説明

試料ブロックのスライス装置

【課題】簡単な機構でキャリアテープをホルダーに接着する。ホルダーに接着されたキャリアテープを切断して分離しながら、キャリアテープを連結的に移送する。
【解決手段】試料ブロックのスライス装置は、粘着層2aを有するキャリアテープ2と、キャリアテープ2を移送するテープ移送機構3と、テープ移送機構3で移送されるキャリアテープ2に試料ブロック1を付着する押圧具4と、キャリアテープ2に付着された試料ブロック1をスライスするスライスカッター5と、スライスされたスライス片1Aを付着しているキャリアテープ2をホルダー10と一緒に移送してキャリアテープ表面にホルダー10を付着するホルダーテープ移送機構6と、ホルダー10に付着しているキャリアテープ2をホルダー10の境界で切断するテープカッター8とを備え、さらに、テープカッター8でキャリアテープ2が切断されたホルダー10を積層する積層機構9を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料ブロックを薄くスライスしてスライス片とする装置に関し、とくに、理科学試料分析や生体試料の顕微鏡観察等の医療分析において用いられる試料ブロックのスライス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
理化学分析や生体試料からなる試料ブロックをキャリアテープの粘着層に付着して薄くスライスする装置は開発されている(特許文献1ないし4参照)。特許文献1ないし4の公報は、キャリアテープの粘着層に試料ブロックを付着し、この状態で試料ブロックをスライスカッターで薄くスライスして、キャリアテープに所定の間隔でスライス片を付着する装置を記載している。これ等の公報の装置は、渦巻き状に巻いているキャリアテープを引き出して所定の間隔でスライス片を付着し、スライス片の付着されたキャリアテープをさらに渦巻き状に巻き取ることで、長いキャリアテープに連続して、試料ブロックをスライスして付着している。この装置は、多数のスライス片を付着しているキャリアテープを渦巻き状に巻き取っているので、キャリアテープに付着している各々のスライス片をキャリアテープから分離して、顕微鏡などで観察するのに手間がかかる欠点がある。それは、渦巻き状に巻いたキャリアテープを引き出して切断し、これを顕微鏡にセットするのに手間がかかるからである。
【0003】
この欠点を解消するために、スライス片の付着されたキャリアテープをホルダーに接着し、ホルダーの外側でキャリアテープを切断する装置が開発されている。(特許文献5参照)
【0004】
特許文献5の装置を図1と図2に示している。この装置は、表面に粘着層92aを設けたキャリアテープ92を試料ブロック91に接着し、スライスカッター95で試料ブロック91の表層部を薄切りして、切り取られたスライス片91Aをキャリアテープ92の表面に付着する。スライス片91Aの付着されたキャリアテープ92は長手方向に引き出されて、スライス片91Aの周囲でキャリアテープ92の粘着層92aにホルダー90を接着し、このホルダー90の外側でキャリアテープ92を切断して、キャリアテープ92を介してスライス片91Aが保持されたホルダー90が得られる。このホルダー90を回収し、回収したホルダー90を顕微鏡などの観察装置に装着して、切り取られた順にスライス片91Aの観察を行う。
【特許文献1】特開昭58−158534号公報
【特許文献2】特開平9−304246号公報
【特許文献3】特開平9−269285号公報
【特許文献4】特開特開2000−230889号公報
【特許文献5】特開2001−249124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1と図2に示す装置は、スライス片91Aを付着しているキャリアテープ92をホルダー90に接着しているので、顕微鏡などの観察装置に能率よくセットできる。しかしながら、図の装置は、ホルダーに接着されたキャリアテープを切断してホルダーに接着されるキャリアテープと、ホルダーに接着されないキャリアテープを分離するので、簡単な機構でキャリアテープを連続的に移送しながら、次々と連続してスライス片の付着されたキャリアテープをホルダーに接着できない欠点があった。それは、図において、ホルダーに接着されたキャリアテープが切断されると、キャリアテープの先端がホルダーで保持できなくなるからである。先端の保持されないキャリアテープは、これをホルダーの表面の定位置に移送する機構が複雑になる。また、このため、切断されたキャリアテープの切断端を適切な位置にセットする機構が複雑になる欠点があった。
【0006】
本発明は、さらにこの欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、簡単な機構でスライス片の付着されたキャリアテープをホルダーに接着し、さらに、ホルダーに接着されたキャリアテープを切断して分離しながら、簡単な機構でキャリアテープを連結的に移送でき、しかも、連続移送されるスライス片の付着されたキャリアテープを簡単かつ能率よくホルダーに接着できる試料ブロックのスライス装置を提供することにある。
【0007】
また、本発明の他の大切な目的は、スライス片の付着されたホルダーを順番に積層することで、試料ブロックからスライスされたスライス片を順番に能率よく観察できる試料ブロックのスライス装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の試料ブロックのスライス装置は、前述の目的を達成するために以下の構成を備える。
試料ブロックのスライス装置は、所定の長さを有すると共に渦巻き状に巻かれて表面に粘着層2aを有するキャリアテープ2と、この渦巻き状に巻かれたキャリアテープ2を引き出して移送するテープ移送機構3と、このテープ移送機構3で移送されるキャリアテープ2の粘着層2aに試料ブロック1を付着する押圧具4と、この押圧具4でキャリアテープ2に付着された試料ブロック1を所定の厚さにスライスするスライスカッター5と、このスライスカッター5でスライスされたスライス片1Aを表面に付着しているキャリアテープ2をホルダー10と一緒に移送してキャリアテープ表面の粘着層2aにホルダー10を付着するホルダーテープ移送機構6と、このホルダーテープ移送機構6で移送されるホルダー10に付着しているキャリアテープ2をホルダー10の境界で切断するテープカッター8とを備える。さらに、スライス装置は、このテープカッター8でキャリアテープ2が切断されたホルダー10を積層する積層機構9を備えている。
【0009】
さらに、本発明の請求項2の試料ブロックのスライス装置は、ホルダーテープ移送機構6を、ホルダー10とキャリアテープ2とを挟着して移送する一対のキャプスタンロール27としている。さらに、本発明の請求項3の試料ブロックのスライス装置は、ホルダーテープ移送機構6が、キャプスタンロール27にホルダー10を供給するホルダー10の押し出し機構28を有する。
【0010】
さらに、本発明の請求項4の試料ブロックのスライス装置は、テープ移送機構3が、スライスカッター5とホルダーテープ移送機構6との間にキャリアテープ2のテンションを調整するテンショナー16を備え、このテンショナー16を、キャリアテープ2を連結しているテンションロール17を先端に設けているテンションアーム18としている。
【0011】
さらに、本発明の請求項5の試料ブロックのスライス装置は、積層機構9がホルダー10を内側に配置して積層する垂直枠30を有し、この垂直枠30に下から上に押し上げるようにホルダー10を供給して積層している。
【0012】
さらに、本発明の請求項6の試料ブロックのスライス装置は、積層機構9が、積層されるホルダー10の対向する位置を係止する一対の係止フック33を垂直枠30に設けており、この係止フック33は弾性体を介して垂直枠30に連結されて、ホルダー10が下から上に通過する状態で係止フック33が係止状態を解除している。
【発明の効果】
【0013】
本発明の試料ブロックのスライス装置は、簡単な機構でスライス片の付着されたキャリアテープをホルダーに接着できると共に、キャリアテープをホルダーの境界で切断して分離しながら、簡単な機構でキャリアテープを連結的に移送して、連続移送されるスライス片の付着されたキャリアテープを簡単かつ高能率にホルダーに接着できる特徴がある。すなわち、本発明のスライス装置は、キャリアテープをホルダーの外側で切断することで、ホルダーを積層しながら、切断されたキャリアテープの端を再セットすることなく、これを連続的に移送しながら、キャリアテープの付着されたホルダーを積層できる特徴がある。この特徴は、スライス片の付着されたキャリアテープをホルダーと一緒に移送しながらホルダーに接着し、ホルダーテープ移送機構でホルダーを積層機構に移送して、ホルダーの境界でキャリアテープをテープカッターで切断するからである。
【0014】
また、本発明の試料ブロックのスライス装置は、スライス片の付着されたホルダーを順番に積層して、試料ブロックのスライスされたスライス片を順番に能率よく観察できる特徴もある。それは、積層されたホルダーに接着されるキャリアテープに付着されるスライス片を観察して、試料ブロックから順番にスライスされたスライス片を観察できるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための試料ブロックのスライス装置を例示するものであって、本発明は試料ブロックのスライス装置を以下のものに特定しない。
【0016】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0017】
図3ないし図10は、本発明の実施例にかかる試料ブロックのスライス装置の概略図である。これ等の図に示す試料ブロックのスライス装置は、表面に試料ブロック1のスライス片1Aを付着して移送するキャリアテープ2と、この渦巻き状に巻かれたキャリアテープ2を引き出して移送するテープ移送機構3と、このテープ移送機構3で移送されるキャリアテープ2の粘着層2aに試料ブロック1を付着する押圧具4と、この押圧具4でキャリアテープ2に付着された試料ブロック1を所定の厚さにスライスするスライスカッター5と、このスライスカッター5でスライスされたスライス片1Aを表面に付着しているキャリアテープ2をホルダー10と一緒に移送してキャリアテープ表面の粘着層2aにホルダー10を付着するホルダーテープ移送機構6と、このホルダーテープ移送機構6で移送されるホルダー10に付着しているキャリアテープ2をホルダー10の境界で切断するテープカッター8と、このテープカッター8で付着しているキャリアテープ2の切断されたホルダー10を積層する積層機構9とを備える。
【0018】
キャリアテープ2は、所定の幅のベーステープ2Aの片面に粘着層2aを設けたもので、粘着層2aの表面に剥離テープ2Bを付着して、渦巻き状に巻いたものである。ベーステープ2Aと剥離テープ2Bはプラスチックフィルムからなり、剥離テープ2Bは粘着層2aから簡単に剥離できるテープである。
【0019】
試料ブロック1は、スライスカッター5で薄いスライス片1Aにスライスして観察できる全てのもの、たとえば、理科学試料分析や生体試料の顕微鏡観察等の医療分析において用いられる試料が使用される。
【0020】
テープ移送機構3は、渦巻き状のキャリアテープ2をセットする供給リール11と、この供給リール11にセットされたキャリアテープ2を挟着して引き出す一対の移送ロール12と、この移送ロール12から排出されるキャリアテープ2から剥離テープ2Bを剥離する剥離ロール13と、剥離テープ2Bを引き出す廃棄ロール14と、剥離ロール13から排出されるキャリアテープ2を試料ブロック1の表面に接近して移送すると共に、スライスカッター5に接近して配設されるガイドロール15と、スライス片1Aの付着されたキャリアテープ2をホルダーテープ移送機構6に移送するテンショナー16とを備える。
【0021】
移送ロール12は、キャリアテープ2の両面を挟着して、所定のピッチで移送と停止を繰り返しながらキャリアテープ2を供給リール11から引き出して移送する。移送ロール12は、キャリアテープ2を試料ブロック1に付着する工程と、スライスカッター5が試料ブロック1をスライスする工程とで、停止してキャリアテープ2の移送を停止する。
【0022】
移送ロール12で引き出されたキャリアテープ2は、剥離ロール13でベーステープ2Aから剥離テープ2Bが剥離される。ベーステープ2Aから剥離された剥離テープ2Bは、廃棄ロール14で排出される。剥離テープ2Bの除去されたベーステープ2Aは、粘着層2aを下向きとしてガイドロール15に移送される。図のテープ移送機構3は、剥離ロール13からガイドロール15に剥離テープ2Bを除去したキャリアテープ2を水平方向に移送する。水平方向に移送されるキャリアテープ2は、試料ブロック1から約1mm上方に離された位置に移送される。試料ブロック1の上面から離れて移送されるベーステープ2Aは、押圧具4に押圧されて試料ブロック1の上面に付着される。スライスカッター5で試料ブロック1がスライスされると、キャリアテープ2のテンションでもって、スライスされたスライス片1Aは試料ブロック1から上方に分離される。スライス片1Aを下面に付着するキャリアテープ2のベーステープ2Aは、ガイドロール15からテンショナー16を経由して、ホルダーテープ移送機構6に向かって移送されて、ホルダー10の下面に付着される。
【0023】
テンショナー16は、先端にテンションロール17を設けているテンションアーム18である。テンションアーム18は、それ自体が垂直面内で傾動して、キャリアテープ2のテンションを調整する。したがって、このテンションアーム18は、後端を回転軸19で装置のフレーム(図示せず)に連結して、弾性体20でもって、キャリアテープ2の引っ張り方向に付勢している。図のテンションアーム18は、弾性体20を引っ張りバネとして、テンションアーム18を弾性的に牽引して、キャリアテープ2のテンションを調整している。
【0024】
テンショナー16は、移送されるキャリアテープ2のテンション力を、たとえば約70gfに調整する。キャリアテープ2のテンションが強すぎると、押圧具4でキャリアテープ2を試料ブロック1に押圧した後、試料ブロック1が粘着層2aから剥がれる弊害があり、反対にテンションが弱すぎるとキャリアテープ2が弛んでスライスカッター5に貼りついたりする不具合が発生するからである。ただ、このキャリアテープのテンションは、キャリアテープの幅や粘着層の付着力により変化するので、これ等を考慮して最適なテンション、たとえば40gfよりも大きく、100gfよりも小さく設定される。さらに、テンショナー16は、移送ロール12がキャリアテープ2を送り出しを停止する状態で、あるいは、移送ロール12のキャリアテープ2の送り出し速度よりも速い速度で、ホルダーテープ移送機構6にキャリアテープ2を移送しなが、所定のテンションに調整する。
【0025】
押圧具4は、試料ブロック1の上にキャリアテープ2を押圧する。図の押圧具4は、垂直に配設されたシリンダ21を備える。シリンダ21は、ロッドの下端にクッション材22を固定している。この押圧具4は、シリンダ21のロッドを押し下げて、クッション材22を介してキャリアテープ2を試料ブロック1の上面に押圧する。試料ブロック1に押圧されたキャリアテープ2は、ベーステープ下面の粘着層2aを試料ブロック1の上面に付着させる。押圧具4は、たとえば約20gfの押圧力でキャリアテープ2を試料ブロック1の上面に押圧する。
【0026】
試料ブロック1は、ベースプレート23の上面に固定される。ベースプレート23は、試料ブロック1の上面とキャリアテープ2との隙間を一定に、たとえば1mmに保持する。したがって、ベースプレート23は、試料ブロック1が上からスライスされてキャリアテープ2で除去される毎に上昇して、試料ブロック1とキャリアテープ2の隙間を一定に保持する。したがって、ベースプレート23は、試料ブロック1がスライスして除去される毎に、スライスカッター5が試料ブロック1をスライスする厚さに相当する高さ上昇する。たとえば、スライスカッター5が1μm〜30μmの厚さに試料ブロック1をスライスして除去する場合、ベースプレート23は、試料ブロック1がスライスして除去される毎に、1μm〜30μm上昇する。
【0027】
スライスカッター5は、ガイドロール15と一緒に水平方向に移動して、試料ブロック1を所定の厚さにスライスする。図の装置は、ガイドロール15とスライスカッター5との間にキャリアテープ2を移送して、テンショナー16でキャリアテープ2を弛み無くしながら試料ブロック1をスライスする。スライスカッター5は、たとえば50mm/sの速度で水平方向に往復して、試料ブロック1を所定の厚さにスライスする。図11は、スライスカッター5とガイドロール15を水平方向に往復運動させる往復運動機構24を示す側面図である。この図の往復運動機構24は、リニアレール25と、このリニアレール25に沿って往復運動するスライド台26とを備え、スライド台26にスライスカッター5とガイドロール15を連結している。スライド台26は、図示しないが、シリンダなどに連結されて往復運動される。スライスカッター5は、図の矢印Aで示すように傾斜角を調整でき、さらに、前後の取り付け位置を調整できるようにスライド台26に連結される。また、ガイドロール15も上下位置を調整できるようにスライド台26に連結される。スライスカッター5の前後位置と傾斜角、さらにガイドロール15の上下位置は、スライスカッター5を往復運動して、試料ブロック1を所定の厚さにスライスできるように調整される。たとえば、スライスカッター5を前進方向に向かって約15度の下り勾配に配置すると共に、スライスカッター5の刃先縁をガイドロール15の先端面よりも0.5mmないし1mm前方に位置するように調整する。
【0028】
ホルダーテープ移送機構6は、ホルダー10とキャリアテープ2を挟着して移送する一対のキャプスタンロール27と、このキャプスタンロール27にホルダー10を供給するホルダー10の押し出し機構28を備える。キャプスタンロール27は、キャリアテープ2の上にホルダー10を積層して移送しながら、ベーステープ2Aをホルダー10の下面に付着する。一対のキャプスタンロール27は、互いに積層してなるホルダー10とキャリアテープ2を両側から挟着しながら移送して、ホルダー10の下面にキャリアテープ2の粘着層2aを付着する。キャリアテープ2は、テンショナー16で上下反転して移送されて、下面の粘着層2aを上面としてホルダーテープ移送機構6に供給する。上面に粘着層2aのあるベーステープ2Aは、その上にホルダー10が供給されて、ホルダー10の下面にベーステープ2Aを粘着層2aで付着する。
【0029】
押し出し機構28は、収納部29に積層状態で収納している最下段のホルダー10を、キャプスタンロール27に向かって水平方向に押し出す。押し出し機構28は、ベーステープ2Aの上面にホルダー10を積層するように、キャプスタンロール27に向かって押し出す。押し出し機構28は、キャリアテープ2に設けた区画マークを検出して、ホルダー10をキャリアテープ2に向かって押し出す。キャリアテープ2は、図12に示すように、側縁をVカットして区画マーク38を設けている。この区画マーク38の間隔は、ホルダー10に付着して切断されれるキャリアテープ2の間隔に等しい。たとえば、ホルダー10に付着されたキャリアテープ2の切断位置に区画マーク38が設けられる。この区画マーク38を検出して、押し出し機構28はホルダー10をキャプスタンロール27に向かって供給する。すなわち、区画マーク38の間にホルダー10を配置するタイミングで、押し出し機構28はキャプスタンロール27に向かってホルダー10を供給する。押し出し機構28から押し出されたホルダー10は、キャプスタンロール27でキャリアテープ2の上に積層され、キャプスタンロール27に挟着されてベーステープ2Aの粘着層2aに付着される。
【0030】
ホルダー10に付着されたキャリアテープ2は、隣接するホルダー10の間、すなわち、ホルダー10の境界で、テープカッター8で切断される。テープカッター8がベーステープ2Aをスムーズ切断できるように、好ましくは、区画マーク38の間隔をホルダー10の全長よりもわずかに長く、たとえば、0.5mmないし1mm長くしている。区画マーク38の間隔をホルダー10の全長よりも長くするキャリアテープ2は、ベーステープ2Aに付着されるホルダー10の間に隙間39を設けることができる。この隙間39にテープカッター8を移動して、ベーステープ2Aをスムーズにホルダー10の境界で切断できる。
【0031】
キャプスタンロール27は、ホルダー10とベーステープ2Aとを挟着して、ホルダー10の下面にベーステープ2Aを付着しながら排出位置に移送する。排出位置のホルダー10は、キャプスタンロール27で移送される次のホルダー10に押されて積層位置まで移送される。ホルダー10は、樋(図示せず)に載せられて、排出位置から積層位置に移送される。図のスライス装置は、排出位置において、進行方向の前後に、2列にホルダー10を並べて、積層位置に移送している。この構造は、排出位置に移送されたホルダー10の後側でベーステープ2Aを切断する状態で、キャプスタンロール27から排出されるホルダー10の下面に付着しているキャリアテープ2がテンショナー16に引っ張られて後退するのを確実に阻止できる。キャプスタンロール27が、ホルダー10とベーステープ2Aとを挟着する状態で、ベーステープ2Aの付着されたホルダー10を排出位置に排出するからである。とくに、図に示すホルダーテープ移送機構6は、前後に2組のキャプスタンロール27を配置しており、ベーステープ2Aが付着されるホルダー10を、少なくともいずれかのキャプスタンロール27で挟着しながら移送している。この構造は、キャリアテープ2がテンショナー16に引っ張られて後退するのを確実に阻止できる。ただ、ホルダーテープ移送機構は、必ずしも2組のキャプスタンロールを備える必要はない。それは、キャプスタンロールから排出されるホルダーを上下で挟着するなどの機構で、ホルダーに付着されたキャリアテープの後退を阻止できるからである。したがって、ホルダーテープ移送機構は、1組のキャプスタンロールでもってベーステープが付着されるホルダーを挟着しながら移送することもできる。
【0032】
テープカッター8は、図8と図9に示すように、排出位置に移送されたホルダー10の後端側、すなわた排出位置のホルダー10と、キャプスタンロール27で挟着されるホルダー10との間でキャリアテープ2を切断する。テープカッター8は、図12に示すように、キャリアテープ2の横方向に移動してベーステープ2Aを切断し、あるいは、キャリアテープの下から上に上昇して、ホルダー10の間でベーステープ2Aを切断する。
【0033】
後端側でキャリアテープ2の切断された排出位置のホルダー10は、積層位置に移送された後、図10に示すように、押し上げられて、下から順番に積層される。積層位置にあるホルダー10を積層する積層機構9は、図13に示すように、ホルダー10を内側に配置して積層する垂直枠30と、この垂直枠30に下から上に押し上げるようにホルダー10を供給して積層する押し上げ機構31とを備える。垂直枠30は、内形をホルダー10の外形よりもわずかに大きくして、内側にホルダー10を積層する。押し上げ機構31は、テープカッター8でベーステープ2Aが切断されて積層位置に移送されたホルダー10を、下から上に押し上げて、ホルダー10を垂直枠30に下から積層する。この押し上げ機構31は、ホルダー10の複数カ所をバランスよく押し上げて、ホルダー10を垂直枠30の内側に押し上げる上下に往復運動するシリンダ32を備えている。この押し上げ機構31は、ホルダー10を押し上げた後、ホルダー10よりも下に降下してホルダー10が積層位置に移送されるまで待機する。
【0034】
さらに、積層機構9の垂直枠30は、積層されるホルダー10の対向する位置を係止する一対の係止フック33を下部に設けている。図13の係止フック33は、弾性体34と回転軸35を介して垂直枠30に傾動できるように連結している。この係止フック33は、ホルダー10が下から上に通過する状態で、鎖線で示すように傾動して係止状態を解除する。ホルダー10が通過した後は、弾性体34に牽引されて、ホルダー10を係止状態として落下しないように垂直枠30に保持する。図の係止フック33は、係止部33Aの上面を水平の載せ面33aとして、ここにホルダー10を落下しないように載せて係止する。係止フック33は、係止部33Aの下面を外側に向かって下り勾配に傾斜する傾斜面33bとしている。この係止フック33は、図において左右の中間を回転軸35を介して垂直枠30に連結して、垂直面内で傾動できるように連結して、垂直枠30の外側の突出部33Bを弾性体34である引っ張りバネで弾性的に牽引している。弾性体34に牽引される係止フック33は、係止位置に停止されるストッパ36を有する。この係止フック33は、ホルダー10が通過するとき引っ張りバネが伸びて、傾斜面33bを鎖線で示す垂直姿勢として、係止状態を解除する。ホルダー10が通過すると、引っ張りバネが引っ張って、ホルダー10の下面を係止部33Aの載せ面33aに載せて、落下しないように係止する。
【0035】
以上の試料ブロックのスライス装置は、以下の工程で、スライス片1Aの付着されたキャリアテープ2をホルダー10に付着して、ホルダー10を積層する。
【0036】
(1)図3に示すように、キャリアテープ2がテープ移送機構3で供給リール11からホルダーテープ移送機構6に移送される。このキャリアテープ2は、剥離テープ2Bが剥離されてベーステープ2Aがホルダーテープ移送機構6に移送される。
(2)図4に示すように、キャリアテープ2の移送が停止されて、押圧具4がキャリアテープ2を試料ブロック1に押圧して、キャリアテープ2、正確には剥離テープ2Bの除去されたベーステープ下面の粘着層2aに試料ブロック1が付着される。
(3)図6と図7に示すように、スライスカッター5が前進して、試料ブロック1を所定の厚さにスライスする。その後、スライスカッター5は後退する。スライスされたスライス片1Aは、ベーステープ2Aの粘着層2aに付着されている。
(4)スライス片1Aの付着されたキャリアテープ2、すなわちベーステープ2Aは、図8に示すように、テンショナー16を経由してホルダーテープ移送機構6に移送される。
(5)ホルダーテープ移送機構6は、キャリアテープ2の区画マーク38を検出して、この区画マーク38の間にホルダー10を配置するように、ホルダー10をキャプスタンロール27に向かって押し出す。
(6)押し出されたホルダー10は、ベーステープ2Aの上に積層されて、図12に示すように、ベーステープ2Aと一緒にキャプスタンロール27で移送される。このとき、キャプスタンロール27は、ホルダー10の下面にベーステープ2Aを押しつけて付着する。
(7)ベーステープ2Aの付着されたホルダー10は、キャプスタンロール27で移送されてホルダーテープ移送機構6から排出される。さらに、ホルダーテープ移送機構6から排出されたホルダー10は、後から移送されるホルダー10でもって、排出位置に移送される。
(8)排出位置に移送されたホルダー10は、端側でベーステープ2Aがテープカッター8で切断される。その後、ベーステープ2Aが切断されたホルダー10は、後から移送されるホルダー10でもって、積層位置に移送される。
(9)積層機構9の押し上げ機構31が、積層位置にあってベーステープ2Aの切断されたホルダー10を垂直枠30に押し上げて、垂直枠30に積層する。垂直枠30の係止フック33は、下から上に移動するホルダー10を通過させて、垂直枠30に積層する。ホルダー10が通過した後、係止フック33は最下段のホルダー10を下面から支持して、垂直枠30から落下しないように保持する。
【0037】
垂直枠30に所定の枚数、たとえば、50枚ないし200枚積層されたホルダー10は、取り出されて、顕微鏡などでスライス片1Aが順番に観察される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】従来のスライス装置を示す平面図である。
【図2】図1に示すスライス装置の側面図である。
【図3】本発明の一実施例にかかる試料ブロックのスライス装置の概略構成図である。
【図4】キャリアテープに試料ブロックを付着させる工程を示す概略図である。
【図5】キャリアテープに試料ブロックを付着させた状態を示す概略図である。
【図6】キャリアテープに付着させた試料ブロックをスライスする工程を示す概略図である。
【図7】フライス片の付着したキャリアテープを移送する状態を示す概略図である。
【図8】移送されたキャリアテープにホルダーを付着する工程を示す概略図である。
【図9】ホルダーが付着されたキャリアテープを切断する工程を示す概略図である。
【図10】ホルダーを積層する工程を示す概略図である。
【図11】スライスカッターとガイドロールを水平方向に往復運動させる往復運動機構の一例を示す側面図である。
【図12】テープカッターがキャリアテープを切断する状態を示す斜視図である。
【図13】積層機構の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0039】
1…試料ブロック 1A…スライス片
2…キャリアテープ 2A…ベーステープ
2a…粘着層
2B…剥離テープ
3…テープ移送機構
4…押圧具
5…スライスカッター
6…ホルダーテープ移送機構
8…テープカッター
9…積層機構
10…ホルダー
11…供給リール
12…移送ロール
13…剥離ロール
14…廃棄ロール
15…ガイドロール
16…テンショナー
17…テンションロール
18…テンションアーム
19…回転軸
20…弾性体
21…シリンダ
22…クッション材
23…ベースプレート
24…往復運動機構
25…リニアレール
26…スライド台
27…キャプスタンロール
28…押し出し機構
29…収納部
30…垂直枠
31…押し上げ機構
32…シリンダ
33…係止フック 33A…係止部
33a…載せ面
33b…傾斜面
33B…突出部
34…弾性体
35…回転軸
36…ストッパ
38…区画マーク
39…隙間
90…ホルダー
91…試料ブロック 91A…スライス片
92…キャリアテープ 92a…粘着層
95…スライスカッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の長さを有すると共に渦巻き状に巻かれて表面に粘着層(2a)を有するキャリアテープ(2)と、この渦巻き状に巻かれたキャリアテープ(2)を引き出して移送するテープ移送機構(3)と、このテープ移送機構(3)で移送されるキャリアテープ(2)の粘着層(2a)に試料ブロック(1)を付着する押圧具(4)と、この押圧具(4)でキャリアテープ(2)に付着された試料ブロック(1)を所定の厚さにスライスするスライスカッター(5)と、このスライスカッター(5)でスライスされたスライス片(1A)を表面に付着しているキャリアテープ(2)をホルダー(10)と一緒に移送してキャリアテープ表面の粘着層(2a)にホルダー(10)を付着するホルダーテープ移送機構(6)と、このホルダーテープ移送機構(6)で移送されるホルダー(10)に付着しているキャリアテープ(2)をホルダー(10)の境界で切断するテープカッター(8)とを備え、このテープカッター(8)でキャリアテープ(2)の切断されたホルダー(10)を積層する積層機構(9)とを備える試料ブロックのスライス装置。
【請求項2】
前記ホルダーテープ移送機構(6)が、ホルダー(10)とキャリアテープ(2)とを挟着して移送する一対のキャプスタンロール(27)である請求項1に記載される試料ブロックのスライス装置。
【請求項3】
前記ホルダーテープ移送機構(6)が、キャプスタンロール(27)にホルダー(10)を供給するホルダー(10)の押し出し機構(28)を有する請求項2に記載される試料ブロックのスライス装置。
【請求項4】
前記テープ移送機構(3)が、前記スライスカッター(5)と前記ホルダーテープ移送機構(6)との間にキャリアテープ(2)のテンションを調整するテンショナー(16)を備え、このテンショナー(16)が、キャリアテープ(2)を連結しているテンションロール(17)を先端に設けているテンションアーム(18)である請求項1に記載される試料ブロックのスライス装置。
【請求項5】
前記積層機構(9)がホルダー(10)を内側に配置して積層する垂直枠(30)を有し、この垂直枠(30)に下から上に押し上げるようにホルダー(10)を供給して積層する請求項1に記載される試料ブロックのスライス装置。
【請求項6】
前記積層機構(9)が、積層されるホルダー(10)の対向する位置を係止する一対の係止フック(33)を垂直枠(30)に設けており、この係止フック(33)は弾性体(34)を介して垂直枠(30)に連結されて、ホルダー(10)が下から上に通過する状態で係止フック(33)が係止状態を解除するようにしてなる請求項5に記載される試料ブロックのスライス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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