説明

診断方法及び治療方法

本発明は、ヒト又は動物における低いAKGレベルに関連する疾患及び状態に対する高い感受性を診断するための方法であって、a)ヒト又は動物から生物学的試料を得るステップと、b)生物学的試料中のアルファケトグルタル酸(AKG)レベルを測定するステップと、c)測定されたAKGレベルを正常平均AKGレベルと比較するステップと、を含み、試料中のAKGレベルが平均レベルより低いことは、様々な疾患に対する感受性が高いことを示す方法に関する。さらに、本発明は、正常平均AKGレベルと比較してAKGレベルの低いヒト又は動物における低いAKGレベルに関連する疾患又は状態の治療又は予防用の医薬品又は栄養補助食品若しくは栄養補助飼料を製造するための、AKG及びその誘導体、代謝物、類縁体若しくは塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む物質の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、診断方法、公知の薬理活性化合物の新たな使用、及び治療方法又は予防方法に関する。より詳細には、本発明は、ヒト又は動物における様々な疾患及び状態に対する高い感受性の診断方法;in vivoにおける治療的処置又は予防のための医薬品又は栄養補助食品若しくは栄養補助飼料を製造するための、ある種の酸及びその誘導体、代謝物、類縁体若しくは塩の新たな使用;並びにヒト又は動物における様々な疾患及び状態の治療方法又は予防方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
コレステロール、低密度脂質及びグリセリドの血漿レベル上昇に関連する疾患又は状態、例えば、動脈硬化症、冠疾患、心不全及び心臓死の先進国における罹患率及び死亡率は、その他のいかなる疾患又は状態に関連する罹患率及び死亡率より高い。米国、欧州及び日本における死亡例全体の約50%は動脈硬化症によるものであると報告されている。
【0003】
骨の脆性が増加している骨粗鬆症は、高齢者、特に女性の健康上の問題であり、近年、この骨疾患は問題となっている。骨粗鬆症性骨折及びそれらに関連する合併症は、人口の年齢構造が高齢化するにつれて、医療費の著しい増加の原因となっている。
【0004】
軟骨機能障害に関連する疾患又は状態は一般的な問題である。現在、米国の人口の約14%が何らかの種類の関節炎の状態に罹患している。
【0005】
新生物疾患は、世界中で最も深刻な健康問題の1つであり、世界中で報告される癌症例の数の増加は重大な問題である。
【0006】
神経系の疾患、例えば、アルツハイマー病は、現在米国において2百万人を超える高齢者が罹患していると推定される。この障害は通常発症が遅いので、罹患した個体数は、高齢者人口の規模の拡大につれて増加し続けるであろう。
【0007】
末期腎臓疾患は、毎年世界中の約650000人の患者が罹患しており、治療費は約200億ドルと推定されている。
【0008】
肝硬変は、しばしば発見されずに進行する一般的な状態である。例えば、デンマークの総人口という大標本では、肝硬変の有病率は4.5%であり、その3分の1が死亡時に診断未確定であった。
【0009】
Helicobacter pyloriは、米国人口の10%超が一生のうちどこかで罹患する消化性潰瘍疾患(PUD)の症例の原因の90%に達すると推定されている。H.pylori感染の世界的有病率は、3億から世界中の人口の3分の2超であると推定される。H.pylori感染はまた、胃腺癌による年間650000例の癌による死に関係している。
【0010】
今日、上述の疾患及び状態を診断治療する方法は多数利用することができる。これらのいくつかの例を挙げるだけでも、以下の文献を挙げることができる。米国特許第5731208号はアテローム性動脈硬化のスクリーニング試験を開示しており、米国特許第6998242号は代謝性骨疾患、特に骨粗鬆症及び関節症の診断方法を開示しており、米国特許第4402934号は関節リウマチ及び関連疾患の診断方法を開示しており、米国特許第6682901号は癌の診断方法を開示しており、米国特許第6391553号はアルツハイマー病の診断方法を開示しており、米国特許第7045282号は腎臓疾患の治療方法及び診断方法を開示しており、米国特許第6986995号は肝臓疾患の診断方法を開示しており、米国特許第7014612号はHelicobacter pylori感染の診断方法を開示している。
【0011】
しかし、まだ現在のところ、上述の疾患及び状態の診断方法及び治療方法を開発し、改善するために、多大の資金と労力が投入されている。そのような疾患及び状態を治療及び/又は診断する新たに改善された、又はより有効な方法は、ヒトの苦痛を大幅に軽減し、かつ/又は、それらの疾患及び状態に関連する今日の莫大な医療費を削減することができるであろう。例えば、疾患の発症の早期警告を実施又は提供するために、容易で、費用が安く、かつ/又は時間のかからない診断技術を開発することが望ましい。さらに、上述の疾患及び状態を治療するために使用することができる、効果的で安全な、痛みの少ない便利な形態の治療方法を開発することが望ましい。
【発明の概要】
【0012】
本発明により、驚くべきことに、ヒト又は動物の生物学的試料中の低いAKGレベルが、様々な疾患及び状態に対する高い感受性を示すことが発見された。したがって、生物学的試料中の低いAKGレベルを検出することは、これらの様々な疾患及び状態の診断及び予後のためになるだけでなく、これらの疾患及び状態の治療的処置又は予防のために使用することができる。
【0013】
本発明の第1の態様では、
ヒト又は動物における低いAKGレベルに関連する疾患及び状態に対する高い感受性を診断するための方法であって、
a)前記ヒト又は動物から生物学的試料を得るステップと、
b)前記生物学的試料中のアルファケトグルタル酸(AKG)レベルを測定するステップと、
c)前記測定されたAKGレベルと正常平均AKGレベルを比較するステップと、
を含み、
前記正常平均レベルより低い前記試料中のAKGレベルが、低いAKGレベルに関連する疾患又は状態に対する高い感受性を示す方法が提供される。
【0014】
本発明の一実施形態では、前記低いAKGレベルに関連する疾患又は状態には、コレステロール、低密度脂質及びグリセリドの血漿レベル上昇に関連する疾患又は状態;骨量減少又は骨脆弱化に関連する疾患又は状態;軟骨機能障害に関連する疾患又は状態;新生物疾患;神経系の疾患;腎不全;肝臓疾患;心臓の状態;脳卒中;創傷治癒不良;並びにHelicobacter pyloriに関連する胃腸管の疾患又は状態が含まれる。
【0015】
本発明の他の実施形態では、前記低いAKGレベルに関連する疾患又は状態には、動脈硬化症、冠疾患、心不全及び心臓死;骨粗鬆症;関節症及び関節リウマチ;新生物疾患及び癌;腎不全;肝硬変、肝炎又は肝不全;心臓発作;脳卒中;創傷治癒不良;Helicobacter pyloriに関連する胃炎、胃及び十二指腸の潰瘍、消化性潰瘍、胃癌並びに胃粘膜関連リンパ組織リンパ腫が含まれる。
【0016】
本発明の他の実施形態では、生物学的試料は血液又は尿である。
【0017】
本発明の他の実施形態では、ヒトにおいて、ヒト集団における正常平均血中AKGレベルは5〜7μg/mlである。
【0018】
本発明の第2の態様では、正常平均AKGレベルと比較してAKGレベルの低いヒト又は動物の治療用の医薬品又は栄養補助食品若しくは栄養補助飼料を製造するための、アルファケトグルタル酸(AKG)及びその誘導体、代謝物、類縁体若しくは塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む物質の使用が提供される。
【0019】
本発明の一実施形態では、正常平均AKGレベルと比較してAKGレベルの低いヒト又は動物における低いAKGレベルに関連する疾患及び状態の治療又は予防用の医薬品又は栄養補助食品若しくは栄養補助飼料を製造するための、アルファケトグルタル酸(AKG)及びその誘導体、代謝物、類縁体若しくは塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む物質の使用が提供される。
【0020】
本発明の他の実施形態では、前記低いAKGレベルに関連する疾患及び状態には、コレステロール、低密度脂質及びグリセリドの血漿レベル上昇に関連する疾患又は状態;骨量減少又は骨脆弱化に関連する疾患又は状態;軟骨機能障害に関連する疾患又は状態;新生物疾患;神経系の疾患;腎不全;肝臓疾患;心臓の状態;脳卒中;創傷治癒不良;並びにHelicobacter pyloriに関連する胃腸管の疾患又は状態が含まれる。
【0021】
本発明の他の実施形態では、前記低いAKGレベルに関連する疾患又は状態には、動脈硬化症、冠疾患、心不全及び心臓死;骨粗鬆症;関節症及び関節リウマチ;新生物疾患及び癌;腎不全;肝硬変、肝炎又は肝不全;心臓発作;脳卒中;創傷治癒不良;Helicobacter pyloriに関連する胃炎、胃及び十二指腸の潰瘍、消化性潰瘍、胃癌並びに胃粘膜関連リンパ組織リンパ腫が含まれる。
【0022】
本発明の他の実施形態では、前記少なくとも1種は、AKG、グルタミン、グルタミン酸及びこれらの酸の薬学的に許容される塩;AKGとアミノ酸又はジ−若しくはトリペプチドとのアミド;グルタミンとその他のアミノ酸とのジ−又はトリペプチド;グルタミン酸とその他のアミノ酸とのジ−又はトリペプチド;前記ジ−又はトリペプチドの薬学的に許容される塩;並びにAKG又はその薬学的に許容される塩と少なくとも1種のアミノ酸との薬学的に許容される物理的混合物、からなる群より選択される。
【0023】
本発明の特定の実施形態では、前記少なくとも1種は、オルニチン−AKG、アルギニン−AKG、グルタミン−AKG、グルタミン酸−AKG、ロイシン−AKG、キトサン−AKG、AKGのアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩又はそれらの混合物からなる群より選択される。
【0024】
本発明の他の実施形態では、ヒト又は動物に投与されるAKGの量は治療有効量である。
【0025】
特定の実施形態では、治療有効量は、1〜1000mg/kg体重/日、10〜400mg/kg体重/日、又は10〜100mg/kg体重/日である。
【0026】
本発明の他の態様では、正常平均AKGレベルと比較してAKGレベルが低いヒト又は動物における低いAKGレベルに関連する疾患又は状態を治療又は予防するための方法が提供され、この方法は、アルファケトグルタル酸(AKG)及びその誘導体、代謝物、類縁体若しくは塩からなる群より選択される少なくとも1種の有効量を、そのような治療又は予防を必要とする個体に投与することを含む。
【0027】
本発明の一実施形態では、前記低いAKGレベルに関連する疾患及び状態には、コレステロール、低密度脂質及びグリセリドの血漿レベル上昇に関連する疾患又は状態;骨量減少又は骨脆弱化に関連する疾患又は状態;軟骨機能障害に関連する疾患又は状態;新生物疾患;神経系の疾患;腎不全;肝臓疾患;心臓の状態;脳卒中;創傷治癒不良;並びにHelicobacter pyloriに関連する胃腸管の疾患又は状態が含まれる。
【0028】
他の態様では、本発明は、
a)生物学的試料中のアルファケトグルタル酸(AKG)レベルを測定するステップと、
b)低いAKGレベルをAKGで補充して、前記AKGレベルを正常化するステップと、
を含む、生活の質を高める方法を包含する。
【0029】
以下、本発明の態様及び実施形態をより詳細に説明する。
【発明の詳細な説明】
【0030】
本発明は、アルファケトグルタル酸(AKG)のレベルがヒト又は動物の全般的な健康状態に影響を及ぼすという発明者の知見及び認識に基づいている。本発明者によって実施された研究によって、個体の血液中の低いAKGレベルが様々な疾患及び状態に対する高い感受性を示すことが明らかになった。したがって、生物学的試料中の低いAKGレベルを検出することは診断及び予後のために使用できるだけでなく、これらの疾患及び状態の治療的処置又は予防のために使用することができる。
【0031】
したがって、本発明の様々な態様では、ヒト又は動物における様々な疾患及び状態に対する高い感受性の診断方法;in vivoにおける様々な疾患の治療的処置又は予防用の医薬品又は栄養補助食品若しくは栄養補助飼料を製造するための、AKG及びその誘導体、代謝物、類縁体若しくは塩の新たな使用;並びにヒト又は動物における様々な疾患及び状態の治療方法又は予防方法に関する。
【0032】
本明細書では、特に断らない限り、「a」又は「an」は「1つ又は複数」を意味する。
【0033】
本発明との関係において、様々な文法型による「治療又は予防」という語は、ヒト又は動物における低いAKGレベルに関連する1種/複数の疾患又は1種/複数の疾患の有害な影響の予防、治癒、復帰、減少、軽減、寛解、阻害、縮小、抑制又は停止を意味する。
【0034】
本発明の第1の態様では、
ヒト又は動物における低いAKGレベルに関連する疾患及び状態に対する高い感受性を診断するための方法であって、
a)前記ヒト又は動物から生物学的試料を得るステップと、
b)前記生物学的試料中のAKGレベルを測定するステップと、
c)前記測定されたAKGレベルと正常平均AKGレベルを比較するステップと、
を含み、
平均レベルより低い前記試料中のAKGレベルが、低いAKGレベルに関連する疾患又は状態に対する高い感受性を示す方法が提供される。
【0035】
前記低いAKGレベルに関連する疾患及び状態には、コレステロール、低密度脂質及びグリセリドの血漿レベル上昇に関連する疾患又は状態、例えば動脈硬化症、冠疾患、心不全及び心臓死;骨量減少又は骨脆弱化に関連する疾患又は状態、特に骨粗鬆症;軟骨機能障害に関連する疾患又は状態及びそれに関連する疼痛、又は関節症及び関節リウマチ並びにそれに関連する疼痛;新生物疾患、例えば、癌及び腫瘍増殖;神経系の疾患、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、クロイツフェルト−ヤコブ病、BSE;腎不全;肝臓疾患、例えば、肝硬変、肝炎又は肝不全;心臓の状態、例えば、心臓発作;脳卒中;創傷治癒不良;病原種Helicobacter pyloriの感染に関連する疾患又は状態、特に、胃炎、胃及び十二指腸の潰瘍、消化性潰瘍、胃癌、胃粘膜関連リンパ組織リンパ腫等の疾患を含む胃腸管の疾患が含まれる。
【0036】
本発明との関係において、「試験群」という語は、本発明の方法で診断される群を意味する。
【0037】
本発明との関係において、「正常平均AKGレベル」という語は、対照群の生物学的試料、例えば、血液試料中のAKGの測定基準レベル又は平均レベルを意味する。対照群は、性別、年齢等の特定のパラメータに関して試験群と一致させることが好ましい。
【0038】
本発明の方法において比較レベルとして使用する正常平均AKGレベルの測定は、当業界で周知の標準分析方法を用いて実施する。この値はもちろん、例えば、生物学的試料及び対象集団に応じて変化する。ヒト集団における正常平均血中AKGレベルは、通常5〜7μg/mlであるが、もちろん、年齢、性別、体重等に応じて変化する。
【0039】
本発明との関係において、「低いAKGレベル」という語は、対照群の正常平均AKGレベルより低いAKGレベルを意味する。
【0040】
多種多様な動物を本発明の方法で診断することができるが、診断に好ましい動物は、ヒト又は商業的に価値のある動物又は家畜である。
【0041】
前記ヒト又は動物から生物学的試料を得るステップには、当業界で周知の標準的方法で得られる生物学的試料を提供するプロセスが含まれる。この生物学的試料は、例えば、血液、血漿、尿、膣分泌物、涙、組織、血清、便、痰、脳脊髄液及び細胞溶解物の上清であることができる。好ましい生物学的試料は血液又は尿である。
【0042】
本発明の方法で検出及び測定される物質は、ヒト又は動物から採取された生物学的試料において、AKGの天然に生じる形態であることができる。この方法には、アルファケトグルタル酸、アルファケトグルタル酸塩及びその他のAKG形態の測定が含まれる。
【0043】
生物学的試料中のAKGレベルを測定するステップは、当業界で周知の試料中のAKGを測定するための標準的検出技術を用いて実施される。そのような技術には、酵素的方法及びHPLC法を含めることができる。しかし、これらの技術が本発明で使用できる唯一の適切な方法ではないことは、当業者には理解されるであろう。
【0044】
「分光測定法」とも呼ばれる、AKGを測定するための酵素的方法は、特に、
a)緩衝液、アンモニウムイオン及びNADHを含む希釈標準溶液(working solution)と、生物学的試料又は生物学的試料の処理前形態、例えば、遠心した血液試料から収集した血漿と、を混合するステップと、
b)第1の分光吸収の読み取りを実施するステップと、
c)酵素、好ましくはグルタミン酸脱水素酵素を添加するステップと、
d)発色反応を引き起こすためにインキュベートするステップと、
e)10分間インキュベートした後、発色反応の第2の分光吸収の読み取りを実施するステップと、
を含む。
【0045】
試料中のAKGの量は、第1及び第2の読み取りの間の吸光度の差に正比例する。AKG濃度は、標準曲線を用いて計算する。
【0046】
AKGを測定するための特定の酵素的方法のより詳細な説明は、Bergmeyer他、「2−Oxoglutarate、UV spectrometric determination」methods of Enzymatic analyses、2版(Bergmeyer H.U.編)Academic Press、New York、NY、1974及びLambert,B.他、Nutr.132、3383〜3386、2002に記載されている。
【0047】
AKGを測定するためのHPLC法は、特に、
a)生物学的試料を除タンパクするステップと、
b)前記除タンパク試料を遠心するステップと、
c)遠心した試料を誘導体化するステップと、
d)得られた試料をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)カラムに添加するステップと、
を含む。
【0048】
AKGを測定するための特定のHPLC法のより詳細な説明は、Kristensen他、Anim.Physiol.Anim.Nutr.86、1〜7、2002に記載されている。
【0049】
さらに、AKGを測定するためのその他の方法が当業界では公知である。例えば、JP04349899は、標本中のAKGを測定する方法を記載している。
【0050】
本発明の第2の態様では、正常平均AKGレベルと比較してAKGレベルの低いヒト又は動物の治療用の医薬品又は栄養補助食品若しくは栄養補助飼料を製造するための、アルファケトグルタル酸(AKG)及びその誘導体、代謝物、類縁体若しくは塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む物質の使用が提供される。
【0051】
他の実施形態では、正常平均AKGレベルと比較してAKGレベルの低いヒト又は動物における低いAKGレベルに関連する疾患又は状態の治療又は予防用の医薬品又は栄養補助食品若しくは栄養補助飼料を製造するための、アルファケトグルタル酸(AKG)及びその誘導体、代謝物、類縁体若しくは塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む物質の使用が提供される。
【0052】
前記低いAKGレベルに関連する疾患及び状態には、コレステロール、低密度脂質及びグリセリドの血漿レベル上昇に関連する疾患又は状態、例えば動脈硬化症、冠疾患、心不全及び心臓死;骨量減少又は骨脆弱化に関連する疾患又は状態、特に骨粗鬆症;軟骨機能障害に関連する疾患又は状態及びそれに関連する疼痛、又は関節症及び関節リウマチ並びにそれに関連する疼痛;新生物疾患、例えば、癌及び腫瘍増殖;神経系の疾患、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、クロイツフェルト−ヤコブ病、BSE;腎不全;肝臓疾患、例えば、肝硬変、肝炎又は肝不全;心臓の状態、例えば、心臓発作;脳卒中;創傷治癒不良;病原種Helicobacter pyloriの感染に関連する疾患又は状態、特に、胃炎、胃及び十二指腸の潰瘍、消化性潰瘍、胃癌、胃粘膜関連リンパ組織リンパ腫等の疾患を含む胃腸管の疾患が含まれる。
【0053】
AKGは、様々な疾患を治療又は予防するための広範な方法で使用できることは当業界では公知であるが(以下の参考文献参照)、AKGレベルが低いことを診断されたヒト又は動物を特異的に治療することは、従来技術では開示されていない。WO2005/123056は、動脈硬化症、冠疾患、心不全及び心臓死の危険性を低下させるための、コレステロール、低密度脂質及びグリセリドの血漿レベル上昇の治療における、AKG、例えば、アルファケトグルタル酸ナトリウムの使用を記載している。WO03/043626は、骨量減少又は骨脆弱化、特に骨粗鬆症に関連する疾患又は状態を治療するための方法におけるAKGの使用を記載している。
【0054】
PCT/SE2006/050479は、軟骨機能不全に関連する状態及びそれに関連する疼痛の治療、軽減及び予防、又は関節症及び関節リウマチ及びそれに関連する疼痛の予防、のためのAKGの使用について記載している。WO06/075924は、新生物疾患の治療又は予防のための方法におけるAKGの使用について記載している。WO2006/016828は、神経細胞及び神経系の機能を亢進・支持するための、また、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、クロイツフェルト−ヤコブ病、BSEを予防するための、AKG又はその塩の使用について記載している。WO03/055508は、AKGを含む、例えば腎不全(急性及び慢性腎不全、ACF及びCRF)の治療に有用な組成物について記載している。Riedel,E.他(Nephron、74:pp261〜265、1996)は、栄養失調の血液透析患者へのAKGの投与について記載している。DE19929993A1は、肝疾患の治療方法におけるAKGの使用について記載している。Kjellman他(Ann Thorac Surg、63(6):1625〜33、1997)は、血液にアルファケトグルタル酸を添加すると、心筋保護中の心臓保護が高まることを記載している。Woollard他(Stroke、9(3):218〜22、1978)は、脳卒中患者におけるオルニチンアルファケトグルタル酸(OAKG)の対照試験について記載している。Coudray−Lucas他(Crit Care Med、28(6):1772〜6、2000)は、オルニチンアルファケトグルタル酸が重症火傷患者の創傷治癒を促進することを記載している。SE0602446−7は、病原種Helicobacter pyloriの感染に関連する疾患、特に、胃炎、胃及び十二指腸潰瘍、消化性潰瘍、胃癌、胃粘膜関連リンパ組織リンパ腫等の疾患を含む胃腸管の疾患のin vivoにおける治療的処置又は予防、のためのAKGの使用について記載している。WO2005/002567は、脊椎動物におけるアミノ酸吸収の促進方法並びにグルコース吸収の抑制方法におけるAKGの使用について記載している。US5646187は、危篤状態の患者のタンパク質合成能力を改善し、エネルギーレベルを維持し、除脂肪体重を維持し、骨格筋におけるグルタミン含量を増大させて治療する方法におけるAKGの使用について記載している。
【0055】
本発明の医薬品及び栄養補助食品若しくは栄養補助飼料は、AKG及びその誘導体、代謝物、類縁体若しくは塩からなる群より選択される少なくとも1種及びそれらの混合物を含む。AKGの基本形態と同様又は類似の機能又は治療効果を生じるAKGの誘導体、代謝物、類縁体又は塩が好ましい。
【0056】
本明細書において、「誘導体化する」又は「誘導体」という語は、AKGから直接に、又はこれを修飾し、又は部分的に置換することによって得られた化学物質を意味するものとする。本明細書において、「代謝物」という語は、AKGの分解又は減成産物である化合物を意味するものとする。本明細書において、「類縁体(analogue)」又は「類似体(analog)」という語は、構造的に互いに類似しているが、必ずしも異性体ではない化合物を意味するものとする。類似体は、機能は類似しているが、構造又は進化起源が異なる。
【0057】
本発明のアルファケトグルタル酸の薬学的に許容される塩は、アルファケトグルタル酸の任意の1価金属塩、例えば、ナトリウム、カリウム塩又はアルファケトグルタル酸の任意の2価金属塩、例えば、ストロンチウム、カルシウム若しくはマグネシウム塩であることができる。本発明の好ましい実施形態として、アルファケトグルタル酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を使用し、最も好ましくはアルファケトグルタル酸ナトリウムを使用する。
【0058】
アルファケトグルタル酸とのアミド、又はグルタミン若しくはグルタミン酸とのジペプチド、又はグルタミン及び/又はグルタミン酸とのトリペプチドのアミノ酸形成部分は、天然のペプチドの成分として生じるアミノ酸のいずれであってもよい。同様のことが、アルファケトグルタル酸又はその塩と少なくとも1種のアミノ酸との薬学的に許容される物理的混合物に適用される。好ましくは、アミノ酸は、アルギニン、オルニチン、ロイシン、イソロイシン及びリシンからなる群より選択される。前記アミノ酸は、好ましくはL配置で使用される。
【0059】
アルファケトグルタル酸とアミノ酸又はジ−若しくはトリペプチドとのアミドの例には、これらに限定されないが、アルファケトグルタル酸と、グルタミン、グルタミン酸、アルギニン、オルニチン、リシン、プロリン、イソロイシン及びロイシンからなる群より選択されるアミノ酸と、のアミド;アルファケトグルタル酸と、グルタミン、及びグルタミン酸、アルギニン、オルニチン、リシン、プロリン、イソロイシン及びロイシンのいずれか、のジペプチドと、のアミド;並びに、アルファケトグルタル酸と、グルタミン酸、及びアルギニン、オルニチン、リシン、プロリン、イソロイシン及びロイシンのいずれか、のジペプチドと、のアミドが含まれる。
【0060】
グルタミン及びグルタミン酸とその他のアミノ酸とのジ−及びトリペプチドの例には、アルファケトグルタル酸とジ−又はトリペプチドとのアミドに関連して上述したものが含まれる。
【0061】
アルファケトグルタル酸又はその塩と少なくとも1種のアミノ酸との物理的混合物の例には、これらに限定されないが、アルファケトグルタル酸及びそれらのナトリウム、カリウム、カルシウム及びマグネシウム塩からなる群より選択される少なくとも1種と、グルタミン、グルタミン酸、アルギニン、オルニチン、ロイシン、イソロイシン、リシン及びプロリンのいずれか及び前記アミノ酸の任意の組合せと、の物理的混合物が含まれる。
【0062】
前記物理的混合物のアミノ酸に対するアルファケトグルタル酸又はその塩のモル比は、一般に1:0.01〜1:2、好ましくは1:0.1〜1:1.5、最も好ましくは1:0.2〜1:1.0である。
【0063】
本発明の栄養補助食品若しくは栄養補助飼料及び医薬品は、哺乳類及び鳥類、例えば、齧歯類(マウス、ラット、モルモット又はウサギ)、鳥類(シチメンチョウ、メンドリ又はニワトリ)、その他の家畜(ウシ、ウマ、ブタ又は子ブタ)、ペット(イヌ、ネコ及びその他のペット)及びヒトを含む脊椎動物に投与することができる。多くの動物を本発明の調製物で治療することができるが、治療に好ましい動物は、ヒト又は商業的に価値のある動物又は家畜である。
【0064】
投与は、治療する脊椎動物の種類、前記治療を必要とする脊椎動物の状態、治療する特定の適応症に応じて様々な方法で実施することができる。投与は、上述から明らかなように、非経口的、経直腸的又は経口的な栄養補助食品又は栄養補助飼料として行ってよい。非経口媒体には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル溶液又は不揮発性油が含まれる。
【0065】
一実施形態では、投与は、栄養補助食品又は栄養補助飼料、例えば、栄養補助食品、及び固形食品及び飲料中の成分、として実施される。他の実施形態は、懸濁液又は溶液、例えば、以下にさらに説明した飲料であってもよい。また、その様式は、カプセル又は錠剤、例えば、チュアブル若しくは可溶性、例えば、発泡性の錠剤、並びに粉末及び当業者に公知のその他の乾燥形態、例えば、ペレット、マイクロペレット、粒子であってもよい。
【0066】
栄養補助食品又は栄養補助飼料はまた、乳化してもよい。活性のある1種又は複数の治療成分は、薬学的に許容され、この活性成分に適合した賦形剤と共にその後混合することができる。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール、及びそれらの組合せである。さらに、所望するならば、組成物は、微量の補助物質、例えば、活性成分の効果を高める湿潤剤又は乳化剤、緩衝剤を含有することができる。
【0067】
経口栄養補助食品又は経口栄養補助飼料の様々な形態は、例えば、固形食品、液体又は凍結乾燥された、若しくはその他の乾燥調製物として供給してもよい。様々な緩衝液(例えば、Tris−HCl、酢酸塩、リン酸塩)、pH及びイオン強度の希釈剤、表面への吸収を防止するアルブミン、ゼラチン等の添加物、界面活性剤(例えば、Tween20、Tween80、PluronicF68、胆汁酸塩)、可溶化剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリコール)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、保存剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、充填剤、浸透圧変更剤(例えば、乳糖、マンニトール)、ポリエチレングリコール等の重合体の組成物への共有結合、金属イオンの錯体化、或いはポリ乳酸、ポリグリコール酸、ハイドロゲル等の重合化合物の、粒子調製物内若しくは上への、又はリポソーム、マイクロエマルジョン、ミセル、単層膜若しくは多層膜小胞、赤血球ゴースト、若しくはスフェロプラスト上への物質の取り込みを含めることができる。一実施形態では、栄養補助食品又は栄養補助飼料は、飲料、又はその乾燥組成物の形態で、本発明の方法のいずれかで投与される。
【0068】
飲料は、無機質、ビタミン、炭水化物、脂肪、タンパク質等の栄養的に許容される水溶性担体と共にそれらの1種又は複数の活性成分の有効量を含む。これらの成分は全て、飲料が乾燥形態で提供されるならば、乾燥した形態で供給される。すぐに消費できるように提供された飲料はさらに、水を含む。最終的飲料溶液はまた、例えば、前段落で一般的に提案した緩衝溶液のように、浸透圧及び酸性度が制御されていてよい。好ましくは、pHは、細菌及び真菌の増殖を防止するために、約2〜5、特に約2〜4である。滅菌飲料はまた、pH約6〜8で使用してもよい。飲料は単独で、又は1種又は複数の治療有効組成物と組み合わせて供給することができる。
【0069】
他の実施形態では、経口使用のための本発明の医薬品は、薬学的に許容される担体及び添加物、例えば、本発明で開示された方法及び使用に有用な希釈剤、保存剤、溶解剤、乳化剤、補助剤及び担体と混合した1種又は複数の活性成分を含む錠剤、トローチ、カプセル、粉末、水性若しくは油性懸濁液、シロップ、エリキシル、水溶液等の形態であってもよい。
【0070】
塩の形態の経口的に適用されるアルファケトグルタル酸2−は、特異的共輸送体を介して(Buddington,R.K.他、Comparative Biochemistry and Physiology、Part A.138/2、215〜220、2004)腸及び胃の上皮に吸収され得る(Kristensen,NB.他、J.Anim.Physiol.Anim.Nutr.86、1〜7、2002;Lambert,B.他、J.Nutr.132、3383〜3386、2002)。
【0071】
さらに、本明細書において、「薬学的に許容される担体」は、当業者に周知であり、これらに限定されないが、0.01〜0.05Mリン酸緩衝液又は0.8%生理食塩水を含んでよい。さらに、そのような薬学的に許容される担体は、水溶液又は非水溶液、懸濁液及びエマルジョンであってもよい。非水溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油等の植物油、及びオレイン酸エチル等の注射可能な有機エステルである。水性担体には、水、アルコール溶液/水溶液、エマルジョン又は懸濁液が含まれ、生理食塩水及び緩衝化媒体が含まれる。非経口用媒体には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸リンゲル溶液又は不揮発性油が含まれる。例えば、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガス等の保存剤及びその他の添加物も存在させることができる。
【0072】
本発明に関して、「治療有効量」という語は、所与の状態及び投与計画に治療上効果をもたらす量を意味する。これは、必要な添加物及び希釈剤、すなわち、担体、又は投与媒体に関連して所望する治療効果をもたらすように計算された活性物質の予め決定された量である。さらに、宿主の活性及び応答の臨床的に著しい欠如を減らすため、最も好ましくは防止するために十分な量を意味するものとする。或いは、治療有効量は、宿主における臨床的に著しい状態の改善を引き起こすのに十分である。当業者に理解されているように、化合物の量は、その特異的な活性に応じて変化させることができる。適切な投与量は、必要な希釈剤、すなわち、担体又は添加物に関連して所望する治療効果をもたらすように計算された活性組成物の予め決定された量を含有することができる。さらに、投与する投薬量は、使用する活性成分又は成分類、治療する状態、治療する患者の年齢、性別、体重等に応じて変化するが、一般に、1〜1000mg/kg体重/日又は10〜400mg/kg体重/日、好ましくは10〜100mg/kg体重/日である。
【実施例】
【0073】
以下の実施例は本発明を例示するために挙げられる。しかし、本発明の範囲は、これらの実施例で説明された特定の状態及び詳細に限定されるものではなく、特許請求の範囲の文言によってのみ限定されるべきである。
【0074】
〔実施例1:高齢ラットの生存に対する食餌性AKGの効果〕
この実験の目的は、血中AKGレベルと高齢ラットの生存との関係を研究することにある。
【0075】
Lund大学のCell&Organisms Biology部門からスプラーグドーリーラット40匹(2〜3年齢)を無作為に選択し、実験に使用した。このラットを、10匹ずつ、対照群2群及び実験群2群の4群に分けた。対照群Iには、標準食、HO、NaCl(1.17g)、グルコース及びショ糖を与え、対照群IIには、標準食、HO、NaCl(11.7g)、グルコース及びショ糖を与えた。実験群Iには、標準食、HO、NaAKG2HO(2.28g)、グルコース及びショ糖を与え、実験群IIには、標準食、HO、NaAKG2HO(22.8g)、グルコース及びショ糖を与えた。様々な成分及びこれらの量及びpHを表1に示す。この混合物を0.01MNaOHで滴定し、pHを修正した。
【0076】
【表1】

【0077】
血液試料を実験開始時に全ラットから採取し、血中AKGレベルを推定した。実験期間は8週間で、血中AKGレベル及び生存率のようなパラメータをモニターした。
結果
【0078】
表2は、実験開始時及び終了時の試験ラットの血中AKGレベル及び生存率を示している。表において、様々な平均結果は、p<0.05で統計的に有意な差であることを示している。
【0079】
【表2−1】

【0080】
【表2−2】

【0081】
高齢ラット(24ヶ月を上回る)に対するこの研究は、血中AKGレベルが0.1μg/mlを下回るラットは、突然死の素因を有することを示している。AKGの経口投与は、血中AKGレベルを約1μg/mlのレベルまで回復させることができる。実験群のラットの生存率は、劇的に改善した。血中AKGレベルは、AKGナトリウム塩の経口投与後、0.5μg/mlを上回るまで上昇し、最初の血中AKGが低レベル、0.1μg/mlを下回っていたラットは全実験を通して生存した。したがって、血中AKGレベルをモニターすることは診断価値があり、血液中の低いAKGレベルを上昇させるためにAKGを投与すると治療価値があり得ることが示された。
【0082】
〔実施例2:血中AKGレベル及び様々な疾患に対するその関与〕
この実験の目的は、血中AKGレベルとヒトの様々な年齢群における様々な疾患との間の関係を研究することにある。したがって、この研究の終点は、血中AKGレベルを測定し、それを健康状態、例えば、コレステロールレベル(LDL)、骨粗鬆症、関節炎、癌、神経障害、腎機能、肝機能、心臓発作、脳卒中、創傷治癒、H.pyloriコロニー形成に関連する胃炎及びその他の全身疾患に関連させることにある。
【0083】
この研究は、無作為化二重盲検による1ヶ月の研究として計画され、ポーランド、ルブリンのInstitute of Agricultural Medicine(IAM)のGeneral Medicine Outpatient Departmentで実施された。研究集団は、初回来診時に血中AKGレベルを測定するために無作為に割り当てられた。
【0084】
患者は、Institute of Agricultural Medicineを初回来診した全集団から勧誘した。患者23人を研究のためにスクリーニングした。これらのうち、患者11人が女性で、12人が男性で、年齢は12〜88歳であった。プロトコルは、研究所検査委員会及び地方倫理委員会(Institute’s Review Board and local Ethics Committee)によって承認された。患者は全て、インフォームドコンセントを受けた。
【0085】
血漿AKGは、Bergmeyer and Bernt(Bergmeyer他、「2−Oxoglutarate、UV spectrometric determination」methods of Enzymatic analyses、2版(Bergmeyer H.U.編)Academic Press、New York、NY、1974)に少し変更を加えた方法によって測定した。アッセイは、リン酸緩衝液(pH7.6)100mmol/ml、塩化アンモニウム4mmol/l及びNADH50μm/lからなる操作溶液0.5ml中で実施した。この操作溶液に、AKG1〜10nmolを含有する血漿の適量を添加した。最初の吸光度を340nmで読み取って得た。最初の吸光度を読み取ってから、ウシGDH(G2501、Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)約6単位(容量10μl)を各試験管に添加した。10分間インキュベートした後、第2の吸光度を340nmで読み取って得た。試料中のAKGの量は、第1と第2の読み取り値の間の吸光度の差に正比例する。AKG濃度は、標準曲線を使用することによって計算した。
【0086】
血液中のAKGレベルは、24時間中、いかなる統計学的変動も示さない。
【0087】
患者は全て同じ医師が検査し、疾病は、試験来診の日に、基本的身体検査、生命徴候、血液学、生化学及び基本的な尿分析によって診断した。
【0088】
病気の重症度は、4段階の尺度:(−)病気の徴候なし;(+)病気の軽い徴候あり;(++)病気の中等度の徴候あり;(+++)病気の重度の徴候あり、で評価した。
結果
【0089】
血液採取後の来診時には、有害事象は全く記録されなかった。表3は、様々な疾患の頻度と血液中のAKGレベルとの間の関係を示している。以下の疾患及び状態を評価した。コレステロール/LDLレベル(LD)、骨粗鬆症(Os)、関節炎(Ar)、癌(Ca)、神経障害(Ne)、腎不全(Ki)、肝機能不全(Li)、心臓発作(Ha)、脳卒中(Str)、創傷治癒(W)、H.pylori関連胃炎(HP)、及びAKGに関連のないその他の疾患。
【0090】
【表3】

【0091】
図1は、血中AKGレベルに関連する様々な疾患及び状態の疾患頻度を%で示す図である。
【0092】
統計分析のために、血中AKGレベルを考慮して、以下の群、<2μg/ml、2〜5μg/ml、及び>5μg/mlに分けた。カイ2乗は、レベルp<0.000で疾患及び状態の頻度を考慮すると、全群が異なっていることを示している。
【0093】
この研究では、血中AKGレベルと様々な疾患に対する感受性との間の相関について、様々な性別及び年齢のヒトを試験した。血中AKGレベルが低いヒトは、様々な疾患及び状態に対する素因を有することが示された。年齢とは独立して、血中AKGレベル2.5μg/ml未満は、様々な疾患、例えば、H.pyloriに関連する胃炎、心臓障害、LDLレベルの上昇、関節炎の患者と関連があり、血中AKGレベル1μg/ml未満はさらに、骨粗鬆症、癌及び創傷治癒不良と関連がある。したがって、ヒトにおいて血中AKGレベルをモニターすることは診断価値があり、血液中の低レベルのAKGを上昇させるためにAKGを投与すると治療価値があり得ることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】実施例2で試験された患者の血中AKGレベルに対する、様々な疾患及び状態の疾患頻度を%で示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト又は動物における低いAKGレベルに関連する疾患及び状態に対する高い感受性を診断するための方法であって、
a)前記ヒト又は動物から生物学的試料を得るステップと、
b)前記生物学的試料中のアルファケトグルタル酸(AKG)レベルを測定するステップと、
c)前記測定されたAKGレベルを正常平均AKGレベルと比較するステップと、
を含み、
前記試料中のAKGレベルが前記正常平均レベルより低いことは、低いAKGレベルに関連する疾患又は状態に対する感受性が高いことを示す方法。
【請求項2】
前記低いAKGレベルに関連する疾患又は状態には、コレステロール、低密度脂質及びグリセリドの血漿レベル上昇に関連する疾患又は状態;骨量減少又は骨脆弱化に関連する疾患又は状態;軟骨機能障害に関連する疾患又は状態;新生物疾患;神経系の疾患;腎不全;肝臓疾患;心臓の状態;脳卒中;創傷治癒不良;並びにHelicobacter pyloriに関連する胃腸管の疾患又は状態が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記低いAKGレベルに関連する疾患又は状態には、動脈硬化症、冠疾患、心不全及び心臓死;骨粗鬆症;関節症及び関節リウマチ;新生物疾患及び癌;腎不全;肝硬変、肝炎又は肝不全;心臓発作;脳卒中;創傷治癒不良;Helicobacter pyloriに関連する胃炎、胃及び十二指腸の潰瘍、消化性潰瘍、胃癌並びに胃粘膜関連リンパ組織リンパ腫が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生物学的試料が血液又は尿である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ヒトにおいて、ヒト集団の正常平均血中AKGレベルが5〜7μg/mlである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記生物学的試料中のAKGレベルを測定するステップが酵素的方法又はHPLC法を用いて実施される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
正常平均AKGレベルと比較してAKGレベルの低いヒト又は動物の治療用の医薬品又は栄養補助食品若しくは栄養補助飼料を製造するための、アルファケトグルタル酸(AKG)及びその誘導体、代謝物、類縁体若しくは塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む物質の使用。
【請求項8】
正常平均AKGレベルと比較してAKGレベルが低いヒト又は動物における低いAKGレベルに関連する疾患及び状態の治療又は予防用の医薬品又は栄養補助食品若しくは栄養補助飼料を製造するための、アルファケトグルタル酸(AKG)及びその誘導体、代謝物、類縁体若しくは塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む物質の使用。
【請求項9】
前記低いAKGレベルに関連する疾患及び状態には、コレステロール、低密度脂質及びグリセリドの血漿レベル上昇に関連する疾患又は状態;骨量減少又は骨脆弱化に関連する疾患又は状態;軟骨機能障害に関連する疾患又は状態;新生物疾患;神経系の疾患;腎不全;肝臓疾患;心臓の状態;脳卒中;創傷治癒不良;並びにHelicobacter pyloriに関連する胃腸管の疾患又は状態が含まれる、請求項7又は8に記載の使用。
【請求項10】
前記低いAKGレベルに関連する疾患及び状態には、動脈硬化症、冠疾患、心不全及び心臓死;骨粗鬆症;関節症及び関節リウマチ;新生物疾患及び癌;腎不全;肝硬変、肝炎又は肝不全;心臓発作;脳卒中;創傷治癒不良;Helicobacter pyloriに関連する胃炎、胃及び十二指腸の潰瘍、消化性潰瘍、胃癌並びに胃粘膜関連リンパ組織リンパ腫が含まれる、請求項7又は8に記載の使用。
【請求項11】
前記少なくとも1種が、AKG、グルタミン、グルタミン酸及びこれらの酸の薬学的に許容される塩;AKGとアミノ酸又はジ−若しくはトリペプチドとのアミド;グルタミンとその他のアミノ酸とのジ−又はトリペプチド;グルタミン酸とその他のアミノ酸とのジ−又はトリペプチド;前記ジ−又はトリペプチドの薬学的に許容される塩;並びにAKG又はその薬学的に許容される塩と少なくとも1種のアミノ酸との薬学的に許容される物理的混合物、からなる群より選択される、請求項7〜10のいずれか一項に記載の使用。
【請求項12】
前記少なくとも1種が、オルニチン−AKG、アルギニン−AKG、グルタミン−AKG、グルタミン酸−AKG、ロイシン−AKG、キトサン−AKG又はそれらの混合物からなる群より選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項13】
前記少なくとも1種が、AKGのアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩又はそれらの混合物からなる群より選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項14】
ヒト又は動物に投与されるAKGの量が治療有効量である、請求項7〜13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記治療有効量が1〜1000mg/kg体重/日である、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記治療有効量が10〜400mg/kg体重/日である、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記治療有効量が10〜100mg/kg体重/日である、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
正常平均AKGレベルと比較してAKGレベルの低いヒト又は動物における低いAKGレベルに関連する疾患及び状態を治療又は予防するための方法であって、アルファケトグルタル酸(AKG)及びその誘導体、代謝物、類縁体若しくは塩からなる群より選択される少なくとも1種の有効量を、そのような治療又は予防を必要とする個体に投与することを含む方法。
【請求項19】
前記低いAKGレベルに関連する疾患及び状態には、コレステロール、低密度脂質及びグリセリドの血漿レベル上昇に関連する疾患又は状態;骨量減少又は骨脆弱化に関連する疾患又は状態;軟骨機能障害に関連する疾患又は状態;新生物疾患;神経系の疾患;腎不全;肝臓疾患;心臓の状態;脳卒中;創傷治癒不良;並びにHelicobacter pyloriに関連する胃腸管の疾患又は状態が含まれる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記低いAKGレベルに関連する疾患又は状態には、動脈硬化症、冠疾患、心不全及び心臓死;骨粗鬆症;関節症及び関節リウマチ;新生物疾患及び癌;腎不全;肝硬変、肝炎又は肝不全;心臓発作;脳卒中;創傷治癒不良;Helicobacoter pyloriに関連する胃炎、胃及び十二指腸の潰瘍、消化性潰瘍、胃癌並びに胃粘膜関連リンパ組織リンパ腫が含まれる、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1種が、AKG、グルタミン、グルタミン酸及びこれらの酸の薬学的に許容される塩;AKGとアミノ酸又はジ−若しくはトリペプチドとのアミド;グルタミンとその他のアミノ酸とのジ−又はトリペプチド;グルタミン酸とその他のアミノ酸とのジ−又はトリペプチド;前記ジ−又はトリペプチドの薬学的に許容される塩;並びにAKG又はその薬学的に許容される塩と少なくとも1種のアミノ酸との薬学的に許容される物理的混合物、からなる群より選択される、請求項18〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1種が、オルニチン−AKG、アルギニン−AKG、グルタミン−AKG、グルタミン酸−AKG、ロイシン−AKG、キトサン−AKG又はそれらの混合物からなる群より選択される、請求項18〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1種が、AKGのアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩又はそれらの混合物からなる群より選択される、請求項18〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
ヒト又は動物に投与されるAKGの量が治療有効量である、請求項18〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記治療有効量が1〜1000mg/kg体重/日である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記治療有効量が10〜400mg/kg体重/日である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記治療有効量が10〜100mg/kg体重/日である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
a)生物学的試料中のアルファケトグルタル酸(AKG)レベルを測定するステップと、
b)低いAKGレベルをAKGで補充して、前記AKGレベルを正常化するステップと、
を含む、生活の質を高める方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−523435(P2009−523435A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−550760(P2008−550760)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050499
【国際公開番号】WO2007/082914
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(508146581)エントレス アーベー (2)
【Fターム(参考)】