説明

診断および治療標的としての前立腺障害において過剰発現される遺伝子

【課題】前立腺障害において差異発現される遺伝子に基づく前立腺障害の診断、進行のモニタリングおよび処置方法を提供する。また前立腺障害の処置に有用な物質の同定方法、前立腺障害の処置の有効性をモニタリングする方法、前立腺細胞増殖の阻害方法、およびこれらの遺伝子のプロモーターを含む、前立腺特異的ベクターも提供する。
【解決手段】特定の少なくとも1つの遺伝子の発現を低下させられる剤の有効量を細胞に投与することを含み、但し、もし1つの遺伝子のみの発現が阻害されるなら、その遺伝子は脂肪酸シンターゼ遺伝子ではない、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互的言及
本願は、2001年1月23日に出願された米国仮出願番号第60/263,461号および2001年6月28日に出願された米国仮出願番号第60/301,639号の利益を主張する。前述の出願を、出典明示により本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、一般的に、前立腺癌などの前立腺障害における診断マーカーおよび/または治療的介入用の標的として有用な遺伝子に関連するものである。より具体的には、本発明は、悪性と正常の前立腺組織において異なって発現される遺伝子の同定、およびこれらの遺伝子に基づく前立腺障害の診断、予後および処置方法に関するものである。
【0003】
2.関連技術の説明
前立腺癌は、男性において最も一般的な悪性腫瘍であり、米国における癌による死亡の2番目に頻度の高い原因である。その進行は、Scher et al., Urology, Vol. 55, pp. 323-327 (2000)に記載のように、前侵襲性疾患(前立腺上皮内腫瘍(prostatic intraepithelial neoplasia)、PIN)、侵襲性癌、およびアンドロゲン依存性またはアンドロゲン非依存性転移を含む、一連の定義された状態を通じて進む。初期の器官に留まる前立腺癌は、一般的に手術または放射線治療で治すことができ、そして例えば Catalona et al., JAMA, Vol. 270, pp. 948-954 (1993) に記載のような前立腺特異抗原(PSA)スクリーニングに基づく検出の努力は、局所的疾患を有する何千人もの男性の同定を導いてきた。血清PSAは、例えば Brawer, Semin. Surg. Oncol., Vol. 18, pp. 3-9 (2000) に記載のように、現在利用可能な最良の前立腺腫瘍マーカーとして広く認識されているが、PSAを単独で、または直腸内触診と組合せて利用するスクリーニングプログラムは、前立腺癌の男性の生存率を改善するのに失敗してきた。
【0004】
診断マーカーとしてのPSAの使用には、いくつかの不利益が伴う。第一に、PSAは前立腺組織に特異的であるが、悪性前立腺組織と同様に正常前立腺組織により産生され、前立腺組織断片におけるPSA発現の定量は、悪性または悪性可能性に関してその組織を疑いなく分類しない。第二に、全ての前立腺腫瘍がPSAを分泌するわけではない。第三に、高いPSA血清レベルは前立腺癌の有効なインジケーターであるが、例えば Brawer et al., Am. J. Clin. Pathol., Vol. 92, pp. 760-764 (1989) に記載のように、4ないし10ng/mLほどの穏かなレベルの上昇は、閉塞性または炎症性尿路疾患の男性にも見られ、癌マーカーとしてのPSAの特異性を低めている。例えば Nam et al., J. Clin. Oncol., Vol. 18, pp. 1036-1042 (2000) に記載のように、腺カリクレイン2(hK2)や前立腺特異的トランスグルタミナーゼ(pTGase)などの他のバイオマーカーは、診断特異性を増大させるためのPSAの補助物として提唱され、不必要な生検を受ける男性の数を減らしているが、これらのマーカーの有用性は未だ研究中である。
【0005】
前立腺癌の発症と進行の分子的理解は、侵襲性前立腺癌に対する特異性が増大したさらなるバイオマーカー、および新しい腫瘍特異的治療標的の同定に向けた重要な段階である。この増大した理解の利益には、例えば Saffran et al., Cancer Metastasis Rev., Vol. 18, pp. 437-449 (1999) に記載のように、前立腺癌で見られる細胞表面抗原、分泌タンパク質、および細胞内タンパク質に基づく免疫学的試薬が臨床試験へ最近導入されたことが含まれる。Lalani et al., Cancer Metastasis Rev., Vol. 16, pp. 29-66 (1997); Li et al., Science, Vol. 275, pp. 1943-1947 (1997); Marcelli et al., Cancer Res., Vol. 60, pp. 944-949 (2000); および Voeller et al., Cancer Res., Vol. 58, pp. 2520-2523 (1998) に記載のように、前立腺癌における分子変化には、Rb、p53、PTEN、β−カテニン、rasおよびアンドロゲン受容体の突然変異が含まれるが、これらが存在するときは、主に進行した疾患において生じる。従って、前立腺癌腫の大部分の根底にある主要な分子変化は未知のままである。
【0006】
例えば Bussemakers et al., Cancer Res., Vol. 59, pp. 5975-5979 (1999); Chang et al., Cancer Res., Vol. 57, pp. 4075-4081 (1997); Hoang et al., Am. J. Pathol., Vol. 156, pp. 857-864 (2000); Huang et al., Genomics, Vol. 59, pp. 178-186 (1999); Pilarsky et al., Prostate, Vol. 36, pp. 85-91 (1998); Sun et al., Cancer Res., Vol. 57, pp. 18-23 (1997); および Yang et al., Cancer Res., Vol. 58, pp. 3732-3735 (1998) に記載のように、前立腺癌における差異(differential)遺伝子発現分析は、主として組織塊(bulk)および細胞系の分析により実施されてきたが、これらの分析からの少数の遺伝子のみが、続く研究で有効とされた。遺伝子発現プロファイリングのモデル系として前立腺癌を使用する癌ゲノム解剖学プロジェクト(Cancer Genome Anatomy Project)による協調努力により、良性上皮、PINおよび癌に由来する少なくとも12種の前立腺cDNAライブラリーが生成された。配列解読された約30,000個のクローンから上皮関連遺伝子が同定されたが、例えば Emmert-Buck et al., Am. J. Pathol., Vol. 156, pp. 1109-1115 (2000) に記載のように、これらのほとんどは、正常と癌の組織の間で差異発現を統計的に有効に評価するのに十分なレベルでは発現していなかった。
【0007】
PSAは前立腺癌の診断マーカーとして有用であると立証されたが、その使用には欠陥があった。それは、正常および悪性前立腺組織によるその産生が、前立腺癌の検出に高い疑陽性率を招くことである。加えて、前述の前立腺特異的遺伝子は前立腺癌で典型的に上方調節されるわけではなく、従って前立腺癌の進行または退行のモニタリングには利用できない。さらに、前述の研究は、前立腺癌に関わる主要な分子メカニズムを明らかにするのに完全に成功したわけではない。前立腺癌および他の前立腺障害において異なって発現され、前立腺障害の進行に連動する遺伝子の同定は、前立腺障害の診断および前立腺障害特異的診断マーカーの提供のための迅速で安価な方法の開発のみならず、前立腺障害の進行/退行のモニタリング、前立腺障害の分子メカニズムの解明、および前立腺障害のある、または前立腺障害を発症するリスクのある男性の処置用の新たな治療標的の開発に、かなり重要である。
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
後述のように、本発明は、正常ヒト前立腺と比較して、ヒト前立腺障害、特に前立腺癌において非常に異なって発現される複数の遺伝子を同定することにより、現在利用可能な前立腺癌の診断方法の欠点を克服するものである。これらの遺伝子に対応するmRNA転写物およびタンパク質は、例えば前立腺癌および他の前立腺障害に特異的な診断マーカーおよび治療標的として有用である。
【0009】
ある態様では、前立腺障害または前立腺障害を発症するリスクについて、対象をスクリーニングする方法が提供される。その方法は、
a)対象から得られた前立腺組織サンプルにおいて、表2、3または4で同定される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを検出し、第1の値を得ること、但し、もし1つの遺伝子の発現が検出されるなら、その遺伝子はFASNではない;および
b)無疾患対象から得られた前立腺組織サンプルにおいて、表2、3または4で同定される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルと、第1の値を比較すること、ここで、無疾患対象由来サンプルと比較して対象サンプルにおいて発現レベルが高いことは、対象が前立腺障害を有するか、または前立腺障害を発症するリスクにあることを示す;
を含む。
【0010】
他の態様では、前立腺障害を有するか、または有するリスクにある対象において、前立腺障害の進行をモニタリングする方法が提供される。その方法は、対象から得られた前立腺組織サンプルにおいて、表2、3または4で同定される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを経時的に(over time)測定することを含み、但し、もし1つの遺伝子のみの発現が検出されるなら、その遺伝子はFASNではなく、少なくとも1つの遺伝子の発現レベルの経時的な増大は、対象における前立腺障害の進行を示すものである。
【0011】
他の態様では、前立腺障害の処置に使用するための剤を同定する方法が提供される。その方法は、
a)疾患前立腺細胞を候補剤と接触させること;
b)疾患前立腺細胞における少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを検出すること、ここで、少なくとも1つの遺伝子は表2、3または4で同定され、但し、もし1つの遺伝子のみの発現が検出されるなら、その遺伝子はFASNではない;および
c)候補剤の存在するサンプルにおける少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを、候補剤に接触していない細胞における少なくとも1つの遺伝子の発現レベルと比較すること、ここで、候補剤の存在しないサンプルにおける少なくとも1つの遺伝子の発現レベルと比べて候補剤の存在するサンプルにおける少なくとも1つの遺伝子の発現レベルが低下していることは、前立腺障害の処置に有用な剤を示すものである;
を含む。
【0012】
他の態様では、望ましくない前立腺細胞の増殖を阻害する方法が提供される。その方法は、表2、3または4で同定される少なくとも1つの遺伝子の発現を低下させられる剤の有効量を細胞に投与することを含む。但し、もし1つの遺伝子のみの発現が阻害されるなら、その遺伝子はFASNではない。
【0013】
他の態様では、前立腺障害を有するか、または前立腺障害を発症するリスクにある対象の、ある剤による処置の有効性をモニタリングする方法が提供される。その方法は、
a)剤の投与に先立ち、対象から投与前サンプルを得ること;
b)投与前サンプルにおける表2、3または4で同定される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを検出すること、但し、もし1つの遺伝子のみの発現が検出されるなら、その遺伝子はFASNではない;
c)対象から1つまたはそれ以上の投与後サンプルを得ること;
d)投与後サンプルまたはサンプル群における少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを検出すること;
e)投与前サンプルにおける少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを、投与後サンプルにおける少なくとも1つの遺伝子の発現レベルと比較すること;および
f)それに応じて剤の投与を調節すること;
を含む。
【0014】
他の態様では、ベクターの複製に必須である遺伝子のコード領域に機能しうるように連結した、表2、3または4で同定される遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子のプロモーターおよび/またはエンハンサー、但し、その遺伝子はFASNではない、を含む、ウイルスベクターが提供される。そのベクターは、疾患前立腺細胞にトランスフェクションすると複製するように適合されている。
【0015】
他の態様では、異種遺伝子産物のコード領域に機能しうるように連結した、表2、3または4で同定される遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子のプロモーターおよび/またはエンハンサー、但し、その遺伝子はFASNではない、を含む、核酸コンストラクトが提供される。
【0016】
図面の簡単な説明
図1
サンプル全域で最も変動した3,530遺伝子のサブセットの発現レベルにおける包括的類似性に従ってグループ分けされた、55個の実験サンプルの樹状図。
【0017】
図2aおよび2b
正常および悪性前立腺組織において高く順位付けされた遺伝子の発現レベル。各遺伝子を24個の悪性(四角)および9個の正常(円)サンプルにおける発現レベルから導かれる2つの平均値で表した。エラーバーは、99%の信頼区間を表す。重複入力は、受託または転写物番号により限定した:a)「差異」計量法で最も高く順位付けされた20遺伝子のハイブリダイゼーションシグナル;b)「診断」計量法で最も高く順位付けされた遺伝子。
【0018】
図3
選択された前立腺組織からのヘプシンおよびPLAB転写物の増幅。正常(N8、N10)および腫瘍(T16、T22)組織からの転写物を、18srRNAと共に増幅した。対応するマイクロアレイ上のヘプシンとPLABのハイブリダイゼーション強度を、各例から生成されたPCR産物の下に示す。
【0019】
発明の説明
本明細書で引用する全特許出願、特許および文献は、出典明示により全体を本明細書の一部とする。
【0020】
本発明は、前立腺障害、特に癌において、正常前立腺組織においてよりも高いレベルで発現される遺伝子の同定に関するものである。正常前立腺組織を含む正常体組織におけるその低発現、および新生前立腺組織における高発現のために、これらの遺伝子は、前立腺障害のリスクにある、前立腺障害を有する、または前立腺障害の再発のリスクにある男性の診断、管理、処置および/または処置後追跡に利用できる。前立腺障害は、局所的前立腺癌、転移前立腺癌、前立腺炎、良性前立腺増殖症、および良性前立腺肥大を含むがこれらに限定されるわけではない。これらの50個の遺伝子は、表2、3および4に挙げたものを含む。50個の遺伝子の完全な配列は、表2、3および4に示す受託番号を使用して、UniGene、およびTIGRまたはEntrezデータベースから入手できる。
【0021】
表2、3または4に挙げた遺伝子の少なくとも1つのいかなる選択も、腫瘍マーカー/治療標的として利用できる。但し、もし1つの遺伝子のみの発現が検出されるなら、その遺伝子は脂肪酸シンターゼ(FASN)ではない。いくつかの実施態様では、もし1つの遺伝子のみの発現が検出されるなら、その遺伝子はPLABではない。好ましい実施態様では、表2または3に挙げた22個の遺伝子の少なくとも1つのいかなる選択も、腫瘍マーカー/治療標的として利用できる。特に有用な実施態様では、複数のこれらの遺伝子、即ち表2、3または4に挙げた50個の遺伝子の少なくとも2個またはそれ以上を選択でき、それらの発現を同時にモニタリングし、様々な態様で使用する発現プロフィールを提供する。例えば、遺伝子の発現プロフィールは、前立腺障害の迅速な診断および進行のモニタリング、および薬効の評価のために、価値ある分子ツールを提供する。基準線プロフィールからの発現プロフィールの変化は、かかる効力を示すものとして使用できる。従って、本発明は、前立腺障害(診断的)または前立腺障害を発症するリスク(予後的)について対象をスクリーニングする方法、対象における前立腺障害の進行をモニタリングする方法、前立腺障害を有するか、または有するリスクのある対象の処置に有用な剤の同定方法、前立腺細胞の望ましくない増殖を阻害する方法、前立腺障害を有するか、または有するリスクのある対象を処置する方法、前立腺障害のためのある薬剤処置の効力をモニタリングする方法、および前立腺特異的複製のためのベクターを提供する。
【0022】
最も異なって発現される20個の遺伝子は、表2で同定される。表2に挙げる特に好ましい遺伝子には、ヘプシン(hepsin)、前立腺分化因子(PLAB;マクロファージ阻害サイトカイン、MIC−1;およびTGF−ベータスーパーファミリータンパク質としても知られる)、アルファ−メチルアシル−CoAラセマーゼ(AMACR)および脂肪酸シンターゼ(FASN)が含まれる。
【0023】
下記のように、ヘプシン、PLAB、AMACRおよびFASNには、これらの遺伝子を診断マーカーおよび/または治療標的として適切にさせるいくつかの生物学的特徴がある。
【0024】
例えば Kazama, J. Biol. Chem., Vol. 270, pp. 66-72 (1995) に記載のように、ヘプシンは、ヒト第VII因子を活性化し、細胞表面で血液凝固経路を開始させてトロンビン形成を導くと示された、タイプII膜付随セリンプロテアーゼである。例えば Torres-Rosada et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 90, pp. 7181-7185 (1993) に記載のように、数々の新生細胞が血液凝固系を活性化し、これまたはその他の経路を介する凝固性亢進や脈管内血栓症を導くこと、そしてヘプシンがこれらの細胞成育に関与することが考えられている。ヘプシン遺伝子の発現は、非常に限定されている;即ち、例えば Tsuji et al., J. Biol. Chem., Vol. 266, pp. 16948-16953 (1991) に記載のように、この遺伝子は肝臓で高レベル、腎臓で中間的レベルであるのを除き、ほとんどの体組織で低く発現される。例えば Tanimoto et al., Cancer Res., Vol. 57, pp. 2884-2887 (1997) に記載のように、ヘプシンはいくつかの癌細胞系で、最近では卵巣癌において、高く発現されると報告されてきた。加えて、ヘプシンの発現は肝臓で高いが、ヘプシン遺伝子の両コピーを破壊したノックアウトマウスは、肝臓の異常または機能不全を示さない。実際に、例えば Wu et al., J. Clin. Invest., Vol. 101, pp. 321-326 (1998) に記載のように、これらのマウスはいかなる認識可能な表現型も示さない。例えば Torres-Rosada et al.(前出)に記載のように、ヘプシンの細胞外ドメインを標的とする抗体は、ヘプシンを過剰発現する肝腫瘍細胞の成育を遅らせると示されてきた。例えば Vu et al., J. Biol. Chem., Vol. 272, pp. 31315-31320 (1997) に記載のように、ヘプシンはまた、マウス胚の栄養膜表面で発現されると判明した。Vu et al.(前出)により実行された可溶性ヘプシン発現研究から得られたデータは、発現された1本鎖のヘプシンは、自己活性化を受け、タンパク質分解切断されて2本鎖の膜結合形態を生成し、重鎖または触媒鎖は、ジスルフィド結合を介して軽鎖と連結されることを示唆する。軽鎖は、疎水性内部シグナル配列を介して細胞表面に付着する。活性化された2本鎖形態のヘプシンは、さらなる切断を受け、ヘプシンの触媒ドメインが胚の栄養膜表面から切断されるようである。従って、切断されたヘプシンの触媒ドメインは血清中で、特に無疾患対象と比較してヘプシンが過剰発現されている、前立腺癌などの前立腺障害を有するか、発症するリスクのある対象の血清中で検出できる。
【0025】
PLAB/MIC−1は、Bootcov et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 94, No. 21, pp. 11514-11519 (1997) により、TGF−ベータスーパーファミリーのタンパク質と相同性を有する新規マクロファージ阻害サイトカインとして、また、Hromos et al., Biochim. Biophys. Acta. Vol. 1354, No. 1, pp. 40-44 (1997) により、骨形態形成タンパク質の新規メンバーとして同定された。PLAB/MIC−1は、リポポリサッカライド誘導マクロファージTNF−アルファ産生の阻害を含む、多数の機能を有するようである。このことは、MIC−1がマクロファージにおいて自己分泌調節分子として作用することを示唆する。分泌された前炎症(proinflammatory)サイトカインおよびTGF−ベータに応答するその産生は、マクロファージ活性化の後期を制限するのに役立ち得る。PLABはまた、始原造血前駆体(primitive hematopoietic progenitor)の増殖を阻害し、胎盤によるPLABの高発現は、それが胚発生の胎盤制御の媒介因子である可能性を高める。PLABは、後に Kannan et al., FEBS Lett., Vol. 470, No. 1, pp. 77-82 (2000) により、p53応答遺伝子として同定され、p53媒介成育抑制におけるPLABのパラクリンの役割が示唆された。PLABは、前ペプチド(propeptide)として転写され、切断され、発現細胞からペプチドが分泌される。従って、PLABは前立腺癌細胞から分泌され、血液中で検出可能であり、故に診断を提供し得る。
【0026】
アセチルCoAおよびマロニル−CoAからの脂肪酸の合成は、脂肪酸シンターゼ、即ちFASNにより実行される。脂肪酸合成の全反応は、FASNの多数の酵素活性により実行される。脂肪酸化のように、脂肪合成には、4つの酵素活性が関与する。これらは、b−ケト−ACPシンターゼ(縮合酵素)、b−ケト−ACPリダクターゼ、3−OHアシル−ACPデヒドラターゼおよびエノイル−ACPリダクターゼである。2つの還元反応は、NADPHのNADPへの酸化を要する。FASNにより合成される最初の脂肪酸は、パルミチン酸である。次いで、パルミチン酸はチオエステラーゼ反応により酵素から解放され、そして別の伸長および/または不飽和を受けて他の脂肪酸分子を生じることができる。FASNは、例えば、Kuhajda により Nutrition, Vol. 16, No. 3, pp. 202-208 (2000) で概説されたように、例えば乳癌、卵巣癌および前立腺癌などのいくつかの一般的な癌の、攻撃的なサブタイプにおいて上方調節されると記載されてきた。
【0027】
アルファ−メチルアシル−CoAラセマーゼ(AMACR)は、いくつかの(2R)−メチル−分枝鎖脂肪アシル−CoAの(S)−立体異性体への変換を触媒するので、分枝脂肪酸および脂肪酸誘導体のベータ酸化において重要な役割を果たす。(S)−配置で2−メチル基のある立体異性体のみが、ベータ酸化を介して分解可能である(Ferdenandusse et al., J. Lipid Res., Vol. 41, No. 11, pp. 1890-1896 (2000) に記載)。腫瘍細胞におけるAMACRの過剰発現は、今まで記載されてこなかった。
【0028】
正常と悪性の前立腺組織で異なって発現される2つの他の遺伝子は、表3および4並びに図2Aで同定される前立腺特異抗原の代替的(alternative)スプライシング形態であり、前立腺特異抗原代替的スプライシング形態2(受託番号HT2351)および前立腺特異抗原代替的スプライシング形態3(受託番号HT2352)として知られる。これらの両代替的スプライシング形態は、前立腺癌組織において高発現を、正常前立腺組織および他の体組織において低発現を示す。PSA遺伝子のスプライシング形態の完全配列は、開示した受託番号を使用して、TIGRデータベースで入手できる。表4は、表2と3に挙げた遺伝子を含み、正常と悪性の前立腺組織で異なって発現される他の遺伝子も含む。UniGene、TIGRおよびEntrez中の遺伝子配列を、出典明示により本明細書の一部とする。
【0029】
前立腺障害または前立腺障害を発症するリスクについて対象をスクリーニングする方法は、
a)対象から得られた体液または前立腺組織のサンプルにおいて、表2、3または4で同定される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを検出し、第1の値を得ること;および
b)無疾患対象から得られた前立腺組織サンプルにおいて、表2、3または4で同定される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルと、第1の値を比較すること、ここで、無疾患対象由来サンプルと比較して対象サンプルにおいて発現レベルが高いか、または低いこと、特に高いことは、対象が前立腺障害を有するか、または前立腺障害を発症するリスクにあることを示す;
を含む。
【0030】
ある実施態様では、もし1つの遺伝子のみの発現が検出されるなら、その遺伝子はFASNではない。他の実施態様では、もし1つの遺伝子のみの発現が検出されるなら、その遺伝子はPLABではない。
【0031】
前立腺組織サンプルは、既知の外科的方法、例えば外科的切除または針生検により、対象、ヒトまたは動物モデルから得られる。対象からの体液、好ましくは血液のサンプルも、標準的な方法で得られる。後述のようにmRNAのレベルを測定することにより遺伝子の発現レベルを評価するときは、対象から前立腺組織サンプルを得るのが好ましい。無疾患対象から取られるサンプルは、同じ個体または他の個体に由来する正常前立腺組織または体液のサンプルであり得る。例えば、前立腺癌などの前立腺障害が疑われる試験では、無疾患対象由来サンプルは、前立腺癌を有する疑いのある個体からの正常前立腺細胞のサンプルであり得る。これらの正常前立腺細胞は、前立腺細胞を含有する疑いのある組織に隣接する部位から得ることができる。あるいは、無疾患対象から取られるサンプルは、他の個体から得られる正常前立腺細胞または体液であり得る。無疾患対象から得られるサンプルは、対象から得られるサンプルと同時に得ることができ、または遺伝子発現が先に判定された、予め確立された対照であり得る。無疾患対象から得られるサンプルにおける遺伝子の発現レベルは、対象から得られるサンプルに使用するのと同じアプローチを使用して、判定および定量される。
【0032】
対象および無疾患対象から得られるサンプルにおける、開示した遺伝子の少なくとも1つの発現レベルは、その遺伝子に対応するmRNAまたはその遺伝子にコードされるタンパク質またはそのタンパク質の断片、例えばヘプシンの触媒ドメインのいずれかのレベルを測定することにより検出できる。本発明の方法では、疾患前立腺組織における開示した遺伝子の1つの発現レベルは、無疾患組織におけるその遺伝子の発現レベルと好ましくは統計的に有意な量で異なる。現在好ましい実施態様では、発現レベルにおける少なくとも約2倍の差異が観察される。いくつかの実施態様では、遺伝子の発現レベルは、非疾患組織と比較して疾患組織で少なくとも約5、10もしくは100倍またはそれ以上異なる。
【0033】
表2、3または4で開示する少なくとも1つの遺伝子の発現レベルは、本発明の方法で判定される。時には開示遺伝子の2、3、5、10、20個またはそれ以上の発現レベルを判定するのが望ましい。
【0034】
例えば Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, pp. 4.1.1-4.2.9 and 4.5.1-4.5.3, John Wiley & Sons, Inc. (1996) に記載のように、RNAは、当業者に周知の方法でサンプルから単離できる。mRNAの発現レベルを検出する方法は当分野で周知であり、ノザンブロット、逆転写PCR、リアルタイム定量的PCRおよび他のハイブリダイゼーション方法を含むがこれらに限定されるわけではない。複数の開示遺伝子から得られるmRNA転写物のレベルを検出するために特に有用な方法は、オリゴヌクレオチド群の並んだアレイに対する標識mRNAのハイブリダイゼーションを含む。かかる方法は、複数のこれらの遺伝子の転写レベルが同時に判定され、遺伝子発現プロフィールまたはパターンを生成させるのを可能にする。対象から得られたサンプルから導かれた遺伝子発現プロフィールを、無疾患対象から得られたサンプルから導かれた遺伝子発現プロフィールと比較して、無疾患対象から得られたサンプル中の遺伝子と比べて対象由来のサンプルにおいて遺伝子が過剰発現されているか否かを判定し、かくして対象が前立腺疾患を有するか否か、あるいは発症するリスクにあるか否かを判定することができる。
【0035】
このハイブリダイゼーション方法で利用されるオリゴヌクレオチドは、典型的に固体支持体に結合している。固体支持体の例には、膜、フィルター、スライド、紙、ナイロン、ウェーハー、繊維、磁性または非磁性ビーズ、ゲル、管、ポリマー、塩化ポリビニルディッシュなどが含まれるが、これらに限定されるわけではない。オリゴヌクレオチドが直接または間接的に、共有結合的にまたは非共有結合的に結合できるいかなる固体表面をも使用できる。特に好ましい固体基板は、高密度アレイまたはDNAチップである(材料と方法および実施例1を参照)。これらの高密度アレイは、アレイ上の予め選択された場所に特定のオリゴヌクレオチドプローブを含有する。各々の予め選択された場所は、1分子以上の特定プローブを含有できる。オリゴヌクレオチドは基板上の特異的場所にあるので、ハイブリダイゼーションパターンおよび強度(これらは共に独自の発現プロフィールまたはパターンをもたらす)は、特定遺伝子の発現レベルの観点で解釈される。
【0036】
オリゴヌクレオチドプローブは、好ましくは、上記で同定される関心のある遺伝子(群)の相補的転写物のみに特異的にハイブリダイズするに十分な長さのものである。本明細書で使用するとき、用語「オリゴヌクレオチド」は、一本鎖核酸を表す。一般的に、オリゴヌクレオチドプローブは、長さで少なくとも16ないし20ヌクレオチドであるが、少なくとも20ないし25ヌクレオチドの、より長いプローブが望ましい場合もある。
【0037】
オリゴヌクレオチドプローブは、1つまたはそれ以上の標識部分で標識し、ハイブリダイズしたプローブ/標的ポリヌクレオチド複合体の検出を可能にすることができる。標識部分は、分光分析、生化学、光化学、生体電子工学、免疫化学、電気光学または化学的手段で検出できる組成物を含み得る。標識部分の例には、例えば32P、33P、35Sなどの放射性同位元素、化学発光化合物、標識された結合タンパク質、重金属原子、蛍光マーカーや染料などの分光分析マーカー、連結した酵素、質量分析タグ、および磁性標識が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0038】
発現モニタリング用のオリゴヌクレオチドプローブアレイは、例えば Lockhart et al., Nature Biotechnology, Vol. 14, pp. 1675-1680 (1996); McGall et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 93, pp. 13555-13460 (1996); および米国特許第6,040,138号に記載のように、当業者に周知の技法に従って調製および使用できる。
【0039】
遺伝子(群)によりコードされるタンパク質またはそのタンパク質の断片、例えばヘプシンの触媒ドメイン、の発現は、検出可能に標識された、または後で標識できるプローブにより検出できる。一般的に、プローブは、発現されたタンパク質を認識する抗体である。
【0040】
本明細書で使用するとき、抗体の用語には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化またはキメラ抗体、および生物学的に機能的な抗体断片であって、タンパク質またはタンパク質断片への抗体断片の結合に十分な断片、が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0041】
開示遺伝子の1つにコードされるタンパク質またはそのタンパク質の断片に対する抗体の産生のために、ポリペプチドまたはその部分の注射により、様々な宿主動物を免疫し得る。かかる宿主動物には、いくつか挙げると、ウサギ、マウスおよびラットが含まれるが、これらに限定されるわけではない。様々なアジュバントを使用して免疫反応を増大させ得る。これは宿主の種に依って、フロイント(完全または不完全)、水酸化アルミニウムなどの鉱物ゲル、リゾレシチンなどの界面活性剤、プルロニック・ポリオール、多価陰イオン、ペプチド、油乳液、キーホールリンペットヘモシニアン(keyhole limpet hemocyanin)、ジニトロフェノール、およびBCG(bacille Calmette-Guerin)や Corynebacterium parvum などの潜在的に有用なヒトアジュバントを含むが、これらに限定されるわけではない。
【0042】
ポリクローナル抗体は、標的遺伝子産物やその抗原機能的誘導体などの抗原で免疫された動物の血清に由来する、異成分からなる抗体分子の集団である。ポリクローナル抗体の産生のために、上記のようなアジュバントを添加した、コードされるタンパク質またはその一部の注射により、上記のような宿主動物を免疫し得る。
【0043】
特定の抗原に対する抗体の均一な集団であるモノクローナル抗体(mAb)は、培養中の継続的な細胞株による抗体分子の産生をもたらすいかなる技法によっても入手し得る。これらには、Kohler と Milstein のハイブリドーマ技法(Nature, Vol. 256, pp. 495-497 (1975); および米国特許第4,376,110号)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kosbor et al., Immunology Today, Vol. 4, p. 72 (1983); Cole et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 80, pp. 2026-2030 (1983))、およびEBVハイブリドーマ技法(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96 (1985))が含まれるが、これらに限定されるわけではない。かかる抗体は、いかなる免疫グロブリンクラスであってもよく、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDおよびこれらのいかなるサブクラスも含む。本発明のmAbを産生するハイブリドーマは、インビトロまたはインビボで培養し得る。インビボでの高力価のmAbの産生は、これを現在好ましい産生方法にしている。
【0044】
これに加えて、適切な抗原特異性のマウス抗体分子からの遺伝子を、適切な生物学的活性のヒト抗体分子からの遺伝子と一緒に継ぎ合わせることによる、「キメラ抗体」(Morrison et al., Proc. Nati. Acad. Sci. USA, Vol. 81, pp. 6851-6855 (1984); Neuberger et al., Nature, Vol. 312, pp. 604-608 (1984); Takeda et al., Nature, Vol. 314, pp. 452-454 (1985)) の産生のために開発された技法を使用できる。キメラ抗体は、例えばマウスmAb由来の可変または超可変領域と、ヒト免疫グロブリンの不変領域を有するもののような、別々の部分が別々の動物種に由来する分子である。
【0045】
あるいは、一本鎖抗体の産生のために説明された技法(米国特許第4,946,778号; Bird, Science, Vol. 242, pp. 423-426 (1988); Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 85, pp. 5879-5883 (1988); および Ward et al., Nature, Vol. 334, pp. 544-546 (1989))を、異なって発現される遺伝子の一本鎖抗体の産生のために改変できる。一本鎖抗体は、Fv領域の重鎖と軽鎖の断片をアミノ酸架橋を介して連結し、一本鎖ポリペプチドを生じさせることにより形成される。
【0046】
最も好ましくは、「ヒト化抗体」の産生に有用な技法を、タンパク質、その断片または誘導体に対する抗体を産生するために改変できる。かかる技法は、米国特許第5,932,448号;第5,693,762号;第5,693,761号;第5,585,089号;第5,530,101号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,789,650号;第5,661,016号;および第5,770,429号に開示されている。
【0047】
特異的エピトープを認識する抗体断片は、既知技法により生成し得る。例えば、かかる断片には、抗体分子のペプシン切断により産生できるF(ab')断片、およびF(ab')断片のジスルフィド架橋の還元により生成できるFab断片が含まれるが、これらに限定されるわけではない。あるいは、Fab発現ライブラリーを構築し(Huse et al., Science, Vol. 246, pp. 1275-1281 (1989))、所望の特異性を有するモノクローナルFab断片の迅速かつ容易な同定を可能にし得る。
【0048】
そして、上記の抗体を利用する免疫アッセイ法により、サンプル中で既知タンパク質が発現される程度を判定する。かかる免疫アッセイ法には、一般的に使用され科学および特許文献広範に記載されるドットブロット、ウエスタンブロット、競合的および非競合的タンパク質結合アッセイ、酵素免疫吸着法(ELISA)、免疫組織化学、蛍光細胞分析分離(FACS)など、および商業的に採用される多くのものが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0049】
容易な検出のために特に好ましいのは、サンドイッチELISAである。それには多数の変法が存在し、これらの全ては本発明に包含されると企図する。例えば、典型的順行アッセイでは、非標識抗体を固体基板に固定し、試験するサンプルを結合した分子に接触させ、抗体−抗原の2成分複合体の形成をなすに十分な期間に渡ってインキュベートする。この時点で、検出可能なシグナルを誘導する能力のあるレポーター分子で標識した二次抗体を添加し、インキュベートし、抗体−抗原−標識抗体の3成分複合体の形成に十分な時間をおく。いかなる未反応物質をも洗い去り、抗原の存在を、シグナルの観察により判定するか、または既知量の抗原を含有する対照サンプルと比較して定量し得る。順行アッセイの変法には、サンプルと抗体を同時に結合抗体に添加する同時アッセイや、標識抗体と試験するサンプルを最初に組合せ、インキュベートし、非標識表面結合抗体に添加する逆行アッセイが含まれる。これらの技法は当業者に周知であり、細部の変更の可能性は容易に明らかであろう。本明細書で使用するとき、「サンドイッチアッセイ」は、基本的な2部位技法の全変法を包含することを企図している。本発明の免疫アッセイでは、唯一の限定要因は、標識抗体が興味の遺伝子により発現されるタンパク質、例えばPLAB、ヘプシンまたはこれらの断片、に特異的な抗体であることである。
【0050】
このタイプのアッセイで最も一般的に使用されるレポーター分子は、酵素、発蛍光団または放射性核種を含有する分子である。酵素免疫アッセイの場合、酵素は通常グルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸塩の手段により2次抗体に結合している。しかしながら、容易に認識されるように、当業者に周知の多様な別の連結(ligation)技法が存在する。一般的に使用される酵素には、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ−ガラクトシダーゼおよびアルカリホスファターゼなどが含まれる。特定の酵素と共に使用される基質は、一般的に、対応する酵素で加水分解すると検出可能な色の変化をもたらすように選択される。例えば、リン酸p−ニトロフェニルは、アルカリフォスファターゼ結合物と共に使用するのに適しており、ペルオキシダーゼ結合物には、1,2−フェニレンジアミンまたはトルイジンが一般的に使用される。上記の発色基質よりも、むしろ蛍光産物を生じる発蛍光基質を採用することも可能である。次いで、適切な基質を含有する溶液を3成分複合体に添加する。基質は2次抗体に連結した酵素と反応し、定量的可視シグナルを生じる。これは通常分光測光的にさらに定量し得、例えばPLABまたはヘプシンの触媒ドメインなどの、血清サンプル中に存在する分泌タンパク質またはその断片の量の評価をもたらす。
【0051】
あるいは、フルオレセインやローダミンなどの蛍光化合物を、抗体の結合能を改変することなく、抗体に化学的に共役させ得る。特定波長の光で照射して活性化すると、蛍光色素標識抗体は光エネルギーを吸収し、分子中に励起状態を引き起こし、続いて特徴的なより長い波長で光が放射される。放射は、光学顕微鏡で視覚的に検出可能な特徴的な色として現れる。免疫蛍光とEIAの技法は、両方とも当分野で十分に確立されており、本方法のために特に好ましい。しかしながら、放射性同位元素、化学発光または生物発光分子などの他のレポーター分子も採用し得る。所望の用途に適するように手法を変更する方法を、当業者は容易に理解できるであろう。
【0052】
他の態様では、例えば体液または前立腺組織のサンプルなどの生体サンプルにおける、表2、3または4で同定される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを検出するためのキットが提供される。但し、もし1つの遺伝子のみの発現が検出されるなら、その遺伝子はFASNではない。いくつかの実施態様では、もし1つの遺伝子のみの発現が検出されるなら、その遺伝子はPLABではない。例えば、キットは、表2、3または4で同定される少なくとも1つの遺伝子でコードされるタンパク質、またはそれに対応するmRNA、またはそのタンパク質の断片を検出する能力のある標識化合物または剤、その遺伝子にコードされるタンパク質またはそれに対応するmRNAまたはそのタンパク質の断片の量を判定する手段、および、その遺伝子発現の標準的レベルを有する対象のサンプルから、例えば無疾患対象から得られる、その遺伝子にコードされるタンパク質またはそれに対応するmRNAまたはそのタンパク質の断片の量を比較する手段を含み得る。化合物または剤は、適する容器に納めることができる。キットはさらに、その遺伝子にコードされるタンパク質またはそれに対応するmRNAを検出するキットを使用するための指示書を含むことができる。
【0053】
他の態様では、対象で得られる体液または前立腺組織のサンプルにおいて、表2、3または4で同定される少なくとも1つの遺伝子に対応するmRNAまたはそれにコードされるタンパク質の発現レベルを経時的に、即ち前立腺障害の様々な段階で測定することにより、対象における前立腺障害の進行をモニタリングできる。但し、もし1つの遺伝子のみの発現が検出されるなら、その遺伝子はFASNではない。いくつかの実施態様では、もし1つの遺伝子のみの発現が検出されるなら、その遺伝子はPLABではない。遺伝子(群)に対応するmRNAまたはコードされるタンパク質の発現レベルの経時的な増大は、前立腺障害の進行を示すものである。遺伝子(群)に対応するmRNAおよびタンパク質の発現レベルは、上記の標準的方法で検出できる。
【0054】
特に有用な実施態様では、複数の開示遺伝子、即ち50個の遺伝子の少なくとも2つ、より好ましくは表2および3に挙げた22個の遺伝子の2つ、のmRNA発現レベルを、前立腺障害の様々な段階にある対象において同時に測定し、前立腺障害の転写または発現プロフィールを経時的に生成できる。例えば、複数のこれらの遺伝子に対応するmRNA転写物を様々な時に対象の前立腺細胞から入手し、所望の遺伝子の転写物に相補的なオリゴヌクレオチドプローブを含有するチップにハイブリダイズさせ、多数の遺伝子の発現を前立腺障害の様々な段階で比較することができる。
【0055】
他の態様では、非疾患前立腺細胞と比較して疾患前立腺細胞で異なって発現される1つまたはそれ以上の遺伝子の発現を調整できる剤を同定するために、開示遺伝子に基づく細胞ベースのアッセイを使用できる。かかる剤は、前立腺障害の処置における使用に適し、前立腺疾患の形態形成と進行の研究において有用である。これらの方法は一般的に、候補剤と接触している疾患組織から得られた前立腺細胞における1つまたはそれ以上の開示遺伝子の発現レベルを、候補剤に接触していない細胞における遺伝子または遺伝子群の発現レベルと比較することを含む。これらのアッセイにおける使用に適する細胞および細胞株は、公的に入手可能である。例えば、疾患前立腺組織から得られた多数の細胞株が、American Type Culture Collection (10801 University Boulevard, Manassas, VA 20110-2209; www.ATCC.org) から入手可能である。前立腺障害を有する対象から直接または間接的に適する細胞を入手することもできる。従って、いくつかの実施態様では、本方法は、
a)疾患前立腺細胞サンプルを候補剤と接触させること;
b)疾患前立腺細胞サンプルにおける、表2、3または4で同定される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを検出すること;および
c)候補剤の存在するサンプルにおける遺伝子の発現レベルを、候補剤に接触していないサンプルにおける遺伝子の発現レベルと比較すること、ここで、剤の非存在下の発現レベルと比べて剤の存在下のサンプルにおける発現レベルが低下していることは、前立腺障害の処置に有用な剤を示すものである;
を含む。
【0056】
いくつかの実施態様では、もし1つの遺伝子のみの発現が検出されるなら、その遺伝子はFASNではない。他の実施態様では、もし1つの遺伝子のみの発現が検出されるなら、その遺伝子はPLABではない。遺伝子発現レベルは、上記のように、その遺伝子に対応するmRNAまたはそれにコードされるタンパク質のレベルを測定することにより検出される。
【0057】
本明細書で使用するとき、用語「候補剤」は、開示遺伝子の少なくとも1つに対応するmRNAまたはそれにコードされるタンパク質のレベルを低下させる能力のあるいかなる分子をも表す。候補剤は、タンパク質またはその断片、低分子阻害因子、例えばアンチセンス核酸などの核酸分子、リボザイム、2本鎖RNA、有機および無機化合物などの、天然または合成の分子であり得る。
【0058】
開示遺伝子の1つにコードされるタンパク質またはタンパク質結合パートナーと相互作用して、タンパク質またはその結合パートナーの活性を変化させる能力のある化合物を同定するのに、無細胞アッセイも使用できる。無細胞アッセイは、コードされるタンパク質と標的ペプチドなどのその結合パートナーとの相互作用を調整する化合物を同定するのにも使用できる。ある実施態様では、かかる化合物を同定するための無細胞アッセイは、開示遺伝子の1つにコードされるタンパク質と、試験化合物または試験化合物のライブラリーを、生物学的に不活性な標的ペプチドまたは低分子などの結合パートナーの存在下または非存在下で含有する反応混合物を含む。従って、前立腺障害の処置に有用な剤を同定するための無細胞方法の一例が提供される。その方法は、タンパク質もしくはその機能的断片、またはタンパク質結合パートナーを、試験化合物または試験化合物のライブラリーと接触させ、複合体の形成を検出することを含む。検出のために、タンパク質を特異的マーカーで標識し、試験化合物または試験化合物のライブラリーを別のマーカーで標識することができる。インキュベーションと洗浄の段階の後、次いで、タンパク質もしくはその断片、またはタンパク質結合パートナーと試験化合物の相互作用を、2つの標識のレベルを測定することにより検出できる。
【0059】
分子間相互作用は、光学現象である表面プラスモン共鳴を検出するリアルタイムBIA(Biomolecular Interaction Analysis, Pharmacia Biosensor AB)を使用することによっても評価できる。検出は、生物特異的(biospecific)界面での質量高分子(mass macromolecules)の質量濃度変化に依存し、分子の標識化を必要としない。ある有用な実施態様では、試験化合物のライブラリーを微小流動セルの壁などのセンサー表面に固定できる。そして、タンパク質、その機能的断片、またはタンパク質結合パートナーを含有する溶液を、センサー表面に継続的に循環させる。シグナル記録上に示されるように、共鳴角の変化は、相互作用の発生を示す。この技法は、Pharmacia の BlAtechnology Handbook で、より詳細に説明されている。
【0060】
無細胞アッセイの他の実施態様は、
a)少なくとも1つの遺伝子にコードされるタンパク質、タンパク質結合パートナー、および試験化合物を組合せて反応混合物を形成すること、および
b)試験化合物の存在下または非存在下で、タンパク質とタンパク質結合パートナーの相互作用を検出すること、
を含む。
【0061】
試験化合物の存在下でのタンパク質と結合パートナーの相互作用が、試験化合物の非存在下での相互作用に比べて相当に変化(増強または阻害)することは、試験化合物について、そのタンパク質活性の潜在的アゴニスト(模倣または増強因子)またはアンタゴニスト(阻害因子)を示す。アッセイの成分を同時に組合せることができ、あるいはタンパク質をある期間試験化合物と接触させ、続いて結合パートナーを反応混合物に加えることができる。様々な濃度の化合物を使用して用量反応曲線を生成させ、化合物の効力を評価できる。対照アッセイは、試験化合物の非存在下でタンパク質とその結合パートナーとの間の複合体の形成を定量することによっても実施できる。
【0062】
タンパク質とその結合パートナーとの間の複合体の形成は、放射性標識、蛍光標識または酵素標識されたタンパク質またはその結合パートナーの使用により、免疫アッセイにより、またはクロマトグラフィー検出により、検出できる。
【0063】
好ましい実施態様では、タンパク質またはその結合パートナーを固定して、非複合体形態のタンパク質およびその結合パートナーからの複合体の分離とアッセイの自動化を容易にできる。タンパク質のその結合パートナーへの複合体化は、例えばマイクロタイタープレート、微小遠心管や試験管などのいかなるタイプの容器においても達成できる。特に好ましい実施態様では、タンパク質を例えばグルタチオン−S−トランスフェラーゼなどの他のタンパク質に融合させ、例えばグルタチオンセファロースビーズ (Sigma Chemical. St. Louis, Mo.) などのマトリックスに吸着できる融合タンパク質を形成できる。次いでそれを例えば35Sで標識された標識タンパク質パートナーおよび試験化合物と組合せ、複合体の形成に十分な条件下でインキュベートする。その後、ビーズを洗浄して未結合の標識を除去し、マトリックスを固定し、放射性標識を測定する。前述の無細胞アッセイは、遺伝子ヘプシン、FASNおよびMOAT−Bにコードされるタンパク質で特に有用である。
【0064】
タンパク質をマトリックスに固定する他の方法には、ビオチンとストレプトアビジンの利用が含まれる。例えば、ビオチンNHS(N−ヒドロキシ−スクシニミド)を使用し、周知技法を使用してタンパク質をビオチン化し、ストレプトアビジンでコートしたプレートのウェルに固定できる。
【0065】
無細胞アッセイは、少なくとも1つの遺伝子にコードされるタンパク質と相互作用する能力があり、その遺伝子にコードされるタンパク質の活性を調整する剤を同定するのにも使用できる。ある実施態様では、タンパク質を試験化合物とインキュベートし、タンパク質の触媒活性を測定する。他の実施態様では、標的分子へのタンパク質の結合親和性を、当分野で既知の方法により測定できる。
【0066】
本発明はまた、前立腺障害を有する、または有するリスクにある対象を処置する、予防および治療方法の両者も提供する。かかる障害のリスクにある対象は、例えば上記のような診断的アッセイにより同定できる。予防剤の投与は、前立腺障害の発症が防止されるか、またはその進行が遅延されるように、前立腺障害に特徴的な症状の明示に先立って起こり得る。前立腺障害の処置に関しては、例えば癌細胞などの前立腺細胞が殺されたり、細胞死するように誘導される必要はない。むしろ、前立腺障害の処置を達成するために必要とされるのは、腫瘍の成育がある程度まで減速すること、または異常な細胞のいくつかが正常に戻ることのみである。適する治療剤の例には、後で詳述するようにアンチセンスヌクレオチド、リボザイム、2本鎖RNAおよびアンタゴニストが含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0067】
本明細書で使用するとき、用語「アンチセンス」は、開示遺伝子の少なくとも1つのRNA発現産物の一部に相補的なヌクレオチド配列を表す。「相補的」ヌクレオチド配列は、標準的なワトソン−クリックの相補性規則に従って塩基対を形成する能力のあるヌクレオチド配列を表す。つまり、プリンはピリミジンと塩基対を形成し、グアニン:シトシン、そしてDNAの場合はアデニン:チミン、あるいはRNAの場合はアデニン:ウラシルの組合せを形成する。他のあまり一般的ではない塩基、例えばイノシン、5−メチルシトシン、6−メチルアデニン、ヒポキサンチンなどは、ハイブリダイズする配列に含まれ得、対合を妨害しない。
【0068】
宿主細胞に導入されると、アンチセンスヌクレオチド配列は、例えば細胞内の転写および/または翻訳を阻害することにより、コードされるタンパク質の発現を阻害するように、遺伝子(群)に対応する細胞のmRNAおよび/またはゲノムDNAと特異的にハイブリダイズする。
【0069】
アンチセンスヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子は、例えば細胞内で転写されると遺伝子(群)のコードされるmRNAの少なくとも独特な部分に相補的なRNAを産生する発現ベクターとして、送達できる。あるいは、アンチセンスヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子は、エクスビボで調製されるオリゴヌクレオチドプローブである。それは、細胞に導入されると、遺伝子(群)のmRNAおよび/またはゲノム配列とハイブリダイズすることにより、コードされるタンパク質の発現を阻害するに至る。
【0070】
好ましくは、オリゴヌクレオチドは、アンチセンス分子をエキソヌクレアーゼおよびエンドヌクレアーゼに耐性にし、従って細胞内で安定である人工のヌクレオチド間連結を含有する。アンチセンスヌクレオチド配列として使用するための修飾核酸分子の例は、例えば米国特許第5,176,996号;第5,264,564号;および第5,256,775号に記載の、DNAのホスホルアミデート(phosphoramidate)、ホスホロチオエートおよびメチルホスホネート類似体である。アンチセンス治療で有用なオリゴマーの調製への一般的アプローチは、例えば Van der Krol, BioTechniques, Vol. 6, pp. 958-976 (1988); および Stein et al., Cancer Res., Vol. 48, pp. 2659-2668 (1988) に記載されている。
【0071】
典型的なアンチセンスアプローチは、遺伝子のコードされるmRNAに相補的なDNAまたはRNAのいずれかのオリゴヌクレオチドの調製を含む。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、遺伝子のコードされるmRNAにハイブリダイズし、翻訳を防止する。アンチセンスヌクレオチド配列が所望の遺伝子にハイブリダイズする能力は、アンチセンスヌクレオチド配列の相補性の程度と長さに依存する。典型的に、ハイブリダイズする核酸の長さが増大するにつれて、それが含有し、かつ依然として安定な2本鎖または3本鎖を形成し得るRNAとの塩基ミスマッチは多くなる。当業者は、ハイブリダイズした複合体の融点を判定する従来の手法を使用して、許容できるミスマッチの程度を判定できる。
【0072】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは、例えばmRNA開始部位、即ちAUGに相補的な領域までを含む5'非翻訳配列など、mRNAの5'末端に相補的であるように設計する。しかしながら、例えば Wagner, Nature, Vol. 372, pp. 333 (1994) に記載のように、mRNAの3'非翻訳配列に相補的であるオリゴヌクレオチド配列も、mRNAの翻訳の阻害に有効であると示されてきた。アンチセンスオリゴヌクレオチドはmRNAコード領域に相補的であるように設計できるとはいえ、かかるオリゴヌクレオチドは、あまり有効な翻訳阻害因子ではない。
【0073】
ハイブリダイズするmRNA領域に関わらず、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、一般に約15ないし約25ヌクレオチド長である。
【0074】
アンチセンスヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾塩基部分、例えば3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、7−メチルグアニン、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシルなど、も含むことができ、そして少なくとも1つの修飾糖部分、例えばアラビノース、ヘキソース、2−フルオルアラビノースおよびキシルロース、も含み得る。
【0075】
他の実施態様では、アンチセンスヌクレオチド配列は、アルファ−アノマーヌクレオチド配列である。アルファ−アノマーヌクレオチド配列は、例えば Gautier et al., Nucl. Acids. Res., Vol. 15, pp. 6625-6641 (1987) に記載のように、通常のベータユニットと反対に、鎖が互いに平行に走る、相補的RNAとの特殊な2本鎖ハイブリッドを形成する。
【0076】
例えば前立腺組織部位への直接的注射、リポソームへのアンチセンスヌクレオチドの内包、細胞表面に発現される受容体または抗原に特異的に結合するペプチドまたは抗体へのアンチセンスヌクレオチドの連結により前立腺細胞に標的化される修飾アンチセンスヌクレオチドを投与することによる、などの様々な技法により、記載した遺伝子を発現する細胞にアンチセンスヌクレオチドをインビボで送達させることができる。
【0077】
しかしながら、上記の送達方法で、内在性mRNAの翻訳を阻害するのに十分な細胞内濃度を達成するのは困難かもしれない。従って、好ましい実施態様では、アンチセンスヌクレオチド配列を含む核酸を、プロモーター、即ち、特異的遺伝子の転写開始に必要なDNA配列、の転写制御下に置き、発現コンストラクトを形成する。細胞にトランスフェクションするためのかかるコンストラクトの使用は、記載した遺伝子の内在性mRNAとハイブリダイズするのに十分な量の1本鎖RNAの転写をもたらし、かくして遺伝子のコードされるmRNAの翻訳を阻害する。例えば、細胞に取り込まれ、アンチセンスヌクレオチド配列の転写を導くように、ベクターをインビボで導入できる。かかるベクターは標準的な組換え技術の方法で構築できる。典型的な発現ベクターには、pUCまたは Bluescript(登録商標)プラスミドシリーズなどの細菌のプラスミドまたはファージ、真核細胞での使用に適合させたアデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルスおよびレトロウイルスなどのウイルスベクターが含まれる。アンチセンスヌクレオチド配列の発現は、当分野で既知の哺乳動物細胞で作用するいかなるプロモーターによっても達成できる。かかるプロモーターの例には、例えば Yamamoto et al., Cell, Vol. 22, pp. 787-797 (1980) に記載のラウス肉腫ウイルスの3'ロング・ターミナル・リピート(long terminal repeat)に含有されるプロモーター;例えば Wagner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 78, pp. 1441-1445 (1981) に記載のヘルペスチミジンキナーゼプロモーター;例えば Bernoist and Chambon, Nature, Vol. 290, pp. 304-310 (1981) に記載のSV40初期プロモーター領域;および例えば Brinster et al., Nature, Vol. 296, pp. 39-42 (1982) に記載のメタロチオネイン遺伝子調節配列が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0078】
リボザイムは、DNA制限エンドヌクレアーゼに似た様式で他の1本鎖RNAを特異的に切断するRNA分子である。例えば Cech, J. Amer. Med. Assn., Vol. 260, p. 3030 (1988) に記載のように、そのRNAをコードするヌクレオチド配列を改変することにより、分子中の特定のヌクレオチド配列を認識し、それを切断するリボザイムを合成できる。従って、特定の配列を持つmRNAのみが切断され、不活性化される。
【0079】
2つの基本的なタイプのリボザイムには、例えば Rossie et al., Pharmac. Ther., Vol. 50, pp. 245-254 (1991) に記載の「ハンマーヘッド」タイプ:および例えば Hampel et al., Nucl. Acids Res., Vol. 18, pp. 299-304 (1999) および米国特許第5,254,678号に記載のヘアピンリボザイムが含まれる。開示遺伝子の少なくとも1つに対応するmRNAを標的とするハンマーヘッドおよびヘアピンリボザイムの細胞内発現は、その遺伝子にコードされるタンパク質の阻害に利用できる。
【0080】
リボザイムは、リボザイム配列を組込んでいるRNAオリゴヌクレオチドの形態で細胞に直接送達でき、あるいは所望のリボザイムRNAをコードする発現ベクターとして細胞に導入できる。リボザイム配列は、アンチセンスヌクレオチドについて述べたのと本質的に同じ様式で修飾できる。例えば、リボザイム配列は、修飾塩基部分を含むことができる。
【0081】
開示遺伝子の少なくとも1つに対応する2本鎖RNA、即ちセンス−アンチセンスRNAも、開示遺伝子の少なくとも1つの発現を妨害するのに利用できる。2本鎖RNAによる内在性遺伝子の機能と発現の妨害は、例えば Fire et al., Nature, Vol. 391, pp. 806-811 (1998) に記載の C. elegans;例えば Kennerdell et al., Cell, Vol. 95, No. 7, pp. 1017-1026 (1998) に記載のショウジョウバエ;および例えば Wianni et al., Nat. Cell Biol., Vol. 2, No. 2, pp. 70-75 (2000) に記載のマウス胚などの様々な生物で示されてきた。かかる2本鎖RNAは、鋳型の両方向から読まれる1本鎖RNAのインビトロの転写、およびセンスおよびアンチセンスRNA鎖のインビトロのアニーリングにより合成できる。2本鎖RNAは、興味の遺伝子が逆位反復配列によって隔てられ向かい合わせの方向にクローニングされているcDNAベクターコンストラクトからも合成できる。細胞のトランスフェクションに続き、RNAが転写され、相補鎖が再びアニーリングする。開示遺伝子の少なくとも1つに対応する2本鎖RNAは、前述のようなコンストラクトの細胞トランスフェクションにより、前立腺細胞に導入できる。
【0082】
用語「アンタゴニスト」は、遺伝子にコードされるタンパク質に結合すると、その活性を阻害する分子を表す。アンタゴニストには、ペプチド、タンパク質、炭水化物および低分子が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
【0083】
特に有用な実施態様では、アンタゴニストは、少なくとも1つの遺伝子により発現される細胞表面タンパク質、例えばヘプシン、LIM、NET−1、GA733−2、MOAT−B、MRP4およびルセラン(Lutheran)などに特異的な抗体である。治療剤として有用な抗体は、上記の抗体を包含する。抗体単独が治療のエフェクターとして作用し得、あるいはそれは実際に細胞殺傷を果たす他の細胞を募り得る。抗体はまた、化学療法剤、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素などの試薬へ結合され、標的剤として働いてもよい。あるいは、エフェクターは、直接または間接に腫瘍標的と相互作用する表面分子を有するリンパ球であってもよい。様々なエフェクター細胞には、細胞傷害性T細胞およびNK細胞が含まれる。
【0084】
治療で使用できる抗体−治療剤結合体の例には、以下が含まれるが、これらに限定されるわけではない:1)例えば Goldenberg et al., Cancer Res., Vol. 41, pp. 4354-4360 (1981); Carrasquillo et al., Cancer Treat. Rep., Vol. 68, pp. 317-328 (1984); Zalcberg et al., J. Natl. Cancer Inst., Vol. 72, pp. 697-704 (1984); Jones et al., Int. J. Cancer, Vol. 35, pp. 715-720 (1985); Lange et al., Surgery, Vol. 98, pp. 143-150 (1985); Kaltovich et al., J. Nucl. Med., Vol. 27, p. 897 (1986); Order et al., Int. J. Radiother. Oncol. Biol. Phys., Vol. 8, pp. 259-261 (1982); Courtenay-Luck et al., Lancet, Vol. 1, pp. 1441-1443 (1984) ; および Ettinger et al., Cancer Treat. Rep., Vol. 66, pp. 289-297 (1982) に記載のような、125I、131I、123I、111In、105Rh、153Sm、67Cu、67Ga、166Ho、177Lu、186Reおよび188Reなどの放射性核種に共役した抗体;(2)例えば Chabner et al., Cancer, Principles and Practice of Oncology, Philadelphia, Pa., J. B. Lippincott Co. Vol. 1, pp. 290-328 (1985); Oldham et al., Cancer, Principles and Practice of Oncology, Philadelphia, Pa., J. B. Lippincott Co., Vol. 2, pp. 2223-2245 (1985); Deguchi et al., Cancer Res., Vol. 46, pp. 3751-3755 (1986); Deguchi et al., Fed. Proc., Vol. 44, p. 1684 (1985); Embleton et al., Br. J. Cancer, Vol. 49, pp. 559-565 (1984); および Pimm et al., Cancer Immunol. Immunother., Vol. 12, pp. 125-134 (1982) に記載の、メトトレキサート、アドリアマイシン、およびインターフェロンのようなリンフォカインなどの薬物または生体反応改変因子(modifier)に共役した抗体;(3)例えば Uhr et al., Monoclonal Antibodies and Cancer, Academic Press, Inc., pp. 85-98 (1983); Vitetta et al., Biotechnology and Bio. Frontiers, Ed. P. H. Abelson, pp. 73-85 (1984); および Vitetta et al., Science, Vol. 219, pp. 644-650 (1983) に記載のような、毒素に共役した抗体;(4)例えば Perez et al., J. Exper. Med., Vol. 163, pp. 166-178 (1986); および Lau et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 82, pp. 8648-8652 (1985) に記載のような、例えば、複合体が癌腫とT細胞のようなキラー細胞などのエフェクター細胞の両方に結合するように、他の抗体と共役した、または組合せられた抗体のような、異機能(heterofunctional)抗体;および(5)例えば Herlyn et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 79, pp. 4761-4765 (1982); Schulz et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 80, pp. 5407-5411 (1983); Capone et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 80, pp. 7328-7332 (1983); Sears et al., Cancer Res., Vol. 45, pp. 5910-5913 (1985); Nepom et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 81, pp. 2864-2867 (1984); Koprowski et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 81, pp. 216-219 (1984); および Houghton et al., Proc Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 82, pp. 1242-1246 (1985) に記載のような、天然の、即ち非結合または非複合体化の抗体。
【0085】
上記のように抗体またはその断片を治療剤と共役させる方法は当分野で周知であり、例えば上記の参照文献で提供される方法に記載されている。なお他の実施態様では、前立腺障害の処置のための治療剤として有用なアンタゴニストは、開示遺伝子の1つにコードされるタンパク質の阻害因子であり得る。例えば、膜結合セリンプロテアーゼであるヘプシンの活性は、特異的セリンプロテアーゼ阻害因子の利用により阻害でき、これは次いで、最小の全身的毒性で、悪性前立腺細胞の成育を阻止する。かかるセリンプロテアーゼ阻害因子は、例えば Leung et al.,"Protease Inhibitors : Current Status and Future Prospects", J. Med. Chem., Vol. 43, pp. 305-341 (2000) に記載のように、当分野で周知である。
【0086】
アンチセンスヌクレオチドでの処置の場合、本方法は、表2、3または4で同定される少なくとも1つの遺伝子に由来するアンチセンスヌクレオチド配列を含む単離した核酸分子の治療的有効量を投与することを含み、但し、もし1つの遺伝子のみの発現が阻害されるなら、その遺伝子はFASNではなく、アンチセンスヌクレオチドは、少なくとも1つの遺伝子の転写/翻訳を低減させる能力を持つ。いくつかの実施態様では、もし1つの遺伝子のみの発現が阻害されるなら、その遺伝子はPLABではない。用語「単離した」核酸分子は、核酸分子がその本来の環境(例えば、それが天然産生であるなら、天然の環境)から取出されることを意味する。例えば、天然産生の核酸分子は単離されていないが、天然の系で共存する物質のいくつかまたは全部から分離された同じ核酸分子は、たとえその後天然の系に再導入されても、単離されている。かかる核酸分子は、ベクターの一部または組成物の一部であり得、そしてかかるベクターまたは組成物はその天然の環境の一部ではないという点で、依然として単離されている。
【0087】
リボザイムまたは2本鎖RNA分子での処置に関しては、本方法は、リボザイムをコードするヌクレオチド配列または2本鎖RNA分子の治療的有効量を投与することを含み、リボザイムをコードするヌクレオチド配列/2本鎖RNA分子は、表2、3または4で同定される少なくとも1つの遺伝子の転写/翻訳を低減させる能力を持ち、但し、もし1つの遺伝子のみの発現が阻害されるなら、その遺伝子はFASNではない。別の実施態様では、もし1つの遺伝子のみの発現が阻害されるなら、その遺伝子はPLABではない。
【0088】
アンタゴニストでの処置の場合、本方法は、表2、3または4で同定される少なくとも1つの遺伝子にコードされるタンパク質を阻害するアンタゴニストの治療的有効量を対象に投与することを含み、但し、もし1つの遺伝子のみの発現が阻害されるなら、その遺伝子はFASNではない。別の実施態様では、もし1つの遺伝子のみの発現が阻害されるなら、その遺伝子はPLABではない。
【0089】
アンチセンスヌクレオチド、リボザイムをコードするヌクレオチド配列、2本鎖RNAを含む単離した核酸分子またはアンタゴニストの「治療的有効量」は、これらの治療剤の1つの、前立腺障害を処置する(例えば、前立腺腫瘍の成育を制限する、または腫瘍の転移を遅延または阻止する)のに十分な量を表す。治療的有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。いかなる治療剤でも、治療的有効量を、新生細胞などの細胞培養アッセイ、または通常マウス、ウサギ、イヌまたはブタの動物モデルのいずれかで初めに評価できる。動物モデルは、適切な濃度範囲と投与経路を決定するのにも使用し得る。かかる情報は、次いでヒトで有用な用量と投与経路を決定するのに使用できる。
【0090】
治療効力と毒性は、細胞培養または実験動物で、例えばED50(集団の50%で治療的に有効である用量)やLD50(集団の50%で致死的である用量)などの、標準的な薬理学的手法により判定し得る。毒性と治療効果との間の用量比は治療指数であり、比LD50/ED50で表現できる。大きい治療指数を示すアンチセンスヌクレオチド、リボザイム、2本鎖RNAおよびアンタゴニストが好ましい。細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータを、ヒト使用のための用量範囲を製剤する(formulate)のに使用する。かかる組成物に含有される用量は、ED50を含み、毒性がほとんどまたは全く無い、循環濃度の範囲内にあるのが好ましい。用量は、採用する投与形態、患者の感受性および投与経路に依存して、この範囲で変動する。
【0091】
的確な用量は、処置を要する対象に関する要素に照らして、医師により決定される。用量と投与は、十分な活性部分のレベルをもたらすように、または所望の効果を維持するように、適合させる。考慮され得る要素には、疾患段階の重篤度、対象の一般的健康、年齢、体重、および対象の性別、食事、投与の時間と頻度、薬物の組合せ(複数も可)、反応感受性、および治療への耐性/反応が含まれる。
【0092】
正常な投与量は、投与経路によって、総用量約1gまで、0.1ないし100,000マイクログラムで変動し得る。具体的な用量および送達方法に関する手引きは、文献で提供されており、一般的に当分野の医師は入手可能である。当業者は、ヌクレオチドに対して、アンタゴニストに対するのとは異なる処方を採用するであろう。
【0093】
治療適用のために、アンチセンスヌクレオチド、リボザイムをコードするヌクレオチド配列、2本鎖RNA(リポソームに内包されるか、またはウイルスベクターに含有される)および抗体は、好ましくは1つまたはそれ以上の医薬的に許容し得る担体と組合わせて治療剤を含有する医薬組成物として投与される。組成物は、単独で、または安定化化合物などの少なくとも1つの他の剤と組合せて投与し得、塩水、緩衝塩水、デキストロースおよび水を含むがこれらに限定されるわけではない、いかなる滅菌生物適合性医薬担体においても投与し得る。組成物は単独で、または他の剤、薬物またはホルモンと組合せて、患者に投与し得る。
【0094】
医薬組成物は、経口、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、髄内、くも膜下、心室内、経皮、皮下、腹膜内、鼻腔内、経腸、局所、舌下または直腸の手段を含むが、これらに限定されるわけではない、いくつの経路によっても投与し得る。
【0095】
有効成分に加えて、これらの医薬組成物は、活性化合物を医薬的に使用できる製剤に加工するのを容易にする賦形剤および助剤を含む、適する医薬的に許容し得る担体を含有し得る。製剤と投与のための技法のさらなる詳細は、Remington's Pharmaceutical Sciences (Maack Publishing Co., Easton, Pa.) の最新版に見出される。
【0096】
経口投与用医薬組成物は、当分野で周知の医薬的に許容し得る担体を使用して、経口投与に適する用量で製剤できる。かかる担体は、患者による摂取のために、錠剤、丸剤、糖衣錠剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などとして医薬組成物を製剤するのを可能にする。
【0097】
経口使用のための医薬製剤は、活性化合物を固体賦形剤と組合せることにより得られ、場合により生じた混合物を粉砕(grind)し、顆粒の混合物を加工し、所望ならば適する助剤を添加した後、錠剤または糖衣錠剤の核を得る。適する賦形剤は、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖;トウモロコシ、麦、米、ジャガイモまたはその他の植物に由来する澱粉;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース;アラビアおよびトラガカントを含むゴム;並びにゼラチンおよびコラーゲンなどのタンパク質のような、炭水化物またはタンパク質の増量剤である。所望ならば、クロスリンクしたポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、またはアルギン酸ナトリウムのようなその塩などの、崩壊剤または可溶化剤を添加してもよい。
【0098】
糖衣錠剤の核は、濃縮糖溶液などの適するコーティングと共に使用し得る。それは、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポール(carbopol)ゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適する有機溶媒または溶媒混合物も含有してもよい。製品の同定または活性化合物の量、即ち用量を特徴付けるために、錠剤または糖衣錠剤コーティングに染料または色素を添加し得る。
【0099】
経口使用できる医薬製剤には、ゼラチンで作成される押合わせ(push-fit)カプセル剤、並びにゼラチンとグリセロールやソルビトールなどのコーティングで作成されるソフト密封カプセル剤が含まれる。押合わせカプセル剤は、ラクトースや澱粉などの増量剤または結合剤、タルクやステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、および場合により安定化剤と混合された有効成分を含有できる。ソフトカプセル剤では、活性化合物は、安定化剤と共に、または無しで、脂肪油、液体、または液体ポリエチレングリコールなどの適する液体に溶解または懸濁され得る。
【0100】
非経腸投与に適する医薬製剤は、好ましくはハンクス液、リンガー液または生理的緩衝塩水などの生理的に適合する緩衝液中で、水性溶液から製剤し得る。水性注射懸濁剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランなどの、懸濁剤の粘性を増大する物質を含有し得る。加えて、活性化合物の懸濁剤は、適切な油性注射懸濁剤として調製し得る。適する親油性溶媒または担体には、ゴマ油などの脂肪油、オレイン酸エチルまたはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが含まれる。非脂質の多価陽イオン性アミノポリマーも、送達に使用し得る。場合により、懸濁剤は、適する安定化剤または化合物の溶解度を増大する剤も含有してもよく、非常に濃い溶液の調製を可能にする。
【0101】
局所または鼻腔投与には、特定の障壁が透過されるのに適切な浸透剤を製剤中に使用する。かかる浸透剤は、当分野で一般的に知られている。
【0102】
本発明の医薬組成物は、例えば従来の混合、溶解、粒状化、糖衣錠剤作成、粉末化、乳液化、カプセル化、封入、または凍結乾燥法などの手段により、当分野で知られているように製造し得る。
【0103】
医薬組成物は、塩として与えられてもよく、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などを含むが、これらに限定されるわけではない、多くの酸で形成できる。塩は、対応する遊離塩基形態よりも、水性または他のプロトン性溶媒中で溶けやすい傾向がある。他の場合では、好ましい製剤は、使用に先立ち緩衝液と組合わせられる以下のいくつかまたは全部を、pH範囲4.5ないし5.5で含有する凍結乾燥粉末であり得る:1−50mMヒスチジン、0.1−2%スクロースおよび2−7%マンニトール。
【0104】
医薬組成物を調製した後、それらを適切な容器に置き、指示された症状の処置のために標識できる。アンチセンスヌクレオチドまたはアンタゴニストの投与用には、かかる標識は、量、頻度および投与方法を含む。当業者は、アンチセンスヌクレオチドには、例えば抗体または阻害因子のようなアンタゴニストとは異なる製剤を採用する。タンパク質の経口投与に適する医薬製剤は、例えば米国特許第5,008,114号;第5,505,962号;第5,641,515号;第5,681,811号;第5,700,486号;第5,766,633号;第5,792,451号;第5,853,748号;第5,972,387号;第5,976,569号;および第6,051,561号に記載されている。
【0105】
他の態様では、上記のような治療剤による対象の処置は、表2、3または4で同定される少なくとも1つの開示遺伝子にコードされるmRNAまたはタンパク質の発現レベル、または少なくとも1つの遺伝子にコードされるタンパク質の活性を検出することによりモニタリングできる。これらの測定は、処置が有効か否か、またはそれが適合または最適化されるべきか否かを示す。従って、本明細書に記載の遺伝子の1つまたはそれ以上を、臨床試験中に薬物の効力のマーカーとして使用できる。
【0106】
特に有用な実施態様では、前立腺障害を有するか、または有するリスクにある、または前立腺障害を有する対象の、ある剤(例えば、アンタゴニスト、タンパク質、核酸、低分子または他の治療剤または本明細書に記載のスクリーニングアッセイで同定される候補剤)による処置の有効性をモニタリングする方法が提供される。その方法は、
a)剤の投与に先立ち、対象から投与前サンプルを得ること;
b)投与前サンプルにおける、少なくとも1つの遺伝子に対応するmRNAまたはそれにコードされるタンパク質の発現レベル、または表2、3または4で同定される少なくとも1つの遺伝子によりコードされるタンパク質の活性を検出すること;
c)対象から1つまたはそれ以上の投与後サンプルを得ること;
d)投与後サンプルまたはサンプル群における、少なくとも1つの遺伝子に対応するmRNA、またはそれにコードされるタンパク質の発現レベル、または少なくとも1つの遺伝子によりコードされるタンパク質の活性を検出すること;
e)投与前サンプルにおけるmRNAまたは少なくとも1つの遺伝子にコードされるタンパク質の発現レベル、または少なくとも1つの遺伝子によりコードされるタンパク質の活性を、投与後サンプルまたはサンプル群における、mRNAまたは少なくとも1つの遺伝子にコードされるタンパク質の発現レベル、または少なくとも1つの遺伝子によりコードされるタンパク質の活性と比較すること;および
f)それに応じて剤の投与を調節すること;
を含む。
【0107】
いくつかの実施態様では、もし1つの遺伝子のみに対応する発現、またはそれにコードされるタンパク質の活性が検出されるなら、その遺伝子はFASNではない。他の実施態様では、もし1つの遺伝子のみに対応する発現、またはそれにコードされるタンパク質の活性が検出されるなら、その遺伝子はPLABではない。例えば、少なくとも1つの遺伝子の発現レベルまたは活性を検出されるよりも低いレベルに低下させるために、即ち剤の有効性を増大させるために、剤の投与の増大が望ましいかもしれない。あるいは、少なくとも1つの遺伝子の発現または活性を検出されるよりも高いレベルに増大させるために、即ち剤の有効性を低下させるために、剤の投与の低減が望ましいかもしれない。
【0108】
他の態様では、前立腺細胞の望まざる増殖を阻害する方法が提供される。その方法は、例えばアンチセンスヌクレオチド、リボザイム、2本鎖RNA、および抗体などのアンタゴニストのような、上記の治療剤を利用する。好ましくは、前立腺細胞はヒトに存在する。前立腺細胞の望まざる増殖は、局所的前立腺癌、転移前立腺癌、前立腺炎、良性前立腺増殖症、および良性前立腺肥大からなる群から選択される症状と関連する。
【0109】
アンチセンスヌクレオチドを利用する前立腺細胞増殖阻害に関して、本方法は、表2、3または4で同定される少なくとも1つの遺伝子に由来するアンチセンスヌクレオチド配列を含む単離した核酸分子の治療的有効量を前立腺細胞に投与することを含み、アンチセンスヌクレオチドは、少なくとも1つの遺伝子の転写/翻訳を低減させる能力を持つ。いくつかの実施態様では、もし1つの遺伝子のみの発現が阻害されるなら、その遺伝子はFASNではない。他の実施態様では、もし1つの遺伝子のみの発現が阻害されるなら、その遺伝子はPLABではない。
【0110】
リボザイムを利用する前立腺細胞増殖阻害に関して、かかる方法は、表2、3または4で同定される少なくとも1つの遺伝子の転写/翻訳を低減させる能力を持つリボザイムをコードするヌクレオチド配列の治療的有効量を前立腺細胞に投与することを含む。いくつかの実施態様では、もし1つの遺伝子のみの発現が阻害されるなら、その遺伝子はFASNではない。他の実施態様では、もし1つの遺伝子のみの発現が阻害されるなら、その遺伝子はPLABではない。
【0111】
2本鎖RNAを利用する前立腺細胞増殖阻害に関して、本方法は、表2、3または4で同定される少なくとも1つの遺伝子に対応する2本鎖RNAの治療的有効量を前立腺細胞に投与することを含み、2本鎖RNAは、少なくとも1つの遺伝子の転写/翻訳を低減させる能力を持つ。いくつかの実施態様では、もし1つの遺伝子のみの発現が阻害されるなら、その遺伝子はFASNではない。他の実施態様では、もし1つの遺伝子のみの発現が阻害されるなら、その遺伝子はPLABではない。
【0112】
アンタゴニストを利用する前立腺細胞増殖阻害に関して、本方法は、表2、3または4で同定される少なくとも1つの遺伝子にコードされるタンパク質を阻害するアンタゴニストの治療的有効量を前立腺細胞に投与することを含む。いくつかの実施態様では、もし1つの遺伝子のみの発現が阻害されるなら、その遺伝子はFASNではない。他の実施態様では、もし1つの遺伝子のみの発現が阻害されるなら、その遺伝子はPLABではない。
【0113】
前立腺細胞の望ましくない増殖を阻害する観点では、アンチセンスヌクレオチド、リボザイムをコードするヌクレオチド配列、2本鎖RNAを含む単離した核酸またはアンタゴニストの「治療的有効量」は、これらの治療剤の1つの、前立腺細胞の増殖を阻害する(例えば、前立腺細胞の細胞成育を阻害または安定化する)のに十分な量を表し、上記のように決定できる。
【0114】
他の態様では、ベクターの複製に必須である遺伝子のコード領域に機能し得るように連結した、表2、3または4で同定される少なくとも1つの遺伝子からなる群から選択される遺伝子のプロモーターおよび/またはエンハンサー、または他の調節エレメントを含む、ウイルスベクターが提供される。そのベクターは、疾患前立腺細胞にトランスフェクションされると複製するように適合されている。いくつかの実施態様では、遺伝子のプロモーターおよび/またはエンハンサー、または他の調節エレメントは、FASN遺伝子のものではない。他の実施態様では、遺伝子のプロモーターおよび/またはエンハンサー、または他の調節エレメントは、PLAB遺伝子のものではない。プロモーター配列は、全遺伝子を包含する、公的に得られるBACクローンのデータベースを探索することにより見分けられる。その後、遺伝子のcDNAをゲノム配列と比較できる。このことは、一般的にイントロン−エクソン境界および遺伝子の開始部位を明らかにする。一度これらが確立されると、プロモーター配列を推測できる。FASNについてはプロモーターは周知であり、Wolf, Nutr. Rev., Vol. 54, No. 4, Part 1, pp. 122-123 (1996); Schweizer et al., Biochem. Soc. Trans., Vol. 25, No. 4, pp. 1220-1224 (1997); および Sul et al., Prog. Nucleic Acid Res. Mol. Biol., Vol. 60, pp. 317-345 (1998) のように文献に記載されている。かかるベクターは、疾患を有する前立腺細胞において選択的に複製できるが、非疾患前立腺細胞では複製できない。複製は、非疾患前立腺細胞ではなく疾患前立腺細胞において、開示遺伝子のプロモーターを活性化する正の転写因子が存在することを条件とする。それはまた、通常非疾患前立腺細胞で生じ、プロモーターの結果としての転写を防止する、転写阻害因子の不在によっても起こり得る。従って、転写が起こると、それは複製に必須の遺伝子に進み、疾患前立腺細胞ではベクターの複製とそれに付随する機能が生じるが、非疾患細胞では生じない。このベクターを用いて、疾患前立腺細胞、例えば前立腺癌、を、全身の毒性を最小限にして選択的に処置できる。
【0115】
ある実施態様では、ウイルスベクターは、ベクターの複製に必須の遺伝子のコード領域を含むアデノウイルスベクターであり、コード領域はE1a、E1b、E2およびE4コード領域からなる群から選択される。用語「複製に必須の遺伝子」は、その転写が標的細胞におけるベクターの複製に必要とされる核酸配列を表す。好ましくは、複製に必須の遺伝子は、E1AおよびE1bコード領域からなる群から選択される。複製に必須の遺伝子として特に好ましいのは、アデノウイルスE1A遺伝子である。かかるベクターの作成方法は、例えば Sambrook et al., in Molecular Cloning : A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York, 1989 に記載のように当業者に周知である。本発明は、腫瘍細胞崩壊性アデノウイルスベクター戦略に基づく、新規ウイルスベクターを提供する。これは、1999年12月7日に発行された Hallenbeck らの米国特許第5,998,205号、および "Novel Oncolytic Adenoviral Vectors" と題する2002年1月14日出願の米国仮出願 (整理番号4−31704P3/PROV/GTI)に記載されており、これらの開示を全体的に出典明示により本明細書の一部とする。特に、複製に必須の少なくとも1つのアデノウイルス遺伝子が癌細胞で選択的にトランス活性化(transactivate)される組織特異的プロモーターにより制御される、腫瘍細胞崩壊性アデノウイルスベクターが開示される。ある実施態様では、組織特異的プロモーターは、E1aの発現を制御する。特に好ましい実施態様では、腫瘍特異的プロモーターによりE1aとE4の両遺伝子が制御される。組織特異的複製ベクターの調製方法、および有害であるか、何らかに望ましくない前立腺癌細胞および他のタイプの異常細胞を対象中でインビボで処置することにおけるその使用は、例えば米国特許第5,998,205号に詳細に記載されている。米国特許第5,698,443号は、複製に必須の遺伝子の発現がPSAプロモーター/エンハンサーにより制御されるアデノウイルスベクターを記載している。しかしながら、PSAプロモーター/エンハンサーは疾患前立腺細胞と同様に正常細胞において活性であるので、本発明のベクターとは異なり、この特許に記載されるウイルスベクターは、疾患前立腺細胞と同様に正常細胞において複製する。
【0116】
さらなる実施態様では、本発明は、表2、3または4で同定される少なくとも1つの遺伝子からなる群から選択される遺伝子のプロモーターおよび/またはエンハンサー、または他の調節エレメントの制御下で、異種遺伝子産物が発現される核酸コンストラクトを提供する。いくつかの実施態様では、遺伝子のプロモーターおよび/またはエンハンサー、または他の調節エレメントは、FASN遺伝子のものではない。他の実施態様では、遺伝子のプロモーターおよび/またはエンハンサー、または他の調節エレメントは、PLAB遺伝子のものではない。かかる異種遺伝子産物は、コンストラクトが疾患前立腺細胞に存在するときに発現されるが、正常、非疾患前立腺細胞では発現されない。いくつかの実施態様では、異種遺伝子産物は、前立腺癌などの疾患前立腺細胞の成育の阻害、防止または破壊をもたらす。遺伝子産物は、例えばアンチセンスRNAやリボザイムなどのRNA、または例えばインターロイキン、インターフェロンなどのサイトカインのようなタンパク質、またはジフテリア毒素、シュードモナス毒素などの毒素などであり得る。異種遺伝子産物は、シトシンデアミナーゼなどの負の選択マーカーでもあり得る。かかる負の選択マーカーは、疾患前立腺細胞の成育を防止、阻害または破壊する他の剤と相互作用できる。米国特許第6,057,299号は、例えば、異種遺伝子がPSAエンハンサーの制御下に置かれる核酸コンストラクトの構築と使用を記載している。核酸コンストラクトは、当業者に周知の方法で標的細胞に導入できる。例えば、コンストラクトを上記のような適切なベクターに組込むことができる。
【0117】
本発明のベクターは、ウイルスの複製のためにヘルパー細胞株にトランスフェクションでき、感染性ウイルス粒子を生成できる。あるいは、ベクターまたは他の核酸の前立腺細胞へのトランスフェクションは、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、マイクロインジェクション、またはプロテオリポソームを含むリポソームを介して、起こり得る。
【0118】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施態様を明示するために包含される。
【実施例】
【0119】
実施例
方法
細胞培養
PC3、LNCaPおよびDU145細胞(American Type Culture Collection, Manassas, Virginia)は、10%ウシ胎児血清(FCS)および100μg/mLのストレプトマイシン(Gibco)を添加したDME(Gibco, Rockville, Maryland)(D10)中で、37℃で、空気中5%COの加湿空気中で成育させた。LNCaP細胞はまた、透析チャコール除去FCSでFCSを置換した、低アンドロゲンD10中でも成育させた。正常前立腺上皮細胞(PrEC)およびHPV E6をトランスフェクションされた誘導体(hPr1)は、無血清ケラチン生成細胞成育培地(Gibco)中で成育させた。繊維芽細胞系のCAF1598、CAF1303、CAF1852およびCAF2585は、腺癌のために除去された前立腺の断片から増幅させた。凍結切片を手術時にヘマトキシリンとエオシン(H&E)で染色し、悪性上皮を含有することを判定し、隣接する断片を切刻み、D10に置いた。BPHF1598繊維芽細胞は、良性増殖性腺のみを含有する前立腺組織断片から増殖させた。正常前立腺ストロマ細胞(PrSC)AおよびBは、Clonetics(San Diego, California)から購入し、製造者の推奨に従って培養した。付着細胞は、4−8回の植継ぎの後、増幅させ、60−70%の密集度で回収した。アンドロゲンの非存在下で成育させたLNCaPとHUVECの2つの培養は、各々2回標本を採った。
【0120】
組織獲得、cRNA合成およびオリゴヌクレオチドアレイへのハイブリダイゼーション
the University of Virginia でのヒト組織サンプルの使用は、UVA Human Investigation Committee により承認された。新鮮な腺癌サンプルは、PSAレベルが上昇している男性から入手した。前立腺切除試料由来または(1症例では)リンパ節転移由来のH&E染色切片を、腫瘍、良性上皮、ストロマ、およびリンパ球の相対量を評価するために試験した。癌を含有する組織を切取り、新生細胞に富むようにした。マイクロアレイ分析のための処理に先立ち、全サンプルを−80℃で保存した。前立腺組織の一組には、23個の一次癌組織、1個のリンパ節転移および9個の非新生組織が含まれた。8個の癌は、同じ患者から得られた正常組織と対にした。1個の癌組織(症例13)は、分けて2つの独立サンプルとして処理した。各症例において、数mgの組織を鋭く切裂き、RNeasy 溶解緩衝液 (QIAGEN, Valencia, California)中で、回転ホモジェナイザー(Omni International, Warrenton, Virginia)でホモジェナイズした。RNeasy Mini Kit (QIAGEN)を使用して、組織と細胞からRNAを調製した。T−リンパ芽球MOLT4と髄白血病性(myeloleukemic)HL60細胞由来のメッセンジャーRNAは、Clontech (Palo Alto, California) から購入し、上皮細胞由来、および活性化B細胞の3個の個別の単離物由来のRNAは、各々 A. Kawamura および M. Cooke から譲り受けた。以前に Lockhart et al., Nat. Biotechnol., Vol. 14, pp. 1675-1680 (1996); および Wodicka et al., Nat. Biotechnol., Vol. 15, pp. 1359-1367 (1997) に記載されたように、標識相補RNA(cRNA)を調製し、「U95A」オリゴヌクレオチドアレイ(Affymetrix, Santa Clara, California)にハイブリダイズさせた。
【0121】
データ解析
スキャンした画像ファイルを人為的構造について目視点検し、GENECHIP 3.1 (Affymetrix)で分析した。次いで各画像を、Wodicka et al.(前出)に記載のように細胞毎に〜3−5転写物に対応する、平均ハイブリダイゼーション強度200に合わせた。各遺伝子のハイブリダイゼーション強度をサンプル間の変動性(標準偏差)に従って順位付けし、全サンプルに渡って発現が最も変動する3,530個の遺伝子を中央値で合わせ(median-centered)、サンプル中の他の遺伝子および他のサンプル中の対応する遺伝子に関して正規化した。Eisen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 95, pp. 14863-14868 (1998)に本質的に記載のように、遺伝子とサンプルを階層的クラスタリング(clustering)に処した。集団の差異に関する3つの異なる評価(平均値の差異、平均の商(quotient)および対応のないt検定)を使用して、各遺伝子のハイブリダイゼーション強度を比較することにより良性および悪性前立腺組織における遺伝子の差異発現を評価した。遺伝子を各計量法に従って順位付けし、順位の合計を各転写物の異なる発生量(abundance)の準定量的評価として使用した。
【0122】
ヘプシンおよびPLAB発現のRT−PCR分析
前立腺組織から単離された1μgの総RNAを使用して、cDNAを調製した。特定の遺伝子産物を増幅するために使用したプライマーは、ヘプシンセンス、5'−CGGGACCCCAACAGCGAGGAGAAC−3';ヘプシンアンチセンス、5'−TCGGGGTAGCCAGCACAGAACATC−3';PLABセンス、5'−CGCGCAACGGGGACGACT3';およびPLABアンチセンス、5'−TGAGCACCATGGGATTGTAGC−3'であった。ヘプシンとPLABのPCR条件には、95℃10分間、30サイクルの95℃30秒間、55℃30秒間(アニーリング)および72℃30秒間、そして最終伸長段階の72℃7分間が含まれた。全PCR反応は、1Uの AmpliTaq Gold (Perkin-Elmer, Foster City, California)で、20μLの容量を使用した。増幅産物(10μL)を、2%アガロースゲル電気泳動で分離した。
【0123】
免疫組織化学
脱パラフィン処理した亜鉛ホルマリン固定パラフィン包埋切片に、アビジン−ビオチン免疫ペルオキシダーゼ法を実施した。抗脂肪酸シンターゼ抗体(E. Pizer より譲渡された)を室温で1時間適用するのに先立ち、クエン酸緩衝液中に置いたスライドを、マイクロ波で20分間加熱した。
【0124】
実施例1:前立腺組織サンプルおよび細胞株における遺伝子発現プロフィール
遺伝子発現プロフィールを前立腺組織サンプルの分類に使用し得るという仮説を検証するために、約8,920個の異なる遺伝子を表示するオリゴヌクレオチドマイクロアレイへのRNAサンプルのハイブリダイゼーションにより、組織と細胞における遺伝子の発現レベルをモニタリングした。25個の前立腺癌組織(24個の独自サンプル)、9個の非悪性前立腺組織、および様々な起源(18個の独自株)の21個の細胞株サンプルに由来する全部で55個のRNAサンプル(材料と方法参照)をハイブリダイズさせた。完全なデータセットは、ウェブサイトで入手可能である(http://www.gnf.org/cancer/prostate)。
【0125】
個々の組織サンプルと細胞の間の区別を解明するために、例えば Eisen et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 95, pp. 14863-14868 (1998)に記載のように、サンプル中で最も変動した3,530個の遺伝子のサブセットを選択し、発現レベルにおける包括的類似性に従って遺伝子とサンプルの両方をグループ分けした。これらのサンプルを樹状図上で分けた(図1)。その中では、これらの包括的類似性はこれらの間の垂直な枝の長さに比例する。予想通り、腫瘍13、LNCaP細胞および臍静脈上皮細胞(HUVEC)の複製サンプルは高く相関し、この技法の内部確認として役立つ。この分析は、高度に分岐する遺伝子発現パターンを伴う、インビトロで成育した細胞とヒト組織試料との間の大きな不一致を明らかにした。樹状図の「組織」枝内では、サンプルはさらに2つの別個のグループに再分された。第1は、全部で24個の前立腺腫瘍からなり、第2は、9個全部の非悪性サンプルを含んだ。従って、遺伝子発現の分析は、悪性上皮の有無に基づく区別を忠実に再現した。
【0126】
樹状図の「細胞株」枝内では、組織起源の異なる細胞の間で高度の関係が同定された。例えば、3人の独立のドナーに由来する活性化B細胞のプロフィールは、相互に、そして2種の血液癌由来細胞(MOLT4およびHL60)と、高度に相関した(図1)。同様に、異なる個人の正常または悪性前立腺に由来する6種のストロマ性繊維芽細胞株(BPHF、PrSCまたはCAFと呼称した)は、高く相関した。類似性は、ジヒドロテストステロン(DHT)の存在下または非存在下で成育させたLNCaP細胞の間にも見られた。アンドロゲン非依存性株として転移前立腺病変に由来するPC3とDu145細胞は、HPV E6遺伝子をトランスフェクションされた不死アンドロゲン非依存性基底前立腺上皮細胞(hPr1)と共にグループ化された。正常基底前立腺上皮細胞(PrEC)は、対照的に、LNCaP細胞と、DU145、hPr1およびPC3細胞との間で樹状図の枝上に単離された。細胞の組織からの分離は、大方、インビトロで成育させた細胞の速い成育速度を反映して、サイクリンB、cdc2およびcks1を含む細胞周期進行に伴う遺伝子の大クラスターの差異発現のためである。このことは、低アンドロゲンのLNCaP細胞(2重の「LNCaP‐DHT」、図1)においてこれらの遺伝子の発現が低いか、またはないことにより補強される。例えば Esquenet et al., Prostate, Vol. 28, pp. 182-194 (1996) に記載のように、この細胞は、これらの条件下で細胞周期のG1期で停止する。
【0127】
実施例2:様々な細胞タイプの遺伝子発現
前立腺癌サンプルは、非悪性の上皮細胞、線維筋性ストロマ、内皮および浸透する免疫細胞の様々な画分を含有した。細胞タイプ特異的発現パターンの解明を補助するために、これらの細胞タイプの代表例の概略を描いた。分析した3,530個の遺伝子から、いくつかの細胞および組織で発現レベルが類似する4個の主要なクラスターが同定された。1つのクラスターは、インビトロで成育させたストロマ細胞、および顕微鏡的に有意な量のストロマを含有する(範囲、10−50%)正常前立腺サンプルで発現が高い遺伝子を含有する。このクラスターには、繊維芽細胞で支配的に発現されるコラーゲンVIのα1およびα2サブユニットおよび繊維芽細胞増殖因子受容体タイプ1(FGF−R1)の遺伝子が含まれる。一次組織中で同定される他のグループのストロマ性遺伝子は、ストロマ性細胞のいくつかで存在しないか、または低レベルで発現されるので、このアプローチによるストロマ性遺伝子の一致は完全ではなかった。これらの矛盾は、培養中で成育させる前立腺組織繊維芽細胞の選択に起因した。培養中では、分化した繊維筋細胞は速い増殖に有利でなかったであろう。2番目の一致する「組織−細胞」クラスターには、活性化B細胞および数個の良性および悪性組織におけるいくつかの細胞で発現される、多数の免疫グロブリン(Ig)遺伝子が含まれた。症例9および10に由来する、対にした正常と悪性のサンプルは、これらの遺伝子を非常に高レベルで発現した。このことは、これら2人の患者における前立腺炎の組織学的知見と一致した。第3のクラスターには、ケラチン5や17(各々、Peehl et al., Cell Tissue Res., Vol. 277, pp. 11-18 (1994); および Troyanovsky et al., Eur. J. Cell Biol., Vol. 59, pp. 127-137 (1992))のような、基底上皮細胞で特徴的に発現される遺伝子が含まれた。ここで、これらの遺伝子のセットについて一致する遺伝子発現は、PrECおよびhPr1細胞(Choo et al., Prostate, Vol. 40, pp. 150-158 (1999)に記載のように、基底上皮細胞であることが知られている)、並びに正常および腫瘍組織で、様々な程度に見出された。第4の遺伝子群は、LNCaP細胞および腫瘍サンプルのほとんどで高く発現され、ATPシンターゼやチトクロムCオキシダーゼなどの、産物が中間代謝に関与する複数の遺伝子を含んだ。このクラスター内の遺伝子発現は、悪性細胞の加速した成育を反映したようである。
【0128】
上記の一致する「組織−細胞」クラスターとは対照的に、T細胞と内皮細胞で特異的に発現される他の遺伝子のグループは、組織サンプルのいずれでも高く発現されないと同定された。また、前立腺組織と、概略を描いた3つの上皮前立腺癌細胞株(LNCaP、PC3およびDU145)の遺伝子発現レベルの間では、一致は最小限であった。約400個の遺伝子のグループは、悪性サンプルで高度かつ特異的に発現され、癌組織中で悪性管腔上皮を示すケラチン8および18を含んだ。これらの遺伝子の過剰発現は、良性と悪性の組織の間の分子識別に実質的に貢献する。このグループには、hK2、表皮増殖因子受容体(ERBB3)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、アンドロゲン受容体(AR)および3種のPSAアイソフォームが含まれた。
【0129】
実施例3:前立腺腫瘍間の遺伝子発現の差異
前立腺間の明らかな分子類似性は、発現が正常組織、悪性組織および細胞株に渡って最も変化した3,530遺伝子の初期分析の結果生じた。前立腺癌間の類似性の程度をよりよく評価するために、発現が悪性細胞特異的であると推測されるこれらの遺伝子の788個を選択した(遺伝子のリストおよびそれらの選択に使用した基準は、我々のウェブサイトで入手可能である)。この腫瘍特異的遺伝子グループの発現レベルは、可能性のある分類法を強化しようと試みる中で、腫瘍間で最も懸著に変動するさらに小さいグループ(n=277)を選択するのに使用した。データのクラスタリングにより、主としてリボソームの遺伝子グループの差異発現に特徴がある腫瘍間の二分法が示された。この分割は、腫瘍の分化の程度におおよそ対応し、リボソームの遺伝子発現が低い腫瘍サンプルでグリーソンスコアは有意に高かった(P<0.01)。
【0130】
ただ1つのリンパ節転移(症例17)は、再クラスタリングによって一次腫瘍から容易に区別されなかったが、他のサンプルでは高く発現されず、そしてインターフェロン誘導可能タンパク質p27とp28を含む複数のインターフェロン反応性遺伝子を高レベルで発現した。試料は組織学により少なくとも90%の腫瘍細胞を含有し、これらの遺伝子の共変する発現は概観した細胞株のいずれでも見出されなかったので、これらの遺伝子は、悪性細胞により発現されるようである。
【0131】
実施例4:潜在的診断マーカーおよび治療標的の同定
正常前立腺組織と比較した場合の前立腺癌の分子同質性は、腫瘍の大部分で過剰発現される、潜在的に治療的有用性のある遺伝子を同定できることを示唆する。良性と悪性サンプルとの間の発現レベルの数学的差異に基づき、遺伝子を最初に順位付けした(「差異」計量法、図2a)。PSAとhK2のアイソフォームを表す多数のプローブのセットは、この方法において最高に順位付けされた。このアプローチは、診断マーカーとしてPSAなどの遺伝子または遺伝子産物を使用することにおける2つの重大な問題を際立たせた。第一に、PSA転写レベルの比率は、正常と悪性のサンプルを比較した場合に大きくなかった(〜1.6倍)。第2に、組織グループ内のPSA発現範囲が大きく、正常と悪性の組織におけるレベルがしばしば符合した。故に、2001年6月10日に出願された「Molecular Signatures of Commonly Fatal Carcinomas」と題する Su および Hampton の米国仮出願番号60/297,277に記載のように、発現が正常組織で低く、悪性組織で高く、正常および悪性サンプルにおける発現範囲が互いに良好に分離される遺伝子を選択するように、計量法を工夫した(Welsh et al., Cancer Res., Vol. 61, pp. 5974-5978 (2001) も参照されたい)。この計量法は、癌腫関連抗原GA733−2(TACSTD1)、腸トレフォイル因子(intestinal trefoil factor)3(TFF3)、および脂肪酸シンターゼ(FASN)などの既知の腫瘍抗原を含む、理想的と考えられる「診断」プロフィールを有する遺伝子をもたらした。それは、Bootcov et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 94, pp. 11514-11519 (1997) に記載のように、分泌サイトカインをコードするPLAB(前立腺分化因子)、および Torres-Rosado et al.,(前出)に記載のように細胞成育制御に関与する膜結合細胞外セリンプロテアーゼをコードするヘプシンの強い差異発現も同定した(図2b)。下表1に示すように、FASN、PLABおよびヘプシン転写物の任意発現レベルに、悪性から正常の分離を立証させた。
【0132】
表1 正常および悪性前立腺組織における選択された転写物レベル
レベルはハイブリダイゼーション強度で示す。癌について範囲として段階を示す。
【表1】

【0133】
20個の最高順位の遺伝子(図3bのもの)を下表にする(表2)
表2 計量法に従って同定された上位20遺伝子のリスト
(注:受託番号は、http://www.ncbi.nim.nih.gov/UniGene/ の NCBI-UniGene において各遺伝子の独自の個性を同定するのに使用できる;AVG_NL と AVG_TUMOR は、各々正常および腫瘍組織における平均差異ハイブリダイゼーション強度の平均である。)
【表2】

【0134】
この方法で高く順位付けされた遺伝子の差異発現は、正常と癌組織から選択されたRNAにおけるPLABとヘプシンの転写物のRT−PCR増幅により確認し、前立腺癌におけるその過剰発現を確めた(図3)。20個の高順位遺伝子(図2bおよび表2のもの)の正常および前立腺癌のサンプルにおける差異発現について、公的な「Gene-to-Tag」データベース (http://www.ncbi.nlm.nih.gov/SAGE/) にも問い合わせた。20個の遺伝子のうち12個について、正常および悪性前立腺サンプルの単一の微小解剖対において信頼し得る評価が得られた。これら12個のうち、10個が癌組織において5倍以上の過剰発現を示した。差異発現はまた、免疫組織化学染色でFASNに対するモノクローナル抗体(Pizer et al., Prostate, Vol. 47, pp. 102-110 (2001))を使用して確かめ、調べた10例全部の前立腺癌において悪性上皮で強く特異的な免疫陽性が見出された。下表3に示すように、表2に挙げた20個の遺伝子に加えて、2つのPSAアイソフォームが前立腺腫瘍における差異発現に関して高く順位付けされた(図2aも参照されたい)。
【0135】
表3 「差異」計量法に従って同定された2つのPSAアイソフォームのリスト
(注:受託番号は、http://www.tigr.org の TIGR において各遺伝子の独自の個性を同定するのに使用できる;AVG_NL と AVG_TUMOR は、各々正常および腫瘍組織における平均差異ハイブリダイゼーション強度の平均である。)
【表3】

【0136】
下表4は、表2および3で同定される20個の遺伝子および「差異」計量法で高く順位付けされた他の遺伝子を含む。
表4 計量法に従って同定された上位50遺伝子のリスト
(注:受託番号は、http://www.ncbi.nim.nih.gov/UniGene/ の NCBI-UniGene において、および http://www.tigr.org または http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Entrez の TIGR において、各遺伝子の独自の個性を同定するのに使用できる;AVG_NL と AVG_TUMOR は、各々正常および腫瘍組織における平均差異ハイブリダイゼーション強度の平均である。)
【表4】

【0137】
表4の続き
【表5】

【0138】
本明細書で開示した実施態様および/または実施例に、様々な改変を成し得ることが理解されるであろう。従って、上記の説明は、限定ではなく、好ましい実施態様の単なる例示として解釈されるべきである。当業者は、本明細書に添付の請求の範囲の範囲及び精神の内にある他の改変を構想するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】55個の実験サンプルの樹状図。
【図2】正常および悪性前立腺組織において高く順位付けされた遺伝子の発現レベル。
【図3】選択された前立腺組織からのヘプシンおよびPLAB転写物の増幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
望ましくない前立腺細胞の増殖を阻害する方法であって、表2、3または4で同定される少なくとも1つの遺伝子の発現を低下させられる剤の有効量を細胞に投与することを含み、但し、もし1つの遺伝子のみの発現が阻害されるなら、その遺伝子はFASNではない、方法。
【請求項2】
剤が、アンチセンスヌクレオチド、リボザイムおよび2本鎖RNAからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
剤が、表2、3または4で同定される少なくとも1つの遺伝子に由来するアンチセンスヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
アンチセンスヌクレオチド配列が表2、3または4で同定される少なくとも2つの遺伝子に由来する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの遺伝子が、ヘプシン、前立腺分化因子、アルファ−メチルアシル−CoAラセマーゼ、脂肪酸シンターゼ、前立腺特異抗原代替的スプライシング形態2および前立腺特異抗原代替的スプライシング形態3からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
望ましくない増殖が、局所的前立腺癌、転移前立腺癌、前立腺炎、良性前立腺増殖症および良性前立腺肥大からなる群から選択される症状に関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
剤が、表2、3または4で同定される少なくとも1つの遺伝子にコードされるタンパク質を阻害するアンタゴニストである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの遺伝子が、ヘプシン、FASNおよびMOAT−Bからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
該アンタゴニストが該タンパク質に特異的な抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
該抗体がモノクローナル抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
該モノクローナル抗体が毒性試薬に結合している、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
該細胞がヒトに存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前立腺障害を有するか、または前立腺障害を発症するリスクにある対象の、ある剤による処置の有効性をモニタリングする方法であって、
a)剤の投与に先立ち、対象から投与前サンプルを得ること;
b)投与前サンプルにおける表2、3または4で同定される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを検出すること、但し、もし1つの遺伝子のみの発現が検出されるなら、その遺伝子はFASNではない;
c)対象から1つまたはそれ以上の投与後サンプルを得ること;
d)投与後サンプルまたはサンプル群における少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを検出すること;
e)投与前サンプルにおける少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを、投与後サンプルにおける少なくとも1つの遺伝子の発現レベルと比較すること;および
f)それに応じて剤の投与を調節すること;
を含む、方法。
【請求項14】
段階(b)において表2、3または4で同定される少なくとも2つの遺伝子の発現レベルが検出される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの遺伝子が、ヘプシン、前立腺分化因子、アルファ−メチルアシル−CoAラセマーゼ、脂肪酸シンターゼ、前立腺特異抗原代替的スプライシング形態2および前立腺特異抗原代替的スプライシング形態3からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前立腺障害が、局所的前立腺癌、転移前立腺癌、前立腺炎、良性前立腺増殖症および良性前立腺肥大からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
遺伝子発現レベルが、該遺伝子に対応するmRNAの発現レベルの検出により判定される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
mRNAの発現レベルが、ノザンブロット分析、逆転写PCRおよびリアルタイム定量的PCRからなる群から選択される技法により検出される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
遺伝子発現レベルが、該遺伝子にコードされるタンパク質の発現レベルの検出により判定される、請求項13に記載の方法。
【請求項20】
該遺伝子にコードされるタンパク質の発現レベルが、該タンパク質に特異的な標識プローブを利用することにより、ウエスタンブロットを介して検出される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
該標識プローブが抗体である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
該抗体がモノクローナル抗体である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ベクターの複製に必須である遺伝子のコード領域に機能し得るように連結した、表2、3または4で同定される遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子のプロモーターおよび/またはエンハンサー、但し、その遺伝子はFASNではない、を含み、疾患前立腺細胞にトランスフェクションすると複製するように適合されている、ウイルスベクター。
【請求項24】
該ウイルスベクターがアデノウイルスベクターである、請求項23に記載のベクター。
【請求項25】
ベクターの複製に必須である遺伝子のコード領域が、E1a、E1b、E2およびE4コード領域からなる群から選択される、請求項23に記載のベクター。
【請求項26】
異種遺伝子産物をコードするヌクレオチド配列をさらに含む、請求項23に記載のベクター。
【請求項27】
異種遺伝子産物のコード領域に機能しうるように連結した、表2、3または4で同定される遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子のプロモーターおよび/またはエンハンサー、但し、該遺伝子はFASNではない、を含む、核酸コンストラクト。
【請求項28】
異種遺伝子産物がRNA分子である、請求項27に記載の核酸コンストラクト。
【請求項29】
RNA分子がアンチセンスRNAまたはリボザイムである、請求項28に記載の核酸コンストラクト。
【請求項30】
異種遺伝子産物がタンパク質である、請求項27に記載の核酸コンストラクト。
【請求項31】
該タンパク質がサイトカインまたは毒素からなる群から選択される、請求項30に記載の核酸コンストラクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−325598(P2007−325598A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191006(P2007−191006)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【分割の表示】特願2002−559855(P2002−559855)の分割
【原出願日】平成14年1月22日(2002.1.22)
【出願人】(503261524)アイアールエム・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (158)
【氏名又は名称原語表記】IRM,LLC
【Fターム(参考)】