診断および治療のための腫瘍関連マーカーの同定
本発明は、その発現が癌疾患に関連する遺伝子産物に関する。本発明はまた、前記遺伝子産物が発現されるまたは異常発現される疾患、特に癌疾患の治療および診断に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌において発現される核酸およびコードされるポリペプチドに関する。本発明はまた、上記ポリペプチドに結合する作用物質に関する。上記核酸、そのような核酸によってコードされるポリペプチドおよびそれに由来するペプチド、ならびに関連する抗体および細胞溶解性Tリンパ球は、中でも特に、診断および治療状況において有用である。
【背景技術】
【0002】
学際的なアプローチおよび古典的治療法の網羅的な使用にもかかわらず、癌は現在もなお死亡の主要原因の1つである。
【0003】
癌治療におけるごく最近の治療概念は、組換え腫瘍ワクチンおよび抗体療法のような他の特定の手段を使用することによって患者の免疫系を全体的な治療の概念に組み込むことを目指している。そのような方策の成功のための必要条件は、腫瘍特異的または腫瘍関連抗原またはエピトープが、そのエフェクター機能を介入措置によって増強しようとする患者の免疫系によって認識されることである。
【0004】
腫瘍細胞は、生物学的に、それらの起源である非悪性細胞とは実質上異なる。これらの相違は、腫瘍発現の間に獲得される遺伝的変化に起因し、中でも特に、癌細胞における質的または量的に変化した分子構造体の形成も生じさせる。腫瘍を保持する宿主の特異的免疫系によって認識されるこの種の腫瘍関連構造体は、腫瘍関連抗原と称される。
【0005】
腫瘍関連抗原の特異的認識は、2つの機能的に相互連結された単位である細胞性機構および体液性機構を含む:CD4+およびCD8+Tリンパ球は、それぞれMHC(主要組織適合遺伝子複合体)クラスIおよびIIの分子上に提示されるプロセシングされた抗原を認識し、一方Bリンパ球は、プロセシングされていない抗原に直接結合する循環抗体分子を産生する。腫瘍関連抗原の潜在的な臨床−治療上の重要性は、免疫系による腫瘍細胞上の抗原の認識が細胞傷害性エフェクター機構の開始を導き、ヘルパーT細胞の存在下で、癌細胞の除去をもたらすことができるという事実から生じる(Pardoll,Nat.Med.4:525−31,1998)。
【0006】
抗体に基づく癌治療は、臨床の場に導入されて成功を収め、この10年間に腫瘍学における最も有望な治療法として浮上してきた。8つの抗体が腫瘍性疾患の治療に関して承認されているが、それらの大部分はリンパ腫および白血病における治療である(Adams GP,Weiner LM,Nat Biotechnol 23:1147−57,2005)。
【0007】
次世代の改良された抗体ベースの癌治療の出現のために克服すべき課題の1つは、良好な毒性/効果プロフィールのための鍵となる、適切な標的分子の選択である。
【0008】
健常組織の大部分では固く沈黙している遺伝子についての検索は、配偶子形成および/または栄養膜系譜の遺伝子がしばしば異所性に活性化され、ヒト癌において堅固に発現されるという興味深い所見に関心の焦点を移している。生殖細胞、妊娠性栄養膜細胞および癌細胞の間の表現型類似性に基づき、John Beardは、100年も前に「癌の栄養膜理論(trophoblastic theory of cancer)」(Beard J,Lancet 1:1758−63,1902;Gurchot C,Oncology 31:310−3,1975)を提唱した。癌細胞による絨毛性性腺刺激ホルモン、α−フェトプロテイン、CEAおよび他の栄養膜ホルモンの散発性産生の発見は、新生細胞と栄養膜細胞との間で共有される最初の分子を提供した(Acevedo HF et al.,Cancer 76:1467−75,1995;Dirnhofer S et al.,Hum Pathol 29:377−82,1998;Gurchot C,Oncology 31:310−3,1975;Iles RK,Chard T,J Urol 145:453−8,1991;Laurence DJ,Neville AM,Br J Cancer 26:335−55,1972)。この概念は、各々が様々な腫瘍型を発現する100以上の成員を示す、着実に増殖する、いわゆる癌/生殖系(CG)クラスの遺伝子の確立によって再び注目された。栄養膜および配偶子形成プログラム全体が転写サイレンシングを免れ、癌細胞において異所性に活性化されるという所見は(Koslowski M et al.,Cancer Res 64:5988−93,2004;Simpson AJ et al.,Nat Rev Cancer 5:615−25,2005)、極めて選択的な組織分布を有するこのクラスの遺伝子の中で、mAB療法のための適切な標的を見出し得ることを示唆する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
癌の診断および治療のための標的構造体を提供することが本発明の目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、各請求項の主題によって達成される。
【0011】
本発明によれば、腫瘍細胞において選択的にまたは異常に発現され、従って治療的および診断的アプローチのための標的構造体を提供する、胎盤特異的遺伝子が同定される。
【0012】
腫瘍細胞において選択的にまたは異常に発現されると本発明によって同定される核酸は、(a)配列表の配列番号:1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620、624、634、638、642、646、649、653、656、660、664、668、671、675、679、682および686からなる群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、(c)(a)または(b)の核酸に対して縮重している核酸、ならびに(d)(a)、(b)または(c)の核酸に相補的な核酸からなる群より選択される。これらの核酸はまた、本明細書では「腫瘍関連核酸」とも称される。
【0013】
もう1つの態様では、本発明は、本発明によって同定される腫瘍関連核酸によってコードされる抗原に関する。従って、本発明によって同定される腫瘍関連抗原は、(a)配列表の配列番号:1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620、624、634、638、642、646、649、653、656、660、664、668、671、675、679、682および686からなる群より選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、(c)(a)または(b)の核酸に対して縮重している核酸、ならびに(d)(a)、(b)または(c)の核酸に相補的な核酸からなる群より選択される核酸によってコードされるアミノ酸配列を有する。好ましい実施形態では、本発明によって同定される腫瘍関連抗原は、配列表の配列番号:542、546、550、554、567、571、584、588、592、596、603、607、614、621、625、635、639、643、650、657、661、665、672、676および683からなる群より選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含む。
【0014】
本発明により、特定の核酸配列を含む核酸または特定のアミノ酸配列を含む腫瘍関連抗原に言及する場合、これはまた、核酸または腫瘍関連抗原が、それぞれ、これら特定の核酸配列またはアミノ酸配列からなる実施形態も包含する。
【0015】
本発明は、一般に、本発明によって同定される腫瘍関連核酸または腫瘍関連抗原を標的することによる治療および/または診断を包含する。これは、そのような腫瘍関連核酸および/または腫瘍関連抗原を発現する細胞の選択的検出および/または細胞の根絶を提供し、それにより、そのような腫瘍関連核酸および/または腫瘍関連抗原を発現しない正常細胞への有害作用を最小限に抑える。従って、治療または診断のための好ましい疾患は、腫瘍疾患などの、本発明によって同定される腫瘍関連核酸および/または腫瘍関連抗原の1またはそれ以上が発現されるもの、特に本明細書で述べるような癌疾患である。
【0016】
本発明は、一般に、腫瘍疾患などの腫瘍性疾患、特に本明細書で述べるような癌疾患の治療、予防、診断および/または観測のための、本発明によって同定される腫瘍関連核酸および腫瘍関連抗原またはその一部もしくは誘導体、前記腫瘍関連核酸に対する核酸、本発明によって同定される腫瘍関連抗原に対する抗体もしくはT細胞またはその一部もしくは誘導体、および/または本発明によって同定される腫瘍関連抗原を発現する宿主細胞の使用を含む。
【0017】
これはまた、これらの核酸、抗原、抗体、T細胞および/または宿主細胞のうち、2つまたはそれ以上の組合せの使用を含み得る。
【0018】
本発明によって同定される腫瘍関連抗原に対する抗体またはその一部もしくは誘導体の使用に関する本発明の実施形態では、本発明によって同定される腫瘍関連抗原に対するT細胞受容体またはその一部もしくは誘導体も、場合によりMHC分子との複合体として、使用し得る。
【0019】
腫瘍関連抗原の非膜貫通部分、特に細胞外部分に対応するまたはそれからなる、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の一部は、治療、予防、診断および/または観測のために特に適切である。このため、本発明によれば、腫瘍関連抗原の非膜貫通部分、特に細胞外部分に対応するまたはそれからなる、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の一部、または本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸の対応する部分は、治療、予防、診断および/または観測のために好ましい。同様に、腫瘍関連抗原の非膜貫通部分、特に細胞外部分に対応するまたはそれからなる、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の一部に対する抗体の使用は好ましい。
【0020】
治療、予防、診断および/または観測のための好ましい疾患は、本発明によって同定される腫瘍関連核酸の1またはそれ以上が選択的に発現されるまたは異常発現される疾患である。治療、予防、診断および/または観測のための特に好ましい疾患は、本発明によって同定される腫瘍関連核酸の1もしくはそれ以上および/またはそれによってコードされる腫瘍関連抗原の1もしくはそれ以上が選択的に発現されるまたは異常発現される疾患である。
【0021】
1つの態様では、本発明は、本発明によって同定される腫瘍関連抗原または腫瘍関連抗原をコードする核酸を認識し、好ましくは本発明によってまたは腫瘍関連抗原をコードする核酸によって同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現を有する細胞に選択的である作用物質を含有する医薬組成物に関する。
【0022】
さらなる態様では、本発明は、(I)本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現もしくは活性を阻害する、および/または(II)腫瘍阻害活性もしくは腫瘍破壊活性を有し、本発明によって同定される腫瘍関連核酸および/もしくは腫瘍関連抗原を発現するもしくは異常発現する細胞に選択的である、および/または(III)投与された場合、MHC分子と本発明によって同定される腫瘍関連抗原もしくはペプチドエピトープなどのその一部との間の複合体の量を選択的に増大させる作用物質を含有する医薬組成物に関する。特定の実施形態では、前記作用物質は、細胞死の誘導、細胞増殖の低減、細胞膜への損傷またはサイトカインの分泌を生じさせることができ、好ましくは腫瘍阻害活性を有し得る。
【0023】
1つの実施形態では、腫瘍関連抗原の発現または活性を阻害する作用物質は、本発明によって同定される腫瘍関連核酸に特異的である。もう1つの実施形態では、腫瘍関連抗原の発現または活性を阻害する作用物質は、本発明によって同定される腫瘍関連抗原に特異的である。本発明によれば、「発現および/または活性を阻害する」という語句は、発現および/または活性の完全なまたは基本的に完全な阻害ならびに発現および/または活性の低減を包含する。好ましくは、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現の前記阻害は、本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードする転写産物、すなわちmRNAの産生を阻害するまたはそのレベルを低下させることによって、例えば転写を阻害するまたは転写産物の分解を誘導することによって、および/または本発明によって同定される腫瘍関連抗原の産生を阻害することによって、例えば本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードする転写産物の翻訳を阻害することによって行われ得る。好ましくは、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現および/または活性の前記阻害は、腫瘍細胞の増殖を低減し、および/または腫瘍細胞死を誘導し、従って腫瘍阻害作用または腫瘍破壊作用を有する。
【0024】
特定の実施形態では、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現を阻害する作用物質は、本発明によって同定される腫瘍関連核酸に選択的にハイブリダイズし、前記腫瘍関連核酸に対して特異的であり、それにより、その転写および/または翻訳を阻害する(例えば低減する)、阻害性核酸(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、iRNA、siRNAまたはそれらをコードするDNA)である。
【0025】
阻害性核酸は、標的核酸に対してアンチセンス方向の配列を有するオリゴヌクレオチドを含む。適切な阻害性オリゴヌクレオチドは、典型的には5〜数百ヌクレオチドの長さ、より典型的には約20〜70ヌクレオチド長またはそれ以下、より一層典型的には約10〜30ヌクレオチド長にわたる。これらの阻害性オリゴヌクレオチドは、遊離(裸の)核酸としてまたは保護された形態で、例えばリポソームに封入されて投与され得る。リポソームまたは他の保護された形態の使用は、インビボ(in vivo)での安定性を高めることができ、従って標的部位への送達を促進し得るので、好都合であり得る。
【0026】
また、標的腫瘍関連核酸は、腫瘍細胞中の対応するmRNAの切断を標的するリボザイムを設計するためにも使用し得る。同様に、これらのリボザイムは、遊離(裸の)形態でまたは安定性および/もしくは標的化を増強する送達システム、例えばリポソームを使用して投与され得る。
【0027】
また、標的腫瘍関連核酸は、腫瘍関連核酸の発現を阻害する(例えば低減する)ことができるsiRNAを設計するためにも使用し得る。siRNAは、遊離(裸の)形態でまたは安定性および/もしくは標的化を増強する送達システム、例えばリポソームを使用して投与され得る。それらはまた、それらの前駆体またはそれらをコードするDNAの形態でも投与され得る。
【0028】
さらなる実施形態では、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の活性を阻害する作用物質は、前記腫瘍関連抗原に特異的に結合する抗体である。腫瘍関連抗原への抗体の結合は、例えば結合活性または触媒活性を阻害することによって、腫瘍関連抗原の機能を妨げることができる。
【0029】
また、本発明は、もう1つの態様では、標的分子、すなわち本発明によって同定される腫瘍関連核酸または腫瘍関連抗原のリガンドの投与を含む、腫瘍疾患の治療のための療法に関する。これに関して、これらの標的を発現する細胞、例えば腫瘍細胞を選択的に標的し、死滅させるために、治療エフェクター部分、例えば放射性標識、細胞毒、細胞傷害性酵素等に結合した、標的核酸に選択的にハイブリダイズする核酸を投与し得るか、または標的抗原に特異的に結合する抗体を投与し得る。
【0030】
上記で述べた態様の1つの実施形態では、作用物質は、腫瘍関連抗原をコードする核酸と選択的にハイブリダイズするアンチセンス核酸である。さらなる実施形態では、作用物質は、好ましくはセンスRNA鎖とアンチセンスRNA鎖を含むsiRNAであり、前記siRNAにおいてセンスRNA鎖とアンチセンスRNA鎖はRNA二本鎖を形成し、センスRNA鎖は、腫瘍関連抗原をコードする核酸、好ましくは腫瘍関連抗原をコードするmRNA中の約19〜約25個の連続するヌクレオチドの標的配列と実質的に同一なヌクレオチド配列を含む。さらなる実施形態では、作用物質は、腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体、特に腫瘍関連抗原に選択的に結合する補体活性化抗体または毒素結合抗体である。好ましい実施形態では、腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体は、治療上有用な物質に連結されている、および/または前記腫瘍関連抗原を発現するもしくは異常発現する前記細胞に、天然もしくは人為的エフェクター機構を動員する。さらなる実施形態では、作用物質は、細胞上のMHC分子によって結合された腫瘍関連抗原またはその一部を認識し、このように標識された細胞を溶解する、細胞傷害性Tリンパ球である。さらなる実施形態では、作用物質は、細胞上のMHC分子によって結合された腫瘍関連抗原またはその一部を認識し、前記腫瘍関連抗原またはその一部を特異的に認識する他の細胞のエフェクター機能を増強する、Tヘルパーリンパ球である。
【0031】
さらなる実施形態では、作用物質は、各々が異なる腫瘍関連抗原もしくは腫瘍関連抗原をコードする異なる核酸を認識する、および/または異なる腫瘍関連抗原の発現もしくは活性を阻害する、および/または腫瘍阻害活性もしくは腫瘍破壊活性を有する、異なる腫瘍関連抗原を発現するもしくは異常発現する細胞に選択的である、および/または投与された場合、MHC分子と種々の異なる腫瘍関連抗原もしくはその一部との間の複合体の量を選択的に増大させる、2またはそれ以上の作用物質を含み、前記の異なる腫瘍関連抗原の少なくとも1つは本発明によって同定される腫瘍関連抗原である。
【0032】
好ましくは、選択的に腫瘍に限定される腫瘍関連抗原は、エフェクター機構をこの特定位置に動員するための標識として働く。この態様では、本発明は、作用物質が、それ自体では腫瘍関連抗原の活性または腫瘍阻害もしくは腫瘍破壊活性を阻害する能力を有さないが、特にエフェクター機構、中でも細胞損傷能を有する機構を特定位置、特に腫瘍または腫瘍細胞に動員することによってそのような作用を媒介する実施形態を包含する。
【0033】
好ましくは、本発明によって同定される腫瘍関連核酸および/または腫瘍関連抗原を発現するまたは異常発現する前記細胞は、非胎盤細胞である。
【0034】
本発明によって同定される腫瘍関連抗原の活性は、タンパク質またはペプチドの任意の活性であり得る。1つの実施形態では、この活性は酵素活性である。
【0035】
本発明によれば、「発現または活性を阻害する」という語句は、発現または活性の完全な阻害または基本的に完全な阻害および発現または活性の低減を包含する。
【0036】
MHC分子と本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその一部との間の複合体の量を選択的に増大させる作用物質は、投与された場合、(i)腫瘍関連抗原またはその一部、(ii)前記腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸、(iii)前記腫瘍関連抗原またはその一部を発現する宿主細胞、および(vi)前記腫瘍関連抗原からのペプチドエピトープとMHC分子との間の単離された複合体からなる群より選択される1またはそれ以上の成分を含む。
【0037】
本発明はさらに、(i)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその一部、(ii)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸、(iii)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその一部に結合する抗体、(iv)本発明によって同定される腫瘍関連核酸/本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸と特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸、(v)本発明によって同定される腫瘍関連核酸/本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸に対するsiRNA、(vi)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその一部を発現する宿主細胞、および(vii)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその一部とMHC分子との間の単離された複合体からなる群より選択される1またはそれ以上の成分を含有する医薬組成物に関する。
【0038】
1つの実施形態では、本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸は、発現ベクター内でおよびプロモーターに機能的に連結されて、医薬組成物中に存在する。さらなる実施形態では、本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸は、以下でさらに述べるようにウイルス内で医薬組成物中に存在する。
【0039】
本発明の医薬組成物中に存在する宿主細胞は、腫瘍関連抗原またはその一部を分泌して、それを表面上に発現することができ、好ましくは前記腫瘍関連抗原またはその一部に結合するMHC分子を付加的に発現し得る。1つの実施形態では、宿主細胞はMHC分子を内因性に発現する。さらなる実施形態では、宿主細胞は、MHC分子および/または腫瘍関連抗原もしくはその一部を組換え発現する。宿主細胞は、好ましくは非増殖性である。好ましい実施形態では、宿主細胞は、抗原提示細胞、特に樹状細胞、単球またはマクロファージである。
【0040】
さらなる実施形態では、本発明の医薬組成物中に存在する抗体は、モノクローナル抗体である。さらなる実施形態では、抗体は、キメラ、ヒトもしくはヒト化抗体、抗体のフラグメントまたは合成抗体である。抗体は、本明細書では治療薬または治療物質あるいは診断薬または診断物質と称される、治療上または診断上有用な作用物質に連結され得る。
【0041】
本発明の医薬組成物中に存在するアンチセンス核酸は、本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸の6〜50、特に10〜30、15〜30および20〜30個の連続するヌクレオチドの配列を含み得る。
【0042】
さらなる実施形態では、直接にまたは核酸の発現を介して本発明の医薬組成物によって提供される、腫瘍関連抗原またはその一部は、細胞の表面でMHC分子に結合し、前記結合は、好ましくは細胞溶解応答を生じさせるおよび/またはサイトカイン放出を誘導する。
【0043】
本発明の医薬組成物は、医薬的に適合性の担体および/または補助薬を含有し得る。
【0044】
本発明の医薬組成物は、好ましくは、腫瘍関連核酸および/または腫瘍関連抗原の選択的発現または異常発現する疾患の治療または予防のために使用される。好ましい実施形態では、疾患は、腫瘍性疾患、好ましくは癌である。
【0045】
好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、治療的または予防的に使用され得るワクチンの形態である。そのようなワクチンは、好ましくは、本発明によって同定される腫瘍関連抗原もしくはその一部、および/または本発明によって同定される腫瘍関連抗原もしくはその一部をコードする核酸を含有する。特定の実施形態では、核酸は、ウイルスまたは宿主細胞内に存在する。
【0046】
本発明はさらに、本発明によって同定される1またはそれ以上の腫瘍関連核酸の発現または異常発現を特徴とし、好ましくは本発明によって同定される1またはそれ以上の腫瘍関連抗原の発現または異常発現も同時に生じさせる疾患、好ましくは腫瘍性疾患、特に癌を治療する、予防する、診断するまたは観測する、すなわち前記疾患の後退、進行、経過および/または発症を測定する方法に関する。1つの実施形態では、治療または予防は本発明の医薬組成物の投与を含有する。
【0047】
本発明による診断の方法および/または観測の方法は、一般に、患者から、好ましくは前記疾患を有する、前記疾患を有するもしくは罹患することが疑われる、または前記疾患の潜在的可能性を有する患者から単離された生物学的試料における、(i)本発明によって同定される腫瘍関連核酸またはその一部、(ii)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその一部、(iii)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその一部に対する抗体、および(iv)本発明によって同定される腫瘍関連抗原もしくはその一部および/または腫瘍関連抗原もしくはその一部とMHC分子との間の複合体に特異的なTリンパ球、好ましくは細胞傷害性Tリンパ球またはTヘルパーリンパ球からなる群より選択される1またはそれ以上のパラメータの検出および/またはその量の測定に関する。前記検出および/または量の測定を達成するための手段は、本明細書において説明され、当業者に明らかになる。
【0048】
好ましくは、前記核酸もしくはその一部、前記腫瘍関連抗原もしくはその一部、前記抗体および/または前記Tリンパ球の存在、ならびに/あるいは前記疾患を有していない患者および/または組織と比較して増大している、前記核酸もしくはその一部、前記腫瘍関連抗原もしくはその一部、前記抗体および/または前記Tリンパ球の量は、前記疾患の存在または前記疾患の発現の潜在的可能性の指標となる。
【0049】
本発明の診断の方法および/または観測の方法はまた、前記核酸もしくはその一部、前記腫瘍関連抗原もしくはその一部、前記抗体および/または前記Tリンパ球の検出またはその量の測定により、前記疾患の転移挙動を評価するおよび/または予後判定することが可能である実施形態を包含し、前記実施形態では、好ましくは、前記核酸もしくはその一部、前記腫瘍関連抗原もしくは前記その一部、前記抗体および/または前記Tリンパ球の存在、ならびに/あるいは前記疾患を有していないまたは前記疾患の転移を有していない患者と比較して増大している、前記核酸もしくはその一部、前記腫瘍関連抗原もしくはその一部、前記抗体および/または前記Tリンパ球の量は、前記疾患の転移挙動または前記疾患の転移挙動の潜在的可能性の指標となる。
【0050】
特定の実施形態では、前記検出または量の測定は、(i)生物学的試料を、腫瘍関連核酸もしくはその一部、腫瘍関連抗原もしくはその一部、抗体またはTリンパ球に特異的に結合する作用物質と接触させること、および(ii)作用物質と、核酸もしくはその一部、腫瘍関連抗原もしくはその一部、抗体またはTリンパ球との間の複合体の形成を検出するまたは複合体の量を測定することを含む。
【0051】
1つの実施形態では、疾患は、好ましくは2またはそれ以上の異なる腫瘍関連抗原の発現または異常発現も同時に生じさせる、2またはそれ以上の異なる腫瘍関連核酸の発現または異常発現を特徴とし、検出または量の測定は、2もしくはそれ以上の異なる腫瘍関連核酸もしくはその一部、2もしくはそれ以上の異なる腫瘍関連抗原もしくはその一部、前記2もしくはそれ以上の異なる腫瘍関連抗原もしくはその一部に結合する2もしくはそれ以上の抗体、および/または前記2もしくはそれ以上の異なる腫瘍関連抗原もしくはその一部またはMHC分子とのその複合体に特異的な2またはそれ以上のTリンパ球の検出またはその量の測定を含む。さらなる実施形態では、患者から単離された生物学的試料を、匹敵する正常な生物学的試料と比較する。
【0052】
本発明による観測の方法は、好ましくは、第1に、第1試料において、および第2に、でさらなる試料において、上述したパラメータの1またはそれ以上を検出するまたはその量を測定することを含み、2つの試料を比較することによって疾患の経過を判定する。
【0053】
好ましくは、前記核酸もしくはその一部、前記腫瘍関連抗原もしくはその一部、前記抗体および/または前記Tリンパ球のレベルが、患者から以前に採取した試料と比較して試料中で上昇していることは、患者が癌および/または癌の転移および/または癌の再発を発症したまたは発症しかかっていることを指示する。好ましくは、前記核酸もしくはその一部、前記腫瘍関連抗原もしくはその一部、前記抗体および/または前記Tリンパ球のレベルが、患者から以前に採取した試料と比較して試料中で低下していることは、前記患者における癌および/または癌の転移の後退を指示し、従って、好ましくは癌治療の成功を指示する。
【0054】
本発明によれば、核酸もしくはその一部の検出または核酸もしくはその一部の量の測定は、前記核酸もしくはその一部に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドプローブを使用して実施し得るか、または前記核酸もしくはその一部の選択的増幅によって、例えばPCR増幅を用いて実施し得る。1つの実施形態では、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドプローブは、前記核酸の6〜50個、特に10〜30個、15〜30個および20〜30個の連続するヌクレオチドの配列を含む。
【0055】
特定の実施形態では、本発明の方法において検出されるまたはその量が測定される腫瘍関連抗原またはその一部は、細胞内、細胞表面上またはMHC分子との複合体中に存在する。
【0056】
本発明によれば、腫瘍関連抗原もしくはその一部の検出または腫瘍関連抗原もしくはその一部の量の測定は、前記腫瘍関連抗原またはその一部に特異的に結合する抗体を使用して実施し得る。
【0057】
本発明によれば、抗体の検出または抗体の量の測定は、前記抗体に特異的に結合するタンパク質またはペプチドを使用して実施し得る。
【0058】
本発明によれば、腫瘍関連抗原もしくはその一部および/またはMHC分子とのその複合体に特異的なTリンパ球の検出またはその量の測定は、前記腫瘍関連抗原またはその一部とMHC分子との間の複合体を提示する細胞を使用して実施し得る。Tリンパ球は、付加的に、それらの増殖、それらのサイトカイン産生、およびMHC分子と腫瘍関連抗原またはその一部との複合体での特異的刺激によって開始されるそれらの細胞傷害活性を検出することによって検出し得る。Tリンパ球はまた、組換えMHC分子または1もしくはそれ以上の腫瘍関連抗原の免疫原性フラグメントが負荷された2もしくはそれ以上のMHC分子の複合体を用いて検出し得る。
【0059】
オリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドプローブ、抗体、タンパク質もしくはペプチド、または細胞などの、本発明の方法における検出または量の測定のために使用される作用物質は、好ましくは検出可能に、特に放射性マーカーまたは酵素マーカーなどの検出可能なマーカーによって標識される。
【0060】
本発明の特定態様では、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現する疾患を治療する、予防する、診断するまたは観測する方法であって、前記腫瘍関連抗原またはその一部に結合し、且つ治療薬または診断薬に連結されている抗体を投与することを含む方法に関する。抗体はモノクローナル抗体であり得る。さらなる実施形態では、抗体は、キメラもしくはヒト化抗体または抗体のフラグメントである。
【0061】
ある実施形態では、疾患を診断するまたは観測する本発明の方法は、播種性腫瘍細胞または転移性腫瘍細胞などの腫瘍細胞を含むまたは含むことが疑われる生物学的試料に関して実施される。そのような生物学的試料は、例えば組織、血液、血清、骨髄、痰、気管支吸引液および/または気管支洗浄液を含む。好ましくは、疾患を診断するまたは観測する本発明の方法は、胎盤細胞を含まない、特に、被験者から単離された非胎盤生物学的試料である生物学的試料に関して実施される。1つの実施形態では、生物学的試料は組織または器官に由来し、前記組織または器官が腫瘍を含まない場合、その細胞は本発明によって同定される腫瘍関連抗原および/または本発明によって同定される腫瘍関連核酸を実質的に発現しない。
【0062】
1つの特定態様では、本発明は、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現する疾患を有する患者を治療する方法であって、(i)前記患者からまたは同じ種の別の個体、特に健常個体から、または異なる種の個体から得た、免疫反応性細胞を含む試料を提供すること、(ii)前記試料を、前記腫瘍関連抗原またはその一部に対する細胞溶解性T細胞の産生を促進する条件下で、前記腫瘍関連抗原またはその一部を発現する宿主細胞と接触させること、および(iii)細胞溶解性T細胞を、腫瘍関連抗原またはその一部を発現する細胞を溶解するのに適した量で患者に導入することを含む方法に関する。1つの実施形態では、その方法は、得られた細胞溶解性T細胞のT細胞受容体をクローニングすることおよびT細胞受容体をコードする核酸を、前記患者からまたは同じ種の別の個体、特に健常個体から、または異なる種の個体から得た、T細胞に移入することを含み、このようにして前記T細胞は所望の特異性を受容し、(iii)におけるように、患者に導入され得る。
【0063】
1つの実施形態では、宿主細胞はMHC分子を内因性に発現する。さらなる実施形態では、宿主細胞は、MHC分子および/または腫瘍関連抗原もしくはその一部を組換え発現する。好ましくは、宿主細胞は、MHC分子によって腫瘍関連抗原またはその一部をその表面に提示する。宿主細胞は、好ましくは非増殖性である。好ましい実施形態では、宿主細胞は、抗原提示細胞、特に樹状細胞、単球またはマクロファージである。
【0064】
本発明はまた、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現する疾患を治療する方法であって、(i)異常量の腫瘍関連抗原を発現する、患者からの細胞を同定すること、(ii)前記細胞の試料を単離すること、(iii)前記細胞を培養すること、および(iv)前記細胞を、細胞に対する免疫応答を開始させるのに適した量で患者に導入することを含む方法に関する。
【0065】
本発明はさらに、(a)配列番号:1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620、624、634、638、642、646、649、653、656、660、664、668、671、675、679、682および686からなる群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、(c)(a)または(b)の核酸に対して縮重している核酸、ならびに(d)(a)、(b)または(c)の核酸に相補的な核酸からなる群より選択される核酸に関する。
【0066】
さらなる態様では、本発明は、本発明の核酸を含む、組換え核酸分子、特にDNAまたはRNA分子に関する。
【0067】
本発明はまた、本発明の核酸または組換え核酸分子を含む宿主細胞に関する。
【0068】
宿主細胞はまた、MHC分子をコードする核酸を含み得る。1つの実施形態では、宿主細胞はMHC分子を内因性に発現する。さらなる実施形態では、宿主細胞は、MHC分子および/または本発明の核酸もしくは組換え核酸分子もしくはその一部を組換え発現する。好ましくは、宿主細胞は非増殖性である。好ましい実施形態では、宿主細胞は、抗原提示細胞、特に樹状細胞、単球またはマクロファージである。
【0069】
さらなる実施形態では、本発明は、本発明によって同定される核酸とハイブリダイズし、遺伝子プローブとしてまたは「アンチセンス」分子として使用し得るオリゴヌクレオチドに関する。本発明によって同定される核酸またはその一部とハイブリダイズする、オリゴヌクレオチドプライマーまたはコンピテントプローブの形態の核酸分子は、例えばPCR増幅、サザンおよびノーザンハイブリダイゼーションによって、前記核酸を検出するためおよび/または本発明によって同定される前記核酸に相同な核酸を見出すために使用し得る。ハイブリダイゼーションは、低い厳密性の条件下で、より好ましくは普通の厳密性の条件下で、最も好ましくは高い厳密性の条件下で実施し得る。
【0070】
さらなる態様では、本発明は、(a)配列番号:1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620、624、634、638、642、646、649、653、656、660、664、668、671、675、679、682および686からなる群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、(c)(a)または(b)の核酸に対して縮重している核酸、ならびに(d)(a)、(b)または(c)の核酸に相補的である核酸からなる群より選択される核酸によってコードされるタンパク質またはペプチドに関する。好ましい実施形態では、前記タンパク質またはペプチドは、配列表の配列番号:542、546、550、554、567、571、584、588、592、596、603、607、614、621、625、635、639、643、650、657、661、665、672、676および683からなる群より選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含む。
【0071】
さらなる態様では、本発明は、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の免疫原性フラグメントに関する。前記フラグメントは、好ましくはMHC分子または抗体、好ましくはヒトHLA受容体またはヒト抗体に結合する。本発明によれば、一部またはフラグメントは、好ましくは少なくとも5、少なくとも6、特に少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30または少なくとも50個のアミノ酸の配列を含む。
【0072】
さらなる態様では、本発明は、本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその一部に結合する作用物質に関する。好ましい実施形態では、作用物質は、タンパク質またはペプチド、特に抗体、T細胞受容体またはMHC分子である。さらなる実施形態では、抗体は、モノクローナル、キメラ、ヒトもしくはヒト化抗体、コンビナトリアル技術によって作製される抗体、または抗体のフラグメントである。1つの好ましい実施形態では、本発明は、(i)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその一部と(ii)本発明によって同定される前記腫瘍関連抗原または前記その一部が結合しているMHC分子との複合体に選択的に結合し、(i)または(ii)単独には結合しない抗体に関する。
【0073】
本発明によれば、「結合」という用語は、好ましくは特異的結合に関する。「特異的結合」は、抗体などの作用物質が、それが特異的であるエピトープなどの標的に対して、別の標的への結合と比較してより強く結合することを意味する。ある作用物質が、ある解離定数(KD)で第1標的に結合し、その解離定数が第2標的に対する解離定数よりも低い場合、作用物質は第2標的に比べて第1標的により強く結合する。好ましくは、作用物質が特異的に結合する標的についての解離定数(KD)は、作用物質が特異的に結合しない標的についての解離定数(KD)よりも10倍以上、好ましくは20倍以上、より好ましくは50倍以上、さらに一層好ましくは100倍、200倍、500倍または1000倍以上低い。
【0074】
そのような特異的抗体は、例えば前記ペプチドを使用した免疫によって入手し得る。
【0075】
本発明はさらに、本発明によって同定される腫瘍関連抗原もしくはその一部または本発明の抗体に結合する本発明の作用物質と治療薬または診断薬との間の複合体に関する。1つの実施形態では、治療薬または診断薬は毒素である。
【0076】
さらなる態様で本発明は、本発明によって同定される1またはそれ以上の腫瘍関連核酸の発現または異常発現を特徴とし、好ましくは本発明によって同定される1またはそれ以上の腫瘍関連抗原の発現または異常発現も同時に生じさせる疾患、好ましくは腫瘍性疾患、特に癌を検出するためのキットであって、(i)腫瘍関連核酸もしくはその一部、(ii)腫瘍関連抗原もしくはその一部、(iii)腫瘍関連抗原もしくはその一部に結合する抗体、および/または(iv)腫瘍関連抗原もしくはその一部またはMHC分子とのその複合体に特異的なT細胞の検出またはその量の測定のための作用物質を含むキットに関する。そのような作用物質は、本明細書中上記で説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】正常組織および癌組織における本発明によって同定される腫瘍関連核酸の発現を示す図である。 配列番号:540の核酸配列の有意の発現は、胎盤組織および乳癌においてのみ認められた。
【図2】正常組織および癌組織における本発明によって同定される腫瘍関連核酸の定量的発現を示す図である。 定量的RT−PCRは、胎盤組織および乳癌において配列番号:540の核酸配列の選択的発現を示した。
【図3】MCF−7乳癌細胞における配列番号:540のmRNAの定量的発現を示す図である。 siRNAオリゴヌクレオチドを形質転換した24時間後のリアルタイムRT−PCRは、2つの配列番号:540特異的siRNA(siRNA No.1(配列番号630、631)、siRNA No.2(配列番号632、633))が配列番号:540の発現の堅固なサイレンシングを誘導することを示した。
【図4】siRNAオリゴヌクレオチドを形質転換することによる配列番号:540発現のサイレンシングは、MCF−7乳癌細胞の増殖低下を生じさせることを示す図である。 siRNAを形質転換した96時間後に、新たに合成されたDNA鎖へのBrdUの組込みを測定することによって増殖を定量した。これらの結果は、配列番号:540が乳癌細胞の増殖のための正の因子であることを示す。
【図5】正常組織および癌組織における配列番号:541の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、肺癌における配列番号:541の核酸配列の過剰発現を示した。
【図6】正常組織および癌組織における配列番号:545の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、悪性黒色腫における配列番号:545の核酸配列の過剰発現を示した。
【図7】正常組織および癌組織における配列番号:549の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、卵巣癌における配列番号:549の核酸配列の過剰発現を示した。
【図8】正常組織および癌組織における配列番号:553の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、結腸癌および卵巣癌における配列番号:553の核酸配列の過剰発現を示した。
【図9】正常組織および癌組織における配列番号:557の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、乳癌における配列番号:557の核酸配列の過剰発現を示した。
【図10】正常組織および癌組織における配列番号:560の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、結腸癌および卵巣癌における配列番号:560の核酸配列の過剰発現を示した。
【図11】正常組織および癌組織における配列番号:563の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、乳癌、結腸癌、卵巣癌、肺癌および黒色腫における配列番号:563の核酸配列の過剰発現を示した。
【図12】正常組織および癌組織における配列番号:566の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、胃癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、肺癌および黒色腫における配列番号:566の核酸配列の過剰発現を示した。
【図13】正常組織および癌組織における配列番号:570の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、卵巣癌、肺癌および黒色腫における配列番号:570の核酸配列の過剰発現を示した。
【図14】正常組織および癌組織における配列番号:574の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、肺癌および黒色腫における配列番号:574の核酸配列の過剰発現を示した。
【図15】正常組織および癌組織における配列番号:577の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、胃癌、乳癌および肺癌における配列番号:577の核酸配列の過剰発現を示した。
【図16】正常組織および癌組織における配列番号:580の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、卵巣癌および肺癌における配列番号:580の核酸配列の過剰発現を示した。
【図17】正常組織および癌組織における配列番号:583の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、結腸癌、卵巣癌および肺癌における配列番号:583の核酸配列の過剰発現を示した。
【図18】正常組織および癌組織における配列番号:587の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、肺癌における配列番号:587の核酸配列の過剰発現を示した。
【図19】正常組織および癌組織における配列番号:591の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、乳癌、結腸癌、卵巣癌、肺癌および黒色腫における配列番号:591の核酸配列の過剰発現を示した。
【図20】正常組織および癌組織における配列番号:595の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、胃癌、結腸癌、卵巣癌、肺癌および黒色腫における配列番号:595の核酸配列の過剰発現を示した。
【図21】正常組織および癌組織における配列番号:599の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、胃癌、乳癌、肺癌および黒色腫における配列番号:599の核酸配列の過剰発現を示した。
【図22】正常組織および癌組織における配列番号:602の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、卵巣癌および肺癌における配列番号:602の核酸配列の過剰発現を示した。
【図23】正常組織および癌組織における配列番号:606の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、胃癌、結腸癌および肺癌における配列番号:606の核酸配列の過剰発現を示した。
【図24】正常組織および癌組織における配列番号:610の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、胃癌、乳癌および肺癌における配列番号:610の核酸配列の過剰発現を示した。
【図25】正常組織および癌組織における配列番号:613の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、乳癌、肺癌および黒色腫における配列番号:613の核酸配列の過剰発現を示した。
【図26】正常組織および癌組織における配列番号:617の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、肺癌および黒色腫における配列番号:617の核酸配列の過剰発現を示した。
【図27】正常組織および癌組織における配列番号:620の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、卵巣癌および黒色腫における配列番号:620の核酸配列の過剰発現を示した。
【図28】正常組織および癌組織における配列番号:624の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、胃癌および肺癌における配列番号:624の核酸配列の過剰発現を示した。
【図29】正常組織および癌組織における配列番号:634の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、卵巣癌および肺癌における配列番号:634の核酸配列の過剰発現を示した。
【図30】正常組織および癌組織における配列番号:638の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、結腸癌、卵巣癌、肺癌および悪性黒色腫における配列番号:638の核酸配列の過剰発現を示した。
【図31】正常組織および癌組織における配列番号:642の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、乳癌、卵巣癌、肺癌および悪性黒色腫における配列番号:642の核酸配列の過剰発現を示した。
【図32】正常組織および癌組織における配列番号:646の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、胃癌、卵巣癌および肺癌における配列番号:646の核酸配列の過剰発現を示した。
【図33】正常組織および癌組織における配列番号:649の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、卵巣癌、肺癌および悪性黒色腫における配列番号:649の核酸配列の過剰発現を示した。
【図34】正常組織および癌組織における配列番号:653の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、結腸癌および肺癌における配列番号:653の核酸配列の過剰発現を示した。
【図35】正常組織および癌組織における配列番号:656の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、肺癌および悪性黒色腫における配列番号:656の核酸配列の過剰発現を示した。
【図36】正常組織および癌組織における配列番号:660の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、胃癌、卵巣癌および悪性黒色腫における配列番号:660の核酸配列の過剰発現を示した。
【図37】正常組織および癌組織における配列番号:664の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、胃癌、結腸癌、肺癌および悪性黒色腫における配列番号:664の核酸配列の過剰発現を示した。
【図38】正常組織および癌組織における配列番号:668の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、肺癌における配列番号:668の核酸配列の過剰発現を示した。
【図39】正常組織および癌組織における配列番号:671の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、肺癌および悪性黒色腫における配列番号:671の核酸配列の過剰発現を示した。
【図40】正常組織および癌組織における配列番号:675の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、肺癌およおび悪性黒色腫における配列番号:675の核酸配列の過剰発現を示した。
【図41】正常組織および癌組織における配列番号:679の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、肺癌における配列番号:679の核酸配列の過剰発現を示した。
【図42】正常組織および癌組織における配列番号:682の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、胃癌、乳癌および悪性黒色腫における配列番号:682の核酸配列の過剰発現を示した。
【図43】正常組織および癌組織における配列番号:686の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、乳癌、卵巣癌および肺癌における配列番号:686の核酸配列の過剰発現を示した。
【発明を実施するための形態】
【0078】
本明細書における数値の範囲への言及は、前記範囲に含まれる個々の数値の各々を指定し、言及すると理解されるべきである。例えば、配列番号1〜540への言及は、以下の個々の配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499、500、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、511、512、513、514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、525、526、527、528、529、530、531、532、533、534、535、536、537、538、539および540の1つ1つに言及すると理解されるべきである。
【0079】
本発明によれば、参照試料または参照生物などの「参照物」は、試験試料または試験生物、すなわち患者から本発明の方法において得られた結果を相互に関連付け、比較するために使用し得る。典型的には、参照試料は、健常組織、特に癌によって冒されていない対応する組織からの試料であり、または参照生物は、健常生物、特に癌に罹患していない生物である。
【0080】
「参照値」は、膨大な数の参照物を測定することによって、経験的に決定することができる。好ましくは、参照値は、少なくとも2、好ましくは少なくとも3、好ましくは少なくとも5、好ましくは少なくとも8、好ましくは少なくとも12、好ましくは少なくとも20、好ましくは少なくとも30、好ましくは少なくとも50、または好ましくは少なくとも100の参照物を測定することによって決定される。
【0081】
本発明によれば、核酸は、好ましくはデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)である。核酸は、本発明によれば、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、組換え生産された分子および化学合成された分子を含む。本発明によれば、核酸は、一本鎖または二本鎖としておよび直鎖状分子または共有結合閉環分子として存在し得る。
【0082】
「本発明によって同定される腫瘍関連核酸」および「本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸」という用語は、同様の意味を有する。しかし、一部の実施形態では核酸、特にmRNAの発現だけが関連し、タンパク質の発現は重要な因子ではないという事実を説明するために異なる用語が本明細書で使用される。
【0083】
本明細書で使用される、「RNA」という用語は、少なくとも1個のリボヌクレオチド残基を含む分子を意味する。「リボヌクレオチド」とは、β−D−リボフラノース部分の2'位置にヒドロキシル基を有するヌクレオチドを意味する。この用語は、二本鎖RNA、一本鎖RNA、部分的に精製されたRNAのような単離されたRNA、基本的に純粋なRNA、合成RNA、組換え生産されたRNA、ならびに1またはそれ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換および/または変化によって天然に生じるRNAとは異なる変化したRNAを包含する。そのような変化は、RNAの末端または内部などへの、例えばRNAの1またはそれ以上のヌクレオチドにおける、非ヌクレオチド物質の付加を含み得る。RNA分子中のヌクレオチドはまた、非天然に生じるヌクレオチドまたは化学合成ヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドなどの、非標準ヌクレオチドも含み得る。これらの変化したRNAは、類似体または天然に生じるRNAの類似体と称され得る。
【0084】
本明細書において核酸の検出または核酸の量の測定に言及する場合、実際に検出されるべき核酸またはその量が実際に測定されるべきである核酸は、好ましくはmRNAである。しかし、これはまた、mRNAが間接的に検出されるまたはmRNAの量が間接的に測定される実施形態を含み得ることが了解されるべきである。例えば、mRNAがcDNAに変換されて、そのcDNAが検出されてもよいまたはその量が測定されてもよい。mRNAは、本明細書ではcDNAの等価物として示される。当業者は、cDNA配列がmRNA配列と等価であり、本明細書では同じ目的のため、例えば検出されるべき核酸にハイブリダイズするプローブの作製のために使用できることを理解する。従って、本明細書において配列表に示す配列に言及する場合、これは、上記配列のRNA等価物も包含する。
【0085】
本発明に従って述べる核酸は、好ましくは単離されている。「単離核酸」という用語は、本発明によれば、核酸が、(i)インビトロ(in vitro)で、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅された、(ii)クローニングすることで組換え生産された、(iii)例えば切断とゲル電気泳動による分画によって精製された、または(iv)例えば化学合成によって合成されたことを意味する。単離核酸は、組換えDNA技術による操作のために使用可能な核酸である。
【0086】
本発明による縮重核酸は、遺伝暗号の縮重のためにコドン配列が参照核酸とは異なる核酸である。
【0087】
例えば核酸およびアミノ酸配列に関する、「誘導体」という用語は、本発明によれば、任意の変異体、特に突然変異体、スプライス変異体、立体配座変異体、アイソフォーム、対立遺伝子変異体、種変異体および種ホモログ、特に天然に存在するものを包含する。対立遺伝子変異体は、遺伝子の正常な配列の変化に関するが、その重要性はしばしば不明である。完全な遺伝子配列決定は、多くの場合、所与の遺伝子に対する数多くの対立遺伝子変異体を同定する。種ホモログは、所与の核酸またはアミノ酸配列のものとは異なる種を起源とする核酸またはアミノ酸配列である。
【0088】
本発明による核酸の「誘導体」は、単一または複数の、例えば少なくとも2、少なくとも4、または少なくとも6、および好ましくは3まで、4まで、5まで、6まで、10まで、15まで、または20までのヌクレオチド置換、欠失および/または付加を含む核酸を包含する。さらに、「誘導体」という用語はまた、ヌクレオチド塩基、糖またはリン酸上の核酸の化学的誘導体化を含む。「誘導体」という用語はまた、天然では生じないヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体を含む核酸を含む。好ましくは、核酸の誘導体化はその安定性を高める。
【0089】
好ましくは、本明細書で述べる特定の核酸配列と、上記特定核酸配列の誘導体である、上記特定核酸配列とハイブリダイズする、および/または上記特定核酸配列に対して縮重している核酸配列との間の相同性の程度は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらに一層好ましくは少なくとも90%、または最も好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%または99%である。相同性の程度は、好ましくは少なくとも約30、少なくとも約50、少なくとも約70、少なくとも約90、少なくとも約100、少なくとも約150、少なくとも約200、少なくとも約250、少なくとも約300、または少なくとも約400ヌクレオチドの領域に関して与えられる。好ましい実施形態では、相同性の程度は、配列表に記載されている核酸配列などの、参照核酸配列の全長に関して与えられる。
【0090】
2つの配列が互いにハイブリダイズして、安定な二本鎖を形成することができる場合、核酸はもう1つの別の核酸に「相補的」であり、ハイブリダイゼーションは、好ましくはポリヌクレオチド間の特異的ハイブリダイゼーションを可能にする条件(ストリンジェントな条件)下で実施される。ストリンジェントな条件は、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,J.Sambrook et al.,Editors,2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory press,Cold Spring Harbor,New York,1989またはCurrent Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel et al.,Editors,John Wiley & Sons,Inc.,New Yorkの中に記載されており、例えば、ハイブリダイゼーション緩衝液(3.5×SSC、0.02%フィコール、0.02%ポリビニルピロリドン、0.02%ウシ血清アルブミン、2.5mM NaH2PO4(pH7)、0.5%SDS、2mM EDTA)中65℃でのハイブリダイゼーションを参照されたい。SSCは、0.15M塩化ナトリウム/0.15Mクエン酸ナトリウム、pH7である。ハイブリダイゼーション後、DNAが移入された膜を、例えば室温にて2×SSC中で、次に68℃までの温度で0.1〜0.5×SSC/0.1×SDS中で洗浄する。
【0091】
相補性パーセントは、第2の核酸配列と水素結合(例えばワトソン−クリック塩基対合)を形成することができる、核酸分子内の連続する残基のパーセンテージを示す(例えば10個のうち5、6、7、8、9、10個は、50%、60%、70%、80%、90%および100%相補的である)。「完全に相補的(perfectly complementaryまたはfully complementary)」とは、核酸配列のすべての連続する残基が第2の核酸配列内の同じ数の連続する残基と水素結合することを意味する。好ましくは、本発明による相補性の程度は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらに一層好ましくは少なくとも90%、または最も好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%または99%である。最も好ましくは、本発明による相補性の程度は100%である。
【0092】
「配列類似性」は、同一であるかまたは保存的アミノ酸置換であるアミノ酸のパーセンテージを示す。2つのポリペプチドまたは核酸配列の間の「配列同一性」は、配列間で同一であるアミノ酸またはヌクレオチドのパーセンテージを示す。
【0093】
「相同性のパーセンテージ」は、最良のアラインメント後に得られた、比較する2つの配列の間で同一であるヌクレオチドまたはアミノ酸残基のパーセンテージを表わすことが意図されており、このパーセンテージは純粋に統計的であって、2つの配列の間の相違は無作為におよびそれらの長さ全体にわたって分布する。2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の配列比較は、従来、これらの配列を最適に整列した後に比較することによって実施され、前記比較は、配列類似性の局所領域を同定し、比較するためにセグメントごとにまたは「比較ウインドウ」ごとに実施される。比較のための配列の最適アラインメントは、手操作による以外に、Smith and Waterman,1981,Ads App.Math.2,482の局所相同性アルゴリズムによって、Neddleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443の局所相同性アルゴリズムによって、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci.USA 85,2444の類似性検索法によって、またはこれらのアルゴリズムを使用したコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wis.におけるGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST NおよびTFASTA)によって作成され得る。
【0094】
相同性のパーセンテージは、比較する2つの配列の間の同一位置の数を決定し、これら2つの配列の間の相同性のパーセンテージを得るためにこの数を比較する位置の数で除して、得られた結果に100を乗じることによって計算される。
【0095】
1つの実施形態では、特定の核酸配列の誘導体である、特定核酸配列に対して縮重しているまたは特定核酸配列の一部である核酸配列は、特定核酸配列の関連する機能および/または活性を有する、すなわち特定核酸配列によってコードされるタンパク質またはペプチドと同じ活性または免疫学的性質を有するタンパク質またはペプチドをコードすることができ、1つの実施形態では、同じタンパク質またはペプチドをコードする。
【0096】
腫瘍関連抗原をコードする核酸は、本発明によれば、単独でまたは他の核酸、特に異種核酸との組合せで存在し得る。好ましくは、腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸は、前記腫瘍関連抗原またはその一部を発現する。好ましい実施形態では、核酸は、上記核酸に関して同種または異種であってよい発現制御配列または調節配列に機能的に連結されている。コード配列と調節配列は、それらが、上記コード配列の発現または転写が上記調節配列の制御下または影響下にあるように互いに共有結合で連結されている場合、互いに「機能的に」連結されている。コード配列が機能的タンパク質に翻訳される場合、調節配列が上記コード配列に機能的に連結されていれば、上記調節配列の誘導は、コード配列内にフレームシフトを引き起こすことなくまたは上記コード配列が所望タンパク質もしくはペプチドに翻訳されるのを不可能にすることなく、上記コード配列の転写を生じさせる。
【0097】
「発現制御配列」または「調節配列」という用語は、本発明によれば、プロモーター、エンハンサーおよび遺伝子の発現を調節する他の制御エレメントを含む。本発明の特定の実施形態では、発現制御配列を調節することができる。調節配列の正確な構造は、種または細胞型に応じて異なり得るが、一般には、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列等のような、それぞれ転写および翻訳の開始に関与する5'非転写配列および5'非翻訳配列を含む。より詳細には、5'非転写調節配列は、機能的に連結された遺伝子の転写制御のためのプロモーター配列を含有するプロモーター領域を含む。調節配列はまた、エンハンサー配列または上流活性化配列も含み得る。
【0098】
本発明によれば、核酸はさらに、上記核酸によってコードされるタンパク質またはペプチドの宿主細胞からの分泌を制御するペプチドをコードする別の核酸と組み合わせて存在し得る。本発明によれば、核酸はまた、コードされるタンパク質またはペプチドが宿主細胞の細胞膜に固定されるまたは上記細胞の特定小器官に分画されることを生じさせるペプチドをコードする別の核酸と組み合わせて存在し得る。同様に、レポーター遺伝子または任意の「タグ」である核酸との組合せが可能である。
【0099】
好ましい実施形態では、組換え核酸分子は、本発明によれば、核酸、例えば本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸の発現を制御する、適切な場合はプロモーターを有する、ベクターである。「ベクター」という用語は、本明細書ではその最も一般的な意味で使用され、核酸が、例えば原核細胞および/または真核細胞に導入されて、適切な場合は、ゲノムに組み込まれることを可能にする、前記核酸のための任意の中間ビヒクルを含む。この種のベクターは、好ましくは細胞内で複製および/または発現される。中間ビヒクルは、例えば、電気穿孔法、微粒子銃、リポソーム投与、アグロバクテリアを用いた導入、またはDNAもしくはRNAウイルスを介した挿入における使用に適合させ得る。ベクターは、プラスミド、ファージミド、バクテリオファージまたはウイルスゲノムを含む。
【0100】
本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸は、宿主細胞に導入するために使用し得る。本明細書における核酸は、組換えDNAおよびRNAの両方を意味する。組換えRNAは、DNA鋳型のインビトロ転写によって作製し得る。さらに、適用の前に配列の安定化、キャップ形成およびポリアデニル化によって修飾してもよい。
【0101】
本発明によれば、「宿主細胞」という用語は、外来性核酸を形質転換または導入することができる任意の細胞に関する。「宿主細胞」という用語は、本発明によれば、原核細胞(例えば大腸菌(E.coli))または真核細胞(例えば樹状細胞、B細胞、CHO細胞、COS細胞、K562細胞、酵母細胞および昆虫細胞)を含む。ヒト、マウス、ハムスター、ブタ、ヤギ、霊長動物からの細胞などの哺乳動物細胞が特に好ましい。細胞は様々な組織型に由来してよく、一次細胞および細胞株を含み得る。具体的な例は、ケラチノサイト、末梢血白血球、骨髄の幹細胞および胚性幹細胞を含む。さらなる実施形態では、宿主細胞は、抗原提示細胞、特に樹状細胞、単球またはマクロファージである。核酸は、単一コピーまたは2もしくはそれ以上のコピーの形態で宿主細胞内に存在することができ、1つの実施形態では、宿主細胞において発現される。
【0102】
本発明によれば、「発現」という用語は、その最も一般的な意味で使用され、RNAの産生またはRNAとタンパク質の産生を含む。この用語はまた、核酸の部分的発現を含む。さらに、発現は一過性にまたは安定に実施され得る。哺乳動物細胞における好ましい発現系は、pcDNA3.1およびpRc/CMV(Invitrogen,Carlsbad,CA)を含み、これらは、G418に対する耐性を付与する遺伝子のような選択マーカー(従って安定にトランスフェクトされた細胞株を選択することを可能にする)およびサイトメガロウイルス(CMV)のエンハンサー−プロモーター配列を含有する。
【0103】
MHC分子が腫瘍関連抗原またはその一部を提示する本発明の場合、発現ベクターはまた、上記MHC分子をコードする核酸配列を含み得る。MHC分子をコードする核酸配列は、腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸と同じ発現ベクターに存在してもよく、または2つの核酸が異なる発現ベクターに存在してもよい。後者の場合は、2つの発現ベクターを細胞に同時に形質転換し得る。宿主細胞が腫瘍関連抗原もしくはその一部またはMHC分子のいずれも発現しない場合は、それぞれをコードする2つの核酸を同じ発現ベクターまたは異なる発現ベクターを細胞に形質転換し得る。細胞が既にMHC分子を発現する場合は、腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸配列だけを細胞に導入することができる。
【0104】
本発明はまた、核酸の検出および/または核酸の量の測定のためのキットを含む。そのようなキットは、例えば、検出しようとするまたはその量を測定しようとする核酸にハイブリダイズする一対の増幅プライマーを含む。プライマーは、好ましくは前記核酸の6〜50、特に10〜30、15〜30および20〜30個の連続するヌクレオチドの配列を含み、プライマー二量体の形成を回避するため、オーバーラップしていない。プライマーの一方は核酸の一方の鎖にハイブリダイズし、他方のプライマーは、核酸の増幅を可能にする配置で相補的な鎖にハイブリダイズする。
【0105】
「アンチセンス分子」または「アンチセンス核酸」は、核酸の発現を調節する、特に低減するために使用し得る。「アンチセンス分子」または「アンチセンス核酸」という用語は、本発明によれば、オリゴリボヌクレオチド、オリゴデオキシリボヌクレオチド、修飾オリゴリボヌクレオチドまたは修飾オリゴデオキシリボヌクレオチドであり、特定遺伝子を含むDNAまたは上記遺伝子のmRNAに生理的条件下でハイブリダイズして、それにより上記遺伝子の転写および/または上記mRNAの翻訳を阻害するオリゴヌクレオチドを指す。本発明によれば、「アンチセンス分子」はまた、その天然プロモーターに対して逆方向に核酸またはその一部を含む構築物を包含する。核酸またはその一部のアンチセンス転写産物は、天然に生じるmRNAと二本鎖を形成することができ、従ってmRNAの蓄積または翻訳を妨げ得る。もう1つの可能性は、核酸を不活性化するためのリボザイムの使用である。
【0106】
本発明による好ましいアンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的核酸の6〜50、特に10〜30、15〜30および20〜30個の連続するヌクレオチドの配列を有し、好ましくは標的核酸またはその一部に完全に相補的である。
【0107】
好ましい実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、N末端または翻訳開始部位、転写開始部位もしくはプロモーター部位などの5'上流部位とハイブリダイズする。さらなる実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、3'非翻訳領域またはmRNAスプライシング部位とハイブリダイズする。
【0108】
1つの実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドまたはその組合せからなり、1つのヌクレオチドの5'末端ともう1つのヌクレオチドの3'末端がホスホジエステル結合によって互いに連結されている。これらのオリゴヌクレオチドは、従来の方法で合成され得るかまたは組換え生産され得る。
【0109】
好ましい実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは「修飾」オリゴヌクレオチドである。本明細書では、オリゴヌクレオチドは、例えばその安定性または治療効果を高めるために、その標的に結合する能力を損なわずに多種多様な方法で修飾し得る。本発明によれば、「修飾オリゴヌクレオチド」という用語は、(i)そのヌクレオチドの少なくとも2個が合成ヌクレオシド間結合(すなわちホスホジエステル結合ではないヌクレオシド間結合)によって互いに連結されている、および/または(ii)通常は核酸中で認められない化学基がオリゴヌクレオチドに共有結合で連結されている、オリゴヌクレオチドを意味する。好ましい合成ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート、アルキルホスホネート、ホスホロジチオエート、リン酸エステル、アルキルホスホノチオエート、ホスホルアミデート、カルバメート、カルボネート、リン酸トリエステル、アセトアミデート、カルボキシメチルエステルおよびペプチドである。
【0110】
「修飾オリゴヌクレオチド」という用語はまた、共有結合で修飾された塩基および/または糖を有するオリゴヌクレオチドを含む。「修飾オリゴヌクレオチド」は、例えば、3'位のヒドロキシル基および5'位のリン酸基以外の低分子量有機基に共有結合した糖残基を有するオリゴヌクレオチドを含む。修飾オリゴヌクレオチドは、例えば2'−O−アルキル化リボース残基またはリボースの代わりにアラビノースのような別の糖を含み得る。
【0111】
オリゴヌクレオチドに関して上述したすべての実施形態は、ポリヌクレオチドにも適用され得ることが了解されるべきである。
【0112】
本明細書で使用される「低分子干渉RNA」または「siRNA」とは、標的遺伝子または分解されるべきmRNAを同定するために使用される、好ましくは10ヌクレオチド長より大きい、より好ましくは15ヌクレオチド長より大きい、最も好ましくは18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30ヌクレオチド長の単離されたRNA分子を意味する。19〜25ヌクレオチドの範囲がsiRNAについての最も好ましい大きさである。
【0113】
本発明によるsiRNAは、部分的に精製されたRNA、実質的に純粋なRNA、合成RNA、または組換え生産されたRNA、ならびに1またはそれ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換および/または改変により、天然に生じるRNAとは異なる変化したRNAを含み得る。そのような変化は、siRNAの末端またはsiRNAの1もしくはそれ以上の内部ヌクレオチドなどへの、非ヌクレオチド物質の付加;siRNAをヌクレアーゼ消化に対して抵抗性にする修飾(例えば2'置換リボヌクレオチドの使用もしくは糖−リン酸骨格への修飾);またはデオキシリボヌクレオチドによるsiRNA内の1もしくはそれ以上のヌクレオチドの置換を含み得る。さらに、siRNAは、修飾オリゴヌクレオチドに関して上述したようにその安定性を高めるために、特に1またはそれ以上のホスホロチオエート結合を導入することによって修飾し得る。
【0114】
siRNAの一方の鎖または両方の鎖はまた、3'突出末端を含み得る。本明細書で使用される、「3'突出末端」は、RNA鎖の3'末端から伸長している少なくとも1つの不対ヌクレオチドを指す。従って1つの実施形態では、siRNAは、1〜約6ヌクレオチド(リボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドを含む)長、好ましくは1〜約5ヌクレオチド長、より好ましくは1〜約4ヌクレオチド長、特に好ましくは約2〜約4ヌクレオチド長の少なくとも1つの3'突出末端を含む。siRNA分子の両方の鎖が3'突出末端を含む実施形態では、突出末端の長さは同じであってもよくまたは各々の鎖について異なってもよい。最も好ましい実施形態では、3'突出末端はsiRNAの両方の鎖に存在し、2ヌクレオチド長である。例えば、本発明のsiRNAの各々の鎖は、ジデオキシチミジル酸(「TT」)またはジウリジル酸(「uu」)の3'突出末端を含み得る。
【0115】
siRNAの安定性を高めるために、3'突出末端を分解に対して安定化することもできる。1つの実施形態では、突出部は、アデノシンまたはグアノシンヌクレオチドなどのプリンヌクレオチドを含むことによって安定化される。あるいは、修飾類似体によるピリミジンヌクレオチドの置換、例えば2'−デオキシチミジンによる3'突出末端内のウリジンヌクレオチドの置換は耐容され、RNAi分解の効率に影響を及ぼさない。特に、2'−デオキシチミジン中に2'−ヒドロキシルが存在しないことは、組織培養培地中での3'突出末端のヌクレアーゼ耐性を有意に増強する。
【0116】
siRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖は、2つの相補的な一本鎖RNA分子を含み得るか、または2つの相補的な部分が塩基対合し、一本鎖の「ヘアピン」領域によって共有結合で連結されている単一分子を含み得る。すなわち、センス領域とアンチセンス領域はリンカー分子を介して共有結合で連結され得る。リンカー分子は、ポリヌクレオチドまたは非ヌクレオチドリンカーであり得る。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、後者のタイプのsiRNA分子のヘアピン領域は、「ダイサー」タンパク質(またはその等価物)によって細胞内で切断され、2つの個別の塩基対合RNA分子のsiRNAを形成すると考えられる。
【0117】
本明細書で使用される、「標的mRNA」は、下方調節のための標的であるRNA分子を指す。
【0118】
pol IIIプロモーターからのRNAの発現は、最初に転写されるヌクレオチドがプリンである場合にのみ効率的であると考えられるので、標的する部位を変化させずにpol III発現ベクターからsiRNAを発現させることができる。
【0119】
本発明によるsiRNAは、標的mRNA配列(「標的配列」)のいずれかにおいて任意の一続きの約19〜25個の連続するヌクレオチドを標的することができる。siRNAについての標的配列を選択するための技術は、例えば、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、2002年10月11日に改訂された、Tuschl T.et al.,「The siRNA User Guide」に示されている。「The siRNA User Guide」は、ワールドワイドウエブ上の、Dr.Thomas Tuschl,Laboratory of RNA Molecular Biology,Rockefeller University,New York,USAによって運営されているウエブサイトで入手可能であり、the Rockefeller Universityのウエブサイトにアクセスして、「siRNA」のキーワードで検索することによって見出される。従って、本発明のsiRNAのセンス鎖は、標的mRNA内の任意の連続する一続きの約19〜約25ヌクレオチドと実質的に同一のヌクレオチド配列を含む。
【0120】
一般に、標的mRNA上の標的配列は、好ましくは開始コドンより50〜100ヌクレオチド下流(すなわち、3'方向)から始まる、標的mRNAに対応する所与のcDNA配列から選択され得る。標的配列は、しかし、5'もしくは3'非翻訳領域、または開始コドンに近接する領域に位置し得る。
【0121】
siRNAは、当業者の公知の多くの技術を用いて入手することができる。例えば、siRNAは、化学合成できるかまたは当技術分野で公知の方法を用いて、例えばその開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、Tuschl et al.の米国特許出願公開第2002/0086356号に記載されているショウジョウバエ(Drosophila)インビトロ系を使用して組換え生産できる。
【0122】
好ましくは、siRNAは、適切に保護されたリボヌクレオシドホスホルアミダイトおよび従来のDNA/RNA合成装置を用いて化学合成される。siRNAは、2個の別々の相補的なRNA分子として、または2つの相補的な領域を有する1個のRNA分子として合成することができる。
【0123】
あるいは、siRNAもまた、任意の適切なプロモーターを使用して組換え環状または線状DNAプラスミドから発現させることができる。そのような実施形態は、本明細書でsiRNAの投与または医薬組成物へのsiRNAの組込みに言及する場合、本発明によって包含される。プラスミドから本発明のsiRNAを発現するための適切なプロモーターは、例えばU6またはH1 RNA pol IIIプロモーター配列およびサイトメガロウイルスプロモーターを含む。
【0124】
他の適切なプロモーターの選択は当技術分野の技術範囲内である。本発明の組換えプラスミドはまた、特定の組織または特定の細胞内環境におけるsiRNAの発現のための誘導的プロモーターまたは調節性プロモーターを含み得る。
【0125】
組換えプラスミドから発現されるsiRNAは、培養細胞発現系から標準的な技術によって単離することができるか、または細胞内で発現させることができる。インビボでsiRNAを細胞に送達するための組換えプラスミドの使用は以下でより詳細に論じる。siRNAは、2個の別々の相補的なRNA分子として、または2つの相補的な領域を有する1個のRNA分子として組換えプラスミドから発現させることができる。
【0126】
siRNAを発現するのに適したプラスミドの選択、siRNAを発現するための核酸配列をプラスミドに挿入する方法、および対象とする細胞に組換えプラスミドを送達する方法は、当技術分野の技術範囲内である。
【0127】
siRNAはまた、インビボで組換えウイルスベクターから細胞内で発現させることができる。組換えウイルスベクターは、siRNAをコードする配列およびsiRNA配列を発現するための任意の適切なプロモーターを含む。組換えウイルスベクターはまた、特定の組織または特定の細胞内環境におけるsiRNAの発現のための誘導的プロモーターまたは調節性プロモーターを含み得る。siRNAは、2個の別々の相補的なRNA分子として、または2つの相補的な領域を有する1個のRNA分子として組換えウイルスベクターから発現させることができる。
【0128】
「ペプチド」という用語は、オリゴペプチドおよびポリペプチドを含み、ペプチド結合によって共有結合で連結された2またはそれ以上、好ましくは3またはそれ以上、好ましくは4またはそれ以上、好ましくは6またはそれ以上、好ましくは8またはそれ以上、好ましくは10またはそれ以上、好ましくは13またはそれ以上、好ましくは16またはそれ以上、好ましくは21またはそれ以上、および好ましくは8、10、20、30、40または50まで、特に100までのアミノ酸を含む物質を指す。「タンパク質」という用語は、大きなペプチド、好ましくは100を超えるアミノ酸残基を有するペプチドを指すが、一般に「ペプチド」と「タンパク質」という用語は同義語であり、本明細書では交換可能に使用される。
【0129】
好ましくは、本発明に従って述べるタンパク質およびペプチドは単離されている。「単離されたタンパク質」または「単離されたペプチド」という用語は、タンパク質またはペプチドがその天然環境から分離されていることを意味する。単離されたタンパク質またはペプチドは、基本的に精製された状態であり得る。「基本的に精製された」という用語は、タンパク質またはペプチドが、自然界でまたはインビボで結合している他の物質を基本的に含まないことを意味する。
【0130】
そのようなタンパク質およびペプチドは、例えば抗体の作製において、および免疫学的アッセイもしくは診断アッセイにおいて、または治療薬として使用し得る。本発明に従って述べるタンパク質およびペプチドは、組織または細胞ホモジネートなどの生物学的試料から単離され得、また、多種多様な原核生物または真核生物発現系において組換え発現され得る。
【0131】
本発明のために、タンパク質もしくはペプチドまたはアミノ酸配列の「誘導体」は、アミノ酸挿入変異体、アミノ酸欠失変異体および/またはアミノ酸置換変異体を含む。
【0132】
アミノ酸挿入変異体は、アミノ末端および/またはカルボキシ末端融合、ならびに特定アミノ酸配列における1個または2個またはそれ以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列変異体の場合は、1またはそれ以上のアミノ酸残基がアミノ酸配列内の特定部位に挿入されるが、生じる産物の適切なスクリーニングにより、ランダムな挿入も可能である。
【0133】
アミノ酸欠失変異体は、配列からの1またはそれ以上のアミノ酸の除去を特徴とする。
【0134】
アミノ酸置換変異体は、配列内の少なくとも1個の残基が除去され、別の残基がその位置に挿入されていることを特徴とする。相同なタンパク質またはペプチドの間で保存されていないアミノ酸配列内の位置に修飾が存在することおよび/またはアミノ酸を類似の性質を有する他のアミノ酸で置換することが好ましい。
【0135】
「保存的置換」は、例えば、極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性および/または関与する残基の両親媒性の類似性に基づいて行われ得る。例えば:(a)非極性(疎水性)アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンを含む;(b)極性中性アミノ酸は、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンを含む;(c)正に荷電した(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リシンおよびヒスチジンを含む;ならびに(d)負に荷電した(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸およびグルタミン酸を含む。置換は、典型的には(a)〜(d)の群の中で行われ得る。加えて、グリシンとプロリンは、α−ヘリックスを破壊するそれらの能力に基づき、相互に置換され得る。一部の好ましい置換は、以下の群の中で行われ得る:(i)SとT;(ii)PとG;および(iii)A、V、LおよびI。公知の遺伝暗号、ならびに組換えおよび合成DNA技術を考慮して、当業者は、保存的アミノ酸変異体をコードするDNAを容易に構築することができる。
【0136】
好ましくは、本明細書で述べる特定のアミノ酸配列と上記特定アミノ酸配列の誘導体であるアミノ酸配列との間の類似性の程度、好ましくは相同性の程度は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、さらに一層好ましくは少なくとも90%、または最も好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%または99%である。類似性または相同性の程度は、好ましくは少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約60、少なくとも約80、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約200または250アミノ酸の領域に対して与えられる。好ましい実施形態では、類似性または相同性の程度は、参照アミノ酸配列の全長に対して与えられる。
【0137】
上述したアミノ酸変異体は、公知のペプチド合成技術を用いて、例えば固相合成(Merrifield,1964)および類似の方法によって、または組換えDNA操作などによって容易に作製し得る。置換、挿入または欠失を有するタンパク質およびペプチドを作製するためのDNA配列の操作は、例えばSambrook et al.(1989)において詳細に説明されている。
【0138】
本発明によれば、タンパク質およびペプチドの「誘導体」は、タンパク質およびペプチドの修飾形態を含む。そのような修飾は、任意の化学修飾を含み、炭水化物、脂質および/またはタンパク質もしくはペプチドなどの、タンパク質またはペプチドに関連する任意の分子の単一または複数の置換、欠失および/または付加を含む。「誘導体」という用語はまた、前記タンパク質およびペプチドのすべての機能性の化学的等価物に及ぶ。
【0139】
本発明によれば、タンパク質、ペプチドまたは核酸、例えば腫瘍関連抗原または腫瘍関連核酸の一部またはフラグメントまたは誘導体は、好ましくはそれが由来するタンパク質、ペプチドまたは核酸の機能的特性を有する。そのような機能的特性は、抗体との相互作用、他のペプチドまたはタンパク質との相互作用、核酸の選択的結合および酵素活性を含む。1つの実施形態では、タンパク質、ペプチドまたは核酸の一部またはフラグメントまたは誘導体は、それが由来するタンパク質、ペプチドまたは核酸と免疫学的に等価である。1つの実施形態では、機能的特性は免疫学的特性である。特定の特性は、MHC分子と複合体を形成し、適切な場合、好ましくは細胞傷害性細胞またはTヘルパー細胞を刺激することによって、免疫応答を生じさせる能力である。
【0140】
本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の一部またはフラグメントは、好ましくは腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の少なくとも6、特に少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30または少なくとも50の連続するアミノ酸の配列を含む。本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の一部またはフラグメントは、好ましくは腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の8まで、特に10まで、12まで、15まで、20まで、30までまたは55までの連続するアミノ酸の配列を含む。本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の一部またはフラグメントは、好ましくは、抗原またはアミノ酸配列の非膜貫通部分、特に細胞外部分に対応するまたはそれからなる、腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の部分である。本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の一部またはフラグメントは、MHC分子と共に提示され得、そのように提示された場合、細胞応答を刺激することができる、腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の部分である。
【0141】
「細胞応答」は、腫瘍関連抗原をMHCクラスIまたはクラスIIと共に提示することを特徴とする細胞に対する細胞応答を含むことが意図されている。細胞応答は、「ヘルパー」または「キラー」のいずれかとして働く、T細胞またはTリンパ球と呼ばれる細胞に関する。ヘルパーT細胞(CD4+T細胞とも称される)は、免疫応答を調節することによって中心的役割を果たし、キラー細胞(細胞傷害性T細胞、細胞溶解性T細胞、CD8+T細胞またはCTLとも称される)は、腫瘍細胞を死滅させ、より多くの腫瘍細胞の産生を阻止する。両方の免疫応答が必要であると考えられるが、癌を抑制するためにはCTL応答がより重要であると考えられる。
【0142】
「腫瘍関連抗原をMHCクラスIと共に提示することを特徴とする細胞」または「腫瘍関連抗原をMHCクラスIと共に提示する細胞」または同様の表現は、腫瘍細胞または、MHCクラスI分子に関連して、それが発現する腫瘍関連抗原もしくは、例えば腫瘍関連抗原のプロセシングによる、前記腫瘍関連抗原に由来するフラグメントを提示する抗原提示細胞などの細胞を意味する。同様に、「腫瘍関連抗原をMHCクラスIと共に提示することを特徴とする腫瘍」という用語は、腫瘍関連抗原をMHCクラスIと共に提示することを特徴とする細胞を含む腫瘍を表す。
【0143】
本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の好ましい一部またはフラグメントは、インビボでの細胞傷害性Tリンパ球の刺激に特に適するが、エクスビボ(ex vivo)での治療的養子移入のための、増殖され、刺激されたTリンパ球の生産にも適する。
【0144】
1つの態様では、本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の一部またはフラグメントは、前記腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の配列に由来するアミノ酸配列を含む。好ましくは本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の一部またはフラグメントは、本発明によって同定される腫瘍関連抗原をMHCクラスIと共に提示することを特徴とする細胞に対する細胞応答を刺激することができる、および/またはそれ自体でもしくは免疫原性担体に結合して使用された場合、本発明によって同定される腫瘍関連抗原に特異的に結合する抗体を惹起することができる。好ましくは、本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の一部またはフラグメントは、直接またはプロセシング後に、MHCクラスI分子と共に提示され得る。好ましくは、本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の一部またはフラグメントは、MHCクラスIおよび/もしくはクラスII提示ペプチドであるか、またはMHCクラスIおよび/もしくはクラスII提示ペプチドを生じるようにプロセシングされ得る。好ましくは、本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の一部またはフラグメントは、本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列のフラグメントのアミノ酸配列に実質的に対応するアミノ酸配列を含む。
【0145】
本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の一部またはフラグメントは、本発明により、それ自体でまたは付加的なアミノ酸配列と組み合わせたペプチドまたはペプチド抗原として存在し得る、すなわちそれは、ペプチドまたはペプチド抗原で構成され得る。そのようなペプチドまたはペプチド抗原は、本発明の組成物および方法において有用であり、一般に、本明細書では「腫瘍関連抗原」という用語に包含される。一般に、そのようなペプチドまたはペプチド抗原は、本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の一部またはフラグメントのアミノ酸配列に実質的に対応するアミノ酸配列を含むオリゴペプチドまたはポリペプチドに関する。好ましくは、そのようなペプチドまたはペプチド抗原は、本明細書で同定される腫瘍関連抗原をMHCクラスIと共に提示することを特徴とする腫瘍に対する細胞応答を刺激することができる、および/または本発明によって同定される腫瘍関連抗原に特異的に結合する抗体を惹起することができる。
【0146】
ペプチドまたはペプチド抗原が直接、すなわちプロセシングされずに、特に切断されずに提示される場合、それは、MHC分子、特にMHCクラスI分子に結合するのに適した長さを有し、好ましくは7〜20アミノ酸長、より好ましくは7〜12アミノ酸長、より好ましくは8〜11アミノ酸長、特に9または10アミノ酸長である。好ましくは、直接提示されるペプチドまたはペプチド抗原の配列は、本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列のアミノ酸配列に由来する、すなわちその配列は、本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列のフラグメントに実質的に対応し、好ましくは完全に同一である。ペプチドまたはペプチド抗原がプロセシング後に、特に切断後に提示される場合、プロセシングによって生成されるペプチドは、MHC分子、特にMHCクラスI分子に結合するのに適した長さを有し、好ましくは7〜20アミノ酸長、より好ましくは7〜12アミノ酸長、より好ましくは8〜11アミノ酸長、特に9または10アミノ酸長である。好ましくは、プロセシング後に提示されるペプチドの配列は、本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列のアミノ酸配列に由来する、すなわちその配列は、本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列のフラグメントに実質的に対応し、好ましくは完全に同一である。従って、本発明によるペプチドまたはペプチド抗原は、1つの実施形態では、本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列のフラグメントに実質的に対応し、好ましくは完全に同一である、7〜20アミノ酸長、より好ましくは7〜12アミノ酸長、より好ましくは8〜11アミノ酸長、特に9または10アミノ酸長の配列を含み、ペプチドまたはペプチド抗原のプロセシング後に、提示されるペプチドを形成する。しかし、ペプチドまたはペプチド抗原はまた、上記で述べた配列よりもさらに一層長い、本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列のフラグメントに実質的に対応し、好ましくは完全に同一である配列を含み得る。1つの実施形態では、ペプチドまたはペプチド抗原は、本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の配列全体を含み得る。
【0147】
TCR認識には影響を及ぼさないが、MHCへの結合の安定性を改善する残基において異なるアミノ酸配列を有するペプチドは、ペプチドまたはペプチド抗原の免疫原性を改善することができ、本明細書では「最適化ペプチド」と称され得る。これらの残基のいずれが、MHCまたはTCRのどちらかへの結合に影響を及ぼす可能性がより高いと考えられるかについての既存の知識を利用して、実質的に対応するペプチドの設計への合理的なアプローチを使用し得る。機能性である生じたペプチドは本明細書において企図される。
【0148】
1つの実施形態では、腫瘍関連抗原をコードする核酸の一部またはフラグメントは、本発明によれば、上記で定義されたように、少なくとも腫瘍関連抗原および/または上記腫瘍関連抗原の一部またはフラグメントをコードする、上記核酸の部分に関する。腫瘍関連抗原をコードする核酸の一部またはフラグメントは、好ましくはオープンリーディングフレームに対応する、核酸のその部分である。
【0149】
本発明によれば、特定の実施形態は、腫瘍関連抗原に由来する「ドミナントネガティブ」タンパク質またはペプチドを提供することを含むべきである。ドミナントネガティブタンパク質またはペプチドは、細胞機構と相互作用することにより、活性タンパク質またはペプチドを細胞機構とのその相互作用から排除するまたは活性タンパク質またはペプチドと競合し、それによって前記活性タンパク質の作用を低下させる、不活性なタンパク質またはペプチド変異体である。
【0150】
標的タンパク質に特異的に結合する特異的抗体を含む抗血清は、様々な標準的工程によって調製できる;例えば、「Monoclonal Antibodies:A Practical Approach」by Philip Shepherd,Christopher Dean ISBN 0−19−963722−9;「Antibodies:A Laboratory Manual」by Ed Harlow,David Lane,ISBN:0879693142および「Using Antibodies:A Laboratory Manual:Portable Protocol NO」by Edward Harlow,David Lane,Ed Harlow ISBN 0879695447参照。それにより、複合体膜タンパク質をそれらの天然形態で認識するアフィン(affine)および特異的抗体を作製することも可能である(Azorsa et al.,J.Immunol.Methods 229:35−48,1999;Anderson et al.,J.Immunol.143:1899−1904,1989;Gardsvoll,J.Immunol.Methods 234:107−116,2000)。これは、治療的に使用される予定の抗体の作製のために特に適切であるが、多くの診断適用にも適切である。これに関して、全長タンパク質、細胞外部分配列ならびに生理的に折りたたまれた形態で標的分子を発現する細胞で免疫することが可能である。
【0151】
モノクローナル抗体は、伝統的にハイブリドーマ技術を用いて作製される(技術的詳細については:「Monoclonal Antibodies:A Practical Approach」by Philip Shepherd,Christopher Dean ISBN 0−19−963722−9;「Antibodies:A Laboratory Manual」by Ed Harlow,David Lane ISBN:0879693142;「Using Antibodies:A Laboratory Manual:Portable Protocol NO」by Edward Harlow,David Lane,Ed Harlow ISBN:0879695447参照)。
【0152】
抗体分子の小さな部分であるパラトープだけが、抗体がそのエピトープに結合することに関与することは公知である(Clark,W.R.(1986),The Experimental Foundations of Modern Immunology,Wiley & Sons,Inc.,New York;Roitt,I.(1991),Essential Immunology,7th Edition,Blackwell Scientific Publications,Oxford参照)。pFc'およびFc領域は、例えば、補体カスケードのエフェクターであるが、抗原結合には関与しない。F(ab')2フラグメントと称される、pFc'領域が酵素的に除去されたまたはpFc'領域なしで生成された抗体は、完全抗体の両方の抗原結合部位を担持する。同様に、Fabフラグメントと称される、Fc領域が酵素的に除去されたまたは前記Fc領域なしで生成された抗体は、無傷抗体分子の一方の抗原結合部位を担持する。さらに、Fabフラグメントは、共有結合で連結された抗体の軽鎖およびFdと称される、前記抗体の重鎖の一部からなる。Fdフラグメントは抗体特異性の主要決定基であり(1つのFdフラグメントは、抗体の特異性を変化させずに10までの異なる軽鎖と結合できる)、Fdフラグメントは、単離されたとき、エピトープに結合する能力を保持する。
【0153】
抗体の抗原結合部分内に位置するのは、抗原エピトープと直接相互作用する相補性決定領域(CDR)およびパラトープの三次構造を維持するフレームワーク領域(FR)である。IgG免疫グロブリンの重鎖のFdフラグメントと軽鎖の両方が、各々の場合に3つの相補性決定領域(CDR1〜CDR3)によって分けられた4つのフレームワーク領域(FR1〜FR4)を含む。CDR、特にCDR3領域、さらに一層特定すると重鎖のCDR3領域は、抗体特異性に大きく関与する。
【0154】
哺乳動物抗体の非CDR領域は、もとの抗体のエピトープに対する特異性を保持しつつ、同じかまたは異なる特異性を有する抗体の類似領域によって置換され得ることが公知である。これは、機能的抗体を生産するために、非ヒトCDRがヒトFRおよび/またはFc/pFc'領域に共有結合で連結された「ヒト化」抗体の開発を可能にした。
【0155】
もう1つの例として、国際公開公報第WO92/04381号は、マウスFR領域の少なくとも一部がヒト起源のFR領域で置換されたヒト化マウスRSV抗体の生産と使用を述べている。抗原結合能力を有する無傷抗体のフラグメントを含む、この種の抗体は、しばしば「キメラ」抗体と称される。
【0156】
本発明によれば、「抗体」という用語はまた、抗体のF(ab')2、Fab、FvおよびFdフラグメント、Fcおよび/またはFRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖CDR3領域が相同なヒトまたは非ヒト配列で置換されているキメラ抗体、FRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖CDR3領域が相同なヒトまたは非ヒト配列で置換されているキメラF(ab')2フラグメント抗体、FRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖CDR3領域が相同なヒトまたは非ヒト配列で置換されているキメラFabフラグメント抗体、FRおよび/またはCDR1および/またはCDR2領域が相同なヒトまたは非ヒト配列で置換されているキメラFdフラグメント抗体を包含する。「抗体」という用語はまた、「一本鎖」抗体を含む。
【0157】
本発明はまた、腫瘍関連抗原に特異的に結合するタンパク質およびペプチドを含む。この種の結合物質は、例えば、単に溶液中にて固定化形態でまたはファージディスプレイライブラリーとして作製され得る縮重ペプチドライブラリーによって提供され得る。同様に、1またはそれ以上のアミノ酸を有するペプチドのコンビナトリアルライブラリーを作製することが可能である。ペプトイドおよび非ペプチド合成残基のライブラリーも作製し得る。
【0158】
抗体はまた、腫瘍関連抗原を発現する細胞および組織を提示するための特異的診断物質に連結し得る。それらはまた、治療上有用な物質にも連結し得る。
【0159】
診断物質または診断薬は、(i)検出可能なシグナルを提供する;(ii)第一もしくは第二標識によって提供される検出可能なシグナルを修飾するように第二標識と相互作用する、例えばFRET(蛍光共鳴エネルギー転移);(iii)電荷、疎水性、形状もしくは他の物理的パラメータによって運動性、例えば電気泳動移動度に影響を及ぼす;または(iv)捕捉部分、例えば親和性、抗体/抗原もしくはイオン錯体形成を提供する、ように機能する任意の標識を含む。標識として適切であるのは、蛍光標識、発光標識、発色団標識、放射性同位体標識、同位体標識、好ましくは安定な同位体標識、同重体標識、酵素標識、粒子標識、特に金属粒子標識、磁性粒子標識、ポリマー粒子標識、ビオチンなどの有機低分子、受容体のリガンドまたは細胞接着タンパク質もしくはレクチンなどの結合分子、結合物質の使用によって検出できる核酸および/またはアミノ酸残基を含む標識配列等のような構造体である。診断物質は、非限定的に、硫酸バリウム、イオセタム酸、イオパノ酸、カルシウムイポデート、ジアトリゾ酸ナトリウム、ジアトリゾ酸メグルミン、メトリザミド、チロパノ酸ナトリウム、ならびにフッ素−18および炭素−11などの陽電子放射体、ヨウ素−123、テクネチウム−99m、ヨウ素−131およびインジウム−111などのγ放射体、フッ素およびガドリニウムなどの核磁気共鳴のための核種を含む放射性診断物質を含む。
【0160】
本発明によれば、「治療上有用な物質」、「治療物質」または「治療薬」という用語は、治療効果を及ぼし得る任意の分子を意味する。本発明によれば、治療上有用な物質は、好ましくは1またはそれ以上の腫瘍関連抗原を発現する細胞へと選択的に誘導され、抗癌剤、放射性ヨウ素標識化合物などの放射性化合物、毒素、細胞増殖抑制性または細胞溶解性薬剤等を含む。抗癌剤は、例えば、アミノグルテチミド、アザチオプリン、硫酸ブレオマイシン、ブスルファン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シクロスポリン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、タキソール、エトポシド、フルオロウラシル、インターフェロンα、ロムスチン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトタン、塩酸プロカルバジン、チオグアニン、硫酸ビンブラスチンおよび硫酸ビンクリスチンを含む。他の抗癌剤は、例えば、Goodman and Gilman,「The Pharmacological Basis of Therapeutics」,8th Edition,1990,McGraw−Hill,Inc.、特にChapter 52(Antineoplastic Agents(Paul Calabresi and Bruce A.Chabner)に記載されている。毒素は、アメリカヤマゴボウ(pokeweed)抗ウイルスタンパク質などのタンパク質、コレラ毒素、百日咳毒素、リシン、ゲロニン、アブリン、ジフテリア外毒素またはシュードモナス(Pseudomonas)外毒素であり得る。毒素残基はまた、コバルト−60などの高エネルギーを放出する放射性核種であり得る。
【0161】
「主要組織適合遺伝子複合体」または「MHC」という用語は、すべての脊椎動物に存在する遺伝子の複合体に関する。MHCタンパク質または分子は、ペプチドに結合して、T細胞受容体(TCR)による認識のためにそれらを提示することにより、正常な免疫反応におけるリンパ球と抗原提示細胞の間のシグナル伝達に関与する。MHC分子は、細胞内プロセシング画分内でペプチドに結合し、これらのペプチドをT細胞による認識のために抗原提示細胞の表面に提示する。HLAとも称されるヒトMHC領域は、第6番染色体上に位置し、クラスIおよびクラスII領域を含む。本発明のすべての態様の1つの好ましい実施形態では、MHC分子はHLA分子である。
【0162】
本明細書で使用される「低減する」または「阻害する」は、参照試料(例えばsiRNAで処理されていない試料)と比較してレベル、例えばタンパク質またはmRNAのレベルの好ましくは20%またはそれ以上、より好ましくは50%またはそれ以上、最も好ましくは75%またはそれ以上の全体的低下を生じさせる能力を意味する。RNAまたはタンパク質発現のこの低減または阻害は、標的mRNAの切断または分解を介して起こり得る。タンパク質発現または核酸発現に関するアッセイは当技術分野において公知であり、例えば、タンパク質発現についてはELISA、ウエスタンブロット分析、RNAについてはノーザンブロット法またはRNアーゼプロテクションアッセイを含む。
【0163】
「患者」という用語は、本発明によれば、ヒト、非ヒト霊長動物または別の動物、特にウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコなどの哺乳動物またはマウスおよびラットなどのげっ歯動物を意味する。特に好ましい実施形態では、患者はヒトである。
【0164】
本発明によれば、「増大した」または「増大した量」という用語は、好ましくは少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%または少なくとも100%の増加を指す。物質の量はまた、試験試料では検出可能であるが参照試料中には存在しないまたは検出不能である場合も、参照試料と比較して生物学的試料などの試験試料において増大している。
【0165】
本発明によれば、「疾患」という用語は、腫瘍関連核酸および/または腫瘍関連抗原が発現されるまたは異常発現される何らかの病的状態を指す。本発明によれば、「腫瘍」または「腫瘍性疾患」という用語は、細胞(新生細胞または腫瘍細胞と呼ばれる)の異常増殖によって形成される腫脹または病変を指す。「腫瘍細胞」とは、急速で制御されない細胞増殖によって成長し、新たな増殖を開始させた刺激が停止した後も成長し続ける異常細胞を意味する。腫瘍は、構造機構および正常組織との機能的協調の部分的または完全な欠如を示し、通常、良性、前悪性または悪性であり得る明確な組織塊を形成する。好ましくは、本発明による腫瘍性疾患は、癌疾患、すなわち悪性疾患であり、腫瘍細胞は癌細胞である。好ましくは、腫瘍性疾患は、本発明によって同定される腫瘍関連核酸および/または腫瘍関連抗原が発現されるまたは異常発現される細胞を特徴とし、腫瘍細胞または循環もしくは転移性腫瘍細胞は、本発明によって同定される腫瘍関連核酸および/または腫瘍関連抗原の発現または異常発現する。好ましくは、腫瘍性疾患、腫瘍細胞または循環もしくは転移性腫瘍細胞は、本発明によって同定される腫瘍関連抗原をMHCクラスIと共に提示することを特徴とする。
【0166】
「異常発現」は、本発明によれば、健常個体における状態と比較して、発現が変化している、好ましくは増大していることを意味する。発現の増大は、少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%または少なくとも100%の増加を指す。1つの実施形態では、発現は疾患組織においてのみ認められ、健常組織における発現は、抑制されているかまたは基本的に抑制されている。そのような疾患の一例は癌であり、本発明による「癌」という用語は、白血病、精上皮腫、黒色腫、奇形腫、リンパ腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、直腸癌、子宮内膜癌、腎癌、副腎癌、甲状腺癌、血液癌、皮膚癌、脳の癌、子宮頸癌、腸癌(intestinal cancer)、肝癌、結腸癌、胃癌、腸癌(intestine cancer)、頭頸部癌、消化器癌、リンパ節癌、食道癌、結腸直腸癌、膵癌、耳鼻咽喉(ENT)癌、乳癌、前立腺癌、子宮の癌、卵巣癌および肺癌ならびにそれらの転移を含む。その例は、肺癌腫、乳癌腫、前立腺癌腫、結腸癌腫、腎細胞癌腫、子宮頸癌腫、または上述した癌型または腫瘍の転移である。本発明による癌という用語はまた、癌の転移を包含する。
【0167】
「転移」とは、そのもとの部位から身体の別の部分への癌細胞の広がりを意味する。転移の形成は非常に複雑な過程であり、原発腫瘍からの悪性細胞の分離、細胞外マトリックスの侵襲、体腔および脈管に入るための内皮基底膜の貫入、および次に、血液によって輸送された後、標的器官の浸潤に依存する。最後に、標的部位における新たな腫瘍の成長は血管新生に依存する。腫瘍転移は、しばしば原発腫瘍が除去された後でも起こり、これは、腫瘍細胞または成分が残存し、転移能を発現し得るからである。1つの実施形態では、本発明による「転移」という用語は、原発腫瘍および所属リンパ節系から離れた転移に関連する「遠隔転移」に関する。
【0168】
本発明によれば、生物学的試料は、体液を含む組織試料および/または細胞試料であり得、パンチ生検を含む組織生検、および血液、気管支吸引液、痰、尿、糞便または他の体液を採取することなどによる、従来の方法で入手し得る。1つの実施形態では、生物学的試料は、本明細書で同定される標的核酸または標的抗原の発現と癌疾患の間の結びつきが本明細書で明らかにされる組織から得る。1つの実施形態では、生物学的試料は、正常組織と比較して、癌組織における本明細書で同定される標的核酸または標的抗原の過剰発現が本明細書で明らかにされる組織から得る。この実施形態では、本明細書で開示される診断方法は、前記組織の癌を診断することを目的とする。例えば肺癌の場合は、試料は、肺組織を含む試料であり得る。本発明によれば、「生物学的試料」という用語はまた、生物学的試料の画分または単離物、例えば核酸およびペプチド/タンパク質単離物のような加工された生物学的試料を包含する。好ましくは、本発明による「生物学的試料」という用語は、胎盤組織に由来する試料または癌に罹患していない場合でも本明細書で同定される標的核酸または標的抗原の発現を示す組織に由来する試料を含まない。
【0169】
本発明の一部の態様は、以下のように要約できる能動または受動免疫治療アプローチを用いて、本発明によって同定される腫瘍関連核酸および腫瘍関連抗原を利用した腫瘍性疾患、特に癌疾患の免疫療法を想定する:
【0170】
免疫療法
I.能動免疫療法(「癌ワクチン」)
以下のものでの免疫する:
i)抗原またはペプチド(天然または修飾)
ii)抗原またはペプチドをコードする核酸
iii)抗原またはペプチドをコードする組換え細胞
iv)抗原またはペプチドをコードする組換えウイルス
v)抗原もしくはペプチド(天然もしくは修飾)でパルスした、または抗原もしくはペプチドをコードする核酸でトランスフェクトした抗原提示細胞
【0171】
II.受動免疫療法(「養子免疫療法」)
vi)抗原を認識する抗体またはT細胞受容体の移入
vii)抗原(バルクまたはクローン化集団)に対してインビトロで感作された細胞の移入
viii)抗原を認識し、好ましくは腫瘍特異的クラスI MHC提示ペプチドに対して応答性であるT細胞受容体をコードする核酸で形質導入したエフェクター細胞(または幹細胞)の移入
【0172】
樹状細胞(DC)などの抗原提示細胞(APC)は、MHCクラスI提示ペプチド抗原もしくは腫瘍溶解産物のいずれかを負荷する、または腫瘍関連抗原、特にペプチド抗原をコードするアデノウイルスを用いた形質導入などによって核酸を導入することができる。
【0173】
好ましい実施形態では、本発明の抗腫瘍ワクチンは、ペプチド抗原を負荷したAPCを含有する。これに関して、プロトコールは、人為的にペプチド抗原を提示するように操作されたDCのインビトロ培養/分化に依存し得る。遺伝的に操作されたDCの生産は、腫瘍関連抗原またはペプチド抗原をコードする核酸をDCに導入することを含み得る。mRNAのDCへの導入は、強力な抗腫瘍免疫を刺激する有望な抗原負荷技術である。
【0174】
受動抗腫瘍免疫療法のために使用される場合、抗体は、標的化細胞毒性、すなわち腫瘍細胞の死滅を提供するために治療エフェクター部分、例えば放射性標識、細胞毒、治療酵素、アポトーシスを誘導する物質等に結合されてもよくまたは結合されなくてもよい。本発明の1つの実施形態では、そのような抗体またはフラグメントを、標識または非標識形態で、単独でまたは他の治療薬、例えば癌治療に適したシスプラチン、メトトレキサート、アドリアマイシン等のような化学療法剤と共に投与する。
【0175】
好ましくは、本明細書で述べる抗体は、補体依存性細胞傷害(CDC)媒介性溶解、抗体依存性細胞傷害(ADCC)媒介性溶解、アポトーシス、同型接着、および/または食作用を誘導することによって、好ましくはCDC媒介性溶解および/またはADCC媒介性溶解を誘導することによって細胞の死滅を媒介する。本明細書で述べる抗体は、好ましくは免疫系の成分と、好ましくはADCCまたはCDCを介して相互作用する。しかし、本発明の抗体はまた、単に細胞表面の腫瘍関連抗原に結合することによって、従って、例えば細胞の増殖をブロックすることによっても作用を及ぼし得る。
【0176】
ADCCは、好ましくは標的細胞が抗体によってマークされることを必要とする、本明細書で述べるエフェクター細胞、特にリンパ球の細胞死滅能力を表す。
【0177】
ADCCは、好ましくは、抗体が腫瘍細胞上の抗原に結合し、抗体Fcドメインが免疫エフェクター細胞の表面のFc受容体(FcR)に係合する場合に起こる。Fc受容体のいくつかのファミリーが同定されており、特定の細胞集団は、定められたFc受容体を特徴的に発現する。ADCCは、様々な程度の即時腫瘍破壊を直接誘導する機構とみなすことができ、前記機構はまた、抗原提示および腫瘍に対するT細胞応答の誘導も導く。好ましくは、ADCCのインビボでの誘導は、抗腫瘍T細胞応答および宿主由来の抗体応答を導く。
【0178】
CDCは、抗体によって指令され得るもう1つの細胞死滅方法である。IgMは補体活性化のために最も有効なアイソタイプである。IgG1およびIgG3も、古典的補体活性化経路を介してCDCを指令するうえで非常に有効である。好ましくは、このカスケードにおいて、抗原−抗体複合体の形成は、IgG分子などの関与抗体分子のCH2ドメイン上のごく近接する多数のC1q結合部位の暴露を生じさせる(C1qは補体C1の3つのサブ成分の1つである)。好ましくは、これらの暴露されたC1q結合部位は、それまでの低親和性C1q−IgG相互作用を高いアビディティーの相互作用へと変換し、それが、一連の他の補体タンパク質を含む事象のカスケードを開始させ、エフェクター細胞化学走性/活性化物質C3aおよびC5aのタンパク質分解性放出をもたらす。好ましくは、補体カスケードは、細胞内および細胞外への水と溶質の自由な通過を促進し、アポトーシスを導き得る細胞膜の孔を作り出す、膜傷害性複合体の形成で終了する。
【0179】
腫瘍関連抗原を認識できる免疫細胞(場合により遺伝的に修飾された)での受動免疫療法は、選択された患者において癌の退縮を媒介するのに有効である。これらの技術は、腫瘍反応性T細胞のクローン化またはポリクローナル培養物のエクスビボでの再活性化と増殖に基づき得る。培養後、T細胞をIL−2と共に患者に再注入し得る。ヒトリンパ球を、抗原提示細胞上に提示される腫瘍ペプチド抗原に対してインビトロで感作するインビトロ技術が開発されている。インビトロでの反復刺激によって、ヒト腫瘍関連抗原を認識する大きな能力を備えた細胞を導出することができる。これらの細胞の養子移入は、従来通りに増殖された細胞よりも、インビボで腫瘍退縮を媒介するのにより有効であり得る。
【0180】
本発明によれば、「免疫反応性細胞」という用語は、適切な刺激によって免疫細胞(B細胞、Tヘルパー細胞または細胞溶解性T細胞など)へと成熟することができる細胞を意味する。免疫反応性細胞は、CD34+造血幹細胞、未熟および成熟T細胞ならびに未熟および成熟B細胞を含む。腫瘍関連抗原を認識する細胞溶解性細胞またはTヘルパー細胞の生産を所望する場合は、免疫反応性細胞を、細胞溶解性T細胞およびTヘルパー細胞の産生、分化および/または選択を促進する条件下で腫瘍関連抗原を発現する細胞と接触させる。T細胞前駆体の細胞溶解性T細胞への分化は、抗原に暴露された場合、免疫系のクローン選択に類似する。
【0181】
「T細胞」および「Tリンパ球」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、Tヘルパー細胞および細胞溶解性T細胞を含む細胞傷害性T細胞を包含する。
【0182】
一部の治療方法は、1またはそれ以上の腫瘍関連抗原を提示する癌細胞などの抗原提示細胞の溶解を生じさせる、患者の免疫系の反応に基づく。これに関連して、例えば腫瘍関連抗原とMHC分子との複合体に特異的な自家細胞傷害性Tリンパ球を、細胞異常を有する患者に投与する。インビトロでのそのような細胞傷害性Tリンパ球の生産は公知である。T細胞を分化させる方法の一例は、国際公開広報第WO−A−9633265号に見出される。一般に、血液細胞などの細胞を含む試料を患者から採取し、その細胞を、前記複合体を提示し、細胞傷害性Tリンパ球(例えば樹状細胞)の増殖を生じさせることができる細胞と接触させる。標的細胞は、COS細胞などの遺伝子導入された細胞であり得る。これらの形質転換体は、所望複合体をそれらの表面に提示し、細胞傷害性Tリンパ球と接触させた場合、後者の増殖を刺激する。次に、クローン増殖した自家細胞傷害性Tリンパ球を患者に投与する。
【0183】
抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球を選択するもう1つの方法では、細胞傷害性Tリンパ球の特異的クローンを得るためにMHCクラスI分子/ペプチド複合体の蛍光性四量体を使用する(Altman et al.,Science 274:94−96,1996;Dunbar et al.,Curr.Biol.8:413−416,1998)。
【0184】
本発明はまた、養子移入と称される治療方法を含み(Greenberg,J.Immunol.136(5):1917,1986;Riddel et al.,Science 257:238,1992;Lynch et al.,Eur.J.Immunol.21:1403−1410,1991;Kast et al.,Cell 59:603−614,1989)、この方法では、所望複合体を提示する細胞(例えば樹状細胞)を、治療される患者の細胞傷害性Tリンパ球と組み合わせて、特異的細胞傷害性Tリンパ球の増殖を生じさせる。増殖した細胞傷害性Tリンパ球を、次に、特異的複合体を提示する特定の異常細胞によって特徴づけられる細胞異常を有する患者に投与する。細胞傷害性Tリンパ球は、その後異常細胞を溶解し、それによって所望治療効果を達成する。
【0185】
さらに、所望複合体を提示する細胞(例えば樹状細胞)を、高い親和性で特異的細胞傷害性Tリンパ球の増殖を生じさせ得る健常個体または別の種(例えばマウス)の細胞傷害性Tリンパ球と組み合わせ得る。これらの増殖した特異的Tリンパ球の高親和性T細胞受容体をクローニングし、場合により種々の程度にヒト化して、次に、このようにして得られたT細胞受容体を、例えばレトロウイルスベクターを使用して、患者のT細胞に遺伝子導入することを介して形質導入し得る。その後、これらの遺伝的に変化したTリンパ球を使用して養子移入を実施し得る(Stanislawski et al.,Nat Immunol.2:962−70,2001;Kessels et al.,Nat Immunol.2:957−61,2001)。
【0186】
養子導入は、本発明により適用できる唯一の治療形態ではない。細胞傷害性Tリンパ球はまた、それ自体公知の方法でインビボにて作製し得る。1つの方法は、複合体を発現する非増殖性細胞を使用する。本明細書で使用する細胞は、照射された腫瘍細胞または複合体の提示に必要な一方もしくは両方の遺伝子(すなわち抗原性ペプチドと提示MHC分子)を導入された細胞のような、通常は複合体を発現する細胞である。もう1つの好ましい形態は、例えばリポソーム移入または電気穿孔法によって細胞に導入し得る、組換えRNAの形態での腫瘍関連抗原の導入である。生じる細胞は対象複合体を提示し、自家細胞傷害性Tリンパ球によって認識されて、その後増殖する。
【0187】
抗原提示細胞への組込みをインビボで可能にするために、腫瘍関連抗原またはそのフラグメントを補助薬と組み合わせることによって同様の作用を達成することができる。腫瘍関連抗原またはそのフラグメントは、タンパク質として、DNA(例えばベクター内の)として、またはRNAとして示され得る。腫瘍関連抗原は、MHC分子に対するペプチドパートナーを生じるようにプロセシングされるが、そのフラグメントはさらなるプロセシングを必要とせずに提示され得る。後者は特に、これらがMHC分子に結合できる場合に該当する。有効な免疫応答のために必要とされるTヘルパー細胞応答も生じさせ得る形態でもあるため、完全な抗原が樹状細胞によってインビボでプロセシングされる投与形態が好ましい(Ossendorp et al.,Immunol Lett.74:75−9,2000;Ossendorp et al.,J.Exp.Med.187:693−702,1998)。一般に、例えば皮内注射によって有効量の腫瘍関連抗原を患者に投与することが可能である。しかし、注射はまた、リンパ節内にも実施し得る(Maloy et al.,Proc Natl Acad Sci USA 98:3299−303,2001)。
【0188】
本発明に従って述べる医薬組成物および治療方法はまた、本明細書で述べる疾患を治療的に処置する、または予防するための免疫またはワクチン接種のためにも使用し得る。本発明によれば、「免疫」または「ワクチン接種」という用語は、好ましくは抗原に対する免疫応答の増大または活性化に関する。腫瘍関連抗原またはそれをコードする核酸を使用することによる癌への免疫効果を試験するために動物モデルを用いることが可能である。例えば、ヒト癌細胞をマウスに導入して腫瘍を生じさせ、腫瘍関連抗原をコードする1またはそれ以上の核酸を投与し得る。癌細胞への効果(例えば腫瘍径の縮小)を、核酸による免疫の有効性についての尺度として測定し得る。
【0189】
免疫またはワクチン接種のための組成物の一部として、好ましくは1またはそれ以上の腫瘍関連抗原またはその刺激性フラグメントを、免疫応答を誘導するためまたは免疫応答を増大させるために1またはそれ以上の補助薬と共に投与する。補助薬は、抗原に組み込まれるまたは抗原と共に投与される、免疫応答を増強する物質である。補助薬は、抗原貯蔵所を提供し(細胞外にまたはマクロファージ中に)、マクロファージを活性化するおよび/または特定リンパ球を刺激することによって免疫応答を増強し得る。補助薬は公知であり、非限定的に、モノホスホリル脂質A(MPL,SmithKline Beecham)、QS21(SmithKline Beecham)、DQS21(SmithKline Beecham;国際公開広報第WO96/33739号)、QS7、QS17、QS18およびQS−L1などのサポニン(So et al.,Mol.Cells 7:178−186,1997)、不完全フロイントアジュバント、完全フロイントアジュバント、ビタミンE、モンタニド、ミョウバン、CpGオリゴヌクレオチド(Kreig et al.,Nature 374:546−9,1995参照)ならびにスクアランおよび/またはトコフェロールなどの生分解性油から調製される様々な油中水型エマルションを含む。好ましくは、ペプチドをDQS21/MPLとの混合物中で投与する。DQS21対MPLの比率は、典型的には約1:10〜10:1、好ましくは約1:5〜5:1、特に約1:1である。ヒトへの投与に関しては、ワクチン製剤は、典型的には約1μg〜約100μgの範囲内のDQS21およびMPLを含有する。
【0190】
患者の免疫応答を刺激する他の物質も投与し得る。例えば、リンパ球に対するそれらの調節特性の故に、サイトカインをワクチン接種において使用することが可能である。そのようなサイトカインは、例えば、ワクチンの防御作用を高めることが示されたインターロイキン12(IL−12)(Science 268:1432−1434,1995参照)、GM−CSFおよびIL−18を含む。
【0191】
免疫応答を増強し、それ故ワクチン接種において使用し得る数多くの化合物が存在する。前記化合物は、B7−1およびB7−2(それぞれCD80およびCD86)のようなタンパク質または核酸の形態で提供される共刺激性分子を含む。
【0192】
本発明はまた、核酸、タンパク質またはペプチドの投与を提供する。タンパク質およびペプチドは、それ自体公知の方法で投与し得る。1つの実施形態では、核酸をエクスビボ法によって、すなわち患者から細胞を取り出し、腫瘍関連抗原を組み込むために上記細胞を遺伝的に修飾して、改変された細胞を患者に再導入することによって投与する。これは一般に、遺伝子の機能的コピーをインビトロで患者の細胞に導入することおよび遺伝的に改変された細胞を患者に再導入することを含む。遺伝子の機能的コピーは、遺伝的に改変された細胞において該遺伝子が発現されることを可能にする調節エレメントの機能的制御下にある。形質転換および形質導入法は当業者に公知である。本発明はまた、ウイルスおよび標的制御リポソームなどのベクターを使用することによってインビボで核酸を投与することを提供する。本発明により、核酸の投与または医薬組成物への組込みに言及する場合、これは、核酸がそのようなベクター中に存在する実施形態を包含する。
【0193】
好ましい実施形態では、腫瘍関連抗原をコードする核酸を投与するためのウイルスまたはウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルスおよび弱毒化ポックスウイルスを含むポックスウイルス、セムリキ森林ウイルス、レトロウイルス、シンドビスウイルスおよびTyウイルス様粒子からなる群より選択される。アデノウイルスおよびレトロウイルスが特に好ましい。レトロウイルスは、典型的には複製欠損型である(すなわち感染性粒子を生成することができない)。
【0194】
インビトロまたはインビボで核酸を細胞に導入する方法は、核酸のリン酸カルシウム沈殿物の導入、DEAEと結合した核酸の導入、対象核酸を担持する上記ウイルスによる導入または感染、リポソームを介した導入等を含む。特定の実施形態では、核酸に特定の細胞を指向させることが好ましい。そのような実施形態では、核酸を細胞に投与するために使用される担体(例えばレトロウイルスまたはリポソーム)は、結合した標的制御分子を有し得る。例えば、標的細胞上の表面膜タンパク質に特異的な抗体または標的細胞上の受容体に対するリガンドなどの分子を核酸担体に組み込み得るまたは結合し得る。好ましい抗体は、腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体を含む。リポソームを介した核酸の投与を所望する場合は、標的の制御および/または取込みを可能にするために、エンドサイトーシスに関連する表面膜タンパク質に結合するタンパク質をリポソーム製剤に組み込み得る。そのようなタンパク質は、特定の細胞型に特異的なキャプシドタンパク質またはそのフラグメント、インターナライズされるタンパク質に対する抗体、細胞内部位を指向するタンパク質等を含む。
【0195】
本発明の治療組成物は、医薬的に適合性の製剤中で投与し得る。そのような製剤は、通常、医薬的に適合性の濃度の塩、緩衝物質、防腐剤、担体、補助薬などの補足的免疫増強物質、例えばCpGオリゴヌクレオチド、サイトカイン、ケモカイン、サポニン、GM−CSFおよび/またはRNAならびに、適切な場合は、他の治療的に活性な化合物を含有し得る。
【0196】
本発明の治療的に活性な化合物は、注射または注入を含む任意の従来経路によって投与し得る。投与は、例えば経口的、静脈内、腹腔内、筋肉内経路、皮下的または経皮的に実施し得る。好ましくは、抗体は、肺エアロゾルとして治療的に投与される。アンチセンス核酸は、好ましくは徐放静脈内投与によって投与される。
【0197】
本発明の組成物は有効量で投与される。「有効量」は、単独でまたはさらなる投与物と共に所望反応または所望効果を達成する量を指す。1またはそれ以上の腫瘍関連抗原の発現を特徴とする特定疾患または特定状態の治療の場合、所望反応は、好ましくは疾患の経過の阻止に関する。これは、疾患の進行を緩慢にすること、特に疾患の進行を妨げるまたは逆転させることを含む。疾患または状態の治療における所望反応はまた、前記疾患または前記状態の発症の遅延または発症の防止であり得る。本発明によれば、癌の診断または治療はまた、既に形成されたまたは今後形成される癌転移の診断または治療を含む。本発明によれば、「治療」という用語は、治療的処置および予防的処置、すなわち防止を含む。
【0198】
本発明の組成物の有効量は、治療される状態、疾患の重症度、患者の年齢、生理的状態、大きさおよび体重を含む患者の個体別パラメータ、治療の期間、付随する治療の種類(存在する場合)、特定投与経路および同様の因子に依存する。
【0199】
本発明の医薬組成物は、好ましくは無菌であり、所望反応または所望効果を生じさせるための治療的に活性な物質の有効量を含有する。
【0200】
本発明の組成物の投与される用量は、投与の種類、患者の状態、所望投与期間等のような様々なパラメータに依存し得る。患者における反応が初期用量で不十分である場合は、より高用量(または異なる、より限局された投与経路によって達成される効果的により高い用量)を使用し得る。
【0201】
一般に、1ng〜1mg、好ましくは10ng〜100μgの腫瘍関連抗原の用量が、治療のためまたは免疫応答を生じさせるもしくは増大させるために製剤され、投与される。腫瘍関連抗原をコードする核酸(DNAおよびRNA)の投与を所望する場合は、1ng〜0.1mgの用量が製剤され、投与される。
【0202】
本発明の医薬組成物は、一般に医薬的に適合性の量でおよび医薬的に適合性の組成物中で投与される。「医薬的に適合性」という用語は、医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しない非毒性物質を指す。この種の製剤は、通常、塩、緩衝物質、防腐剤、担体および、適切な場合は、他の治療的に活性な化合物を含有し得る。薬剤中で使用される場合、塩は医薬的に適合性であるべきである。しかし、医薬的に適合性ではない塩も、医薬的に適合性の塩を調製するために使用されてもよく、本発明に包含される。この種の薬理学的および医薬的に適合性の塩は、非限定的に、以下の酸から調製されるものを含む:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸等。医薬的に適合性の塩はまた、ナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩などの、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩としても調製され得る。
【0203】
本発明の医薬組成物は、医薬的に適合性の担体を含有し得る。本発明によれば、「医薬的に適合性の担体」という用語は、ヒトへの投与に適する、1またはそれ以上の適合性固体または液体充填剤、希釈剤または被包物質を指す。「担体」という用語は、適用を容易にするために活性成分が組み合わされる、天然または合成の有機または無機成分を指す。本発明の医薬組成物の成分は、通常、所望医薬効果を実質的に損なう相互作用が生じない成分である。
【0204】
本発明の医薬組成物は、塩中の酢酸、塩中のクエン酸、塩中のホウ酸および塩中のリン酸などの適切な緩衝物質を含有し得る。
【0205】
医薬組成物はまた、適切な場合は、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベンおよびチメロサールなどの適切な防腐剤を含有し得る。
【0206】
医薬組成物は、通常は均一投与形態で提供され、それ自体公知の方法で調製され得る。本発明の医薬組成物は、例えばカプセル、錠剤、ロゼンジ、溶液、懸濁液、シロップ、エリキシルの形態、またはエマルションの形態であり得る。
【0207】
非経口投与に適する組成物は、通常、好ましくは受容者の血液と等張である、活性化合物の滅菌水性または非水性製剤を含む。適合性担体および溶媒の例は、リンガー液および等張塩化ナトリウム溶液である。加えて、通常は滅菌固定油が溶液または懸濁液の媒質として使用される。
【0208】
本発明を以下の図面および実施例によって詳細に説明するが、それらは例示のためにのみ使用されるものであり、限定を意図されない。図面の説明および実施例により、同様に本発明に包含されるさらなる実施形態が当業者に利用可能である。
【実施例】
【0209】
本明細書で言及する技術および方法は、それ自体公知の方法で実施され、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.に記載されている。キットおよび試薬の使用を含むすべての方法は、特に指示されない限り製造者の情報に従って実施される。
【0210】
実施例1;腫瘍において異常に活性化された胎盤特異的遺伝子のスクリーニング
【0211】
組織および細胞株
組織は、通常の診断または治療手順の間のヒト余剰材料として入手し、使用時まで−80℃で保存した。細胞株は、American Type Culture Collection(ATCC)およびGerman Resource Collection of Microorganisms and Cell Culture(DSMZ)より購入した。
【0212】
RNAの単離およびマイクロアレイハイブリダイゼーション
RNeasy Mini Kitプロトコール(Qiagen)を使用して全RNAを単離した。紫外分光法を用いて単離したRNAの定量を実施し、A260/A280比およびAgilentバイオアナライザー(Agilent Technologies)の両方によって品質を測定した。全RNA 5μgを、5pmol/μl−1のT7−オリゴ(dT)24プライマーでのcDNA合成のために使用し、RT−PCRのためのSuperscript First−Strand Synthesis−System(Invitrogen)を用いて43℃で90分間実施した。2番目の鎖の合成は完全なcDNAを用いて実施した。cDNA溶液を16℃で2時間インキュベートし、次いで6U T4−DNAポリメラーゼと共に16℃で20分間インキュベートして、0.5M EDTA 10μlを用いて反応を停止させた。GeneChip Sample Cleanup Module(Affymetrix)を使用して二本鎖cDNAを精製した後、製造者の指示に従ってビオチン−11−CTPおよびビオチン−16−UTP(Enzo Diagnostics)を添加したインビトロ転写反応により、cDNA試料から標識cRNAを作製した。cRNAをA260によって定量し、labchipバイオアナライザー(Agilent)を用いて品質を測定した。高品質を有するcRNA標本だけをさらなる分析のために選択した。断片化したcRNA(15μg)を使用して、0.1mg/ml−1ニシン精子DNAおよび0.5mg/ml−1アセチル化ウシ血清アルブミンを含むハイブリダイゼーションカクテル(100mM MES、1M NaCl、20mM EDTA、0.01%Tween−20)300μlを調製した。アレイ間のハイブリダイゼーション効率を比較し、測定した転写レベルの定量を標準化するために対照cRNAを使用し、Eukaryotic Hybridization Controlキット'(Affymetrix,Santa Clara,CA,USA)の成分として含めた。カクテルを95℃で5分間加熱し、45℃で5分間平衡させて、遠心分離によって清澄化した。カクテルをHG U133 Plus 2.0アレイ(Affymetrix)に45℃で16時間ハイブリダイズした。アレイを洗浄し、製造者の指示に従ってGeneChip fluidics station protocol EukGE−WS2(Affymetrix)を使用してストレプトアビジン結合フッ素で染色した。アレイをアルゴンイオンレーザー共焦点スキャナ−(Hewlett−Packard,Santa Clara,CA)で走査し、570nmで検出した。Microarray Suiteバージョン5.0(Affymetrix)を用いてデータを抽出し、遺伝子当たり2,500の平均強度を達成するために線形にスケールした。テキストファイルをエクスポートして、各々の問合せオリゴヌクレオチドの完全にマッチするプローブ細胞またはミスマッチプローブ細胞の強度を決定した。加えて、mRNAの5'末端と3'末端の比率を、24のヒトハウスキーピング/メンテナンス遺伝子(Affymetrix)を含むマイクロアレイ試験チップ(Test3 Array)を使用して6つの無作為に選択した標本(各群から2つ)について分析し、RNAの分解を認めなかった。
【0213】
バイオインフォマティクス解析
GeneChip(登録商標)Operating Software 1.4(Affymetrix)およびArrayAssistソフトウエアパッケージ5.2(Stratagene)を統計解析のために使用した。
【0214】
結果
以下の表1に示す18の正常組織および以下の表2に示す種々の実体の30の腫瘍細胞株からの試料のスクリーニングは、検討した正常組織の中では胎盤においておよび腫瘍細胞株において発現される、本明細書で述べる配列を生じさせた。
【0215】
【表1】
【0216】
【表2】
【0217】
実施例2;同定された腫瘍関連マーカーの確認
【0218】
1.RNA発現の検査
同定された腫瘍関連マーカーを、最初に、様々な組織からまたは組織特異的細胞株から得られるRNAを用いて確認する。腫瘍組織と比較した健常組織の示差的発現パターンはその後の治療適用のために決定的に重要であるので、標的遺伝子を、好ましくはこれらの組織試料を用いて特徴づける。
【0219】
全RNAは、分子生物学の標準的な方法によって天然組織試料からまたは腫瘍細胞株から単離される。上記単離は、例えば、製造者の指示に従ってRNeasy Maxiキット(Qiagen、カタログ番号75162)を用いて実施し得る。この単離方法は、カオトロピック試薬、イソチオシアン酸グアニジンの使用に基づいている。あるいは、酸性フェノールを単離のために使用することができる(Chomczynski & Sacchi,Anal.Biochem.162:156−159,1987)。イソチオシアン酸グアニジンによって組織を処理した後、RNAを酸性フェノールで抽出し、その後イソプロパノールで沈殿させて、DEPC処理水中に取る。
【0220】
このようにして単離したRNA2〜4μgを、その後、例えば製造者のプロトコールに従ってSuperscript II(Invitrogen)を使用して、cDNAに転写する。該当する製造者の標準プロトコールに従ってランダムヘキサマー(例えばRoche Diagnostics)を使用してcDNA合成を開始させる。品質管理のために、低い程度にのみ発現されるp53遺伝子に特異的なプライマーを使用して、cDNAを30サイクルにわたって増幅する。p53陽性のcDNA試料だけをその後の反応工程のために使用する。
【0221】
様々な正常および腫瘍組織からならびに腫瘍細胞株から単離したcDNAアーカイブに基いてPCRまたは定量的PCR(qPCR)を用いて発現解析を実施することにより、標的を詳細に分析する。このために、上記反応混合物のcDNA0.5μlを、特定の製造者のプロトコールに従ってDNAポリメラーゼ(例えば1UのHotStarTaq DNAポリメラーゼ、Qiagen)によって増幅する(反応混合物の総容量:25〜50μl)。上記ポリメラーゼの他に、増幅混合物は、0.3mM dNTP、反応緩衝液(DNAポリメラーゼの製造者に従って、最終濃度1×)、および各々0.3mMの遺伝子特異的「センス」および「アンチセンス」プライマーを含む。
【0222】
標的遺伝子の特異的プライマーは、可能な限り、ゲノム汚染が偽陽性結果を導くことがないように2つの異なるエクソンに位置するように選択する。非定量的エンドポイントPCRでは、DNAを変性し、Hot−Start酵素を活性化するため、cDNAを、典型的には95℃で15分間インキュベートする。その後DNAを35サイクル(95℃で1分間、プライマー特異的ハイブリダイゼーション温度(約55〜65℃)で1分間、アンプリコンを伸長させるために72℃で1分間)増幅する。その後、PCR混合物10μlをアガロースゲルに投与し、電場中で分画する。臭化エチジウムで染色することによってDNAをゲル中で可視化し、PCR結果を写真として記録する。
【0223】
従来のPCRに代わるものとして、標的遺伝子の発現を定量的リアルタイムPCRによっても分析し得る。また、様々な解析システムがこの分析のために利用可能であり、その中で最もよく知られているのは、ABI PRISM配列検出システム(TaqMan,Applied Biosystems)、iCycler(Biorad)およびLight cycler(Roche Diagnostics)である。上述したように、特異的PCR混合物をリアルタイム装置における分析に供する。DNAインターカレート染料(例えば臭化エチジウム、CybrGreen)を添加することにより、新たに合成されたDNAを特異的な光励起によって可視化する(染料製造者の情報に従って)。増幅の間に多数の時点で測定することにより、プロセス全体を観測し、標的遺伝子の核酸濃度を定量的に測定することが可能となる。ハウスキーピング遺伝子(例えば18S RNA、β−アクチン)を測定することによってPCR混合物を基準化する。蛍光標識DNAプローブを介した選択的な方法も、同様に特定組織試料の標的遺伝子の定量的測定を可能にする(Applied BiosystemsからのTaqManの適用参照)。
【0224】
図1に示すように、RT−PCR分析において、胎盤は配列番号:540の核酸配列を発現する唯一の健常組織として確認された。他のいずれの健常組織においても有意の発現を認めなかった。しかし、乳癌では高く且つ有意のレベルの発現を認めた。
【0225】
定量的リアルタイムRT−PCR分析は、配列番号:540の核酸配列が分析した乳癌試料の大部分において有意のレベルで発現されることを明らかにした;図2参照。
【0226】
2.クローニング
腫瘍関連マーカーのさらなる特徴づけのために必要とされる完全な標的遺伝子を、一般的な分子生物学的方法に従ってクローニングする(例えば「Current Protocols in Molecular Biology」,John Wiley & Sons Ltd.,Wiley InterScience)。標的遺伝子をクローニングするためまたはその配列を分析するために、前記遺伝子を、最初に、校正機能を有するDNAポリメラーゼ(例えばpfu、Roche Diagnostics)によって増幅する。次にアンプリコンを標準的な方法によってクローニングベクターに連結する。陽性クローンを配列解析によって同定し、その後予測プログラムと公知のアルゴリズムを用いて特徴づける。
【0227】
3.タンパク質の予測
本発明によって見出される遺伝子(特にRefSeq XMドメインからの遺伝子)は、完全長遺伝子のクローニング、オープンリーディングフレームの決定およびタンパク質配列の推定と解析を必要とし得る。
【0228】
完全長配列をクローニングするために、cDNA末端の迅速な増幅および遺伝子特異的プローブによるcDNA発現ライブラリーのスクリーニングのための一般的なプロトコールを使用し得る(Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd edition(1989),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.)。
【0229】
このようにして見出されたフラグメントを収集した後、一般的な予測プログラムを用いて潜在的オープンリーディングフレーム(ORF)を予測することができる。ポリA尾部およびポリアデニル化モチーフの位置は潜在的遺伝子産物の方向をあらかじめ決定するので、その特定方向の3つのリーディングフレームだけが、可能な6つのリーディングフレームの中から残る。前者はしばしば、タンパク質をコードし得る十分に大きなオープンリーディングフレームを1つだけ生成するが、その他のリーディングフレームは、終結コドンが多すぎて、現実的なタンパク質をコードしない。別のオープンリーディングフレームの場合は、最適な転写開始のためのコザック基準を考慮することおよび生じ得る推定タンパク質配列を分析することにより、本当の(authentic)ORFを同定する助けとなる。前記ORFは、潜在的ORFから推定されたタンパク質に対する免疫血清を生成し、組織および細胞株中の実際のタンパク質の認識に関して前記免疫血清を分析することによってさらに確認される。
【0230】
4.抗体の作製
本発明によって同定される腫瘍関連抗原は、例えば抗体を使用することによって特徴づけられる。本発明はさらに、抗体の診断的使用または治療的使用を含む。抗体は、天然および/または変性状態のタンパク質を認識し得る(Anderson et al.,J.Immunol.143:1899−1904,1989;Gardsvoll,J.Immunol.Methods 234:107−116,2000;Kayyem et al.,Eur.J.Biochem.208:1−8,1992;Spiller et al.,J.Immunol.Methods 224:51−60,1999)。
【0231】
標的タンパク質に特異的に結合する特異的抗体を含む抗血清は、様々な標準的方法によって調製し得る:例えば、「Monoclonal Antibodies:A Practical Approach」by Phillip Shepherd,Christopher Dean ISBN 0−19−963722−9、「Antibodies: A Laboratory Manual」by Ed Harlow,David Lane ISBN:0879693142および「Using Antibodies:A Laboratory Manual:Portable Protocol NO」by Edward Harlow,David Lane,Ed Harlow ISBN:0879695447参照。また本明細書では、天然形態の複合体膜タンパク質を認識するアフィンおよび特異的抗体を作製することも可能である(Azorsa et al.,J.Immunol.Methods 229:35−48,1999;Anderson et al.,J.Immunol.143:1899−1904,1989;Gardsvoll,J.Immunol.Methods.234:107−116,2000)。これは、治療的に使用される予定の抗体の作製において特に重要であるが、多くの診断適用のためにも重要である。このために、完全なタンパク質および細胞外部分配列の両方を免疫に使用し得る。
【0232】
ポリクローナル抗体の免疫と作製
様々な免疫プロトコールが公表されている。ある種(例えばウサギ、マウス)を所望標的タンパク質の初回注射によって免疫する。免疫原に対する動物の免疫応答を、定められた期間内に(前回の免疫後約2〜4週間)2回目または3回目の免疫によって増強することができる。前記動物から血液を採取し、再び種々の定められた時間間隔を置いた後、免疫血清を得る(4週間後に1回目の採血、その後2〜3週間ごとに5回まで採取)。このようにして採取した免疫血清は、ウエスタンブロット法において、フローサイトメトリー、免疫蛍光法または免疫組織化学によって標的タンパク質を検出し、特徴づけるために使用し得るポリクローナル抗体を含む。
【0233】
通常、4つの広く確立された方法のいずれかによって動物を免疫するが、他の方法も存在する。免疫は、標的タンパク質に特異的なペプチドを使用して、完全なタンパク質を使用して、または実験的にもしくは予測プログラムによって同定され得るタンパク質の細胞外部分配列を使用して実施し得る。予測プログラムは必ずしも完璧に機能するわけではないので、膜貫通ドメインによって互いから分離された2つのドメインを用いることも可能である。この場合、2つのドメインの1つは細胞外でなければならず、これはその後実験的に証明され得る(以下参照)。免疫は、種々のサービス業者によって商業的に提供される。
【0234】
(1) 最初の場合、ペプチド(長さ:8〜12アミノ酸)をインビトロ法によって合成し(場合により商業的サービスによって実施される)、前記ペプチドを免疫のために使用する。通常は3回の免疫を実施する(例えば5〜100μg/免疫の濃度で)。
【0235】
(2) あるいは、組換えタンパク質を使用して免疫を実施し得る。このために、標的遺伝子のクローン化DNAを発現ベクターにクローニングし、標的タンパク質を、例えば無細胞インビトロで、細菌(例えば大腸菌)中で、酵母(例えばサッカロミセス・ポンベ(S.pombe))中で、昆虫細胞中または哺乳動物細胞中で、特定の製造者(例えばRoche Diagnostics、Invitrogen、Clontech、Qiagen)の条件に従って合成する。また、ウイルス発現系(例えばバキュロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス)を用いて標的タンパク質を合成することも可能である。前記系の1つにおいて合成した後、標的タンパク質を、通常はクロマトグラフィー法を使用することによって、精製する。これに関して、精製を助けるものとして分子足場(例えばHisタグ、Qiagen;FLAGタグ、Roche Diagnostics;GST融合タンパク質)を有するタンパク質の免疫のために使用することも可能である。多くのプロトコールが、例えば「Current Protocols in Molecular Biology」,John Wiley & Sons Ltd.,Wiley InterScienceにおいて見出される。標的タンパク質を精製した後、上述したように免疫を実施する。
【0236】
(3) 所望タンパク質を内因的に合成する細胞株が利用可能である場合は、特異的抗血清を調製するためにこの細胞株を直接使用することも可能である。この場合、各々約1〜5×107細胞での1〜3回の注射によって免疫を実施する。
【0237】
(4)免疫はまた、DNAを注射することによっても実施し得る(DNA免疫)。このために、標的遺伝子を、最初に標的配列が強力な真核生物プロモーター(例えばCMVプロモーター)の制御下にあるように発現ベクターにクローニングする。その後、遺伝子銃を使用してDNA(例えば1回の注射当たり1〜10μg)を生物(例えばマウス、ウサギ)中の強い血流を有する毛細管領域に免疫原として移入する。移入されたDNAは動物の細胞によって取り込まれ、標的遺伝子が発現されて、動物は最終的に標的タンパク質に対する免疫応答を発現する(Jung et al.,Mol.Cells 12:41−49,2001;Kasinrerk et al.,Hybrid Hybridomics 21:287−293,2002)。
【0238】
モノクローナル抗体の作製
モノクローナル抗体は、伝統的にハイブリドーマ技術を用いて作製される(技術的な詳細については、「Monoclonal Antibodies:A Practical Approach」by Philip Shepherd,Christopher Dean ISBN 0−19−963722−9;「Antibodies:A Laboratory Manual」by Ed Harlow,David Lane ISBN:0879693142,「Using Antibodies:A Laboratory Manual:Portable Protocol NO」by Edward Harlow,David Lane,Ed Harlow ISBN:0879695447参照)。同様に使用される新しい方法は、「SLAM」技術である。この技術では、B細胞を全血から単離し、細胞をモノクローナルにする。その後、単離したB細胞の上清をその抗体特異性に関して分析する。ハイブリドーマ技術と異なり、次に抗体遺伝子の可変領域を単細胞PCRによって増幅し、適切なベクターにクローニングする。このようにしてモノクローナル抗体の作製が加速される(de Wildt et al.,J.Immunol.Methods 207:61−67,1997)。
【0239】
5.抗体を使用したprotein−chemical methodsによる標的の確認
上述したように作製できる抗体は、以下のように標的タンパク質をさらに分析するために使用できる:
【0240】
抗体の特異性
細胞培養とその後のウエスタンブロット法に基づくアッセイは、抗体が所望の標的タンパク質にのみ特異的に結合するという事実を明らかにするのに最も適切である(様々な変法が、例えば「Current Protocols in Proteinchemistry」,John Wiley & Sons Ltd.,Wiley InterScienceに記載されている)。実証のために、強力な真核生物プロモーター(例えばサイトメガロウイルスプロモーター;CMV)の制御下にある標的タンパク質のcDNAを細胞に導入する。多種多様な方法(例えば電気穿孔法、リポソームに基づくトランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿法)が、細胞株にDNAを導入するために十分に確立されている(例えばLemoine et al.,Methods Mol.Biol.75:441−7,1997)。代替法として、標的遺伝子を内因的に発現する細胞株を使用することも可能である(標的遺伝子特異的RT−PCRを介した検出)。対照として、理想的な場合は、分析した抗体の特異性をその後のウエスタンブロット法において明らかにすることができるように、相同な遺伝子を実験の中で同時に形質転換する。
【0241】
その後のウエスタンブロット法では、標的タンパク質を含む可能性がある細胞培養物または組織試料からの細胞を1%濃度のSDS溶液に溶解し、その過程でタンパク質を変性させる。溶解産物を8〜15%濃度の変性ポリアクリルアミドゲル(1%SDSを含有する)上の電気泳動により大きさによって分画する(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、SDS−PAGE)。次に複数のブロット法の1つ(例えばセミドライ電気ブロット法;Biorad)によって特異的膜(例えばニトロセルロース、Schleicher & Schull)に転写する。所望タンパク質をこの膜上で視覚化することができる。このために、最初に、標的タンパク質を認識する抗体(前記抗体の特異性に依存して約1:20〜1:200希釈)と共に膜を60分間インキュベートする。洗浄工程後、膜を、マーカー(例えばペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼなどの酵素)に結合された、第一抗体を認識する第二抗体と共にインキュベートする。その後、呈色反応または化学発光反応(例えばECL、Amersham Bioscience)において膜上で標的タンパク質を可視化することが可能である。標的タンパク質に対して高い特異性を有する抗体は、理想的な場合、所望タンパク質自体だけを認識するはずである。
【0242】
標的タンパク質の局在化
標的タンパク質の、インシリコアプローチで同定された膜局在化を確認するために様々な方法が使用される。上述した抗体を使用する重要で広く確立された方法は、免疫蛍光法(IF)である。このために、標的タンパク質を合成するか(RT−PCRによるRNAの検出もしくはウエスタンブロット法によるタンパク質の検出)またはプラスミドDNAが導入された、樹立細胞株の細胞を使用する。多種多様な方法(例えば電気穿孔法、リポソームに基づくトランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿法)が、DNAを細胞株に導入するために十分に確立されている(例えばLemoine et al.,Methods Mol.Biol.75:441−7,1997)。免疫蛍光法において細胞に導入されるプラスミドは、非修飾タンパク質をコードし得るかまたは種々のアミノ酸マーカーを標的タンパク質に連結し得る。主要なマーカーは、例えば、様々な示差的蛍光形態の緑色蛍光タンパク質(GFP)、高親和性の特異的抗体が利用可能である6〜12個のアミノ酸の短いペプチド配列、またはそのシステイン特異的蛍光物質(Invitrogen)を介して結合できる短いアミノ酸配列、Cys−Cys−X−X−Cys−Cysである。標的タンパク質を合成する細胞を、例えばパラホルムアルデヒドまたはメタノールで固定する。次に細胞を、必要な場合は、界面活性剤(例えば0.2% Triton X−100)と共にインキュベートすることによって透過性を上げてもよい。その後、標的タンパク質に対するまたは結合マーカーの1つに対する一次抗体と共に細胞をインキュベートする。洗浄工程後、混合物を、第一抗体に結合する、蛍光マーカー(例えばフルオレセイン、テキサスレッド、Dako)に連結された二次抗体と共にインキュベートする。次に、このようにして標識された細胞をグリセロールで覆い、製造者の情報に従って蛍光顕微鏡を用いて分析する。特異的蛍光発光は、この場合、使用する物質に依存して特異的励起によって達成される。分析は通常、標的タンパク質の信頼し得る局在化を可能にし、標的タンパク質に加えて、結合アミノ酸マーカーまたはその局在化が文献で既に記述されている他のマーカータンパク質も染色される、二重染色において、抗体の品質と標的タンパク質が確認される。GFPおよびその誘導体は特殊なケースであり、直接励起可能であって且つそれら自体が蛍光を発する。界面活性剤の使用を通して制御され得る膜透過性は、免疫蛍光法において、免疫原性エピトープが細胞の内側に位置するかまたは細胞外であるのかを明らかにする。従って、選択タンパク質の予測を実験的に裏付けることができる。代替的な可能性は、フローサイトメトリーを用いて細胞外ドメインを検出することである。このために、細胞を非透過処理条件下で固定し(例えばPBS/アジ化ナトリウム/2%FCS/5mM EDTAを用いて)、製造者の指示に従ってフローサイトメーターで分析する。細胞外エピトープだけが、この方法で分析される抗体によって認識され得る。免疫蛍光法との相違は、例えばヨウ化プロピジウムまたはトリパンブルーを使用することによって死細胞と生細胞を識別することが可能であり、従って偽陽性結果を回避できることである。
【0243】
もう1つの重要な検出法は、特定組織試料に関する免疫組織化学(IHC)によるものである。この方法の目的は、機能的に無傷の組織集合体においてタンパク質の局在化を同定することである。IHCは、特に、(1)腫瘍組織および正常組織における標的タンパク質の量を推定することができる、(2)腫瘍組織および健常組織中のどの程度の数の細胞が標的遺伝子を合成するかを分析する、ならびに(3)標的タンパク質が検出可能である組織(腫瘍、健常細胞)中の細胞型を定義するのに役立つ。あるいは、標的遺伝子のタンパク質の量を、デジタルカメラと適切なソフトウエア(例えばTillvision,Till−photonics,Germany)を使用した組織免疫蛍光法によって定量し得る。この技術は頻繁に公表されており、それ故染色および顕微鏡検査の詳細は、例えば、「Diagnostic Immunohistochemistry」by David J.,MD Dabbs ISBN:0443065667または「Microscopy,Immunohistochemistry,and Antigen Retrieval Methods:For Light and Electron Microscopy」ISBN:0306467704に見出される。抗体の特性により、意味のある結果を得るためには種々のプロトコールを使用しなければならない(一例を以下で述べる)ことに留意すべきである。
【0244】
通常、組織学的に定義された腫瘍組織および、参照として、匹敵する健常組織をIHCにおいて使用する。標的遺伝子の存在がRT−PCR分析を通して公知である細胞株を陽性および陰性対照として使用することも可能である。バックグラウンド対照は常に含めなければならない。
【0245】
ホルマリン固定し(別の固定法、例えばメタノールでの固定も可能である)、パラフィン包埋した厚さ4μmの組織片をガラス製支持体に載せ、例えばキシレンで脱パラフィン化する。試料をTBS−Tで洗浄し、血清中でブロックする。次いで第一抗体(1:2〜1:2000希釈)と共に1〜18時間インキュベートし、これには通常、アフィニティー精製した抗体を使用する。洗浄工程に続いて、アルカリホスファターゼ(あるいは、例えばペルオキシダーゼ)に連結された、第一抗体に対する第二抗体と共に約30〜60分間インキュベートする。次いでアルカリホスファターゼを使用した呈色反応を実施する(例えば、Shi et al.,J. Histochem.Cytochem.39:741−748,1991;Shin et al.,Lab.Invest.64:693−702,1991参照)。抗体の特異性を明らかにするため、あらかじめ免疫原を添加することによって反応をブロックすることができる。
【0246】
タンパク質修飾の分析
例えばN−もしくはO−グリコシル化またはミリスチル化などの二次タンパク質修飾は、免疫原性エピトープの接近可能性を障害する、さらには完全に妨げる可能性があり、従って抗体療法の効果に問題を生じさせ得る。さらに、二次修飾の種類と量が正常組織と腫瘍組織で異なることがしばしば明らかにされている(例えばDurand & Seta,2000;Clin.Chem.46:795−805;Hakomori,1996;Cancer Res.56:5309−18)。これらの修飾の分析は、それ故、抗体治療の成功のために必要不可欠である。潜在的な結合部位は特異的アルゴリズムによって予測することができる。
【0247】
タンパク質修飾の分析は、通常、ウエスタンブロット法(上記参照)によって行われる。通常数kDaの大きさを有するグリコシル化は、特により大きな全体質量の標的タンパク質を導き、これはSDS−PAGEにおいて分画することができる。特異的O−およびN−グリコシド結合を検出するために、タンパク質溶解産物をインキュベートした後、O−またはN−グリコシラーゼ(それぞれの製造者の指示に従って、例えばPNガーゼ、エンドグリコシダーゼF、エンドグリコシダーゼH、Roche Diagnostics)を用いてSDSによって変性する。これに続いて、上述したようにウエスタンブロット法を実施する。従って、グリコシダーゼとのインキュベーション後に標的タンパク質の大きさが縮小している場合、特異的グリコシル化を検出することができ、この方法で、修飾の腫瘍特異性を分析することも可能である。
【0248】
標的遺伝子の機能分析
標的分子の機能はその治療的有用性のために極めて重要であり得るので、機能分析は治療的に利用可能な分子の特徴づけにおける重要な構成要素である。機能分析は、細胞培養実験において細胞内でまたは動物モデルを用いてインビボで実施され得る。これは、突然変異によって標的分子の遺伝子のスイッチを切ること(ノックアウト)または標的配列を細胞または生物に挿入すること(ノックイン)のいずれかを含む。従って、最初の場合は、分析しようとする遺伝子の機能喪失による細胞環境での機能的修飾を分析することが可能である(機能の喪失)。2番目の場合は、分析遺伝子の付加によって引き起こされる修飾を分析できる(機能の獲得)。
【0249】
a.細胞内における機能分析
形質転換。機能の獲得を分析するためには、標的分子の遺伝子を細胞に導入しなければならない。このために、標的分子の合成を可能にする細胞にDNAを導入する。通常、本明細書では標的分子の遺伝子は強力な真核生物プロモーター(例えばサイトメガロウイルスプロモーター;CMV)の制御下にある。多種多様な方法(例えば電気穿孔法、リポソームに基づくトランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿法)が、細胞株にDNAを導入するために広く確立されている(例えばLemoine et al.,Methods Mol.Biol.75:441−7,1997)。遺伝子は、ゲノムに組み込まれずに一過性に、または例えばネオマイシンによる選択後に、ゲノムに組み込まれて安定に合成され得る。
【0250】
RNA干渉(siRNA)。細胞内の標的分子の機能の完全な喪失を誘導し得る、標的遺伝子の発現の阻害を、細胞におけるRNA干渉(siRNA)技術によって生じさせ得る(Hannon,GJ.2002.RNA interference. Nature 418:244−51;Czaudema et al.2003.Nucl.Acid Res.31:670−82)。このために、標的分子に特異的な約20〜25ヌクレオチド長の短い二本鎖RNA分子で細胞をトランスフェクトする。次に酵素処理によって標的遺伝子の特異的RNA分子の分解、従って標的タンパク質の発現低下を生じさせ、結果として標的遺伝子を機能的に分析することを可能にする。
【0251】
形質転換された細胞株、またはsiRNAによって修飾された細胞株は、その後種々の方法で分析し得る。最も一般的な例を以下に列挙する。
【0252】
1.増殖および細胞周期挙動
細胞増殖を分析するために様々な方法が確立されており、様々な会社によって商業的に供給されている(例えばRoche Diagnostics、Invitrogen;アッセイ方法の詳細は数多くの適用プロトコールに記載されている)。細胞培養実験における細胞数は、単に計数することによってまたは細胞の代謝活性を測定する比色アッセイ(例えばwst−1,Roche Diagnostics)によって決定できる。代謝アッセイ法は、酵素マーカーを介して間接的に実験における細胞数を測定する。細胞増殖は、DNA合成の速度を分析することによって、例えばブロモデオキシウリジン(BrdU)を添加し、組み込まれたBrdUを、特異的抗体を介した比色定量で検出することによって、直接測定し得る。
【0253】
2.アポトーシスおよび細胞傷害性
細胞のアポトーシスおよび細胞傷害性を検出するための多くのアッセイ系が利用可能である。決め手となる特徴は、不可逆性で、いかなる場合にも細胞死を生じさせる、ゲノムDNAの特異的で酵素依存性の断片化である。これらの特異的DNAフラグメントを検出するための方法は商業的に入手可能である。利用可能なさらなる方法は、組織切片においてもDNAの一本鎖切断を検出できるTUNELアッセイである。細胞傷害性は、主として、細胞の生命力状態のマーカーとして役立つ変化した細胞透過性を介して検出される。一方で、これは、細胞培養上清において細胞内で典型的に認められるマーカーの分析を含む。他方で、無傷細胞では吸収されない染料マーカーの吸収性を分析することも可能である。染料マーカーの最もよく知られている例はトリパンブルーとヨウ化プロピジウムであり、一般的な細胞内マーカーは、上清中で酵素的に検出できる乳酸デヒドロゲナーゼである。様々な商業的供給者(例えばRoche Diagnostics、Invitrogen)の種々のアッセイ系が利用可能である。
【0254】
3.移動アッセイ
細胞が移動する能力は、好ましくはボイデンチャンバー(Corning Costar)を使用した、特異的遊走アッセイにおいて分析される(Cinamon G.,Alon R.J.Immunol.Methods.2003 Feb;273(1−2):53−62;Stockton et al.2001.Mol.Biol.Cell.12:1937−56)。このために、特定細孔径のフィルター上で細胞を培養する。移動できる細胞は、このフィルターを通って下にある別の培養容器中へと移動することができる。その後の顕微鏡分析は、従って、標的分子の機能の獲得または機能の喪失によって誘導される、変化した可能性がある移動挙動の測定を可能にする。
【0255】
b.動物モデルにおける機能分析
標的遺伝子機能の分析のための細胞培養実験の可能な代替法は、動物モデルにおけるインビボ実験では複雑である。細胞ベースの方法と比較して、これらのモデルは、生物全体に関してのみ検出可能である発育不全または疾患を検出できるという利点を有する。現在では、ヒト疾患のための多くのモデルが利用可能である(Abate−Shen & Shen.2002.Trends in Genetics S1−5;Matsusue et al.2003.J.Clin.Invest.111:737−47)。例えば酵母、線虫またはゼブラフィッシュなどの様々な動物モデルが、その後集中的に特徴づけられてきた。しかし、他の種に比べて好ましいモデルは、例えばマウス(ハツカネズミ(Mus musculus))などの哺乳動物モデルであり、それらはヒトでの生物学的プロセスを再現する最も高い可能性を提供するからである。マウスに関しては、一方で、マウスゲノムに新しい遺伝子を組み込むトランスジェニック法が近年確立された(機能の獲得;Jegstrup I.et al.2003.Lab Anim.2003 Jan.;37(1):1−9)。他方で、他の系統的なアプローチは、マウスゲノムにおける遺伝子のスイッチを切り、従って所望遺伝子の機能の喪失を誘導する(ノックアウトモデル、機能の喪失;Zambrowicz BP & Sands AT.2003.Nat.Rev.Drug Discov.2003 Jan;2(1):38−51;Niwa H.2001.Cell Struct.Funct.2001 Jun;26(3):137−48);技術的な詳細は数多く公表されている。
【0256】
マウスモデルが作製された後、導入遺伝子によってまたは遺伝子の機能喪失によって誘導される変化を動物全体に関して分析することができる(Balling R,2001.Ann.Rev.Genomics Hum.Genet.2:463−92)。従って、例えば挙動試験を実施することならびに確立された血液パラメータを生化学的に検討することが可能である。組織学的分析、免疫組織化学または電子顕微鏡検査は、変化を細胞レベルで特徴づけることを可能にする。遺伝子の特異的発現パターンは、インサイチューハイブリダイゼーションによって検出することができる(Peters T.et al.2003.Hum.Mol.Genet 12:2109−20)。
【0257】
実施例3;同定された腫瘍関連マーカーの詳細な分析
【0258】
RNAの単離、RT−PCRおよびリアルタイムRT−PCR
RNAの抽出、一本鎖cDNAの合成、RT−PCRおよびリアルタイムRT−PCRを先に記述されているように実施した(Koslowski,M.et al.,Cancer Res.62,6750−6755(2002),Koslowski,M.et al.,Cancer Res.64,5988−5993(2004))。リアルタイムの定量的発現分析は40サイクルのRT−PCRにおいて実施した。HPRT(順方向 5'−TGA CAC TGG CAA AAC AAT GCA−3';逆方向 5'−GGT CCT TTT CAC CAG CAA GCT−3'、62℃でアニーリング)に基準化した後、△△CT計算を用いて腫瘍試料中の遺伝子特異的転写産物を正常組織に対して定量化した。
【0259】
二本鎖のsiRNA
配列番号:540の二本鎖のsiRNA(Qiagen,Hilden,Germany)は、配列番号:540のmRNA配列の標的配列、5'−NNC CAC AGA AGG UAC CAG UUA−3'(siRNA No.1;順方向(5'−CCA CAG AAG GUA CCA GUU AUU−3')、逆方向(5'−UAA CUG GUA CCU UCU GUG GUU−3')および5'−NNC AGC AAG ACU CCC UCU AAA−3'(siRNA No.2;順方向(5'−CAG CAA GAC UCC CUC UAA AUU−3')、逆方向(5'−UUU AGA GGG AGU CUU GCU GUU−3'))に対するものであった。
【0260】
細胞増殖分析
二本鎖のsiRNAを形質転換した24時間後に、10%FCSを添加した培地中で1x104細胞を48時間培養した。Wallac Victor2マルチラベルカウンター(Perkin Elmer,Boston,MA)で、DELFIA細胞増殖キット(Perkin Elmer,Boston,MA)を製造者の指示に従って使用して、新たに合成されたDNA鎖へのBrdUの組込みを測定することによって増殖を分析した。
【0261】
図3は、siRNAオリゴヌクレオチドを形質転換した24時間後のリアルタイムRT−PCRによる、MCF−7乳癌細胞における配列番号:540のmRNA発現の定量化を示す。非形質転換体および非サイレンシング(ns)siRNAを導入した細胞と比較して、2つの配列番号:540特異的siRNA(siRNA No.1(配列番号:630、631)、siRNA No.2(配列番号:632、633))は、どちらも配列番号:540発現の堅固なサイレンシングを誘導する。
【0262】
図4は、siRNAオリゴヌクレオチドの導入による配列番号:540発現のサイレンシングが、MCF−7乳癌細胞の増殖低下を生じさせることを示す。siRNAを形質転換した96時間後に、新たに合成されたDNA鎖へのBrdUの組込みを測定することによって増殖を定量化した。これらの結果は、配列番号:540が乳癌細胞の増殖のための正の因子であることを示す。
【0263】
配列番号:541のヌクレオチド配列は、配列番号:65から推定され、未知の機能の177個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:542)をコードする。正常組織および癌組織における配列番号:541の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:543、544)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図5参照。正常組織では、配列番号:541は胎盤において高発現され、胸腺で弱い発現だけを示す。配列番号:541は肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:541およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0264】
配列番号:545のヌクレオチド配列は、配列番号:249から推定され、膜タンパク質の溶質担体(SLC)群の成員(配列番号:546)をコードする。内在性膜タンパク質に特有であるように、SLCは、親水性細胞内または細胞外ループによって互いに結合された多くの疎水性膜貫通αヘリックスを含む。SLCに依存して、これらの輸送体はモノマーとしてまたは偏性(obligate)ホモオリゴマーもしくはヘテロオリゴマーとして機能性である。配列番号:545によってコードされるタンパク質は細胞表面タンパク質である。正常組織および癌組織における配列番号:545の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:547、548)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図6参照。正常組織と比較して、配列番号:545は悪性黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:545およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0265】
配列番号:549のヌクレオチド配列は、配列番号:4から推定され、未知の機能の763個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:550)をコードする。このタンパク質は、2つの潜在的膜貫通ドメインおよび1つの典型的なフィブロネクチンIII型ドメインを保持する。フィブロネクチンは、膜貫通受容体タンパク質(インテグリン)に結合する高分子量の細胞外マトリックス糖タンパク質である。インテグリンに加えて、それらはまた、コラーゲン、フィブリンおよびヘパラン硫酸などの細胞外マトリックス成分にも結合する。配列番号:549によってコードされるタンパク質は、これまでのところ未知の新しいフィブロネクチン様タンパク質であり得る。正常組織および癌組織における配列番号:549の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:551、552)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図7参照。正常組織と比較して、配列番号:549は卵巣癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:549およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこの特定腫瘍型の分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0266】
配列番号:553のヌクレオチド配列は、配列番号:156から推定され、未知の機能の496個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:554)をコードする。このタンパク質は潜在的膜貫通タンパク質を保持する。正常組織および癌組織における配列番号:553の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:555、556)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図8参照。正常組織では、配列番号:553は胎盤において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:553は結腸癌および卵巣癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:553およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0267】
配列番号:557のヌクレオチド配列は配列番号:273から推定された。配列番号:557は、明らかなオープンリーディングフレームを有さない部分cDNAである。正常組織および癌組織における配列番号:557の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:558、559)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図9参照。正常組織では、配列番号:557の高発現は乳房において検出可能である。正常組織と比較して、配列番号:557は乳癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:557およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0268】
配列番号:560のヌクレオチド配列は配列番号:135から推定された。配列番号:560は明らかなオープンリーディングフレームを有さない。正常組織および癌組織における配列番号:560の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:561、562)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図10参照。正常組織では、配列番号:560の発現は十二指腸および結腸において検出可能である。正常組織と比較して、配列番号:560は結腸癌および卵巣癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:560およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0269】
配列番号:563のヌクレオチド配列は配列番号:177から推定された。配列番号:563は明らかなオープンリーディングフレームを有さない。正常組織および癌組織における配列番号:563の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:564、565)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図11参照。配列番号:563は胎盤において高発現される。正常組織と比較して、配列番号:563は乳癌、結腸癌、卵巣癌、肺癌および黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:563およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0270】
配列番号:566のヌクレオチド配列は、配列番号:149から推定され、未知の機能の155個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:567)をコードする。このタンパク質配列は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーの成員と部分的に相同であり、潜在的膜貫通ドメインを保持する。配列番号:566によってコードされるタンパク質は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーの新しい成員であり得る。正常組織および癌組織における配列番号:566の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:568、569)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図12参照。正常組織と比較して、配列番号:566は胃癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、肺癌および黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:566およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0271】
配列番号:570のヌクレオチド配列は、配列番号:53から推定され、カーネルリポカリンスーパーファミリーの成員(配列番号:571)をコードする。これらの分泌糖タンパク質は、妊娠に適した子宮環境の調節および受精過程における適切な一連の事象の時期と発生において明確且つ重要な役割を有する。正常組織および癌組織における配列番号:570の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:572、573)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図13参照。配列番号:570は胎盤において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:570は卵巣癌、肺癌および黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:570およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0272】
配列番号:574のヌクレオチド配列は明らかなオープンリーディングフレームを有さない。正常組織および癌組織における配列番号:574の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:575、576)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図14参照。配列番号:574は胎盤において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:574は肺癌および黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:574およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0273】
配列番号:577のヌクレオチド配列は配列番号:20から推定された。配列番号:577は、明らかなオープンリーディングフレームを有さない部分cDNAである。正常組織および癌組織における配列番号:577の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:578、579)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図15参照。配列番号577:は胎盤において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:577は胃癌、乳癌および肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:577およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0274】
配列番号:580のヌクレオチド配列は配列番号:32から推定された。配列番号:580は、明らかなオープンリーディングフレームを有さない部分cDNAである。正常組織および癌組織における配列番号:580の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:581、582)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図16参照。配列番号:580は胎盤において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:580は卵巣癌および肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:580およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0275】
配列番号:583のヌクレオチド配列は、配列番号:257から推定され、ホメオボックスクラスの転写因子の成員(配列番号:584)をコードする。これらのタンパク質の発現は、胚発生の間に空間的および時間的に調節される。正常組織および癌組織における配列番号:583の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:585、586)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図17参照。配列番号:583は胎盤および前立腺において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:583は結腸癌、卵巣癌および肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:583およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0276】
配列番号:587のヌクレオチド配列は、配列番号:148から推定され、IGF−II mRNA結合タンパク質(IMP)ファミリーの成員(配列番号:588)をコードする。インスリン様増殖因子2(IGF2)mRNAの5'UTRに結合し、IGF2の翻訳を調節することによって機能する。正常組織および癌組織における配列番号:587の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:589、590)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図18参照。正常組織と比較して、配列番号:587は肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:587およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0277】
配列番号:591のヌクレオチド配列は、配列番号:194から推定され、未知の機能の372個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:592)をコードする。正常組織および癌組織における配列番号:591の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:593、594)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図19参照。配列番号:591は精巣において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:591は乳癌、結腸癌、卵巣癌、肺癌および黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:591およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0278】
配列番号:595のヌクレオチド配列は、配列番号:191から推定され、未知の機能の357個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:596)をコードする。正常組織および癌組織における配列番号:595の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:597、598)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図20参照。配列番号:595は精巣において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:595は胃癌、結腸癌、卵巣癌、肺癌および黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:595およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0279】
配列番号:599のヌクレオチド配列は、配列番号:18から推定され、明らかなオープンリーディングフレームを有さない。正常組織および癌組織における配列番号:599の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:600、601)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図21参照。配列番号:599は胎盤において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:599は胃癌、乳癌、肺癌および黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:599およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0280】
配列番号:602のヌクレオチド配列は、配列番号:133から推定され、細胞外マトリックスタンパク質のフォンビルブラント因子ドメインスーパーファミリーの成員(配列番号:603)をコードする。正常組織および癌組織における配列番号:602の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:604、605)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図22参照。正常組織と比較して、配列番号:602は卵巣癌および肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:602およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0281】
配列番号:606のヌクレオチド配列は、配列番号:128から推定され、CDC42エフェクタータンパク質のBorgファミリーの成員(配列番号:607)をコードする。Borgファミリーのタンパク質はCRIB(Cdc42/Rac相互作用性結合)ドメインを含む。それらはCDC42に結合し、その機能を負に調節する。低分子量Rho GTPアーゼであるCDC42は、下流のエフェクタータンパク質との相互作用を介してFアクチン含有構造体の形成を調節する。正常組織および癌組織における配列番号:606の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:608、609)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図23参照。正常組織と比較して、配列番号:606は胃癌、結腸癌および肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:606およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0282】
配列番号:610のヌクレオチド配列は、配列番号:118から推定され、明らかなオープンリーディングフレームを有さない。正常組織および癌組織における配列番号:610の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:611、612)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図24参照。正常組織と比較して、配列番号:610は胃癌、乳癌および肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:610およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0283】
配列番号:613のヌクレオチド配列は、配列番号:116から推定され、未知の機能の76個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:614)をコードする。正常組織および癌組織における配列番号:613の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:615、616)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図25参照。配列番号:613は胎盤において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:613は乳癌、肺癌および黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:613およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0284】
配列番号:617のヌクレオチド配列は配列番号:267から推定された。配列番号:617は、明らかなオープンリーディングフレームを有さない部分cDNAである。正常組織および癌組織における配列番号:617の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:618、619)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図26参照。配列番号:617は胎盤および子宮内膜において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:617は肺癌および黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:617およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0285】
配列番号:620のヌクレオチド配列は、配列番号:182から推定され、多数の推定上の膜貫通ドメインおよびパッチドファミリードメインを保持する829個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:621)をコードする。膜貫通タンパク質パッチドは、モルフォゲンであるソニックヘッジホッグに対する受容体である。このタンパク質は、スムーズンドタンパク質と結合してヘッジホッグシグナルを伝達する。配列番号:620はパッチドファミリーの新規成員であり得る。正常組織および癌組織における配列番号:620の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:622、623)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図27参照。配列番号:620は肺において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:620は卵巣癌および黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:620およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0286】
配列番号:624のヌクレオチド配列は、配列番号:184から推定され、2つの細孔形成Pドメインを含むカリウムチャネルタンパク質のスーパーファミリーの成員である、TWIK関連酸感受性K+チャネルに類似する323個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:625)をコードする。正常組織および癌組織における配列番号:624の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:626、627)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図28参照。配列番号:624は肺において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:624は胃癌および肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:624およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0287】
配列番号:634のヌクレオチド配列は、配列番号:346から推定され、ホメオボックスクラスの転写因子の成員(配列番号:635)をコードする。これらのタンパク質の発現は、胚発生の間に空間的および時間的に調節される。正常組織および癌組織における配列番号:634の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:636、637)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図29参照。配列番号:634は胎盤および子宮内膜において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:634は卵巣癌および肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:634およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0288】
配列番号:638のヌクレオチド配列は、配列番号:252から推定され、約40アミノ酸のモチーフ、Fボックスを特徴とするFボックスタンパク質ファミリーの成員(配列番号:639)をコードする。Fボックスタンパク質は、リン酸化依存性ユビキチン化において機能する、SCF(SKP1−クリン−Fボックス)と呼ばれるユビキチンタンパク質リガーゼ複合体の4つのサブユニットの1つを構成する。Fボックスタンパク質は3つのクラスに分けられる:WD−40ドメインを含むFbws、ロイシンに富む反復配列を含むFbls、および異なるタンパク質間相互作用モジュールを含むかまたは認識可能なモチーフを含まないFbxs。この遺伝子によってコードされるタンパク質はFblsクラスに属する;Fボックスに加えて、このタンパク質は10のロイシンに富む縦列反復配列を含む。このタンパク質はサイクリンA−CDK2 S期キナーゼの必須要素である。主としてS期にリン酸化されたサイクリン依存性キナーゼ阻害因子1B(CDKN1B、p27またはKIP1とも称される)を特異的に認識し、S期キナーゼ結合タンパク質1(SKP1またはp19)と相互作用する。正常組織および癌組織における配列番号:638の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:640、641)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図30参照。配列番号:638は胎盤において高発現される。正常組織と比較して、配列番号:638は結腸癌、卵巣癌、肺癌および悪性黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:638およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0289】
配列番号:642のヌクレオチド配列は、配列番号:248から推定され、未知の機能の1.024個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:643)をコードする。正常組織および癌組織における配列番号:642の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:644、645)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図31参照。配列番号:642は胎盤において高発現される。正常組織と比較して、配列番号:642は乳癌、卵巣癌、肺癌および悪性黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:642およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0290】
配列番号:646のヌクレオチド配列は配列番号:269から推定された。配列番号:646は、明らかなオープンリーディングフレームを有さない部分cDNAである。正常組織および癌組織における配列番号:646の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:647、648)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図32参照。配列番号:646は胎盤において高発現される。正常組織と比較して、配列番号:646は胃癌、卵巣癌および肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:646およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0291】
配列番号:649のヌクレオチド配列は、配列番号:27から推定され、未知の機能の258個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:650)をコードする。正常組織および癌組織における配列番号:649の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:651、652)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図33参照。配列番号:649は胎盤において高発現される。正常組織と比較して、配列番号:649は卵巣癌、肺癌および悪性黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:649およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0292】
配列番号:653のヌクレオチド配列は配列番号:139から推定された。配列番号:653は、明らかなオープンリーディングフレームを有さない部分cDNAである。正常組織および癌組織における配列番号:653の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:654、655)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図34参照。配列番号:653は胎盤および皮膚において発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:653は結腸癌および肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:653およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0293】
配列番号:656のヌクレオチド配列は、配列番号:305から推定され、未知の機能の419個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:657)をコードする。正常組織および癌組織における配列番号:656の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:658、659)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図35参照。配列番号:656は胎盤および皮膚において発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:656は肺癌および悪性黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:656およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0294】
配列番号:660のヌクレオチド配列は、配列番号:125から推定され、トロンボスポンジンモチーフを有するディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼ(配列番号:661)をコードする。正常組織および癌組織における配列番号:660の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:662、663)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図36参照。配列番号:660は胎盤において高発現される。正常組織と比較して、配列番号:660は胃癌、卵巣癌および悪性黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:660およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0295】
配列番号:664のヌクレオチド配列は、配列番号:61から推定され、未知の機能の334個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:665)をコードする。正常組織および癌組織における配列番号:664の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:666、667)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図37参照。配列番号:664は胎盤および皮膚において発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:664は胃癌、結腸癌、肺癌および悪性黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:664およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0296】
配列番号:668のヌクレオチド配列は配列番号:13から推定された。配列番号:668は、明らかなオープンリーディングフレームを有さない部分cDNAである。正常組織および癌組織における配列番号:668の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:669、670)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図38参照。配列番号:668は胎盤において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:668は肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:668およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0297】
配列番号:671のヌクレオチド配列は、配列番号:42から推定され、未知の機能の426個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:672)をコードする。正常組織および癌組織における配列番号:671の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:673、674)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図39参照。配列番号:671は胎盤および皮膚において発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:671は肺癌および悪性黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:671およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0298】
配列番号:675のヌクレオチド配列は、配列番号:314から推定され、2.912個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:676)をコードする。正常組織および癌組織における配列番号:675の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:677、678)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図40参照。配列番号:675は胎盤において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:675は肺癌および悪性黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:675およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0299】
配列番号:679のヌクレオチド配列は配列番号:31から推定された。配列番号:679は、明らかなオープンリーディングフレームを有さない部分cDNAである。正常組織および癌組織における配列番号:679の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:680、681)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図41参照。配列番号:679は胎盤において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:679は肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:679およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0300】
配列番号:682のヌクレオチド配列は、配列番号:21から推定され、278個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:683)をコードする。正常組織および癌組織における配列番号:682の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:684、685)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図42参照。配列番号:682は胎盤、子宮内膜において高発現され、リンパ節においてより低いレベルで発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:682は胃癌、乳癌および悪性黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:682およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0301】
配列番号:686のヌクレオチド配列は配列番号:58から推定された。配列番号:686は、明らかなオープンリーディングフレームを有さない部分cDNAである。正常組織および癌組織における配列番号:686の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:687、688)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図43参照。配列番号:686は胎盤において高発現され、乳房においてより低いレベルで発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:686は乳癌、卵巣癌および肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:686およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌において発現される核酸およびコードされるポリペプチドに関する。本発明はまた、上記ポリペプチドに結合する作用物質に関する。上記核酸、そのような核酸によってコードされるポリペプチドおよびそれに由来するペプチド、ならびに関連する抗体および細胞溶解性Tリンパ球は、中でも特に、診断および治療状況において有用である。
【背景技術】
【0002】
学際的なアプローチおよび古典的治療法の網羅的な使用にもかかわらず、癌は現在もなお死亡の主要原因の1つである。
【0003】
癌治療におけるごく最近の治療概念は、組換え腫瘍ワクチンおよび抗体療法のような他の特定の手段を使用することによって患者の免疫系を全体的な治療の概念に組み込むことを目指している。そのような方策の成功のための必要条件は、腫瘍特異的または腫瘍関連抗原またはエピトープが、そのエフェクター機能を介入措置によって増強しようとする患者の免疫系によって認識されることである。
【0004】
腫瘍細胞は、生物学的に、それらの起源である非悪性細胞とは実質上異なる。これらの相違は、腫瘍発現の間に獲得される遺伝的変化に起因し、中でも特に、癌細胞における質的または量的に変化した分子構造体の形成も生じさせる。腫瘍を保持する宿主の特異的免疫系によって認識されるこの種の腫瘍関連構造体は、腫瘍関連抗原と称される。
【0005】
腫瘍関連抗原の特異的認識は、2つの機能的に相互連結された単位である細胞性機構および体液性機構を含む:CD4+およびCD8+Tリンパ球は、それぞれMHC(主要組織適合遺伝子複合体)クラスIおよびIIの分子上に提示されるプロセシングされた抗原を認識し、一方Bリンパ球は、プロセシングされていない抗原に直接結合する循環抗体分子を産生する。腫瘍関連抗原の潜在的な臨床−治療上の重要性は、免疫系による腫瘍細胞上の抗原の認識が細胞傷害性エフェクター機構の開始を導き、ヘルパーT細胞の存在下で、癌細胞の除去をもたらすことができるという事実から生じる(Pardoll,Nat.Med.4:525−31,1998)。
【0006】
抗体に基づく癌治療は、臨床の場に導入されて成功を収め、この10年間に腫瘍学における最も有望な治療法として浮上してきた。8つの抗体が腫瘍性疾患の治療に関して承認されているが、それらの大部分はリンパ腫および白血病における治療である(Adams GP,Weiner LM,Nat Biotechnol 23:1147−57,2005)。
【0007】
次世代の改良された抗体ベースの癌治療の出現のために克服すべき課題の1つは、良好な毒性/効果プロフィールのための鍵となる、適切な標的分子の選択である。
【0008】
健常組織の大部分では固く沈黙している遺伝子についての検索は、配偶子形成および/または栄養膜系譜の遺伝子がしばしば異所性に活性化され、ヒト癌において堅固に発現されるという興味深い所見に関心の焦点を移している。生殖細胞、妊娠性栄養膜細胞および癌細胞の間の表現型類似性に基づき、John Beardは、100年も前に「癌の栄養膜理論(trophoblastic theory of cancer)」(Beard J,Lancet 1:1758−63,1902;Gurchot C,Oncology 31:310−3,1975)を提唱した。癌細胞による絨毛性性腺刺激ホルモン、α−フェトプロテイン、CEAおよび他の栄養膜ホルモンの散発性産生の発見は、新生細胞と栄養膜細胞との間で共有される最初の分子を提供した(Acevedo HF et al.,Cancer 76:1467−75,1995;Dirnhofer S et al.,Hum Pathol 29:377−82,1998;Gurchot C,Oncology 31:310−3,1975;Iles RK,Chard T,J Urol 145:453−8,1991;Laurence DJ,Neville AM,Br J Cancer 26:335−55,1972)。この概念は、各々が様々な腫瘍型を発現する100以上の成員を示す、着実に増殖する、いわゆる癌/生殖系(CG)クラスの遺伝子の確立によって再び注目された。栄養膜および配偶子形成プログラム全体が転写サイレンシングを免れ、癌細胞において異所性に活性化されるという所見は(Koslowski M et al.,Cancer Res 64:5988−93,2004;Simpson AJ et al.,Nat Rev Cancer 5:615−25,2005)、極めて選択的な組織分布を有するこのクラスの遺伝子の中で、mAB療法のための適切な標的を見出し得ることを示唆する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
癌の診断および治療のための標的構造体を提供することが本発明の目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、各請求項の主題によって達成される。
【0011】
本発明によれば、腫瘍細胞において選択的にまたは異常に発現され、従って治療的および診断的アプローチのための標的構造体を提供する、胎盤特異的遺伝子が同定される。
【0012】
腫瘍細胞において選択的にまたは異常に発現されると本発明によって同定される核酸は、(a)配列表の配列番号:1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620、624、634、638、642、646、649、653、656、660、664、668、671、675、679、682および686からなる群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、(c)(a)または(b)の核酸に対して縮重している核酸、ならびに(d)(a)、(b)または(c)の核酸に相補的な核酸からなる群より選択される。これらの核酸はまた、本明細書では「腫瘍関連核酸」とも称される。
【0013】
もう1つの態様では、本発明は、本発明によって同定される腫瘍関連核酸によってコードされる抗原に関する。従って、本発明によって同定される腫瘍関連抗原は、(a)配列表の配列番号:1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620、624、634、638、642、646、649、653、656、660、664、668、671、675、679、682および686からなる群より選択される核酸配列を含む核酸、その一部または誘導体、(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、(c)(a)または(b)の核酸に対して縮重している核酸、ならびに(d)(a)、(b)または(c)の核酸に相補的な核酸からなる群より選択される核酸によってコードされるアミノ酸配列を有する。好ましい実施形態では、本発明によって同定される腫瘍関連抗原は、配列表の配列番号:542、546、550、554、567、571、584、588、592、596、603、607、614、621、625、635、639、643、650、657、661、665、672、676および683からなる群より選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含む。
【0014】
本発明により、特定の核酸配列を含む核酸または特定のアミノ酸配列を含む腫瘍関連抗原に言及する場合、これはまた、核酸または腫瘍関連抗原が、それぞれ、これら特定の核酸配列またはアミノ酸配列からなる実施形態も包含する。
【0015】
本発明は、一般に、本発明によって同定される腫瘍関連核酸または腫瘍関連抗原を標的することによる治療および/または診断を包含する。これは、そのような腫瘍関連核酸および/または腫瘍関連抗原を発現する細胞の選択的検出および/または細胞の根絶を提供し、それにより、そのような腫瘍関連核酸および/または腫瘍関連抗原を発現しない正常細胞への有害作用を最小限に抑える。従って、治療または診断のための好ましい疾患は、腫瘍疾患などの、本発明によって同定される腫瘍関連核酸および/または腫瘍関連抗原の1またはそれ以上が発現されるもの、特に本明細書で述べるような癌疾患である。
【0016】
本発明は、一般に、腫瘍疾患などの腫瘍性疾患、特に本明細書で述べるような癌疾患の治療、予防、診断および/または観測のための、本発明によって同定される腫瘍関連核酸および腫瘍関連抗原またはその一部もしくは誘導体、前記腫瘍関連核酸に対する核酸、本発明によって同定される腫瘍関連抗原に対する抗体もしくはT細胞またはその一部もしくは誘導体、および/または本発明によって同定される腫瘍関連抗原を発現する宿主細胞の使用を含む。
【0017】
これはまた、これらの核酸、抗原、抗体、T細胞および/または宿主細胞のうち、2つまたはそれ以上の組合せの使用を含み得る。
【0018】
本発明によって同定される腫瘍関連抗原に対する抗体またはその一部もしくは誘導体の使用に関する本発明の実施形態では、本発明によって同定される腫瘍関連抗原に対するT細胞受容体またはその一部もしくは誘導体も、場合によりMHC分子との複合体として、使用し得る。
【0019】
腫瘍関連抗原の非膜貫通部分、特に細胞外部分に対応するまたはそれからなる、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の一部は、治療、予防、診断および/または観測のために特に適切である。このため、本発明によれば、腫瘍関連抗原の非膜貫通部分、特に細胞外部分に対応するまたはそれからなる、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の一部、または本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸の対応する部分は、治療、予防、診断および/または観測のために好ましい。同様に、腫瘍関連抗原の非膜貫通部分、特に細胞外部分に対応するまたはそれからなる、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の一部に対する抗体の使用は好ましい。
【0020】
治療、予防、診断および/または観測のための好ましい疾患は、本発明によって同定される腫瘍関連核酸の1またはそれ以上が選択的に発現されるまたは異常発現される疾患である。治療、予防、診断および/または観測のための特に好ましい疾患は、本発明によって同定される腫瘍関連核酸の1もしくはそれ以上および/またはそれによってコードされる腫瘍関連抗原の1もしくはそれ以上が選択的に発現されるまたは異常発現される疾患である。
【0021】
1つの態様では、本発明は、本発明によって同定される腫瘍関連抗原または腫瘍関連抗原をコードする核酸を認識し、好ましくは本発明によってまたは腫瘍関連抗原をコードする核酸によって同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現を有する細胞に選択的である作用物質を含有する医薬組成物に関する。
【0022】
さらなる態様では、本発明は、(I)本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現もしくは活性を阻害する、および/または(II)腫瘍阻害活性もしくは腫瘍破壊活性を有し、本発明によって同定される腫瘍関連核酸および/もしくは腫瘍関連抗原を発現するもしくは異常発現する細胞に選択的である、および/または(III)投与された場合、MHC分子と本発明によって同定される腫瘍関連抗原もしくはペプチドエピトープなどのその一部との間の複合体の量を選択的に増大させる作用物質を含有する医薬組成物に関する。特定の実施形態では、前記作用物質は、細胞死の誘導、細胞増殖の低減、細胞膜への損傷またはサイトカインの分泌を生じさせることができ、好ましくは腫瘍阻害活性を有し得る。
【0023】
1つの実施形態では、腫瘍関連抗原の発現または活性を阻害する作用物質は、本発明によって同定される腫瘍関連核酸に特異的である。もう1つの実施形態では、腫瘍関連抗原の発現または活性を阻害する作用物質は、本発明によって同定される腫瘍関連抗原に特異的である。本発明によれば、「発現および/または活性を阻害する」という語句は、発現および/または活性の完全なまたは基本的に完全な阻害ならびに発現および/または活性の低減を包含する。好ましくは、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現の前記阻害は、本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードする転写産物、すなわちmRNAの産生を阻害するまたはそのレベルを低下させることによって、例えば転写を阻害するまたは転写産物の分解を誘導することによって、および/または本発明によって同定される腫瘍関連抗原の産生を阻害することによって、例えば本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードする転写産物の翻訳を阻害することによって行われ得る。好ましくは、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現および/または活性の前記阻害は、腫瘍細胞の増殖を低減し、および/または腫瘍細胞死を誘導し、従って腫瘍阻害作用または腫瘍破壊作用を有する。
【0024】
特定の実施形態では、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現を阻害する作用物質は、本発明によって同定される腫瘍関連核酸に選択的にハイブリダイズし、前記腫瘍関連核酸に対して特異的であり、それにより、その転写および/または翻訳を阻害する(例えば低減する)、阻害性核酸(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、iRNA、siRNAまたはそれらをコードするDNA)である。
【0025】
阻害性核酸は、標的核酸に対してアンチセンス方向の配列を有するオリゴヌクレオチドを含む。適切な阻害性オリゴヌクレオチドは、典型的には5〜数百ヌクレオチドの長さ、より典型的には約20〜70ヌクレオチド長またはそれ以下、より一層典型的には約10〜30ヌクレオチド長にわたる。これらの阻害性オリゴヌクレオチドは、遊離(裸の)核酸としてまたは保護された形態で、例えばリポソームに封入されて投与され得る。リポソームまたは他の保護された形態の使用は、インビボ(in vivo)での安定性を高めることができ、従って標的部位への送達を促進し得るので、好都合であり得る。
【0026】
また、標的腫瘍関連核酸は、腫瘍細胞中の対応するmRNAの切断を標的するリボザイムを設計するためにも使用し得る。同様に、これらのリボザイムは、遊離(裸の)形態でまたは安定性および/もしくは標的化を増強する送達システム、例えばリポソームを使用して投与され得る。
【0027】
また、標的腫瘍関連核酸は、腫瘍関連核酸の発現を阻害する(例えば低減する)ことができるsiRNAを設計するためにも使用し得る。siRNAは、遊離(裸の)形態でまたは安定性および/もしくは標的化を増強する送達システム、例えばリポソームを使用して投与され得る。それらはまた、それらの前駆体またはそれらをコードするDNAの形態でも投与され得る。
【0028】
さらなる実施形態では、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の活性を阻害する作用物質は、前記腫瘍関連抗原に特異的に結合する抗体である。腫瘍関連抗原への抗体の結合は、例えば結合活性または触媒活性を阻害することによって、腫瘍関連抗原の機能を妨げることができる。
【0029】
また、本発明は、もう1つの態様では、標的分子、すなわち本発明によって同定される腫瘍関連核酸または腫瘍関連抗原のリガンドの投与を含む、腫瘍疾患の治療のための療法に関する。これに関して、これらの標的を発現する細胞、例えば腫瘍細胞を選択的に標的し、死滅させるために、治療エフェクター部分、例えば放射性標識、細胞毒、細胞傷害性酵素等に結合した、標的核酸に選択的にハイブリダイズする核酸を投与し得るか、または標的抗原に特異的に結合する抗体を投与し得る。
【0030】
上記で述べた態様の1つの実施形態では、作用物質は、腫瘍関連抗原をコードする核酸と選択的にハイブリダイズするアンチセンス核酸である。さらなる実施形態では、作用物質は、好ましくはセンスRNA鎖とアンチセンスRNA鎖を含むsiRNAであり、前記siRNAにおいてセンスRNA鎖とアンチセンスRNA鎖はRNA二本鎖を形成し、センスRNA鎖は、腫瘍関連抗原をコードする核酸、好ましくは腫瘍関連抗原をコードするmRNA中の約19〜約25個の連続するヌクレオチドの標的配列と実質的に同一なヌクレオチド配列を含む。さらなる実施形態では、作用物質は、腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体、特に腫瘍関連抗原に選択的に結合する補体活性化抗体または毒素結合抗体である。好ましい実施形態では、腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体は、治療上有用な物質に連結されている、および/または前記腫瘍関連抗原を発現するもしくは異常発現する前記細胞に、天然もしくは人為的エフェクター機構を動員する。さらなる実施形態では、作用物質は、細胞上のMHC分子によって結合された腫瘍関連抗原またはその一部を認識し、このように標識された細胞を溶解する、細胞傷害性Tリンパ球である。さらなる実施形態では、作用物質は、細胞上のMHC分子によって結合された腫瘍関連抗原またはその一部を認識し、前記腫瘍関連抗原またはその一部を特異的に認識する他の細胞のエフェクター機能を増強する、Tヘルパーリンパ球である。
【0031】
さらなる実施形態では、作用物質は、各々が異なる腫瘍関連抗原もしくは腫瘍関連抗原をコードする異なる核酸を認識する、および/または異なる腫瘍関連抗原の発現もしくは活性を阻害する、および/または腫瘍阻害活性もしくは腫瘍破壊活性を有する、異なる腫瘍関連抗原を発現するもしくは異常発現する細胞に選択的である、および/または投与された場合、MHC分子と種々の異なる腫瘍関連抗原もしくはその一部との間の複合体の量を選択的に増大させる、2またはそれ以上の作用物質を含み、前記の異なる腫瘍関連抗原の少なくとも1つは本発明によって同定される腫瘍関連抗原である。
【0032】
好ましくは、選択的に腫瘍に限定される腫瘍関連抗原は、エフェクター機構をこの特定位置に動員するための標識として働く。この態様では、本発明は、作用物質が、それ自体では腫瘍関連抗原の活性または腫瘍阻害もしくは腫瘍破壊活性を阻害する能力を有さないが、特にエフェクター機構、中でも細胞損傷能を有する機構を特定位置、特に腫瘍または腫瘍細胞に動員することによってそのような作用を媒介する実施形態を包含する。
【0033】
好ましくは、本発明によって同定される腫瘍関連核酸および/または腫瘍関連抗原を発現するまたは異常発現する前記細胞は、非胎盤細胞である。
【0034】
本発明によって同定される腫瘍関連抗原の活性は、タンパク質またはペプチドの任意の活性であり得る。1つの実施形態では、この活性は酵素活性である。
【0035】
本発明によれば、「発現または活性を阻害する」という語句は、発現または活性の完全な阻害または基本的に完全な阻害および発現または活性の低減を包含する。
【0036】
MHC分子と本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその一部との間の複合体の量を選択的に増大させる作用物質は、投与された場合、(i)腫瘍関連抗原またはその一部、(ii)前記腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸、(iii)前記腫瘍関連抗原またはその一部を発現する宿主細胞、および(vi)前記腫瘍関連抗原からのペプチドエピトープとMHC分子との間の単離された複合体からなる群より選択される1またはそれ以上の成分を含む。
【0037】
本発明はさらに、(i)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその一部、(ii)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸、(iii)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその一部に結合する抗体、(iv)本発明によって同定される腫瘍関連核酸/本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸と特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸、(v)本発明によって同定される腫瘍関連核酸/本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸に対するsiRNA、(vi)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその一部を発現する宿主細胞、および(vii)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその一部とMHC分子との間の単離された複合体からなる群より選択される1またはそれ以上の成分を含有する医薬組成物に関する。
【0038】
1つの実施形態では、本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸は、発現ベクター内でおよびプロモーターに機能的に連結されて、医薬組成物中に存在する。さらなる実施形態では、本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸は、以下でさらに述べるようにウイルス内で医薬組成物中に存在する。
【0039】
本発明の医薬組成物中に存在する宿主細胞は、腫瘍関連抗原またはその一部を分泌して、それを表面上に発現することができ、好ましくは前記腫瘍関連抗原またはその一部に結合するMHC分子を付加的に発現し得る。1つの実施形態では、宿主細胞はMHC分子を内因性に発現する。さらなる実施形態では、宿主細胞は、MHC分子および/または腫瘍関連抗原もしくはその一部を組換え発現する。宿主細胞は、好ましくは非増殖性である。好ましい実施形態では、宿主細胞は、抗原提示細胞、特に樹状細胞、単球またはマクロファージである。
【0040】
さらなる実施形態では、本発明の医薬組成物中に存在する抗体は、モノクローナル抗体である。さらなる実施形態では、抗体は、キメラ、ヒトもしくはヒト化抗体、抗体のフラグメントまたは合成抗体である。抗体は、本明細書では治療薬または治療物質あるいは診断薬または診断物質と称される、治療上または診断上有用な作用物質に連結され得る。
【0041】
本発明の医薬組成物中に存在するアンチセンス核酸は、本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸の6〜50、特に10〜30、15〜30および20〜30個の連続するヌクレオチドの配列を含み得る。
【0042】
さらなる実施形態では、直接にまたは核酸の発現を介して本発明の医薬組成物によって提供される、腫瘍関連抗原またはその一部は、細胞の表面でMHC分子に結合し、前記結合は、好ましくは細胞溶解応答を生じさせるおよび/またはサイトカイン放出を誘導する。
【0043】
本発明の医薬組成物は、医薬的に適合性の担体および/または補助薬を含有し得る。
【0044】
本発明の医薬組成物は、好ましくは、腫瘍関連核酸および/または腫瘍関連抗原の選択的発現または異常発現する疾患の治療または予防のために使用される。好ましい実施形態では、疾患は、腫瘍性疾患、好ましくは癌である。
【0045】
好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、治療的または予防的に使用され得るワクチンの形態である。そのようなワクチンは、好ましくは、本発明によって同定される腫瘍関連抗原もしくはその一部、および/または本発明によって同定される腫瘍関連抗原もしくはその一部をコードする核酸を含有する。特定の実施形態では、核酸は、ウイルスまたは宿主細胞内に存在する。
【0046】
本発明はさらに、本発明によって同定される1またはそれ以上の腫瘍関連核酸の発現または異常発現を特徴とし、好ましくは本発明によって同定される1またはそれ以上の腫瘍関連抗原の発現または異常発現も同時に生じさせる疾患、好ましくは腫瘍性疾患、特に癌を治療する、予防する、診断するまたは観測する、すなわち前記疾患の後退、進行、経過および/または発症を測定する方法に関する。1つの実施形態では、治療または予防は本発明の医薬組成物の投与を含有する。
【0047】
本発明による診断の方法および/または観測の方法は、一般に、患者から、好ましくは前記疾患を有する、前記疾患を有するもしくは罹患することが疑われる、または前記疾患の潜在的可能性を有する患者から単離された生物学的試料における、(i)本発明によって同定される腫瘍関連核酸またはその一部、(ii)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその一部、(iii)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその一部に対する抗体、および(iv)本発明によって同定される腫瘍関連抗原もしくはその一部および/または腫瘍関連抗原もしくはその一部とMHC分子との間の複合体に特異的なTリンパ球、好ましくは細胞傷害性Tリンパ球またはTヘルパーリンパ球からなる群より選択される1またはそれ以上のパラメータの検出および/またはその量の測定に関する。前記検出および/または量の測定を達成するための手段は、本明細書において説明され、当業者に明らかになる。
【0048】
好ましくは、前記核酸もしくはその一部、前記腫瘍関連抗原もしくはその一部、前記抗体および/または前記Tリンパ球の存在、ならびに/あるいは前記疾患を有していない患者および/または組織と比較して増大している、前記核酸もしくはその一部、前記腫瘍関連抗原もしくはその一部、前記抗体および/または前記Tリンパ球の量は、前記疾患の存在または前記疾患の発現の潜在的可能性の指標となる。
【0049】
本発明の診断の方法および/または観測の方法はまた、前記核酸もしくはその一部、前記腫瘍関連抗原もしくはその一部、前記抗体および/または前記Tリンパ球の検出またはその量の測定により、前記疾患の転移挙動を評価するおよび/または予後判定することが可能である実施形態を包含し、前記実施形態では、好ましくは、前記核酸もしくはその一部、前記腫瘍関連抗原もしくは前記その一部、前記抗体および/または前記Tリンパ球の存在、ならびに/あるいは前記疾患を有していないまたは前記疾患の転移を有していない患者と比較して増大している、前記核酸もしくはその一部、前記腫瘍関連抗原もしくはその一部、前記抗体および/または前記Tリンパ球の量は、前記疾患の転移挙動または前記疾患の転移挙動の潜在的可能性の指標となる。
【0050】
特定の実施形態では、前記検出または量の測定は、(i)生物学的試料を、腫瘍関連核酸もしくはその一部、腫瘍関連抗原もしくはその一部、抗体またはTリンパ球に特異的に結合する作用物質と接触させること、および(ii)作用物質と、核酸もしくはその一部、腫瘍関連抗原もしくはその一部、抗体またはTリンパ球との間の複合体の形成を検出するまたは複合体の量を測定することを含む。
【0051】
1つの実施形態では、疾患は、好ましくは2またはそれ以上の異なる腫瘍関連抗原の発現または異常発現も同時に生じさせる、2またはそれ以上の異なる腫瘍関連核酸の発現または異常発現を特徴とし、検出または量の測定は、2もしくはそれ以上の異なる腫瘍関連核酸もしくはその一部、2もしくはそれ以上の異なる腫瘍関連抗原もしくはその一部、前記2もしくはそれ以上の異なる腫瘍関連抗原もしくはその一部に結合する2もしくはそれ以上の抗体、および/または前記2もしくはそれ以上の異なる腫瘍関連抗原もしくはその一部またはMHC分子とのその複合体に特異的な2またはそれ以上のTリンパ球の検出またはその量の測定を含む。さらなる実施形態では、患者から単離された生物学的試料を、匹敵する正常な生物学的試料と比較する。
【0052】
本発明による観測の方法は、好ましくは、第1に、第1試料において、および第2に、でさらなる試料において、上述したパラメータの1またはそれ以上を検出するまたはその量を測定することを含み、2つの試料を比較することによって疾患の経過を判定する。
【0053】
好ましくは、前記核酸もしくはその一部、前記腫瘍関連抗原もしくはその一部、前記抗体および/または前記Tリンパ球のレベルが、患者から以前に採取した試料と比較して試料中で上昇していることは、患者が癌および/または癌の転移および/または癌の再発を発症したまたは発症しかかっていることを指示する。好ましくは、前記核酸もしくはその一部、前記腫瘍関連抗原もしくはその一部、前記抗体および/または前記Tリンパ球のレベルが、患者から以前に採取した試料と比較して試料中で低下していることは、前記患者における癌および/または癌の転移の後退を指示し、従って、好ましくは癌治療の成功を指示する。
【0054】
本発明によれば、核酸もしくはその一部の検出または核酸もしくはその一部の量の測定は、前記核酸もしくはその一部に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドプローブを使用して実施し得るか、または前記核酸もしくはその一部の選択的増幅によって、例えばPCR増幅を用いて実施し得る。1つの実施形態では、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドプローブは、前記核酸の6〜50個、特に10〜30個、15〜30個および20〜30個の連続するヌクレオチドの配列を含む。
【0055】
特定の実施形態では、本発明の方法において検出されるまたはその量が測定される腫瘍関連抗原またはその一部は、細胞内、細胞表面上またはMHC分子との複合体中に存在する。
【0056】
本発明によれば、腫瘍関連抗原もしくはその一部の検出または腫瘍関連抗原もしくはその一部の量の測定は、前記腫瘍関連抗原またはその一部に特異的に結合する抗体を使用して実施し得る。
【0057】
本発明によれば、抗体の検出または抗体の量の測定は、前記抗体に特異的に結合するタンパク質またはペプチドを使用して実施し得る。
【0058】
本発明によれば、腫瘍関連抗原もしくはその一部および/またはMHC分子とのその複合体に特異的なTリンパ球の検出またはその量の測定は、前記腫瘍関連抗原またはその一部とMHC分子との間の複合体を提示する細胞を使用して実施し得る。Tリンパ球は、付加的に、それらの増殖、それらのサイトカイン産生、およびMHC分子と腫瘍関連抗原またはその一部との複合体での特異的刺激によって開始されるそれらの細胞傷害活性を検出することによって検出し得る。Tリンパ球はまた、組換えMHC分子または1もしくはそれ以上の腫瘍関連抗原の免疫原性フラグメントが負荷された2もしくはそれ以上のMHC分子の複合体を用いて検出し得る。
【0059】
オリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドプローブ、抗体、タンパク質もしくはペプチド、または細胞などの、本発明の方法における検出または量の測定のために使用される作用物質は、好ましくは検出可能に、特に放射性マーカーまたは酵素マーカーなどの検出可能なマーカーによって標識される。
【0060】
本発明の特定態様では、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現する疾患を治療する、予防する、診断するまたは観測する方法であって、前記腫瘍関連抗原またはその一部に結合し、且つ治療薬または診断薬に連結されている抗体を投与することを含む方法に関する。抗体はモノクローナル抗体であり得る。さらなる実施形態では、抗体は、キメラもしくはヒト化抗体または抗体のフラグメントである。
【0061】
ある実施形態では、疾患を診断するまたは観測する本発明の方法は、播種性腫瘍細胞または転移性腫瘍細胞などの腫瘍細胞を含むまたは含むことが疑われる生物学的試料に関して実施される。そのような生物学的試料は、例えば組織、血液、血清、骨髄、痰、気管支吸引液および/または気管支洗浄液を含む。好ましくは、疾患を診断するまたは観測する本発明の方法は、胎盤細胞を含まない、特に、被験者から単離された非胎盤生物学的試料である生物学的試料に関して実施される。1つの実施形態では、生物学的試料は組織または器官に由来し、前記組織または器官が腫瘍を含まない場合、その細胞は本発明によって同定される腫瘍関連抗原および/または本発明によって同定される腫瘍関連核酸を実質的に発現しない。
【0062】
1つの特定態様では、本発明は、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現する疾患を有する患者を治療する方法であって、(i)前記患者からまたは同じ種の別の個体、特に健常個体から、または異なる種の個体から得た、免疫反応性細胞を含む試料を提供すること、(ii)前記試料を、前記腫瘍関連抗原またはその一部に対する細胞溶解性T細胞の産生を促進する条件下で、前記腫瘍関連抗原またはその一部を発現する宿主細胞と接触させること、および(iii)細胞溶解性T細胞を、腫瘍関連抗原またはその一部を発現する細胞を溶解するのに適した量で患者に導入することを含む方法に関する。1つの実施形態では、その方法は、得られた細胞溶解性T細胞のT細胞受容体をクローニングすることおよびT細胞受容体をコードする核酸を、前記患者からまたは同じ種の別の個体、特に健常個体から、または異なる種の個体から得た、T細胞に移入することを含み、このようにして前記T細胞は所望の特異性を受容し、(iii)におけるように、患者に導入され得る。
【0063】
1つの実施形態では、宿主細胞はMHC分子を内因性に発現する。さらなる実施形態では、宿主細胞は、MHC分子および/または腫瘍関連抗原もしくはその一部を組換え発現する。好ましくは、宿主細胞は、MHC分子によって腫瘍関連抗原またはその一部をその表面に提示する。宿主細胞は、好ましくは非増殖性である。好ましい実施形態では、宿主細胞は、抗原提示細胞、特に樹状細胞、単球またはマクロファージである。
【0064】
本発明はまた、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の発現または異常発現する疾患を治療する方法であって、(i)異常量の腫瘍関連抗原を発現する、患者からの細胞を同定すること、(ii)前記細胞の試料を単離すること、(iii)前記細胞を培養すること、および(iv)前記細胞を、細胞に対する免疫応答を開始させるのに適した量で患者に導入することを含む方法に関する。
【0065】
本発明はさらに、(a)配列番号:1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620、624、634、638、642、646、649、653、656、660、664、668、671、675、679、682および686からなる群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、(c)(a)または(b)の核酸に対して縮重している核酸、ならびに(d)(a)、(b)または(c)の核酸に相補的な核酸からなる群より選択される核酸に関する。
【0066】
さらなる態様では、本発明は、本発明の核酸を含む、組換え核酸分子、特にDNAまたはRNA分子に関する。
【0067】
本発明はまた、本発明の核酸または組換え核酸分子を含む宿主細胞に関する。
【0068】
宿主細胞はまた、MHC分子をコードする核酸を含み得る。1つの実施形態では、宿主細胞はMHC分子を内因性に発現する。さらなる実施形態では、宿主細胞は、MHC分子および/または本発明の核酸もしくは組換え核酸分子もしくはその一部を組換え発現する。好ましくは、宿主細胞は非増殖性である。好ましい実施形態では、宿主細胞は、抗原提示細胞、特に樹状細胞、単球またはマクロファージである。
【0069】
さらなる実施形態では、本発明は、本発明によって同定される核酸とハイブリダイズし、遺伝子プローブとしてまたは「アンチセンス」分子として使用し得るオリゴヌクレオチドに関する。本発明によって同定される核酸またはその一部とハイブリダイズする、オリゴヌクレオチドプライマーまたはコンピテントプローブの形態の核酸分子は、例えばPCR増幅、サザンおよびノーザンハイブリダイゼーションによって、前記核酸を検出するためおよび/または本発明によって同定される前記核酸に相同な核酸を見出すために使用し得る。ハイブリダイゼーションは、低い厳密性の条件下で、より好ましくは普通の厳密性の条件下で、最も好ましくは高い厳密性の条件下で実施し得る。
【0070】
さらなる態様では、本発明は、(a)配列番号:1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620、624、634、638、642、646、649、653、656、660、664、668、671、675、679、682および686からなる群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、(b)ストリンジェントな条件下で(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、(c)(a)または(b)の核酸に対して縮重している核酸、ならびに(d)(a)、(b)または(c)の核酸に相補的である核酸からなる群より選択される核酸によってコードされるタンパク質またはペプチドに関する。好ましい実施形態では、前記タンパク質またはペプチドは、配列表の配列番号:542、546、550、554、567、571、584、588、592、596、603、607、614、621、625、635、639、643、650、657、661、665、672、676および683からなる群より選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含む。
【0071】
さらなる態様では、本発明は、本発明によって同定される腫瘍関連抗原の免疫原性フラグメントに関する。前記フラグメントは、好ましくはMHC分子または抗体、好ましくはヒトHLA受容体またはヒト抗体に結合する。本発明によれば、一部またはフラグメントは、好ましくは少なくとも5、少なくとも6、特に少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30または少なくとも50個のアミノ酸の配列を含む。
【0072】
さらなる態様では、本発明は、本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその一部に結合する作用物質に関する。好ましい実施形態では、作用物質は、タンパク質またはペプチド、特に抗体、T細胞受容体またはMHC分子である。さらなる実施形態では、抗体は、モノクローナル、キメラ、ヒトもしくはヒト化抗体、コンビナトリアル技術によって作製される抗体、または抗体のフラグメントである。1つの好ましい実施形態では、本発明は、(i)本発明によって同定される腫瘍関連抗原またはその一部と(ii)本発明によって同定される前記腫瘍関連抗原または前記その一部が結合しているMHC分子との複合体に選択的に結合し、(i)または(ii)単独には結合しない抗体に関する。
【0073】
本発明によれば、「結合」という用語は、好ましくは特異的結合に関する。「特異的結合」は、抗体などの作用物質が、それが特異的であるエピトープなどの標的に対して、別の標的への結合と比較してより強く結合することを意味する。ある作用物質が、ある解離定数(KD)で第1標的に結合し、その解離定数が第2標的に対する解離定数よりも低い場合、作用物質は第2標的に比べて第1標的により強く結合する。好ましくは、作用物質が特異的に結合する標的についての解離定数(KD)は、作用物質が特異的に結合しない標的についての解離定数(KD)よりも10倍以上、好ましくは20倍以上、より好ましくは50倍以上、さらに一層好ましくは100倍、200倍、500倍または1000倍以上低い。
【0074】
そのような特異的抗体は、例えば前記ペプチドを使用した免疫によって入手し得る。
【0075】
本発明はさらに、本発明によって同定される腫瘍関連抗原もしくはその一部または本発明の抗体に結合する本発明の作用物質と治療薬または診断薬との間の複合体に関する。1つの実施形態では、治療薬または診断薬は毒素である。
【0076】
さらなる態様で本発明は、本発明によって同定される1またはそれ以上の腫瘍関連核酸の発現または異常発現を特徴とし、好ましくは本発明によって同定される1またはそれ以上の腫瘍関連抗原の発現または異常発現も同時に生じさせる疾患、好ましくは腫瘍性疾患、特に癌を検出するためのキットであって、(i)腫瘍関連核酸もしくはその一部、(ii)腫瘍関連抗原もしくはその一部、(iii)腫瘍関連抗原もしくはその一部に結合する抗体、および/または(iv)腫瘍関連抗原もしくはその一部またはMHC分子とのその複合体に特異的なT細胞の検出またはその量の測定のための作用物質を含むキットに関する。そのような作用物質は、本明細書中上記で説明されている。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】正常組織および癌組織における本発明によって同定される腫瘍関連核酸の発現を示す図である。 配列番号:540の核酸配列の有意の発現は、胎盤組織および乳癌においてのみ認められた。
【図2】正常組織および癌組織における本発明によって同定される腫瘍関連核酸の定量的発現を示す図である。 定量的RT−PCRは、胎盤組織および乳癌において配列番号:540の核酸配列の選択的発現を示した。
【図3】MCF−7乳癌細胞における配列番号:540のmRNAの定量的発現を示す図である。 siRNAオリゴヌクレオチドを形質転換した24時間後のリアルタイムRT−PCRは、2つの配列番号:540特異的siRNA(siRNA No.1(配列番号630、631)、siRNA No.2(配列番号632、633))が配列番号:540の発現の堅固なサイレンシングを誘導することを示した。
【図4】siRNAオリゴヌクレオチドを形質転換することによる配列番号:540発現のサイレンシングは、MCF−7乳癌細胞の増殖低下を生じさせることを示す図である。 siRNAを形質転換した96時間後に、新たに合成されたDNA鎖へのBrdUの組込みを測定することによって増殖を定量した。これらの結果は、配列番号:540が乳癌細胞の増殖のための正の因子であることを示す。
【図5】正常組織および癌組織における配列番号:541の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、肺癌における配列番号:541の核酸配列の過剰発現を示した。
【図6】正常組織および癌組織における配列番号:545の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、悪性黒色腫における配列番号:545の核酸配列の過剰発現を示した。
【図7】正常組織および癌組織における配列番号:549の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、卵巣癌における配列番号:549の核酸配列の過剰発現を示した。
【図8】正常組織および癌組織における配列番号:553の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、結腸癌および卵巣癌における配列番号:553の核酸配列の過剰発現を示した。
【図9】正常組織および癌組織における配列番号:557の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、乳癌における配列番号:557の核酸配列の過剰発現を示した。
【図10】正常組織および癌組織における配列番号:560の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、結腸癌および卵巣癌における配列番号:560の核酸配列の過剰発現を示した。
【図11】正常組織および癌組織における配列番号:563の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、乳癌、結腸癌、卵巣癌、肺癌および黒色腫における配列番号:563の核酸配列の過剰発現を示した。
【図12】正常組織および癌組織における配列番号:566の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、胃癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、肺癌および黒色腫における配列番号:566の核酸配列の過剰発現を示した。
【図13】正常組織および癌組織における配列番号:570の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、卵巣癌、肺癌および黒色腫における配列番号:570の核酸配列の過剰発現を示した。
【図14】正常組織および癌組織における配列番号:574の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、肺癌および黒色腫における配列番号:574の核酸配列の過剰発現を示した。
【図15】正常組織および癌組織における配列番号:577の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、胃癌、乳癌および肺癌における配列番号:577の核酸配列の過剰発現を示した。
【図16】正常組織および癌組織における配列番号:580の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、卵巣癌および肺癌における配列番号:580の核酸配列の過剰発現を示した。
【図17】正常組織および癌組織における配列番号:583の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、結腸癌、卵巣癌および肺癌における配列番号:583の核酸配列の過剰発現を示した。
【図18】正常組織および癌組織における配列番号:587の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、肺癌における配列番号:587の核酸配列の過剰発現を示した。
【図19】正常組織および癌組織における配列番号:591の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、乳癌、結腸癌、卵巣癌、肺癌および黒色腫における配列番号:591の核酸配列の過剰発現を示した。
【図20】正常組織および癌組織における配列番号:595の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、胃癌、結腸癌、卵巣癌、肺癌および黒色腫における配列番号:595の核酸配列の過剰発現を示した。
【図21】正常組織および癌組織における配列番号:599の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、胃癌、乳癌、肺癌および黒色腫における配列番号:599の核酸配列の過剰発現を示した。
【図22】正常組織および癌組織における配列番号:602の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、卵巣癌および肺癌における配列番号:602の核酸配列の過剰発現を示した。
【図23】正常組織および癌組織における配列番号:606の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、胃癌、結腸癌および肺癌における配列番号:606の核酸配列の過剰発現を示した。
【図24】正常組織および癌組織における配列番号:610の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、胃癌、乳癌および肺癌における配列番号:610の核酸配列の過剰発現を示した。
【図25】正常組織および癌組織における配列番号:613の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、乳癌、肺癌および黒色腫における配列番号:613の核酸配列の過剰発現を示した。
【図26】正常組織および癌組織における配列番号:617の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、肺癌および黒色腫における配列番号:617の核酸配列の過剰発現を示した。
【図27】正常組織および癌組織における配列番号:620の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、卵巣癌および黒色腫における配列番号:620の核酸配列の過剰発現を示した。
【図28】正常組織および癌組織における配列番号:624の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、胃癌および肺癌における配列番号:624の核酸配列の過剰発現を示した。
【図29】正常組織および癌組織における配列番号:634の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、卵巣癌および肺癌における配列番号:634の核酸配列の過剰発現を示した。
【図30】正常組織および癌組織における配列番号:638の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、結腸癌、卵巣癌、肺癌および悪性黒色腫における配列番号:638の核酸配列の過剰発現を示した。
【図31】正常組織および癌組織における配列番号:642の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、乳癌、卵巣癌、肺癌および悪性黒色腫における配列番号:642の核酸配列の過剰発現を示した。
【図32】正常組織および癌組織における配列番号:646の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、胃癌、卵巣癌および肺癌における配列番号:646の核酸配列の過剰発現を示した。
【図33】正常組織および癌組織における配列番号:649の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、卵巣癌、肺癌および悪性黒色腫における配列番号:649の核酸配列の過剰発現を示した。
【図34】正常組織および癌組織における配列番号:653の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、結腸癌および肺癌における配列番号:653の核酸配列の過剰発現を示した。
【図35】正常組織および癌組織における配列番号:656の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、肺癌および悪性黒色腫における配列番号:656の核酸配列の過剰発現を示した。
【図36】正常組織および癌組織における配列番号:660の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、胃癌、卵巣癌および悪性黒色腫における配列番号:660の核酸配列の過剰発現を示した。
【図37】正常組織および癌組織における配列番号:664の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、胃癌、結腸癌、肺癌および悪性黒色腫における配列番号:664の核酸配列の過剰発現を示した。
【図38】正常組織および癌組織における配列番号:668の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、肺癌における配列番号:668の核酸配列の過剰発現を示した。
【図39】正常組織および癌組織における配列番号:671の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、肺癌および悪性黒色腫における配列番号:671の核酸配列の過剰発現を示した。
【図40】正常組織および癌組織における配列番号:675の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、肺癌およおび悪性黒色腫における配列番号:675の核酸配列の過剰発現を示した。
【図41】正常組織および癌組織における配列番号:679の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、肺癌における配列番号:679の核酸配列の過剰発現を示した。
【図42】正常組織および癌組織における配列番号:682の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、胃癌、乳癌および悪性黒色腫における配列番号:682の核酸配列の過剰発現を示した。
【図43】正常組織および癌組織における配列番号:686の定量的発現を示す図である。 リアルタイムRT−PCRは、乳癌、卵巣癌および肺癌における配列番号:686の核酸配列の過剰発現を示した。
【発明を実施するための形態】
【0078】
本明細書における数値の範囲への言及は、前記範囲に含まれる個々の数値の各々を指定し、言及すると理解されるべきである。例えば、配列番号1〜540への言及は、以下の個々の配列番号:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149、150、151、152、153、154、155、156、157、158、159、160、161、162、163、164、165、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186、187、188、189、190、191、192、193、194、195、196、197、198、199、200、201、202、203、204、205、206、207、208、209、210、211、212、213、214、215、216、217、218、219、220、221、222、223、224、225、226、227、228、229、230、231、232、233、234、235、236、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、299、300、301、302、303、304、305、306、307、308、309、310、311、312、313、314、315、316、317、318、319、320、321、322、323、324、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、343、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、377、378、379、380、381、382、383、384、385、386、387、388、389、390、391、392、393、394、395、396、397、398、399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、411、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、422、423、424、425、426、427、428、429、430、431、432、433、434、435、436、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、468、469、470、471、472、473、474、475、476、477、478、479、480、481、482、483、484、485、486、487、488、489、490、491、492、493、494、495、496、497、498、499、500、501、502、503、504、505、506、507、508、509、510、511、512、513、514、515、516、517、518、519、520、521、522、523、524、525、526、527、528、529、530、531、532、533、534、535、536、537、538、539および540の1つ1つに言及すると理解されるべきである。
【0079】
本発明によれば、参照試料または参照生物などの「参照物」は、試験試料または試験生物、すなわち患者から本発明の方法において得られた結果を相互に関連付け、比較するために使用し得る。典型的には、参照試料は、健常組織、特に癌によって冒されていない対応する組織からの試料であり、または参照生物は、健常生物、特に癌に罹患していない生物である。
【0080】
「参照値」は、膨大な数の参照物を測定することによって、経験的に決定することができる。好ましくは、参照値は、少なくとも2、好ましくは少なくとも3、好ましくは少なくとも5、好ましくは少なくとも8、好ましくは少なくとも12、好ましくは少なくとも20、好ましくは少なくとも30、好ましくは少なくとも50、または好ましくは少なくとも100の参照物を測定することによって決定される。
【0081】
本発明によれば、核酸は、好ましくはデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)である。核酸は、本発明によれば、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、組換え生産された分子および化学合成された分子を含む。本発明によれば、核酸は、一本鎖または二本鎖としておよび直鎖状分子または共有結合閉環分子として存在し得る。
【0082】
「本発明によって同定される腫瘍関連核酸」および「本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸」という用語は、同様の意味を有する。しかし、一部の実施形態では核酸、特にmRNAの発現だけが関連し、タンパク質の発現は重要な因子ではないという事実を説明するために異なる用語が本明細書で使用される。
【0083】
本明細書で使用される、「RNA」という用語は、少なくとも1個のリボヌクレオチド残基を含む分子を意味する。「リボヌクレオチド」とは、β−D−リボフラノース部分の2'位置にヒドロキシル基を有するヌクレオチドを意味する。この用語は、二本鎖RNA、一本鎖RNA、部分的に精製されたRNAのような単離されたRNA、基本的に純粋なRNA、合成RNA、組換え生産されたRNA、ならびに1またはそれ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換および/または変化によって天然に生じるRNAとは異なる変化したRNAを包含する。そのような変化は、RNAの末端または内部などへの、例えばRNAの1またはそれ以上のヌクレオチドにおける、非ヌクレオチド物質の付加を含み得る。RNA分子中のヌクレオチドはまた、非天然に生じるヌクレオチドまたは化学合成ヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドなどの、非標準ヌクレオチドも含み得る。これらの変化したRNAは、類似体または天然に生じるRNAの類似体と称され得る。
【0084】
本明細書において核酸の検出または核酸の量の測定に言及する場合、実際に検出されるべき核酸またはその量が実際に測定されるべきである核酸は、好ましくはmRNAである。しかし、これはまた、mRNAが間接的に検出されるまたはmRNAの量が間接的に測定される実施形態を含み得ることが了解されるべきである。例えば、mRNAがcDNAに変換されて、そのcDNAが検出されてもよいまたはその量が測定されてもよい。mRNAは、本明細書ではcDNAの等価物として示される。当業者は、cDNA配列がmRNA配列と等価であり、本明細書では同じ目的のため、例えば検出されるべき核酸にハイブリダイズするプローブの作製のために使用できることを理解する。従って、本明細書において配列表に示す配列に言及する場合、これは、上記配列のRNA等価物も包含する。
【0085】
本発明に従って述べる核酸は、好ましくは単離されている。「単離核酸」という用語は、本発明によれば、核酸が、(i)インビトロ(in vitro)で、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅された、(ii)クローニングすることで組換え生産された、(iii)例えば切断とゲル電気泳動による分画によって精製された、または(iv)例えば化学合成によって合成されたことを意味する。単離核酸は、組換えDNA技術による操作のために使用可能な核酸である。
【0086】
本発明による縮重核酸は、遺伝暗号の縮重のためにコドン配列が参照核酸とは異なる核酸である。
【0087】
例えば核酸およびアミノ酸配列に関する、「誘導体」という用語は、本発明によれば、任意の変異体、特に突然変異体、スプライス変異体、立体配座変異体、アイソフォーム、対立遺伝子変異体、種変異体および種ホモログ、特に天然に存在するものを包含する。対立遺伝子変異体は、遺伝子の正常な配列の変化に関するが、その重要性はしばしば不明である。完全な遺伝子配列決定は、多くの場合、所与の遺伝子に対する数多くの対立遺伝子変異体を同定する。種ホモログは、所与の核酸またはアミノ酸配列のものとは異なる種を起源とする核酸またはアミノ酸配列である。
【0088】
本発明による核酸の「誘導体」は、単一または複数の、例えば少なくとも2、少なくとも4、または少なくとも6、および好ましくは3まで、4まで、5まで、6まで、10まで、15まで、または20までのヌクレオチド置換、欠失および/または付加を含む核酸を包含する。さらに、「誘導体」という用語はまた、ヌクレオチド塩基、糖またはリン酸上の核酸の化学的誘導体化を含む。「誘導体」という用語はまた、天然では生じないヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体を含む核酸を含む。好ましくは、核酸の誘導体化はその安定性を高める。
【0089】
好ましくは、本明細書で述べる特定の核酸配列と、上記特定核酸配列の誘導体である、上記特定核酸配列とハイブリダイズする、および/または上記特定核酸配列に対して縮重している核酸配列との間の相同性の程度は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらに一層好ましくは少なくとも90%、または最も好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%または99%である。相同性の程度は、好ましくは少なくとも約30、少なくとも約50、少なくとも約70、少なくとも約90、少なくとも約100、少なくとも約150、少なくとも約200、少なくとも約250、少なくとも約300、または少なくとも約400ヌクレオチドの領域に関して与えられる。好ましい実施形態では、相同性の程度は、配列表に記載されている核酸配列などの、参照核酸配列の全長に関して与えられる。
【0090】
2つの配列が互いにハイブリダイズして、安定な二本鎖を形成することができる場合、核酸はもう1つの別の核酸に「相補的」であり、ハイブリダイゼーションは、好ましくはポリヌクレオチド間の特異的ハイブリダイゼーションを可能にする条件(ストリンジェントな条件)下で実施される。ストリンジェントな条件は、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,J.Sambrook et al.,Editors,2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory press,Cold Spring Harbor,New York,1989またはCurrent Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel et al.,Editors,John Wiley & Sons,Inc.,New Yorkの中に記載されており、例えば、ハイブリダイゼーション緩衝液(3.5×SSC、0.02%フィコール、0.02%ポリビニルピロリドン、0.02%ウシ血清アルブミン、2.5mM NaH2PO4(pH7)、0.5%SDS、2mM EDTA)中65℃でのハイブリダイゼーションを参照されたい。SSCは、0.15M塩化ナトリウム/0.15Mクエン酸ナトリウム、pH7である。ハイブリダイゼーション後、DNAが移入された膜を、例えば室温にて2×SSC中で、次に68℃までの温度で0.1〜0.5×SSC/0.1×SDS中で洗浄する。
【0091】
相補性パーセントは、第2の核酸配列と水素結合(例えばワトソン−クリック塩基対合)を形成することができる、核酸分子内の連続する残基のパーセンテージを示す(例えば10個のうち5、6、7、8、9、10個は、50%、60%、70%、80%、90%および100%相補的である)。「完全に相補的(perfectly complementaryまたはfully complementary)」とは、核酸配列のすべての連続する残基が第2の核酸配列内の同じ数の連続する残基と水素結合することを意味する。好ましくは、本発明による相補性の程度は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらに一層好ましくは少なくとも90%、または最も好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%または99%である。最も好ましくは、本発明による相補性の程度は100%である。
【0092】
「配列類似性」は、同一であるかまたは保存的アミノ酸置換であるアミノ酸のパーセンテージを示す。2つのポリペプチドまたは核酸配列の間の「配列同一性」は、配列間で同一であるアミノ酸またはヌクレオチドのパーセンテージを示す。
【0093】
「相同性のパーセンテージ」は、最良のアラインメント後に得られた、比較する2つの配列の間で同一であるヌクレオチドまたはアミノ酸残基のパーセンテージを表わすことが意図されており、このパーセンテージは純粋に統計的であって、2つの配列の間の相違は無作為におよびそれらの長さ全体にわたって分布する。2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の配列比較は、従来、これらの配列を最適に整列した後に比較することによって実施され、前記比較は、配列類似性の局所領域を同定し、比較するためにセグメントごとにまたは「比較ウインドウ」ごとに実施される。比較のための配列の最適アラインメントは、手操作による以外に、Smith and Waterman,1981,Ads App.Math.2,482の局所相同性アルゴリズムによって、Neddleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443の局所相同性アルゴリズムによって、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci.USA 85,2444の類似性検索法によって、またはこれらのアルゴリズムを使用したコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wis.におけるGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST NおよびTFASTA)によって作成され得る。
【0094】
相同性のパーセンテージは、比較する2つの配列の間の同一位置の数を決定し、これら2つの配列の間の相同性のパーセンテージを得るためにこの数を比較する位置の数で除して、得られた結果に100を乗じることによって計算される。
【0095】
1つの実施形態では、特定の核酸配列の誘導体である、特定核酸配列に対して縮重しているまたは特定核酸配列の一部である核酸配列は、特定核酸配列の関連する機能および/または活性を有する、すなわち特定核酸配列によってコードされるタンパク質またはペプチドと同じ活性または免疫学的性質を有するタンパク質またはペプチドをコードすることができ、1つの実施形態では、同じタンパク質またはペプチドをコードする。
【0096】
腫瘍関連抗原をコードする核酸は、本発明によれば、単独でまたは他の核酸、特に異種核酸との組合せで存在し得る。好ましくは、腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸は、前記腫瘍関連抗原またはその一部を発現する。好ましい実施形態では、核酸は、上記核酸に関して同種または異種であってよい発現制御配列または調節配列に機能的に連結されている。コード配列と調節配列は、それらが、上記コード配列の発現または転写が上記調節配列の制御下または影響下にあるように互いに共有結合で連結されている場合、互いに「機能的に」連結されている。コード配列が機能的タンパク質に翻訳される場合、調節配列が上記コード配列に機能的に連結されていれば、上記調節配列の誘導は、コード配列内にフレームシフトを引き起こすことなくまたは上記コード配列が所望タンパク質もしくはペプチドに翻訳されるのを不可能にすることなく、上記コード配列の転写を生じさせる。
【0097】
「発現制御配列」または「調節配列」という用語は、本発明によれば、プロモーター、エンハンサーおよび遺伝子の発現を調節する他の制御エレメントを含む。本発明の特定の実施形態では、発現制御配列を調節することができる。調節配列の正確な構造は、種または細胞型に応じて異なり得るが、一般には、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列等のような、それぞれ転写および翻訳の開始に関与する5'非転写配列および5'非翻訳配列を含む。より詳細には、5'非転写調節配列は、機能的に連結された遺伝子の転写制御のためのプロモーター配列を含有するプロモーター領域を含む。調節配列はまた、エンハンサー配列または上流活性化配列も含み得る。
【0098】
本発明によれば、核酸はさらに、上記核酸によってコードされるタンパク質またはペプチドの宿主細胞からの分泌を制御するペプチドをコードする別の核酸と組み合わせて存在し得る。本発明によれば、核酸はまた、コードされるタンパク質またはペプチドが宿主細胞の細胞膜に固定されるまたは上記細胞の特定小器官に分画されることを生じさせるペプチドをコードする別の核酸と組み合わせて存在し得る。同様に、レポーター遺伝子または任意の「タグ」である核酸との組合せが可能である。
【0099】
好ましい実施形態では、組換え核酸分子は、本発明によれば、核酸、例えば本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸の発現を制御する、適切な場合はプロモーターを有する、ベクターである。「ベクター」という用語は、本明細書ではその最も一般的な意味で使用され、核酸が、例えば原核細胞および/または真核細胞に導入されて、適切な場合は、ゲノムに組み込まれることを可能にする、前記核酸のための任意の中間ビヒクルを含む。この種のベクターは、好ましくは細胞内で複製および/または発現される。中間ビヒクルは、例えば、電気穿孔法、微粒子銃、リポソーム投与、アグロバクテリアを用いた導入、またはDNAもしくはRNAウイルスを介した挿入における使用に適合させ得る。ベクターは、プラスミド、ファージミド、バクテリオファージまたはウイルスゲノムを含む。
【0100】
本発明によって同定される腫瘍関連抗原をコードする核酸は、宿主細胞に導入するために使用し得る。本明細書における核酸は、組換えDNAおよびRNAの両方を意味する。組換えRNAは、DNA鋳型のインビトロ転写によって作製し得る。さらに、適用の前に配列の安定化、キャップ形成およびポリアデニル化によって修飾してもよい。
【0101】
本発明によれば、「宿主細胞」という用語は、外来性核酸を形質転換または導入することができる任意の細胞に関する。「宿主細胞」という用語は、本発明によれば、原核細胞(例えば大腸菌(E.coli))または真核細胞(例えば樹状細胞、B細胞、CHO細胞、COS細胞、K562細胞、酵母細胞および昆虫細胞)を含む。ヒト、マウス、ハムスター、ブタ、ヤギ、霊長動物からの細胞などの哺乳動物細胞が特に好ましい。細胞は様々な組織型に由来してよく、一次細胞および細胞株を含み得る。具体的な例は、ケラチノサイト、末梢血白血球、骨髄の幹細胞および胚性幹細胞を含む。さらなる実施形態では、宿主細胞は、抗原提示細胞、特に樹状細胞、単球またはマクロファージである。核酸は、単一コピーまたは2もしくはそれ以上のコピーの形態で宿主細胞内に存在することができ、1つの実施形態では、宿主細胞において発現される。
【0102】
本発明によれば、「発現」という用語は、その最も一般的な意味で使用され、RNAの産生またはRNAとタンパク質の産生を含む。この用語はまた、核酸の部分的発現を含む。さらに、発現は一過性にまたは安定に実施され得る。哺乳動物細胞における好ましい発現系は、pcDNA3.1およびpRc/CMV(Invitrogen,Carlsbad,CA)を含み、これらは、G418に対する耐性を付与する遺伝子のような選択マーカー(従って安定にトランスフェクトされた細胞株を選択することを可能にする)およびサイトメガロウイルス(CMV)のエンハンサー−プロモーター配列を含有する。
【0103】
MHC分子が腫瘍関連抗原またはその一部を提示する本発明の場合、発現ベクターはまた、上記MHC分子をコードする核酸配列を含み得る。MHC分子をコードする核酸配列は、腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸と同じ発現ベクターに存在してもよく、または2つの核酸が異なる発現ベクターに存在してもよい。後者の場合は、2つの発現ベクターを細胞に同時に形質転換し得る。宿主細胞が腫瘍関連抗原もしくはその一部またはMHC分子のいずれも発現しない場合は、それぞれをコードする2つの核酸を同じ発現ベクターまたは異なる発現ベクターを細胞に形質転換し得る。細胞が既にMHC分子を発現する場合は、腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸配列だけを細胞に導入することができる。
【0104】
本発明はまた、核酸の検出および/または核酸の量の測定のためのキットを含む。そのようなキットは、例えば、検出しようとするまたはその量を測定しようとする核酸にハイブリダイズする一対の増幅プライマーを含む。プライマーは、好ましくは前記核酸の6〜50、特に10〜30、15〜30および20〜30個の連続するヌクレオチドの配列を含み、プライマー二量体の形成を回避するため、オーバーラップしていない。プライマーの一方は核酸の一方の鎖にハイブリダイズし、他方のプライマーは、核酸の増幅を可能にする配置で相補的な鎖にハイブリダイズする。
【0105】
「アンチセンス分子」または「アンチセンス核酸」は、核酸の発現を調節する、特に低減するために使用し得る。「アンチセンス分子」または「アンチセンス核酸」という用語は、本発明によれば、オリゴリボヌクレオチド、オリゴデオキシリボヌクレオチド、修飾オリゴリボヌクレオチドまたは修飾オリゴデオキシリボヌクレオチドであり、特定遺伝子を含むDNAまたは上記遺伝子のmRNAに生理的条件下でハイブリダイズして、それにより上記遺伝子の転写および/または上記mRNAの翻訳を阻害するオリゴヌクレオチドを指す。本発明によれば、「アンチセンス分子」はまた、その天然プロモーターに対して逆方向に核酸またはその一部を含む構築物を包含する。核酸またはその一部のアンチセンス転写産物は、天然に生じるmRNAと二本鎖を形成することができ、従ってmRNAの蓄積または翻訳を妨げ得る。もう1つの可能性は、核酸を不活性化するためのリボザイムの使用である。
【0106】
本発明による好ましいアンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的核酸の6〜50、特に10〜30、15〜30および20〜30個の連続するヌクレオチドの配列を有し、好ましくは標的核酸またはその一部に完全に相補的である。
【0107】
好ましい実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、N末端または翻訳開始部位、転写開始部位もしくはプロモーター部位などの5'上流部位とハイブリダイズする。さらなる実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、3'非翻訳領域またはmRNAスプライシング部位とハイブリダイズする。
【0108】
1つの実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドまたはその組合せからなり、1つのヌクレオチドの5'末端ともう1つのヌクレオチドの3'末端がホスホジエステル結合によって互いに連結されている。これらのオリゴヌクレオチドは、従来の方法で合成され得るかまたは組換え生産され得る。
【0109】
好ましい実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは「修飾」オリゴヌクレオチドである。本明細書では、オリゴヌクレオチドは、例えばその安定性または治療効果を高めるために、その標的に結合する能力を損なわずに多種多様な方法で修飾し得る。本発明によれば、「修飾オリゴヌクレオチド」という用語は、(i)そのヌクレオチドの少なくとも2個が合成ヌクレオシド間結合(すなわちホスホジエステル結合ではないヌクレオシド間結合)によって互いに連結されている、および/または(ii)通常は核酸中で認められない化学基がオリゴヌクレオチドに共有結合で連結されている、オリゴヌクレオチドを意味する。好ましい合成ヌクレオシド間結合は、ホスホロチオエート、アルキルホスホネート、ホスホロジチオエート、リン酸エステル、アルキルホスホノチオエート、ホスホルアミデート、カルバメート、カルボネート、リン酸トリエステル、アセトアミデート、カルボキシメチルエステルおよびペプチドである。
【0110】
「修飾オリゴヌクレオチド」という用語はまた、共有結合で修飾された塩基および/または糖を有するオリゴヌクレオチドを含む。「修飾オリゴヌクレオチド」は、例えば、3'位のヒドロキシル基および5'位のリン酸基以外の低分子量有機基に共有結合した糖残基を有するオリゴヌクレオチドを含む。修飾オリゴヌクレオチドは、例えば2'−O−アルキル化リボース残基またはリボースの代わりにアラビノースのような別の糖を含み得る。
【0111】
オリゴヌクレオチドに関して上述したすべての実施形態は、ポリヌクレオチドにも適用され得ることが了解されるべきである。
【0112】
本明細書で使用される「低分子干渉RNA」または「siRNA」とは、標的遺伝子または分解されるべきmRNAを同定するために使用される、好ましくは10ヌクレオチド長より大きい、より好ましくは15ヌクレオチド長より大きい、最も好ましくは18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30ヌクレオチド長の単離されたRNA分子を意味する。19〜25ヌクレオチドの範囲がsiRNAについての最も好ましい大きさである。
【0113】
本発明によるsiRNAは、部分的に精製されたRNA、実質的に純粋なRNA、合成RNA、または組換え生産されたRNA、ならびに1またはそれ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換および/または改変により、天然に生じるRNAとは異なる変化したRNAを含み得る。そのような変化は、siRNAの末端またはsiRNAの1もしくはそれ以上の内部ヌクレオチドなどへの、非ヌクレオチド物質の付加;siRNAをヌクレアーゼ消化に対して抵抗性にする修飾(例えば2'置換リボヌクレオチドの使用もしくは糖−リン酸骨格への修飾);またはデオキシリボヌクレオチドによるsiRNA内の1もしくはそれ以上のヌクレオチドの置換を含み得る。さらに、siRNAは、修飾オリゴヌクレオチドに関して上述したようにその安定性を高めるために、特に1またはそれ以上のホスホロチオエート結合を導入することによって修飾し得る。
【0114】
siRNAの一方の鎖または両方の鎖はまた、3'突出末端を含み得る。本明細書で使用される、「3'突出末端」は、RNA鎖の3'末端から伸長している少なくとも1つの不対ヌクレオチドを指す。従って1つの実施形態では、siRNAは、1〜約6ヌクレオチド(リボヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドを含む)長、好ましくは1〜約5ヌクレオチド長、より好ましくは1〜約4ヌクレオチド長、特に好ましくは約2〜約4ヌクレオチド長の少なくとも1つの3'突出末端を含む。siRNA分子の両方の鎖が3'突出末端を含む実施形態では、突出末端の長さは同じであってもよくまたは各々の鎖について異なってもよい。最も好ましい実施形態では、3'突出末端はsiRNAの両方の鎖に存在し、2ヌクレオチド長である。例えば、本発明のsiRNAの各々の鎖は、ジデオキシチミジル酸(「TT」)またはジウリジル酸(「uu」)の3'突出末端を含み得る。
【0115】
siRNAの安定性を高めるために、3'突出末端を分解に対して安定化することもできる。1つの実施形態では、突出部は、アデノシンまたはグアノシンヌクレオチドなどのプリンヌクレオチドを含むことによって安定化される。あるいは、修飾類似体によるピリミジンヌクレオチドの置換、例えば2'−デオキシチミジンによる3'突出末端内のウリジンヌクレオチドの置換は耐容され、RNAi分解の効率に影響を及ぼさない。特に、2'−デオキシチミジン中に2'−ヒドロキシルが存在しないことは、組織培養培地中での3'突出末端のヌクレアーゼ耐性を有意に増強する。
【0116】
siRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖は、2つの相補的な一本鎖RNA分子を含み得るか、または2つの相補的な部分が塩基対合し、一本鎖の「ヘアピン」領域によって共有結合で連結されている単一分子を含み得る。すなわち、センス領域とアンチセンス領域はリンカー分子を介して共有結合で連結され得る。リンカー分子は、ポリヌクレオチドまたは非ヌクレオチドリンカーであり得る。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、後者のタイプのsiRNA分子のヘアピン領域は、「ダイサー」タンパク質(またはその等価物)によって細胞内で切断され、2つの個別の塩基対合RNA分子のsiRNAを形成すると考えられる。
【0117】
本明細書で使用される、「標的mRNA」は、下方調節のための標的であるRNA分子を指す。
【0118】
pol IIIプロモーターからのRNAの発現は、最初に転写されるヌクレオチドがプリンである場合にのみ効率的であると考えられるので、標的する部位を変化させずにpol III発現ベクターからsiRNAを発現させることができる。
【0119】
本発明によるsiRNAは、標的mRNA配列(「標的配列」)のいずれかにおいて任意の一続きの約19〜25個の連続するヌクレオチドを標的することができる。siRNAについての標的配列を選択するための技術は、例えば、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、2002年10月11日に改訂された、Tuschl T.et al.,「The siRNA User Guide」に示されている。「The siRNA User Guide」は、ワールドワイドウエブ上の、Dr.Thomas Tuschl,Laboratory of RNA Molecular Biology,Rockefeller University,New York,USAによって運営されているウエブサイトで入手可能であり、the Rockefeller Universityのウエブサイトにアクセスして、「siRNA」のキーワードで検索することによって見出される。従って、本発明のsiRNAのセンス鎖は、標的mRNA内の任意の連続する一続きの約19〜約25ヌクレオチドと実質的に同一のヌクレオチド配列を含む。
【0120】
一般に、標的mRNA上の標的配列は、好ましくは開始コドンより50〜100ヌクレオチド下流(すなわち、3'方向)から始まる、標的mRNAに対応する所与のcDNA配列から選択され得る。標的配列は、しかし、5'もしくは3'非翻訳領域、または開始コドンに近接する領域に位置し得る。
【0121】
siRNAは、当業者の公知の多くの技術を用いて入手することができる。例えば、siRNAは、化学合成できるかまたは当技術分野で公知の方法を用いて、例えばその開示全体が参照により本明細書に組み込まれる、Tuschl et al.の米国特許出願公開第2002/0086356号に記載されているショウジョウバエ(Drosophila)インビトロ系を使用して組換え生産できる。
【0122】
好ましくは、siRNAは、適切に保護されたリボヌクレオシドホスホルアミダイトおよび従来のDNA/RNA合成装置を用いて化学合成される。siRNAは、2個の別々の相補的なRNA分子として、または2つの相補的な領域を有する1個のRNA分子として合成することができる。
【0123】
あるいは、siRNAもまた、任意の適切なプロモーターを使用して組換え環状または線状DNAプラスミドから発現させることができる。そのような実施形態は、本明細書でsiRNAの投与または医薬組成物へのsiRNAの組込みに言及する場合、本発明によって包含される。プラスミドから本発明のsiRNAを発現するための適切なプロモーターは、例えばU6またはH1 RNA pol IIIプロモーター配列およびサイトメガロウイルスプロモーターを含む。
【0124】
他の適切なプロモーターの選択は当技術分野の技術範囲内である。本発明の組換えプラスミドはまた、特定の組織または特定の細胞内環境におけるsiRNAの発現のための誘導的プロモーターまたは調節性プロモーターを含み得る。
【0125】
組換えプラスミドから発現されるsiRNAは、培養細胞発現系から標準的な技術によって単離することができるか、または細胞内で発現させることができる。インビボでsiRNAを細胞に送達するための組換えプラスミドの使用は以下でより詳細に論じる。siRNAは、2個の別々の相補的なRNA分子として、または2つの相補的な領域を有する1個のRNA分子として組換えプラスミドから発現させることができる。
【0126】
siRNAを発現するのに適したプラスミドの選択、siRNAを発現するための核酸配列をプラスミドに挿入する方法、および対象とする細胞に組換えプラスミドを送達する方法は、当技術分野の技術範囲内である。
【0127】
siRNAはまた、インビボで組換えウイルスベクターから細胞内で発現させることができる。組換えウイルスベクターは、siRNAをコードする配列およびsiRNA配列を発現するための任意の適切なプロモーターを含む。組換えウイルスベクターはまた、特定の組織または特定の細胞内環境におけるsiRNAの発現のための誘導的プロモーターまたは調節性プロモーターを含み得る。siRNAは、2個の別々の相補的なRNA分子として、または2つの相補的な領域を有する1個のRNA分子として組換えウイルスベクターから発現させることができる。
【0128】
「ペプチド」という用語は、オリゴペプチドおよびポリペプチドを含み、ペプチド結合によって共有結合で連結された2またはそれ以上、好ましくは3またはそれ以上、好ましくは4またはそれ以上、好ましくは6またはそれ以上、好ましくは8またはそれ以上、好ましくは10またはそれ以上、好ましくは13またはそれ以上、好ましくは16またはそれ以上、好ましくは21またはそれ以上、および好ましくは8、10、20、30、40または50まで、特に100までのアミノ酸を含む物質を指す。「タンパク質」という用語は、大きなペプチド、好ましくは100を超えるアミノ酸残基を有するペプチドを指すが、一般に「ペプチド」と「タンパク質」という用語は同義語であり、本明細書では交換可能に使用される。
【0129】
好ましくは、本発明に従って述べるタンパク質およびペプチドは単離されている。「単離されたタンパク質」または「単離されたペプチド」という用語は、タンパク質またはペプチドがその天然環境から分離されていることを意味する。単離されたタンパク質またはペプチドは、基本的に精製された状態であり得る。「基本的に精製された」という用語は、タンパク質またはペプチドが、自然界でまたはインビボで結合している他の物質を基本的に含まないことを意味する。
【0130】
そのようなタンパク質およびペプチドは、例えば抗体の作製において、および免疫学的アッセイもしくは診断アッセイにおいて、または治療薬として使用し得る。本発明に従って述べるタンパク質およびペプチドは、組織または細胞ホモジネートなどの生物学的試料から単離され得、また、多種多様な原核生物または真核生物発現系において組換え発現され得る。
【0131】
本発明のために、タンパク質もしくはペプチドまたはアミノ酸配列の「誘導体」は、アミノ酸挿入変異体、アミノ酸欠失変異体および/またはアミノ酸置換変異体を含む。
【0132】
アミノ酸挿入変異体は、アミノ末端および/またはカルボキシ末端融合、ならびに特定アミノ酸配列における1個または2個またはそれ以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列変異体の場合は、1またはそれ以上のアミノ酸残基がアミノ酸配列内の特定部位に挿入されるが、生じる産物の適切なスクリーニングにより、ランダムな挿入も可能である。
【0133】
アミノ酸欠失変異体は、配列からの1またはそれ以上のアミノ酸の除去を特徴とする。
【0134】
アミノ酸置換変異体は、配列内の少なくとも1個の残基が除去され、別の残基がその位置に挿入されていることを特徴とする。相同なタンパク質またはペプチドの間で保存されていないアミノ酸配列内の位置に修飾が存在することおよび/またはアミノ酸を類似の性質を有する他のアミノ酸で置換することが好ましい。
【0135】
「保存的置換」は、例えば、極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性および/または関与する残基の両親媒性の類似性に基づいて行われ得る。例えば:(a)非極性(疎水性)アミノ酸は、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンを含む;(b)極性中性アミノ酸は、グリシン、セリン、トレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンを含む;(c)正に荷電した(塩基性)アミノ酸は、アルギニン、リシンおよびヒスチジンを含む;ならびに(d)負に荷電した(酸性)アミノ酸は、アスパラギン酸およびグルタミン酸を含む。置換は、典型的には(a)〜(d)の群の中で行われ得る。加えて、グリシンとプロリンは、α−ヘリックスを破壊するそれらの能力に基づき、相互に置換され得る。一部の好ましい置換は、以下の群の中で行われ得る:(i)SとT;(ii)PとG;および(iii)A、V、LおよびI。公知の遺伝暗号、ならびに組換えおよび合成DNA技術を考慮して、当業者は、保存的アミノ酸変異体をコードするDNAを容易に構築することができる。
【0136】
好ましくは、本明細書で述べる特定のアミノ酸配列と上記特定アミノ酸配列の誘導体であるアミノ酸配列との間の類似性の程度、好ましくは相同性の程度は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、さらに一層好ましくは少なくとも90%、または最も好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%または99%である。類似性または相同性の程度は、好ましくは少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約60、少なくとも約80、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約200または250アミノ酸の領域に対して与えられる。好ましい実施形態では、類似性または相同性の程度は、参照アミノ酸配列の全長に対して与えられる。
【0137】
上述したアミノ酸変異体は、公知のペプチド合成技術を用いて、例えば固相合成(Merrifield,1964)および類似の方法によって、または組換えDNA操作などによって容易に作製し得る。置換、挿入または欠失を有するタンパク質およびペプチドを作製するためのDNA配列の操作は、例えばSambrook et al.(1989)において詳細に説明されている。
【0138】
本発明によれば、タンパク質およびペプチドの「誘導体」は、タンパク質およびペプチドの修飾形態を含む。そのような修飾は、任意の化学修飾を含み、炭水化物、脂質および/またはタンパク質もしくはペプチドなどの、タンパク質またはペプチドに関連する任意の分子の単一または複数の置換、欠失および/または付加を含む。「誘導体」という用語はまた、前記タンパク質およびペプチドのすべての機能性の化学的等価物に及ぶ。
【0139】
本発明によれば、タンパク質、ペプチドまたは核酸、例えば腫瘍関連抗原または腫瘍関連核酸の一部またはフラグメントまたは誘導体は、好ましくはそれが由来するタンパク質、ペプチドまたは核酸の機能的特性を有する。そのような機能的特性は、抗体との相互作用、他のペプチドまたはタンパク質との相互作用、核酸の選択的結合および酵素活性を含む。1つの実施形態では、タンパク質、ペプチドまたは核酸の一部またはフラグメントまたは誘導体は、それが由来するタンパク質、ペプチドまたは核酸と免疫学的に等価である。1つの実施形態では、機能的特性は免疫学的特性である。特定の特性は、MHC分子と複合体を形成し、適切な場合、好ましくは細胞傷害性細胞またはTヘルパー細胞を刺激することによって、免疫応答を生じさせる能力である。
【0140】
本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の一部またはフラグメントは、好ましくは腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の少なくとも6、特に少なくとも8、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30または少なくとも50の連続するアミノ酸の配列を含む。本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の一部またはフラグメントは、好ましくは腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の8まで、特に10まで、12まで、15まで、20まで、30までまたは55までの連続するアミノ酸の配列を含む。本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の一部またはフラグメントは、好ましくは、抗原またはアミノ酸配列の非膜貫通部分、特に細胞外部分に対応するまたはそれからなる、腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の部分である。本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の一部またはフラグメントは、MHC分子と共に提示され得、そのように提示された場合、細胞応答を刺激することができる、腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の部分である。
【0141】
「細胞応答」は、腫瘍関連抗原をMHCクラスIまたはクラスIIと共に提示することを特徴とする細胞に対する細胞応答を含むことが意図されている。細胞応答は、「ヘルパー」または「キラー」のいずれかとして働く、T細胞またはTリンパ球と呼ばれる細胞に関する。ヘルパーT細胞(CD4+T細胞とも称される)は、免疫応答を調節することによって中心的役割を果たし、キラー細胞(細胞傷害性T細胞、細胞溶解性T細胞、CD8+T細胞またはCTLとも称される)は、腫瘍細胞を死滅させ、より多くの腫瘍細胞の産生を阻止する。両方の免疫応答が必要であると考えられるが、癌を抑制するためにはCTL応答がより重要であると考えられる。
【0142】
「腫瘍関連抗原をMHCクラスIと共に提示することを特徴とする細胞」または「腫瘍関連抗原をMHCクラスIと共に提示する細胞」または同様の表現は、腫瘍細胞または、MHCクラスI分子に関連して、それが発現する腫瘍関連抗原もしくは、例えば腫瘍関連抗原のプロセシングによる、前記腫瘍関連抗原に由来するフラグメントを提示する抗原提示細胞などの細胞を意味する。同様に、「腫瘍関連抗原をMHCクラスIと共に提示することを特徴とする腫瘍」という用語は、腫瘍関連抗原をMHCクラスIと共に提示することを特徴とする細胞を含む腫瘍を表す。
【0143】
本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の好ましい一部またはフラグメントは、インビボでの細胞傷害性Tリンパ球の刺激に特に適するが、エクスビボ(ex vivo)での治療的養子移入のための、増殖され、刺激されたTリンパ球の生産にも適する。
【0144】
1つの態様では、本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の一部またはフラグメントは、前記腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の配列に由来するアミノ酸配列を含む。好ましくは本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の一部またはフラグメントは、本発明によって同定される腫瘍関連抗原をMHCクラスIと共に提示することを特徴とする細胞に対する細胞応答を刺激することができる、および/またはそれ自体でもしくは免疫原性担体に結合して使用された場合、本発明によって同定される腫瘍関連抗原に特異的に結合する抗体を惹起することができる。好ましくは、本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の一部またはフラグメントは、直接またはプロセシング後に、MHCクラスI分子と共に提示され得る。好ましくは、本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の一部またはフラグメントは、MHCクラスIおよび/もしくはクラスII提示ペプチドであるか、またはMHCクラスIおよび/もしくはクラスII提示ペプチドを生じるようにプロセシングされ得る。好ましくは、本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の一部またはフラグメントは、本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列のフラグメントのアミノ酸配列に実質的に対応するアミノ酸配列を含む。
【0145】
本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の一部またはフラグメントは、本発明により、それ自体でまたは付加的なアミノ酸配列と組み合わせたペプチドまたはペプチド抗原として存在し得る、すなわちそれは、ペプチドまたはペプチド抗原で構成され得る。そのようなペプチドまたはペプチド抗原は、本発明の組成物および方法において有用であり、一般に、本明細書では「腫瘍関連抗原」という用語に包含される。一般に、そのようなペプチドまたはペプチド抗原は、本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の一部またはフラグメントのアミノ酸配列に実質的に対応するアミノ酸配列を含むオリゴペプチドまたはポリペプチドに関する。好ましくは、そのようなペプチドまたはペプチド抗原は、本明細書で同定される腫瘍関連抗原をMHCクラスIと共に提示することを特徴とする腫瘍に対する細胞応答を刺激することができる、および/または本発明によって同定される腫瘍関連抗原に特異的に結合する抗体を惹起することができる。
【0146】
ペプチドまたはペプチド抗原が直接、すなわちプロセシングされずに、特に切断されずに提示される場合、それは、MHC分子、特にMHCクラスI分子に結合するのに適した長さを有し、好ましくは7〜20アミノ酸長、より好ましくは7〜12アミノ酸長、より好ましくは8〜11アミノ酸長、特に9または10アミノ酸長である。好ましくは、直接提示されるペプチドまたはペプチド抗原の配列は、本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列のアミノ酸配列に由来する、すなわちその配列は、本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列のフラグメントに実質的に対応し、好ましくは完全に同一である。ペプチドまたはペプチド抗原がプロセシング後に、特に切断後に提示される場合、プロセシングによって生成されるペプチドは、MHC分子、特にMHCクラスI分子に結合するのに適した長さを有し、好ましくは7〜20アミノ酸長、より好ましくは7〜12アミノ酸長、より好ましくは8〜11アミノ酸長、特に9または10アミノ酸長である。好ましくは、プロセシング後に提示されるペプチドの配列は、本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列のアミノ酸配列に由来する、すなわちその配列は、本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列のフラグメントに実質的に対応し、好ましくは完全に同一である。従って、本発明によるペプチドまたはペプチド抗原は、1つの実施形態では、本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列のフラグメントに実質的に対応し、好ましくは完全に同一である、7〜20アミノ酸長、より好ましくは7〜12アミノ酸長、より好ましくは8〜11アミノ酸長、特に9または10アミノ酸長の配列を含み、ペプチドまたはペプチド抗原のプロセシング後に、提示されるペプチドを形成する。しかし、ペプチドまたはペプチド抗原はまた、上記で述べた配列よりもさらに一層長い、本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列のフラグメントに実質的に対応し、好ましくは完全に同一である配列を含み得る。1つの実施形態では、ペプチドまたはペプチド抗原は、本明細書で述べる腫瘍関連抗原またはアミノ酸配列の配列全体を含み得る。
【0147】
TCR認識には影響を及ぼさないが、MHCへの結合の安定性を改善する残基において異なるアミノ酸配列を有するペプチドは、ペプチドまたはペプチド抗原の免疫原性を改善することができ、本明細書では「最適化ペプチド」と称され得る。これらの残基のいずれが、MHCまたはTCRのどちらかへの結合に影響を及ぼす可能性がより高いと考えられるかについての既存の知識を利用して、実質的に対応するペプチドの設計への合理的なアプローチを使用し得る。機能性である生じたペプチドは本明細書において企図される。
【0148】
1つの実施形態では、腫瘍関連抗原をコードする核酸の一部またはフラグメントは、本発明によれば、上記で定義されたように、少なくとも腫瘍関連抗原および/または上記腫瘍関連抗原の一部またはフラグメントをコードする、上記核酸の部分に関する。腫瘍関連抗原をコードする核酸の一部またはフラグメントは、好ましくはオープンリーディングフレームに対応する、核酸のその部分である。
【0149】
本発明によれば、特定の実施形態は、腫瘍関連抗原に由来する「ドミナントネガティブ」タンパク質またはペプチドを提供することを含むべきである。ドミナントネガティブタンパク質またはペプチドは、細胞機構と相互作用することにより、活性タンパク質またはペプチドを細胞機構とのその相互作用から排除するまたは活性タンパク質またはペプチドと競合し、それによって前記活性タンパク質の作用を低下させる、不活性なタンパク質またはペプチド変異体である。
【0150】
標的タンパク質に特異的に結合する特異的抗体を含む抗血清は、様々な標準的工程によって調製できる;例えば、「Monoclonal Antibodies:A Practical Approach」by Philip Shepherd,Christopher Dean ISBN 0−19−963722−9;「Antibodies:A Laboratory Manual」by Ed Harlow,David Lane,ISBN:0879693142および「Using Antibodies:A Laboratory Manual:Portable Protocol NO」by Edward Harlow,David Lane,Ed Harlow ISBN 0879695447参照。それにより、複合体膜タンパク質をそれらの天然形態で認識するアフィン(affine)および特異的抗体を作製することも可能である(Azorsa et al.,J.Immunol.Methods 229:35−48,1999;Anderson et al.,J.Immunol.143:1899−1904,1989;Gardsvoll,J.Immunol.Methods 234:107−116,2000)。これは、治療的に使用される予定の抗体の作製のために特に適切であるが、多くの診断適用にも適切である。これに関して、全長タンパク質、細胞外部分配列ならびに生理的に折りたたまれた形態で標的分子を発現する細胞で免疫することが可能である。
【0151】
モノクローナル抗体は、伝統的にハイブリドーマ技術を用いて作製される(技術的詳細については:「Monoclonal Antibodies:A Practical Approach」by Philip Shepherd,Christopher Dean ISBN 0−19−963722−9;「Antibodies:A Laboratory Manual」by Ed Harlow,David Lane ISBN:0879693142;「Using Antibodies:A Laboratory Manual:Portable Protocol NO」by Edward Harlow,David Lane,Ed Harlow ISBN:0879695447参照)。
【0152】
抗体分子の小さな部分であるパラトープだけが、抗体がそのエピトープに結合することに関与することは公知である(Clark,W.R.(1986),The Experimental Foundations of Modern Immunology,Wiley & Sons,Inc.,New York;Roitt,I.(1991),Essential Immunology,7th Edition,Blackwell Scientific Publications,Oxford参照)。pFc'およびFc領域は、例えば、補体カスケードのエフェクターであるが、抗原結合には関与しない。F(ab')2フラグメントと称される、pFc'領域が酵素的に除去されたまたはpFc'領域なしで生成された抗体は、完全抗体の両方の抗原結合部位を担持する。同様に、Fabフラグメントと称される、Fc領域が酵素的に除去されたまたは前記Fc領域なしで生成された抗体は、無傷抗体分子の一方の抗原結合部位を担持する。さらに、Fabフラグメントは、共有結合で連結された抗体の軽鎖およびFdと称される、前記抗体の重鎖の一部からなる。Fdフラグメントは抗体特異性の主要決定基であり(1つのFdフラグメントは、抗体の特異性を変化させずに10までの異なる軽鎖と結合できる)、Fdフラグメントは、単離されたとき、エピトープに結合する能力を保持する。
【0153】
抗体の抗原結合部分内に位置するのは、抗原エピトープと直接相互作用する相補性決定領域(CDR)およびパラトープの三次構造を維持するフレームワーク領域(FR)である。IgG免疫グロブリンの重鎖のFdフラグメントと軽鎖の両方が、各々の場合に3つの相補性決定領域(CDR1〜CDR3)によって分けられた4つのフレームワーク領域(FR1〜FR4)を含む。CDR、特にCDR3領域、さらに一層特定すると重鎖のCDR3領域は、抗体特異性に大きく関与する。
【0154】
哺乳動物抗体の非CDR領域は、もとの抗体のエピトープに対する特異性を保持しつつ、同じかまたは異なる特異性を有する抗体の類似領域によって置換され得ることが公知である。これは、機能的抗体を生産するために、非ヒトCDRがヒトFRおよび/またはFc/pFc'領域に共有結合で連結された「ヒト化」抗体の開発を可能にした。
【0155】
もう1つの例として、国際公開公報第WO92/04381号は、マウスFR領域の少なくとも一部がヒト起源のFR領域で置換されたヒト化マウスRSV抗体の生産と使用を述べている。抗原結合能力を有する無傷抗体のフラグメントを含む、この種の抗体は、しばしば「キメラ」抗体と称される。
【0156】
本発明によれば、「抗体」という用語はまた、抗体のF(ab')2、Fab、FvおよびFdフラグメント、Fcおよび/またはFRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖CDR3領域が相同なヒトまたは非ヒト配列で置換されているキメラ抗体、FRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖CDR3領域が相同なヒトまたは非ヒト配列で置換されているキメラF(ab')2フラグメント抗体、FRおよび/またはCDR1および/またはCDR2および/または軽鎖CDR3領域が相同なヒトまたは非ヒト配列で置換されているキメラFabフラグメント抗体、FRおよび/またはCDR1および/またはCDR2領域が相同なヒトまたは非ヒト配列で置換されているキメラFdフラグメント抗体を包含する。「抗体」という用語はまた、「一本鎖」抗体を含む。
【0157】
本発明はまた、腫瘍関連抗原に特異的に結合するタンパク質およびペプチドを含む。この種の結合物質は、例えば、単に溶液中にて固定化形態でまたはファージディスプレイライブラリーとして作製され得る縮重ペプチドライブラリーによって提供され得る。同様に、1またはそれ以上のアミノ酸を有するペプチドのコンビナトリアルライブラリーを作製することが可能である。ペプトイドおよび非ペプチド合成残基のライブラリーも作製し得る。
【0158】
抗体はまた、腫瘍関連抗原を発現する細胞および組織を提示するための特異的診断物質に連結し得る。それらはまた、治療上有用な物質にも連結し得る。
【0159】
診断物質または診断薬は、(i)検出可能なシグナルを提供する;(ii)第一もしくは第二標識によって提供される検出可能なシグナルを修飾するように第二標識と相互作用する、例えばFRET(蛍光共鳴エネルギー転移);(iii)電荷、疎水性、形状もしくは他の物理的パラメータによって運動性、例えば電気泳動移動度に影響を及ぼす;または(iv)捕捉部分、例えば親和性、抗体/抗原もしくはイオン錯体形成を提供する、ように機能する任意の標識を含む。標識として適切であるのは、蛍光標識、発光標識、発色団標識、放射性同位体標識、同位体標識、好ましくは安定な同位体標識、同重体標識、酵素標識、粒子標識、特に金属粒子標識、磁性粒子標識、ポリマー粒子標識、ビオチンなどの有機低分子、受容体のリガンドまたは細胞接着タンパク質もしくはレクチンなどの結合分子、結合物質の使用によって検出できる核酸および/またはアミノ酸残基を含む標識配列等のような構造体である。診断物質は、非限定的に、硫酸バリウム、イオセタム酸、イオパノ酸、カルシウムイポデート、ジアトリゾ酸ナトリウム、ジアトリゾ酸メグルミン、メトリザミド、チロパノ酸ナトリウム、ならびにフッ素−18および炭素−11などの陽電子放射体、ヨウ素−123、テクネチウム−99m、ヨウ素−131およびインジウム−111などのγ放射体、フッ素およびガドリニウムなどの核磁気共鳴のための核種を含む放射性診断物質を含む。
【0160】
本発明によれば、「治療上有用な物質」、「治療物質」または「治療薬」という用語は、治療効果を及ぼし得る任意の分子を意味する。本発明によれば、治療上有用な物質は、好ましくは1またはそれ以上の腫瘍関連抗原を発現する細胞へと選択的に誘導され、抗癌剤、放射性ヨウ素標識化合物などの放射性化合物、毒素、細胞増殖抑制性または細胞溶解性薬剤等を含む。抗癌剤は、例えば、アミノグルテチミド、アザチオプリン、硫酸ブレオマイシン、ブスルファン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シクロスポリン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、タキソール、エトポシド、フルオロウラシル、インターフェロンα、ロムスチン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトタン、塩酸プロカルバジン、チオグアニン、硫酸ビンブラスチンおよび硫酸ビンクリスチンを含む。他の抗癌剤は、例えば、Goodman and Gilman,「The Pharmacological Basis of Therapeutics」,8th Edition,1990,McGraw−Hill,Inc.、特にChapter 52(Antineoplastic Agents(Paul Calabresi and Bruce A.Chabner)に記載されている。毒素は、アメリカヤマゴボウ(pokeweed)抗ウイルスタンパク質などのタンパク質、コレラ毒素、百日咳毒素、リシン、ゲロニン、アブリン、ジフテリア外毒素またはシュードモナス(Pseudomonas)外毒素であり得る。毒素残基はまた、コバルト−60などの高エネルギーを放出する放射性核種であり得る。
【0161】
「主要組織適合遺伝子複合体」または「MHC」という用語は、すべての脊椎動物に存在する遺伝子の複合体に関する。MHCタンパク質または分子は、ペプチドに結合して、T細胞受容体(TCR)による認識のためにそれらを提示することにより、正常な免疫反応におけるリンパ球と抗原提示細胞の間のシグナル伝達に関与する。MHC分子は、細胞内プロセシング画分内でペプチドに結合し、これらのペプチドをT細胞による認識のために抗原提示細胞の表面に提示する。HLAとも称されるヒトMHC領域は、第6番染色体上に位置し、クラスIおよびクラスII領域を含む。本発明のすべての態様の1つの好ましい実施形態では、MHC分子はHLA分子である。
【0162】
本明細書で使用される「低減する」または「阻害する」は、参照試料(例えばsiRNAで処理されていない試料)と比較してレベル、例えばタンパク質またはmRNAのレベルの好ましくは20%またはそれ以上、より好ましくは50%またはそれ以上、最も好ましくは75%またはそれ以上の全体的低下を生じさせる能力を意味する。RNAまたはタンパク質発現のこの低減または阻害は、標的mRNAの切断または分解を介して起こり得る。タンパク質発現または核酸発現に関するアッセイは当技術分野において公知であり、例えば、タンパク質発現についてはELISA、ウエスタンブロット分析、RNAについてはノーザンブロット法またはRNアーゼプロテクションアッセイを含む。
【0163】
「患者」という用語は、本発明によれば、ヒト、非ヒト霊長動物または別の動物、特にウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコなどの哺乳動物またはマウスおよびラットなどのげっ歯動物を意味する。特に好ましい実施形態では、患者はヒトである。
【0164】
本発明によれば、「増大した」または「増大した量」という用語は、好ましくは少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%または少なくとも100%の増加を指す。物質の量はまた、試験試料では検出可能であるが参照試料中には存在しないまたは検出不能である場合も、参照試料と比較して生物学的試料などの試験試料において増大している。
【0165】
本発明によれば、「疾患」という用語は、腫瘍関連核酸および/または腫瘍関連抗原が発現されるまたは異常発現される何らかの病的状態を指す。本発明によれば、「腫瘍」または「腫瘍性疾患」という用語は、細胞(新生細胞または腫瘍細胞と呼ばれる)の異常増殖によって形成される腫脹または病変を指す。「腫瘍細胞」とは、急速で制御されない細胞増殖によって成長し、新たな増殖を開始させた刺激が停止した後も成長し続ける異常細胞を意味する。腫瘍は、構造機構および正常組織との機能的協調の部分的または完全な欠如を示し、通常、良性、前悪性または悪性であり得る明確な組織塊を形成する。好ましくは、本発明による腫瘍性疾患は、癌疾患、すなわち悪性疾患であり、腫瘍細胞は癌細胞である。好ましくは、腫瘍性疾患は、本発明によって同定される腫瘍関連核酸および/または腫瘍関連抗原が発現されるまたは異常発現される細胞を特徴とし、腫瘍細胞または循環もしくは転移性腫瘍細胞は、本発明によって同定される腫瘍関連核酸および/または腫瘍関連抗原の発現または異常発現する。好ましくは、腫瘍性疾患、腫瘍細胞または循環もしくは転移性腫瘍細胞は、本発明によって同定される腫瘍関連抗原をMHCクラスIと共に提示することを特徴とする。
【0166】
「異常発現」は、本発明によれば、健常個体における状態と比較して、発現が変化している、好ましくは増大していることを意味する。発現の増大は、少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%または少なくとも100%の増加を指す。1つの実施形態では、発現は疾患組織においてのみ認められ、健常組織における発現は、抑制されているかまたは基本的に抑制されている。そのような疾患の一例は癌であり、本発明による「癌」という用語は、白血病、精上皮腫、黒色腫、奇形腫、リンパ腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、直腸癌、子宮内膜癌、腎癌、副腎癌、甲状腺癌、血液癌、皮膚癌、脳の癌、子宮頸癌、腸癌(intestinal cancer)、肝癌、結腸癌、胃癌、腸癌(intestine cancer)、頭頸部癌、消化器癌、リンパ節癌、食道癌、結腸直腸癌、膵癌、耳鼻咽喉(ENT)癌、乳癌、前立腺癌、子宮の癌、卵巣癌および肺癌ならびにそれらの転移を含む。その例は、肺癌腫、乳癌腫、前立腺癌腫、結腸癌腫、腎細胞癌腫、子宮頸癌腫、または上述した癌型または腫瘍の転移である。本発明による癌という用語はまた、癌の転移を包含する。
【0167】
「転移」とは、そのもとの部位から身体の別の部分への癌細胞の広がりを意味する。転移の形成は非常に複雑な過程であり、原発腫瘍からの悪性細胞の分離、細胞外マトリックスの侵襲、体腔および脈管に入るための内皮基底膜の貫入、および次に、血液によって輸送された後、標的器官の浸潤に依存する。最後に、標的部位における新たな腫瘍の成長は血管新生に依存する。腫瘍転移は、しばしば原発腫瘍が除去された後でも起こり、これは、腫瘍細胞または成分が残存し、転移能を発現し得るからである。1つの実施形態では、本発明による「転移」という用語は、原発腫瘍および所属リンパ節系から離れた転移に関連する「遠隔転移」に関する。
【0168】
本発明によれば、生物学的試料は、体液を含む組織試料および/または細胞試料であり得、パンチ生検を含む組織生検、および血液、気管支吸引液、痰、尿、糞便または他の体液を採取することなどによる、従来の方法で入手し得る。1つの実施形態では、生物学的試料は、本明細書で同定される標的核酸または標的抗原の発現と癌疾患の間の結びつきが本明細書で明らかにされる組織から得る。1つの実施形態では、生物学的試料は、正常組織と比較して、癌組織における本明細書で同定される標的核酸または標的抗原の過剰発現が本明細書で明らかにされる組織から得る。この実施形態では、本明細書で開示される診断方法は、前記組織の癌を診断することを目的とする。例えば肺癌の場合は、試料は、肺組織を含む試料であり得る。本発明によれば、「生物学的試料」という用語はまた、生物学的試料の画分または単離物、例えば核酸およびペプチド/タンパク質単離物のような加工された生物学的試料を包含する。好ましくは、本発明による「生物学的試料」という用語は、胎盤組織に由来する試料または癌に罹患していない場合でも本明細書で同定される標的核酸または標的抗原の発現を示す組織に由来する試料を含まない。
【0169】
本発明の一部の態様は、以下のように要約できる能動または受動免疫治療アプローチを用いて、本発明によって同定される腫瘍関連核酸および腫瘍関連抗原を利用した腫瘍性疾患、特に癌疾患の免疫療法を想定する:
【0170】
免疫療法
I.能動免疫療法(「癌ワクチン」)
以下のものでの免疫する:
i)抗原またはペプチド(天然または修飾)
ii)抗原またはペプチドをコードする核酸
iii)抗原またはペプチドをコードする組換え細胞
iv)抗原またはペプチドをコードする組換えウイルス
v)抗原もしくはペプチド(天然もしくは修飾)でパルスした、または抗原もしくはペプチドをコードする核酸でトランスフェクトした抗原提示細胞
【0171】
II.受動免疫療法(「養子免疫療法」)
vi)抗原を認識する抗体またはT細胞受容体の移入
vii)抗原(バルクまたはクローン化集団)に対してインビトロで感作された細胞の移入
viii)抗原を認識し、好ましくは腫瘍特異的クラスI MHC提示ペプチドに対して応答性であるT細胞受容体をコードする核酸で形質導入したエフェクター細胞(または幹細胞)の移入
【0172】
樹状細胞(DC)などの抗原提示細胞(APC)は、MHCクラスI提示ペプチド抗原もしくは腫瘍溶解産物のいずれかを負荷する、または腫瘍関連抗原、特にペプチド抗原をコードするアデノウイルスを用いた形質導入などによって核酸を導入することができる。
【0173】
好ましい実施形態では、本発明の抗腫瘍ワクチンは、ペプチド抗原を負荷したAPCを含有する。これに関して、プロトコールは、人為的にペプチド抗原を提示するように操作されたDCのインビトロ培養/分化に依存し得る。遺伝的に操作されたDCの生産は、腫瘍関連抗原またはペプチド抗原をコードする核酸をDCに導入することを含み得る。mRNAのDCへの導入は、強力な抗腫瘍免疫を刺激する有望な抗原負荷技術である。
【0174】
受動抗腫瘍免疫療法のために使用される場合、抗体は、標的化細胞毒性、すなわち腫瘍細胞の死滅を提供するために治療エフェクター部分、例えば放射性標識、細胞毒、治療酵素、アポトーシスを誘導する物質等に結合されてもよくまたは結合されなくてもよい。本発明の1つの実施形態では、そのような抗体またはフラグメントを、標識または非標識形態で、単独でまたは他の治療薬、例えば癌治療に適したシスプラチン、メトトレキサート、アドリアマイシン等のような化学療法剤と共に投与する。
【0175】
好ましくは、本明細書で述べる抗体は、補体依存性細胞傷害(CDC)媒介性溶解、抗体依存性細胞傷害(ADCC)媒介性溶解、アポトーシス、同型接着、および/または食作用を誘導することによって、好ましくはCDC媒介性溶解および/またはADCC媒介性溶解を誘導することによって細胞の死滅を媒介する。本明細書で述べる抗体は、好ましくは免疫系の成分と、好ましくはADCCまたはCDCを介して相互作用する。しかし、本発明の抗体はまた、単に細胞表面の腫瘍関連抗原に結合することによって、従って、例えば細胞の増殖をブロックすることによっても作用を及ぼし得る。
【0176】
ADCCは、好ましくは標的細胞が抗体によってマークされることを必要とする、本明細書で述べるエフェクター細胞、特にリンパ球の細胞死滅能力を表す。
【0177】
ADCCは、好ましくは、抗体が腫瘍細胞上の抗原に結合し、抗体Fcドメインが免疫エフェクター細胞の表面のFc受容体(FcR)に係合する場合に起こる。Fc受容体のいくつかのファミリーが同定されており、特定の細胞集団は、定められたFc受容体を特徴的に発現する。ADCCは、様々な程度の即時腫瘍破壊を直接誘導する機構とみなすことができ、前記機構はまた、抗原提示および腫瘍に対するT細胞応答の誘導も導く。好ましくは、ADCCのインビボでの誘導は、抗腫瘍T細胞応答および宿主由来の抗体応答を導く。
【0178】
CDCは、抗体によって指令され得るもう1つの細胞死滅方法である。IgMは補体活性化のために最も有効なアイソタイプである。IgG1およびIgG3も、古典的補体活性化経路を介してCDCを指令するうえで非常に有効である。好ましくは、このカスケードにおいて、抗原−抗体複合体の形成は、IgG分子などの関与抗体分子のCH2ドメイン上のごく近接する多数のC1q結合部位の暴露を生じさせる(C1qは補体C1の3つのサブ成分の1つである)。好ましくは、これらの暴露されたC1q結合部位は、それまでの低親和性C1q−IgG相互作用を高いアビディティーの相互作用へと変換し、それが、一連の他の補体タンパク質を含む事象のカスケードを開始させ、エフェクター細胞化学走性/活性化物質C3aおよびC5aのタンパク質分解性放出をもたらす。好ましくは、補体カスケードは、細胞内および細胞外への水と溶質の自由な通過を促進し、アポトーシスを導き得る細胞膜の孔を作り出す、膜傷害性複合体の形成で終了する。
【0179】
腫瘍関連抗原を認識できる免疫細胞(場合により遺伝的に修飾された)での受動免疫療法は、選択された患者において癌の退縮を媒介するのに有効である。これらの技術は、腫瘍反応性T細胞のクローン化またはポリクローナル培養物のエクスビボでの再活性化と増殖に基づき得る。培養後、T細胞をIL−2と共に患者に再注入し得る。ヒトリンパ球を、抗原提示細胞上に提示される腫瘍ペプチド抗原に対してインビトロで感作するインビトロ技術が開発されている。インビトロでの反復刺激によって、ヒト腫瘍関連抗原を認識する大きな能力を備えた細胞を導出することができる。これらの細胞の養子移入は、従来通りに増殖された細胞よりも、インビボで腫瘍退縮を媒介するのにより有効であり得る。
【0180】
本発明によれば、「免疫反応性細胞」という用語は、適切な刺激によって免疫細胞(B細胞、Tヘルパー細胞または細胞溶解性T細胞など)へと成熟することができる細胞を意味する。免疫反応性細胞は、CD34+造血幹細胞、未熟および成熟T細胞ならびに未熟および成熟B細胞を含む。腫瘍関連抗原を認識する細胞溶解性細胞またはTヘルパー細胞の生産を所望する場合は、免疫反応性細胞を、細胞溶解性T細胞およびTヘルパー細胞の産生、分化および/または選択を促進する条件下で腫瘍関連抗原を発現する細胞と接触させる。T細胞前駆体の細胞溶解性T細胞への分化は、抗原に暴露された場合、免疫系のクローン選択に類似する。
【0181】
「T細胞」および「Tリンパ球」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、Tヘルパー細胞および細胞溶解性T細胞を含む細胞傷害性T細胞を包含する。
【0182】
一部の治療方法は、1またはそれ以上の腫瘍関連抗原を提示する癌細胞などの抗原提示細胞の溶解を生じさせる、患者の免疫系の反応に基づく。これに関連して、例えば腫瘍関連抗原とMHC分子との複合体に特異的な自家細胞傷害性Tリンパ球を、細胞異常を有する患者に投与する。インビトロでのそのような細胞傷害性Tリンパ球の生産は公知である。T細胞を分化させる方法の一例は、国際公開広報第WO−A−9633265号に見出される。一般に、血液細胞などの細胞を含む試料を患者から採取し、その細胞を、前記複合体を提示し、細胞傷害性Tリンパ球(例えば樹状細胞)の増殖を生じさせることができる細胞と接触させる。標的細胞は、COS細胞などの遺伝子導入された細胞であり得る。これらの形質転換体は、所望複合体をそれらの表面に提示し、細胞傷害性Tリンパ球と接触させた場合、後者の増殖を刺激する。次に、クローン増殖した自家細胞傷害性Tリンパ球を患者に投与する。
【0183】
抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球を選択するもう1つの方法では、細胞傷害性Tリンパ球の特異的クローンを得るためにMHCクラスI分子/ペプチド複合体の蛍光性四量体を使用する(Altman et al.,Science 274:94−96,1996;Dunbar et al.,Curr.Biol.8:413−416,1998)。
【0184】
本発明はまた、養子移入と称される治療方法を含み(Greenberg,J.Immunol.136(5):1917,1986;Riddel et al.,Science 257:238,1992;Lynch et al.,Eur.J.Immunol.21:1403−1410,1991;Kast et al.,Cell 59:603−614,1989)、この方法では、所望複合体を提示する細胞(例えば樹状細胞)を、治療される患者の細胞傷害性Tリンパ球と組み合わせて、特異的細胞傷害性Tリンパ球の増殖を生じさせる。増殖した細胞傷害性Tリンパ球を、次に、特異的複合体を提示する特定の異常細胞によって特徴づけられる細胞異常を有する患者に投与する。細胞傷害性Tリンパ球は、その後異常細胞を溶解し、それによって所望治療効果を達成する。
【0185】
さらに、所望複合体を提示する細胞(例えば樹状細胞)を、高い親和性で特異的細胞傷害性Tリンパ球の増殖を生じさせ得る健常個体または別の種(例えばマウス)の細胞傷害性Tリンパ球と組み合わせ得る。これらの増殖した特異的Tリンパ球の高親和性T細胞受容体をクローニングし、場合により種々の程度にヒト化して、次に、このようにして得られたT細胞受容体を、例えばレトロウイルスベクターを使用して、患者のT細胞に遺伝子導入することを介して形質導入し得る。その後、これらの遺伝的に変化したTリンパ球を使用して養子移入を実施し得る(Stanislawski et al.,Nat Immunol.2:962−70,2001;Kessels et al.,Nat Immunol.2:957−61,2001)。
【0186】
養子導入は、本発明により適用できる唯一の治療形態ではない。細胞傷害性Tリンパ球はまた、それ自体公知の方法でインビボにて作製し得る。1つの方法は、複合体を発現する非増殖性細胞を使用する。本明細書で使用する細胞は、照射された腫瘍細胞または複合体の提示に必要な一方もしくは両方の遺伝子(すなわち抗原性ペプチドと提示MHC分子)を導入された細胞のような、通常は複合体を発現する細胞である。もう1つの好ましい形態は、例えばリポソーム移入または電気穿孔法によって細胞に導入し得る、組換えRNAの形態での腫瘍関連抗原の導入である。生じる細胞は対象複合体を提示し、自家細胞傷害性Tリンパ球によって認識されて、その後増殖する。
【0187】
抗原提示細胞への組込みをインビボで可能にするために、腫瘍関連抗原またはそのフラグメントを補助薬と組み合わせることによって同様の作用を達成することができる。腫瘍関連抗原またはそのフラグメントは、タンパク質として、DNA(例えばベクター内の)として、またはRNAとして示され得る。腫瘍関連抗原は、MHC分子に対するペプチドパートナーを生じるようにプロセシングされるが、そのフラグメントはさらなるプロセシングを必要とせずに提示され得る。後者は特に、これらがMHC分子に結合できる場合に該当する。有効な免疫応答のために必要とされるTヘルパー細胞応答も生じさせ得る形態でもあるため、完全な抗原が樹状細胞によってインビボでプロセシングされる投与形態が好ましい(Ossendorp et al.,Immunol Lett.74:75−9,2000;Ossendorp et al.,J.Exp.Med.187:693−702,1998)。一般に、例えば皮内注射によって有効量の腫瘍関連抗原を患者に投与することが可能である。しかし、注射はまた、リンパ節内にも実施し得る(Maloy et al.,Proc Natl Acad Sci USA 98:3299−303,2001)。
【0188】
本発明に従って述べる医薬組成物および治療方法はまた、本明細書で述べる疾患を治療的に処置する、または予防するための免疫またはワクチン接種のためにも使用し得る。本発明によれば、「免疫」または「ワクチン接種」という用語は、好ましくは抗原に対する免疫応答の増大または活性化に関する。腫瘍関連抗原またはそれをコードする核酸を使用することによる癌への免疫効果を試験するために動物モデルを用いることが可能である。例えば、ヒト癌細胞をマウスに導入して腫瘍を生じさせ、腫瘍関連抗原をコードする1またはそれ以上の核酸を投与し得る。癌細胞への効果(例えば腫瘍径の縮小)を、核酸による免疫の有効性についての尺度として測定し得る。
【0189】
免疫またはワクチン接種のための組成物の一部として、好ましくは1またはそれ以上の腫瘍関連抗原またはその刺激性フラグメントを、免疫応答を誘導するためまたは免疫応答を増大させるために1またはそれ以上の補助薬と共に投与する。補助薬は、抗原に組み込まれるまたは抗原と共に投与される、免疫応答を増強する物質である。補助薬は、抗原貯蔵所を提供し(細胞外にまたはマクロファージ中に)、マクロファージを活性化するおよび/または特定リンパ球を刺激することによって免疫応答を増強し得る。補助薬は公知であり、非限定的に、モノホスホリル脂質A(MPL,SmithKline Beecham)、QS21(SmithKline Beecham)、DQS21(SmithKline Beecham;国際公開広報第WO96/33739号)、QS7、QS17、QS18およびQS−L1などのサポニン(So et al.,Mol.Cells 7:178−186,1997)、不完全フロイントアジュバント、完全フロイントアジュバント、ビタミンE、モンタニド、ミョウバン、CpGオリゴヌクレオチド(Kreig et al.,Nature 374:546−9,1995参照)ならびにスクアランおよび/またはトコフェロールなどの生分解性油から調製される様々な油中水型エマルションを含む。好ましくは、ペプチドをDQS21/MPLとの混合物中で投与する。DQS21対MPLの比率は、典型的には約1:10〜10:1、好ましくは約1:5〜5:1、特に約1:1である。ヒトへの投与に関しては、ワクチン製剤は、典型的には約1μg〜約100μgの範囲内のDQS21およびMPLを含有する。
【0190】
患者の免疫応答を刺激する他の物質も投与し得る。例えば、リンパ球に対するそれらの調節特性の故に、サイトカインをワクチン接種において使用することが可能である。そのようなサイトカインは、例えば、ワクチンの防御作用を高めることが示されたインターロイキン12(IL−12)(Science 268:1432−1434,1995参照)、GM−CSFおよびIL−18を含む。
【0191】
免疫応答を増強し、それ故ワクチン接種において使用し得る数多くの化合物が存在する。前記化合物は、B7−1およびB7−2(それぞれCD80およびCD86)のようなタンパク質または核酸の形態で提供される共刺激性分子を含む。
【0192】
本発明はまた、核酸、タンパク質またはペプチドの投与を提供する。タンパク質およびペプチドは、それ自体公知の方法で投与し得る。1つの実施形態では、核酸をエクスビボ法によって、すなわち患者から細胞を取り出し、腫瘍関連抗原を組み込むために上記細胞を遺伝的に修飾して、改変された細胞を患者に再導入することによって投与する。これは一般に、遺伝子の機能的コピーをインビトロで患者の細胞に導入することおよび遺伝的に改変された細胞を患者に再導入することを含む。遺伝子の機能的コピーは、遺伝的に改変された細胞において該遺伝子が発現されることを可能にする調節エレメントの機能的制御下にある。形質転換および形質導入法は当業者に公知である。本発明はまた、ウイルスおよび標的制御リポソームなどのベクターを使用することによってインビボで核酸を投与することを提供する。本発明により、核酸の投与または医薬組成物への組込みに言及する場合、これは、核酸がそのようなベクター中に存在する実施形態を包含する。
【0193】
好ましい実施形態では、腫瘍関連抗原をコードする核酸を投与するためのウイルスまたはウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルスおよび弱毒化ポックスウイルスを含むポックスウイルス、セムリキ森林ウイルス、レトロウイルス、シンドビスウイルスおよびTyウイルス様粒子からなる群より選択される。アデノウイルスおよびレトロウイルスが特に好ましい。レトロウイルスは、典型的には複製欠損型である(すなわち感染性粒子を生成することができない)。
【0194】
インビトロまたはインビボで核酸を細胞に導入する方法は、核酸のリン酸カルシウム沈殿物の導入、DEAEと結合した核酸の導入、対象核酸を担持する上記ウイルスによる導入または感染、リポソームを介した導入等を含む。特定の実施形態では、核酸に特定の細胞を指向させることが好ましい。そのような実施形態では、核酸を細胞に投与するために使用される担体(例えばレトロウイルスまたはリポソーム)は、結合した標的制御分子を有し得る。例えば、標的細胞上の表面膜タンパク質に特異的な抗体または標的細胞上の受容体に対するリガンドなどの分子を核酸担体に組み込み得るまたは結合し得る。好ましい抗体は、腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体を含む。リポソームを介した核酸の投与を所望する場合は、標的の制御および/または取込みを可能にするために、エンドサイトーシスに関連する表面膜タンパク質に結合するタンパク質をリポソーム製剤に組み込み得る。そのようなタンパク質は、特定の細胞型に特異的なキャプシドタンパク質またはそのフラグメント、インターナライズされるタンパク質に対する抗体、細胞内部位を指向するタンパク質等を含む。
【0195】
本発明の治療組成物は、医薬的に適合性の製剤中で投与し得る。そのような製剤は、通常、医薬的に適合性の濃度の塩、緩衝物質、防腐剤、担体、補助薬などの補足的免疫増強物質、例えばCpGオリゴヌクレオチド、サイトカイン、ケモカイン、サポニン、GM−CSFおよび/またはRNAならびに、適切な場合は、他の治療的に活性な化合物を含有し得る。
【0196】
本発明の治療的に活性な化合物は、注射または注入を含む任意の従来経路によって投与し得る。投与は、例えば経口的、静脈内、腹腔内、筋肉内経路、皮下的または経皮的に実施し得る。好ましくは、抗体は、肺エアロゾルとして治療的に投与される。アンチセンス核酸は、好ましくは徐放静脈内投与によって投与される。
【0197】
本発明の組成物は有効量で投与される。「有効量」は、単独でまたはさらなる投与物と共に所望反応または所望効果を達成する量を指す。1またはそれ以上の腫瘍関連抗原の発現を特徴とする特定疾患または特定状態の治療の場合、所望反応は、好ましくは疾患の経過の阻止に関する。これは、疾患の進行を緩慢にすること、特に疾患の進行を妨げるまたは逆転させることを含む。疾患または状態の治療における所望反応はまた、前記疾患または前記状態の発症の遅延または発症の防止であり得る。本発明によれば、癌の診断または治療はまた、既に形成されたまたは今後形成される癌転移の診断または治療を含む。本発明によれば、「治療」という用語は、治療的処置および予防的処置、すなわち防止を含む。
【0198】
本発明の組成物の有効量は、治療される状態、疾患の重症度、患者の年齢、生理的状態、大きさおよび体重を含む患者の個体別パラメータ、治療の期間、付随する治療の種類(存在する場合)、特定投与経路および同様の因子に依存する。
【0199】
本発明の医薬組成物は、好ましくは無菌であり、所望反応または所望効果を生じさせるための治療的に活性な物質の有効量を含有する。
【0200】
本発明の組成物の投与される用量は、投与の種類、患者の状態、所望投与期間等のような様々なパラメータに依存し得る。患者における反応が初期用量で不十分である場合は、より高用量(または異なる、より限局された投与経路によって達成される効果的により高い用量)を使用し得る。
【0201】
一般に、1ng〜1mg、好ましくは10ng〜100μgの腫瘍関連抗原の用量が、治療のためまたは免疫応答を生じさせるもしくは増大させるために製剤され、投与される。腫瘍関連抗原をコードする核酸(DNAおよびRNA)の投与を所望する場合は、1ng〜0.1mgの用量が製剤され、投与される。
【0202】
本発明の医薬組成物は、一般に医薬的に適合性の量でおよび医薬的に適合性の組成物中で投与される。「医薬的に適合性」という用語は、医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しない非毒性物質を指す。この種の製剤は、通常、塩、緩衝物質、防腐剤、担体および、適切な場合は、他の治療的に活性な化合物を含有し得る。薬剤中で使用される場合、塩は医薬的に適合性であるべきである。しかし、医薬的に適合性ではない塩も、医薬的に適合性の塩を調製するために使用されてもよく、本発明に包含される。この種の薬理学的および医薬的に適合性の塩は、非限定的に、以下の酸から調製されるものを含む:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸等。医薬的に適合性の塩はまた、ナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩などの、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩としても調製され得る。
【0203】
本発明の医薬組成物は、医薬的に適合性の担体を含有し得る。本発明によれば、「医薬的に適合性の担体」という用語は、ヒトへの投与に適する、1またはそれ以上の適合性固体または液体充填剤、希釈剤または被包物質を指す。「担体」という用語は、適用を容易にするために活性成分が組み合わされる、天然または合成の有機または無機成分を指す。本発明の医薬組成物の成分は、通常、所望医薬効果を実質的に損なう相互作用が生じない成分である。
【0204】
本発明の医薬組成物は、塩中の酢酸、塩中のクエン酸、塩中のホウ酸および塩中のリン酸などの適切な緩衝物質を含有し得る。
【0205】
医薬組成物はまた、適切な場合は、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベンおよびチメロサールなどの適切な防腐剤を含有し得る。
【0206】
医薬組成物は、通常は均一投与形態で提供され、それ自体公知の方法で調製され得る。本発明の医薬組成物は、例えばカプセル、錠剤、ロゼンジ、溶液、懸濁液、シロップ、エリキシルの形態、またはエマルションの形態であり得る。
【0207】
非経口投与に適する組成物は、通常、好ましくは受容者の血液と等張である、活性化合物の滅菌水性または非水性製剤を含む。適合性担体および溶媒の例は、リンガー液および等張塩化ナトリウム溶液である。加えて、通常は滅菌固定油が溶液または懸濁液の媒質として使用される。
【0208】
本発明を以下の図面および実施例によって詳細に説明するが、それらは例示のためにのみ使用されるものであり、限定を意図されない。図面の説明および実施例により、同様に本発明に包含されるさらなる実施形態が当業者に利用可能である。
【実施例】
【0209】
本明細書で言及する技術および方法は、それ自体公知の方法で実施され、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.に記載されている。キットおよび試薬の使用を含むすべての方法は、特に指示されない限り製造者の情報に従って実施される。
【0210】
実施例1;腫瘍において異常に活性化された胎盤特異的遺伝子のスクリーニング
【0211】
組織および細胞株
組織は、通常の診断または治療手順の間のヒト余剰材料として入手し、使用時まで−80℃で保存した。細胞株は、American Type Culture Collection(ATCC)およびGerman Resource Collection of Microorganisms and Cell Culture(DSMZ)より購入した。
【0212】
RNAの単離およびマイクロアレイハイブリダイゼーション
RNeasy Mini Kitプロトコール(Qiagen)を使用して全RNAを単離した。紫外分光法を用いて単離したRNAの定量を実施し、A260/A280比およびAgilentバイオアナライザー(Agilent Technologies)の両方によって品質を測定した。全RNA 5μgを、5pmol/μl−1のT7−オリゴ(dT)24プライマーでのcDNA合成のために使用し、RT−PCRのためのSuperscript First−Strand Synthesis−System(Invitrogen)を用いて43℃で90分間実施した。2番目の鎖の合成は完全なcDNAを用いて実施した。cDNA溶液を16℃で2時間インキュベートし、次いで6U T4−DNAポリメラーゼと共に16℃で20分間インキュベートして、0.5M EDTA 10μlを用いて反応を停止させた。GeneChip Sample Cleanup Module(Affymetrix)を使用して二本鎖cDNAを精製した後、製造者の指示に従ってビオチン−11−CTPおよびビオチン−16−UTP(Enzo Diagnostics)を添加したインビトロ転写反応により、cDNA試料から標識cRNAを作製した。cRNAをA260によって定量し、labchipバイオアナライザー(Agilent)を用いて品質を測定した。高品質を有するcRNA標本だけをさらなる分析のために選択した。断片化したcRNA(15μg)を使用して、0.1mg/ml−1ニシン精子DNAおよび0.5mg/ml−1アセチル化ウシ血清アルブミンを含むハイブリダイゼーションカクテル(100mM MES、1M NaCl、20mM EDTA、0.01%Tween−20)300μlを調製した。アレイ間のハイブリダイゼーション効率を比較し、測定した転写レベルの定量を標準化するために対照cRNAを使用し、Eukaryotic Hybridization Controlキット'(Affymetrix,Santa Clara,CA,USA)の成分として含めた。カクテルを95℃で5分間加熱し、45℃で5分間平衡させて、遠心分離によって清澄化した。カクテルをHG U133 Plus 2.0アレイ(Affymetrix)に45℃で16時間ハイブリダイズした。アレイを洗浄し、製造者の指示に従ってGeneChip fluidics station protocol EukGE−WS2(Affymetrix)を使用してストレプトアビジン結合フッ素で染色した。アレイをアルゴンイオンレーザー共焦点スキャナ−(Hewlett−Packard,Santa Clara,CA)で走査し、570nmで検出した。Microarray Suiteバージョン5.0(Affymetrix)を用いてデータを抽出し、遺伝子当たり2,500の平均強度を達成するために線形にスケールした。テキストファイルをエクスポートして、各々の問合せオリゴヌクレオチドの完全にマッチするプローブ細胞またはミスマッチプローブ細胞の強度を決定した。加えて、mRNAの5'末端と3'末端の比率を、24のヒトハウスキーピング/メンテナンス遺伝子(Affymetrix)を含むマイクロアレイ試験チップ(Test3 Array)を使用して6つの無作為に選択した標本(各群から2つ)について分析し、RNAの分解を認めなかった。
【0213】
バイオインフォマティクス解析
GeneChip(登録商標)Operating Software 1.4(Affymetrix)およびArrayAssistソフトウエアパッケージ5.2(Stratagene)を統計解析のために使用した。
【0214】
結果
以下の表1に示す18の正常組織および以下の表2に示す種々の実体の30の腫瘍細胞株からの試料のスクリーニングは、検討した正常組織の中では胎盤においておよび腫瘍細胞株において発現される、本明細書で述べる配列を生じさせた。
【0215】
【表1】
【0216】
【表2】
【0217】
実施例2;同定された腫瘍関連マーカーの確認
【0218】
1.RNA発現の検査
同定された腫瘍関連マーカーを、最初に、様々な組織からまたは組織特異的細胞株から得られるRNAを用いて確認する。腫瘍組織と比較した健常組織の示差的発現パターンはその後の治療適用のために決定的に重要であるので、標的遺伝子を、好ましくはこれらの組織試料を用いて特徴づける。
【0219】
全RNAは、分子生物学の標準的な方法によって天然組織試料からまたは腫瘍細胞株から単離される。上記単離は、例えば、製造者の指示に従ってRNeasy Maxiキット(Qiagen、カタログ番号75162)を用いて実施し得る。この単離方法は、カオトロピック試薬、イソチオシアン酸グアニジンの使用に基づいている。あるいは、酸性フェノールを単離のために使用することができる(Chomczynski & Sacchi,Anal.Biochem.162:156−159,1987)。イソチオシアン酸グアニジンによって組織を処理した後、RNAを酸性フェノールで抽出し、その後イソプロパノールで沈殿させて、DEPC処理水中に取る。
【0220】
このようにして単離したRNA2〜4μgを、その後、例えば製造者のプロトコールに従ってSuperscript II(Invitrogen)を使用して、cDNAに転写する。該当する製造者の標準プロトコールに従ってランダムヘキサマー(例えばRoche Diagnostics)を使用してcDNA合成を開始させる。品質管理のために、低い程度にのみ発現されるp53遺伝子に特異的なプライマーを使用して、cDNAを30サイクルにわたって増幅する。p53陽性のcDNA試料だけをその後の反応工程のために使用する。
【0221】
様々な正常および腫瘍組織からならびに腫瘍細胞株から単離したcDNAアーカイブに基いてPCRまたは定量的PCR(qPCR)を用いて発現解析を実施することにより、標的を詳細に分析する。このために、上記反応混合物のcDNA0.5μlを、特定の製造者のプロトコールに従ってDNAポリメラーゼ(例えば1UのHotStarTaq DNAポリメラーゼ、Qiagen)によって増幅する(反応混合物の総容量:25〜50μl)。上記ポリメラーゼの他に、増幅混合物は、0.3mM dNTP、反応緩衝液(DNAポリメラーゼの製造者に従って、最終濃度1×)、および各々0.3mMの遺伝子特異的「センス」および「アンチセンス」プライマーを含む。
【0222】
標的遺伝子の特異的プライマーは、可能な限り、ゲノム汚染が偽陽性結果を導くことがないように2つの異なるエクソンに位置するように選択する。非定量的エンドポイントPCRでは、DNAを変性し、Hot−Start酵素を活性化するため、cDNAを、典型的には95℃で15分間インキュベートする。その後DNAを35サイクル(95℃で1分間、プライマー特異的ハイブリダイゼーション温度(約55〜65℃)で1分間、アンプリコンを伸長させるために72℃で1分間)増幅する。その後、PCR混合物10μlをアガロースゲルに投与し、電場中で分画する。臭化エチジウムで染色することによってDNAをゲル中で可視化し、PCR結果を写真として記録する。
【0223】
従来のPCRに代わるものとして、標的遺伝子の発現を定量的リアルタイムPCRによっても分析し得る。また、様々な解析システムがこの分析のために利用可能であり、その中で最もよく知られているのは、ABI PRISM配列検出システム(TaqMan,Applied Biosystems)、iCycler(Biorad)およびLight cycler(Roche Diagnostics)である。上述したように、特異的PCR混合物をリアルタイム装置における分析に供する。DNAインターカレート染料(例えば臭化エチジウム、CybrGreen)を添加することにより、新たに合成されたDNAを特異的な光励起によって可視化する(染料製造者の情報に従って)。増幅の間に多数の時点で測定することにより、プロセス全体を観測し、標的遺伝子の核酸濃度を定量的に測定することが可能となる。ハウスキーピング遺伝子(例えば18S RNA、β−アクチン)を測定することによってPCR混合物を基準化する。蛍光標識DNAプローブを介した選択的な方法も、同様に特定組織試料の標的遺伝子の定量的測定を可能にする(Applied BiosystemsからのTaqManの適用参照)。
【0224】
図1に示すように、RT−PCR分析において、胎盤は配列番号:540の核酸配列を発現する唯一の健常組織として確認された。他のいずれの健常組織においても有意の発現を認めなかった。しかし、乳癌では高く且つ有意のレベルの発現を認めた。
【0225】
定量的リアルタイムRT−PCR分析は、配列番号:540の核酸配列が分析した乳癌試料の大部分において有意のレベルで発現されることを明らかにした;図2参照。
【0226】
2.クローニング
腫瘍関連マーカーのさらなる特徴づけのために必要とされる完全な標的遺伝子を、一般的な分子生物学的方法に従ってクローニングする(例えば「Current Protocols in Molecular Biology」,John Wiley & Sons Ltd.,Wiley InterScience)。標的遺伝子をクローニングするためまたはその配列を分析するために、前記遺伝子を、最初に、校正機能を有するDNAポリメラーゼ(例えばpfu、Roche Diagnostics)によって増幅する。次にアンプリコンを標準的な方法によってクローニングベクターに連結する。陽性クローンを配列解析によって同定し、その後予測プログラムと公知のアルゴリズムを用いて特徴づける。
【0227】
3.タンパク質の予測
本発明によって見出される遺伝子(特にRefSeq XMドメインからの遺伝子)は、完全長遺伝子のクローニング、オープンリーディングフレームの決定およびタンパク質配列の推定と解析を必要とし得る。
【0228】
完全長配列をクローニングするために、cDNA末端の迅速な増幅および遺伝子特異的プローブによるcDNA発現ライブラリーのスクリーニングのための一般的なプロトコールを使用し得る(Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd edition(1989),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.)。
【0229】
このようにして見出されたフラグメントを収集した後、一般的な予測プログラムを用いて潜在的オープンリーディングフレーム(ORF)を予測することができる。ポリA尾部およびポリアデニル化モチーフの位置は潜在的遺伝子産物の方向をあらかじめ決定するので、その特定方向の3つのリーディングフレームだけが、可能な6つのリーディングフレームの中から残る。前者はしばしば、タンパク質をコードし得る十分に大きなオープンリーディングフレームを1つだけ生成するが、その他のリーディングフレームは、終結コドンが多すぎて、現実的なタンパク質をコードしない。別のオープンリーディングフレームの場合は、最適な転写開始のためのコザック基準を考慮することおよび生じ得る推定タンパク質配列を分析することにより、本当の(authentic)ORFを同定する助けとなる。前記ORFは、潜在的ORFから推定されたタンパク質に対する免疫血清を生成し、組織および細胞株中の実際のタンパク質の認識に関して前記免疫血清を分析することによってさらに確認される。
【0230】
4.抗体の作製
本発明によって同定される腫瘍関連抗原は、例えば抗体を使用することによって特徴づけられる。本発明はさらに、抗体の診断的使用または治療的使用を含む。抗体は、天然および/または変性状態のタンパク質を認識し得る(Anderson et al.,J.Immunol.143:1899−1904,1989;Gardsvoll,J.Immunol.Methods 234:107−116,2000;Kayyem et al.,Eur.J.Biochem.208:1−8,1992;Spiller et al.,J.Immunol.Methods 224:51−60,1999)。
【0231】
標的タンパク質に特異的に結合する特異的抗体を含む抗血清は、様々な標準的方法によって調製し得る:例えば、「Monoclonal Antibodies:A Practical Approach」by Phillip Shepherd,Christopher Dean ISBN 0−19−963722−9、「Antibodies: A Laboratory Manual」by Ed Harlow,David Lane ISBN:0879693142および「Using Antibodies:A Laboratory Manual:Portable Protocol NO」by Edward Harlow,David Lane,Ed Harlow ISBN:0879695447参照。また本明細書では、天然形態の複合体膜タンパク質を認識するアフィンおよび特異的抗体を作製することも可能である(Azorsa et al.,J.Immunol.Methods 229:35−48,1999;Anderson et al.,J.Immunol.143:1899−1904,1989;Gardsvoll,J.Immunol.Methods.234:107−116,2000)。これは、治療的に使用される予定の抗体の作製において特に重要であるが、多くの診断適用のためにも重要である。このために、完全なタンパク質および細胞外部分配列の両方を免疫に使用し得る。
【0232】
ポリクローナル抗体の免疫と作製
様々な免疫プロトコールが公表されている。ある種(例えばウサギ、マウス)を所望標的タンパク質の初回注射によって免疫する。免疫原に対する動物の免疫応答を、定められた期間内に(前回の免疫後約2〜4週間)2回目または3回目の免疫によって増強することができる。前記動物から血液を採取し、再び種々の定められた時間間隔を置いた後、免疫血清を得る(4週間後に1回目の採血、その後2〜3週間ごとに5回まで採取)。このようにして採取した免疫血清は、ウエスタンブロット法において、フローサイトメトリー、免疫蛍光法または免疫組織化学によって標的タンパク質を検出し、特徴づけるために使用し得るポリクローナル抗体を含む。
【0233】
通常、4つの広く確立された方法のいずれかによって動物を免疫するが、他の方法も存在する。免疫は、標的タンパク質に特異的なペプチドを使用して、完全なタンパク質を使用して、または実験的にもしくは予測プログラムによって同定され得るタンパク質の細胞外部分配列を使用して実施し得る。予測プログラムは必ずしも完璧に機能するわけではないので、膜貫通ドメインによって互いから分離された2つのドメインを用いることも可能である。この場合、2つのドメインの1つは細胞外でなければならず、これはその後実験的に証明され得る(以下参照)。免疫は、種々のサービス業者によって商業的に提供される。
【0234】
(1) 最初の場合、ペプチド(長さ:8〜12アミノ酸)をインビトロ法によって合成し(場合により商業的サービスによって実施される)、前記ペプチドを免疫のために使用する。通常は3回の免疫を実施する(例えば5〜100μg/免疫の濃度で)。
【0235】
(2) あるいは、組換えタンパク質を使用して免疫を実施し得る。このために、標的遺伝子のクローン化DNAを発現ベクターにクローニングし、標的タンパク質を、例えば無細胞インビトロで、細菌(例えば大腸菌)中で、酵母(例えばサッカロミセス・ポンベ(S.pombe))中で、昆虫細胞中または哺乳動物細胞中で、特定の製造者(例えばRoche Diagnostics、Invitrogen、Clontech、Qiagen)の条件に従って合成する。また、ウイルス発現系(例えばバキュロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス)を用いて標的タンパク質を合成することも可能である。前記系の1つにおいて合成した後、標的タンパク質を、通常はクロマトグラフィー法を使用することによって、精製する。これに関して、精製を助けるものとして分子足場(例えばHisタグ、Qiagen;FLAGタグ、Roche Diagnostics;GST融合タンパク質)を有するタンパク質の免疫のために使用することも可能である。多くのプロトコールが、例えば「Current Protocols in Molecular Biology」,John Wiley & Sons Ltd.,Wiley InterScienceにおいて見出される。標的タンパク質を精製した後、上述したように免疫を実施する。
【0236】
(3) 所望タンパク質を内因的に合成する細胞株が利用可能である場合は、特異的抗血清を調製するためにこの細胞株を直接使用することも可能である。この場合、各々約1〜5×107細胞での1〜3回の注射によって免疫を実施する。
【0237】
(4)免疫はまた、DNAを注射することによっても実施し得る(DNA免疫)。このために、標的遺伝子を、最初に標的配列が強力な真核生物プロモーター(例えばCMVプロモーター)の制御下にあるように発現ベクターにクローニングする。その後、遺伝子銃を使用してDNA(例えば1回の注射当たり1〜10μg)を生物(例えばマウス、ウサギ)中の強い血流を有する毛細管領域に免疫原として移入する。移入されたDNAは動物の細胞によって取り込まれ、標的遺伝子が発現されて、動物は最終的に標的タンパク質に対する免疫応答を発現する(Jung et al.,Mol.Cells 12:41−49,2001;Kasinrerk et al.,Hybrid Hybridomics 21:287−293,2002)。
【0238】
モノクローナル抗体の作製
モノクローナル抗体は、伝統的にハイブリドーマ技術を用いて作製される(技術的な詳細については、「Monoclonal Antibodies:A Practical Approach」by Philip Shepherd,Christopher Dean ISBN 0−19−963722−9;「Antibodies:A Laboratory Manual」by Ed Harlow,David Lane ISBN:0879693142,「Using Antibodies:A Laboratory Manual:Portable Protocol NO」by Edward Harlow,David Lane,Ed Harlow ISBN:0879695447参照)。同様に使用される新しい方法は、「SLAM」技術である。この技術では、B細胞を全血から単離し、細胞をモノクローナルにする。その後、単離したB細胞の上清をその抗体特異性に関して分析する。ハイブリドーマ技術と異なり、次に抗体遺伝子の可変領域を単細胞PCRによって増幅し、適切なベクターにクローニングする。このようにしてモノクローナル抗体の作製が加速される(de Wildt et al.,J.Immunol.Methods 207:61−67,1997)。
【0239】
5.抗体を使用したprotein−chemical methodsによる標的の確認
上述したように作製できる抗体は、以下のように標的タンパク質をさらに分析するために使用できる:
【0240】
抗体の特異性
細胞培養とその後のウエスタンブロット法に基づくアッセイは、抗体が所望の標的タンパク質にのみ特異的に結合するという事実を明らかにするのに最も適切である(様々な変法が、例えば「Current Protocols in Proteinchemistry」,John Wiley & Sons Ltd.,Wiley InterScienceに記載されている)。実証のために、強力な真核生物プロモーター(例えばサイトメガロウイルスプロモーター;CMV)の制御下にある標的タンパク質のcDNAを細胞に導入する。多種多様な方法(例えば電気穿孔法、リポソームに基づくトランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿法)が、細胞株にDNAを導入するために十分に確立されている(例えばLemoine et al.,Methods Mol.Biol.75:441−7,1997)。代替法として、標的遺伝子を内因的に発現する細胞株を使用することも可能である(標的遺伝子特異的RT−PCRを介した検出)。対照として、理想的な場合は、分析した抗体の特異性をその後のウエスタンブロット法において明らかにすることができるように、相同な遺伝子を実験の中で同時に形質転換する。
【0241】
その後のウエスタンブロット法では、標的タンパク質を含む可能性がある細胞培養物または組織試料からの細胞を1%濃度のSDS溶液に溶解し、その過程でタンパク質を変性させる。溶解産物を8〜15%濃度の変性ポリアクリルアミドゲル(1%SDSを含有する)上の電気泳動により大きさによって分画する(SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、SDS−PAGE)。次に複数のブロット法の1つ(例えばセミドライ電気ブロット法;Biorad)によって特異的膜(例えばニトロセルロース、Schleicher & Schull)に転写する。所望タンパク質をこの膜上で視覚化することができる。このために、最初に、標的タンパク質を認識する抗体(前記抗体の特異性に依存して約1:20〜1:200希釈)と共に膜を60分間インキュベートする。洗浄工程後、膜を、マーカー(例えばペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼなどの酵素)に結合された、第一抗体を認識する第二抗体と共にインキュベートする。その後、呈色反応または化学発光反応(例えばECL、Amersham Bioscience)において膜上で標的タンパク質を可視化することが可能である。標的タンパク質に対して高い特異性を有する抗体は、理想的な場合、所望タンパク質自体だけを認識するはずである。
【0242】
標的タンパク質の局在化
標的タンパク質の、インシリコアプローチで同定された膜局在化を確認するために様々な方法が使用される。上述した抗体を使用する重要で広く確立された方法は、免疫蛍光法(IF)である。このために、標的タンパク質を合成するか(RT−PCRによるRNAの検出もしくはウエスタンブロット法によるタンパク質の検出)またはプラスミドDNAが導入された、樹立細胞株の細胞を使用する。多種多様な方法(例えば電気穿孔法、リポソームに基づくトランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿法)が、DNAを細胞株に導入するために十分に確立されている(例えばLemoine et al.,Methods Mol.Biol.75:441−7,1997)。免疫蛍光法において細胞に導入されるプラスミドは、非修飾タンパク質をコードし得るかまたは種々のアミノ酸マーカーを標的タンパク質に連結し得る。主要なマーカーは、例えば、様々な示差的蛍光形態の緑色蛍光タンパク質(GFP)、高親和性の特異的抗体が利用可能である6〜12個のアミノ酸の短いペプチド配列、またはそのシステイン特異的蛍光物質(Invitrogen)を介して結合できる短いアミノ酸配列、Cys−Cys−X−X−Cys−Cysである。標的タンパク質を合成する細胞を、例えばパラホルムアルデヒドまたはメタノールで固定する。次に細胞を、必要な場合は、界面活性剤(例えば0.2% Triton X−100)と共にインキュベートすることによって透過性を上げてもよい。その後、標的タンパク質に対するまたは結合マーカーの1つに対する一次抗体と共に細胞をインキュベートする。洗浄工程後、混合物を、第一抗体に結合する、蛍光マーカー(例えばフルオレセイン、テキサスレッド、Dako)に連結された二次抗体と共にインキュベートする。次に、このようにして標識された細胞をグリセロールで覆い、製造者の情報に従って蛍光顕微鏡を用いて分析する。特異的蛍光発光は、この場合、使用する物質に依存して特異的励起によって達成される。分析は通常、標的タンパク質の信頼し得る局在化を可能にし、標的タンパク質に加えて、結合アミノ酸マーカーまたはその局在化が文献で既に記述されている他のマーカータンパク質も染色される、二重染色において、抗体の品質と標的タンパク質が確認される。GFPおよびその誘導体は特殊なケースであり、直接励起可能であって且つそれら自体が蛍光を発する。界面活性剤の使用を通して制御され得る膜透過性は、免疫蛍光法において、免疫原性エピトープが細胞の内側に位置するかまたは細胞外であるのかを明らかにする。従って、選択タンパク質の予測を実験的に裏付けることができる。代替的な可能性は、フローサイトメトリーを用いて細胞外ドメインを検出することである。このために、細胞を非透過処理条件下で固定し(例えばPBS/アジ化ナトリウム/2%FCS/5mM EDTAを用いて)、製造者の指示に従ってフローサイトメーターで分析する。細胞外エピトープだけが、この方法で分析される抗体によって認識され得る。免疫蛍光法との相違は、例えばヨウ化プロピジウムまたはトリパンブルーを使用することによって死細胞と生細胞を識別することが可能であり、従って偽陽性結果を回避できることである。
【0243】
もう1つの重要な検出法は、特定組織試料に関する免疫組織化学(IHC)によるものである。この方法の目的は、機能的に無傷の組織集合体においてタンパク質の局在化を同定することである。IHCは、特に、(1)腫瘍組織および正常組織における標的タンパク質の量を推定することができる、(2)腫瘍組織および健常組織中のどの程度の数の細胞が標的遺伝子を合成するかを分析する、ならびに(3)標的タンパク質が検出可能である組織(腫瘍、健常細胞)中の細胞型を定義するのに役立つ。あるいは、標的遺伝子のタンパク質の量を、デジタルカメラと適切なソフトウエア(例えばTillvision,Till−photonics,Germany)を使用した組織免疫蛍光法によって定量し得る。この技術は頻繁に公表されており、それ故染色および顕微鏡検査の詳細は、例えば、「Diagnostic Immunohistochemistry」by David J.,MD Dabbs ISBN:0443065667または「Microscopy,Immunohistochemistry,and Antigen Retrieval Methods:For Light and Electron Microscopy」ISBN:0306467704に見出される。抗体の特性により、意味のある結果を得るためには種々のプロトコールを使用しなければならない(一例を以下で述べる)ことに留意すべきである。
【0244】
通常、組織学的に定義された腫瘍組織および、参照として、匹敵する健常組織をIHCにおいて使用する。標的遺伝子の存在がRT−PCR分析を通して公知である細胞株を陽性および陰性対照として使用することも可能である。バックグラウンド対照は常に含めなければならない。
【0245】
ホルマリン固定し(別の固定法、例えばメタノールでの固定も可能である)、パラフィン包埋した厚さ4μmの組織片をガラス製支持体に載せ、例えばキシレンで脱パラフィン化する。試料をTBS−Tで洗浄し、血清中でブロックする。次いで第一抗体(1:2〜1:2000希釈)と共に1〜18時間インキュベートし、これには通常、アフィニティー精製した抗体を使用する。洗浄工程に続いて、アルカリホスファターゼ(あるいは、例えばペルオキシダーゼ)に連結された、第一抗体に対する第二抗体と共に約30〜60分間インキュベートする。次いでアルカリホスファターゼを使用した呈色反応を実施する(例えば、Shi et al.,J. Histochem.Cytochem.39:741−748,1991;Shin et al.,Lab.Invest.64:693−702,1991参照)。抗体の特異性を明らかにするため、あらかじめ免疫原を添加することによって反応をブロックすることができる。
【0246】
タンパク質修飾の分析
例えばN−もしくはO−グリコシル化またはミリスチル化などの二次タンパク質修飾は、免疫原性エピトープの接近可能性を障害する、さらには完全に妨げる可能性があり、従って抗体療法の効果に問題を生じさせ得る。さらに、二次修飾の種類と量が正常組織と腫瘍組織で異なることがしばしば明らかにされている(例えばDurand & Seta,2000;Clin.Chem.46:795−805;Hakomori,1996;Cancer Res.56:5309−18)。これらの修飾の分析は、それ故、抗体治療の成功のために必要不可欠である。潜在的な結合部位は特異的アルゴリズムによって予測することができる。
【0247】
タンパク質修飾の分析は、通常、ウエスタンブロット法(上記参照)によって行われる。通常数kDaの大きさを有するグリコシル化は、特により大きな全体質量の標的タンパク質を導き、これはSDS−PAGEにおいて分画することができる。特異的O−およびN−グリコシド結合を検出するために、タンパク質溶解産物をインキュベートした後、O−またはN−グリコシラーゼ(それぞれの製造者の指示に従って、例えばPNガーゼ、エンドグリコシダーゼF、エンドグリコシダーゼH、Roche Diagnostics)を用いてSDSによって変性する。これに続いて、上述したようにウエスタンブロット法を実施する。従って、グリコシダーゼとのインキュベーション後に標的タンパク質の大きさが縮小している場合、特異的グリコシル化を検出することができ、この方法で、修飾の腫瘍特異性を分析することも可能である。
【0248】
標的遺伝子の機能分析
標的分子の機能はその治療的有用性のために極めて重要であり得るので、機能分析は治療的に利用可能な分子の特徴づけにおける重要な構成要素である。機能分析は、細胞培養実験において細胞内でまたは動物モデルを用いてインビボで実施され得る。これは、突然変異によって標的分子の遺伝子のスイッチを切ること(ノックアウト)または標的配列を細胞または生物に挿入すること(ノックイン)のいずれかを含む。従って、最初の場合は、分析しようとする遺伝子の機能喪失による細胞環境での機能的修飾を分析することが可能である(機能の喪失)。2番目の場合は、分析遺伝子の付加によって引き起こされる修飾を分析できる(機能の獲得)。
【0249】
a.細胞内における機能分析
形質転換。機能の獲得を分析するためには、標的分子の遺伝子を細胞に導入しなければならない。このために、標的分子の合成を可能にする細胞にDNAを導入する。通常、本明細書では標的分子の遺伝子は強力な真核生物プロモーター(例えばサイトメガロウイルスプロモーター;CMV)の制御下にある。多種多様な方法(例えば電気穿孔法、リポソームに基づくトランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿法)が、細胞株にDNAを導入するために広く確立されている(例えばLemoine et al.,Methods Mol.Biol.75:441−7,1997)。遺伝子は、ゲノムに組み込まれずに一過性に、または例えばネオマイシンによる選択後に、ゲノムに組み込まれて安定に合成され得る。
【0250】
RNA干渉(siRNA)。細胞内の標的分子の機能の完全な喪失を誘導し得る、標的遺伝子の発現の阻害を、細胞におけるRNA干渉(siRNA)技術によって生じさせ得る(Hannon,GJ.2002.RNA interference. Nature 418:244−51;Czaudema et al.2003.Nucl.Acid Res.31:670−82)。このために、標的分子に特異的な約20〜25ヌクレオチド長の短い二本鎖RNA分子で細胞をトランスフェクトする。次に酵素処理によって標的遺伝子の特異的RNA分子の分解、従って標的タンパク質の発現低下を生じさせ、結果として標的遺伝子を機能的に分析することを可能にする。
【0251】
形質転換された細胞株、またはsiRNAによって修飾された細胞株は、その後種々の方法で分析し得る。最も一般的な例を以下に列挙する。
【0252】
1.増殖および細胞周期挙動
細胞増殖を分析するために様々な方法が確立されており、様々な会社によって商業的に供給されている(例えばRoche Diagnostics、Invitrogen;アッセイ方法の詳細は数多くの適用プロトコールに記載されている)。細胞培養実験における細胞数は、単に計数することによってまたは細胞の代謝活性を測定する比色アッセイ(例えばwst−1,Roche Diagnostics)によって決定できる。代謝アッセイ法は、酵素マーカーを介して間接的に実験における細胞数を測定する。細胞増殖は、DNA合成の速度を分析することによって、例えばブロモデオキシウリジン(BrdU)を添加し、組み込まれたBrdUを、特異的抗体を介した比色定量で検出することによって、直接測定し得る。
【0253】
2.アポトーシスおよび細胞傷害性
細胞のアポトーシスおよび細胞傷害性を検出するための多くのアッセイ系が利用可能である。決め手となる特徴は、不可逆性で、いかなる場合にも細胞死を生じさせる、ゲノムDNAの特異的で酵素依存性の断片化である。これらの特異的DNAフラグメントを検出するための方法は商業的に入手可能である。利用可能なさらなる方法は、組織切片においてもDNAの一本鎖切断を検出できるTUNELアッセイである。細胞傷害性は、主として、細胞の生命力状態のマーカーとして役立つ変化した細胞透過性を介して検出される。一方で、これは、細胞培養上清において細胞内で典型的に認められるマーカーの分析を含む。他方で、無傷細胞では吸収されない染料マーカーの吸収性を分析することも可能である。染料マーカーの最もよく知られている例はトリパンブルーとヨウ化プロピジウムであり、一般的な細胞内マーカーは、上清中で酵素的に検出できる乳酸デヒドロゲナーゼである。様々な商業的供給者(例えばRoche Diagnostics、Invitrogen)の種々のアッセイ系が利用可能である。
【0254】
3.移動アッセイ
細胞が移動する能力は、好ましくはボイデンチャンバー(Corning Costar)を使用した、特異的遊走アッセイにおいて分析される(Cinamon G.,Alon R.J.Immunol.Methods.2003 Feb;273(1−2):53−62;Stockton et al.2001.Mol.Biol.Cell.12:1937−56)。このために、特定細孔径のフィルター上で細胞を培養する。移動できる細胞は、このフィルターを通って下にある別の培養容器中へと移動することができる。その後の顕微鏡分析は、従って、標的分子の機能の獲得または機能の喪失によって誘導される、変化した可能性がある移動挙動の測定を可能にする。
【0255】
b.動物モデルにおける機能分析
標的遺伝子機能の分析のための細胞培養実験の可能な代替法は、動物モデルにおけるインビボ実験では複雑である。細胞ベースの方法と比較して、これらのモデルは、生物全体に関してのみ検出可能である発育不全または疾患を検出できるという利点を有する。現在では、ヒト疾患のための多くのモデルが利用可能である(Abate−Shen & Shen.2002.Trends in Genetics S1−5;Matsusue et al.2003.J.Clin.Invest.111:737−47)。例えば酵母、線虫またはゼブラフィッシュなどの様々な動物モデルが、その後集中的に特徴づけられてきた。しかし、他の種に比べて好ましいモデルは、例えばマウス(ハツカネズミ(Mus musculus))などの哺乳動物モデルであり、それらはヒトでの生物学的プロセスを再現する最も高い可能性を提供するからである。マウスに関しては、一方で、マウスゲノムに新しい遺伝子を組み込むトランスジェニック法が近年確立された(機能の獲得;Jegstrup I.et al.2003.Lab Anim.2003 Jan.;37(1):1−9)。他方で、他の系統的なアプローチは、マウスゲノムにおける遺伝子のスイッチを切り、従って所望遺伝子の機能の喪失を誘導する(ノックアウトモデル、機能の喪失;Zambrowicz BP & Sands AT.2003.Nat.Rev.Drug Discov.2003 Jan;2(1):38−51;Niwa H.2001.Cell Struct.Funct.2001 Jun;26(3):137−48);技術的な詳細は数多く公表されている。
【0256】
マウスモデルが作製された後、導入遺伝子によってまたは遺伝子の機能喪失によって誘導される変化を動物全体に関して分析することができる(Balling R,2001.Ann.Rev.Genomics Hum.Genet.2:463−92)。従って、例えば挙動試験を実施することならびに確立された血液パラメータを生化学的に検討することが可能である。組織学的分析、免疫組織化学または電子顕微鏡検査は、変化を細胞レベルで特徴づけることを可能にする。遺伝子の特異的発現パターンは、インサイチューハイブリダイゼーションによって検出することができる(Peters T.et al.2003.Hum.Mol.Genet 12:2109−20)。
【0257】
実施例3;同定された腫瘍関連マーカーの詳細な分析
【0258】
RNAの単離、RT−PCRおよびリアルタイムRT−PCR
RNAの抽出、一本鎖cDNAの合成、RT−PCRおよびリアルタイムRT−PCRを先に記述されているように実施した(Koslowski,M.et al.,Cancer Res.62,6750−6755(2002),Koslowski,M.et al.,Cancer Res.64,5988−5993(2004))。リアルタイムの定量的発現分析は40サイクルのRT−PCRにおいて実施した。HPRT(順方向 5'−TGA CAC TGG CAA AAC AAT GCA−3';逆方向 5'−GGT CCT TTT CAC CAG CAA GCT−3'、62℃でアニーリング)に基準化した後、△△CT計算を用いて腫瘍試料中の遺伝子特異的転写産物を正常組織に対して定量化した。
【0259】
二本鎖のsiRNA
配列番号:540の二本鎖のsiRNA(Qiagen,Hilden,Germany)は、配列番号:540のmRNA配列の標的配列、5'−NNC CAC AGA AGG UAC CAG UUA−3'(siRNA No.1;順方向(5'−CCA CAG AAG GUA CCA GUU AUU−3')、逆方向(5'−UAA CUG GUA CCU UCU GUG GUU−3')および5'−NNC AGC AAG ACU CCC UCU AAA−3'(siRNA No.2;順方向(5'−CAG CAA GAC UCC CUC UAA AUU−3')、逆方向(5'−UUU AGA GGG AGU CUU GCU GUU−3'))に対するものであった。
【0260】
細胞増殖分析
二本鎖のsiRNAを形質転換した24時間後に、10%FCSを添加した培地中で1x104細胞を48時間培養した。Wallac Victor2マルチラベルカウンター(Perkin Elmer,Boston,MA)で、DELFIA細胞増殖キット(Perkin Elmer,Boston,MA)を製造者の指示に従って使用して、新たに合成されたDNA鎖へのBrdUの組込みを測定することによって増殖を分析した。
【0261】
図3は、siRNAオリゴヌクレオチドを形質転換した24時間後のリアルタイムRT−PCRによる、MCF−7乳癌細胞における配列番号:540のmRNA発現の定量化を示す。非形質転換体および非サイレンシング(ns)siRNAを導入した細胞と比較して、2つの配列番号:540特異的siRNA(siRNA No.1(配列番号:630、631)、siRNA No.2(配列番号:632、633))は、どちらも配列番号:540発現の堅固なサイレンシングを誘導する。
【0262】
図4は、siRNAオリゴヌクレオチドの導入による配列番号:540発現のサイレンシングが、MCF−7乳癌細胞の増殖低下を生じさせることを示す。siRNAを形質転換した96時間後に、新たに合成されたDNA鎖へのBrdUの組込みを測定することによって増殖を定量化した。これらの結果は、配列番号:540が乳癌細胞の増殖のための正の因子であることを示す。
【0263】
配列番号:541のヌクレオチド配列は、配列番号:65から推定され、未知の機能の177個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:542)をコードする。正常組織および癌組織における配列番号:541の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:543、544)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図5参照。正常組織では、配列番号:541は胎盤において高発現され、胸腺で弱い発現だけを示す。配列番号:541は肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:541およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0264】
配列番号:545のヌクレオチド配列は、配列番号:249から推定され、膜タンパク質の溶質担体(SLC)群の成員(配列番号:546)をコードする。内在性膜タンパク質に特有であるように、SLCは、親水性細胞内または細胞外ループによって互いに結合された多くの疎水性膜貫通αヘリックスを含む。SLCに依存して、これらの輸送体はモノマーとしてまたは偏性(obligate)ホモオリゴマーもしくはヘテロオリゴマーとして機能性である。配列番号:545によってコードされるタンパク質は細胞表面タンパク質である。正常組織および癌組織における配列番号:545の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:547、548)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図6参照。正常組織と比較して、配列番号:545は悪性黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:545およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0265】
配列番号:549のヌクレオチド配列は、配列番号:4から推定され、未知の機能の763個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:550)をコードする。このタンパク質は、2つの潜在的膜貫通ドメインおよび1つの典型的なフィブロネクチンIII型ドメインを保持する。フィブロネクチンは、膜貫通受容体タンパク質(インテグリン)に結合する高分子量の細胞外マトリックス糖タンパク質である。インテグリンに加えて、それらはまた、コラーゲン、フィブリンおよびヘパラン硫酸などの細胞外マトリックス成分にも結合する。配列番号:549によってコードされるタンパク質は、これまでのところ未知の新しいフィブロネクチン様タンパク質であり得る。正常組織および癌組織における配列番号:549の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:551、552)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図7参照。正常組織と比較して、配列番号:549は卵巣癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:549およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこの特定腫瘍型の分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0266】
配列番号:553のヌクレオチド配列は、配列番号:156から推定され、未知の機能の496個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:554)をコードする。このタンパク質は潜在的膜貫通タンパク質を保持する。正常組織および癌組織における配列番号:553の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:555、556)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図8参照。正常組織では、配列番号:553は胎盤において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:553は結腸癌および卵巣癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:553およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0267】
配列番号:557のヌクレオチド配列は配列番号:273から推定された。配列番号:557は、明らかなオープンリーディングフレームを有さない部分cDNAである。正常組織および癌組織における配列番号:557の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:558、559)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図9参照。正常組織では、配列番号:557の高発現は乳房において検出可能である。正常組織と比較して、配列番号:557は乳癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:557およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0268】
配列番号:560のヌクレオチド配列は配列番号:135から推定された。配列番号:560は明らかなオープンリーディングフレームを有さない。正常組織および癌組織における配列番号:560の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:561、562)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図10参照。正常組織では、配列番号:560の発現は十二指腸および結腸において検出可能である。正常組織と比較して、配列番号:560は結腸癌および卵巣癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:560およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0269】
配列番号:563のヌクレオチド配列は配列番号:177から推定された。配列番号:563は明らかなオープンリーディングフレームを有さない。正常組織および癌組織における配列番号:563の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:564、565)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図11参照。配列番号:563は胎盤において高発現される。正常組織と比較して、配列番号:563は乳癌、結腸癌、卵巣癌、肺癌および黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:563およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0270】
配列番号:566のヌクレオチド配列は、配列番号:149から推定され、未知の機能の155個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:567)をコードする。このタンパク質配列は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーの成員と部分的に相同であり、潜在的膜貫通ドメインを保持する。配列番号:566によってコードされるタンパク質は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーの新しい成員であり得る。正常組織および癌組織における配列番号:566の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:568、569)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図12参照。正常組織と比較して、配列番号:566は胃癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、肺癌および黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:566およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0271】
配列番号:570のヌクレオチド配列は、配列番号:53から推定され、カーネルリポカリンスーパーファミリーの成員(配列番号:571)をコードする。これらの分泌糖タンパク質は、妊娠に適した子宮環境の調節および受精過程における適切な一連の事象の時期と発生において明確且つ重要な役割を有する。正常組織および癌組織における配列番号:570の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:572、573)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図13参照。配列番号:570は胎盤において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:570は卵巣癌、肺癌および黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:570およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0272】
配列番号:574のヌクレオチド配列は明らかなオープンリーディングフレームを有さない。正常組織および癌組織における配列番号:574の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:575、576)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図14参照。配列番号:574は胎盤において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:574は肺癌および黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:574およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0273】
配列番号:577のヌクレオチド配列は配列番号:20から推定された。配列番号:577は、明らかなオープンリーディングフレームを有さない部分cDNAである。正常組織および癌組織における配列番号:577の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:578、579)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図15参照。配列番号577:は胎盤において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:577は胃癌、乳癌および肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:577およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0274】
配列番号:580のヌクレオチド配列は配列番号:32から推定された。配列番号:580は、明らかなオープンリーディングフレームを有さない部分cDNAである。正常組織および癌組織における配列番号:580の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:581、582)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図16参照。配列番号:580は胎盤において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:580は卵巣癌および肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:580およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0275】
配列番号:583のヌクレオチド配列は、配列番号:257から推定され、ホメオボックスクラスの転写因子の成員(配列番号:584)をコードする。これらのタンパク質の発現は、胚発生の間に空間的および時間的に調節される。正常組織および癌組織における配列番号:583の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:585、586)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図17参照。配列番号:583は胎盤および前立腺において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:583は結腸癌、卵巣癌および肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:583およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0276】
配列番号:587のヌクレオチド配列は、配列番号:148から推定され、IGF−II mRNA結合タンパク質(IMP)ファミリーの成員(配列番号:588)をコードする。インスリン様増殖因子2(IGF2)mRNAの5'UTRに結合し、IGF2の翻訳を調節することによって機能する。正常組織および癌組織における配列番号:587の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:589、590)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図18参照。正常組織と比較して、配列番号:587は肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:587およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0277】
配列番号:591のヌクレオチド配列は、配列番号:194から推定され、未知の機能の372個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:592)をコードする。正常組織および癌組織における配列番号:591の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:593、594)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図19参照。配列番号:591は精巣において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:591は乳癌、結腸癌、卵巣癌、肺癌および黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:591およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0278】
配列番号:595のヌクレオチド配列は、配列番号:191から推定され、未知の機能の357個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:596)をコードする。正常組織および癌組織における配列番号:595の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:597、598)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図20参照。配列番号:595は精巣において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:595は胃癌、結腸癌、卵巣癌、肺癌および黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:595およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0279】
配列番号:599のヌクレオチド配列は、配列番号:18から推定され、明らかなオープンリーディングフレームを有さない。正常組織および癌組織における配列番号:599の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:600、601)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図21参照。配列番号:599は胎盤において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:599は胃癌、乳癌、肺癌および黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:599およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0280】
配列番号:602のヌクレオチド配列は、配列番号:133から推定され、細胞外マトリックスタンパク質のフォンビルブラント因子ドメインスーパーファミリーの成員(配列番号:603)をコードする。正常組織および癌組織における配列番号:602の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:604、605)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図22参照。正常組織と比較して、配列番号:602は卵巣癌および肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:602およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0281】
配列番号:606のヌクレオチド配列は、配列番号:128から推定され、CDC42エフェクタータンパク質のBorgファミリーの成員(配列番号:607)をコードする。Borgファミリーのタンパク質はCRIB(Cdc42/Rac相互作用性結合)ドメインを含む。それらはCDC42に結合し、その機能を負に調節する。低分子量Rho GTPアーゼであるCDC42は、下流のエフェクタータンパク質との相互作用を介してFアクチン含有構造体の形成を調節する。正常組織および癌組織における配列番号:606の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:608、609)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図23参照。正常組織と比較して、配列番号:606は胃癌、結腸癌および肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:606およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0282】
配列番号:610のヌクレオチド配列は、配列番号:118から推定され、明らかなオープンリーディングフレームを有さない。正常組織および癌組織における配列番号:610の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:611、612)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図24参照。正常組織と比較して、配列番号:610は胃癌、乳癌および肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:610およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0283】
配列番号:613のヌクレオチド配列は、配列番号:116から推定され、未知の機能の76個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:614)をコードする。正常組織および癌組織における配列番号:613の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:615、616)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図25参照。配列番号:613は胎盤において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:613は乳癌、肺癌および黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:613およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0284】
配列番号:617のヌクレオチド配列は配列番号:267から推定された。配列番号:617は、明らかなオープンリーディングフレームを有さない部分cDNAである。正常組織および癌組織における配列番号:617の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:618、619)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図26参照。配列番号:617は胎盤および子宮内膜において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:617は肺癌および黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:617およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0285】
配列番号:620のヌクレオチド配列は、配列番号:182から推定され、多数の推定上の膜貫通ドメインおよびパッチドファミリードメインを保持する829個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:621)をコードする。膜貫通タンパク質パッチドは、モルフォゲンであるソニックヘッジホッグに対する受容体である。このタンパク質は、スムーズンドタンパク質と結合してヘッジホッグシグナルを伝達する。配列番号:620はパッチドファミリーの新規成員であり得る。正常組織および癌組織における配列番号:620の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:622、623)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図27参照。配列番号:620は肺において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:620は卵巣癌および黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:620およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0286】
配列番号:624のヌクレオチド配列は、配列番号:184から推定され、2つの細孔形成Pドメインを含むカリウムチャネルタンパク質のスーパーファミリーの成員である、TWIK関連酸感受性K+チャネルに類似する323個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:625)をコードする。正常組織および癌組織における配列番号:624の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:626、627)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図28参照。配列番号:624は肺において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:624は胃癌および肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:624およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0287】
配列番号:634のヌクレオチド配列は、配列番号:346から推定され、ホメオボックスクラスの転写因子の成員(配列番号:635)をコードする。これらのタンパク質の発現は、胚発生の間に空間的および時間的に調節される。正常組織および癌組織における配列番号:634の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:636、637)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図29参照。配列番号:634は胎盤および子宮内膜において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:634は卵巣癌および肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:634およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0288】
配列番号:638のヌクレオチド配列は、配列番号:252から推定され、約40アミノ酸のモチーフ、Fボックスを特徴とするFボックスタンパク質ファミリーの成員(配列番号:639)をコードする。Fボックスタンパク質は、リン酸化依存性ユビキチン化において機能する、SCF(SKP1−クリン−Fボックス)と呼ばれるユビキチンタンパク質リガーゼ複合体の4つのサブユニットの1つを構成する。Fボックスタンパク質は3つのクラスに分けられる:WD−40ドメインを含むFbws、ロイシンに富む反復配列を含むFbls、および異なるタンパク質間相互作用モジュールを含むかまたは認識可能なモチーフを含まないFbxs。この遺伝子によってコードされるタンパク質はFblsクラスに属する;Fボックスに加えて、このタンパク質は10のロイシンに富む縦列反復配列を含む。このタンパク質はサイクリンA−CDK2 S期キナーゼの必須要素である。主としてS期にリン酸化されたサイクリン依存性キナーゼ阻害因子1B(CDKN1B、p27またはKIP1とも称される)を特異的に認識し、S期キナーゼ結合タンパク質1(SKP1またはp19)と相互作用する。正常組織および癌組織における配列番号:638の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:640、641)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図30参照。配列番号:638は胎盤において高発現される。正常組織と比較して、配列番号:638は結腸癌、卵巣癌、肺癌および悪性黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:638およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0289】
配列番号:642のヌクレオチド配列は、配列番号:248から推定され、未知の機能の1.024個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:643)をコードする。正常組織および癌組織における配列番号:642の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:644、645)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図31参照。配列番号:642は胎盤において高発現される。正常組織と比較して、配列番号:642は乳癌、卵巣癌、肺癌および悪性黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:642およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0290】
配列番号:646のヌクレオチド配列は配列番号:269から推定された。配列番号:646は、明らかなオープンリーディングフレームを有さない部分cDNAである。正常組織および癌組織における配列番号:646の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:647、648)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図32参照。配列番号:646は胎盤において高発現される。正常組織と比較して、配列番号:646は胃癌、卵巣癌および肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:646およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0291】
配列番号:649のヌクレオチド配列は、配列番号:27から推定され、未知の機能の258個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:650)をコードする。正常組織および癌組織における配列番号:649の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:651、652)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図33参照。配列番号:649は胎盤において高発現される。正常組織と比較して、配列番号:649は卵巣癌、肺癌および悪性黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:649およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0292】
配列番号:653のヌクレオチド配列は配列番号:139から推定された。配列番号:653は、明らかなオープンリーディングフレームを有さない部分cDNAである。正常組織および癌組織における配列番号:653の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:654、655)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図34参照。配列番号:653は胎盤および皮膚において発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:653は結腸癌および肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:653およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0293】
配列番号:656のヌクレオチド配列は、配列番号:305から推定され、未知の機能の419個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:657)をコードする。正常組織および癌組織における配列番号:656の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:658、659)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図35参照。配列番号:656は胎盤および皮膚において発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:656は肺癌および悪性黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:656およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0294】
配列番号:660のヌクレオチド配列は、配列番号:125から推定され、トロンボスポンジンモチーフを有するディスインテグリンおよびメタロプロテイナーゼ(配列番号:661)をコードする。正常組織および癌組織における配列番号:660の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:662、663)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図36参照。配列番号:660は胎盤において高発現される。正常組織と比較して、配列番号:660は胃癌、卵巣癌および悪性黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:660およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0295】
配列番号:664のヌクレオチド配列は、配列番号:61から推定され、未知の機能の334個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:665)をコードする。正常組織および癌組織における配列番号:664の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:666、667)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図37参照。配列番号:664は胎盤および皮膚において発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:664は胃癌、結腸癌、肺癌および悪性黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:664およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0296】
配列番号:668のヌクレオチド配列は配列番号:13から推定された。配列番号:668は、明らかなオープンリーディングフレームを有さない部分cDNAである。正常組織および癌組織における配列番号:668の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:669、670)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図38参照。配列番号:668は胎盤において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:668は肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:668およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0297】
配列番号:671のヌクレオチド配列は、配列番号:42から推定され、未知の機能の426個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:672)をコードする。正常組織および癌組織における配列番号:671の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:673、674)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図39参照。配列番号:671は胎盤および皮膚において発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:671は肺癌および悪性黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:671およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0298】
配列番号:675のヌクレオチド配列は、配列番号:314から推定され、2.912個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:676)をコードする。正常組織および癌組織における配列番号:675の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:677、678)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図40参照。配列番号:675は胎盤において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:675は肺癌および悪性黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:675およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0299】
配列番号:679のヌクレオチド配列は配列番号:31から推定された。配列番号:679は、明らかなオープンリーディングフレームを有さない部分cDNAである。正常組織および癌組織における配列番号:679の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:680、681)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図41参照。配列番号:679は胎盤において高発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:679は肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:679およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0300】
配列番号:682のヌクレオチド配列は、配列番号:21から推定され、278個のアミノ酸のタンパク質(配列番号:683)をコードする。正常組織および癌組織における配列番号:682の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:684、685)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図42参照。配列番号:682は胎盤、子宮内膜において高発現され、リンパ節においてより低いレベルで発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:682は胃癌、乳癌および悪性黒色腫において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:682およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【0301】
配列番号:686のヌクレオチド配列は配列番号:58から推定された。配列番号:686は、明らかなオープンリーディングフレームを有さない部分cDNAである。正常組織および癌組織における配列番号:686の発現を、配列特異的オリゴヌクレオチド(配列番号:687、688)を使用したリアルタイムRT−PCRによって定量化した;図43参照。配列番号:686は胎盤において高発現され、乳房においてより低いレベルで発現される。他の正常組織と比較して、配列番号:686は乳癌、卵巣癌および肺癌において過剰発現される。これらの発現結果に基づき、配列番号:686およびその発現産物は、標的化治療のための、特にこれらの特定腫瘍型のための分子マーカーおよび/または標的候補物質として適切である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)腫瘍関連抗原の発現もしくは活性を阻害する、および/または
(II)腫瘍阻害活性を有し、腫瘍関連抗原をコードする核酸もしくは腫瘍関連抗原を発現するもしくは異常発現する細胞に選択的である、および/または
(III)投与された場合、MHC分子と腫瘍関連抗原もしくはその一部との間の複合体の量を選択的に増大させる
作用物質を含有する医薬組成物であって、前記腫瘍関連抗原が、
(a)配列番号:634、1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620、624、638、642、646、649、653、656、660、664、668、671、675、679、682および686からなる群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で前記(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)前記(a)または前記(b)の核酸に対して縮重している核酸、ならびに
(d)前記(a)、前記(b)または前記(c)の核酸に相補的な核酸
からなる群より選択される核酸によってコードされる配列を有する、医薬組成物。
【請求項2】
前記(I)または前記(II)の下での作用物質が、腫瘍関連抗原をコードする核酸と選択的にハイブリダイズするアンチセンス核酸であるか、または腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記作用物質が、
(i)腫瘍関連抗原またはその一部、
(ii)腫瘍関連抗原またその一部をコードする核酸、
(iii)腫瘍関連抗原またその一部に結合する抗体、
(iv)腫瘍関連抗原をコードする核酸と特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸、
(v)腫瘍関連抗原をコードする核酸に対するsiRNA、
(vi)腫瘍関連抗原またその一部を発現する宿主細胞、および
(vii)腫瘍関連抗原またその一部とMHC分子との間の単離された複合体
からなる群より選択される1またはそれ以上の成分を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
(i)腫瘍関連抗原またはその一部、
(ii)腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸、
(iii)腫瘍関連抗原またはその一部に結合する抗体、
(iv)腫瘍関連抗原をコードする核酸と特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸、
(v)腫瘍関連抗原をコードする核酸に対するsiRNA、
(vi)腫瘍関連抗原またはその一部を発現する宿主細胞、および
(vii)腫瘍関連抗原またはその一部とMHC分子との間の単離された複合体
からなる群より選択される1またはそれ以上の成分を含有する医薬組成物であって、前記腫瘍関連抗原が、
(a)配列番号:634、1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620、624、638、642、646、649、653、656、660、664、668、671、675、679、682および686からなる群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で前記(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)前記(a)または前記(b)の核酸に対して縮重している核酸、ならびに
(d)前記(a)、前記(b)または前記(c)の核酸に相補的な核酸
からなる群より選択される核酸によってコードされる配列を有する、医薬組成物。
【請求項5】
前記宿主細胞が、腫瘍関連抗原またはその一部に結合するMHC分子を付加的に発現し、宿主細胞が、好ましくは抗原提示細胞である、請求項3または4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記抗体が、モノクローナル、キメラ、ヒトもしくはヒト化抗体であるか、または抗体のフラグメントである、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記抗体が治療薬または診断薬に結合されている、請求項2乃至4および6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
癌の治療または予防のために使用し得る、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
癌が、肺腫瘍、胸部腫瘍、前立腺腫瘍、黒色腫、結腸腫瘍、胃腫瘍、膵臓腫瘍、ENT腫瘍、卵巣腫瘍、結腸直腸腫瘍、子宮頸癌、結腸癌または乳癌である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
ワクチンの形態であり、好ましくは治療用および/または予防用である、請求項1、3乃至5、8および9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
癌疾患を診断する方法、または観測する方法であって、患者から単離された生物学試料において、
(i)腫瘍関連核酸もしくはその一部、および/または
(ii)腫瘍関連抗原もしくはその一部、および/または
(iii)腫瘍関連抗原もしくはその一部に結合する抗体、および/または
(iv)腫瘍関連抗原もしくはその一部に特異的なTリンパ球
を検出するまたはその量を測定することを含み、前記腫瘍関連核酸が、
(a)配列番号:634、1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620、624、638、642、646、649、653、656、660、664、668、671、675、679、682および686からなる群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で前記(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)前記(a)または前記(b)の核酸に対して縮重している核酸、ならびに
(d)前記(a)、前記(b)または前記(c)の核酸に相補的な核酸
からなる群より選択され、前記腫瘍関連抗原が、前記の核酸の群より選択される核酸によってコードされる配列を有する、癌疾患を診断する方法、または観測する方法。
【請求項12】
検出または量の測定が、
(i)生物学的試料を、腫瘍関連核酸もしくはその一部、腫瘍関連抗原もしくはその一部、抗体またはTリンパ球に特異的に結合する作用物質と接触させること、および
(ii)作用物質と、核酸もしくはその一部、腫瘍関連抗原もしくはその一部、抗体またはTリンパ球との間の複合体の形成を検出するまたは複合体の量を測定すること
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
腫瘍関連核酸またはその一部に特異的に結合する作用物質が、前記核酸または前記その一部に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
腫瘍関連抗原またはその一部に特異的に結合する作用物質が、前記腫瘍関連抗原または前記その一部に特異的に結合する抗体である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
抗体に特異的に結合する作用物質が、前記抗体に特異的に結合するタンパク質またはペプチドである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
Tリンパ球に特異的に結合する作用物質が、腫瘍関連抗原またはその一部とMHC分子との間の複合体を提示する細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記疾患の前記観測が、前記疾患を有するまたは前記疾患に罹患することが疑われる患者からの試料において前記疾患の後退、経過または発症を測定することを含む、請求項11乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記作用物質が検出可能に標識されている、請求項12乃至17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記試料が体液および/または体組織を含む、請求項11乃至18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記癌疾患が、前記腫瘍関連核酸を発現または異常発現するものであり、好ましくは前記腫瘍関連核酸によってコードされる腫瘍関連抗原発現または異常発現するものである、請求項11乃至19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
腫瘍関連抗原が発現または異常発現する疾患を治療するまたは予防する方法であって、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与することを含み、前記腫瘍関連抗原が、
(a)配列番号:634、1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620、624、638、642、646、649、653、656、660、664、668、671、675、679、682および686からなる群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で前記(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)前記(a)または前記(b)の核酸に対して縮重している核酸、ならびに
(d)前記(a)、前記(b)または前記(c)の核酸に相補的な核酸
からなる群より選択される核酸によってコードされる配列を有する、前記疾患を治療する方法、または予防する方法。
【請求項22】
腫瘍関連抗原の発現または異常発現する疾患を治療する、予防する、診断するまたは観測する方法であって、前記腫瘍関連抗原またはその一部に結合する、治療薬または診断薬に連結された抗体を投与することを含み、前記腫瘍関連抗原が、
(a)配列番号:634、1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620、624、638、642、646、649、653、656、660、664、668、671、675、679、682および686からなる群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で前記(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)前記(a)または前記(b)の核酸に対して縮重している核酸、ならびに
(d)前記(a)、前記(b)または前記(c)の核酸に相補的な核酸
からなる群より選択される核酸によってコードされる配列を有する、前記疾患を治療する方法、予防する方法、診断する方法、または観測する方法。
【請求項23】
前記抗体が、モノクローナル、キメラ、ヒトもしくはヒト化抗体であるか、または抗体のフラグメントである、請求項14または22に記載の方法。
【請求項24】
腫瘍関連抗原の発現または異常発現する疾患を有する患者を治療する方法であって、
(i)免疫反応性細胞を含有する試料を提供すること、
(ii)前記試料を、前記腫瘍関連抗原またはその一部に対する細胞溶解性またはサイトカイン放出性T細胞の産生を促進する条件下で、前記腫瘍関連抗原またはその一部を発現する宿主細胞と接触させること、および
(iii)細胞溶解性またはサイトカイン放出性T細胞を、腫瘍関連抗原またはその一部を発現する細胞を溶解するのに適した量で患者に導入すること
を含み、前記腫瘍関連抗原が、
(a)配列番号:634、1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620、624、638、642、646、649、653、656、660、664、668、671、675、679、682および686からなる群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で前記(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)前記(a)または前記(b)の核酸に対して縮重している核酸、ならびに
(d)前記(a)、前記(b)または前記(c)の核酸に相補的な核酸
からなる群より選択される核酸によってコードされる配列を有する、前記疾患を有する患者を治療する方法。
【請求項25】
前記宿主細胞が、腫瘍関連抗原もしくはその一部に結合するMHC分子を組換え発現するか、または腫瘍関連抗原もしくはその一部に結合するMHC分子を内因性に発現する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む、患者において癌の発症を抑制する方法。
【請求項27】
(a)配列番号:634、1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620、624、638、642、646、649、653、656、660、664、668、671、675、679、682および686からなる群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で前記(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)前記(a)または前記(b)の核酸に対して縮重している核酸、ならびに
(d)前記(a)、前記(b)または前記(c)の核酸に相補的な核酸
からなる群より選択される核酸によってコードされるタンパク質またはポリペプチドまたはその一部に特異的に結合する作用物質。
【請求項28】
抗体、好ましくはモノクローナル、キメラ、ヒトもしくはヒト化抗体、または抗体のフラグメントである、請求項27に記載の作用物質。
【請求項29】
(i)タンパク質またはポリペプチドまたはその一部と、
(ii)前記タンパク質またはポリペプチドまたは前記その一部が結合するMHC分子
との複合体に選択的に結合し、(i)または(ii)単独には結合しない抗体であって、前記タンパク質またはポリペプチドが、
(a)配列番号:634、1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620、624、638、642、646、649、653、656、660、664、668、671、675、679、682および686からなる群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で前記(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)前記(a)または前記(b)の核酸に対して縮重している核酸、ならびに
(d)前記(a)、前記(b)または前記(c)の核酸に相補的な核酸
からなる群より選択される核酸によってコードされる、抗体。
【請求項30】
モノクローナル、キメラもしくはヒト化抗体であるか、または抗体のフラグメントである、請求項29に記載の抗体。
【請求項31】
請求項27もしくは28に記載の作用物質または請求項29もしくは30に記載の抗体と、治療薬または診断薬との間の複合体。
【請求項32】
癌を検出するためのキットであって、
(i)腫瘍関連核酸もしくはその一部、および/または
(ii)腫瘍関連抗原もしくはその一部、および/または
(iii)腫瘍関連抗原もしくはその一部に結合する抗体、および/または
(iv)腫瘍関連抗原もしくはその一部とMHC分子との間の複合体に特異的なT細胞
を検出するまたはその量を測定するための作用物質を含み、前記腫瘍関連核酸が、
(a)配列番号:634、1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620、624、638、642、646、649、653、656、660、664、668、671、675、679、682および686からなる群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で前記(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)前記(a)または前記(b)の核酸に対して縮重している核酸、ならびに
(d)前記(a)、前記(b)または前記(c)の核酸に相補的な核酸
からなる群より選択され、前記腫瘍関連抗原が、前記の核酸の群より選択される核酸によってコードされる配列を有する、癌を検出するためのキット。
【請求項33】
腫瘍関連抗原が、配列番号:635、542、546、550、554、567、571、584、588、592、596、603、607、614、621、625、639、643、650、657、661、665、672、676および683からなる群より選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の医薬組成物、請求項11乃至26のいずれか一項に記載の方法、または請求項32に記載のキット。
【請求項34】
タンパク質またはポリペプチドが、配列番号:635、542、546、550、554、567、571、584、588、592、596、603、607、614、621、625、639、643、650、657、661、665、672、676および683からなる群より選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含む、請求項27もしくは28に記載の作用物質、請求項29もしくは30に記載の抗体、または請求項31に記載の複合体。
【請求項1】
(I)腫瘍関連抗原の発現もしくは活性を阻害する、および/または
(II)腫瘍阻害活性を有し、腫瘍関連抗原をコードする核酸もしくは腫瘍関連抗原を発現するもしくは異常発現する細胞に選択的である、および/または
(III)投与された場合、MHC分子と腫瘍関連抗原もしくはその一部との間の複合体の量を選択的に増大させる
作用物質を含有する医薬組成物であって、前記腫瘍関連抗原が、
(a)配列番号:634、1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620、624、638、642、646、649、653、656、660、664、668、671、675、679、682および686からなる群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で前記(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)前記(a)または前記(b)の核酸に対して縮重している核酸、ならびに
(d)前記(a)、前記(b)または前記(c)の核酸に相補的な核酸
からなる群より選択される核酸によってコードされる配列を有する、医薬組成物。
【請求項2】
前記(I)または前記(II)の下での作用物質が、腫瘍関連抗原をコードする核酸と選択的にハイブリダイズするアンチセンス核酸であるか、または腫瘍関連抗原に選択的に結合する抗体である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記作用物質が、
(i)腫瘍関連抗原またはその一部、
(ii)腫瘍関連抗原またその一部をコードする核酸、
(iii)腫瘍関連抗原またその一部に結合する抗体、
(iv)腫瘍関連抗原をコードする核酸と特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸、
(v)腫瘍関連抗原をコードする核酸に対するsiRNA、
(vi)腫瘍関連抗原またその一部を発現する宿主細胞、および
(vii)腫瘍関連抗原またその一部とMHC分子との間の単離された複合体
からなる群より選択される1またはそれ以上の成分を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
(i)腫瘍関連抗原またはその一部、
(ii)腫瘍関連抗原またはその一部をコードする核酸、
(iii)腫瘍関連抗原またはその一部に結合する抗体、
(iv)腫瘍関連抗原をコードする核酸と特異的にハイブリダイズするアンチセンス核酸、
(v)腫瘍関連抗原をコードする核酸に対するsiRNA、
(vi)腫瘍関連抗原またはその一部を発現する宿主細胞、および
(vii)腫瘍関連抗原またはその一部とMHC分子との間の単離された複合体
からなる群より選択される1またはそれ以上の成分を含有する医薬組成物であって、前記腫瘍関連抗原が、
(a)配列番号:634、1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620、624、638、642、646、649、653、656、660、664、668、671、675、679、682および686からなる群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で前記(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)前記(a)または前記(b)の核酸に対して縮重している核酸、ならびに
(d)前記(a)、前記(b)または前記(c)の核酸に相補的な核酸
からなる群より選択される核酸によってコードされる配列を有する、医薬組成物。
【請求項5】
前記宿主細胞が、腫瘍関連抗原またはその一部に結合するMHC分子を付加的に発現し、宿主細胞が、好ましくは抗原提示細胞である、請求項3または4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記抗体が、モノクローナル、キメラ、ヒトもしくはヒト化抗体であるか、または抗体のフラグメントである、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記抗体が治療薬または診断薬に結合されている、請求項2乃至4および6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
癌の治療または予防のために使用し得る、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
癌が、肺腫瘍、胸部腫瘍、前立腺腫瘍、黒色腫、結腸腫瘍、胃腫瘍、膵臓腫瘍、ENT腫瘍、卵巣腫瘍、結腸直腸腫瘍、子宮頸癌、結腸癌または乳癌である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
ワクチンの形態であり、好ましくは治療用および/または予防用である、請求項1、3乃至5、8および9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
癌疾患を診断する方法、または観測する方法であって、患者から単離された生物学試料において、
(i)腫瘍関連核酸もしくはその一部、および/または
(ii)腫瘍関連抗原もしくはその一部、および/または
(iii)腫瘍関連抗原もしくはその一部に結合する抗体、および/または
(iv)腫瘍関連抗原もしくはその一部に特異的なTリンパ球
を検出するまたはその量を測定することを含み、前記腫瘍関連核酸が、
(a)配列番号:634、1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620、624、638、642、646、649、653、656、660、664、668、671、675、679、682および686からなる群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で前記(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)前記(a)または前記(b)の核酸に対して縮重している核酸、ならびに
(d)前記(a)、前記(b)または前記(c)の核酸に相補的な核酸
からなる群より選択され、前記腫瘍関連抗原が、前記の核酸の群より選択される核酸によってコードされる配列を有する、癌疾患を診断する方法、または観測する方法。
【請求項12】
検出または量の測定が、
(i)生物学的試料を、腫瘍関連核酸もしくはその一部、腫瘍関連抗原もしくはその一部、抗体またはTリンパ球に特異的に結合する作用物質と接触させること、および
(ii)作用物質と、核酸もしくはその一部、腫瘍関連抗原もしくはその一部、抗体またはTリンパ球との間の複合体の形成を検出するまたは複合体の量を測定すること
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
腫瘍関連核酸またはその一部に特異的に結合する作用物質が、前記核酸または前記その一部に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
腫瘍関連抗原またはその一部に特異的に結合する作用物質が、前記腫瘍関連抗原または前記その一部に特異的に結合する抗体である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
抗体に特異的に結合する作用物質が、前記抗体に特異的に結合するタンパク質またはペプチドである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
Tリンパ球に特異的に結合する作用物質が、腫瘍関連抗原またはその一部とMHC分子との間の複合体を提示する細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記疾患の前記観測が、前記疾患を有するまたは前記疾患に罹患することが疑われる患者からの試料において前記疾患の後退、経過または発症を測定することを含む、請求項11乃至16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記作用物質が検出可能に標識されている、請求項12乃至17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記試料が体液および/または体組織を含む、請求項11乃至18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記癌疾患が、前記腫瘍関連核酸を発現または異常発現するものであり、好ましくは前記腫瘍関連核酸によってコードされる腫瘍関連抗原発現または異常発現するものである、請求項11乃至19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
腫瘍関連抗原が発現または異常発現する疾患を治療するまたは予防する方法であって、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与することを含み、前記腫瘍関連抗原が、
(a)配列番号:634、1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620、624、638、642、646、649、653、656、660、664、668、671、675、679、682および686からなる群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で前記(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)前記(a)または前記(b)の核酸に対して縮重している核酸、ならびに
(d)前記(a)、前記(b)または前記(c)の核酸に相補的な核酸
からなる群より選択される核酸によってコードされる配列を有する、前記疾患を治療する方法、または予防する方法。
【請求項22】
腫瘍関連抗原の発現または異常発現する疾患を治療する、予防する、診断するまたは観測する方法であって、前記腫瘍関連抗原またはその一部に結合する、治療薬または診断薬に連結された抗体を投与することを含み、前記腫瘍関連抗原が、
(a)配列番号:634、1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620、624、638、642、646、649、653、656、660、664、668、671、675、679、682および686からなる群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で前記(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)前記(a)または前記(b)の核酸に対して縮重している核酸、ならびに
(d)前記(a)、前記(b)または前記(c)の核酸に相補的な核酸
からなる群より選択される核酸によってコードされる配列を有する、前記疾患を治療する方法、予防する方法、診断する方法、または観測する方法。
【請求項23】
前記抗体が、モノクローナル、キメラ、ヒトもしくはヒト化抗体であるか、または抗体のフラグメントである、請求項14または22に記載の方法。
【請求項24】
腫瘍関連抗原の発現または異常発現する疾患を有する患者を治療する方法であって、
(i)免疫反応性細胞を含有する試料を提供すること、
(ii)前記試料を、前記腫瘍関連抗原またはその一部に対する細胞溶解性またはサイトカイン放出性T細胞の産生を促進する条件下で、前記腫瘍関連抗原またはその一部を発現する宿主細胞と接触させること、および
(iii)細胞溶解性またはサイトカイン放出性T細胞を、腫瘍関連抗原またはその一部を発現する細胞を溶解するのに適した量で患者に導入すること
を含み、前記腫瘍関連抗原が、
(a)配列番号:634、1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620、624、638、642、646、649、653、656、660、664、668、671、675、679、682および686からなる群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で前記(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)前記(a)または前記(b)の核酸に対して縮重している核酸、ならびに
(d)前記(a)、前記(b)または前記(c)の核酸に相補的な核酸
からなる群より選択される核酸によってコードされる配列を有する、前記疾患を有する患者を治療する方法。
【請求項25】
前記宿主細胞が、腫瘍関連抗原もしくはその一部に結合するMHC分子を組換え発現するか、または腫瘍関連抗原もしくはその一部に結合するMHC分子を内因性に発現する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む、患者において癌の発症を抑制する方法。
【請求項27】
(a)配列番号:634、1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620、624、638、642、646、649、653、656、660、664、668、671、675、679、682および686からなる群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で前記(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)前記(a)または前記(b)の核酸に対して縮重している核酸、ならびに
(d)前記(a)、前記(b)または前記(c)の核酸に相補的な核酸
からなる群より選択される核酸によってコードされるタンパク質またはポリペプチドまたはその一部に特異的に結合する作用物質。
【請求項28】
抗体、好ましくはモノクローナル、キメラ、ヒトもしくはヒト化抗体、または抗体のフラグメントである、請求項27に記載の作用物質。
【請求項29】
(i)タンパク質またはポリペプチドまたはその一部と、
(ii)前記タンパク質またはポリペプチドまたは前記その一部が結合するMHC分子
との複合体に選択的に結合し、(i)または(ii)単独には結合しない抗体であって、前記タンパク質またはポリペプチドが、
(a)配列番号:634、1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620、624、638、642、646、649、653、656、660、664、668、671、675、679、682および686からなる群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で前記(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)前記(a)または前記(b)の核酸に対して縮重している核酸、ならびに
(d)前記(a)、前記(b)または前記(c)の核酸に相補的な核酸
からなる群より選択される核酸によってコードされる、抗体。
【請求項30】
モノクローナル、キメラもしくはヒト化抗体であるか、または抗体のフラグメントである、請求項29に記載の抗体。
【請求項31】
請求項27もしくは28に記載の作用物質または請求項29もしくは30に記載の抗体と、治療薬または診断薬との間の複合体。
【請求項32】
癌を検出するためのキットであって、
(i)腫瘍関連核酸もしくはその一部、および/または
(ii)腫瘍関連抗原もしくはその一部、および/または
(iii)腫瘍関連抗原もしくはその一部に結合する抗体、および/または
(iv)腫瘍関連抗原もしくはその一部とMHC分子との間の複合体に特異的なT細胞
を検出するまたはその量を測定するための作用物質を含み、前記腫瘍関連核酸が、
(a)配列番号:634、1〜540、541、545、549、553、557、560、563、566、570、574、577、580、583、587、591、595、599、602、606、610、613、617、620、624、638、642、646、649、653、656、660、664、668、671、675、679、682および686からなる群より選択される核酸配列、その一部または誘導体を含む核酸、
(b)ストリンジェントな条件下で前記(a)の核酸とハイブリダイズする核酸、
(c)前記(a)または前記(b)の核酸に対して縮重している核酸、ならびに
(d)前記(a)、前記(b)または前記(c)の核酸に相補的な核酸
からなる群より選択され、前記腫瘍関連抗原が、前記の核酸の群より選択される核酸によってコードされる配列を有する、癌を検出するためのキット。
【請求項33】
腫瘍関連抗原が、配列番号:635、542、546、550、554、567、571、584、588、592、596、603、607、614、621、625、639、643、650、657、661、665、672、676および683からなる群より選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の医薬組成物、請求項11乃至26のいずれか一項に記載の方法、または請求項32に記載のキット。
【請求項34】
タンパク質またはポリペプチドが、配列番号:635、542、546、550、554、567、571、584、588、592、596、603、607、614、621、625、639、643、650、657、661、665、672、676および683からなる群より選択されるアミノ酸配列、その一部または誘導体を含む、請求項27もしくは28に記載の作用物質、請求項29もしくは30に記載の抗体、または請求項31に記載の複合体。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図1】
【公表番号】特表2012−525121(P2012−525121A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507624(P2012−507624)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002490
【国際公開番号】WO2010/124812
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(504346260)ガニメド ファーマシューティカルズ アーゲー (21)
【出願人】(509256849)
【氏名又は名称原語表記】JOHANNES GUTENBERG−UNIVERSITAET MAINZ
【住所又は居所原語表記】Saarstrasse 21, 55122 Mainz, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002490
【国際公開番号】WO2010/124812
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(504346260)ガニメド ファーマシューティカルズ アーゲー (21)
【出願人】(509256849)
【氏名又は名称原語表記】JOHANNES GUTENBERG−UNIVERSITAET MAINZ
【住所又は居所原語表記】Saarstrasse 21, 55122 Mainz, Germany
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]