説明

試料ホルダー洗浄容器、試料ホルダー洗浄ステーション、試料ホルダーの洗浄のためのシステム、及び試料ホルダーの洗浄のための方法

【課題】マイクロアレイ、組織切片、スライドグラスなどの試料ホルダーを同時に洗浄するための、試料ホルダー洗浄容器を提供する。
【解決手段】試料ホルダー洗浄容器を収容するための少なくとも1つの保持器、その際にその保持器が、収容された試料ホルダー洗浄容器のそばで、その液体の供給/排出口と対応している、ステーション流入/流出部を備え、保持器の周りに配置されたあふれ盤、ステーション流入/流出部につながるポンプ、及びポンプにつながる少なくとも1つの液体供給弁を持つ、試料ホルダーを洗浄するための試料ホルダー洗浄ステーションから構成する。 さらに、発明にかなった試料ホルダー洗浄ステーション及び少なくとも1つの発明にかなった試料ホルダー洗浄容器を持つ試料ホルダーを洗浄するためのシステム、試料ホルダー洗浄ステーション及び試料ホルダーを洗浄及び乾燥するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロアレイ又は組織切片、特に好ましくはスライドグラスを持つ試料ホルダーを洗浄するための試料ホルダー洗浄容器に関するものであって、試料ホルダー洗浄容器が、試料ホルダーを挿通して収納することができる注入口を備える。本発明は、さらにマイクロアレイ又は組織切片、特に好ましくはスライドグラスを持つ試料ホルダーを洗浄するための試料ホルダー洗浄ステーション、この種の試料ホルダー洗浄容器及びこの種の試料ホルダー洗浄ステーションの使用の下に試料ホルダーを洗浄するためのシステム、及びこの種の試料ホルダー洗浄容器及びこの種の試料ホルダー洗浄ステーションの使用の下に試料ホルダーを洗浄及び乾燥するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子の研究のために、今日しばしばいわゆるDNAマイクロアレイが指名される。その際、例えばスライドグラスの上に、規定通りの配置で、異なった種類の高分子が、異なる箇所のスポットの中に配置される。そのようなマイクロアレイは、しばしばおよそ75ミリメートル×25ミリメートルの型を備えるスライドグラスの上に造り出される。別の種類の高分子を持つ液体が、マイクロアレイと接触状態にもたらされる。液体の高分子が、マトリクススポットの全ての高分子と特定の結合をするわけではないため、その場所から、高分子において特定の結合、又は交配が行われてきて、液体の中のその種類の高分子に再結合されることができる(「DNA Microarrays, Apractical Approach」、M.Schena編集、オックスフォード大学出版局、1999年、1.3章,6〜12ページ)。
【0003】
DNAマイクロアレイの交配の後、あるいは蛋白質マイクロアレイの培養の後でも、これは厳重に洗浄されなければならず、それに伴って不特定な結合が取り除かれ、そのため信号雑音比が改善される。例えばここでDNAマイクロアレイのために記述されるように、典型的な洗浄プロトコルはいくつかのステップから成り立っている(「DNA Microarrays」、M.Schena、11ページ):
1.室温で5分間、1×SSC、0.1% SDS溶液中でアレイを洗浄する(容量400ミリリットル)。
【0004】
2.室温で5分間、アレイ0.1×SSC、0.1% SDS溶液中で洗浄する(容量400ミリリットル)
3.SDSを洗い流すために、室温で0.1×SSC溶液中にアレイを短時間浸す(容量400ミリリットル)。
【0005】
このプロトコルの中で実例として示されるように、しばしば塩の濃縮度を下げながら溶液の中で洗浄される。続いて邪魔になる塩の殻や水の粘液の発生を防ぐために、アレイが乾燥される。乾燥のために、マイクロアレイは一般的におよそ600×g(600×重力加速度)で遠心分離されるか、さらに吹き払われる。
【0006】
上の記述と類似する洗浄ステップが、FISH(蛍光ハイブリッド形成法)及びIHC(免疫組織化学法)の領域においても存在する。ここでも、一般的に基板として組織切片又は細胞浮遊の上に造り出されるスライドグラスが使用されている。
【0007】
スライドグラスは、今日ほとんど手で洗浄される。さらにアレイは、培養の後でいわゆるトレイの中に立てられる。続いてトレイは、異なった洗浄溶液の入った入れ物に中に次々と手で浸けられる。そのトレイを使い、いくつかのアレイを並行して洗浄することができる。プロトコルを手で行うことによって、結果の再現可能性を損なう誤りが生じる可能性がある。取り扱いにおけるわずかな不規則も、粘液あるいは汚染物質が試料ホルダー表面の上に残留することを引き起こし、信号の有効利用を困難にするか、その結果を変造する可能性がある。
【0008】
洗浄の間に、不特定に結合させられた分子を基板表面から運び去るために、トレイはあちこちに揺り動かされる。そのように生じた配合は、再現の状態が悪く、そのために生物学上の結果も、やはりまた悪い状態で再現されることになる。
【0009】
US6,238,910B1は、培養及びそれに続く洗浄が自動的に処理される、自動式の交配ステーションを記述している。検査することになる試料は、毛細血管のすき間の中で、基板の上にスライドグラスのフォーマットで造り出されるアレイの上に交配される。洗浄溶液は、毛細血管のすき間を通ってポンプで汲み出され、その際に流れの割合を調節することができる。できる限り良好な信号対雑音比を実現するために、非常に小さな容積の中で(少量の原料においても高い濃縮度に従い)培養又は交配が行われる。洗浄はそれに反して大きな容積の中で行われなければならず、そこでここでは希薄度が高いことが有利になる。
【0010】
US6,238,910B1の中で記述された方法において、この両方のステップが同じ室の中で行われるので、これらの要求の間で妥協点を見出さなければならない。この問題に関して、今日市場にある装置においては、必要な試料容積は大体100マイクロリットルと200マイクロリットルの中間にあり、そのため手で行う交配の場合よりもおよそ2倍ほど大きくなる。手で行う交配の際の洗浄容積は、その反面100ミリリットルを越えており、そのため大きさの順序において、これらの装置の場合よりも高くなる。その上装置において、装置の流動性のある要素は、大体直径が1ミリメートル以下であって、こびりつきあるいは詰まりやすく、その際にしばしば塩分を含んだ溶液が入れられる危険がある。
【0011】
US5,595,707は、それを使ってアレイあるいは組織切片が培養され、続いて洗浄される器械を記述している。スライドグラスは、回転トレイの上に配置される。試料又は検診液が、培養の間の蒸発を防ぐために、必要の際にはオイルで覆われることができる、開いた点滴として提案される。洗浄ステップは、スライドグラスに水をかけて洗う、ノズルを使って実行される。オイルは、大概、ノズルによって完全に取り除くことはできない。場合によってはあり得るオイルの残りを完全に取り除くために、手による洗浄ステップが必要になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
今日市場にある装置は、培養と洗浄が同じ室の中で実行される欠点を持っている。流体工学を自由に使用できる自動化は、そのため極めて非能率的に使用されているにすぎない。例えばDNAマイクロアレイは、普通夜通し培養される一方で、洗浄にはわずか数分しかかからない。しかし費用のかかる流体工学に基づき、装置の費用(ポンプ、弁、ゴム管及び連結)の大部分が、普通一日に一度のみわずか数分間実行される、洗浄過程の自動化にある。
【0013】
簡単で再現可能な、試料ホルダーを洗浄するための価格に有利な器具及び方法を自由に使用させることが、提案中の発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題は、請求項1の特徴を持つ試料ホルダー洗浄容器、請求項10の特徴を持つ試料ホルダー洗浄ステーション、請求項21の特徴を持つ試料ホルダーを洗浄するためのシステム及び請求項22の特徴を持つ試料ホルダーを洗浄及び乾燥するための方法によって解決される。下位クレームは、有利な形態で用意される。
【0015】
特に好ましくは発明にかなった試料ホルダー洗浄容器は、試料ホルダーが挿通される注入口と実質的に向き合って配置される、液体供給/排出口を備える。収納された試料ホルダーを互いに間隔をあけて保持し、収納された試料ホルダーと液体供給/排出口の間に液体の流出空間が残るように配置される、試料ホルダー保持器具が、試料ホルダー洗浄容器の中に予め備えられる。この種の試料ホルダー洗浄容器を使い、例えばIHC及びFISHあるいは専有のアレイフォーマット用のマイクロアレイ、スライドグラスを洗浄することができる。希薄性を強く保証するために、洗浄容積は十分に大きくなっている。互いに向かい合っている注入口及び液体供給/排出口によって、1つあるいはいくつかの洗浄/すすぎ溶液が、試料ホルダー洗浄容器を通り抜けてすすがれることが可能である。試料ホルダー保持器具によって、試料ホルダー洗浄容器の中に、いくつかの試料ホルダーを、規程された位置で保持することができるので、スライドグラスの1つの側は自由になっている。そのために発明にかなった試料ホルダー洗浄容器は、いくつかの試料ホルダーを同時に取り扱うことができる。
【0016】
提案中の本文において、概念「洗浄溶液」及び「すすぎ溶液」は同義に使われる。また概念「洗浄」及び「すすぎ」は同義と考えられる。
【0017】
試料ホルダー洗浄容器の2つの向かい合っている開口部を通して、特に好ましくは試料ホルダーの周りを洗うことができる。そのために従来の技術の清掃器具の場合のような固定の液体水位が避けられる。まさしく塩分を含む液体において、固定の液体水位は、液体水位が試料ホルダー洗浄容器の縁に接する場所でこびりつきの危険を含んでいる。発明にかなった試料ホルダー洗浄容器が、残留した液体の残りを取り除くために、例えば遠心分離機の中に据え付けられる場合には、この液体は試料ホルダー流出空間の中で集結するか、そこを通って分離された保持器の入れ物、あるいは遠心分離機の中に流出する。すなわち液体流出空間は、遠心分離された液体の残りが、試料ホルダー上に再度かかることを効果的に阻止する。
【0018】
特に簡単に取り扱い、しなやかに差し込むために、試料ホルダー洗浄容器は、円筒形に、例えば50ミリリットルの遠心分離機試験管又はファルコンチューブの外部寸法で仕上げられ、またその際に注入口及び液体供給/排出口は、向かい合っている円柱端面にある。そのうえ、試料ホルダーが実質的に円筒の軸に平行に保たれるように、試料ホルダー保持器具は機能的に配置される。
【0019】
発明にかなった試料ホルダー洗浄容器の特に有利な形態は、その外部寸法が従来の遠心分離機の中で使用する50ミリリットルの遠心分離機試験管又はファルコンチューブ用の基準分量に一致することを意図している。この種の試料ホルダー洗浄容器を使い、洗浄過程の後に従来の遠心分離機の中で乾燥ステップを行うことが、簡単なやり方で可能になる。
【0020】
試料ホルダー洗浄容器はその中に試料ホルダーを持ち、試料ホルダーの積み替えが必要でなければ、直接遠心分離機の中に据え付けられ、またそこで遠心分離することによって乾燥される。試料ホルダー及び液体供給/排出口の間に残っている液体の流出空間の中に、遠心分離する間に、流れ出る液体が試料ホルダーに再び接することなく集結するか、又はその液体が、遠心分離機又は分離された保持器の入れ物の中に流出する。
【0021】
液体供給/排出口と試料ホルダーの間にある液体の流出空間は、異なった形を備えることができる。先端に液体供給/排出口が開口した円錐形の形態が特に有利である。そのような形態は、液体供給又は液体排出を確実にさせ、また明確に進捗させる。円錐形の形態は、それに加えて効果的なやり方で、遠心分離機の中の試料ホルダーから、遠心分離された液体の残りが戻って試料ホルダー表面の上にはねかける可能性を阻止する。
【0022】
試料ホルダー洗浄容器の簡単な形態は、試料ホルダー保持器具として、放射状に内部に突出するフィンを備える。そのように仕上げられたフィンの間で、注入口を通して、相当する試料ホルダーが簡単に挿入されることができる。
【0023】
試料ホルダー洗浄容器は、例えばガラスで造ることができる。プラスチック製の試料ホルダー洗浄容器は、簡単に製造可能で丈夫である。
【0024】
試料ホルダーを洗浄するための発明にかなった試料ホルダー洗浄ステーションは、少なくとも1つの発明にかなった試料ホルダー洗浄容器の収容に適した、少なくとも1つの保持器を備える。試料ホルダー洗浄ステーションの少なくとも1つの保持器が、収容された試料ホルダー洗浄容器において、その液体供給/排出口に相当する、ステーション流入/流出部を備える。少なくとも1つの保持器の周りに、あふれ盤が配置される。最後に発明にかなった試料ホルダー洗浄ステーションは、ステーション流入/流出部につながるポンプ、及びポンプにつながる少なくとも1つの液体供給弁を備える。
【0025】
そのような試料ホルダー洗浄ステーションを使い、発明にかなった試料ホルダーは、簡単なやり方で据え付けられる。ステーション流入/流出部によって、ポンプを使い、試料ホルダー洗浄容器を通り抜けて洗浄溶液をすすぐことができる。液体は、試料ホルダー洗浄容器から上に出て行き、発明にかなったあふれ盤の中に進む。このやり方で、洗浄溶液から他への汚染が効果的に阻止される。
【0026】
典型的に発生する液体の分量を収容することができるように、発明にかなったあふれ盤の寸法を十分大きくとることができる。それでも、あふれ盤を空にするために据え付けられることができる、あふれ盤からの排出が予め備えられる実施形態が特に有利である。
【0027】
液体供給のために、個々の弁が予め備えられる。しかし、それを通して異なった洗浄液体を、システムの中に入れることができる、いくつかの供給弁を持つ弁ブロックが、液体供給のためにポンプの流れの上に予め備えられる形態は特に多才である。都合良く、少なくとも1つの供給弁とポンプの間に、液体廃棄物導管が予め備えられる。ポンプ方向の反転によって、この廃棄物導管を通り液体を運び去ることができる。
【0028】
個々の発明にかなった試料ホルダー洗浄容器の使用のために、試料ホルダー洗浄ステーションを仕上げることができる。しかし、試料ホルダー洗浄ステーションが、並行して満たすか、空にすることができる、いくつかの試料ホルダー洗浄容器を収容することができる場合に特に有利である。機能的な形態において、この保持器が共通のあふれ盤の中にあるように、互いにグループ分けされる。
【0029】
円錐形に仕上げられた液体供給/排出口を持つ発明にかなった試料ホルダー洗浄容器の保持器を有利に可能にするために、発明にかなった試料ホルダー洗浄ステーションを有利にさらに先へ形成する際に、ステーション流入/流出部は、同じく円錐形に仕上げられる。
【0030】
円筒形の試料ホルダー洗浄容器の安全な保持を可能にするために、発明にかなった試料ホルダー洗浄ステーションの保持器は、都合良く円筒形に仕上げられる。保持器は、実質的に最適な互換性を保証するために、従来の遠心分離機の中にはめ込み可能な標準容器、特に好ましくは50ミリリットル遠心分離機試験管の外部寸法を備える、内部寸法を有利に持たなければならない。そのような形態において、発明にかなった試料ホルダー洗浄容器は、試料ホルダーを直接取り扱う必要なく、試料ホルダー洗浄ステーションから、乾燥のための従来の遠心分離機の中に直接与えられる。
【0031】
試料ホルダーを洗浄及び乾燥するための発明にかなった方法において、マイクロアレイあるいは組織切片、特に好ましくはスライドグラスを持つ試料ホルダーが、発明にかなった試料ホルダー洗浄容器の中に立てられる。試料ホルダー洗浄容器は、発明にかなった試料ホルダー洗浄ステーションの保持器の中に据え付けられる。試料ホルダー洗浄ステーションの保持器のステーション流入/流出部及び試料ホルダー洗浄容器の液体供給/排出口を通って、少なくとも1つの洗浄液体が、試料ホルダー洗浄容器によってすすがれる。
【0032】
洗浄/すすぎの後で、少なくとも1つの洗浄液を使い、試料ホルダー洗浄容器が、試料ホルダーを試料ホルダー洗浄容器から抜き出すことなく、遠心分離機の中に立てられる。遠心分離機の中で試料ホルダーを遠心分離することによって、試料ホルダーが乾燥される。
【0033】
遠心分離する際に、なお試料ホルダーにある、不必要な液体は、液体の流出空間の中に、あるいは液体供給/排出口を通って遠心分離機の中に流れる。代わりに例えば、遠心分離する際に、試料ホルダー洗浄容器上に下から例えば取り付けられる、分かれた保持器の入れ物を予め備えることができる。
【0034】
発明にかなった試料ホルダー洗浄容器及び発明にかなった試料ホルダー洗浄ステーションの使用によって、洗浄液体を使う試料ホルダーの安全なすすぎが保証される。試料ホルダーが試料ホルダー洗浄容器から抜き出されることなく、試料ホルダー洗浄容器を、直接試料ホルダー洗浄ステーションから遠心分離機の中に運ぶことができる。
【0035】
その際要求及び使用される液体に従い、個々のステップを、異なった順番で実行することができる。交配溶液が、試料ホルダーで強く乾燥されることを、確実に防ぐために、洗浄プロセスが終了される前に、例えばまず試料ホルダー洗浄容器が試料ホルダー洗浄ステーションの中に納められ、第1の洗浄/すすぎ溶液が、試料ホルダー洗浄ステーションの保持器のステーション流入/流出部及び試料ホルダー洗浄容器の液体供給/排出口を通り、試料ホルダー洗浄容器の中に入れられる。そのように、すでに液体で満たされた試料ホルダー洗浄容器の中に、その時最初に試料ホルダーが直接交配溶液から納められる。
【0036】
別の方法の案内において、試料ホルダーは、最初に試料ホルダー洗浄容器の中に立てられ、また試料ホルダー洗浄容器は、試料ホルダーを納める前か後で試料ホルダーの洗浄ステーションの保持器の中に据え付けられる。まずその時、洗浄又はすすぎ液は、試料ホルダー洗浄ステーションの保持器のステーション流入/流出部及び試料ホルダー洗浄容器の液体供給/排出口を通ってすすがれる。この方法の案内において、全ての試料ホルダーが、同じ時点に正確に洗浄又はすすぎ溶液と接触状態に入ることを確実なものとする
対応する仕上げられた試料ホルダー洗浄ステーションの使用によって、発明にかなった方法を使い、必要とあれば異なった洗浄時間あるいは温度を持つ、異なった洗浄液体を差し込むことを可能にする。
【0037】
発明にかなった方法において、ポンプの短時間の運転によって、「混合過程」が実施される場合に特に有利である。その際例えば洗浄溶液の完全な交換の後で、ポンプのスイッチを短く入れることによって、混入を引き起こすために、空気あるいは別の洗浄溶液補給されることができる。
【0038】
発明にかなった試料ホルダー洗浄容器、発明にかなった試料ホルダー洗浄ステーション、発明にかなったシステムを使い、又は発明にかなった方法を使い、再現可能な洗浄結果を達成することができる。交配、培養及び洗浄が分離された装置の中で行われるので、良く知られた全自動の際のように改善された機械使用が可能である。大きな洗浄容積が、より強くまたより速い希薄に導き、そのために洗浄プロセスは有利に影響を及ぼされる。あふれ盤によって、泡無し/あぶく無しの洗浄が、洗剤を含む溶液においても可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
本発明は、発明にかなった試料ホルダー洗浄容器及び発明にかなった試料ホルダー洗浄ステーションの実施形態を示す、添付の図に基づき詳細に説明され、特に好ましくは以下を示す。
【0040】
図3において明らかな試料ホルダー洗浄容器1は、四つの標準スライドグラスの洗浄に適していなければならない場合、例えば50ミリリットルの容積を持つ内部空間2を備える。この実施形態において、試料ホルダー洗浄容器1の内部直径は、標準スライドグラスの短い側とほぼ同じ大きさである。試料ホルダー洗浄容器の寸法は、示された実施形態において、24.3ミリメートルから26ミリメートルまでの幅で、74ミリメートルから75ミリメートルまでの長さの標準スライドグラスを格納することを許す。示された試料ホルダー洗浄容器は、ポリプロピレン製のダイカスト部分である。
【0041】
図4において、横断面図が示される。向かい合って試料ホルダー1の中に配置される、試料ホルダーフィン3が形成されている。その際に、その間にスライドグラスを挿入することができる、内部に突出するフィンが重要である。試料ホルダー洗浄容器の下の範囲に、液体供給/排出口4につながる、先細りの円錐部5がある。円錐部5の内部容積に一致する、液体の流出空間は10の番号が付いている。線11において円錐が、試料ホルダー洗浄容器1の被覆面を切る。円錐部の下の終端の周りに、発明にかなった試料ホルダー洗浄ステーションでも、別の場所においても試料ホルダー洗浄容器1がしっかり立っていることを保証する、継ぎ輪15が配置される。
【0042】
フィン3の間に挿入されたスライドグラスは、線11において、円錐部5に対して自身を支えており、試料ホルダー洗浄容器の中にそれ以上滑り込むことができないので、液体の流出空間10は空いたままである。
【0043】
図1は、発明にかなった試料ホルダー洗浄ステーションの洗浄室12の中に差し込む際の発明にかなった試料ホルダー洗浄容器1を示す。洗浄室12は、その内部寸法が、試料ホルダー洗浄容器1の外部寸法に一致する保持器6を備える。この両方の寸法は、従来の遠心分離機の中に据え付けられることができる、50ミリリットル遠心分離機試験管の外部寸法に都合良くほぼ一致する。
【0044】
ここで保持器6は、洗浄室12の中に据え付けられる、分離された部分としてデザインされる。それはプラスチックで造ることができる。別の実施形態において、洗浄室12及び保持器6は、1つのまとまりからできている。要求に従い試料ホルダー洗浄容器1と保持器6の間に、追加の漏れ止め要素を予め備えることができる。
【0045】
試料ホルダー洗浄容器1の円錐部5の液体供給/排出口4は、示された実施形態において、確実な液体の排出を保証するために、同じく円錐形に仕上げられる、ステーション流入/流出部9の向かい側にある。図1の断面図において、さらに例えばここでは示されていないマイクロアレイの中にある、試料ホルダー洗浄容器1の中に納められた四つのスライドグラス40が形成されている。
【0046】
保持器6の周りに、試料ホルダー洗浄容器の上側の注入口を通って外に流れる、液体を取り入れる、あふれ盤7が配置される。あふれ盤7は、例えばあふれ出た液体を閉鎖するための導管をふさわしく自由に使うことができる排水口8を備える。
【0047】
図2は、発明にかなった試料ホルダー洗浄ステーションの接続図を示す。洗浄室12は、両方向に送り出すことができる、ゴム管ポンプ13と、導管24を通って接続されている。導管22を通って、ゴム管ポンプ13は、異なった洗浄又はすすぎ溶液用の供給管16がつながる弁ブロック14と接続されている。弁ブロックの弁を使い、供給管16から選び出されることができる。弁ブロック14とゴム管ポンプ13の間に、液体廃棄物用の分岐がある。弁20を通して、この廃棄物導管は液体廃棄物の入れ物18につながる。
【0048】
記述された、発明にかなった器具は、次のように据え付けられることができる。交配ステップの後で、不特定に結合させられた高分子の除去のための、その上に造り出されたマイクロアレイを持つ、スライドグラスの洗浄及び乾燥が実例として記述される。
【0049】
始めに、第1の方法の案内に従ってスライドグラス40は、提案中の本文のテーマではなく、その限りでは詳細に記述されていない交配の後で、交配ステーションから試料ホルダー洗浄容器1の中に、上側の注入口を通り、内部を指し示すフィン3の間に挿入される。示された実例において、四つのスライドグラスが挿入されることができる。スライドグラスをフィン3の間に挿入する際に、スライドグラスは、円錐部5にある角部11において自身を支える。試料ホルダー洗浄容器1は、その中にあるスライドグラス40を使い、発明にかなった試料ホルダー洗浄ステーションの洗浄室12の保持器6の中に納められる。
【0050】
代案の方法の案内に従い、まず試料ホルダー洗浄容器1が、試料ホルダー洗浄ステーションの保持器6の中に納められる。ステーション流入/流出部9及び液体供給/排出口を通り、試料ホルダー洗浄容器の内部空間の中に、第1の洗浄/すすぎ溶液が入れられる。洗浄室12の中に採り入れられることになる液体の事前の規程のために、描かれていない、例えば光学液体センサーを、例えばステーション流入/流出部9の範囲内に予め備えることができる。液体センサーは、液体の流入を検出する。ゴム管ポンプ13の選択可能な追走の時間によって、規定された容積が、洗浄室12の中に運ばれる。その時まず試料ホルダー40が、直接交配溶液から、そのように液体で満たされた試料ホルダー洗浄容器1の中に入れられる。この方法の案内において、それが第1のすすぎ溶液と接触状態に入る前に、交配溶液が1つあるいはいくつかの試料ホルダー1の上ですでに乾きかけられている恐れがある。
【0051】
それに関して、両方の記述された事例における希望された洗浄あるいはすすぎ液体の選択に従い弁ブロック14の中で、引き込み線に相当する弁が開かれる。ポンプ13を使って、洗浄室12の液体が供給される。液体は、ステーション流入/流出部9及び液体供給/排出口4を通って、試料ホルダー洗浄容器1の内部空間の中に流れる。液体は、その上にマイクロアレイを持つ、納められたスライドグラス40の周囲を流れ、試料ホルダー洗浄容器1から上に出て行き、そしてあふれ盤7の中で集められるか、あるいはすぐに運び去られる。スライドグラスの完全な洗浄を保証するために、洗浄過程ごとに示された実施形態において、最大60ミリリットル溶液の容積を補給することができる。できれば洗剤を含む液体において、相当する泡が同じくあふれ盤を通って運び出される。
【0052】
手で行う混合運動のシミュレーションのために、洗浄の間、選択可能な時期ごとの洗浄溶液については、およそ5ミリリットルの洗浄溶液が供給される。断続して供給された洗浄溶液によって、混合過程がシミュレートされる。
【0053】
洗浄過程の後で、ポンプ13を使い、残されたすすぎ溶液を、洗浄室から汲み出し、また弁20の開放の後で液体廃棄物入れ物18の中に導くことができる
洗浄過程の実施の後で、別の弁の選択によって弁ブロック14の中で、別の液体が使用状態にいたることができる。
【0054】
例えばポンプと弁用のマイクロプロセッサ制御を使い、洗浄過程を自動的に実行することができる。
【0055】
対応して実行された洗浄又はすすぎステップの後で、その中にあるスライドグラスを持つ、試料ホルダー洗浄容器1が、洗浄室12から抜き出され、また従来の遠心分離機の中に据え付けられる。試料ホルダー洗浄容器1からスライドグラスを抜き取る必要は無い。遠心分離機の中で、スライドグラス40の液体は遠心分離され、また液体の流出空間10及び液体供給/排出口4を通って、遠心分離機の中に流れ出る。
【0056】
示されていない実施形態、又は方法の案内において、液体の流出空間10を通って流れ出る液体を受け止めるために、例えば円筒形になり得る、分離された受け止めの入れ物が、下から試料ホルダー洗浄容器1の上に取り付けられる。
【0057】
液体の流出空間10の円錐形の形態によって、遠心分離をする際に、液体の供給/排出口を通って流れ出された液体が、スライドグラス40の上に再びかかることができないことが保証される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】発明にかなった試料ホルダー洗浄容器を持つ、発明にかなった試料ホルダー洗浄ステーションの洗浄室を貫く横断面図である。
【図2】発明にかなった試料ホルダー洗浄ステーションの概略図である。
【図3】発明にかなった試料ホルダー洗浄容器の外観図である。
【図4】発明にかなった試料ホルダー洗浄容器を貫く横断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 試料ホルダー洗浄容器
2 注入口
3 試料ホルダーフィン
4 排出口
5 円錐部
6 試料ホルダー洗浄ステーション
7 あふれ盤
8 排水口
9 ステーション流入/流出部
10 流出空間
12 洗浄室
13 ゴム管ポンプ
14 弁ブロック
16 供給管
18 入れ物
20 弁
22 導管
24 導管
40 スライドグラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロアレイ又は組織切片、特に好ましくはスライドグラスを持つ、少なくとも2つの試料ホルダーを同時に洗浄するための試料ホルダー洗浄容器であって、
試料ホルダー40を挿通して収納することができる注入口2と、
注入口2に実質的に向かい合う液体供給/排出口4と、
収納された試料ホルダー40を互いに間隔をあけて保持することができ、収納された試料ホルダーと液体供給/排出口4の間に液体の流出空間10が残るように、洗浄容器1の中に配置される試料ホルダー保持器具3とを有する試料ホルダー洗浄容器。
【請求項2】
実質的に円柱形状に形成され、注入口2と液体供給/排出口4とが向かい合う円柱端面に開口された、請求項1に記載の試料ホルダー洗浄容器。
【請求項3】
試料ホルダーが実質的に円柱軸と平行に保持されるように、試料ホルダー保持器具3が配置される、請求項2に記載の試料ホルダー洗浄容器。
【請求項4】
遠心分離機の中で使用する際の遠心分離機試験管用の基準寸法、好ましくは50ミリリットルの遠心分離機試験管に一致する外部寸法を有する、請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の試料ホルダー洗浄容器。
【請求項5】
液体供給/排出口4のための試料ホルダー洗浄容器の内部空間が、先細りの円錐形状となっている、請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の試料ホルダー洗浄容器。
【請求項6】
液体の流出空間10が、円錐形状の終端における内部容積によって形成される、請求項5に記載の試料ホルダー洗浄容器。
【請求項7】
試料ホルダー保持器具が、試料ホルダー洗浄容器1の内側に突出するフィンで構成されている、請求項1乃至6のうち何れか1項に記載の試料ホルダー洗浄容器。
【請求項8】
材料としてプラスチックを含む、請求項1乃至7のうち何れか1項に記載の試料ホルダー洗浄容器。
【請求項9】
標準的なスライドグラスを据え付けることができるように、内部寸法と試料ホルダー保持器具3の配置とが選択された、請求項1乃至8のうち何れか1項に記載の試料ホルダー洗浄容器。
【請求項10】
マイクロアレイ又は組織切片、特に好ましくはスライドグラスを持つ、試料ホルダーを洗浄するための試料ホルダー洗浄ステーションであって、
請求項1に記載の試料ホルダー洗浄容器1を収容するための少なくとも1つの保持器6と、
収納された試料ホルダー洗浄容器1の液体供給/排出口4に対応した位置に開口するステーション流入/流出部9と、
保持器6の周りを取り囲むように配置されたあふれ盤7と、
ステーション流入/流出部9に接続されたポンプ13と、
ポンプ13に取り付けられた少なくとも1つの液体供給弁とを備えた試料ホルダー洗浄ステーション。
【請求項11】
あふれ盤7には、少なくとも1つの排水口8が形成されている、請求項10に記載の試料ホルダー洗浄ステーション。
【請求項12】
いくつかの供給弁を予め備えた弁ブロック14を有する、請求項10又は11に記載の試料ホルダー洗浄ステーション。
【請求項13】
ポンプ13と少なくとも1つの供給弁の間で分岐する液体廃棄物導管を持つ、請求項10乃至12のうち何れか1項に記載の試料ホルダー洗浄ステーション。
【請求項14】
いくつかの保持器6を含む、請求項10乃至13のうち何れか1項に記載の試料ホルダー洗浄ステーション。
【請求項15】
いくつかの保持器6が、共通のあふれ盤7によって取り囲まれる、請求項14に記載の試料ホルダー洗浄ステーション。
【請求項16】
ポンプ13がゴム管ポンプを含む、請求項10乃至15のうち何れか1項に記載の試料ホルダー洗浄ステーション。
【請求項17】
少なくとも1つの保持器6が、円柱形の試料ホルダー洗浄容器1を収納するために円柱形に形成されている、請求項10乃至16のうち何れか1項に記載の試料ホルダー洗浄ステーション。
【請求項18】
ステーション流入/流出部9が、円錐形に形成されている、請求項10乃至17のうち何れか1項に記載の試料ホルダー洗浄ステーション。
【請求項19】
少なくとも1つの保持器6における保持範囲の内部寸法が、遠心分離機内に嵌め込み可能な遠心分離機試験管の外部寸法、好ましくは50ミリリットルの遠心分離機試験管に一致する、請求項10乃至18のうち何れか1項に記載の試料ホルダー洗浄ステーション。
【請求項20】
請求項10に記載の試料ホルダー洗浄ステーションの保持器6における保持範囲のステーション流入/流出部9に対応する液体供給/排出口4を持つ、請求項1乃至9のうち何れか1項に記載の試料ホルダー洗浄容器。
【請求項21】
マイクロアレイ又は組織切片、特に好ましくはスライドグラスを持つ試料ホルダーを洗浄するためのシステムであって、
請求項10乃至19のうち何れか1項に記載の試料ホルダー洗浄ステーション、及び請求項1乃至9のうち何れか1項、又は請求項20に記載の少なくとも1つの試料ホルダー洗浄容器1を備えた、試料ホルダーを洗浄するためのシステム。
【請求項22】
請求項1乃至9のうち何れか1項、又は請求項20に記載の少なくとも1つの試料ホルダー洗浄容器1、及び請求項10乃至19のうち何れか1項に記載の試料ホルダー洗浄ステーションを使用して、マイクロアレイ又は組織切片、特に好ましくはスライドグラスを持つ試料ホルダーを洗浄及び乾燥するための方法であって、
(a)試料ホルダー40が、試料ホルダー洗浄容器1の中に立てられるステップ、
(b)試料ホルダー洗浄容器1が、試料ホルダー洗浄ステーションの保持器6の中に据え付けられるステップ、
(c)試料ホルダー洗浄ステーション6の保持器のステーション流入/流出部9、試料ホルダー洗浄容器1の液体供給/排出口4、及び試料ホルダー洗浄容器1を通して、少なくとも1つの洗浄又はすすぎ液が洗い流されるステップ、
(d)試料ホルダー洗浄容器1から試料ホルダー40を取り出すことなく、少なくとも1つの洗浄又はすすぎ液を使って洗浄/すすぎをした後の試料ホルダー洗浄容器1が、遠心分離機の中に立てられるステップ、
(e)遠心分離することによって、試料ホルダー1が乾燥されるステップ
を実行する、試料ホルダーを洗浄及び乾燥するための方法。
【請求項23】
最初にステップ(b)が実行され、その後、ステップ(a)、(c)、(d)、及び(e)が実行される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ステップ(b)の実行後、ステップ(a)の実行前に、第1の洗浄/すすぎ溶液が、試料ホルダー洗浄ステーションの保持器6のステーション流入/流出部9及び試料ホルダー洗浄容器1の液体供給/排出口4を通して試料ホルダー洗浄容器1の中に入れられる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
異なった洗浄液体が、異なった洗浄時間又は温度で、次々に試料ホルダー洗浄ステーションのステーション流入/流出部9及び試料ホルダー洗浄容器1の液体供給/排出口4、及び試料ホルダー洗浄容器1を通して洗い流される、請求項22乃至24のうち何れか1項に記載の試料ホルダーを洗浄するための方法。
【請求項26】
ポンプ13を短時間運転することによって混合過程が実施される、請求項22乃至25のうち何れか1項に記載の試料ホルダーを洗浄するための方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate