説明

診断のための生体分子

【課題】本発明は、生体分子に関連する。
【解決手段】具体的には、本発明は、対象における細胞増殖異常の存在、素因、及び/又は重篤度を検出する方法を提供する。また、本発明は、対象における細胞増殖異常のための処置の効力をモニターする方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的分子又は生体分子に関連し、具体的には、バイオマーカーに関連する。より具体的には、本発明は、疾患の診断又は予後評価のために、あるいは、疾患処置の効力をモニターするために使用される生体分子に関連する。
【背景技術】
【0002】
乳がんは、(肺がんに次いで)今日では女性におけるがん死亡者の2番目に多い原因であり、女性の間での最も一般的ながんの1つである。世界保健機関は、世界中で毎年120万人を越える人々が乳がんと診断されると推定する。
【0003】
アメリカ癌学会は、2005年には、合衆国におけるおよそ210,000人の女性が浸潤性乳がん(第I期〜第IV期)と診断されると推定する。浸潤性乳がんを女性の生涯の期間中に発生する可能性はおよそ7人に1人(13.4%)である。さらに60,000人の女性が上皮内限局乳がん(この疾患の非常に初期の形態)と診断される。男性もまた、より小さい確率ではあるが、乳がんに罹患し得る。推定では、1,700の症例が2005年には男性において診断される。
【0004】
毎年、40,000人の女性及び460人の男性が合衆国では乳がんで死亡することが推定される。アメリカ癌学会によれば、乳がんが女性の死亡にかかわる可能性は約33分の1(3%)である。乳がんの発生率(100,000人の女性あたりの新規乳がん患者の数)が1980年代の期間中におよそ4%増大したが、これは1990年代では100,000人の女性あたり100.6人で横ばい状態になっている。乳がんによる死亡率はまた、1992年と、1996年との間では著しく低下し、最も大きい低下が若年女性の間であった。医療専門家は、乳がん死亡者におけるこの低下を、より早期の検出及びより効果的な処置の結果であると考えている。
【0005】
乳がんは通常、乳房における触知可能なしこりとして、及び/又は、乳房の普通でない提示(例えば、皮膚の陥凹形成、ひだ形成、隆起、位置が変わっている乳頭、又は、陥没乳頭、赤み、ひりひりすること、発疹、腫れ、あるいは、乳房の非対称性など)によって最初に検出される。
【0006】
理学的検査による検出の後で、x線又は超音波によるマンモグラフィーが行われることがある。しかしながら、マンモグラフィーは、嚢腫、石灰沈着部及び良性のしこり(例えば、線維腺腫など)に起因する偽陽性の結果を伴う。結果として、通常の場合、生検物から得られる組織サンプルに対する細胞学に基づくさらなる診断が必要である。細胞学的サンプルの解釈では、高度に訓練された専門家が要求される。
そのため、乳がんを検出及び処置するための改善された方法が歓迎される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の目的
本発明は上記の問題を検討し、細胞増殖異常(例えば、がんなど)を検出及び/又は処置するための方法を提供する。一般に、当該異常はがんであり、具体的には乳がんである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
1つの局面において、本発明は、
[1]対象における細胞増殖異常の存在、素因、及び/又は、重篤度を検出及び/又は定量化する方法であって、
(a)対象からの少なくとも1つのサンプルを用意すること;
(b)PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異、並びに/あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を測定すること;及び
(c)PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異、並びに/あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を、少なくとも1つのコントロールのものと比較することを含み、発現における違いにより、前記対象における細胞増殖異常の存在、又は、素因、及び/又は、重篤度が示されるものである方法を提供する。
【0009】
[2]対象における細胞増殖異常のための処置の効力をモニターする方法であって、
(a)対象からの少なくとも2つのサンプルであって、それぞれのサンプルが異なる時点で得られるサンプルを用意すること;
(b)PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異、あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を測定すること;及び
(c)少なくとも2つのサンプルにおけるPA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異、並びに/あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を比較することを含む方法もまた提供される。
【0010】
[3]対象における細胞増殖異常の結果を予後判定する方法であって、
(a)対象からの少なくとも1つのサンプルを用意すること;
(b)PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異、並びに/あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を測定すること;及び
(c)PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異、並びに/あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を、少なくとも1つのコントロールのものと比較することを含み、発現における違いにより、前記対象における細胞増殖異常の予後が示されるものである方法もまた提供される。
【0011】
[4]上記の方法[1]〜[3]のいずれかにおいて、前記コントロールは、例えば、細胞増殖異常と診断されていない少なくとも1つの対象である場合がある。あるいは、前記コントロールは、PA2G4遺伝子及び/又はPA2G4タンパク質の低いレベルの発現を有する少なくとも1つの対象である場合がある。前記コントロールはまた、選択された集団から得られる発現における平均値である場合がある。
【0012】
[5]上記の方法[1]〜[3]のいずれかにおいて、前記遺伝子、そのRNA及び/又は変異は、ヒトPA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異である場合があり、前記PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントは、ヒトPA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントである場合がある。
【0013】
[6]上記の方法[1]〜[5]のいずれかにおいて、前記検出は、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントを少なくとも1つのスルフェニルハライド試薬により標識し、その後、2次元ゲル電気泳動及び質量分析法によって行うことができる。
【0014】
[7]上記の方法[6]において、前記スルフェニルハライド試薬は2−ニトロベンゼンスルフェニルクロリド(NBS)であり得る。
【0015】
[8]対象における細胞増殖異常を処置する方法であって、PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異の発現を変化させることを含む方法もまた提供される。
【0016】
[9]上記の方法[1]〜[8]のいずれかにおいて、前記PA2G4遺伝子は、配列番号1に示される配列を有し得る。
【0017】
[10]上記の方法[8]又は[9]において、前記変化させることは、前記PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異の全体又は一部にハイブリダイゼーション可能な核酸を投与することによって得ることができる。
【0018】
[11]上記の方法[10]において、前記ハイブリダイゼーション可能な核酸はDNA又はRNAであり得る。
【0019】
[12]上記の方法[11]において、具体的には、前記ハイブリダイゼーション可能な核酸はsiRNAであり得る。
【0020】
[13]上記の方法[8]又は[9]において、前記変化させることは、前記PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異の全体又は一部にハイブリダイゼーション可能な化合物を投与することによって得ることができる。
【0021】
[14]対象における細胞増殖異常を処置する方法であって、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を変化させることを含む方法もまた提供される。
【0022】
[15]上記の方法[14]において、前記方法は、配列番号2のアミノ酸配列を有するPA2G4タンパク質の発現を変化させることを含むことができる。
【0023】
[16]上記の方法[14]又は[15]において、前記変化させることは、前記PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントのアミノ酸配列の全体又は一部に結合するポリペプチドを投与することによって得ることができる。
【0024】
[17]上記の方法[16]において、前記結合するポリペプチドは抗体であり得る。
【0025】
[18]上記の方法[14]において、前記変化させることは、前記PA2G4タンパク質のアミノ酸配列の全体又は一部にハイブリダイゼーション可能な化合物を投与することによって得ることができる。
【0026】
[19]上記の方法[8]〜[18]のいずれかにおいて、前記発現を変化させることは、前記PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異、並びに/あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を低下させることを含むことができる。
【0027】
[20]少なくとも1つのタンパク質及び/又はそのフラグメントの発現における変動を引き起こす少なくとも1つの薬物についてスクリーニングする方法であって、
(a)少なくとも1つの薬物を少なくとも1つの対象に投与すること;
(b)少なくとも1つのタンパク質を前記対象から得ること;
(c)前記タンパク質の少なくとも1つのアミノ酸残基を少なくとも1つの試薬により標識すること;及び
(d)前記タンパク質を質量分析法によって分析し、それにより、前記少なくとも1つのタンパク質及び/又はそのフラグメントを特定し、発現の変動が生じているかどうかを明らかにすることを含む方法もまた提供される。
【0028】
[21]上記の方法[20]において、前記分析する工程は、前記タンパク質を第1の特徴に基づいて分離し、場合により前記タンパク質を第2の特徴に基づいて分離し、前記タンパク質をイオン化し、前記分離されたタンパク質を検出及び特定することを含むことができる。
【0029】
[22]上記の方法[20]又は[21]において、前記タンパク質及び/又はそのフラグメントはPA2G4タンパク質及び/又はそのフラグメントであり得る。
【0030】
[23]上記の方法[22]において、前記PA2G4タンパク質は配列番号2の配列を有する。
【0031】
[24]上記の方法[20]〜[23]のいずれかにおいて、前記試薬はスルフェニルハライドであり得る。
【0032】
[25]上記の方法[20]〜[24]のいずれかにおいて、具体的には、前記試薬は2−ニトロベンゼンスルフェニルクロリド(NBS)であり得る。
【0033】
[26]上記の方法[20]〜[25]のいずれかにおいて、前記アミノ酸残基はトリプトファンであり得る。
【0034】
[27]上記の方法[21]〜[26]のいずれかにおいて、前記分離する工程は、質量、電荷、官能基及び等電点からなる群から選択される少なくとも1つの特徴に基づくことができる。
【0035】
[28]上記の方法[21]〜[27]のいずれかにおいて、前記分離する工程は、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)、二次元ゲル電気泳動(2DE)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び/又はフリーフロー電気泳動(FFE)のための工程であり得る。
【0036】
[29]上記の方法[21]〜[28]のいずれかにおいて、前記イオン化は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)、表面増強レーザー脱離/イオン化(SELDI)、ナノスプレーイオン化、大気圧化学的イオン化(APCI)、化学的イオン化(CI)、電子衝撃(EI)、高速原子衝撃(FAB)、電界脱離/電界イオン化(FD/FI)及びサーモスプレーイオン化(TSP)からなる群から選択することができる。
【0037】
[30]上記の方法[20]〜[29]のいずれかにおいて、前記分析する工程はタンデム質量分析法によって行うことができる。
【0038】
[31]上記の方法[30]において、前記タンデム質量分析法では、四重極飛行時間型配置が使用され得る。
【0039】
[32]少なくとも1つの候補を、臨床試験、実験及び/又は診断検査のために選択する方法であって、
(a)少なくとも1つの対象からの少なくとも1つのサンプルを提供すること;
(b)PA2G4遺伝子及び/又はその変異、あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を測定すること;及び
(c)前記PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異、並びに/あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を、少なくとも1つのコントロールのものと比較することを含み、発現における違いにより、前記対象が候補として好適であることが示されるものである方法もまた提供される。
【0040】
[33]上記の方法[32]において、前記コントロールは、細胞増殖異常と診断されていない少なくとも1つの対象であり得る。
【0041】
[34]上記の方法[32]又は[33]において、具体的には、前記コントロールは、細胞増殖異常と診断されていない1つの対象である場合がある。
前記コントロールはまた、PA2G4遺伝子及び/又はPA2G4タンパク質の低いレベル又は低下したレベルの発現を有する少なくとも1つの対象である場合がある。前記コントロールはまた、選択された集団から得られる発現における平均値である場合がある。
【0042】
[35]上記の方法[1]〜[34]のいずれかにおいて、前記細胞増殖異常はがんであり得る。
【0043】
[36]上記の方法[1]〜[34]のいずれかにおいて、具体的には、前記細胞増殖異常は乳がんであり得る。
【0044】
[37]上記の方法[1]〜[36]のいずれかにおいて、前記対象は哺乳動物である場合がある。
【0045】
[38]上記の方法[1]〜方法[36]のいずれかにおいて、具体的には、前記対象はヒトである場合がある。
【0046】
[39]対象における細胞増殖異常の診断及び/又は予後評価のための診断キット及び/又は予後キットであって、PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異にハイブリダイゼーション可能な少なくとも1つの分子、並びに/あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントに結合する少なくとも1つの分子を含む診断キット及び/又は予後キットもまた提供される。
前記分子は、前記PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異にハイブリダイゼーション可能な核酸配列であり得る。
【0047】
[40]上記の方法[39]において、前記分子は、前記PA2G4遺伝子の転写物にハイブリダイゼーション可能なsiRNAであり得る。
【0048】
[41]上記の方法[39]において、前記分子は、前記PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントに結合するタンパク質であり得る。
【0049】
[42]上記の方法[39]又は[41]において、前記分子は、前記PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントに結合する抗体であり得る。
前記キットはさらに、疾患状態又は処置条件の診断及び/又は予後評価などの目的ための化合物の使用に関連するパッケージング及び情報を含むことができる。
前記細胞増殖異常はがんである場合がある。具体的には、前記細胞増殖異常は乳がんである場合がある。前記対象は哺乳動物である場合があり、具体的にはヒトである場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】(A)2−ニトロベンゼンスルフェニルクロリド(NBS)によるトリプトファン残基の修飾。12C(軽)又は13C(重)のいずれかを表す。(B)NBS/2DE/MSによるタンパク質同定/定量法の概略図。本研究では、切り出しのためのスポットの選択が、従来の2DEゲルを使用する先行技術での分析に基づいた(詳細については結果を参照のこと)。しかしながら、より包括的なプロテオーム研究が要求されるならば、NBSゲル上の認められ得るスポットのすべてをその後の分析のために切り出すこともまた明らかに実行可能である。
【図2】(A)ニワトリのオバルブミンのトリプシン消化ペプチドのMALDI−TOFスペクトル。2対のNBS標識ペプチド(m/z 1734.7/1740.7及びm/z 2012.0/1218.0)が強調表示される。(B)NBS標識ペプチド対(m/z 1734.7/1740.7)のマススペクトル、これは、標識されたタンパク質の量と、得られたMALDI−TOF MSスペクトルとの間における一貫性を示す。
【図3】(A)タンパク質ケラチン−18(K1C18_HUMAN)由来のNBS標識ペプチド対(m/z 1135.5/1141.5)を、CHCA/DHBマトリックスを使用してMALDI−TOF MSによって取得した。(B)同じペプチド対を、HNBAマトリックス及びCHCA/DHBマトリックスの組合せを使用して分析した。比較を容易にするために、全範囲スペクトル(上段パネル)のスケールを100mVに設定し、一方、拡大スペクトル(下段パネル)のスケールを10mVに設定した。右側の図は、CHCA/DHBとの組合せでのHNBAがNBS標識ペプチドのイオン化を非常に高めたことを示す。
【図4】切り出され、MS分析によって特定されたNBS標識タンパク質スポットの2DEマップ。48個のタンパク質スポットが、2DE分析によって解析されるような示差的な蛍光染色強度を有する88個のスポットからペプチドマスフィンガープリンティングによって確実に特定された。それらの中で、44個のタンパク質スポットがNBS標識ペプチド対とともに検出され、これらを、13C/12Cのペプチド体積比を計算することによって定量した。
【図5】NBS/2DE/MS法及び2DE法による相対的タンパク質定量化の相関(TAM処理されたMCF−7細胞と、ビヒクル処理されたMCF−7細胞との比率)。44個の示差的に発現するタンパク質の中では、これら2つの方法により見積もられた比率の間での相関係数は0.51であった。このことは、統計学的に有意な相関がこれら2つのタンパク質定量方法の間にあることを示す。スポット14及びスポット21がさらなる一致研究のために強調表示される(図6及び図7を参照のこと)。
【図6】スポット14(ジスルフィドイソメラーゼER−60)が、NBS/2DE/MS定量と、2DE定量との間における良好な一致を有する。このスポットに対するPDQuestの3D画像分析では、明確な1つだけの画像ピークが明らかにされる。対照的に、スポット21(CK19)は、NBS/2DE/MS定量と、2DE定量化の間に良い一致はない。3D画像分析では、少なくとも2つの画像ピークがこのタンパク質スポットにおいて検出されることが示され、このことはタンパク質の同時移動を示している。
【図7】スポット21(CK19)のトリプシン消化ペプチドのマススペクトル。一致するペプチド(m/z 1222.75)及び一致しないペプチド(m/z 1419.85)のペプチド配列決定マススペクトルがそれらのy−イオンとともに示される。1222.75の一致するペプチド(TKFETEQALR)(配列番号56)はCK19由来であることが見出され、一方、m/z 1419.85の一致しないペプチド(LEGLTDEINFLR)(配列番号57)はCK8由来であった。
【図8】等電点が異なる熱ショック60kDaタンパク質(CH60_HUMAN)の2つのイソ型(スポット7及びスポット8)。(A)NBS標識化による定量化に基づくと、このタンパク質はスポット8に関してはアップレギュレーションされ、しかし、スポット7に関してはダウンレギュレーションされた。(B)2DEスポットの蛍光標識化の比率はNBS標識化比率と一致していた。
【図9】NBS/2DE/MSプラットフォームの技術的再現性。2重に標識された、MCF−7細胞の同じ生物学的バッチに由来する40個のタンパク質スポットの量的倍数変化を比較した。これらのスポットの95%を考慮したとき、線形回帰はy=0.8884x+0.1452で、R2=0.71であった。これらのスポットの100%を考慮したとき、線形回帰はy=0.7751x+0.201で、R2=0.64であった。
【図10】免疫ブロッティングによるNBS定量化のバリデーション。TAM処理時に変化することが見出された2つの代表的なタンパク質(GRP78及びCK19)を、タンパク質特異的抗体による免疫ブロッティングによってそれらの有効性について確認した。(A)GRP78は、TAM処理されたMCF−7細胞においてアップレギュレーションされる。(B)(上段)TMA処理後の24時間及び48時間でのPA2G4タンパク質のダウンレギュレーションを明らかにする免疫ブロット。β−アクチン抗体によるブロットは、総細胞ライセートが等しくロードされていることのために示される。(下段)オリゴdTをプライマーとしたcDNAからのPA2G4転写物及びβ−アクチン転写物のRT−PCR増幅では、TAM処理時のPA2G4 mRNAの相対的なダウンレギュレーションが示される。
【図11】TMA(A)又はビヒクル(B)により48時間処理されたMCF−7細胞の2DE画像、及び、NBS標識され混合されたTAM処理細胞又はビヒクル処理細胞の2DE画像(C)。画像のすべてが、非常に類似するタンパク質パターンを示す。定性的及び定量的な画像分析の結果が図12に示される。
【図12】TAM処理又はビヒクル処理(非処理)のMCF−7細胞の2DE画像を比較するPDQuest画像分析結果。三連のゲルをそれぞれの処理について泳動した。(A)ゲルの2組についての一致率は約340個の視認されたゲルスポットにおいて約85%〜95%であった;(B)定性的レベル及び定量的レベルでの示差的に呈示されたタンパク質スポットの数。
【図13】(A)正常な組織に対するPA2G4についてのIHC染色の観測結果(挿入図は正常な組織の拡大図である)、及び、(B)腫瘍組織に対するPA2G4についてのIHC染色の観測結果(挿入図は腫瘍組織の拡大図である)。
【図14】PA2G4の局在化を示すための、分画されたタンパク質抽出物(すなわち、細胞質のタンパク質抽出物(i)、膜/オルガネラのタンパク質抽出物(ii)、及び、核のタンパク質抽出物(iii))に対するウエスタンブロッティング。
【図15】PA2G4のバリデーション:(A)抗アクチンを参照として使用する、がんサンプル及び正常なサンプルにおけるPA2G4に対するウエスタンブロッティング、(B)(A)において見出されたがんサンプル及び正常なサンプルでのPA2G4のバンドの吸光度ユニットでのそれぞれの積分値。(A)及び(B)の両方において、ER+はがんサンプルを表し、TNTは正常なサンプルを表す。(B)において、縦軸はバンドの吸光度ユニットでの積分値を表す。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本明細書において言及される参照文献は、便宜上、文献のリストの形態で列挙され、実施例の最後に加えられる。そのような参照文献の内容全体は参考として本明細書中に組み込まれる。
【0052】
定義
生物学的材料−生物学的ソースに由来する任意の材料。当該材料は、生体分子、細胞、組織及び/又は体液を含むことができる。当該材料は、細胞培養、動物対象、哺乳動物対象又はヒト対象から得ることができる。
【0053】
生体分子−生物学的分子、例えば、タンパク質酸、核酸(DNA及び/又はRNA)、脂質、炭水化物及びそれらの誘導体など。
【0054】
バイオマーカー−バイオマーカーは、特定の疾患状態の存在及び重篤度、又は、異なる処置条件に関連する生化学的分子又は分子的分子(タンパク質、ポリペプチド、炭水化物、脂質など及びそれらの誘導体)である。本発明のもとでは、タンパク質又はタンパク質誘導体をバイオマーカーとして使用することができる。バイオマーカーは様々な方法によって検出可能であり、また、測定可能である。バイオマーカーを特定するためには、通常、生物学的分子の発現又は存在量における違い又は変化を検出し、その特定の分子を特定することが必要である。
【0055】
バイオマーカーの発現又は存在量−バイオマーカーの発現を、その遺伝子、遺伝子転写物及び遺伝子産物の存在又は存在量から決定することができる。用語「遺伝子」及び用語「遺伝子転写物」には、遺伝子に対して相補的なRNA配列、及び、遺伝子転写物の逆転写によって得られるcDNA配列が含まれる。これらの用語にはまた、遺伝子及び遺伝子転写物の野生型遺伝子、バリエーション及び変異体が含まれ、この場合、そのようなバリエーション又は変異体は遺伝子又は遺伝子転写物との実質的な同一性を共有する。同様に、「遺伝子産物」には、野生型の遺伝子産物、そのバリエーション、フラグメント又は誘導体が含まれる。「実質的な同一性」は、遺伝子又は遺伝子産物のバリエーションが、野生型の遺伝子又は遺伝子産物について使用される方法及びプローブによってそれらが検出可能であるための十分な同一性を保持し、かつ、野生型の遺伝子又は遺伝子産物と同じ機能を保持することを意味する。決定は、例えば、バイオマーカーが発現しているかどうかなどのように定性的であり得るか、あるいは、決定は定量的であり得るか、あるいは、決定は、当分野で知られている任意の方法、例えば、マイクロアレイ技術又はポリメラーゼ連鎖反応などによって半定量的であり得る。非疾患状態での正常なレベルからの逸脱(増大又は低下)は、疾患状態、又は、疾患状態に対する素因を示すことができる。例えば、タンパク質の過剰発現又は増大した存在量により、疾患状態、疾患状態の重篤度、従って、バイオマーカーが測定された対象についての予後が示されることがあり、及び/又は、タンパク質の過剰発現又は増大した存在量は疾患状態に対する感受性の指標であるかもしれない。発現及び存在量における違いを、異なるバイオマーカーの間で、又は、異なる条件もしくは時点のもとでの同じバイオマーカーの間で決定することができる。バイオマーカーの発現は、その後、疾患状態の存在、重篤度との相関を決定するために、又は、処置の効力を決定するために、又は、対象についての疾患結果の予後を決定するために、参照値、又は、異なる時点もしくは異なるバイオマーカーの間で得られる他の値と比較することができ、また、そのような値と相関させることができる。参照値は、統計学的に有意な数の罹患又は非罹患の対象から求めることができる。バイオマーカーの発現はまた、より高レベルの信頼を得るために、他の好適な診断用又は予後用のマーカー、バイオマーカー又は指標と併せて使用することができる。バイオマーカーが、コントロールと比較されたときに「過剰発現する」と言われるときには、そのバイオマーカーの発現が、疾患段階又は疾患状態と診断されていない少なくとも1つの野生型又は非変異型のコントロール対象によって自然の状態で発現される存在量又はレベルよりも統計学的に著しく大きい存在量又はレベルにあることが意味される。同様に、バイオマーカーが、「過小発現する」と言われるときには、そのバイオマーカーの発現は、疾患段階又は疾患状態と診断されていない少なくとも1つの野生型又は非変異型のコントロール対象によって自然の状態で発現されるバイオマーカーの発現よりも統計学的に著しく少ない。この定義のもとでは、そのバイオマーカーが遺伝的に不足している対象は、そのバイオマーカーを過小発現していると言うことはできない。同様に、そのバイオマーカーを発現するようにそのバイオマーカーの遺伝子をトランスフェクトされたとき、そのような不足している対象は、そのバイオマーカーが元々不足していたので、そのバイオマーカーを過剰発現していると言うことはできない。
【0056】
コントロール−試験で得られた値が比較され得る参照用の対象、実験又は値。コントロール値又はコントロール範囲は通常、「正常な」状態を表し、その結果、コントロール値又はコントロール範囲の統計学的な違い又は偏差により、異常な状態又は疾患段階が表される。参照として使用するためのコントロールの対象、実験又は値をどのように選択及び/又は取得するかは、当業者が知るところである。
【0057】
対象又は候補を選択する−対象又は候補が、臨床試験、実験、診断検査及び/又は他の検査のための好適であることを、対象又は候補の少なくとも1つの特徴を測定することによって決定すること。そのような特徴を表す値は、その後、参照用又はコントロールの値又は値の範囲と比較され、結果が、対象又は候補が、臨床試験、実験、診断検査及び/又は他の検査のために好適であるかを決定するために使用される。対象又は候補を、特定の処置に対するその従順性、あるいは、特定の攻撃又は疾患に対するその感受性に基づいてどのように選択するかは、当業者が知るところである。
【0058】
細胞増殖異常−細胞の異常な成長が存在する状態。
【0059】
がん−身体の他の部分に拡大し得る、身体の一部分における細胞の悪性かつ制御されない成長。
【0060】
核酸−「核酸」は、3’,5’ホスホジエステル結合によって連結されるヌクレオチドの直鎖状ポリマーである。DNA(デオキシリボ核酸)では、糖基がデオキシリボースであり、ヌクレオチドの塩基が、アデニン、グアニン、チミン及びシトシンである。RNA又はリボ核酸はリボースを糖として有し、チミンがウラシルに置き換わる。「単離された核酸」は、その構造が、天然に存在するいかなる核酸の構造、又は、天然に存在するゲノム核酸のいかなるフラグメントの構造とも異なる核酸である。従って、この用語は、例えば、(a)天然に存在するゲノムDNA分子の一部の配列を有するが、そのゲノムDNA分子が天然に存在する生物のゲノムにおける分子の一部に隣接するコード配列の両方に隣接しないDNA;(b)得られる分子が、天然に存在するいかなるベクター又はゲノムDNAとも異なるようにで、ベクター、あるいは、原核生物又は真核生物のゲノムDNAに組み込まれた核酸;(c)cDNA、ゲノムフラグメント、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって作製されるフラグメント、又は、制限フラグメントなどのような独立した分子;及び(d)ハイブリッド遺伝子(すなわち、融合タンパク質をコードする遺伝子)の一部である組換えヌクレオチド配列を包含する。本発明はまた、例えば、対象におけるヒトPA2G4遺伝子の検出のために、又は、細胞増殖関連異常を処置するための治療用化合物のスクリーニングのために使用することができる、配列番号1に対する少なくとも50%(50%〜100%の間での任意の百分率、例えば、85%、95%又は100%を含む)の同一性を有する単離された核酸を特徴とする。
【0061】
遺伝子産物−本発明のもとでは、遺伝子産物はタンパク質以外の遺伝子産物を示す。遺伝子産物は、特定の遺伝子によってコードされる遺伝子転写物とは異なる、生物学的機能を有する所定の長さのRNAである場合がある。
【0062】
遺伝子転写物−遺伝子によってコードされるメッセンジャーRNA配列。
【0063】
タンパク質−特定の遺伝子によってコードされる、特定の順序でのアミノ酸の1つ又は複数の鎖から構成される生物学的分子。そのようなものとして、遺伝子におけるいかなる変異は、発現する変異タンパク質に反映される場合がある。本発明のもとでは、非変異タンパク質の実質的に同じ生物学的な機能及び活性を有する変異タンパク質は、非変異タンパク質と同じであると見なされる。タンパク質は、イソ型などの誘導体を有する場合がある。タンパク質のイソ型は、いくつかの小さい違いを有するタンパク質の異形であり、通常の場合には、スプライスヴァリアント又は何らかの翻訳後修飾の産物である。本発明のもとでは、タンパク質はまた、タンパク質が、使用される方法によって検出、特定及び/又は定量されるほどに十分に大きいフラグメントを包含する。タンパク質複合体は異なるタンパク質の混合物である。
【0064】
プロテオーム−特定の時期及び特定の条件のもとで細胞又は器官によって発現されるタンパク質の集合体。従って、プロテオーム分析は、ゲノムによってコードされる完全な一組のタンパク質の研究である。
【0065】
百分率同一性−2つの核酸配列の「パーセント同一性」が、Karlin及びAltschul(1993)におけるように修正された、Karlin及びAltschul(1990)のアルゴリズムを使用して決定される。そのようなアルゴリズムがAltschul他(1990)のXBLASTプログラムに組み込まれる。BLAST核酸検索がXBLASTプログラムにより行われる。ギャップが2つの配列の間で存在する場合、Gapped BLASTが、Altschulら(1997)に記載されるように利用される。BLASTプログラム及びGapped BLASTプログラムを利用するとき、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST)の初期設定パラメーターが使用される。ワールドワイドウエブアドレス(http://ncbi.nih.gov)を参照のこと。他の配列(例えば、タンパク質配列など)の百分率同一性を同様に決定することができる。
【0066】
抗体−特定の抗原分子に結合する、免疫系のBリンパ球によって産生される免疫グロブリンタンパク質。この用語には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、並びに、それらのフラグメント(例えば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント及びFvフラグメントなど)が含まれる。
【0067】
薬物−任意の疾患又は病理学的段階又は病理学的状態の処置(改善、軽減又は治療)のために使用される任意の化合物。
【0068】
スクリーニングする−任意の疾患又は病理学的状態において効果を有する化合物を選び出すこと。スクリーニングでは、化合物によってその発現が影響される任意の生体分子(例えば、タンパク質など)を検出すること、特定すること、及び/又は定量することを伴う場合がある。
【0069】
処置する−細胞増殖関連異常を有する対象に、その異常、その異常の症状、その異常の二次的な疾患状態、又は、その異常の素因を治療、緩和、軽減、修復、防止又は改善する目的で化合物又は薬物を投与すること。「効果的な量」は、処置された対象において医学的に望ましい結果(例えば、上記で記載されたような結果)をもたらすことができる組成物の量である。このような方法は単独で行うことができ、あるいは、他の薬物又は治療法との併用で行うことができる。処置するには、バイオマーカーを非疾患状態において見出されるレベルに低下させることが含まれる。
【0070】
ハイブリダイゼーションする、ハイブリダイゼーション可能な−生体分子(例えば、核酸の配列など)は、十分なひと続きの相補的なヌクレオチドが両者の間に存在するならば、核酸の別の配列にハイブリダイゼーションすることができる。ペプチド又はタンパク質については、1つのタンパク質(例えば、抗体又はそのフラグメントなど)が、別のタンパク質に、十分な相補的な構造がこれら2つの生体分子の間に存在するならば、ハイブリダイゼーションすることができる。
【0071】
診断する、診断−疾患を診断することは、疾患の性質又は正体を決定することである。診断には、疾患の重篤度に関する決定が付随する場合がある。
【0072】
予後判定する、予後−予後判定することは、疾患の結果又は予後を予測することであり、例えば、臨床検査の観察及び結果に基づいて生存の可能性を伝えることなどである。
【0073】
素因−特定の疾患と診断される可能性、又は、特定の疾患に対する感受性。
【0074】
血液派生物−血液は細胞成分及び液体成分から構成される。血液派生物は、全血以外の血液成分の1つ又は複数のいずれかである。
【0075】
本発明は上記の問題を検討し、細胞増殖異常(例えば、がんなど)を検出及び/又は処置する方法を提供する。一般に、当該異常はがんであり、具体的には乳がんである。
【0076】
1つの局面において、本発明は、対象における細胞増殖異常の存在、素因、及び/又は、重篤度を検出及び/又は定量化する方法であって、
(a)対象からの少なくとも1つのサンプルを用意すること;
(b)PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異、並びに/あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を測定すること;及び
(c)PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異、並びに/あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を、少なくとも1つのコントロールのものと比較することを含み、発現における違いにより、前記対象における細胞増殖異常の存在、又は、素因、及び/又は、重篤度が示されるものである方法を提供する。
【0077】
対象における細胞増殖異常のための処置の効力をモニターする方法であって、
(a)対象からの少なくとも2つのサンプルであって、それぞれのサンプルが異なる時点で得られるサンプルを用意すること;
(b)PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異、あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を測定すること;及び
(c)少なくとも2つのサンプルにおけるPA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異、並びに/あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を比較することを含む方法もまた提供される。
【0078】
対象における細胞増殖異常の結果を予後判定する方法であって、
(a)対象からの少なくとも1つのサンプルを用意すること;
(b)PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異、並びに/あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を測定すること;及び
(c)PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異、並びに/あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を、少なくとも1つのコントロールのものと比較することを含み、発現における違いにより、前記対象における細胞増殖異常の予後が示されるものである方法もまた提供される。
【0079】
前記コントロールは、例えば、細胞増殖異常と診断されていない少なくとも1つの対象である。また、前記コントロールは、PA2G4遺伝子及び/又はPA2G4タンパク質の低いレベルの発現を有する対象である場合がある。前記コントロールはまた、選択された集団から得られる発現における平均値である場合がある。
【0080】
前記遺伝子、そのRNA及び/又は変異は、ヒトPA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異である場合があり、前記PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントは、ヒトPA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントである場合がある。
【0081】
前記検出は、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントを少なくとも1つのスルフェニルハライド試薬により標識し、その後、2次元ゲル電気泳動及び質量分析法によって行うことができる。
【0082】
対象における細胞増殖異常を処置する方法であって、PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異の発現を変化させることを含む方法もまた提供される。
【0083】
前記PA2G4遺伝子は、配列番号1に示される配列を有し得る。変前記変化させることは、前記PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異の全体又は一部にハイブリダイゼーション可能な核酸を投与することによって得ることができる。ハ前記ハイブリダイゼーション可能な核酸はDNA又はRNAであり得る。具体的には、前記ハイブリダイゼーション可能な核酸はsiRNAであり得る。前記変化させることは、前記PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異の全体又は一部にハイブリダイゼーション可能な化合物を投与することによって得ることができる。
【0084】
対象における細胞増殖異常を処置する方法であって、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を変化させることを含む方法
もまた提供される。
【0085】
この方法は、配列番号2のアミノ酸配列を有するPA2G4タンパク質の発現を変化させることを含むことができる。前記変化させることは、前記PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントのアミノ酸配列の全体又は一部に結合するポリペプチドを投与することによって得ることができる。前記結合するポリペプチドは抗体であり得る。前記変化させることは、前記PA2G4タンパク質のアミノ酸配列の全体又は一部にハイブリダイゼーション可能な化合物を投与することによって得ることができる。
【0086】
前記発現を変化させることは、前記PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異、並びに/あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を低下させることを含むことができる。
【0087】
少なくとも1つのタンパク質及び/又はそのフラグメントの発現における変動を引き起こす少なくとも1つの薬物についてスクリーニングする方法であって、少なくとも1つの薬物を少なくとも1つの対象に投与すること;少なくとも1つのタンパク質を前記対象から得ること;前記タンパク質の少なくとも1つのアミノ酸残基を少なくとも1つの試薬により標識すること;及び前記タンパク質を質量分析法によって分析し、それにより、前記少なくとも1つのタンパク質及び/又はそのフラグメントを特定し、発現の変動が生じているかどうかを明らかにすることを含む方法もまた提供される。
【0088】
前記分析する工程は、前記タンパク質を第1の特徴に基づいて分離し、場合により前記タンパク質を第2の特徴に基づいて分離し、前記タンパク質をイオン化し、前記分離されたタンパク質を検出及び特定することを含むことができる。前記タンパク質及び/又はそのフラグメントはPA2G4タンパク質及び/又はそのフラグメントであり得る。前記PA2G4タンパク質は配列番号2の配列を有する。前記試薬はスルフェニルハライドであり得る。具体的には、前記試薬は2−ニトロベンゼンスルフェニルクロリド(NBS)であり得る。前記アミノ酸残基はトリプトファンであり得る。
【0089】
前記分離する工程は、質量、電荷、官能基及び等電点からなる群から選択される少なくとも1つの特徴に基づくことができる。前記分離する工程は、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)、二次元ゲル電気泳動(2DE)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び/又はフリーフロー電気泳動(FFE)のための工程であり得る。前記イオン化は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)、表面増強レーザー脱離/イオン化(SELDI)、ナノスプレーイオン化、大気圧化学的イオン化(APCI)、化学的イオン化(CI)、電子衝撃(EI)、高速原子衝撃(FAB)、電界脱離/電界イオン化(FD/FI)及びサーモスプレーイオン化(TSP)からなる群から選択することができる。前記分析する工程はタンデム質量分析法によって行うことができる。前記タンデム質量分析法では、四重極飛行時間型配置が使用され得る。
【0090】
少なくとも1つの候補を、臨床試験、実験及び/又は診断検査のために選択する方法であって、
(a)少なくとも1つの対象からの少なくとも1つのサンプルを提供すること;
(b)前記PA2G4遺伝子及び/又はその変異、あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を測定すること;及び
(c)前記PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異、並びに/あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を、少なくとも1つのコントロールのものと比較することを含み、発現における違いにより、前記対象が候補として好適であることが示されるものである方法もまた提供される。
【0091】
対象における細胞増殖異常の診断及び/又は予後評価のための診断キット及び/又は予後キットであって、PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異にハイブリダイゼーション可能な少なくとも1つの分子、並びに/あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントに結合する少なくとも1つの分子を含む診断キット及び/又は予後キットもまた提供される。
【0092】
前記分子は、前記PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異にハイブリダイゼーション可能な核酸配列であり得る。前記分子は、前記PA2G4遺伝子の転写物にハイブリダイゼーション可能なsiRNAであり得る。前記分子は、前記PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントに結合するタンパク質であり得る。前記分子は、前記PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントに結合する抗体であり得る。
【0093】
前記細胞増殖異常はがんである場合がある。具体的には、前記細胞増殖異常は乳がんである場合がある。前記対象は哺乳動物である場合があり、具体的にはヒトである場合がある。
【0094】
本出願は、遺伝子、その遺伝子転写物、RNA遺伝子産物及び/又はその変異、並びに/あるいは、タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの、乳がんを診断するための新規な使用、予後を決定するための新規な使用、及び、乳がんについての処置の効力をモニターするための新規な使用を記載する。質量分析法(MS)の使用によって、本出願人は、増殖関連遺伝子2G4(PA2G4)遺伝子がこれらの目的のためのバイオマーカーとして好適であるという驚くべき発見を行った。
【0095】
質量分析法(MS)は、分子を分析するために使用することができる。MSシステムでは、目的とする分子がイオン化され、そのm/z比に基づいて分析計において分離され、その後、検出器によって検出される。結果をm/zのスペクトルの形態で表示することができる。MSシステムは通常、データを分析するためのデータ分析サブシステムを含む。
【0096】
分子のイオン化を多くの方法によって達成することができ、それらには、大気圧化学的イオン化(APCI)、サーモスプレーイオン化(TSP)、化学的イオン化(CI)、電子衝撃(EI)、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、高速原子衝撃(FAB)、電界脱離/電界イオン化(FD/FI)、表面増強レーザー脱離/イオン化(SELDI)及びマトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)が含まれる。
【0097】
分析計では、イオンを分析するための種々の原理又は配置を利用することができ、これらには、四重極、磁気セクター、並びに、フーリエ変換、四重極イオントラップ及び飛行時間(TOF)型配置の両方が含まれる。2つ以上の分析計をタンデムに配置することができる。一般に使用されるタンデム型配置には、四重極−四重極型、磁気セクター−四重極型及び四重極−飛行時間型の配置が含まれる。
【0098】
MSにおいて、当業者は、目的とする生体分子(例えば、タンパク質など)を最もよく調べるために、種々のイオン化方法、分析方法及び検出方法を選択することができる。
【0099】
出願人らは、2−ニトロベンゼンスルフェニルクロリド(NBS)標識化技術(Kuyama他、2003)を定量的プロテオーム分析のために2DE及びMSとの組合せで使用した(NBS/2DE/MS)。NBS標識化においては、軽いNBS成分及び重いNBS成分をトリプトファン残基に結合すること、これにより、6Daの質量差を、軽いNBS標識されたトリプトファンペプチドと、重いNBS標識されたトリプトファンペプチドとの間で生じさせることが行なわれる。
【0100】
タモキシフェン(TAM)処理により誘導されるMCF−7乳がん細胞におけるプロテオーム変化を調べるためのNBS/2DE/MS法。TAMは、エストロゲン受容体陽性(ER+)乳がんについての最初に選ばれるホルモン処置であるが、以前の報告では、TAM処理に関連する乳がん患者及びセルラインにおけるmRNA遺伝子発現パターンが記載されている(Saji他、2005;Zhang他、1999)。NBS/2DE/MSを使用して、本発明者らは、TAM処理されたMCF−7細胞と、コントロールのMCF−7細胞との間で量的に変化した88個のタンパク質スポットを選択し、そのうちの44個をNBS標識化によって首尾良く特定及び定量化することができた。3つのタンパク質(CK19、GRP78及びPA2G4)はまた、ウエスタンブロッティングによってMCF−7細胞における正真正銘のTAM応答性タンパク質として有効であることが確認され、また、原発性乳がんでは、PA2G4の発現が、2つの独立した患者コホートにおいて新規な予後因子として挙動することがさらに示された。
【0101】
調べられたタンパク質の中で、増殖関連2G4(PA2G4)は、乳がんについてのバイオマーカーとしての使用のための非常に良好な潜在的可能性を有する。この遺伝子配列が配列番号1として示され、遺伝子産物(タンパク質)の配列が配列番号2に示される。
【0102】
PA2G4(Ebp−1)は、増殖中の細胞の細胞周期活性を維持する細胞周期調節タンパク質又は複製タンパク質の大きなファミリーに属する。PA2G4(Ebp−1)は、細胞複製の制御に関与する核のDNA結合タンパク質をおそらくはコードする増殖依存的な遺伝子であるようである。PA2G4/Ebp−1は、ヒトのErbB受容体陽性の乳がん細胞及び前立腺がん細胞の分化に関係することが示されており、また、抗増殖作用を網膜芽細胞腫(Rb)の腫瘍抑制タンパク質とのその相互作用によって誘導することができる(Rao他、2002)。このタンパク質は哺乳動物及びヒトの両方で見出される。
【0103】
E2の分裂促進作用は、主として、重要な細胞周期調節遺伝子の発現を増大させるその能力に起因すると考えられている。古典的なE2応答性のヒトモデルを使用するE2の作用の包括的な遺伝子発現分析、及び、E2により標的化されたいくつかの遺伝子の特定が報告された。PA2G4が、E2処理の3時間後でさえ、MCF−7において過剰発現することが見出された。この研究では、ER+及びER−の様々な乳がんセルラインが使用された(Pompeia他、2004)。
【0104】
2つの他のタンパク質(CK19及びGRP78)が、MCF−7細胞における正真正銘のTAM応答性タンパク質として有効であることが確認された。
【0105】
複雑なタンパク質混合物における薬物応答性バイオマーカーの特定は定量的プロテオミクスの重要な目標の1つである。一般には、我々は、試薬によるタンパク質の標識化及びその後のタンパク質の分離及び質量分析法による分析を組み合わせる、そのような薬物誘導されたタンパク質変化を特定するための新規の方法を開発した。具体的には、一例として、本発明者らは、2−ニトロベンゼンスルフェニルクロリド(NBS)によるトリプトファン標識化を二次元ゲル電気泳動(2DE)/質量分析法(MS)とともに使用した。薬物処理されたサンプル及びコントロールのサンプルに由来する溶解物が、軽いNBS残基及び重いNBS残基により標識され、その後、一般的な2DEゲルで分離される。本発明の方法のもとでは、目的とするタンパク質が、MSによる分析の前に、2DE工程によって分離及び単離される。タンパク質変化が、NBSペプチドピーク対の示差的強度より、MSによって特定される。
【0106】
NBS/2DE/MSを使用して、我々は、エストロゲン受容体(ER)陽性のMCF−7乳がんセルラインにおけるタモキシフェン(TAM)により誘導されるプロテオーム変化のプロファイリングを行った。TAM処理時に著しく変化した88個のタンパク質スポットのうち、23個の別個のタンパク質種を表す44個のスポットがNBS対形成ペプチドとともに首尾良く特定された。これら23個のTAM変化タンパク質のうち、16個(70%)はこれまで、TAM又はER活性に関連していなかった。我々は、NBS標識化手法が技術的及び生化学的の両方で再現性を有することを見出した。NBS/2DE/MSでの変化は、2DEによる従来の示差的タンパク質定量化との良好な一致を示したが、別個のタンパク質が通常の2DEゲルにおいて同時に移動することに主として起因する不一致があった。NBS/2DE/MSの結果が妥当であることを確認するために、本発明者らは免疫ブロッティングを使用して、GRP78、CK19及びPA2G4を正真正銘のTAM調節のタンパク質として確認した。また、2つの独立した乳がん患者コホートにおいて、我々は、PA2G4の発現が無病生存についての新規な予後因子として役立ち得ることを明らかにする。
【0107】
PA2G4が乳がんについての信頼できるバイオマーカーとして特定されたので、その遺伝子、遺伝子転写物、RNA遺伝子産物、遺伝子誘導体、遺伝子変異、タンパク質、タンパク質誘導体、タンパク質変異体及びタンパク質フラグメントをこの目的のためにそれに従って使用することができる。当分野で知られている任意の方法を、PA2G4の存在を定性的に検出するために、又は、PA2G4の存在を定量的に測定するために使用することができる。
【0108】
遺伝子発現
本発明の核酸は、当分野で知られている方法による好適な宿主細胞へのDNA移入によってインビトロで発現させることができる。例えば、核酸を組換え発現ベクターに挿入することができる。様々な宿主−発現ベクターシステムを、本発明の核酸を発現させるために利用することができる。これらには、微生物(例えば、組換えバクテリオファージDNA、組換えプラスミドDNA又は組換えコスミドDNAの発現ベクターにより形質転換された細菌;組換え酵母発現ベクターにより形質転換された酵母など)、及び、組換えウイルス発現ベクター又は組換えプラスミド発現ベクターを感染させたヒトセルラインが含まれるが、これらに限定されない。組換えポリペプチド又はそのフラグメントの単離及び精製は従来の手段によって行うことができ、そのような方法には、調製用クロマトグラフィー、及び、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を伴う免疫学的分離が含まれる。
【0109】
本発明はまた、細胞増殖関連異常についての予後判断、診断、処置を行なうための方法、及び、細胞増殖関連異常を処置するための治療用化合物を特定するための方法を特徴とする。
【0110】
本発明の予後判断方法は、患者由来のサンプルにおけるバイオマーカーの発現を、疾患結果がわかっている1名又は複数の患者から得られる参照値、あるいは、良性又は悪性がわかっている組織又は細胞から得られる参照値と比較することを伴う。その後、これらの患者の予後を判断することが可能である。
【0111】
本発明の診断方法は、対象(すなわち、動物又はヒト)から調製されたサンプルにおける、PA2G4、GRP78及びCK19のゲノムDNAレベルの1つ又は複数を、正常な対象(すなわち、細胞増殖関連異常に罹患していないか、又は、細胞増殖関連異常を発症する危険性がない対象)から調製されたサンプルにおけるものと比較することを伴う。
【0112】
予後方法及び診断方法の両方について、PA2G4のより高いゲノムDNAレベルにより、対象が細胞増殖関連異常に罹患しているか、又は、細胞増殖関連異常を発症する危険性があることが示される。これらの方法は単独で使用することができ、又は、適切な対象において細胞増殖関連異常を診断するための他の手法、及び、疾患の結果に関しての予後を提供するための他の手法との併用で使用することができる。
【0113】
遺伝子座の増幅は、当分野で知られている様々な方法によって検出することができる。例えば、遺伝子座のコピー数を、検査サンプル及びコントロールサンプルから調製されたゲノムDNAのPCR増幅によって決定及び比較することができる。遺伝子座の増幅はまた、サザンブロット分析によって特定することができる。中期の染色体展開物に対するDNA配列の蛍光インシチュウーハイブリダイゼーション(FISH)はさらに、染色体に存在するDNA配列の正確な染色体上の存在位置、及び、染色体に存在するDNA配列の量を提供するために使用することができる。
【0114】
本発明はまた、PA2G4のゲノムDNAレベルを低下させるか、あるいは、PA2G4又はPA2G4のmRNAもしくはタンパク質の発現を調節するか、あるいは、PA2G4又はPA2G4のmRNAもしくはタンパク質のレベルを低下させるか、あるいは、PA2G4を認識する他の分子とのPA2G4の相互作用のレベルを低下させる化合物(例えば、タンパク質、ペプチド、ペプチドミメティクス、ペプトイド、抗体又は小分子)を特定するための方法を提供する。得られる特定された化合物はその後、例えば、細胞増殖関連異常を防止及び処置するために使用することができる。
【0115】
本発明の候補化合物は、当分野で知られているコンビナトリアルライブラリー法における数多くの方法のいかなるものも使用して得ることができる。そのようなライブラリーには、ペプチドライブラリー、ペプトイドライブラリー(ペプチドの機能性を有するが、酵素分解に対して抵抗性である新規な非ペプチド骨格を有する分子のライブラリー);空間的に接近可能な並列固相ライブラリー又は液相ライブラリー;デコンボリューション又はアフィニティークロマトグラフィー分離によって得られる合成ライブラリー;及び「1ビーズ1化合物」ライブラリーが含まれる。例えば、Lam(1997)を参照のこと。
【0116】
分子ライブラリーを合成するための方法の様々な例が、当分野において、例えば、Gallop他(1994)において見出され得る。
【0117】
化合物のライブラリーは、溶液(例えば、Houghton、1992)、あるいは、ビーズ(Lam、1991)、チップ(Fodor、1993)、細菌(米国特許第5,223,409号)、胞子(米国特許第5,223,409号)、プラスミド(Cull他、1992)又はファージ(米国特許第5,223,409号)において提示することができる。
【0118】
ある系において、PA2G4のゲノムDNAレベルを低下させるか、又は、マーカーヌクレオチド配列の発現をPA2G4に関連するプロモーターの制御下で調節するか、又は、PA2G4のmRNAもしくはタンパク質のレベルを低下させるか、又は、PA2G4のレベルを低下させるか、又は、PA2G4のレベルを低下させる化合物を特定するために、当該系は候補化合物と接触させられ、PA2G4のゲノムDNAレベル、マーカーヌクレオチド配列の発現、PA2G4のmRNAもしくはタンパク質のレベル、PA2G4相互作用のレベルが、当該候補化合物の非存在下における場合に対して評価される。細胞系において、細胞は、増幅されたPA2G4のゲノムDNAを含有することができ(例えば、がん細胞)、自然の状態でPA2G4を発現することができ、例えば、異種のプロモーターに融合されたPA2G4遺伝子を有する組換え核酸を発現するように改変することができる。PA2G4のゲノムDNAのレベルが候補化合物によって変化するならば、すなわち、候補化合物の存在下ではその非存在下の場合よりも低いならば、又は、候補化合物の存在下でのマーカーヌクレオチド配列の発現が候補化合物の非存在下での発現と異なれば、その候補化合物は、細胞増殖関連異常を防止及び処置するために有用であるとして特定される。
【0119】
PA2G4、GRP78及びCK19のゲノムDNAレベルを、上記で記載された方法によって、また、当分野では広く知られているいかなるの他の方法によっても決定することができる。
【0120】
遺伝子産物の発現
マーカーヌクレオチド配列(PA2G4、GRP78及びCK19)の発現をmRNAレベル又はタンパク質レベルのいずれかで明らかにすることができる。組織サンプル又は体液サンプルにおけるmRNAレベルを測定する様々な方法が当分野では知られている。mRNAレベルを測定するために、細胞を溶解することができ、ライセートにおけるmRNAのレベル、あるいは、ライセートから精製又は半精製されたRNAにおけるmRNAのレベルを、様々な方法のいかなるものによっても決定することができ、そのような方法には、限定されないが、検出可能に標識されたDNAプローブ又はRNAプローブを使用するハイブリダイゼーションアッセイ、適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用する定量的又は半定量的なRT−PCR方法論が含まれる。あるいは、定量的又は半定量的なインシチュウーハイブリダイゼーションアッセイを、例えば、組織切片又は非溶解の細胞懸濁物、及び、検出可能(例えば、蛍光又は酵素)標識されたDNAプローブ又はRNAプローブを使用して行うことができる。mRNAを定量するためのさらなる方法には、RNA保護アッセイ(RPA)及び遺伝子発現の連続分析(SAGE)が含まれる。
【0121】
NBS/2DE/MSの方法が記載されているが、組織サンプル又は体液サンプルにおけるタンパク質レベルを測定する他の方法もまた当分野では知られている。多くのそのような方法では、標的タンパク質に特異的に結合する抗体(例えば、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体)が用いられる。そのようなアッセイにおいて、抗体自身、又は、抗体に結合する二次抗体を検出可能に標識することができる。あるいは、抗体をビオチンとコンジュゲート化した後、検出可能に標識されたアビジン(ポリペプチド)と結合することを、その存在を検出するために使用することができる。当業者が熟知しているこれらの方法の組合せ(「多層サンドイッチ」アッセイを含む)を、方法論の感度を高めるために使用することができる。これらのタンパク質測定アッセイのいくつか(例えば、ELISA又はウエスタンブロット)を細胞のライセートに適用することができ、他のタンパク質測定アッセイを組織学的切片又は非溶解の細胞懸濁物に適用することができる(例えば、免疫組織学的方法又は蛍光フローサイトメトリー)。
【0122】
標識の量を測定する方法は標識の性質に依存し、様々な方法が当分野では広く知られている。適切な標識には、限定されないが、放射性核種(例えば、125I、131I、35S、H又は32P)、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ又はβ−ガラクトシダーゼ)、蛍光成分又は蛍光タンパク質(例えば、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリン、GFP又はBFP)、あるいは、発光成分(例えば、Qdot(商標)ナノ粒子(Quantum Dot Corporation(Palo Alto、California)によって供給される))が含まれる。他の適用可能なアッセイには、定量的免疫沈殿アッセイ又は補体固定アッセイが含まれる。
【0123】
PA2G4のレベルは、当分野で知られている任意の方法によって、例えば、インビトロ結合アッセイによって、又は、酵母ハイブリッドシステムを使用することによって明らかにすることができる。PA2G4の結合ドメインを、例えば、変異誘発によって特定することができ、スクリーニングアッセイにおいて使用することができる。
【0124】
[処置]
本発明はさらに、細胞増殖関連異常を防止及び処置するための方法を提供する。処置される対象は、例えば、対象から調製されたサンプルにおけるPA2G4のゲノムDNA、DNA転写物又はDNA産物のレベルを、上記で記載された方法によって明らかにすることによって特定することができる。PA2G4のゲノムDNAレベルが、対象由来のサンプルにおいて、正常な対象に由来するサンプル(コントロール)におけるPA2G4のゲノムDNAレベルよりも高いならば、その対象は、PA2G4のゲノムDNA、DNA転写物又はDNA産物のレベルを低下させる化合物の効果的な量による処置についての候補である。
【0125】
インビボ方法において、治療用組成物(例えば、上記で記載されるように特定された化合物を含有する組成物)が対象に投与される。一般には、化合物は、医薬的に許容され得るキャリア(例えば、生理学的食塩水)に懸濁され、経口投与又は静脈内注入によって投与されるか、あるいは、皮下、筋肉内、クモ膜下、腹腔内、直腸内、膣内、鼻腔内、胃内、気管内又は肺内に注入又は埋め込まれる。がんの防止及び処置のために、化合物をがん組織に直接に送達することができる。
【0126】
必要される投薬量は、投与経路の選択;配合物の性質;対象の病気の性質;対象のサイズ、体重、表面積、年齢及び性別;投与されている他の薬物;並びに主治医の判断に依存する。好適な投薬量は0.01mg/kg〜100.0mg/kgの範囲である。必要とされる投薬量における広範囲の変化は、入手可能な化合物の多様性、及び、様々な投与経路の異なる効率を考慮して予想されるべきである。例えば、経口投与は、静脈内注射による投与よりも大きい投薬量を必要とすることが予想される。これらの投薬量レベルにおける様々な変化を、当分野では十分に理解されるような最適化のための標準的な経験的常法を使用して調節することができる。好適な送達ビヒクルでの化合物のカプセル化(例えば、ポリマーマイクロ粒子又は埋め込み可能なデバイス)は、特に経口送達については送達効率を増大させることができる。
【0127】
核酸の取り込みを達成するための別の方法は、標準的な方法によって調製されるリポソームを使用することである。この媒介物は単独でこれらの送達ビヒクルに配合することができ、又は、組織特異的な抗体と同時に配合することができる。あるいは、静電気又は共有結合の力によりポリ−L−リシンに結合させたプラスミド又は他のベクターから構成される分子コンジュゲートを調製することができる。ポリ−L−リシンは、標的細胞上の受容体に結合することができるリガンドに結合する(Cristiano他、1995)。あるいは、組織特異的な標的化を、当分野で知られている組織特異的な転写調節エレメント(TRE)の使用によって達成することができる。筋肉内部位、皮内部位又は皮下部位への「ネイクドDNA」(すなわち、送達ビヒクルを伴わない)の送達は、インビボ発現を達成するための別の手段である。
【0128】
関連したポリヌクレオチド(例えば、発現ベクター)において、アンチセンスのPA2G4 RNAをコードする核酸配列がプロモーター又はエンハンサー−プロモーター組合せに機能的に連結される。エンハンサーは、時間、場所及びレベルに関して発現の特異性を提供する。プロモーターとは異なり、エンハンサーは、プロモーターが存在するならば、転写開始部位からの様々な距離で存在するとき、機能することができる。エンハンサーはまた、転写開始部位の下流側に存在させることができる。
【0129】
遺伝子発現の阻害を、小さい阻害RNA配列(siRNA)の使用によって達成することができる。PA2G4遺伝子の発現はまた、RNA干渉(RNAi)を使用して阻害することができる。これは、標的遺伝子の活性が同族の二重鎖RNA(「dsRNA」)により特異的に無効化される転写後遺伝子サイレンシング(「PTGS」)のための技術である。多くの実施形態において、約18ヌクレオチド〜26ヌクレオチド(具体的には20ヌクレオチド〜24ヌクレオチド、より具体的には21ヌクレオチド〜23ヌクレオチド)のdsRNAである。例えば、標的遺伝子に対して相同的な21ヌクレオチドの配列が細胞に導入され、遺伝子活性の配列特異的な減少が観測される。RNA干渉はRNAレベルでの遺伝子サイレンシングの機構を提供する。RNA干渉は、治療目的と同様に、遺伝子ノックアウトのための効率的かつ広範囲の適用可能な方法を提供する。
【0130】
遺伝子発現をRNA干渉によって阻害することができる配列は、任意の所望される長さであり得る。例えば、そのような配列は、少なくとも15個、20個、25個又はそれ以上の連続するヌクレオチドを有することができる。そのような配列は、その配列が、標的mRNA転写物を分解するための機能的なサイレンシング複合体を形成することができるならば、dsRNA又は任意の他のタイプのポリヌクレオチドであり得る。
【0131】
1つの実施形態において、そのような配列は短い干渉性RNA(siRNA)からなるか、又は、短い干渉性RNA(siRNA)を含む。siRNAは、例えば、19ヌクレオチド〜25ヌクレオチドを有するdsRNAであり得る。siRNAを、ダイサーと呼ばれるRNaseIII関連ヌクレアーゼによる、より長いdsRNA分子の分解によって内因的に産生させることができる。siRNAはまた、外因的に、又は、発現構築物の転写によって細胞に導入することができる。形成されると、siRNA成分及びタンパク質成分が、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)として知られるエンドリボヌクレアーゼ含有複合体に組み立てられる。siRNAのATP生成による巻き戻しにより、RISCが活性化され、その結果として、RISCはワトソン・クリック塩基対形成により相補的なmRNA転写物を標的化し、それにより、そのmRNAを切断及び破壊する。mRNAの切断が、siRNA鎖が結合した領域の中央部の近くで生じる。この配列特異的なmRNA分解により、遺伝子サイレンシングがもたらされる。
【0132】
ポリヌクレオチドは、医薬的に許容され得るキャリアにおいて投与することができる。医薬的に許容され得るキャリアは、動物又はヒトへの投与のために好適である生物学的に適合し得るビヒクル(例えば、生理学的な生理的食塩水又はリポソーム)である。ポリヌクレオチドを投与するための好ましい投薬量はポリヌクレオチド分子のおよそ10コピー〜1012コピーである。この用量を、必要に応じて、繰り返し投与することができる。投与経路は、上記で示された投与経路のいずれかであり得る。
【0133】
PA2G4に対する抗体(モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体)を、PA2G4タンパク質のレベルを減少させるために、又は、対象におけるPA2G4のレベルを低下させるために使用することができる。用語「抗体」には、インタクトな分子、並びに、PA2G4タンパク質に存在するエピトーク決定基に結合することができるそのフラグメント(例えば、Fab、F(ab’)及びFvなど)が含まれる。モノクローナル抗体及びポリクローナル抗体並びにそれらのフラグメントを作製する方法が当分野では知られている。例えば、Harlow及びLane(1988)、Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory、New York)を参照のこと。
【0134】
PA2G4の発現を阻害するために使用することができる他の化合物には、PA2G4タンパク質のC末端におけるアミノ酸配列を有するペプチド又はポリペプチドが含まれる。
【0135】
加えて、本発明は、細胞増殖関連異常に罹患する複数の対象(例えば、増幅されたPA2G4ゲノムDNAの発現又はPA2G4タンパク質の発現を有する対象)を提供すること;効果的な量のPA2G4阻害剤、その後、効果的な量のヌクレオチド又はヌクレオシドアナログ(例えば、ゲムシタビン)をそれぞれ特有の時点でそれぞれの対象に投与すること;及び、細胞増殖関連異常が最大限に阻害される最適な時点を選択することによって、細胞増殖関連異常を処置するための手法を開発する方法を提供する。最適な時点が特定されると、この手法は、適切な対象における細胞増殖関連異常を処置するために使用することができる。
【実施例】
【0136】
下記の具体的な実施例は、単に例示であり、かつ、いかなる点でも決して本開示の残り部分の限定でないとして解釈されなければならない。さらなる詳しい説明がなくとも、当業者は、本明細書中の記載に基づいて、本発明を完全に利用し得ることが考えられる。本明細書中に引用されるすべての刊行物はその全体が本明細書により参考として組み込まれる。
【0137】
本発明はこれまで、一般的に記載されているが、本発明は、本発明の例示として提供され、本発明の限定であることが意図されない下記の実施例を参照することによってより容易に理解される。
【0138】
[材料及び方法]
実施例1−化学試薬及び材料
MCF−7乳がん細胞をAmerican Type Culture Collection(Manassas、VA、米国)から得た。タモキシフェン(TAM)、ニワトリオバルブミン、ストレプトマイシン、L−グルタミン、ペニシリン、4−ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)、3−ヒドロキシ−4−ニトロ安息香酸(HNBA)、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)、プロテアーゼインヒビターカクテル、フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)、デオキシコール酸ナトリウム及びオルトバナジン酸ナトリウムをSigma(St Louis、MO、米国)から得た。スルフェニルハライド薬剤及び2−ニトロベンゼンスルフェニルクロリド(NBS、重形態及び軽形態)をShimazu Biotech(京都、日本)から得た。Tris(2−カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)塩酸塩をPierce(Rockford、IL、米国)から得た。Deep Purple蛍光色素、ジチオスレイトール(DTT)及び西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート化二次抗体をGE HealthCare(Uppsala、スウェーデン)から得た。エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩二水和物(EDTA)及びポリビニリデンジフルオリドメンブレン(PVDF)をBio−Rad(Hercules、CA、米国)から得た。C18 Zip TipをMillipore(Bedford、MA、米国)から得た。配列決定規格の修飾トリプシンをPromega(Madison、WI、米国)から得た。ダルベッコ改変イーグル培地5(DMEM)をGibco(Grand Island、NY、米国)から得た。デキストラン活性炭処理のウシ胎児血清(FBS)をHyClone Laboratories(Pittsburg、PA、米国)から得た。抗ビンキュリン抗体及び抗PA2G4抗体をUpstate Biotechnology(VA、米国)から得た。抗サイトケラチン19抗体及び抗GRP78抗体をSanta Cruz Biotechnology(Santa Cruz Inc、CA、米国)から得た。Trizol及び逆転写酵素をInvitrogen(CA、米国)から得た。cDNA合成及びRT−PCRにおいて使用されたオリゴヌクレオチドプライマーはSigma Proligo(Sigma、シンガポール)から合成された。
【0139】
実施例2−MCF−7細胞の細胞培養及びTAM処理
MCF−7乳がん細胞を、10%のFBS、100U/mLのペニシリン、100U/mLのストレプトマイシン及び2mMのL−グルタミンが補充されたDMEMにおいて培養した。TAM処理の前に、細胞をPBSで洗浄し、5%のデキストラン活性炭処理FBSを含むフェノールレッド非含有DMEMにおいて24時間維持した。その後、細胞を40%〜50%のコンフルエンスで10μMのTAMにより処理し、24時間及び48時間で集めた。コントロールとして、姉妹培養物を等体積のビヒクル(0.1%エタノール)により処理した。
【0140】
[NBS/2DE/MS]
実施例3−タンパク質の抽出及びNBS標識化
TAM処理されたMCF−7細胞及びコントロールのMCF−7細胞を2DE溶解緩衝液(7Mの尿素、2Mのチオ尿素、4%のCHAPS、1mMのPMSF、50μg/mLのDnaseI、50μg/mLのRnaseI及びプロテアーゼインヒビターカクテル)において溶解し、抽出されたタンパク質を、2Dサンプルクリーンアップキット(Bio−Rad)を使用して8M尿素/5mM EDTAに緩衝液交換した。タンパク質をBradford法(Bradford、1976)によって定量し、100μgの各タンパク質ライセートを、振とうとともに、25μLの酢酸における20倍モル過剰の12C(軽)−又は13C(重)−2−ニトロベンゼンスルフェニルクロリド(NBS)により暗所で標識した。NBS標識化では、12C又は13CのNBS成分がトリプトファン残基に選択的に導入され、これにより、6Daの質量差が、軽いNBS標識トリプトファンペプチドと、重いNBS標識トリプトファンペプチドとの間でもたらされる。その後、質量分析法(MS)を使用して、ペプチドピーク対の強度比を求めることができ、これにより、それぞれの軽い集団及び重い集団の相対的な定量化がもたらされる(図1A)(Kuyama他、2003)。
【0141】
標識化した後で、これら2つのタンパク質混合物を一緒にし、非標識のNBS成分をSephadex LH−20カラム(GE HealthCare)によって除いた。注目すべきことに、我々は、過剰なNBS標識を除くためのSephadex LH−20カラムの使用はタンパク質回収を著しく妨害しないこと(Matsuo他(2006)における図2を参照のこと)、及び、サンプルが尿素又はGdnHclのいずれかにより変性されるかどうかにかかわらず、タンパク質回収が変化しないことを以前に示している。サンプルを真空濃縮器により乾燥し、0.1%のSDSを含有する50mM Tris緩衝液(pH8.5)の50μLに再懸濁し、4mMのTCEPにより37℃で30分間還元し、その後、10mMのヨードアセトアミドによるアルキル化を暗所において室温で45分間行った。その後、ライセートを2DE溶解緩衝液(7M尿素、2Mチオ尿素及び4%のCHAPS)に緩衝液交換した。
【0142】
実施例4−二次元ゲル電気泳動
一次元目の分離の前に、それぞれのIPGストリップ(18cm、pH4〜7、GE HealthCare)を340μLの再水和緩衝液(7Mの尿素、2Mのチオ尿素、4%のCHAPS、0.5%のIPG緩衝液(pH4〜7)及び20mMのDTT)により8時間再水和した。一次元目の分離をIPGphor IEFシステム(GE HealthCare)で行った。80μLの溶解緩衝液における100μgのタンパク質ライセート、20mMのDTT及び0.5%のIPG緩衝液(pH4〜7)を、カップローディングにより陽極側にアプライした。その後、ストリップを、20℃において、200Vで3時間、500Vで1時間、500Vから8000Vまで7時間、その後、67,000Vhに達するまで8000Vでフォーカスさせた。フォーカス後、IPGストリップを2段階で平衡化した:(1)50mM Tris−HCl(pH8.8)、6M尿素、30%グリセロール、2%SDS、1%DTT及び微量のブロモフェノールブルーにおいて15分;(2)2.5%のヨードアセトアミドをDTTの代わりに含有する類似する溶液において15分。
【0143】
平衡化されると、ストリップを10%の均一濃度のポリアクリルアミドゲル(18cm×20cm×0.75mm)に移した。その後、IPGゲルを泳動用緩衝液(25mM Tris−HCl(pH8.3)、192mMグリシン及び0.1%SDS)における0.5%(w/v)アガロースによりシールした。その後、二次元目の分離を、Protean II XLシステム(Bio−Rad)を使用して行った。SDS−PAGEを8mA/ゲルにより17℃で1時間行い、その後、24mA/ゲルの定電流で、色素の先端がゲルの底部に達するまで行った。その後、ゲルを製造者のプロトコル(GE HealthCare)に従ってDeep Purple蛍光色素により標識した。ゲルを、FX Molecular Imager(Bio−Rad)を使用してデジタル化し、画像分析を、PDQuest7.3画像分析ソフトウエア(Bio−Rad)を使用して行った。
【0144】
実施例5−質量分析法によるタンパク質の特定
蛍光標識されたタンパク質のゲルスポットを切り出し、ゲル内トリプシン消化を、Xciseロボットシステム(Shimazu Biotech、京都、日本)を使用して行った。自動操作では、消化前に、ゲル片を水により2回洗浄し、100%アセトニトリル(ACN)により収縮させ、乾燥することが行なわれた。30μLのトリプシン(50mM重炭酸アンモニウム(pH8.5)における3.33ng/μL)をそれぞれのゲルプラグに加え、消化を振とうとともに30℃で一晩行った。その後、サンプルを清浄化し、C18 Zip Tipにより濃縮した。
【0145】
最後に、ペプチド混合物を、MS分析の前に、1μLの50%ACN/0.5%TFAによりMALDIサンプルプレートの上に溶出し、10mg/mLのα−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸(CHCA)、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHB)及び3−ヒドロキシ−4−ニトロ安息香酸(HNBA)を50%ACN/0.5%TFAに含有する1μLのマトリックスと混合した。これは、通常のCHCA/DHBマトリックス(Laugesen及びRoepstorff、2003)に代わってMatsuo他(2006)に基づく新規なマトリックス配合物である。MALDI−TOF MS分析を、AXIMA−CFRplus質量分析計(Shimazu Corporation(京都、日本)及びKratos Analytical(Manchester、英国))を下記の設定のもとで使用して行った:窒素レーザー(337nm);リフレクトロンモード;陽イオンの検出。加速電位を、グリッドレス型電極を使用して35kVに設定した。MALDI−TOF MSスペクトルを800(m/z)から3000(m/z)まで手動モードで取得し、2つのトリプシン自己消化ピーク(m/z、842.51及び2211.10)による内部基準により校正した。ペプチド質量マッピングスペクトルからのピークリストを自動的に取り出し、インハウスのMascotサーバー(Matrix Science、London、英国)に送り、UniProtデータベース及びNCBInrデータベースに対して検索した。
【0146】
NBS標識ペプチドについての検索を助けるために、12C NBS(+153Da)及び13C NBS(+159Da)の2つの修正値を変数修正としてMascotサーバーに加えた。NBS標識されている対ピークをTOF MSスペクトルから手動で選択し、相対的定量化を、Kompactソフトウエア(Shimazu/Kratos)を使用してそれぞれのNBS標識されているピーク対の体積比を計算することによって達成した。MS/MSでのペプチド配列決定を、337nmの窒素レーザーを備えるAXIMA−QIT MALDI四重極イオントラップ飛行時間質量分析計(Shimazu Corporation(京都、日本)及びKratos Analytical(Manchester、英国))を使用して行った。1マイクロリットルのトリプシン消化サンプルをMALDIプレートに置き、1μLのDHB(50%ACN/0.5%TFAにおける10mg/mL)と混合した。TOFスペクトルを、MALDIサンプルステージに事前に置かれたフラライトを使用して外部標準により校正した。すべてのスペクトルを中質量及び高質量での最適な透過のための標準的な装置設定により取得した。データ取得及びデータ処理を、Kompactソフトウエア(Shimazu/Kratos)を使用して行った。
【0147】
実施例6−統計学的分析
NBS/2DE/MSに関連する生物学的変動及び実験的変動を調べるために、また、タンパク質の量をNBS/2DE/MS分析及び従来の2DE分析の間で比較するために、本発明者らは一連のPearson相関検定を適用して、研究中のこれら2つのデータセットの類似性を評価した。何らかの認められた相関値の有意性を求めるために、ブートストラップ並び換え検定を、比較されているこれら2つのデータセットの指標を入れ換え、ランダム化されたデータセットについての相関係数を再計算することによって行った。相関検定については、何らかの認められた相関値の有意性を求めるために、ブートストラップ並び換え検定を、比較されているこれら2つのデータセットにおけるタンパク質の順序を入れ換え、ランダム化されたデータセットについての相関係数を再計算することによって行った。この手順を10,000回繰り返し、ランダム化された係数が、認められた値を超える頻度をコンピューター計算し、これを経験的p値として反映させた。
【0148】
実施例7−ウエスタンブロッティング分析
全細胞ライセートを、TAM処理された細胞及びコントロールの細胞を、1mMのPMSF及び1mMのオルトバナジン酸ナトリウムを含有するRIPA緩衝液(0.15MのNaCl、50mMのTris−HCl(pH7.4)、1mMのEDTA、1%のTriton X−100、1%のデオキシコール酸ナトリウム、0.1%のSDS)において溶解することによって調製した。ライセートを、BSAを標準物として使用してBradford試薬により定量した。等量の細胞ライセート(50μg)を12%SDS−ポリアクリルアミドゲルで泳動し、PVDFメンブレンに電気ブロットした。ブロットを、抗ビンキュリン抗体、抗サイトケラチン19抗体及び抗GRP78抗体によりそれぞれプローブした。メンブレンを西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート化二次抗体とインキュベーションした後、反応性を、化学発光検出キット(Bio−Rad)を使用してX線フィルム(Kodak)で可視化した。
【0149】
実施例8−半定量的PCR分析
cDNA合成及びRT−PCRのために、総RNAを、Trizol試薬を使用してTAM処理のMCF−7細胞から抽出した。RNAを定量し、等量のRNAサンプルを2%アガロースゲルで電気泳動して、正常化を確認した。等量のビヒクル処理及びTAM処理のRNAサンプルを、オリゴdTプライマーを製造者により提案される条件で使用してSuperscript II逆転写酵素によって逆転写した。RT−PCRを、PA2G4特異的プライマー及びβ−アクチン特異的プライマーを使用してcDNAから行った。この研究で使用されたオリゴの配列は、PA2G4−RTF:CACGTGCCTTCTTCAGTGAG(配列番号58);PA2G4−RTR:ACTCTGGAGGAGGGCCTTTA(配列番号59);β−アクチン−RTF:CGGGAAATCGTGCGTGACATT(配列番号60);β−アクチン−RTR:TGATCTCCTTCTGCATCCTGT(配列番号61)であった。
【0150】
実施例9−TAM処理されたMCF−7細胞の定量的NBS/2DE/MS分析
その後、我々は、NBS/2DE/MS法を、TAM又はビヒクルのいずれかにより処理されたMCF−7乳がん細胞のプロファイリングを行うことによって、複雑な生物学的サンプルに適用した。最初に、比較の基礎を提供するために、MCF−7サンプルを、従来の2DEプラットフォームを使用して分析した。この従来の2DE分析では、TAM処理のMCF−7細胞及びビヒクル処理のMCF−7細胞についての三連のゲルを作製し、Deep Purple蛍光標識化により可視化し、PDQuestを使用して、蛍光標識強度における違いを特定した。得られた2DEゲルは、TAM又はビヒクルのいずれかにより処理されたサンプルについて非常に類似したタンパク質パターンを示し、85%〜95%の一致率がそれぞれのゲルにおけるおよそ340個のタンパク質スポットにわたって存在した。定性的には、1つのタンパク質スポットがTAM処理の細胞において特徴的であり、一方、7個がビヒクル処理の細胞において特徴的であった。量的レベルでは、27個のタンパク質スポット及び47個のタンパク質スポットが、TAM処理したとき、2倍を超える強度の増大及び低下をそれぞれ示した(図11及び表3)。次に、TAM処理の細胞及びコントロールの細胞に由来する同じタンパク質ライセートをNBS/2DE/MS分析にもまた供した。
【0151】
下記の表1において、44個の特定されたNBSタンパク質スポットは23の異なるタンパク質種を表す。13C/12Cの比率を、NBS対ピークの強度に基づいて計算した。3つのタンパク質が2対以上のNBSペプチドとともに特定された。それらについて、13C/12Cの比率は、同じタンパク質の対ペプチドの比率すべての平均であった。技術的再現性を調べるために、TAM処理のMCF−7細胞及びビヒクル処理のMCF−7細胞の全く同じバッチに由来するタンパク質ライセートをNBSにより再び標識し、2DEゲルで分離し、13C/12Cの比率に基づいて再び定量した。従来の2DEゲル画像分析によって導かれるとき、88個のスポットがNBS標識の2DEゲルから26切り出され、そのうちの58個のタンパク質スポットがペプチドマスフィンガープリンティングによって確信をもって特定された。スポット1〜スポット44が、NBS標識ペプチドピークにより検出されたタンパク質であった。中でも、44個のタンパク質スポットが、NBS標識ペプチド対とともに検出され、これらを、13C/12Cのペプチド体積比を計算することによって定量化した。
【0152】
【表1】

【0153】
【表2】

【0154】
【表3】

【0155】
【表4】

【0156】
表1において、いくつかのタンパク質スポットが2つ以上のNBSペプチド対を有した。このことは、複数のトリプトファン含有ペプチドがこれらのタンパク質に存在することを示している。これらのタンパク質について、最終的なNBS比率を、同じタンパク質スポットに関連するすべてのNBS対ペプチドの比率を平均化することによって計算した。合計で、44個の特定されたNBS標識タンパク質スポットは23の異なるタンパク質種を表した(表1)。この場合、K1C18_HUMAN(CK18)を含めて、10個の種が2DEゲル上の複数のイソ型/スポットによって表された。NBS比率分析を使用したとき、20個のタンパク質スポットは、TAM処理したとき、2倍を越える強度低下を示し、1個のスポットが2倍を超える増大を示し、残りの23個のスポットは、TAMと、ビヒクルとの間で、2倍未満の変化であった。
【0157】
23の異なるタンパク質種を表す44個の特定されたNBSタンパク質スポット。13C/12Cの比率を、NBS対ピーク強度(13C/12C(1)の欄)に基づいて計算した。3つのタンパク質が2対以上のNBSペプチドとともに特定された。これらのタンパク質について、13C/12Cの比率は、同じタンパク質の対ペプチドの比率すべての平均であった。技術的再現性を調べるために、TAM処理されたMCF−7細胞及びビヒクル処理されたMCF−7細胞の全く同じバッチに由来するタンパク質ライセートをNBSにより再び標識し、2DEゲルで分離し、13C/12Cの比率(13C/12C(2)の欄)に基づいて再び定量した。平均値及びSD値は、13C/12C(1)の欄及び13C/12C(2)の欄からの統合値に基づく。
【0158】
表2(下記):従来の2DEゲル画像分析によって導かれるとき、88個のスポットがNBS標識の2DEゲルから切り出された。合計で58個のタンパク質スポットがペプチドマスフィンガープリンティングによって確信をもって特定された(図4は、NBS/2DEの参照マップを、特定されたタンパク質スポットとともに示す)。そのうちの44個がNBSペプチド対を含有した(表2)。いくつかのタンパク質スポットが2つ以上のNBSペプチド対を有した。このことは、複数のトリプトファン含有ペプチドがこれらのタンパク質に存在することを示している。これらのタンパク質について、最終的なNBS比率を、同じタンパク質スポットに関連するすべてのNBS対形成ペプチドの比率を平均化することによって計算した。NBS比率分析を使用したとき、44個中21個のタンパク質スポットが、TAM処理したとき、2倍を越える強度変化を示し、残りの44個中23個のスポットは、TAMと、ビヒクルとの間で、2倍未満の変化であった。比較において、従来の2DE分析については、これらのスポットの44個中17個が、2倍を越える差を伴い、一方、残りの44個中27個は2倍未満の差を伴った。44個の特定されたNBS標識タンパク質スポットは23の異なるタンパク質種を表した(表2)。この場合、K1C18_HUMAN(CK18)を含めて、10個の種が2DEゲル上の複数のイソ型/スポットによって表された。
【0159】
【表5】

【0160】
【表6】

【0161】
【表7】

【0162】
【表8】

【0163】
実施例10−免疫ブロッティングによる示差的発現タンパク質のバリデーション
最後に、NBS/2DE/MSから得られた量的情報の有効性を確認するために、我々は2つの代表的なタンパク質についての免疫ブロッティング実験を行った。TAM又はビヒクルにより24時間又は48時間処理されたMCF−7細胞の独立したバッチに由来する総細胞ライセートを1Dゲルで分離し、タンパク質特異的抗体により免疫ブロッティングした(図10)。78kDaのグルコース調節タンパク質(GRP78)(多剤耐性タンパク質)は、NBS/2DEマップにおいて示される4つのイソ型を有した(図4におけるスポット15〜スポット18)。NBS(13C/12C)比率及び2DE定量化の結果に基づいて、4つすべてのイソ型の発現が、48時間のTAM処理を行ったとき、増大することが予想された(表1及び図5)。抗GRP78による免疫ブロッティングでは、TAM処理後の24時間でさえ、このタンパク質のアップレギュレーションが確認され、この増大した発現が48時間まで安定していた(図10)。同様に、5個のCK19イソ型が2DE分析によって特定された(図4におけるスポット19〜スポット23)。従来の2DE画像分析に基づいて、スポット19を除くすべてが、48時間のTAM処理を行ったとき、(2倍を超える)著しい増大を示した。しかしながら、NBS/2DE/MS定量化に基づいて、CK19イソ型のすべてが、TAM処理したとき、明確なダウンレギュレーションを示した(図5におけるスポット19〜スポット23)。抗CK−19抗体による免疫ブロッティングでは、TAM処理を48時間行ったとき、このタンパク質のダウンレギュレーションが疑いなく確認された(図10)。このデータは、NBS/2DEに基づくタンパク質定量化法が、2DEのみの定量技術と比較して、個々のタンパク質に関するより正確な量的情報を提供する可能性が高いことを示している。
【0164】
[比較での2DE分析線並びに乳がんにおける診断指標及び予後指標としてのPA2G4の使用]
実施例11−乳がん細胞におけるPA2G4のプロテオミクス。a)2つの乳がんセルライン(MCF−7及びHCC−38)及びCRLセルラインの2DE分析では、PA2G4が、ER−のセルラインではなく、ER+のセルラインにおいて過剰発現したことが示された。
【0165】
【表9】

【0166】
CRLセルラインと比較したとき、PA2G4の発現はHCC−38において著しい違いを示さず、しかし、MCF−7において著しい違いを示した(表3)。これはCharpentier他(2000)の知見と一致する。
【0167】
実施例12−乳がんについての予後マーカーとしてのPA2G4
b)MCF−7細胞におけるPA2G4の過剰発現はタモキシフェン処置によって抑制することができる。NBS分析を使用したとき、5倍の低下が見出され、2DE分析を使用したとき、3倍の低下が見出された。
【0168】
乳がんに対する我々の研究と、臨床的結果との関連性を明らかにするために、我々はPA2G4(これはERBB3受容体相互作用タンパク質として最初に特定された)に照準を合わせた。我々は、TAM処理されたMCF7細胞におけるPA2G4タンパク質のダウンレギュレーションを確認するために24の免疫ブロッティング実験を行った。図10bに示されるように、MCF7細胞をTAMにさらすことにより、PA2G4タンパク質のあまり大きくなく、しかし、顕著なダウンレギュレーションが24時間後に誘導され、これが48時間まで持続した。独立した実験において、我々はまた、PA2G4タンパク質の発現が、MCF−7(ER+)では、HCC−38(ER−)乳細胞セルライン及びCCD−1059sk(ER−)乳細胞セルラインの場合よりも2倍を超えて大きいことを見出している。
【0169】
その後、我々は一連の半定量的RT−PCR実験を行い、PA2G4のmRNAが24時間及び48時間の両方の時点でTAM暴露によって明瞭にダウンレギュレーションされたことを見出した(図10b)。この転写調節を考えたとき、本発明者らは、その後、ER+の原発性腫瘍の2つの独立したマイクロアレイデータセットに対するデータマイニングを行った。第1のセット(GIS;Miller他、2005)は201名のER+乳がん患者からのデータからなり、この場合、67名の患者が補助的なホルモン治療のみを手術後に受けていた。第2のセット(Oxford;Sotiriou他、2006)は65名のER+患者からのデータからなり、この場合、33名の患者がTAMのみを受け、残りの患者は処置を受けていなかった。一変量の統計学的分析を行うことによって、我々は、PA2G4転写物の発現により、両方のデータセットにおける無病生存との非常に著しい相関(p値がそれぞれ、1.75x10−5(GIS)及び0.001(Oxford)である)が明らかにされ、高いPA2G4を発現する腫瘍を有する患者がより不良な臨床的結果を示すこと(表4A)を見出した。
【0170】



【表10】

【0171】
【表11】

【0172】
【表12】

【0173】
【表13】

【0174】
表4.ER+乳がんにおける生存関連遺伝子としてのPA2G4の一変量分析及び多変量分析。有意な関連(p<0.05)が太字で強調される。
【0175】
一変量分析が、補助的なホルモン治療を受けているそのような患者のみに限定されたときには、PA2G4の発現と、生存との間での有意な関連もまた、両方のデータセットにおいて認められた(p値がそれぞれ、0.002(GIS)及び0.008(Oxford)である;表4a)。その後、我々は、PA2G4の発現が、他の臨床的変数(例えば、腫瘍悪性度、患者年齢及び腫瘍サイズなど)との比較において、独立した予後因子として挙動し得るかを検定した。この多変量分析において、PA2G4の発現は依然として、その予後有意性を両方の患者コホートにおいて保持し(p値がそれぞれ、0.001(GIS)及び0.04(Oxford)である)、同様にまた、補助的なホルモン治療を受けている患者のGISコホートにおいても保持した(p=0.005)(表4b)。従って、ER+乳がんの2つの独立したマイクロアレイデータセットにおいて、原発性腫瘍における高いPA2G4発現は、低いPA2G4を発現する腫瘍を有する患者と比較した、低下した無病生存に関連する。これらの結果は、PA2G4が新規な生存関連の乳がん遺伝子であり、予後バイオマーカーとしての使用に好適であることを示す。
【0176】
実施例13−PA2G4に対する抗体
PA2G4タンパク質に対する好適な抗体を商業的供給元から入手することができ、当分野で知られている任意の免疫学的結合/ハイブリダイゼーション反応においてPA2G4を検出及び/又は定量するために使用することができる。例えば、PA2G4のポリクローナル抗体をAbnova Corporation(台湾)から入手することができる(製品番号H00005036−A01)。これは、部分的組換えPA2G4免疫原に対して惹起されたマウスポリクローナル抗体である。あるいは、別の一例が、Upstate(米国)から入手可能な、ウサギから惹起された抗Ebp−1ポリクローナル抗体である(製品番号07−397)。
【0177】
実施例14−PA2G4のための好適な組換え発現ベクター
当業者は、好適なベクターを選択し、PA2G4遺伝子配列をその遺伝子のその後の発現のためにベクターに挿入することができる。PA2G4について、PA2G4が挿入されたベクターが市販されている。例えば、Origene(米国)は、製品番号SC103017として、PA2G4配列をそのpCMV6−XL6ベクターに有する。
【0178】
実施例12−診断におけるPA2G4の使用
本発明は、ER+乳がん細胞及びER+乳がん疾患患者におけるPA2G4遺伝子及びPA2G4タンパク質の示差的発現、並びに、その発現におけるタモキシフェン(TAM)の抑制作用を開示する。この知見に基づいて、本発明は、対象におけるER+乳がん疾患を診断又は予後判定するための方法、及び、対象が、乳がん疾患を発症する増大した危険性にあるかどうかを明らかにするための方法を提供する。さらに、本発明は、PA2G4遺伝子及びその対応する遺伝子産物を使用して乳がん疾患を処置又は防止するための治療的方法及び予防的方法を提供する。
【0179】
診断的適用のために、抗ヒトPA2G4抗体を、このタンパク質をヒトサンプル(例えば、血清、乳頭吸引液、細胞外液及び原発性腫瘍組織など)において分析(検出及び測定)するために使用することができる。コントロール(例えば、乳がんと診断されていないか、又は、乳がんに罹患していない患者など)から得られた参照値に由来するレベルよりも高いPA2G4の発現レベルにより、乳がんの可能性が示される。
【0180】
実施例15−治療をモニターするためのPA2G4の使用
PA2G4の遺伝子/タンパク質発現と、前記分子発現に対するTAMの阻害的効果との関係性の我々の観察結果、並びに、2つの乳がん患者コホートにおける生存データ研究に基づいて、我々は、PA2G4遺伝子/タンパク質が、乳がんの治療をモニターするための潜在的用途を有すると考えている。さらなる研究のために、我々は、siRNAを、siRNAのトランスフェクションの後でのER+細胞(例えば、MCF−7)の生理学的変化を観測するための遺伝子サイレンシングのために使用する。その場合、我々は、ER+細胞の生存におけるPA2G4遺伝子の役割を評価することができ、また、我々が、PA2G4遺伝子を特異的に阻害することによってER+のがん細胞を抑制することができるかどうかを明らかにすることができる。そのようなアッセイは用量依存的な経時的応答研究が可能であり、血清及び他の体液サンプルへの具体的な適用を有する。結果は、乳がん患者において治療をモニターするためにPA2G4を使用するという実現可能性を示すことができる。
【0181】
実施例16−PA2G4の治療的使用
細胞増殖異常(例えば、乳がんなど)を処置するための分子を、PA2G4遺伝子配列(配列番号1)又はPA2G4タンパク質配列(配列番号2)を使用して調製することができる。当業者は、PA2G4の遺伝子又はmRNAに対して相補的な核酸(例えば、siRNAなど)を、mRNAの翻訳を阻害するか、又は低下させるために、当分野で知られているいかなる方法によっても作製することができる。同様に、PA2G4タンパク質に基づく抗体(例えば、実施例10において示される抗体など)を、PA2G4タンパク質に結合し、従って、PA2G4タンパク質の作用を不活性化する抗体を作製するために、当分野で知られているいかなる方法によっても惹起させることができる。そのような治療用分子は、好適な賦形剤、ビヒクル又はキャリアと混合し、所望される治療効果を得るために疾患組織又は疾患細胞に投与することができる。具体的には、所望される治療効果は、PA2G4の遺伝子及び/又はタンパク質の発現を低下又は減少させることである。
【0182】
キット
実施例17−キット
本発明はまた、PA2G4遺伝子、その遺伝子転写物、遺伝子産物、バリエーション又はフラグメントに対して相補的又はハイブリダイゼーション可能である少なくとも1つのバイオマーカーを含むキットを提供する。そのような相補的又はハイブリダイゼーション可能なバイオマーカーには、PA2G4遺伝子あるいはその遺伝子産物又はフラグメント又はバリエーションを認識し、これに結合する核酸プローブ、並びに、PA2G4遺伝子産物又はそのフラグメントを認識し、これに結合する抗体が含まれる。十分な相同性が、相補的なバイオマーカーによる遺伝子又はタンパク質の認識を可能にするために存在する限り、遺伝子は野生型又はその変異型が可能であり、タンパク質は野生型又はその変異型が可能である。相補的又はハイブリダイゼーション可能な生体分子は標識することができ、従って、細胞増殖性疾患の予後評価(細胞増殖性疾患に対する感受性を予測すること)のために、又は、細胞増殖性疾患の診断のために、又は、疾患状態の重篤度を示すために、又は、一連の処置の効力をモニターするために使用することができる。
【0183】
実施例18−乳がんについての他のバイオマーカー
本研究において、本発明者らは、敗血症患者におけるアポトーシス上皮の有用な血清マーカー(de Graauw他、2005)であることが示されている別のTAM調節タンパク質(CK18ネオエピトープM30)を見出した。アポトーシス時において、DNAの断片化、核の凝縮及びCK18の切断は既知の事象であり、また、M30ネオ抗原と呼ばれるCK18におけるネオエピトープが、初期のカスパーゼ切断事象のとき、利用可能になる。CK18のTAM媒介によるダウンレギュレーションが認められることにより、CK18のダウンレギュレーションの測定が薬物応答性の尺度としてTAM処置患者において有用であることが示される。注目すべきことに、TAMが乳がんについての最初のホルモン治療であるとしても、TAM治療の大きな有害な副作用は、望ましくない子宮内膜増殖である。そういうものとして、CK18のダウンレギュレーションは、乳がんに対する素因を示し、CK18は乳がんについてのバイオマーカーとして有用である。
【0184】
興味深いことに、2DEを使用するIshikawa子宮内膜腺がんセルラインにおけるTAM媒介による変化に関する以前の報告では、CK18の発現における著しい増大が示された(Shah他、2004)。これは、乳がん細胞における我々の観測結果とは逆である。MCF−7セルラインにおけるCK18の選択的エストロゲン受容体調節剤(SERM)媒介によるダウンレギュレーションに関する現在の観測結果、及び、子宮内膜がんセルラインにおける全く逆の観測結果は、CK18がSERMの重要な組織特異的標的であることを表し得る。最後に、GRP78は、TAM調節されるとしてNBS定量化により特定された別のタンパク質である。
【0185】
GRP78は、知られている薬物抵抗エフェクターであり、ストレス応答シャペロンでもある。GRP78の発現が陽性である肺がん患者及び神経芽細胞腫患者は、より良好な予後及び改善された生存を示す傾向を有した(Uramoto他、2005)。TAM処理されたMCF−7細胞におけるGRP78の観測されたアップレギュレーションは、薬物処理に対する即時的なストレス応答を表しており、また、このアップレギュレーションによりまた、細胞ストレスが細胞死プログラムに結びつけられ得る(Rao他、2002;Ding他、2004)。このことは、TAM処理時のmRNAレベルでの、別のERストレス遺伝子(HERP)の付随するアップレギュレーションによって裏付けられる。
【0186】
独立して有効性が確認された2つのタンパク質のGRP78及びCK19はまた、TAM処理の期間中における正真正銘のアップレギュレーションされたタンパク質及びダウンレギュレーションされたタンパク質であることが見出される。結果は、NBS/2DE/MSが、従来の2DE法よりも、細胞タンパク質定量化のための信頼できる方法であることを示す。
【0187】
乳がんの様々なバイオマーカーがプロテオーム及びゲノムの統合的研究から発見され、それらの有効性が、乳房組織マイクロアレイを使用して確認された。乳房組織マイクロアレーが提供され、偏りを最小限に抑えるために、1人だけの病理学者によって検討された(Manuel Salto−Tellez博士:准教授、Department of Pathology;Senior Research Scientist、Oncology Research Institute;Senior Consultant Pathologist、Clinical Director、Molecular Diagnostic Oncology Centre、NUH、シンガポール)。
【0188】
実施例19−組織のマイクロアレイ分析
方法
IHC(免疫組織化学的)染色の最適化を、PA2G4抗体(Ab)についてのIHC染色条件を最適化する目的で乳房組織マイクロアレイに対して行った。4つの異なる抗原回復法を、一次抗体の異なる濃度を用いて陽性コントロールの細胞ブロックに対して適用した。1:50、1:100、1:200及び1:400(体積に基づく比率)の希釈度を試験した。
【0189】
陽性コントロールとして、本発明者らはパラフィン包埋の細胞ブロックを使用し、抗原の細胞内存在場所を、分画化されたタンパク質抽出物に対するウエスタンブロッティングによって求めた。細胞ブロックを作製するために、MCF7乳がん細胞を75mLフラスコで培養した。コンフルエンスになったとき、細胞をトリプシン処理し、5mm以下の厚さの細胞ペレットに遠心分離した。直ちに、細胞ペレットをホルマリンと20分間インキュベーションし、続いて、パラフィン包埋を行った。
染色された陽性コントロール組織のスライドが最適化の後で病理学者によって検査された。最適な条件(具体的な抗原回復法及び具体的な一次抗体希釈を含む)を、病理学者の助言を聞いた後で決定し、乳房組織マイクロアレイに適用した。
【0190】
IHC染色のためのプロトコル
I.溶液:
クエン酸(pH6.0)緩衝液
10.5gのクエン酸
2MのNaOHによりpH6.0に調節する(約65mL)
脱イオン水により5Lにする
(pHが高ければ、クエン酸を加え、pHが低ければ、NaOHを加える。)
Tris−EDTA(pH9.0)緩衝液
12gのTris塩基
1gのEDTA
脱イオン水により500mLにする
0.2MのHClによりpH9に調節する
DAKO(pH6.0)緩衝液
60mlのDako(10x)(Cat.S2369)標的回復、脱イオン水により600mLにする。
DAKO(pH9.0)緩衝液
60mlのDako(10x)(Cat.S2367)標的回復、脱イオン水により600mLにする。
TBS洗浄緩衝液(pH7.6)10x
0.5M Tris 60.6g
9(wt/v)%NaCl 90g
脱イオン水により1Lにし、HClを加えて、pH7.6に調製する。
【0191】
II.脱パラフィン化
脱パラフィン化の前に、アレイのスライドは室温で60分間保たなければならないか、又は、オーブンにおいて、水平位置で20分間、60℃で加熱されなければならない。スライドを金属トレイにおいて整列させる。
1.スライドをキシレンに5分間浸漬し、新しいキシレンで1回、5分間繰り返す(キシレンは毒性である)。
2.スライドを100%エタノールに5分間浸漬する。
3.スライドを95(v/v)%エタノール/H2Oに5分間浸漬する。
4.スライドを70(v/v)%エタノール/H2Oに5分間浸漬する。
5.スライドを洗浄のために流水に入れる。
【0192】
III.抗原回復
方法A.クエン酸塩緩衝液(高圧ポットにおいて加熱される)
1.2Lのクエン酸塩緩衝液をステンレス製圧力鍋において10分間〜15分間沸騰させる。
2.緩衝液が沸騰したら、スライドを垂直にポットに入れ、ふたをしっかり閉める。ふたの上の2つのボタンが持ち上がった後、時間を3分計り始める(スライドを鍋の底に直接に触れさせない)。
3.3分後、ポットを取り出し、流しにおいて流水下で冷却する。圧力は、ノブを回すことによって解放することができる。圧力を解放した後、ふたを開け、スライドを流水下に置いて冷却する。
【0193】
方法B.Tris−EDTA緩衝液(電子レンジにおいて加熱される)
1.600mlの緩衝液をプラスチックジャーに注ぐ。
2.スライドをプラスチックトレーにおいて整列させ、緩衝液に移す。
3.ジャーをプラスチックフィルムで包み、数個の穴を上部に開ける。
4.ジャーを電子レンジに入れる。出力を5に設定し(10段階の5の出力、中レベルで)、時間を25分に設定する(緩衝液が、透明ではなく、乳白色になる)。
5.ジャーを取り出し、ジャーを流しにおいて流水下に置く。溶液が再び透明になり得る。
6.冷却後、スライドを、水の入った容器の中に取り出す。
方法C.DAKO(pH6.0)緩衝液(B.のような方法)
方法D.DAKO(pH9.0)緩衝液(B.のような方法)
【0194】
IV.免疫染色
1.スライドを軽く振って乾燥させ、ペン(DAKO、S2002)を使用して、組織の領域の周りを描く。組織の周りにペンによって描かれた円により、液体(例えば、抗体溶液、洗浄緩衝液など)に対するバリアが提供される。
2.スライドを軽く振って乾燥させ、ブロッキング溶液(DAKO、S2023)を組織に滴下する。10分間インキュベーションする。
インキュベーション期間中に溶液に泡がないことを確認する。
3.スライドから液を除き、脱イオン水によりすすぎ洗浄する。スライドをラックに入れ、流水下で5分間洗浄する。
4.スライドをプラスチックトレーに水平に置き、TBSを5分間注ぐ。
5.一次Abを抗体希釈液(DAKO、S0809)で希釈する。
6.スライドから液を除き、スライドを軽くたたく。200uLの希釈されたAbを組織の上に加え、30分間インキュベーションする(泡を立てさせない)。
7.スライドを引き上げ、TBSで満たす。液を除き、軽く振る。
8.TBSをスライドに注ぎ、5分間待つ。この期間中、さらにTBSを時々加えて、スライドが乾燥することを避ける。
9.スライドから液を除き、スライドをハンドタオルで軽くたたく。エンビジョンキット(DAKO、S5007)から白色ボトル(Dako REAL(商標)EnVision(商標)HRPウサギ/マウス)を取り出し、数滴を滴下し、組織を30分間覆う。
10.スライドから液を除き、スライドをTBSにより洗浄する。TBSをスライドに注ぎ、5分間待つ。
11.1mlの基質緩衝液を20μLのDAB(3,3’−ジアミノベンジジン:毒性)と混合する。それらを使用前に混合する。基質緩衝液及びDABの両方がエンビジョンキット(DAKO、S5007)に含まれる。
12.スライドから液をTBSとともに除き、軽くたたいて乾燥させ、DAB混合物をスライドに滴下し、10分間インキュベーションする。
13.スライドを脱イオン水により洗浄する。
14.スライドをH/Eラックに整列させ、流水下に5分間置く。
15.組織が青く染色されるまで、スライドをヘマトキシリンの中に2分間入れ、スライドをPBS(リン酸塩緩衝化生理的食塩水)に10秒間入れる。スライドを流水下で10分間洗浄する。
16.スライドを一連の溶液において脱水する:70%エタノール、95%エタノール、100%エタノール(4回)、キシレン(2回)。それぞれ1分間。
17.スライドを取り付け用装置に載せる。
【0195】
結果
腫瘍組織マイクロアレイでのPA2G4のIHC染色は96.5%(すなわち、86個中83個の腫瘍組織)の陽性染色(褐色に着色された)を示した。そのような陽性染色された腫瘍組織の中で、40.7%(すなわち、86個中35個)の腫瘍組織が悪性度3の陽性染色であった;36%(すなわち、86個中31個)の腫瘍組織が悪性度2の陽性染色であった;20%(すなわち、86個中17個)の腫瘍組織が悪性度1の陽性染色であった。具体的には、正常な組織に対するPA2G4についてのIHC染色の観測結果が図13(A)に示され、挿入図は正常な組織の拡大部を示す。
【0196】
他方で、正常組織マイクロアレイでの陽性染色を示すものはすべてが、悪性度1の陽性染色であった(非常に少量がかすかに褐色に着色された)。具体的には、腫瘍組織に対するPA2G4についてのIHC染色の観測結果が図13(B)に示され、挿入図は腫瘍組織の拡大部を示す。
このタンパク質は、良好なバイオマーカーであると見なすことができる。
【0197】
【表14】

【0198】
図14は、PA2G4についての分画化されたタンパク質抽出物に対するウエスタンブロッティングの結果である。左側から右側のレーンで、タンパク質抽出物は、細胞質ゾルのタンパク質抽出物(i)、膜/オルガネラのタンパク質抽出物(ii)、及び、核のタンパク質抽出物(iii)である。写真が示すように、PA2G4についてのタンパク質発現は細胞質及び核の両方においてであり、しかし、より高い発現が細胞質に存在する。
【0199】
実施例20−ウエスタンブロッティング分析(組織サンプル)
方法
I.ウエスタンブロッティング
A.タンパク質調製
1.目的とする組織をメスにより薄く切って、適切なサイズのフラグメントを得る。
2.組織の表面における血液及び他の混入物を除くために、薄く切った組織をPBSで1回〜2回、30秒間洗浄する(混入の程度に依存する、より多くの洗浄が、ひどく汚れた組織については必要となる)。
3.組織を、乳棒及び乳鉢を使用して液体窒素中でより小さいフラグメントに粉砕する。
4.組織フラグメントを、250mMスクロースを含有するエッペンドルフチューブに集め、30秒間、2回〜3回洗浄する(血液汚染の程度に依存する)。
5.それぞれの洗浄工程の後で8000rpmで2分間遠心分離し、上清を捨てる。
6.スクロース洗浄の後、ペレットを取り出し、微粉末に完全に粉砕する。
7.粉末をエッペンドルフチューブに集め、タンパク質を、Calbiochem Subcellular Proteome Extraction Kit(Calbiochem)を使用して抽出する。
8.多く存在する血漿タンパク質を、アルブミン・IgG除去キット(GE HealthCare)、その後で、Multiple Affinity Removal Column(Agilent Technology)を使用することによってタンパク質ライセートから除く。
9.除去処理後のタンパク質ライセートの緩衝液をSDSサンプル緩衝液(2(wt/v)%SDS、20(wt/v)%グリセロール、120mM Tris(pH6.8)、及び、160mM DTT)に交換し、タンパク質濃度を測定する。
【0200】
B.タンパク質濃度の測定
Bradfordのクーマシーブルー法に従う。ウシ血清アルブミン(BSA、2mg/ml)を標準物として使用する。
1.BSAストック液を1mg/mlに希釈し、500μlの脱イオン水(d−H2O)におけるBSA標準物の濃度系列(0μg、1μg、5μg、10μg、15μg、20μg、25μg)を調製する。
2.1μlのストック溶解緩衝液を標準物の系列溶液に加える。
3.サンプルを、1μlの細胞ライセートを500μlのd−H2Oに加えることによって調製する。
4.500μlのクーマシーブルー試薬を加え、混合する。
溶液を過度に長く室温で混合したままにしない。沈殿が生じる。
5.吸光度を595nmで読み取る。
細胞ライセートを−20℃で保存する。総体積が大きいならば、細胞溶解物を0.5mlのエッペンドルフチューブに小分けする。
【0201】
C.SDS−PAGE分離ゲル
1.15分間絶えず撹拌しながら15mlの分離用ゲルをフラスコにおいて調製する。
10%SDS分離用ゲル:
30(wt/v)%アクリルアミド/Bis 4.95ml
1.5M Tris−HCl(pH8.8) 3.75ml
10(wt/v)%SDS 0.15ml
d−H2O 6ml
注入前に、
TEMED(N,N,N,N−テトラメチルエチレンジアミン) 7.5μl
10(wt/v)%APS(過硫酸アンモニウム) 75μl
2.手袋を着用して、プレートを95%エタノールにより清浄化する。Kimwipesにより乾燥する。プレートを組み立て、プレートをプレートホルダーに据える。短い方のプレートが外に向いている。
3.TEMED及び10%APSを分離用ゲル溶液に加え、しばらく撹拌する。ピペットを使用して、溶液を短い方のプレートの上端の約0.5cm上までプレート間のすき間に加える。直ちに少量のHO飽和ブタノールを加えて、分離用ゲルの上端を覆う。
4.実験台で1時間放置する。プレートの底部からの漏れがないことを確認する。
5.ブタノールを除き、ゲルの表面のd−HOにより清浄化する。プレートをKimwipeにより乾燥する。
6. 5mlの濃縮用ゲルを作製する:
4%SDS濃縮用ゲル:
30(wt/v)%アクリルアミド/Bis 0.66ml
1M Tris−HCl(pH6.8) 1.28ml
10(wt/v)%SDS 50μl
d−HO 3ml
注入前に、
TEMED 5μl
10(wt/v)%APS 25μl
7.濃縮用ゲルを短いプレートの上端まで分離用ゲルに載せる。10ウエルのコームをプレートのすき間に直ちに挿入する。
8.重合させるために少なくとも5時間放置する。
9.コームを慎重に取り出し、ゲルの表面をd−HOにより洗浄する。ゲルを乾燥する。
10.500mlの泳動用緩衝液(25mM Tris−HCl、0.2Mグリシン、0.35(wt/v)%SDS)を調製する。
11.ゲルを電気泳動ホルダーに固定し、タンク内に入れる。泳動用緩衝液を長い方のプレートの上端まで2つのプレートの間に注ぐ。上部チャンバーから下部チャンバーへの緩衝液の漏れがないことを確認する。緩衝液のレベルは低下し続けない。
12.タンパク質ライセートを等体積の2x負荷用緩衝液(62.5mM TrisHCL(pH6.8)、25(wt/v)%グリセロール、2(wt/v)%SDS、5(wt/v)%メルカプトエタノール及び0.01(wt/v)%ブロモフェノールブルー)と混合する。
13.溶解物(5μg/ウエル)を二連で負荷する。
14.電気泳動を、色素がゲルの底に到達するまで150Vで1時間行う。
【0202】
D.セミドライ転写
転写緩衝液:60mM Tris、40mMグリシン及び15(v/v)%メタノール(pH9.2)
1.ゲルを200mlの転写緩衝液に30分間浸漬する。
2.PDVFメンブレンをメタノールで15秒間湿らせ、脱イオン水ですすいだ後、転写緩衝液に少なくとも15分間浸漬する。2枚のろ紙を転写緩衝液に15分間浸漬する。
3.転写スタックをプレートの上に下記の順で組み立てる:
+ろ紙、メンブレン、ゲル、ろ紙−
注意:a.メンブレン及びろ紙をゲルと同じサイズで切る。
b.メンブレンと、ゲルとの間における気泡を避ける。
4.電源:15〜20V;時間:30〜45分(電力及び時間をゲルのサイズに従って調節する)。
【0203】
E.免疫ブロッティング
1.カセットを開ける。
2.転写メンブレンをブロッキング緩衝液(20mM Tris塩基(pH7.6)、150mM NaCl、0.1(v/v)%Tween−20、5(v/v)%脱脂乳)に入れ、ブロットを4℃で一晩インキュベーションする。
3.ブロッキング緩衝液を除き、メンブレンを、洗浄緩衝液を10分毎に交換しながら、洗浄緩衝液(20mM Tris塩基(pH7.6)、150mM NaCl、0.1(v/v)%Tween−20)で撹拌しながら30分間すすぎ洗浄する。
4.ブロッキング処理後、メンブレンを一次抗体とインキュベーションする。
5.すすぎ洗浄の後、一次抗体緩衝液をメンブレンからデカンテーションし、メンブレンを、洗浄緩衝液を10分毎に交換しながら、洗浄緩衝液で撹拌しながら30分間すすぎ洗浄する。
6.二次抗体を、通常の場合には1:50,000で、ブロック緩衝液で希釈する(西洋ワサビペルオキシダーゼコンジュゲート化抗体)。室温で1時間〜2時間インキュベーションする。
7.二次抗体緩衝液を除き、メンブレンを、洗浄緩衝液を10分毎に交換しながら、洗浄緩衝液で撹拌しながら30分間すすぎ洗浄する。
【0204】
F.バンドの検出
1.ECL(Enhanced Chemiluminescence)試薬(溶液A及び溶液B(これらはGE HealthCare(英国)から得られる)の等体積混合物)を調製する。
2.試薬をメンブレンの上に加え、5分間反応する。
3.ブロットをVersaDoc5000にさらし、バンドのパターンを、Quantity Oneソフトウエアを使用して分析する。
【0205】
II.乳房組織サンプル及びタンパク質抽出
この分析のために使用された組織を、Singapore National Cancer Center Tissue Repositoryから、独立した組織病理学者による2回の検査の後で得た。正常な乳房組織を美容外科患者から得た。
タンパク質抽出物の調製を、本質的には、Ou,K.、Kesuma,D.、Ganesan,K.、Yu,K.他、J.Proteome Res.、2006、5、2194〜2206に記載されるように行った。簡単に記載すると、薄く切った組織をPBSで洗浄して、血液及び他の混入物を除いた。粉砕した組織を、7Mの尿素(Bio−Rad)、2Mのチオ尿素(Fluka Chemie)、4%(w/v)のCHAPS(GE HealthCare)、1mMのPMSF(Sigma)、50μg/mLのDnase(Boehringer Mannheim)、50μg/mLのRnase(Boehringer Mannheim)、及び、プロテインインヒビターカクテル(Sigma、1mL/10細胞)からなるカクテルにより破砕した。得られた細胞ライセートをプローブ超音波処理器(Misonix Inc.、NY、米国)により超音波処理し、40,000rpmで20分間遠心分離して、細胞破片を除いた。その後、抽出されたタンパク質を、2Dサンプルクリーンアップキット(Bio−Rad)を使用して、8M尿素及び5mM EDTAに緩衝液交換した。
ウエスタンブロティングのとき、我々は、ER+(エストロゲン受容体)陽性である3名の乳がん患者に由来する抽出物の混合物、及び、正常者に由来する5つの抽出物をそれぞれ使用した。
【0206】
結果
PA2G4のバリデーションが図15に示される。図15(A)は、抗アクチンを参照として使用する、がんサンプル及び正常なサンプルにおけるPA2G4に対するウエスタンブロティングの結果を示す。図15(A)における各バンドが吸光度ユニットでの積分値として測定され、PDQuestソフトウエアによって計算される。図15(B)は、がんサンプル及び正常なサンプルにおけるそれぞれ、PA2G4のバンドの吸光度ユニットでの得られた積分値を示す。図15(A)及び図15(B)の両方において、ER+はがんサンプルを表し、TNTは正常なサンプルを表す。図15(B)における垂直軸はバンドの吸光度ユニットでの積分値を表す。これらの図から、乳がんサンプルは、正常なサンプルとの比較において過剰発現を明確に示す。乳がん組織における類似するアップレギュレーションが個々のサンプル及びセルラインにおいてもまた観測される(データは示されず)。
【0207】
本発明はまた、動物のための獣医学において使用され得ることが当業者には明らかである。本発明を実施するための具体的な実施例が提供されているが、様々な改変及び改良が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく当業者によってなされ得ることが理解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0208】
【特許文献1】米国特許第5,223,409号
【非特許文献】
【0209】
【非特許文献1】Altschul et al., J Mol Biol 215, 403-410 (1990)
【非特許文献2】Altschul et al., Nucleic Acids Res 25, 3389-3402 (1997)
【非特許文献3】Bradford, M. M. (1976) Anal. Biochem. 72, 248
【非特許文献4】Carell et al. Angew Chem Int Ed Engl 33, 2061(1994)
【非特許文献5】Carrell et al. Angew Chem Int Ed Engl 33, 2059 (1994)
【非特許文献6】Charpentier AH, Bednarek AK, Daniel RL, Hawkins KA, Laflin KJ, Gaddis S, MacLeod MC, Aldaz CM (2000) Effects of estrogen on global gene expression: identification of novel targets of estrogen action. Cancer Res 60: 5977-5983
【非特許文献7】Cristiano et al. J Mol Med 73, 479 (1995)
【非特許文献8】Cull et al. PNAS USA 89, 1865-1869 (1992)
【非特許文献9】Cwirla et al. PNAS USA 87, 6378-6382 (1990)
【非特許文献10】de Graauw, M.; Tijdens, I.; Cramer, R.; Corless, S.; Timms, J. F.; van de, W. B. J.Biol.Chem., 280, 29885-29898 (2005)
【非特許文献11】Ding, S. J.; Li, Y.; Tan, Y. X.; Jiang, M. R.; Tian, B.; Liu, Y. K.; Shao, X. X.; Ye, S. L.; Wu, J. R.; Zeng, R.; Wang, H. Y.; Tang, Z. Y.; Xia, Q. C. Mol Cell Proteomics, 3, 73-81 (2004)
【非特許文献12】Felici J Mol Biol 222, 301-310 (1991)
【非特許文献13】Fodor Nature 364, 555-556) (1993)
【非特許文献14】Gallop et al. J Med Chem 37,1233 (1994)
【非特許文献15】Houghten Biotechniques 13, 412-421 (1992)
【非特許文献16】Hsu, W. M.; Hsieh, F. J.; Jeng, Y. M.; Kuo, M. L.; Tsao, P. N.; Lee, H.; Lin, M. T.; Lai, H. S.; Chen, C. N.; Lai, D. M.; Chen, W. J. Int.J.Cancer, 113, 920-927 (2005)
【非特許文献17】Karlin and Altschul Proc Natl Acad Sci USA 87, 2264-2268) (1990)
【非特許文献18】Karlin and Altschul, Proc Natl Acad Sci USA 90, 5873-5877) (1993)
【非特許文献19】Kuyama, H.; Watanabe, M.; Toda, C.; Ando, E.; Tanaka, K.; Nishimura, O. Rapid Commun.Mass Spectrom. 17, 1642-1650 (2003)
【非特許文献20】Lam Nature 354, 82-84, (1991)
【非特許文献21】Lam Anticancer Drug Des 12, 145, (1997)
【非特許文献22】Laugesen, S.; Roepstorff, P. J.Am.Soc.Mass Spectrom. 14, 992-1002, (2003)
【非特許文献23】Matsuo, E.; Toda, C.; Watanabe, M.; Ojima, N.; Izumi, S.; Tanaka, K.; Tsunasawa, S.; Nishimura, O. Proteomics, 6, 2042-2049 (2006)
【非特許文献24】Miller, L. D.; Smeds, J.; George, J.; Vega, V. B.; Vergara, L.; Ploner, A.; Pawitan, Y.; Hall, P.; Klaar, S.; Liu, E. T.; Bergh, J. Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A 2005, 102, 13550-13555
【非特許文献25】Sotiriou, C.; Wirapati, P.; Loi, S.; Harris, A.; Fox, S.; Smeds, J.; Nordgren, H.; Farmer, P.; Praz, V.; Haibe-Kains, B.; Desmedt, C.; Larsimont, D.; Cardoso, F.; Peterse, H.; Nuyten, D.; Buyse, M.; Van de Vijver, M. J.; Bergh, J.; Piccart, M.; Delorenzi, M. J Natl.Cancer Inst. 2006, 98, 262-272
【非特許文献26】Pompeia C, Hodge DR, Plass C, Wu YZ, Marquez VE, Kelley JA, Farrar WL. Cancer Res 64: 3465-3473 (2004)
【非特許文献27】Rao, R. V.; Castro-Obregon, S.; Frankowski, H.; Schuler, M.; Stoka, V.; del Rio, G.; Bredesen, D. E.; Ellerby, H. M. J.Biol.Chem. 277, 21836-21842, (2002)
【非特許文献28】Saji, S.; Kawakami, M.; Hayashi, S.; Yoshida, N.; Hirose, M.; Horiguchi, S.; Itoh, A.; Funata, N.; Schreiber, S. L.; Yoshida, M.; Toi, M. Oncogene, 24, 4531-4539 (2005)
【非特許文献29】Scott and Smith Science 249, 386-390, (1990)
【非特許文献30】Shah, Y. M.; Basrur, V.; Rowan, B. G. Mol Cell Endocrinol. 219, 127-139, (2004)
【非特許文献31】Uramoto, H.; Sugio, K.; Oyama, T.; Nakata, S.; Ono, K.; Yoshimastu, T.; Morita, M.; Yasumoto, K. Lung Cancer 49, 55-62 (2005)
【非特許文献32】Zhang, G. J.; Kimijima, I.; Onda, M.; Kanno, M.; Sato, H.; Watanabe, T.; Tsuchiya, A.; Abe, R.; Takenoshita, S. Clin Cancer Res 5, 2971-2977 (1999)
【非特許文献33】Zuckernann et al. J Med Chem 37, 2678-85 (1994)
【非特許文献34】Ou,K.,Kesuma,D.,Ganesan,K.,Yu,K. et al., J Proteome Res.2006,5,2194-2206.
【配列表フリーテキスト】
【0210】
配列番号58は、PA2G4逆転写フォワードプライマーである。
配列番号59は、逆転写リバースプライマーである。
配列番号60は、ベータ−アクチン逆転写フォワードプライマーである。
配列番号61は、ベータ−アクチン逆転写リバースプライマーである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における細胞増殖異常の存在、素因、及び/又は、重篤度を検出及び/又は定量化する方法であって、
(a)対象からの少なくとも1つのサンプルを用意すること;
(b)PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異、並びに/あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を測定すること;
(c)PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異、並びに/あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を、少なくとも1つのコントロールのものと比較することを含み、発現における違いにより、前記対象における細胞増殖異常の存在、又は、素因、及び/又は、重篤度が示されるものである方法。
【請求項2】
対象における細胞増殖異常のための処置の効力をモニターする方法であって、
(a)対象からの少なくとも2つのサンプルであって、それぞれのサンプルが異なる時点で得られるサンプルを用意すること;
(b)PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異、あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を測定すること;及び
(c)少なくとも2つのサンプルにおけるPA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異、並びに/あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を比較することを含む方法。
【請求項3】
対象における細胞増殖異常の結果を予後判定する方法であって、
(a)対象からの少なくとも1つのサンプルを用意すること;
(b)PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異、並びに/あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を測定すること;
(c)PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異、並びに/あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を、少なくとも1つのコントロールのものと比較することを含み、発現における違いにより、前記対象における細胞増殖異常の予後が示されるものである方法。
【請求項4】
前記コントロールは、細胞増殖異常と診断されていない少なくとも1つの対象である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記遺伝子、そのRNA及び/又は変異は、ヒトPA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異であり、前記PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントは、ヒトPA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントである、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記検出は、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントを少なくとも1つのスルフェニルハライド試薬により標識し、その後、2次元ゲル電気泳動及び質量分析法によって行う、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記スルフェニルハライド試薬は2−ニトロベンゼンスルフェニルクロリド(NBS)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
対象における細胞増殖異常を処置する方法であって、PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異の発現を変化させることを含む方法。
【請求項9】
前記PA2G4遺伝子は、配列番号1に示される配列を有する、請求項1〜3及び8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記変化させることは、前記PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異の全体又は一部にハイブリダイゼーション可能な核酸を投与することによって得る、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ハイブリダイゼーション可能な核酸はDNA又はRNAである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ハイブリダイゼーション可能な核酸はsiRNAである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記変化させることは、前記PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異の全体又は一部にハイブリダイゼーション可能な化合物を投与することによって得る、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
対象における細胞増殖異常を処置する方法であって、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を変化させることを含む方法。
【請求項15】
前記方法は、配列番号2のアミノ酸配列を有するPA2G4タンパク質の発現を変化させることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記変化させることは、前記PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントのアミノ酸配列の全体又は一部に結合するポリペプチドを投与することによって得る、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記結合するポリペプチドは抗体である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記変化させることは、前記PA2G4タンパク質のアミノ酸配列の全体又は一部にハイブリダイゼーション可能な化合物を投与することによって得る、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記発現を変化させることは、前記PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異、並びに/あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を低下させることを含む、請求項8及び14のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つのタンパク質及び/又はそのフラグメントの発現における変動を引き起こす少なくとも1つの薬物についてスクリーニングする方法であって、
(a)少なくとも1つの薬物を少なくとも1つの対象に投与すること;
(b)少なくとも1つのタンパク質を前記対象から得ること;
(c)前記タンパク質の少なくとも1つのアミノ酸残基を少なくとも1つの試薬により標識すること;及び
(d)前記タンパク質を質量分析法によって分析し、それにより、前記少なくとも1つのタンパク質及び/又はそのフラグメントを特定し、発現の変動が生じているかどうかを明らかにすることを含む方法。
【請求項21】
前記分析する工程(d)は、前記タンパク質を第1の特徴に基づいて分離し、場合により前記タンパク質を第2の特徴に基づいて分離し、前記タンパク質をイオン化し、前記分離されたタンパク質を検出及び特定することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記タンパク質及び/又はそのフラグメントはPA2G4タンパク質及び/又はそのフラグメントである、請求項20のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記PA2G4タンパク質は配列番号2の配列を有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記試薬はスルフェニルハライドである、請求項20のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
前記試薬は2−ニトロベンゼンスルフェニルクロリド(NBS)である、請求項20のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記アミノ酸残基はトリプトファンである、請求項20のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記分離する工程は、質量、電荷、官能基及び等電点からなる群から選択される少なくとも1つの特徴に基づく、請求項21のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記分離する工程は、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)、二次元ゲル電気泳動(2DE)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び/又はフリーフロー電気泳動(FFE)のための工程である、請求項21のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記イオン化は、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、マトリックス支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)、表面増強レーザー脱離/イオン化(SELDI)、ナノスプレーイオン化、大気圧化学的イオン化(APCI)、化学的イオン化(CI)、電子衝撃(EI)、高速原子衝撃(FAB)、電界脱離/電界イオン化(FD/FI)及びサーモスプレーイオン化(TSP)からなる群から選択される、請求項21のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記分析する工程(d)はタンデム質量分析法によって行う、請求項20のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記タンデム質量分析法では、四重極飛行時間型配置が使用される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
少なくとも1つの候補を、臨床試験、実験及び/又は診断検査のために選択する方法であって、
(a)少なくとも1つの対象からの少なくとも1つのサンプルを提供すること;
(b)PA2G4遺伝子及び/又はその変異、あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を測定すること;及び
(c)前記PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異、並びに/あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントの発現を、少なくとも1つのコントロールのものと比較することを含み、発現における違いにより、前記対象が候補として好適であることが示されるものである方法。
【請求項33】
前記コントロールは、細胞増殖異常と診断されていない少なくとも1つの対象である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記コントロールは、細胞増殖異常と診断されていない1つの対象である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞増殖異常はがんである、請求項1〜3、8、14、20及び32のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記細胞増殖異常は乳がんである、請求項1〜3、8、14、20及び32のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記対象は哺乳動物である、請求項1〜3、8、14、20及び32のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記対象はヒトである、請求項1〜3、8、14、20及び32のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
対象における細胞増殖異常の診断及び/又は予後評価のための診断及び/又は予後キットであって、PA2G4遺伝子、そのRNA及び/又は変異にハイブリダイゼーション可能な少なくとも1つの分子、並びに/あるいは、PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントに結合する少なくとも1つの分子を含むキット。
【請求項40】
前記分子は、PA2G4遺伝子の転写物にハイブリダイゼーション可能なsiRNAである、請求項39に記載の診断及び/又は予後キット。
【請求項41】
前記分子は、前記PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントに結合するタンパク質である、請求項39に記載の診断及び/又は予後キット。
【請求項42】
前記分子は、前記PA2G4タンパク質、その誘導体、変異体及び/又はフラグメントに結合する抗体である、請求項39のいずれかに記載の診断及び/又は予後キット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図7】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公表番号】特表2009−542191(P2009−542191A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501060(P2009−501060)
【出願日】平成19年7月11日(2007.7.11)
【国際出願番号】PCT/JP2007/064288
【国際公開番号】WO2008/007807
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】