説明

試料の組織を3次元高分解能投影する方法及び蛍光顕微鏡

【課題】
試料の対象となる組織を3次元高分解能投影するため、切替信号によって第1光学特性を有する第1状態から第2光学特性を有する第2状態に繰り返し遷移可能であり且つこの第2状態からこの第1状態に帰還され得る複数の物質から成るグループから1つの物質を選択し、試料の対象となる組織にこの物質によって標識付けし、この物質の遷移させる部分を切替信号によって第2状態に遷移させ、前記試料をセンサアレイ上に投影する。
【解決手段】
物質の前記第2状態に遷移したそれぞれの分子12のうちの少なくとも10%の分子とこれらの分子に最も近く隣接した第1状態にある分子12との間隔が、センサアレイ6上に試料2を投影するときの3次元分解能限界より大きいように、切替信号7の強度が、物質の一部の、第2状態への遷移時に設定されること、及び、互いにより小さい間隔をあけている、第2状態にある分子から放射する測定信号が、互いに十分な間隔をあけている、第2状態にある分子から放射する測定信号から分離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載のステップを有する試料の組織を3次元高分解能投影する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
請求項1の上位概念に直接相当する方法が、国際特許出願公開第2004/090617号明細書から公知である。この方法では、物質が切替信号によって第2状態に遷移する時ごとに、試料の特定の1つの3次元領域だけが適切に遷移されない。この領域は、零地点を有する干渉パターンの強度が最小の部分である。この切替信号の強度は、この零地点の周辺部分の全体で既に、この切替信号の強度が物質を第2状態に完全に切り替えるための飽和限界値を超える程度の大きさにある。こうして、物質の第1状態のままにあるその都度の部分から生じる光学測定信号が、切替信号によって適切に遷移されていない試料の領域に割り当てられ得る。したがって、試料の物質によって標識付けされている対象となる組織の投影時の3次元分解能は、試料を使用されるセンサアレイ上に投影する時の3次元分解能限界にもはや依存しない。むしろ3次元分解能は、切替信号の零地点の拡大によって決定される。測定信号が、零地点の周辺部分から生じ得ず、これに応じてこの零地点から分離すべき3次元位置にも割り当てる必要がないので、上記の物質は、第1状態に依然として存在する。その結果、試料の対象となる組織の3次元投影時に、この分解能限界(すなわち、2倍の開口数によって分割された光の波長で与えられる回折に起因したアッベの限界値)を下回ることが可能である。この分解能限界は、投影する光学式の方法の3次元分解能を基本的に制限し、単調で重要な光学信号の波長に直接左右される。
【0003】
測定信号が、この1つの零地点の領域だけから生じることが確実である場合、試料内部の切替信号の零地点の位置が、投影の3次元分解能限界より高い精度でセンサアレイ上の測定信号の強度分布から測定される。部位測定時に達成可能な精度は、零地点の大きさに加えて、主に、一般にCCDカメラ又はCMOSカメラであるセンサアレイの画素の密度並びに達成されるS/N比及び投影のポイントイメージ機能の幅だけに依存する。しかも部位測定時に達成可能な精度は、具体的にはイメージスケールによって分割されたセンサアレイの複数の画素の間隔より遥か下にあり;しかも良好なS/N比の場合は1ナノメートルより遥か下にある。このことは、当業者に知られている。
【0004】
この現象は、知られているように試料中の個々の蛍光分子の位置測定時にも利用される。この場合、個々の蛍光分子とこの個々の蛍光分子ごとに隣接した最も近い分子との間隔が、センサアレイ上に投影する時の3次元分解能限界より大きいことが前提条件である。何故なら、この間隔が、この3次元高分解能限界より大きくない場合は、個々の蛍光分子のセンサアレイによって受信する光学測定信号が互いに融合するからである。この融合が起こる場合、個々の分子の位置がもはや容易に測定され得ない。
【0005】
国際特許出願公開第2004/090617号明細書から既知の方法、及び、試料の対象となる組織が、測定信号を放射する物質、すなわち特に蛍光物質によって標識付けされている、その他の全ての方法の場合、個々の分子とこれらの分子に最も近い分子との間隔が、試料をセンサアレイ上に投影する時の3次元分解能限界の微小部分だけに対応するように、試料中の物質の分子の密度が一様に大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際特許出願公開第2004/090617号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、試料の対象となる組織の投影時の回折限界が下回り可能であり、これに対して3次元的に細かく構成された強度分布を有する切替信号が試料に照射される必要なしに、請求項1の上位概念に記載のこのような方法を実施することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のこの課題は、請求項1に記載の特徴を有する方法によって解決される。請求項1に記載の方法の好適な実施の形態は、従属請求項2〜12に記載されている。
【0009】
第2状態にある物質のその都度の一部から放射する光学測定信号が記録される請求項1に記載の新規の方法の場合、第2状態に遷移したそれぞれの分子のうちの非常に高いパーセンテージの分子とこれらの分子に最も近く隣接した第2状態にある分子との間隔が、試料をセンサアレイ上に投影する時の3次元分解能限界より大きいように、物質の一部が、第2状態に遷移する時に、切替信号の強度が設定される。この非常に高いパーセンテージに属する物質の各分子に対して、試料中のこの分子の位置が、基本的に既知の極めて高い場所分解能を有するセンサアレイによってこの分子から放射する光学測定信号の強度分布から測定され得る。この極めて高い場所分解能は、試料をセンサアレイ上に投影する時の3次元分解能限界を明らかに下回る。この極めて高い場所分解能は、物質によって標識付けした対象となる試料の組織をこの極めて高い場所分解能で投影することを可能にする。物質の別の分子が、第2状態に繰り返すだけで遷移される必要がある。この場合、これらの分子は、第2状態にある物質の分子の非常に高いパーセンテージに属する。この第2状態では、これらの分子とこれらの分子に最も近く隣接した第2状態にある分子との間隔が、試料をセンサアレイ上に投影する時の3次元分解能限界より大きい。しかし、この条件がこれらの分子に合致するこれらの分子の選択が、遷移確率に基づき、したがって統計学的方法にしたがうので、このことは問題にならない。統計学的に見ると、むしろ物質の別の分子が、切替サイクルごとに第2状態に切り替えられるので、物質によって標識付けされ、常により高い密度を有する試料の組織が、物質の個々の分子の位置にしたがって検査される。これらの位置の総和が、新規の方法によって入手される対象となる組織のイメージ(像)である。このイメージは、通常の分解能限界から遥かに離れている場所分解能を有する。この場合、確かに個々の分子が、ここで作成された規準を満足する選択に繰り返し属してもかまわない。試料の観察した領域内の全体で存在する分子のうちの比較的小さい部分だけが、第2状態に常に遷移される場合に限り、物質の一部が、第2状態に頻繁に繰り返して遷移される時でも、部位の正確な測定が可能である非常に高いパーセンテージに1回だけ属する分子に比べて、分子の正確な部位が何回も測定可能になる分子のうちの上記の比較的小さい部分が放置(無視)可能である。この部分が、より大きい場合でも、効率、すなわち特に速度が、これによっておそらく低減されるものの、この新規の方法の機能は損なわれない。この新規の方法は、遷移確率に基づく最高の場所分解能で部位を測定するための分子を選択することによって、分子の部位を測定するこれらの分子の全体が、十分に多い数量でも、すなわち無作為試料の十分に多い量でも、統計学的方法から、試料中に存在する物質の分子の全体、すなわちこの物質によって標識付けされた対象となる試料の組織を表すことを根拠とする。
【0010】
第2状態にある物質の1つの分子から放射する測定信号の強度分布から、センサアレイによって、試料中のこの分子の位置を、試料をセンサアレイ上に投影する時の3次元分解能限界より高い場所分解能で測定できるようにするため、センサアレイの画素のラスターの寸法が、3次元分解能限界にイメージのイメージ係数を乗算したものより少なくとも小さい必要があることが分かっている。このラスターの寸法は、3次元分解能限界にイメージのイメージ係数を乗算したものの最大で半分だけの大きさが好ましい。その結果、1つの分子から放射する測定信号が、センサアレイの少なくとも4つの画素に分割されている。センサアレイのこれらの画素の非常により小さいラスターの寸法は、試料中の分子の位置の測定時の場所分解能の対応する向上にもはやむすびつかない。むしろ、S/N比が明らかにより悪くなる危険がある。それ故に、3次元分解能限界にイメージのイメージ係数を乗算したものの60〜10%にあるラスターの寸法が一般に最良である。
【0011】
試料をセンサアレイ上に投影する時の3次元分解能限界より大きい、第2状態にある分子の間隔を満たし、一時点ごとに第2状態に遷移する分子の非常に高いパーセンテージは、少なくとも10%である。特にこのパーセンテージに相補的な、互いにより小さい間隔を有し、第2状態にある分子のパーセンテージが比較的大きい場合、このより小さい間隔から放射する測定信号つまりこの測定信号の強度分布を、センサアレイによって、互いに十分な間隔にある分子から放射する測定信号から分離することが重要である。測定信号の全強度,測定信号の強度分布の形及び/又は面積が、単独の分子か又は多数の分子に対応するのかどうかが検査されることによって、上記の分離は実施される。単独の分子に対する対応関係が存在する場合にだけ、この分子の部位が、強度分布から測定される。記録した局所の強度分布の可能な限り大きいパーセンテージの割合に対して、物質の個々の分子の部位、すなわち試料の対象となる組織の位置を測定ことが重要であることが分かっている。この理由から、第2状態に遷移するそれぞれの分子の可能な限り大きいパーセンテージが、第2状態にある隣接した分子に対して必要な大きさの間隔を有することが好ましい。請求項2には、パーセンテージが昇順に列挙されている。これらのパーセンテージは、この順序で増大する程度に規定される。しかしながら、第2状態に遷移した全ての分子が、同様に第2状態にあって、隣接した分子との間隔が、試料をセンサアレイ上に投影する時の3次元分解能限界より小さい隣接した分子を有さないことを回避することが、これらの分子に対して試みることを重要な目的とする。何故なら、この場合、それぞれ第2状態にあってもよいこれらの分子の平均間隔が非常に大きくなるからである。その結果、第2状態への切替工程後に測定され得る分子の部位の数が再び減少する。切替信号のどのくらいの強度によって、試料の対象となる組織が、最速に、すなわち切替工程の最小の繰り返しによって最終的に投影されるかは、センサアレイにわたる測定信号の第2状態にあるただ1つの分子に割り当てるべき強度分布と第2状態にある2つ以上の隣接した分子とを識別するために、どの程度の経費がかかるかに最終的に依存する。
【0012】
この新規の方法は、切替信号を試料の領域内で3次元的に構築しないで実施されるので、光学切替信号が、そのより簡単な操作性にも起因して好ましいにもかかわらず、この切替信号は、基本的に非光学信号でもよい。試料の対象となる組織に標識付けされている物質が、これらの異なる領域内で大きく異なる濃度で存在することを考慮するため、光学切替信号が、この切替信号の異なる強度で例えば試料の異なる領域に容易に当てられ得る。それにもかかわらず、この新規の方法の場合の切替信号の強度が、複数の領域にわたって試料をセンサアレイ上に投影する時の3次元分解能限界より大きい寸法を有するように、この切替信号は、一定な値を有する。この一定な値は、具体的には試料のこの領域内の物質の平均局所濃度に対して反比例に決定され得る。この濃度を測定するため、後で個々の分子の部位を測定する時より多い割合の物質が最初に第2状態に遷移され得る。そのため、個々の分子の位置をセンサアレイによって測定する時より大きい強度の切替信号も設定される。その結果生じるセンサアレイ上の測定信号の強度分布は、試料にわたる第2物質の濃度分布に一致する。この場合、この濃度分布の場所分解能は、試料をセンサアレイ上に投影する時の3次元分解能限界によって決定されている。
【0013】
センサアレイの多数の画素に対応する試料の1つの領域から放射する測定信号が、物質の1つの分子に割り当てられているのか又は多数の分子に割り当てられているのかを非常に迅速に確認するためは、測定信号の強度分布を記録して、これから単独の分子の部位を測定することに価値があり、さもなければ、センサアレイに対して平行なこの領域が、光検出器上に投影されてもよい。個々の光子の放出の経時変化が、この光検出器によってこの領域から観察可能である。単独の分子だけが、この領域内で第2状態にある場合、この分子が、その励起の1サイクルごとにただ1つの光子を放出できるので、この領域から放出した測定信号の光子が、最小の時間間隔を有する。これに応じて、短く連続する複数の光子は、これらの光子がこの領域内で第2状態にある多数の分子から放出されたことを示す。この場合、測定信号の強度分布を記録する工程が中断され、物質の単独の分子だけを第2状態に切り替えることが、この領域内で新たに試みられ得る。ただ1つの検出器ユニットの第1光子の記録後のデッドタイムが十分に短い場合、この領域からの個々の光子の放出の経時変化を観察する光検出器は、このただ1つの検出器ユニットを有し得る。そうでない場合は、光検出器は、2つの検出器ユニットから構成されなければならない。ほぼ同時に放出した光子が、一致検出器を意図したこれらの検出器ユニットによってこの領域から適切に探索される。これらの光子は、この領域内で同時に第2状態にある物質の多数の分子を指し示している。
【0014】
本発明の先の説明で既に示したように、特に本発明は、光学測定信号としてセンサアレイによって記録される蛍光を自然放射する光学励起信号によって第2状態で励起可能である複数の物質から成る下位グループから物質が選択される新規の方法の実施の形態に関する。
【0015】
さらに物質は、光学スイッチ信号によって第2状態から第1状態に戻るように遷移可能である複数の物質から成る下位グループから選択され得る。この場合、物質の別の部分が、切替信号によって第2状態に遷移する前に、先に第2状態に遷移した物質の部分が、スイッチバック信号によって第1状態に戻るように適切に遷移される。したがって、物質の分子が、例えば熱励起に起因した第2状態又はここでは主に蛍光の自然放射に対して励起しなければならない光学励起信号の作用下にある第2状態から第1状態に帰還される期間まで待つ必要がない。しかしながら、第2状態にある物質の分子の半減期が、良好な大きさを有する場合、物質が、光学スイッチバック信号によって第2状態から第1状態に戻るように遷移可能でない時でも、この新規の方法は非常に効果的に実施され得る。
【0016】
この新規の方法で使用する物質の特に好適なグループは、一般に略してFRET対と呼ばれ且つ1つの(エネルギー)ドナーと1つの(エネルギー)アクセプターとから成るいわゆるフェルスターの蛍光共鳴エネルギー移動の対である。主にこのようなFRET対が、この新規な方法の場合の使用に対して適している。これらの対の場合、ドナーの蛍光特性を変調するため、アクセプターは、光互変性であって且つ切替信号によって切り替えられる。この場合、このアクセプター自体が、蛍光を発する。しかしこの新規の方法の場合、このことは通常は利用されない。
【0017】
試料中の対象となる組織が、蛋白質によって規定されている場合、対象となる組織に標識付けする物質が、遺伝子技術的に分子に挿入されるか又はこの分子に付加される。この場合、この挿入又は付加が直接実施される。すなわち、この標識付けされている物質自体が、融合蛋白質を意図して試料中の蛋白質に挿入され得るか又はこの蛋白質に付加され得る。しかし、標識付けする物質に対する結合領域だけを蛋白質に挿入すること又はこの蛋白質に付加することも可能である。このとき、物質による標識付けをこの結合領域によって後で実施できる。蛋白質に標識付けする蛍光蛋白質用のこのような基本的に既知の結合領域は、例えば蛋白質の分岐鎖アミノ酸中の連続する4つのシステインから、すなわちいわゆるテトラシステインモチーフから成る。物質又は物質に対する結合領域を試料中の蛋白質に遺伝子技術的に挿入又は付加することは、試料内部の少なくとも1つの細胞中の原型の蛋白質の代わりにこうして変更した蛋白質を表示することによって実施されることが特に有益である。その結果、対象となる組織が、標識付けした物質又はこの変更した蛋白質に対する結合領域によって直接形成される。
【0018】
試料中の標識付けした物質の個々の分子の位置を部位測定する極めて高い場所分解能は、試料中の非常に小さい組織の3次元配置を観察することの可能性を提供する。このような組織は、単独の蛋白質分子から構成され得る。このとき、この蛋白質分子は、その物質によって多数の異なる地点に標識付けすることができる。一般的にこれらの地点は全て、蛋白質の考えられるあらゆる光学投影時の3次元分可能限界より小さい間隔で並んでいる。この新規の方法の場合、物質からの測定信号は、1つの時点ごとに蛋白質分子が物質によって標識付けされている地点のうちの1つの地点だけで検査される。物質は、この検査の繰り返しごとに切替信号によって標識付けした地点のうちの1つの地点だけで測定信号を出力する第2状態に再び切り替えられる。確かにこの点は、先と同じ点でもよい。しかしこの工程は、遷移確率によって実施されるので、検査が、十分に多い回数繰り返される場合は、物質が蛋白質分子の全ての標識点で検査され、これに応じてこの蛋白質分子の全ての標識付けされた点の位置が、最大場所分解能で測定されることから必ず出発する。この場合、この場所分解能は、蛋白質のフォールディング及び蛋白質分子のその他の立体配座の変化も観察可能になるような大きさである。
【0019】
この新規の方法の場合、物質によって標識付けした組織の投影は、この物質の比較的小さい部分を第2状態に切り替える比較的多い回数の繰り返しを必要とする。この物質は、第2状態でセンサアレイによって記録される測定信号を放出する。これらの繰り返しが非常に迅速に実施される場合、試料の対象となる組織を投影するために必要な総時間は、それにもかかわらず依然として常に短くできる。しかし、この新規の方法が、少なくとも2つの異なる物質によって並行して同時に実施されることによって、この総時間は、あらゆる状況で短縮され得る。異なる光学測定信号が、これらの物質のそれぞれの第2状態でこれらの物質から放射する。互いに十分な間隔を有する第2状態にある物質の分子の密度、及び、これらの分子の部位がこの新規の方法の1サイクルで測定され得るこれらの分子の数が、必然的に限定されていることによって、この新規の方法の速度が制限される。対象となる組織に標識付けする2つの異なる物質の光学測定信号が区別できる程度に、これらの光学測定信号が判別される場合、これらの分子の部位がこの新規の方法の1サイクルで測定されるこれらの分子の数は、このように異なる物質を使用することによってこれらの異なる物質の数に比例して増大され得る。
【0020】
既に冒頭で説明したように、請求項1の逆の方法の場合、光学測定信号が、センサアレイによって記録され、この光学測定信号は、第2状態に切り替えられた物質の分子から放射するのではなくて、依然として第1状態のままにある物質の分子から放射することを意味する。これに応じて本発明の方法の構成は、ここでは、第1状態のままにある分子のうちの非常に高いパーセンテージの分子とこれらの分子に最も近く隣接した第1状態にある分子との間隔が、試料をセンサアレイ上に投影する時の3次元分解能限界より大きい値に、物質の一部を第2状態に遷移する時に切替信号の強度を設定する点にある。この違いの考慮下では、請求項に記載の新規の方法の好適な実施の形態に対する全ての先行する説明は、請求項1に記載の逆の新規の方法にも合致する。この場合、この違いは、切換信号の必要な強度が試料中の標識付けする物質の濃度の増大と共に減少するのではなくて、増大する点だけにあると主に考えられる。何故なら、この新規の方法に対して許容できる分子の僅かな密度だけを第2状態のままにするためには、その都度の観察した領域内の物質の分子がより多い場合に、より多くの分子が、第2状態に遷移される必要があるからである。この最後に言及した密度は、試料中の分子の濃度に左右されない。
【0021】
新規の方法の両実施の形態のうちの1つの実施の形態を実施する蛍光顕微鏡は、切替信号源からの切替信号を細かく構築する手段が存在するのではなくて、この代わりに切替信号源の制御がこの新規の方法にしたがって切替信号の強度を調整するために、3次元分解能が回折限界として良好に達成される公知の蛍光顕微鏡と異なる。
【0022】
さらに、少なくとも1つの光検出器が存在してもよい。個々の光子の放出の経時変化をセンサアレイの多数の画素に対応する試料の1つの領域から観察するため、この領域が、この光検出器上に投影され得る。新規の方法に関連して既に説明したように、例えば、強度が単独の分子だけに起因することが確実でない時に、新たな試験にとって有利な結果となるように記録を中断するため、物質のただ1つの分子からの測定信号の強度がその都度の領域内で記録されるのか、又は、物質の多数の分子からの測定信号の強度がその都度の領域内で記録されるのかどうかが、このような光検出器によって非常に迅速に、すなわち特にセンサアレイを読み取る直前に確認され得る。それ故にこのことは、センサアレイの読み取りが多くの場合にこの新規の方法の1サイクルの終了ごとに速度を制限する原因であることよりも重要である。測定信号を出力する状態にある物質の分子が、切替信号によって新たに選択され得る前に、このセンサアレイは読み取られる必要がある。その結果、測定信号が、分子のこの新たな選択から発生し得る。この新規な方法を実施し且つこの新規な蛍光顕微鏡を実現するために適したセンサアレイが、従来の方式のCCDセンサアレイ及び特にCMOSセンサアレイを有する。これらのセンサアレイを選択した場合、迅速な読み取りの可能性に加えて、暗騒音及び読み取り騒音がほとんど消滅し、したがってこの新規の方法を実施する場合、良好なS/N比が得られることが特徴である。
【0023】
この新規の方法を実施するこの新規の蛍光顕微鏡は、スイッチバック信号を試料に当てる独立したスイッチバック信号源をさらに有し得る。しかしながら、試料の対象となる組織に標識付けされている物質が、自然発生的にもに、すなわち熱励起されてその第2状態からその第1状態に帰還され得ること、又は、この遷移は、励起信号によっても開始され得、この物質は、最初に測定信号を放出するためにこの励起信号によって励起されることを、この新規の方法の説明で既に指摘した。
【0024】
本発明の好適なその他の構成は、特許請求の範囲,詳細な説明及び図面に記載されている。この明細書の冒頭で述べた特徴及び多数の特徴の組み合わせの利点は、専ら例示であって、これらの効果が、本発明の実施の形態によって必ず実現される必要なしに、別の効果又は累積的な効果が奏され得る。その他の特徴が、図面−特に図示された配置及び多数の構成部材の相対寸法並びにこれらの構成部材の相対配置及び作用関係−から読み取ることができる。同様に、本発明の異なる実施の形態の特徴又は異なる請求項の特徴の組み合わせが、請求項の選択された相互関係から外れて可能であって、このことによって提案される。この組み合わせは、独立した図面中に示されているか又はこれらの図面の説明で言及される特徴に関係する。これらの特徴は、異なる請求項の特徴と結合されてもよい。同様に、これらの請求項中に挙げられた特徴が、本発明のその他の実施の形態に対して省略してもよい。
【0025】
以下に、本発明を図中に示された好適な実施の形態に基づいてさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1の実施の形態で試料の対象となる組織を3次元高分解能投影する新規の方法を実施する第1の実施の形態の蛍光顕微鏡の構成を概略的に示す。
【図2】試料の対象となる組織に標識する物質の蛍光分子の密で均質な分布及びセンサアレイの対応する領域にわたる蛍光の結果として生じる強度分布を概略的に示す。試料は、図1の蛍光顕微鏡でこの領域に投影される。
【図3】試料の領域内の単独の分子及び狭く隣接した2つの分子の場合に対するセンサアレイ上の測定信号の強度分布を概略的に示す。
【図4】図3のセンサアレイにわたる強度分布の断面図である。この強度分布は、1つの分子に対応する。
【図5】図3のセンサアレイにわたる測定信号の強度分布の断面図である。この強度分布は、密に隣接した両分子に対応する。
【図6】図1に比べてスイッチバック信号源だけ補足した第2の実施の形態の蛍光顕微鏡の構成を概略的に示す。
【図7】蛍光顕微鏡のもう1つの実施の形態を概略的に示す。この場合、ここでは図1に比べて、光検出器が補足されている。
【図8】図7の光検出器の観察領域内の単独の分子を示す。
【図9】測定信号の光子の経時変化を概略的に示す。図7の光検出器が、これらの光子を図8の分子から受け取る。
【図10】図7の光検出器の観察領域内の2つの分子を概略的に示す。
【図11】図10の両分子の測定信号の光子の経時変化を概略的に示す。
【図12】図1の蛍光顕微鏡の実施の形態の場合の幾つかの光学信号の経時変化を概略的に示す。
【図13】図6の蛍光顕微鏡の実施の形態の場合の幾つかの光学信号の経時変化を概略的に示す。
【図14】ドナーとアクセプターとから成るFRET対の構成及び機能を概略的に示す。このFRET対は、試料の対象となる組織に標識する物質として本発明の新規の方法で使用可能である。
【図15】図14の多数のFRET対を有する単独の蛋白質分子の標識付けを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1中に示された蛍光顕微鏡1は、試料2の内部の対象となる組織を3次元高分解能投影するために使用される。ここでは強調して示されていない試料2の内部の対象となる組織が、或る物質で標識付けされている。この物質の分子が、2つの状態つまり第1状態及び第2状態を有する。第1状態では、これらの分子は蛍光を発していない。第2状態では、これらの分子は、励起信号源4の光学励起信号3によって励起されて、蛍光を自然放射する。この蛍光は、測定信号5としてセンサアレイ6によって記録される。物質の分子は、切替信号源8の光学切替信号7によって第1状態と第2状態との間で切り替え可能である。この場合、ここでは単独で示されていない切替信号源8が、切替信号7の強度を調整するように、この切替信号源8の制御が設定されている。その結果、第2状態にある蛍光分子間の距離が、図1中に示されただけの投影光学系9によって試料2をセンサアレイ6上に投影する時の3次元分解能限界より大きい物質の分子だけがそれぞれ、第2状態にある。試料2の対象となる組織が、この物質によって標識付けされている。このことは、試料2中の物質の第2状態にある分子の部位を、センサアレイ6によってこれらの分子に割り当てられている測定信号5の強度分布に基づいて投影の3次元分解能限界を遥かに超えている精度で測定することを可能にする。この精度は、物質の分子の大きさに加えて主にセンサアレイ6の画素の密度,倍率及びS/N比に依存する。この場合、この場所測定は、センサアレイ6の画素距離さえも下回る。図1中に同様に示されただけのハーフミラー10が、励起信号3のビーム路に重畳させるため又は試料から出射する測定信号5を分離するために使用される。さらにここでは、多くの例で狭帯域のカラーフィルタが使用される。その結果、対象となる測定信号5だけが、センサアレイ6によって記録され、試料から反射しない励起信号3又は切替信号7の部分が記録されない。試料2の二重矢印11は、光学信号3,7が試料2に入射し、かつ、光学信号5が放出することを意味する。
【0028】
図2は、試料2中の標識付けされている物質の分子12の均質な統計学的分布を示す。これらの図示された分子12の全てが、蛍光を発する第2状態にある。これらの分子12間の距離は、試料2を光学系9によってセンサアレイ6上に投影する時の3次元分解能限界より小さい。具体的には、ここでは分子12間の距離は、この分解能限界さえも下回る。これから、センサアレイ6にわたる測定信号5の1つの強度分布が結果として生じる。この強度分布は、統計学的な変動及びノイズから見て一定である。このことは、図2中にセンサアレイ6の図示された領域の一様なハッチングによって表現されている。したがって、センサアレイ6によって記録された測定信号5から個々の分子12の部位を測定することは不可能である。蛍光状態にある分子が、このように僅かな間隔にある場合、試料2の内部の分子12の分布の図2中にない構成も、試料2を投影光学系9によってセンサアレイ6上に投影する3次元分解能限界までしか分析され得ない。分子12のうちの極一部だけがこれらの分子12の蛍光状態に常に遷移される本発明の新規な方法の場合、全体的に存在する分子の密度は重要でない。
【0029】
図3は、センサアレイ6上に投影された試料2の1つの領域を示す。蛍光を発する第2状態にある全部で3つの分子12が、この領域内に存在する。この場合、これらの分子12のうちの2つの分子が、対になって密に並んで存在する一方で、第3の分子12の距離13は、この対より大きい、つまり試料2を投影光学系9によってセンサアレイ6上に投影する時の3次元分解能限界より大きい。これに対して、この対の両分子12の距離は、この分解能限界より小さい。センサアレイ6が、これらの分子12から出射する蛍光を測定信号5の2つの離散強度分布14及び15として記録する。この場合、強度分布14が、個々の分子12に対応する一方で、強度分布15は、分子12の対に対応する。
【0030】
強度分布14及び15の断面が、図4及び5中に示されている。これらの強度分布は、それらの形ではほとんど区別が付かない。両強度分布は、基本的にエア・プレートである。しかしながら強度分布15は、強度分布14の2倍の大きさの面積及びより大きい半値幅を有する。試料2中の分子12の部位が、強度分布14から非常に正確につまり特に試料2を投影光学系9によってセンサアレイ6上に投影する3次元分解能限界より高い分解能で算出され得る。この場合、試料2のx−y平面内の場所が、センサアレイ6上の強度分布14の横方向の位置から推測され得る一方で、試料2の内部のZ方向の部位は、強度分布14の形から推測できる。別の方法では、強度分布15によって推測できる。確かに、試料中の1つの位置も、この強度分布15に割り当てられ得る。しかしながら、この場所は、対の両分子12の平均した場所にすぎない。これらの両分子12が、この平均した場所に対して存在するので、これらの両分子12の場所は、強度分布15から推測できない。この理由から、試料2の物質によって標識付けされた組織を3次元高分解能投影する本発明の新規な方法の場合、分子12のうちの極一部だけがその都度、図1の切替信号7によって蛍光を発する第2状態に切り替えられ、可能な限り多くの分子12が、単独で、すなわち隣り合った分子12に対して非常に大きい距離で存在し、これらの分子12は、センサアレイ6上に投影する時に離散した強度分布14を最終的に生じさせる。分子12の部位がそれぞれ、この離散した強度分布14から正確に測定可能である。
【0031】
図6は、図1に比べてスイッチバック信号17を試料2に当てるスイッチバック信号源だけ補足されている蛍光顕微鏡1の実施の形態を概略的に示す。光学スイッチバック信号17を重畳させるため、もう1つのハーフミラー10が存在する。試料2中の個々の分子の部位測定のその次の回に対して、分子を切替信号7によって新たに選択するため、試料2中の物質の分子が、このスイッチバック信号17によってその第2状態からその第1状態に適切に戻る。多くの分子によって標識した試料2の組織の良好な投影が達成されるように、これらの多くの分子の部位を算出するため、この新規の方法は、切替信号7による個々の分子の選択の頻繁な繰り返しを必要とする。この場合、個々の分子が何回も選択される時でも、根底にある遷移確率が、常に変化する選択を引き起こす。分子が、自然に、すなわち熱励起によって又は励起信号3の作用によっても所定の時間内にこれらの分子の第1状態に戻る場合、スイッチバック信号17は必ずしも必要にならない。その他の場合は、このスイッチバック信号17は必ず必要である。
【0032】
図7中に概略的に示した蛍光顕微鏡1は、図6にしたがって補足したスイッチバック信号源16を有さない;しかしこのスイッチバック信号源16は、この実施の形態の場合でも設けられ得る。しかしながら図7は、光検出器18の追加の配置を解説するために使用される。この光検出器18は、測定信号5の個々の光子の経時変化を記録するために設けられている。これらの光子は、センサアレイ6の多数の画素に対応する試料の領域から生じる。この場合、光子の経時変化のこの観察は、蛍光状態にある単独の分子だけがそれぞれの領域内に存在するのかどうか又は多数の分子がこの領域から蛍光を発するのかどうかを非常に迅速に確認するために活用しなければならない。多数の分子が存在する場合、このことは、僅かな大きさの領域の場合に、複数の強度分布に基づく測定光のこれらの強度分布がセンサアレイ6上で分離され得ない、すなわち個々の分子の部位測定に使用され得ないことを示唆する。これに応じて、センサアレイ6による測定信号5の記録が、分子を切替信号7によって新たに選択するために中断され得る。少なくとも、センサアレイ6の対応する領域の読み取りが省略され得る。例えばこの場合では、試料2の様々な領域又はより僅かな画素数を有する別のアレイの形態のセンサアレイ6の様々な領域に対する光検出器18を設けることが重要である。図7中の光検出器18は、具体的にはコインシデンス検出器配置として構成されている。この場合、2つの検出器ユニット19が、ビームスプリッタとしてのハーフミラー10によって並列に接続されている。このコインシデンス検出器配置は、測定光15の互いに時間的に非常に近い光子が両検出器ユニット19上に当たる、すなわち光子が一致する状況を検出する。単独の蛍光分子は、その励起に起因して常にただ1つの光子しか放射できず、その次の光子の放射は、この光子の次の励起に続いて初めて可能であるので、このような一致は、単独の蛍光分子の場合は光検出器18によって検出された試料2の領域内で発生しない。この場合、最小時間が、個々の励起間に存在する。
【0033】
これらの関係を図8〜11に基づいてもう1回説明する。図8は、図9にしたがって測定信号5の光子20を放出する単独の分子を示す。これらの光子は、最小時間間隔21を有する。しかしながら、2つの光子20間の経時変化22が発生し、この経時変化22は、図9にしたがう時間間隔21より遥かに小さい、図11中に概略的に示されているような、測定信号5の光子20の経時変化が、図7にしたがう光検出器18によって記録される場合、このことは、測定信号5が発生する領域内の少なくとも2つの蛍光分子12を指し示す。この状況は、図10中に概略的に示されている。
【0034】
図12は、図1の蛍光顕微鏡の実施の形態の場合の励起信号3及び測定信号5の切替信号7の経時変化の曲線表示である。この場合、強調すべき点は、信号波形がここでは非常に概略的であって且つ必ずしも実在に合わせて表されていないことである。主に経時変化が示されなければならない。この経時変化の場合、物質の特定の分子が、切替信号7によって初めて第2状態に遷移される。次いでこれらの分子は、励起信号3によって蛍光を発する。この蛍光は、測定信号5を招く。この測定信号5は、励起信号3の消滅後に減衰する。図12は、蛍光顕微鏡1によって実施された方法の1つのサイクルだけを概略的に示す。物質の分子が、第2状態から熱励起によって又は励起信号3によってその第1状態に戻っているならば直ぐに、その次のサイクルが、同じ信号順序で開始する。
【0035】
図6の蛍光顕微鏡1の実施の形態に相当する図13の信号順序の場合、スイッチバック信号17が、各サイクルの終了時に生じるので、本発明の方法のその次のサイクルが、その次の切替信号7によって即座につながる。このスイッチバック信号17は、物質の分子を各状況でその第1状態に戻す。
【0036】
図14は、1つの分子12の下位単位を構成するドナー23とアクセプター24とから成るFRET対を概略的に示す。ドナー23及びアクセプター24は、分子12に融合している蛋白質でもよい。アクセプターは、具体的にはドロンパとして既知の蛋白質でもよい一方で、ドナーは、ECFPタイプの蛋白質でもよい。この新規の方法の場合の図14のFRET対の機能を以下に記す。アクセプター24は光互変性であり、吸収スペクトルが、切替信号7に基づいて変化する。アクセプター24の吸収スペクトルの場合のこのシフトは、ドナー23の蛍光挙動を変化させる。具体的には、励起信号3によるドナーの励起に続くドナーからアクセプターへのエネルギー遷移が、アクセプター24の吸収スペクトルの変化によってもはや不可能であり、今度はドナーの非励起が、蛍光すなわち測定信号5の放出によって増大して起こるので、ドナー23は蛍光を発する。
【0037】
図15は、例えばフォールディングのような蛋白質25の立体配座の変化を本発明の新規な方法によって観察するため、より大きい蛋白質25が多数の分子12によって多数の地点でも標識付けされ得ることを概略的に示す。典型的には、ここでは図14のFRET対の形態で概略的に示されている複数の分子12が、蛋白質25の光学式の投影の場合に可能な3次元分解能限界より密に並んでこれらの点に沿って存在する。この新規の方法の場合、しかしながら、蛋白質25のこれらの分子12のうちの常に1つの分子だけが、蛍光性の状態に遷移され、次いでこの分子の部位が、この部位から放射する測定信号に基づいて正確に測定される。この工程は、何回も繰り返される。この場合、その都度の分子12の部位が正確に測定されるこの分子12の選択は、統計学的方法にしたがう。その結果、個々の回ごとの選択が、遷移確率だけによって決定される時でも、蛋白質25の分子12の制限された数の場合に、全ての蛋白質12が、僅かな繰り返し後に検査されている。
【符号の説明】
【0038】
1 蛍光顕微鏡
2 試料
3 励起信号
4 励起信号源
5 測定信号
6 センサアレイ
7 切替信号
8 切替信号源
9 投影光学系(結像光学系)
10 ハーフミラー
11 二重矢印
12 分子
13 距離
14 強度分布
15 強度分布
16 スイッチバック信号源
17 スイッチバック信号
18 光検出器
19 検出器ユニット
20 光子
21 最小時間間隔
22 時間間隔
23 ドナー
24 アクセプター
25 蛋白質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の対象となる組織を3次元高分解能投影する方法であって、
切替信号によって第1光学特性を有する第1状態から第2光学特性を有する第2状態に繰り返し遷移可能であり且つこの第2状態からこの第1状態に帰還され得る複数の物質から成るグループから1つの物質を選択するステップと、
試料の対象となる組織にこの物質によって標識付けするステップと、
この物質の転移する部分を前記切替信号によって前記第2状態に遷移させるステップと、
前記試料をセンサアレイ上に投影し、このときに、投影時の3次元分解能限界が、前記試料中の前記物質の最も近くに隣接した分子と分子との間の平均間隔より大きい、すなわち悪いステップと、
前記第2状態にある前記物質のそれぞれの部分から放射する光学信号を前記センサアレイによって記録するステップとを有する当該方法において、
前記物質の前記第2状態に遷移したそれぞれの分子(12)のうちの少なくとも10%の分子とこれらの分子に最も近く隣接した前記第1状態にある分子(12)との間隔が、前記センサアレイ(6)上に前記試料(2)を投影するときの3次元分解能限界より大きいように、前記切替信号(7)の強度が、前記物質の一部の、前記第2状態への遷移時に設定されること、及び
互いにより小さい間隔をあけている、前記第2状態にある分子から放射する測定信号が、互いに十分な間隔をあけている、前記第2状態にある分子から放射する測定信号から分離されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記物質の前記第2状態に遷移したそれぞれの前記分子(12)のうちの少なくとも25%の分子とこれらの分子に最も近く隣接した前記第2状態にある分子との間隔が、前記センサアレイ(6)上に前記試料(2)を投影するときの3次元分解能限界より大きいように、前記切替信号の強度が、前記物質の一部の、前記第2状態への遷移時に設定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記切替信号(7)の強度は、前記センサアレイ(6)上に前記試料(2)を投影するときの3次元分解能限界より大きい寸法を有する領域にわたって一定の値に設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記一定の値は、前記試料(2)中の前記物質の局所の濃度に応じて確定されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記試料(2)中の前記物質の前記局所の濃度は、この物質のより多い部分の、前記第2状態への遷移中に前もって測定され、
前記センサアレイ(6)による前記個々の分子(12)の位置の測定時より大きい前記切替信号(7)の強度が設定されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記センサアレイ(6)の複数の画素に対応する前記試料(2)の1つの領域からの個々の光子(20)の放出の経時変化を観察するため、当該領域が、光検出器(18)上に投影されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記物質は、前記第2状態中に蛍光を自然放射するための光学励起信号によって励起可能である複数の物質から成る下位グループから選択され、この蛍光が、光学測定信号(5)として前記センサアレイ(6)によって記録されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記物質は、光学スイッチバック信号(17)によって前記第2状態から前記第1状態に戻るように遷移可能である複数の物質の下位グループから選択されること、及び、前記物質のその他の部分を前記切替信号(7)によって前記第2状態に遷移させる前に、前記物質の前記第2状態にその前に遷移した部分が、前記スイッチバック信号(17)によって前記第1状態に戻るように遷移されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記物質は、ドナー(23)とアクセプター(24)とを有するフェルスターの蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の複数の対から選択され、
前記ドナー(23)の蛍光特性を変調するため、前記アクセプター(24)が、光互変性であり且つ前記切替信号(7)によって切り替えられることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記物質又はこの物質に対する少なくとも1つの結合領域が、前記試料(2)中の蛋白質の中に遺伝子技術的に挿入されるか又はこの蛋白質に付加されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記試料(2)中の蛋白質分子(25)が、複数の異なる地点で前記物質によって標識付けされることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、少なくとも2つの異なる物質によって並行して同時に実施され、識別可能な複数の光学測定信号が、これらの物質のそれぞれの第2状態中にこれらの物質から放射することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−57690(P2013−57690A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−281966(P2012−281966)
【出願日】平成24年12月26日(2012.12.26)
【分割の表示】特願2009−508179(P2009−508179)の分割
【原出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(508329874)マックス−プランク−ゲゼルシヤフト・ツーア・フェルデルング・デア・ヴィッセンシャフテン・アインゲトラーゲナー・フェライン (4)
【Fターム(参考)】