説明

評価設備用バルブ

【課題】評価設備用バルブの耐久性を向上させる。
【解決手段】試験対象バルブの評価試験を実施する評価設備に用いられるバルブ1に、当該バルブ1内のピストン4の芯ズレを抑える傾斜抑制部材9を設ける。傾斜抑制部材9としては、ピストン4と該ピストン4に連動するポペット5との間に配置されるシムを用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、評価設備用バルブに関する。さらに詳述すると、本発明は、例えば高圧タンク用バルブの評価試験を実施する評価設備に用いられるバルブの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バルブの構造ないしは当該バルブの制御について種々の技術が提案されている(例として、ソレノイドバルブの構造について特許文献1、バルブの制御について特許文献2参照)。
【0003】
近年、このようなバルブが例えば水素タンクにおいて用いられている燃料電池車においては、航続距離をさらに延ばすための手段の一つとして当該水素タンクの高圧化が試みられている。また、水素タンクのこのような高圧化に伴い、当該水素タンクのバルブを評価する際、高圧(例えば70MPa)を断続的に作用させるという耐久試験が行われている。
【特許文献1】特開平9−273653号公報
【特許文献2】特開2006−302666号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、試験対象たるバルブよりも先に、試験設備用のバルブが頻繁に故障してしまう事態が生じている。
【0005】
そこで、本発明は、耐久性を向上させた評価設備用バルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため、本発明者は種々の検討を行った。例えば上述のごとき設備で利用される高速応答弁においては、エア圧力とスプリング力で上下運動するピストンと接続しているポペットの固定部材にガタがある場合に、ピストンが首を振り、その周囲に巻かれてあるスプリングと干渉してしまうことがあり、そうすると金属粉が発生し、付近にあるOリングに付着してバルブ機能の気密性能劣化を生じさせてしまう。このような点に着目した本発明者はさらに検討を行い、課題の解決に結びつく技術を知見するに至った。
【0007】
本発明はかかる知見に基づくものであり、試験対象バルブの評価試験を実施する評価設備に用いられるバルブであって当該バルブ内のピストンの芯ズレを抑える傾斜抑制部材が設けられていることを特徴としている。この評価設備用バルブにおいては、傾斜抑制部材が、高圧・高速動作によって動作部たるピストンが芯ズレ(芯からずれること)を生じて他部材と干渉するのを抑制する。これによれば、芯ズレに起因して起こる当該評価設備用バルブの故障を抑えることが可能である。
【0008】
かかる評価設備用バルブの傾斜抑制部材としては、例えばピストンと該ピストンに連動するポペットとの間に配置されるシムを利用することができる。かかるシムは、ピストンとポペット(ないしは当該ポペットを固定するための部材)との間のガタツキをなくし、高圧・高速動作時の円滑な動作を実現する。シムに、ピストンの傾斜をさらに抑制する突起部が形成されていることも好ましい。
【0009】
このような評価設備用バルブは、例えば燃料電池システムにおける高圧水素タンクのバルブを評価試験の対象としている評価設備に用いられて好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、評価設備用バルブの耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1〜図3に本発明にかかる評価設備用バルブの実施形態を示す。本発明にかかる評価設備用バルブ1は、例えば高圧タンク用バルブの耐久試験用設備における高速応答弁として用いられるものである。
【0013】
ここで、評価設備用バルブ1の内部構成について説明する(図1参照)。図1に示すように、評価設備用バルブ1は、電磁弁2、導通管3、ピストン4、ポペット5、スプリング6、高圧ガス入口7、(高圧)ガス出口8等を備えた構成となっている。また、本実施形態においては、この評価設備用バルブ1の内部に、ピストン4の芯ズレを抑えるためのシム(傾斜抑制部材)9を設けることとしている。
【0014】
ピストン4は、導通管3を通ってバルブ内部へと送り込まれるガス(例えばエア)の圧力を受けて軸方向のストロークする部材である。例えば本実施形態のピストン4は、ケーシング10の内壁に沿って軸方向に摺動するように設けられている。ピストン4の周縁とケーシング10の内壁との間にはOリング12が介在している。また、ピストン4の中央には丸形状の凹部4aが設けられている(図1参照)。さらに、ピストン4はスプリング6によって軸方向(例えば本実施形態の場合には、図1に示すように導通管3からエアが送られてくる側)に付勢されている。
【0015】
ポペット5はピストン4と連動して軸方向にストロークする部材である。例えば本実施形態のポペット5は、高圧ガス入口7からガス出口8へと流れるガスの経路を遮断して当該ガスの流れを止め、あるいは当該ガス経路を開いて流れを許容する。このポペット5とピストン4は、凹部4a側から差し込まれるヘッダ付きの固定部材5aによって固定されている(図1参照)。
【0016】
シム9は例えば上述のピストン4とこのピストン4に連動するポペット5との間に配置される部材である。このシム9は、軸方向にストロークするときのピストン4が首を振るのを抑えてスプリング6に干渉するのを抑制するように機能する。例えば本実施形態のシム9は上述した固定部材5aとピストン4との間に介在してこれらの隙間を少なくするように作用する。
【0017】
このようなシム9の具体的な形状は特に限定されないが、本実施形態ではフランジ9bのような突起部を有する円筒形状のシム9を採用している(図2、図3参照)。このようなシム9は、ピストン4と固定部材5aとの間に円筒部分(本体)9aが介在して隙間を少なくするのはもちろんのこと、当該固定部材5aのヘッダの下側にフランジ9bが介在することによって当該ヘッダとピストン4との隙間をも少なくする(図1参照)。このようなシム9によれば、ストローク時にピストン4が首を振るのをさらに抑えて傾斜を抑制し、当該ピストン4の芯ズレ(芯からずれること)を効果的に抑制することができる。
【0018】
ここで、本実施形態における評価設備用バルブ1の作用を述べながら他の部材についても説明すると以下のとおりである。まず、エア配管11を通じて外部から供給される状態となっているエアが、電磁弁2を開くことによって当該評価設備用バルブ1内の空間(チャンバー)へと導かれる(図1参照)。このように評価設備用バルブ1へと供給されたエアは導通管3を流れて弁内へと入り込み、ピストン4を押し下げるように作用する。
【0019】
エアの作用でピストン4が押し下げられると、このピストン4に連動してポペット5も押し下げられる。押し下げられたポペット5は弁13を閉じ、高圧ガス入口7からガス出口8へと流れる高圧ガスの経路を遮断する。
【0020】
一方、電磁弁2を閉じ、評価設備用バルブ1内の空間(チャンバー)のエアを外部へと放出すると、押し下げられていたピストン4およびポペット5がスプリング6の付勢力によって押し上げられて元の位置へと復帰する。これに伴い、ポペット5が閉じていた弁13が開き、高圧ガス入口7からガス出口8へと高圧ガスが流れるようになる。
【0021】
このようにしてピストン4およびポペット5がストローク動作を行う際、上述したように、シム9がピストン4のガタツキを少なくして首振り動作を抑制する。これにより、当該ピストン4がその周囲に配置されているスプリング6と干渉するのを抑えることが可能である。ピストン4がスプリング6に干渉すると、これに伴って発生した金属粉が付近のOリングに付着し、気密性能を劣化させる結果バルブ機能が劣ってしまうことがあるが、この点、本実施形態の評価設備用バルブ1においては、傾斜抑制部材として機能するシム9がこのような金属粉の発生を抑え、尚かつ、高圧・高速動作時における芯ズレの発生をも抑える結果、故障の発生率が低下し、ひいては当該評価設備用バルブ1自体の耐久性が向上する。また、シム9によってピストン4等のより円滑なストローク動作を実現しうることも、耐久性向上を図る点で有利である。
【0022】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述した実施形態における評価設備用バルブ1は、燃料電池システムにおける高圧水素タンクのバルブを評価試験の対象とした場合に特に好適であるがこれに限られることはなく、その他各種のバルブに対しても適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態を示す評価設備用バルブの構造を示す図である。
【図2】傾斜抑制部材の一例を示す斜視図である。
【図3】傾斜抑制部材の側面図である。
【符号の説明】
【0024】
1…評価設備用バルブ、4…ピストン、5…ポペット、9…シム(傾斜抑制部材)、9b…フランジ(突起)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験対象バルブの評価試験を実施する評価設備に用いられるバルブであって
当該バルブ内のピストンの芯ズレを抑える傾斜抑制部材が設けられていることを特徴とする評価設備用バルブ。
【請求項2】
前記傾斜抑制部材として、前記ピストンと該ピストンに連動するポペットとの間に配置されるシムが用いられている請求項1に記載の評価設備用バルブ。
【請求項3】
前記シムに、前記ピストンの傾斜をさらに抑制する突起部が形成されている請求項2に記載の評価設備用バルブ。
【請求項4】
前記燃料電池システムにおける高圧水素タンクのバルブを評価試験の対象としている評価設備における請求項1から3のいずれか一項に記載の評価設備用バルブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−41665(P2009−41665A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207240(P2007−207240)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】