説明

診断機能を有する車輌空調用制御装置

【課題】マイクロコンピュータが有する記憶手段の良否を診断する診断機能を備えた車輌空調用制御装置を提案する。
【解決手段】 イグニッションスイッチ22の閉成により給電されるマイクロコンピュータ21を備える車輌空調用制御装置において、前記マイクロコンピュータ21が備える複数の記憶手段のうち空調制御プログラムを格納する特定の記憶手段には、前記した複数の記憶手段の記憶状態を診断し、不良診断時には外気導入モードに移行させる診断プログラム手段を設けた構成となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イグニッションスイッチの閉成によって給電され、イグニッションスイッチの開放によって給電が遮断されるマイクロコンピュータを備えた車輌空調用制御装置において、マイクロコンピュータが備える記憶手段の良否を診断することができる診断機能を設けた車輌空調用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子的制御を行う車輌空調用制御装置は、空調制御プログラムデータを格納した記憶手段として読み出し専用記憶手段であるROMと、空調制御処理データを書き込みまたは読み出すための他の記憶手段として電源の供給を絶つと記憶内容が失われる揮発性メモリであるRAMとを有するマイクロコンピュータを備えている。
【0003】
この種の車輌空調用制御装置の一例を述べれば、イグニッションスイッチの開放の間もマイクロコンピュータが車輌搭載のバッテリーによって給電される構成のものがあり、イグニッションスイッチが開放される直前に制御処理データをバックアップして記憶手段に格納することができる。
この結果、イグニッションスイッチを閉成すれば、上記バックアップデータに基づいて空調制御を再開させることができる。
【0004】
しかし、上記の車輌空調用制御装置は、バッテリーの交換などでマイクロコンピュータの給電が遮断されると、記憶手段に記憶されているバックアップデータが破壊されることがある。
そこで、この従来の車輌空調用制御装置では、マイクロコンピュータのRAMにチェックデータを設けておき、ROMに予め格納しておいたチェックデータとRAMのチェックデータとを比較し、それらのチェックデータが一致することによりRAMのバックアップデータが正常であると診断する構成となっている。
【0005】
【特許文献1】特開平05−061570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような車輌空調用制御装置は、車輌が使われていない場合でもバッテリーからの給電が続くため、バッテリー電力が無駄に消費されることから好ましくない。
このことから、最近では、車輌が使用されるときに空調を自動で制御する構成の車輌空調用制御装置が提案されている。
【0007】
なお、マイクロコンピュータを用いた車両空調用制御装置には、車乗者が車室内の温度を希望温度に設定すると、車室内・外の温度変化や日射の影響をマイクロコンピュータによって自動で検知し、温度、風量、風向きを全て自動で調整して車室内温度を常に設定温度に自動コントロールするフルオートコントロールタイプや、温度の調整や風量・風向きの切り替えは手動で行うセミオートコントロールタイプといった種類のものがある。
【0008】
この種の車輌空調用制御装置は、イグニッションスイッチを閉成することによって、マイクロコンピュータが車輌搭載のバッテリーによって給電されて空調制御が可能になる。
なお、イグニッションスイッチの操作位置は、OFF位置、ACC位置、ON位置、START位置があるが、本出願の説明では、イグニッションスイッチの閉成とは、「ON位置」に操作されたことを言い、イグニッションスイッチの開放とは、「ON位置」以外に操作されたことを言う。
【0009】
そこで、本発明は、イグニッションスイッチの閉成により給電されるマイクロコンピュータを備える車輌空調用制御装置において、イグニッションスイッチを閉成して車輌を使用する毎に、マイクロコンピュータが備える記憶手段を診断し、不良の場合には、車乗者に空調不良を知らせると共に、特定の空調モードに制御するようにした車輌空調用制御装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するため、本発明では第1の発明として、イグニッションスイッチの閉成により給電され、当該イグニッションスイッチの開放により給電が遮断されるマイクロコンピュータを備える車輌空調用制御装置において、前記マイクロコンピュータが備える複数の記憶手段のうち空調制御プログラムを格納する特定の記憶手段には、前記した複数の記憶手段の記憶状態を診断し、不良診断時には外気導入モードに移行させる診断プログラム手段を設けたことを特徴とする診断機能を有する車輌空調用制御装置を提案する。
【0011】
第2の発明としては、上記した第1の発明の車輌空調用制御装置において、前記マイクロコンピュータが備える記憶手段は、ROM、RAM及び/又はEEPROM等の複数の記憶手段を含み、診断プログラム手段が空調制御プログラムと共に特定の記憶手段である前記ROMに設けられていることを特徴とする診断機能を有する車輌空調用制御装置を提案する。
【0012】
第3の発明としては、上記した第2の発明の車輌空調用制御装置において、空調動作状態を光学的に点灯表示する表示手段を設けると共に、
前記診断プログラム手段には、前記いずれかの記憶手段の不良診断にしたがい前記表示手段を点滅させて不良表示し、さらに、診断プログラムの実行を停止させるプログラム手段を含むことを特徴とする診断機能を有する車輌空調用制御装置を提案する。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明の車輌空調用制御装置は、診断プログラムがマイクロコンピュータの特定の記憶手段に設けてあり、この診断プログラムがイグニッションスイッチの閉成直後に実行される。
すなわち、イグニッションスイッチが閉成され、マイクロコンピュータが給電されると、空調制御のメインプログラムに入る前に診断プログラムが実行され、先ず、診断プログラムや空調制御プログラムが設けてある特定の記憶手段の格納データが診断される。
【0014】
そして、マイクロコンピュータは上記の診断結果に基づいて次の制御を行う。特定の記憶手段の格納データが正常のときは、その他の記憶手段の診断に移る。
上記の診断で、特定の記憶手段の格納データが不良のときは、外気導入モードに移る。
【0015】
また、本発明では、特定の記憶手段の正常診断に続いて、他の記憶手段が診断され、マイクロコンピュータがその診断結果に基づいて次の制御を行なう。
他の記憶手段が正常のときは、空調制御のメインプログラムを実行する。
他の記憶手段が不良のときは、外気導入モードに移る。
【0016】
また、本発明は、第2の発明の車輌空調用制御装置の如く、マイクロコンピュータには、特定の記憶手段としてROM、その他の記憶手段としてRAMやEEPROMなどを備えることができる。
【0017】
さらに、本発明では、第3の発明の車輌空調用制御装置の如く、特定の記憶手段または他の記憶手段が不良であるときは、外気導入モードに制御する他に、表示手段を点滅させて不良表示し、さらに、診断プログラムの実行を停止する構成とすることができる。
【0018】
上記したように、本発明によれば、特定の記憶手段または他の記憶手段の不具合による空調制御の誤動作を未然に防ぎ、空調装置が動作しない状態で車室内の空気が澱むといった車乗者が不快を感じる空調状態になることを防ぐことができる。
【0019】
また、特定の記憶手段または他の記憶手段の不良を表示灯の点滅で報知させるので、車乗者が特定の記憶手段または他の記憶手段の異常を把握することができ、さらに、特定の記憶手段または他の記憶手段の異常診断時にはプログラムを停止させるので、マイクロコンピュータが不良状態で動作を続けることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の一実施形態について図面に沿って説明する
図1は車輌空調用制御装置の操作ノブとプッシュノブを備えた操作パネルの正面図、図2は車輌空調用制御装置の装置回路を示したブロック図である。
【0021】
図1に示すように、この車輌空調用制御装置は、ダイヤル式の操作ノブとした温度調節用の操作ノブ11、風量調節用の操作ノブ12、風向調節用の操作ノブ13を操作パネル10に回動可能に設け、さらに、この操作パネル10には、リアウインドの熱線に通電させるリアデフスイッチRrDEFのプッシュノブ14、エアコンモードを切り換えるエアコンスイッチA/Cのプッシュノブ15、内気循環と外気導入を切り換える内外気切換スイッチREC/FRSのプッシュノブ16が設けてある。
また、プッシュノブ14、15、16には、各スイッチの動作を示すLEDなどからなる光学的な表示灯14a、15a、16aが設けてある。
【0022】
そして、上記した温度調節用の操作ノブ11と風向調節用の操作ノブ13は、それらの回動操作にしたがってコントロールワイヤを押し出し、また、引き戻して空調装置を機械的に制御する公知の構成としてある。
【0023】
また、風量調節用の操作ノブ12は、その回動操作によりロータリースイッチ構成のファンスイッチを連動し、図2に示すように、スイッチ信号をマイクロコンピュータに入力して電気的に処理し、同様に、リアデフスイッチRrDEF、エアコンスイッチA/C、内外気切換スイッチREC/FRSのスイッチ信号もマイクロコンピュータに入力して電気的に処理する構成となっている。
【0024】
図2は、車輌空調用制御装置の装置回路を示したブロック図である。
図示するように、この装置回路20のマイクロコンピュータ21は、イグニッションスイッチ22の閉成下に車輌搭載のバッテリー23に接続され、バッテリー23により給電される。
すなわち、イグニッションスイッチ22を閉成させると、バッテリー電源電圧(例えば、12V)が電圧変換回路24によって電圧変換され、その変換電圧(例えば、5V)がマイクロコンピュータ21に印加される。
【0025】
また、このとき、充放電回路25のコンデンサがバッテリー23の電源電圧を受けて充電される。
この充放電回路25は、イグニッションスイッチ22のチャタリングなどによって電圧変換回路24の出力電圧が低下し、マイクロコンピュータ21がリセットすることを防止すること、また、イグニッションスイッチ22の開放に伴い信号電源回路26を介して切換スイッチ信号回路27に信号電源電圧を供給する働きをする。
【0026】
ファンスィッチ28は、上記した如く、操作ノブ12の回動操作でON/OFFし、このON/OFF信号が切換スイッチ信号回路27を介してマイクロコンピュータ21に入力される。
マイクロコンピュータ21はファンスイッチ28のON/OFFを認識し、ON信号の入力時にはエアコンなどの空調機構部を制御する。
なお、ファンスイッチ28のON動作によってブロワモータが始動し、また、このファンスイッチ28を連動する操作ノブ12の回動操作にしたがって選択抵抗が選択され、ブロワモータの回転数制御が行われる。
【0027】
また、プッシュスイッチとして示したブロック29は、リアデフスイッチRrDEF、エアコンスイッチA/C、内外気切換スイッチREC/FRSをまとめて示したプッシュスイッチである。
これらRrDEF、A/C、REC/FRSの各スイッチ信号がSW信号入力回路30を介してマイクロコンピュータ21に入力される。
また、これらRrDEF、A/C、REC/FRSの各スイッチの操作に応じて上記した表示灯14a、15a、16aを点灯させるインジケータLED回路31が設けてある。
【0028】
すなわち、プッシュノブ15を操作してエアコンスイッチA/Cを動作させれば、このスイッチ信号を入力したマイクロコンピュータ21がエアコン出力回路32、コントロールユニット33、コンプレッサー34を動作させるエアコンモードとなる。
この場合、表示部15aが点灯状態となる。
【0029】
また、プッシュノブ14を操作してリアデフスイッチRrDEFを動作させれば、このスイッチ信号を入力したマイクロコンピュータ21が、リアデフ出力回路35、リアデフリレー36を動作させてリアウインドの熱線に通電させる。
この場合、表示部14aが点灯状態となる。
【0030】
さらに、プッシュノブ16を操作して内外気切換スイッチREC/FRSを動作させれば、このスイッチ信号を入力したマイクロコンピュータ21が、内外気アクチュエータ駆動回路37、38、内外気アクチュエータ39を動作させ、内気循環または外気導入の動作モードとなる。
この場合、表示部16aが点灯状態となる。
【0031】
その他、この装置回路20には、マイクロコンピュータ21の電源電圧が所定値以下となったとき、または、暴走したときにマイクロコンピュータ21をリセットさせる電圧低下リセツトウォツチドッグタイマー40と、右ハンドルか左ハンドルかによって変わる回路条件などを設定する仕向け地設定回路41と、車乗者が制御した情報や設定したデータなどを記憶させるためにマイクロコンピュータ21に接続したEEPROM42が設けてある。
【0032】
一方、上記した車輌空調用制御装置は、イグニッションスイッチ22を閉成する毎に診断動作を行う構成としてある。
すなわち、マイクロコンピュータ21の特定の記憶手段であるROMには、空調制御するメイン処理のプログラムの他、マイクロコンピュータ21のROMや、読み出し/書き込みが可能な他の記憶手段であるRAMの良否を診断する診断プログラムが設けてあり、マイクロコンピュータ21が図3〜図8に示すフローチャートの動作にしたがってROM、RAMを診断する。
【0033】
図3は診断プログラムの全体的な構成を示すフローチャートで、この図から分かるように、ROM、RAMの診断は、マイクロコンピュータ21の給電が開始される毎に、つまり、イグニッションスイッチ22が閉成される毎に行い、また、本実施形態ではROMの格納データの良否とRAMの読み出し/書き込みの良否をチェックすることで診断する。
【0034】
具体的には、イグニッションスイッチ22を閉成することによって動作する電圧変換回路24の出力電圧がマイクロコンピュータ21に供給されると、空調制御プログラムの実行であるメイン処理に入る前にチェック動作が行われる。
【0035】
診断プログラムは、図3に示すフローチャートのステップ処理となる。
すなわち、イグニッションスイッチ22の閉成によってマイクロコンピュータ21が給電さると、マイクロコンピュータ21の初期化に続いてROMのチェック動作が行われる。(ST301、ST302)
【0036】
ROMの格納データに異常がなければ、RAMのチェックに移る。(ST303)
RAMの読み出し/書き込みに異常がないときはRAMをクリアした後、EEPROMの読み込みに進む。(ST304)
【0037】
ST305では、EEPROM42に保持させておいたバックアップデータを読み出し、制御処理データとしてRAMに書き込む。(ST305)
続いて、仕向け地設定回路41の出力データなどをデジタルデータとして入力してRAMデータとして書き込む。(ST306)
【0038】
上記の如く、ROM、RAMの診断の結果、ROMの格納データとRAMの読み出し/書き込みが良好であれば、マイクロコンピュータ21がエアコンなどの本来の空調制御であるメイン処理に進むことになる。(ST307)
【0039】
一方、ST302で行われるROMの診断は、図4に示すフローチャートにしたがってチェックする。
このチェックでは、先ず、ROMの格納データを読み出すために、データの読み出し先のアドレスにROMの先頭アドレスをセットし、さらに、RAMに記憶されているROMの読み出しデータの加算値であるサム値をクリアする。(ST401、ST402)
【0040】
続いて、ROMに格納されたデータをアドレス毎に読み出し、最終アドレスまで読み出したデータを加算する。(ST403、ST404、ST405、ST406)
そして、このように読み出して加算した読み出しデータサム値は、予めROMに格納してあるチェックサム値と比較し、この比較において所定値となれば、ROMの格納データは良好と判断し、また、所定値とならないときは、格納データが破壊されていると判断する。(ST407、ST408、ST409)
【0041】
ROMの格納データに異常がないときはRAMの診断に進み、また、ROMの格納データが破壊されて異常なときには、ROMの異常処理のステップに進む。(ST410、ST411)
【0042】
上記のROM診断について今少し詳細にのべる。
一例として、8kバイトのROMを備えたとする。
【0043】
この場合、チェックサム値は、所定の領域のデータを読み出し、読み出したデータを1バイトづつ加算する。
そして、加算したデータの下位1ワードのデータについて、2の補数(反転+1)をとり、その1ワードのデータ値をチェックサム値とする。
このチエックサム値は、車輌を工場出しする前に、ROMのテーブルデータ保存領域に保存する。
【0044】
また、読み出しデータサム値は、前記の所定の領域のデータを読み出して1バイトづつ加算し、加算したデータの下位1ワードのデータ値である。
したがって、この読み出しデータサム値とチエックサム値とを加算した値が、所定値(例えば、0x10000)となれば、ROMの格納データが正常であることがわかる。
また、前記の所定値以外となるときは、ROMの格納データが破壊されていることになる。
【0045】
図5は、ROMの異常処理のフローチャートを示す。
図示する如く、ROMの格納データが破壊されている場合は、エアコン出力回路32、リアデフ出力回路35、内外気アクチュエータ駆動回路(内気循環)37をOFF出力(回路の非動作)とし、また、内外気アクチュエータ駆動回路(外気導入)38を固定出力させる。(ST501、ST502、ST503、ST504)
【0046】
つまり、ROMが異常と診断された場合、そのままマイクロコンピュータ21が空調制御を継続すると、異常な制御を行ってしまう可能性があり、車室内に送風されないときにエアコンがONとなり、コンプレッサ34が作動すると、空調装置に負担がかかるため、エアコンをOFFする必要がある。
【0047】
また、リアデフがONとなると後部ガラスの熱線に通電して後部ガラスが暖められて曇り止めされるが、通常時はONとなると危険であるためOFFする必要がある。
【0048】
さらに、空調装置が働かない密閉された車室内では、気温が上昇したり空気が澱むといった不快な状況となるため、外気導入に固定して車室外の空気を車室内にとり入れる必要がある。
したがって、前述のステップST501〜ST504を行い、車輌もしくは車乗者にとって安全な状態となるよう空調制御する。
【0049】
そして、LED点滅回数カウンタをクリアした後、このLED点滅回数カウンタが10回カウントするまでインジケータLED回路31を動作させる。
このインジケータLED回路31の動作により、表示灯14a、15a、16aが10回点滅し、ROMが異常であることを表示する。(ST505、ST506、ST507、ST508)
なお、LED点滅回数カウンタが10カウントし、表示灯14a、15a、16aが10回点滅することによって診断プログラムが停止する。(ST509)
【0050】
その後、マイクロコンピュータ21は活動状態を継続したままマイクロコンピュータ21の暴走や供給電圧低下を監視する電圧低下リセツトウォツチドッグタイマー40による監視のみを繰り返し、以降の車乗者の操作を受け付けない。
このように行われる異常処理は、次にイグニッションスイッチ22が閉成され、マイクロコンピュータ21が再びROMまたは後述するRAMの診断を行い、正常と診断されるまで繰り返す。
【0051】
上記の診断でROMの格納データが正常であるときは、RAMの診断に進む。
この診断は、図6に示すフローチャートのように、RAMの読み出し/書き込みに異常がないか否かをチェックする。
すなわち、チェック対象のアドレスにRAM先頭アドレスをセットし、続いて、アドレスに所定値Yを書き込み、また、その書き込み値を読み出す。(ST601、ST602、ST603)
【0052】
そして、読み出し値が所定値Yと一致すか否かを判断し、一致すれば次のアドレスに進み、一致しないときはRAMの読み出し/書き込みに異常があるとしてRAM異常処理に移行する。(ST604、ST605、ST606)
このようにしてRAMの最終アドレスまでチェックし、RAMの読み出し/書き込みに異常がなければ、RAMをクリアするステップに移る。(ST607、ST608)
【0053】
このように行うRAM診断の具体例をのべれば、約512バイトのRAMをチェックする。
なお、RAMの汎用レジスタ領域はチェックせず、汎用レジスタ領域を除いた所定の領域のチェックを行う。
また、ST604では、所定値Y(例えば、0xAA)を書き込み、また、読み出しデータが0xAAと一致するか否かを判断する。
なお、0xAAでチェックした後、同様なデータ値として、例えば、0x55を書き込み、また、読み出して一致照合チェックを行ってもよい。
【0054】
ST604においてRAMの読み出し/書き込みに異常があると判断したときは、図7に示す異常処理のステップに進む。
この異常処理は図7のフローチャートに示すように、既に述べたところのROMの異常処理(図5)とほぼ同様となる。
【0055】
すなわち、ROMの異常処理と同様、エアコン出力回路32、リアデフ出力回路35、内外気アクチュエータ駆動回路(内気循環)37をOFF出力(回路の非動作)とし、また、内外気アクチュエータ駆動回路(外気導入)38を固定出力させる。(ST701、ST702、ST703、ST704)
ただ、このRAMの異常処理では、LED点滅回数カウンタを5回のカウントに設定し、このカウントにしたがってインジケータLED回路31を動作させる。
【0056】
したがって、表示灯14a、15a、16aが5回点滅してRAMの異常を報知する。(ST705、ST706、ST707、ST708)
このように、表示灯を5回点滅させてRAMの異常を報知させることで、表示灯を10回点滅させるROMの異常報知と区別できるようにしてある。
【0057】
そして、LED点滅回数カウンタが5カウントし、表示灯14a、15a、16aが5回点滅することによって診断プログラムが停止する。(ST709)
なお、前述のROMの異常処理と同様に、このRAMの異常処理は、次にイグニッションスイッチ22が閉成して、マイクロコンピュータ21が再びROMまたはRAMの診断を行い、正常と診断されるまで繰り返される。
【0058】
RAMの読み出し/書き込みに異常がない場合は、RAMのクリアに進む。
RAMのクリアは、上記したRAMのチェックと併せて行うことで二重の診断を行いRAMの信頼性を向上させる。
【0059】
図8はRAMをクリアするフローチャートであるが、図示するように、このクリア処理では、ST801〜ST808の処理を行なうが、アドレス毎に初期値として「0x00」を書き込み、また、この書き込みデータを読み出し、読み出し値が初期値「0x00」と一致するか否かを判断して行うもので、上記したRAMの読み出し/書き込みのチェック(図6)とほぼ同様となる。(ST802〜ST807)
なお、ST804において読み出し値が初期値「0x00」と一致しないときは、RAMの異常処理に進み、図7に示すフローチャートと同様のフローチャートにしたがって処理動作する。
【0060】
このように、本実施形態ではマイクロコンピュータ21のROMに格納された診断プログラムにより、マイクロコンピュータ21が有する記憶手段であるROMやRAMを診断する処理を説明したが、この診断プログラムによってマイクロコンピュータ21に接続される記憶手段、例えば車乗者が制御した情報や設定したデータなどが記憶されているEEPROM42の診断を行ってもよい。
【0061】
このEEPROM42の記憶領域チェックは、既に述べたところのRAMの読み出し/書き込みチェック処理(図6)と同じ処理により行うことができる。
また、チェック異常時には既に述べたところのRAMの異常処理(図7)と同様の処理を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
自動車などの車輌に搭載する空調装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】車輌空調用制御装置の操作ノブとプッシュノブを備えた操作パネルの正面図である。
【図2】車輌空調用制御装置の装置回路を示したブロック図である。
【図3】診断プログラムの全体構成を示したフローチャートである。
【図4】ROMの格納データをチェックするフローチャートである。
【図5】ROMの異常処理を行うフローチャートである。
【図6】RAMの読み出し/書き込みをチェックするフローチャートである。
【図7】RAMの異常処理を行うフローチャートである。
【図8】RAMをクリアするフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
11、12、13 操作ノブ
14、15、16 プツシユノブ
14a、15a、16a 表示灯
20 装置回路
21 マイクロコンピュータ
22 イグニッションスイッチ
23 バッテリー
24 電圧変換回路
38 内外気アクチュエータ駆動回路(外気導入駆動回路)
39 内外気アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イグニッションスイッチの閉成により給電され、当該イグニッションスイッチの開放により給電が遮断されるマイクロコンピュータを備える車輌空調用制御装置において、
前記マイクロコンピュータが備える複数の記憶手段のうち空調制御プログラムを格納する特定の記憶手段には、前記した複数の記憶手段の記憶状態を診断し、不良診断時には外気導入モードに移行させる診断プログラム手段を設けたことを特徴とする診断機能を有する車輌空調用制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載した車輌空調用制御装置において、
前記マイクロコンピュータが備える記憶手段は、ROM、RAM及び/又はEEPROM等の複数の記憶手段を含み、診断プログラム手段が空調制御プログラムと共に特定の記憶手段である前記ROMに設けられていることを特徴とする診断機能を有する車輌空調用制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載した車輌空調用制御装置において、
空調動作状態を光学的に点灯表示する表示手段を設けると共に、
前記診断プログラム手段には、前記いずれかの記憶手段の不良診断にしたがい前記表示手段を点滅させて不良表示し、さらに、診断プログラムの実行を停止させるプログラム手段を含むことを特徴とする診断機能を有する車輌空調用制御装置。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−120134(P2009−120134A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298855(P2007−298855)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000138462)株式会社ユーシン (241)
【Fターム(参考)】