。この逆転写酵素活性は、理論的には、プライマーtRNAに結合したレトロウイルスRNAの存在下、もしくはレトロウイルス粒子(非特許文献16)
で既に逆転写された短い鎖のDNAとハイブリダイズしたときのみに機能することができる。しかして、細胞性核酸が混入した物質中の特定のレトロウイルス配列の調製は、ウイルスの逆転写酵素活性でウイルスRNAを特定の酵素的増幅することにより、作者らによって最適化された。最後に、作者らは、ウイルスに含まれるRNAの逆転写のこの酵素活性が、in vitroで効果的になる、特別な物理化学的条件を決定した。これらの条件は、以下に示したプロトコルの技術的記載に対応する(内在性RT反応、精製、クローニングおよび配列決定)。
【0044】
分子的な試みは、PLI−2系統の培養物の上清から得られた濃縮されてはいるが未精製のビリオンの調製物を用いることに本領があり、調製は以下の方法に基づくものである:培養物の上清を毎週2度回収し、細胞の破片を除くために10000rpmで30分間予備遠心し、−80℃で冷凍するか、以下の工程に用いる。新鮮もしくは解凍された上清を、4℃、2時間、100000g(またはタイプ45T LKB−HITACHIローターで30000rpm)で30%グリセロール−PBSの緩衝剤に遠心する。上清を除去した後、沈澱物を少量のPBSにとり、濃縮されてはいるが未精製のビリオンの画分を構成する。濃縮されてはいるが未精製のウイルス試料を、以下に記載するように、いわゆる内在性逆転写酵素反応を行うために使用した。
【0045】
上記のプロトコルに基づいて精製され、約1−5百万dpmの逆転写酵素活性を含む200μlのビリオンを、液相が現れるまで37℃で溶解し、氷上に移した。5倍に濃縮されたバッファーを以下の組成で調製した:500mM Tris−HCl pH8.2;75mM NaCl;25mM MgCl2;75mM DTTおよび0.10%のNP40。100μlの5Xバッファー+25μlのdATPの100mM溶液+25mlのdTTPの100mM溶液+25mlのdGTPの100μM溶液+25μlのdCTPの100mM溶液+100mlの滅菌蒸留水+200mlのPBS中のビリオンの懸濁液(RT活性は5百万DPM)を混合し、42℃で3時間インキュベートした。インキュベーション後、反応混合物を、バッファー化されたフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコール混合物(Sigma、照合番号P3803)に直接添加し;水相を回収し、一定量の滅菌蒸留水を有機相に加えて残留した核酸物質を再抽出する。回収された水相を合わせて、3Mの酢酸ナトリウムpH5.2を1/10体積+2体積のエタノール+1μlのグリコーゲン(Boehringer-Hannheim 参照番号901393)を添加して、含まれている核酸を沈降させ、この試料を−20℃で4時間または+4℃で一晩放置する。遠心後に得られた沈澱物を、70%エタノールで洗浄し、60mlの蒸留水に再懸濁した。この反応生成物を、以下に記載したプロトコルに基づいて精製、クローン化および配列決定した:端部に対を形成していないアデニンを備えた平滑末端DNAを生成した:“埋立”反応を最初に行った:予め精製された25μlのDNA溶液を、等モルのdATP+dGTP+dTTP+dCTPを含有する2μlの2.5mM溶液/1μlのT4DNAポリメラーゼ(Boehringer-Mannheim 参照番号1004786)/5μlの10X“制限酵素用インキュベーションバッファー”(Boehringer-Mannheim 参照番号1417975)/1μlの1%ウシ血漿アルブミン溶液/16μlの滅菌蒸留水と混合した。この混合物を、11℃で20分間インキュベートした。この混合物に50μlのTEバッファーと1μlのグリコーゲン(Boehringer-Mannheim 参照番号901393)を添加し、核酸をフェノー
ル/クロロホルム/イソアミルアルコール(Sigma、照合番号P3803)で抽出し、上述のように酢酸ナトリウムで沈澱させた。遠心後のDNA沈澱物を、10μlの10mM TrisバッファーpH7.5に再懸濁した。5μlのこの懸濁物を、20μlの5X Taq DNAバッファー、20μlの5mM dATP、1μl(5U)のTaq DNAポリメラーゼ(AmplitaqTM)および54μlの滅菌蒸留水と混合した。この混合物を、溶液の表面上に油膜を張った状態で75℃で2時間インキュベートした。インキュベーション後に油膜下の水溶液に懸濁されているDNAを、上述のようにして沈澱させ、2μlの滅菌蒸留水に再懸濁した。得られたDNAを、TAクローニングキットTMを用いてプラスミドに挿入した。2μlのDNA溶液を、5μlの滅菌蒸留水、1μlの10倍に濃縮されたリゲーションバッファー“10Xリゲーションバッファー”、2μlの“pCRTM ベクター”(25ng/ml)および1μlの“TA DNAリガーゼ”と混合した。この混合物を、12℃で一晩インキュベートした。以下の段階を、TAクローニングキット(商標)(British Biotechnology)の説明に従って行った。操作の終わりに、培養し、かついわゆる“ミニプレップ(miniprep)“操作(非特許文献17)に基づいて取り込まれたプラスミドの抽出を行うために、組換えられた(白色)バクテリアの白色のコロニーを回収した。各組換えコロニーから抽出されたプラスミドを、適当な制限酵素で切断し、アガロースゲルで分析した。TAクローニングキットのクローニングプラスミドに存在するSp6プロモーターに相補的なプライマーとハイブリダイゼーションさせた後に、ゲルをエチジウムブロミドに浸して紫外線照射下で検出された挿入物を所有するプラスミドを、挿入物の配列決定のために選択した。次いで、配列決定の前の反応を、シークエンシングキット“プリズム・レディー・リアクション・キット・ダイ・デオキシターミネーター・サイクル・シークエンシング・キット”(Applied Biosystems、照合番号401384)の使用に推奨された方法によって行い、自動配列決定をApplied Biosystemsの“モデル373Aオートマティック・シークエンサー”装置で、製造者の説明に従って行った。
【0046】
反応混合物中に存在するDNAフラグメントからクローン化された配列のコンピューター化されたデータバンクにおける識別により、レトロウイルス型の配列が示された。対応するクローンPSJ17が、完全に配列決定され、図6に示すSEQ ID NO:9に同定され、得られた配列をデータバンク、最新の“ジーンバンク”(商標)で“ジーンワークス”(商標)ソフトウエアを用いて分析した。上述の配列は、データバンクの分析からは見いだすことができなかった。ある既知のレトロウイルスの構成要素と、部分的のみの相同性が見いだされた。最も使用できる比較的相同性は、参考文献(非特許文献18)に基づいて、ERV−9、またはHSERV−9と称される内在性レトロウイルスと関連している。
【0047】
実施例4:クローン“POL MSRV−1B”によって定義された5’領域とクローンPSJ17によって定義された3’領域との間に含まれる核酸配列のPCR増幅 5種のオリゴヌクレオチド、M001、M002−A、M003−BCD、P004およびP005を、精製されたPOL−2ウイルスを起源とするRNAを増幅するために定義した。基準対照反応を、混入物の存在をチェックするために行った(水での反応)。増幅は、実施例2に記載したプロトコルに従うRT−PCR段階からなり、次いで欧州特許公開第0569272号公報に記載のPCRプロトコルに基づく“重ね合わせ”PCRを行う。最初のRT−PCRサイクルにおいて、プライマーM001およびP004またはP005を用いた。第二のPCRサイクルにおいて、プライマーM002−AまたはM003−BCDおよびプライマーP004を用いた。プライマーは、以下のように配置する。
【0048】
【化1】

【0049】
これらの組成は以下の通りである。
【0050】
【化2】

【0051】
得られた、M003−P004と称される“重ね合わせ”増幅産物は図7に示され、これはSEQ ID NO:8に対応する。
【0052】
実施例5:逆転写酵素活性のピークで精製されたウイルス試料における、既に同定された配列を用いたMSRV−1レトロウイルスゲノムの一部の増幅およびクローニング Frohman(非特許文献19)によって公開された技術から導かれたPCR技術を用いた。この誘導された技術は、増幅されるゲノムの3’末端における特定のプライマーを用いて、分析されるゲノムの5’領域への配列の伸長を可能にする。この変形した技術は、上記のように精製されたビリオンの画分に使用される製品“5'−AmpliFINDERTM RACE Kit”を提供する会社“Clontech Laboratories Inc.,(Palo−AltoCalifornia,USA)の文献に記載されている。
【0053】
cDNAの合成およびPCR増幅用のキットプロトコルで用いられた特定の3’プライマーは、それぞれ以下のMSRV−1配列に相補的である:
【0054】
【化3】

【0055】
PCRに由来する生成物は、従来の方法(非特許文献17)に基づくアガロースゲルで精製した後に、10mlの蒸留水に再懸濁した。Taqポリメラーゼの特徴の一つは、二つのDNA鎖のそれぞれの3’末端にアデニンを添加することであるため、得られたDNAをTAクローニングキットTM(British Biotechnology)を用いてプラスミドに直接挿入した。2μlのDNA溶液を、5μlの滅菌蒸留水、1μlの10倍に濃縮されたリゲーションバッファー“10’リゲーションバッファー”、2μlの“pCRTM ベクター”(25ng/ml)および1μlの“TA DNAリガーゼ”と混合した。この混合物を、12℃で一晩インキュベートした。以下の段階を、TAクローニングキット(商標)(British Biotechnology)の説明に従って行った。操作の終わりに、培養し、かついわゆる“ミニプレップ”操作(非特許文献17)に基づいて取り込まれたプラスミドの抽出を行うために、組換えられた(白色)バクテリアの白色のコロニーを選択した。各組換えコロニーからのプラスミド調製物を、適当な制限酵素で切断し、アガロースゲルで分析した。TAクローニングキット(商標)のクローニングプラスミドに存在するSp6プロモーターに相補的なプライマーとハイブリダイゼーションさせた後に、挿入物の配列決定用に、ゲルをエチジウムブロミドに浸して紫外線照射下で検出された挿入物を所有するプラスミドを選択した。次いで、配列決定の前の反応を、シークエンシングキット“プリズム・レディー・リアクション・キット・ダイ・デオキシターミネーター・サイクル・シークエンシング・キット”(Applied Biosystems、照合番号401384)の使用に推奨された方法によって行い、自動配列決定をApplied Biosystemsの“モデル373Aオートマティック・シークエンサー”装置で、製造者の説明に従って行った。
【0056】
この技術を、一方のPLI−2系統によって生成された“POL−2”単離物、および一方のLM7PC系統によって生成されたMS7PG単離物から、スクロースで以下に記載するように精製されたビリオンの二つの画分に最初に適用した。培養物の上清を毎週2度回収し、細胞の破片を除くために10000rpmで30分間予備遠心し、−80℃で冷凍するか、以下の工程に用いる。新鮮もしくは解凍された上清を、4℃、2時間、100000g(またはタイプ45T LKB−HITACHIローターで30000rpm)で30%グリセロール−PBSの緩衝剤に遠心する。上清を除去した後、沈澱物を少量のPBSにとり、濃縮されてはいるが未精製のビリオンの画分を構成する。濃縮されたウイルスを、滅菌されたPBSバッファー(15〜50% 重量/重量)におけるスクロース勾配に適用し、スウィングアウトローターで+4℃、12時間35000rpm(100000g)で超遠心した。10個の画分を回収し、H.Perron(非特許文献3)に記載された技術に基づいて逆転写酵素活性を検定するために、ホモジェナイゼーション後に各画分から20μlを取り出した。“LM7様”RT活性のビークを含む画分を滅菌したPBSに希釈し、ウイルス粒子を沈澱させるために35000rpm(100000g)で1時間超遠心した。得られた精製されたビリオンの沈澱物を、RNAの抽出に適した少量のバッファーに取り込む。上述のcDNA合成反応を、精製された細胞外のビリオンから抽出されたこのRNAに対して行った。上述の技術に係るPCR増幅は、クローンF1−11を得ることを可能にし、SEQ ID NO:2に同定されたこのクローンの配列が、図8に示されている。
【0057】
このクローンは、図9に示したように、以前に配列決定された別のクローンと、MSRV−1レトロウイルスの“pol”遺伝子を表す相当な長さ(1.2kb)の領域を定義することができる。SEQ ID NO:1と称されるこの配列は、その端部が互いに重複する種々のクローンから再構成され、プライマー、および全体の読み枠を人為的に妨げる増幅またはクローニング技術に係る人為産物を調整する。この配列を、以下では“MSRV−1 pol* 領域”と称する。HSERV−9配列との相同性の程度を図12に示す。図9では、アミノ酸への翻訳と共に、可能な読み枠が核酸配列の下に示されている。
【0058】
実施例6:MS患者もしくは基準対照の患者に由来する血漿の種々の試料における特定のMSRV−1およびMSRV−2配列の検出 EDTA上に、MS患者またはMSではない対照から血液試料を取って得られた血漿中のMSRV−1およびMSRV−2ゲノムを検出するために、PCR技術を使用した。
【0059】
血漿からのRNAの抽出は、グアニジニウムチオシアナートを含む一定量のバッファーを、採取後−80℃で冷凍保存された1mlの血漿に添加した後に、P.Chomzynski(非特許文献20)によって記載された技術に基づいて行った。
MSRV−2に対して、同じ条件下で、以下のプライマーを用いて、PCRを行った。
【0060】
− 5’プライマー、SEQ ID NO:14に同定されたもの
【0061】
【化4】

【0062】
− 3’プライマー、SEQ ID NO:15に同定されたもの
【0063】
【化5】

【0064】
しかしながら、DNアーゼで処理していない核酸の試料に対する“重ね合わせ”PCRによる二つの連続した増幅における以下のPCRプライマーを用いて類似の結果が得られた。
【0065】
ハイブリダイゼーション温度48℃の40サイクルの第一段階に使用されたプライマーは、以下のものである。
【0066】
− 5’プライマー、SEQ ID NO:27に同定されたもの
【0067】
【化6】

【0068】
患者の試料における第一のPCR用であって、5’MSRV−2 PCRプライマーに対応する、 − 3’プライマー、SEQ ID NO:28に同定されたもの
【0069】
【化7】

【0070】
患者の試料における第一のPCR用であって、3’MSRV−2 PCRプライマーに対応する。
【0071】
この段階の後に、10μlの増幅生成物を得て、既に増幅された領域内に位置したプライマーで、第二のいわゆる“重ね合わせ”PCR増幅を行う。この第二の段階を、プライマーハイブリダイゼーション(“アニーリング”)温度50℃で、35サイクル以上行う。反応液の体積は、100μlである。
【0072】
この第二の段階に用いたプライマーは、以下のものである。
【0073】
− 5’プライマー、SEQ ID NO:29に同定されたもの
【0074】
【化8】

【0075】
患者の試料における重ね合わせPCR用であって、5’MSRV−2 PCRプライマーに対応する、 − 3’プライマー、SEQ ID NO:30に同定されたもの
【0076】
【化9】

【0077】
患者の試料における重ね合わせPCR用であって、3’MSRV−2 PCRプライマーに対応する。
【0078】
MSRV−1に対して、二段階で増幅を行った。さらに、核酸試料を、DNアーゼで予め処理して、RT−PCR増幅がMSRV−1RNAから独占的に起こることを確かめるために、RTを用いない対照のPCR(AMV逆転写酵素)を二つの増幅段階に行った。RTを用いない陽性(ポジティブ)の対照の場合には、RNAの最初の試料を再度DNアーゼで処理し、再度増幅する。
【0079】
RNアーゼ活性のないDNアーゼで処理するプロトコルは、以下に示す通りである:抽出されたRNAを、“RNアーゼ阻害剤”(Boehringer-Mannheim)の存在下で、10μl中に1μgの終濃度となるようにDEPCで処理した水に分注する:これらの10μlに、1μlの“RNアーゼのないDNアーゼ”(Boehringer-Mannheim)と、0.1M/lの酢酸ナトリウムおよび5mM/lのMgSO4を含む1.2μlのpH5バッファーを添加する;この混合物を20℃で15分間インキュベートし、95℃で15分間“サーモサイクラー”中に移す。
【0080】
第一のMSRV−1 RT−PCR段階を、欧州特許公開第0569272号
公報に記載されたRNA増幅方法の変形に基づいて行う。特に、cDNA合成段階は、42℃で1時間行い、PCR増幅を53℃のプライマーハイブリダイゼーション(“アニーリング”)温度で40サイクル以上行う。反応液の体積は、100μlである。
この第一段階に使用されたプライマーは、以下のものである。
【0081】
− 5’プライマー、SEQ ID NO:16に同定されたもの
【0082】
【化10】

【0083】
− 3’プライマー、SEQ ID NO:17に同定されたもの
【0084】
【化11】

【0085】
この段階の後に、10μlの増幅生成物を得て、既に増幅された領域内に位置したプライマーで第二のいわゆる“重ね合わせ”PCR増幅を行う。この第二の段階を、プライマーハイブリダイゼーション(“アニーリング”)温度53℃で、35サイクル以上行う。反応液の体積は、100μlである。
【0086】
この第二の段階に用いたプライマーは、以下のものである。
【0087】
− 5’プライマー、SEQ ID NO:18に同定されたもの
【0088】
【化12】

【0089】
− 3’プライマー、SEQ ID NO:19に同定されたもの
【0090】
【化13】

【0091】
図10および11は、異なるウェルに別々に適用されたPCR増幅生成物の電気泳動を行ったエチジウムブロミドに浸したアガロースゲルの紫外線照射下における写真の形態のPCRの結果を表している。
【0092】
上の写真(図10)は、特定のMSRV−2増幅の結果を示している。
8番のウェルは、DNA分子量マーカーの混合物を含み、1〜7番のウェルは、4人のMSではない健康的な対照(1〜4番のウェル)および病状が異なる段階の3人のMS患者(5〜7番のウェル)を起源とする血漿の全体のRNAから増幅された生成物をそれぞれ示す。
【0093】
この一連において、MSRV−2核酸物質が、試験された3人の内の一人のMSの血漿に検出され、4人の対照の血漿には一人も検出されなかった。より広い範囲で得られた別の結果が、これらの結果を確証した。
【0094】
下の写真(図11)は、MSRV−1“重ね合わせ”RT−PCRによる特定の増幅の結果を示す。
【0095】
1番のウェルは、AMV逆転写酵素を添加せずに水だけで生成されたPCR生成物を含み;2番のウェルは、AMV逆転写酵素を添加して水だけで生成されたPCR生成物を含み、3番のウェルは、DNA分子量マーカーの混合物を含み;
4〜13のウェルは、Perron(非特許文献13)によって記載されたプロトコルに基づいて、MSRV−1およびMSRV−2で感染した培養物の上清を起源とするビリオンの小球を遠心して平衡化したスクロース勾配画分(下方向へ向けて回収)から抽出された全体のRNAから増幅された生成物を含み、14番のウェルには何も添加せず、15〜17番のウェルには、異なる段階の病状の3人のMS患者を起源とする血漿から抽出されたRNAの増幅された生成物を添加した。
【0096】
MSRV−1レトロウイルスゲノムは、H.Perron(非特許文献3)によって記載された技術に基づいて測定された逆転写酵素活性のピークを含むスクロース勾配画分に、非常に強い強度を伴って確かに見られる(勾配の画分5、8番のウェルに添加されたもの)。第一の画分(4番のウェル)には、勾配の表面に浮いた溶解された粒子から放出されたRNAに対応すると思われるわずかな増幅が起こり、同様に、低い強度の増幅を起こすMSRV−1ゲノムのいくつかのコピーを有する最後の画分(チューブの底)に沈澱した集合破片でも同じことが起こった。
【0097】
この一連の試験における3人のMS血漿の一つのMSRV−1RNAが、非常に強力な増幅を起こすことがわかった(17番のウェル)。
【0098】
この一連の試験において、極端に小さい数で血漿中に存在する細胞外ウイルスの粒子に対応すると思われるMSRV−1レトロウイルスRNAゲノムが、試験された3人の内の一人のMSにおける“重ね合わせ”RT−PCRによって検出された。より広い範囲で得られた他の結果は、これらの結果を確証するものである。
【0099】
さらに、これらのPCR技術によって増幅された配列の特異性を確認し、F.
Mallet(非特許文献21)によって記載され、かつ仏国特許文献FR2663040に記載された“ELOSA”技術によって評価した。
【0100】
MSRV−1に関して、上述の重ね合わせPCRの生成物を、実施例1および図1および2に記載のサブファミリーに対応する、MSRV−1の共通配列Aと共通配列B+C+Dを分けて検出することができる二つのELOSAシステムにおいて試験してもよい。実際に、共通配列B+C+Dによく似た配列は、培養物から精製、あるいはMS患者の細胞外の生物学的流体において増幅されたMSRV−1ビリオンを起源とするRNA試料に必須に観察されるが、共通配列Aによく似た配列は、正常なヒトの細胞性DNAに必須に観察される。
【0101】
サブファミリーAのPCR生成物の捕捉および特定のハイブリダイゼーション用のELOSA/MSRV−1システムは、5’末端にアミン結合を有するキャプチャーオリゴヌクレオチドcpV1Aと、ビオチニル化された検出オリゴヌクレオチドdpV1Aを使用し、これらは、それぞれ以下の配列を有する。
【0102】
− SEQ ID NO:31に同定されたcpV1A
【0103】
【化14】

【0104】
SEQ ID NO:16およびSEQ ID NO:17によって同定されたプライマーを用いて行われたMSRV−1重ね合わせPCRの生成物用のELOSA捕捉オリゴヌクレオチドに対応し、任意に、患者の試料におけるSEQ ID NO:18およびSEQ ID NO:19によって同定されたプライマーとの増幅を行ってもよい。
【0105】
− SEQ ID NO:32に同定されたdpV1A
【0106】
【化15】

【0107】
SEQ ID NO:16およびSEQ ID NO:17によって同定されたプライマーを用いて行われたMSRV−1重ね合わせPCRの生成物のサブファミリーA用のELOSA捕捉オリゴヌクレオチドに対応し、任意に、患者の試料におけるSEQ ID NO:18およびSEQ ID NO:19によって同定されたプライマーとの増幅を行ってもよい。
【0108】
サブファミリーB+C+DのPCR生成物の捕捉および特定のハイブリダイゼーション用のELOSA/MSRV−1システムは、ビオチニル化された同じ検出オリゴヌクレオチドdpV1Aと、5’末端にアミン結合を有し、以下の配列を有するキャプチャーオリゴヌクレオチドcpV1Bを使用する。
【0109】
− SEQ ID NO:33に同定されたdpV1B
【0110】
【化16】

【0111】
SEQ ID NO:16およびSEQ ID NO:17によって同定されたプライマーを用いて行われたMSRV−1“重ね合わせ”PCRの生成物のサブファミリーB+C+D用のELOSA捕捉オリゴヌクレオチドに対応し、任意に、患者の試料におけるSEQ ID NO:18およびSEQ ID NO:19によって同定されたプライマーとの増幅を行ってもよい。
【0112】
このELOSA検出システムにより、MS患者のDNアーゼ処理された血漿から増幅されたPCR生成物が、一つもサブファミリーAの配列を含有しないこと、および全てがサブファミリーB、CおよびDの共通配列に陽性であることを確認することができる。
MSRV−2に関して、以下のPCR増幅プライマーを用いて、感染した細胞培養物を起源とする単離物において類似のELOSA技術を行った。
【0113】
− SEQ ID NO:34に同定された5’プライマー、
【0114】
【化17】

【0115】
培養物からの試料のPCR用の5’MSRV−2PCRプライマーに対応する、 − SEQ ID NO:35に同定された3’プライマー、
【0116】
【化18】

【0117】
培養物からの試料のPCR用の3’MSRV−2PCRプライマーに対応する、 そして、5’末端にアミン結合を備えた捕捉オリゴヌクレオチドcpV2およびビオチニル化された検出オリゴヌクレオチドdpV2は、それぞれ以下の配列を有する: − SEQ ID NO:36に同定されたcpV2
【0118】
【化19】

【0119】
プライマーSEQ ID NO:34およびSEQ ID NO:35、または任意にShih(非特許文献12)によって記載された退化プライマーを用いて行われたMSRV−2 PCRの生成物用のELOSA捕捉オリゴヌクレオチドに対応する。
− SEQ ID NO:37に同定されたdpV2
【0120】
【化20】

【0121】
プライマーSEQ ID NO:34およびSEQ ID NO:35、または任意にShih(非特許文献12)によって記載された退化プライマーを用いて行われたMSRV−2 PCRの生成物用のELOSA検出オリゴヌクレオチドに対応する。
【0122】
患者からの試料における増幅用に前述したものと異なる一組のプライマーを用いたこのPCR増幅システムは、in vitroの培養物および分子生物学の研究用に用いられた核酸の試料のMSRV−2との感染を確かめることができる。
【0123】
病原性及び/又は感染性の成分のゲノムのPCR検出の第一の結果は、自由な“ウイルス”が、神経系の外側を、適切な毒性の段階で、患者の血流中を循環することができることを示す。これは、MSの活性段階の患者の血液脳関門における“ギャップ”のほとんど不変的存在に適合する。
【0124】
実施例7:MSRV−1レトロウイルスゲノムの“env”遺伝子の配列の取得 実施例5に既に記載したように、Frohman(非特許文献19)によって開示された技術から誘導されたPCR技術を用いた。この誘導された技術は、増幅されるゲノムの3’末端に特異的なプライマーを用いて、分析されるゲノムの5’領域へ配列を伸ばすことを可能にする。この技術の変更は、“5'-AmpliFINDER RACE Kit”を与える“Clontech Laboratories Inc.,(米国、カリフォルニア、Palo-Alto)”の文書に記載されており、上述のように精製されたビリオンのフラクションに用いられた。
【0125】
“env”遺伝子の領域を内包するMSRV−1レトロウイルスゲノムの3’領域の増幅を行うために、不完全な内在性レトロウイルスHSERV−9と同じタイプのLTR領域の共通配列を決定する研究を行った(非特許文献18、24)。これで、MSRV−1レトロウイルスは部分的相同性を示した。
【0126】
これと同じ特異的3’プライマーを、cDNA合成およびPCR増幅のキットプロトコルに用いた。その配列は以下の通りである:
【0127】
【化21】

【0128】
上記プライマーを用いた相補的DNA(cDNA)の合成および間接的でない(undirectional)PCR増幅は、欧州特許公開第0569272号公報に記載された方法に基づいて一段階で行われた。
【0129】
PCRに由来する生成物は、従来の方法(非特許文献17)に基づくアガロースゲルで精製した後に抽出し、10mlの蒸留水に再懸濁した。Taqポリメラーゼの特徴の一つは、二つのDNA鎖のそれぞれの3’末端にアデニンを添加することであるため、得られたDNAをTAクローニングキットTM(British Biotechnology)を用いてプラスミドに直接挿入した。2μlのDNA溶液を、5μlの滅菌蒸留水、1μlの10倍に濃縮されたリゲーションバッファー“10xリゲーションバッファー”、2μlの“pCRTM ベクター”(25ng/ml)および1μlの“TA DNAリガーゼ”と混合した。この混合物を、12℃で一晩インキュベートした。以下の段階を、TAクローニングキット(商標)(British Biotechnology)の説明に従って行った。操作の終わりに、培養し、かついわゆる“ミニプレップ”操作(非特許文献17)に基づいて取り込まれたプラスミドの抽出を行うために、組換えられた(白色)バクテリアの白色のコロニーを選択した。各組換えコロニーからのプラスミド調製物を、適当な制限酵素で切断し、アガロースゲルで分析した。TAクローニングキット(商標)のクローニングプラスミドに存在するSp6プロモーターに相補的なプライマーとハイブリダイゼーションさせた後に、挿入物の配列決定用に、ゲルをエチジウムブロミドに浸して紫外線照射下で検出された挿入物を所有するプラスミドを選択した。次いで、配列決定の前の反応を、シークエンシングキット“プリズム・レディー・リアクション・キット・ダイ・デオキシターミネーター・サイクル・シークエンシング・キット”(Applied Biosystems、照合番号401384)の使用に推奨された方法によって行い、自動配列決定をApplied Biosystemsの“モデル373Aオートマティック・シークエンサー”装置で、製造者の説明に従って行った。
【0130】
この技術的試みを、実施例2に記載したように、MS患者のリンパ球から得られたBリンパ芽球系統によって産生される培養液上清の混合物から以下のようにして濃縮され、かつ、Perronら(非特許文献3)に記載された技術に基づいて検出されうる逆転写酵素活性を備えた、ビリオンのサンプルに適用した。
【0131】
培養物の上清を毎週2度回収し、細胞の破片を除くために10000rpmで30分間予備遠心し、−80℃で冷凍するか、以下の工程に用いる。新鮮もしくは解凍された上清を、4℃、2時間、100000gで30%グリセロール−PBSの緩衝剤で遠心する。上清を除去した後、沈澱したペレットは、濃縮されてはいるが未精製のビリオンのサンプルを構成する。得られたペレットを、RNAの抽出のために少量の適切なバッファーに取る。上記のcDNA合成反応を、濃縮された細胞外ビリオンから抽出されたRNAで行う。
【0132】
上記の技術に基づいたRT−PCR増幅は、クローンFBd3を得ることを可能にし、その配列は、SEQ ID NO:46として、図13に示されている。
【0133】
図14には、クローンFBd3およびHSERV−9レトロウイルス間の配列相同性が、65%以上のあらゆる部分的相同性の連続的直線によって、マトリックスチャートに示されている。クローンの隣接領域に相同性があることがわかるが(5’末端のpol遺伝子、および3’末端のenv遺伝子およびLTR)、内部領域はまったく異なり、HSERV9の“env”遺伝子との相同性を全く、弱いものでさえも示さない。さらに、クローンFBd3は、不完全な内在性のHSERV−9を記述するものより長い“env”領域を含むことは明白であり、しかして、内在する異なる領域が、HSERV−9不完全遺伝子と部分的相同性のある領域間の“挿入物”を構成すると理解できるかもしれない。
【0134】
実施例8:クローンPSJ17とFBd3との間に位置するMSRV−1レトロウイルスゲノムの領域の増幅、クローニングおよび配列決定 4種のオリゴヌクレオチド、F1、B4、F6およびB1を、POL2およびMS7PG系統の濃縮されたビリオンに由来するRNAを増幅するために定義した。基準対照反応を、混入物の存在をチェックするために行った(水での反応)。
【0135】
増幅は、欧州特許公開第0569272号公報に記載のプロトコルに基づくRT−PCRの第一段階と、それに続く、増幅された第一領域の内部のプライマーを用いて第一段階の10mlの産物に行われる第二段階のPCRからなる(“重ね合わせ”PCR)。最初のRT−PCRサイクルにおいて、プライマーF1およびB4を用いた。第二のPCRサイクルにおいて、プライマーF6およびプライマーB1を用いた。プライマーは、以下のように配置する。
【0136】
【化22】

【0137】
これらの組成は以下の通りである。
【0138】
【化23】

【0139】
得られた、“t pol”と称される“重ね合わせ”増幅産物は図15に示されており、これはSEQ ID NO:51に対応する。
【0140】
実施例9:MSRV−1を産生する培養の細胞においてRNAとして発現され、MSRV−1レトロウイルスゲノムの“env”領域を含む新規配列を得る cDNAライブラリーを、実施例2に記載したように、MS患者の、Perronら(非特許文献3)によって記載された技術に基づいて検出されうる逆転写酵素活性を備えたリンパ球から得られたBリンパ芽球系統の細胞から抽出されたmRNAから、“cDNA合成モジュール、cDNA急速適応リゲーションモジュール、cDNA急速クローニングモジュール、およびラムダgt10 in vitroパッケージングモジュール”キット(Amersham,ref PRN1256Y/Z,RPN1712,RPN1713,RPN1717,N334Z)の製造者が記載した方法に基づいて作製した。
【0141】
オリゴヌクレオチドは、クローンPSJ17の3’領域(pol)とクローンFBd3の5’(LTR)領域との間の核酸ライブラリーにクローン化されたcDNAを増幅するために定義された。混入物の存在をチェックするために対照反応を行った(水を用いた反応)。異なるペアのプライマーを用いてライブラリーにクローン化された核酸に行われたPCR反応は、MSRV−1タイプのenvもしくはLTR配列にpol配列を連結する一連のクローンが増幅されることを可能にした。
【0142】
二つのクローンは、細胞性cDNAライブラリーに得られた配列を代表するものである: − クローンJLBc1、その配列であるSEQ ID NO:52は、図16に示されている。
【0143】
− クローンJLBc2、その配列であるSEQ ID NO:53は、図17に示されている。
【0144】
クローンJLBc1およびJLBc2の配列は、図18および19に示されているように、クローンFBd3の配列に相同である。クローンJLBc1およびJLBc2間の相同性は、図20に示されている。
【0145】
クローンJLBc1およびJLBc2と、HSERV9配列との間の相同性は、図21および22に示されている。
【0146】
JLB1、JLB2およびFBd3間の相同領域は、図8に記載されているように、いくつかの配列および“挿入物”の大きさの変化を伴って、HSERV−9 env配列におけるさらなる配列の欠失(“挿入された”)を含むことに注意すべきである。
【0147】
また、クローン化された“pol”領域はHSERV−9に非常に相同であること、読み枠を持たないこと(自動シークエンサーさえも含む、用いた技術によって誘発された配列のエラーを覚えておく)、並びにビリオンから得られたMSRV−1配列から分かれていることにも注意すべきである。これらの配列が、MSRV−1粒子を発現する細胞のRNAからクローン化されるという観点から、それらは恐らくERV9ファミリーに関連する内在性レトロウイルス成分に由来する。これは全て、polとenv遺伝子が、明らかにMSRV−1ゲノムRNAではない同一のRNAに存在するという事実によるものであろう。これらのERV9成分のいくつかは、相同もしくは非相同のトランスアクチベーターをコードする複製ウイルスによって活性化される機能的LTRを所有する。このような条件下では、MSRV−1とHSERV−9との関係は、相同、もしくは同一でさえある、MSRV−1トランス活性化タンパク質により、不完全な(あるいは他の)内在性ERV9成分のトランスアクティベーションを起こす。
【0148】
このような現象は、MSRV−1の発現と、それに関連した内在性成分との間のウイルスの干渉を誘発するかもしれない。このような干渉は、一般的に、いわゆる“不完全干渉(defective-interfering)”発現を導き、このいくつかの特徴は、研究されたMSRV−1感染培養物に見出される。さらに、このような現象は、ポリペプチド、もしくは免疫系で必ずしも慣用されない内在性レトロウイルスタンパク質でさえも、発現の発生を欠かない。MSRV−1に関連した、並びに、これに誘発された内在性成分の常軌を逸した発現のこのような機構は、常軌を逸した抗原を増大させやすく、MSに観察されるような自己免疫工程の誘発に寄与しがちである。
【0149】
しかしながら、ERV9とは全く異なるさらなる領域を含むより長いenv領域を所有することにおいて、クローンJLBc1とJLBc2が、既に記載されたERV9もしくはHSERV9配列と異なることに注意するのは必須である。
内在性ERV9ファミリーとのこれらの類似性は定義されるが、明らかに、これまでに記述されたことのない新規な成分を構成する。実際には、“Entrez”ソフトウェア(NCBI,NIH,Bethesda,米国)のバージョンNo15(1995)に利用できる核酸配列のデータバンクの疑問は、これらのクローンのenv領域における既知の相同配列を同定することができなかった。
【0150】
実施例10:MSRV−1レトロウイルスゲノムの5’polと3’gag領域に位置する配列を得る 実施例5に記載したように、Frohman(非特許文献19)によって公開された技術から導かれたPCR技術を用いた。この誘導された技術は、増幅されるゲノムの3’末端における特定のプライマーを用いて、分析されるゲノムの5’領域への配列の伸長を可能にする。この変形した技術は、上記のように精製されたビリオンの画分に使用される製品“5'−AmpliFINDERTM RACE Kit”を提供する会社“Clontech Laboratories Inc.,(Palo−AltoCalifornia,USA)の文献に記載されている。
【0151】
既に配列決定されたpol配列(クローンF11−1)から始まりgag遺伝子へ向かって伸びるMSRV−1レトロウイルスゲノムの5’領域の増幅を行うため、MSRV−1特異的プライマーを定義した。
【0152】
cDNAの合成およびPCR増幅用のキットプロトコルで用いられた特定の3’プライマーは、それぞれ以下のMSRV−1配列に相補的である:
【0153】
【化24】

【0154】
PCRに由来する生成物は、従来の方法(非特許文献17)に基づくアガロースゲルで精製した後に抽出し、10mlの蒸留水に再懸濁した。Taqポリメラーゼの特徴の一つは、二つのDNA鎖のそれぞれの3’末端にアデニンを添加することであるため、得られたDNAをTAクローニングキットTM(British Biotechnology)を用いてプラスミドに直接挿入した。2μlのDNA溶液を、5μlの滅菌蒸留水、1μlの10倍に濃縮されたリゲーションバッファー“10xリゲーションバッファー”、2μlの“pCRTM ベクター”(25ng/ml)および1μlの“TA DNAリガーゼ”と混合した。この混合物を、12℃で一晩インキュベートした。以下の段階を、TAクローニングキット(商標)(British Biotechnology)の説明に従って行った。操作の終わりに、培養し、かついわゆる“ミニプレップ”操作(17)に基づいて取り込まれたプラスミドの抽出を行うために、組換えられた(白色)バクテリアの白色のコロニーを選択した。各組換えコロニーからのプラスミド調製物を、適当な制限酵素で切断し、アガロースゲルで分析した。TAクローニングキット(商標)のクローニングプラスミドに存在するSp6プロモーターに相補的なプライマーとハイブリダイゼーションさせた後に、挿入物の配列決定用に、ゲルをエチジウムブロミドに浸して紫外線照射下で検出された挿入物を所有するプラスミドを選択した。次いで、配列決定の前の反応を、シークエンシングキット“プリズム・レディー・リアクション・キット・ダイ・デオキシターミネーター・サイクル・シークエンシング・キット”(Applied Biosystems、照合番号401384)の使用に推奨された方法によって行い、自動配列決定をApplied Biosystemsの“モデル373Aオートマティック・シークエンサー”装置で、製造者の説明に従って行った。
【0155】
この技術的試みを、実施例2に記載したように、MS患者のリンパ球から得られたBリンパ芽球系統によって産生される培養液上清の混合物から以下のようにして濃縮され、かつ、Perronら(非特許文献3)に記載された技術に基づいて検出されうる逆転写酵素活性を備えた、ビリオンのサンプルに適用した。
【0156】
培養物の上清を毎週2度回収し、細胞の破片を除くために10000rpmで30分間予備遠心し、−80℃で冷凍するか、以下の工程に用いる。新鮮もしくは解凍された上清を、4℃、2時間、100000gで30%グリセロール−PBSの緩衝剤で遠心する。上清を除去した後、沈澱したペレットは、濃縮されてはいるが未精製のビリオンのサンプルを構成する。得られたペレットを、RNAの抽出のために少量の適切なバッファーに取る。上記のcDNA合成反応を、濃縮された細胞外ビリオンから抽出されたRNAで行う。
【0157】
上記の技術に基づいたRT−PCR増幅は、クローンGM3を得ることを可能にし、その配列は、SEQ ID NO:56として、図23に示されている。
【0158】
図24には、クローンGMP3およびHSERV−9レトロウイルス間の配列相同性が、65%以上のあらゆる部分的相同性の連続的直線によって、マトリックスチャートに示されている。
【0159】
要約すると、図25は、既知のERV9ゲノムと比較した、上述の種々のクローンの局在化を示す。図25では、MSRV−1 env領域が、対照のERV9 env遺伝子よりも長いので、付加領域が、“V”による挿入箇所の上に示されている。挿入物が一つの配列および示されたクローン(JLBc1、JLBc2、FBd3)間のサイズの変化を示すと解する。図26は、MSRV−1pol*領域において研究された種々のクローンの位置を示す。
【0160】
上述されたクローンGM3によって、pol遺伝子の全体をカバーし、SEQ ID NO:57と称され、連続する図27a〜27cに示された、可能な読み枠を定義することができる。
【0161】
実施例11:ヒトの血清中の抗MSRV−1特異的抗体の検出 MSRV−1レトロウイルスのpol遺伝子の配列およびこの遺伝子の読み枠(オープンリーディングフレーム)の配列の同定により、SEQ ID NO:40と称する前記遺伝子の領域のアミノ酸配列SEQ ID NO:39を決定することができた(図28参照)。
pol遺伝子にコードされたMSRV−1逆転写酵素のタンパク質配列のフラグメントに対応する種々の合成ペプチドを、MS患者と健康な対照の血清に対する抗原特異性についてテストした。
【0162】
これらのペプチドは、Merrifield技術(Barany G と Meffifielsd R.B,1980, In the Peptides,2,1-284,Gross E と Meienhofer J,Eds.,Academin Press,ニューヨーク)に基づいた固相合成法によって化学的に合成した。実際的な詳細については以下に記載されている。
【0163】
a)ペプチド合成: これらのペプチドは、“Applied Biosystems 430A”自動合成装置を用いて、フェニルアセトアミドメチル(PAM)/ポリスチレン/ジビニルベンゼン樹脂(Applied Biosystems,Inc.Foster City,CA)に合成した。アミノ酸は、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)エステルの形態で連結される。用いられたアミノ酸は、Novabiochem(Lauflerlfingen,スイス)もしくはBachem(Bubendorf, スイス)から入手した。
【0164】
溶媒としてN−メチルピロリドン(NMP)を使用したダブルカップリングプロトコルを用いて化学合成を行った。適切な装置(タイプI切断装置、Peptide Institute,Osaka,Japan)でフッ化水素酸(HF)を用いて、ペプチドを、樹脂および側鎖保護基から同時に切断した。
【0165】
1gのペプチド樹脂に対して、10mlのHF、1mlのアニソール、および1mlのジメチルスルフィド5DMSを用いた。この混合物を−2℃で45分間攪拌した。エーテルでよく洗浄した後、このペプチドを10%酢酸で樹脂から溶出し、凍結乾燥させた。
このペプチドを、VYDAC C18型カラム(250x21mm)(The Separation Group,Hesperia,CA,USA)で分離用高性能液体クロマトグラフィーで精製した。22ml/分の流速でアセトニトリル勾配を用いて溶出した。回収されたフラクションを、1ml/分の流速で、VYDAC C18分析用カラム(250x4.6mm)でイソクラティック(isocratic)条件下で溶出することによって観察した。同じ保持時間のフラクションを貯めて、凍結乾燥させた。上記の系を備えた分析用高性能液体クロマトグラフィーで、優勢なフラクションを分析した。許容できる純度であると考えられるペプチドは、クロマトグラムの95%以上を示す単一のピークに現れる。
【0166】
次いで、精製されたペプチドを、Applied Biosystems 420H 自動アミノ酸分析装置を用いて、アミノ酸組成を調べる目的で分析した。ペプチドの(平均)化学分子量の測定を、DEV−VAX2000獲得システムと連結したVG.ZAB.ZSEQダブルフォーカシング装置(VG analytical Ltd,マンチェスター、イギリス)で、陽性イオンモードでLSIMS質量分析を用いて得た。
【0167】
種々のペプチドの反応性を、MS患者の血清と、健康な対照の血清に対して試験した。これによって、POL2Bと称されるペプチドを選択することができた。このペプチドは、図28のSEQ ID NO:39に示され、MSRV−1のpol遺伝子にコードされている(ヌクレオチド181〜330)。
b)抗原性特性 POL2Bペプチドの抗原性特性を、以下に記載したELISAプロトコルに従って証明した。
【0168】
凍結乾燥されたPOL2Bペプチドを、1mg/mlの濃度で滅菌された蒸留水に溶解した。このストック溶液を分注し、使用のために二週間+4℃に保ち、あるいは2ケ月以内で使用するために−20℃で冷凍した。1μg/mlの最終的なペプチド濃度を得るように、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)溶液中に分注物を希釈した。100μlのこの希釈物を、ミクロタイトレーションプレート(“high-binding”plastic,COSTAR ref:3590)の各ウェルに添加した。このプレートを、“プレート-シーラー”型接着剤で被覆し、プラスチックにペプチドが吸着する間、オーバーナイトで+4℃に維持した。この接着剤を除去し、このプレートを300μlの溶液A(1xPBS、0.05% Tween20)で3回洗浄し、吸収紙の上で逆さにした。しかして水を切ったプレートを、各ウェル当たり200μlの溶液B(溶液A+10%のヤギ血清)で満たし、接着剤で被覆して、37℃で45分から1時間インキュベートした。このプレートを上述したように溶液Aで3回洗浄した。
【0169】
試験血清サンプルを、事前に溶液Bで1/50に希釈し、100μlの各希釈試験血清を各ミクロタイトレーションプレートのウェルに添加した。ネガティブな対照を、100μlのバッファーBの形態として、各プレートの一つのウェルに配した。接着剤で被覆されたプレートを、37℃で1〜3時間インキュベートした。このプレートを、上述したように溶液Aで3回洗浄した。平行して、ヒトIgG(Sigma Immunochemicals ref.A6029)もしくはIgM(Cappel ref.55228)に向けられたペルオキシダーゼラベルされたヤギ抗体を、溶液Bに希釈した(抗IgGに対して1/5000の希釈、並びに抗IgMに対して1/1000の希釈)。100μlのラベルされた抗体の適切な希釈物を、ミクロタイトレーションプレートの各ウェルに添加し、接着剤で被覆されたプレートを37℃で1〜2時間インキュベートした。上述したように、プレートをさらに洗浄した。平行して、ペルオキシダーゼの基質を、“Sigma fast OPD kit”(Sigma Immunochemicals,ref.P9187)の指示に従って調製した。100μlの基質溶液を各ウェルに添加し、プレートを室温で20〜30分間遮光した。
【0170】
発色反応が安定したら、プレートをすぐにELISAプレート分光光度読み取り装置に配置して、各ウェルの光学密度(OD)を波長492nmで読みとった。あるいは、30μlの1NのHClを各ウェルに添加して反応を止め、24時間以内に分光光度計でプレートを読みとってもよい。
血清学上のサンプルを、二倍もしくは三倍となるように導入し、同じサンプルの同じ希釈に対して得られたOD値の平均を取ることによって、試験血清に対応する光学密度(OD)を算出した。
【0171】
各血清の正味のODは、血清の平均OD−ネガティブな対照(溶液B:PBS、0.05%のTween20、10%のヤギ血清)の平均ODに対応する。
c)ELISAによる抗MSRV−1 IgG抗体の検出: Poser(非特許文献23)の基準により、確かにもしくは恐らくMSに罹患していると診断された29人の患者、および32人の健康な対照(血液提供者)の血清中における抗MSRV−1特異的IgG抗体の存在を試験するために、POLB2ペプチドを用いて、上記の技術を使用した。図29は、抗IgG抗体を用いて試験された各血清に対する結果を示す。各縦棒は、試験した血清の正味の光学密度(492nmにおけるOD)を示す。縦軸は、縦棒の頂点において正味のODを与える。縦の点線の左側の最初の29本の縦棒は、試験したMSの29人のケースの血清を示し、かつ点線の右の32本の縦棒は、32人の健康な対照(血液提供者)の血清を示す。
【0172】
試験されたMSの血清に対する正味のOD値の平均は、0.62である。この図表は、5人の対照の正味のODが、コントロールのグループの値より高くなることを示している。これらの値は、症状のない血清学的患者の特異的IgGの存在を示すのかもしれない。二つの方法は、陽性試験の統計学上の限界値を決定するために評価された。
【0173】
正味のODの値が高い対照を含むコントロールの正味のOD値の平均は、0.
36である。正味のOD値が0.5以上の5人の対照を除くと、“ネガティブ”な対照の平均は0.33となる。ネガティブな対照の標準偏差は、0.10である。陽性の理論的な限界値は式に従って算出される。
【0174】
限界値(セロネガティブな対照の正味のODの平均)+(2または3xセロネガティブな対照の正味のOD値の標準偏差)。
【0175】
第一のケースでは、症状のないセロポジティブであると考えられる場合があり、限界値は、0.33+(2x0.10)=0.53に等しい。ネガティブな結果は、ペプチドのエピトープに対して特異的に向けられた抗体の存在の非特異的“バックグラウンド”を示す。
【0176】
第二のケースでは、一見してセロポジティブである血清を除外せずに、明らかに健康である血液提供者からなる対照群を対照の基礎としてとれば、“非MS対照”の標準偏差は0.116である。限界値は、0.36+(2x0.116)
=0.59となる。
【0177】
この分析に基づけば、この試験はMSに特異的である。これについては、表1に示されているように、対照がこの限界値を超える正味のODを持たないことから、この試験はMSに特異的であることがわかる。実際に、この結果は、MS患者の抗体価が、たいていの場合は、MSRV−1と接触したことのある健康な対照より高いという事実を反映している。
【0178】
【表1】

【0179】
計算の第一の方法に基づいて、図29に表1に対応させて示したように、29人のMS血清の26が、POL2Bペプチドに対して、しかしてpol遺伝子にコードされたMSRV−1レトロウイルスの逆転写酵素の一部に対して、そして、結果的にはMSRV−1レトロウイルスに対して特異的に向けられたIgGの存在を示す陽性結果を与える(0.50以上の正味のOD)。しかして、試験されたMS患者の約90%が、POL2Bペプチドに保有されたエピトープに対して反応し、これに対して向けられた循環IgGを備えている。
【0180】
明らかに健康である32人の血液提供者のうちの5人は、陽性結果を示す。しかして、症状のない人の約15%が、特異的な血清IgGの持続性においてそれ自身を発現する能動免疫へと導く条件下でPOL2Bペプチドに保有されるエピトープと接触していたかもしれないことは明らかである。このような状態は、MSRV−1レトロウイルスに感染(および/または再活性化)した際のMSRV−1レトロウイルス逆転写酵素に対する免疫化と一致する。これらのセロポジティブな対照におけるMSを想起するはっきりした神経病理学がないことは、彼らが健康なキャリアーであって、感染ウイルスを免疫化した後にそれらを除去してしまったか、慢性キャリアーの危険性のある集団を構成することを示唆しているのかもしれない。実際に、MSの普及率の高い領域の環境に存在する病原性の成分がこの疾患の原因であるかもしれないことを示す疫学的データは、MSではない集団のフラクションが病原性の成分等と必須に接触したことを意味する。MSRV−1レトロウイルスが、MSの源において、この“病原性の成分”の全部または一部を構成することが示されたので、MSRV−1レトロウイルスの構成要素に対するIgG型抗体を有することは、健康な集団の対照にとって普通のことである。しかして、MSと対照の集団との間のセロプレバレンス(seroprevalence)の差異は極めて重要であって、“カイ自乗”テストでp<0.001である。
【0181】
ゆえにこれらの結果は、MSにおけるMSRV−1の病因的(aetiopathogenic)役割を指し示す。
【0182】
d)ELISAによる抗MSRV−1IgM抗体の検出: Poser(非特許文献23)の基準により、確かにもしくは恐らくMSに罹患していると診断された36人の患者、および42人の健康な対照(血液提供者)の血清中における抗MSRV−1特異的IgM抗体の存在を試験するために、POLB2ペプチドを用いて、ELISA技術を使用した。図30は、抗IgM抗体を用いて試験された各血清に対する結果を示す。各縦棒は、試験した血清の正味の光学密度(492nmにおけるOD)を示す。縦軸は、縦棒の頂点において正味のODを与える。横座標を分ける垂直な線の左側の最初の36本の縦棒は、試験されたMSの36ケースの血清を示し、垂直な点線の右側の縦棒は42人の健康な対照(血液のドナー)の血清を示す。表の真ん中に引かれた水平な線は、陽性の結果(棒の頂点が上に位置する)と陰性の結果(棒の頂点が下方に位置する)の境界を定義する理論的な限界値を示す。
【0183】
試験されたMSの場合の正味のOD値の平均は、0.19である。
【0184】
対照の正味のOD値の平均は、0.09である。
【0185】
ネガティブな対照の標準偏差は0.05である。
【0186】
対照の平均および標準偏差間の小さな差異という観点では、理論的陽性の限界値は、以下の式に従って計算することができる。
限界値=(セロネガティブな対照の正味のODの平均)+(3xセロネガティブな対照の正味のOD値の標準偏差)。
【0187】
従って、限界値は、0.09+(3x0.05)=0.26、あるいは実際には0.25に等しい。
【0188】
ネガティブな結果は、ペプチドのエピトープに特異的な抗体の存在の非特異的な“バックグラウンド”を示す。
【0189】
この分析法によれば、そして、図30および対応する表2に示されているように、どの対照も限界値を超えた正味のODを持たないことから、IgM試験はMSに特異的である。36のMS血清のうちの7つが、陽性IgMの結果を示し、現在、臨床データの研究が、MSの最初の攻撃もしくは未処置の患者における急性攻撃の間にこれらの陽性の血清が得られることを示している。病原性の成分に向けられたIgMは、前記病原性の成分の最初の感染、もしくは潜伏期間後の再活性化の間に産生されることが知られている。
【0190】
MSと対照の集団との間のセロプレバレンスの差異は極めて重要であって、“カイ自乗”テストでp<0.001である。
【0191】
これらの結果は、MSにおけるMSRV−1の病因的役割を指し示す。
POL2Bペプチドに対するIgMおよびIgG抗体の検出は、MSRV−1感染および/またはMSRV−1のウイルスの再活性化のコースを評価可能にする。
【0192】
【表2】

【0193】
e)POL2Bペプチドの免疫優勢エピトープの調査: 非特異的バックグラウンドを低減し、かつ抗MSRV−1抗体の反応の検出を最適化するために、連続する一つのアミノ酸段階で進める、POL2Bによって決められた配列の全体をカバーする、オクタペプチドの合成を、以下に記載のプロトコルに従って行った。
【0194】
SEQ ID NO:39に示されたアミノ酸配列61−110をカバーする重複オクタペプチドの化学的合成を、Spotscanの商品名でCambridge Research Biochemicalsから市販されたBERGらの技術に基づいて(1989.J.Ann.Chem.Soc.,111,8024-8026)、活性化されたセルロース膜で行った。この技術は、多数のペプチドの合成とその分析を同時に行うことができる。
【0195】
合成は、α-アミノ基がFMOC基(Nova Biochem)で保護され、側鎖基がトリチル、t-ブチルエステルもしくはt-ブチルエーテル等の保護基で保護された、エステル化されたアミノ酸を用いて行われる。このエステル化されたアミノ酸は、300nMの濃度でN-メチルピロリドン(NMP)中に溶解され、0.9μlをブロモフェノールブルーの堆積のスポットに適用する。15分間インキュベーションした後に、アミノ酸をさらに適用し、さらに15分間インキュベーションする。もし二つのアミノ酸の結合が正確に行われれば、発色変化(青から黄緑への変化)が観察される。DMFで3回洗浄した後に、無水酢酸を用いてアセチル化段階を行う。次いで、合成段階におけるペプチドの末端アミノ基を、DMF中の20%ピリジンを用いて保護基をはずす。堆積のスポットをDMF中の1%ブロモフェノールブルー溶液で再度染色し、メタノールで3回洗浄し、乾燥させる。この一連の操作が、一つのアミノ酸を付加する一つのサイクルを構成し、このサイクルを合成終了まで繰り返す。全てのアミノ酸が付加されたら、最後のアミノ酸のNH2-末端基を、DMF中の20%ピペリジンを用いて保護をはずし、無水酢酸でアセチル化した。側鎖を保護する基を、ジクロロメタン/トリフルオロ酢酸/トリイソブチルシラン(5ml/5ml/250ml)混合物で除去する。次いで、ペプチドの免疫応答性をELISAで調べた。
【0196】
二つの異なる膜上に種々のオクタペプチドを二重に合成した後、これらをメタノールですすぎ、TBS(0.1M Tris pH7.2)で洗浄し、飽和バッファー中、室温、オーバーナイトでインキュベートした。TBS−T(0.1M Tris pH7.2 − 0.05% Tween20)で何度か洗浄した後に、一方の膜を、1/50希釈のMS患者由来の参照血清とインキュベートし、他方の膜を、1/50希釈の健康な対照の血清とインキュベートした。これらの膜を、室温で4時間インキュベートした。TBS−Tで洗浄した後、β-ガラクトシダーゼ標識化抗ヒトイムノグロブリン複合体(Cambridge Research Biochemicalsから市販されている)を1/200の希釈率で添加し、その混合物を室温で2時間インキュベートする。0.05%のTBS−TとPBSで膜を洗浄した後、種々のスポットにおける免疫応答性を、カリウム中の5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル β-D-ガラクトピラノシドを添加することによって視覚化する。
【0197】
スポットの発色強度を、添付図31〜33に示した0〜5の相対値で定性的に評価する。
このようにして、POL2Bペプチドの各末端における二つの免疫優勢領域を決定することができ、これらは図34のアミノ酸配列65−75(SEQ ID NO:41)と92−109(SEQ ID NO:42)にそれぞれ対応し、それぞれ、オクタペプチドPhe-Cys-Ile-Pro-Val-Arg-Pro-Asp(FCIPVRPD)とArg-Pro-Asp-Ser-Gln-Phe-Leu-Phe(RPDSQFLF)との間、並びにThr-Val-Leu-Pro-Gln-Gly-Phe-Arg(TVLPQGFR)とLeu-Phe-Gly-Gln-Ala-Leu-Ala-Gln(LFGQALAQ)との間にあり、対照血清でバックグラウンドを何ら生じないので、反応性は弱いがより特異的な領域は、オクタペプチドLeu-Phe-Ala-Phe-Glu-Asp-Pro-Leu(LFAFEDPL)(SEQ ID NO:43)とPhe-Ala-Phe-Glu-Asp-Pro-Leu-Asn(FAFEDPLN)(SEQ ID NO:44)に示される。
これらの領域は、通常の技術に従って、より特異的かつより免疫応答性である新規のペプチドを定義することを可能にする。
【0198】
本発明によってなされた発見および開発された方法の結果として、MSRV−1感染および/または再活性化の診断を行うこと、および患者の生物学的流体中のこれらの成分の検出を“陰性化(negativing)”する効能に基づいてMSにおける治療を評価することが可能である。さらに、MSの神経学的な兆候をまだ示していない個人の早期検出が、神経学的な疾患の開始に対応する病変期に先立つ事実に次ぐ臨床的コースに対応した、より効果的な治療を行うことができた。現在のところ、MSの診断は、神経学的な疾患の症状が始まる前には確立されて折らず、重要な中枢神経系の病変を示唆する臨床的写真が得られる前には何の治療も行われない。ヒトにおけるMSRV−1および/またはMSRV−2感染および/または再活性化の診断は、明らかに重大であり、本発明は、これを行う手段を提供する。
【0199】
しかして、MSRV−1感染および/または再活性化の診断を行うこととは別に、患者の生物学的流体中の上記成分の検出を“陰性化”する効能に基づいて、MSの治療を評価することができる。
【0200】
実施例12:MSRV−1レトロウイルスのGAG遺伝子の部位を含有するクローンLB19を得る Gonzalez-Quintial Rら(非特許文献19)およびPLAZAら(非特許文献25)によって公開された技術から誘導したPCR技術を用いた。上述したように精製されたビリオンの画分から抽出された全体のRNAから、EXPANDTM REVERSE TRANSCRIPTASE(BOEHRINGER MANNHEIM)を用いて、増幅されるゲノムの3’末端に特異的プライマー(SEQ ID NO:64)を用いてcDNAを合成した。
cDNA
【0201】
【化25】

【0202】
精製した後、製造元のプロトコルに従って、Boehringer Mannheim社から市販されている“Terminal transferases kit”を用いて、ポリ(G)テイルをcDNAの5’末端に付加した。
【0203】
以下の5’および3’プライマーを用いて、固定PCR(anchoring PCR)を行った。
【0204】
【化26】

【0205】
次いで、以下の5’および3’プライマーを用いて半重ね合わせ固定PCR(a semi-nested anchoring PCR)を行った。
【0206】
【化27】

【0207】
PCRに由来する生成物は、従来の方法(非特許文献17)に基づくアガロースゲルで精製した後に抽出し、10mlの蒸留水に再懸濁した。Taqポリメラーゼの特徴の一つは、二つのDNA鎖のそれぞれの3’末端にアデニンを添加することであるため、得られたDNAをTAクローニングキットTM(British Biotechnology)を用いてプラスミドに直接挿入した。2μlのDNA溶液を、5μlの滅菌蒸留水、1μlの10倍に濃縮されたリゲーションバッファー“10xリゲーションバッファー”、2μlの“pCRTM ベクター”(25ng/ml)および1μlの“T4 DNAリガーゼ”と混合した。この混合物を、12℃で一晩インキュベートした。以下の段階を、TAクローニングキット(商標)(British Biotechnology)の説明に従って行った。操作の終わりに、培養し、かついわゆる“ミニプレップ”操作(非特許文献17)に基づいて取り込まれたプラスミドの抽出を行うために、組換えられた(白色)バクテリアの白色のコロニーを選択した。各組換えコロニーからのプラスミド調製物を、適当な制限酵素で切断し、アガロースゲルで分析した。TAクローニングキット(商標)のクローニングプラスミドに存在するSp6プロモーターに相補的なプライマーとハイブリダイゼーションさせた後に、挿入物の配列決定用に、ゲルをエチジウムブロミドに浸して紫外線照射下で検出された挿入物を所有するプラスミドを選択した。次いで、配列決定の前の反応を、シークエンシングキット“プリズム・レディー・リアクション・キット・ダイ・デオキシターミネーター・サイクル・シークエンシング・キット”(Applied Biosystems、照合番号401384)の使用に推奨された方法によって行い、自動配列決定をApplied Biosystemsの“モデル373Aオートマティック・シークエンサー”装置で、製造者の説明に従って行った。
【0208】
上記技術に基づいたPCR増幅は、H.Perron(非特許文献13)によって記載された技術に基づいて、Perronら(非特許文献3)によって記載され、かつ、仏国特許出願MS10、11および12に記載されているように、逆転写酵素活性と関連したレトロウイルス性粒子を発現し、Epstein−Barrウイルス(EBV)株B95で不死化されたMS患者のBリンパ球の培養上清の、スクロース勾配で精製された感染性粒子のフラクションの核酸から合成されたcDNAに用いられた。SEQ ID NO:59に同定されたクローンLB19は図35に示されている。
【0209】
このクローンは、図36に示されているように、先に配列決定されたクローンGM3とクローンG+E+A(実施例15参照)を用いて、MSRV−1レトロウイルスのgag遺伝子の重要な部位を代表する690塩基対の領域を定義するすることを可能にする。SEQ ID NO:88と呼ばれるこの配列は、それらの末端で重複する種々のクローンから再構成される。この配列は、MSRV−1“gag*”領域の名称で同定される。図36では、アミノ酸への翻訳をする潜在的な読み枠が、核酸配列の下に示されている。
実施例13:MSRV−1レトロウイルスに関連するpol遺伝子領域と糖タンパク質の潜在的な読み枠(ORF)とを含む見かけ上不完全なENV領域を含むクローンFBd13を得るウイルスRNAの抽出:RNAを、以下に簡単に記載する方法に基づいて抽出した。
【0210】
MS患者のBリンパ球の培養上清(650ml)を、10000gで30分間遠心した。得られたウイルスペレットを、300μlのPBS/10mM MgCl2に再懸濁した。この材料を、37℃で30分間、DNアーゼ(100mg/ml)/RNアーゼ(50mg/ml)混合物で処理し、次いで46℃で30分間プロテイナーゼK(50mg/ml)で処理した。
【0211】
核酸を、60℃まで熱した1ボリュームのフェノール/0.1%SDS(V/V)で抽出し、1ボリュームのフェノール/クロロホルム(1:1、V/V)で再抽出した。
0.1Vの酢酸ナトリウムpH=5.2の存在下で、2.5Vのエタノールで材料を沈降させた。遠心後に得られたペレットを、50μlの無菌のDEPC水に再懸濁した。
再び、このサンプルを、50mg/mlの“RNアーゼを含まない”DNアーゼで、室温で30分間処理し、1ボリュームのフェノール/クロロホルムで抽出し、酢酸ナトリウムとエタノールの存在下で沈降させた。
【0212】
得られたRNAを、260nmでODを読みとることによって定量した。MSRV−1が存在すること、および、DNA混入物が存在しないことは、PCRおよびMSRV−1ゲノムに特異的なELOSAと関連するMSRV−1特異的RTPCRによって観察される。
【0213】
cDNAの合成: 5mgのRNAを、いくらかの変更を加えた“cDNA Synthesis Module”キット(ref RPN 1256,Amersham)の指示に基づいてポリ(DT)オリゴヌクレオチドで開始されたcDNAを合成するために用いる。逆転写を、推奨された42℃に代えて45℃で行った。
【0214】
合成産物を、製造元の指示に従って、二回の抽出と二回の精製で精製した。
MSRV−1の存在は、MSRV−1ゲノムに特異的なELOSAと関連したMSRV−1 PCRによって確認した。
【0215】
“長距離PCR(Long Distance PCR)”(LD−PCR)
500ngのcDNAをLD−PCR工程(Expand Long Template System; Boehringer(ref.1681 842))に用いた。
【0216】
いくつかの対のオリゴヌクレオチドを用いた。これらの中には、以下のプライマーに定義された対がある。
【0217】
【化28】

【0218】
増幅条件は以下の通りである。
94℃ 10秒間 56℃ 30秒間 68℃ 5分間 10サイクル、次いで各サイクルにおいて延長時間につき20秒間増加した20サイクルを行った。最初の増幅の最後では、2μlの増幅産物に、上記と同じ条件下で第二の増幅を行った。
【0219】
LD−PCR反応を、薄壁マイクロチューブ(Boehringer)中で、Perkin model 9600PCR装置で行った。
【0220】
増幅産物を、1%のアガロースゲルで増幅ボリュームの1/5(10μl)を電気泳動することによって観察した。上記のプライマーの対に対して、約1.7kbのバンドが得られた。
【0221】
増幅されたフラグメントのクローニング: PCR産物を、提供者の指示に従って、調製用アガロースゲルおよびCostarカラム(Spin; D.Dutcher)を通過させて精製した。
2μlの精製された溶液を、提供者の指示に従って50ngのベクターPCRIIと混ぜた(TAクローニングキット;British Biotechnology)。
得られた組換えベクターを、的確なDH5aF’バクテリアの形質転換によって単離した。バクテリアは、アンピシリンに対する耐性と、Xgalの代謝の欠損(=白色コロニー)を用いて選択された。組換えベクターの分子構造を、プラスミドミニプレパレーション(minipreparation)および酵素EcoR1を用いた加水分解によって確認した。
これらの基準の全てに対して陽性のクローンであるFBd13を選択した。組換えプラスミドのスケールの大きな調製を、提供者の指示に従ってMidiprep Quiagen Kit(ref 12243)を用いて行った。
【0222】
クローンFBd13の配列決定を、製造者の指示に従って、Perkin Prism Amplitaq FS 染料終結キット(ref.402119)の手段で行った。配列反応溶液を、Perkin 377型もしくは373A型自動配列決定装置に導入した。この配列決定方法は、クローンFbd13の両方の鎖に行われた遺伝子歩行からなる。
【0223】
クローンFBd13の配列は、SEQ ID NO:58に同定される。図37には、クローンFBd13およびHSERV−9レトロウイルス間の配列相同性が、70%以上のあらゆる部分的相同性の連続的直線によって、マトリックスチャートに示されている。クローンの隣接領域に相同性があることがわかるが(5’末端のpol遺伝子、および3’末端のenv遺伝子およびLTR)
、内部領域はまったく異なり、HSERV9のenv遺伝子との相同性を全く、弱いものでさえも示さない。さらに、クローンFBd13は、不完全な内在性のHSERV−9を記述するものより長い“env”領域を含むことは明白であり、しかして、内在する異なる領域が、HSERV−9不完全遺伝子と部分的相同性のある領域間の“挿入物”を構成すると理解できるかもしれない。
【0224】
この付加配列は、ORF B13と称され、そのアミノ酸配列SEQ ID NO:87に示される潜在的なorfを決定する。
【0225】
クローンFBd13の分子構造を、GeneWorkソフトウェアおよびGenebankおよびSwissProtデータバンクを用いて分析した。
【0226】
5つのグリコシル化部位を見出した。
【0227】
このタンパク質は、既知の配列と十分な相同性を持たない。
恐らく、このクローンは、MSRV−1の複製と関連した内在性レトロウイルス成分(ERV)の組換えに由来する。
【0228】
このような現象は、ポリペプチド、あるいは免疫系に必ずしも寛容されない内在性レトロウイルス性タンパク質でさえ、発現の発生を欠かない。MSRV−1に関連した、および/または、これに誘発された内在性成分の常軌を逸した発現のこのような機構は、常軌を逸した抗原を増大させやすく、MSに観察されるような自己免疫工程の誘発に寄与しがちである。明らかに、これまでに記述されたことのない新規な成分を構成する。実際には、“Entrez”ソフトウェア(NCBI,NIH,Bethesda,米国)のバージョンNo19(1996)に利用できる核酸配列のデータバンクの疑問は、このクローンのenv領域全体を含む既知の相同配列を同定することができなかった。
【0229】
実施例14:クローンPOL* MSRV−1に相同な逆転写酵素をコードする領域を備えたpol遺伝子の一部、およびクローンPOL*、tpol、FBd3、JLBc1およびJLBc2に記載の等価配列から分かれた3’pol領域を含むクローンFP6を得る 3’RACEを、MS患者の血漿から抽出した全体のRNAに行った。同じ条件で処理した健康な対照の血漿をネガティブな対照として用いた。cDNAの合成を、以下の修飾オリゴ(dT)プライマー:
【0230】
【化29】

【0231】
および、Boehringer“Expand RT”逆転写酵素を用いて、会社が推薦する条件に基づいて行った。
【0232】
酵素Klentaq(Clontech)を用いて、以下の条件でPCRを行った。94℃で5分間、93℃で1分間、58℃で1分間、68℃で3分間を40サイクル行い、68℃で8分間行って、最終的な反応ボリュームが50μlである。
【0233】
PCRに用いられたプライマーは、 − 5’プライマー、SEQ ID NO:69に同定されたもの
【0234】
【化30】

【0235】
− 3’プライマー、SEQ ID NO:68に同定されたもの(cDNAのと同じ)
第二の、いわゆる“半重ね合わせ(semi-nested)”PCRを、既に増幅された領域内に位置する5’プライマーを用いて行った。この第二のPCRは、第一のPCRに由来する10μlの増幅産物を用いて、最初のPCRで用いられた条件と同じ実験的条件下で行われた。
半重ね合わせPCRに用いられたプライマー: − 5’プライマー、SEQ ID NO:70に同定されたもの
【0236】
【化31】

【0237】
− 3’プライマー、SEQ ID NO:68に同定されたもの(cDNAのと同じ)。
プライマーSEQ ID NO:69およびSEQ ID NO:70は、pol*領域、それぞれ、位置番号No.403〜No.422およびNo.641〜No.670に特異的である。
【0238】
しかして、増幅産物を、MS患者の血漿から抽出した細胞外RNAから得た。
対応するフラグメントは、健康な対照の血漿に観察されなかった。この増幅産物を、以下の方法でクローン化した。
【0239】
増幅されたDNAをTAクローニングTMキットを用いてプラスミドに挿入した。2μlのDNA溶液を、5μlの滅菌蒸留水、1μlの10倍に濃縮されたリゲーションバッファー“10xリゲーションバッファー”、2μlの“pCRTM ベクター”(25ng/ml)および1μlの“TA DNAリガーゼ”と混合した。この混合物を、12℃で一晩インキュベートした。以下の段階を、TAクローニングキット(商標)(British Biotechnology)の説明に従って行った。操作の終わりに、培養し、かついわゆる“ミニプレップ”操作(非特許文献17)に基づいて取り込まれたプラスミドの抽出を行うために、組換えられた(白色)バクテリアの白色のカラムを選択した。各組換えコロニーからのプラスミド調製物を、適当な制限酵素で切断し、アガロースゲルで分析した。TAクローニングキット(商標)のクローニングプラスミドに存在するSp6プロモーターに相補的なプライマーとハイブリダイゼーションさせた後に、挿入物の配列決定用に、ゲルをエチジウムブロミドに浸して紫外線照射下で検出された挿入物を所有するプラスミドを選択した。次いで、配列決定の前の反応を、シークエンシングキット“プリズム・レディー・リアクション・キット・ダイ・デオキシターミネーター・サイクル・シークエンシング・キット”(Applied Biosystems、照合番号401384)の使用に推奨された方法によって行い、自動配列決定をApplied Biosystemsの“モデル373Aオートマティック・シークエンサー”装置で、製造者の説明に従って行った。
【0240】
FP6と称される得られたクローンは、MSRV−1レトロウイルスのpol*領域に89%相同な467bpの領域、および、ERV−9のpol領域に64%相同な1167bp(No.1634〜2856)の領域を定義可能にした。
クローンFP6は、SEQ ID NO:61に同定されたヌクレオチド配列によって、図38に示されている。このクローンの3つの潜在的な読み枠は、ヌクレオチド配列の下のアミノ酸配列によって示されている。
【0241】
実施例15:MS患者の血漿から抽出されたRNAから、クローン“GM3”に定義される5’領域とクローンPOL*に定義される3’領域との間に含まれる核酸配列のPCR増幅によって、レトロウイルスのプロテアーゼのORFを含むG+E+Aと称される領域を得る。
MS患者の血漿に存在するビリオンに由来するレトロウイルスのRNAを増幅するために、出願人によって既に同定されたMSRV−1配列に特異的なオリゴヌクレオチドが調べられた。混入物の存在を観察するために対照反応(水との反応)を行った。増幅は、RT−PCRと、それに次ぐ“重ね合わせ”PCRの工程からなる。上記のクローンGM3とpol*の配列に定義される領域に重複する3つの領域(G、EおよびAと称される)を増幅するためにプライマーの対を定義した。
【0242】
領域Gを増幅するための半重ね合わせRT−PCR:− 最初のRT−PCRサイクルでは、以下のプライマーを用いた。
プライマー1:SEQ ID NO:71(センス)
プライマー2:SEQ ID NO:72(アンチセンス)
− 第二のPCRサイクルでは、以下のプライマーを用いた。
プライマー1:SEQ ID NO:73(センス)
プライマー4:SEQ ID NO:74(アンチセンス)
領域Eを増幅するための重ね合わせRT−PCR:− 最初のRT−PCRサイクルでは、以下のプライマーを用いた。
プライマー5:SEQ ID NO:75(センス)
プライマー6:SEQ ID NO:76(アンチセンス)
− 第二のPCRサイクルでは、以下のプライマーを用いた。
プライマー7:SEQ ID NO:77(センス)
プライマー8:SEQ ID NO:78(アンチセンス)
領域Aを増幅するための半重ね合わせRT−PCR:− 最初のRT−PCRサイクルでは、以下のプライマーを用いた。
プライマー9:SEQ ID NO:79(センス)
プライマー10:SEQ ID NO:80(アンチセンス)
− 第二のPCRサイクルでは、以下のプライマーを用いた。
プライマー9:SEQ ID NO:81(センス)
プライマー11:SEQ ID NO:82(アンチセンス)
プライマーと領域G、EおよびAは以下の通りに位置する。
【0243】
【化32】

【0244】
種々のクローンG、EおよびAに定義された領域の配列は、“重ね合わせ”増幅産物のクローニングおよび配列決定の後に決定された。
【0245】
クローンG、EおよびAは、フラグメントGの5’末端でプライマー1と、また、フラグメントAの3’末端でプライマー11と、PCRによって組み合わされ、そのプライマー類は上述されている。約1580bpフラグメントG+E+Aを増幅して、TAクローニング(商標)キットを用いてプラスミド中に挿入した。G+E+Aに対応する増幅産物の配列を決定し、G+EおよびE+Aの重複の分析を行った。この配列は図39に示されており、配列SEQ ID NO:89に対応している。
【0246】
MSRV−1レトロウイルスのプロテアーゼをコードする読み枠は、領域Eに見出された。プロテアーゼのアミノ酸配列は、SEQ ID NO:90に示され、図40に示されている。
【0247】
実施例16:ビリオンを生成しMSRV−1レトロウイルスを発現するMSリンパ芽球系のDNAにおいて、MSRV−1に近い内在性レトロウイルス成分(ERV)に関連するクローンLTRGAG12を得る。
【0248】
MSRV−1レトロウイルスを発現し、MS患者の末梢血液リンパ球に由来するリンパ芽球系(上述され、当業者によく知られているように、EBVウイルス株B95で不死化されたBリンパ球)から抽出されたDNAに、重ね合わせPCRを行った。
【0249】
最初のPCR工程では、以下のプライマーを用いた。
【0250】
【化33】

【0251】
この工程は、94℃で1分間、54℃で1分間、かつ72℃で4分間の条件で35増幅サイクルを含む。
【0252】
第二のPCR工程では、以下のプライマーを用いた。
【0253】
【化34】

【0254】
この工程は、94℃で1分間、54℃で1分間、かつ72℃で4分間の条件で35増幅サイクルを含む。
【0255】
PCRに由来する生成物は、従来の方法(非特許文献17)に基づくアガロースゲルで精製した後に抽出し、10mlの蒸留水に再懸濁した。Taqポリメラーゼの特徴の一つは、二つのDNA鎖のそれぞれの3’末端にアデニンを添加することであるため、得られたDNAをTAクローニングキットTM(British Biotechnology)を用いてプラスミドに直接挿入した。2μlのDNA溶液を、5μlの滅菌蒸留水、1μlの10倍に濃縮されたリゲーションバッファー“10xリゲーションバッファー”、2μlの“pCRTM ベクター”(25ng/ml)および1μlの“TA DNAリガーゼ”と混合した。この混合物を、12℃で一晩インキュベートした。以下の段階を、TAクローニングキット(商標)(British Biotechnology)の説明に従って行った。操作の終わりに、培養し、かついわゆる“ミニプレップ”操作(非特許文献17)に基づいて取り込まれたプラスミドの抽出を行うために、組換えられた(白色)バクテリアの白色のコロニーを選択した。各組換えコロニーからのプラスミド調製物を、適当な制限酵素で切断し、アガロースゲルで分析した。TAクローニングキット(商標)のクローニングプラスミドに存在するSp6プロモーターに相補的なプライマーとハイブリダイゼーションさせた後に、挿入物の配列決定用に、ゲルをエチジウムブロミドに浸して紫外線照射下で検出された挿入物を所有するプラスミドを選択した。次いで、配列決定の前の反応を、シークエンシングキット“プリズム・レディー・リアクション・キット・ダイ・デオキシターミネーター・サイクル・シークエンシング・キット”(Applied Biosystems、照合番号401384)の使用に推奨された方法によって行い、自動配列決定をApplied Biosystemsの“モデル373Aオートマティック・シークエンサー”装置で、製造者の説明に従って行った。
【0256】
しかして、LTRGAG12と称されるクローンが得られ、SEQ ID NO:60に同定された内在配列によって示される。
このクローンは、おそらく、ヒトのDNA、特にMS患者のDNAに存在する、ERV−9に近い内在成分を代表するものであり、MSRV−1レトロウイルスの発現と抵触することができる。故に、MSRV−1レトロウイルスと関連する病原に役割を持つことができ、問題の病理学における特異的な発現のマーカーとして扱うことができる。
実施例17:ヒト血清における抗MSRV−1特異的抗体の検出 MSRV−1レトロウイルスのpol遺伝子の配列およびこの遺伝子の読み枠(オープンリーディングフレーム)の配列の同定により、SEQ ID NO:62と称する前記遺伝子の領域のアミノ酸配列SEQ ID NO:63を決定することができた。
pol遺伝子にコードされたMSRV−1逆転写酵素のタンパク質配列のフラグメントに対応する種々の合成ペプチドを、MS患者と健康な対照の血清に対する抗原特異性についてテストした。
【0257】
これらのペプチドは、Merrifield技術(非特許文献22)に基づいた固相合成法によって化学的に合成した。実際的な詳細については以下に記載されている。
【0258】
a)ペプチド合成: これらのペプチドは、“Applied Biosystems 430A”自動合成装置を用いて、フェニルアセトアミドメチル(PAM)/ポリスチレン/ジビニルベンゼン樹脂(Applied Biosystems,Inc.Foster City,CA)に合成した。アミノ酸は、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)エステルの形態で連結される。用いられたアミノ酸は、Novabiochem(Lauflerlfingen,スイス)もしくはBachem(Bubendorf, スイス)から入手した。
【0259】
溶媒としてN−メチルピロリドン(NMP)を使用したダブルカップリングプロトコルを用いて化学合成を行った。適切な装置(タイプI切断装置、Peptide Institute,Osaka,Japan)でフッ化水素酸(HF)を用いて、ペプチドを、樹脂および側鎖保護基から同時に切断した。
【0260】
1gのペプチド樹脂に対して、10mlのHF、1mlのアニソール、および1mlのジメチルスルフィド5DMSを用いた。この混合物を−2℃で45分間攪拌した。エーテルでよく洗浄した後、このペプチドを10%酢酸で樹脂から溶出し、凍結乾燥させた。
このペプチドを、VYDAC C18型カラム(250x21mm)(The Separation Group,Hesperia,CA,USA)で分離用高性能液体クロマトグラフィーで精製した。22ml/分の流速でアセトニトリル勾配を用いて溶出した。回収されたフラクションを、1ml/分の流速で、VYDAC C18分析用カラム(250x4.6mm)でイソクラティック(isocratic)条件下で溶出することによって観察した。同じ保持時間のフラクションを貯めて、凍結乾燥させた。上記の系を備えた分析用高性能液体クロマトグラフィーで、優勢なフラクションを分析した。許容できる純度であると考えられるペプチドは、クロマトグラムの95%以上を示す単一のピークに現れる。
【0261】
次いで、精製されたペプチドを、Applied Biosystems 420H 自動アミノ酸分析装置を用いて、アミノ酸組成を調べる目的で分析した。ペプチドの(平均)化学分子量の測定を、DEV−VAX2000獲得システムと連結したVG.ZAB.ZSEQダブルフォーカシング装置(VG analytical Ltd,マンチェスター、イギリス)で、陽性イオンモードでLSIMS質量分析を用いて得た。
【0262】
種々のペプチドの反応性を、MS患者の血清と、健康な対照の血清に対して試験した。これによって、S24Qと称されるペプチドを選択することができた。
【0263】
この配列は、SEQ ID NO:63に示され、MSRV−1のpol遺伝子のヌクレオチド配列にコードされている(SEQ ID NO:62)。
【0264】
b)抗原性特性 S24Qペプチドの抗原性特性を、以下に記載したELISAプロトコルに従って証明した。
【0265】
凍結乾燥されたS24Qペプチドを、1mg/mlの濃度の10%酢酸に溶解した。このストック溶液を分注し、使用のために二週間+4℃に保ち、あるいは2ヶ月以内で使用するために−20℃で冷凍した。5μg/mlの最終的なペプチド濃度を得るように、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)溶液中に分注物を希釈した。100μlのこの希釈物を、Nunc Maxisorb(商標)ミクロタイトレーションプレートの各ウェルに添加した。このプレートを、“プレート-シーラー”型接着剤で被覆し、プラスチックにペプチドが吸着する間、2時間、+37℃に維持した。この接着剤を除去し、このプレートを300μlの溶液A(1xPBS、0.05% Tween20)で3回洗浄し、吸収紙の上で逆さにした。しかして水を切ったプレートを、各ウェル当たり250μlの溶液B(溶液A+10%のヤギ血清)で満たし、接着剤で被覆して、37℃で1時間インキュベートした。このプレートを上述したように溶液Aで3回洗浄した。
【0266】
試験血清サンプルを、事前に溶液Bで1/100に希釈し、100μlの各希釈試験血清を各ミクロタイトレーションプレートのウェルに添加した。ネガティブな対照を、100μlのバッファーBの形態として、各プレートの一つのウェルに配した。接着剤で被覆されたプレートを、37℃で1時間30分インキュベートした。このプレートを、上述したように溶液Aで3回洗浄した。IgG反応に関して、ヒトIgG(Jackson Immuno Research Inc.から市販されている)に向けられたペルオキシダーゼ標識されたヤギ抗体を、溶液Bに希釈した(1/10000の希釈)。100μlのラベルされた抗体の適切な希釈物を、ミクロタイトレーションプレートの各ウェルに添加し、接着剤で被覆されたプレートを37℃で1時間インキュベートした。上述したように、プレートをさらに洗浄した。平行して、ペルオキシダーゼの基質を、bioMerieux kitの指示に従って調製した。100μlの基質溶液を各ウェルに添加し、プレートを室温で20〜30分間遮光した。
【0267】
発色反応が安定したら、反応を停止するために、50μlのColor 2(bioMerieux 商品名)を各ウェルに添加した。プレートをすぐにELISAプレート分光光度読み取り装置に配置して、各ウェルの光学密度(OD)を波長492nmで読みとった。
【0268】
血清学上のサンプルを、二倍もしくは三倍となるように導入し、同じサンプルの同じ希釈に対して得られたOD値の平均を取ることによって、試験血清に対応する光学密度(OD)を算出した。
【0269】
各血清の正味のODは、血清の平均OD−ネガティブな対照(溶液B:PBS、0.05%のTween20、10%のヤギ血清)の平均ODに対応する。
【0270】
c)ELISAによる抗MSRV−1 IgG抗体(S24Q)の検出: Poser(23)の基準により、確かにMSに罹患していると診断された15人の患者、および15人の健康な対照(血液提供者)の血清中における抗MSRV−1特異的IgG抗体の存在を試験するために、S24Qペプチドを用いて、上記の技術を使用した。
【0271】
図41は、抗IgG抗体を用いて試験された各血清に対する結果を示す。各縦棒は、試験した血清の正味の光学密度(492nmにおけるOD)を示す。縦軸は、縦棒の頂点において正味のODを与える。縦の点線の左側の最初の15本の縦棒は、15人の健康な対照(血液提供者)の血清を示し、かつ点線の右の15本の縦棒は、試験したMSの15人のケースの血清を示す。この図表は、2人の対照の正味のODが、コントロールのグループの値より高くなることを示している。これらの値は、症状のない血清学的患者の特異的IgGの存在を示すのかもしれない。二つの方法は、陽性試験の統計学上の限界値を決定するために評価された。
【0272】
正味のODの値が高い対照を含むコントロールの正味のOD値の平均は、0.
129であり、標準偏差が0.06である。正味のOD値が0.2より上の2人の対照を除くと、“ネガティブ”な対照の平均は0.107となり、標準偏差は、0.03である。陽性の理論的な限界値は式に従って算出される。
限界値(ネガティブな対照の正味のODの平均)+(2または3xネガティブな対照の正味のOD値の標準偏差)。
【0273】
第一のケースでは、症状のないセロポジティブであると考えられる場合があり、限界値は、0.11+(3x0.03)=0.20に等しい。ネガティブな結果は、ペプチドのエピトープに対して特異的に向けられた抗体の存在の非特異的“バックグラウンド”を示す。
【0274】
第二のケースでは、一見してセロポジティブである血清を除外せずに、明らかに健康である血液提供者からなる対照群を対照の基礎としてとれば、“非MS対照”の標準偏差は0.116である。限界値は、0.13+(3x0.06)=0.31となる。
【0275】
この分析に基づけば、この試験はMSに特異的である。これについては、表1に示されているように、対照がこの限界値を超える正味のODを持たないことから、この試験はMSに特異的であることがわかる。実際に、この結果は、MS患者の抗体価が、たいていの場合は、MSRV−1と接触したことのある健康な対照より高いという事実を反映している。
【0276】
計算の第一の方法に基づいて、図41および表3に示したように、15人のMS血清の6が、S24Qペプチドに対して、しかしてpol遺伝子にコードされたMSRV−1レトロウイルスの逆転写酵素の一部に対して、そして、結果的にはMSRV−1レトロウイルスに対して特異的に向けられたIgGの存在を示す陽性結果を与える(0.2以上のOD)。
【0277】
しかして、試験されたMS患者の約40%が、S24Qペプチドに保有されたエピトープに対して反応し、これに対して向けられた循環IgGを備えている。
明らかに健康である15人の血液提供者のうちの2人は、陽性結果を示す。しかして、症状を示さない集団の約13%が、特異的な血清IgGの持続性においてそれ自身を発現する能動免疫へと導く条件下でS24Qペプチドに保有されるエピトープと接触していたかもしれないことは明らかである。このような状態は、MSRV−1レトロウイルスに感染(および/または再活性化)した際のMSRV−1レトロウイルス逆転写酵素に対する免疫化と一致する。これらのセロポジティブな対照におけるMSを想起するはっきりした神経病理学がないことは、彼らが健康なキャリアーであって、感染ウイルスを免疫化した後にそれらを除去してしまったか、慢性キャリアーの危険性のある集団を構成することを示唆しているのかもしれない。実際に、MSの普及率の高い領域の環境に存在する病原性の成分がこの疾患の原因であるかもしれないことを示す疫学的データは、MSではない集団のフラクションが病原性の成分等と必須に接触したことを意味する。
【0278】
MSRV−1レトロウイルスが、MSの源において、この“病原性の成分”の全部または一部を構成することが示されたので、MSRV−1レトロウイルスの構成要素に対するIgG型抗体を有することは、健康な集団の対照にとって普通のことである。
【0279】
最後に、ここで試験した二つのMSケースのうちの一方のみに抗S24Q抗体が検出されたことは、このペプチドが免疫優勢MSRV−1エピトープを示さないこと、内在性個別株変異(inter-individual strain variations)が、同じ領域における分かれたペプチドモチーフに対する免疫化を誘導するかもしれないこと、あるいは、疾患のコースおよび処置がS24Qペプチドに対して反応する抗体を経時的に調節できるかもしれないことを反映するかもしれない。
【0280】
【表3】

【0281】
d)ELISAによる抗MSRV−1IgM抗体の検出: 上述したものと同じ血清中の抗MSRV−1特異的IgM抗体の存在を試験するために、S24Qペプチドを用いて、ELISA技術を使用した。
【0282】
図42は、抗IgM抗体を用いて試験された各血清に対する結果を示す。各縦棒は、試験した血清の正味の光学密度(492nmにおけるOD)を示す。縦軸は、縦棒の頂点において正味のODを与える。横座標を分ける垂直な線の左側の最初の15本の縦棒は、15人の健康な対照(血液のドナー)の血清を示し、垂直な点線の右側の縦棒は試験されたMSの15のケースの血清を示す。
【0283】
試験されたMSの場合のOD値の平均は、1.6である。
対照の正味のOD値の平均は、0.7である。
ネガティブな対照の標準偏差は0.6である。
理論的陽性の限界値は、以下の式に従って計算することができる。
限界値=(ネガティブな対照の正味のODの平均)+(3xネガティブな対照の正味のOD値の標準偏差)。
【0284】
従って、限界値は、0.7+(3x0.6)=2.5に等しい。
ネガティブな結果は、ペプチドのエピトープに特異的な抗体の存在の非特異的な“バックグラウンド”を示す。
【0285】
この分析法によれば、そして、図42および対応する表4に示されているように、どの対照も限界値を超えた正味のODを持たないことから、IgM試験はMSに特異的である。15のMS血清のうちの6つが、陽性IgMの結果を示した。
MSと対照の集団との間のセロプレバレンスの差異は極めて重要であって、“カイ自乗”テストでp<0.002である。
【0286】
これらの結果は、MSにおけるMSRV−1の病因的役割を指し示す。
S24Qペプチドに対するIgMおよびIgG抗体の検出は、単独であるいは他のMSRV−1ペプチドと組み合わせて、MSRV−1感染および/またはMSRV−1のウイルスの再活性化のコースを評価可能にする。
【0287】
【表4】

【0288】
本願発明者らによってなされた新しい発見および開発された新規の方法の結果として、MSRV−1感染および/または再活性化を調べる診断テストを実施することができ、患者の生物学的流体中の成分の検出を“陰性化する(negativing)”ことにおける効能に基づいてMSおよび/またはRAの治療を評価することができる。さらに、MSの神経学的な症状もしくはRAのリウマチ学的症状を未だ示していない患者における早期発見は、臨床的な疾患の開始に対応する病変期の前の事実に対する次の臨床的コースに関してより効果的な治療を始めることを可能にすることができた。現在のところ、MSまたはRAの診断は、病変の症状が始まる前には確立されて折らず、既に深刻化した病変を示唆する臨床的写真が得られる前には何の治療も行われない。ヒトにおけるMSRV−1および/またはMSRV−2感染および/または再活性化の診断は、明らかに重要であり、本発明は、これを行う手段を提供する。
【0289】
しかして、MSRV−1感染および/または再活性化の診断を行うこととは別に、患者の生物学的流体中の上記成分の検出を“陰性化”する効能に基づいて、MSの治療を評価することができる。
[配列表]





































【特許請求の範囲】
【請求項1】
SEQ ID NO:1を除いて、以下の配列、すなわち:
(a)5’−3’の方向で、SEQ ID NO:1のヌクレオチド181で始まってヌクレオチド330で終わる配列、SEQ ID NO:40、SEQ ID NO:58、SEQ ID NO:62およびSEQ ID NO:89;
(b)配列(a)と相補的な配列;
(c)SEQ ID NO:39、SEQ ID NO:63、SEQ ID NO:87およびSEQ ID NO:90から成る群から選択されるペプチド配列の全部または一部をコードする配列、
より成る群から選択されるコードヌクレオチド配列を含むかまたはそれから成る、多発性硬化症または慢性関節リウマチと関連するウイルスのヌクレオチドフラグメントによってコードされた抗原性ポリペプチド。
【請求項2】
前記ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:41、SEQ ID NO:42、SEQ ID NO:43およびSEQ ID NO:44から成る群から選択されるペプチド配列をコードすることを特徴とする、請求項1に記載の抗原性ポリペプチド。
【請求項3】
SEQ ID NO:39、SEQ ID NO:63、SEQ ID NO:87、SEQ ID NO:90、SEQ ID NO:41、SEQ ID NO:42、SEQ ID NO:43およびSEQ ID NO:44から成る群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の抗原性ポリペプチド。
【請求項4】
SEQ ID NO:39およびSEQ ID NO:63から成る群から選択される、請求項3に記載の抗原性ポリペプチド。

【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38a】
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【図38b】
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【図38c】
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【図39a】
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【図39b】
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【図39c】
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【図39d】
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【図40】
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【図41】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27a】
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【図27b】
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【図27c】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図42】
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【公開番号】特開2010−47604(P2010−47604A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265658(P2009−265658)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【分割の表示】特願平9−508179の分割
【原出願日】平成8年8月2日(1996.8.2)
【出願人】(596020794)
【Fターム(参考)】