説明

試料の薄片から画像を取得する方法

【課題】 厚い試料の染色の方法において、適切な染色レベルでもって、全体の試料が画像化できる方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 試料(1)の表面層の画像を取得するステップと、前記試料の表面層を除去し、それにより次の薄片を表面にもたらすステップとが繰り返される、試料の薄片から画像を得る方法であって、少なくとも、前記試料の表面層の除去のうちの一つの除去の後に、前記試料は染色剤にさらされるステップを有することを特徴とする。
本方法は、とりわけ、走査電子顕微鏡カラム(20)と集束イオンビームカラム(10)とを備えた、粒子光学装置での使用に最適である。
試料は、その場所でOsOのようなガスを前記試料に取り入れて、染色することができる。本方法は、第1染色剤に試料をさらして試料の第1画像を作り、第2の染色剤に追加的染色して、試料の画像を作ることにより、差異的な染色を形成することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の薄片(slices)から画像を取得する方法に関する。当該方法は、
・ 試料の表面層の画像を取得するステップ、及び
・ 試料の前記表面層を除去し、それにより次の薄片を表面にもたらすステップ、
が繰り返されることを含む、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面層の除去(スライシング(slicing)としても知られている)と試料の画像の取得を繰り返すそのような方法は、例えば、イオン光学カラム(column)と電子光学カラムの両方を有している粒子光学装置より知られている。そのような装置には、例えば、FEI Companyから商用的に入手可能である「DualBeam」装置がある。
【0003】
本願明細書及び特許請求の範囲において、「画像(an image)」とは、例えばコンピュータメモリにおけるその表現としてだけでなく、ディスプレイユニット上に表示される画像としても解釈される。
【0004】
このような方法は産業界や研究所において、例えば、生物学的試料や高分子試料の分析及び検査に、及び、例えば、生物学的組織及び高分子における構造(structure)の三次元(3D)復元の形成に用いられている。
【0005】
既知の方法を実施するために用いられている装置は、典型的には0.1から30keVのエネルギーを有するエネルギーイオンの集束イオンビームを試料上で走査することにより試料の画像を得るための、電子光学カラムを有している。そのようなカラムの作動は、走査電子顕微鏡(SEM)より知られている。電子のビームが試料上に衝突するところでは、二次電子、反射電子、X線及び光のような二次放射が、衝突する電子の攻撃に反応して、放出される。例えば、放出された二次電子の量を、例えば、二次電子検出器(SED)で検出することにより、試料の表面の(場所に依存する)情報を得ることができる。この情報は、ディスプレイ上に画像として表示することができる、又は、更に検索あるいは加工するために、その画像を記録しておくことができる。
【0006】
このように、試料の表面の画像を取得した後に、イオンカラムを用いて表面層が除去される。そのようなカラムの作動は、集束イオンビーム(FIB)装置から知られている。このカラムは、例えば40keVのエネルギーのGaイオンのビームのような、エネルギーイオンの集束したビームを放射する。イオンのビームが試料上に衝突するところでは、材料(material)が除去される。この除去は、ビームが試料上に衝突する近傍に、ある種の気体を入れることにより、非常に高められる。このイオンビームは表面をスキャンすることができ、(電流密度及びエネルギーのようなイオンビームの特性と共に)その滞在時間がどの程度表面層を除去するかを決める。その結果、材料の薄片が除去される。
【0007】
表面層の除去の後に新しい表面層が露出し、電子ビームにより、この露出した表面層の画像を得ることができる。表面層の画像の取得と、試料の表面層の除去(表面層からの薄片の除去)とを繰り返すことにより、試料の3D復元を成すことができる。もう一つの選択肢として、試料の内部における関心領域を、表面の情報を提供する技法により検査されるべく表面にもたらさせることができる。
【0008】
高分子や生物学的組織のようなある種の物質を観察するときの問題は、試料のコントラストが、試料の特徴を容易に区別するのには、あまりにも劣っていることである。当業者には良く知られているように、コントラストを改善するために、試料が、試料のある部分をそれ以外の他の部分に対して選択的に目立たせるために、染色(着色)されることがある。効果的である染料として、試料の異なる部分と部分の間を区別するように、それらは、試料のある部分に選択的に結合しなければならない。
【0009】
電子顕微鏡においては、重金属の塩が染色剤(staining agent)として用いられる。そのような重金属塩は通常、金、ウラン、ルテニウム、オスミウム又はタングステンに由来する。重いイオンは、容易に電子ビームと相互作用し、相コントラスト、吸収コントラストを生成し、及び/又は、反射電子を生じるので、それらが用いられる。これらの重金属塩のいくつかは、試料の特定の物質(substance)に付着(adhere)する。一つの例は、OsO4(四酸化オスミウム)で、不飽和脂肪酸の-C=C-二重結合と特別な化学反応を形成する。
【0010】
用い得る他の染色剤は、例えば、抗体のような、適度の生物学的に活性な基を有する、例えば、重金属の化合物である。そのような染色剤はまた、標識(label)としても知られている。一つの例は、抗体に吸収されたコロイド状の金の粒子である。染色剤のこの基の他の例は、米国のナノプローブ会社によって生産されている、「Nanogold」粒子で、オリゴヌクレオチド、脂質、ペプチド、蛋白質、及び酵素阻害物質のような好適な反応基を持つ分子の標識付けに用いられる。
【0011】
試料を染色するために、試料は染色剤にさらされる(露出される)。露出は、1%OsO4溶液のような液体の中に試料を一時的に浸す形式を取ることができる。染色工程の次のステップには、試料を水、アルコールなどで洗浄することが含まれるであろう。そのような染色工程は、例えば、非特許文献1に記述されている。
【0012】
露出はまた、染色剤のガス又は蒸気に試料をさらす形式を取ることができる。このことは、例えば、非特許文献2に記述されている。
【0013】
良いコントラストのためには、試料は十分に染色されなければならない。しかしながら、染色適用量(staining dose)における最適条件がある:試料のあまりにも多くが染色されると、そこでは(染色された)関心のある構造がバックグラウンドに対して目立たなくなるので、過度の染色はコントラストの低下を招くことになる。染色の適切な適用量が求められる。
【0014】
染色剤と染色すべき材料のある組合せに伴う問題は、試料中の染色剤の拡散率が非常に低いことである。多くの重金属染色剤は、生物学的組織中において、低い拡散率を示すが、高分子中では更に低くなる。その結果、例えば、厚い高分子材料は、表面は適切なレベルに染色されるが、試料の内部では良いコントラストを得るには不十分な染色となる。しかしながら、もし、内部が十分に染色される場合は、表面は良い画像を得るには不適当な程に非常に濃厚に染色される。
【0015】
そのために、全体の試料が適切なレベルに染色されるように、厚い試料を染色する必要がある。
【非特許文献1】John E. Scott and Constance R. ”Dermatan sulphate-rich proteoglycan associates with rattendon collagen at the d band in the gap region” Orford, Biochem. J. 1981年、 p.213-216の ’materials and methods’の章
【非特許文献2】Y. Nagata 他 ”Observation on backscattered electron image (BEI) of a scanning electron microscope (SEM) in semi-thin sections prepared for light microscopy” Tokai J. Exp. Clin. Med.、 1983年5月、p.167-174
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、厚い試料の染色の方法において、適切な染色レベルでもって、全体の試料が画像化できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この課題のために、本発明による方法は、表面層の除去のうちの少なくとも一つの除去の後に、前記試料が染色剤にさらされることを特徴とする。
【0018】
表面層が剥がされる毎に試料の表面が再染色されることにより、表面は、毎回、一定のレベルだけでなく最適なレベルで、染色することができる。
【0019】
表面層の個々の除去の度毎に、再染色を行う必要はなく、予め定めた層数の後のみでもよい。この方法は処理時間を減らし、サイクル期間をより短くする。
【0020】
本発明の方法の一つの実施例では、画像は粒子光学装置で得られる。
【0021】
本方法は、光学顕微鏡や蛍光顕微鏡のような、異なる種類の顕微鏡に用いることができるが、特に電子及びイオン顕微鏡での使用に適している。
【0022】
表面層の各除去の後で、(例えば、試料を、染色剤に対し短い時間、さらすことにより)例えば、20nmの非常に薄い層のみが染色される。それは、走査電子顕微鏡(SEM)の画像の分解能を改善する付加的利点でもある。 このことは次のように説明できる:SEMにおける染色された試料は、染色剤の重金属はより多い反射を生じるので、しばしば、反射電子の検出により観察される。そのような反射電子は試料内の深部で生成されるので(例えば、表面より0.5μm下側)、やはり検知可能である。このことは、重金属原子が試料内の深部に存在するとき、それらはやはり検知されることを示している。このことは、画像が、表面の染色された構造(structure)の情報のみを示しているだけでなく、染色された表面下の構造の情報も示していることになる。例えば、20nmの薄い層のみを染色することにより、この薄い層における染色された構造のみが画像に寄与する。染色されてない試料の軽い原子は非常に少ない反射電子を生じるので、実質的に画像には寄与しないであろう。このことは、画像は、試料の表面の最も上の染色された構造のみを示しており、画像の改善された分解能となる。同じ効果は、また、例えば、試料から検出されるX線の分解能を改善する。そのようなX線は、染色された試料の重金属の原子に電子ビームが衝突することにより生じる。
【0023】
本発明の方法の他の実施例においては、表面層は粒子ビームを用いて除去される。
【0024】
エッチングガスの補助下での、イオンビームまたは電子ビームによる表面層の除去は、例えば数十ナノメートルの層の除去を可能にする技法として、よく知られている。しかし、より厚い層も除去しうる。除去される層の通常に厚さは約30―60nmである。
【0025】
本発明の方法の他の実施例では、染色は試料をガス又は蒸気にさらすことにより行われる。この方法は、試料をガス又は蒸気にさらすことにより最適に実施されるので、剥がされて再染色された層の乾燥は必要ない。このことは、試料が繰り返し濡らされ(wetting)そして乾燥されても変形しない、好まし結果を提供するだけでなく、濡らして染色しその後ですすぐ場合は、典型的には数十分強かかるが、ガス又は蒸気への露出は例えば、数十秒で良いので、時間の節約にもなる。他の利点は、試料の非常に薄い層のみを染色することが可能であるので、前述したように、改善された分解能となる。
【0026】
本発明の方法の更なる他の実施例では、染色は真空のチャンバー内か、又は、少なくとも低い圧力のチャンバー内で行われる。真空中での染色は、大気中のガスとの反応により変質されないで染色を行うことが可能である。そのような反応としては、例えば、酸素との化学反応あるいは、例えば、大気中の水蒸気による水和がある。言い換えると、試料の表面は、表面層が除去された後も真新しさが保たれる。
【0027】
本発明の方法の更なる実施例では、試料は、粒子光学装置の一部分である真空チャンバー内で、染色される。試料を、粒子装置の真空チャンバー内で、染色剤にさらすことにより、試料を装置から移す必要はなく、カラムに対するその位置を保持することができる。このことは、ある特徴を調査するための時間のロスはないので、処理時間の減少となる。また、試料は、真空チャンバー内で別の場所に移す必要は無いので(普通、真空チャンバーに通気口を付け、次いで、試料を固定し、その後、チャンバーを排気することが行われる)、時間が節約される。
【0028】
本発明の方法の更なる実施例では、試料は二つ以上の染色剤にさらされる。
【0029】
電子顕微鏡において知られている問題は、ある重金属の染色剤が、他の重金属のマーカーと十分に識別できないことである。二つの重金属マーカーは同じ挙動を示す:電子ビームとの強い相互作用である。
【0030】
異なる重金属から放出される特徴的なX線照射を検知することが予見しうる。しかし、その効率は、例えば、反射電子の検知の効率よりはるかに低く、そのため、電子ビームに対して与えられた露出時間でX線を検知する場合の信号対雑音の比は低くなる。
【0031】
そのため、(反射電子を用いる)差異的な染色(differential staining)は、電子顕微鏡ではあまり可能ではない。
【0032】
第1の染色剤で染色された試料の画像を取得し、次いで、異なる染色剤で染色された試料の画像を取得することにより、各染色剤毎の効果を観察することができる。
【0033】
一つの薄片に用いた染色剤を他の薄片に用いる必要はない。最初の薄片が、あるタイプの組織又は材料に付着するある一つの染色剤を用いて観察し、その後、別のタイプの組織又は材料に付着する別の染色剤で染色された次の薄片を観察することが、想定される。その結果、本発明の方法はまた、例えば、反射電子を利用して、試料の差異的な染色を可能とする。
【0034】
本発明の方法の更なる実施例においては、差異的な染色が可能となるような二つ以上の染色剤で染色される場合だけでなく、一つの染色剤で試料が染色される場合にも、試料の画像が得られる。
【0035】
試料が一つの染色剤で染色されたときに得られる画像と、同じ薄片が追加的に他の染色剤で染色されたときに得られる画像を比較することにより、差異的な染色を観察することができる。
【0036】
試料が一つの染色剤で染色されたときに得られる画像を、同じ薄片が追加的に他の染色剤で染色されたときに得られる画像から引き去ることにより、第1の染色剤の効果を取り除くか又は少なくとも大きく減じられるので、第2の染色剤の効果のみを観察することができる。
【0037】
本発明の方法の更なる実施例においては、試料が一つの染色剤で染色されたとき、試料の画像が得られ、その後、表面層が除去されて、試料が他の染色剤にさらされて他の画像が次に得られ、それによって、一度に、一つの染色剤で染色された試料が得られる。
【0038】
本発明の方法の他の実施例においては、染色された状態だけでなく染色されない状態の試料の表面層の画像が得られる。そして、染色された画像中の、染色されてない試料の地形的(topographical)及びトポロジー的な情報を除去するか、少なくとも大きく減じるように、得られた画像を組み合わせる。
【0039】
本発明の方法の更なる他の実施例では、染色剤は重金属及び有機基を有する高分子を含む。
【0040】
本発明の他の局面においては、粒子光学装置の真空チャンバー内に染色ガス又は蒸気を入れるためのガス注入システムが備えられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
図面を参酌することにより、本発明はより明らかになるであろう。対応する特徴は、対応する参照記号により示される。
【実施例1】
【0042】
図1は、本発明の実施例1に係る方法を概略的に示したものである。
【0043】
スタート後、ステップ101で試料が染色される。ステップ102で、試料の表面の画像が取得され、記憶される。更に薄片を除去しなければならない場合(ステップ103で決定される)には、ステップ104で、表面層が除去される。
【0044】
更に薄片を除去しなければならないかについての、ステップ103での決定は、例えば、目下の表面上の関心事である構造とステップ102で得られた画像に見えているものとに基づくか、あるいは、調査すべき試料の予め定めた厚さと等価である、予め定めた薄片の数に基づくことができる。
【0045】
ステップ104において、表面層が除去された後、試料は再び染色され、必要な限り、ステップ101,102及び103を繰り返して、新しい画像が得られる。
【0046】
もし、更なる表面層を除去する必要がなければ(ステップ103の決定に依存する)、例えば、試料の3D画像が構成される(ステップ105)。
【実施例2】
【0047】
図2は、本発明の実施例2に係る方法を概略的に示したもので、差異的染色が適用されている。
【0048】
図1に記載された方法のように、スタート後、ステップ201で試料が第1の染色剤で染色され、ステップ202でこの薄片の一番目の画像を得る。その後、ステップ203で試料は他の(異なる)染色剤、第2の染色剤、で染色される。ステップ204で、このように二重に染色された試料の薄片の2番目の画像が得られる。
【0049】
ステップ205において、例えば、ステップ202で得られた、薄片の一番目の画像情報を、ステップ204で得られた2番目の画像から減算するような適切な画像処理を行うことにより、第2の染色剤による染色による情報のみを示すこの薄片の画像を得ることができる。このことは、差異的染色の効果の分析を非常に簡素化する。
【0050】
図1のステップ103と等価であるステップ206で、表面層の除去が必要か否かについて、決定を行う。もし除去が必要であるならば、ステップ207で表面層が剥がされ、206の決定が更なる表面層の除去は必要ないとの結果となるまで、ステップ201−206が繰り返される。
【0051】
最後に、ステップ207において、用いられたいずれかの染色による、又はそれらの組合せによる、試料の3D画像が構成される。
【0052】
二つの異なる染色剤による染色の代わりに、本方法は、三つ以上の染色剤を用いることができ、試料から得られる更なる情報をもたらす。
【0053】
本方法では画像は互いに減算されるので、染色されていない試料の地形的又は他の情報を除去することで、本方法は、一つの染色剤のみの試料画像を得るのに用いることができる。
【0054】
これを実施するためには、ステップ201はスキップされる。
【実施例3】
【0055】
図3は、本発明の方法を実施するための第3実施例に係る装置を概略的に示したものである。
【0056】
図3は、イオンの収束ビーム11を作るイオン光学カラム10、及び、電子の収束ビーム21を作る電子光学カラム20を備えた粒子光学装置を示している。両方のビーム11、21は、試料1の上を互いに独立してスキャンすることができ、該試料は試料ステージ2に装着されている。
【0057】
また、各ビーム11、21は、いつでも消す(blank)ことができるので、一度にビーム11、21の一つを作動させることが可能である。試料1が、電子顕微鏡のスキャンニングで知られているようなやり方で、電子光学カラム20で作られた電子ビーム21によりスキャンされるときは、(その場所に依存する)二次電子は、よく知られているEverhart-Thornley型の二次電子検出器30(SED)によって検出される二次電子のように、検出される。検出器30の信号は、中央制御処理装置(CCPU)40により用いられ、画像が観察スクリーン50上に表示される。他の信号と同様に、X線検出器31で検出されるX線、又は、「BackScattered electron Detector(BSD)」32で検出される反射電子が検出され、次いでCCPU40で処理される。とりわけBSD32で検出される情報は重要で、重い金属のマーカーは大量の反射電子を生じるので、大きなBSD信号となる。
【0058】
CCPU40はまた、就中、イオンカラム10、電子カラム20、試料ステージ2、ガス注入器4及び染色ユニット5を制御する。
【0059】
試料のこの薄片の画像が得られた後、イオンビーム11は試料上をスキャンされ、それにより試料の表面層が除去される。除去の割合は、イオンビームが試料上に当たる付近に、ある種のガスを取り込むことで、飛躍的に高まる。そのようなガスは、ガス注入システム4でもって真空チャンバー3に取り込まれる。
【0060】
表面層が取り除かれ、試料の新しい薄片が露出すると、試料は、試料上にOsOガスのような染色剤が取り入れられて、染色される。染色の量は、試料が蒸気にさらされる時間だけでなく、蒸気の分圧によっても制御される。染色剤は染色ユニット5により真空チャンバー内に入れられる。
【0061】
染色は、染色ガス又は蒸気の供給を停止し、残っている染色剤を(図示しない)真空ポンプで真空チャンバー3から除いて、完了する。その後は、前述したように、更なる画像を得ることができる。
【0062】
表面材料の除去は、同様に、ある種のガスを取り入れながら電子ビームを試料上でスキャンすることにより行うことができる。
【0063】
更に、材料の除去のためには、電子ビームは集束させる必要はない。また、集束していないイオンビーム、及び、例えば、ガス排出のためのイオン攻撃は、材料を除去することで知られている。しかしながら、実験による結果は、集束したイオンビームを用いるのが好ましい方法であることを示している。集束したビームによる試料上のスキャニングは材料の均質な除去となり、他方で、優先的なエッチング/粉砕の機会(chance)を高めると、試料からの材料の除去は不均質となる。
【0064】
更に、本発明の実施例に従った方法は、中間画像の人的な介在又は観察無しに、試料の3D画像を自動的に復元することに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施例1に係る方法を概略的に示したものである。
【図2】本発明の実施例2に係る方法を概略的に示したもので、差異的染色(特異的染色)が適用されている。
【図3】本発明の方法を実施するための第3実施例に係る装置を概略的に示したものである。
【符号の説明】
【0066】
1 試料
2 試料ステージ
3 真空チャンバー
4 ガス注入システム
5 染色ユニット
10 イオン光学カラム
11 イオンの収束ビーム
20 電子光学カラム
21 電子の収束ビーム
30 二次電子検出器
31 X線検出器
32 反射電子検出器(BSD)
40 中央制御処理装置(CCPU)
50 観察スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の薄片から画像を取得する方法であって、
前記試料の表面層の画像を取得するステップ、及び
前記試料の前記表面層を除去し、それにより次の薄片を表面にもたらすステップ、
が繰り返され、
表面層の除去のうちの少なくとも一つの除去の後に、前記試料が染色剤にさらされるステップ、
を有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記画像は粒子光学装置で取得される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記表面層は、粒子ビームを用いて除去される、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記染色は、前記試料をガス又は蒸気にさらすことにより行われる、請求項1乃至3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
前記染色は、真空チャンバー内で又は少なくとも低圧のチャンバー内で、行われる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記試料は、粒子光学装置の一部分である真空チャンバー内で染色される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記試料は、二つ以上の染色剤にさらされる、請求項1乃至6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記試料の画像が、前記試料が一つのみの染色剤で染色されたときに取得され、また前記試料が追加の染色剤で染色されたときにも取得され、それにより差異的染色を可能にする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記試料の画像が、前記試料が一つの染色剤で染色されたときに、取得され、その後、前記表面層が除去されて、前記試料は他の染色剤にさらされ、そして、次に他の画像が取得され、それにより、一度に一つの染色剤で染色された前記試料の画像群を得る、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記試料の前記表面層の画像が、染色された状態だけでなく染色されない状態でも、取得され、そして、そのようにして取得された画像は、染色された画像中の染色されない試料の地形学的及びトポロジー的な情報を除去するか、少なくとも、大きく減じるように、組み合わされる、請求項1乃至9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記染色剤は、重金属と有機基を有する高分子を含む、請求項1乃至10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
ガス注入システムであって、粒子光学装置の真空チャンバー内に染色ガス又は蒸気を取り入れるために備えられた前記ガス注入システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−46127(P2008−46127A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−211771(P2007−211771)
【出願日】平成19年8月15日(2007.8.15)
【出願人】(501233536)エフ イー アイ カンパニ (87)
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
【住所又は居所原語表記】7451 NW Evergreen Parkway, Hillsboro, OR 97124−5830 USA
【Fターム(参考)】