説明

試料の処理装置

【課題】アスベスト製品等の試料を粉砕等の調整処理作業を行うに際し、各種試料の調整処理をコンタミを防止して連続的に行うと共に、衛生的に行うことができる処理装置を提供する。
【解決手段】テーブル3を有して気密状態に形成される試料処理室9を、開閉自在な仕切壁10によって補助処理室11と調整処理室12とに区画し、補助処理室11に内扉22と外扉21を有して試料を出し入れする試料室13を設けると共に、調整処理室12に上記試料室13に供給される試料を粉砕等の調整作業を行う調整作業部を設けた構成にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉砕や加工等の各種の処理を衛生的に行う試料の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建物に施工される建材(アスベスト製品)等に含まれるアスベストの測定は、各施工現場から採取した所定量のサンプル試料を微粉状に粉砕処理し、その後分散染色分析法及びX線回析分析法等によって、アスベストの含有量や性状の把握が行われる。
この際に採取されたサンプル試料の粉砕は、例えばジョークラッシャ等の粉砕機によって粗粉砕した試料を、粉砕時に生ずる粉塵の飛散を防止して微粉砕する密閉自在なボールミル等の微粉砕機器に移し替えて粉砕調整処理が行われる。
また上記のように複数の粉砕機器を使用する煩雑さを解消する技術として、例えば特許文献1で示されるような打撃粉砕方式(スタンプミル式)の粉砕装置を使用し、臼内に収容した試料を杵の上下運動によって微粉砕する調整処理手段が既に公知である。
【特許文献1】特開2001−875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
然し、上記特許文献1で示されるような粉砕装置によって、アスベスト試料を処理する場合は、杵の上下運動によって粉塵が杵と臼との隙間から上方に舞い上がるため、粉塵飛散による周囲の汚損や衛生を損なう等の欠点がある。
また異なるアスベスト試料や異種の試料を粉砕処理するとき、杵及び臼の清掃手段を備えない粉砕装置では、コンタミネーション(以下単にコンタミと言う)を防止する上で、装置内の清掃や準備された多くの杵及び臼の交換,清掃を頻繁に必要とするので、煩雑な作業と処理コストが高騰する等の問題がある。
そこで本発明は、アスベスト製品の他に鉱物,植物,土壌,化成品,生理組織等の多種の試料に対しても、粉砕等の調整処理をコンタミを防止し能率よく衛生的に行うことができる試料の処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための試料の処理装置は、第1に、テーブル3を有して気密状態に形成される試料処理室9を、開閉自在な仕切壁10によって補助処理室11と調整処理室12とに区画し、補助処理室11に内扉22と外扉21を有して試料を出し入れする試料室13を設けると共に、調整処理室12に上記試料室13に供給される試料を粉砕その他の調整作業を行う調整作業部を設けたことを特徴としている。
【0005】
第2に、補助処理室11の前側壁4に、補助処理室11内に臨む試料室13と左右の手を抜き差し自在に差し入れる作業用の手袋17,17を設けたことを特徴としている。
【0006】
第3に、試料処理室9に内部のエアーを吸引する吸引装置70を設け、且つ試料室13に内部のエアーを単独的に吸引させる構成にしたことを特徴としている。
【0007】
第4に、調整処理室12内の調整作業部を、テーブル3の上方で臼51を回転させる臼作動部27と、該臼51内に供給された試料を杵25を上下運動させて粉砕する杵作動部26等からなる粉砕装置としたことを特徴としている。
【0008】
第5に、調整処理室12内に、杵25を清掃する杵清掃部29,31,32と、臼51を清掃する臼清掃部33を設けたことを特徴としている。
【0009】
第6に、補助処理室11に、粉砕装置によって粉砕された試料を選別する選別部14を設けたことを特徴としている。
【0010】
第7に、補助処理室11に、粉砕された試料を臼51から移して室外に取り出すカップ15を収容するカップホルダ16を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
上記のように構成される本発明によれば、試料処理室を開閉自在な仕切壁によって区画して形成した、補助処理室に外部及び内部から試料を出し入れする試料室を設け、該試料室に供給される試料を受け継いで粉砕等の調整作業を行う調整作業部を調整処理室に設けたことにより、調整作業部の作業中に生ずる粉塵等の飛散物の移動を仕切壁によって遮断することができるので、飛散物による補助処理室の汚染を防止すると共に、試料室に対する試料の出し入れ等の作業を行い易くすることができる。
【0012】
補助処理室の前側壁に設けた手袋によって、試料室を介して試料の供給及び取り出しを簡単且つ衛生的に行うことができる。また仕切壁を開放した状態で試料の授受や清掃等の補助作業を行うことができる。
【0013】
試料処理室に内部のエアーを吸引する吸引装置を設けると共に、試料室内のエアーを単独的に吸引させることにより、調整処理室及び補助処理室で発生する飛散物を吸引し試料室への侵入を防止すると共に、試料室内に侵入した飛散物や塵埃等を単独的に吸引除去することができる。
【0014】
テーブルの上方で臼を回転させる臼作動部と、該臼内に供給された試料を杵を上下運動させて粉砕する杵作動部とによって調整作業部を構成したことにより、建物に施工されたアスベスト等の試料の粉砕を確実に行うことができ、試料の分析を正確に行うことができる。
【0015】
調整処理室内に、杵を清掃する杵清掃部と、臼を清掃する臼清掃部を設けたことにより、試料の粉砕作業毎に杵と臼を清掃することができるので、杵と臼を交換することなく次位の試料に対し作業を連続して使用することができる。
【0016】
補助処理室に、調整作業部によって粉砕された試料を選別する選別部を設けたことにより、粉砕した試料を選別部で選別した残留試料の粉砕作業を繰り返して行うことができ、試料の粉砕を確実にすることができる。
【0017】
補助処理室に、粉砕された試料を臼から移して室外に取り出すカップを収容するカップホルダを設けたことにより、調整作業部によって粉砕された試料を補助処理室内でカップに能率よく収容し室外に取り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下図示する本発明の一実施形態について説明する。図面において符号1は本発明に係わる処理装置であり、本体(機箱)2の内部中段に設置されるテーブル3と、前側壁4,後側壁5,左側壁6,右側壁7,天井壁8等によって試料処理室9を気密状に形成している。この試料処理室9は前後方向の中間部に開閉自在な仕切壁10を設置することにより前後室を区画形成している。そして、前室は試料の供給と取り出しを行うことができる補助機器類を備えた補助処理室11とし、後室は補助処理室11から供給される試料を授受し粉砕等の調整処理をする調整作業部を備えた調整処理室12にしている。
【0019】
この実施形態で示す処理装置1は、例えば建物に施工されたアスベストを剥ぎ取り、所定の分析量づつ供給されるアスベスト試料を粉砕処理することができる。この実施形態では、補助処理室11は、前側壁4の略中央部に試料を出し入れすることができる試料室13をテーブル3側に臨ませて形成する。また試料室13の側方に選別部(補助作業部)14を設け、且つ試料室13の左側後方にカップ15を繰り出し自在に支持するカップホルダ16を設ける。そして、前側壁4の左右に穿設した取付孔に、作業者が両手を差し入れて室内作業を行うことができる手袋17,17を設ける。
【0020】
上記試料室13は、装置本体2の前面開口部を覆うボックス状の前側壁4に、テーブル3側に向けて突出形成した試料箱19に前側から開閉操作される外扉21を設け、且つ上部の開口部に試料室13内において開閉操作できる内扉22をスライド自在に設けた構成にすることが望ましい。これにより試料室13は両扉21,22を閉鎖したとき気密状態にすることができる。
【0021】
そして、作業者が前側から外扉21を開くと、試料室13内にサンプル対象現場から採取されたアスベスト試料が収容された試料容器を挿入して試料箱19に載置することができ、こののち外扉21を閉鎖する。次いで、作業者は手袋17,17に差し入れた手によって、補助処理室11内で内扉22を開き試料室13内から試料容器を補助処理室11内に取り出し、仕切壁10が開放された状態で試料処理室9に搬入することができる。
【0022】
次に図3,図5を参照し仕切壁10について説明する。この仕切壁10は平面視で内向きコ字状断面の透明板で形成しており、装置フレームを構成する左右の支柱23,23の上方側に取付固定された固定仕切壁10aの内側にラップさせ、左右に設けた開閉機構24,24によって上下方向に開閉自在に支持される。上記開閉機構24は縦型のエアーシリンダ又は電動シリンダからなり、前側壁4の下方に突設される操作台に設置した起動スイッチ24aを操作することにより、仕切壁10を固定仕切壁10aにラップさせた状態で上下動し調整処理室12の前面を開閉することができる。尚、起動スイッチ24aは補助処理室11内にも設けることができる。
【0023】
次に図2〜図5を参照し調整処理室12について説明する。調整処理室12は室内中央部でテーブル3に設置されて杵25を作動させる杵部(杵作動部)26と、該杵作動部26の周囲でテーブル3上に配置される臼部(臼作動部)27等からなる調整作業部を設置している。そして、杵25の清掃を行う杵清掃部29,31,32と、仕切壁10の近傍一側に接近させて設置される臼清掃部33等からなる補助調整作業部を以下のように構成し配置している。
【0024】
上記各部の構成について説明すると、アスベスト試料を粉砕処理する調整作業部の杵作動部26は、図3,図5,図6に示すようにテーブル3に取付けた割出装置(インデックスモータ)34に接続される回転軸35に直杆状のアーム36を設け、該アーム36の両端に昇降機構(シリンダ)37を設けている。また上記昇降機構37はピストン端に設けた支持アーム39の先端部に、杵25を着脱可能に下向き姿勢で取付支持している。図示例の杵25は、直径が35.8ミリ程度の丸棒の下端に円錐面状の粉砕面25aを形成し、上端部に後述する粉砕駆動装置41の駆動杆42を係脱自在に挿入させる係合部43を凹入形成している。
【0025】
そして図6に示すように、杵25はその上方部を支持アーム39の先端部に設けたホルダ(軸支孔)44内に挿入し、上端部に形成した切欠面をホルダ44の係合面と係合させた状態で上下方向にスライド自在とし、上端に着脱可能に設けた固定部材45によって、支持アーム39に対し吊り下げた状態で交換可能に支持している。この吊り下げ状態において、杵25はホルダ44の下面から8ミリ程度のスライド代(防振間隙)Hを有して鍔状のストッパ25bを突設している。
【0026】
また上記固定部材45は支持アーム39の支持孔44に対し、杵25を軸心を中心とする割り出し位置を任意に選択し、且つ選択位置で杵25の回動を規制する係合構造にしている。この構成により支持アーム39に対して杵25の回転を規制することができると共に、異なる断面形状の杵25の方向を定めながら簡単に装着することができる等の利点がある。
【0027】
前記粉砕駆動装置41は、左右の支柱23,23の上部を連結する上フレーム46に取付固定される昇降シリンダ47に、前記駆動杆42を往復運動させる粉砕駆動部48を取付支持している。図示例の粉砕駆動部48は、5ミリ程度以下の上下ストロークを設定することができると共に、上下運動を1100〜2650回/分程度を設定することができる。
【0028】
従って、図6,図7で示すように杵25を臼作動部27の上に位置決めした状態で、支持アーム39及び粉砕駆動部48を下降させると、杵25を臼作動部27の臼51内に挿入することができ、杵25を所定のストロークと上下運動によって高速で上下振動させて粉砕する粉砕作業、及び臼51内の試料を杵25で押圧し臼51を回転させて行うすり潰し作業による粉砕等を、試料の種類や求められる検体としての種別に応じて確実に行うことができる。
【0029】
次に、臼作動部27は図5に示すように、試料処理室9の幅方向中心部で仕切壁10に近接させて設置しており、図6,図7で示すように、テーブル3の下方フレーム部に取付固定されたモータ52の回転軸に、ジョイントを介してテーブル3側に軸支される臼軸53を接続している。この臼軸53は上部に、臼51を着脱自在に装着する臼取付部54を凹入形成し、円筒状の臼51の下方を挿入支持することができる。
臼51は前記杵25の粉砕面25aに合致する粉砕底面を有する臼穴を36ミリ程度の直径で形成することにより、杵25との間隙を0.2ミリ程度の小間隙にしている。
【0030】
そして、臼51を臼取付部54内に挿入した状態で、該臼51の底部に形成した凹部(係合穴)55に係合して臼51の回り止めをする突起(係合部)56を有した取付穴にしている。この構成により臼51は杵25の上下作動時の揺れを防止することができ、また臼51が杵25で押圧された状態でモータ52によって回転されるときの連れ回りを防止して、すり潰し作業を確実に行うことができる。
【0031】
また臼取付部54は円筒状の集塵フード57を設けて粉砕作業時の粉塵の外部飛散を防止している。この集塵フード57は図示しない集塵機にパイプ接続していると共に、シリンダ59によって昇降させることができ、下降させて臼取付部54を露出させた臼51のセット姿勢と、上昇させて粉砕作業時等に生ずる粉塵を回収する集塵姿勢とに切り換え自在に構成している。これにより粉砕作業時に生ずる粉塵の外部飛散を防止し衛生的な作業を行うと共に、連続的に行う試料調整時のコンタミを防止することができる。
【0032】
次に杵25の清掃手段について図5,図8,図9参照し説明する。先ず杵清掃部(ブロー集塵部)29は図5に示すように、テーブル3に上端を開口した筒状の集塵フード61を立設し上方から中心部に杵25を挿入自在としている。そして、該集塵フード61内に杵25に向けてエアーを噴出するノズルと、該エアーを吸引する吸気口を設けた構成にしている。
これにより粉砕作業を終えて杵作動部26によって上方から挿入される杵25に対し、エアーを勢いよく吹き付けて大きなアスベスト繊維や粉塵を外部に飛散させることなく、吹き飛ばしながら吸引し図示しない集塵機(吸引装置)に回収する。
【0033】
杵清掃部(ブラシ集塵部)31は図5,図8に示すように、テーブル3に取付固定されたモータ62に接続される回転軸63の上部に、杵25の外周面及びストッパ25bの下面に接触して清掃するブラシ64と、杵25の粉砕面25aを清掃するブラシ65を設け、且つ両者を収容して覆う筒状の集塵フード66を設けている。
【0034】
杵清掃部(ブラシ集塵部)32は図5,図9に示すように、杵清掃部31と同様にモータ62に接続される回転軸63の上部に、長い刷毛のブラシ67と集塵フード69を設けている。このブラシ67は杵25の外周面に柔らかく接触する長い刷毛によって、ブロー集塵部29のエアーブローで除去されない粉塵を強制的に掃くことができる。
【0035】
上記集塵フード66,69は前記集塵フード57,集塵フード61のものと同様に集塵機に接続し、清掃時に集塵フード内に杵25から離脱する粉塵を外部に飛散させることなく吸引し回収することができる。また試料処理室9は後側壁5の一部に吸気口5aをテーブル3に近接させて形成しており、吸気口5aを装置外に設置される集塵機(吸引装置)70と接続している。
この構成により処理装置1は、集塵機70の運転により試料処理室9内の全体を負圧にして集塵し、個々の粉塵発生部において局部的に集塵するので、コンタミを防止した作業を衛生的に行うことができる。
【0036】
そして、上記臼作動部27及び杵清掃部29,31,32は、アーム36の両端に取付支持される杵25が回転軸35を中心に回動する回動軌跡を4等分した下方位置に配置している。これにより調整処理室12の中心部においてテーブル3に立設した杵作動部26の周囲に臼作動部27及び杵清掃部29,31,32等をコンパクトに纏めて設置することができると共に、臼作動部27で粉砕作業を終えた杵25を回転軸35の正逆回転によって杵清掃部29,31,32を選択し杵25の清掃を自在に行うことができる。
【0037】
臼清掃部33は図5に示すように、臼作動部27の右側で仕切壁10に近接させてテーブル3上に設置し、図示しないモータによって回転停止自在な上向きのブラシ33aを集塵フード33b内に設置している。また集塵フード33b内は前記のものと同様に集塵機と接続している。
【0038】
この構成により粉砕作業後に臼取付部54から取り外した臼51を反転し逆さ状態に把持し、臼51の内部をブラシ33aに姿勢を変えながら適数回押し付けることができ、内部に付着する粉塵を掻き取り集塵し簡単に清掃することができる。また臼清掃部33は必要に応じエアーブロワによる吸引を行うことができる。従って、1つの臼51をコンタミを防止して連続的に使用することができる。この臼51の清掃作業は、粉砕作業が終了した臼51内の粉砕済の試料を、カップホルダ16から取り出したカップ15に移し替えて空にした状態で行われる。尚、上記杵清掃部と臼清掃部の間又はこれらに代えて、例えば水を超音波で振動させて洗浄する超音波洗浄部を設けることにより、より高い清掃を行うことができる。
【0039】
次に図4,図5を参照し選別部14について説明する。この選別部14は試料室13の右側に設置され、カップ15を載置する載台71と、カップ挿入空間を有して上方に着脱自在に支持される選別網72と、該選別網72を支持して振動させる振動部73とから構成している。振動部73は補助処理室11内で選別部14の近傍に設置される選別スイッチ74を操作することにより作動停止することができ、選別網72に供給載置された粉砕試料を、振動部73の作動によって篩選別し下方に濾過させることができる。
【0040】
尚、選別網72は粉砕アスベストを選別する実施形態の選別網72は、目開き500μm程度にしている。また載台71はメッシュ状の底板を集塵機と接続し周囲の粉塵を回収することができる。
また選別部14は、選別網72を被選別物の種類応じて簡単に交換することができ、また上記篩選別手段に限ることなく遠心分離型の選別手段にすることができる。さらに選別部14は、調整処理室12内で化学反応処理等の作業が行われる場合には、濾過紙を用いた溶液の濾過を行うことができる。
【0041】
篩選別作業は、先ず作業者がカップホルダ16から外したカップ15を載台71に載置し、開放された仕切壁10の開口から手袋17,17に挿入した手によって、粉砕作業が行われた粉砕試料を収容する臼51を取り出し、選別網72の上に粉砕試料を反転させて供給する。次いで、選別スイッチ74を操作すると選別網72が振動し、選別網72で篩選別された濾過試料を下方のカップ15に収容することができる。
【0042】
この際に、濾過されずに選別網72上に残る非濾過試料は、選別網72を外して反転させ臼51内に移し、この臼51を再び臼取付部54にセットし粉砕作業を再び行う。そして、このような粉砕作業と選別作業を非濾過試料が無くなるまで繰り返すことにより、所定の粉砕調整を完了することができ、以後の分析を正確に行うことができる。
【0043】
以上のように構成される処理装置1は、各作業部の作動を制御指示し処理条件等を入力することができる操作パネル75を前側壁4の上部に設けており、該操作パネル75と前記スイッチ類を接続する制御装置76を機体下部に設置している。そして、処理装置1は操作パネル75に、サンプル採取場所毎に異なる試料に対し処理条件毎の要素を入力し、設定されたプログラムによる作業順序によって、各作業部を自動制御によって作動し、また操作パネル75を介し手動操作によって試料の調整作業を行うことができる。
【0044】
また前側壁4の下方で右側に設置される起動スイッチ24aの左右には、非常停止スイッチ77と作業部の各動作を選択する切替スイッチ79を設けている。これにより切替スイッチ79は起動スイッチ24aの操作前に操作パネル75に設定した各種操作パターン、即ち、試料の出し入れ動作、粉砕処理方法、清掃及び追加清掃動作のパターンを予め選択することができ、選択パターン動作は起動スイッチ24aの操作によって仕切壁10の開閉タイミングに連携して作動される。
尚、仕切壁10の開閉は操作パネル75のタッチパネル操作によっても単独操作することができる。また上記起動スイッチ24a,非常停止スイッチ77,切替スイッチ79は補助処理室11内にも予備的に設置することが望ましい。
【0045】
以上のように構成される処理装置1によって、採取されたアスベスト製品の試料を調整処理する工程及び方法について図6,図7,図10を参照し説明する。
先ず図10に示す試料挿入工程81において、現場から採取した試料を収容した試料容器を、外扉21を開けて試料室13内に挿入し外扉21を閉める。
次いで試料セット工程82において、切替スイッチ79を操作し動作パターンを設定し起動スイッチ24aをONすると、割出装置34の作動によって図7(A)で示すように杵25が側方へ回動し臼51の上方を開放し臼51のセット姿勢にし、仕切壁10を開くことができる。この状態で作業者は手を手袋17,17に差し込み、補助処理室11内で内扉22を開き試料室13から試料容器を取り出し、試料容器内の試料を臼51に移して収容する。
【0046】
上記試料を収容した臼51を臼作動部27の臼取付部54にセットした処理開始工程83において、切替スイッチ79を操作し処理動作を設定し起動スイッチ24aを押動しONすると、仕切壁10が閉まり試料の調整作業がスタートし粉砕処理工程84に移行することができる。
これにより図7で示すように杵作動部26及び臼作動部27の作動によって、試料を微粉砕することができ、この際に生ずる粉塵の発生を抑制し、且つ発生した粉塵の外部飛散を防止した処理を自動的に行うことができる。
【0047】
即ち、図7(A)で示すように臼取付部54に臼51がセットされた臼セット状態において、杵作動部26の支持アーム39が杵25を臼51の上に臨ませ、次いで、シリンダ59が作動し集塵フード57を上昇させ臼51の外周及び上方をカバーし、図7(B)で示す粉砕セット状態にする。
この状態において図7(C)で示すように、先ず支持アーム39が下降し粉砕支持位置に停止すると、昇降シリンダ47の油圧作動によって粉砕駆動部48が下降し、駆動杆42の先端を杵25の係合孔43に挿入し粉砕開始状態にする。
【0048】
このときシリンダ37の作動により支持アーム39が下降し、エアー供給停止によって粉砕支持位置に停止すると、粉砕駆動部48の下降により駆動杆42が杵25及びホルダ44を介して支持アーム39を押し下げながら、図7(D)で示すように杵25によって試料を押圧する。このとき杵25のストッパ25bは集塵フード57内に挿入され集塵フード57の上方を閉鎖することができる。
この状態において粉砕駆動部48が作動し、臼51内に突入させた杵25を上下運動(振動)させて試料の粉砕を行う。
【0049】
尚、杵25が試料を押圧する圧力は、昇降シリンダ47の油圧経路のレギュレータ調整により所定圧力を設定することができると共に、粉砕駆動部48の自重のみによる押動をすることができる。また粉砕駆動部48による杵25の上下ストローク(振幅)は、5ミリ程度であり、所望のストロークを有するものを装着し粉砕作業を行うことができる。
上記押圧力及び上下ストローク並びに振動量は、試料の種類毎に予め実験したデータに基づいて定められ、操作パネル75に入力された当該データに基づく操作を選定し、試料の粉砕調整作業を行うことができる。
【0050】
また実施形態において杵25は滑らかな表面で、臼51の穴と0.2ミリ程度の小隙を有して振動させるので、粉砕時に生ずる微粉の上昇を小隙によって抑制すると共に、上昇した微粉(粉塵)をストッパ25bによって阻止し外部飛散を規制する。さらに粉砕作業時に吸引されるエアーによって集塵フード57内の微粉の外部飛散を防止し回収する。
【0051】
従って、繊維が多く粉砕時に粉塵の舞い上がりを生じ易い試料であっても、杵25が試料を臼51内で所定の押圧力を加えながら高速で上下運動するため、粉塵の舞い上がり飛散を抑制した粉砕作業を短時間に効率よく微粉砕することができる。
また杵25の粉砕面25aと臼51の底部は、機密状態で接当嵌合する形状にすることにより、杵25の横揺れ(心振れ)を防止した上下運動をスムーズにすると共に、均一な微粉砕を確実に行うことができる。
【0052】
このような粉砕作業において、杵作動部26は試料の種類や状況に応じた粉砕方法を適宜選択し、また異種の粉砕パターンを組み合わせた粉砕を簡単に行うことができる。
即ち、杵25の上下運動と共に臼51をモータ52の作動によって回転することができる。この場合には臼51の回転によって試料の粉砕位置を変えながら、試料を満遍なく粉砕することができる。
【0053】
また杵25の上下運動を停止させた状態で押圧のみを行わせながら、臼51を回転させる磨り潰し粉砕を行うことができる。この場合には押圧停止状態の杵25と回転する臼51の複合作用によって、繊維質の多い試料であっても切断と押し潰しを促進させることができる。従って、例えば建物に塗布施工されたアスベスト製品を剥ぎ取る際の処理剤等が付着し、杵25の打撃のみによっては粉砕が困難な粘性や靱性の高い試料に対して、先ず磨り潰し粉砕作業を行ったのち、打撃粉砕作業を行うことができ分析基準に適合する微粉砕を能率よく簡単に行うことができる。
【0054】
尚、上記のような粉砕作業は、試料の種別毎に把握されたデータに基づき粉砕パターンを予め操作パネル75に入力しておくことにより自動的に行うことができる。実施形態の処理装置1によれば、臼51に収容される試料の場合に、3分程度の粉砕調整時間によって試料分析に適合する粉砕試料を得ると共に、杵25の清掃も自動的に完了することができる。また時間で不十分な場合には同様な粉砕調整作業の繰り返しを行い完了させることができる。
【0055】
また上記粉砕方法により長い粉砕時間を要したり十分に粉砕できないとき、或いは杵25に付着し易い試料を粉砕する場合には、例えば図8,図9で示すような丸棒の両面をカットした断面からなる杵25又はさらに別形状の杵を支持アーム39に装着することにより、多様な試料に対する粉砕を能率よく確実に行うことができる。
【0056】
次いで上記のような粉砕作業を完了したのちは、図7(E)で示すように粉砕駆動部48及び支持アーム39の上昇作動によって、杵25が持ち上げられ臼51から離脱し復帰することができる。また集塵フード57がシリンダ59の退動によって、元の待機位置に下降停止し一連の粉砕処理を終了する。
こののち粉砕棒の清掃作業工程85に移行し、杵25は支持アーム39の側方回動によって杵清掃部29或いは杵清掃部32に選択移動され、また臼取付部54の上方を開放した図7(A)で示される状態にすることができる。
【0057】
次いで、臼51は作業者によって臼取付部54から取り外され選別処理工程86に移行し、選別部14において前記した篩選別が行われ、第1次の粉砕選別作業の選別結果に基づき、必要により第2次の粉砕選別又はそれ以上の粉砕調整処理を経た試料が、カップ15に移し替えられて試料取出し工程87に移行される。
この試料取出し工程87において、粉砕試料を収容したカップ15は補助処理室11内に用意された図示しない蓋で閉鎖することが望ましい。そして、カップ15を内扉22を開けて試料室13内に収容し該内扉22を閉じる。これにより、カップ15は試料処理室9から単独的に隔離した状態にすることができ、また試料室13のエアーは吸引されているので侵入した粉塵や塵埃等(飛散物)を浮遊させることなく除去することができる。
【0058】
そして、この間に最終清掃工程88によって臼51と選別網72の清掃や必要により内部の清掃を行い、清掃した臼51と選別網72は元の状態にセットする。尚、このとき杵25の清掃が不十分である場合は、切替スイッチ79を清掃モードに合わせ起動スイッチ24aをONすることにより、操作パネル75で設定した条件によって杵25の清掃を再び行うことができる。このように杵25と臼51と選別網72の清掃を行ったのち、処理装置1は初期の処理待機状態に復帰させることができる。
次いで、作業者は手袋17,17から引き抜いた手によって、外扉21を開き粉砕試料を収容したカップ15を取り出し、該カップ15を次の分析工程に移して一連の試料調整作業を完了することができる。
【0059】
以上のように処理装置1は、気密状に形成される試料処理室9を開閉自在な仕切壁10によって前後に区画し、前側に形成される補助処理室11に室外及び室内から試料を出し入れ可能な試料室13を設け、また後側に形成される試料処理室9に試料室13に供給される試料を受け継いで粉砕等の調整作業を行う、杵作動部26と臼作動部27とからなる粉砕装置を設けるので、試料の粉砕作業時に生ずる粉塵の移動を仕切壁10によって遮断し、補助処理室11内の粉塵による汚染を防止して試料室13に対する試料の出し入れ等の作業を行い易くすることができる。
【0060】
また試料処理室9は内部エアーを吸引する吸引装置(集塵機)70を設け、且つ補助処理室11に設置される試料室13は、内部エアーを単独的に吸引させる構成にしているので、調整処理室12及び補助処理室11で発生する飛散物の試料室13への侵入を防止する。また試料室13内に内扉22や外扉21の開閉により侵入する粉塵や塵埃等の飛散物、或いは手袋17,17や容器に付着して侵入する付着物を、試料室13内で単独的に吸引除去することができる。
【0061】
この実施形態ではアスベストを粉砕する方式の処理装置1を示したが、製鋼時の成分分析を行うスラグ試料に対しても粉砕処理することができる。この場合は杵25及び臼51は必要により鋼材粉砕用のものに簡単に取り替えて行うことができる。
さらに、気密室状の試料処理室9を開閉可能な仕切壁10によって、補助処理室11と調整処理室12に区画した処理装置1は、コンタミを防止した試料の調整処理を衛生的に行うことができるので、各種の試料に対する加工作業や化学品の実験作業等に対しても、調整処理室12及び補助処理室11に適応する調整作業部や補助機器類を設置することにより簡単に行うことができる。
【0062】
即ち、処理装置1によって例えば揮発性の高い有機溶剤を処理する場合は、補助処理室11内で容器の蓋を開け、反応容器に移したものを調整処理室12内に入れて反応や混合処理等を行うことができる。また減圧下或いは真空中で処理を必要とする試料の場合は、補助処理室11及び調整処理室12をより気密性の高い構造として、補助処理室11内で試料を治具にセットし、この治具を調整処理室12に移したのち、調整処理室12内をさらに減圧して種々の加工を行うことができる。
【0063】
この場合にも試料処理室9内で発生する、研磨粉,薬剤,反応ガス等の飛(拡)散物を衛生的に除去処理することができる。
また処理装置1は、補助処理室11と調整処理室12との試料の授受を、補助処理室11に設けた手袋17,17を使用した人手によって行う構成にしたが、試料の授受や各種の清掃等をロボット装置によって自動的に行うように構成にすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係わる処理装置の斜視図である。
【図2】図1の構成を一部破断をして示す正面図である。
【図3】図1の構成を一部破断をして示す左側面図である。
【図4】図1の構成を一部破断をして示す右側面図である。
【図5】図1の試料処理室の構成を示す平断面図である。
【図6】杵作動部と臼作動部の構成を示す断面図である。
【図7】(A),(B),(C),(D),(E)は、それぞれ粉砕調整作業の各動作を示す断面図である。
【図8】杵清掃部の構成及び清掃作業の態様を示す断面図である。
【図9】別の杵清掃部の構成及び清掃作業の態様を示す断面図である。
【図10】処理装置の作業を示す工程図である。
【符号の説明】
【0065】
1 処理装置
3 テーブル
4 前側壁
9 試料処理室
10 仕切壁
11 補助処理室
12 調整処理室
13 試料室
17 手袋
25 杵
26 杵作動部
27 臼作動部
29,31,32 杵清掃部
33 臼清掃部
51 臼
70 集塵機(吸引装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブル(3)を有して気密状態に形成される試料処理室(9)を、開閉自在な仕切壁(10)によって補助処理室(11)と調整処理室(12)とに区画し、補助処理室(11)に内扉(22)と外扉(21)を有して試料を出し入れする試料室(13)を設けると共に、調整処理室(12)に上記試料室(13)に供給される試料を粉砕その他の調整作業を行う調整作業部を設けた試料の処理装置。
【請求項2】
補助処理室(11)の前側壁(4)に、補助処理室(11)内に臨む試料室(13)と左右の手を抜き差し自在に差し入れる作業用の手袋(17),(17)を設けた請求項1の試料の処理装置。
【請求項3】
試料処理室(9)に内部のエアーを吸引する吸引装置(70)を設け、且つ試料室(13)に内部のエアーを単独的に吸引させる構成にした請求項1又は2の試料の処理装置。
【請求項4】
調整処理室(12)内の調整作業部を、テーブル(3)の上方で臼(51)を回転させる臼作動部(27)と、該臼(51)内に供給された試料を杵(25)を上下運動させて粉砕する杵作動部(26)等からなる粉砕装置とした請求項1又は2又は3の試料の処理装置。
【請求項5】
調整処理室(12)内に、杵(25)を清掃する杵清掃部(29),(31),(32)と、臼(51)を清掃する臼清掃部(33)を設けた請求項1又は2又は3又は4の試料の処理装置。
【請求項6】
補助処理室(11)に、粉砕装置によって粉砕された試料を選別する選別部(14)を設けた請求項1又は2又は3又は4又は5の試料の処理装置。
【請求項7】
補助処理室(11)に、粉砕された試料を臼(51)から移して室外に取り出すカップ(15)を収容するカップホルダ(16)を設けた請求項1又は2又は3又は4又は5又は6の試料の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−240379(P2007−240379A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64521(P2006−64521)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(392030184)エステック株式会社 (5)
【Fターム(参考)】