説明

診断装置及びその製造方法

【課題】界面活性剤成分および安定剤成分を含む親水性界面活性剤組成物を提供すること。
【解決手段】界面活性剤は、界面活性剤溶液を表面の少なくとも一部の上に沈着させ、その後、界面活性剤溶液を乾燥させて乾燥被膜を形成させることにより表面上に被覆することが可能である。界面活性剤組成物は、基材に被着させた時、経時的に高温でまたはその両方で界面活性剤組成物の親水性の特性を保持する親水性表面を提供することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
各種の表面のための界面活性剤被膜は、流体輸送、防曇被膜、スプラッシュ防止被膜、湿潤および発泡制御などを含む多くの有用性を有する。界面活性剤は、下地の基材表面によって提供されない望ましい物理特性または化学特性を表面に提供することが可能である。
【0002】
例えば、診断試験装置などの特定の装置は、たとえ基材材料が他の望ましい品質を装置に提供するとしても、所望の性能レベルを装置に提供するのに十分な程度に水溶液などの流体の輸送を促進しない1種以上の材料から製造された基材により製作することが可能である。従って、装置の少なくとも一部の上の界面活性剤被覆は、流体輸送を促進し、従って装置の性能を改善する物理特性または化学特性を提供することが可能である。
【0003】
界面活性剤は、界面活性剤で被覆された基材の一部上にわたって流体輸送を促進する親水性表面を基材に提供することが可能である。こうした親水性表面は、適する界面活性剤の被覆によって提供することが可能である。適する界面活性剤には、アルコキシル化炭化水素アルコール、ポリアルキレングリコール炭化水素エーテルおよびエステル、シリコーンコポリオール、ポリエトキシル化フェノール、ポリエチレングリコールなどのポリアルコキシレートの脂肪酸エステル、ポリアルコキシル化パーフルオロアルキル含有界面活性剤およびアニオンパーフルオロアルキル含有界面活性剤などのフルオロケミカル界面活性剤、スルホネート、スルフェート、ホスホネートおよびホスフェートを含むアルキルアニオン界面活性剤、アラルキルアニオン界面活性剤およびアルカリールアニオン界面活性剤、ならびにベタイン、スルテインなどのアルキル両性界面活性剤、アラルキル両性界面活性剤およびアルカリール両性界面活性剤ならびに脂肪イミダゾリンおよびそれらの誘導体が挙げられるが、それらに限定されない。しかし、これらの界面活性剤の多くは、界面活性剤被膜によって提供された親水性の特性が貯蔵において経時的にあるいは別途に高温で消滅しうるので、特に高温で長い貯蔵期間を経験する装置において、および/または試薬、接着剤、染料、薬物および賦形剤または他の汚染物が存在しうる製品構造において用いるために適しない場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、被膜が既知の界面活性剤被膜より大幅に流体輸送を促進するとともに親水性の特性を保持することができるように基材に親水性表面を提供できる被膜を形成するために有用な界面活性剤組成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は基材に親水性表面を提供する被膜を形成するために有用な界面活性剤組成物を提供する。界面活性剤被膜は、高温での貯蔵において経時的に、および/または汚染物が存在しうる製品構造において、親水性の特性を保持しつつ流体輸送を促進することが可能である。本明細書で用いられる「汚染物」は、揮発性でありうるか、または移行(非常に低いレベル、例えばppmレベルでさえ)しうるとともに被覆された界面活性剤組成物上に沈着しうるか、または被覆された界面活性剤組成物と相互作用しうる1種以上の化合物を含む装置の構成成分である。例えば、感圧接着剤または構造接着剤は、モノマー、触媒、可塑剤、粘着性付与剤および経時的に移行するとともに界面活性剤組成物上に沈着するか、または界面活性剤組成物と相互作用するとともに親水性の特性を落とすことができる他の成分の著しいレベルをしばしば含むことが知られている。他の潜在的な汚染物には、診断装置(例えば、グルコースレベルを監視するための細片、泌尿器科細片および妊娠試験装置など)などの医療装置の一部であってもよい試薬、インジケータまたは他のシステムの一部であってもよい染料、ドラッグデリバリーデバイスの一部であってもよい薬物および/または賦形剤および類似の材料が挙げられる。
【0006】
本発明は安定剤成分と組み合わされた界面活性剤成分を含む界面活性剤組成物を提供する。界面活性剤成分は一般に45℃より低い温度、好ましくは25℃より低い温度で原液形態を取った液体であり、界面活性剤成分には、アルコキシル化アルキルジオール、アルコキシル化アルキルアセチレンジオール、アルキルアルコールまたはアラルキルアルコールのポリアルコキシル化グリセリンモノエステル、ポリアルコキシル化アルキルまたはアラルキルアルコール、シリコーンコポリオール、ポリエトキシル化フェノール、ポリアルコキシル化ジオールまたはトリオールの脂肪酸エステル、ポリアルコキシル化パーフルオロアルキル含有界面活性剤またはアニオンパーフルオロアルキル含有界面活性剤などのフルオロケミカル界面活性剤、スルホネート、スルフェート、ホスホネートまたはホスフェートなどのアルキルアニオン界面活性剤、アラルキルアニオン界面活性剤またはアルカリールアニオン界面活性剤、ベタイン、スルテインなどのアルキル両性界面活性剤、アラルキル両性界面活性剤またはアルカリール両性界面活性剤、または脂肪イミダゾリンおよびそれらの誘導体、あるいは前述したものの2種以上のいずれかの組み合わせが挙げられる。本明細書で用いられる「アルコキシル化」という用語は、界面活性剤または安定剤がアルキレンオキシドと反応し、アルキレンオキシドの1個以上の単位が界面活性剤または安定剤に共有結合されるようになることを意味する。
【0007】
安定剤成分は、界面活性剤組成物が親水性表面を提供するのを妨げない、全く溶媒なしで約25℃より高い融点を有する炭素原子数約8〜約24のアルキル、アラルキルまたはアルカリールスルホネート、スルフェート、ホスホネートまたはホスフェート界面活性剤を含む。好ましい安定剤は、炭素原子数10〜18のアルキル鎖、アラルキル鎖またはアルカリール鎖を有する。最も好ましい安定剤は、炭素原子数10〜14、例えば炭素原子数12のアルキル鎖、アラルキル鎖またはアルカリール鎖を有する。場合によって、安定剤成分は溶媒の全くない時に約45℃より高い融点を有してもよい。アルキル基は直鎖、分岐、環式またはそれらのいずれかの組み合わせであってもよい。
【0008】
一面において、本発明は、界面活性剤成分および安定剤成分を溶媒に少なくとも部分的に溶解させているか、またはビヒクルに分散させている界面活性剤溶液または界面活性剤エマルジョンに関する。一実施形態において、界面活性剤溶液は、イソプロピルアルコールと水の混合物を含む溶媒中で分岐鎖ドデシルベンゼンスルホネートのナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩約0.05〜約0.5重量%およびエトキシル化アセチレンジオール約0.10〜約0.6重量%を含む。溶媒は水性溶媒または水性アルコール溶媒などの有機溶媒であってもよい。従って、一旦乾燥させると揮発性溶媒を含有しない被膜は、0.2対12wt/wtの比で界面活性剤および安定剤を含む。
【0009】
もう一つの面において、本発明は、基材表面に界面活性剤溶液を被着させ、その後、基材を乾燥させ、よって界面活性剤成分および安定剤成分を含む乾燥被膜を提供することから生じる界面活性剤被膜に関する。ここで、接触角は、25℃で13週間エージング後に25度を超えない。
【0010】
もう一つの面において、本発明は、約0.2%〜0.6%の界面活性剤成分、約0.05%〜0.5%の安定剤成分および溶媒を合して界面活性剤組成物を形成する工程、前記界面活性剤組成物を基材に被着させる工程および前記界面活性剤組成物を基材上で乾燥させる工程を含む基材上で親水性表面を形成する方法を提供する。一旦乾燥させると、基材上で乾燥させ被覆された時の溶媒を含有しない界面活性剤組成物は、0.2:1〜12:1wt/wtの比で界面活性剤成分および安定剤成分を含む。
【0011】
もう一つの面において、界面活性剤組成物は、約0.2%〜0.6%の界面活性剤成分、0.05%〜0.5%の安定剤成分および溶媒を含む親水性被膜で少なくとも片側を少なくとも部分的に被覆させた基材を有する医療診断試験装置において被膜として用いることが可能であり、ここで、基材上で乾燥させ基材上に被覆された時に溶媒を含有しない前記界面活性剤は、0.2:1〜12:1wt/wtの比で界面活性剤および安定剤を含み、「広がり滴試験(Spreading Drop Test)」によって示された前記親水性の特性が、23℃および相対湿度50%で3週間エージング後に元の広がり滴直径の少なくとも85%を保持する。被膜は、人の血液、人の血液成分、尿および粘液などの体液に接触させるか、または体液を輸送するために用いることが可能である。
【0012】
本発明の種々の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明を参照すれば容易に明らかになる筈である。本明細書全体を通して幾つかの場所で、例示リストを通して指針が提供される。各場合、列挙したリストは代表的な群としてのみ機能し、網羅的なリストとして解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
多くの界面活性剤は、界面活性剤を含む被膜を基材に被着させる時、比較的親水性の表面を基材に提供することができる。被覆された基材の親水性の特性は、例えば、被覆された基材の湿潤性、被覆された基材に被着させた水の接触角または被覆された基材上の既知の距離を液体が横切るために要する時間、例えば吸上速度または充填時間を測定することにより評価することが可能である。しかし、界面活性剤で被覆された表面は、貯蔵において経時的にまたは高温で、および/または減少した湿潤性、増加した接触角、一定距離を横切るより長い時間およびリザーバを充填するためのより長い時間などによって特徴付けられるように汚染物が存在しうる製品構造において、親水特性の少なくとも一部を失う可能性があり、よって基材の性能に影響を及ぼす。基材の親水性の特性が装置の性能のために重要である場合、装置の性能を譲歩してもよい。場合によって、親水性の特性の損失は24時間という短時間で明白であることが可能である。
【0014】
本発明は、高温、例えば約45℃より高い温度でさえ長い期間にわたって実質的に安定なままであることが可能である親水性の特性を基材に与える基材上の被膜として用いるために適する界面活性剤組成物を提供する。更に、本発明の界面活性剤組成物は、特定の親水性界面活性剤被膜のために有利な追加の特徴を提供する場合がある。
【0015】
本発明の界面活性剤組成物は、ミクロ流体装置の一部に親水性被膜を提供することに基づき、随時以下で記載する。この装置は、例えば、装置の一部分から装置のもう一つの部分に液体サンプルの少なくとも一部を輸送するために設定されているいかなる装置であってもよい。こうした装置は、実質的に平坦であってもよい1つ以上の基材を含んでもよいか、あるいは別案として溝(channel)などの構造を含んでもよい。こうした溝は微小構造を含んでもよい。本明細書で用いられる「微小構造(microstructure)」とは、一般に1μm〜1000μm、典型的には10〜500μmの最小断面寸法を有する構造を意味する。例えば、溝は深さ100μmであってもよいが、幅10mm×長さ20mmであることが可能であり、それでも「微小構造」である。本明細書で用いられる「ミクロ流体(microfluidic)」装置は、その少なくとも1つが流体を輸送することを意図している微小構造を導入した装置である。代表的な装置は、例えば、診断装置または液体サンプルの1種以上の成分を検出するか、または同定するために設計された検出装置であってもよい。しかし、本発明の特徴は、親水性被膜を含む1つ以上の基材または表面を含むいかなる物品または装置にも等しく適用できる。
【0016】
一実施形態において、本発明は、溶液中に界面活性剤組成物を含む。一般に、界面活性剤組成物は界面活性剤成分および安定剤成分を含む。安定剤成分はそれ自体で界面活性剤を含んでもよい。
【0017】
界面活性剤組成物の界面活性剤成分は、組成物に、そして従って基材の少なくとも一部に被着させた界面活性剤組成物の乾燥から生じうる被膜にも親水性の特性を提供する1種以上の界面活性剤を含んでもよい。本明細書で用いられる「界面活性剤」という用語は、水に添加した時に表面張力を下げるいかなる両親媒性分子も意味する。好ましい界面活性剤は、約2000ダルトン未満、好ましくは約1000ダルトン未満、最も好ましくは約500ダルトン未満の分子量を有する。原液形態を取った界面活性剤成分は、45℃より低い温度で、好ましくは25℃より低い温度で液体である。界面活性剤組成物中で用いるために適する界面活性剤には、アルコキシル化炭化水素アルコールなどの非イオン界面活性剤、ポリアルキレングリコール炭化水素エーテルおよびエステル、シリコーンコポリオール、ポリエトキシル化フェノール、ポリエチレングリコールなどのポリアルコキシルレートの脂肪酸エステル、2001年11月6日発行の米国特許第6,313,182号明細書に記載されたものなどのアルコキシル化アルキルアセチレンジオールおよびポリアルコキシル化パーフルオロアルキル含有界面活性剤などのフルオロケミカル界面活性剤が挙げられるが、それらに限定されない。適する界面活性剤には、アニオンパーフルオロアルキル含有界面活性剤、スルホネート、スルフェート、ホスホネートおよびホスフェートを含むアルキルアニオン界面活性剤、アラルキルアニオン界面活性剤およびアルカリールアニオン界面活性剤などのアニオン界面活性剤ならびにベタイン、スルテインなどのアルキル両性界面活性剤、アラルキル両性界面活性剤およびアルカリール両性界面活性剤、ならびに脂肪イミダゾリンおよびそれらの誘導体なども挙げられるが、それらに限定されない。本発明において適する他の界面活性剤には、2000年3月21日発行の米国特許第6,040,053号明細書、1999年12月9日発行の米国特許第5,997,621号明細書、1999年、2月23日発行の米国特許第5,873,931号明細書、1998年5月19日発行の米国特許第5,753,373号明細書または1998年3月3日発行の米国特許第5,723,175号明細書に記載された防曇界面活性剤が挙げられる。
【0018】
界面活性剤組成物の安定剤成分は、界面活性剤組成物で被覆された基材に界面活性剤成分が親水性の特性を付与する期間を延ばす1種以上の化合物を含む。安定剤成分は界面活性剤成分の親水性の特性を実質的に無効にしないように選択してもよく、実際に、界面活性剤組成物の親水性の特性に寄与するように選択してもよい。
【0019】
殆どの実施形態において、界面活性剤組成物の安定剤成分は約23℃より高い融点を有してもよい。特定の実施形態において、安定剤成分は、35℃より高い、好ましくは少なくとも45℃の融点を有してもよい。幾つかの実施形態において、安定剤成分は界面活性剤組成物の親水性の特性に寄与することが可能である。
【0020】
幾つかの実施形態において、安定剤成分はアニオン界面活性剤を含む。多くの実施形態において、安定剤成分は、ドデシルベンゼンスルホネートのアルカリ金属塩、例えば、ドデシルベンゼンスルホネートのナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩などの8〜24個の炭素原子を有するアルキル、アルキル、アルカリールまたはアラルキルスルフェートまたはスルホネートのアルカリ金属塩を含む。好ましい一実施形態はドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含む。アルキル、アラルキルまたはアルカリールスルホネート、スルフェート、ホスホネートまたはホスフェート界面活性剤のアルコキシル化誘導体も安定剤成分として有用である。好ましい安定剤成分は、アルキル基、アルカリール基またはアラルキル基のモル当たり20モル未満、より好ましくは10モル未満のエトキシル化を有する。例には、ラウレス−2−硫酸ナトリウム、ラウリル燐酸ナトリウム、ラウレス−4−燐酸ナトリウム、ジラウレス−4−ホスフェート、オレイル燐酸ナトリウムおよびラウレス−4−スルホコハク酸ナトリウムなどが挙げられる。安定剤成分として用いるために適する場合がある追加の化合物は1999年2月23日発行の米国特許第5,873,931号明細書に記載されている。
【0021】
界面活性剤組成物は、溶液またはエマルジョン中にあってもよいか、または基材上の乾燥被膜として提供してもよい。溶液またはエマルジョン中にある時、界面活性剤組成物は適するいずれかの溶媒に溶解させることが可能である。適する溶媒には、水、およびケトン、エーテルおよびアルコールに限定されないが、それらなどの有機溶媒が挙げられる。
適するアルコールには、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールおよびブタノールが挙げられる。特定の実施形態において、適する溶媒は、イソプロピルアルコールと水の70/30混合物などの水性アルコール溶媒を含んでもよい。界面活性剤組成物は、適するビヒクル中の分散液またはエマルジョンとしても提供してよい。特定の用途に関して、ビヒクルは、より均一な被膜を提供するために水を含有してもよい。
【0022】
本発明の一実施形態において、界面活性剤組成物は、約0.05〜約0.5%の安定剤成分および約0.1〜約0.6%の界面活性剤成分の溶液を含む。従って、基材に被着させ乾燥させた時、組成物は、0.2:1〜12:1wt/wtの界面活性剤対安定剤の比で界面活性剤および安定剤を含む。一旦乾燥させると、界面活性剤成分の濃度は乾燥させた被膜において無溶媒基準で25〜95重量%であり、安定剤成分は乾燥させた被膜において無溶媒基準で5〜75重量%である。多くの実施形態において、界面活性剤成分の濃度は乾燥させた被膜において無溶媒基準で40〜80重量%であり、安定剤成分は乾燥させた被膜において無溶媒基準で20〜60重量%である。本明細書で用いられる「無溶媒基準(solvent−free basis)」は、空気または外部条件にさらされ次第被膜によって吸収される水または他の揮発分を除き、いかなる溶媒もない乾燥させた被膜を意味する。
【0023】
上記したように、特定の実施形態は、安定剤成分としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含んでもよい。また、上記したように、特定の実施形態は界面活性剤成分中に様々な界面活性剤の1種以上を含んでもよい。45℃より低い温度、好ましくは25℃より低い温度で原液形態を取った特定の実施形態における界面活性剤成分は、液体であり、界面活性剤組成物中の1種以上のエトキシル化ジオール、ポリエトキシル化フェノールまたはアラルキルスルホネートを含む。一実施形態において、界面活性剤成分は、エトキシル化アセチレンジオールを含む。エトキシル化ジオールは、アセチレンジオールのモル当たり1モル以上のエチレンオキシド、好ましくはアセチレンジオールのモル当たり4モル以上のエチレンオキシドを含む。
【0024】
もう一つの面において、本発明は、界面活性剤組成物で被覆された表面または基材に親水性の特性を付与する乾燥界面活性剤被膜を形成させるために乾燥させる界面活性剤組成物を提供する。界面活性剤組成物は、本発明の界面活性剤組成物の特徴が必要でありうるいかなる表面上にも沈着させてもよい。例えば、界面活性剤組成物は、液体サンプルの動きを調節するために設計された表面の少なくとも一部の上に沈着させてもよい。こうした装置の例には、液体サンプルに関して診断試験または検出試験を実施するために有用な装置が挙げられるが、それらに限定されない。こうした装置が装置上の1つの位置からもう1つの位置への液体サンプルの少なくとも一部の輸送を促進するために親水性である表面を有することが望ましい場合がある。しかし、サンプルが移動しなければならない装置の表面は、普通は、装置の適切な性能を提供するのに十分に親水性でない場合がある。こうした場合、本発明の界面活性剤組成物は流体輸送表面の少なくとも一部上に沈着させて、装置の適切な性能を提供するのに十分な液体サンプルの流体輸送を促進してもよい。本発明の界面活性剤組成物は、連続パターン、不連続パターンまたは繰り返しパターンなどの特定の方式で流体流れを制御するために種々のパターンで沈着させることもできよう。
【0025】
上述した溶液形態を取った界面活性剤組成物は、界面活性剤被膜が必要である表面の少なくとも一部の上に沈着させてもよい。界面活性剤溶液は当業界で公知の適するいかなる方法によっても沈着させてもよい。こうした方法には、スプレー塗布、ロール塗布、グラビア塗布、線棒塗布、浸漬または浸漬塗布、押出(ダイ)塗布、エアナイフ塗布、スライド塗布、ブレード塗布、静電塗布、インクジェット印刷または流れ塗布が挙げられるが、それらに限定されない。
【0026】
界面活性剤組成物は、基材に導入して組成物の一部を表面に塗布することを可能にしてもよい。これは、界面活性剤成分および安定剤成分を未硬化モノマーまたは部分硬化モノマーに添加し、基材を最終的に硬化させるアクリル基材のようなキャスト・硬化システムで行うことが可能である。あるいは、界面活性剤組成物は押出成形プロセスまたは射出成形プロセス中に熱可塑性樹脂に添加することが可能である。
【0027】
界面活性剤溶液は、乾燥させてもよく、よって適するいずれかの手段によって実質的に乾いた親水性界面活性剤被膜を形成する。本明細書で用いられる「乾燥させた」または「乾燥させる」という用語は、界面活性剤組成物を溶解または乳化させる水を含んでもよいか、または水を含まなくてもよい溶媒を除去するプロセスを意味する。例えば、界面活性剤溶液は、被覆された基材を再循環高温空気炉、赤外線炉または高周波炉内で加熱することにより乾燥させることが可能である。あるいは、溶液は、単純蒸発または強制空気蒸発によって熱を用いずに乾燥させることが可能である。加熱の温度および継続期間は、基材の物理的特性および化学的特性によって部分的に決定することが可能である、すなわち、被覆プロセスが完了した後に基材のために望まれうる特定の物理的特性または化学的特性を変えずに、より高い温度に耐えることが可能である基材材料もあり、被膜を均一に乾燥させるために、より高い熱分布か、またはより低い熱分布を必要としうるエンボス構造または他の反復構造を有してもよい基材もある。
【0028】
基材は、被覆されることが可能であるとともに意図する用途の物理的要件および構造的要件によって少なくとも部分的に実際的に影響されうるあらゆる材料から製作してもよい。適する基材には、プレート、メッシュ、フィルム、不織物、チューブ、キャピラリー、平坦フィルムまたは構造化フィルムおよびフィルム/フィルム積層体またはフィルム/不織積層体を含む種々の構造および組成のガラス基材、金属基材および高分子基材が挙げられるが、それらに限定されない。殆どの実施形態において、基材は無孔質である。最も好ましい基材は、溝、角錐およびポケットなどの三次元構造を含んでよいか、含まなくてもよいフィルムである。本発明の界面活性剤組成物によって被覆することができる基材の適する高分子組成および構成の例は、例えば、1996年5月7日発行の米国特許第5,514,120号明細書、1998年3月17日発行の米国特許第5,728,446号明細書、2001年9月18日発行の米国特許第6,290,685号明細書、2002年4月23日発行の米国特許第6,375,871号明細書、2002年7月16日発行の米国特許第6,420,622号明細書、2000年7月7日出願の米国特許出願第09/612,418号明細書に記載されている。それらの中で報告された基材構成は、基材を製作するために用いられる特定の材料に関係なく適する場合がある。高分子基材は、押出、射出成形、ブロー成形、圧縮成形およびキャスティングなどを含む適するいずれかの手段によって形成してもよい。
【0029】
基材は、基材の少なくとも一部の上に界面活性剤組成物を沈着させる際に使用に適すると考えられる溶媒をある程度決定してもよい。特定のプラスチック基材は、不適合な溶媒に接触する場合、亀裂が入るか、弱められるかまたは溶解されうる。例えば、ポリカーボネート基材は、アセトンなどのケトン溶媒への暴露によって時には酷く侵されうる。しかし、こうした基材は、悪影響なしにアルコール系溶媒に溶解させた界面活性剤組成物で被覆することが可能である。
【0030】
乾燥界面活性剤被膜は特定の目的のために望ましいいかなる厚さであってもよい。例えば、乾燥界面活性剤被膜は厚さが約10nm〜約2000nmであることが可能である。
幾つかの実施形態において、乾燥被膜は厚さが約60nm〜約300nmであることが可能である。被膜の厚さは基材の性質に基づいて選択してもよく、被膜均一性に関するあらゆる要件にある程度応じて異なってもよい。ミクロ微細機構を含む基材に関して、約10〜約1000nmの範囲のより薄い被膜は、こうしたミクロ微細機構中の充填の可能性および程度を減らすために適する場合がある。特定の実施形態において、約50nm〜約500nmの範囲の被膜はミクロ微細構造を有する基材と関連して用いてもよい。
【0031】
塗料(コーティング)溶液は、一般に約5重量%未満の安定剤成分および約5重量%未満の界面活性剤成分を含む。一方または両方の成分の濃度が高すぎる場合、均一な被膜を得ることは難しくなる場合がある。均一な被膜を提供するために、安定剤成分は、全界面活性剤組成物の約2重量%未満であることが可能である。本発明の特定の界面活性剤組成物は、1重量%未満、例えば約0.05〜約0.5%の安定剤成分を含む。
【0032】
界面活性剤成分は、均一被膜を提供するために比較的低い濃度で保ってもよい。界面活性剤の濃度は、全界面活性剤組成物の約2重量%未満であってもよい。特定の界面活性剤組成物は、約1重量%未満、例えば約0.1〜約0.6%の界面活性剤成分を含んでもよい。
【0033】
上述したように、本発明の界面活性剤組成物は、界面活性剤組成物を被着させた表面または基材に親水性被膜を提供する。こうした親水性の特性は、特定の用途のために望ましい場合がある特定の機能的能力を被覆された表面に提供することが可能である。例えば、界面活性剤被膜を診断装置の流体輸送制御フィルムの表面に被着させる場合、界面活性剤被膜は、流体制御フィルムが液体サンプルを受理できる速度または程度を改善することが可能である。界面活性剤被膜は、流体制御フィルムの流体受理部分から流体制御フィルムの診断部分または分析部分への液体サンプルの流れの速度、均一性および一定性を改善することも可能である。本発明の界面活性剤組成物は、親水性の特性を保持するとともに同時に「クレイトン(Kraton)」系接着剤などのアクリル接着剤およびブロックコポリマー接着剤などの感圧接着剤を含む広範囲の接着剤への良好な粘着力を見込む表面を提供する親水性被膜も提供することが可能である。良好な粘着力に関するサンプルの検査は、両面テープ(ミネソタ州セントポールのスリーエム(3M(St.Paul,MN))から入手できる製品番号315)をフィルムに接着させ、ガラスなどの第2の基材にこれを接着させ、7日にわたり23℃および相対湿度50%でエージングし、粘着力を検査することにより行われる。本発明の好ましいサンプルは、21週間より長きにわたって接着されたままである。
【0034】
本発明の界面活性剤組成物は、高温でさえ代替親水性被膜より長い親水性の特性を保持する親水性被膜を提供することも可能である。従って、開示された界面活性剤組成物で被覆された表面は、代替親水性被膜で被覆された類似表面より長い期間および/または高い温度で親水性被膜に付随する利点を提供することが可能である。従って、界面活性剤組成物で被覆された表面を含む装置は、代替親水性被膜で被覆された表面を含む類似装置より長い有効寿命を有することが可能であり、その有効寿命が尽きる前に必ず用いることができる装置を提供し、失効した装置を捨てることにより発生した廃棄物を減らす。
【0035】
例えば、安定剤のない親水性界面活性剤組成物で被覆された基材は、例えば屋内環境で45℃および相対湿度50%で30日にわたり貯蔵された場合、その親水性の特性の実質的な部分を失いうる。親水性の1つの目安は被覆された表面上で被覆された表面上の1点からもう1点まで液体サンプルの一部が移動するのに要する時間であり、互換可能に吸上速度または充填時間と定義される。より短い液体輸送時間は表面のより大きな親水性の特性と相関する。安定剤のない親水性界面活性剤は、例えば40℃で3週間にわたり貯蔵された後に充填時間の大幅な、すなわち15%を上回る減少を経験しうる。それに反して、本発明により安定剤入り界面活性剤組成物で被覆された基材は、類似条件下で類似期間にわたり貯蔵後、充填時間の減少、すなわち85%未満を経験しうる。
【0036】
親水性のもう1つの目安は、被覆された基材の表面湿り特性の変化を監視するために使用できる経時的な表面の接触角測定である。より低い接触角値は、表面のより高い親水性の特性と相関する。安定剤のない親水性界面活性剤は、例えば25℃で13週間にわたり貯蔵した後に接触角の大幅な変化を経験しうる。それに反して、本発明による安定剤入り界面活性剤組成物で被覆された基材は、類似条件下で類似期間にわたり貯蔵後に接触角値の殆どまたは全く変化を経験しないことが可能である。
【0037】
本発明の界面活性剤組成物は、多様な用途に適合する被膜を提供することも可能である。例えば、本発明の界面活性剤組成物の多くは、診断装置または検出装置の流体制御表面を被覆するために有用な場合がある。診断分析または検出分析に含まれる試薬またはサンプル成分と非反応性でありうるからである。従って、本発明の界面活性剤組成物の親水性被膜は、診断アッセイまたは検出アッセイの化学的環境要件または物理的環境要件を妨げないように選択してもよい。本発明の非イオン界面活性剤およびアニオン安定剤は、米国特許第6,270,637号明細書で開示されたものなどのグルコース試験細片などの試験細片中の試薬と特に適合する。
【0038】
本発明の特定の界面活性剤組成物は、貯蔵期間にわたって特定の透明度レベルを保持する親水性被膜を提供することが可能である。従って、親水性被膜の透明度が必要である装置で用いられる時、こうした界面活性剤組成物は特定の有用性を有することが可能である。これは、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートおよびポリアクリレートなどの透明基材上に被覆される時に特に重要である。
【0039】
従って、本発明の特定の実施形態は、例えば診断装置の流体輸送表面上に親水性被膜を提供するために特に有用であることが可能である。開示された界面活性剤組成物が、1)装置のサンプル受理部分から装置の分析部分への液体サンプルの少なくとも一部の効率的な輸送を促進するように親水性であり、2)界面活性剤の親水性の特性および場合によって透明度が維持されるように安定であり、よって有効寿命が尽きる前に装置を用いる可能性を高める、3)診断アッセイに含まれる試薬とサンプル成分の両方と反応しない、4)こうした装置のために用いられる様々な従来の接着剤に良好な粘着力特性を有する表面を提供する被膜を提供するからである。界面活性剤組成物のこれらの特徴の各々は、本発明による界面活性剤組成物で被覆された表面を含む装置の性能を改善するのに寄与する。
【0040】
本発明を以下の実施例により更に例示する。下記の実施例は、本発明の範囲の限定を意図していない。本実施例において、部、比および百分率は、特に指示がない限り重量基準である。
【実施例】
【0041】
【表1】

【0042】
実施例1〜2
70/30重量%イソプロピルアルコール(IPA)/水溶媒に表1aに示された量で界面活性剤成分および安定剤成分を添加することにより塗料溶液を調製した。
【0043】
【表2】

【0044】
被覆された基材の調製:
ピッチ150(体積ファクター0.89)のナールドローラ(ツール基準#34、セルカウント150、イリノイ州バタビアのパーマコ(Parmarco Inc.(Batavia,IL)))による逆グラビアロール法を用いてポリエステルプラスチックフィルム(「メリネックス(Melinex)」(登録商標)454としてデラウェア州ウィルミントンのデュポン・ドゥ・ヌムール(E.I.duPont de Nemours and Company(Wilmington,Delaware))から市販されている)上に組成物1を被覆した。ロール対ライン速度比を2:1または1.5:1で維持した。冷却後、溶液を75℃でオーブン(10フィートエアーフローオーブン、ヒラノコータ、日本国ヒラノカンパニー(Hirano Coater,Hirano Co.)の部品)内で乾燥させた。ウェブを横切って1/2インチ〜1インチごとに水の滴を被着させ、滴の直径および吸上特性を観察することにより、被膜がまだ濡れている時に被膜の均一性を目視で検査した。走査電子顕微鏡(「ヒタチ(Hitachi)」モデルS−4500電界放射SEM(FESEM))を用いて乾燥被膜の厚さを決定した。乾燥被膜の厚さは60nmから200nmまで異なった。
【0045】
被覆された基材と米国特許第6,270,637号明細書で開示された試薬などのそれぞれ試薬1および試薬2の化学品を組み合わせることにより実施例1および2を調製した。被覆された基材は、実施例1〜2について米国特許第6,270,637号明細書に記載された方式に似た方式で機能するプロトタイプブラッドグルコース(bG)の「キャピラリールーフ」を製造するために用いられるフォイルであった。
【0046】
充填時間試験:
ロッシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics Corp.)(インディアナ州インディアナポリス(Indianapolis,IN))は、以下の手順を用いて試験細片を試験した。抗凝血薬としてリチウムヘパリンおよび42%±2%に対応するヘマトクリットを用いて試験の日に全血の1チューブを引いた。
【0047】
センサーのキャピラリーチャンバを充填するにつれて血液サンプルの画像を記録し、画像の時間を決めるために次の幾つかの電子部品を用いた。リムーバブルハードドライブ付きのカサブランカビデオエディティングシステム、ソニートリニトロンモニター、ホリタタイムスタンプゼネレーター、パナソニックディジタル5000ビデオカメラ、ミツビシVCRおよびダイナファイバオプティックライト。
【0048】
リムーバブルハードドライブをビデオエディティングシステムに入れ、上でリストした電子部品に電源を入れた。「表示」キーを押してタイマーを開始させた。アキュ−チェックアドバンテージメータからの細片をカメラの下に置いた。「編集」ボタンをビデオエディティングシステム上のメインメニューから選択した。次に、「記録」ボタンを選択し、カメラからの画像が現れた。光ファイバー光源上の調節ノブを回すことにより照明を調節した。ビデオカメラ上のマクロリングおよびレンズを用いてセンサーの画像に焦点を合わせた。タイプスタンプのフォーマット(典型的にはSS:TH)を検査し、走っていることを決定した。適切なサンプル体積(NWS−V型センサーについて2.0μL、クルセーダ型センサーについて1.0μL)のためにレイニンピペットを用いて、この体積を混合された全血のチューブから抜き取った。キムワイプを用いてピペットの先端を拭い、プランジャーを押し下げて懸滴を形成させた。左のマウスボタンにより「記録」ボタンを選択することによりビデオエディティングシステムを開始させた。試験細片のセンサー部分の中央に血液滴を触れさせることによりセンサーに直ちに投薬した。「ストップ」ボタンを左マウスボタンにより押した。各クリップをビデオエディティングシステムによって自動的に標識付けし、IDは文字Sで始まり、増分番号が続いてスライド番号を示した。ログシートを用いてサンプル体積、ヘマトクリットおよびセンサーIDを記録した。すべてのセンサーが満たされ記録されるまでプロセスを繰り返した。
【0049】
センサーのすべてを記録した後、第1の記録されたスライドを選択し、「トリム」ボタンをビデオエディティングシステムの「編集」スクリーン上で選択した。ロールボールを用いて「in」を選択し、血液サンプルがキャピラリーチャンバに入る第1の瞬間までボールを右に転がした。タイムスタンプゼネレータによってスクリーン上に表示された時間を「初期」時間として秒で記録した。
【0050】
血液サンプルが滴検出電極に達するまでボールを再び右に転がした。これは、血液サンプルが2つの滴検出電極の間の垂直空隙を橋架けし、そのため血液が両方の電極に触れた最初の瞬間であった。スクリーン上に表示された時間を「サンプル充足」時間として記録した。
【0051】
「全充填時間」は「サンプル充足」時間から「初期」時間を減算することにより計算した。
【0052】
貯蔵バイアル内で3つの異なる温度(4℃、32℃および45℃)で0週間(T0)、3週間(T3)、6週間(T6)、13週間(T13)および21週間(T21)にわたって試験細片をエージングした。T13およびT21にわたってエージング後に4℃、32℃および45℃での全充填時間の結果を表1bに示す。
【0053】
【表3】

【0054】
結果は、エトキシル化アセチレンジオール、「ジノール(Dynol)」(登録商標)604および「ローダカル(Rhodacal)」DS10の組み合わせが非常に安定であったことを示した。実施例1の充填時間は試験した各温度での一週間エージング後に同じままか、または減少した。
【0055】
水接触角の測定
被覆されたフィルムの表面湿潤特性の変化を監視するために水接触角の測定を用いた。
これらのフィルムを8×70mm細片に切断し、40mL(I−Chem/VWR#IRC236〜0040))の貯蔵バイアル(「テフロン(Teflon)」(登録商標)被覆ライナー(ライナーの「テフロン(Teflon)」(登録商標)被覆側は常にジャーの内側に向かっていた)を含むスクリューキャプトップを有するガラス)内で25℃、32℃および45℃で0、1、3、6、9、13、21、26、39、52、78および104週間にわたり貯蔵し、水接触角の測定に供した。水(タイプI)接触角は、ビデオ接触角分析(「ファースト・テン・オングストロームズ(First Ten Angstroms)」モデルFTA125ビデオコンタクトアングルアナリシスシステムとして市販されている)を用いて決定した。貯蔵温度/時間の組み合わせごとに、3つの細片をライナーとフィルムの間の親水性界面で接触角について測定した。
【0056】
試験細片を取り扱うために使い捨てニトリル手袋を用い、試験前または試験中に表面に触れなかった。
【0057】
FTA分析:
100μLインストルメントシリンジをタイプI水で満たした。照明、カメラ焦点および開度をシリンジ針チップで最良画像のために調節した。細片をFTAサンプル段の上に置かれた金属プレート上に置いた。細片の両端を磁石で固定し、試験細片の端が可能な限り金属プレートの端に近くした。試験細片が皺なしに平坦に置かれている場合、FTAサンプル段は、カメラの光路が試験細片の前縁に垂直であるように向いていた。水滴を分配するために十分な余地があるようにシリンジニードルが細片端のちょうど内側になるまで段を移動させた。ビデオムービー(約4秒)を接触角ごとの分析のために集めた。目的は、滴平衡が確立されるまで画像の時間零および進行を思い描くムービーを獲得することである。
【0058】
試験細片を全く皺なしで平坦に置き、一枚の両面テープ(ミネソタ州セントポールのスリーエム(3M(St.Paul,MN))から入手できる製品番号315)を25×75mmガラススライドの長さ方向端に沿って添えた。試験するべき細片をスライド上のテープにくっつけ、試験細片の端が可能な限りスライドおよびテープの端に近くした。金属プレート上の試験細片がくっついたスライドはFTAサンプル段の上に位置し、ビデオムービーを前述したように作った。
【0059】
初期および「平衡時」接触角を分析領域ごとに記録した。9つの水接触角の平均を計算し、細片ごとに度で記録した。実施例1および2に関する13および21週間後の25℃、32℃および45℃での平均水接触角測定の結果を表1cに示す。
【0060】
【表4】

【0061】
実施例1および実施例2に関するより小さい接触角値は、表面が高温を含む温度の範囲を通して非常に親水性であり、大幅な期間にわたって、すなわち21週間にわたって親水的に安定なままであることを示している。
【0062】
実施例3
塗料溶液、被覆された基材の調製および試験細片の製作は実施例1および2のために記載されたのと同じであった。
【0063】
実施例1および2に関して記載された充填時間試験を用いて試験細片の充填時間を評価した。T13およびT21にわたるエージング後に4℃、32℃および45℃での全充填時間の結果を表2aに示す。
【0064】
【表5】

【0065】
【表6】

【0066】
【表7】

【0067】
実施例3の充填時間は試験された各温度で3〜6週間後のエージング後に若干増加し、13〜21週間のエージング後にほぼ同じ時間に減少した。
【0068】
実施例1および2に記載された水接触角測定を用いて親水性フィルムを評価した。結果を表2d、表2eおよび表2fに示す。
【0069】
【表8】

【0070】
【表9】

【0071】
【表10】

【0072】
比較目的のために、試験細片の裏側(親水性被膜なし)の水接触角をT0で度において43/24初期/最終であると測定し、45℃で26週間エージング後に度で91/91初期/最終であった。それに反して、実施例3の接触角は比較値より初期に低く、26週間のエージングを通して低いままであった。
【0073】
実施例4〜13および比較例A〜I
70/30重量%IPA/水溶媒に表3aに示された量の成分を添加することにより塗料溶液を調製した。
【0074】
【表11】

【0075】
「メイヤー(Meyer)」ロッドを用いて溶液をポリエステルプラスチックフィルム(厚さ0.10mmの二軸配向コロナ放電処理ポリエチレンテレフタレートフィルム)上に被覆し、被膜を100℃で乾燥させた。被覆されたフィルムを促進エージングに供した(これを表2bのデータのために用いた)。被覆されたフィルムを約7.5×12cm片に切断し、ラックに垂直に入れ、すべての表面を一定温度(25℃)および相対湿度(50%)の部屋内で再循環空気にさらした。広がり滴試験を用いて親水性を1週間〜21日ごとに評価した。
【0076】
広がり滴試験(Spreading Drop Test):
試験前および試験中に、各フィルムサンプルを23℃および相対湿度50%で、最少で8時間にわたり状態調節した。フィルムサンプルが汚染されないことと、環境への暴露が湿潤の減少をもたらさないことを確実にするために注意を払った。試験されるべき側を上にしてフィルムサンプルを清浄平坦水平表面上に置いた。周囲条件(約23℃)で、シリンジを垂直に保持し、滴が落下せず表面に衝撃を及ぼさないように滴を表面にちょっと触れさせることにより、正確なシリンジからニューヨーク州ガーデンシティのピラム(Pylam(Garden City,NY))から市販されている「ウールファストブリリアントレッドR.L.ダイ(Wool Fast Brilliant Red R.L.Dye)」0.07重量%を含む3マイクロリットル滴の脱イオン水および蒸留水を表面上に静かに置いた。滴を放置して最大範囲に広げ、完全に乾燥させた。異なる直径の前もって測定した円を有する紙上にフィルムを置くことにより滴の直径を決定した。平均滴直径を記録した。不規則形状の滴のサイズを近似した。滴サイズの%保持を7日と22日の間で計算した。表3bは滴サイズまたは親水性の特性の%保持を示している。
【0077】
【表12】

【0078】
実施例4〜13に関する広がり滴試験の結果は87%保持を上回った一方で、比較例A〜Iに関する広がり滴試験の結果は85%保持を下回った。
【0079】
本発明の種々の修正および変更は本発明の範囲および精神を逸脱せずに当業者に対して明らかになるであろう。対立する場合、定義を含む本明細書が優先することとする。
【0080】
本発明が本明細書に記載された例証的な実施形態によって不当に限定されることを意図していないし、こうした例証的な実施形態が、本明細書に記載された特許請求の範囲によってのみ限定されることを意図された本発明の範囲による実施例のみとして提示されていることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約0.2%〜0.6%の界面活性剤成分と、
約0.05%〜0.5%の安定剤成分と、
溶媒と
を含む界面活性剤組成物で被覆された親水性表面であって、
基材上で乾燥させ基材上に被覆された時に溶媒を含有しない前記界面活性剤組成物が0.2:1〜12:1wt/wtの比で前記界面活性剤および前記安定剤を含み、「広がり滴試験(Spreading Drop Test)」によって示された前記親水性の特性が、23℃および相対湿度50%で3週間エージング後に元の広がり滴直径の少なくとも85%を保持することを特徴とする親水性表面。
【請求項2】
前記溶媒は、水とアルコールの混合物を含む、請求項1に記載の界面活性剤組成物。
【請求項3】
前記アルコールは、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールおよびブタノールからなる群から選択される、請求項2に記載の界面活性剤組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤成分は25℃より低い温度で液体である、請求項1に記載の界面活性剤組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤成分は非イオン界面活性剤である、請求項1に記載の界面活性剤組成物。
【請求項6】
前記界面活性剤成分は、アルコキシル化アルキルジオール、アルコキシル化アルキルアセチレンジオール、アルキルアルコールのアルコキシル化グリセリンモノエステル、アラルキルアルコールのアルコキシル化グリセリンモノエステル、アルコキシル化アルキルアルコール、ポリアルコキシル化アラルキルアルコール、シリコーンコポリオール、ポリエトキシル化フェノール、ポリアルコキシル化ジオールの脂肪酸エステル、ポリアルコキシル化トリオールの脂肪酸エステルおよびポリアルコキシル化パーフルオロアルキル含有界面活性剤からなる群から選択される、請求項5に記載の界面活性剤組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤成分はエトキシル化アセチレンジオールである、請求項1に記載の界面活性剤組成物。
【請求項8】
前記安定剤成分は25℃より高い融点を有する、請求項1に記載の界面活性剤組成物。
【請求項9】
前記安定剤成分は少なくとも45℃の融点を有する、請求項8に記載の界面活性剤組成物。
【請求項10】
前記安定剤成分は、アニオンパーフルオロアルキル含有界面活性剤、アルキルスルホネート、アラルキルスルホネートまたはアルカリールスルホネート、アルキルスルフェート、アラルキルスルフェートまたはアルカリールスルフェート、アルキルホスホネート、アラルキルホスホネートまたはアルカリールホスホネート、アルキルホスフェート、アラルキルホスフェートまたはアルカリールホスフェート、アラルキルホスホネートまたはアルカリールホスホネート、アルキルベタイン、アラルキルベタインまたはアルカリールベタイン、アラルキルホスホネートスルテインまたはアルカリールホスホネートスルテインならびに脂肪イミダゾリンおよびそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項1に記載の界面活性剤組成物。
【請求項11】
前記安定剤成分はアラルキルスルホネートである、請求項10に記載の界面活性剤組成物。
【請求項12】
前記安定剤成分はドデシルベンゼンスルホネートのアルカリ金属塩である、請求項10に記載の界面活性剤組成物。
【請求項13】
広がり滴直径によって示された前記親水性の特性は、23℃および相対湿度50%で3週間エージング後に元の滴直径の少なくとも90%を保持する、請求項1に記載の界面活性剤組成物。
【請求項14】
広がり滴直径によって示された前記親水性の特性は、23℃および相対湿度50%で3週間エージング後に元の滴直径の少なくとも95%を保持する、請求項1に記載の界面活性剤組成物。
【請求項15】
0.2:1〜12:1wt/wtの比で界面活性剤成分および安定剤成分を含む無孔質基材上に被着させた被膜であって、広がり滴直径によって示された親水性の特性が、23℃および相対湿度50%で3週間エージング後に元の滴直径の少なくとも85%を保持することを特徴とする被膜。
【請求項16】
前記界面活性剤成分は25℃より低い温度で液体である、請求項15に記載の被膜。
【請求項17】
前記界面活性剤成分は非イオン界面活性剤である、請求項15に記載の被膜。
【請求項18】
前記界面活性剤成分は、アルコキシル化アルキルジオール、アルコキシル化アルキルアセチレンジオール、アルキルアルコールのアルコキシル化グリセリンモノエステル、アラルキルアルコールのアルコキシル化グリセリンモノエステル、アルコキシル化アルキルアルコール、ポリアルコキシル化アラルキルアルコール、シリコーンコポリオール、ポリエトキシル化フェノール、ポリアルコキシル化ジオールの脂肪酸エステル、ポリアルコキシル化トリオールの脂肪酸エステルおよびポリアルコキシル化パーフルオロアルキル含有界面活性剤からなる群から選択される、請求項17に記載の被膜。
【請求項19】
前記界面活性剤成分はエトキシル化アセチレンジオールである、請求項18に記載の被膜。
【請求項20】
前記安定剤成分は25℃より高い融点を有する、請求項15に記載の被膜。
【請求項21】
前記安定剤成分は、アニオンパーフルオロアルキル含有界面活性剤、アルキルスルホネート、アラルキルスルホネートまたはアルカリールスルホネート、アルキルスルフェート、アラルキルスルフェートまたはアルカリールスルフェート、アルキルホスホネート、アラルキルホスホネートまたはアルカリールホスホネート、アルキルホスフェート、アラルキルホスフェートまたはアルカリールホスフェート、アルキルベタイン、アラルキルベタインまたはアルカリールベタイン、アルキルスルテイン、アラルキルスルテインまたはアルカリールスルテインならびに脂肪イミダゾリンおよびそれらの誘導体からなる群から選択される、請求項15に記載の被膜。
【請求項22】
前記安定剤成分はドデシルベンゼンスルホネートのアルカリ金属塩である、請求項21に記載の被膜。
【請求項23】
広がり滴直径によって示された前記親水性の特性は、再循環チャンバ内で23℃および相対湿度50%で3週間エージング後に元の滴直径の少なくとも90%を保持する、請求項13に記載の被膜。
【請求項24】
前記基材はフィルムである、請求項13に記載の被膜。
【請求項25】
基材と、
無溶媒基準で約25〜95重量%の界面活性剤成分および無溶媒基準で約5〜75重量%の安定剤成分を含む被膜と
を含み、
前記被膜の接触角が25℃で13週間にわたるエージング後に25度を超えないことを特徴とする、体液にさらされるミクロ流体装置。
【請求項26】
約0.2%〜0.6%の界面活性剤成分と、
約0.05%〜0.5%の安定剤成分と、
溶媒と
を含む界面活性剤組成物で被覆された親水性表面であって、
基材上で乾燥させ基材上に被覆された時に溶媒を含有しない前記界面活性剤組成物が0.2:1〜12:1wt/wtの比で前記界面活性剤および前記安定剤を含み、接触角が25℃で13週間にわたるエージング後に25度を超えないことを特徴とする親水性表面。
【請求項27】
約0.2%〜0.6%の界面活性剤成分、約0.05%〜0.5%の安定剤成分および溶媒を合して界面活性剤組成物を形成する工程と、
前記界面活性剤組成物を基材に被着させる工程と、
前記界面活性剤組成物を基材上で乾燥させる工程と
を含む基材上で親水性表面を形成する方法であって、
基材上で乾燥させ基材上に被覆された時に溶媒を含有しない前記界面活性剤組成物が0.2:1〜12:1wt/wtの比で前記界面活性剤および前記安定剤を含み、「広がり滴試験(Spreading Drop Test)」によって示された前記親水性の特性が、23℃および相対湿度50%で3週間エージング後に元の広がり滴直径の少なくとも85%を保持することを特徴とする親水性表面を形成する方法。
【請求項28】
前記基材が無孔質である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記基材がフィルムである、請求項27に記載の方法。

【公開番号】特開2012−158766(P2012−158766A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−108403(P2012−108403)
【出願日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【分割の表示】特願2006−535547(P2006−535547)の分割
【原出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)