説明

試料セル及びそれを用いた粒度分布測定装置

【課題】測定用凹部に試料を収容する際に、測定用凹部内に気泡が混入することがなく、かつ、試料が外部にはみ出ないようにする。
【解決手段】 試料セル5は、平板形状の透明な第一基板11と、平板形状の透明な第二基板13とを備え、第一基板11の上面には、試料が収容されるための測定用凹部12aが形成されており、第二基板13の下面は、第一基板11の上面と当接するように配置されることにより、第二基板13の下面と測定用凹部12aの下面との間の距離が設定距離となる。第一基板11の上面には、測定用凹部12aに試料が収容される際に、余分な試料又は空気が導かれる非測定用凹部12bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料セル及びそれを用いた粒度分布測定装置に関し、特に高濃度で粒子群を含有する少量の試料における粒子群の粒度分布を測定するレーザ回折式粒度分布測定装置に用いられる試料セルに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ回折式粒度分布測定装置においては、媒体中に分散状態の粒子群にレーザ光を照射することにより、粒子群で回折・散乱されたレーザ光の空間的な強度分布を光検出素子で検出して、その測定結果からフラウンホーファ回折理論やミーの散乱理論に基づく演算を行うことによって、粒子群の粒度分布を算出する。
このようなフラウンホーファの回折理論やミーの散乱理論に基づく演算方法は、レーザ光が粒子で1度だけ散乱されるものとして考えられたものである。よって、媒体中の粒子群の濃度が適正濃度範囲であれば、粒子群の粒度分布を精度よく算出することができる。
【0003】
しかし、媒体中の粒子群の濃度が高すぎる場合には、レーザ光がある粒子によって散乱された散乱光が、さらに別の粒子で散乱される多重散乱が発生するので、算出された粒子群の粒度分布と実際の粒子群の粒度分布との誤差が大きくなってしまう。
よって、ペーストやスラリー等の高濃度で粒子群を含有するサンプル(試料)における粒子群の粒度分布を測定する場合、多重散乱光の発生を低減するために、レーザ光の光軸方向のサンプルの厚さを薄くする必要がある。
【0004】
ここで、レーザ回折式粒度分布測定装置の一例について説明する。図5は、従来の粒度分布測定装置を示す概略構成図である。
粒度分布測定装置90は、サンプルSが収容される試料セル105と、レーザ光通過孔104aを有する設置台104と、レーザ光源1とコリメータ2と透明カバー3とを有する照射光学系110と、集光レンズ6とリングディテクタ(前方回折/散乱光センサ)7とを有する測定光学系120とを備える。
【0005】
粒度分布測定装置90の下部には、照射光学系110として、下から順にレーザ光源1とコリメータ2と透明カバー3とが配置されている。
そして、粒度分布測定装置90の上下方向の中央部には、設置台104が配置されており、設置台104上に試料セル105が載置されることになる。
このような照射光学系110の構成において、レーザ光源1で発生されたレーザ光は、コリメータ2を通過して平行光とされ、上方向(下から上へ)に向かうように試料セル105に照射される。なお、平行光は、光軸に垂直な断面積が約1cmであり、円形状となる。これにより、レーザ光は、試料セル105内の粒子群で回折・散乱して、空間的に回折・散乱光の強度分布パターンが生ずることになる。
【0006】
粒度分布測定装置90の上部には、測定光学系120として、下から順に集光レンズ6とリングディテクタ7とが配置されている。
リングディテクタ7は、互いに異なる半径を持つリング状ないしは半リング状の受光面を持つ複数(例えば、64個)の光検出素子を、集光レンズ6の光軸を中心とするように同心円状に配置してあり、各光検出素子には、それぞれの位置に応じた回折・散乱角度を持つ光が入射するようにしてある。したがって、各光検出素子の出力信号は、各回折・散乱角度ごとの光の強度を表すことになる。
このような測定光学系120の構成において、上方向に対して60°以内の回折・散乱光は、集光レンズ6を介してリングディテクタ7の受光面上に集光されて、リング状の回折・散乱像を結ぶようになる。
【0007】
ここで、従来の試料セル105の一例について説明する(例えば、特許文献1参照)。図6は、試料セルの斜視図である。
試料セル105は、平板形状(厚さt、横(左右)X、縦Y)の透明なガラスプレート(第一基板)111と、平板形状(厚さt、横(左右)X、縦Y)の透明なガラスプレート(第二基板)113とを備える。
ガラスプレート111の上面の中央部には、サンプルSが収容されるための凹部(測定用凹部)112が形成されている。凹部112は平面視で断面積が約1cmである円形状であり、凹部112の深さは設定距離Δt(例えば、0.1mm以上0.5mm以下)となっている。
【0008】
ガラスプレート113の下面は、ガラスプレート111の上面と当接するように配置されることにより、ガラスプレート113の下面と凹部112の底面との間の距離が設定距離Δtとなる。
よって、このような試料セル105によれば、凹部112にサンプルSを収容すれば、レーザ光の光軸に対し、サンプルSの厚さを所定の薄さΔtとすることができ、その結果、多重散乱光の発生を抑制することができる。
【0009】
また、試料セルの他の一例について説明する(例えば、特許文献2参照)。図7は、試料セル205の図である。なお、図7(a)は、試料セル205の斜視図であり、図7(b)は、試料セル205の側面図である。
試料セル205は、平板形状(厚さt、左右X、縦Y)の透明なガラスプレート(第一基板)211を備える。
ガラスプレート211の上面には、サンプルSが収容されるための凹部(測定用凹部)212が形成されている。凹部212は平面視で右端部から左端部まで貫通するように伸びる長方形(左右X、縦W)であり、凹部212の深さは設定距離Δtとなっている。
【0010】
よって、このような試料セル205によれば、凹部212にサンプルSを収容する際に、凹部212の中央部の高さΔtからはみ出したサンプルSを、スクレイパ等を用いて左右方向にスクレイパを動かすことで、凹部212の両端部に排除することにより、レーザ光の光軸に対し、サンプルSの厚さを所定の薄さΔtと容易にすることができ、その結果、多重散乱光の発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平9−72841号公報
【特許文献2】特開2008−281582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述したような試料セル105を用いた場合には、凹部112にサンプルSを収容する際、凹部112内に気泡が混入することがあり、その結果、気泡を粒子として測定してしまうことがあった。
一方、上述したような試料セル205を用いた場合には、凹部212にサンプルSを収容する際に、左右方向にスクレイパを動かすことで凹部212の両端部に排除するため、多量のサンプルSが必要になった。また、試料セル205の右端部や左端部からサンプルSがはみ出ることもあった。
そこで、本発明は、測定用凹部に試料を収容する際に、測定用凹部内に気泡が混入することがなく、かつ、試料が外部にはみ出ない試料セル及びそれを用いた粒度分布測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するためになされた本発明の試料セルは、平板形状の透明な第一基板と、平板形状の透明な第二基板とを備え、前記第一基板の上面には、試料が収容されるための測定用凹部が形成されており、前記第二基板の下面は、前記第一基板の上面と当接するように配置されることにより、前記第二基板の下面と測定用凹部の底面との間の距離が設定距離となる試料セルであって、前記第一基板の上面には、前記測定用凹部と連通する非測定用凹部が形成されており、前記非測定用凹部には、前記測定用凹部に試料が収容される際に、余分な試料及び/又は空気が導かれるようにしている。
【0014】
ここで、「設定距離」とは、試料セルの設計者等によって測定する試料を考慮して予め決められた任意の距離であり、例えば、0.1mm以上0.5mm以下等となる。なお、設定距離は、試料に含まれる粒子の最大粒子直径と略同一であるか、あるいは、最大粒子直径の数倍(2倍〜3倍)程度であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の試料セルによれば、余分な試料や空気を非測定用凹部に導く(押し出す)ように、測定用凹部に試料を収容することができるので、測定用凹部内に気泡が混入することがなく、かつ、試料が外部にはみ出ることをなくすことができる。
【0016】
(その他の課題を解決するための手段及び効果)
また、本発明の試料セルは、前記非測定用凹部は、前記測定用凹部の側部と第一基板の側部とを貫通するように形成されているようにしてもよい。
また、本発明の試料セルは、前記第二基板には、上下方向に貫通する貫通孔が形成されており、前記貫通孔は、前記第二基板の下面が第一基板の上面と当接するように配置された際に、前記非測定用凹部の上方に位置するようにしてもよい。
【0017】
また、本発明の試料セルは、前記第一基板の上面には、前記第二基板の下面が第一基板の上面と当接するように配置された後に、前記試料を測定用凹部に収容させるための導入用凹部が形成されているようにしてもよい。
本発明の試料セルによれば、第一基板の上面には、第二基板の下面が第一基板の上面と当接するように配置された後に、測定用凹部に試料を収容することができるので、レーザ光の光軸に対し、試料の厚さを設定距離とすることが容易にできる。
【0018】
また、本発明の試料セルは、前記非測定用凹部は、前記測定用凹部の左側部と第一基板の左側部とを貫通するように形成されているとともに、前記導入用凹部は、前記測定用凹部の右側部と第一基板の右側部とを貫通するように形成されているようにしてもよい。
また、本発明の試料セルは、前記導入用凹部は、前記測定用凹部の右側部と第一基板の右側部とを貫通するように形成されているとともに、前記非測定用凹部は、前記測定用凹部の左側部と連通するように形成されており、前記第二基板には、上下方向に貫通する貫通孔が形成されており、前記貫通孔は、前記第二基板の下面が第一基板の上面と当接するように配置された際に、前記非測定用凹部の上方に位置するようにしてもよい。
【0019】
また、本発明の試料セルは、前記設定距離は、0.1mm以上0.5mm以下であり、前記非測定用凹部の深さは、2.0mm以上3.0mm以下であり、前記導入用凹部の深さは、2.0mm以上3.0mm以下であるようにしてもよい。
本発明の試料セルによれば、導入用凹部の深さは、2.0mm以上3.0mm以下であるので、注射器の針等を導入用凹部に挿入することができる。
【0020】
そして、本発明の粒度分布測定装置は、上述した試料セルと、前記試料セルにレーザ光を照射するレーザ光源を有する照射光学系と、前記試料セルから放射される光の空間強度分布を測定する前方回折/散乱光センサを有する測定光学系とを備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る粒度分布測定装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】図1に示す設置台の図である。
【図3】本発明に係る試料セルの斜視図である。
【図4】本発明に係る試料セルの斜視図である。
【図5】従来の粒度分布測定装置の一例を示す概略構成図である。
【図6】従来の試料セルの斜視図である。
【図7】従来の試料セルの図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0023】
<第一の実施形態>
図1は、本発明に係る粒度分布測定装置の一例を示す概略構成図である。図2は、図1に示す設置台の図である。なお、上述した粒度分布測定装置90と同様のものについては、同じ符号を付している。
粒度分布測定装置30は、サンプルSが収容される試料セル5と、レーザ光通過孔4aを有する設置板4と、レーザ光源1とコリメータ2と透明カバー3とを有する照射光学系10と、集光レンズ6とリングディテクタ(前方回折/散乱光センサ)7とを有する測定光学系20とを備える。
【0024】
粒度分布測定装置30の左部には、照射光学系10として、左から順にレーザ光源1とコリメータ2と透明カバー3とが配置されている。
そして、粒度分布測定装置30の左右方向の中央部には、設置板4が配置されており、2本の止め具4bを用いて試料セル5が設置板4に取り付けられることになる。
このような照射光学系10の構成において、レーザ光源1で発生されたレーザ光は、コリメータ2を通過して平行光とされ、右方向(左から右へ)に向かうように試料セル5に照射される。なお、平行光は、光軸に垂直な断面積が約1cmであり、円形状となる。これにより、レーザ光は、試料セル5内の粒子群で回折・散乱して、空間的に回折・散乱光の強度分布パターンが生ずることになる。
【0025】
粒度分布測定装置30の右部には、測定光学系20として、左から順に集光レンズ6とリングディテクタ7とが配置されている。
リングディテクタ7は、互いに異なる半径を持つリング状ないしは半リング状の受光面を持つ複数(例えば、64個)の光検出素子を、光軸を中心とするように同心円状に配置してあり、各光検出素子には、それぞれの位置に応じた回折・散乱角度を持つ光が入射するようにしてある。したがって、各光検出素子の出力信号は、各回折・散乱角度ごとの光の強度を表すことになる。
このような測定光学系20の構成において、光軸から60°以内の回折・散乱光は、集光レンズ6を介してリングディテクタ7の受光面上に集光されて、リング状の回折・散乱像を結ぶようになる。
【0026】
次に、本発明に係る試料セルの一例について説明する。図3は、試料セルの斜視図である。
試料セル5は、平板形状(厚さt、左右X、縦Y)の透明なガラスプレート(第一基板)11と、平板形状(厚さt、左右X、縦Y)の透明なガラスプレート(第二基板)13とを備える。
ガラスプレート11の上面の中央部には、サンプルSが収容されるための測定用凹部12aが形成されている。測定用凹部12aは平面視で断面積が約3cmである円形状であり、測定用凹部12aの深さは設定距離Δt(例えば、0.1mm以上0.5mm以下)となっている。なお、測定用凹部12aは、0.1mm以上0.5mm以下の深さである。また、測定用凹部12aの底面は測定光を通す透明でなければならないので光学研磨によって作製されている。
【0027】
ガラスプレート11の上面の左端部には、測定用凹部12aの左側部とガラスプレート11の左側部とを貫通するように非測定用凹部12bが形成されている。非測定用凹部12bは平面視で長方形(縦yは測定用凹部12aの直径より小さい)であり、非測定用凹部12bの深さは距離t(例えば、2.0mm以上3.0mm以下)となっている。
ガラスプレート11の上面の右端部には、測定用凹部12aの右側部とガラスプレート11の右側部とを貫通するように導入用凹部12cが形成されている。導入用凹部12cは平面視で長方形(縦y)であり、導入用凹部12cの深さも距離t(例えば、2.0mm以上3.0mm以下)となっている。
【0028】
つまり、導入用凹部12cは、非測定用凹部12bと同様な形状をしている。よって、導入用凹部12cと非測定用凹部12bとは、場合によって役割を入れ替えて使用することができる。また、導入用凹部12cと非測定用凹部12bとは、2.0mm以上3.0mm以下の深さであり、切削加工によって作製されている。非測定用凹部12bは測定光を通す必要がないため、光学研磨で作製する必要はない。
上記縦yは、サンプルSが外部にはみ出ないようにする点や、後述する注射器の針等を挿入することができるようにする点から、3mm以上5mm以下であることが好ましい。
ガラスプレート13の下面は、ガラスプレート11の上面と当接するように配置されることにより、ガラスプレート13の下面と測定用凹部12aの底面との間の距離が設定距離Δtとなる。
【0029】
次に、試料セル5の使用方法の一例について説明する。
まず、ガラスプレート13の下面を、ガラスプレート11の上面と当接するように配置する。次に、注射器等を用いて注射器の針を導入用凹部12c内に挿入して、測定用凹部12aにサンプルSを導入していく。このとき、測定用凹部12aにサンプルSが収容されていく際に、測定用凹部12aに存在した空気が非測定用凹部12bに導かれていくことになる。また、非測定用凹部12bに存在した空気は外部に導かれていくことになる。
さらに、測定用凹部12aにサンプルSを導入していくと、非測定用凹部12bに余分なサンプルSが導かれていくことになる。このとき、非測定用凹部12bの断面積は小さいため、サンプルSは表面張力によって外部に導かれない。
そして、サンプルSを収容した試料セル5を粒度分布測定装置30の設置板4に取り付ける。このとき、試料セル5の左端部が下側になるように、試料セル5が配置される。
【0030】
以上のように、試料セル5によれば、余分なサンプルSや空気を非測定用凹部12bに導く(押し出す)ように、測定用凹部12aにサンプルSを収容することができるので、測定用凹部12a内に気泡が混入することがなく、かつ、サンプルSが外部にはみ出ることをなくすことができる。さらに、ガラスプレート11の上面には、ガラスプレート13の下面がガラスプレート11の上面と当接するように配置された後に、測定用凹部12aにサンプルSを収容することができるので、レーザ光の光軸方向のサンプルSの厚さを設定距離Δtと容易にすることができる。
【0031】
<第二の実施形態>
本発明に係る試料セルの他の一例について説明する。図4(a)は、試料セルの斜視図である。なお、上述した試料セル5と同様のものについては、同じ符号を付している。
試料セル55は、平板形状(厚さt、左右X、縦Y)の透明なガラスプレート(第一基板)61と、平板形状(厚さt、左右X、縦Y)の透明なガラスプレート(第二基板)63とを備える。
ガラスプレート61の上面の中央部には、サンプルSが収容されるための測定用凹部62aが形成されている。測定用凹部62aは平面視で断面積が約3cmである円形状であり、測定用凹部62aの深さは設定距離Δt(例えば、0.1mm以上0.5mm以下)となっている。なお、測定用凹部62aは、0.1mm以上0.5mm以下の深さであり、光学研磨によって作製されている。
【0032】
ガラスプレート61の上面の右端部には、測定用凹部62aの右側部とガラスプレート61の右側部とを貫通するように導入用凹部62cが形成されている。導入用凹部62cは平面視で長方形(縦yは測定用凹部62aの直径より小さい)であり、導入用凹部62cの深さは距離t(例えば、2.0mm以上3.0mm以下)となっている。なお、導入用凹部62cは、2.0mm以上3.0mm以下の深さであり、切削加工によって作製されている。
上記縦yは、注射器の針等を挿入することができるようにする点から2mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0033】
ガラスプレート61の上面の左端部には、測定用凹部62aの左側部と開口(例えば、1.5cm〜3cm)を介して連通するように非測定用凹部62bが形成されている。非測定用凹部62bは平面視で断面積が例えば、0.8cm〜1cmである円形状であり、非測定用凹部62bの深さは距離Δt(例えば、0.1mm以上0.5mm以下)となっている。なお、非測定用凹部62bは、0.1mm以上0.5mm以下の深さであり、光学研磨によって作製されている。もちろん、非測定用凹部62bは測定光を通す必要がないので切削加工によって作製してもよい。
【0034】
ガラスプレート63の下面は、ガラスプレート61の上面と当接するように配置されることにより、ガラスプレート63の下面と測定用凹部62aの下面との間の距離が設定距離Δtとなる。
ガラスプレート63には、上下方向に貫通する断面積が例えば、0.03cm〜0.1cmである円形状の貫通孔63aが形成されており、貫通孔63aは、ガラスプレート63の下面がガラスプレート61の上面と当接するように配置された際に、非測定用凹部62bの中央部の上方に位置するようになっている。
【0035】
次に、試料セル55の使用方法の一例について説明する。
まず、ガラスプレート63の下面を、ガラスプレート61の上面と当接するように配置する。次に、注射器等を用いて注射器の針を導入用凹部62c内に挿入して、測定用凹部62aにサンプルSを導入していく。このとき、測定用凹部62aにサンプルSが収容されていく際に、測定用凹部62aに存在した空気が非測定用凹部62bに導かれていくことになる。また、非測定用凹部62bに存在した空気は貫通孔63aを介して外部に導かれていくことになる。
さらに、測定用凹部62aにサンプルSを導入していくと、非測定用凹部62bに余分なサンプルSが導かれていくことになる。このとき、貫通孔63aの断面積は小さいため、サンプルSは表面張力によって外部に導かれない。
そして、試料セル55を粒度分布測定装置30の設置板4に取り付ける。このとき、試料セル55の左端部が下側になるように、試料セル55が配置される。
【0036】
以上のように、試料セル55によれば、余分なサンプルSや空気を非測定用凹部62bに導く(押し出す)ように、測定用凹部62aにサンプルSを収容することができるので、測定用凹部62a内に気泡が混入することがなく、かつ、サンプルSが外部にはみ出ることをなくすことができる。さらに、ガラスプレート61の上面には、ガラスプレート63の下面がガラスプレート61の上面と当接するように配置された後に、測定用凹部62aにサンプルSを収容することができるので、レーザ光の光軸方向のサンプルSの厚さを設定距離Δtと容易にすることができる。
【0037】
<第三の実施形態>
本発明に係る試料セルの他の一例について説明する。図4(b)は、試料セルの斜視図である。なお、上述した試料セル5と同様のものについては、同じ符号を付している。
試料セル75は、平板形状(厚さt、左右X、縦Y)の透明なガラスプレート(第一基板)81と、平板形状(厚さt、左右X、縦Y)の透明なガラスプレート(第二基板)83とを備える。
ガラスプレート81の上面の中央部には、サンプルSが収容されるための測定用凹部82aが形成されている。測定用凹部82aは平面視で断面積が約3cmである円形状であり、測定用凹部82aの深さは設定距離Δt(例えば、0.1mm以上0.5mm以下)となっている。なお、測定用凹部82aは、0.1mm以上0.5mm以下の深さであり、光学研磨によって作製されている。
【0038】
ガラスプレート81の上面の左端部には、測定用凹部82aの左側部と開口(例えば、0.003cm〜0.015cm)を介して連通するように非測定用凹部82bが形成されている。非測定用凹部82bは平面視で断面積が例えば、0.5cm〜1cmである円形状であり、非測定用凹部82bの深さは距離Δt(例えば、0.1mm以上0.5mm以下)となっている。なお、非測定用凹部82bは、0.1mm以上0.5mm以下の深さであり、光学研磨によって作製されている。もちろん、非測定用凹部82bは測定光を通す必要がないので切削加工によって作製してもよい。
ガラスプレート83の下面は、ガラスプレート81の上面と当接するように配置されることにより、ガラスプレート83の下面と測定用凹部82aの底面との間の距離が設定距離Δtとなる。
【0039】
次に、試料セル75の使用方法の一例について説明する。
まず、測定用凹部82aにサンプルSを導入していく。さらに、測定用凹部82aにサンプルSを導入していくと、非測定用凹部82bに余分なサンプルSが導かれていくことになる。次に、固定用ガラスプレート83の下面を、ガラスプレート81の上面と当接するように配置する。
そして、試料セル75を粒度分布測定装置30の設置板4に取り付ける。このとき、試料セル75の左端部が下側になるように、試料セル75が配置される。
【0040】
以上のように、試料セル75によれば、余分なサンプルSや空気を非測定用凹部82bに導く(押し出す)ように測定用凹部82aにサンプルSを収容することができるので、測定用凹部82a内に気泡が混入することがなく、かつ、サンプルSが外部にはみ出ることをなくすことができる。
【0041】
<他の実施形態>
(1)上述した粒度分布測定装置30では、レーザ光は右方向に向かうように試料セル5に照射される構成を示したが、レーザ光は上方向に向かうように試料セルに照射されるような構成としてもよい。
(2)上述した試料セル5では、非測定用凹部12bは平面視で長方形である構成を示したが、非測定用凹部は平面視で長方形でなく、蛇行しながらガラスプレート11の左側部に到達してもよく、非測定用凹部の中央部が円形状となるような串刺しにされた団子のような形状でもよい。
(3)上述した試料セル5では、非測定用凹部12bは測定用凹部12aの左側部とガラスプレート11の左側部とを貫通する構成を示したが、非測定用凹部は測定用凹部の前側部とガラスプレートの前側部とを貫通するような構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、試料における粒子群の粒度分布を測定するレーザ回折式粒度分布測定装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
5、55、75: 試料セル
11、61、81: ガラスプレート(第一基板)
12a、62a、82a: 測定用凹部
12b、62b、82b: 非測定用凹部
13、63、83: ガラスプレート(第二基板)
30、90: レーザ回折式粒度分布測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板形状の透明な第一基板と、
平板形状の透明な第二基板とを備え、
前記第一基板の上面には、試料が収容されるための測定用凹部が形成されており、
前記第二基板の下面は、前記第一基板の上面と当接するように配置されることにより、前記第二基板の下面と測定用凹部の底面との間の距離が設定距離となる試料セルであって、
前記第一基板の上面には、前記測定用凹部と連通する非測定用凹部が形成されており、
前記非測定用凹部には、前記測定用凹部に試料が収容される際に、余分な試料及び/又は空気が導かれることを特徴とする試料セル。
【請求項2】
前記非測定用凹部は、前記測定用凹部の側部と第一基板の側部とを貫通するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の試料セル。
【請求項3】
前記第二基板には、上下方向に貫通する貫通孔が形成されており、
前記貫通孔は、前記第二基板の下面が第一基板の上面と当接するように配置された際に、前記非測定用凹部の上方に位置することを特徴とする請求項1に記載の試料セル。
【請求項4】
前記第一基板の上面には、前記第二基板の下面が第一基板の上面と当接するように配置された後に、前記試料を測定用凹部に収容させるための導入用凹部が形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の試料セル。
【請求項5】
前記非測定用凹部は、前記測定用凹部の左側部と第一基板の左側部とを貫通するように形成されているとともに、
前記導入用凹部は、前記測定用凹部の右側部と第一基板の右側部とを貫通するように形成されていることを特徴とする請求項4に記載の試料セル。
【請求項6】
前記導入用凹部は、前記測定用凹部の右側部と第一基板の右側部とを貫通するように形成されているとともに、
前記非測定用凹部は、前記測定用凹部の左側部と連通するように形成されており、
前記第二基板には、上下方向に貫通する貫通孔が形成されており、
前記貫通孔は、前記第二基板の下面が第一基板の上面と当接するように配置された際に、前記非測定用凹部の上方に位置することを特徴とする請求項4に記載の試料セル。
【請求項7】
前記設定距離は、0.1mm以上0.5mm以下であり、
前記非測定用凹部の深さは、2.0mm以上3.0mm以下であり、
前記導入用凹部の深さは、2.0mm以上3.0mm以下であることを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれかに記載の試料セル。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載の試料セルと、
前記試料セルにレーザ光を照射するレーザ光源を有する照射光学系と、
前記試料セルから放射される光の空間強度分布を測定する前方回折/散乱光センサを有する測定光学系とを備えることを特徴とする粒度分布測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−61357(P2013−61357A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−1127(P2013−1127)
【出願日】平成25年1月8日(2013.1.8)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3160234号
【原出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)