説明

診断システム、及び診断方法

【課題】特別なハードウエアを設けることなく、かつ、診断を行う対象のパッケージ以外の動作しているコンピュータシステムの性能を低下させたり、障害を発生させることなく、当該パッケージの診断を行う技術を提供する。
【解決手段】少なくともプロセッサと、キャッシュメモリと、前記プロセッサによる前記キャッシュメモリへのアクセスを制御するキャッシュ制御部とを有するCPUパッケージと、前記CPUパッケージを診断する診断プログラムの実行時に該診断プログラムが使用するアドレス空間が前記キャッシュメモリに格納される範囲内の診断プログラムを前記キャッシュメモリに書き込むパッケージ診断手段と、前記CPUパッケージと前記パッケージ診断手段とを接続する診断パスとを有するパッケージ診断システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CPU(Central Processing Unit)パッケージを診断する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータシステムにおけるパッケージの診断は、コンピュータシステムの動作中に行われている。
【0003】
コンピュータシステムの動作中にパッケージの診断を行う場合、次の2通りの方法がある。第1の方法は、ハードウエア自体の診断機能を用いてパッケージの診断を行う方法である。
【0004】
第2の方法は、ハードウエア上で動作する診断プログラムを実行して、回路を動作させてパッケージの診断を行う方法である。
【0005】
特許文献1には、診断プロセッサが、診断パスを介して診断プログラムをメモリに書き込む技術が開示されている。
【0006】
特許文献2には、ROM(Read Only Memory)に格納されている診断プログラムをキャッシュメモリにコピーして、コピーされたキャッシュメモリ上の診断プログラムを実行する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006‐171962号公報
【特許文献2】特開平4−170647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ハードウエア自体の診断機能を用いてパッケージの診断を行う場合、ハードウエアに、診断のための専用の回路を設ける必要がある。また、診断範囲を拡大する場合、ハードウエアの増加、及びハードウエアの修正が必要になる。
【0009】
ハードウエア上で動作する診断プログラムを実行することで回路を動作させてパッケージの診断を行う場合、該回路は、診断プログラム以外の動作でも使用されているため、動作中の他の装置に影響を与えてしまう。更に、パッケージ診断するためには、コンピュータシステム一式といった大規模な設備が必要になる。
【0010】
特許文献1の技術は、診断プログラムの容量については考慮されていない。従って、診断プログラム実行時にシステム性能が低下する恐れがある。又、障害の発生を恐れて、診断を実行できない場合もある。
【0011】
特許文献2の技術は、特許文献2の図2に示されるように、診断プログラムをROMからキャッシュメモリにコピーする際に、システムのバスを使用している。また、特許文献2の技術は、診断プログラムの容量がキャッシュメモリの容量未満となるようにすることは考慮されているが、診断プログラム実行時の作業エリアをキャッシュメモリを含むメインメモリに展開することを前提としている。このため、診断プログラム実行時に該診断プログラムが使用するアドレス空間をキャッシュメモリに格納できない場合、該診断プログラムを実行するために、メインメモリにアクセスせざるを得ない。メインメモリにアクセスをするということは、システムのバスを使用するということである。コンピュータシステムの動作中に、システムのバスを使用すると、システム性能の低下や、障害発生の要因になる。
【0012】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、上記課題を解決することである。すなわち、特別なハードウエアを設けることなく、かつ、診断を行う対象のパッケージ以外の動作しているコンピュータシステムの性能を低下させたり、障害を発生させることなく、当該パッケージの診断を行う技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する本発明は、少なくともプロセッサと、キャッシュメモリと、前記プロセッサによる前記キャッシュメモリへのアクセスを制御するキャッシュ制御部とを有するCPUパッケージと、前記CPUパッケージを診断する診断プログラムの実行時に該診断プログラムが使用するアドレス空間が前記キャッシュメモリに格納される範囲内の診断プログラムを前記キャッシュメモリに書き込むパッケージ診断手段と、前記CPUパッケージと前記パッケージ診断手段とを接続する診断パスとを有することを特徴とするパッケージ診断システムである。
【0014】
上記課題を解決する本発明は、プロセッサとキャッシュメモリとキャッシュ制御部とを有するCPUパッケージの診断の実行時に使用されるアドレス空間が該キャッシュメモリに格納される範囲内の診断プログラムを、キャッシュメモリに書き込むステップと、前記プロセッサが前記診断プログラムを実行する診断ステップとを有することを特徴とするパッケージ診断方法である。
【発明の効果】
【0015】
特別なハードウエアを設けることなく、かつ、診断を行う対象のパッケージ以外の動作しているコンピュータシステムの性能を低下させたり、障害を発生させることなく、当該パッケージの診断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第2の実施形態の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の診断システムの構成図である。
【0018】
図1に示されるように、本発明の実施の形態1に係る診断システムは、CPUパッケージ1と、診断部3と、診断パス4とを有する。
【0019】
CPUパッケージ1と診断部3とは診断パス4によって接続されている。
【0020】
CPUパッケージ1は、プロセッサ11と、キャッシュ制御部12と、キャッシュメモリ13とを有する。
【0021】
診断部3は、診断パス4を介して、キャッシュメモリ13に、CPUパッケージ1内のプロセッサ11が正常に動作するかを診断するための診断プログラムデータを書き込む。
【0022】
キャッシュメモリ13は、データを保持することができる。更にキャッシュメモリ13からデータを読み出すことや、キャッシュメモリ13にデータを書き込むことができる。
【0023】
キャッシュ制御部12は、プロセッサ11によって要求されたアドレス空間が、キャッシュメモリ13に格納されるように制御する。すなわち、キャッシュ制御部12は、プロセッサ11が、CPUパッケージ1以外のシステムにアクセスしないように制御する。こうすることで、キャッシュ制御部12は、キャッシュメモリ13が更新されたからといって、メインメモリを更新しないように、メインメモリの更新規則を制御することができる。
【0024】
尚、CPUパッケージ1を診断するための診断プログラムは、該診断プログラムの容量がキャッシュメモリに格納できる容量で、かつ、該診断プログラム実行時に該診断プログラムが使用するアドレス空間がキャッシュメモリ13に格納される範囲内となるように作成されている。
【0025】
続いて、本実施の形態の動作について図2を用いて説明する。
【0026】
まず、CPUパッケージ1の診断処理を開始するよう指示が出力されると、診断部3は、診断パス4を介してキャッシュメモリ13に、CPUパッケージ1内のプロセッサ11が正常に動作するかを診断するための診断プログラムを書き込む(S1)。
【0027】
キャッシュメモリ13に診断プログラムが書き込まれると、プロセッサ11は、キャッシュメモリ13に書き込まれた診断プログラムを実行する(S2)。キャッシュ制御部12は、プロセッサ11がキャッシュメモリ13に書き込まれた診断プログラムを実行する際に、キャッシュメモリ13のアドレス空間を使用するように制御する。すなわち、キャッシュ制御部12は、診断プログラムを実行する際に、プロセッサ11がCPUパッケージ1以外のシステムにアクセスしないように制御している。
【0028】
続いて、プロセッサ11が正常に動作したかどうか結果が出力され(S3)、診断処理を終了する。
【0029】
上述のように、本実施の形態における診断システムは、CPUパッケージ診断プログラムを該CPUパッケージ内のキャッシュメモリに書き込むように構成されている。このため、該CPUパッケージ内のプロセッサが該診断プログラムを実行する際に使用するメモリ部は、該CPUパッケージ内のキャッシュメモリである。つまり、CPUパッケージ内のプロセッサは、該診断プログラムを実行する際、該CPUパッケージ以外のシステムにはアクセスしない。すなわち、システムのバスは使用されない。従って、本実施の形態における診断システムは、高速に診断プログラムを実行することができる。
【0030】
また、本実施の形態における診断システムでは、診断を行う対象のパッケージ内のプロセッサは、該パッケージ以外へはアクセスできない構成なっている。このため、少なくとも診断を行う対象のパッケージと、該パッケージに診断プログラムを書き込む診断部とを用いれば、該パッケージを診断することができるため、大規模な設備が不要である。
【0031】
(実施の形態2)
続いて、本発明の実施の形態2として、本発明の診断システムを、複数のパッケージを有し、複数のプロセッサが存在する大規模なコンピュータシステムに適用した場合について説明する。
【0032】
図3に示されるように、本発明の実施の形態2に係るパッケージ診断システムは、実施例1で説明した構成に加えて、CPUパッケージ2と、MMU(Main Memory Unit)パッケージ6と、システムバス5とを更に有する。
【0033】
CPUパッケージ1と、CPUパッケージ2と、MMUパッケージ6とはシステムバス5によって各々接続されている。
【0034】
CPUパッケージ2は、プロセッサ21と、キャッシュ制御部22と、キャッシュメモリ23とを有する。
【0035】
MMUパッケージ6は、メインメモリ制御部62と、メインメモリ63とを有する。
【0036】
メインメモリ制御部62は、メインメモリ63を制御する。
【0037】
キャッシュメモリ13は、データを保持することができる。更にキャッシュメモリ13からデータを読み出すことや、キャッシュメモリ13にデータを書き込むことができる。すなわち、キャッシュメモリ13は、メインメモリ63と同様の働きをすることができる。
【0038】
キャッシュ制御部12は、プロセッサ11によって要求されたアドレス空間が、キャッシュメモリ13に格納されるように制御する。すなわち、キャッシュ制御部12は、プロセッサ11が、MMUパッケージ6のメインメモリ63や、CPUパッケージ2のキャッシュメモリ23等に、システムバス5を使用してアクセスしないように制御する。こうすることで、キャッシュ制御部12は、キャッシュメモリ13が更新されたからといって、メインメモリ63を更新しないように、メインメモリ63の更新規則を制御することができる。
【0039】
尚、CPUパッケージ1は、動作中のコンピュータシステムから論理的に切り離された状態にあるものとする。すなわち、CPUパッケージ1内のプロセッサ11は、CPUパッケージ1以外のシステムにアクセスすることができない。
【0040】
また、CPUパッケージ1内のプロセッサ11が正常に動作するかを診断するための診断プログラムは、該診断プログラムの容量が該CPUパッケージ内のキャッシュメモリに格納できる容量で、かつ、該診断プログラム実行時に該診断プログラムが使用するアドレス空間が該CPUパッケージ内のキャッシュメモリに格納される範囲内となるように作成されている。
【0041】
その他の要素については、実施の形態1と同様であるため、説明は省略される。
【0042】
本実施の形態における動作については、実施の形態1と同様であるため、説明は省略される。
【0043】
上述のように、本実施の形態における診断システムにおいて、診断を行う対象のCPUパッケージは、動作中のコンピュータシステムから論理的に切り離された状態にある。このため、該CPUパッケージ内のプロセッサが使用するのは、該CPUパッケージ内のキャッシュメモリであり、該CPUパッケージ以外のシステム(例えば、MMUパッケージ内のメインメモリや、該CPUパッケージ以外のCPUパッケージ内のキャッシュメモリ)を使用しない。それ故、該CPUパッケージ内のプロセッサが、該CPUパッケージ以外の動作中のCPUパッケージのキャッシュメモリやMMUパッケージのメインメモリにシステムバスを使用してアクセスすることはない。従って、本実施の形態における診断システムは、動作中のコンピュータシステムに影響を与えることなく、高速に診断プログラムを実行することができる。
【0044】
本発明によれば、診断を行う対象のパッケージ内のプロセッサは、該パッケージ外へアクセスできない構成になっている。このため、本発明における診断システムは、動作中のコンピュータシステムに影響を与えることなく、診断することができる。
【0045】
また、本発明によれば、ソフトウエアによる診断を行っているので、診断の実施、および診断範囲向上のために、特別のハードウエアを用意する必要がない。
【0046】
また、本発明によれば、診断を行う対象のパッケージ内のプロセッサは、該パッケージ外へアクセスできない構成になっている。このため、少なくとも診断を行う対象のパッケージと診断部とを用いれば診断することができる。すなわち、本発明における診断システムは、大規模な設備を必要としない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、特に複数のパッケージを有し、複数のプロセッサが存在する大規模なコンピュータシステムに適用できる。
【符号の説明】
【0048】
1 CPUパッケージ
2 CPUパッケージ
3 診断部
4 診断パス
5 システムバス
6 MMUパッケージ
11 プロセッサ
12 キャッシュ制御部
13 キャッシュメモリ
21 プロセッサ
22 キャッシュ制御部
23 キャッシュメモリ
62 メインメモリ制御部
63 メインメモリ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともプロセッサと、キャッシュメモリと、前記プロセッサによる前記キャッシュメモリへのアクセスを制御するキャッシュ制御部とを有するCPUパッケージと、
前記CPUパッケージを診断する診断プログラムの実行時に該診断プログラムが使用するアドレス空間が前記キャッシュメモリに格納される範囲内の診断プログラムを前記キャッシュメモリに書き込むパッケージ診断手段と、
前記CPUパッケージと前記パッケージ診断手段とを接続する診断パスとを有する
ことを特徴とするパッケージ診断システム。
【請求項2】
前記CPUパッケージは、前記CPUパッケージ以外の動作中のコンピュータシステムから論理的に切り離されている
ことを特徴とする請求項1に記載のパッケージ診断システム。
【請求項3】
少なくともメインメモリと、前記メインメモリを制御するメインメモリ制御部とを有するMMUパッケージと、
前記CPUパッケージと前記MMUパッケージとを接続するシステムバスとを更に有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパッケージ診断システム。
【請求項4】
プロセッサとキャッシュメモリとキャッシュ制御部とを有するCPUパッケージの診断の実行時に使用されるアドレス空間が該キャッシュメモリに格納される範囲内の診断プログラムを、キャッシュメモリに書き込むステップと、
前記プロセッサが前記診断プログラムを実行する診断ステップ
とを有することを特徴とするパッケージ診断方法。
【請求項5】
前記CPUパッケージの診断実行時、前記CPUパッケージは前記CPUパッケージ以外の動作中のコンピュータシステムから論理的に切り離されている
ことを特徴とする請求項4に記載のパッケージ診断方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項3いずれか一つのパッケージ診断システムにおいて請求項4又は請求項5の診断が行われることを特徴とするパッケージ診断方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−224839(P2010−224839A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71003(P2009−71003)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000168285)エヌイーシーコンピュータテクノ株式会社 (572)
【Fターム(参考)】