説明

診断支援システム

【課題】健康診断の血液・尿検査データと問診データを用いて、可能性のある疾患を判断し、その処置、投薬などを提示するとともに、受診者の体質を考慮した疾患の原因や予防策も提示することができる診断支援システムを提供する。
【解決手段】データベース装置1は、健常者に対する血液・尿検査データおよび問診データを蓄積する基盤データベース1−1、健康診断の受診者または患者の検査データおよび問診データを蓄積する検診データベース1−3、ならびに疾患毎に血液・尿検査データの異常、正常に関する情報をデータ化して蓄積するとともに疾患に関連する記述データを蓄積する疾患データベース1−2を有する。分析装置3は、ユーザインタフェース装置4が受け取ったカウンセラーの入力データをもとに、データベース装置1を検索し、抽出したデータに基づき分析計算を行い、その分析結果をユーザインタフェース装置4に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断支援システムに関し、より詳しくは、健康診断の受診者または患者を対象として、検査結果に基づいた診断データベースおよび疾患・治療などに関する知識データベースを活用した、診断および治療ポイントを提示するとともに、疾患の可能性や未病状態の判定を支援する診断支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の診断支援システムは、血液の検査結果などのデータを知識データベースに照らして、もっとも確率の高い病気などを提示して診断を支援するシステムであった。
【0003】
臨床検査データを蓄積して、検査データを総合的に判断して診断支援を行うシステムはすでに多種類存在している。これらの既存技術は基本的には、検査データや問診データなどの組み合わせパターンと病気の場合に起こりうる検査データなどを引き当てて、最も可能性の高い病気を特定している。あるいは、可能性のない病気を除外していくことで検査データなどと病気との関係を調べて提示している。
【0004】
しかしながら、これら既存の仕組みは、病気が顕在化(あるいは、患者本人は自覚してなくても検査データから明らかになっている状態)していることが前提となっていて、これから病気に向かおうとしているいわゆる未病状態については関知していない。
【0005】
現在行われている健康診断などでは、病気の早期発見・早期治療がうたわれているが、健康診断で実施されている血液検査および尿検査などの項目数は10数〜20数項目が一般的であり、血液・尿検査からは詳細に調べているとは言い難い。現在の健康診断は、病気の痛みなどの自覚症状がないために「気がつかなかった」、「少し気になるけれどもほっておいた」結果、病気が進行してしまった状態を健康診断で指摘されているにすぎない。
【0006】
現在行われているメタボリックシンドロームの予防・改善を目的とした特定検診(いわゆるメタボ検診)では、血糖値、中性脂肪、血圧、腹囲そのほか生活習慣などに注目してメタボリックシンドロームの予備群を特定して健康指導、生活指導などを行うものである。
【0007】
しかし、このような特定検診は、その他の病気の罹りやすさなどについては、関与していないため、病気の予防という観点からは片手落ちになっている。健康診断の受診者に病気の可能性や罹りやすさを注意できれば、受診者は生活環境や習慣に気をつけて病気を回避することが可能となり、本当の意味での病気の予防につながる。
【0008】
現在行われている健康診断だけでは、受診者がどのような病気に罹りやすい体質を持っているか、現在の生活習慣を続けた結果、将来どのような病気に罹りやすい状態にあるかなどを予想することは難しく、さらにどのように生活習慣を改善していけば、将来予想される病気を回避できるかを個人個人に対して指摘することは不可能である。医師や保健師は、それぞれの知識と経験を加味して受診者に対して健康指導を行っているが、現在行われている健康指導は、個人個人の体質までデータに基づいて考慮した指導ではなく、一般的な傾向を受診者個人に割り当てての指導となっているものが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、健康診断の血液・尿検査データと問診データを用いて、可能性のある疾患を判断し、その処置、投薬などを提示するとともに、受診者の体質を考慮した疾患の原因や予防策も提示することができる診断支援システムを提供することを課題とする。
【0010】
また、本発明は、カウンセラーおよび受診者が疾患の可能性やその原因、対処方法、予防策などを理解しやすくすることができる診断支援システムを提供することをも課題とする。
【0011】
さらに、健常者が現在の健康状態を維持していくためには、どのように生活習慣を改善すべきかなどを提示することによって、未然に病気を防ぐ対策をとることができる診断支援システムを提供することをも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するため、健常者に対する血液・尿検査データおよび問診データを蓄積する基盤データベース、健康診断の受診者または患者の検査データおよび問診データを蓄積する検診データベース、ならびに疾患毎に血液・尿検査データの異常、正常に関する情報をデータ化して蓄積するとともに血液・尿検査データが異常になる原因、代表的な処置方法、代表的な投薬、予防方法などの疾患に関連する記述データを蓄積する疾患データベースを備えたデータベース装置と、健康診断の受診者の血液・尿検査データを前記基盤データベースに登録させる機能およびカウンセラーによる追加情報を受け取り、前記基盤データベースおよび前記検診データベースに登録させる機能を有するデータ更新装置と、診断支援に必要な各種データの授受を行うユーザインタフェース装置と、前記ユーザインタフェース装置が受け取ったカウンセラーの入力データをもとに、前記データベース装置を検索し、抽出したデータに基づき分析計算を行い、その分析結果を前記ユーザインタフェース装置に表示する分析装置とを具備することを特徴とする診断支援システムを提供する。
【0013】
また、本発明によれば、上記発明において、前記ユーザインタフェース装置のみがインターネットを介して接続されていることを特徴とする診断支援システムを提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、健康診断の受診者を対象としており、健康診断の血液・尿検査データと問診データを用いて、可能性のある疾患を判断し、その処置、投薬などを提示するとともに、受診者の体質を考慮した疾患の原因や予防策も提示することができる。本発明は、検索結果を「原因→診断根拠→診断→治療処置・投薬」、「原因→改善点→予防」のような一連のストーリーとして表現することによってカウンセラーおよび受診者ないし患者が疾患の可能性やその原因、対処方法、予防策などを理解しやすくしている。本発明によれば、受診者が自身の病気の状態を把握し、その原因と対処方法を理解することによって、治療や予防の効果があがることが期待できる。
【0015】
また、本発明は、病気の自覚のない未病状態にある受診者に対して非常に効果的である。本発明によれば、疾患の可能性を示し、その対処方法として生活習慣などの改善方法を具体的に示すことと、病気とその原因および生活習慣との関係を明確に示すことによって、受診者の理解を促すことで治療、予防などの対処を実行できるようになる。
【0016】
さらに、本発明によれば、健常者に対しては、検査データなどから体質の傾向を見つけ出しておき、同様の体質や生活習慣をもつモデルがどのように変化していくかを示すことができる。そして、健常者が現在の健康状態を維持していくためには、どのように生活習慣を改善すべきかなどを提示することによって、未然に病気を防ぐ対策となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る診断支援システムの構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】前記実施形態の診断支援システムにおけるデータベース装置の構成例を示す図である。
【図3】ユーザインタフェース装置だけをインターネットを介して接続した診断支援システムの説明図である。
【図4】本発明の診断支援システムをコンピュータで構成した例を模式的に示す図である。
【図5】基盤データベースのデータ構成モデルを示す図である。
【図6】疾患データベースのデータ構成モデルを示す図である。
【図7】検診データベースのデータ構成モデルを示す図である。
【図8】データから疾患を抽出する検索例を示す図である。
【図9】それぞれの疾患に関して、診断の根拠(検査項目の組み合わせ)、治療の方法や投薬、疾患の原因、予防のポイントと改善の可能性などのデータの表示モデルを示す図である。
【図10】複数疾患がある場合のネットワークを示す図である。
【図11】カウンセラーによるデータの更新モデルを示す図である。
【図12】前記実施形態の寝台支援システムの全体の動作フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る診断支援システムについて述べる。
【0019】
本実施形態の診断支援システムは、図1に示すように、大別して、データベース装置1、データ更新装置2、分析装置3およびユーザインタフェース装置4の4つのブロックから構成されている。
【0020】
データベース装置1は、図2に示すように、基盤データベース1−1、疾患データベース1−2、検診データベース1−3を有するとともに、これらのデータベースのほかにシステムを管理運営するためのデータベース1−4も備えており、それぞれデータを保存し管理している。
【0021】
データ更新装置2は、健康診断の受診者または患者の血液・尿検査データおよび問診データを検診データベース1−3に登録させるための機能、カウンセラーによる追加情報を疾患データベース1−2や基盤データベース1−1に登録させるための機能などを備えている。医師や保健師などのカウンセラーは、本実施形態のシステムで提示された情報に対して、経験などを加味したカウンセリング情報として受診者にカウンセリングを行うが、このときデータ更新装置2は、カウンセラーが使用した情報と使用しなかった情報とをユーザインタフェース上で区別をつけて保存する機能をもつことが好ましい。この機能は、データベースの参照によってとりだした情報に対してカウンセラーが受け入れるかどうかの可否を情報として保存し、次回同様の事例に対してデータベース参照を行った時に参照の仕方の修正情報として使用することを可能にする。また、提示する情報として不足があれば、カウンセラーが情報を任意に追加でき、データ更新装置2は追加情報を基盤データベース1−1や疾患データベース1−2に登録し、これらのデータベースはカウンセラーの使用により情報の追加によって成長する仕組みを備えたものとなる。
【0022】
分析装置3は、ユーザインタフェース装置4からカウンセラーが入力したパラメータに基づいてデータベースを検索して抽出したデータの分析計算を行って、その結果をユーザインタフェース装置4に合わせて成形する機能を備えている。また、分析装置3は、基盤データベース1−1の検査データを分析することによって、相関する傾向を導きだし、問診情報の生活習慣や既往歴などと関係づけることによって、病気の傾向と検査値や生活習慣との関係性を求めてテンプレートとし、複数の体質パターンと生活パターンを生成する。
【0023】
ユーザインタフェース装置4は、カウンセラーが追加データを登録したり、分析パラメータを入力したりする入力機能と、データベースを検索し分析した情報をカウンセラーに提示する機能を備えている。このユーザインタフェース装置4は、単独のコンピュータから操作できるようなスタンドアロン型のインタフェースとしてもよいし、また、ウェブブラウザを通して操作できるようなネットワーク型のインタフェースとしてもよい。
【0024】
また、本発明の診断支援システムは、単独のコンピュータ上にすべての装置を備えてもよいし、イントラネットワークに接続された複数のコンピュータにそれぞれの装置を備えるように構成してもよい。また、図3に示すように、ユーザインタフェース装置4だけをインターネット5を介して接続できるようにしてもよい。インターネット5を介して接続する場合は、インターネットサーバコンピュータには暗号化の装置が必要である。
【0025】
本発明の診断支援システムをコンピュータで構成した例を模式的に図4に示す。この診断支援サーバ11は、データベース部12、入出力インタフェース部(I/O)13、入力部14、処理部(CPU)15、主記憶部16および表示部17を備え、これらはバス18により接続される。ここでは代表的な機能実現手段のみを例示したが、もちろん、その他必要な各種機能実現手段ないし周辺機器を設けることができる。
【0026】
データベース部12は、前記データベース装置1の機能を有し、入出力インタフェース部13は、外部とデータ等のやりとりを行う。入力部14は、キーボードやマウス等の情報入力手段からなり、必要な情報の入力に使用される。処理部15は、前記データ更新装置2および分析装置3の機能を備えるとともに、各部の動作の制御等を行う。また、主記憶部16は、診断支援に必要なプログラムを格納し、表示部17は、前記ユーザインタフェース装置4の機能を有し、分析結果等をディスプレイ表示する。
【0027】
次に、データベースに関しての実施モデルを以下に示す。
【0028】
基盤データベース1−1は、基本的には健常者に対して100種類以上の血液・尿検査データと食生活、運動、活動状況などの生活習慣に関しての問診データを空きがないようにデータを収集したものをデータベース化している。図5に、基盤データベース1−1の実施モデルを例示する。図5に示すように、基盤データベース1−1では、健常者の様々な状態についての詳細な検査結果と問診データを網羅している。また、この基盤データベース1−1の被験者は短期間(例えばおよそ3か月毎)にデータを採取したものであり、被験者毎に時系列に並べて調べることも可能である。図5において、○は検査値が正常値あるいは良好な状態を示し、●は検査値が異常値あるいは良好でない状態を示す(以下同様)。これらのデータは、図4の処理部15が、入力部14が入力を受け付けた血液・尿検査データに基づいて、予め設定した基準に基づき正常値か異常値かを判断し、基盤データベース1−1に登録させる。血液・尿検査データは、検査値を登録すると同時に、その値が基準値の範囲内であるかどうかをデータ化しておく。検査の基準値は、検査方法や検査試薬によって基準値が変更されることが頻繁にあり、これらを正規化する一つの手段として、基準値内にあるか異常値であるかの判断のみを使用している。さらに、基準値から非常に大きくはずれた検査値であった場合は、特別扱いをするために別の記号を設けてデータベースに登録してもよい。
【0029】
疾患データベース1−2は、医学書や研究論文から疾患毎に血液・尿検査データの異常/正常をデータ化し、原因となる生活習慣などについてデータベース化したものである。疾患データベース1−2の実施モデルを図6に示す。疾患データベース1−2は、さらに、代表的な処置方法、疾患の原因、代表的な投薬、予防方法などを記述データとしてデータベース化している。本発明では、基本的には健康診断の受診者を対象としているところから、この疾患データベース1−2に登録する疾患は、一般に高頻度で見られる疾患(common disease)を中心に登録する。
【0030】
検診データベース1−3は、健康診断の受診者(Client01・・・)毎に、血液・尿検査データおよび問診データを蓄積する。検診データベース1−4の実施モデルを図7に示す。この検診データベース1−3は、基盤データベース1−1のようにすべての血液・尿検査や問診項目にデータが埋まっているとはかぎらず、通常図7に示すように、ところどころに穴のあいたデータベースとなる。
【0031】
本発明の診断支援システムにより、受診者データからカウンセリングを支援するためのデータを導くには基本的には以下の手法を用いる。
【0032】
(1)受診者の健康診断データを基盤データベース1−1に引き当て、一定の尤度の中で検査結果が一致する事例を、分析装置3により、基盤データベース1−1から見つけ出しておく。ここでは、複数の事例が基盤データベース1−1の中から見つけ出されることになる。
【0033】
(2)次に、分析装置3により、基盤データベース1−1の中の生活習慣などのデータを参照して、受診者の問診結果ともっとも近いものを事例の中から絞り込む。
【0034】
(3)次に、分析装置3により、基盤データベース1−1から導き出した事例に関して時系列データと病歴などを調べ、受診者が現在の生活習慣を続けた場合に予想される病気の変化を求める。
【0035】
(4)次に、分析装置3が疾患データベース1−2を参照して、予想される病気の変化に対応した治療項目を取り出す。
【0036】
(5)また、分析装置3が疾患データベース1−1から改善すべき食事、運動、睡眠などの生活習慣を求める。
【0037】
これらの手順によって、受診者データから予想される病気、治療方法、生活習慣の改善などの一連の情報を導きだすことが可能となる。
【0038】
次に、上記のデータベース装置1の各モデルデータを用い、受診者から疾患モデルを抽出する検索例を以下に示す。
【0039】
例えば、図7の受診者「Client05」は、項目A, Bが異常値(●)で、項目D, Fが基準値内(○)、項目C, E, Gの検査を実施していない例である。項目A, B, D, Fを用いた検索条件「項目A=● and 項目B=● and 項目D=○ and 項目F=○」で分析装置3が基盤データベース1−1を検索することによって、「#0003」と「#0004」の2レコードを得る。分析装置3は、疾患データベース1−2に「#0004」の検査項目を適用すると一致したレコードとして「疾患05」を取り出すことができる(第1候補)。また、「Client05」の検索条件の中から1つを省いて検索することによって、「疾患02」を取り出すことができる(第2候補)。このようにして、受診者のデータから基盤データベース1−1および疾患データベース1−2を検索して、可能性のある疾患のレコードを取り出すことができる。また、「#0004」に関して時系列で検査値の変化をしらべることによって、「Client05」の数値変化の参考とすることができる。「疾患05」について、処置、原因、投薬、予防などの記述を参照して、提示することができる。図8にデータから疾患を抽出する検索例を図示する。
【0040】
受診者の検査データから検索して得られた疾患の可能性の高いものから順に表示するとともに、それぞれの疾患に関して、診断の根拠(検査項目の組み合わせ)、治療の方法や投薬、疾患の原因、予防のポイントと改善の可能性などのデータを図9のような表示モデルを使って検索結果をユーザインタフェース装置4に表示する。
【0041】
また、複数疾患の可能性がある場合は、図10に示すようにやや複雑なネットワークを構成する。多くの場合、病気の可能性は1つだけとは限らず、複数の病気の可能性があり、また、健常者といえども複数の病気の可能性、潜在的な病気の罹りやすさを持っているものと考えられる。例えば、肥満、動脈硬化、高血圧、高血色素量などといった状態は互いに関連があり、対処方法として同じ対処を指し示す場合がある。これらの状態を互いにネットワークとして関連させることによって潜在的な病気の可能性を浮き上がらせることが可能となる。
【0042】
以上のように、本発明では、受診者の検査データや問診データをつかって得られる結果を、診断、診断根拠、病気の原因、治療、予防ポイント、改善の可能性などに分類して関係性のネットワークとしてユーザインタフェース装置4に表示する。また、診断に対しての治療の中で共通する処置や投薬などをまとめてユーザインタフェース装置4に表示する。また、診断された疾患の原因に対して改善がする可能性のある生活習慣などを指摘し、予防方法をユーザインタフェース装置4に示す。このように、本発明では、受診者が診断された疾患に対して何をどうすべきかを明確に示すとともに、予防につなげるためには何をすべきかを表示することが特徴となっている。
【0043】
従来の健康診断のカウンセリングでは、検査と診断は明確に示されているが、何をすべきかが示されていなかった。メタボ検診では食事・運動・睡眠についての指導要点が示されているが、その根拠については詳しく書かれていない。さらに、体質的に罹りやすい疾患に対する注意やその予防策は全く示されていない。本発明では、分析装置3で健康診断データから基盤データベース1−1を照合することによって体質的な可能性を求めることが可能とある。そして求めた体質にしたがって、疾患毎の予防方法に変化を与えることも可能である。
【0044】
本発明による結果は、「原因→診断根拠→診断→治療処置・投薬」、「原因→改善点→予防」の疾患のストーリーに沿って表示されている。カウンセラーは、このストーリーに沿って説明をしていくことで、受診者が自分の病気の状態とその因果関係を理解し、さらに治療についての意味を知るために役立つ。また、罹りやすい病気を提示することとその予防策を提示することによって、受診者が今なにをすべきかを示すことができる。
【0045】
本発明のにはカウンセラーがデータベースを更新するインタフェースも備えており、データ更新装置2が基盤データベース1−1および疾患データベース1−2のデータを更新する。疾患データベース1−1には、疾患毎に血液検査などの検索条件や生活習慣などのデータとともに、処置方法や原因、投薬、予防などに関する記述データも保存されている。カウンセラーは、疾患を特定するための検索条件を適切に変更することができ、また、処置、原因、投薬、予防などの記述データについても変更することができる(図11)。このとき、疾患データベース1−2に登録されていた元のレコードはそのまま残しておき、新たにレコードを追加してそこに、変更データの登録を行う。このようにしてデータを追加していくことにより、データの検索条件のバリエーションが広がり、同時に処置、投薬、原因、予防の記述データの精度も高まっていくことが期待できる。
【0046】
健康な受診者のデータを用いて疾患データベース1−1を検索した場合、疾患モデルとしてはどのモデルとも一致しないので、何も検索されてこない。従来の健康診断では「健康・問題なし」として終わってしまうが、本発明では、基盤データベース1−1に照らして類似した検査値傾向のあるレコードを検索し、その時系列データにあてはめることによって将来的な傾向を予測できる。さらに、受診者の問診データから生活習慣を取り出し、基盤データベース1−1の問診データと照合することで、その予測を裏付けることが可能である。このように健常者に対しても将来的な傾向を提示することによって予防効果が期待できる。
【0047】
本発明の診断支援システムの全体の動作フローを図12に示す。全体としてユーザインタフェースの入出力部を除くと4つのブロックからなっている。
【0048】
ブロックAではカウンセリング対象のクライアントデータを特定して抽出する。このため、このブロックAでは、検診データベース1−3を用い、クライアント検査データ入力、クライアントIDによる検索処理、クライアントIDデータ検索を行うようになっている。
【0049】
また、ブロックBでは疾患を特定するためのデータを生成する。このため、このBでは基盤データベース1−1を用い、基盤データベース引当て検索処理、引当てデータ抽出、データ保管の必要性、検診データ+基盤データの生成を行うようになっている。
【0050】
また、ブロックCでは疾患を特定し、診断、原因、治療、予防などカウンセリングに必要な情報をオブジェクトとして抽出する。このため、このブロックCでは疾患データベース1−2を用い、疾患データ検索処理、疾患候補データ抽出、疾患候補順序処理、検索オブジェクト分類整理、カウンセリングデータ抽出を行うようになっている。
【0051】
さらに、ブロックDでは抽出したオブジェクトの関連性にしたがったネットワークを構成し、カウンセリング内容とリンクしたネットワーク図を生成する。このため、このブロックDでは、オブジェクト配置処理、ネットワーク作図処理、オブジェクト座標定義、疾患ネットワーク表示処理、オブジェクト+カウンセリング処理を行うようになっている。
【0052】
ユーザインタフェースでは、カウンセリングデータ入力、カウンセリング結果出力処理、カウンセリング結果出力、結果表示等が行われる。
【符号の説明】
【0053】
1 データベース装置
1−1 基盤データベース
1−2 疾患データベース
1−3 検診データベース
1−4 システム運営管理データベース
2 データ更新装置
3 分析装置
4 ユーザインタフェース装置
11 診断支援サーバ
12 データベース部
13 入出力インタフェース部(I/O)
14 入力部
15 処理部(CPU)
16 主記憶部
17 表示部
18 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
健常者に対する血液・尿検査データおよび問診データを蓄積する基盤データベース、健康診断の受診者または患者の検査データおよび問診データを蓄積する検診データベース、ならびに疾患毎に血液・尿検査データの異常、正常に関する情報をデータ化して蓄積するとともに血液・尿検査データが異常になる原因、代表的な処置方法、代表的な投薬、予防方法などの疾患に関連する記述データを蓄積する疾患データベースを備えたデータベース装置と、
健康診断の受診者の血液・尿検査データを前記基盤データベースに登録させる機能およびカウンセラーによる追加情報を受け取り、前記基盤データベースおよび前記検診データベースに登録させる機能を有するデータ更新装置と、
診断支援に必要な各種データの授受を行うユーザインタフェース装置と、
前記ユーザインタフェース装置が受け取ったカウンセラーの入力データをもとに、前記データベース装置を検索し、抽出したデータに基づき分析計算を行い、その分析結果を前記ユーザインタフェース装置に表示する分析装置とを具備することを特徴とする診断支援システム。
【請求項2】
前記ユーザインタフェース装置のみがインターネットを介して接続されていることを特徴とする請求項1に記載の診断支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−138376(P2011−138376A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−298675(P2009−298675)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(301003171)
【Fターム(参考)】