説明

試料の核酸増幅検出方法及び装置

【課題】核酸増幅検出工程において、既に分析中であっても、その工程を停止すること無く、連続して新たな試料の搬入が行え、分析を開始できる核酸増幅検出装置とその制御方法を提供する。
【解決手段】反応容器のローディング穴3を複数有し、穴3を個別に任意の温度に調整可能なローディング機構(温度調節機構)と、穴3にローディングされた容器内の試料を測定する測定機構9を備える。ローディング機構3と測定機構9は、対向した配置とし、互いに動作可能な独立した機構である。また、移動動作を行う際は、各速度の和が任意の一定値となるように温度調節機構と測定機構の動作速度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の核酸増幅検出方法及び装置に関する。特に、自動化に適した核酸増幅検出方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、感染症検査を始めとする臨床検査分野、その他食品分野、環境検査分野など幅広い分野において、核酸増幅を利用した遺伝子検査を実施する需要が高まってきている。それに伴い、各検査用途に対し検査方法や検査試薬が多数開発されている。
【0003】
核酸の増幅検出に用いられる検査方法には、PCR法(ポリメラーゼ連鎖反応)や恒温増幅法(NASBA法など)などが用いられている。
【0004】
核酸増幅では標的核酸や増幅手法を規定するプロトコルごとに、核酸を増幅するための温度条件が異なる。恒温増幅法では一定の温度で核酸増幅を行う。一方、PCR法では、試料温度を複数温度領域へ周期的に変化させる温度サイクルが必要であり、その温度サイクルを一定数繰り返した後に増幅工程が終了する。リアルタイムPCRでは、この増幅工程中にさらに核酸の増幅を測定(例えば蛍光測定)する検出工程も行われる。このような核酸増幅と検出の工程を自動化する装置では、核酸増幅の温度サイクルを行いながら、測定動作も実施し、プロトコルで規定の温度サイクルの繰返し回数が終了した段階で分析終了となる。
【0005】
核酸増幅検出を自動化する従来技術として、非特許文献1に示すような複数試料を保持するプレートを備え、プレート全体を均一に温度制御する装置が開示されている。
【0006】
この装置は、バッチ処理方式であるため、一度分析を開始してしまうと、試薬容器の装着箇所(ローディングポジション)に空きが有っても、途中で試料の追加を行うことができない。
【0007】
従って、その場合は分析終了後に、新たに分析を開始せざるを得ず、結果を得るまでに時間を要する。
【0008】
特許文献1では、試料及び試薬の入った複数の反応容器を保持するための試料ホルダーが固定配置されており、それを光センサーが回転して、複数の反応容器の核酸増幅を、蛍光色素標識を利用して蛍光検出するが、上記同様に試料測定の途中で新たな反応容器を測定部にランダムに投入(ローディング)する技術は開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002-318192
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Roche社LightCycler(登録商標)480
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一般に、核酸増幅用の検出装置を自動化する場合には、核酸を含む反応溶液(試料、試薬)が入っている検体容器(反応容器)を複数ローディング可能で且つ核酸増幅用の温度調節機構を有するローディング機構と、ローディングされた反応容器の核酸増幅を検出するための測定機構(例えば蛍光検出器)と、反応容器をローディング機構に搬送する搬送機構とを備える。
【0012】
かような自動化技術を想定した場合、従来技術(特許文献1や非特許文献1で提示されている装置形態も含む)においては、複数の検体を、所要時間の異なるプロトコルで同時に分析する場合(例えば、それぞれの検体の核酸増幅温度サイクル条件などを独立に制御可能とした場合)、所要時間の短い検体については、他の検体の温度サイクル制御及び測定が完了するまで検体を取り出すことができず、待機時間が発生する。また、既に分析を実行している場合は、途中で検体(試料)を追加することや、実行中の分析を停止せずに、さらにその追加した試料の分析を行うことができない。
【0013】
これらは、従来の装置がバッチ処理方式に対応したものであり、バッチによる検査中は、追加検体を単発或いは連続して検査部(ローディング機構、測定機構のある位置)に割り込みでローディングして独立した温度プログラムに沿った温度制御をすることができないためである。それ故に、検査の迅速化や、急患が発生した場合にその患者の試料を直ぐに検査するなどの対応ができなかった。
【0014】
また、検査項目、使用する試薬、温度プログラムなどが異なる複数の検体の場合には、それぞれの測定信号の取り込みタイミングが異なるために、共通の測定機構を使用して並行に核酸増幅検出をすることは困難であった。
【0015】
本発明は、バッチ処理方式であった核酸増幅検出装置に対し、既に分析中であっても、その工程を停止すること無く、ランダムに単発或いは連続して新たな追加試料の投入(ローディング)、分析(核酸増幅検出)を行うことができる核酸増幅検出装置とその制御方法を提供することにある。
【0016】
さらに、検査項目、使用する試薬、温度プログラムなどが異なる複数の検体であっても、バッチ処理、ランダム追加の核酸増幅検出を問わず、共通のローディング機構及び測定機構を使用して、並行に検体分析(資料の核酸増幅検出)をすることができる核酸増幅検出装置とその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、上記目的を達成するために、次ぎのように構成される。
(1)一つは、試料と試薬を入れた核酸増幅用の反応容器を複数、ローディングすることができ、核酸増幅のための温度調節が可能な温度調節機構を有するローディング機構と、
前記ローディング機構と対向配置され、ローディングされた反応容器を測定する測定機構と、を用い、
前記測定機構を前記ローディング機構に対して相対的に所定の方向に繰り返し回転移動或いは直線移動させて前記ローディング機構にローディングされた複数の反応容器の試料の測定信号を、順次、一定周期のタイミングで取り込む核酸増幅検出方法或いは装置であって、
前記ローディング機構と前記測定機構とは、それぞれ独立した自身の移動機構を有し、既にローディングされた反応容器が測定されている間に、新たな反応容器のローディング要求があると、前記ローディング機構に対する前記測定機構の相対移動速度を、前記移動機構を介して新たなローディング要求前と変わらずに一定に維持する制御を行いながら、前記ローディング機構を、任意のローディング空きポジションが固定の反応容器搬入位置に来るように移動制御し、この制御により、既にローディングされている反応容器の試料の測定を中断することなく新たな反応容器のローディング機構への搬入を並行して行うことを特徴とする。
(2)もう一つは、試料と試薬を入れた核酸増幅用の反応容器を複数、ローディングすることができ、核酸増幅のための温度調節機構を有するローディング機構と、
前記ローディング機構と対向配置され、ローディングされた反応容器を測定する測定機構と、を用い、
前記測定機構を前記ローディング機構に対して相対的に所定の方向に繰り返し回転移動或いは直線移動させて前記ローディング機構にローディングされた複数の反応容器の試料の測定信号を、順次、一定周期のタイミングで取り込む核酸増幅検出方法或いは装置であって、
各反応容器の前記測定信号を取り込む時間的範囲を、種々の核酸増幅条件に応じて時間帯を異にする複数の特定測定範囲をカバーできるよう余裕を持って設定し、前記測定信号を取り込む時間的範囲内の測定信号取り込みの周期を、前記ローディング機構と前記測定機構の相対速度制御により、種々の核酸増幅条件に対応可能な周期に設定し、
前記ローディング機構にローディングされる反応容器ごと或いは反応容器のグループごとに、前記測定信号を取り込む時間的範囲の中から適した特定測定範囲を選択して、その特定測定範囲に含まれる測定信号を核酸増幅検出の測定データとして抽出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、(1)の構成により、現在ローディングされている検体(試料)の分析動作(核酸増幅及び検出)を停止すること無く、新たな検体のローディングと分析をランダムに追加して実行することが可能となる。これにより、検体のローディングの待機時間が無くなり検査の迅速化が図れ、また急患などの試料を途中から追加分析可能となり、検査効率の改善に寄与できる。
【0019】
さらに、(2)の構成により、検査項目、使用する試薬、温度プログラムなどが異なる複数の検体であっても、バッチ処理、ランダム追加の核酸増幅検出を問わず、共通のローディング機構及び測定機構を使用して、並行に検体分析(資料の核酸増幅検出)をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例1に係る核酸増幅検出装置の概略斜視図。
【図2−1】実施例1の核酸増幅検出装置の構成を示す平面図。
【図2−2】実施例1の核酸増幅検出装置の側面図
【図2−3】実施例1の核酸増幅検出装置のA部(図2−2に示す)付近の側面図。
【図3】実施例1の核酸増幅検出装置に用いる制御装置及びその周辺装置の構成を示すブロック図。
【図4】実施例1の核酸増幅検出の動作を示すフローチャート。
【図5】実施例1の核酸増幅検出の動作を示すタイムチャート。
【図6】本発明の実施例3の核酸増幅検出の動作を示すタイムチャート。
【図7】本発明の実施例4の核酸増幅検出装置の構成を示す平面図。
【図8】本発明の実施例5の核酸増幅検出装置の構成を示す平面図。
【図9】本発明の実施例6の核酸増幅検出装置の構成を示す平面図。
【図10−1】図9のB−B´断面図。
【図10−2】図10−1のC部拡大断面図。
【図11】PCR法による核酸増幅の温度プラグラム(温度サイクル)の一例を示す説明図。
【図12】図11の温度プログラム(温度サイクル)の一部を示す説明図。
【図13】異なる温度プログラム(温度サイクル)により実施される核酸増幅において、共通の測定機構を用いて共通周期で測定信号を取り込む状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に示した実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の実施例1に係る核酸増幅検出装置の概略斜視図、図2−1は、その平面図である。なお、内容の理解を容易にするために、図2−1の反応容器のローディング機構4と測定機構9とは、それを全体的に覆うカバー2aの一部を省略して透視的に示している。図2−2は、本実施例に係る核酸増幅検出装置の正面図、図2−3は、その部分的な側面図である。
【0023】
核酸増幅検出装置1は、主に、反応容器11aを備えた反応容器ラック8と、反応容器搬送機構(6,7,13,14)と、温度調節機構4´(図3)を有するローディング機構4と、反応容器中の試料(検体)の核酸増幅を検出するための測定機構9と、これらの機構を制御する制御装置100とからなる。符号11aは、反応容器ラック8にセットされている反応容器を示しているが、ローディング機構4にセットされた場合の反応容器は、符号の11bにより示されている。便宜上、これらを総称して、反応容器として符号11を用いることもある。
【0024】
本実施例では、反応容器11には、予め前工程で核酸増幅用の試料と試薬の入った溶液を注入しており、複数の検体分として反応容器ラック8にセットしている。反応容器ラック8と、反応容器搬送機構(6,7,13,14)と、温度調節機構付きローディング機構4と、測定機構9とは、ベース5上に搭載されている。制御装置100は、ベース5上に搭載しても、ベース5と切り離してもよい。
【0025】
主な分析動作は、核酸増幅検出対象の試料(検体)および試薬の入った反応容器11aを、搬送機構を介して反応容器ラック8から検体検査部2(核酸増幅検出部:ローディング機構4、測定機構9)の一部をなすローディング機構4に搬送して、ローディングし、その後に反応容器中の検体について、検体検査部2で温度調節機構4´を介して核酸増幅を行い且つ測定機構9により核酸増幅の検出を行なうものである。これらの一連の工程は、制御装置100によって、自動的に行われる。
【0026】
反応容器ラック8と検体検査部2とは、搬送機構を介してベース5上に隣接して配置されている。
【0027】
検体検査部2は、円形のローディング機構4と、そのローディング機構と対向してローディング機構の内側に配置された測定機構9とをカバー2aで覆うことで構成されている。カバー2aの上面一部には、搬送機構を介して反応容器ラック8から送られてきた反応容器11をローディング機構4に搬入するための搬入ゲート(反応容器搬入位置)16が設けられている。搬入ゲート16は、シャッターにより開閉可能である。ちなみに、測定時に外乱光の影響を受けない、もしくは受けても測定上問題無い場合は、カバー2aの有無は問わない。
【0028】
搬送機構は、搬送機構X軸6、搬送機構Y軸7、搬送機構Z軸14、反応容器把持機構13とからなり、反応容器把持機構13は、Z軸14に支持されている。Z軸14は、容器把持機構13をZ軸方向(上下方向)に移動可能となるように支持し、且つY軸7上でY軸方向に移動可能に支持されている。Y軸7は、X軸6にX軸方向に移動可能に支持されている。これらのX軸、Y軸、Z軸を利用した移動は、図示省略するが、例えば、サーボモータ(例えばステッピングモータ)でボールスクリューを回転駆動し、かつこの回転を直線運動に変換するサーボ機構により行われる。
【0029】
搬送機構X軸6、搬送機構Y軸7、搬送機構Z軸14、試料容器把持機構13で構成される搬送機構は、反応容器ラック8のすべての容器設置ポジションにアクセスすることができる。試料容器把持機構13は、搬送機構Z軸14により下降し、反応容器ラック8から試料の入った反応容器11aを掴み、ローディング機構4のある位置に移動した時には、反応容器を、搬入ゲート16を通してから、ローディング機構4のローディング穴3にセットする。ローディング機構4にセットされた反応容器11は、既述したように反応容器ラック8側にある反応容器11aと区別するため符号11bで示してある。
【0030】
ローディング機構4には、反応容器ラック8から搬送される反応容器11をローディングするための穴(ローディング穴)3が円周方向に等間隔で配設され、それらの穴3は、核酸増幅のため、一個又は複数個を一つのまとまりとして独立して温度調節が可能であり、任意の温度に調節することができる。温度調節機構4´には、例えばペルチェ素子、ヒータ、冷却ファンなどを用いる。また、加熱用熱源と冷却用熱源を別途組み合わせても良く、加熱、冷却とも任意の温度に調整できる構造であれば良い。
【0031】
ローディング機構4は、中心軸10を中心にステッピングモータ(図示省略)を介して任意の方向及び任意の速度に回転動作が可能である。ステッピングモータは、制御装置100を介して制御される。
【0032】
測定機構9は、蛍光色素により標識化される核酸から発せられる蛍光を光学的に測定するものであり、それ自体は既知であるので、説明を省略する。測定機構9は、蛍光の励起光源と蛍光発光を検出する光検出部からなり、そのいずれか一方が、ローディング機構4の内側に、ステッピングモータ(図示省略)などのアクチュエータを介して回転可能に配置されている。他方は、固定配置される。本実施例の測定機構9は、励起光源を可動側として、固定側を蛍光検出器32(図2−3参照)とし、反応容器の核酸から発せられる標識蛍光色素の蛍光を反応容器下部から測定する。蛍光検出器32は、ローディング穴3ごとに他の同様の検出器と測定信号が識別できるように固定配置される。測定方法は限定するものではなく、容器側面から測定する方式でも良い。ここでは、可動側となる励起光源を測定機構9として図示している。
【0033】
なお、測定機構9の励起光源の設置数は、検出する蛍光色素数により増減し一つ又は複数個設置可能である。複数設置された場合、これらの励起光源は、可動側の測定機構9となり、各ローディング穴3の下部に設けた蛍光検出器32に対して共通の光源として使用され、複数一体として回転動作する。測定機構9も中心軸10を中心に任意の方向及び任意の速度に回転動作が可能である。温度調節機構4と測定機構9は、それぞれ自身の駆動機構(例えばステッピングモータ)を介して独立して回転可能であり、両者が同方向へ回転することも、また逆方向へ回転することも可能である。なお、蛍光検出器側を可動側とし、励起光源側を固定側として配置することも可能である。
【0034】
測定機構(可動側)9とローディング機構4(温度調節機構4´)の位置関係として、ローディング機構4の外側に、測定機構9を配置するレイアウトでも良い。測定機構9とローディング機構4とは、核酸増幅検出時に、測定機構9と温度調節機構4(反応容器11b)との相対速度が一定に保たれる限り、どのような形状、構造でも良い。
【0035】
図3に示す制御装置100は、図示の入力信号に基づき搬送機構(6,7,13,14)、ローディング機構4、温度調節機構4´及び測定機構9の駆動部(サーボアクチュエータ)を駆動制御するものであり、その制御については、図4のフローチャート及び図5のタイムチャートを参照しながら説明する。
【0036】
制御装置100は、ローディング機構4に未だ反応容器がローディングされていない初期状態時に、一又は複数(バッチ)の反応容器をローディングして核酸増幅検出を始める場合を通常モード(モード1)とし、既に反応容器がローディングされて核酸増幅検出が行われている最中に、追加の反応容器をローディングして核酸増幅検出する場合を割り込みモード(モード2)とし、いずれかのモードを選択する。
【0037】
初期の検査項目及びローディング依頼数(検体依頼数)があると(ステップS1)、モード1が選択され(ステップS2)、ローディング機構4を間歇送り制御して、搬入ゲート16の真下に、空きのローディング穴3を搬入ゲート16に近い方から順送りする。この順送りされる穴3に、反応容器ラック8からの反応容器11(11a)を、ローディングしていく。この場合には、一定の間歇速度でローディング機構4が制御される(ステップS3)。
【0038】
ローディング穴(ホルダー位置)3のポジションは、初期状態のとき、基準となる1番の穴が搬入ゲート16の真下(以下、搬入ゲート位置と称することもある)にある。ローディング機構4上に複数配列された穴3は、基準となる1番の穴とのそれぞれの相対角度(距離)で認識することができ、エンコーダなどの回転角検出器(図示省略)により認識可能である。ローディング機構4が回転する場合には、回転角検出器により初期位置からの回転角度(移動量)を常に計測している。
【0039】
任意のローディング穴3と搬入ゲート16との角度(距離)αは、1番の穴(基準穴)の位置と搬入位置までの回転角度をA、1番の穴から任意の順番の穴までの相対角度をBとすると、α=A+Bで求める。
【0040】
反応容器11には、検体の識別コードが付されており、ローディング機構4にローディングされた時にこの識別コードを入力し(検体入力)、識別コードと前記した角度αの情報とにより、基準穴(1番の穴)から何番目のローディング穴にどの検体(反応容器)がローディングされているか把握されている。したがって、ローディング穴の空き情報も演算・制御部102により把握されている。
【0041】
また、反応容器がローディングされると、制御装置100は、検体の識別コードと検査項目情報にしたがって、温度調節機構4´を介して該当のローディング穴について直ぐに個別の温度調節動作を開始する(ステップS4)。このようにすれば、温度調節を、他の反応容器のローディングを待つことなく行えるので、核酸増幅の開始の待ち時間をなくすことができる。検査項目に応じた各ローディング穴3の温度制御は、PCRの場合は、段階で異なる温度制御を行う温度サイクル制御、恒温増幅法の場合は、恒温制御が行われる。
【0042】
モード1の場合には、ローディング機構4は、間歇送りされるため、回転と停止を頻繁に繰り返し、制御の簡易化を図るため、反応容器がバッチでローディング完了した後に、ローディング機構4の回転を停止させ、その後、測定機構9の回転制御が行われる(ステップS5、S6)。
【0043】
ステップS6では、測定機構9の回転制御(定速度制御)のほかに、ローディング機構4にローディングされた各反応容器11bからの測定信号の取り込みが行われる。
【0044】
測定機構9は、ローディング機構4(換言すればローディング反応容器11b)に対する相対速度(角速度)Vが一定になるように速度制御される。すなわち、ローディング機構4が停止状態(ローディング完了状態)では、測定機構9自体が設定速度Vで回転制御される。この一定の相対速度Vを保つことにより、ローディング機構4上の各反応容器11bに対する測定周期Pは、P=πr/Vとなる(rは、ローディング機構4の半径)。各反応容器11bからの測定信号(測定データ)は、周期Pにより制御装置100の演算・制御部102に入力される。
【0045】
測定信号の取り込みは、核酸増幅の温度プログラムに沿った温度サイクルが実行されているときに、反応容器ごとに所定周期Pで繰り返し取り込まれる。核酸増幅の検出に使用する測定データは、温度サイクルの中のどの時間帯の測定信号でも良いものではない。すなわち対象とする検査項目(核酸増幅条件)によって試薬、温度サイクル時間、サイクル数が異なるために、その温度サイクルの中での特定の測定範囲も検査項目に応じて異なる。定量検査のプロトコルによっては、試薬メーカにより核酸増幅を検出する時間帯(時間的な特定範囲)が指定又は推奨されている。
【0046】
例えば、図11に示すように、PCR法による定量検査において、測定要とされるメインサイクルにおいても、核酸増幅工程における変性、アニーリング、伸長反応のうち、特に核酸増幅検出は、伸長反応の範囲(時間帯)の信号を使用する必要がある。そこで、本実施例では、測定信号の取り込みは、余裕を持ってメインサイクルの期間中(一定間隔)で取り込み、さらにそこから図12に示すように伸長反応に相当する時間帯(斜線によりマーキングしている箇所)を核酸増幅検出の特定測定範囲として設定することで、この特定測定範囲の測定信号を核酸増幅検出のデータに利用する(ステップS7)。
【0047】
本実施例では、図13に示すように、ローディング機構4にバッチでローディングされた複数の検体(反応容器中の試料)の温度プログラムが異なり(検体ごとに温度サイクルが異なる)、それに応じて検体の特定測定範囲も異なる場合であっても、これらの検体の核酸増幅及び検出を並行処理可能に設定してある。図13は、このような検体に応じて検出すべき時間帯(タイミング)は異なる場合であっても、すべての検体の核酸増幅検出の並行処理を可能にするための原理図を示すタイムチャートである。図13においては、一例として、異なる検査項目を有する3つの検体(反応容器11b)に対してそれぞれ実行されるPCR法の温度プログラムと測定周期の関係を示している。図13に示すように、それぞれの温度プログラム(温度サイクル)は異なり、それに伴い斜線のマーカーで示す検査に必要とする特定の測定範囲も異なる。本実施例では、各反応容器の測定信号を取り込む時間的範囲については、図13の一番下の温度サイクル(最長温度サイクル)に合わせる。この測定信号取り込みの時間的範囲は、真に必要とする複数の特定測定範囲(斜線マーカーで示す、図13では、3つ例示している)を全てカバーできるように余裕を持って、最大公約数的に設定してある。図13中で、温度サイクル中に等間隔で引いてある縦の細線の間隔は、それぞれ測定機構9が各反応容器11bにさしかかった時に取り出される測定信号の発生周期(取り込み周期)Pを示すものである。図13の3つの検体の測定信号の周期は、測定機構の回転により順次取り出されるために実際は、時間差を有しているが、周期の長さ自体は共通のものである。
【0048】
図3の制御装置の記憶装置101には、種々の検査項目に対応した核酸増幅条件として、検査項目ごとの温度プログラム及び前記した図13に示すような特定測定範囲および周期Pが予め記憶してある。制御装置100は、検査項目が入力されると、対応の温度プログラム及び特定測定範囲に基づいて核酸増幅の温度調節し、及び特定想定範囲の測定信号を抽出し、抽出した測定信号を核酸増幅検出のデータとして用いる。
【0049】
本実施例では、複数の検体において、異なる検査項目(核酸増幅検出条件)によって異なる測定範囲(特定測定範囲)が複数存在しても、共通の測定機構9を用いて共通の周期により特定測定範囲中の信号を検査データとして抽出する。したがって、温度プログラムが異なる複数の核酸増幅検出を並行に実行することができる。
【0050】
温度サイクル完了後に反応容器は排出される(ステップS8、S9)。
【0051】
このような通常モード(モード1)の核酸増幅及び検出を行っているときに、任意(ランダム)に追加の反応容器のローディング、核酸増幅及び検出の要求があった場合には(ステップS10)、モード2に移行する(ステップS11)。このモード2を実行する場合には、モード1で既にローディングされている核酸増幅及び設定周期Pの測定信号の取り込みも中断することなく行われるように、以下のステップS12からS14で示す割り込みローディング工程が、制御装置100の制御により実行される。このモード2の実行は、PCR法または恒温増幅法のいずれであっても可能である。
【0052】
まず、モード2の説明に先立ち、モード2を実行する必要性について説明する。
【0053】
反応容器(検体)を割り込みで、検査部(ローディング機構4、測定機構9)に単発或いは連続的に追加投入する場合、先発の核酸増幅検出工程に付されている検体と、新たに追加された検体との検査項目が異なる場合には、検査項目によって温度サイクルや検出時間帯(検出タイミング)が異なる。このように同時に検査する検査項目の異なる検体をさらに増やしていくと、検出すべき時間帯(特定測定範囲)は全て異なる場合もある。
【0054】
一方で、割り込みの連続投入の機能を持たせる以上、検体のローディング機構4における搬入出も並列処理する必要が出てくる。つまり、連続して検体を投入している間も、継続して測定動作を行うことが必要となる。
【0055】
ローディング機構4における反応容器の搬入、排出動作を行いつつ、測定動作を継続させるためには、検体ごとにそれぞれ独立した温度調節機構4´や検出機構を有する構成で分析する方式をとれば、比較的容易に制御可能である。この場合、検体間のデータのばらつきやそのばらつきを防止するための機構の調整作業、装置コストなどを勘案すると、構成する光学系やローディング機構などは出来る限り共通化し部品点数を省略化出来た方が良い。
【0056】
本実施例では、モード1のようなバッチ処理方式であった核酸増幅検出装置において、複数の検体に対し光学系などは共通部品を用い、既に分析中であってもその工程を停止すること無く、新たな検体の分析の追加を可能にするために、モード2を選択することで、次のような動作が実行される。この場合、実行している核酸増幅検出は、PCR法または恒温増幅法のいずれでもよいが、本実施例では、PCR法により説明する。なお、図5に本実施例のタイムチャートを示す。
【0057】
図4に示すように、核酸増幅検出中(測定機構回転中)に、追加の検体の検査項目及びローディング依頼数があった場合(ステップS12)、モード2に移行し(ステップS11)、まずローディング機構4におけるローディング穴3の空き確認を行う(ステップS12)。ローディング穴3の空きの有無は、装置の動作履歴(ローディング装置の回転変位の履歴及び反応容器のローディング履歴)などから、どこのローディング穴に反応容器がローディングされているかを、常に更新して記憶しておくことで、判断できる。そして、空きが有れば、制御装置の演算・制御部102が、空きのある穴3と搬入ゲート16のあるローディング搬入位置までの相対距離αを計算する。この相対距離は、既述した基準となる1番の穴の位置と搬入位置までの回転角度をA、1番の穴(基準穴)から任意(空きのある)穴までの相対角度をBとすると、α=A+Bで求められる。空きがない場合は、追加ローディングはキャンセルされる(ステップS15)。空きがある場合には、空きのある穴3のうち搬入ゲート16に最も近いものを選択する(ステップS13:ローディングポジション決定)。
【0058】
また、決定された空き穴が搬入ゲート16の位置まで回転変位させる場合の所要時間が最短となるように、ローディング機構4の動作方向と動作速度(角速度)を決定する。
【0059】
本実施例では、既述したように、測定周期Pを一定に保つ必要があるため、演算・制御部102にて、ローディング機構4(測定中の反応容器11b)と測定機構9の相対角速度Vを常に一定に保つための速度演算が次ぎのように行われる(ステップS13)。
【0060】
測定機構9の角速度をV1、ローディング機構4(温度調節機構4´)の角速度をV2とする。常にVが一定となるようにV1、V2の値を決定し、その値で動作を行う。ローディング機構4の選択したローディングポジション(空き穴)3を搬入ゲート位置へ回転変位させる時には、測定機構9の角速度V1は以下の(1)式で定義できる。
【0061】
V1=V+V2 …(1)
このとき、目標の相対角速度Vは既知、またローディング機構4の角速度V2は、選択した空き穴3と搬入ゲート16までの移動距離、回転方向、モータの仕様から最適値が求まり、それを元にV1を算出する。V2は、上記移動距離が遠くなるほど速くなるよう設定してある。穴3のうち、搬入ゲート16に最も遠い位置は、搬入ゲート16の位置に対して180°回転した位置となる。そこで、選択した穴3を搬入ゲート16のある位置まで最短距離で回転させる場合には、搬入ゲート16に対して、(イ)0°<穴3の位置≦180°の場合と、(ロ)180°<穴3の位置<360°の場合とで、ローディング機構4の回転方向を正、逆、切り換える必要がある。
【0062】
ローディング機構4の回転動作時、速度の状態は加速、定速、減速の速度パターンを有し、速度によっては、移動距離が短いと定速状態にはならず、逆に距離が長ければ回転し終わるまでにより多くの時間を要することになる。そこで、演算・制御部102は、角度(距離)に応じてローディング機構4のローディング時の移動速度(回転速度)を決定する。測定機構9の回転速度(角速度)も相対速度Vが一定になるように速度が求められ、回転速度制御される。
【0063】
割り込みのローディング動作が無い場合(モード1)、すなわち測定機構9だけが動作している場合は、(2)式の通りとなる。
【0064】
V1=V、V2=0 …(2)
(1)及び(2)式より、ローディング機構4と測定機構9のそれぞれ角速度を決定しながら回転制御を行う。
【0065】
ローディング機構4の選択された空き穴3が、搬入ゲート16の位置へ移動した後、搬送機構及び搬入ゲート16を介して反応容器を選択された空き穴3にローディングする。
【0066】
図5は、容器搬送機構の搬送動作と関係させて、回転式測定機構9の回転と回転式ローディング機構(温度調節機構)4の相対的速度Vを維持する動作を示すものである。図5は、ローディング機構(温度調節機構)が停止状態にあるときには、測定機構が一定速度で回転し、ローディング機構(温度調節機構)の空き穴が反応容器搬入ゲート16に移動している時には、ローディング機構の回転に応じて測定機構が相対速度を維持するための速度制御が行われている状態を示している。
【0067】
また、ステップS13では、ローディングされると直ぐにそのローディング位置の個別温調動作を開始し、一連の温度サイクルなど温度調節工程が終了するまで温度を行う。追加のローディング完了後は(ステップS14)、さらなる追加でローディング要求(追加の核酸増幅検出の要求)があるまでは、(2)式の状態となり測定機構9のみが回転動作を行う(ステップS6)。以後は、既述したステップS7からS9の工程が行われる。そして途中で追加が発生した場合は、モード2の状態となって、またローディングの空きの確認からの一連の動作工程を繰り返すことになる。ステップS7の測定信号抽出は、既述した図13の原理に従って行われる。
【0068】
すなわち、反応容器の測定信号を取り込む時間的範囲が、種々の核酸増幅条件に応じて時間帯を異にする複数の特定測定範囲をカバーできるよう余裕を持って設定されている。この測定信号を取り込む時間的範囲内の測定信号取り込みの周期は、ローディング機構(温度調節機構)4と測定機構9の相対速度制御により、種々の核酸増幅条件に対応可能な周期に設定される。制御装置100は、ローディングされる反応容器ごと或いは反応容器のグループごとに、適した特定測定範囲を選択して、その特定測定範囲に含まれる測定信号を核酸増幅検出の測定データとして抽出する。
【0069】
以上の動作によって、ローディングの追加(割り込み)の有無に常に測定を行いながら反応容器を連続して搬入することが可能である。
【0070】
なお、図5に示す実施例では、追加の検体(反応容器)を3つの場合を例示しているが、4つ目以降の反応容器も同様にローディング穴3の空きが無くなるまで、測定機構に左右されること無く連続して反応容器の搬入が可能である。ローディングされた反応容器は、増幅工程が終了され次第、搬出されるが、これは、搬送機構で排出しても、または排出箇所で架設穴から落下させるような機構を設けて排出しても構わない。
【0071】
なお、測定機構とローディング機構との相対速度は、各反応容器通過時に蛍光測定が可能な最短時間を基に速度に設定されるが、相対速度は、測定時間に応じて任意に設定することが可能である。温度調整機構に設置されている複数の反応容器のローディング穴の任意の一つに注目すると、その穴が測定機構と通過するタイミングは常に一定の周期で実行される。これにより、測定機構により任意の測定周期で検体の核酸増幅検出の測定を行いながら、且つ反応容器は連続して投入が可能となる。
【0072】
また、このことは、既に分析中の試料と追加試料のそれぞれの検査方法が、どちらもPCR法のみの組合せの場合、又はどちらも恒温増幅法のみの組合せの場合、又はPCR法と恒温増幅法の組合せの場合、のいずれの場合にも成立する。
【0073】
さらにこのシステムは、反応容器の搬入位置を任意の1点(複数も可)に決定できることから、搬送機構による搬送動作時の距離を最短に設定でき、よって搬送動作が最短時間で行うことが可能である。また、搬送機構の位置校正を行う際も指定する位置が少なくてすむ。また、カバーを設ける必要がある場合でも、搬送ゲートを1箇所のみ設けておけばよい。
【0074】
相対角速度Vが一定であれば、測定機構と容器が測定のために通過する際の速度や時間など測定条件が、複数の容器に対して均一化でき、容器間のデータ取得条件による測定のバラつきを押さえることが可能である。すなわち、ローディング機構が動作しても常に同一の条件下で測定できることとなる。そこで、
実施例1では、測定機構と温調機構の形状が円形状としたが、測定機構と温調機構が互いに対向して複数の試料を順次測定出来れば、形状はどんなものでも良い。
【0075】
測定したデータは、反応容器をローディング位置が既知のため、測定した時刻から必要なデータかどうか判別し、対象とする反応容器のローディング位置に必要なデータを時系列で纏めることが可能である。なお、このデータ収集方式も、この方式に制限するものではなく、必要であれば全データ、或いは、任意の必要数に応じたデータ数とすることが可能とする。
【実施例2】
【0076】
実施例1では、PCR法による核酸増幅検出方法を一例に例示したが、ローディング機構4に恒温増幅法を実施する温度調節機構を設けてもよい。恒温増幅法の増幅工程は一定温度であるため、温調機構の機能を簡素化することが可能である。即ち、実施例1で示したような温調機構の反応容器架設穴が個別温調である必要が無く、一律に温度制御が可能となればよい。この場合、温度調節には、例えばペルチェ素子やヒータ、冷却ファンなどを用いる。また、加熱用熱源と冷却用熱源を別途組み合わせても良く、加熱、冷却とも任意の温度に調整できる構造であれば良い。その他の構成については、実施例1同様である。
【実施例3】
【0077】
実施例1では、ローディング機構4における反応容器搬入位置を一箇所に固定し、ローディング機構4を移動制御して空きのローディング穴3を反応容器搬入位置に来るように制御するものであるが、本実施例では、ローディング機構は固定、測定機構は移動機構を備え、この移動機構を介して測定機構とローディング機構との相対速度を一定に維持するようにしたものである。本実施例は、図示省略してあるが、図1〜図2−3に示す実施例1において、次ぎのようなアレンジを加えることで本実施例が実現可能である。
【0078】
すなわち、ローディング機構4について固定し、測定機構9は回転可能とする。また、選択した空きのローディング穴に反応容器をローディングする場合には、搬送機構(6,7,13,14)に最寄り空き穴3を選択して、搬送機構を介して反応容器11を反応容器ラック8から選択した空き穴3の位置まで移動させて行う。
【0079】
カバー2aがある場合、ローディング穴3に対応した位置をシャッターにより開閉するようにすればよい。または、上記した検査部だけのカバー2aに代わって装置全体をカバーで覆い、カバーにより外光や迷光を遮断するような仕組みでもよい。
【0080】
図13に示すような測定信号取り込みの時間的範囲の設定、測定周期の設定、特定測定範囲の設定は実施例1同様である。
【0081】
図6に本実施例に用いる搬送機構、ローディング機構(温度調節機構)、測定機構のタイムチャートを示す。
【0082】
図5に示すように、本実施例においても、測定機構9とローディング機構(温度調節機構)4とは、相対速度Vを保つことで一定の測定周期Pで核酸増幅検出の測定信号を取り込むことができ、且つ複数の異なる核酸増幅条件(特定測定範囲)の検体の測定信号を並行に抽出可能である。また、追加の検体のローディング及び核酸増幅検出の依頼がある場合にも、温度プログラムの異なるPCR法或いは恒温増幅法を問わず、相対速度Vを維持しつつ反応容器を選択した固定の空き穴の搬送機構を介してローディング可能である。
【0083】
本実施例によれば、測定機構9の移動速度(各速度)は、反応容器のローディング時にも速度V一定を保ち、核酸増幅検出工程の測定機構の速度制御の単純化を図りつつ、図1の実施例1同様の効果を得ることができる。
【実施例4】
【0084】
本実施例では、PCR法を行う上で必要となる温度サイクルのうち、一部のみ実施例1同様の構成をなす核酸増幅装置上で行う方法である。本実施例の構成を図7に示す。
【0085】
PCR法ではプロトコルによっては、図11に示すように、温度サイクルがプリサイクル、メインサイクル、ポストサイクルと分けられているものもある。このうち、蛍光色素の取得が必要となるのはメインサイクル、ポストサイクルのみである。本実施例では、測定が必要なサイクルの温度サイクルのみ、本発明の核酸増幅装置1内で行い、それ以外の温度サイクルは、核酸増幅検出1外の個別温度制御部17(17a,17b,17c)で行う。この場合、試料の入った容器は、個別温度制御部17−核酸増幅装置1―個別温度制御部17の順で搬送を行う。
【0086】
このように温度サイクルを行う機能分担を細分化したことにより、核酸増幅装置1の動作の自由度を増すことができる。
【実施例5】
【0087】
図8に本発明の実施例8に係る核酸増幅検出装置(自動分析装置)の平面図である。
【0088】
本実施例も、搬送機構、温度調節機構付きローディング機構、測定機構の発明に係わる点の基本的な構成は、実施例1同様である。
【0089】
実施例1との相違点は、次ぎの通りである。
【0090】
本実施例では、核酸増幅検出装置自体に、分注ユニット18、グリッパユニット19を有する。分注ユニット18は液体の吸引・吐出を行う。グリッパユニット19は反応容器32を把持する。分注ユニット18とグリッパユニット19は、ロボットアームX軸20、ロボットアームY軸21に接続され、平面移動することができる。
【0091】
分注チップ22はチップラック23aにストックされている。試薬の入った試薬容器は試薬容器ラック23bにストックされている。試料の入った反応容器は反応容器ラック24にストックされている。核酸増幅検出部25は、核酸の増幅工程を時系列にトレースするための蛍光検出器を備える。
【0092】
本実施例の自動分析装置の代表的な運用例について説明する。反応容器をグリッパユニットにて反応液調整ポジション26に搬送する。分注チップ22を分注ユニット18に装着し、試薬の入った試薬容器から吸引し、反応液調整ポジションにて反応容器に吐出する。使用済みの分注チップは、コンタミ防止のため、廃棄ボックス29に廃棄する。試料・試薬の入った反応容器は、グリッパユニット19で把持され、ロボットアームにより閉栓ユニット30に搬送される。そして、閉栓ユニット30にて蓋を閉めて密閉し、その後ロボットアームにて攪拌ユニット31に搬送される。搬送された反応容器を攪拌させた後、ロボットアームを介して反応容器が核酸増幅検出部に搬送され、実施例1同様の増幅と検出を行う。検出が終わった反応容器は廃棄ボックスに廃棄される。核酸増幅検出部25での反応容器の搬入と搬出は搬送ゲート16を開閉して行う。
【0093】
本実施例の発明によれば、核酸増幅による核酸の定量工程を自動化することができる。なお、本実施例では一組のロボットアームに分注ユニットとグリッパユニットを接続したが、独立したロボットアームにそれぞれ接続、或いは、軸を固定した回転型のアームに接続するなど搬送機構の形態は制限しない。また、本実施例では試薬調整などの増幅工程の前処理工程から自動化を実施しているが、核酸抽出工程を含めて全自動化することも可能であり、自動化する工程を制限するものではない。
【実施例6】
【0094】
図9に本発明の実施形態のうち実施例1とは異なる形態を示す。核酸増幅検出装置33は、搬送ゲート34を有するカバー35に覆われた検査部内部に、反応容器のローディング穴36を直線状に複数等間隔に配列した直線状のローディング機構37が設置されている。ローディング機構は、それぞれのローディング穴或いはグループ別の温度調節が可能な温度調節機構を含む。ベース38の上に、上記したローディング機構に加えて、搬送機構X軸39と搬送機構Y軸40、反応容器ラック41、測定機構42が設けてある。測定機構37は、実施例1同様に蛍光型の測定器であり、ローディング機構37に向い合うように配置されている。測定機構42の設置数は、検出する蛍光色素数により増減し一つ又は複数個設置可能である。複数設置された場合、測定機構は複数一体として動作する。また、ローディング機構37及び測定機構42は独立して直動動作が可能な機構である。
【0095】
図10−1に本実施例に係る核酸増幅検出装置33の側面断面図を、図10−2に検出部の部分拡大図を示す。
【0096】
試料容器把持機構47は搬送機構Z軸48により下降し、反応容器ラック41から試料の入った反応容器45aを掴み搬送ゲート51からローディング機構37に搬入し、ローディング穴36にローディングする。ローディングされた反応容器45bは穴36の数量分ローディング可能である。
【0097】
ローディング機構37はパルスモータとプーリ、ベルトなどで構成された駆動機構49により温調機構用スライドレール43上を直動する。一つ又は複数個設置された測定機構42もパルスモータなどで構成された駆動機構46により測定機構用スライドレール44上を直動する。測定は、蛍光検出器50により容器側面から測定する。但し、測定方法は限定するものではなく、容器側面から測定する方式でも良い。また、駆動機構49及び駆動機構46はともにパルスモータ以外のモータやモータとベルトの組合せ以外の機構などを用いてもよく、駆動機構を限定するものではない。
【0098】
なお、搬送機構X軸39と搬送機構Y軸40、搬送機構Z軸48、試料容器把持機構47で構成される搬送機構は、すべての容器設置ポジションにアクセスすることができる。
【0099】
ローディング機構37は、反応容器架設穴36が一個又は複数個を一つのまとまりとして独立して温度調節が可能で、任意の温度に調節することができる。温度調節には、例えばペルチェ素子やヒータ、冷却ファンなどを用いる。また、加熱用熱源と冷却用熱源を別途組み合わせても良く、加熱、冷却とも任意の温度に調整できる構造であれば良い。
【0100】
測定動作は、測定機構とローディング機構にローディングされた反応容器の相対速度が均一になるよう守られている限り、測定機構と温調機構はどのような形状でも良い。
【0101】
次に実施例6における、反応容器をローディング機構へ待機時間無く連続して搬入・ローディングし、且つ検出のための測定を一定間隔で行う手順について説明する。これは実施例1と同様で良い。即ち、測定中の容器と測定機構の相対速度をV3、測定機構の速度をV4、ローディング機構の角速度をV5としたときに常にV3が一定となるようにV4、V5の値を決定し、その値でそれぞれ直動動作を行う。搬入位置への移動時、V1は以下の(1)式で定義できる。
【0102】
V4=V3+V5 …(1)
温調機構と測定機構のそれぞれ速度を決定しながら動作制御を行う。また、測定信号取り込みの時間的範囲や特定測定範囲については、実施例1同様に図13の原理が適用され。
【0103】
以上のように動作を行うことで、実施例1と同様、構成する形状が異なるだけで、測定機構で任意の測定周期で測定を行いながら、且つ反応容器は連続して投入することが可能となる。
【0104】
また、上述の通り、実施例6は実施例1と構成する装置の形状は異なるが実現する機能は同じである。従って、実施例6においても実施例2、実施例3、実施例4、実施例5が実現可能である。
【符号の説明】
【0105】
1…核酸増幅検出装置、2…カバー(半断面図)、3…ローディング穴、4…ローディング機構、5…ベース、6…搬送機構X軸、7…搬送機構Y軸、8…反応容器ラック、9…測定機構、10…中心軸、11a、11b…反応容器、12…測定機構駆動機構、13…試料容器把持機構、14…搬送機構Z軸、15…ローディング機構機構駆動機構、16…搬送ゲート、17…個別温度制御部、18…分注ユニット、19…グリッパユニット、20…ロボットアームX軸、21…ロボットアームY軸、22…分注チップ、23…分注チップラック、24…反応容器ラック、25…核酸増幅検出部、26…反応液調整ポジション、27…反応容器、28…試薬容器、29…廃棄ボックス、30…閉栓ユニット、31…攪拌ユニット、32…蛍光検出器、33…核酸増幅検出装置、35…カバー(半断面図)、36…容器架設穴、37…ローディング機構、38…ベース、39…搬送機構X軸、40…搬送機構Y軸、41…試薬容器ラック、42…測定機構、43…ローディング機構用スライドレール、44…測定機構用スライドレール、45a、45b…試薬容器、46…測定機構駆動機構、47…試料容器把持機構、48…搬送機構Z軸、49…ローディング機構駆動機構、50…蛍光検出器、51…搬送ゲート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料と試薬を入れた核酸増幅用の反応容器を複数、ローディングすることができ、核酸増幅のための温度調節が可能な温度調節機構を有するローディング機構と、
前記ローディング機構と対向配置され、ローディングされた反応容器を測定する測定機構と、を用い、
前記測定機構を前記ローディング機構に対して相対的に所定の方向に繰り返し回転移動或いは直線移動させて前記ローディング機構にローディングされた複数の反応容器の試料の測定信号を、順次、一定周期のタイミングで取り込む核酸増幅検出方法であって、
前記ローディング機構と前記測定機構とは、それぞれ独立した自身の移動機構を有し、既にローディングされた反応容器が測定されている間に、新たな反応容器のローディング要求があると、前記ローディング機構に対する前記測定機構の相対移動速度を、前記移動機構を介して新たなローディング要求前と変わらずに一定に維持する制御を行いながら、前記ローディング機構を、任意のローディング空きポジションが固定の反応容器搬入位置に来るように移動制御し、この制御により、既にローディングされている反応容器の試料の測定を中断することなく新たな反応容器のローディング機構への搬入を並行して行うことを特徴とする核酸増幅検出方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記ローディング機構の温度調節機構は、ローディングされる反応容器ごと或いは反応容器グループごとに、独立した温度プログラムにより制御されるよう設定してある核酸増幅検出方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記ローディング機構の温度調節機構は、恒温増幅法の恒温温度制御をするよう設定してある核酸増幅検出方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
各反応容器の前記測定信号を取り込む時間的範囲を、種々の核酸増幅条件に応じて時間帯を異にする複数の特定測定範囲をカバーできるよう余裕を持って設定し、前記測定信号を取り込む時間的範囲内の測定信号取り込みの周期を、前記ローディング機構と前記測定機構の相対速度制御により、種々の核酸増幅条件に共通して対応可能な周期に設定し、
前記ローディング機構にローディングされる反応容器ごと或いは反応容器のグループごとに、前記測定信号を取り込む時間的範囲の中から適した特定測定範囲を選択して、その特定測定範囲に含まれる測定信号を核酸増幅検出の測定データとして抽出することを特徴とする核酸増幅検出方法。
【請求項5】
試料と試薬を入れた核酸増幅用の反応容器を複数、ローディングすることができ、核酸増幅のための温度調節機構を有するローディング機構と、
前記ローディング機構と対向配置され、ローディングされた反応容器を測定する測定機構と、を用い、
前記測定機構を前記ローディング機構に対して相対的に所定の方向に繰り返し回転移動或いは直線移動させて前記ローディング機構にローディングされた複数の反応容器の試料の測定信号を、順次、一定周期のタイミングで取り込む核酸増幅検出方法であって、
各反応容器の前記測定信号を取り込む時間的範囲を、種々の核酸増幅条件に応じて時間帯を異にする複数の特定測定範囲をカバーできるよう余裕を持って設定し、前記測定信号を取り込む時間的範囲内の測定信号取り込みの周期を、前記ローディング機構と前記測定機構の相対速度制御により、種々の核酸増幅条件に共通して対応可能な周期に設定し、
前記ローディング機構にローディングされる反応容器ごと或いは反応容器のグループごとに、前記測定信号を取り込む時間的範囲の中から適した特定測定範囲を選択して、その特定測定範囲に含まれる測定信号を核酸増幅検出の測定データとして抽出することを特徴とする核酸増幅検出方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記ローディング機構は固定、前記測定機構は移動機構を備え、この移動機構を介して前記測定機構と前記ローディング機構との相対速度を一定に維持し、
前記ローディング機構には、複数の反応容器をローディングするための複数のローディング穴が等間隔で配列されており、
選択した空きのローディング穴に反応容器をローディングする場合には、搬送機構を介して反応容器を空きのローディング穴の位置まで移動させて行う請求項5記載の核酸増幅検出方法。
【請求項7】
試料と試薬を入れた核酸増幅用の反応容器を複数、ローディングすることができ、核酸増幅のための温度調節が可能な温度調節機構を有するローディング機構と、
前記ローディング機構と対向配置され、ローディングされた反応容器を測定する測定機構と、
前記反応容器を前記ローディング機構に搬送する搬送機構と、
前記測定機構を前記ローディング機構に対して相対的に所定の方向に繰り返し回転移動或いは直線移動させて前記ローディング機構にローディングされた複数の反応容器の試料の測定信号を、順次、一定周期のタイミングで取り込む制御装置と、を備え、
前記ローディング機構と前記測定機構とは、それぞれ独立した自身の移動機構を有し、
前記制御装置は、既にローディングされた反応容器が測定されている間に、新たな反応容器のローディング要求があると、前記ローディング機構に対する前記測定機構の相対移動速度を、前記移動機構を介して新たなローディング要求前と変わらずに一定に維持する制御を行いながら、前記ローディング機構を、任意のローディング空きポジションが固定の反応容器搬入位置に来るように移動制御することを特徴とする試料の核酸増幅検出装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記ローディング機構の温度調節機構は、前記制御装置により、ローディングされる反応容器ごと或いは反応容器グループごとに独立して制御されるよう設定してある核酸増幅検出装置。
【請求項9】
請求項7又は8において、
前記ローディング機構には、複数の反応容器をローディングするための複数のローディング穴が等間隔で配列されており、
前記制御装置は、反応容器の各ローディング穴についての反応容器の有無を認識しており、既にローディングされている反応容器の核酸増幅或いはその検出中に新たな反応容器のローディング要求があると、前記ローディング機構の反応容器搬入位置から最も近い空きのローディング穴を求めて、その空きのローディング穴と前記反応容器搬入位置との距離から前記空きのローディング穴を前記反応容器搬入位置に移動させるための前記ローディング機構の移動方向と移動速度を求め、このローディング機構の移動方向と移動速度及び前記相対速度から前記測定機構の移動方向と移動速度を算出することを特徴とする核酸増幅検出装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記ローディング機構に配列されたローディング穴のうち基準となる穴の初期位置を前記反応容器搬入位置に設定し、
前記制御装置は、前記ローディング機構の移動に伴う前記基準のローディング穴の移動履歴を更新可能に記憶しており、この移動履歴から、前記基準のローディング穴の前記反応容器搬入位置に対する位置を認識し、前記ローディングの反応容器搬入位置から最も近い空きのローディング穴までの距離は、前記反応容器搬入位置に対する前記基準のローディング穴の位置情報と、前記基準のローディング穴と前記最も近い空きのローディング穴との間の距離情報とから求めることを特徴とする核酸増幅検出装置。
【請求項11】
試料と試薬を入れた核酸増幅用の反応容器を複数、ローディングすることができ、核酸増幅のための温度調節機構を有するローディング機構と、
前記ローディング機構と対向配置され、ローディングされた反応容器を測定する測定機構と、
前記反応容器を前記ローディング機構に搬送する搬送機構と、
前記測定機構を前記ローディング機構に対して相対的に所定の方向に繰り返し回転移動或いは直線移動させて前記ローディング機構にローディングされた複数の反応容器の試料の測定信号を、順次、一定周期のタイミングで取り込む制御装置と、を備えた核酸増幅検出装置であって、
各反応容器の前記測定信号を取り込む時間的範囲が、種々の核酸増幅条件に応じて時間帯を異にする複数の特定測定範囲をカバーできるよう余裕を持って設定され、前記測定信号を取り込む時間的範囲内の測定信号取り込みの周期は、前記ローディング機構と前記測定機構の相対速度制御により、種々の核酸増幅条件に対応可能な周期に設定され、
前記制御装置は、前記ローディング機構にローディングされる反応容器ごと或いは反応容器のグループごとに、前記測定信号を取り込む時間的範囲の中から適した特定測定範囲を選択して、その特定測定範囲に含まれる測定信号を核酸増幅検出の測定データとして抽出することを特徴とする核酸増幅検出装置。
【請求項12】
請求項11において、種々の検査項目に対応した核酸増幅条件として、検査項目ごとの温度プログラム及び前記特定測定範囲が予め記憶してあり、
前記制御装置は、検査項目が入力されると、対応の温度プログラム及び特定測定範囲に基づいて核酸増幅の温度調節及び特定想定範囲の測定信号を核酸増幅検出のデータとして用いることを特徴とする核酸増幅検出装置。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−23987(P2012−23987A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−163684(P2010−163684)
【出願日】平成22年7月21日(2010.7.21)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】