説明

診断用腫瘍マーカー、腫瘍形成の阻害のための薬物スクリーニング、並びにがん治療用の組成物及び方法

【課題】細胞増殖、特にがんの診断及び/又は治療に主に関係する一連の組成物、方法、キット、アーティクル、及び種の提供。
【解決手段】MUC1の異常発現を伴う細胞増殖に特に焦点を当てる。MUC1が細胞増殖及び腫瘍形成を引き起こす機構の重要な側面の解明、および、薬物スクリーニングアッセイ用の新規分子標的の提供。また、このアッセイを用いてMUC1依存性の腫瘍形成を阻害する化合物の特定。以上により早期診断アッセイが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願
この本出願は、米国特許法第119条(e)項に基づいて、係属中の米国仮出願第60/253,361号(2000年11月27日出願)、米国仮出願第60/255,370号(2000年12月13日出願)、米国仮出願第60/256,027号(2000年12月15日出願)、米国仮出願第60/258,157号(2000年12月22日出願)、米国仮出願第60/259,615号(2001年1月3日出願)、米国仮出願第60/260,186号(2001年1月5日出願)、米国仮出願第60/266,169号(2001年2月2日出願)、米国仮出願第60/289,444号(2001年5月7日出願)、米国仮出願第60/266,929号(2001年2月6日出願)、米国仮出願第60/278,093号(2001年3月23日出願)、米国仮出願第60/294,887号(2001年5月31日出願)、及び米国仮出願第60/298,272号(2001年6月14日出願)の利益(優先権)を主張し、これらの各出願は引用によって本明細書に援用する。
発明の属する技術分野
本発明は、脱落した細胞表面受容体の鎖間結合領域及び切断産物を用いるがんの診断及びがん治療の評価のためのアッセイ、並びに細胞に残存した受容体の部分をがん治療薬の分子標的として使用することに関する。
発明の背景
腫瘍形成を促進する生体分子間相互作用の多くは、細胞内及び細胞間シグナリングを媒介する細胞表面タンパク質が関与している。“腫瘍マーカー”は、新生物形成状態への移行の結果、独占的に発現された、過剰発現された、又は変化した発現パターンを示す細胞表面上のタンパク質である。ある腫瘍マーカーの表面濃度はがんの進行と相関している。例えば、細胞表面受容体αVβ3と細胞接着分子のビトロネクチン間の相互作用は血管形成に関与し(Varner J,Cheresh D:Integrin and Cancer(インテグリンとがん),Curr Opin Cell Biol,199
6,8(5):724−730;Vailhe B,Ronot X,Tracqui P,Usson Y,Tracqui L:In vitro angiogenesis is modulated by the mechanical properties of fibrin gels and is related to αVβ3 integrin localization(インビトロにおける血管形成はフィブリンゲルの機械的性質によって調節され、αVβ3インテグリンの局在に関係する),In Vitro Cell Dev Biol Anim,1997,33(10):763−773;Horton M:The aVb3 integrin“vitronectin receptor”(aVb3インテグリン“ビトロネクチン受容体”),Int J Biochem Cell Biol,1997,29(5):721−725)、黒色腫細胞上のαVβ3の濃度増加は予後不良と相関している(Hieken
T,Farolan M,Ronan S,Shilkaitis A,Wild L,Das Gupta T:β3 integrin expression in melanoma predicts subsequent metastasis(黒色腫におけるβ3インテグリンの発現はその後の転移を予言する),J Surg Res,1996,63(1):169−173)。
【0002】
がんと関係している細胞表面受容体は、治療薬の標的として重要である。多くの製薬会社は、こうした細胞表面受容体に結合し遮断する化合物を求めて薬物ライブラリーのスクリーニングに積極的に携わっている。例えば、乳がんの治療に使用される重要な薬物はハ
ーセプチン(Herceptin)である(Pegram M,Lipton A,Hayes D
,Webber B,Baselga J,Tripathy D,Baly D,Baughman S,Twaddell T,Glaspy J,Slamon D:Phase II study of receptor−enhanced chemosensitivity using recombinant humanized anti−p185 Her2/neu monoclonal antibody plus cisplatin,in patients with Her2/neu−overexpressing metastatic breast cancer refractory to chemotherapy treatment(Her2/neuを過剰発現している化学療法に不応性の転移乳がん患者における、組換えヒト化抗p185 Her2/neuモノクロナール抗体とシスプラチンを用いる受容体増強化学感受性の第2相試験),J Clin Oncol,1998,16(8):2659−2671)。この薬物は、30%の乳房腫瘍に過剰発現している細胞表面受容体であるHER2/neuに結合し遮断する(Ross J,Fletcher J:review,The Her2/neu oncogene in breast cancer:prognostic factor,predictive factor,and target for therapy(総説、乳がんにおけるHer2/neuがん遺伝子:予後因子、予言因子、及び治療の標的),Stem Cells,1998,16(6):413−428)。
【0003】
MUC1と呼ばれる別の細胞表面受容体(Treon S,Mollick J,Urashima M,Teoh G,Chauhan D,Ogata A,Raje N,Hilgers J,Nadler L,Belch A,Pilarski L 及び Anderson K:MUC1 core protein is expressed on multiple myeloma cells and is induced by dexamethasone(MUC1コアタンパク質は多発性骨髄腫細胞に発現され、デキサメタゾンによって誘導される),Blood,1999,93(4):1287−1298)は、80%の乳房腫瘍を含む多くのヒト腫瘍、及び相当パーセントの前立腺がん、肺がん、卵巣がん、結腸直腸がん、及びおそらく脳のがんに異常発現しているため、特に興味深い。健康な分泌上皮では、MUC1は頂端縁(opical border)でクラスター化しており、細胞の他の部分にわたって発現していることはない。しか
しながら、腫瘍細胞では、該受容体は頂端縁にのみあるというより細胞表面全体にわたって一様に過剰発現している(Kufe D.,Inghirami G.,Abe M.,Hayes D,Justi−Wheeler H,Schlom J:Differential reactivity of a novel monoclonal antibody(DF3) with human malignant versus benign breast tumors(ヒトの悪性対良性乳房腫瘍に対する新規モノクロナール抗体(DF3)の差別反応性),Hybridoma,1984,3:223−232)。また、乳がん女性は、血流中の脱落MUC1受容体の量が増加していることも知られている。MUC1受容体の細胞外部分は、少なくとも一つの酵素によって切断されまたは“脱落”し、血流中に放出される。血清中の脱落MUC1受容体の量を測定すれば乳がん患者の再発を追跡できる。しかしながら、この方法は変動が大きく感度も悪く一般的な診断には使用できない。
【0004】
これまで、MUC1受容体と腫瘍形成との間の機構的関係は理解されていなかった。人によって異なる反復単位の数とがんに対する感受性とを相関させようとしたがうまくいかなかった。MUC1受容体の糖鎖形成(グリコシル化)とがんとの関係の可能性について調査したが矛盾する結果が得られた。重要なことは、これまでMUC1受容体の細胞外部分に対して作用するリガンドが特定されていなかった。
【0005】
MUC1受容体の機構に関する理解や、いかにして腫瘍形成の引き金を引くかの理解がなかったので、この受容体の疾患関連機能を妨害する治療薬の設計や確認は不可能であった。実際、現行では、MUC1受容体を標的にすることが知られている薬物は使用されておらず、また我々の知る限り臨床試験もされていない。
【0006】
本発明は、MUC1が細胞増殖及び腫瘍形成を引き起こす機構の重要な側面を解明する発見について記述する。これらの発見は、薬物スクリーニングアッセイ用の新規分子標的を提供することになり、発明者らはこのアッセイを用いてMUC1依存性の腫瘍形成を阻害する化合物を特定した。これらの発見は早期診断アッセイも可能にする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要旨
本発明は、細胞増殖、特にがんに関わる様々なキット、方法、組成物、ペプチド種及びアーティクルを提供する。本発明は、主としてがんの診断及び治療のための技術及び構成要素に関する。
【0008】
一側面において、本発明は一連のキットを提供する。一つのキットは、表面を有する第一のアーティクルと、該表面に対して固定されているか又は固定されるように適応されているペプチド配列とを含む。該ペプチド配列は、細胞増殖を促進する成長因子のような活性化リガンドと相互作用する細胞表面受容体の部分を包含する。また、該キットは、活性化リガンドの存在下で該ペプチド配列の、他の同一のペプチド配列への結合能に影響を及ぼす候補薬も含む。該部分は、活性化リガンドと相互作用するのに十分な細胞表面受容体の部分を包含し、該部分は、該部分間の自然結合を防止するのに必要な程度に鎖間結合領域がない。
【0009】
本発明の別のキットは、脱落した細胞表面受容体の鎖間結合領域に対して固定されることが可能な種と、該種に対して固定されているか又は固定されるように適応されているシグナリング実体とを含む。
【0010】
本発明の別のキットは、細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いている細胞表面受容体の部分に結合可能な種と、該種に対して固定されているか又は固定されるように適応されているシグナリング実体とを含む。
【0011】
本発明の別のキットは、鎖間結合領域を包含する細胞表面受容体の部分に結合可能な種と、該種に対して固定されているか又は固定されるように適応されているシグナリング実体とを含む。
【0012】
本発明の別のキットは、アーティクル(粒子であり得る)と、細胞増殖を促進する成長因子のような活性化リガンドと相互作用する細胞表面受容体の部分に対応する配列の少なくとも一つのフラグメントとを含み、該フラグメントはどの細胞からも分離し、該アーティクルに固定されているか又は固定されるように適応されている。
【0013】
本発明の別のキットは、表面を有するアーティクルと、細胞増殖を促進する成長因子のような活性化リガンドと相互作用する細胞表面受容体の部分に結合する生体分子とを含む。該生体分子は、該アーティクルの表面に固定されているか又は固定されるように適応されている。
【0014】
別の側面において、本発明は一連の方法を提供する。一つの方法は、細胞増殖を促進する成長因子のような活性化リガンドと相互作用する細胞表面受容体の部分を包含するペプ
チドを用意し、該ペプチドを、該ペプチドと相互作用する活性化リガンドの能力に影響を及ぼす候補薬と活性化リガンドとに曝露し、そして該候補薬の、活性化リガンドとペプチドとの相互作用を阻害する能力を測定することを含む。該部分は、活性化リガンドと相互作用するのに十分な細胞表面受容体を包含し、該部分は、該部分間の自然結合を防止するのに必要な程度に鎖間結合領域がない。
【0015】
本発明の別の方法は、がんを有する又はがんを発症するリスクのある患者を治療することに関し、該方法は、該患者に細胞表面受容体の切断を削減する薬剤を投与することを含む。
【0016】
がんを有する又はがんを発症するリスクのある患者を治療するための本発明の別の方法は、該患者に、細胞表面受容体の鎖間結合領域の細胞表面からの切断を削減する薬剤を投与することを含む。
【0017】
本発明の別の方法は、細胞表面受容体の鎖間結合領域の細胞表面からの切断量を測定し、そして該測定ステップに基づいてがんの徴候又はがんの可能性を評価することを含む。
本発明の別の方法は、患者の試料中の細胞表面受容体の切断部位を判定し、そして該判定ステップに基づいてがんの徴候又はがんの可能性を評価することを含む。
【0018】
本発明の別の方法は、細胞表面の切断部位の判定に関与する。当該方法は、細胞を、細胞表面受容体の一つの可能性ある切断部位に特異的に結合する薬剤と、細胞表面受容体の別の可能性ある切断部位に特異的に結合する別の薬剤に接触させることを含む。二つの薬剤の細胞表面への結合比を本方法で比較する。
【0019】
本発明の別の方法は、患者の試料の細胞表面からの細胞表面受容体の鎖間結合領域の第一の切断量を測定することを含む。患者の試料の細胞表面からの細胞表面受容体の鎖間結合領域の第二の切断量も測定し、第一の量を第二の量と比較する。
【0020】
本発明の別の方法は、がんのリスク又は進行を低減するために患者を治療することに関する。当該方法は、がんのリスクがあることが知られている又はがんと診断された患者に、細胞増殖を促進する活性化リガンドと相互作用する細胞表面受容体の部分と活性化リガンドとの相互作用を阻害する薬剤を投与することを含む。
【0021】
本発明の別の方法は、がんのリスク又は進行を低減するために患者を治療することに関する。当該方法は、がんのリスクがあることが知られている又はがんと診断された患者に、細胞増殖を促進する成長因子のような活性化リガンドと相互作用する細胞表面受容体の部分のクラスター化を防止する薬剤を投与することを含む。
【0022】
本発明の別の方法は、細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞に残って付いている細胞表面受容体の部分と結合可能なリガンド、及び該結合を遮断可能な薬剤を、該リガンド及び該薬剤間の相互作用を分断する候補薬に曝露することを含む。候補薬による相互作用の分断を測定する。
【0023】
本発明の別の方法は、細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いている、リガンドと結合可能な細胞表面受容体の部分、及び該結合を遮断可能な薬剤を、該部分及び該薬剤間の相互作用を分断する候補薬に曝露し、候補薬による相互作用の分断を測定することを含む。
【0024】
本発明の別の方法は、合成薬、及び該合成薬の生物学的標的を、該合成薬と該標的間の相互作用より大きく生物学的標的と相互作用しうる候補薬に曝露し、候補薬による相互作
用の分断を測定することを含む。
【0025】
別の方法は、がん又はがんの可能性を示す生理学的状態を診断することを包含する。当該方法は、MUC1の異なる切断状態とは区別可能な、MUC1の特異的切断部位を決定することを含む。
【0026】
本発明の別の方法は、MUC1の異常発現を特徴とするがんを有する患者の治療に関し、該患者に腫瘍成長を削減するのに有効な量のエトモキシルを投与することを含む。
本発明の別の方法は、MUC1の異常発現を特徴とするがんを有する患者の治療に関し、該患者に腫瘍成長を削減するのに有効な量のL−α−メチル−ドパを投与することを含む。
【0027】
MUC1の異常発現を特徴とするがんを有する患者を治療するための本発明の別の方法は、該患者に腫瘍成長を削減するのに有効な量のカルシマイシンを投与することを含む。
MUC1の異常発現を特徴とするがんを有する患者を治療するための別の方法は、該患者に腫瘍成長を削減するのに有効な量のブチルインダゾールを投与することを含む。
【0028】
別の側面において、本発明は組成物を提供する。本発明の一つの組成物は、脱落した細胞表面受容体の鎖間結合領域の少なくとも一部分と、該部分に対して固定されているか又は固定されるように適応されているシグナリング実体とを含む。
【0029】
本発明はまたペプチド種も提供する。本発明の一つのペプチド種は、細胞増殖を促進する成長因子のような活性化リガンドと相互作用する細胞表面受容体の部分であって、該部分はどの細胞からも分離している、に対応する配列の少なくとも一つのフラグメントと親和性タグとを含む。
発明の詳細な説明
定義:
“MUC1成長因子受容体(MGFR)”という用語は、細胞増殖を促進する成長因子のような活性化リガンドと相互作用するMUC1受容体の部分を意味する機能的定義である。MUC1のMGFR領域は、細胞表面に最も近い部分で、PSMGFRの大部分又はすべてによって規定される。MGFRは、非修飾ペプチドと、例えばリン酸化、グリコシル化などのような酵素修飾を受けたペプチドの両方を含む。本発明の結果は、腫瘍形成に関わる部位で細胞からのIBR放出をもたらすMUC1の切断が起こると、この部分がリガンドにアクセス可能になるという機構と合致する。
【0030】
“鎖間結合領域”(IBR)という用語は、他のMUC1分子の同一領域に強固に結合するMUC1受容体の部分を意味する機能的定義であり、その結果、MUC1は各受容体のIBRを介して他のMUC1受容体と凝集(すなわち自己凝集)する能力を備えることになる。この自己凝集が、健常細胞で観察されるMUC1受容体のクラスター化に寄与しているのであろう。
【0031】
好適な実施の態様において、IBRは、MUC1受容体の細胞外配列のアミノ酸507〜549を含むと定義されるヒトMUC1受容体の領域内の少なくとも12〜18個の長さのアミノ酸配列とほぼ定義でき、アミノ酸525〜540及び525〜549が特に好適であり(番号はAndrew Spicerら、J.Biol.Chem Vol 266 No.23,1991、15099−15109ページを参照;これらのアミノ酸番号は、ジェンバンク(Genbank)アクセッション番号P15941;PID G547937の1067、1109、1085、1100、1085、1109に対応する、配列番号10)、又は、そのフラグメント、機能的変異体又は保存的置換である。
【0032】
“切断されたIBR”という用語は、細胞表面に残って付いている受容体分子のセグメントから放出されたIBR(又はその部分)のことである。この放出は、IBRの酵素的又は他の切断によるものであり得る。本明細書中において、IBRが“細胞の表面にある”というときには、IBRが脱落又は切断されていない細胞表面受容体の部分に付いていることを意味する。問題の切断IBRは、“疾患関連の切断”、すなわちがんを引き起こしうる種類の切断である。
【0033】
“定常部”(CR)という用語は、IBRと1:1の比で存在し、健常及び腫瘍形成細胞において切断時に脱落するMUC1の部分の一部を形成する任意の非反復MUC1配列のことである。
【0034】
“反復”という用語は、当該技術分野におけるその通常の意味を持つ。
“MUC1成長因子受容体の主配列”(PSMGFR)という用語は、MGFRの大部分又はすべてを規定する、以下に定義した(表1−配列番号7参照)ペプチド配列のことである。PSMGFRは、非修飾ペプチドと、例えばリン酸化、グリコシル化などのような酵素修飾を受けたペプチドの両方を含む。ヒスチジンタグ標識PSMGFR(表1−配列番号2参照)は、本明細書中ではHis−PSMGFRと略す。
【0035】
“MUC1成長因子受容体の延長配列”(ESMGFR)という用語は、His−PSMGFRのすべて+PSIBRの近位末端の9個のアミノ酸を規定する、以下に定義した(表1−配列番号3参照)ペプチド配列のことである。
【0036】
PSIBRは、IBRの大部分又はすべてを規定する、以下に定義した(表1−配列番号8参照)ペプチド配列のことである。
“分離”という用語は、細胞からの物理的分離を意味する。すなわち、細胞に対して固定されていたMUC1の部分が該細胞に対してもはや固定されていない状態をいう。例えば、MUC1の部分の切断の場合、切断された部分が細胞から離れて自由に移動し、その後体液中に検出されたり、切断された細胞から離れた場所、例えば別の細胞、リンパ節などに固定されれば、“分離した”ことになる。
【0037】
“結合”という用語は、相互親和性又は結合能を示す対応する分子対間の相互作用のことをいう。典型的には、生化学的、生理学的、及び/又は薬学的相互作用を含む、特異的又は非特異的結合又は相互作用である。生物学的結合は、タンパク質、核酸、糖タンパク質、炭水化物、ホルモンなどを含む分子対間に生じる種類の相互作用を定義する。具体例は、抗体/抗原、抗体/ハプテン、酵素/基質、酵素/インヒビター、酵素/コファクター、結合タンパク質/基質、担体タンパク質/基質、レクチン/炭水化物、受容体/ホルモン、受容体/エフェクター、核酸の相補鎖、タンパク質/核酸、リプレッサー/インデューサー、リガンド/細胞表面受容体、ウィルス/リガンドなどである。
【0038】
“結合パートナー”という用語は、特定の分子と結合できる分子のことである。生物学的結合パートナーがその例である。例えば、プロテインAは生物学的分子IgGの結合パートナーであり、その逆も然りである。
【0039】
“凝集体”(名詞)という用語は、宿主系に対する仲介補助物の有無に関わらず互いに対して固定されている複数の細胞表面受容体又はそのフラグメント(例えばMUC1)のことである。これに含まれるのは、細胞表面における健常受容体の自己凝集;相互に結合した切断された受容体又はフラグメントの自己凝集;細胞表面に付着している受容体又はフラグメントに結合した切断された受容体又はフラグメント;細胞に付着している又は切断されているに関わらず、宿主系に対する仲介補助物を介して互いに対して固定されている受容体又はフラグメントなどである。“宿主系に対する仲介補助物”は、ポリマー、デ
ンドリマーなどの合成種、又は単に宿主系に天然には存在しないが、宿主系外の供給源から宿主系に加えられた、例えばIgM抗体のような天然種などである。ただし、疾患関連の凝集(“誘導多量体化”)を引き起こしうる成長因子のような、宿主系に天然に存在している仲介物の結果による凝集は除外される。“凝集する”(動詞)又は“凝集”とは、凝集体(名詞)を形成するプロセスのことである。
【0040】
“誘導多量体化”とは、形成された凝集体が細胞に成長又は増殖を誘導するように働きかけることができる凝集のことである。誘導多量体化は、典型的には、例えば成長因子又は他の活性化リガンドによる細胞表面受容体の二量体化又は四量体化のことであるが、多量体化度が特殊な細胞種における天然の受容体のクラスター化を擬似するほど大きくない限り、これより高次の多量体化を含んでもよい。なぜならば、天然のクラスター化は、受容体が細胞に成長又は増殖の信号を送るのを防止するからである。
【0041】
“予防的クラスター化”とは、特定の細胞種における天然の受容体のクラスター化を擬似するほど十分な数の受容体が関与する凝集体を形成させるための受容体の多量体化のことである。天然のクラスター化は、例えば宿主系に対する仲介補助物を用いて、受容体が細胞に成長又は増殖の信号を送るのを防止する。
【0042】
細胞表面受容体に対する“リガンド”とは、受容体と相互作用して一時的又は永久的にその構造及び/又は機能を変化させることができる任意の物質のことである。例えば、受容体の結合パートナー及び受容体の化学構造を変化させることができる薬剤(例えば修飾酵素)などであるが、これらに限定されない。
【0043】
“活性化リガンド”とは、細胞表面受容体の誘導多量体化を実行できるリガンドのことである。活性化リガンドは、受容体に結合可能な2個以上の活性部位を有する単一分子種、二量体、四量体、高次多量体、又は複数の分子種を含む複合体などであるが、これらに限定されない。MUC1腫瘍細胞については、活性化リガンドは、細胞によって産生され、誘導多量体化を実行する様式でMUC1腫瘍細胞の表面上のMGFRと相互作用する種であり得る。
【0044】
“成長因子”とは、以前に確認された成長因子の種類に入っても入らなくてもよいが、活性化リガンドとして働く中で成長因子として作用する種のことである。
“MUC1提示細胞”とは、MUC1及び/又はMGFRを表面に発現している非がん性及びがん性細胞のことである。“MUC1腫瘍細胞”又は“MUC1がん細胞”又は“がん性MUC1細胞”とは、MUC1及び/又はMGFRをその表面に異常発現しているがん性腫瘍細胞のことである。
【0045】
本明細書中で使用している“コロイド”は、ナノ粒子、すなわち非常に小さな、自己浮遊又は液浮遊可能な粒子を意味し、例えば無機又は有機材料、ポリマー材料、セラミック材料、半導体材料、金属(例えば金)材料、非金属材料、結晶材料、アモルファス材料又はそれらの組合せから製造されたものを含む。典型的には、本発明に従って使用されるコロイド粒子は、どの次元の断面も250nm未満、さらに典型的にはどの次元の断面も100nm未満、そしてほとんどの場合、約2〜30nmの断面のものである。本発明での使用に適した一つの種類のコロイドは、断面が10〜30nm、別の種類は断面が2〜10nmである。本明細書中で使用しているこの用語は、生化学の分野で普通に用いられている定義を含む。
【0046】
本明細書中で使用している、別の構成要素“に対して固定されている”構成要素は、他の構成要素に固定されている、又は例えば他の構成要素も固定されている第三の構成要素に固定されることによって他の構成要素に間接的に固定されている、あるいは、そうでな
ければ他の要素に一時的に会合している、のいずれかである。例えば、シグナリング実体は、シグナリング実体が、結合種に固定されている、結合種が固定されているコロイド粒子に固定されている、結合種が固定されているデンドリマー又はポリマーに固定されているなどであれば、結合種に対して固定されている。コロイド粒子は、第一のコロイド粒子表面に固定された種が実体に付着し、第二のコロイド粒子表面上の種も同じ実体に付着していれば、別のコロイド粒子に対して固定されている。この場合、実体は、単一の実体、複数種の複合実体、細胞、別の粒子などであり得る。
【0047】
“シグナリング実体”は、特定の試料中又は特定の場所でその存在を示すことができる実体を意味する。本発明のシグナリング実体は、ヒトの肉眼で識別可能なもの、単独では見えないかもしれないが、十分な量であればヒトの肉眼で検出可能であり得るもの(例えばコロイド粒子)、視覚的(肉眼又は電子顕微鏡などを含む顕微鏡を用いて)又は分光学的に容易に検出できるようなレベル又は波長範囲内で電磁放射線を吸収又は放出する実体、適当な活性化エネルギーへの曝露で特徴的な酸化/還元パターンを示すレドックス活性分子のように電子的又は電気化学的に検出できる実体(“電子シグナリング実体”)などであり得る。例えば、染料、顔料、レドックス活性分子のような電気活性分子、蛍光部分(定義により、リン光部分も含む)、応答増強リン光体、化学発光実体、電気化学発光実体、又は西洋ワサビペルオキシダーゼ及びアルカリホスファターゼなど酵素結合シグナリング部分などである。“シグナリング実体の前駆体”は、それ自体はシグナリング能力を持ち得ないが、別の種との化学的、電気化学的、電気的、磁気的、又は物理的相互作用により、シグナリング実体となる実体である。一例として、別の分子との化学的相互作用時にのみ、特定の検出可能な波長範囲内で放射線を出す能力を有する発色団が挙げられる。シグナリング実体の前駆体は、本明細書中で使用している“シグナリング実体”とは区別可能であるが、その定義内に含める。
【0048】
別の種又はアーティクル表面に対する種との関係で本明細書中で使用している“固定されているか又は固定されるように適応されている”とは、該種が、共有結合、特異的な生物学的結合(例えばビオチン/ストレプトアビジン)を介した付着、キレート/金属結合のような配位結合などを介して化学的又は生化学的に連結されていることを意味する。例えば、本文脈で“固定されている”というときには、複数の化学的連結、複数の化学/生物学的連結などが含まれる。例えば、ポリスチレンビーズ上で合成されたペプチドのような結合種、ビーズに付着しているプロテインAのようなタンパク質に結合している抗体に特異的に生物学的に結合している結合種、表面に共有結合的に固定されている結合パートナー(例えばGSTの場合のグルタチオン)に特異的に生物学的に結合しているGST又はファージのような分子の一部を(遺伝子工学によって)形成している結合種などであるが、これらに限定されない。別の例として、チオールは金と共有結合するので、チオールに共有結合している部分は、金表面に固定されるように適応されている。同様に、金属結合タグをもつ種も、金属に配位しているキレートも提示する分子(チオール/金結合など)を表面に共有結合して保持する表面に固定されるように適応されている。また、表面が特定のヌクレオチド配列を有し、種が相補的ヌクレオチド配列を含んでいれば、その種も表面に固定されるように適応されている。
【0049】
“共有結合的に固定されている”とは、一つ以上の共有結合を介して固定されていることにほかならない。例えば、金表面に固定されているカルボキシレート提示アルキルチオールにEDC/NHS化学を介して共有結合している種は、該表面に共有結合的に固定されている。
【0050】
“特異的に固定されている”又は“特異的に固定されるように適応されている”とは、“固定されているか又は固定されるように適応されている”の定義で前述したように、種が別の試料又は表面に化学的又は生化学的に連結されていることを意味するが、すべての
非特異的結合は除外される。
【0051】
本発明のある態様は、コロイド粒子の表面のような表面上の自己組織化単層(SAM)、及びSAMで被覆された表面を有するコロイド粒子のようなアーティクルを利用する。一セットの好適な態様において、完全に合成分子で形成されたSAMが、表面又は表面の領域を完全に被覆している。例えばコロイド粒子の表面を完全に被覆している。本文脈における“合成分子”とは、天然に存在する分子ではなく、むしろヒトの指揮下、又はヒトが創作もしくはヒトが指揮した制御下で合成された分子を意味する。本文脈における“完全に被覆する”とは、SAMによる完全な直接的被覆を妨げるタンパク質、抗体、又は他の種と直接接触している表面の部分又は領域がないことを意味する。すなわち、好適な態様において、表面又は領域は、その全体にわたって、完全に非天然分子(すなわち合成分子)からなるSAMを含む。SAMは、表面に密集したSAMを形成するSAM形成種から、又はこれらの種とSAM全体の電子伝達を促進できる分子ワイヤもしくは他の種(SAMに加わることのできる欠陥促進種を含む)との組合せから、あるいはSAMに加わることのできる他の種から、及びこれらの任意の組合せから、完全に作り上げることができる。好ましくは、SAMに加わるすべての種は、表面に結合する(場合により共有結合する)チオールのような官能性を含む。チオールは金表面に共有結合する。本発明による表面の自己組織化単層は、本質的に任意の化学又は生物学的官能性を提示(露出)できる種(例えば、金が表面の場合、チオール種)の混合物で構成されうる。例えば、非特異的吸着に抵抗性のあるトリエチレングリコール末端種(例えばトリエチレングリコール末端チオール)、及び末端に親和性タグの結合パートナーを持つ他の種(例えばチオール)、例えば末端に、金属に配位できるニトリロ三酢酸のようなキレート(これは、ニッケル原子と錯体化するとヒスチジンタグ結合種のような金属結合タグ種を捕捉する)を持つ種を含む。本発明は、コロイド表面又は他の任意の表面に提供される本質的に任意の化学又は生物学的種の濃度を厳密に制御する方法を提供する。各コロイド粒子上のペプチド密度に対するこの厳密な制御がなければ、共に固定されているペプチドは互いに容易に凝集して、試料中に存在する凝集体形成種がなくてもコロイド−コロイド凝集を触媒するミクロ−疎水性−ドメインを形成するであろう。これは、既存のコロイド凝集アッセイに優る本発明の利点である。本発明の多くの態様において、自己組織化単層は金コロイド粒子上に形成される。
【0052】
本明細書に記載のキットは1個以上の容器を含み、該容器は、前述のような種、シグナリング実体、生体分子、及び/又は粒子などの化合物を含有できる。該キットは、化合物の混合、希釈、及び/又は投与に関する説明書を含有してもよい。また、該キットは、一つ以上の溶媒、界面活性剤、保存剤及び/又は希釈剤(例えば生理食塩水(0.9%NaCl、又は5%デキストロース))を含む他の容器、並びに混合用、希釈用、又は該成分の試料への投与又はそのような治療を必要とする患者への投与用の容器を含むこともできる。
【0053】
キット中の化合物は、液体溶液として又は乾燥粉末として提供できる。提供されている化合物が乾燥粉末の場合、該粉末は適切な溶媒(これも提供されうる)を加えて再構成することができる。液体の形態の化合物は濃縮されていても、すぐに使用できる状態であってもよい。溶媒は、化合物及び使用又は投与の様式によって異なる。そのための適切な溶媒は薬化合物用として周知であり、文献に見つけることができる。
【0054】
本明細書中で使用している“がん”という用語は、胆管がん;膀胱がん;グリア芽細胞腫及び髄芽細胞腫を含む脳のがん;乳がん;子宮頸がん;絨毛上皮腫;結腸がん;子宮体がん;食道がん;胃がん;急性リンパ性及び骨髄性白血病を含む血液学的新生物;多発性骨髄腫;AIDS関連白血病及び成人T細胞白血病リンパ腫;ボーエン病及びパジェット病を含む上皮内新生物;肝がん;肺がん;ホジキン病及びリンパ球性リンパ腫を含むリン
パ腫;神経芽細胞腫;扁平上皮がんを含む口腔がん;上皮細胞、間質細胞、生殖細胞及び間葉細胞から発生するものを含む卵巣がん;膵臓がん;前立腺がん;直腸がん;平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、及び骨肉腫を含む肉腫;黒色腫、カポジ肉腫、基底細胞がん(basocellular cancer)、及び扁平上皮がんを含む皮膚がん;精上皮腫、非
精上皮腫(奇形腫、絨毛上皮腫)、間質腫瘍、及び生殖細胞腫瘍のような胚腫瘍を含む精巣がん;甲状腺腺がん及び髄様がんを含む甲状腺がん;腺がん及びウィルムス腫瘍を含む腎臓がんを含みうるが、これらに限定されない。好適ながんは、乳がん、前立腺がん、肺がん、卵巣がん、結腸直腸がん、及び脳のがんである。
【0055】
本明細書中に記載されている“がんの治療”という用語は、化学療法、放射線療法、アジュバント療法、又は前述の方法の任意の組合せを含みうるが、これらに限定されない。多様であり得る治療の側面は、用量、投与のタイミング、又は期間もしくは療法などであるがこれらに限定されず、用量、タイミング、又は期間が同じく多様であり得る他の治療と組み合わせても組み合わせなくてもよい。がんの別の治療は手術であるが、これを単独で利用しても前述の治療法のいずれかと組み合わせて利用してもよい。医学の専門家は適当な治療を決定することができる。
【0056】
“がん又は腫瘍形成防止用薬剤”は、本明細書中に記載のがん又は腫瘍形成に関わるいずれかのプロセスに対抗できる任意の薬剤を意味する。例えば、MGFRと相互作用(たとえば、結合)することで、MGFRとの相互作用によって腫瘍形成を促進する薬剤のMGFRとの相互作用を削減又は防止する薬剤である。
【0057】
本明細書中で使用している“細胞表面受容体の鎖間結合領域の切断を減らす薬剤”とは、該薬剤が存在しなければ発生するであろうMUC1受容体のMGFRとIBR間の切断を防止する又は減らす任意の組成物のことである。MGFRとIBR間での受容体の切断は、膜関連又は可溶性酵素の活性によって引き起こされうる。このような酵素の一部は切断に直接関わっている。他の酵素は、切断に関わる認識エピトープをマスクする糖基又はホスフェートでMUC1を修飾することによって切断に影響を与えることができる(例えば、特定の場所での切断を防止する)。他の酵素は、特定の場所での切断を、その場所での切断の認識モチーフを作り出す糖基又はホスフェートでMUC1を修飾することによって、促進することができる。細胞表面受容体のIBRの切断を削減する薬剤を選ぶ一つの方法は、前述のように切断に影響を及ぼす酵素をまず特定し、これらの酵素活性を変化させる能力について薬剤及びその類似体をスクリーニングすることである。別の方法は、類似酵素(例えば同じファミリー由来)の活性に影響を及ぼすことが知られている薬剤を、MUC1の切断部位を変化させるそれらの能力について試験し、またこれらの薬剤の類似体を同様に試験することである。あるいは、酵素とMUC1受容体を含有する無細胞アッセイで薬剤をスクリーニングし、切断速度及び位置を抗体プロービング、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などによって測定する。あるいは、MUC1に影響を及ぼす酵素を最初に特定せずに、MUC1を提示している細胞に対して、MUC1の切断部位又は切断速度を変化させる薬剤の能力について薬剤をスクリーニングする。例えば、MUC1を提示している全細胞を含有するアッセイで薬剤をスクリーニングし、MUC1の切断部分に付いたままであるIBRの量、すなわちMGFRとIBR間の切断度、の指標となる細胞上清の凝集ポテンシャルを測定すればよい。別の技術では、MUC1を提示している全細胞を含有するアッセイで薬剤をスクリーニングし、上清を除去し、細胞のを引き続き例えばMGFRに対する標識抗体を用いてMGFR部分のアクセシビリティについて試験する。薬剤は、分子ライブラリーのような市販品から特定できる。又は、同じ機能性能を有する公知の薬剤に基づいて合理的に設計され、スクリーニングアッセイを用いて活性について試験する。
【0058】
“MUC1受容体の切断を減らす薬剤”は、任意の位置でMUC1受容体の切断を防止
する又は減らす任意の組成物である。このような薬剤は、がんを有する又はがんを発症するリスクのある患者の治療に使用できる。なぜならば、切断が防止されると、がんに関わる機能受容体であるMGFRのアクセシビリティが減少する又は防止されるからである。このような薬剤は、細胞を候補薬に曝露し、対照と比較したMUC1受容体の切断量を上清中で測定することによって選ぶことができる。
【0059】
本明細書中で患者というときは、任意の哺乳動物(好ましくはヒト)のことであり、好ましくは、MUC1の異常発現を伴う腫瘍形成又はがんにかかりうる哺乳動物である。例えば、ヒト、ヒト以外の霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、又はネコなどである。一般的に、本発明はヒトでの使用を目的としている。
【0060】
本発明で使用する試料は、患者から採取した任意の体組織又は体液試料である。好適なのは体液で、例えばリンパ液、唾液、血液、尿などである。血液が最も好適である。本明細書中に記載の様々な方法に使用する組織及び/又は細胞の試料は標準法によって採取できる。例えば、パンチ生検及び細胞掻爬を含む組織生検、針生検、及び吸引又は他の方法による血液又は他の体液の採取などであるが、これらに限定されない。
【0061】
以下の出願特許及び公開特許は、引用によって本明細書に援用する。国際特許出願番号PCT/US00/01997、出願日2000年1月25日、発明の名称“神経変性疾患における異常タンパク質凝集の迅速且つ高感度の検出”、公開番号WO00/43791;国際特許出願番号PCT/US00/01504、出願日2000年1月21日、発明の名称“コロイド及び非コロイド構造を用いるアッセイ”、国際特許公開番号WO00/34783として2000年7月27日に公開;米国特許出願番号09/631,818、出願日2000年8月3日、発明の名称“タンパク質凝集の迅速且つ高感度の検出”;Bamdadらによる米国仮出願、出願番号60/248,865、出願日2000年11月15日、発明の名称“エンドスタチン様血管形成阻害”;及び米国特許出願、同一名称の出願、出願日2001年11月15日。
【0062】
本発明は、一般的に、薬物スクリーニング用の新規な分子標的、鎖間結合領域を特徴とする種類の細胞表面受容体の異常発現を特徴とするがんに関連する治療及び診断に関する。そのようながんの一群は、MUC1の異常発現を特徴とするものである。本明細書では、本発明の記述の多くはMUC1を異常発現している細胞に関する。これらの例において記述は例示的なものとみなされるべきであり、本発明の原理は類似の機構によって機能する他の細胞表面受容体にも適用されることは理解されるだろう。本明細書中の開示内容を以てすれば、当業者は容易にこの機構又は類似の機構によって機能する他の細胞表面受容体を特定でき、本発明を受容体の異常発現を特徴とするがんに適用できるであろう。本発明は、本発明者らが解明した、自己凝集する領域を有する細胞表面受容体(MUC1がその例)が関与する新規機構に基づいている。
【0063】
MUC1は、本明細書中で以下のように名付けたいくつかの領域を含む。細胞表面に最も近い領域から始め、細胞から遠ざかる方向に向かって順に説明する。同じ発明者らによって出願されたMUC1診断及び他の技術に関する少なくとも一つの米国仮出願(“前出願”)、発明の名称“腫瘍マーカー及び腫瘍形成を阻害する薬物スクリーニング”の中で、MUC1の少なくとも一つの領域を異なって定義した。以下の定義と差し替えることは理解されるであろう。当業者であれば、前出願(複数)で異なって引用したMUC1の部分の説明及び現出願での説明、及び前出願(複数)の本出願への関連付けから、本発明をそのすべての側面において理解するであろう。(1)PSMGFRは前出願(複数)ではFLR領域又はペプチドと呼んだ;(2)PSIBRは前出願(複数)ではCM領域又はペプチドと呼んだ。MUC1受容体の基本構造を図1に示す。受容体は、図示されているとおり、1)細胞質テール;2)膜貫通セクション;3)MGFR;4)IBR、及び5
)反復部分を含む。
【0064】
本発明の一つの側面は、MUC1の特定領域、すなわちIBRが、他のMUC1分子の同一領域と強固に結合するという発見に関する。つまり、MUC1受容体は、他のMUC1受容体と各受容体のIBRを介して凝集(すなわち自己凝集)する能力を有している。この自己凝集は、健常細胞に観察されるMUC1受容体のクラスター化に寄与しているようである。MUC1受容体のIBR部分は自己凝集するという発見は、発明者らが裏付け証拠を提供する以下の機構モデルと合致する。
機構モデル:(1)受容体のクラスター化は健常状態に伴うものである。なぜならば、凝集したIBR部分は、成長因子、修飾酵素などのリガンドが、機能受容体として作用するMUC1受容体の隣接する細胞外部分にアクセスするのを遮断するからである。クラスター化は、細胞内テールが細胞内修飾酵素及びシグナリングリガンドにアクセスするのも遮断する。(2)MUC1受容体がIBRを放出する位置で切断されると、受容体のクラスター化を維持する重要な力が失われ、受容体は細胞膜内を自由に移動し、又は修飾酵素、活性化リガンドもしくは成長因子のような分泌リガンド、又は他の細胞表面受容体と相互作用するようになる。これらの相互作用は、細胞増殖のシグナリングカスケードを引き起こす二量体化のような新規の誘導多量体化状態に関与することになろう。
【0065】
MUC1の切断は、腫瘍細胞又はがん細胞ではIBRのC−末端境界又はその付近の部位(細胞とIBRの間)で発生し、細胞からIBRを放出すると思われる。あるいは、MUC1の切断は、IBR自体の中で発生し、自己凝集能が失われるほどのIBRの分断を起こし、MGFRが薬剤又はリガンドにアクセス可能になる結果をもたらすと思われる。実施例1bに記載したように、IBR領域の9個のアミノ酸をMGFR領域のペプチド(自己凝集しない)に付加すると、いくらか自己凝集能が付与される。あるいは、MUC1受容体の凝集の喪失は、必ずしも切断の結果である必要はない。例えば、MUC1遺伝子の選択的スプライシングの結果、IBRがないこともある。
【0066】
本発明以前は、MUC1受容体に対するリガンドは最終的には特定されていなかった。研究論文によれば、MUC1受容体の脱落部分が、切断後細胞表面に残って付いている受容体の部分のリガンドになることが示唆されていた。本発明ではこの仮説を検証し、それは事実でないことを確認した。さらに、MUC1受容体の切断部位の変化は機能の変化をもたらしうることも確認した。比色コロイド結合アッセイ(上で引用したPCT/US00/01997に記載、並びに上で本明細書に取り込んだ出願特許/公開特許の他のいくつかのアッセイ)で、MUC1受容体の様々なフラグメントを試験し、それらが互いにMUC1のフラグメントと相互作用する能力、及び自己凝集する能力を調べた。我々は、細胞表面に非常に近い受容体の一つの部分が、高親和性相互作用で自己凝集することを見出した。このことは、我々が鎖間結合領域と名付けたMUC1受容体のこの部分が健常細胞における受容体の強固なクラスター化を保っていること、そしてIBRを放出する部位でのMUC1の酵素切断は受容体をクラスター化させておかないことを示唆していた。このクラスター化は細胞シグナリングに二通りの影響を及ぼしていると思われる。第一に、細胞表面における受容体のクラスター化は、修飾酵素又は成長因子のようなリガンドの結合部位となる受容体の部分へのアクセスを制限しうる。第二に、当業者には当然理解されることながら、多くの細胞表面受容体の細胞内部分(細胞質テール)は、プログラム細胞成長(増殖)並びにプログラム細胞死(アポトーシス)を制御するシグナリングカスケードに関与している。細胞表面で強固にクラスター化している受容体は、細胞内にもクラスター化した細胞質テールを有している。これは、細胞質テールが細胞内シグナリングに関与する細胞内タンパク質との相互作用するのを防止しうる。
【0067】
場合によって、MUC1受容体は切断され、細胞表面からIBRを放出することがある。あるいは、切断によってIBRの相当な部分が放出され、そのためにMUC1受容体が
自己凝集能を失うこともある。MUC1の凝集の喪失は、いくつかの問題を有しうる。IBR又はIBRの相当な部分が細胞表面から放出されると、受容体は細胞表面に一様に分布することが可能となり、細胞質テールに細胞内シグナリングタンパク質との会合を自由にさせるようになる。修飾酵素及び/又は活性化リガンドのような外部因子は受容体の残存している細胞外部分に結合することが可能となり、多量体化状態の変化、すなわち誘導多量体化を介して、又は誘導された立体配座の変化として、疾患関連のシグナルを誘導する。当業者には当然理解されることであるが、成長因子及びホルモンのようなリガンドは、受容体の二量体化を誘導することが多く、これが細胞内シグナリングカスケードの引き金となる。
【0068】
細胞増殖は、MGFR部分と相互作用できる活性化リガンドへのMGFRのアクセシビリティの結果もたらされうる。例えば、MUC1受容体の自己凝集IBRは密な網状構造を形成でき、これによって成長因子のようなリガンドと、IBRより細胞に近い受容体のMGFR部分との相互作用が立体的に妨げられる。がん又は腫瘍細胞では、この網状構造が失われうるので、リガンドとMGFRとの相互作用が可能になる。
【0069】
上記の機構モデルは、IBR領域の脱落後細胞表面に残って付いているMUC1受容体の部分、すなわちMGFRが、細胞増殖を引き起こすリガンドの受容体として機能するという機構と合致する。受容体のこの部分は酵素修飾された後そのリガンドの少なくとも一つから認識されうるようになることを示す証拠も本明細書中に提示する(実施例8参照)。この機構を実証するために以下のことを本明細書中に示す。(a)リガンドとMUC1受容体のこの部分(MGFR)との相互作用によって受容体は二量体化され、これが細胞増殖の引き金になる;(b)MUC1受容体のこの部分(MGFR)とそのリガンドとの相互作用を遮断すると細胞増殖が遮断される。MUC1受容体が細胞表面全体にわたって均一に発現されている腫瘍細胞系をMUC1受容体のMGFR部分に対して作製したIgG抗体で処理すると、細胞増殖の速度が非常に増大する。図5参照。IgG抗体は2価なので、すなわち1個の抗体が同時に細胞表面上の2個の隣接するMGFR部分に結合するので、これらの結果は、該抗体が、MGFR部分を二量体化する成長因子の作用と類似した活性化リガンドとして作用することを示している。従って、受容体の細胞質テールを介したシグナリングと一致する増殖シグナリングのカスケードが引き起こされる。この発見から二つの結論が導き出される。第一に、MUC1受容体のMGFR部分に結合する活性化リガンドは、受容体の誘導多量体化を引き起こす。第二に、従って効果的な治療戦略は、受容体のMGFR部分を単量体組成物で遮断することで、そうすれば誘導多量体化とその後のシグナリングカスケードが防止される。例えば、MUC1受容体のMGFR部分に対して作製された単鎖又は1価の抗体は効果的な抗がん治療薬として機能するであろう。別の治療戦略は、いくつかのリガンド結合に必要とされうる、受容体を修飾する酵素の活性を遮断することである。
【0070】
発明者らは、MUC1受容体を過剰発現している細胞も、これらの細胞の溶解産物及び上清中に存在するMGFRを二量体化するリガンドの量が増加していることも見出した。詳細については実施例3b及び図8A−D参照。実施例3bに記載のコロイド−コロイド相互作用実験で、2個以上のコロイド固定化受容体を同時に結合する、すなわち二量体化するリガンドは溶液の色をピンクからブルーに変化させる。MUC1受容体のMGFR部分から誘導された合成ペプチド(His−PSMGFR)を提示している金コロイドを、MUC1受容体を過剰発現している、発現している、又は発現していないことが知られている各種の細胞系の溶解産物/上清とインキュベートした。MUC1を過剰発現しているHTB−133(T47D)(表2参照)の溶解産物は、コロイド懸濁液を15分以内にブルーに変え、コロイドに固定されたMGFR誘導ペプチドと相互作用するリガンドが溶解産物中に高濃度に存在することを示した。他の細胞系の溶解産物を用いた実験で、存在するリガンドの量を示すコロイド溶液の色変化速度は、それらの細胞系における細胞のM
UC1受容体の発現度と相関していた。
【0071】
2個以上の種がMUC1受容体のこの部分に対する生理学的に関係のあるリガンドになりうる。受容体を修飾する酵素は受容体のこの部分の関係リガンドであり得る。例えば、一つのリガンドはMUC1受容体の修飾されていないMGFR部分に単量体的に結合しうるが、誘導多量体化のような異なる機能を有する別のリガンドは、酵素修飾された受容体を認識しうる。前述の実験(実施例3b)は細胞溶解産物/上清中で実施したので、受容体への酵素修飾を含むいくつかの受容体−リガンド相互作用が起こりうるが、いくつかの相互作用の中で、MGFR部分のリガンド二量体化(又は多量体化)だけが溶液の色変化をもたらすことに注意するのは重要である。実施例3bに類似した実験(実施例8)では、酵素阻害薬のPMSFを溶解産物に加えてから合成ペプチドHis−PSMGFR(表1の配列番号2参照)担持コロイドを導入した。今度は図20を参照すると、PMSFを含有する溶液は、溶液の色変化を受けなかった。この結果は、MUC1受容体のMGFR部分が、まず酵素修飾を受けた後、受容体を二量体化又は多量体化するリガンドに認識されるという機構と合致する。
【0072】
発明者らは、MUC1受容体のリガンドを確認しようとした他者による過去の試みは該受容体の自己凝集性によって妨害されたと推測した。そこで、受容体のMGFR部分だけを溶解産物及び上清からリガンドを釣り上げるための餌として用いた。表1のHis−PSMGFR配列を該ペプチドのヒスチジンタグを介してNTA−ニッケルビーズ上に固定し、次にこのビーズを、MUC1を過剰発現しているがん細胞系を含む様々な種類の細胞の溶解産物及び上清とインキュベートした。PMSFのような酵素阻害薬を一部の溶解産物及び上清に加えて、修飾されたペプチドに結合する代替リガンドの問題を回避した。細胞上清とPSMGFR提示ビーズとのインキュベーション後、該ビーズを洗浄し、過剰のイミダゾールを加えてペプチド−リガンド複合体をNTA−ニッケルビーズから溶離した。プローブペプチドから捕捉したリガンド(溶出液)を、標準のSDS−PAGE法を用いて分離した。ゲルからタンパク質バンドを切り取り、標的リガンドを特定するために分析した。これらの研究にはペプチドマイクロシークエンシングとタンデム質量分析を含む標準のタンパク質分析法を用いた。ビーズによるリガンドフィッシング法、MALDI質量分析法などを含む他の方法を用いてMUC1リガンドを特定することもできる。
【0073】
従って、本発明の別の側面は、MUC1細胞表面受容体のMGFR部分に結合する、HTB−133、CRL−1504及びCRL−1500からなる群から選ばれる細胞系の溶解産物に由来するリガンドを特定することに関する。図9及び10参照。ある態様では、該リガンドは、転移阻害因子NM23、14−3−3、カテプシンD、アネキシン、βリポトロピン(β−LPH)、βメラノトロピン又はβ−MSH由来の配列を含みうる。他の態様では、MGFR部分に結合する生体分子はプロオピオメラノコルチン(POMC)の切断産物であり得る。すべての態様において、好適な細胞表面受容体はMUC1である。一態様において、MGFR部分は、PSMGFRペプチド(配列番号7)の配列の一部又はすべてを含む。これらのリガンドは、二量体、四量体、又はこれらのリガンド種の一部もしくはすべてを含有する複合体を含む多量体状態で存在しうる。一側面において、本発明は抗がん剤としての上記種の修飾及び使用に関する。
【0074】
一態様において、リガンドは23kDのタンパク質である。別の態様において、リガンドは約17kDである。好適な態様において、確認されたリガンドは、ゲルの中を移動する見掛け分子量35kDのタンパク質である。この種は、プロテアーゼ阻害薬のPMSFを溶解産物に加えていないときにより一層明らかなので(図10)、このタンパク質は、MUC1受容体を修飾する酵素か又は修飾されていない受容体を認識するリガンドであろう。以下の実施例4bに詳細を記載したような実験を実施し、これらの種の特徴付けを行った。
【0075】
17kD及び23kDの両方のバンド内に含有されるペプチド配列(溶解産物にPMSF添加)は、ヒトのがん転移の促進及び阻害の両方に関与している転移阻害因子NM23として知られるタンパク質に対応した。NM23の役割が腫瘍サプレッサーとなるかプロモーターとなるかはがんの種類に依存する。卵巣、結腸、神経芽細胞の腫瘍では、NM23の過剰発現はより悪性の表現型に関連している(Schneider J,Romero H,Ruiz R,Centeno MM,Rodriguez−Escudero
FJ,“進行及び境界型の卵巣がんにおけるNM23の発現”,Anticancer
Res,1996;16(3A):1197−202)。しかしながら、乳がんの研究によれば、NM23の発現の減少は予後不良と相関している(Mao H,Liu H,Fu X,Fang Z,Abrams J,Worsham MJ,“乳がんの場合のNM23の発現喪失は遠位転移と予後不良を予測する”,Int J Oncol 2001年3月;18(3):587−91)。NM23は、MUC1提示細胞では六量体として存在するので、MUC1受容体をクラスター化した立体配置で保持し、修飾及び活性化リガンドへのMGFRのアクセスを制限する働きをしているのであろう。図9及び10に記載のタンパク質ゲルバンドから特定された、転移阻害因子NM23にも存在する配列を以下の表4に示す。
【0076】
35kDのゲルバンドに関連するペプチド配列(溶解産物にPMSFを添加せず)は、多くのがんに関与するシグナリングタンパク質である14−3−3、及びプロテアーゼであり、腫瘍の進行にも関与するカテプシンDなどを含む、二つ以上のタンパク質種に対応した。14−3−3は二量体として存在し、2個の同一のホスホ−セリンペプチドに同時に結合できる。このタンパク質は細胞内シグナリングに関与していることが示されているが、本発明に特に関係があるのは、14−3−3は、樹状細胞を含むある種の細胞から分泌されることが示されているという点である。受容体のMGFR部分に結合して誘導多量体化を誘導するリガンドは、分泌された因子である傾向がある。このタンパク質はMUC1受容体を二量体化して細胞増殖を引き起こすが、このことは本明細書中に示した機構と合致する。カテプシンDはプロテアーゼであり、MUC1受容体の切断に関与しうる。
【0077】
さらに本発明の別の側面は、MUC1細胞表面受容体のMGFR部分に結合する、HTB−133、CRL−1504及びCRL−1500からなる群から選ばれる細胞系の上清からも誘導される他のリガンドを特定することにも関する。一態様において、確認されたリガンドは、ゲルの中を移動し見掛け分子量55kDで移動するタンパク質である。別の態様において、リガンドは約70kD;80kD;又は100kDである。特別な態様において、細胞上清中に存在するリガンドは、ゲルの中を見掛け分子量13kDで移動する13kDのタンパク質である。図9参照。約13kDの見掛け分子量を有するタンパク質は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけるとスメアバンドとして現れる。これは、該タンパク質がグリコシル化されている、酵素修飾されている、又はそのバンドに2種以上のタンパク質種が含まれていることを示しうる。質量分析及びmaldi質量分析技術を用い、ジェンバンクデータベースのペプチド配列との相同性を組み合わせると、13kDから誘導された二つのフラグメントは高い相同性でβ−リポトロピンに対応したことが確認された(Odell W,Wolfsen A,Bachelot I,及びHirose F,(1979)“がんによるリポトロピンの異所性産生”The American Journal of Medicine 66;631−638ページ)。β−リポトロピンは従来β−MSH(β−メラノトロピン)として知られていた。β−リポトロピン(β−LPH:98個のアミノ酸又は約10kD)及びACTH(aa’130−169)はプロオピオメラノコルチンの切断産物である(出版社Williams &
Wilkins,章の著者:Faye W,Lemke T,Williams D,テキストブック−Principles of Medicinal Chemistry;第4版、1995)(POMC:260個のアミノ酸)。これらのペプチドはグリコ
シル化されているので、見掛けの分子量は実際の分子量からは変化している可能性がある。これらの細胞表面受容体結合リガンドは当業者に公知の技術を用いて精製又は製造できる。ある状況においては、受容体が互いに共有結合し(例えば二つを共有結合的に連結する酵素によって)、外部リガンドがMUC1受容体のMGFR部分に結合及び二量体化せず、細胞増殖を引き起こさないということもあり得る。これが達成されうる一つの方法は、酵素が糖基のような実体を二つの受容体に付けることである。
【0078】
自己凝集し、自己凝集することで細胞内のシグナリング配列が増殖を誘導するシグナリングカスケードに加わるのを防止しているMUC1受容体の部分(IBR)は、切断され細胞表面から脱落することがあるので、細胞に残って付いている(MGFR)MUC1のMGFR部分と相互作用する小分子を特定するのは有益であろう。次に、細胞に残って付いているMUC1の部分(MGFR)に結合するこれらの小分子は、二つの利用法がある。第一に、MUC1受容体の残存している細胞付着部分を遮断するのに使用できる。そうすれば増殖及び転移を誘導する活性化リガンドと相互作用ができなくなる。例えば、MUC1の細胞付着部分に対するリガンドは受容体の誘導多量体化を実行できるので、細胞内でのシグナリングカスケードを起こす。リガンドのMGFR領域への結合を遮断すると、増殖を起こすシグナリングカスケードを阻害できる。第二に、以下でさらに詳細に説明するが、小分子を重合又はデンドリマーに連結すれば、MUC1受容体の細胞に付着したMGFR部分の予防的クラスター化を人工的に引き起こすことができるので、細胞質テールが細胞内シグナリングタンパク質と相互作用するのを防止できる。
【0079】
本発明の発見は、診断及び治療法に重要な意味を持つ。例えば、細胞表面に近いMUC1受容体のフラグメントが自己凝集するという我々の発見は、酵素切断の位置が、受容体のクラスター化、受容体の隣接部分の推定リガンドへのアクセシビリティ、ひいてはがんに関連していることを示している。この酵素の活性を調節する薬剤は有力な抗がん剤となり得る。さらに、MUC1を異常発現しているがんの早期診断テストは、体液中に循環している自己凝集するMUC1の部分(IBR)の検出に基づくことができる。MUC1のこの部分は、PSIBR(配列は表1に示す)の一部又はすべてを含む。自己凝集する部分(IBR−PSIBR配列の一部又はすべて)が放出された後、細胞表面に残って付いているMUC1の部分(PSMGFR配列の一部又はすべて)に結合する薬剤は有力な抗がん剤となりうる。さらに、IBR放出後の残存部分への天然リガンドの結合を遮断する薬剤も抗がん剤として有用であり得る。受容体のMGFR部分、すなわちPSMGFR内に含有されるアミノ酸の一部又はすべてを含む配列を標的とする薬物候補は、モノマーとして、MUC1のMGFR部分と細胞外薬剤又は生体分子との相互作用の遮断に、又はポリマー、デンドリマーなどとして、外部生体分子との相互作用の遮断及びMGFRの人工的クラスター化に使用することができる。MGFRの人工的クラスター化に使用できる別の代替薬は、MGFR又はPSMGFRに対して作製されたIgM抗体である。この人工的に誘導されたクラスター化は、細胞質テールをクラスター化させた状態に保って細胞内シグナリング因子との相互作用を防止するのに役割を果たしうるので、それによって予防的クラスター化が実行される。
【0080】
本発明の一側面は、MUC1を異常発現している腫瘍細胞の増殖を妨害する治療薬を確認する、新規薬物スクリーニングアッセイに関する。この薬物スクリーニングは、本明細書中に開示されているがんの新規分子標的を利用する。本発明の別の側面は、該薬物スクリーニングによって確認された治療薬に関する。本発明のさらに別の側面は、発明者らが解明した機構に基づくMUC1+がんの診断法に関する。
【0081】
本発明の一態様は、MGFRとそのリガンド間の相互作用を妨害し、従ってがんの治療薬として使用できる薬剤を迅速に特定できる薬物スクリーニングアッセイに関する(詳細については実施例5a及び図12参照)。MUC1受容体のMGFR部分に結合する活性
化リガンドは受容体の誘導多量体化をもたらすことができるという事実を基にして、我々は、この相互作用を阻害する、又はリガンド結合に必要とされるMGFR部分を修飾する酵素を阻害する、そして従って増殖シグナルを阻害する化合物を渡航邸する便利な薬物スクリーニングアッセイを構築することができる。本発明の一つのアッセイでは、MGFR配列の多く又はすべてを含む合成ペプチドを金コロイドのようなナノ粒子に連結する。金コロイドは、分散した均一な溶液中では溶液がピンクに見えるが、コロイドが接近を余儀なくされたときは溶液はブルーに変わるという固有の光学特性を有している。コロイド付着ペプチドを二量体化させるリガンドを含有している細胞溶解産物又は上清を加えると、コロイドは凝集して溶液はブルーに変わる。このリガンド−受容体相互作用を妨害する薬物候補は、溶液をピンクのままにしておくので容易に識別される。
【0082】
前述のように、受容体のMGFR部分に結合して誘導多量体化を引き起こすリガンドは、酵素修飾された形態の受容体を認識するようである。従って、前述の薬物スクリーニングアッセイは、a)MUC1受容体のMGFR部分の酵素修飾を阻害する;b)MGFR領域に結合し、それとMGFR部分の活性化リガンドとの相互作用を遮断する;又はc)成長因子のような活性化リガンドに結合し、それとMGFR部分との相互作用を遮断する化合物を特定できる。(a)又は(b)に従って作用する薬物は、MUC1依存性細胞増殖を選択的に阻害すると予測されるが、(c)に従って成長因子のような因子に作用する薬物は、様々な細胞種の増殖を阻害すると期待される。実施例5a−d参照。
【0083】
上記プロトコルによってMUC1受容体のMGFR部分とそのリガンドとの間の相互作用を分断することがわかった薬物について、以下により詳細に説明し、そして例えば、カルシマイシン、フザリン酸、L−α−メチル−ドパ、ブチルインダゾン、NS1619又はエトモキシルを含む。追加の薬物は、出願人の係属中の米国仮出願第60/317,302号及び第60/317,314号(いずれも2001年9月5日出願)、発明の名称「がん治療の組成物及び方法」に詳細に記載されている。
【0084】
このようにして確認された薬剤は、モノマーの形態で、又はポリマーもしくはデンドリマーとして有力な抗がん剤となりうる。リガンドとその標的の結合を阻害する分子を求めて、薬物ライブラリーとペプチドライブラリーをスクリーニングすればよい。
【0085】
あるいは、標準法を用いてMGFRとそのリガンド間の相互作用を妨害する薬剤を特定することもできる。これらの方法は、(1)MUC1受容体のMGFR部分に結合する、又は(2)一つ以上のそのリガンドに結合する薬剤を特定するのに使用できる。これらの方法は、ファージディスプレイ法、イーストツーハイブリッドシステム、サンドイッチアッセイ、表面プラズモン共鳴利用アッセイ、抗体利用アッセイ、薬物ライブラリーを試験するためのペプチドビーズアッセイ、ビーズアッセイ、GFP−レポーターアッセイなどであるが、これらに限定されない。MUC1受容体のMGFR部分に対するリガンドは、その配列がMGFRの一部又はすべてに対応するペプチド、すなわちPSMGFRペプチド(配列番号7)をリガンドを釣り上げるための餌として用いることを含む多くの方法によって確認できる。これを行う別の方法は、GFP(グリーン蛍光タンパク質)のようなシグナリング実体をリガンドに直接又は間接的に連結して、受容体から誘導されたペプチドを固体支持体に連結することである。相互作用を妨害する化合物はシグナルの喪失をもたらすであろう。
【0086】
前述の天然リガンド競合アッセイに代わるものとして、直接結合アッセイを用いてMGFRと相互作用できる薬剤を確認することができる。切断されたMUC1の残存細胞外部分(MGFR領域:PSMGFRペプチド配列のほとんど又はすべてによって例示される)に結合する小分子は、標準法(MALDI、ウェスタンブロット法、ゲル電気泳動、ELISAなど)を用いて、又はコロイド−コロイドもしくはコロイド−ビーズ結合アッセ
イを用いて特定できる。例えば、一態様において、小分子を、ビーズ上に合成するか、又は、チオールに連結させてコロイド上のSAMへの直接組込み、もしくは第一級アミンを含有する分子のEDC/NHSカップリングのいずれかによってコロイドに連結させることができる。所望のMUC1を含むヒスチジンタグ標識ペプチド(例えばHis−PSMGFR)配列をコロイドに結合させ、候補薬を提示する第二の組のコロイドとの相互作用について検定することができる。ピンクからブルーへの色変化はMUC1ペプチドと小分子間の相互作用を示すことになる。あるいは、MUC1を担持するコロイドを、ビーズに付着させた小分子との相互作用について検定することもできる。ビーズ表面の赤い着色は、MUC1ペプチドがビーズに固定された小分子に結合したことの現れである。
【0087】
MUC1配列への結合が確認された任意の薬物又は小分子は、切断されたMUC1の残存細胞外部分のその天然リガンドへの結合を遮断するのに使用できる可能性を有しているので、がんの成長を阻害できる可能性がある。
【0088】
別の態様では、前述の競合アッセイを用いて“第二世代”の薬物候補を特定することができる。すなわち、そのような候補薬について、MUC1受容体のMGFR部分と前述の発明の方法によってMGFRに結合することがわかった合成リガンド、例えば、カルシマイシン、フザリン酸、L−α−メチル−ドパ、ブチルインダゾン、NS1619又はエトモキシル間の相互作用を分断する能力を検定するのである。このようにして“第一世代”の薬物よりも高い親和性でMGFRに結合する薬物を確認することができる。例えば、薬物スクリーニングの実施に際し、カルシマイシン、フザリン酸、L−α−メチル−ドパ、ブチルインダゾン、NS1619又はエトモキシルのような合成リガンドを、コロイドのような表面への連結を容易にするために修飾する。MUC1受容体のMGFR領域から誘導されたペプチド、例えばHis−PSMGFRを第二の組のコロイドに連結させる。合成リガンドとMGFRペプチド間の直接結合が確認されたら、次に薬物候補のライブラリーを、それらの該相互作用分断能について検定する。本発明のこの側面を、本明細書中に明示されている競合技術又はアッセイに限定するつもりはない。標準法を含むいくつかの技術が、MGFRと合成リガンド又は薬物との間の結合、次に薬物候補による結合の競合的阻害を検出するのに使用できる可能性がある。
【0089】
本発明の別の側面は、細胞上のMUC1受容体の切断状態を変化させることによるがんの予防及び/又は治療に有用でありうる薬物を確認するための薬物スクリーニングアッセイである。そのようなアッセイでは、以下により詳細に説明するが、培養細胞を候補薬に曝露する。細胞中のMUC1の切断状態は、必要に応じて、時間及び/又は用量、又は薬物への曝露に関する他の条件の関数として測定される。これらの細胞は、特別の患者から抽出できるか、又は腫瘍関連もしくは非腫瘍関連細胞系であり得る。こうすれば特定の患者のための特別仕様の治療プロトコルが決定できる。本発明は、一側面において、以下にさらに詳細に説明するように、がんを予防、阻害、又は後進するような様式で患者の細胞のMUC1の切断状態に影響を及ぼすことが示された薬物で、患者を治療することにも関する。
【0090】
細胞表面上のMUC1の誤った切断が増殖及び腫瘍形成をもたらすカスケードを引き起こすと推測されるので、酵素切断又はMUC1の酵素切断位置に影響を及ぼす候補薬の能力は全細胞アッセイで試験するのが好都合であろう。薬物は、MUC1の切断に直接的又は間接的に変化をもたらすそれらの能力についてスクリーニングできる。これにより、MUC1切断の上流エフェクタの特定が可能になる。細胞又は組織試料はいくつかの方法でMUC1切断可能性について検定できる。例えば、細胞又は組織試料を薬物候補で処理し、しばらくの期間成長させればよい。MUC1の切断部分又は残存している細胞外部分のいずれかに結合する抗体、天然リガンド、又は小分子(シグナリング部分がある、またはない)を担持しているコロイドを加え、細胞又は組織試料に結合させればよい。候補薬で
処理していない対照試料と比較した、細胞表面上の切断MUC1又は非切断MUC1の発現は、薬物候補がMUC1の発現又は切断に変化をもたらしたかどうかを示すことになろう。
【0091】
あるいは、MUC1発現細胞を、薬物候補の存在下でMUC1の切断について検定することもできる。それには、周囲の細胞成長培地を、切断されたMUC1の存在の有無、又は切断部分の自己凝集可能性について試験すればよい。例えば、MUC1を発現している細胞を、酵素切断を妨害することが推測される薬物候補で処理する。しばらくのインキュベーション期間の後、細胞培地を取り出して、その凝集可能性を試験する、すなわちMUC1の自己凝集部分が脱落したフラグメント内に含有されているかどうかを測定する。細胞培地に放出されたペプチドの凝集可能性は、自己凝集部分から遠位の配列(ただし反復配列ではない)に対する抗体を担持しているコロイドを加えることによって試験する。こうすれば、抗体提示コロイドはMUC1の上流領域に結合するであろう。自己凝集領域も放出フラグメントに付着している場合、付着コロイドの凝集が生じ、溶液のピンクからブルーへの変化がもたらされるであろう。従って、本発明の一側面は、前述のような切断又は修飾されたMUC1受容体の誘導多量体化を防止するのとは反対に、その代わり疾患関連のMUC1の切断又は修飾自体を防止する組成物(薬物又は因子)を提供する。MUC1の切断は酵素的プロセスである。発明者らが関与して明確にされた機構によって、疾患関連の切断を阻害する薬物の確認が可能となる。
【0092】
前述のように、本発明の別の側面は、疾患関連の切断後MUC1のMGFR部分を一緒にして結合し、受容体の予防的クラスター化を実行する薬剤を提供することである。該薬剤は、それぞれMGFR部分に結合可能な複数の部位を含み、互いに対して固定されている任意の種であり得る。例えば、ポリマー又はデンドリマー又は他の連続実体は、それぞれMGFR部分に結合できる複数の部位を含み、これらの部分のクラスター化又は細胞増殖を促進する因子と該部分との会合を阻害する他の構造的拘束を起こすことができる。あるいは、MGFR又はPSMGFRに対して作製されたIgM型モノクロナール又はポリクロナール抗体を利用してもよい。各抗MGFR IgM抗体は細胞表面上の10個のMGFRを凝集して予防的クラスターを形成することができる。
【0093】
さらに、上記の特定済みの、MGFRに結合するリガンド種の一部又はすべてを改変(修飾)して、リガンドを標的送達薬剤として働くようにすることもできる。つまり、リガンドが固定される細胞を選択的に殺すことができる細胞毒性の薬物又は他の薬剤(例えば放射性物質)をリガンドに連結するのである。さらに、MUC1受容体のMGFR部分に結合することがわかっているカルシマイシン、フザリン酸、L−α−メチル−ドパ、ブチルインダゾン、NS1619又はエトモキシルのような合成リガンドも、以下により詳細に説明するが、同様に他の治療薬で修飾することができる。このようにして、そうした治療薬を腫瘍細胞に導くことができる。例えば、MUC1受容体のMGFR部分に結合する薬剤を放射性物質で修飾すれば、MUC1受容体を異常発現している腫瘍細胞を破壊することができる。リシンのような他の毒性物質、並びに他の治療薬もMGFRに結合する薬剤に連結させることができる。あるいは、MGFRに結合する特定されたリガンド種を、MUC1+腫瘍及び転移の診断的画像化に使用するために画像化剤を提示するように改変
することもできる。あるいは、そのようなリガンドは、がんの予防及び/又は治療に有用であり得る薬物として働くように改変することもできる。一態様では、非改変形態では複数のMGFRに結合して誘導多量体化を引き起こすリガンドを、そのMGFRに対する活性結合部位の一つを除いてすべて除去又は失活するように改変し、各改変リガンドが単一の受容体だけに結合できるようにする。別の態様では、個々のリガンド分子/ペプチドを、追加のリガンド分子/ペプチド(これも、例えば、共有結合、非共有結合、基質に対する共固定などを通じてMGFRに結合できる)に対して固定されるように改変し、そのような改変されたマルチユニットのリガンドが、それが結合する受容体の予防的クラスター
化を成し遂げられる。
【0094】
切断後細胞に残って結合しているMUC1の部分に対するリガンドの特定は、以下でさらに説明するが、この相互作用を分断する薬物をスクリーニングするための強力なアッセイの開発を可能にする。可能性ある結合パートナーと、切断後残存しているMUC1の細胞外部分との相互作用は、従来の技術(ウェスタンブロット法、ELISA、MALDIなど)でも、我々のコロイド−コロイド色変化アッセイ又はコロイド−ビーズ着色アッセイを用いても研究することができる。残存しているMUC1の細胞外部分のペプチド配列は、ヒスチジンタグを介してビーズ又はコロイドに連結ことができる。可能性ある結合パートナーにヒスチジンタグを付け、それを第二の組のコロイド(又はビーズ)に連結し、コロイドに固定されたMUC1部分に対する結合について検定できる。あるいは、可能性ある結合パートナーをEDC/NHSカップリングによってビーズ又はコロイドに付着させるか、又はビーズに非特異的に吸着させてアッセイにかけることもできる。MUC1ペプチドと可能性ある結合パートナー間の相互作用は、溶液の色変化(コロイド−コロイドアッセイの場合)又はビーズが赤くなるビーズ上でのコロイド凝集(コロイド−ビーズアッセイの場合)のいずれかによって検出することができる。この技術を用いれば短時間で全cDNAライブラリーをスクリーニングでき、残存細胞外MUC1の天然リガンドを特定することができる(上記で援用したPCT/US00/01997、WO00/34783、09/631,818、及び“コロイド及び非コロイド構造を用いた結合種の検出”2000年11月15日出願参照)。
【0095】
本明細書中に提供されている、(1)MUC1のIBRは自己凝集する;(2)隣接するMUC1受容体のMGFR部分を二量体化する抗体は、MUC1提示腫瘍細胞の増殖をもたらす;及び(3)MUC1提示腫瘍細胞の増殖は、MGFRを標的としてMGFRをリガンドとの相互作用に対して遮断する薬剤での治療によって抑制できる、という発見は、健常細胞におけるMUC1の切断は、MUC1をクラスター化させておくのに十分なIBRが細胞上に残ってMGFRが成長因子のようなリガンドにアクセスできないように生じ、および腫瘍細胞におけるMUC1の切断は、MUC1をクラスター化しておけないほどIBRが細胞から切断されてMGFRがリガンドの相互作用にアクセス可能になるように生じる、という機構と合致する。このことは、MUC1の脱落した部分を分析してIBRの存在度を測定するという、本発明によって提供される診断につながる。
【0096】
上述の機構モデルによれば、MUC1依存性腫瘍を有する又はそのような腫瘍を発症傾向にある患者においては、脱落したMUC1の部分に受容体のIBR領域が含有され、受容体のMGFR部分をリガンド及び成長因子との相互作用にアクセス可能にしている、ということが予測される。早期診断は、切断されたMUC1受容体の部分の中にIBR領域を検出することからなるであろう。
【0097】
一態様において、MUC1受容体の凝集喪失は、MUC1の“切断状態”の結果でありうる。“切断状態”はMUC1の切断の結果を定義する。切断状態は健常細胞と腫瘍可能性のある細胞間では異なるだろう。切断状態の測定は、切断が、隣接する受容体のIBR間の正常の相互作用が分断されて(これらの領域はもはや細胞で互いに結合された状態でない)MUC1が細胞表面全体に自由に広がるような様式で発生したかどうかを確認することを含みうる。更に詳しくは、切断状態の測定は、MUC1の切断部位の決定、切断後細胞に残っているMUC1の部分のアイデンティティの決定、切断後細胞から分離されたMUC1の部分(“切断又は脱落部分”)のアイデンティティの決定、MGFRのアクセシビリティの測定、又は組合せを含むことができる。
【0098】
一態様において、MUC1のIBRが切断時に細胞に固定されたままであるか、又は細胞から分離されたかどうかを決定できるアッセイを提供する。細胞からのMUC1切断産
物を、IBRを結合するように適応された少なくとも一つの表面、及び別の表面及び/又はシグナリング実体に曝露する。一般的に、WO00/43791又はWO00/34783に記載のアッセイが使用できる。特定の実施例では、IBRが細胞から切断された場合にIBRに固定されて残っているMUC1の部分に対する抗体、例えば反復ドメインに対する抗体をコロイドに固定する。これらのコロイドをMUC1切断産物に曝露すると、IBR部分が細胞から分離されている場合には、IBR領域を自己凝集させ、これがコロイド/コロイド凝集を引き起こす(ブルーへの色変化)。この理由は、各コロイドがMUC1の領域に固定され、そのMUC1の領域がIBRに接続され、そのIBRが別のIBRに固定され、その別のIBRが別のコロイドに固定されているためである。
【0099】
腫瘍細胞が、MUC1のMGFRに結合する薬剤又はMGFRのリガンドによって、細胞増殖を阻害する形で治療できるという発見から、以下の結論に到達する。すなわち、疾患細胞(がん細胞又はがんになる可能性を有する細胞)では、MUC1の切断は、腫瘍形成又はがんを促進する様式で、MGFRに少なくとも一つのリガンドと相互作用をさせる形で発生する。リガンドとの相互作用は、細胞表面における異なるMUC1分子間の結合を分断する切断(切断時に細胞からのIBRの分離、又はMUC1分子を互いに自由にする位置でのIBR内の切断、のいずれかを介する)の結果であろう。
【0100】
本発明の一側面において、細胞表面受容体のIBRの細胞表面からの切断量を測定する診断法が提供される。これは、切断時に細胞表面から分離される細胞表面受容体のIBRの量を測定することを含む。この測定は、過去の試料中で測定された量や対照試料中の量と比較しても、試料中の受容体の定常領域の量に対するIBRの量の比として測定されてもよい。該定常領域は、PSIBRの境界に対してN末端である任意の非反復配列である。すなわち、この定常領域は切断前はPSIBRと1:1の比で存在するので、切断後の定常領域に対するIBRの比を測定すれば、IBRが切断され細胞から分離した程度が示される。様々な受容体領域の量は、例えば抗体結合アッセイのような任意の種類の結合アッセイを用いて測定できる。例えば、定常領域又は反復領域に特異的に結合する抗体を表面(例えば磁気ビーズ)に連結して、脱落したMUC1受容体をプレ濃縮してから存在するIBRの量を測定することができる。次に、例えば循環MUC1受容体のプレ濃縮後、IBRに対する抗体及び定常領域に対する抗体を、切断された受容体に結合させ、これらの抗体の結合比を測定すれば、切断された受容体中に存在する定常領域に対して存在するIBRの比が明らかになる。すると、細胞からのIBRの分離を起こすような形で発生した切断量が明らかになる。細胞表面におけるIBRの検出に関して1未満への傾向(存在する定常部に対するIBRの比が1:1未満)を示す比は、腫瘍の存在又は腫瘍を発症する可能性の指標である。脱落した受容体中のこれらの領域を検出する場合、1:1に近づく比は同様にがんの可能性の指標である。この測定は、腫瘍形成、腫瘍の存在、腫瘍の進行などの可能性を示すことができるので、それによって腫瘍の診断及び/又は治療の評価ツールとしての役割を果たせる。
【0101】
本発明の別の診断的側面は、患者から採取した試料中における脱落したIBRの量を測定することを含む。そのような測定法は、循環している脱落した受容体の凝集可能性を、例えばコロイド−コロイドアッセイ又はコロイド−ビーズアッセイのようなコロイド結合アッセイによって測定することを含みうる(上述の説明及び以下の実施例参照)。代替技術は、抗体プロービングアッセイ、ハイブリダイゼーション、PCR逆転写酵素PCR(rtPCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、サイクリングプローブ技術などを用いるIBRの存在の測定を含む。本発明の好適な態様において、細胞表面受容体はMUC1である。
【0102】
抗体結合比、コロイド結合アッセイなどのいずれかを用いて行う、IBRを有する切断受容体の量の血液試料中の測定は、血液試料のような体液試料に対して実施でき、場合に
より他の試料(例えば、患者の腫瘍の進行又はその治療の進行をモニターするために)及び/又は対照と比較する。
【0103】
あるいは、生検標本を試験することも、又は組織を術中に試験することもできる(例えば手術部位の組織を、患者から取り出さずに試験する)。これらの試験のいずれの場合も、腫瘍形成又は腫瘍形成の可能性の主要な指標は、成長因子などのような外部因子との相互作用にアクセス可能な細胞表面におけるMGFRの量である。この測定は、例えば、試料に結合するMGFR領域に対する抗体の量を測定することによって実施できる。測定法は、標準の抗体結合試験技術を用いるか、又はMGFR領域に対して特異的な抗体が固定されているコロイドに試料を曝露し、上で引用した国際特許公開番号WO00/34783及びWO00/43791に記載の技術を用いてコロイドの試料への結合を測定することによる。別の技術においては(おそらく切除試料にはより適している)、MGFR領域に対する抗体及びIBRに対する抗体を試料に曝露し、試料へのそれぞれの結合比を測定してもよい。健常試料はMGFR領域への抗体結合を殆どないし全く示さないだろう。腫瘍形成又は腫瘍形成の可能性を示す試料は、IBR抗体結合に対するMGFR抗体結合がゼロ以外の比を示すだろう。
【0104】
脱落したMUC1がIBRを含有するかどうかは、ELISA及び国際特許出願番号PCT/US00/01997、出願日2000年1月25日、発明の名称“神経変性疾患における異常タンパク質凝集の迅速且つ高感度の検出”、公開番号WO00/43791として公開、及びBamdadらによる米国特許出願番号09/631,818、出願日2000年8月3日、発明の名称“タンパク質凝集の迅速且つ高感度の検出”に記載のコロイドアッセイを含む当業者に公知の方法によって確認できる。本発明の好適な態様において細胞表面受容体はMUC1である。
【0105】
本発明の別の側面は、患者から採取した試料で細胞表面からのMUC1受容体の切断部位を決定し(切断部分に含まれるIBRの量ではなく)、患者におけるがん又はがんを発症する可能性を評価することに関する。切断部位の決定はIBRが細胞表面に残っているか又は細胞表面から脱落したかに関する情報が得られるので、前述のようにがん又は腫瘍形成の徴候又はそれらの可能性がわかる。切断部位の決定は、PCRのような酵素増幅法を用いることによって達成できる。具体的には、患者試料の脱落MUC1のPCR増幅で選択的プライマー部位を用いると、どこで切断が発生したかが示されるだろう。
【0106】
本発明の一側面において、がん細胞又は組織中の切断された細胞表面受容体のIBR、又は細胞表面にある細胞表面受容体のIBRの治療前と治療後の量の差は、患者におけるがんの診断又はがん患者における治療効果の評価に使用できる。好適な態様において、細胞表面受容体はMUC1である。
【0107】
前述の領域の量を、がんでないことがわかっている被験者の量と比較すると、患者におけるがんの存在の測定が可能となる。一つの例は、これに制限するつもりはないが、被験者の試料中の切断された細胞表面IBRの量が対照被験者の試料で測定された量と比較して増加していることが確認されると、量の増加がみられた被験者にがんが存在することが示唆されうる。診断を目的として患者試料と対照試料間のがん関連のマーカーの量を比較するこのような方法は、医学分野の専門家には理解されるであろう。そのような方法の例は、ウェスタンブロット法、ELISA、抗体沈殿法、PCR、LCR、rtPCR、サイクリングプローブ技術、及び国際特許出願番号PCT/US00/01997、出願日2000年1月25日、発明の名称“神経変性疾患における異常タンパク質凝集の迅速且つ高感度の検出”、公開番号WO00/43791として公開、及びBamdadらによる米国特許出願番号09/631,818、出願日2000年8月3日、発明の名称“タンパク質凝集の迅速且つ高感度の検出”に記載のコロイドアッセイなどである。好適な態
様において細胞表面受容体はMUC1である。
【0108】
本発明の別の側面において、MUC1の切断状態は、長期にわたる患者のがんの進行又は退行を確認するのに使用できる。切断状態は、用量、投与法、投与のタイミング、及び本明細書中に記載の他の治療との組合せなど(これらに限定されない)の治療パラメータの評価にも使用できる。
【0109】
本発明の別の側面は、非常に早期のがんの診断に関する。本側面は、MUC1の異常切断を伴う腫瘍又はがんを発症するリスクがあるかもしれない患者の特定に関する。これらの患者は腫瘍を発症していないかもしれないが、がんにつながりかねない状態を示す切断状態を示しうる。ある場合には、患者はすぐにがんの治療を受けることになるが、他の場合には、患者は当座のがん治療は受けないことになろう。本発明のMUC1の異常発現を特徴とするがんに対する遺伝的素質の検査は、MUC1切断酵素の遺伝的変化、MUC1活性化酵素の過剰発現、及び/又は受容体のMGFR部分を修飾する酵素の過剰発現の検出に基づいている。
【0110】
がん患者の血液中に切断されたMUC1の量の増加がみられるという事実は、本明細書中には記載しないが、乳がんの血液検査の基礎となる。MUC1は少なくとも一つの酵素で切断され、血流中に放出される前に2カ所以上の部位で切断されるようである。MUC1配列内にいくつかのプロテアーゼ切断部位が予測されている。予測されている酵素切断部位は、アミノ酸540、528、530、542、及び550の位置又はその付近である(番号はAndrew SpicerらのJ.Biol.Chem Vol 266 No.23,1991,ページ15099−15109にリストされた通り;これらのアミノ酸番号はGenbankアクセッション番号P15941;PID G547937の番号1100、1088、1090、1102、1110に対応する;Boshel M.ら,BBRC vol.185、ページ1−8;Hilkens J.ら,Journal of Biological Chemistry vol 267 ページ6171−6177)。正確な切断部位は細胞種又は疾患への応答によって異なりうる。MUC1受容体のクラスター化したIBRが切断部位へのアクセスを制限していることからすると、MUC1を切断する酵素は膜関連酵素であろう。
【0111】
本発明の一側面は、受容体のPSMGFR部分に直接結合する化合物の確認である。従って、早期腫瘍の高感度の診断法は、患者に、PSMGFR領域に結合し、造影剤又は画像化剤で誘導体化されてもいる化合物を投与することである。これらの化合物は、MUC1受容体のこの部分がアクセス可能な場合、腫瘍上で凝集する。本明細書中に記載のPSMGFR領域に結合する化合物、並びに本発明の方法を用いて確認できる他の化合物は、画像化剤を担持するよう容易に修飾できる。そのような画像化剤は、テクネチウム、レニウム、123I、及び画像化技術で通常使用されている他の造影剤又は放射性物質であるが
、これらに限定されない。画像化技術は、単一光子コンピュータ断層撮影(SPECT)、MRI、顕微鏡検査などであるが、これらに限定されない。用途によっては、連結コロイドが画像化剤として機能しうる。画像化剤の担体も治療薬であり得るので、この技術は早期診断と指向性治療薬を組み合わせたものと言える。
【0112】
前述のように、本発明の一側面は、MUC1の異常発現を特徴とするがん又は腫瘍と診断された、又はその発症のリスクがある患者の治療法に向けられる。本発明の治療法は、本明細書中に記載の薬物又は“薬剤”の使用を含む。すなわち、一側面は、MUC1の異常発現を特徴とするがん又は腫瘍の治療に有用な一連の組成物を含む。これには、キットに包装されたこれらの組成物とそのような状態の治療のための該組成物の使用説明書も含まれる。すなわち、該キットには、本明細書中に開示した、がん又は腫瘍に関連する何らかの生物的又は化学的機構に関わる該組成物の使用説明書が含まれうる。該キットには、
本発明のいくつかの態様の2種類以上の組成物の組合せ使用に関する説明書も含まれうる。説明書には、該薬物の経口、静脈内、又は別の公知の薬物送達経路による投与に関する内容も提供されうる。本発明のこれら及び他の態様も、本明細書中に記載のいずれかの技術及び組成物及び組成物の組合せに従って、がん又は腫瘍の治療の促進に関与できる。
【0113】
一組の態様において、たとえ患者が、細胞増殖、又は細胞増殖、がん、もしくは腫瘍を伴いうる状態とは無関係かもしれない状態を含む、がん又は腫瘍とは異なる状態のために本発明の組成物の一つを治療に適応することが示されているとしても、本発明の組成物で患者を治療することができる。すなわち、本発明の組成物が異なる状態の治療用として知られている場合でも、本発明の一部の態様は、必要であれば、その組成物を細胞増殖、がん、又は腫瘍の疾患を伴う治療にも使用する。本発明のこれら及び他の態様は、用量、送達技術又はビヒクル、他の医薬組成物との組合せ有り又は組合せ無し、投与速度、投与のタイミング、又は他の因子が、細胞増殖、がん、又は腫瘍とは異なる状態の治療のための組成物の使用とは異なる治療も含みうる。別の組の態様においては、本発明の組成物による細胞増殖、がん、又は腫瘍の治療が、異なる状態の治療のための本発明の組成物の使用法と類似又は重なる条件下で発生することもある。しかし、本発明の組成物は、細胞増殖、がん、又は腫瘍を伴う治療用として販促され、又は前述のように細胞増殖、がん、又は腫瘍を伴う治療用の指示書を含む。本明細書中で使用している“販促”とは、細胞増殖、がん、又は腫瘍を伴う治療に関して本発明の組成物を使用することに関連する教育、病院及び他のクリニックでの説明、医薬品販売を含む製薬業界活動、並びに書面、口頭、及び任意の形態の電子コミュニケーションを含む宣伝又は他のプロモーション活動を含むすべての営業法を含む。“説明(書)”は、プロモーションの内容を規定でき、及びしばしば規定し、典型的には本発明の組成物のパッケージ上又はパッケージに含まれる書面による説明を含む。説明は、任意の形式で提供される任意の口頭又は電子説明も含みうる。“キット”は、典型的には、そして好ましくは、本発明の組成物のいずれか一つ又は組合せと説明書を含むパッケージを規定するが、本発明の組成物と任意の形態の説明書、すなわち専門医が明らかに該説明書は特定の組成物に関するものだと認識できるような形で組成物と組み合わせて提供される説明書を含むこともできる。
【0114】
本発明のある治療法(細胞増殖、がん、又は腫瘍のための特定の組成物を用いた治療)の対象からはずれる患者は、該特定の組成物による治療が既に必要とされうる状態と診断されている患者である。従って、本発明の一側面は、その目的のために本明細書中に開示された特定の組成物による細胞増殖、がん、又は腫瘍の治療を含み、これまでにそれ自体で細胞増殖、がん、又は腫瘍の治療に使用されると教示されている別の薬剤と組み合わせない。別の態様は、この特定の組成物のみによる、他の任意の活性薬剤と組み合わせない細胞増殖、がん、又は腫瘍の治療に関する。別の態様は、治療における組成物の使用が、細胞増殖、がん、又は腫瘍を治療用するためと特別に指示されている(例えば組成物に添えることができる書面の説明書を通して)ところでの、この特定の組成物による細胞増殖、がん、又は腫瘍の治療に関する。本側面の好適な態様において、本発明は、治療における組成物の使用が、本明細書中に開示されている細胞増殖、がん、又は腫瘍に関連する機構に影響を及ぼすと特別に指示されているところでの、この特定の組成物による細胞増殖、がん、又は腫瘍の治療に関する。
【0115】
さらに別の組の態様において、本発明の薬物及び薬剤は疾患予防の目的のために使用されうる。この文脈において、本発明は、本発明のある方法に従って有用な薬物で以前に治療を受けたことがない患者集団、例えば細胞増殖、がん、又は腫瘍を患っていない患者、及び細胞増殖、がん、又は腫瘍に対する感受性(かかりやすさ)が現在示されている又は示されていない患者に対して特に向けられる。言い換えれば、予防的治療は、好ましくは、それ以外に、本明細書中に本発明に従って有用と記載されている何らかの薬物で積極的治療を必要とする疾患症状がない患者集団に向けられる。
【0116】
一側面において、本発明は、カルシマイシン、フザリン酸、L−α−メチル−ドパ、ブチルインダゾン、NS1619及びエトモキシルが、MGFRとそのリガンドとの相互作用を妨害するという発見を含む。MGFRのリガンドは、そうでなければMGFRに結合して腫瘍形成を促進する。この側面において、本発明は、MUC1の異常発現を伴う腫瘍又はがんに関係する患者の、これらの薬剤又はその組合せによる治療に関する。これらの化合物は、実施例5aに記載のインビトロの色変化コロイド凝集アッセイを用いて薬物ライブラリーをスクリーニングしているときに特定された。次に、これらの化合物を全細胞アッセイで試験し、所望の活性を生じているか、すなわちMGFR−リガンド相互作用を妨害することによって細胞増殖を阻害しているかどうかを判定した。すべての化合物は細胞増殖を阻害したが、ほぼ半数の化合物はMUC1受容体を提示している腫瘍細胞と該受容体を提示していない腫瘍細胞の両方に対して毒性があった。本明細書中に解説の通り、実施例5aに記載の薬物スクリーニングは、(a)成長因子のようなMUC1関連の活性化リガンドに結合する又はそうでなければその活性を遮断することによって;(b)MUC1受容体のMGFR部分に直接結合してその活性化リガンドとの相互作用を遮断することによって;又は(c)MUC1受容体のMGFR部分を修飾する酵素の活性を阻害することによって細胞増殖を阻害する薬物を区別することができない。(a)に記載の作用様式に従って作用する薬物は、MUC1提示細胞に対して選択的でなく、必須成長因子を阻害するためいくらか細胞毒性があるようである。(b)及び(c)に従って作用する薬物は、MUC1提示細胞の増殖を選択的に阻害し、さらにMGFR部分に直接結合するものは毒性を殆どないし全く持たないであろう。フザリン酸、L−α−メチル−ドパ及びエトモキシルは、MUC1を提示している腫瘍細胞の増殖を選択的に阻害する一方で対照細胞には影響を与えないままである、図13参照。
【0117】
一態様において、上記薬剤で治療される患者は、それ以外に、本発明の薬剤が通常処方されるであろう又は以前に処方された徴候、症状又は障害の証拠がない患者であり得る。好ましくは、該患者は、それ以外に、カルシマイシン、フザリン酸、L−α−メチル−ドパ、ブチルインダゾン、NS1619及びエトモキシルの少なくともいずれか一つを単独で、又は互いに組み合わせてもしくは製薬上許容しうる物質と組み合わせて使用することを含む治療を要する症状がない。例えば、カルシマイシン、フザリン酸、L−α−メチル−ドパ、ブチルインダゾン、NS1619及びエトモキシルは、ある種の疾患を有する患者の治療用として示唆されることがあったかもしれない;従って、一態様において、好適な患者は、本発明の薬剤が以前に処方されているような疾患がない患者である。
【0118】
フザリン酸。フザリン酸による治療を使う本発明の方法が意図されない患者は、既にフザリン酸による治療を要する疾患と診断されている患者であるが、フザリン酸による治療の要求が、特に以前に米国特許第6,127,393号に記載された用量または他の特定のプロトコルにおいて、MUC1の異常発現を伴う腫瘍又はがんに対する治療を特に要求していなかった場合は除く。米国特許第6,127,393号にリストアップされた特定の疾患は、皮膚がん、乳がん、前立腺がん、子宮頸がん、結腸がん、肝がん及び肺がんを含む。一態様において、本発明の方法は、図13のグラフに証拠を示す通り、米国特許第6,127,393号に記載の用量より少ない用量のフザリン酸を用いる治療に関する。図13は、細胞成長を阻害するのに必要とされるフザリン酸の量を示した米国特許第6,127,393号の図3A−3Cと類似のグラフである。
【0119】
一態様において、本発明は、「毎日投与」より少ない投与計画が可能な低用量でのフザリン酸治療を提供する。例えば、フザリン酸は1日おき又は週1回の提供でよい。
エトモキシル。エトモキシルによる治療を使う本発明の方法が意図されない患者は、既にエトモキシルによる治療を要する疾患と診断されている患者、特にエトモキシルによる治療を必要とする慢性心不全を伴う疾患を有する患者である。そのような疾患は、不適切
な筋小胞体機能を伴う不全心肥大などである。
【0120】
NS1619。NS1619は、現在ではK(ca)チャンネルアクチベーターとしての生化学的ツールとして知られているが、NS1619による治療を使う本発明の方法が意図されない患者は、K(ca)チャンネル調節が必要なために既にNS1619による治療を要する疾患と診断されている患者である。
【0121】
カルシマイシン。カルシマイシンは、ストレプトマイセス・チャートリュウセンシス(streptomyces chartreusensis)由来のイオノホア性ポリエーテル抗生物質である。カルシ
マイシンは、陽イオンを結合して膜を越えて輸送し、ラットの肝ミトコンドリアのatpアーゼを阻害しながら酸化的リン酸化を解放する。この物質は様々な生物学的系における2価の陽イオンの役割を研究する生化学的ツールとしての使用が大部分である。カルシマイシンによる治療を使う本発明の方法が意図されない患者は、既にこの機能におけるカルシマイシンでの治療を要する疾患と診断されている患者である。
【0122】
ブチルインダゾン。R(+)−ブチルインダゾンはKCl共輸送インヒビターである。ブチルインダゾン、特にR(+)−ブチルインダゾンによる治療を使う本発明の方法が意図されない患者は、KCl共輸送の阻害が必要なために既にブチルインダゾンによる治療を要する疾患と診断されている患者である。
【0123】
方法は、患者に、カルシマイシン、フザリン酸、L−α−メチル−ドパ、ブチルインダゾン、NS1619及びエトモキシルを、医学的に望ましい結果を提供するのに有効な量投与することを含む。一態様において、該方法は、患者にカルシマイシン、フザリン酸、L−α−メチル−ドパ、ブチルインダゾン、NS1619及びエトモキシルのいずれか一つを、MUC1の異常発現を伴う腫瘍又はがんをリスク低下/予防/軽減/阻害するのに有効な量投与することを含む。
【0124】
有効量は、治療される特定の状態、治療される患者の年齢及び身体的状態、状態の重症度、治療期間、併用療法(あれば)の性質、特定の投与経路、及び考えられる他の同様の要因、並びに医師の専門的判断によって異なるであろう。例えば、MUC1の異常発現を伴う腫瘍又はがんに関して、有効な量は、MGFRとそのリガンド(相互作用すれば細胞増殖を促進するであろうリガンド)との相互作用を防止する量である(この機構に従って作用する、カルシマイシン、フザリン酸、L−α−メチル−ドパ、ブチルインダゾン、NS1619及びエトモキシルなどの薬剤の場合)。
【0125】
薬物活性に関する代替の機構に従えば、有効量は、MUC1受容体の自己凝集を維持する量である(この機構に従って作用するポリマー又はデンドリマーのような薬剤の場合)。あるいは、有効量は、切断されたMUC1のIBRの量を削減する、又は切断されたMUC1のIBRの量を低く維持する量である(この機構に従って作用する薬剤の場合)。同様に、治療に有効な量は、切断されたMUC1のIBRの量を全体的に低下又は阻害して(この機構に従って作用する薬剤の場合)、MUC1の異常発現を伴う腫瘍又はがんの発症又は進行を緩徐化する又は停止させるのに足る量であろう。一般的に、最大用量、すなわち安全な医学的判断に従って最大安全量を使用するのが好適である。
【0126】
治療的に使用する場合、本発明の薬剤は治療上有効な量投与される。一般に、治療上有効な量とは、治療される特別の状態の発症の遅延化、進行の阻害、又は全体的な停止に必要な量を意味する。一般的に、治療上の有効量は、患者の年齢、状態、及び性別、並びに患者の疾患の性質及び範囲によって異なるであろうが、いずれも専門家が決定できる。用量は、特に何らかの合併症がある場合、個々の医師又は獣医師によって調整されてよい。治療上有効な量は、典型的には0.01mg/kgから約1000mg/kgの範囲で変
化する。1〜500mg/kgの範囲、そして好ましくは1〜50mg/kgの範囲の用量が適切であろうと考えられる。他の態様では、1μg/kg/日〜10mg/kg/日、更に好ましくは1〜200μg/kg/日、1〜100μg/kg/日、1〜50μg/kg/日又は1〜25μg/kg/日の範囲の用量で薬剤を投与することになろう。他の態様では、用量は、約0.1mg/kgから約200mg/kg、最も好ましくは約0.2mg/kgから約20mg/kgの範囲であり得る。これらの用量は、1日1用量以上の投与で1日以上の日数適用できる。
【0127】
本発明の薬剤は、患者に対して治療的及び予防的利益のいずれか又は両方を提供するに足る期間投与されるべきである。一般的に、薬剤は少なくとも1日投与される。場合によっては、薬剤を患者の余生にわたって投与することもある。薬剤の投与速度は、患者の必要性及び投与様式によって異なるであろう。例えば、場合によっては、患者に薬剤をより高用量でより頻繁に投与するのが必要なこともある。例えば、そのような用法が医学的に望ましい結果を達成する限り、腫瘍又はがんに伴う事象の期間又はその直後などである。他方、医学的に望ましい結果が達成されたら、それを維持するために低用量を投与するのが望ましいこともある。さらに他の態様では、同じ用量の薬剤を治療期間中投与し、それを、本明細書中に記載のように、患者の余生にわたって延長してもよい。投与回数は患者の特徴によって変化してもよい。薬剤は、毎日、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、毎週、10日毎、2週間毎、毎月、又はそれ以上、あるいはその間の任意の時間(そのような時間が本明細書中に明記されているかのように)で投与できる。
【0128】
一態様において、活性化合物の日用量は、1日あたり約0.01ミリグラム/kg〜1日あたり1000ミリグラム/kgであろう。50〜500ミリグラム/kgの経口用量を1日1回又は数回投与すると望ましい結果が得られると期待される。用量は、投与様式によって、局所的又は全身的な所望の薬物濃度を達成するために適当に調整できる。そのような用量で患者の反応が不十分な場合、患者の耐容性が許す限り、さらに高用量(又は異なるさらに局所的な送達経路による効果的な高用量)を使用することもできる。化合物の適当な全身濃度を達成するために1日複数回の投与も考慮される。
【0129】
好ましくは、そのような薬剤は、薬剤の活性に有利な、そして正常の細胞機能に著しい影響(仮にあったとしても)を及ぼさない用量、製剤及び投与計画で使用される。
前述のように、異なる薬物は異なる機構に従って作用する。一つの機構による薬物は、MGFRの腫瘍形成促進リガンドへの結合を、薬剤を投与されていない患者の自然の状態に比べて特別に妨害する。別の機構による薬物は、MUC1の全体的な切断を、薬剤を投与されていない患者の自然の状態に比べて特別に削減する。別の機構による薬物は、MUC1受容体の自己凝集を、薬剤を投与されていない患者の自然の状態に比べて特別に維持する。一態様では、薬物の活性度は少なくとも10%である。他の態様では、薬物の活性度は、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%である。
【0130】
患者に治療の目的で投与する場合、本発明の製剤は、製薬学的に許容しうる量及び製薬学的に許容しうる組成で適用される。そのような医薬組成物は、本発明の薬剤を、当該技術分野で公知の標準の生理的及び/又は製薬学的に許容しうる担体と共に含みうる。該組成物は、滅菌され、患者への投与に適した重量又は体積単位中に治療上有効な量の薬剤を含有していなければならない。本明細書中で使用している“製薬学的に許容しうる担体”という用語は、適合性のある一つ以上の固体又は液体充填剤、希釈剤、又はヒトもしくは他の動物への投与用に適したカプセル化物質を意味する。“担体”という用語は、適用を容易にするために活性成分と組み合わせる、天然又は合成の有機又は無機成分を示す。医薬組成物の成分は、本発明の分子と共に、及び互いに、所望の医薬効果を実質的に障害す
る相互作用がないような形式で混合することも可能である。製薬学的に許容しうるとは、さらに、細胞、細胞培養物、組織、又は生体のような生物学的系と適合性のある非毒性の材料も意味する。担体の特徴は投与経路によって異なる。生理学的及び製薬学的に許容しうる担体は、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤、及び当該技術分野で周知の他の材料などである。
【0131】
そのような製剤は、慣用的に、塩、緩衝剤、保存剤、適合担体、及び場合により他の治療的成分を含有しうる。医薬品に使用する場合、塩は製薬学的に許容しうるものでなければならないが、非製薬学的許容塩を便宜上使用してその製薬学的に許容しうる塩を製造することもあるので、それらも本発明の範囲から除外しない。そのような薬理学的及び製薬学的に許容しうる塩は、以下の酸:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸、及びベンゼンスルホン酸から製造されるものなどであるが、これらに限定されない。また、製薬学的に許容しうる塩は、カルボン酸基のナトリウム、カリウム、又はカルシウム塩のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩として製造することもできる。
【0132】
適切な緩衝剤は、酢酸及び塩(1−2%W/V);クエン酸及び塩(1−3%W/V);ホウ酸及び塩(0.5−2.5%W/V);並びにリン酸及び塩(0.8−2%W/V)を含む。
【0133】
適切な保存剤は、塩化ベンザルコニウム(0.003−0.03%W/V);クロロブタノール(0.3−0.9%W/V);パラベン(0.01−0.25%W/V)及びチメロサール(0.004−0.02%W/V)などである。
【0134】
様々な投与経路が利用できる。選ばれる特定の様式は、当然のことながら、選択される薬物の特定の組合せ、治療されるがんの状態の重症度、患者の状態、及び治療的効果に必要とされる用量によって異なるであろう。一般的に言えば、本発明の方法は、医学的に許容できる任意の投与様式、すなわち臨床的に許容できない有害作用を生じることなく活性化合物の有効濃度をもたらす任意の様式を用いて実施できる。そのような投与様式は、経口、直腸内、局所、鼻腔内、他の粘膜形態、直接注入、経皮、舌下又は他の経路などである。“非経口”経路は、皮下、静脈内、筋肉内、又は注入などである。直接注入は、がんの部位への局所送達に好適であろう。経口投与は、患者並びに投与スケジュールにとって便利なので、例えばがんを発症するリスクのある患者における予防的治療に好適であろう。
【0135】
化学的/物理的ベクターを用いて、本発明の薬剤を標的(例えば細胞)に送達し、それによって取込みを容易にすることもできる。本明細書中で使用している“化学的/物理的ベクター”は、本発明の薬剤を標的(例えば細胞)に送達できる、細菌又はウィルス源から誘導されたもの以外の天然又は合成分子のことである。
【0136】
本発明の好適な化学的/物理的ベクターは、コロイド分散系である。コロイド分散系は、水中油エマルジョン、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む脂質ベースの系などである。本発明の好適なコロイド系はリポソームである。リポソームは、インビボ又はインビトロにおける送達ベクターとして有用な人工膜の容器である。0.2−4.0mu.のサイズ範囲の大きな単膜容器(LUV)は大きな高分子を被包できることが示されている。RNA、DNA、及び無傷のビリオン(ウィルス粒子)は、水性の内部に被包され、生物学的に活性な形態で細胞に送達できる(Fraleyら、Trends Biochem,Sci.,v.6,p.77(1981))。リポソームが効率的な遺伝子伝達ベクターであるためには、以下の一つ以上の特徴がなければならない。すなわち、(1)問
題の遺伝子の、生物学的活性を保持した高効率の被包化;(2)非標的細胞に比べ標的細胞への優先的及び実質的結合;(3)標的細胞の細胞質への小胞の水性内容物の高効率の送達;及び(4)遺伝子情報の正確で効果的な発現、である。
【0137】
リポソームをモノクロナール抗体、糖、糖脂質、又はタンパク質のような特異的リガンドに結合させることによって、リポソームを(例えば血管細胞壁)のような特別の(例えば組織)を標的にすることができる。
【0138】
リポソームは、Gibco BRLから、例えばLIPOFECTIN(商標)及びLIPOFECTACE(商標)として市販されている。これらは、N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)−プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)及びジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)のような陽イオン性脂質で形成されている。リポソームの製造法は、当該技術分野で周知であり、多くの出版物に記載されている。リポソームについては、Trends in Biotechnology,V.3,p.235−241(1985)の中に、Gregoriadis,Gによる総説もある。
【0139】
一つの特別な態様において、好適なビヒクルは、生体適合性のミクロ粒子又は哺乳動物のレシピエントへの移植に適したインプラントである。本発明の方法に従って有用な生分解性インプラントの例は、PCT国際出願番号PCT/US/03307(公開番号WO95/24929、発明の名称“ポリマー性の遺伝子送達系”、米国特許出願第213,668号、出願日1994年3月15日に基づく優先権主張)に記載されている。PCT/US/03307は、適当なプロモータの制御下で外因性遺伝子を含有するための生体適合性、好ましくは生分解性のポリマーマトリックスについて記載している。該ポリマーマトリックスは患者の体内で外因性遺伝子の持続放出を達成するために使用されている。本発明の方法に従って、本発明の薬剤をPCT/US/03307に開示されている生体適合性、好ましくは生分解性のポリマーマトリックス内に被包又は分散させる。該ポリマーマトリックスは、好ましくは、ミクロスフェア(薬剤を固体のポリマーマトリックス全体に分散させる場合)又はミクロカプセル(薬剤をポリマー殻のコアに格納する場合)のようなミクロ粒子の形態である。本発明の薬剤を含有するためのポリマーマトリックスの他の形態は、フィルム、コーティング、ゲル、インプラント、及びステントなどである。ポリマーマトリックスデバイスの寸法と組成は、該マトリックスデバイスが移植される組織で好ましい放出動態が得られるように選択する。ポリマーマトリックスデバイスの寸法はさらに、使用される送達法、典型的には組織への注入又は鼻腔内及び/又は肺領域へのエアゾールによる懸濁液の投与に従って選ばれる。ポリマーマトリックスの組成は、好ましい分解速度を持つように、そしてまたデバイスを血管表面に投与する場合は送達効果をさらに増加させるために生体接着性の材料で形成されるように選ぶことができる。マトリックスの組成は、分解しないように、むしろ長期にわたって拡散放出するように選ぶこともできる。
【0140】
非生分解性及び生分解性ポリマーマトリックスの両方とも、本発明の薬剤を患者に送達するのに使用できる。生分解性マトリックスが好適である。そのようなポリマーは天然又は合成ポリマーであり得る。合成ポリマーが好適である。ポリマーは所望の放出期間、一般的にはおよそ数時間から1年以上、に基づいて選ばれる。典型的には、数時間から3〜12ヶ月の範囲の期間にわたる放出が最も望ましい。ポリマーは、場合により、その重量の約90%まで水を吸収できるヒドロゲルの形態であり、またさらに、場合により多価のイオン又は他のポリマーと架橋している。
【0141】
一般的に、本発明の薬剤は、生分解性のインプラントを用いて拡散により、又は更に好ましくはポリマーマトリックスの分解により送達される。生分解性の送達系を形成するの
に使用できる合成ポリマーの例は、ポリアミド類、ポリカーボネート類、ポリアルキレン類、ポリアルキレングリコール類、ポリアルキレンオキシド類、ポリアルキレンテレフタレート類、ポリビニルアルコール類、ポリビニルエーテル類、ポリビニルエステル類、ハロゲン化ポリビニル類、ポリビニルピロリドン、ポリグリコリド類、ポリシロキサン類、ポリウレタン類及びそれらのコポリマー類、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース類、セルロースエーテル類、セルロースエステル類、ニトロセルロース類、アクリル酸エステル類及びメタクリル酸エステル類のポリマー類、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシ−プロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、カルボキシルエチルセルロース、セルローストリアセテート、セルローススルフェートナトリウム塩、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルアルコール類)、ポリビニルアセテート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン及びポリビニルピロリドンなどを含む。
【0142】
非生分解性ポリマーの例は、エチレンビニルアセテート、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリアミド類、それらのコポリマー及び混合物などである。
生分解性ポリマーの例は、乳酸及びグリコール酸のポリマー類、ポリ無水物類、ポリ(オルト)エステル類、ポリウレタン類、ポリ(butic acid)、ポリ(吉草酸)、及びポリ
(ラクチド−コカプロラクトン)のような合成ポリマー類、並びに、アルギネート及びデキストランやセルロースを含む他の多糖類、コラーゲン、それらの化学誘導体類(置換、化学基、例えばアルキル、アルキレンの付加、ヒドロキシル化、酸化、及び当業者によって日常的に行われる他の修飾)、アルブミン及び他の親水性タンパク質、ゼイン及び他のプロラミン類及び疎水性タンパク質、それらのコポリマー及び混合物などの天然ポリマー類などである。一般的に、これらの材料は酵素加水分解又はインビボにおける水への曝露のいずれかによる表面又はバルク腐食で分解する。
【0143】
特に興味のある生体接着性ポリマーは、H.S.Sawhney,C.P.Pathak及びJ.A.HubellのMicromolecules,1993,26,581−587(該文献の教示内容は引用によって本明細書に援用する)に記載されている生分解性のヒドロゲル、ポリヒアルロン酸類、カゼイン、ゼラチン、グルチン(glutin)、ポリ無水物類、ポリアクリル酸、アルギネート、キトサン、ポリ(メチルメタクリレート類)、ポリ(エチルメタクリレート類)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、及びポリ(オクタデシルアクリレート)などである。従って、本発明は、医薬品として使用するための前述の薬剤の組成物、該医薬品の製造法、及び該医薬品のインビボにおける持続放出法を提供する。
【0144】
組成物は単位剤形で都合よく提供され、製薬業界で周知の任意の方法によって製造できる。いずれの方法も、治療薬を、一つ以上の付属成分からなる担体と連合させるステップを含む。一般的に、組成物は、治療薬を液体の担体、微粉砕された固体の担体、又はその両方に均一且つ緊密に連合させ、次いで必要であれば製品を成形することによって製造される。
【0145】
非経口投与用に適切な組成物は、治療薬の無菌の水性製剤を含むのが好都合で、好ましくはこれはレシピエントの血液と等張である。この水性製剤は、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を使って公知法に従って製剤化できる。無菌の注入用製剤も、非毒性の非経口的に許容できる希釈剤又は溶媒中の注入用無菌溶液又は懸濁液、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液であり得る。使用されうる許容可能なビヒクル及び溶媒は、水、リンゲル溶液、及び等張の塩化ナトリウム溶液である。さらに、無菌の不揮発性油を溶媒又は懸濁化媒体として都合よく使用できる。この目的のために、合成モノ又はジグリセリドを含む任意の無刺激性の不揮発性油が使用できる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸も注入用製剤の製造に使用できる。経口、皮下、静脈内、筋肉内などに適切な担体製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Company、ペンシルバニア州イーストン)に見つけることができる。
【0146】
経口投与に適切な組成物は、それぞれ予め決められた量の治療薬を含有するカプセル、カシェ、錠剤、又はロゼンジのような個別単位として提供されうる。他の組成物は、水性又は非水性液体中の懸濁液、例えばシロップ、エリキシル、又はエマルジョンなどである。
【0147】
他の送達系は、時間放出、遅延放出又は持続放出による送達系を含みうる。このような系は、本発明の治療薬の反復投与を回避でき、患者及び医師にとっての利便性が増す。多くの種類の放出送達系が利用可能であり、また当業者に知られている。それらは、ポリ乳酸及びポリグリコール酸、ポリ(ラクチド−グリコリド)、コポリオキサレート類、ポリ無水物類、ポリエステルアミド類、ポリオルトエステル類、ポリヒドロキシ酪酸、及びポリカプロラクトンのようなポリマーベースの系などである。薬物を含有する前述のポリマーのミクロカプセルは、例えば米国特許第5,075,109号に記載されている。コレステロール、コレステロールエステル類及び脂肪酸のようなステロール類又はモノ−、ジ−及びトリ−グリセリドのような中性脂肪を含む脂質;リポソーム;リン脂質;ヒドロゲル放出系;シラスティック系;ペプチドベースの系;ワックスコーティング、従来の結合剤及び賦形剤を用いる圧縮錠剤、部分融合インプラントなどの非ポリマー系。具体例は、(a)米国特許第4,452,775号、4,675,189号、及び5,736,152号に見られる、多糖類がマトリックス内に含有される腐食系、及び(b)米国特許第3,854,480号、5,133,974号、及び5,407,686号に記載されているような、活性成分が制御された速度でポリマーから浸透する拡散系などであるが、これらに限定されない。さらに、ポンプ式のハードウェア送達系も使用でき、それらの一部は移植用に適応されている。
【0148】
長期持続放出型のインプラントの使用は、確立されたがん状態の治療、並びにがんを発症するリスクのある患者に特に適しうる。本明細書中で使用している“長期”放出とは、インプラントが治療濃度の活性成分を少なくとも7日間、好ましくは30〜60日間送達するように構築及び調整されていることを意味する。インプラントは腫瘍部位に配置されうる。長期持続放出型インプラントは当業者に周知であり、前述の一部の放出系を含む。
【0149】
本発明の治療薬は単独で又は抗がん剤と組み合わせて投与できる。治療薬が組み合わせて投与される場合、化合物は、例えば静脈内、経口など同一の方法で投与されても、又は例えば治療薬は経口投与し、抗がん剤は静脈内投与するなど、異なる様式で別個に投与されてもよい。本発明の一態様では、治療薬と抗がん剤は静脈内に共投与される。別の態様では、治療薬と抗がん剤は別個に投与される。
【0150】
本発明の化合物と共投与できる抗がん剤は、アシビシン(Acivicin);アクラルビシン(A
clarubicin);塩酸アコダゾール(Acodazole Hydrochloride);アクロニン(Acronine);アドリアマイシン(Adriamycin);アドゼレシン(Adozelesin);アルデスロイキン(Aldesleukin);アルトレタミン(Altretamine);アンボマイシン(Ambomycin);酢酸アメタントロン(Ametantrone Acetate);アミノグルテチミド(Aminoglutethimide);アムサクリン(Amsacrine);アナストロゾール(Anastrozole);アントラマイシン(Anthramycin);アスパラギナーゼ(Asparaginase);アスペルリン(Asperlin);アザシチジン(Azacitidine);アゼテパ(Azetepa);アゾトマイシン(Azotomycin);バチマスタット(Batimastat);ベンゾデパ(Benzodepa);ビカルタミド(Bicalutamide);塩酸ビサントレン(Bisantrene Hydrochloride)
;ビスナフィドジメシレート(Bisnafide Dimesylate);ビゼレシン(Bizelesin);硫酸ブ
レオマイシン(Bleomycin Sulfate);ブレキナールナトリウム(Brequinar Sodium);ブロ
ピリミン(Bropirimine);ブスルファン(Busulfan);カクチノマイシン(Cactinomycin);
カルステロン(Calusterone);カラセミド(Caracemide);カルベチメール(Carbetimer);
カルボプラチン(Carboplatin);カルムスチン(Carmustine);塩酸カルビシン(Carubicin Hydrochloride);カルゼレシン(Carzelesin);セデフィンゴール(Cedefingol);クロランブシル(Chlorambucil);シロレマイシン(Cirolemycin);シスプラチン(Cisplatin);クラドリビン(Cladribine);クリスナトールメシレート(Crisnatol Mesylate);シクロホスファミド(Cyclophosphamide);シタラビン(Cytarabine);ダカルバジン(Dacarbazine);ダ
クチノマイシン(Dactinomycin);塩酸ダウノルビシン(Daunorubicin Hydrochloride);デシタビン(Decitabine);デキソルマプラチン(Dexormaplatin);デザグアニン(Dezaguanine);デザグアニンメシレート(Dezaguanine Mesylate);ジアジコン(Diaziquone);ドセタキセル(Docetaxel);ドキソルビシン(Doxorubicin);塩酸ドキソルビシン(Doxorubicin Hydrochloride);ドロロキシフェン(Droloxifene);クエン酸ドロロキシフェン(Droloxifene Citrate);プロピオン酸ドロモスタノロン(Dromostanolone Propionate);デュアゾマイシン(Duazomycin);エダトレキサート(Edatrexate);塩酸エフロルニチン(Eflornithine Hydrochloride);エルサミトルシン(Elsamitrucin);エンロプラチン(Enloplatin);エンプロメート(Enpromate);エピプロピジン(Epipropidine);塩酸エピルビシン(Epirubicin Hydrochloride);エルブロゾール(Erbulozole);塩酸エソルビシン(Esorubicin Hydrochloride);エストラムスチン(Estramustine);リン酸ナトリウムエストラムスチン(Estramustine Phosphate Sodium);エタニダゾール(Etanidazole);エトポシド(Etoposide);リン酸エトポシド(Etoposide Phosphate);エトプリン(Etoprine);塩酸ファドロゾール(Fadrozole Hydrochloride);ファザラビン(Fazarabine);フェンレチニド(Fenretinide)
;フロクスウリジン(Floxuridine);リン酸フルダラビン(Fludarabine Phosphate);フルオロウラシル(Fluorouracil);フルロシタビン(Flurocitabine);フォスキドン(Fosquidone);フォストリエシンナトリウム(Fostriecin Sodium);ゲムシタビン(Gemcitabine);
塩酸ゲムシタビン(Gemcitabine Hydrochloride);ヒドロキシウレア(Hydroxyurea);塩酸イダルビシン(Idarubicin Hydrochloride);イフォスファミド(Ifosfamide);イルモフォシン(Ilmofosine);インターフェロンアルファ−2a(Interferon Alfa-2a);インターフェロンアルファ−2b(Interferon Alfa-2b);インターフェロンアルファ−n1(Interferon Alfa-n1);インターフェロンアルファ−n3(Interferon Alfa-n3);インターフェロンベータ−Ia(Interferon Beta-Ia);インターフェロンガンマ−Ib(Interferon Gamma-Ib);イプロプラチン(Iproplatin);塩酸イリノテカン(Irinotecan Hydrochloride);
酢酸ランレオチド(Lanreotide Acetate);レトロゾール(Letrozole);酢酸ロイプロリド(Leuprolide Acetate);塩酸リアロゾール(Liarozole Hydrochloride);ロメトレキソールナトリウム(Lometrexol Sodium);ロムスチン(Lomustine);塩酸ロソキサントロン(Losoxantrone Hydrochloride);マソプロコール(Masoprocol);マイタンシン(Maytansine);塩酸メクロレタミン(Mechlorethamine Hydrochloride);酢酸メゲストロール(Megestrol Acetate);酢酸メレンゲストロール(Melengestrol Acetate);メルファラン(Melphalan);
メノガリル(Menogaril);メルカプトプリン(Mercaptopurine);メトトレキサート(Methotrexate);メトトレキサートナトリウム(Methotrexate Sodium);メトプリン(Metoprine)
;メツレデパ(Meturedepa);ミチンドミド(Mitindomide);ミトカルシン(Mitocarcin);
ミトクロミン(Mitocromin);ミトギリン(Mitogillin);ミトマルシン(Mitomalcin);ミトマイシン(Mitomycin);ミトスペル(Mitosper);ミトタン(Mitotane);塩酸ミトキサント
ロン(Mitoxantrone Hydrochloride);マイコフェノール酸(Mycophenolic Acid);ノコダ
ゾール(Nocodazole);ノガラマイシン(Nogalamycin);オルマプラチン(Ormaplatin);オ
キシスラン(Oxisuran);パクリタキセル(Paclitaxel);ペガスパルガーゼ(Pegaspargase);ペリオマイシン(Peliomycin);ペンタムスチン(Pentamustine);硫酸ペプロマイシン(Peplomycin Sulfate);ペルフォスファミド(Perfosfamide);ピポブロマン(Pipobroman);ピポスルファン(Piposulfan);塩酸ピロキサントロン(Piroxantrone Hydrochloride);プリカマイシン(Plicamycin);プロメスタン(Plomestane);ポルフィメールナトリウム(Porfimer Sodium);ポルフィロマイシン(Porfiromycin);プレドニムスチン(Prednimustine);塩酸プロカルバジン(Procarbazine Hydrochloride);ピューロマイシン(Puromycin);
塩酸ピューロマイシン(Puromycin Hydrochloride);ピラゾフリン(Pyrazofurin);リボプリン(Riboprine);ログレチミド(Rogletimide);サフィンゴール(Safingol);塩酸サフィンゴール(Safingol Hydrochloride);セムスチン(Semustine);シムトラゼン(Simtrazene);スパルフォサートナトリウム(Sparfosate Sodium);スパルソマイシン(Sparsomycin)
;塩酸スピロゲルマニウム(Spirogermanium Hydrochloride);スピロムスチン(Spiromustine);スピロプラチン(Spiroplatin);ストレプトニグリン(Streptonigrin);ストレプトゾシン(Streptozocin);スロフェヌール(Sulofenur);タリソマイシン(Talisomycin);タキソール(Taxol);テコガランナトリウム(Tecogalan Sodium);テガフール(Tegafur);塩酸テロキサントロン(Teloxantrone Hydrochloride);テモポルフィン(Temoporfin);テニポシド(Teniposide);テロキシロン(Teroxirone);テストラクトン(Testolactone);チアミピリン(Thiamiprine);チオグアニン(Thioguanine);チオテパ(Thiotepa);チアゾフリン(Tiazofurin);チラパザミン(Tirapazamine);塩酸トポテカン(Topotecan Hydrochloride);クエン酸トレミフェン(Toremifene Citrate);酢酸トレストロン(Trestolone Acetate);リン酸トリシリビン(Triciribine Phosphate);トリメトレキサート(Trimetrexate);グルクロン酸トリメトレキサート(Trimetrexate Glucuronate);トリプトレリン(Triptorelin);塩酸ツブロゾール(Tubulozole Hydrochloride);ウラシルマスタード(Uracil Mustard);ウレデパ(Uredepa);バプレオチド(Vapreotide);ベルテポルフィン(Verteporfin);硫酸ビンブラスチン(Vinblastine Sulfate);硫酸ビンクリスチン(Vincristine Sulfate);ビンデシン(Vindesine);硫酸ビンデシン(Vindesine Sulfate);硫酸ビネピジン(Vinepidine Sulfate);硫酸ビングリシナート(Vinglycinate Sulfate);硫酸ビンロイロ
シン(Vinleurosine Sulfate);酒石酸ビノレルビン(Vinorelbine Tartrate);硫酸ビンロシジン(Vinrosidine Sulfate);硫酸ビンゾリジン(Vinzolidine Sulfate);ボロゾール(Vorozole);ゼニプラチン(Zeniplatin);ジノスタチン(Zinostatin);塩酸ゾルビシン(Zorubicin Hydrochloride)などであるが、これらに限定されない。追加の抗新生物薬は、G
oodman及びGilmanの“The Pharmacological Basis of Therapeutics”、第8版、1990年、McGraw−Hill,Inc.(Health Professions Division)の第52章、Antineoplastic Agents(Paul Calabresi及びBruce A.Chabner)、及びその導入部の1202〜1263頁に開示されている。
表1:ペプチド配列
【0151】
【表1−1】

【0152】
【表1−2】

【0153】
【表1−3】

【0154】
本発明のこれらおよびその他の態様の機能および利点は、以下の実施例からより十分に理解されるだろう。以下の実施例は本発明の利益を説明するためであり、本発明の全範囲を例示するものではない。
【実施例】
【0155】
実施例
実施例で使用されるコロイドの調製/薬物スクリーニング法
本発明のある実施例及び態様において、コロイド粒子表面の自己組織化単層(SAM)を利用する。コロイドはSAMで誘導体化し、国際特許公開番号WO00/43791、2000年7月27日公開、発明の名称“神経変性疾患における異常タンパク質凝集の迅速且つ高感度の検出”(引用により本明細書に援用)に記載されているのと同様の形で薬物スクリーニング用に調製した。
【0156】
典型的な例では、1.5mlの市販金コロイド(Amersham社製Auro Dye)を、微小遠心管中で、「高」の状態で10分間遠心分離してペレット化した。該ペレットを100μLの貯蔵緩衝液(クエン酸ナトリウムとtween−20)中に再浮遊させた。チオールを含有する100μLのジメチルホルムアミド(DMF)溶液。該チオール溶液中で3時間のインキュベーション後、コロイドをペレット化し、上清を廃棄した。次に、100μLのDMF中400μMのトリエチレングリコール末端チオール中で、55℃で2分間、37℃で2分間、55℃で1分間、37℃で2分間、次に室温で10分間熱サイクルした。熱サイクルの結果、最低エネルギー配置にないすべての種が除去されるので、安定な、密集した自己組織化単層が得られる。熱サイクルは、広範な自己組織化単層形成種のいずれでも実施できる。次にコロイドをペレット化し、100mMのNaClリン酸塩緩衝液100μLを加えた。次にコロイドを、コロイド貯蔵緩衝液中180μMのNiSO4で1:1に希釈した。
【0157】
コロイドのコーティングに使用されるチオールは、約40μMのニトリロ三酢酸(NTA)−チオール、及び他のチオール類、例えばメチル末端チオール(HS−(CH215
CH3)40%トリエチレングリコール末端チオール、HS(CH211(CH2CH23
OH(式)、及び50%ポリ(エチニルフェニル)チオール(C1610S)を含有する溶液から誘導された。異なるチオールを用いたのは、非特異的結合を最適に選択阻害するためである。
【0158】
コロイド凝集は、初め懸濁液中に分散しているコロイド粒子の色変化をモニタすることによって高感度に検出できる。凝集の結果、色はブルーに変化する。補助的シグナリング実体は必要ない。薬物スクリーニングでは、凝集(又はその欠如)は候補薬の存在下で観察される。
実施例1a.MUC1のPSIBRペプチドの自己凝集の測定
以下の実験は、MUC1受容体の切断部分は、脱落後細胞表面に残って付いている受容体の部分のリガンドになるという、他者の提案した仮説に挑むために設計された。しかしながら、驚くべき結果によれば、細胞表面に近いMUC1受容体の部分は高親和性の相互作用で自己凝集することを示している。図2参照。図2では、A列のカラム1−4及びカラム1の列A−Dのすべてのウェルが数分以内にブルーに変わったが、残りの9個のウェル(列B−Dのカラム2−4)はピンクのままであった。この実験では、MUC1受容体の様々なフラグメントの、相互結合能又は自己結合(自己凝集)能を試験した。結果は、どのフラグメントも受容体の他の部分には結合しないことを示す。しかしながら、少なくとも一部はPSIBRペプチドの配列(表1)によって定義される部分は、高親和性の相互作用で自己凝集する。我々は、この領域を受容体のIBR(鎖間結合領域)と名付けた。
【0159】
ヒスチジンタグ標識ペプチドは、表1に示した配列(MUC1の様々な領域)を用いて合成した。凍結乾燥ペプチドをDMSO中に溶解し、最終濃度5mMとした。5mMのDMSOストック4μlを196μlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解して100μMの濃度とし、各ペプチドのストック溶液を製造した。100μMの各ペプチド溶液20μlを、ペプチドのヒスチジンタグを捉えるためにNTA−Niを提示しているコロイド100μlに加えた。該コロイドをヒスチジンタグ標識ペプチドと室温で10分間インキュベートし、ヒスチジンタグをコロイド表面のNTA−Niに結合させた。次に、コロイド上の各ペプチド種20μlを、他のペプチド種のそれぞれ20μl及びpH7.4のリン酸緩衝液60μlと混合した。コロイド溶液の色変化を15分後に記録した。図2参照。A列はHis−PSIBR(鎖間結合領域の主要配列)ペプチドを含有し;B列はHis−TRペプチドを含有し;C列はHis−RM2ペプチドを含有し;D列はHis−PSMGFRペプチドを含有する。カラム1はHis−PSIBRペプチドを含有し;カラム2はHis−TRペプチドを含有し;カラム3はHis−RM2ペプチドを含有し;カラム4はHis−PSMGFRペプチドを含有する。溶液の色変化を観察した。溶液の色のピンクからブルーへの変化は、コロイドが結合相互作用によって強制的に集合させられたことを示す。この期間中、His−PSIBRペプチドとインキュベートしたコロイドの組の色がピンクからブルーに変わった。PSIBRがそれ自身と交差するA列カラム1のウェルだけが最初の10分以内にピンクからブルーに変わった。結果は、受容体フラグメントのどれも受容体の他の部分に結合しないことを示しているが、重要なことは、我々が鎖間結合領域の主要配列(PSIBR)と名付けた一つの領域は高親和性の相互作用で自己凝集し、MUC1受容体が腫瘍形成に寄与する機構を示唆している。
【0160】
PSIBRを含有していないウェルでは色変化は観察されず、MUC1の他のペプチド部分は互いに相互作用しないことを示している。しかしながら、1時間のインキュベーション期間後は、PSIBRと他の任意のペプチド(MUC1誘導ペプチド並びに対照ペプチドを含む)を含有する溶液は紫に変化した。これはおそらくPSIBRの自己凝集によるものであろうが、それが無関係のペプチドの存在によっていくらか阻害されたとみられる。
【0161】
コロイドの組を遠心分離してペレットを形成させ、リン酸緩衝液中に再浮遊させた。PSIBRペプチドが結合したコロイドは緩衝液中に再浮遊せず、コロイドを強制的に集合させた結合相互作用が固い相互作用であることを示していた。コロイド上には一つのペプチド種しかなかったので、結合相互作用はPSIBRペプチドのそれ自身への結合だったにちがいない。ペプチドに結合した他の組のコロイドは、互いの相互作用について検定するために、一つのコロイドタイプ15μlを第二のコロイドタイプ15μl及び70μlのリン酸緩衝液と混合した。
実施例1b:腫瘍状態にあるMUC1切断部位とMUC1鎖間結合との間の関係
本実施例は、MUC1受容体のMGFRとPSIBR間の境界付近のペプチド配列の、自己凝集に参加する能力を調べることによって、腫瘍形成又はがんに関連するMUC1の予想される切断部位を解明しようとするものである。
【0162】
ヒスチジンタグ標識ペプチド(ESMGFR)であってその配列はHis−PSMGFRペプチドの全アミノ酸に加えて、PSMGFRに隣接するPSIBR領域から9個のアミノ酸をペプチドのN末端に追加したものを包含する。N末端−VQLTLAFREGTINVHDVETQFNQYKTEAASPYNLTISDVSVSDVPFPFHHHHHH−C末端。
【0163】
該ペプチドを、本明細書中に記載の他の実験と同様に、NTAチオールを提示しているコロイド粒子に連結させた。コロイドに固定されたESMGFRペプチドは自己凝集し、そのためにコロイド溶液は色が変化した(ピンクからブルーの方向へ。ピンクからブルーに変わった図3のウェルB参照)。しかしながら、粒子に固定されたペプチドの凝集程度を示す色変化の程度は、コロイドに固定されたHis−PSIBRペプチドが自己凝集した同一の実験(図3のウェルA−ブルー)ほど劇的でなく、IBR領域の部分が非凝集His−PSMGFRペプチドに付着したときにいくらか自己凝集したことを示していた。His−PSMGFRペプチド配列は自己凝集が全くないことを示していた。具体的には、His−PSMGFRペプチドはコロイド粒子に固定され、凝集アッセイでは自己凝集を示さなかった(図3のウェルC−ピンク)。
【0164】
このことは、MUC1の異常発現を伴う腫瘍又はがんでは、MUC1受容体の切断は、PSMGFRとPSIBR配列間の境界又はその付近で発生することを強く示唆している。なぜならば、MUC1を過剰発現している腫瘍細胞では、MGFRは、MGFRとリガンド(成長因子であり得る、相互作用した場合には細胞増殖を促進する)との間の相互作用を阻害することによって細胞増殖を削減する薬剤によってアクセス可能ということが本明細書中で示されているからである。このことはまた、IBRが、MUC1の異常発現を伴う腫瘍又はがんではMUC1受容体の切断で脱落するが、MUC1が正常に発現している健常細胞ではMUC1切断で脱落しないことも強く示唆している。すなわち、MUC1の切断部位は腫瘍又はがん細胞ではIBRのC末端境界又はその付近であり、健常細胞ではIBRのN末端境界又はその付近である。
【0165】
残りの実施例で、MUC1の異常発現を伴うがんについて前述した機構、すなわち、活性化リガンド(成長因子)が細胞表面の複数のMGFRに結合することによって、細胞内で増殖(誘導多量体化)を引き起こすシグナルの引き金が引かれるという機構が確認される。簡単に言うと、この機構は以下のことを示すことによって確認される。すなわち、細胞をMGFRに対して作製された2価の抗体に曝露すると、成長因子/受容体−抗体応答を象徴する成長/応答曲線で特徴づけられる細胞増殖を誘導する(以下の実施例2);MUC1提示細胞によって産生される活性化リガンドは複数のPSMGFRに結合し、各細胞種によって産生される活性化リガンドの量はその細胞種によって産生されるMUC1受容体の量に比例している(以下の実施例3a−b);MUC1腫瘍細胞は多量体の種を産
生する(以下の実施例4b);及びMUC1腫瘍細胞に特異的であることが見出された薬物(MUC1腫瘍細胞における増殖は阻害するが他の細胞は阻害しない薬物)は細胞のMGFRに結合することが示されるが、特異的でない薬物(MUC1腫瘍細胞及び他の細胞を阻害する薬物)は多量体性のリガンドに結合することによってそれを細胞との相互作用から除外するという点で毒性がある(以下の実施例5b2)。
実施例2:MUC1受容体のMGFR部分の二量体化は、MUC1腫瘍細胞について提案された機構と合致する増強された細胞増殖の引き金を引く
本実施例でMUC1受容体に対する二量体化の影響を示す。本実施例で、MUC1受容体のMGFR領域に対して成長させた2価の抗体に様々な濃度で細胞を曝露すると、MUC1腫瘍細胞について提案された機構と合致する増強された細胞増殖(又はその欠如)がもたらされることを示す。2価の抗体をPSMGFRに対して作製した(すなわち、2個のMGFRに同時に結合する能力を有する単一抗体を製造した)。MUC1腫瘍細胞(T47D)を該抗体に曝露し、細胞増殖を抗体濃度の関数として調べた。成長因子/受容体−抗体応答を象徴する成長/応答曲線が観察された。具体的には、小部分の細胞しか抗体に曝露されないほどの低濃度では細胞増殖は少なかった。1個の抗体が隣接するMGFRを結合できるほど高い抗体濃度では細胞増殖は最大限となった。過剰すぎる抗体濃度では、各抗体は隣接するMGFRを二量体化せず1個のMGFRに結合しただけで、増殖は抑えられた。
【0166】
MUC1を過剰発現しているヒト乳がん細胞系のT47D(HTB−133)細胞を培養して30%の集密度(コンフルエンシー)にした。MUC1受容体のPSMGFR部分に対して作製した抗体、すなわちMGFRに対する抗体(Zymed、米国カリフォルニア州サンフランシスコ)を、マルチウェル細胞培養プレート中で細胞に様々な濃度で加えた。陰性対照として、第二組のT47D細胞を無関係の抗体(抗ストレプトアビジン)で処理した。抗体を加える前に細胞をカウントした(ゼロ時)。すべての実験は3組にして実施した。細胞は通常条件下でCO2インキュベータ中で成長させた。細胞を24時間時
及び再度48時間時に血球計算器を用いてカウントした(各ウェルあたり3回カウント)。結果は図4参照。すなわち、対照抗体で処理した同じ細胞の増殖と比べて、濃度依存性の様式で、抗体添加が増強された細胞増殖を引き起こしていた。図4は、24及び48時間時に測定された細胞増殖を抗PSMGFR濃度の関数としてプロットしたグラフである。最適の抗体濃度、おそらく1個の抗体がMUC1受容体の2個のMGFR部分に2価的に結合する、すなわち受容体を二量体化する場合に細胞増殖は最大になる。
【0167】
同様の実験で、細胞増殖を最大にすると確認された濃度の抗PSMGFR抗体を、前述のようにして成長させた第一群のT47D腫瘍細胞に加えた。同量の抗PSMGFR抗体を対照細胞のK293細胞の組にも加えた。図5は、抗PSMGFR抗体のMUC1腫瘍細胞(T47D)への添加は、増殖を24時間で180%増強したが、対照細胞には何の影響も与えなかった。T47D細胞の成長は、抗体を添加した細胞の場合、48時間で横ばい状態になり飽和に達した。対照細胞は、実験の時間枠内に飽和に達せず、48時間で70%の集密度であった。
実施例3a:MUC1提示細胞によって産生される活性化リガンドは複数のPSMGFRに結合する
本実施例では、MUC1腫瘍細胞の増殖の引き金を引く活性化リガンドは複数のPSMGFRに同時に結合することを示す。固定化したPSMGFRを担持するコロイド粒子を製造し、これらのコロイドの懸濁液を、(1)MUC1腫瘍細胞、又は(2)対照細胞の溶解産物及び上清に曝露した。MUC1腫瘍細胞の溶解産物/上清はコロイドを凝集させた(懸濁液がブルーに変色)。それらに含有されている活性化リガンドが異なるコロイド粒子上のMGFRに結合し、コロイド粒子を凝集させたためである。対照細胞の溶解産物/上清はそうならない。
【0168】
表1に記載のHis−PSMGFRペプチドの100μM溶液20μlを、ヒスチジンタグ標識ペプチドを捉えるためにNTA−ニッケル部分を含むSAMで誘導体化したコロイド100μlに加えた。4種類の異なる腫瘍関連細胞系(HTB−133(T47Dとも呼ばれる)、CRL−1500、CRL−1504及びCRL−1902;ATCC,American Type Culture Collection、バージニア州マナッサス)からの溶解産物及び上清を、ペプチド提示コロイドのアリコートに加えた。96穴滴板の各ウェルに、30uLの各溶解産物/上清を、40uLのPBS、30ulのHis−PSMGFR担持コロイド又は陰性対照としてGST担持コロイドに加えた。MUC1受容体を過剰発現している二つの細胞系ではピンクからブルーへの色変化がすぐに生じた。MUC1を発現しているCRL−1504細胞にも色変化が観察されたが、かなり長いインキュベーション期間後のことであった。MUC1受容体を発現することが知られていない細胞系CRL−1902では色変化は生じなかった。陰性対照として、溶解産物を無関係のペプチドであるGSTタンパク質を提供しているコロイドにも加えた。追加の陰性対照として(データは示さず)、異なる細胞系の成長培地をコロイド調製物に加えた。陰性対照では色変化は観察されなかった。
【0169】
結果を図6に示す。これは、コロイドベースの色変化アッセイを示す96穴滴板の一部の図である。
さらに図6を参照する。カラム1のウェルはHis−PSMGFRを担持するコロイドを含有する。カラム2のウェルは、陰性対照としてGST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)タンパク質を担持するコロイドを含有する。B列:HTB−133(T47Dとしても知られる)はピンクからブルーの色変化;C列:CRL−1500はピンクからブルーの色変化;A列:CRL−1504はピンクからブルーの色変化であるが、かなり長いインキュベーション期間後;D列:CRL−1902は色変化なし。陰性対照として、溶解産物/上清を無関係のペプチドであるGSTタンパク質を提供しているコロイドにも加えたが、いずれの細胞系についても色変化は観察されなかった。
【0170】
図7の結果は、これがランダムなコロイドの沈殿ではなくPSMGFRペプチドとリガンド間の特異的相互作用であることを証明している。図7は、His−PSMGFRというMUC1誘導ペプチドと粗細胞溶解産物中に存在するリガンド間のコロイドベースの色変化結合アッセイを示す96穴滴板の図である。コロイド上のNTA部分からヒスチジンタグ標識プローブペプチドを放出するイミダゾールを加えると、色変化の逆転が生じ、この色変化がランダムなコロイド凝集ではなく特異的相互作用の結果であることを証明している。T47D細胞の粗細胞溶解産物中に存在するリガンド(これらの条件下では二量体であり得る)を、ペプチド提示コロイド溶液に加えると、溶液の色はブルーに変わる。図7のB列(矢印)参照。ペプチド−リガンド相互作用を分断する薬物候補は、溶液の色をピンクのまま又はピンクに戻すであろう。このようにして、ハイスループットの薬物スクリーニングが達成され、分光光度計で色変化を分析することにより自動化もできる。
【0171】
これらの結果から、HTB−133(T47D)及びCRL−1500の細胞系は、MUC1受容体に対するリガンドを高濃度に分泌し、該リガンドは受容体を二量体化又は多量体化するように作用していることを示す。
実施例3b:細胞系におけるMUC1の発現度と、PSMGFRと相互作用するリガンドの存在との関係
本実施例で、MUC1の発現と、細胞表面に直接隣接しているMUC1受容体の部分(MGFR)から誘導されたペプチドに結合するリガンド(一つ又は複数の)の存在との間には直接的な相関があることが示された。
【0172】
固定されたPSMGFRを担持するコロイド粒子(His−PSMGFRがコロイド上のSAMのNTA提示チオールに連結している)の凝集可能性(懸濁液のピンクからブル
ーへの色変化)を、MUC1を過剰発現している、発現している、又は発現していないことが知られている各種の細胞系からの溶解産物に曝露して観察した。HTB−133、CRL−1500、CRL−1504、及びCRL−1902の細胞系を試験した。MUC1を過剰発現している細胞系(HTB−133)からの溶解産物は、コロイド懸濁液を15分以内にブルーに変え、コロイドに固定されているMGFR誘導ペプチドと相互作用するリガンドが溶解産物中に高濃度に存在することを示した。MUC1を発現しているが過剰発現ではない細胞系(CRL−1500及びCRL−1504)からの溶解産物は、コロイド懸濁液を3時間以内にブルーに変え、溶解産物中のリガンドが中等濃度であることを示した。MUC1を発現していることが知られていない細胞系(CRL−1902)からの溶解産物は、コロイド懸濁液を10時間後にようやくブルーに変え始め、溶解産物中のリガンドが低濃度であることを示した。対照は、固定されたRGDペプチド(これらの細胞溶解産物中の成分によって二量体化されない)であった。対照懸濁液はいつまでもピンクのままで、凝集がないことを示していた。
【0173】
図8A−15Dを参照する。A−D列は、固定されたHis−PSMGFRを担持するコロイド粒子を含有していた。E−H列は、ランダム配列ペプチドを担持しているコロイド粒子を含有していた。カラム2、5、8、及び11は、MUC1を過剰発現している腫瘍細胞系(HTB−133)からの溶解産物を含有していた。カラム3、6、9、及び12は、MUC1を発現していない腫瘍細胞系(CRL−1902)からの溶解産物を含有していた。カラム1、4、7、及び10は、MUC1を発現しているが過剰発現ではない腫瘍細胞系(CRL−1504)からの溶解産物を含有している。カラム1−3:コロイド上のNTA濃度:20μM;カラム4−6:40μM;カラム7−9:60μM;カラム10−12:80μM、いずれも付着溶液中の総チオール濃度は600μM。図8A:時間=0;図8B:時間=15分;図8C:時間=1時間;図8D:時間=3時間。
【0174】
概して、これらの結果は、リガンド産生とMUC1受容体の異常発現の両方が関与するフィードバックループに関する機構を示している。
実施例4a:MUC1受容体のMGFR部分に結合するリガンドの特定
MUC1受容体のリガンドを確認しようとして、鎖間結合領域の切断後細胞表面に残って付いているMUC1受容体の部分を表す、合成His−PSMGFRペプチド:
GTINVHDVETQFNQYKTEAASPYNLTISDVSVSDVPFPFSAQSGAHHHHHH(配列番号2)を、NTA−Niビーズ(カタログ番号1000630;Qiagen GmbH、ドイツ、より入手)に装着し、プロテアーゼ阻害薬PMSF(フェニルメチルスルホニルフルオリド)の存在下(図9)又は不在下(図10)で細胞溶解産物とインキュベートした。T47D細胞からの溶解産物を用いた。その理由は、この乳房腫瘍細胞はMUC1を過剰発現していることが知られていたこと;さらに発明者らが本明細書中でこの細胞系はMUC1リガンドも過剰発現しているという証拠を提示したこと(図8A−D参照)のためである。T47D細胞を培養し、次に1分間音波処理して細胞を溶解した。溶解産物をPSMGFR提示ビーズと混合し、氷上で時々撹拌しながら1時間インキュベートした。陰性対照として、無関係のペプチド、HHHHHHRGEFTGTYITAVTをNTA−Niビーズに付着させ、同一処理した。二組のビーズともpH7.4のリン酸緩衝液で2回洗浄した。結合したタンパク質種を、250mMのイミダゾールも含有するリン酸緩衝液100uLを3回加えて溶離した。どちらのペプチドとも、最初の溶出部分は別個の試料として流せるように取り出しておき、残りの部分は他の2つの溶出液と合わせてTCA(トリクロロ酢酸)−沈殿法(Chen,Lら、Anal.Biochem.Vol 269,179−188ページ;1999)によって濃縮した。溶出液は12%SDSゲルに流した。図9参照。次にゲルを銀染色した(Schevchenko,Aら;Anal.Chem.,Vol.68;850−858ページ;1996)。各レーンに乗せたものは次の通り:(左から右へ)(1)Benchmarkの染色済みタンパク質ラダー(protein ladder)(Gibco);(2)MUC1ペ
プチドからの最初の溶出液;(3)TCA濃縮試料の1/10;(4)ブランク;(5)TCA濃縮試料の9/10;(6)陰性対照ペプチドからの最初の溶出液;(7)陰性対照ペプチドからのTCA濃縮試料の1/10;(8)0.5ピコモルのBSA(標準として);(9)陰性対照ペプチドからのTCA濃縮試料の9/10;(10)銀染色SDS
PAGE標準(BioRad カタログ番号1610314)。図9を参照し、レーン2と6(対照)を比較すると、MUC1 PSMGFRペプチドが明らかに三つのペプチドに結合したことがわかる。すなわち、見掛け分子量17kDの位置の第一の特異的ペプチド;及び見掛け分子量23kDの位置の第二のペプチド(より濃いバンド)である。試料が最も濃縮されているレーン5に第三の特異的バンドが約35kDに見られることに注意する。
【0175】
図10に、プロテアーゼ阻害薬PMSFを加えなかったこと以外は図9に示したのと同一の実験の結果を示す。PMSFは、プロテアーゼなどのいくつかの酵素に結合し、その作用を遮断する。この実験は、PMSFの不在下で、溶解産物中に存在する酵素がMUC1受容体のリガンドかどうかを調べるために実施した。図10を参照し、レーン3(対照)と7を比較すると、MUC1 PSMGFRペプチドが明らかに見掛け分子量約35kDを有する一つのペプチドに結合したことがわかる。このバンドは図9(PMSF添加)にも見えていたが、かなり薄く、最も濃縮された試料からの共溶出にすぎなかったことに注意する。これらの結果は、MUC1受容体のPSMGFR部分は、見掛け分子量約35kDの、酵素と思われるリガンドに対する基質であるという考えに整合する。本明細書の他の箇所で述べているように、PSMGFRとこのリガンド又は粗細胞溶解産物中のリガンドとの間の結合の阻害に基づく薬物スクリーニングで、この酵素の作用を阻害する化合物を識別できる。
【0176】
表2.細胞系はATCC(American Type Culture Collection、バージニア州マナッサス)から購入した。すべて乳がん細胞系である。一部の細胞系は、腫瘍マーカー受容体のMUC1、Her2/neu、又は発がん酵素のカテプシンKを発現又は過剰発現していることが示されている。
【0177】
【表2】

【0178】
表3
【0179】
【表3】

【0180】
実施例4b:MUC1がん細胞と相互作用するリガンドは多量体であることの証明
本実施例では、MUC1がん細胞によって産生され、これらの細胞における細胞増殖の引き金を引くリガンドは多量体であることを証明する。
【0181】
17kD、23kD、及び35kDのタンパク質バンドを上記実施例4aに記載したゲルから切り取り、ペプチド分析に供した。これらのゲルバンドは、MUC1受容体のMGFR領域に対するリガンドを含有していると考えられた。17kD及び23kDの種は、プロテアーゼ阻害薬PMSFの存在下でMGFRペプチドに結合したが、35kDの種はPMSFを細胞溶解産物の混合物に添加しなかった場合に結合したことを思い起こしてほしい。
【0182】
以下のペプチド分析を実施した。ゲルスライス由来の試料はタンパク分解的に消化された。次に、フラグメントを、イオントラップ質量分析計のナノエレクトロスプレーイオン化源に直接接続したマイクロキャピラリーHPLCによって分離した。MS/MSスペクトルをオンラインで得た。次に、これらのフラグメント化スペクトルを、SEQUEST(登録商標)アルゴリズムと他のアルゴリズムを組み合わせて用い、公知配列に相関させた。次に、結果を手作業で検討し、公知タンパク質の配列との一致を確認した。
【0183】
17kD及び23kDバンド(PMSFを溶解産物に添加)の両方に含有されていたペプチド配列は、ヒトがん転移の促進及び抑制の両方に関与している転移阻害因子NM23として知られるタンパク質に一致した。NM23の役割が腫瘍のサプレッサーになるかプロモーターになるかはがんの種類によるようである。卵巣腫瘍、結腸腫瘍、及び神経芽細胞腫では、NM23の過剰発現はより悪性の表現型に関係している(Schneider
J,Romero H,Ruiz R,Centeno MM,Rodriguez−Escudero FJ,“進行及び境界型の卵巣がんにおけるNM23の発現”,Anticancer Res,1996;16(3A):1197−202)。しかしながら、乳がんの研究によれば、NM23の発現の減少は予後不良と相関している(Mao H,Liu H,Fu X,Fang Z,Abrams J,Worsham MJ,“乳がんの場合のNM23の発現喪失は遠位転移と予後不良を予測する”,Int J Oncol 2001年3月;18(3):587−91)。
【0184】
図9及び10に示したタンパク質ゲルバンドから同定され、転移阻害因子NM23と呼
ばれる、多くのがんに関与するタンパク質から誘導された配列を以下の表4に示す。NM23は六量体として存在し、MUC1受容体の修飾されていない形態のMGFR部分を認識するようである。
【0185】
35kDのゲルバンド(PMSFを溶解産物に添加せず)から同定されたペプチド配列は、多くのがんに関与するシグナリングタンパク質である14−3−3、及びプロテアーゼであり腫瘍の進行にも関与するカテプシンDを含む一つ以上のタンパク質種に一致した。14−3−3は二量体として存在し、同時に二つの同一のホスホ−セリンペプチドに結合できる。これにより、MUC1受容体のMGFR部分を二量体化して細胞増殖の引き金を引くのであろう。このことは本明細書中に提示した機構と合致する。カテプシンDはプロテアーゼなのでMUC1受容体の切断に関与していると思われる。
【0186】
これらのリガンドの同定は、本明細書中に開示したMUC1依存性細胞増殖機構、すなわちMUC1受容体のMGFR部分を二量体化するリガンドが細胞増殖の引き金を引き、MUC1の細胞外ドメインの部分だけが切断されることによって、表1に示したPSMGFR配列の殆ど又はすべてによって規定される受容体の機能部が露出されるという機構と合致する。
【0187】
本発明の方法に合致させた治療戦略は、一つのリガンドとMUC1受容体のMGFR部分との相互作用を妨害する化合物を特定する、又はリガンドに結合してその作用を遮断する化合物を特定する、のいずれかになる。
【0188】
表4
【0189】
【表4】

【0190】
実施例5a−d:MUC1がんに関して提示された機構と一致する薬物試験
これらの実施例では、MUC1腫瘍細胞において特異的に増殖を阻害する薬物を、MUC1腫瘍細胞及び他の細胞の両方において増殖を阻害する薬物と比較した。特異的及び非特異的薬物のどちらも、それらをMUC1腫瘍細胞溶解産物の存在下でPSMGFR提示コロイドに曝露することによって特定した。薬物は、コロイド−コロイド相互作用を防止した薬物として特定された。細胞試験により、これらの薬物は2群に分けられた。MUC1腫瘍細胞に特異的な群と非特異的な群である。非特異的薬物はPSMGFRに結合しないが、活性化リガンドに結合すると考えられ、MUC1提示細胞だけでなく対照細胞の増殖も阻害する。さらに、この群の薬物は、活性化リガンドを取り去って細胞と相互作用させないので、両方の細胞種に対していくらか毒性があった。MUC1腫瘍細胞に特異的な薬物は、ビーズ上のPSMGFRに結合することが見出された。これは、ビーズからのPSMGFRの切断産物のHPLC分析で示された。
実施例5a:MUC1受容体のMGFR部分とその活性化リガンド間の相互作用を遮断する薬剤を特定するためのコロイドベースの比色検出を用いる薬物スクリーニングアッセイ
以下は、抗がん剤を確認するための作用薬物スクリーニングアッセイの一例である。本実施例では、受容体切断後細胞表面に残って付いているMUC1受容体の部分から誘導されたヒスチジンタグ標識ペプチド(His−PSMGFR)を、NTA−ニッケル−SAM被覆金コロイドに連結した。該ペプチド提示コロイドを、MUC1提示細胞、すなわちMUC1受容体の該部分の二量体化又は多量体化を引き起こすリガンドを含有していることが本明細書中で示された細胞の溶解産物/上清とインキュベートした。このリガンドによる受容体のMGFR部分の誘導多量体化は、連結コロイドを一緒にして近くに引き寄せるため、コロイド溶液の色をピンクからブルーに変える。受容体のMGFR部分への活性化リガンドの結合を妨害する薬物は、溶液の色をピンクのまま変えない。
【0191】
PSMGFRペプチドを提示しているNTA−SAM被覆コロイドを、先のゲル電気泳動でMUC1に対するリガンドを含有していることが示されたT47D細胞(実施例4a)からの細胞溶解産物/上清とインキュベートした。陰性対照のウェルは、MUC1ペプチドの代わりにランダム配列のヒスチジンタグ標識ペプチドと結合させたコロイドを含有していた。色変化結合アッセイを描いた96穴滴板の図である図11に実験の結果を示す。PSMGFRペプチドを提示しているコロイドとT47D細胞溶解産物を含有するウェル(ウェルA)はピンクからブルーに変色し、多量体化リガンドの存在を示した。PSMGFRペプチドの代わりにランダム配列ペプチド(RGD)を含有するウェル(ウェルB)はピンクのままであった。細胞溶解産物の代わりにリン酸緩衝液を含有したウェルもピンクのままであった(ウェルC及びD)。
【0192】
以下のデータは、本発明に従って確認された抗腫瘍薬、具体的にはカルシマイシン、フザリン酸、L−α−メチル−ドパ、ブチルインダゾン、NS1619及びエトモキシルの、MGFRと細胞増殖を促進するリガンドとの相互作用を遮断することによるMUC1異常発現細胞の増殖を阻害する能力を示す。
【0193】
上記と同様の実験を薬物候補の存在下で実施し、候補薬がリガンド/MGFR結合を妨害すると確認できるかどうかを調べた。
T47D細胞をT25フラスコからトリプシン処理して剥がし、ペレット化し、リン酸緩衝液中に再浮遊させ、超音波処理して溶解し、リガンドを溶液中に放出させた。NTA−SAM被覆コロイドをHis−PSMGFRペプチド:GTINVHDVETQFNQYKTEAASPYNLTISDVSVSDVPFPFSAQSGAHHHHHHと結合させた。200μlのNTA−SAM被覆コロイドをリン酸緩衝液中100μMのペプチド20μlと15分間インキュベートし、ペレット化して非結合ペプチドを除去し、リン酸緩衝液中に再浮遊させた。陰性対照コロイドは、MUC1ペプチドの代わりにランダム配列のヒスチジンタグ標識ペプチドとインキュベートした。細胞溶解産物(65μl)を
DMSO中の5μlの薬物候補と混合し、ELISAプレートのウェル中の30μlMUC1ペプチド結合コロイドに加え、最終薬物濃度を約100μMとした。陽性対照は、薬物候補の代わりにDMSOを含有し、陰性対照は、薬物候補の代わりにDMSOと、MUC1ペプチドの代わりにランダム配列のペプチドと結合したコロイドを含有した。ピンクからブルーへの色変化は、細胞溶解産物中のリガンドがMUC1ペプチドに結合し、該ペプチドを二量体化し、コロイドを互いに十分近接させて色変化を生じさせたことを示している。薬物候補を含有しない陽性対照は、MUC1ペプチドと細胞溶解産物中に存在するリガンド間の相互作用を阻害するものが何もないので、2時間以内にピンクからブルーに変色した。色変化がないのは(ウェルがピンクのまま)、薬物候補がMUC1ペプチドとコグネイトリガンド間の相互作用を、MUC1受容体のMGFR部分に結合することによって、修飾酵素を阻害することによって、又はその活性化リガンドに結合することによって、のいずれかで遮断したことを示している。MUC1ペプチドの代わりにランダム配列のペプチドを提供しているコロイドを含有する陰性対照ウェルは、MUC1ペプチドに対するリガンドがランダム配列のペプチドを二量体化しないので、ピンクのままである。図12に、前述のアッセイに使用したサンプルの薬物スクリーニングプレートを示す。陽性対照ウェル(A1−D1)は2時間以内にピンクからブルーに変色したが、陰性対照ウェル(E1−H1)はピンクのままであった。ウェルE6は、MUC1ペプチドとコグネイトリガンド間の相互作用を阻害した薬物を含有するので、ウェルはピンクのままである。実施例5b1:特定された薬剤の作用様式を判定するための二次薬物スクリーニング−MUC1とその天然リガンドの相互作用を分断する薬物候補で処理した細胞の増殖
前に、MUC1受容体のMGFR部分に対するリガンドはコロイド上のPSMGFRペプチドの二量体化又は多量体化を起こすことをインビトロで示した。実施例3a参照。また、受容体のMGFR部分の二量体化は増強された細胞増殖を誘導することも示した。実施例2参照。だとすると、受容体のMGFR部分とその活性化リガンドの相互作用を遮断する薬剤はMUC1提示腫瘍細胞の増殖を遮断するであろう。そこで、実施例5aに記載のインビトロ薬物スクリーニングアッセイを用いて確認された薬物を機能アッセイで試験し、MUC1依存性の細胞増殖を阻害するそれらの能力を調べた。
【0194】
MUC1を過剰発現していることが知られている乳がん細胞のT47D細胞を、陰性対照としての役割を果たすヒト胚性腎細胞のK293細胞と共に、ELISAプレートのウェルで成長させた。成長培地中の細胞100μlをELISAプレートのウェルに加え、細胞を一晩接着させた。次に、プレートの各ウェル中の細胞数をカウントし記録した。次に、DMSO中の薬物候補1μlをT47D細胞及びK293細胞の両方の各ウェルに加えた。1μlのDMSOのみを対照ウェルに加えた。各ウェルとも繰り返して3組にした。細胞は、これらの細胞系の標準的な倍加時間である48時間成長させた。各ウェルの細胞数を再度カウントし記録した。この48時間の細胞成長率を計算し、薬物候補を含有しているウェル対DMSOの細胞成長率を比較した。図13を見ればわかるように、エトモキシル、L−α−メチル−ドパ、及びフザリン酸は、K293陰性対照細胞よりもMUC1発現腫瘍細胞の増殖を選択的に阻害した。DMSO対照細胞は(T47D及びK293のどちらも)、DMSOだけでは細胞増殖に影響を及ぼさないことを示している。図13は、本発明の化合物による処理に応答した、MUC1受容体を異常発現している腫瘍細胞(T47D細胞系)の増殖の選択的阻害と、MUC1を発現していない細胞(K293)への影響のなさを示す棒グラフ(ヒストグラム)である。エトモキシルの存在下における細胞成長は、T47D細胞の場合−10.2%、対照細胞(K293)の場合94%;L−α−メチル−ドパの存在下における細胞成長は、T47D細胞の場合20%、対照細胞(K293)の場合110%;フザリン酸の存在下における細胞成長は、T47D細胞の場合27.7%、対照細胞(K293)の場合106.7%;いずれの薬物も不在下(ただし等量のDMSO添加)における細胞成長は、T47D細胞の場合91.3%、対照細胞(K293)の場合106.2%であった。
実施例5b2:インビトロの比色薬物スクリーニングで確認された薬物は、MUC1提示
細胞に対して選択的及び非選択的の二つに分類される
解説したように、MUC1受容体のMGFR部分とその活性化リガンド間の相互作用を妨害する化合物を確認するインビトロの薬物スクリーニングアッセイ(実施例5aに記載)で確認された化合物は、三つの作用様式で細胞増殖を阻害できる。これらの薬物は、a)成長因子として作用する活性化リガンドの活性を遮断;b)受容体のMGFR部分に直接結合して遮断;又はc)MUC1受容体を修飾する酵素の活性を阻害することができる。(a)によって機能する薬物は様々な細胞種の増殖を阻害する一方、(b)及び(c)に従って機能するものはMUC1提示細胞の増殖を選択的に阻害するであろうと期待される。
【0195】
図14は、比色薬物スクリーニングアッセイ(実施例5a参照)で確認した、MUC1受容体のMGFR部分と多量体化リガンドの相互作用を妨害するいくつかの化合物(それぞれMN#で表示)の多穴滴板の図である。薬物含有ウェルはいずれも、各ウェルがピンクのままか紫に変色のいずれかで、陽性結合対照(最右カラムの上3個のウェル、ブルー)と比べて結合が本質的に排除又は削減されたことを示す証拠により、リガンド結合を妨害したことを示している。プレートの上半分のウェル(A−C列)は、機能的細胞増殖アッセイ(実施例5b参照)でMUC1提示腫瘍細胞の増殖を、MGFR部分に直接結合するか又はその修飾酵素に作用するのいずれかで、選択的に阻害することが示された薬物を含有している。図15は、新規薬物(詳細については、同一出願人による係属中の米国仮出願番号60/317,302及び60/317,314、いずれも2001年9月5日出願、発明の名称“がん治療の組成物及び方法”に記載)による処理に応答した、MUC1腫瘍細胞(T47D)の細胞成長率を対照細胞系(K293)と比較した棒グラフである。容易に明らかな通り、この群の薬物はMUC1提示腫瘍細胞の増殖を劇的に阻害又は完全に防止する一方で、対照細胞にはほとんどの場合影響を与えなかった。
【0196】
プレートの下半分のウェル(D−G列)は、細胞増殖アッセイで、どちらの細胞種の増殖も阻害するので非選択的に作用することが示された薬物を含有している。図16は、これらの新規薬物(詳細については、同一出願人による係属中の米国仮出願番号60/317,302及び60/317,314、いずれも2001年9月5日出願、発明の名称“がん治療の組成物及び方法”に記載)が、MUC1提示細胞(T47D)及び対照細胞系(K293)の細胞成長に及ぼす影響を示す棒グラフである。注目すべきは、成長因子に結合すると考えられるこの群の薬物は、当業者が成長因子に作用する薬剤について予想するとおり、細胞に対して有毒ということである。
実施例5c:PSMGFRペプチドと薬物の共溶出はMGFRへの直接結合を証明する
ここでは、いくつかの薬物が、MUC1依存性の細胞増殖を、MUC1受容体のMGFR部分に結合してMGFR部分とそのコグネイトリガンド間の相互作用を分断することによって阻害したことを示す。いくつかの薬物のPSMGFRペプチドへの直接結合は二つの方法を用いて示された。His−PSMGFRペプチドをNTA−ニッケルアガロースビーズに連結し、次に各薬物候補と別個にインキュベートした。100μlのビーズに1mgのペプチドを飽和になるまで結合させ、非結合ペプチドを洗浄除去し、DMSO中2.7mg/mlの薬物候補25μlと、5mlのリン酸緩衝液中で1時間インキュベートした。非結合薬はリン酸緩衝液で洗浄除去し、ペプチドをPBS、250mMのイミダゾールでビーズから溶離した。薬物候補がペプチドに結合していれば、イミダゾール溶液中にペプチドと共溶出するであろう。次に、ペプチド−薬物複合体をHPLCで分離した。複合体からの溶出ピークを、単独注入した薬物及びPSMGFRペプチド単独からの溶出ピークと比較した。パイロット試験で、MUC1細胞増殖を選択的に阻害する薬物群から無作為に選んだ3種類の薬物を、細胞増殖を非選択的に阻害する群から無作為に選んだ3種類の薬物と比較した。図17に示されている通り、選択群から選んだ左側の薬物はPSMGFRペプチドに結合しているが、非選択群から選んだ右側の薬物は結合していなかった。
【0197】
同様の実験で、ビーズからの溶出液をTLC(薄層クロマトグラフィー)で分析した。UV光下で蛍光発光するためTLCで追跡できる2種類の薬物、カルシマイシン及びNS1619を試験した。NTA−ニッケルビーズに固定されたペプチドを、薬物と上記のようにインキュベートし、濯ぎ、ビーズから溶離し、次に回転蒸発させて水性緩衝液を除去した。次に、固体を酢酸エチル、5%メタノール中に再懸濁させ、TLCプレートにスポットし、同じ有機溶媒中で展開した。どちらの薬物もPSMGFRペプチドと共溶出し、該薬物はPSMGFRペプチドに結合していることを決定的に示した。カルシマイシンは、250nmのUV光下で鮮やかなブルーのスポットを呈し、(予想通り)ペプチド自身より低極性の位置に展開された。第二の薬物、NS1619は、ペプチドよりわずかに低極性の位置で少し見えにくいスポットを呈した。TLCプレートをヨウ素で染色してペプチドスポットを出現させた。チロシンとフェニルアラニン残基が存在するため見えるようになるのである。
予言的実施例5d:MUC1依存性の細胞増殖をMUC1受容体のMGFR部分に結合し遮断することによって阻害する薬物と、MGFR部分を修飾する酵素に作用することによって選択的増殖を阻害する薬物間の区別
この実験は、修飾酵素を阻害することによってMUC1細胞の増殖を選択的に阻害する薬物と、MUC1受容体のMGFR部分に結合し遮断することによって阻害する薬物を見分けるために設計されたものである。以下の実施例8は、MUC1溶解産物中に存在するリガンドは、酵素阻害薬のPSMFを該溶解産物に加えるとPSMGFRペプチドに結合できなかったことを示している。このことは、PSMGFRがまず修飾されてからそのコグネイトリガンドを認識することを示唆している。実施例5aに記載の薬物スクリーニングアッセイを用いると、MUC1提示細胞の増殖を選択的に遮断する薬物と、成長因子として作用するMUC1リガンドを阻害することによって様々な細胞の増殖を遮断する薬物との区別をつけることができない。MUC1に選択的な薬物を確認するには、ヒットした薬物を二次アッセイにかけて、対照細胞と比較したMUC1細胞の細胞増殖率を測定しなければならない。MUC1提示細胞に対して選択的な薬物のうち、MGFRに結合し遮断する薬物と、その修飾酵素を阻害する薬物との区別は、どちらのアッセイでもつけることができない。酵素修飾ペプチドは、非修飾ペプチドより遅い速度でゲルの中を移動するので、ゲル移動性におけるこの差を用いれば、どの薬物が酵素を阻害することによって作用しているかを決定することができる。
【0198】
どの薬物がこれら二つの機構のどちらによって機能しているかを判定するには、薬物をMUC1提示細胞の溶解産物及び上清とインキュベートし、薬物にMUC1修飾酵素を阻害させる。次に、市販のNTA−ニッケルビーズに固定された合成His−PSMGFRペプチドをこの溶解産物混合物と混合する。氷上での30分間のインキュベーション後、過剰の溶解産物と薬物は、ビーズと付着ペプチドを遠心分離でペレット化後、上清中に廃棄される。次に、25mMのイミダゾール100μLを加えてペプチドをビーズから放出させる。次に、試料を、15%のポリアクリルアミドゲル上での標準のSDS−PAGE法によって分析する。非修飾PSMGFRペプチドは見掛けMWが9kdに、修飾ペプチドは見掛けMWが11kdに位置する。溶解産物及び薬物候補とのインキュベーション後、非修飾ペプチドに特徴的なMWへシフトすれば、試験された薬物は修飾酵素を阻害することによって作用していることを示す。
実施例6:エトモキシルの細胞増殖に対する阻害効果の調節
本発明でMUC1依存性腫瘍の治療に有用な組成物として確認されたエトモキシルは、MGFR/薬物相互作用の競合的阻害を通じて細胞増殖に及ぼすMGFRの影響を調節するためにMGFRに対して特異的であることが、細胞増殖培地に過剰のPSMGFRを加えることによって示された。
【0199】
以下の実験を3組で実施した。T47D細胞をほぼ30%の集密度に成長させた。エト
モキシル(約100μM)を加えたところ、細胞増殖が阻止されるのが観察された。次に、合成ペプチド(PSMGFR)を通常の細胞成長条件下で細胞成長培地に加えた。PSMGFRを添加すると、PSMGFRによってエトモキシルが消費されるために細胞増殖が増大した(図18の曲線A)。対照として、細胞をエトモキシル及びPSMGFRとほぼ同じ分子量の対照ペプチド(RGD)に曝露したが、細胞増殖(図18の曲線B)は、PSMGFRを添加したときほどには増加しなかった。
実施例7:MUC1受容体のMGFR部分の酵素修飾の証拠
以下の実験は、受容体切断後細胞表面に残って付いているMUC1受容体の部分(MGFR)が酵素修飾されている可能性を調べるために実施した。合成のHis−PSMGFRペプチド(配列番号2)をNTA−Niビーズに乗せ、T47D細胞の溶解産物とのインキュベーション、又は陰性対照として細胞成長培地とのインキュベーションのいずれかを行った。インキュベーションは、氷上で時々撹拌しながら1時間行った。第二の陰性対照として、無関係のペプチドRGD(配列番号12)をNTA−Niビーズに付着させ、同一処理した。両方の組のビーズをpH7.4のリン酸緩衝液で2回洗浄した。結合したタンパク質種を250mMのイミダゾールを添加して溶離した。各レーンに乗せたものは次の通り:(右から左へ)(10)染色済みタンパク質ラダー(Gibco);(9)ビーズに固定されたPSMGFRペプチド、細胞溶解産物とインキュベートしていない;(8−6)ビーズに固定されたPSMGFRペプチドの溶出液、T47D細胞溶解産物とインキュベートした; (5)ビーズに固定された陰性対照ペプチドの溶出液、T47D細
胞溶解産物とインキュベートしていない;(4−2)陰性対照ペプチドの溶出液、溶解産物とインキュベートした。図19を参照する。レーン6−8と9(対照)を比較すると、溶解産物とのインキュベーション後(6−8)、MUC1のPSMGFRペプチドは、細胞成長培地とのインキュベーション後(9)よりも高い分子量に位置しているのが分かる。レーン5と2−4を比べると、細胞溶解産物とのインキュベーション後、対照ペプチドの見掛け分子量に変化はない。これらの結果は、T47D細胞の溶解産物中のリガンドはMUC1受容体のPSMGFRペプチド部分を修飾しているという考えと整合する。
【0200】
これらの結果は、リガンドは、2個の隣接するMUC1受容体のMGFR部分に共有結合する酵素で、受容体の二量体化を起こし、細胞増殖のシグナリングカスケードを開始するという考えとも整合する。この機構に従って、本発明の薬物は、この酵素の作用を阻害することによって細胞増殖を妨げている。
実施例8:MGFRペプチドは酵素修飾されてからその天然リガンドがそれを認識することの証明
MUC1受容体のMGFR部分は酵素修飾されてからそのリガンドと結合するという仮説を試験するために、実施例5aに記載の薬物スクリーニングアッセイを、酵素阻害薬PMSF(フェニルメチルスルホニルフルオリド、Sigma Chemical Co.、米国ミズーリ州セントルイス)の存在下又は不在下で実施した。MUC1を異常発現している乳房腫瘍細胞のT47D細胞を70%の集密度に成長させ、トリプシンで処理してフラスコから剥がし、遠心分離によってペレット化した。溶解産物は、2個のT75フラスコのペレットから次のように調製した。細胞ペレットを300μLのリン酸緩衝液(10mMのリン酸ナトリウム、100mMのNaCl、pH7.4)中に再懸濁させた。溶解産物を二つに分けた。一つの溶解産物分液はそのまま使用した。第二の分液には9μLの100mMストック溶液を加えて最終濃度3mMとした。溶解産物を凍結し4回解凍して、各解凍後15秒間激しく撹拌した。次に、溶解産物を遠心分離によりペレット化し、上清を回収した。溶解産物に6.2mlのリン酸緩衝液を加えて希釈した。次に、実施例5aに記載の薬物スクリーニングアッセイを実施したが、ただし薬物は加えなかった。それより、溶解産物中のリガンドの、多量体化方式によるMGFRへの結合能を試験した。この方式の結合があれば溶液の色はブルーに変化する。図20から分かる通り、PMSFを含有する溶液は色の変化がなく、ピンクのままであった。A1&2のウェルは、1時間以内にピンクからブルーに変化した陽性対照ウェルで、金コロイド上に固定されたHis
−PSMGFRペプチドとT47D細胞の溶解産物/上清を含有している。A3&4のウェルは、A1&2のウェルと同じ成分を含有しているが、溶解産物/上清混合物を最初に酵素阻害薬PMSFで処理してあった;PMSFを含有するウェルは溶液の色変化を受けずピンクのままである。B1&2のウェルは陰性対照ウェルで、コロイドに固定されたHis−PSMGFRペプチドを含有するが、溶解産物ではなく緩衝液とインキュベートし、ピンクのままである。C1&2のウェルも陰性対照ウェルで、コロイドに固定されているペプチドが無関係のペプチド(RGD)で、これを溶解産物とインキュベートしたが、これもピンクのままである。
MUC1の切断状態に影響を及ぼす薬物のスクリーニングに関する予言的実施例
MUC1のIBRの放出はがんの進行に相関しうる。以下は、これらの受容体の切断状態に影響を及ぼす薬物候補を特定する全細胞アッセイについての記述である。このスクリーニングは、究極的には細胞から脱落し放出される受容体の自己凝集部分の削減をもたらすいずれかのステップを直接又は間接的に調節する薬物候補の確認もする。前記いずれかのステップとは、酵素切断、受容体の産生、発現、安定性、輸送又は分泌などであるが、これらに限定されない。
【0201】
前述の種類の細胞表面受容体を発現している腫瘍誘導細胞を培養し、薬物候補で処理する。あるインキュベーション期間後、ペプチド凝集アッセイを細胞周囲の溶液に対して実施する。結合ペプチド、例えば酵素切断部位から遠い受容体の定常部に対する抗体、を担持するコロイドを溶液に加える(MUC1の場合、アミノ酸425−479;番号は、Andrew Spicerらの、J.Biol.Chem Vol 266 No.23、1991,15099−15109ページ参照;これらのアミノ酸番号は、Genbankのアクセッション番号P15941;PID G547937の番号985−1039に対応)。受容体の脱落部分が自己凝集部分を含有していれば、溶液中の受容体は凝集し、連結コロイドを凝集させ、溶液に目視検出可能な変化、例えば色の変化又は目に見える凝集体の形成を起こす。この目に見える変化の阻害は、薬剤が疾患状態の治療に有効であることを示す。
【0202】
表1の配列リストは、完全長ペプチドの総配列内に見出される代表的な配列フラグメントである。表1の任意の配列フラグメント内の少なくとも10個の連続アミノ酸のどの組も、コグネイト結合モチーフを識別するのに十分でありうる。表1の配列リストは、各単一配列を含むことを意味し、フラグメントサイズを言うときには、範囲は、言及した最小フラグメントから完全長の配列まで(フラグメントなのでアミノ酸が1個少ない)を含み、それぞれ及びすべてのフラグメントの長さを具体的に列挙したかのように意図する。従って、フラグメントの長さが10〜15というときには、長さが10、11、12、13、14、又は15を意味すると明示したことにする。
【0203】
表1を参照する。受容体はいくつかの異なる部位で切断され、選択可能な始まりと終わりを有するペプチドフラグメントを生じることができる。表1のこれらのフラグメントの場合、上流であれ下流であれ、8〜10個の連続アミノ酸のどのストレッチも、本明細書中で引用した結合実体である特定のフラグメントを識別するのに十分であり得る。
【0204】
本発明の診断及びスクリーニングアッセイに加えて、本発明は、がん及び関連産物の治療及び予防のための治療法にも関する。例えば、一側面において、本発明は、がんを持つ又はがんを発症するリスクのある患者を、該患者に細胞表面受容体のIBRの細胞表面受容体からの切断を削減する薬剤を投与することによって治療する方法に関する。
【0205】
当業者であれば、本明細書中にあげたすべてのパラメータは例示的意味合いのものであり、実際のパラメータは、本発明の方法及び装置が使用される特定の用途によることは容易に理解されるであろう。従って、前述の態様は例のためだけに提供されており、添付の
クレーム及びその等価物の範囲内で、本発明は具体的に記載した以外のやり方で実施できるのは当然のことである。具体的には、当業者であれば、ほんの日常的な実験を使って、本明細書中に記載した本発明の特定の態様に対する多くの等価物を認識又は確認できるであろう。そうした等価物も以下のクレームによって本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【0206】
患者に、特定の状態の予防又は治療のために化合物を投与するいくつかの方法を本明細書中に開示している。本発明のそのような各側面において、本発明は、そのような特定の状態の治療又は予防に使用する化合物、並びに該化合物をそのような特定の状態の治療又は予防のための医薬品製造に使用することも特に含む。
【0207】
クレーム中、“含む”、“包含する”、“担持する”、“持つ”、“含有する”、“関与する”などの移行句は、非制限的用法である、すなわち、含むが限定されないという意味であることは理解されるべきである。“からなる”及び“本質的に〜からなる”という移行句だけがそれぞれ制限的又は半制限的移行句である。
【0208】
クレーム中、アミノ酸の配列番号は、Andrew SpicerらによるJ.Biol.Chem Vol 266 No.23,1991,15099−15109に掲載の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0209】
【図1】図1は、MUC1受容体を示す略図である。
【図2】図2は、可溶性MUC1のどの部分が相互結合又は自己凝集するかを示すコロイドベースの色変化結合実験を示す画像の黒白のフォトコピーである。
【図3】図3は、自己凝集するMUC1受容体の部分と自己凝集しない細胞近位部分との間の境界の決定を助けるのにペプチドの自己凝集能を用いた、コロイドベースの色変化実験を示す画像の黒白のフォトコピーである。結果は、MUC1受容体に疾患関連の切断部位があることを示唆している。
【図4】図4は、細胞表面の近位にあるMUC1受容体のエピトープに対する抗体は該受容体を二量体化し、成長因子/受容体−抗体相互作用の典型的な様式で細胞増殖を増強することを示す細胞増殖率のグラフである。
【図5】図5は、細胞表面の近位にあるMUC1受容体のエピトープに対する抗体は該受容体を二量体化し、細胞増殖を劇的に増強することを示す細胞増殖率のグラフである。
【図6】図6は、MUC1を発現している細胞の溶解産物中に存在するリガンドは、MUC1から誘導され金コロイド上に固定されているHis−PSMGFRペプチドに結合し二量体化するが、MUC1を発現していない細胞の溶解産物ではそうならないことを示す色変化アッセイを示す96穴滴板の一部の画像の黒白のフォトコピーである。
【図7】図7は、MUC1誘導ペプチドと粗細胞溶解産物中に存在するリガンド間のコロイドベースの色変化結合アッセイを示す96穴滴板の画像の黒白のフォトコピーである。プローブペプチドをコロイドから放出するイミダゾールを加えると、色変化の逆転が生じる。このことは色変化がランダムなコロイド凝集ではなく特異的相互作用の結果であることを証明している。
【図8A】図8Aは、細胞溶解産物中に存在するリガンドはMUC1誘導ペプチドの二量体化を生じ、リガンドの存在量を示す色の変化度は、溶解産物を供給した細胞系の関数となることを示す96穴滴板中のコロイドベースの色変化アッセイを示す画像の黒白のフォトコピーである。
【図8B】図8Bは、細胞溶解産物中に存在するリガンドはMUC1誘導ペプチドの二量体化を生じ、リガンドの存在量を示す色の変化度は、溶解産物を供給した細胞系の関数となることを示す96穴滴板中のコロイドベースの色変化アッセイを示す画像の黒白のフォトコピーである。
【図8C】図8Cは、細胞溶解産物中に存在するリガンドはMUC1誘導ペプチドの二量体化を生じ、リガンドの存在量を示す色の変化度は、溶解産物を供給した細胞系の関数となることを示す96穴滴板中のコロイドベースの色変化アッセイを示す画像の黒白のフォトコピーである。
【図8D】図8Dは、細胞溶解産物中に存在するリガンドはMUC1誘導ペプチドの二量体化を生じ、リガンドの存在量を示す色の変化度は、溶解産物を供給した細胞系の関数となることを示す96穴滴板中のコロイドベースの色変化アッセイを示す画像の黒白のフォトコピーである。
【図9】図9は、プロテアーゼ阻害薬のPMSFの存在下で、PSMGFRペプチドを用いて細胞溶解産物から釣り上げたリガンドを示す銀染色ゲルの黒白のフォトコピーである。
【図10】図10は、プロテアーゼ阻害薬のPMSFの不在下で、PSMGFRペプチドを用いて細胞溶解産物から釣り上げたリガンドを示す銀染色ゲルの黒白のフォトコピーである。
【図11】図11は、MUC1誘導ペプチドと、MUC1を過剰発現している細胞の粗細胞溶解産物中に存在するリガンド間の色変化結合アッセイを示す96穴滴板の画像の黒白のフォトコピーである。
【図12】図12は、MUC1−リガンド相互作用の阻害薬を検出するために使用された色変化薬物スクリーニングアッセイを示す96穴滴板の画像の黒白のフォトコピーである。
【図13】図13は、本発明の化合物による処理に応答した、MUC1受容体を異常発現している腫瘍細胞の増殖の選択的阻害と、MUC1を発現していない細胞への影響のなさを示すヒストグラムである。
【図14】図14は、MUC1受容体のMGFR部分と多量体化リガンドの相互作用を妨害するいくつかの化合物を特定する色変化薬物スクリーニングアッセイを示す96穴滴板の画像の黒白のフォトコピーである。
【図15】図15は、MUC1陽性細胞を特異的に阻害する薬物による処理に応答した、MUC1受容体を異常発現している腫瘍細胞の増殖の選択的阻害を示すヒストグラムである。
【図16】図16は、細胞増殖を非特異的に阻害する薬物による処理に応答した、細胞の増殖の非選択的阻害を示すヒストグラムである。
【図17】図17は、MUC1受容体を異常発現している腫瘍細胞の増殖を選択的に阻害する薬物はPSMGFRに結合するが、細胞増殖を非選択的に阻害する薬物は結合しないことを示すヒストグラムである。
【図18】図18は、本発明に従って特定された抗腫瘍薬によって誘導されるMUC1依存性細胞増殖の阻害は、切断後細胞に残ったままのMUC1の部分に対応する合成ペプチドが薬物−細胞表面受容体の相互作用を競合的に阻害する場合には調節されることを示すグラフである。
【図19】図19は、PSMGFRペプチドは細胞とのインキュベーション後、明らかに高い分子量に位置していることを示すコマシーブルー(comassie blue)染色ゲルの黒白のフォトコピーである。
【図20】図20は、PSMGFRの酵素修飾の阻害はそのリガンドへの結合を防止することを示す、色変化リガンド結合アッセイを示す96穴滴板の画像の黒白のフォトコピーである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有する第一のアーティクルと;
該表面に対して固定されているか又は固定されるように適応されているペプチド配列であって、該ペプチド配列は、細胞増殖を促進する成長因子のような活性化リガンドと相互作用する細胞表面受容体の部分を包含し、該部分は、活性化リガンドと相互作用する十分な細胞表面受容体を包含し、および該部分は、該部分間の自然結合を防止するのに必要な程度に鎖間結合領域がないペプチド配列と;そして
活性化リガンドの存在下で該ペプチド配列の、他の同一のペプチド配列への結合能に影響を及ぼす候補薬と
を含むキット。
【請求項2】
表面を有する第二のアーティクルと、該第二のアーティクルの表面に対して固定されているか又は固定されるように適応されているペプチド配列とをさらに含む、請求項1に記載のキット。
【請求項3】
ペプチド配列がMGFRである、請求項1に記載のキット。
【請求項4】
細胞増殖を促進する成長因子のような活性化リガンドと相互作用する細胞表面受容体の部分を包含するペプチドであって、該部分は、該活性化リガンドと相互作用する十分な細胞表面受容体を包含し、および該部分は、部分間の自然結合を防止するのに必要な程度に鎖間結合領域がないペプチドを用意し;
該ペプチドを、該ペプチドと相互作用する活性化リガンドの能力に影響を及ぼす候補薬及び該活性化リガンドに曝露し;そして
該候補薬の、該活性化リガンドと該ペプチドとの相互作用防止能力を測定する
ことを含む方法。
【請求項5】
該候補薬の、該ペプチドと他のタンパク質又はペプチドとの相互作用防止能力を測定することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
表面を有する第一のアーティクルと、該表面に対して固定されているか又は固定されるように適応されている複数のペプチドを用意し;
該ペプチド及び第一のアーティクルの表面を、候補薬及び少なくとも一つの活性化リガンドに曝露し;そして
該候補薬の、該活性化リガンドと該ペプチドとの相互作用防止能力を測定する
ことを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
表面を有する第一のアーティクル、表面を有する第二のアーティクル、及び該第一及び第二のアーティクルの表面に対して固定されているか又は固定されるように適応されている複数のペプチドを用意し;
該ペプチド並びに第一及び第二のアーティクルの表面を、候補薬及び少なくとも一つの活性化リガンドに曝露し;そして
該第一及び第二のアーティクルの相互に対する固定を測定する
ことを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
ペプチドを候補薬及び少なくとも一つの活性化リガンドに曝露するステップが、該ペプチド及び候補薬を、活性化リガンドを含有する細胞溶解産物及び細胞上清の一つ又は両方に曝露することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
ペプチド配列がPSMGFRである、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
がんのリスク又は進行を低減するために患者を治療する方法であって、
がんのリスクがあることが知られている又はがんと診断された患者に、活性化リガンドと、細胞増殖を促進する活性化リガンドと相互作用する細胞表面受容体の部分との相互作用を阻害する薬剤を投与することを含む方法。
【請求項11】
患者に、細胞増殖を促進する活性化リガンドと相互作用する細胞表面受容体の部分の誘導多量体化を阻害する薬剤を投与することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
細胞表面受容体がMUC1である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
細胞表面受容体の部分がMGFRである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
細胞表面受容体の部分がPSMGFR配列の重要部分を含有している、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
患者に、細胞増殖を促進する活性化リガンドと相互作用する細胞表面受容体の部分の二量体化を阻害する薬剤を投与することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
がんが、乳がん、前立腺がん、肺がん、卵巣がん、結腸直腸がん、及び脳のがんからなる群から選ばれる、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
活性化リガンドが多量体である、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
活性化リガンドが約17kDの分子量を有するタンパク質である、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
活性化リガンドが約23kDの分子量を有するタンパク質である、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
活性化リガンドが約35kDの分子量を有するタンパク質である、請求項10に記載の方法。
【請求項21】
活性化リガンドがタンパク質14−3−3から誘導された配列を含有する、請求項10に記載の方法。
【請求項22】
活性化リガンドがカテプシンDから誘導された配列を含有する、請求項10に記載の方法。
【請求項23】
活性化リガンドがNM23から誘導された配列を含有する、請求項10に記載の方法。
【請求項24】
活性化リガンドがヒトのアネキシンVから誘導された配列を含有する、請求項10に記載の方法。
【請求項25】
活性化リガンドがβ−リポトロピンから誘導された配列を含有する、請求項10に記載の方法。
【請求項26】
活性化リガンドがプロオピオメラノコルチンの切断産物である、請求項10に記載の方法。
【請求項27】
細胞表面受容体の部分が、配列:
【化1】

からの少なくとも12個の連続アミノ酸を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項28】
細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いている細胞表面受容体の部分が、ペプチド配列:
【化2】

からの少なくとも12個の連続アミノ酸を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項29】
方法で使用するために、薬剤が、ペプチド:
【化3】

の重要部分に結合するその能力を測定することによって選ばれる、請求項10に記載の方法。
【請求項30】
方法で使用するために、薬剤が、ペプチド配列:
【化4】

の重要部分に結合するその能力を測定することによって選ばれる、請求項10に記載の方法。
【請求項31】
がんのリスク又は進行を低減するために患者を治療する方法であって、
がんのリスクがあることが知られている又はがんと診断された患者に、細胞増殖を促進する成長因子のような活性化リガンドと相互作用する細胞表面受容体の部分の予防的クラスター化のための薬剤を投与することを含む方法。
【請求項32】
細胞表面受容体がMUC1である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
細胞表面受容体の部分を、複数の部分に結合できる分子と接触させることによって、複数の部分をクラスター化することを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
部分がMGFRである、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
部分が相当量のPSMGFR配列を含有する、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
がんが、乳がん、前立腺がん、肺がん、卵巣がん、結腸直腸がん、及び脳のがんからなる群から選ばれる、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
細胞表面受容体の部分が、ペプチド配列:
【化5】

からの少なくとも12個の連続アミノ酸を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
細胞表面受容体の部分が、ペプチド配列:
【化6】

からの少なくとも12個の連続アミノ酸を含む、請求項31に記載の方法。
【請求項39】
方法で使用するために、薬剤の特異的結合部分が、ペプチド:
【化7】

の重要部分に結合するその能力を測定することによって選ばれる、請求項31に記載の方法。
【請求項40】
方法で使用するために、薬剤の特異的結合部分が、ペプチド:
【化8】

の重要部分に結合するその能力を測定することによって選ばれる、請求項31に記載の方法。
【請求項41】
脱落した細胞表面受容体の鎖間結合領域に固定されることが可能な種;及び
該種に対して固定されているか又は固定されるように適応されているシグナリング実体を含むキット。
【請求項42】
種が、鎖間結合領域に接続している脱落したMUC1受容体の部分に結合している、請求項41に記載のキット。
【請求項43】
細胞表面受容体がMUC1である、請求項41に記載のキット。
【請求項44】
シグナリング実体がコロイド粒子である、請求項41に記載のキット。
【請求項45】
シグナリング実体がコロイド粒子でない、請求項41に記載のキット。
【請求項46】
コロイド粒子をさらに含み、シグナリング実体が該コロイド粒子に付着している、請求項41に記載のコロイド粒子。
【請求項47】
脱落した細胞表面受容体の鎖間結合領域の少なくとも一部分;及び
該部分に対して固定されているか又は固定されるように適応されているシグナリング実体
を含む組成物。
【請求項48】
細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いている細胞表面受容体の部分に結合可能な種;及び
該種に対して固定されているか又は固定されるように適応されているシグナリング実体を含むキット。
【請求項49】
細胞表面受容体がMUC1である、請求項48に記載のキット。
【請求項50】
シグナリング実体がコロイド粒子である、請求項48に記載のキット。
【請求項51】
シグナリング実体がコロイド粒子でない、請求項48に記載のキット。
【請求項52】
コロイド粒子をさらに含み、シグナリング実体が該コロイド粒子に付着している、請求項48に記載のキット粒子。
【請求項53】
細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いている細胞表面受容体の部分に結合可能な種が約17kDのタンパク質である、請求項48に記載のキット。
【請求項54】
細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いている細胞表面受容体の部分に結合可能な種が約23kDのタンパク質である、請求項49に記載のキット。
【請求項55】
細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いている細胞表面受容体の部分に結合可能な種が約35kDのタンパク質である、請求項49に記載のキット。
【請求項56】
細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いている細胞表面受容体の部分に結合可能な種がタンパク質14−3−3から誘導された配列を含有する、請求項49に記載のキット。
【請求項57】
部分が14−3−3を含む、請求項49に記載のキット。
【請求項58】
部分がカテプシンDを含む、請求項49に記載のキット。
【請求項59】
部分がNM23を含む、請求項49に記載のキット。
【請求項60】
部分がヒトのアネキシンVを含む、請求項49に記載のキット。
【請求項61】
細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いている細胞表面受容体の部分に結合可能な種がβ−リポトロピンから誘導された少なくとも一つの配列を含有する、請求項49に記載のキット。
【請求項62】
細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いている細胞表面受容体の部分に結合可能な種がプロオピオメラノコルチンの切断産物である、請求項49に記載のキット。
【請求項63】
鎖間結合領域を包含する細胞表面受容体の部分に結合可能な種;及び
該種に対して固定されているか又は固定されるように適応されているシグナリング実体を含むキット。
【請求項64】
細胞表面受容体がMUC1である、請求項63に記載のキット。
【請求項65】
シグナリング実体がコロイド粒子である、請求項63に記載のキット。
【請求項66】
シグナリング実体がコロイド粒子でない、請求項63に記載のキット。
【請求項67】
コロイド粒子をさらに含み、シグナリング実体が該コロイド粒子に付着している、請求項63に記載のコロイド粒子。
【請求項68】
細胞増殖を促進する成長因子のような活性化リガンドと相互作用する細胞表面受容体の部分に対応する配列の少なくとも一つのフラグメントであって、該部分はどの細胞からも分離しているフラグメント;及び
親和性タグ
を含むペプチド種。
【請求項69】
親和性タグがフラグメントに接続されている、請求項68に記載のペプチド種。
【請求項70】
親和性タグが、フラグメント及び親和性タグの両方を包含する連続アミノ酸配列の部分を定義する、請求項68に記載のペプチド種。
【請求項71】
親和性タグがポリアミノ酸タグである、請求項68に記載の種。
【請求項72】
親和性タグがポリヒスチジンタグである、請求項68に記載の種。
【請求項73】
親和性タグがGSTタグである、請求項68に記載の種。
【請求項74】
親和性タグがビオチンである、請求項68に記載の種。
【請求項75】
親和性タグがチオレドキシンである、請求項68に記載の種。
【請求項76】
親和性タグが、アーティクルの表面に対して固定されている種に結合するように選ばれる、請求項68に記載の種。
【請求項77】
表面を有するアーティクルと、該表面に対して固定され、親和性タグを捕捉することが可能な種とをさらに含む、請求項68に記載の種。
【請求項78】
アーティクルが粒子である、請求項68に記載の種。
【請求項79】
親和性タグが、受容体の部分のC−末端に固定されている、請求項68に記載の種。
【請求項80】
細胞表面受容体がMUC1である、請求項68に記載の種。
【請求項81】
細胞表面受容体部分が、配列:
【化9】

中の12個以上の連続アミノ酸を含む、請求項68に記載の種。
【請求項82】
フラグメントが、PSMGFRの少なくとも一部分を含む、請求項68に記載のペプチド種。
【請求項83】
フラグメントが、PSMGFRを含む、請求項68に記載のペプチド種。
【請求項84】
フラグメントが、MUC1依存性腫瘍形成に関連して細胞増殖を促進する成長因子のような活性化リガンドと相互作用するMUC1の部分に対応する配列の少なくとも一つのフラグメントを含む、請求項68に記載のペプチド種。
【請求項85】
フラグメントが、MUC1依存性腫瘍形成に関連して細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いているMUC1の部分に対応する十分な配列を含む結果、MUC1依存性腫瘍形成に関連して細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いているMUC1の部分と相互作用する生体分子が該フラグメントと相互作用する、請求項68に記載のペプチド種。
【請求項86】
粒子;及び
細胞増殖を促進する成長因子のような活性化リガンドと相互作用する細胞表面受容体の部分に対応する配列の少なくとも一つのフラグメントであって、該フラグメントはどの細胞からも分離し、該粒子に固定されているか又は固定されるように適応されているフラグメント
を含むキット。
【請求項87】
細胞表面受容体がMUC1である、請求項86に記載のキット。
【請求項88】
表面を有するアーティクル;及び
細胞増殖を促進する成長因子のような活性化リガンドと相互作用する細胞表面受容体の部分に結合する生体分子であって、該生体分子は該アーティクルの表面に固定されているか又は固定されるように適応されている生体分子
を含むキット。
【請求項89】
アーティクルが粒子を含む、請求項88に記載のキット。
【請求項90】
細胞表面受容体がMUC1である、請求項88に記載のキット。
【請求項91】
第二の粒子;及び
細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いている細胞表面受容体の部分であって、該部分はどの細胞からも分離し、該第二の粒子に固定されているか又は固定されるように適応されている部分
をさらに含む、請求項88に記載のキット。
【請求項92】
細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いている細胞表面受容体の部分に結合する生体分子が約17kDのタンパク質である、請求項88に記載のキット。
【請求項93】
細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いている細胞表面受容体の部分に結合する生体分子が約23kDのタンパク質である、請求項88に記載のキット。
【請求項94】
細胞表面受容体の鎖間結合領域の切断後、細胞表面に付着して残った細胞表面受容体の部分に結合する生体分子が約35kDのタンパク質である、請求項88に記載のキット。
【請求項95】
細胞表面受容体の鎖間結合領域の切断後、細胞表面に付着して残った細胞表面受容体の部分に結合する生体分子がタンパク質14−3−3から誘導された配列を含有している、請求項88に記載のキット。
【請求項96】
細胞表面受容体の鎖間結合領域の切断後、細胞表面に付着して残った細胞表面受容体の部分に結合する生体分子がカテプシンDから誘導された配列を含有している、請求項88に記載のキット。
【請求項97】
細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いている細胞表面受容体の部分に結合する生体分子がNM23から誘導された配列を含有している、請求項88に記載のキット。
【請求項98】
細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いている細胞表面受容体の部分に結合する生体分子がヒトのアネキシンVから誘導された配列を含有している、請求項88に記載のキット。
【請求項99】
細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いている細胞表面受容体の部分に結合する生体分子がβ−リポトロピンから誘導された少なくとも一つの配列を含有している、請求項88に記載のキット。
【請求項100】
細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いている細胞表面受容体の部分に結合する生体分子がプロオピオメラノコルチンの切断産物である、請求項88に記載のキット。
【請求項101】
細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いている細胞表面受容体の部分に結合する生体分子が、カルシマイシン、フザリン酸、L−α−メチル−ドパ、及びエトモキシルを含む群から選ばれる、請求項88に記載のキット。
【請求項102】
細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いている細胞表面受容体の部分に結合する生体分子がカルシマイシンを含む、請求項88に記載のキット。
【請求項103】
細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いている細胞表面受容体の部分に結合する生体分子がフザリン酸を含む、請求項88に記載のキット。
【請求項104】
細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いている細胞表面受容体の部分に結合する生体分子がL−α−メチル−ドパを含む、請求項88に記載のキット。
【請求項105】
細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いている細胞表面受容体の部分に結合する生体分子がエトモキシルを含む、請求項88に記載のキット。
【請求項106】
生体分子が、HTB−133、CRL−1504、及びCRL−1500からなる群から選ばれる細胞系から誘導される、請求項88に記載の組成物。
【請求項107】
細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いている細胞表面受容体の部分に結合可能なリガンドと、前記結合を遮断可能な薬剤とを、該リガンドと該薬剤との間の相互作用を分断する候補薬に曝露し;そして
該候補薬による相互作用の分断を測定する
ことを含む方法。
【請求項108】
細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いている、リガンドと結合可能な細胞表面受容体の部分と、前記結合を遮断可能な薬剤とを、該部分と該薬剤との間の相互作用を分断する候補薬に曝露し;そして
該候補薬による相互作用の分断を測定する
ことを含む方法。
【請求項109】
合成薬と、該合成薬の生物学的標的とを、該合成薬と該標的間の相互作用より大きく該生物学的標的と相互作用しうる候補薬に曝露し;そして
該候補薬による相互作用の分断を測定する
ことを含む方法。
【請求項110】
合成薬がフザリン酸の誘導体である、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
合成薬がL−α−メチル−ドパの誘導体である、請求項109に記載の方法。
【請求項112】
合成薬がエトモキシルの誘導体である、請求項109に記載の方法。
【請求項113】
MUC1の異常発現を特徴とするがんを有する患者の治療法であって、
該患者に、腫瘍成長の削減に有効な量のフザリン酸を投与することを含む方法。
【請求項114】
患者が、それ以外にカルシマイシンによる治療を要する症状のない、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
方法が、患者に、天然リガンドと、細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いているMUC1受容体の部分との相互作用を遮断するのに有効な量のフザリン酸を投与することを含む、請求項113に記載の方法。
【請求項116】
方法が、患者に、MUC1受容体の鎖間結合領域の脱落を減らすのに有効な量のフザリン酸を投与することを含む、請求項113に記載の方法。
【請求項117】
脱落した鎖間結合領域の量が過去の試料で測定された量と比べて減っている、請求項113に記載の方法。
【請求項118】
脱落した鎖間結合領域の量が対照試料と比べて減っている、請求項113に記載の方法。
【請求項119】
MUC1の異常発現を特徴とするがんを有する患者の治療法であって、
該患者に、腫瘍成長の削減に有効な量のエトモキシルを投与することを含む方法。
【請求項120】
患者が、それ以外にエトモキシルによる治療を要する症状のない、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
方法が、患者に、天然リガンドと、細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いているMUC1受容体の部分との相互作用を遮断するのに有効な量のエトモキシルを投与することを含む、請求項119に記載の方法。
【請求項122】
方法が、患者に、MUC1受容体の鎖間結合領域の脱落を減らすのに有効な量のエトモキシルを投与することを含む、請求項119に記載の方法。
【請求項123】
脱落した鎖間結合領域の量が過去の試料で測定された量と比べて減っている、請求項119に記載の方法。
【請求項124】
脱落した鎖間結合領域の量が対照試料と比べて減っている、請求項119に記載の方法。
【請求項125】
MUC1の異常発現を特徴とするがんを有する患者の治療法であって、
該患者に、腫瘍成長の削減に有効な量のL−α−メチル−ドパを投与することを含む方法。
【請求項126】
患者が、それ以外にL−α−メチル−ドパによる治療を要する症状のない、請求項125に記載の方法。
【請求項127】
方法が、患者に、天然リガンドと、細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いているMUC1受容体の部分との相互作用を遮断するのに有効な量のL−α−メチル−ドパを投与することを含む、請求項125に記載の方法。
【請求項128】
方法が、患者に、MUC1受容体の鎖間結合領域の脱落を減らすのに有効な量のL−α−メチル−ドパを投与することを含む、請求項125に記載の方法。
【請求項129】
脱落した鎖間結合領域の量が過去の試料で測定された量と比べて減っている、請求項125に記載の方法。
【請求項130】
脱落した鎖間結合領域の量が対照試料と比べて減っている、請求項125に記載の方法。
【請求項131】
MUC1の異常発現を特徴とするがんを有する患者の治療法であって、
該患者に、腫瘍成長の削減に有効な量のカルシマイシンを投与することを含む方法。
【請求項132】
患者が、それ以外にカルシマイシンによる治療を要する症状のない、請求項131に記載の方法。
【請求項133】
方法が、患者に、天然リガンドと、細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いているMUC1受容体の部分との相互作用を遮断するのに有効な量のカルシマイシンを投与することを含む、請求項131に記載の方法。
【請求項134】
方法が、患者に、MUC1受容体の鎖間結合領域の脱落を減らすのに有効な量のカルシマイシンを投与することを含む、請求項131に記載の方法。
【請求項135】
脱落した鎖間結合領域の量が過去の試料で測定された量と比べて減っている、請求項134に記載の方法。
【請求項136】
脱落した鎖間結合領域の量が対照試料と比べて減っている、請求項134に記載の方法。
【請求項137】
MUC1の異常発現を特徴とするがんを有する患者の治療法であって、
該患者に、腫瘍成長の削減に有効な量のブチルインダゾールを投与することを含む方法。
【請求項138】
患者が、それ以外にブチルインダゾールによる治療を要する症状のない、請求項137に記載の方法。
【請求項139】
方法が、患者に、天然リガンドと、細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いているMUC1受容体の部分との相互作用を遮断するのに有効な量のブチルインダゾールを投与することを含む、請求項137に記載の方法。
【請求項140】
方法が、患者に、MUC1受容体の鎖間結合領域の脱落を減らすのに有効な量のブチルインダゾールを投与することを含む、請求項137に記載の方法。
【請求項141】
脱落した鎖間結合領域の量が過去の試料で測定された量と比べて減っている、請求項1
37に記載の方法。
【請求項142】
脱落した鎖間結合領域の量が対照試料と比べて減っている、請求項137に記載の方法。
【請求項143】
MUC1の異常発現を特徴とするがんを有する患者の治療法であって、
該患者に、腫瘍成長の削減に有効な量のNS1619を投与することを含む方法。
【請求項144】
患者が、それ以外にNS1619による治療を要する症状のない、請求項143に記載の方法。
【請求項145】
方法が、患者に、天然リガンドと、細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いているMUC1受容体の部分との相互作用を遮断するのに有効な量のNS1619を投与することを含む、請求項143に記載の方法。
【請求項146】
方法が、患者に、MUC1受容体の鎖間結合領域の脱落を減らすのに有効な量のNS1619を投与することを含む、請求項143に記載の方法。
【請求項147】
脱落した鎖間結合領域の量が過去の試料で測定された量と比べて減っている、請求項143に記載の方法。
【請求項148】
脱落した鎖間結合領域の量が対照試料と比べて減っている、請求項143に記載の方法。
【請求項149】
カルシマイシン、ブチルインダゾン、NS1619、フザリン酸、L−α−メチル−ドパ、及びエトモキシルの中から選ばれる組成物と、細胞表面受容体の鎖間結合領域の脱落後、細胞表面に残って付いている細胞表面受容体の部分に結合する生体分子とを、該組成物と該生体分子との間の相互作用を分断しうる候補薬に曝露し;そして
該候補薬による相互作用の妨害を測定する
ことを含む方法。
【請求項150】
がんを有する又はがんを発症するリスクのある患者の治療法であって、
該患者に、細胞表面受容体の切断を減らす薬剤を投与することを含む方法。
【請求項151】
がんを有する又はがんを発症するリスクのある患者の治療法であって、
該患者に、細胞表面受容体の鎖間結合領域の細胞表面からの切断を減らす薬剤を投与することを含む方法。
【請求項152】
細胞表面受容体がMUC1である、請求項150に記載の方法。
【請求項153】
鎖間結合領域が、配列:
【化10】

からの少なくとも12個のアミノ酸の連続アミノ酸配列を含む、請求項151に記載の方法。
【請求項154】
鎖間結合領域が、ヒトMUC1受容体のアミノ酸507〜549(スパイサーらの配列参照−ジェンバンクアクセッション番号P15941、PID G547937のアミノ
酸1067〜1100に対応する)の領域内の約12〜18個のアミノ酸の連続アミノ酸配列を含む、請求項150に記載の方法。
【請求項155】
鎖間結合領域が、ヒトMUC1受容体のアミノ酸525〜549(スパイサーらの配列参照−ジェンバンクアクセッション番号P15941、PID G547937のアミノ酸1085〜1109に対応する)の領域内の約12〜18個のアミノ酸の連続アミノ酸配列を含む、請求項150に記載の方法。
【請求項156】
がんが、乳がん、前立腺がん、肺がん、卵巣がん、結腸直腸がん、及び脳のがんからなる群から選ばれる、請求項150に記載の方法。
【請求項157】
がんがMUC1受容体の異常発現を特徴とする、請求項150に記載の方法。
【請求項158】
細胞表面受容体の鎖間結合領域の細胞表面からの切断量を測定し;そして
該測定ステップに基づいてがんの徴候又はがんの可能性を評価する
ことを含む方法。
【請求項159】
細胞表面受容体がMUC1である、請求項158に記載の方法。
【請求項160】
患者の試料中の脱落した細胞表面受容体の鎖間結合領域の量を測定し、そして
該測定ステップに基づいてがんの徴候又はがんの可能性を評価する
ことによって患者におけるがんを診断することを含む、請求項158に記載の方法。
【請求項161】
評価ステップが、がんの徴候又はがんの可能性として、試料中の量を対照中の量に相関させることを含む、請求項158に記載の方法。
【請求項162】
患者の細胞の表面における細胞表面受容体の鎖間結合領域の量を測定し;そして
該測定ステップに基づいてがんの徴候又はがんの可能性を評価する
ことを含む、請求項158に記載の方法。
【請求項163】
鎖間結合領域が、配列:
【化11】

からの少なくとも12個のアミノ酸の連続アミノ酸配列を含む、請求項158に記載の方法。
【請求項164】
鎖間結合領域が、ヒトMUC1受容体のアミノ酸507〜549(スパイサーらの配列参照−ジェンバンクアクセッション番号P15941、PID G547937のアミノ酸1067〜1100に対応する)の領域内の約12〜18個のアミノ酸の連続アミノ酸配列を含む、請求項158に記載の方法。
【請求項165】
鎖間結合領域が、ヒトMUC1受容体のアミノ酸525〜549(スパイサーらの配列参照−ジェンバンクアクセッション番号P15941、PID G547937のアミノ酸1085〜1109に対応する)の領域内の約12〜18個のアミノ酸の連続アミノ酸配列を含む、請求項158に記載の方法。
【請求項166】
試料が体液試料である、請求項160に記載の方法。
【請求項167】
試料が血液である、請求項160に記載の方法。
【請求項168】
試料が組織試料である、請求項160に記載の方法。
【請求項169】
試料が患者の細胞から誘導された増殖細胞系である、請求項160に記載の方法。
【請求項170】
がんがMUC1の異常発現を特徴とする、請求項158に記載の方法。
【請求項171】
鎖間結合領域の量が、MALDI、ウェスタンブロット法、PCR、LCR、rtPCR、サイクリングプローブ技術、ゲル電気泳動、又は抗体利用アッセイ、磁気細胞分取法、蛍光標示式細胞分取法、ビーズ利用アッセイ又はELISAアッセイからなる群から選ばれる方法によって測定される、請求項158に記載の方法。
【請求項172】
鎖間結合領域の量が凝集アッセイによって測定される、請求項158に記載の方法。
【請求項173】
鎖間結合領域の量が、コロイド−コロイド又はコロイド−ビーズアッセイのようなコロイドを利用した方法によって測定される、請求項158に記載の方法。
【請求項174】
試料が、針生検、組織標本、手術中の処置における組織表面、及び腹腔鏡検査のような最小侵襲的な方法における組織表面又は細胞溶液からなる群から選ばれる、請求項158に記載の方法。
【請求項175】
患者の試料中の細胞表面受容体の切断部位を判定し;そして
該判定ステップに基づいてがんの徴候又はがんの可能性を評価する
ことを含む方法。
【請求項176】
細胞表面受容体がMUC1である、請求項175に記載の方法。
【請求項177】
試料が、針生検、組織標本、手術中の処置における組織表面、及び腹腔鏡検査のような最小侵襲的な方法における組織表面又は細胞溶液からなる群から選ばれる、請求項175に記載の方法。
【請求項178】
試料が体液試料である、請求項175に記載の方法。
【請求項179】
試料が血液である、請求項175に記載の方法。
【請求項180】
試料が組織試料である、請求項175に記載の方法。
【請求項181】
がんが、乳がん、前立腺がん、肺がん、卵巣がん、結腸直腸がん、及び脳のがんからなる群から選ばれる、請求項175に記載の方法。
【請求項182】
がんがMUC1の異常発現を特徴とする、請求項175に記載の方法。
【請求項183】
切断部位が、MALDI、ウェスタンブロット法、PCR、LCR、rtPCR、サイクリングプローブ技術、ゲル電気泳動、又は抗体利用アッセイ、磁気細胞分取法、蛍光標示式細胞分取法、ビーズ利用アッセイ又はELISAアッセイからなる群から選ばれる方法によって判定される、請求項175に記載の方法。
【請求項184】
鎖間結合領域の量が、コロイド−コロイド又はコロイド−ビーズアッセイのようなコロイドを利用した方法によって測定される、請求項175に記載の方法。
【請求項185】
細胞表面の切断部位を判定する方法であって、
細胞を、一つの可能性ある細胞表面受容体の切断部位に特異的に結合する薬剤と、別の可能性ある細胞表面受容体の切断部位に特異的に結合する別の薬剤とに接触させ;そして
二つの薬剤の細胞表面への結合比を比較する
ことを含む方法。
【請求項186】
細胞表面受容体がMUC1である、請求項185に記載の方法。
【請求項187】
がん又はがんの可能性を示す生理学的状態を診断する方法であって、MUC1の異なる切断状態とは区別可能なMUC1の特異的切断状態を判定することを含む方法。
【請求項188】
患者の試料の細胞表面からの細胞表面受容体の鎖間結合領域の第一の切断量を測定し;
患者の試料の細胞表面からの細胞表面受容体の鎖間結合領域の第二の切断量を測定し;
前記第一の量を前記第二の量と比較する
ことを含む方法。
【請求項189】
がんの進行及び/又はがんの治療の効果の指標として、第一の量を第二の量と比較することを含む、請求項188に記載の方法。
【請求項190】
がんの予防用薬剤の投与の指標として、第一の量を第二の量と比較することを含む、請求項188に記載の方法。
【請求項191】
患者ががんの治療を受けており、方法が、
治療の効果の指標として第一の量を第二の量と比較する
ことを含む、請求項188に記載の方法。
【請求項192】
細胞表面受容体がMUC1である、請求項188に記載の方法。
【請求項193】
鎖間結合領域が、配列:
【化12】

からの少なくとも12個のアミノ酸の連続アミノ酸配列を含む、請求項192に記載の方法。
【請求項194】
鎖間結合領域が、ヒトMUC1受容体のアミノ酸507〜549(スパイサーらの配列参照−ジェンバンクアクセッション番号P15941、PID G547937のアミノ酸1067〜1100に対応する)の領域内の約12〜18個のアミノ酸の連続アミノ酸配列を含む、請求項192に記載の方法。
【請求項195】
鎖間結合領域が、ヒトMUC1受容体のアミノ酸525〜549(スパイサーらの配列参照−ジェンバンクアクセッション番号P15941、PID G547937のアミノ酸1085〜1109に対応する)の領域内の約12〜18個のアミノ酸の連続アミノ酸配列を含む、請求項188に記載の方法。
【請求項196】
試料が体液試料である、請求項188に記載の方法。
【請求項197】
試料が血液である、請求項188に記載の方法。
【請求項198】
試料が組織試料である、請求項188に記載の方法。
【請求項199】
がんが、乳がん、前立腺がん、肺がん、卵巣がん、結腸直腸がん、及び脳のがんからなる群から選ばれる、請求項188に記載の方法。
【請求項200】
試料が患者の細胞から誘導された増殖細胞系である、請求項188に記載の方法。
【請求項201】
鎖間結合領域の量が、MALDI、ウェスタンブロット法、PCR、LCR、rtPCR、サイクリングプローブ技術、ゲル電気泳動、又は抗体利用アッセイ、磁気細胞分取法、蛍光標示式細胞分取法、ビーズ利用アッセイ又はELISAアッセイからなる群から選ばれる方法によって測定される、請求項188に記載の方法。
【請求項202】
鎖間結合領域の量が凝集アッセイによって測定される、請求項188に記載の方法。
【請求項203】
鎖間結合領域の量が、コロイド−コロイド又はコロイド−ビーズアッセイのようなコロイドを利用した方法によって測定される、請求項188に記載の方法。
【請求項204】
試料が、針生検、組織標本、手術中の処置における組織表面、及び腹腔鏡検査のような最小侵襲的な方法における組織表面又は細胞溶液からなる群から選ばれる、請求項188に記載の方法。
【請求項205】
鎖間結合領域の量が、コロイド−コロイド又はコロイド−ビーズアッセイのようなコロイドを利用した方法によって測定される、請求項188に記載の方法。
【請求項206】
試料が、針生検、組織標本、手術中の処置における組織表面、及び腹腔鏡検査のような最小侵襲的な方法における組織表面又は細胞溶液からなる群から選ばれる、請求項188に記載の方法。
【請求項207】
患者の試料中の細胞の表面における細胞表面受容体の鎖間結合領域の第一の量を測定し;
患者の試料中の細胞の表面における細胞表面受容体の鎖間結合領域の第二の量を測定し;
前記第一の量を前記第二の量と比較する
ことを含む、請求項188に記載の方法。
【請求項208】
患者の試料中の脱落した細胞表面受容体の鎖間結合領域の第一の量を測定し;
患者の試料中の脱落した細胞表面受容体の鎖間結合領域の第二の量を測定し;
前記第一の量を前記第二の量と比較する
ことを含む、請求項188に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−106028(P2010−106028A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271611(P2009−271611)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【分割の表示】特願2002−556226(P2002−556226)の分割
【原出願日】平成13年11月27日(2001.11.27)
【出願人】(501291558)ミナーヴァ・バイオテクノロジーズ・コーポレーション (4)
【Fターム(参考)】