説明

診療情報処理装置および方法並びにプログラム

【課題】比較対象の患者の症例の数が少ない場合にも臨床情報項目に応じて適切に重み付けを行って、対象患者の症例と比較対象患者の症例との類似度を算出する。
【解決手段】尤度比算出用の登録症例情報に基づいて、キー項目の分類ごとに、登録症例に含まれる他の臨床情報項目の各分類について、他の臨床情報項目の各分類である場合にキー項目の1つの分類に該当する尤度と、他の臨床情報項目の各分類である場合にキー項目の1つの分類以外の他の分類に該当する尤度との尤度比を算出し、算出された尤度比および対象臨床情報項目における対象分類に基づいて、キー項目の分類ごとに他の臨床情報項目の各分類に対応する各重み付け係数を決定し、類似度算出用の登録症例情報に含まれる登録症例ごとに、キー項目の分類と臨床情報項目の分類に対応する重み付け情報を用いて類似度を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象患者の症例と比較対象となる患者の症例との類似度を算出するための診療情報処理装置および方法並びに診療情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野においては、患者の診療のために取得した様々な診療情報を診断支援のために利用する技術が注目されている。そして、病名の診断や治療方針などの決定の参考情報のために、過去の患者の各症例に含まれる様々な臨床情報項目に基づいて、対象患者の症例と比較対象となる患者の症例との類似度を算出し、対象患者の症例と類似する過去の比較対象と成る患者の症例を抽出する技術が期待されている。
【0003】
特許文献1には、検索対象である症例の症状を症状リストとして入力し、入力された症状リストを症状の有無、程度などの尺度により症状ベクトルに変換し、検索対象の症状ベクトルと、症例情報データベースに登録された各症状の症状ベクトルとの類似度を、両症状ベクトルの一致する症状の合計数などによって算出する方法が提案されている。
【0004】
特許文献2には、新規患者データが入力されると、各事例データの新規患者データに対する類似度を、項目毎に事例データの値と当該新規患者データの値との差を当該最新患者データのその項目の値の影響度に応じて重み付けして求めた値群の総和として算出し、各病名の類似度を、その病名を有する事例データの類似度の総和として求め、その類似度が最大である病名を、類似度算出に用いられた影響度が最大である新規患者データ中の項目の値とともに表示する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−122845号公報
【特許文献2】特開2004−288047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、臨床情報項目は様々な種類があり、症例はこれらの臨床情報項目を様々な組合せで有しているため非常に多様である。このため、個々の病院などで管理する症例データを病名毎に整理すると、個々の病名に対する症例は少ない件数となってしまう場合も多い。臨床情報項目を特許文献1の方法によれば、ほとんどの情報が一致する症例が存在すれば類似度が高い症例として評価できるが、各症状の重みを考慮していない為、一致する情報が少ない症例ばかりである場合には、類似度の評価を適切に行うことができない。
【0007】
また、特許文献2の方法によれば、年齢などの各臨床情報項目が所定の値に該当する場合にそれぞれの病名に該当する確からしさ(条件付き確率)に基づいて、各臨床情報項目に応じて病名判定のための影響度と、事例データの値と当該新規患者データの値との差の情報をもとに類似度を算出している。しかしながら、特許文献2の方法によれば病名に対する各臨床情報項目の影響度は病名によらず同じ値となるため、各臨床情報項目の特徴に応じて正確に類似度を算出することができない。また、臨床情報項目の各種の値は、その値が医学診断上正常範囲と考えられる基準範囲に属するか否かにより判別することが重要である場合や、または臨床情報項目の値が非線形な変化をする場合など、単純に事例データと新規患者データとの臨床情報項目の値の差のみに基づいて類似度を評価するのは適切ではない場合がある。これらの理由から、特許文献2に記載された方法により算出された類似度は精度が低く、実用的ではない。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、比較対象となる過去の患者の症例の数が少ない場合にも臨床情報項目に応じて適切に重み付けを行って、対象患者の症例と過去の症例との類似度を算出できる実用的な診療情報処理装置、方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本第1発明による診療情報処理装置は、比較対象となる複数の患者の臨床情報に関する複数の項目を複数の分類に区分け可能な臨床情報項目としてそれぞれ対応付けた多数の登録症例を備えてなる尤度比算出用の登録症例情報と比較対象となる複数の患者の臨床情報に関する複数の項目を複数の分類に区分け可能な臨床情報項目としてそれぞれ対応付けた多数の登録症例を備えてなる類似度算出用の登録症例情報をそれぞれ取得する登録症例情報取得部と、対象患者の複数の臨床情報項目の各分類をそれぞれ対象臨床情報項目の対象分類として取得する対象症例取得部と、前記尤度比算出用の登録症例情報に基づいて、前記登録症例に対応付けられた前記臨床情報項目のうちの1つであるキー項目の前記分類ごとに、前記登録症例に含まれる複数の臨床情報項目のうち前記キー項目を除く他の臨床情報項目の各分類について、前記他の臨床情報項目の各分類に該当する場合に前記キー項目の1つの分類に該当する尤度と、前記他の臨床情報項目の各分類に該当する場合に前記キー項目の前記1つの分類以外の他の分類に該当する尤度との尤度比をそれぞれ算出することにより、前記登録症例に含まれる前記キー項目の分類ごとに前記他の臨床情報項目の各分類に対応する前記尤度比を対応付けた尤度比情報を算出する尤度比情報算出部と、前記対象臨床情報項目の前記対象分類および前記尤度比情報に基づいて、前記キー項目の分類ごとに前記他の臨床情報項目の各分類に対応する各重み付け係数をそれぞれ決定することにより、前記キー項目の分類ごとに前記他の臨床情報項目の各分類に対応する重み付け係数を対応付けた重み付け係数情報を決定する重み付け係数決定部と、前記類似度算出用の登録症例情報に含まれる登録症例ごとに、前記決定された重み付け係数情報に基づいて、該登録症例の前記各キー項目の分類と前記他の臨床情報項目の分類に対応する前記重み付け係数を特定し、該特定した重み付け係数を用いて類似度を算出する類似度算出部を備えたことを特徴とするものである。
【0010】
本第1発明による診療情報処理方法は、比較対象となる複数の患者の臨床情報に関する複数の項目を複数の分類に区分け可能な臨床情報項目としてそれぞれ対応付けた多数の登録症例を備えてなる尤度比算出用の登録症例情報と比較対象となる複数の患者の臨床情報に関する複数の項目を複数の分類に区分け可能な臨床情報項目としてそれぞれ対応付けた多数の登録症例を備えてなる類似度算出用の登録症例情報をそれぞれ取得し、対象患者の複数の臨床情報項目の各分類をそれぞれ対象臨床情報項目の対象分類として取得し、前記尤度比算出用の登録症例情報に基づいて、前記登録症例に対応付けられた前記臨床情報項目のうちの1つであるキー項目の前記分類ごとに、前記登録症例に含まれる複数の臨床情報項目のうち前記キー項目を除く他の臨床情報項目の各分類について、前記他の臨床情報項目の各分類に該当する場合に前記キー項目の1つの分類に該当する尤度と、前記他の臨床情報項目の各分類に該当する場合に前記キー項目の前記1つの分類以外の他の分類に該当する尤度との尤度比をそれぞれ算出することにより、前記登録症例に含まれる前記キー項目の分類ごとに前記他の臨床情報項目の各分類に対応する前記尤度比を対応付けた尤度比情報を算出し、前記対象臨床情報および前記尤度比情報に基づいて、前記キー項目の分類ごとに前記他の臨床情報項目の各分類に対応する各重み付け係数をそれぞれ決定することにより、前記キー項目の分類ごとに前記他の臨床情報項目の各分類に対応する重み付け係数を対応付けた重み付け係数情報を決定し、前記類似度算出用の登録症例情報に含まれる登録症例ごとに、前記決定された重み付け係数情報に基づいて、該登録症例の前記各キー項目の分類と前記他の臨床情報項目の分類に対応する前記重み付け係数を特定し、該特定した重み付け係数を用いて類似度を算出することを特徴とするものである。
【0011】
本第1発明による診療情報処理プログラムは、コンピュータを、比較対象となる複数の患者の臨床情報に関する複数の項目を複数の分類に区分け可能な臨床情報項目としてそれぞれ対応付けた多数の登録症例を備えてなる尤度比算出用の登録症例情報と比較対象となる複数の患者の臨床情報に関する複数の項目を複数の分類に区分け可能な臨床情報項目としてそれぞれ対応付けた多数の登録症例を備えてなる類似度算出用の登録症例情報をそれぞれ取得する登録症例情報取得部と、対象患者の複数の臨床情報項目の各分類をそれぞれ対象臨床情報項目の対象分類として取得する対象症例取得部と、前記尤度比算出用の登録症例情報に基づいて、前記登録症例に対応付けられた前記臨床情報項目のうちの1つであるキー項目の前記分類ごとに、前記登録症例に含まれる複数の臨床情報項目のうち前記キー項目を除く他の臨床情報項目の各分類について、前記他の臨床情報項目の各分類に該当する場合に前記キー項目の1つの分類に該当する尤度と、前記他の臨床情報項目の各分類に該当する場合に前記キー項目の前記1つの分類以外の他の分類に該当する尤度との尤度比をそれぞれ算出することにより、前記登録症例に含まれる前記キー項目の分類ごとに前記他の臨床情報項目の各分類に対応する前記尤度比を対応付けた尤度比情報を算出する尤度比情報算出部と、前記対象臨床情報項目の前記対象分類および前記尤度比情報に基づいて、前記キー項目の分類ごとに前記他の臨床情報項目の各分類に対応する各重み付け係数をそれぞれ決定することにより、前記キー項目の分類ごとに前記他の臨床情報項目の各分類に対応する重み付け係数を対応付けた重み付け係数情報を決定する重み付け係数決定部と、前記類似度算出用の登録症例情報に含まれる登録症例ごとに、前記決定された重み付け係数情報に基づいて、該登録症例の前記各キー項目の分類と前記他の臨床情報項目の分類に対応する前記重み付け係数を特定し、該特定した重み付け係数を用いて類似度を算出する類似度算出部として機能させることを特徴とするものである。
【0012】
本第2発明による診療情報処理装置は、比較対象となる複数の患者の臨床情報に関する複数の項目を複数の分類に区分け可能な臨床情報項目としてそれぞれ対応付けた多数の登録症例を備えてなる尤度比算出用の登録症例情報と、比較対象となる複数の患者の臨床情報に関する複数の項目を複数の分類に区分け可能な臨床情報項目としてそれぞれ対応付けた多数の登録症例を備えてなる類似度算出用の登録症例情報と、比較対象となる複数の患者の臨床情報に関する複数の項目を複数の分類に区分け可能な臨床情報項目としてそれぞれ対応付けた多数の登録症例を備えてなるキー項目推定用の登録症例情報とをそれぞれ取得する登録症例情報取得部と、対象患者の複数の臨床情報項目の各分類をそれぞれ対象臨床情報項目の対象分類として取得する対象症例取得部と、前記尤度比算出用の登録症例情報に基づいて、前記登録症例に対応付けられた前記臨床情報項目のうちの1つであるキー項目の前記分類ごとに、前記登録症例に含まれる複数の臨床情報項目のうち前記キー項目を除く他の臨床情報項目の各分類について、前記他の臨床情報項目の各分類に該当する場合に前記キー項目の1つの分類に該当する尤度と、前記他の臨床情報項目の各分類に該当する場合に前記キー項目の前記1つの分類以外の他の分類に該当する尤度との尤度比をそれぞれ算出することにより、前記登録症例に含まれる前記キー項目の分類ごとに前記他の臨床情報項目の各分類に対応する前記尤度比を対応付けた尤度比情報を算出する尤度比情報算出部と、前記対象臨床情報項目における前記対象分類および前記キー項目推定用の登録情報に基づいて、前記対象患者が該当すると推定される前記キー項目の分類を仮に推定するキー項目推定部と、前記推定されたキー項目の分類および前記対象臨床情報項目における前記対象分類に基づいて、前記他の臨床情報項目の各分類に対応する各重み付け係数をそれぞれ決定することにより、前記推定されたキー項目の分類に前記他の臨床情報項目の各分類に対応する重み付け係数を対応付けた重み付け係数情報を決定する重み付け係数決定部と、前記算出された重み付け係数情報に基づいて、前記類似度算出用の登録症例情報に備えられた登録症例ごとに、該登録症例の前記他の臨床情報項目の分類に対応する前記重み付け係数を特定し、該特定した重み付け係数を用いて類似度を算出する類似度算出部とを備えたことを特徴とするものである。
【0013】
上記第1および第2発明において、臨床情報項目は、診断のために取得した患者についての情報であり、患者の申告や患者の検査等により取得される。臨床情報項目には、例えば、患者基本情報、主訴、生活歴、既往歴、家族歴、各種検査結果データ、各種画像所見および画像特徴量、投薬・治療実施内容、治療結果、遺伝子情報、病名、重症度などがある。キー項目は、臨床情報項目の1つであり、類似判断のキーとして用いる情報である。
【0014】
また、尤度比算出用の登録症例情報と類似度算出用の登録症例情報は一部または全部が重複するものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0015】
また、上記第1および第2発明において、臨床情報項目の分類とは、臨床情報項目を医学診断上の判断基準に基づいて種類や数値範囲によって分けたものである。臨床情報項目の分類は、例えば、血液検査の白血球数などの評価値を正常範囲と正常範囲以外に分類したものでもよく、病気の種類(病名など)でもよい。
【0016】
また、上記第1および第2発明において、「重み付け係数を用いて類似度を算出する」とは、重み付け係数が大きいものを類似度として算出できるいかなる方法であってもよく、例えば、重み付け係数の総和を類似度として算出してもよい。または、対象患者の各臨床情報項目における分類と登録症例の臨床情報項目の分類のそれぞれの重み付け係数の差の自乗和などで定義した距離を類似度として算出し、この距離が小さいほどより類似していると判断してもよい。
【0017】
また、上記第1発明において、前記重み付け係数決定部は、前記対象臨床情報項目における前記対象分類に対応する前記尤度比が大きいほど前記重み付け係数が大きくなるように前記重み付け係数を決定するものであることが好ましい。
【0018】
「前記尤度比が大きいほど前記重み付け係数が大きくなるように前記重み付け係数を決定する」とは、尤度比が大きいほど重み付け係数が大きくなるように重み付け係数を決定する行うものであればあらゆる方法で重み付け係数を決定する場合を含む。例えば、尤度比に応じて重み付け係数を連続的に大きくしてもよく、断続的に大きくしてもよい。また、各臨床情報項目に対して対象分類と対象分類以外の分類で重み付けを異ならせて重み付け係数を決定してもよい。また、各重み付け係数は、例えば、重み付け係数を正の値として決定する場合に尤度比が大きくなるほど各重み付け係数の値が大きくなるように決定してもよく、重み付け係数を負の値として決定する場合に、尤度比が小さくなるほど各重み付け係数の値が小さくなるように(負の値を大きくするように)重み付けをすることにより決定してもよい。
【0019】
また、第1発明における前記重み付け係数決定部は、前記対象臨床情報項目における前記対象分類に対応する前記尤度比が第1のしきい値以上である場合に、前記尤度比に応じて前記重み付け係数がより大きくなるように重み付けを行い、かつ、前記対象臨床情報項目における前記対象分類の前記尤度比が第2のしきい値より小さい場合に、前記尤度比に応じて前記重み付け係数がより小さくなるように重み付けを行うものであることが好ましい。
【0020】
なお、第1のしきい値は、尤度比の値に基づいて、キー項目の分類に対する臨床情報項目の分類の関連の深さ(臨床情報項目の分類である場合にキー項目の分類となる確からしさ)がある程度大きいものと評価できる数値であれば任意に設定でき、1以上2以下の値であることが好ましい。例えば、第1のしきい値を1とすることが好適である。
【0021】
また、第2のしきい値は、尤度比の値に基づいて、キー項目の分類に対する臨床情報項目の分類の関連の深さ(臨床情報項目の分類である場合にキー項目の分類となる確からしさ)がある程度小さいものと評価できる、第1のしきい値以下の数値であれば任意に設定でき、1以下0.5以上の値であることが好ましい。例えば、第2のしきい値を1とすることが好適である。
【0022】
また、第1発明における前記重み付け係数決定部は、前記対象臨床情報項目における前記対象分類に対応する前記尤度比が第3のしきい値以上であり、かつ、該臨床情報項目における前記対象分類以外の分類に対応する前記尤度比が前記第3のしきい値以上である場合に、該臨床情報項目における該対象分類以外の分類に対応する重み付け係数を、前記尤度比に応じて前記重み付け係数が大きくなるように重み付けを行うものであり、前記対象臨床情報項目における前記対象分類に対応する前記尤度比または該臨床情報項目における前記対象分類以外の分類に対応する前記尤度比のいずれかが第4のしきい値より小さい場合に、該臨床情報項目における該対象分類以外の分類に対応する前記重み付け係数をより小さくなるように重み付けを行うものであることが好ましい。
【0023】
また、上記場合に、前記対象臨床情報項目における前記対象分類に対応する前記尤度比または該臨床情報項目における前記対象分類以外の分類に対応する前記尤度比のいずれかが前記第4のしきい値より小さい場合に、該対象臨床情報項目における該対象分類以外の分類に対応する前記重み付け係数が負の値になるように重み付けを行うものであってもよい。
【0024】
なお、第3のしきい値は、尤度比の値に基づいて、キー項目の分類に対する臨床情報項目の分類の関連の深さ(臨床情報項目の分類である場合にキー項目の分類となる確からしさ)がある程度大きいものと評価できる数値であれば任意に設定でき、1以上2以下の値であることが好ましい。例えば、第3のしきい値を1とすることが好適である。
【0025】
第4のしきい値は、尤度比の値に基づいて、キー項目の分類に対する臨床情報項目の分類の関連の深さ(臨床情報項目の分類である場合にキー項目の分類となる確からしさ)がある程度小さいものと評価できる、第3のしきい値以下の数値であれば任意に設定でき、1以下0.5以上の値であることが好ましい。例えば、第4のしきい値を1とすることが好適である。
【0026】
また、第1発明における前記重み付け係数決定部は、少なくとも一部の前記他の臨床情報項目の各分類について、前記他の臨床情報項目の各分類に対応する前記尤度比を対数変換した値を前記重み付け係数としてそれぞれ決定するものであることが好ましい。
【0027】
また、第1発明における前記類似度算出部が、前記類似度算出用の登録症例情報のうち、所定の条件を満たす登録症例のみを類似度算出用登録症例として抽出する類似度算出症例抽出部を備え、前記抽出された類似度算出用登録症例のみに基づいて前記類似度を算出するものであることが好ましい。
【0028】
「所定の条件」として、ユーザの要望に応じて任意の条件を設定することができ、例えば、ユーザの入力により指定された所定の病名に対応する症例であることを、所定の条件としてもよい。
【0029】
また、上記第1発明における前記類似度算出部が、前記類似度算出用の登録症例情報のうち、所定の条件を満たす登録症例のみを類似度算出用登録症例として抽出する類似度算出症例抽出部を備えた場合、第1発明における前記登録症例情報取得部が、比較対象となる複数の患者の臨床情報に関する複数の項目を複数の分類に区分け可能な臨床情報項目としてそれぞれ対応付けた多数の登録症例を備えてなるキー項目推定用の登録症例情報をさらに取得するものであり、前記対象臨床情報項目における対象分類および前記キー項目推定用の登録情報に基づいて、前記対象患者が該当すると推定される前記キー項目の分類を推定するキー項目推定部をさらに備え、前記類似度算出症例抽出部が、前記類似度算出用の登録症例情報のうち、前記キー項目推定部に推定された前記キー項目の分類に対応付けられた前記登録症例のみを前記類似度算出用登録症例として抽出するものであることが好ましい。
【0030】
上記、キー項目推定用の登録症例情報は、尤度比算出用の登録症例情報または類似度算出用の登録症例情報は一部または全部が重複するものであってもよく、異なるものであってもよい。
【0031】
また、上記第1発明における前記類似度算出部が、前記類似度算出用の登録症例情報のうち、所定の条件を満たす登録症例のみを類似度算出用登録症例として抽出する類似度算出症例抽出部を備えた場合、前記類似度算出症例抽出部が、前記尤度比情報に基づいて、前記類似度算出用の登録症例のうち、各臨床情報項目の分類に対応する各尤度比のいずれか1つ以上が第5のしきい値以上である前記登録症例のみを前記類似度算出用登録症例として抽出するものであってもよい。
【0032】
なお、上記第5のしきい値は、診療情報処理装置の使用環境や各ユーザにおける種々の要求に応じて任意に設定してよい。
【0033】
また、上記第1発明における前記類似度算出部が、前記類似度算出用の登録症例情報のうち、所定の条件を満たす登録症例のみを類似度算出用登録症例として抽出する類似度算出症例抽出部を備えた場合、前記類似度算出症例抽出部が、前記尤度比情報に基づいて、前記類似度算出用の登録症例のうち、前記尤度比の大きさが所定の順番以内である臨床情報項目の分類に対応づけられた前記登録症例のみを前記類似度算出用登録症例として抽出するものであってもよい。
【0034】
なお、上記「所定の順番」は、診療情報処理装置の使用環境や各ユーザにおける種々の要求に応じて任意に設定してよい。
【0035】
また、上記第1または第2発明における前記尤度比情報算出部が、前記尤度比算出用の登録症例情報のうち、さらなる所定の条件を満たす登録症例のみを尤度比算出用登録症例として抽出する尤度比算出症例抽出部を備え、前記抽出された尤度比算出用登録症例のみに基づいて前記尤度比情報を算出するものであることが好ましい。
【0036】
上記場合に、第1または第2発明の上記診療情報処理装置において、「さらなる所定の条件」として、ユーザの要望に応じて任意の条件を設定することができ、例えば、ユーザの入力により指定された所定の病名に対応する症例であることを、所定の条件としてもよい。また、前記登録症例情報取得部が、比較対象となる複数の患者の臨床情報に関する複数の項目を複数の分類に区分け可能な臨床情報項目としてそれぞれ対応付けた多数の登録症例を備えてなるキー項目推定用の登録症例情報をさらに取得するものであり、前記対象臨床情報項目における対象分類および前記キー項目推定用の登録症例情報に基づいて、前記対象患者が該当すると推定される前記キー項目の分類を仮に推定するキー項目推定部をさらに備え、前記尤度比算出症例抽出部が、前記尤度比算出用の登録症例情報のうち、前記キー項目推定部に推定された前記キー項目の分類に対応付けられた登録症例のみを前記尤度比算出用登録症例として抽出するものであってもよい。
【0037】
また、第1または第2発明において前記キー項目の各分類が病名を表すものであることが好ましい。
【0038】
また、第1または第2発明において前記類似度算出部が、前記登録症例の病名が合併症である場合に、該合併症を構成する個々の病名ごとに該合併症に対応付けられた前記他の臨床情報項目の分類に対応する重み付け係数をそれぞれ取得して類似度を算出し、算出された類似度のうち最も大きいものを合併症に対応する類似度として算出するものであってもよい。
【0039】
また、第1または第2発明において前記類似度算出部は、前記登録症例の病名が合併症である場合に、該合併症を構成する個々の病名ごとに該合併症に対応付けられた前記他の臨床情報項目の分類に対応する重み付け係数をそれぞれ取得するものであり、前記他の臨床情報項目の分類ごとに、合併症を構成する個々の病名ごとに算出された重み付け係数のうち最大のものを、該他の臨床情報項目の分類に対応する重み付け係数として用いて類似度を算出するものであってもよい。
【0040】
また、第1または第2発明において前記尤度比情報算出部は、前記尤度比算出用の登録症例情報に基づいて、対応づけられた登録症例が所定の数より少ない病名が存在する場合には、該病名をさらに上位概念化した病名を取得し、該病名に対応づけられた前記登録症例に対し、該病名に替えて前記上位概念化した病名を用いて前記尤度比情報を算出することが好ましい。
【0041】
さらに、第1または第2発明における診療情報処理装置において、前記算出された類似度に基づいて、前記登録症例ごとに前記尤度比または前記重み付け係数が所定値以上の前記臨床情報項目の分類に関する情報を含むように、前記類似度の大きい順に前記登録症例をリスト表示する表示制御部をさらに備えることが好ましい。
【0042】
上記「前記臨床情報項目の分類に関する情報」とは、臨床情報項目の表す値や種類が属する分類を表す情報であればいかなる情報であってもよく、例えば、臨床情報項目の病名や各検査値などであってもよく、臨床情報項目の表す値や種類が属する分類であってもよい。
【0043】
なお、上記所定値は、尤度比の値に基づいて、キー項目の分類に対する臨床情報項目の分類の関連の深さ(臨床情報項目の分類である場合にキー項目の分類となる確からしさ)がある程度大きいものと評価できる数値であれば任意に設定でき、尤度比が2以上の値であることが好ましい。例えば、所定値を3とすることが好適である。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、尤度比算出用の登録症例情報に基づいて、登録症例に対応付けられたキー項目の分類ごとに、登録症例に含まれる他の臨床情報項目の各分類について、キー項目の1つの分類に該当し、かつ、他の臨床情報項目の各分類に該当する尤度と、キー項目の1つの分類以外の他の分類に該当し、かつ、他の臨床情報項目の各分類に該当する尤度との尤度比をそれぞれ算出し、キー項目の分類ごとに他の臨床情報項目の各分類について、対象患者の対象臨床情報の対象分類と尤度比情報とに基づいて各重み付け係数を決定している。このため、臨床情報項目の分類の分布が判断できる程度の少数の症例があれば、重み付け係数を決定でき、比較的少ない症例であっても類似度を正確に算出することができる。キー項目の分類と臨床情報項目の分類の関連の深さを反映して適切に重み付け係数を決定することができ、精度良く類似度を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態による診療情報処理装置を適用した医療情報システムの概略構成を示す図
【図2】第1の実施形態における診療情報処理装置の機能ブロック図
【図3】第1乃至第3の実施形態における登録症例情報の一例を示す図
【図4】第1乃至第3の実施形態における診療情報処理の流れを示すフローチャート(その1)
【図5】第1の実施形態における診療情報処理の流れを示すフローチャート(その2)
【図6】第1乃至第3の実施形態における頻度情報の一例を示す図
【図7】第1乃至第3の実施形態における尤度比情報の一例を示す図
【図8】第1の実施形態における重み付け係数情報の一例を示す図
【図9】第1の実施形態における類似度決定情報の一例を示す図
【図10】第1乃至第3の実施形態の実施形態における類似症例抽出結果の表示例を示す図(リスト表示)
【図11】第1乃至第3の実施形態の実施形態における類似症例抽出結果の表示例を示す図(詳細表示)
【図12】第2の実施形態における診療情報処理装置の機能ブロック図
【図13】第2の実施形態における診療情報処理の流れを示すフローチャート
【図14】第2の実施形態における病名推定情報の一例を示す図
【図15】第3の実施形態における診療情報処理装置の機能ブロック図
【図16】第3の実施形態における診療情報処理の流れを示すフローチャート
【図17】第3の実施形態における重み付け係数情報の一例を示す図
【図18】第3の実施形態における類似度決定情報の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の診断支援装置の形態について、図に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態による診療情報処理装置を適用した医療情報システムの概略構成を示す図であり、図2は、第1の実施形態における診療情報処理装置の機能ブロック図である。本実施の形態では、図1に示すように、本願発明の診療情報処理装置1がHIS2、RIS3などの情報システムにネットワークで接続されている場合について説明する。これらの情報システムでは、各病院内の棟・エリア・業務区間に応じてHIS端末22やRIS端末32やレポート端末33が分散して設置され、これらの端末はネットワーク36で相互接続される。さらに、RIS3には患者を撮影するモダリティ34や患者の画像を保管するDICOMサーバ31が設けられ、HIS2には電子カルテ200用の保管サーバ21が設けられているものとする。
【0047】
例えば、HIS端末22で受付入力をすると、保管サーバ21の電子カルテ200に登録され、各診療科で診察した内容や検査結果が電子カルテ200に記録される。また、RIS端末32からオーダ情報が入力され、RIS端末32はオーダ情報に応じた撮影を各モダリティ34に指示する。撮影された医用画像300は各モダリティ34からDICOMサーバ31に送信されて記憶保管される。
【0048】
RIS端末32は、検査・診断業務に必要とする医用画像300をDICOMサーバ31から取り出して表示する機能を備え、レポート端末33では検査や実施した診療の状況をレポート表示する機能を備えている。また、必要に応じてRIS端末32からCAD装置35に指示すれば、DICOMサーバ31に記憶保管されている画像に対して各種の画像処理を施し、その結果をRIS端末32やレポート端末33から確認することができる。さらに、検査結果の情報や実施状況に関する情報は電子カルテ200にも登録される。
【0049】
本実施形態における診療情報処理装置1は、ネットワークを介して接続された診療情報管理サーバ10と診療科端末11により構成される。診療情報管理サーバ10と診療科端末11は、CD−ROM等の記録媒体からインストールされたプログラムによって制御されて、本実施形態の診療情報処理装置1として機能する。また、プログラムは、インターネット等のネットワーク経由で接続されたサーバの記憶装置からダウンロードされた後にインストールされたものであってもよい。
【0050】
診療情報管理サーバ10は、データベース管理システム(DataBase Management System: DBMS)の機能を提供するソフトウェアプログラムを組み込んだ汎用の比較的処理能力の高いコンピュータ13と、後述の登録症例情報を記憶する大容量ストレージにより構成された診療情報データベース12を備えている。なお、このストレージは、大容量のハードディスク装置であってもよいし、ネットワークに接続されているNAS(Network Attached Storage)やSAN(Storage Area Network)に接続されたディスク装置であってもよい。
【0051】
診療情報管理サーバ10は、図2に示すように、比較対象となる複数の患者の臨床情報に関する複数の項目を複数の分類に区分け可能な臨床情報項目としてそれぞれ対応付けた多数の登録症例を備えてなる尤度比算出用の登録症例情報と比較対象となる複数の患者の臨床情報に関する複数の項目を複数の分類に区分け可能な臨床情報項目としてそれぞれ対応付けた多数の登録症例を備えてなる類似度算出用の登録症例情報をそれぞれ取得する登録症例情報取得部101と、尤度比算出用の登録症例情報に基づいて、登録症例に対応付けられた臨床情報項目のうちの1つであるキー項目の分類ごとに、登録症例に含まれる複数の臨床情報項目のうちキー項目を除く他の臨床情報項目の各分類について、他の臨床情報項目の各分類に該当する場合にキー項目の1つの分類に該当する尤度と、他の臨床情報項目の各分類に該当する場合に、キー項目の1つの分類以外の他の分類に該当する尤度との尤度比をそれぞれ算出することにより、登録症例に含まれるキー項目の分類ごとに他の臨床情報項目の各分類に対応する尤度比を対応付けた尤度比情報を算出する尤度比情報算出部102と、対象臨床情報項目の対象分類および尤度比情報に基づいて、キー項目の分類ごとに他の臨床情報項目の各分類に対応する各重み付け係数をそれぞれ決定することにより、キー項目の分類ごとに他の臨床情報項目の各分類に対応する重み付け係数を対応付けた重み付け係数情報を決定する重み付け係数決定部103と、類似度算出用の登録症例情報に含まれる登録症例ごとに、決定された重み付け係数情報に基づいて、登録症例の各キー項目の分類と他の臨床情報項目の分類に対応する重み付け係数を特定し、特定した重み付け係数を用いて類似度を算出する類似度算出部104と、ネットワークを介して接続された各端末からの要求に応じて、算出された類似度に基づいて所望の登録症例を診療情報データベース12から検出して要求元に出力する類似症例出力手段105を備える。
【0052】
なお、本明細書における第1実施形態においては、尤度比算出用の登録症例情報と類似度算出用の登録症例情報は全部が重複するものであるが、尤度比算出用の登録症例情報と類似度算出用の登録症例情報は互いに異なるものであってもよく、一部のみが重複するものであってもよい。
【0053】
また、診療科端末11は、診療科の医師が画像の詳細観察や読影レポートの閲覧、電子カルテの閲覧・入力等に利用するコンピュータであり、CPU、主記憶装置、補助記憶装置、入出力インターフェース、通信インターフェース、入力装置、表示装置、およびデータバス等の周知のハードウェア構成を備え、周知のオペレーションシステム等がインストールされたものであり、汎用の処理装置(コンピュータ)115と1台または2台の高精細ディスプレイ113とキーボード・マウス等の入力装置114により構成される。
【0054】
診療科端末11の処理装置115は、キーボードなどの入力装置114から入力された対象患者の複数の臨床情報項目の分類をそれぞれ対象臨床情報項目の対象分類として取得する対象症例取得部112と、類似症例出力手段105から出力された登録症例など、ネットワークを介して接続された各機器から送られた情報を各情報に応じた表示態様でディスプレイ113に表示させる表示制御部111を備えている。また、診療科端末11には、診療科端末の医師などの作業を支援するためのソフトウェアが組み込まれており、各診療情報の閲覧や登録などの作業は、各処理のためのソフトウェアプログラムの実行により行われる。
【0055】
図3は、登録症例を表す図である。また、図4、図5に、本実施形態の診療情報処理を対象患者の臨床情報項目の取得処理の前後で2段階に分けてフローチャートで示す。図5は、対象患者の臨床情報項目の取得処理以降に実施される処理であり、図4は、対象患者の臨床情報項目の取得の有無に関わらず、ユーザの設定に応じた任意のタイミングで実施される処理である。
【0056】
類似度算出処理、尤度比算出処理または後述のキー項目推定処理に用いられる各登録症例は、比較対象の患者の臨床情報項目を1つの病気毎に登録したものである。図3に示すように、本実施形態では、臨床情報項目として、診断病名、年齢、発熱、咳嗽の程度、喀痰の程度、白血球数(WBC)を登録している。なお、臨床情報項目は、例えば、患者基本情報、主訴、生活歴、既往歴、家族歴、各種検査結果データ、各種画像所見および画像特徴量、治療実施内容、遺伝子情報などである。
【0057】
本実施形態による診療情報管理サーバ10は、ネットワークを介して接続された各データベースに記憶された電子カルテやレポートが作成された症例を検索して取得し、取得した症例を登録症例として新規登録するとともに、これらの登録症例情報に基づいて尤度情報算出処理および重み付け係数算出処理を行う。症例取得処理、尤度情報算出処理および重み付け係数算出処理は、所定の時間に定期的に行うよう設定されているものとするが、各端末からの症例追加要求に応じて任意のタイミングでも行うことができるものとする。
【0058】
まず、診療情報管理サーバ10は、各データベースに記憶された電子カルテなどから、新たに登録症例として登録するための未登録の症例を取得するとともにその症例の臨床情報項目を抽出して、診療情報管理サーバのメモリに読み込む(ST01)。そして、抽出した臨床情報項目に診断病名が存在しない場合には(ST02のN)、抽出した臨床情報項目を対応付けて新たな登録症例として診療情報データベースに追加する(ST06)。
【0059】
一方、抽出した臨床情報項目に含まれる診断病名が存在する場合には(ST02のY)、登録症例情報取得部101は、抽出した臨床情報項目を対応付けた新たな症例および診療情報データベース12に記憶された登録症例の両方を登録症例として取得する(ST03)。
【0060】
次いで、尤度比情報算出部102は、尤度比算出用の登録症例情報に基づいて頻度情報を作成する(ST04)。図6に、頻度情報の一例を示す。頻度情報は、各登録症例の臨床情報項目を分類分けすると共に、臨床情報項目のうちの1つであるキー項目の分類ごとに、キー項目を含む登録症例の全数と、キー項目の各分類に該当する症例数を算出したものである。ここでは、キー項目の分類として病名を用いる。
【0061】
図6に示すように、頻度情報には、登録症例のうち複数の臨床情報項目(年齢、発熱(体温)、咳、喀痰、白血球数)の各分類に該当する全件数と、これらの複数の臨床情報項目の各分類に該当する登録症例の病名ごとの件数とが算出されている。例えば、図6において、発熱が37歳未満の登録症例の全件数は24件であり、このうち診断された病名が肺炎球菌肺炎に該当する登録症例は2件である。また、発熱が37度以上38度未満の登録症例の全件数は38件であり、このうち診断された病名が肺炎球菌肺炎に該当する登録症例は1件である。また、発熱が38度以上の登録症例の全件数は67件であり、このうち、診断された病名が肺炎球菌肺炎に該当する登録症例は13件である。
【0062】
臨床情報項目の分類は、臨床情報項目をその種類や臨床情報項目を示す値の範囲に応じて分けたものであり、医学的判断基準に基づいて医師らにより任意に決定される。ここでは、年齢を、年齢に対応する平均的な病気の発生率などの種々の医学診断上指針に基づいて、40歳未満、40歳以上65歳未満、65歳以上、の3つの分類に分けている。また、発熱(体温)、咳、喀痰、白血球数を、それぞれ臨床データなどから得られた医学上の指針に基づいて、正常範囲と異常範囲とに分け、さらに異常範囲を異常の程度に応じて2段階に分けて、合計3段階に分類している。なお、臨床情報項目の分類は、医療現場の要求などに応じて、任意の段階に分けて設けることができる。
【0063】
続いて、尤度比情報算出部102は、各臨床情報項目の各分類について、[病名が疾患Xである確からしさ]/[病名が疾患Xでなかった確からしさ]である尤度比をそれぞれ算出する(ST05)。そして、疾患頻度情報に含まれる全ての病名に対して、上記尤度比の算出を繰り返す。
【0064】
ここで、尤度比は、各臨床情報項目の独立性を仮定し、ベイズの定理に基づいて算出される。ベイズの定理によれば、各臨床情報(A,B,C・・・・)が独立ならば臨床情報(A,B,C・・・・)が決まる以前の病名が疾患Xである確率P(X)に対して、診療情報決定後の病名が疾患Xである確率P(X|A,B,C,・・・・・)は、以下の式(1)のように表すことができ、同様に、病名が疾患Xでない確率~Xは以下の式(2)のように表すことができる。
P(X|A,B,C,・・・・) = P(A|X) * P(B|X) * P(C|X) ・・・ * P(X)/P(A,B,C,・・・)・・(1)
P(~X|A,B,C,・・・・) = P(A|~X) * P(B|~X) * P(C|~X) ・・・ * P(~X)/P(A,B,C,・・・)・・(2)
臨床情報項目の各分類αの尤度比LR(α)を以下の式(3)のように定義する。
LR(α)=P(α|X)/P(α|~X)・・・(3)
上記式(1)、(2)を用いると、以下の式(4)が定義できる。
P(X|A,B,C,・・・・)/ P(~X|A,B,C,・・・・)= LR(A)*LR(B)*LR(C)*・・・・* P(X)/ P(~X) ・・(4)
すなわち、疾患Xである可能性の大きさは、式(4)に示すように、個々の臨床情報項目の尤度比LR(A)、LR(B)、LR(C)、・・の積により表すことができる。
【0065】
図7に、図6の頻度情報に基づいて算出された尤度比情報の一例を示す。例えば、病名が肺炎球菌肺炎であって、臨床情報項目である発熱が38度以上を表す分類である場合には、以下のように尤度比を算出する。
[38度以上の発熱をする場合に病名が肺炎球菌であることの確からしさ]
=[38度以上の発熱に該当する場合に病名が肺炎球菌肺炎である症例数]/[病名が肺炎球菌肺炎の症例数]
=13/(2+1+13)=0.81
[38度以上の発熱をする場合に肺炎球菌以外の病名であることの確からしさ]
=[38度以上の発熱に該当する場合に病名が肺炎球菌肺炎以外に該当する症例数]/[肺炎球菌肺炎以外の病名に該当する症例数]
=(67-13)/((24+38+67)-(2+1+13))=0.48
尤度比=「38度以上の発熱をする場合に病名が肺炎球菌肺炎である確からしさ」/「38度以上の発熱をする場合に病名が肺炎球菌肺炎以外である確からしさ」=0.81/0.48=1.69
なお、上記例において、「38度以上の発熱に該当しない場合に病名が肺炎球菌肺炎に該当する症例数」は、病名が肺炎球菌肺炎に該当する全体数(67)から、38度以上の発熱であって病名が肺炎球菌肺炎である症例数(13)を減算することにより算出している。また、[肺炎球菌肺炎以外の病名に該当する症例数]は、全ての症例数(24+38+67)から、病名が肺炎球菌肺炎に該当する症例数(2+1+13)を減算することにより算出している。
【0066】
また、診療情報管理サーバ10は、その後、新たな症例を登録症例として登録症例データベースに追加する(ST06)。
【0067】
なお、本実施形態に限られず、ST06の登録症例追加処理は、ST02乃至ST05に先だって行ってもよい。
【0068】
上記のように、定期的に上記ST01〜ST06の処理を行うようにした場合には、新たな症例を加味して、尤度比情報を更新できるため、尤度比情報に基づいて決定される重み付け係数も新たな症例を加味して算出することができ、精度良く類似度を算出することができる。また、自動的に登録症例を追加できるため、登録症例の更新の労力を削減でき効率的である。
【0069】
次に図5を用いて、本実施形態の診療情報処理方法によって、対象患者の臨床情報項目取得処理から対象患者の臨床情報項目に類似する類似症例を抽出して表示する処理を説明する。
【0070】
ここでは、診療科端末11から診療科の医師が、治療または診断の対象となる対象患者の対象症例を元に比較対象の患者の類似症例を抽出して診断に利用する場合を例に説明する。
【0071】
まず、対象症例取得部112は入力装置114によりユーザの入力を受け付けて、対象患者の臨床情報項目を取得する(ST11)。ここでは、対象患者の症例である対象症例として、年齢:50歳、発熱(体温):38.9度、咳:高度、喀痰:高度、白血球数:8000という情報を取得したものとする。そして、各対象臨床情報項目の分類を各対象臨床情報項目における対象分類として取得する。
【0072】
そして、重み付け係数決定部103は、各対象臨床情報の対象分類および尤度比情報に基づいて、キー項目の分類ごとに、他の臨床情報項目の各分類に対して、尤度比が大きいほど重み付け係数が大きくなるように各重み付け係数をそれぞれ決定する(ST12)。そして、キー項目の分類ごとに他の臨床情報項目の各分類に対応する重み付け係数を対応付けた重み付け係数情報を決定する。図8に、重み付け係数情報の例を示す。また、重み付け係数決定部103は、各臨床項目について、対象分類の重み付け係数に対して、対象分類以外の分類に対応する重み付け係数が相対的に大きくならないように重み付け係数を決定するように、対象分類に対応する重み付け係数と対象分類以外の分類に対応する重み付け係数の重み付け方法を異ならせている。臨床情報項目が対象分類に該当する症例が、臨床情報項目が対象分類以外の分類に該当する症例よりも対象症例により類似していると評価されるようにするためである。
【0073】
重み係数決定部103は、以下の指針1)乃至3)に基づいて重み付けを行ったものを最終的な重み付け係数として決定する。
【0074】
指針1)対象症例と登録症例の間の臨床情報項目の分類が一致し、かつ、尤度比が1(第1のしきい値)以上の場合、重み付け係数を尤度比に応じて高くする。
指針2)対象症例と登録症例の間の臨床情報項目の分類が一致し、かつ、尤度比が1(第2のしきい値)未満の場合、その臨床情報項目の分類とキー項目の分類の関連性はほとんど無いとして重み付け係数をより重みが小さくなるように重み付けする。例えば、重み付け係数を0など低い値にする。
指針3)対象症例と登録症例の間の臨床情報項目の分類が一致しない場合、各対象臨床情報項目における対象分類に対応付けられた尤度比と登録症例の臨床情報項目の分類に対応付けられた尤度比のうち低い方の尤度比を元に、この尤度比が1(第3のしきい値)以上の場合は、その臨床情報項目の分類とキー項目の分類の関連性が多少あるとして重み付け係数を尤度比に応じて高くし、尤度比が1(第4のしきい値)未満の場合はその臨床情報項目の分類とキー項目の分類の関連性はないものとして尤度比が低いほど重み付け係数を小さい重み付けになる様に重み付けする。例えば、重み付け係数を負の値などの小さい値にする。
【0075】
指針1)について、例えば、ある臨床情報項目の分類Zである場合に特定の疾患Y(キー項目の分類)に該当する尤度比が大きい場合、その尤度比は臨床情報項目の分類に該当すれば疾患Yに該当する可能性が大きい(キー項目の分類Yと臨床情報項目の分類との関連性が深い)ことを表している。このため、重み付け係数を尤度比に応じて大きくなるように重みづけるようにすることで、キー項目の分類Yと臨床情報項目の分類との関連性が深い項目の分類に対しては、類似度の算出に対する影響を大きくし、キー項目の分類Yと臨床情報項目の分類との関連性が少ない項目の分類に対しては、類似度の算出に対する影響を小さくすることができる。このため、キー項目の分類と関連性の少ない臨床情報項目の分類が類似度の算出に必要以上に影響することを抑制できるので、精度よく類似度を算出することができる。また、尤度比が1(第1のしきい値)以上の場合に、臨床情報項目の分類とキー項目の分類の関連性が深いと推定して尤度比が大きいほど重み付け係数が大きくなるように重み付け係数を決定するため、キー項目の分類Yと関連性が深いと認められる臨床情報項目の分類Zに対して、キー項目の分類Yの関連性が少ない臨床情報項目の分類をより差別化して重み付け係数を決定することができる。つまり、キー項目の分類(病名X)と関連性が深いと認められる臨床情報項目の分類を有する登録症例を、病名Xに該当する確からしさが大きい症例としてより類似度を上げることができる。
【0076】
指針2)について、尤度比が所定値(第2のしきい値)より小さい場合、臨床情報項目の分類とキー項目の分類の関連性はほとんど無いと推定して重み付け係数をより重みが小さくなるように重み付けしている。キー項目の分類(病名)と関連性の少ない臨床情報項目の分類に対応する重み付け係数をさらに小さくしているので、キー項目の分類(病名)に関連性の深い臨床情報項目の分類に対してキー項目の分類(病名)の少ない臨床情報項目の分類をさらに差別化して重み付け係数を決定することができる。
【0077】
また、指針3)について、対象症例と登録症例の間の臨床情報項目の分類が一致しない場合、各対象臨床情報項目における対象分類に対応付けられた尤度比と登録症例の臨床情報項目の分類に対応付けられた尤度比のうち低い方の尤度比を用いて重み付け係数を決定している。これは、従来技術のように臨床情報項目の分類が対象分類と一致(値の近さ)しているもののみを大きく重みづけるという基準ではなく、同じ臨床情報項目のうち、対象分類とは異なる分類であっても、キー項目の分類に該当する確からしさの効果(尤度比)が同等ならば、キー項目の分類に対する臨床情報項目の異なる分類と対象分類は医学的には同等の関連性の深さを有するという考えに基づく。例えば、図7のマイコプラズマの例でWBCが7900未満と7900以上12000未満に対応する尤度比は1.4とそれぞれ同等である。マイコプラズマに該当する場合には、WBCが7900未満にも、7900以上12000未満にも同じくらいの確からしさで該当しうるため、両者を区別する必要なく、WBCが7900未満に該当する場合も、7900以上12000未満に該当する場合も同じようにマイコプラズマに該当する確からしさを持つと評価して重み付け係数を決定する。なお、同じ臨床情報項目における対象分類の尤度比と対象分類以外の分類の尤度比のうち小さい方を用いるのは、対象分類の重み付け係数に対して、対象分類以外の分類に対応する重み付け係数が相対的に大きくならないように重み付け係数を決定するためである。
【0078】
具体的には、上記指針1)乃至3)に基づいて、以下のように重み付けを行う。
(i)各対象臨床情報項目における対象分類と臨床情報項目の分類が一致し、かつ、尤度比が1以上である場合、重み付け係数を尤度比の対数値とする。
(ii)各対象臨床情報項目における対象分類と臨床情報項目の分類が一致し、かつ、尤度比が1未満である場合、重み付け係数を0とする。
(iii)各対象臨床情報項目における対象分類と臨床情報項目の分類が不一致である場合、各対象臨床情報項目における対象分類と一致する臨床情報項目の分類に対応する尤度比と、各対象臨床情報項目における対象分類と不一致である臨床情報項目の分類に対応する尤度比のうち、小さい方の対数値を重み付け係数とする。
【0079】
ここでは、上記(i)、(iii)に示すように、各臨床情報項目に対応する尤度比を対数変換したものを用いて重み付け係数を算出する。比率の情報の効果を全臨床情報項目の効果としては加減算として扱うことができるからである。臨床情報項目の各分類の尤度比を対数変換した値の和は、臨床情報項目の各分類の尤度比の乗算値を対数変換した値と等しいため、臨床情報項目の各分類の尤度比を対数変換した値を重み付け係数として決定し、臨床情報項目の各分類の重み付け係数の総和を類似度の評価に用いることにより、臨床情報項目の各分類の尤度比の乗算値を類似度の評価に反映できる。式(4)に示すようにキー項目(病気X)に該当する確からしさは、各臨床情報項目の尤度比の乗算値の関数であるため、各臨床情報項目の尤度比を対数変換した値の和を用いて類似度の算出を行うことにより、キー項目に該当する確からしさを好適に反映して精度よく類似度の評価を実施できる。
【0080】
なお、本実施形態に限定されず、重み付け係数決定部103は、尤度比情報に基づいて尤度比が大きいほど重み付けが大きくなるように重み付け係数を決定するものであれば、種々の方法で重み付け係数を決定してよい。例えば、尤度比の値をそのまま重み付け係数として用いてもよい。
【0081】
また、上記(ii)について、尤度比が1以下の場合は、その尤度比に対応する登録症例の分類に該当する場合に、キー項目の分類(病名)に該当する可能性が少ないので重み付け係数を0としている。なお、尤度比が1以下の場合に、臨床情報項目の分類とキー項目の分類の関連性はほとんど無いと推定して重み付けを小さくするように重み付け係数を決定するものであれば、例えば、重み付け係数をマイナスとなるように(負の値を大きくするように)重み付けしてもよい。この場合には、キー項目の分類(病名)に関連性の深い臨床情報項目の分類に対してキー項目の分類(病名)の少ない臨床情報項目の分類をさらに差別化して重み付け係数を決定することができる。
【0082】
また、上記(iii)について、対象症例の前記臨床情報項目における対象分類に対応する尤度比または、臨床情報項目における対象分類以外の分類に対応する尤度比のいずれかが1(第4のしきい値)より小さい場合に、該各対象臨床情報項目における該対象分類以外の分類に対応する重み付け係数が負の値になるように重み付けを行ってもよい。この場合には、キー項目の分類(病名)に関連性の深い臨床情報項目の分類に対してキー項目の分類(病名)の少ない臨床情報項目の分類をさらに差別化して重み付け係数を決定することができる。
【0083】
上記第1のしきい値および第3のしきい値は、尤度比の値に基づいて、キー項目の分類に対する臨床情報項目の分類の関連の深さ(臨床情報項目の分類である場合にキー項目の分類となる確からしさ)がある程度大きいものと評価できる数値であれば任意に設定でき、1以上2以下の値であることが好ましい。例えば、第1および第3のしきい値を1とすることが好適である。また、第1のしきい値と第3のしきい値を同じ値にしてもよく、異なる値にしてもよい。
【0084】
上記第2のしきい値および第4のしきい値は、尤度比の値に基づいて、キー項目の分類に対する臨床情報項目の分類の関連の深さ(臨床情報項目の分類である場合にキー項目の分類となる確からしさ)がある程度小さいものと評価できる数値であれば任意に設定でき、1以下0.5以上の値であることが好ましい。なお、第2のしきい値は、第1のしきい値以下の値に設定され、第4のしきい値は第3のしきい値以下の値に設定されるものとする。例えば、第2および第4のしきい値を1とすることが好適である。また、第2のしきい値と第4のしきい値を同じ値にしてもよく、異なる値にしてもよい。
【0085】
なお、重み付け係数決定部103は、重み付け係数情報のうち、キー項目の各分類に対応付けられた重み付け係数であって、各対象臨床情報項目における対象分類に対応する重み付け係数を、重み付け係数情報のうち、キー項目の該分類に対応付けられた重み付け係数であって、各対象臨床情報項目における対象分類以外の他の臨床情報項目の各分類に対応する重み付け係数よりも相対的に重み付けが大きくなるようにさらに重み付けを行うものであれば、任意の重み付け方法を適用することができ、例えば、対象症例の臨床情報項目における対象分類と一致する臨床情報項目の分類に対して、より重み付けが大きくなるように重み付けを行ってもよく、対象症例の臨床情報項目における対象分類と一致しない登録症例の臨床情報項目の分類に対して、対象症例の臨床情報項目における対象分類と登録症例の臨床情報項目の分類との不一致の度合いに基づいて、不一致の度合いが大きくなるほど重み付けが小さくなるように重み付けを行ってもよい。
【0086】
図8に示す類似度決定情報の例においては、例えば、まず図7に示す尤度比情報の各尤度をそれぞれ対数変換する。なお、図8においては、対象情報の対象分類は、太枠で示す。例えば、対象症例の臨床情報項目の年齢が50歳であるため、臨床情報項目における対象分類は、年齢40歳以上65歳未満となる。
【0087】
そして、(i)により、対象症例の臨床情報項目における対象分類(太枠部分)に該当し、かつ、尤度比が1以上の分類については、尤度比を対数変換した値をそのまま重み付け係数として決定する。また、(ii)により、各対象臨床情報項目における対象分類(太枠部分)に該当し、かつ、尤度比が1未満の分類については、重み付け係数を0にする。例えば、年齢40歳以上65歳未満に対応付けられた各尤度比のうち、マイコプラズマ、肺結核、瀰漫性汎気管支炎に対応付けられた尤度比はそれぞれ、0.7、0.6、0.8であって1より小さいため、年齢40歳以上65歳未満に対応付けられた各尤度比のうち、マイコプラズマ、肺結核、瀰漫性汎気管支炎に対応付けられた重み付け係数は0となっている。また、(iii)により、各対象臨床情報項目における対象分類と臨床情報項目の分類が不一致である場合(太枠部分以外)、各対象臨床情報項目における対象分類と一致する臨床情報項目の分類に対応する尤度比と、各対象臨床情報項目における対象分類と不一致である臨床情報項目の分類に対応する尤度比のうち、小さい方の対数値を重み付け係数とする。例えば、対象分類と一致しない分類である年齢65歳以上の重み付け係数を決定する場合、肺炎球菌肺炎に対応する尤度比において、対象分類と一致しない分類である年齢65歳以上に対応付けられた尤度比1.7と、対象分類と一致する分類である年齢40歳以上65歳未満に対応付けられた尤度比1.2を比較し、小さい方の尤度比1.2の対数値0.2を、病名が肺炎球菌肺炎であって、年齢65歳以上の分類に対応する重み付け係数として決定する。
【0088】
上記のように、尤度比に基づいて重み付け係数を算出した場合には、「臨床情報項目が特定の分類に該当する場合にキー項目が特定の分類に該当している(上記例では38度以上の発熱であって、病名が肺炎球菌肺炎である)確からしさ」(式(3)に示すP(A|X))と、「臨床情報項目が特定の分類に該当する場合にキー項目が特定の分類以外の分類に該当している(38度以上の発熱であって、病名が肺炎球菌肺炎以外である)確からしさ」(式(3)に示すP(A|~X))との両方を用いているため、「臨床情報項目が特定の分類に該当する場合に、キー項目が特定の分類に該当している確からしさ」(式(3)に示すP(A|X))だけに基づいて重み付け係数を決定した場合よりも、各キー項目に対して正確に確からしさを反映して重み付け係数を決定することができる。
【0089】
上記の尤度比算出処理または重み付け情報算出処理において、キー項目の分類に登録症例の数が非常に少ない場合などは、そのキー項目の分類に対応づけられた各臨床情報項目の各分類の頻度あるいは尤度比を表す値の数値の補正を行うことが好ましい。
【0090】
次いで、類似度算出部104は、登録症例情報をメモリなどの記憶手段に取得する(ST13)。そして、類似度を算出されていない登録症例が存在する場合には(ST14のY)について、各登録症例の臨床情報項目を表す値に対応する重み付け係数を図8に示す重み付け係数情報から取得する。そして、登録症例の臨床情報項目について、登録症例の各キー項目の分類(病名)と他の臨床情報項目の分類とに対応する重み付け係数を抽出して、類似度決定情報を算出する。図9に、図3に示す登録症例情報および図8に示す重み付け情報に基づいて算出した類似度決定情報の例を示す。そして、登録症例に対して抽出された重み付け係数を積算した値を登録症例と対象患者の症例との類似度として算出する(ST15)。
【0091】
図3、図8、図9を用いて、図3における症例1の類似度の算出方法を具体例として説明する。図3に示すように、症例1は、病名が肺炎球菌肺炎であり、年齢が62歳である。類似度算出部104は、この病名および年齢に該当する重み付け係数を、図8に示す重み付け係数テーブルに基づいて、病名が肺炎球菌肺炎であって、65歳より年上の年齢に対応付けられた0.2という値に決定する。同様に、類似度算出部104は、登録症例の病名とその他の臨床情報項目の各分類に対応する重み付け係数を臨床情報項目ごとに抽出し、図9に示すように類似度決定情報を算出する。
【0092】
そして、図9に示すように症例1の各臨床情報項目である年齢、発熱(体温)、咳嗽、喀痰、WBCのそれぞれに対して決定された重み付け係数である、0.2、0.5、−0.5、−0.5、0を積算し、算出された値である−0.3(=0.2+0.5+(−0.5)+(−0.5)+0)を類似度として決定する。
【0093】
一方、類似度を算出されていない登録症例がない場合には(ST14のN)、類似度順に登録症例をソートして類似症例リストを作成する(ST16)。
【0094】
そして、類似症例出力手段105は、類似症例リストのうち、算出された類似度が所定値よりも大きいものを、対象患者の対象症例と類似する類似症例として抽出し、抽出された類似症例に関連する情報(類似症例情報)を、ネットワークを介して保管サーバ21やDICOMサーバ31などを検索し、検索した類似症例情報を診療科端末11に出力する。
【0095】
診療科端末11に備えられた表示制御部111は、設定された表示オプションに沿って、受け取った類似症例情報をディスプレイ113に表示する(ST17)。図10は、類似症例のリスト表示の例を示す図であり、図11は類似症例の詳細表示の例を示す図である。表示制御部111はここでは、類似度の大きい順に類似症例を表示している。また、表示制御部111は、予め設定された表示オプションに従って、各類似症例について、症例の概要が分かる情報を表示する。ここでは、類似症例毎に、類似度と、年齢と性別からなる患者基本情報と、病名と、治療(投薬)内容と、主な症状(ここでは体温と主訴の内容)を表す主訴サマリと、検査結果と、診断画像のサムネイルを表示している。また、この表示オプションは、ユーザの要求に応じて表示項目や配置や症例の並び順などを任意に設定可能であるものとする。なお、表示制御部111は、類似度に基づいて、登録症例ごとに尤度比が所定値以上の臨床情報項目の各値や種類を含むように、類似度の大きい順に登録症例をリスト表示している。
【0096】
さらに、表示制御部111は、図11に示すように、一覧表示された類似症例のうち、ユーザの指定した類似症例を詳細表示することができる。例えば、ユーザが図10のサムネイルを入力装置114で指定すると、その指定を受け付けて、表示制御部111が、指定されたサムネイルに対応する類似症例の詳細データをディスプレイ113に表示する。また、表示制御部111は、詳細情報表示において、重み付け係数の値が高い臨床情報項目の分類に対しては、識別可能に表示する。図11に示す例では、重み付け係数の値が高い臨床情報項目の咳嗽は二重太枠で識別表示されており、重み付け係数のやや高い臨床情報項目である発熱、白血球数は、太枠により識別表示されており、重み付け係数が低い臨床情報項目である喀痰については文字の色をグレーにすることにより識別表示されている。
【0097】
上記診療情報処理装置において、登録症例情報に基づいて、登録症例に対応付けられたキー項目の各分類ごとに、登録症例に含まれる他の臨床情報項目の各分類について、他の臨床情報項目の各分類に該当する場合にキー項目の1つの分類に該当する尤度と、他の臨床情報項目の各分類に該当する場合にキー項目の1つの分類以外の他の分類に該当する尤度との尤度比をそれぞれ算出し、キー項目の分類ごとに他の臨床情報項目の各分類について、尤度比情報に基づいて算出された尤度比が大きいほど重み付けが大きくなるように各重み付け係数を決定している。このため、臨床情報項目の分類の分布が判断できる程度の少数の症例があれば、重み付け係数を決定でき、比較的少ない症例であっても類似度を正確に算出することができる。このため、過去の症例が比較的少ない病院などにも広く適用することができ、実用的である。
【0098】
また、各重み付け係数が、キー項目の1つの分類に該当する尤度だけでなく、その1つの分類に該当しない尤度の両方を反映して決定することができ、比較対象となる患者の症例が少ない場合であっても、キー項目の1つの分類に該当する尤度(確からしさ)のみに基づいて重み付け係数を決定する場合よりも、より正確に重み付け係数を決定することができる。
【0099】
また、病名などの診断上重要な特徴を表す臨床情報項目(キー項目)に基づいて、各臨床情報項目の分類ごとに、特定のキー項目の分類に該当する確からしさを表す尤度が大きくなるほど重み付けが大きくなるよう各重み付け係数を決定しているため、病名などのキーとなる臨床情報項目の分類に応じた特徴を適切に反映して、対象患者の症例と登録症例との類似度を正確に算出することができる。これに対し、特許文献1の方法によれば、病名に応じて関連性の深い症状が異なるというような臨床情報項目の特徴に応じた重み付けを行って類似度を算出することができない。また、特許文献2の方法によれば、重み付けのための影響度を決定する際に、病名に応じて関連性の深い臨床情報項目の分類が異なるというような臨床情報項目の特徴を反映していないため、臨床情報項目の特徴を適切に反映して重み付け係数を決定することができない。
【0100】
また、各病気の症例数の影響を受けやすい確率を単純に用いて類似度を算出した場合には、まれな症例は確率的には非常に小さくなってしまうため、類似症例として抽出されにくいものとなるが、尤度は各病名(キー項目の分類)に該当する確からしさを表しているため、症例数の影響を受けにくい。このため、症例数が少ない病名に関する症例であっても、症例数の多い他の病名に関する症例によって妨げられることがなく類似症例として抽出できる。
【0101】
また、上記診療情報装置によれば、自動的に重み付け係数を適切に決定することができるため、診断に不慣れな人であっても容易に類似度を算出できる。これに対し、重み付け係数の重み付けをユーザの設定により指定した場合には、その設定は医師などの医学診断の専門的な知識を持つユーザに限定されてしまい、また、設定の手間もかかる。
【0102】
なお、類似度の算出方法は、上記のように重み付け係数の積算したものを類似度として算出する方法に限られず、対象症例の臨床情報項目に対する登録症例の臨床情報項目の重み付け係数の距離を、類似度を表す指標として算出し、距離が小さいものを類似症例として判断してもよい。
【0103】
表示制御部111が類似度順に類似症例をリスト表示するため、医師らのユーザは、類似症例リストから、臨床情報項目の類似する症例の病名や詳細な治療内容などの診断データを参照することができ、効率よく正確に対象患者の病名の推測や、対象患者の治療方針の決定をすることができる。
【0104】
また、表示制御部111が、算出された類似度に基づいて、登録症例ごとに尤度比または重み付け係数が所定値以上の臨床情報項目の分類に関する情報を含むように前記登録症例をリスト表示するものであるため、キー項目と臨床情報項目の関連が大きい項目の分類を容易に把握できる。
【0105】
また、表示制御部111が、重み付け係数に基づいて、重み付けの大きい臨床情報項目については識別可能に表示するため、医師らは、類似症例と対象患者の症例との類似している部分を容易に把握できる。また、表示制御部111が、重み付け係数に基づいて、重み付けの小さい臨床情報項目については識別可能に表示するため、医師らは、類似症例と対象患者の症例とが類似していない部分を容易に把握できる。
【0106】
また、表示制御部111が、ユーザの選択操作に基づいて選択された症例情報について詳細な情報を表示できるため、ユーザの手間を軽減できるだけでなく診断上必要な情報を十分抽出してユーザに提示することができる。
【0107】
第2の実施形態について以下に説明する。第2実施形態は、第1の実施形態の診療情報処理装置について、尤度比を算出するために用いる登録症例を限定する、または、類似度を算出する対象となる登録症例を限定する機能を設けたものである。図12は、第2の実施形態の機能ブロックを表す図である。
【0108】
図12に示すように、第2の実施形態の診療情報処理装置1は、登録症例情報取得部101が、キー項目推定用の登録症例をさらに取得するものである点と、対象患者の症例に基づいて、対象患者の臨床情報項目のうちキー項目の分類(病名)を推定するキー項目推定部106を備えている点と、尤度比情報算出部102が、登録症例情報のうち、推定されたキー項目の分類に該当する登録症例のみを尤度比算出用登録症例として抽出する尤度比算出症例抽出部107を備えており、抽出された尤度比算出用登録症例のみに基づいて尤度比情報を算出するものである点と、類似度算出部104が、登録症例情報のうち、推定されたキー項目の分類に該当する登録症例のみを類似度算出用登録症例として抽出する類似度算出症例抽出部108を備えており、抽出された類似度算出用登録症例のみに基づいて類似度を算出するものである点とが第1の実施形態と異なる。
【0109】
図13は、第2の実施形態の対象患者の臨床情報項目を取得する処理以降の流れを説明するフローチャートである。第2の実施形態において、図4に記載されたST01−ST06の処理は、第1実施形態と共通であるため説明を省略する。以下、図13のフローチャートに従って、第1の実施形態と異なる点を中心に説明し、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0110】
図13において、まず、第1実施形態と同様に対象症例取得部112が対象患者の臨床情報項目を取得する(ST21)。
【0111】
続いてキー項目推定部106は、図7に示す尤度比情報に基づいて、キー項目の分類ごとに、各対象臨床情報項目における対象分類に対応する尤度比を乗算した乗算値を算出し、算出された乗算値が後述の所定の条件を満たすキー項目の分類を、対象患者が該当すると推定されるキー項目の分類として仮に推定する(ST22)。
【0112】
先述のベイズの定理を用いると、対象患者のキー項目が分類X(病名が疾患X)である確からしさの指標LRXは、(4)の式より以下のように求められる。
LRX = LR(A)*LR(B)*LR(C)*・・・・ ・・・(5)
【0113】
本実施形態では、図6に示す頻度情報に基づいて、キー項目の分類ごとに各対象臨床情報項目における対象分類に対応する尤度比LR(α)をそれぞれ算出し、上記式(5)によりキー項目の分類ごとに尤度比を乗算することにより各キー項目の分類に該当する確からしさLRXをそれぞれ算出する。ここでは、病名が疾患Xである場合の尤度比を各臨床情報項目における対象分類についてそれぞれ算出し、算出した尤度比を乗算することにより病名が疾患Xである確からしさLRXを算出する。そして、全ての病名に対してLRXを算出し、LRXが最大となる病名が対象患者の病名であると推定する。
【0114】
具体的には、図7に示す尤度比情報のうち、対象患者の各対象臨床情報項目が属する対象分類の尤度比をそれぞれ抽出してキー項目推定情報が作成される。図14は、キー項目推定情報の例を示す図である。例えば、対象患者の症例である対象症例が、年齢:50歳、発熱(体温):38.9度、咳嗽:高度、喀痰:高度、白血球数:8000であるとすると、図7に示す尤度比情報のうち、各病名ごとに、対象症例の年齢(50歳)が属する臨床情報項目である40歳以上65歳以下の年齢に対応する尤度比、対象症例の発熱(38.9度)が属する38度以上の発熱に対応する尤度比、対象症例の咳嗽が属する高度の咳嗽に対応する尤度比、対象症例の喀痰(高度)が属する高度の喀痰に対応する尤度比、対象症例の白血球数(8000)が属する、7900以上12000未満の白血球数に対応する尤度比がそれぞれ抽出されて、図14に示すキー項目推定情報が作成される。なお、図14に示すキー項目推定情報は、図7の太枠部分のみを抽出して各病名ごとに対応付けたものと同じものとなる。
【0115】
そして、キー項目推定部106は、各病名ごとに、対応付けられた各臨床情報項目の分類に対応する尤度比を乗算して全体尤度比を算出する。図14では、例えば、肺炎球菌肺炎に対して、臨床情報項目である年齢、発熱、咳嗽、喀痰、白血球数に対して、それぞれ尤度比1.2、1,7、0.6、0.6、0.8が対応付けられている。そして、肺炎球菌肺炎に対する全体尤度比は、対応付けられた全ての尤度比を乗算した値である0.59(=1.2×1.7×0.6×0.6×0.8)となる。そして、キー項目推定部106は、図14の例では、全体尤度比が大きい病名のうち上位の所定数個の病名を対象患者の推定病名として仮に推定する。所定数は、登録症例の数など種々の条件に応じて医師らのユーザの設定により任意に設定することができる。また、全体尤度比に基づいて対象患者のキー項目の分類を推定するものであれば、いかなる方法で推定キー項目を推定してもよく、例えば、キー項目全体尤度比の所定値以上のものを対象患者のキー項目の分類として推定してもよい。
【0116】
次に、尤度比算出症例抽出部107は、複数の推定病名のそれぞれに対応付けられた登録症例を尤度比算出用登録症例として抽出する(ST23)。
【0117】
尤度比情報算出部102は、尤度比算出用登録症例のみを対象として、図4におけるST03乃至ST04と同じ方法で頻度情報を算出して、算出された頻度情報を記憶する(ST24)。次いで、尤度比情報算出部102は、記憶された頻度情報に基づいて図4におけるST05と同じ方法で尤度情報を算出して、算出された尤度情報を記憶する(ST25)。
【0118】
そして、重み付け係数決定部103は、算出された尤度情報を基に第1実施形態と同様の方法で重み付け係数を決定する(ST26)。
【0119】
次に、第2の実施形態による類似度算出症例抽出部108は、推定された複数の推定病名に基づいて、複数の推定病名にそれぞれ対応付けられた登録症例のみを類似度算出の対象となる類似度算出用登録症例として抽出する(ST27)。そして、類似度算出部104は、抽出された類似度算出用登録症例のみを取得し(ST28)、類似度をまだ算出していない類似度算出用登録症例が存在すれば(ST29のY)、図4におけるST15と同じ方法で類似度算出処理を行う(ST30)。一方、類似度をまだ算出していない類似度算出用登録症例が存在しない場合には(ST29のN)、類似度算出用登録症例を類似度順にソートし、類似症例リストを作成する(ST31)。そして、図4におけるST17と同じ方法で、類似症例リストを表示する(ST32)。
【0120】
第2の実施形態によれば、類似度の算出を所定の条件を満たす登録症例のみに限定したことにより、登録症例数が非常に多い場合にでも計算負荷を抑制しつつ高速に類似症例を抽出することができる。また、明らかに類似していないことが予め既知の登録症例を除去することにより、計算負荷を必要以上に増すことなく、高速かつ効率良く類似度を決定できる。
【0121】
また、対象症例から推定されるキー項目に基づいて、類似度算出に用いる登録症例を限定したことにより、類似度を算出する対象を、対象患者の症例と類似している可能性が高い登録症例に効果的に絞り込むことができる。また、類似度算出用登録症例を決定する条件をユーザが設定する労力を省くことができる。
【0122】
また、尤度比の算出を所定の条件を満たす登録症例のみに限定したため、明らかに関係ない症例を除くことにより、頻度情報や重み付け係数が雑多な症例の情報により影響を受けて重み付けの評価精度が低下することを防ぐことができる。例えば、多様な種類を有する肺炎などの病名に対応付けられた登録症例に限定して尤度情報の算出を行うことにより、各肺炎の種類による特徴の違いを正確に反映して重み付けを行うことができる。
【0123】
また、対象症例から推定されるキー項目に基づいて、尤度比算出に用いる登録症例を限定したことにより、尤度を算出する対象を、対象患者の症例と類似している可能性が高い登録症例に効果的に絞り込むことができる。また、尤度比算出用登録症例を決定する条件をユーザが設定する労力を省くことができる。
【0124】
なお、第2の実施形態において、尤度比算出症例抽出部107および類似度算出症例抽出部108は、上記例に限られず、尤度比算出用登録症例、類似度算出用登録症例を抽出するための所定の条件を診断現場の要求などにより任意の条件に設定してよい。例えば、医師らの入力などにより予め設定された病名に該当する登録症例であることを尤度比算出用登録症例または類似度算出用登録症例を抽出するための所定の条件にしてもよい。また、尤度比情報に基づいて、各臨床情報項目の分類に対応する各尤度比のいずれか1つ以上が所定の値(第5のしきい値)以上であることを、類似度算出用登録症例を抽出するための所定の条件にしてもよい。また、尤度比情報に基づいて、類似度算出用の登録症例のうち尤度比の大きさが所定の順番以内の尤度比に対応づけられていることを、類似度算出用登録症例を抽出するための所定の条件にしてもよい。これらの場合には、類似度算出用の症例数を限定することができるため、類似度算出処理の計算負荷を軽減して、より高速に類似度算出処理を実施することができる。
【0125】
また、第2の実施形態の診療情報処理装置1において、尤度比算出症例抽出部107および類似度算出症例抽出部108のいずれか一方を省略した構成としてもよい。
【0126】
次いで、第3の実施形態について以下に説明する。図15は第3の実施形態の機能ブロック図である。図16は、第3実施形態における診療情報処理装置1の対象患者の臨床情報項目を取得する処理以降の流れを示すフローチャートである。第3の実施形態において、図4に記載されたST01−ST06の処理は、第1実施形態と共通であるため説明を省略する。以下、第1の実施形態と異なる点を中心に説明し、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0127】
図15に示すように、第3の実施形態においては、登録症例情報取得部101が、キー項目推定用の登録症例をさらに取得するものである点と、第2の実施形態と同じ機能を有するキー項目推定部106を備えた点と、重み付け係数決定部103が、キー項目推定部106が推定した推定項目に基づいて、重み付け係数を決定する点が第1の実施形態と異なる。
【0128】
以下、図16に従って、第3実施形態における診療情報処理装置1の対象患者の臨床情報項目を取得する処理以降の流れを説明する。
【0129】
まず、第1実施形態と同様に対象症例取得部112が対象患者の臨床情報項目を取得する(ST41)。
【0130】
続いて、キー項目推定部106は、第2の実施形態のST22に示した処理と同様の方法で、図7に示す尤度比情報に基づいて、キー項目の分類ごとに、各対象臨床情報項目における対象分類に対応する尤度比を乗算した乗算値を算出し、算出された乗算値が所定のしきい値条件を満たすキー項目の分類を、対象患者が該当すると推定されるキー項目の分類として仮に推定する(ST42)。ただし、第3実施形態のキー項目推定部106は、全体尤度比が最も大きい1つのみを推定病名として推定する点のみ第2の実施形態のキー項目推定部106と異なるものとし、第3の実施形態では、図14に示すように、最も大きい全体尤度比に対応づけられた病名が「マイコプラズマ」であったものとする。
【0131】
そして、重み付け係数決定部103は、推定されたキー項目の分類について、他の臨床情報項目の各分類に対応する各重み付け係数をそれぞれ決定するとともに、該各重み付け係数を尤度比情報に基づいて算出された尤度比が大きいほど重み付けが大きくなるように決定することにより、推定されたキー項目の分類に他の臨床情報項目の各分類に対応する重み付け係数を対応付けた重み付け係数情報を決定する(ST43)。
【0132】
図17は、第3実施形態の重み付け係数情報の例を示す図であり、図18は、第3実施形態による類似度決定情報の例を示す図である。重み付け係数決定部103は、図7の頻度情報に基づいて、第1の実施形態と同様の重み付け方法を用いて、推定されたキー項目の分類(病名:マイコプラズマ)に対応付けられた各臨床情報項目の分類に対する重み付け係数のみを算出して、図17に示すように重み付け係数情報として決定する。第3の実施形態では、全てのキー項目の分類について重み付け係数を算出する必要はなく、少なくとも推定されたキー項目の分類についてのみ重み付け係数を算出すれば重み付け係数情報を算出できる。なお、図17に示す第3の実施形態の重み付け係数は、図8に示す重み付け係数情報のうち太い破線で示す部分と同じものとなる。
【0133】
続いて、登録症例情報取得部101は、第1実施形態における図5のST13と同じように登録症例を取得する(ST44)。そして、類似度算出部104は、類似度をまだ算出していない登録症例が存在すれば(ST45のY)、算出された重み付け係数情報に基づいて、登録症例情報に備えられた各登録症例ごとに、推定されたキー項目の分類に対応付けられた重み付け係数であって、他の臨床情報項目の分類に対応する重み付け係数をそれぞれ抽出し、抽出した重み付け係数を積算して類似度を算出する(ST46)。
【0134】
類似度算出部104は、キー項目の分類である病名に関わらず、図17に示す臨床情報項目の分類に対応付けられた重み付け係数を用いて類似度決定情報を作成する。図18は、図3に示す登録症例情報および図17に示す重み付け係数情報に基づいて作成された類似度決定情報である。例えば、図3に示す登録症例情報に登録された症例1の年齢(61歳)については、図16においてその年齢が属する、年齢40歳以上65歳以下を表す臨床情報項目に割り当てられた重み付け係数0が用いられる。そして、図18に示すように、類似度算出部104は、各症例に各臨床情報項目に対応する重み付け係数を積算し、積算した値を類似度として算出する。
【0135】
一方、類似度をまだ算出していない登録症例が存在しない場合には(ST45のN)、図5におけるST16と同じように登録症例を類似度順にソートし、類似症例リストを作成する(ST47)。そして、図4におけるST17と同じように、類似症例リストを表示する(ST48)。
【0136】
第3の実施形態によれば、登録症例のうち、病名などのキー項目の分類が不明なものについても、類似度を算出することができる。このため、キー項目の分類に対応する登録症例が少ない場合にでも、キー項目の分類が不明な登録症例に範囲を広げて類似度を算出することができる。
【0137】
また、第3の実施形態においても、第2の実施形態と同様に尤度比情報算出部102が、所定の条件を満たす登録症例のみを尤度比を算出するための尤度比算出用登録症例として抽出する尤度比算出症例抽出部107を有するものであってもよい。この場合、尤度比算出症例抽出部107は、第2の実施形態と同様に任意の条件に基づいて尤度比算出用登録症例を抽出してよい。
【0138】
また、第3の実施形態においても、類似度算出部が、登録症例情報のうち、所定の条件を満たす登録症例のみを類似度算出用登録症例として抽出する類似度算出症例抽出部を備え、抽出された類似度算出用登録症例のみに基づいて類似度を算出するものであってもよい。この場合には、例えば、類似度算出症例抽出部が、尤度比情報に基づいて、所定のしきい値(第5のしきい値)以上の尤度比に対応づけられた各臨床情報項目の分類に該当する登録症例のみを類似度算出用登録症例として抽出することが考えられる。
【0139】
また、第1および第3実施形態において、類似度算出部104は、登録症例の病名が合併症である場合に、合併症を構成する個々の病名ごとに該合併症に対応付けられた他の臨床情報項目に対応する重み付け係数をそれぞれ取得して類似度を算出し、算出された類似度のうち最も大きいものを合併症に対応する類似度として算出してもよい。
【0140】
例えば、類似度を算出するための登録症例が、病名A1と病名A2の合併症であり、複数の臨床情報項目の各分類(年齢A4、体温A5、咳嗽A6、喀痰A7、白血球数A8)とが対応づけられていた場合には、病名A1に対して年齢A4、体温A5、咳嗽A6、喀痰A7、白血球数A8が対応づけられている症例について類似度A9を算出し、病名A2に年齢A4、体温A5、咳嗽A6、喀痰A7、白血球数A8が対応づけられている症例について類似度A9’を算出する。そして、類似度A9とA9’の大きい方を上記症例の類似度として決定することが考えられる。
【0141】
また、第1および第3実施形態において、類似度算出部104は、登録症例の病名が合併症である場合に、合併症を構成する個々の病名ごとに該合併症に対応付けられた他の臨床情報項目に対応する重み付け係数をそれぞれ取得するものであり、臨床情報項目の分類に対応する重み付け係数であって、合併症を構成する個々の病名ごとに算出された重み付け係数のうち最大のものを、臨床情報項目の分類に対応する重み付け係数として特定し、各臨床情報項目の各分類に対して同様に重み付け係数を特定して、特定された重み付け係数を用いて類似度を算出するものであってもよい。
【0142】
例えば、類似度を算出するための登録症例として、病名A1と病名A2の合併症であり、複数の臨床情報項目の各分類(年齢A4、体温A5、咳嗽A6、喀痰A7、白血球数A8)とが対応づけられていた場合には、病名A1に対して年齢A4、体温A5、咳嗽A6、喀痰A7、白血球数A8が対応づけられている症例について、重み付け係数として年齢に対してB4、体温に対してB5、咳嗽に対してB6、喀痰に対してB7、白血球数に対してB8を算出する。また、病名A2に年齢A4、体温A5、咳嗽A6、喀痰A7、白血球数A8が対応づけられている症例について、重み付け係数として年齢に対してB4’、体温に対してB5’、咳嗽に対してB6’、喀痰に対してB7’、白血球数に対してB8’を算出する。そして、上記症例に対して、類似度決定情報に用いる重み付け係数として、年齢についてB4とB4’の大きい方を用い、体温についてB5とB5’の大きい方を用い、咳嗽についてB6とB6’の大きい方を用い、喀痰についてB7とB7’の大きい方を用い、白血球数についてB8とB8’の大きい方を用いることが考えられる。
【0143】
上記場合には、複雑な臨床情報項目を有する合併症の登録症例に対しても、精度良く類似度を算出でき、類似症例を広い範囲で抽出できる。
【0144】
第3実施形態におけるキー項目推定部106は、対象患者のキー項目の分類として、複数のキー項目の分類を推定してもよく、この場合、推測した複数のキー項目の分類ごとに、各臨床情報項目の分類の重み付け係数をそれぞれ算出し、このうち最大の重み付け係数をその特定の臨床情報項目の分類に対応する重み付け係数として決定してもよい。
【0145】
例えば、キー項目推定部106により病名A1と病名A2が推定病名として推定された場合、尤度比情報に基づいて、病名A1に対して、仮の重み付け係数として年齢に対してB4、体温に対してB5、咳嗽に対してB6、喀痰に対してB7、白血球数に対してB8を算出する。また、同様に、尤度比情報に基づいて、病名A2について、仮の重み付け係数として年齢に対してB4’、体温に対してB5’、咳嗽に対してB6’、喀痰に対してB7’、白血球数に対してB8’を算出する。そして、重み付け係数情報として、各臨床情報項目の分類に対応する仮の重み付け係数のうち大きい方を決定する。例えば、B4>B4’、B5>B5’、B6>B6’、B7>B7’、B8<B8’であれば、重み付け係数情報は、年齢に対してB4、体温に対してB5、咳嗽に対してB6、喀痰に対してB7、白血球数に対してB8’と決定される。
【0146】
第1乃至第3実施形態において、診断病名は重症度でさらに分類した病名を使用してもよい。例えば、登録症例に含まれている病気の重症度を予め作成された診療ガイドラインなどに基づいて自動判別して、自動判別された重症度を登録症例の病名に付加した病名に置き換える処理を、頻度算出処理に先立って行ってもよい。この場合、例えば、病名「細菌性肺炎」を病名「重症細菌性肺炎」に置き換えて頻度情報や尤度情報算出の処理が行われる。このように、病名として重症度で更に分類した詳細病名を用いた場合には、一般的に同じ種類の病気であっても重症度により症状が変化するため、より精度よく病気の特徴を反映して重み付け係数を決定することができ、より適切に類似度を算出できる。
【0147】
第1乃至第3実施形態において、病気の種類ごとに、各病名を上位概念から下位概念まで階層化した病名と対応づけて診療情報データベース12に記憶し、尤度比情報算出部102は、尤度比算出用の登録症例情報に基づいて、対応づけられた登録症例が所定の数より少ない病名が存在する場合には、病名をさらに上位概念化した病名を取得し、病名に対応づけられた前記登録症例に対し、その病名に替えて上位概念化した病名を用いて頻度情報や尤度比情報を算出することが好ましい。例えば、肺炎桿菌肺炎の登録症例が少ない場合、肺炎桿菌肺炎を上位概念化して表す病名である細菌性肺炎診断を病名として用いる。有効な尤度比が算出できない少ない病名に対応する登録症例を、上位概念の病名を用いることにより有効な登録症例として利用可能にすることができる。
【0148】
第2および第3実施形態のキー項目推定部106に替えて、キー項目推定部は、対象患者の臨床情報項目および比較対象の患者の臨床情報項目に基づいてキー項目が推定できる任意の方法によりキー項目を推定するものであってよい。例えば、キー項目推定部106が、過去の症例の診断画像を抽出し、抽出された画像に対して周知の画像認識により病名を推定するものであってもよい。
【0149】
なお、本明細書における第2および第3実施形態においては、類似度算出用の登録症例情報のうち、臨床情報項目に病名を含む症例のみを抽出したものを尤度比算出用の登録症例情報とし、キー項目推定用の登録症例情報と尤度比算出用の登録症例情報は同じものであるとする。上記実施形態に限定されず、尤度比算出用の登録症例情報と類似度算出用の登録症例情報とキー項目推定用の登録症例情報は、互いに異なるものであってもよく、一部または全部が互いに重複するものであってもよい。また、第2および第3実施形態におけるキー項目推定手段は、尤度算出処理に用いた頻度情報を利用してキー項目を推定してもよく、尤度比算出処理とは別に頻度情報を作成してキー項目を推定してもよい。
【0150】
なお、第1乃至第3実施形態において、各登録症例に対して算出された上記重み付け係数の積算値をそのまま類似度として用いてもよいが、各登録症例に対して算出された上記重み付け係数の積算値のうち最大値を抽出し、抽出された最大値によって各重み付け係数の積算値を除算することにより、類似度を正規化してもよい。類似度を正規化した場合には、類似度の最大値に対する相対的な類似の度合いを把握することが容易である。
【0151】
なお、本実施形態に限定されず、診療情報処理装置の構成要素の一部または全部は、1台のワークステーションにより構成されたものであってもよく、ネットワークを介して接続された一台以上のワークステーション、サーバ、記憶装置によって構成されたものであってもよい。なお、各機器は、CD−ROM等の記録媒体からインストールされた本明細書の診療情報処理を行うプログラムによって制御される。また、プログラムは、インターネット等のネットワーク経由で接続されたサーバの記憶装置からダウンロードされた後にインストールされたものであってもよい。
【0152】
また、上述した各実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で任意に変形および応用が可能である。
【符号の説明】
【0153】
10 診療情報管理サーバ
11 診療科端末
12 診療情報データベース
101 登録症例情報取得部
102 尤度比情報算出部
103 係数決定部
104 類似度算出部
105 類似症例出力部
106 キー項目推定部
107 尤度比算出症例抽出部
108 類似度算出症例抽出部
111 表示制御部
112 対象症例取得部
113 ディスプレイ
114 入力装置
115 処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比較対象となる複数の患者の臨床情報に関する複数の項目を複数の分類に区分け可能な臨床情報項目としてそれぞれ対応付けた多数の登録症例を備えてなる尤度比算出用の登録症例情報と比較対象となる複数の患者の臨床情報に関する複数の項目を複数の分類に区分け可能な臨床情報項目としてそれぞれ対応付けた多数の登録症例を備えてなる類似度算出用の登録症例情報をそれぞれ取得する登録症例情報取得部と、
対象患者の複数の臨床情報項目の各分類をそれぞれ対象臨床項目の対象分類として取得する対象症例取得部と、
前記尤度比算出用の登録症例情報に基づいて、前記登録症例に対応付けられた前記臨床情報項目のうちの1つであるキー項目の前記分類ごとに、前記登録症例に含まれる複数の臨床情報項目のうち前記キー項目を除く他の臨床情報項目の各分類について、前記他の臨床情報項目の各分類に該当する場合に前記キー項目の1つの分類に該当する尤度と、前記他の臨床情報項目の各分類に該当する場合に前記キー項目の前記1つの分類以外の他の分類に該当する尤度との尤度比をそれぞれ算出することにより、前記登録症例に含まれる前記キー項目の分類ごとに前記他の臨床情報項目の各分類に対応する前記尤度比を対応付けた尤度比情報を算出する尤度比情報算出部と、
前記対象臨床情報項目の前記対象分類および前記尤度比情報に基づいて、前記キー項目の分類ごとに前記他の臨床情報項目の各分類に対応する各重み付け係数をそれぞれ決定することにより、前記キー項目の分類ごとに前記他の臨床情報項目の各分類に対応する重み付け係数を対応付けた重み付け係数情報を決定する重み付け係数決定部と、
前記類似度算出用の登録症例情報に含まれる登録症例ごとに、前記決定された重み付け係数情報に基づいて、該登録症例の前記各キー項目の分類と前記他の臨床情報項目の分類に対応する前記重み付け係数を特定し、該特定した重み付け係数を用いて類似度を算出する類似度算出部とを備えたことを特徴とする診療情報処理装置。
【請求項2】
前記重み付け係数決定部は、前記対象臨床情報項目における前記対象分類に対応する前記尤度比が大きいほど、前記重み付け係数が大きくなるように前記重み付け係数を決定するものであることを特徴とする請求項1記載の診療情報処理装置。
【請求項3】
前記重み付け係数決定部は、前記対象臨床情報項目における前記対象分類に対応する前記尤度比が第1のしきい値以上である場合に、前記尤度比に応じて前記重み付け係数がより大きくなるように重み付けを行い、かつ、前記対象臨床情報項目における前記対象分類の前記尤度比が第2のしきい値より小さい場合に、前記尤度比に応じて前記重み付け係数がより小さくなるように重み付けを行うものであることを特徴とする請求項2記載の診療情報処理装置。
【請求項4】
前記重み付け係数決定部は、前記対象臨床情報項目における前記対象分類に対応する前記尤度比が第3のしきい値以上であり、かつ、該臨床情報項目における前記対象分類以外の分類に対応する前記尤度比が前記第3のしきい値以上である場合に、該臨床情報項目における該対象分類以外の分類に対応する重み付け係数を、前記尤度比に応じて前記重み付け係数が大きくなるように重み付けを行うものであり、前記対象臨床情報項目における前記対象分類に対応する前記尤度比または該臨床情報項目における前記対象分類以外の分類に対応する前記尤度比のいずれかが第4のしきい値より小さい場合に、該臨床情報項目における該対象分類以外の分類に対応する前記重み付け係数をより小さくなるように重み付けを行うものであることを特徴とする請求項2または3記載の診療情報処理装置。
【請求項5】
前記対象臨床情報項目における前記対象分類に対応する前記尤度比または該臨床情報項目における前記対象分類以外の分類に対応する前記尤度比のいずれかが前記第4のしきい値より小さい場合に、該対象臨床情報項目における該対象分類以外の分類に対応する前記重み付け係数が負の値になるように重み付けを行うものであることを特徴とする請求項4記載の診療情報処理装置。
【請求項6】
前記重み付け係数決定部は、少なくとも一部の前記他の臨床情報項目の各分類について、前記他の臨床情報項目の各分類に対応する前記尤度比を対数変換した値を前記重み付け係数としてそれぞれ決定するものであることを特徴とする請求項2から5のいずれか1項記載の診療情報処理装置。
【請求項7】
前記類似度算出部が、前記類似度算出用の登録症例情報のうち、所定の条件を満たす登録症例のみを類似度算出用登録症例として抽出する類似度算出症例抽出部を備え、前記抽出された類似度算出用登録症例のみに基づいて前記類似度を算出するものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の診療情報処理装置。
【請求項8】
前記登録症例情報取得部が、比較対象となる複数の患者の臨床情報に関する複数の項目を複数の分類に区分け可能な臨床情報項目としてそれぞれ対応付けた多数の登録症例を備えてなるキー項目推定用の登録症例情報をさらに取得するものであり、
前記対象臨床情報項目における対象分類および前記キー項目推定用の登録情報に基づいて、前記対象患者が該当すると推定される前記キー項目の分類を推定するキー項目推定部をさらに備え、
前記類似度算出症例抽出部が、前記類似度算出用の登録症例情報のうち、前記キー項目推定部に推定された前記キー項目の分類に対応付けられた前記登録症例のみを前記類似度算出用登録症例として抽出するものであることを特徴とする請求項7項記載の診療情報処理装置。
【請求項9】
前記類似度算出症例抽出部が、前記尤度比情報に基づいて、前記類似度算出用の登録症例のうち、各臨床情報項目の分類に対応する各尤度比のいずれか1つ以上が第5のしきい値以上である前記登録症例のみを前記類似度算出用登録症例として抽出するものであることを特徴とする請求項7記載の診療情報処理装置。
【請求項10】
前記類似度算出症例抽出部が、前記尤度比情報に基づいて、前記類似度算出用の登録症例のうち、前記尤度比の大きさが所定の順番以内である臨床情報項目の分類に対応づけられた前記登録症例のみを前記類似度算出用登録症例として抽出するものであることを特徴とする請求項7記載の診療情報処理装置。
【請求項11】
前記尤度比情報算出部が、前記尤度比算出用の登録症例情報のうち、さらなる所定の条件を満たす登録症例のみを尤度比算出用登録症例として抽出する尤度比算出症例抽出部を備え、前記抽出された尤度比算出用登録症例のみに基づいて前記尤度比情報を算出するものであることを特徴とする請求項2から10のいずれか1項記載の診療情報処理装置。
【請求項12】
前記登録症例情報取得部が、比較対象となる複数の患者の臨床情報に関する複数の項目を複数の分類に区分け可能な臨床情報項目としてそれぞれ対応付けた多数の登録症例を備えてなるキー項目推定用の登録症例情報をさらに取得するものであり、
前記対象臨床情報項目における対象分類および前記キー項目推定用の登録症例情報に基づいて、前記対象患者が該当すると推定される前記キー項目の分類を仮に推定するキー項目推定部をさらに備え、
前記尤度比算出症例抽出部が、前記尤度比算出用の登録症例情報のうち、前記キー項目推定部に推定された前記キー項目の分類に対応付けられた登録症例のみを前記尤度比算出用登録症例として抽出するものであることを特徴とする請求項11項記載の診療情報処理装置。
【請求項13】
比較対象となる複数の患者の臨床情報に関する複数の項目を複数の分類に区分け可能な臨床情報項目としてそれぞれ対応付けた多数の登録症例を備えてなる尤度比算出用の登録症例情報と、比較対象となる複数の患者の臨床情報に関する複数の項目を複数の分類に区分け可能な臨床情報項目としてそれぞれ対応付けた多数の登録症例を備えてなる類似度算出用の登録症例情報と、比較対象となる複数の患者の臨床情報に関する複数の項目を複数の分類に区分け可能な臨床情報項目としてそれぞれ対応付けた多数の登録症例を備えてなるキー項目推定用の登録症例情報とをそれぞれ取得する登録症例情報取得部と、
対象患者の複数の臨床情報項目の各分類をそれぞれ対象臨床項目の対象分類として取得する対象症例取得部と、
前記尤度比算出用の登録症例情報に基づいて、前記登録症例に対応付けられた前記臨床情報項目のうちの1つであるキー項目の前記分類ごとに、前記登録症例に含まれる複数の臨床情報項目のうち前記キー項目を除く他の臨床情報項目の各分類について、前記他の臨床情報項目の各分類に該当する場合に前記キー項目の1つの分類に該当する尤度と、前記他の臨床情報項目の各分類に該当する場合に前記キー項目の前記1つの分類以外の他の分類に該当する尤度との尤度比をそれぞれ算出することにより、前記登録症例に含まれる前記キー項目の分類ごとに前記他の臨床情報項目の各分類に対応する前記尤度比を対応付けた尤度比情報を算出する尤度比情報算出部と、
前記対象臨床情報項目における前記対象分類および前記キー項目推定用の登録情報に基づいて、前記対象患者が該当すると推定される前記キー項目の分類を仮に推定するキー項目推定部と、
前記推定されたキー項目の分類および前記対象臨床情報項目における前記対象分類に基づいて、前記他の臨床情報項目の各分類に対応する各重み付け係数をそれぞれ決定することにより、前記推定されたキー項目の分類に前記他の臨床情報項目の各分類に対応する重み付け係数を対応付けた重み付け係数情報を決定する重み付け係数決定部と、
前記算出された重み付け係数情報に基づいて、前記類似度算出用の登録症例情報に備えられた登録症例ごとに、該登録症例の前記他の臨床情報項目の分類に対応する前記重み付け係数を特定し、該特定した重み付け係数を用いて類似度を算出する類似度算出部とを備えたことを特徴とする診療情報処理装置。
【請求項14】
前記尤度比情報算出部が、前記尤度比算出用の登録症例情報のうち、さらなる所定の条件を満たす登録症例のみを尤度比算出用登録症例として抽出する尤度比算出症例抽出部を備え、前記抽出された尤度比算出用登録症例のみに基づいて前記尤度比情報を算出するものであることを特徴とする請求項13記載の診療情報処理装置。
【請求項15】
前記尤度比算出症例抽出部が、前記尤度比算出用の登録症例情報のうち、前記キー項目推定部に推定された前記キー項目の分類に対応付けられた登録症例のみを前記尤度比算出用登録症例として抽出するものであることを特徴とする請求項14項記載の診療情報処理装置。
【請求項16】
前記キー項目の各分類が病名を表すものであることを特徴とする請求項1から15のいずれか1項記載の診療情報処理装置。
【請求項17】
前記類似度算出部が、前記登録症例の病名が合併症である場合に、該合併症を構成する個々の病名ごとに該合併症に対応付けられた前記他の臨床情報項目の分類に対応する重み付け係数をそれぞれ取得して類似度を算出し、算出された類似度のうち最も大きいものを合併症に対応する類似度として算出するものであることを特徴とする請求項16記載の診療情報処理装置。
【請求項18】
前記類似度算出部は、前記登録症例の病名が合併症である場合に、該合併症を構成する個々の病名ごとに該合併症に対応付けられた前記他の臨床情報項目の分類に対応する重み付け係数をそれぞれ取得するものであり、前記他の臨床情報項目の分類ごとに、合併症を構成する個々の病名ごとに算出された重み付け係数のうち最大のものを、該他の臨床情報項目の分類に対応する重み付け係数として用いて類似度を算出するものであることを特徴とする請求項16記載の診療情報処理装置。
【請求項19】
前記尤度比情報算出部は、前記尤度比算出用の登録症例情報に基づいて、対応づけられた登録症例が所定の数より少ない病名が存在する場合には、該病名をさらに上位概念化した病名を取得し、該病名に対応づけられた前記登録症例に対し、該病名に替えて前記上位概念化した病名を用いて前記尤度比情報を算出することを特徴とする請求項16から18のいずれか1項記載の診療情報処理装置。
【請求項20】
前記算出された類似度に基づいて、前記登録症例ごとに前記尤度比または前記重み付け係数が所定値以上の前記臨床情報項目の分類に関する情報を含むように、前記類似度の大きい順に前記登録症例をリスト表示する表示制御部をさらに備えたことを特徴とする請求項1から19のいずれか1項記載の診療情報処理装置。
【請求項21】
コンピュータが、
比較対象となる複数の患者の臨床情報に関する複数の項目を複数の分類に区分け可能な臨床情報項目としてそれぞれ対応付けた多数の登録症例を備えてなる尤度比算出用の登録症例情報と比較対象となる複数の患者の臨床情報に関する複数の項目を複数の分類に区分け可能な臨床情報項目としてそれぞれ対応付けた多数の登録症例を備えてなる類似度算出用の登録症例情報をそれぞれ取得し、
対象患者の複数の臨床情報項目の各分類をそれぞれ対象臨床情報項目の対象分類として取得し、
前記尤度比算出用の登録症例情報に基づいて、前記登録症例に対応付けられた前記臨床情報項目のうちの1つであるキー項目の前記分類ごとに、前記登録症例に含まれる複数の臨床情報項目のうち前記キー項目を除く他の臨床情報項目の各分類について、前記他の臨床情報項目の各分類に該当する場合に前記キー項目の1つの分類に該当する尤度と、前記他の臨床情報項目の各分類に該当する場合に前記キー項目の前記1つの分類以外の他の分類に該当する尤度との尤度比をそれぞれ算出することにより、前記登録症例に含まれる前記キー項目の分類ごとに前記他の臨床情報項目の各分類に対応する前記尤度比を対応付けた尤度比情報を算出し、
前記対象臨床情報項目の前記対象分類および前記尤度比情報に基づいて、前記キー項目の分類ごとに前記他の臨床情報項目の各分類に対応する各重み付け係数をそれぞれ決定することにより、前記キー項目の分類ごとに前記他の臨床情報項目の各分類に対応する重み付け係数を対応付けた重み付け係数情報を決定し、
前記類似度算出用の登録症例情報に含まれる登録症例ごとに、前記決定された重み付け係数情報に基づいて、該登録症例の前記各キー項目の分類と前記他の臨床情報項目の分類に対応する前記重み付け係数を特定し、該特定した重み付け係数を用いて類似度を算出することを特徴とする診療情報処理方法。
【請求項22】
コンピュータを、
比較対象となる複数の患者の臨床情報に関する複数の項目を複数の分類に区分け可能な臨床情報項目としてそれぞれ対応付けた多数の登録症例を備えてなる尤度比算出用の登録症例情報と比較対象となる複数の患者の臨床情報に関する複数の項目を複数の分類に区分け可能な臨床情報項目としてそれぞれ対応付けた多数の登録症例を備えてなる類似度算出用の登録症例情報をそれぞれ取得する登録症例情報取得部と、
対象患者の複数の臨床情報項目の各分類をそれぞれ対象臨床情報項目の対象分類として取得する対象症例取得部と、
前記尤度比算出用の登録症例情報に基づいて、前記登録症例に対応付けられた前記臨床情報項目のうちの1つであるキー項目の前記分類ごとに、前記登録症例に含まれる複数の臨床情報項目のうち前記キー項目を除く他の臨床情報項目の各分類について、前記他の臨床情報項目の各分類に該当する場合に前記キー項目の1つの分類に該当する尤度と、前記他の臨床情報項目の各分類に該当する場合に前記キー項目の前記1つの分類以外の他の分類に該当する尤度との尤度比をそれぞれ算出することにより、前記登録症例に含まれる前記キー項目の分類ごとに前記他の臨床情報項目の各分類に対応する前記尤度比を対応付けた尤度比情報を算出する尤度比情報算出部と、
前記対象臨床情報項目の前記対象分類および前記尤度比情報に基づいて、前記キー項目の分類ごとに前記他の臨床情報項目の各分類に対応する各重み付け係数をそれぞれ決定することにより、前記キー項目の分類ごとに前記他の臨床情報項目の各分類に対応する重み付け係数を対応付けた重み付け係数情報を決定する重み付け係数決定部と、
前記類似度算出用の登録症例情報に含まれる登録症例ごとに、前記決定された重み付け係数情報に基づいて、該登録症例の前記各キー項目の分類と前記他の臨床情報項目の分類に対応する前記重み付け係数を特定し、該特定した重み付け係数を用いて類似度を算出する類似度算出部として機能させることを特徴とする診療情報処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図10】
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【図11】
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