説明

診断病名登録支援システム及びその方法並びに電子カルテ装置及び電子カルテプログラム

【課題】複数の検査結果のうちのどの検査結果から判断して病名を登録したかが把握でき、且つ、病名だけをキー情報とする必要を無くす。
【解決手段】診断病名の登録を支援する電子カルテ装置が、診断対象とする第1の患者に対して行われた検査の結果を記憶する。記憶されている情報を参照した利用者により前記第1の患者が或る病気だと診断された場合に、当該或る病気の病名と、当該或る病気だと診断する根拠となった検査項目と、当該検査項目の検査結果と、を受け付けて、前記受け付けた各情報を関連付けて、当該関連付けられた各情報を含むテーブルである病名ナレッジテーブルを作成する。作成された病名ナレッジテーブルを記憶する。前記第1の患者とは異なる患者である第2の患者を診断対象とする際に、前記第2の患者に対して行われた検査の結果と共に、前記病名ナレッジテーブルをも利用者に提示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医師等の利用者の診断の支援に関する。
【背景技術】
【0002】
医師による診断を支援するために種々の技術が提案されている。この点、一般的な診断病名登録支援機能では、シェーマと病名の情報を関連付けて蓄積し、その情報を元に病名の検索を行い、医師が入力する候補病名を表示している。なお、ここでシェーマとは、医者がカルテを記すときに利用する、身体部位の絵図のことを指すものとする。
【0003】
また、このような技術の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の技術では医師が病名と所見データを関連付けて登録する。
【0004】
そして、他の患者を診断する際に病名をキー情報として検索をし、過去の所見データを参照することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−302113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上述の技術には、解決すべき問題があった。
【0007】
シェーマと病名の情報を関連付けて蓄積するという技術の場合、シェーマと病名の関連情報だけでは医師に対して、十分な精度で病名を提示することができず、診断病名の登録支援としては、有効ではないという問題があった。
【0008】
また、病気を特定するために医師は、複数の検査を行なう。しかし、特許文献1等に記載の技術では過去の症例を検索できたとしても、どの検査結果から判断して登録した病名かを特定することができないという問題があった。
【0009】
更に、病名だけをキー情報として検索処理をかけていては、膨大な検査結果情報を蓄積している病院では、候補病名の表示レスポンスに問題が発生するという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、複数の検査結果のうちのどの検査結果から判断して病名を登録したかが把握でき、且つ、病名だけをキー情報とする必要のない、診断病名登録支援システム及びその方法並びに電子カルテ装置及び電子カルテプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点によれば、診断病名の登録を支援する電子カルテ装置において、診断対象とする第1の患者に対して行われた検査の結果を記憶する全検査結果データベースと、前記全検査結果データベースに記憶されている情報を参照した利用者により前記第1の患者が或る病気だと診断された場合に、当該或る病気の病名と、当該或る病気だと診断する根拠となった検査項目と、当該検査項目の検査結果と、を受け付けて、前記受け付けた各情報を関連付けて、当該関連付けられた各情報を含むテーブルである病名ナレッジテーブルを作成する関連付け手段と、前記作成された病名ナレッジテーブルを記憶する病名ナレッジデータベースと、を備え、前記第1の患者とは異なる患者である第2の患者を診断対象とする際に、前記第2の患者に対して行われた検査の結果と共に、前記病名ナレッジテーブルをも利用者に提示することを特徴とする電子カルテ装置が提供される。
【0012】
本発明の第2の観点によれば、診断病名の登録を支援する診断病名登録支援システムにおいて、患者に対して行われた検査の結果を電子カルテ装置に通知する全検査結果入力システムと、前記電子カルテ装置と、を備え、前記電子カルテ装置が本発明の第1の観点により提供される電子カルテ装置であることを特徴とする診断病名登録支援システムが提供される。
【0013】
本発明の第3の観点によれば、診断病名の登録を支援する電子カルテ装置に組み込まれる電子カルテプログラムにおいて、診断対象とする第1の患者に対して行われた検査の結果を記憶する全検査結果データベースと、前記全検査結果データベースに記憶されている情報を参照した利用者により前記第1の患者が或る病気だと診断された場合に、当該或る病気の病名と、当該或る病気だと診断する根拠となった検査項目と、当該検査項目の検査結果と、を受け付けて、前記受け付けた各情報を関連付けて、当該関連付けられた各情報を含むテーブルである病名ナレッジテーブルを作成する関連付け手段と、前記作成された病名ナレッジテーブルを記憶する病名ナレッジデータベースと、を備え、前記第1の患者とは異なる患者である第2の患者を診断対象とする際に、前記第2の患者に対して行われた検査の結果と共に、前記病名ナレッジテーブルをも利用者に提示する電子カルテ装置としてコンピュータを機能させることを特徴とする電子カルテプログラムが提供される。
【0014】
本発明の第4の観点によれば、全検査結果入力システムと、電子カルテ装置と、を備えるシステムが行う診断病名登録支援方法において、前記全検査結果入力システムが、患者に対して行われた検査の結果を電子カルテ装置に通知するステップと、前記電子カルテ装置が、診断対象とする第1の患者に対して行われた検査の結果を記憶する全検査結果データベースを用意するステップと、前記電子カルテ装置が、前記全検査結果データベースに記憶されている情報を参照した利用者により前記第1の患者が或る病気だと診断された場合に、当該或る病気の病名と、当該或る病気だと診断する根拠となった検査項目と、当該検査項目の検査結果と、を受け付けて、前記受け付けた各情報を関連付けて、当該関連付けられた各情報を含むテーブルである病名ナレッジテーブルを作成する関連付けステップと、前記電子カルテ装置が、前記作成された病名ナレッジテーブルを記憶する病名ナレッジデータベースを用意するステップと、を備え、前記第1の患者とは異なる患者である第2の患者を診断対象とする際に、前記第2の患者に対して行われた検査の結果と共に、前記病名ナレッジテーブルをも利用者に提示することを特徴とする診断病名登録支援方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、病名を判断する根拠となった検査結果と、病名を関連付けておき、病名と審査結果とから作成した診断病名の候補リストを提示することから、複数の検査結果のうちのどの検査結果から判断して病名を登録したかが把握でき、且つ、病名だけをキー情報とする必要を無くすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態の基本的構成を表す図である。
【図2】本発明の実施形態の機能的構成を表す図である。
【図3】本発明の実施形態の患者基本情報の登録処理について表すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態の検査結果値と診断病名の登録処理について表すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態の患者基本テーブルについて表す図である。
【図6】本発明の実施形態の病名テーブルについて表す図である。
【図7】本発明の実施形態の審査結果テーブルについて表す図である。
【図8】本発明の実施形態の関連付け処理について表すフローチャートである。
【図9】本発明の実施形態の関連付けについて表す図である。
【図10】本発明の実施形態の病名ナレッジテーブルAについて表す図である。
【図11】本発明の実施形態のテーブルの変換処理について表すフローチャートである。
【図12】本発明の実施形態の病名ナレッジテーブルBについて表す図である。
【図13】本発明の実施形態の病名ナレッジテーブルCについて表す図である。
【図14】本発明の実施形態の診断病名候補リストの表示処理について表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の本実施形態について図面を用いて詳細に説明する。本実施形態では利用者である医師が診断病名を登録する時に、診断に至った理由を登録する仕組みを設ける。診断に至った理由としては、検査結果値の登録を表す。そして、検査結果値から患者につける診断病名の候補病名をリストアップし、医師の診断を支援する機能を提供する。また、本実施形態において「病気」とは、症候群、疾病、疾患、といった名称で呼ばれるものも広く含む概念であるとする。
【0018】
図1は、本実施形態全体の構成を示す図である。図1を参照すると本実施形態は、電子カルテシステム100、入力装置200、表示装置300及び全検査結果入力システム400を含む。また、電子カルテシステム100は、データ処理装置110及び記憶装置120を含む。
【0019】
電子カルテシステム100は、本実施形態特有のシステムであり、電子カルテを作成するためのシステムである。
【0020】
また、データ処理装置110は、プログラム制御により動作するコンピュータにより実現される。なお、データ処理装置110は、本実施形態特有の装置として実現してもよいが、一般的な汎用のパーソナルコンピュータに本実施形態特有のプログラムを組み込むことにより実現してもよい。
【0021】
記憶装置120は、情報を記憶する記憶装置であり、データ処理装置110及び全検査結果入力システム400から情報の書き込み及び読み込みをされる。この記憶装置は、例えばHDD(Hard disk drive)やFlash SSD(Solid State Drive)により実現される。なお、記憶装置120は、データ処理装置110に組み込まれていてもよいが、記憶装置120を外部記憶装置又はサーバにより実現し、バスやUSB規格に準拠したケーブル、インターネット等の手段を用いて接続するようにしてもよい。また、接続は有線接続であってもよいがその一部又は全部を無線による接続としてもよい。
【0022】
入力装置200は、利用者からの入力を受け付けるための装置であり、具体的には、キーボードやマウス等により実現される。
【0023】
表示装置300は、利用者に対して情報を提示するための装置であり、例えば液晶ディスプレイにより実現される。なお、入力装置200及び表示装置300をタッチパネルとして単一の装置により実現するようにしてもよい。
【0024】
全検査結果入力システム400は、患者に対する全ての検査の結果を入力するシステムである。入力される内容に関して特に制限はなく、任意の検査の結果を入力することが可能である。
【0025】
続いて、図2を参照して、電子カルテシステム100により実現される機能ブロックについて示す。なお、本実施形態の説明において、データベース(Data Base)を、適宜「DB」と表記する。
【0026】
電子カルテシステム100は、電子カルテ作成部101、患者基本情報DB102、病名DB103、検査結果値DB104、情報合成部105、病名ナレッジDB106、変換蓄積部107及び全検査結果DB108を含む。また、電子カルテシステム100は、全検査結果入力システム400から全検査結果情報401を受け付ける。
【0027】
電子カルテ作成部101にて、患者基本情報DB102、病名DB103、検査結果値DB104、全検査結果DB108、病名ナレッジDB106に情報の登録、情報の取得を行なう。全検査結果DB108に関しては、上述したように全検査結果入力システム400から全検査結果情報401を受けて、情報を蓄積することとなる。なお、蓄積する情報の具体的内容については後述する。
【0028】
また、情報合成部105は、患者基本情報DB102、病名DB103及び検査結果値DB104に登録されている情報に基づいて病名ナレッジテーブルAを作成し、作成した病名ナレッジテーブルAを病名ナレッジDB106に登録する。なお、各病名ナレッジテーブルの具体的内容については後述する。
【0029】
変換蓄積部107は、病名ナレッジDB106を参照し、病名ナレッジテーブルAから病名ナレッジテーブルB及び病名ナレッジテーブルCへと変換する。また、変換蓄積部107は、変換後の病名ナレッジテーブルB及び病名ナレッジテーブルCを病名ナレッジDB106に登録する。
【0030】
なお、電子カルテシステム100の各部は、プログラムにより実現される。具体的にはデータ処理装置110が有する演算処理装置が、各プログラムを読み込んで演算処理を行い、データ処理装置110が有するハードウェア資源と協働することにより各部が実現される。
【0031】
続いて、図2のブロック図、図3、4及び12のフローチャート、並びに、図5〜図11に示す情報例を参照して本実施形態の動作を説明する。
【0032】
図2に示す電子カルテシステム100を利用して診療情報の蓄積、閲覧を行なう。
【0033】
患者基本情報の登録処理について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0034】
まず電子カルテ作成部101は、電子カルテシステム100へのログインを受け付ける(ステップS11)。ログインに際しては情報漏洩防止の観点からパスワードの入力を求めたり、生体認証等により利用者を識別してからログインをさせるようにしてもよい。
【0035】
続いて電子カルテ作成部101は、システムにログイン後、診察予定の患者カルテを展開する(ステップS12)。なお、患者カルテは予め作成しておいてもよいが、患者カルテのひな型を展開し、このひな型に患者の名前等を入力することにより患者カルテとして扱うようにしてもよい。
【0036】
患者カルテを展開後に患者の基本情報の登録を行なう(ステップS13)。登録した情報は、図2に示す患者基本情報DB102に蓄積される。今回のシステムで利用する患者の基本情報としては、年齢、性別、身長、体重情報が対象となる。
【0037】
次に、検査結果値と診断病名の登録処理について、図4のフローチャートを参照して説明する。電子カルテシステムにログインする(ステップS21)。システムにログイン後、診察予定の患者カルテを展開する(ステップS22)。また、患者カルテを展開後に検査結果参照画面を展開する(ステップS23)。検査結果参照画面では、診察予定の患者に対して行われた各種の検査の結果が全て表示される。検査結果参照画面は、全検査結果DB108に登録されている各種の検査の結果情報に基づいて作成される。
【0038】
続いて電子カルテ作成部101は利用者から検査結果値の選択及び診断病名を受け付け、診断病名及び診断病名の登録処理を行なう(ステップS24、ステップS25)。なお、この際に選択された検査結果値は、診断病名を登録するに至る理由ないし根拠となった検査結果値である。すなわち、A、B、Cという三種類の検査が行われ、利用者である医者がそれぞれの検査結果を参照した場合に、Bという検査の結果値に基づいて病名を判断した場合は、Bという検査の結果値が選択されることとなる。なお、選択される検査結果値は、一つであってもよいが、複数であってもよい。
【0039】
登録した情報は、図2に示す病名DB103、検査結果値DB104に蓄積される。
【0040】
上述の動作により、各DBに登録される内容の詳細を図5〜図7に示す。図5に示すのは患者基本情報DB102、図6に示すのは病名DB103、図7に示すのは検査結果値DB104に登録された情報である。
【0041】
なお、各DBに登録される情報について上述したが、上述した内容はあくまで一例である。上述した情報以外にも、他の情報を付加するようにしてもよいし、一部の情報を他の情報に代替させてもよい。
【0042】
続いて、情報合成部105の動作について、図8のフローチャートを参照して説明する。
【0043】
まず、情報合成部105は、患者基本情報DB102、病名DB103及び検査結果DB104を参照し、登録されている情報をテーブルとして取得する(ステップS31)。
【0044】
続いて、情報合成部105は、取得した各テーブルに含まれている各情報の一部又は全部を関連付けることにより病名ナレッジテーブルAを作成する(ステップS32)。関連付けは、図9に関連図として示すとおり患者番号と関連コードをキー情報として関連付けを行なう。関連付けが行なわれた情報として、図10に示す病名ナレッジテーブルAの構成となる。
【0045】
そして、作成した病名ナレッジテーブルAを病名ナレッジDB106に登録する(ステップS33)。
【0046】
続いて、変換蓄積部107の動作について図11のフローチャートを参照して説明する。
【0047】
変換蓄積部107は、病名ナレッジテーブルAに蓄積された情報を定期的に図10に示す病名ナレッジテーブルBに変換して、蓄積する。具体的には、システムの起動又は前回の変換から所定の時間が経過したか否かを判断し、所定の時間が経過していれば(ステップS41においてYes)、病名ナレッジテーブルBに変換して、蓄積する(ステップS42)。
【0048】
変換する情報は、病名ナレッジテーブルAの身長情報及び体重情報を病名ナレッジテーブルBのBMI情報へ、病名ナレッジテーブルAの年齢情報を病名ナレッジテーブルBの年齢情報とする。具体的には、図12に示す病名ナレッジテーブルBの構成となる。
【0049】
変換蓄積部107は、上述のステップS41及びステップS42の動作と並行して、病名ナレッジテーブルBに蓄積された情報を、定期的に図13に示す病名ナレッジテーブルCに処理を追加して蓄積する。病名ナレッジテーブルBで同じ条件の重複する検査結果値を平均化する処理を行なう。平均化された検査結果値が図13に示す病名ナレッジテーブルCに蓄積する。具体的には、システムの起動又は前回の平均化から所定の時間が経過したか否かを判断し、所定の時間が経過していれば(ステップS43においてYes)、病名ナレッジテーブルBの平均化を行い、病名ナレッジテーブルCに蓄積する(ステップS44)。なお、ステップS41における所定時間と、ステップS43における所定時間とは同一の時間であってもよいが、異なる長さの時間であってもよい。また、病名ナレッジテーブルBを介することなく、病名ナレッジテーブルAに基づいて直接病名ナレッジテーブルCへと変換、平均化するようにしてもよい。
【0050】
診断病名候補リストの表示処理について、図14のフローチャートを参照して説明する。電子カルテシステムにログインする(ステップS51)。
【0051】
システムにログイン後、患者のカルテを展開する(ステップS52)。患者カルテを展開後に検査結果参照画面を起動する(ステップS53)。検査結果参照画面にて、時系列にて参照したい検査項目、又は、グラフ表示して参照したい検査項目の選択を受け付けて、時系列表示処理、グラフ表示処理を行なう(ステップS54)。時系列表示処理、グラフ表示処理と併せて、図2に示す病名ナレッジDB106の情報を診断病名候補リストとして電子カルテ作成部101を用いて表示する(ステップS55)。
【0052】
利用者は、病名ナレッジDB106の情報を参照し、診断病名の候補リストとして利用することが可能となる。
【0053】
なお、本実施形態では、利用頻度が増えることによって候補病名表示精度が高まっていくこととなる。
【0054】
本発明の効果は、診断病名の候補リストを提示することにより、経験の低い医師でも診断病名の登録が安易となることである。また、医師が診断に要する時間を短縮することが可能となるため診察に要する時間が短縮され、患者の待ち時間削減にも効果を発揮することとなる。
【0055】
次に、上述した実施形態の変形例について説明する。本変形例では図2に示す病名ナレッジDB106に蓄積された情報を抽出して電子データとし、外部に出力する。電子データとしては、どのような形式に準拠したデータとしてもよい。例えば、CSV(Comma Separated Values)、XML(Extensible Markup Language)、MDB(Microsoft Database)、DMP(Dump)ファイルなど等が挙げられる。
【0056】
変換後の電子データは、公的機関もしくは他の医療機関に情報を提供するために利用することが可能となる。
【0057】
公的機関に提供した場合、提供された情報をWWW(World Wide Web)システムを利用して、情報を開示することが考えられる。すなわち、病名ナレッジDB106を実質的に共用することが可能となる。この場合、利用者は、システムに検査結果値を入力する。入力された検査結果値を元に病名ナレッジDB106を検索し、結果として、診断病名の候補リストを表示することが可能となる。
【0058】
また、他の医療機関に提供した場合、医師の診断病名登録支援機能として複数の医療機関にて利用可能となる。また、病名ナレッジDB106を分析することにより、病名に対する診療報酬の基準を設定することにも利用可能となる。
【0059】
また、病気を特定するために医師は、複数検査を行なうが、一般的な技術では過去の症例を検索できたとしても、どの検査結果から判断して登録した病名かを特定することができなかったが、本実施形態では、特定することが可能となる。
【0060】
更に、本実施形態では医師の作成した所見データではなく、病気の判断に至った検査結果を利用して関連性の精度を高めていくことが可能となる。
【0061】
また、一般的な技術では、病名だけをキー情報として検索処理をかけており、膨大な検査結果情報を蓄積している病院では、候補病名の表示レスポンスに問題が発生し、実利用には向いていないと考えられた。しかし、本実施形態では、一次情報を元に検索を行なうのではなく、加工した情報(二次情報)を元に検索を行なうこととしているため、検索時のレコード数が少なくなり表示レスポンスを良好とすることが可能となる。
【0062】
また、上記本実施形態では、プログラムが、記憶装置に予め記憶されているものとして説明した。しかし、電子カルテ装置を、装置の全部又は一部として動作させ、あるいは、上述の処理を実行させるためのプログラムを、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read-Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、MO(Magneto Optical Disk(Disc))BD(Blu-ray Disc)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、これを別のコンピュータにインストールし、上述の手段として動作させ、あるいは、上述の工程を実行させてもよい。
【0063】
さらに、インターネット上のサーバ装置が有するディスク装置等にプログラムを格納しておき、例えば、搬送波にプログラムを重畳させて、コンピュータにダウンロード等してプログラムを実行してもよい。
【0064】
なお、本発明の本実施形態である電子カルテシステムは、ハードウェアにより実現することもできるが、コンピュータをその電子カルテシステムとして機能させるためのプログラムをコンピュータがコンピュータ読み取り可能な記録媒体から読み込んで実行することによっても実現することができる。
【0065】
また、本発明の本実施形態による診断病名登録支援方法は、ハードウェアにより実現することもできるが、コンピュータにその方法を実行させるためのプログラムをコンピュータがコンピュータ読み取り可能な記録媒体から読み込んで実行することによっても実現することができる。
【0066】
また、上述した本実施形態は、本発明の好適な本実施形態ではあるが、上記本実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【0067】
上記の本実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0068】
(付記1) 診断病名の登録を支援する電子カルテ装置において、
診断対象とする第1の患者に対して行われた検査の結果を記憶する全検査結果データベースと、
前記全検査結果データベースに記憶されている情報を参照した利用者により前記第1の患者が或る病気だと診断された場合に、当該或る病気の病名と、当該或る病気だと診断する根拠となった検査項目と、当該検査項目の検査結果と、を受け付けて、前記受け付けた各情報を関連付けて、当該関連付けられた各情報を含むテーブルである病名ナレッジテーブルを作成する関連付け手段と、
前記作成された病名ナレッジテーブルを記憶する病名ナレッジデータベースと、
を備え、
前記第1の患者とは異なる患者である第2の患者を診断対象とする際に、前記第2の患者に対して行われた検査の結果と共に、前記病名ナレッジテーブルをも利用者に提示することを特徴とする電子カルテ装置。
【0069】
(付記2) 付記1に記載の電子カルテ装置において、
前記関連付け手段により作成された病名ナレッジテーブルを第1の病名ナレッジテーブルとした場合、当該第1の病名ナレッジテーブルには前記第1の患者の体重及び身長、性別、年齢、の何れか又はその複数の情報が含まれており、
前記第1の病名ナレッジテーブルの前記体重及び身長、性別、年齢、の何れか又はその複数毎に基づいた分類を行い、当該分類結果を前記第1の病名ナレッジテーブルに追加することにより第2の病名ナレッジテーブルを作成し、当該第2の病名ナレッジテーブルを前記病名ナレッジデータベースに記憶させる変換蓄積手段を更に備えることを特徴とする電子カルテ装置。
【0070】
(付記3) 付記1に記載の電子カルテ装置において、
前記関連付け手段により作成された病名ナレッジテーブルを第1の病名ナレッジテーブルとした場合、当該第1の病名ナレッジテーブルには患者を識別するための情報が含まれており、
前記第1の病名ナレッジテーブルを変換することにより前記患者を識別するための情報を削除した第2の病名ナレッジテーブルを作成し、当該第2の病名ナレッジテーブルを前記病名ナレッジデータベースに記憶させる変換蓄積手段を更に備えることを特徴とする電子カルテ装置。
【0071】
(付記4) 付記1に記載の電子カルテ装置において、
前記第1の患者が複数存在していることから前記病名ナレッジテーブルも複数記憶しており、
前記複数の病名ナレッジテーブルの中から、同一の病名及び同一の検査項目が含まれている病名ナレッジテーブルを抽出し、当該抽出した病名ナレッジテーブルそれぞれに含まれている検査結果を平均化し、当該平均化した検査結果、前記同一の病名及び前記同一の検査項目を含むテーブルである新たな病名ナレッジテーブルを作成する変換蓄積手段を更に備え、
前記利用者に提示する病名ナレッジテーブルが、前記新たな病名ナレッジテーブルであることを特徴とする電子カルテ装置。
【0072】
(付記5) 付記4に記載の電子カルテ装置において、
前記病名ナレッジテーブルには前記第1の患者の体重及び身長、性別、年齢、の何れか又はその複数毎に基づいた分類の結果が含まれており、
前記変換蓄積手段は、前記抽出を行う際に同一の病名及び同一の検査項目が含まれているという条件に加えて前記分類結果が同一であることも条件として抽出を行うことを特徴とする電子カルテ装置。
【0073】
(付記6) 付記1乃至5の何れか1に記載の電子カルテ装置において、
前記病名ナレッジテーブルを電子ファイルへと変換し、当該変換後の電子ファイルを出力することを特徴とする電子カルテ装置。
【0074】
(付記7) 診断病名の登録を支援する診断病名登録支援システムにおいて、
患者に対して行われた検査の結果を電子カルテ装置に通知する全検査結果入力システムと、
前記電子カルテ装置と、を備え、
前記電子カルテ装置が付記1乃至6の何れか1に記載の電子カルテ装置であることを特徴とする診断病名登録支援システム。
【0075】
(付記8) 診断病名の登録を支援する電子カルテ装置に組み込まれる電子カルテプログラムにおいて、
診断対象とする第1の患者に対して行われた検査の結果を記憶する全検査結果データベースと、
前記全検査結果データベースに記憶されている情報を参照した利用者により前記第1の患者が或る病気だと診断された場合に、当該或る病気の病名と、当該或る病気だと診断する根拠となった検査項目と、当該検査項目の検査結果と、を受け付けて、前記受け付けた各情報を関連付けて、当該関連付けられた各情報を含むテーブルである病名ナレッジテーブルを作成する関連付け手段と、
前記作成された病名ナレッジテーブルを記憶する病名ナレッジデータベースと、
を備え、
前記第1の患者とは異なる患者である第2の患者を診断対象とする際に、前記第2の患者に対して行われた検査の結果と共に、前記病名ナレッジテーブルをも利用者に提示する電子カルテ装置としてコンピュータを機能させることを特徴とする電子カルテプログラム。
【0076】
(付記9) 全検査結果入力システムと、電子カルテ装置と、を備えるシステムが行う診断病名登録支援方法において、
前記全検査結果入力システムが、患者に対して行われた検査の結果を電子カルテ装置に通知するステップと、
前記電子カルテ装置が、診断対象とする第1の患者に対して行われた検査の結果を記憶する全検査結果データベースを用意するステップと、
前記電子カルテ装置が、前記全検査結果データベースに記憶されている情報を参照した利用者により前記第1の患者が或る病気だと診断された場合に、当該或る病気の病名と、当該或る病気だと診断する根拠となった検査項目と、当該検査項目の検査結果と、を受け付けて、前記受け付けた各情報を関連付けて、当該関連付けられた各情報を含むテーブルである病名ナレッジテーブルを作成する関連付けステップと、
前記電子カルテ装置が、前記作成された病名ナレッジテーブルを記憶する病名ナレッジデータベースを用意するステップと、
を備え、
前記第1の患者とは異なる患者である第2の患者を診断対象とする際に、前記第2の患者に対して行われた検査の結果と共に、前記病名ナレッジテーブルをも利用者に提示することを特徴とする診断病名登録支援方法。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、例えば、病院、診療所などの医療機関での診断病名の登録支援に好適である。
【符号の説明】
【0078】
100 電子カルテシステム
101 電子カルテ作成部
102 患者基本情報DB
103 病名DB
104 検査結果値DB
105 情報合成部
106 病名ナレッジDB
107 変換蓄積部
108 全検査結果
110 データ処理装置
120 記憶装置
200 入力装置
300 表示装置
400 全検査結果入力システム
401 全検査結果情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断病名の登録を支援する電子カルテ装置において、
診断対象とする第1の患者に対して行われた検査の結果を記憶する全検査結果データベースと、
前記全検査結果データベースに記憶されている情報を参照した利用者により前記第1の患者が或る病気だと診断された場合に、当該或る病気の病名と、当該或る病気だと診断する根拠となった検査項目と、当該検査項目の検査結果と、を受け付けて、前記受け付けた各情報を関連付けて、当該関連付けられた各情報を含むテーブルである病名ナレッジテーブルを作成する関連付け手段と、
前記作成された病名ナレッジテーブルを記憶する病名ナレッジデータベースと、
を備え、
前記第1の患者とは異なる患者である第2の患者を診断対象とする際に、前記第2の患者に対して行われた検査の結果と共に、前記病名ナレッジテーブルをも利用者に提示することを特徴とする電子カルテ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子カルテ装置において、
前記関連付け手段により作成された病名ナレッジテーブルを第1の病名ナレッジテーブルとした場合、当該第1の病名ナレッジテーブルには前記第1の患者の体重及び身長、性別、年齢、の何れか又はその複数の情報が含まれており、
前記第1の病名ナレッジテーブルの前記体重及び身長、性別、年齢、の何れか又はその複数毎に基づいた分類を行い、当該分類結果を前記第1の病名ナレッジテーブルに追加することにより第2の病名ナレッジテーブルを作成し、当該第2の病名ナレッジテーブルを前記病名ナレッジデータベースに記憶させる変換蓄積手段を更に備えることを特徴とする電子カルテ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電子カルテ装置において、
前記関連付け手段により作成された病名ナレッジテーブルを第1の病名ナレッジテーブルとした場合、当該第1の病名ナレッジテーブルには患者を識別するための情報が含まれており、
前記第1の病名ナレッジテーブルを変換することにより前記患者を識別するための情報を削除した第2の病名ナレッジテーブルを作成し、当該第2の病名ナレッジテーブルを前記病名ナレッジデータベースに記憶させる変換蓄積手段を更に備えることを特徴とする電子カルテ装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電子カルテ装置において、
前記第1の患者が複数存在していることから前記病名ナレッジテーブルも複数記憶しており、
前記複数の病名ナレッジテーブルの中から、同一の病名及び同一の検査項目が含まれている病名ナレッジテーブルを抽出し、当該抽出した病名ナレッジテーブルそれぞれに含まれている検査結果を平均化し、当該平均化した検査結果、前記同一の病名及び前記同一の検査項目を含むテーブルである新たな病名ナレッジテーブルを作成する変換蓄積手段を更に備え、
前記利用者に提示する病名ナレッジテーブルが、前記新たな病名ナレッジテーブルであることを特徴とする電子カルテ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電子カルテ装置において、
前記病名ナレッジテーブルには前記第1の患者の体重及び身長、性別、年齢、の何れか又はその複数毎に基づいた分類の結果が含まれており、
前記変換蓄積手段は、前記抽出を行う際に同一の病名及び同一の検査項目が含まれているという条件に加えて前記分類結果が同一であることも条件として抽出を行うことを特徴とする電子カルテ装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の電子カルテ装置において、
前記病名ナレッジテーブルを電子ファイルへと変換し、当該変換後の電子ファイルを出力することを特徴とする電子カルテ装置。
【請求項7】
診断病名の登録を支援する診断病名登録支援システムにおいて、
患者に対して行われた検査の結果を電子カルテ装置に通知する全検査結果入力システムと、
前記電子カルテ装置と、を備え、
前記電子カルテ装置が請求項1乃至6の何れか1項に記載の電子カルテ装置であることを特徴とする診断病名登録支援システム。
【請求項8】
診断病名の登録を支援する電子カルテ装置に組み込まれる電子カルテプログラムにおいて、
診断対象とする第1の患者に対して行われた検査の結果を記憶する全検査結果データベースと、
前記全検査結果データベースに記憶されている情報を参照した利用者により前記第1の患者が或る病気だと診断された場合に、当該或る病気の病名と、当該或る病気だと診断する根拠となった検査項目と、当該検査項目の検査結果と、を受け付けて、前記受け付けた各情報を関連付けて、当該関連付けられた各情報を含むテーブルである病名ナレッジテーブルを作成する関連付け手段と、
前記作成された病名ナレッジテーブルを記憶する病名ナレッジデータベースと、
を備え、
前記第1の患者とは異なる患者である第2の患者を診断対象とする際に、前記第2の患者に対して行われた検査の結果と共に、前記病名ナレッジテーブルをも利用者に提示する電子カルテ装置としてコンピュータを機能させることを特徴とする電子カルテプログラム。
【請求項9】
全検査結果入力システムと、電子カルテ装置と、を備えるシステムが行う診断病名登録支援方法において、
前記全検査結果入力システムが、患者に対して行われた検査の結果を電子カルテ装置に通知するステップと、
前記電子カルテ装置が、診断対象とする第1の患者に対して行われた検査の結果を記憶する全検査結果データベースを用意するステップと、
前記電子カルテ装置が、前記全検査結果データベースに記憶されている情報を参照した利用者により前記第1の患者が或る病気だと診断された場合に、当該或る病気の病名と、当該或る病気だと診断する根拠となった検査項目と、当該検査項目の検査結果と、を受け付けて、前記受け付けた各情報を関連付けて、当該関連付けられた各情報を含むテーブルである病名ナレッジテーブルを作成する関連付けステップと、
前記電子カルテ装置が、前記作成された病名ナレッジテーブルを記憶する病名ナレッジデータベースを用意するステップと、
を備え、
前記第1の患者とは異なる患者である第2の患者を診断対象とする際に、前記第2の患者に対して行われた検査の結果と共に、前記病名ナレッジテーブルをも利用者に提示することを特徴とする診断病名登録支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−155458(P2012−155458A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12982(P2011−12982)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(390001395)NECシステムテクノロジー株式会社 (438)
【Fターム(参考)】