説明

試料中のホスホリパーゼA1またはA2活性を定量するための酵素アッセイ

本発明は、蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質で被覆した固相を使用して、分子被覆率が8から30蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質分子/nm2の範囲である、試料中のホスホリパーゼA1またはA2活性を測定する新規の方法、および前記方法を行うためのキットに関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料中のホスホリパーゼ活性を定量するための酵素アッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
リン脂質は生体膜の主要な構造成分である。この構造的な役割に加え、細胞のシグナル伝達プロセスにおける仲介物質としてのリン脂質の重要性はますます明白になっている。したがって、ホスホリパーゼの作用ならびに脂質の選別および輸送などの代謝過程についての研究が、急速に拡大している。
【0003】
ホスホリパーゼは、ひとたび界面系内に存在すると触媒反応を示す最もなじみ深い界面酵素ファミリーの1つに属する。ホスホリパーゼはまた、加水分解酵素の種類にも属するが、水系中に存在するリン脂質のエステル連結を都合好く特異的に開裂し、ホスホリパーゼの種類に応じて、遊離脂肪酸、リゾリン脂質、グリセロリン脂質、ホスファチジン酸および遊離アルコールを生成する。これらの界面の酵素は、その酵素反応速度論的経路が1)組織化された基質への結合、2)触媒ステップ、の別個の2ステップからなるため、水相からその基質に直接接近する古典的な可溶性酵素ではない。
【0004】
ホスホリパーゼは、リン脂質分子におけるこれらの作用部位によって分類される(図1)(11)。
【0005】
従って、ホスホリパーゼA1(PLA1)は、リン脂質の1−アシル基を加水分解する。すなわち、リン脂質の1位における脂肪酸とグリセリン残基の間の結合を加水分解する。ホスホリパーゼA2(PLA2)は、2−アシル(又は中央アシル)基を加水分解し、ホスホジエステラーゼとしても知られているホスホリパーゼC(PLC)およびD(PLD)は、リン酸ジエステル連結のそれぞれ相異なる側を開裂する。
【0006】
PLA1またはPLA2によるリン脂質の加水分解は、いわゆる「リゾリン脂質」の産生をもたらす。PLA1でのリン脂質基質の選択的加水分解は2−アシルリゾリン脂質を産生し、PLA2でのリン脂質の選択的加水分解は1−アシルリゾリン脂質の産生をもたらす。ホスホリパーゼ代謝物質は、シグナル伝達、宿主防御(抗菌効果を含む)、血小板活性化補助因子の形成、膜再形成および全体的な脂質代謝を含む多様な細胞プロセスに関与する。
【0007】
分泌されるホスホリパーゼA2(sPLA2)は、ジスルフィドに富む、14kDaで、Ca2+依存性の細胞外酵素である。これらは、PAFアセチル加水分解酵素としても知られているリポタンパク質関連ホスホリパーゼA2(Lp−PLA2)とは、別のものである。ヒトでは9種の異なるsPLA2遺伝子が記述されており、群IB、IIA、IID、IIE、IIF、III、V、XおよびXIIに分類されている。群IBおよびIIA酵素は最もよく特徴が判っているが、ファミリーの構成員の内でより最近発見されたものが果たす生物学的役割は、捉えがたいままである。
【0008】
最近、独立した9つの大規模で国際的な臨床研究によって、臨床と非臨床の集団の両方において、sPLA2と動脈硬化性心血管疾患の間に強い正相関が有ることが実証された(1−9)。とりわけsPLA2活性は、急性冠症候群管理におけるリスク層別化、急性冠症候群の診断、非徴候性患者における心臓血管リスク評価、ならびに心臓血管疾患での治療診断および治療法監視のための、新規で強力な手法であることが明らかになった。
【0009】
PLA2群はまた、細胞質ゾルのPLA2を含み、PC上のこの活性は、アラキドン酸、すなわちプロスタグランジンおよびロイコトリエンの生合成の前駆体および可能な細胞内の二次メッセンジャーを放出する。
【0010】
ホスホリパーゼA(PLA)は、リン脂質を加水分解し、2−アシル−リゾリン脂質および脂肪酸を産生する酵素であり、広範囲の生命体中に貯えられている。哺乳動物にはインビトロでPLA活性を示すいくつかの酵素がある。細胞外PLAは、ホスファチジルセリン(PS)特異的PLA(PS−PLA)、膜結合型ホスファチジン酸(PA)選択的PLAS(mPA−PLAαおよびmPA−PLAβ)、肝性リパーゼ(HL)、内皮リパーゼ(EL)および膵臓リパーゼ関連タンパク質2(PLRP2)を含み、これらは全て膵臓リパーゼ遺伝子ファミリーに属する。前記三つのPLAは、基質特異性、構造的特徴および遺伝子編成において他のものと異なり、膵臓リパーゼ遺伝子ファミリーのサブファミリーを形成する。PS−PLA、mPA−PLAαおよびmPA−PLAβは、PLA活性のみを示すが、HL、ELおよびPLRP2は、PLA活性に加えてトリアシルグリセロール加水分解活性を示す。
【0011】
血清PLA2アッセイ(13)は、蛍光性反応生成物の分析において液液相分配を利用した。これらのアッセイは、労力を要し、時間のかかる反応後の分析を必要とする。
【0012】
米国特許出願公開第2003/219849号明細書は、非蛍光ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトールまたはホスファチジン酸から選択される非蛍光負電荷リン脂質ならびに蛍光標識されたホスファチジルコリンおよび蛍光標識された/負電荷のリン脂質の中から選択される蛍光標識分子を含む、リポソームの使用に基づくホスホリパーゼ活性を測定するための一般法を開示している。ホスホリパーゼによるリポソームのリン脂質成分の加水分解は、蛍光強度が変化する原因となる。sPLA2活性を求めるための一例は、ジオレオイルホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロールおよび蛍光標識1,2−ビス−(4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インデセン−3−ウンデカノイル)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(ビスボディピー(Bis−BODIPY)FL C11−PC)を含む、リポソームの使用に基づいている。
【0013】
米国特許出願公開第2005/026235号明細書は、式:
【化1】

(式中、R1は6から30の炭素原子を有する飽和または不飽和アルキルであり、R2は6から30の炭素原子を有する飽和または不飽和アルキルであり、Lは結合または連結基であり、かつ、Dは蛍光性の蛍光団である。)を有するミセルまたはリポソームの形態の蛍光標識ホスホリパーゼ基質を含む脂質複合体の使用に基づく、ホスホリパーゼ活性を求めるための別の一般法を開示している。
【0014】
しかしながら、ホスホリパーゼの基質をリポソームまたはミセルの形態で有することはいくつかの欠点を示すことを、本発明者らは見出した。
【0015】
実際、天然のグリセロ脂質またはグリセロリン脂質は事実上水への溶解性を持たず、また界面酵素は水可溶状態において存在することができるので、グリセロ脂質またはグリセロリン脂質の加水分解が生じるためには、酵素が基質膜界面に吸着しなければならない。一見簡単そうではあるが、グリセロ脂質またはグリセロリン脂質の二重層の加水分解は非常に複雑な、非平衡プロセスである。ホスホリパーゼによる脂肪酸または脂肪酸とリゾリン脂質の迅速な産生は、複雑な膜ダイナミクスを生み出し、次にそのことが自己を混乱させ、継続的な酵素作用に影響を与える。実際、ホスホリパーゼ活性は膜特性に敏感であり、リン脂質頭部基サイズ、頭部基電荷、リン脂質相状態、リン脂質ダイナミクスおよび膜曲率を含む多数の膜因子によって修飾される。
【0016】
sPLA2活性を検出する別の方法も報告されている。(キットカタログ#765001 sPLA2 Assay Kit製品資料,Cayman Chemical,Ann Arbor,MI,12/18/97およびキット#907−002,sPLA2 Assay kit,Assay design,Inc.5777 Hines Drive,Ann Arbor,Michigan 48108 USA)。
【0017】
これらのアッセイフォーマットには、重大な制約がある。例えば、酵素活性のみを測定するアッセイは、試験サンプル中に存在する他の酵素または物質による基質に対する競合的活性を受ける。例えば、ホスホリパーゼA2ファミリーの多くの構成員が、酸化したホスファチジルコリンに対して酵素活性を示す。
【0018】
さらに、CaymanおよびAssay designの活性アッセイは、sPLA2活性とは無関係に、基質を変換する血清中の物質によるバックグラウンド信号から影響を受ける。具体的には、これらのキットは方法論の一部として遊離チオールの検出を土台とする。Caymanのアッセイは実験室設定においてよく機能し得るが、Caymanのキットは遊離チオールを検出するため、ヒト試料中のsPLA2測定への使用には適さない。ヒト組織、血漿または血清試料中に遊離チオールが豊富であるからである。さらに、既存のアッセイは、特異性の欠如によって高い活性を誤って検出し得る。臨床的背景における活性の誤った測定は、疾患の不適当な診断、または酵素活性の低減を意図する治療への患者の応答につながりかねない。
【0019】
したがって、リポソーム/ミセルは溶液中では安定構造ではなく、多様な形態(小さいものから大きいものまで、多層小胞(他のリポソーム内のリポソーム)から単層小胞まで)で存在するため、基質をリポソーム/ミセルの形態で用いることは欠点を示す。
【0020】
さらに、有機溶媒中の脂質溶液を水溶液中に滴下することによるリポソームの生成は再現性のないプロセスであり、生成されるリポソームの性質および組織において大きい変動をもたらす。したがって、基質がそのように調製されている場合、酵素にアクセス可能な基質(リポソームの外葉)の量は一定ではない。リポソームサイズを制御する難しさはまた、リポソーム調製の標準化を困難にする。
【0021】
さらに、ヒト血清試料中に存在するいくつかの因子は、ホスホリパーゼ酵素アッセイにおいて基質として用いられるリポソームの構造に大きく影響し、それによってホスホリパーゼ活性の測定にも影響し得る。前記因子は、例えば、イオン強度、界面活性剤として働く脂質または分子の存在、または試料中の二価イオンの濃度である。
【0022】
そのため、生物学的試料などの非常に複雑な試料を処理する場合、
1)ホスホリパーゼ活性独立因子の、基質への影響を最小限に抑えること、および、
2)ホスホリパーゼ活性独立因子をできるだけ正確に測定可能にし、またそれを界面酵素活性自体から基質化すること、が極めて重要である。
【0023】
Choら(12)は、放射性標識リン脂質で被覆したビーズの使用に基づく、sPLA2活性測定のためのアッセイを開示している。前記ビーズは、[3H]−POPG(1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール)によって、1.3 10−2分子/A(すなわち1.3分子/nm)の平衡充填密度で、被覆される。このアッセイは以下の欠点を示す:(i)放射性標識は診断用途に適さない、(ii)本発明の実施例において示されるように、1.3分子/nmという充填密度は蛍光測定アッセイでの使用には適さない、および(iii)前記方法の検出限界は1ngである。
【0024】
リン脂質で被覆した固相の例は当技術分野でほとんど開示されていない。しかし、蛍光性のリン脂質の分子被覆率は、本明細書の後の実施例において示されるように、常に本発明より低値であった。また、前記被覆した固相は、ホスホリパーゼA1またはA2活性測定アッセイに使用するためには開示されなかった。Bayerlら(米国特許第6868343号明細書)は、両親媒性材料から作った界面と物質の相互作用の分析に関わり、それにより、この目的のために両親媒性分子で被覆した担体材料(ケイ酸塩構造)を開示している。実施例に記載の前記コーティングは、陰イオン帯電性 1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−ホスファチジルグリセロール(DMPG) 10モル%、双性イオン性レシチン 1,2−ジエライドイル−sn−3−グリセロ−3−ホスホコリン(DEPC) 89.97モル%、および蛍光マーカー 1−ヘキサデカノイル−2−(1−ピレンデカノイル)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン 0.03モル%の混合物である。したがってこの担体材料上の蛍光分子の充填密度は、1蛍光ホスホリパーゼ基質分子/nm未満であり、本発明での使用には適さない。
【0025】
Brianら(14)は、細胞障害性T細胞の同種異型刺激に関わり、この目的のために、7:2の割合のホスファチジルコリンとコレステロールおよび1モル%になるN−4−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾール−ジミリストイルホスファチジルエタノールアミンの小胞懸濁液で被覆した平坦面(カバーグラス)を開示している。したがってこのカバーグラス上の蛍光分子の充填密度は1蛍光性ホスホリパーゼ基質分子/nm未満であり、本発明での使用には適さない。
【0026】
Dasら(15)は、肺胞マクロファージによる肺界面活性剤除去に関わり、この目的のために、蛍光性と非蛍光性のジオレイルホスファチジルコリンを1:10から1:1000の割合で混合した物で被覆した石英またはカオリン粒子を開示している。したがって、これらの粒子上の蛍光分子の充填密度は、5蛍光ホスホリパーゼ基質分子/nm未満であり、本発明での使用には適さない。
【0027】
そのため、より正確なホスホリパーゼA1またはA2活性アッセイは、特に診断分野における複雑な試料を分析するために非常に興味深い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
したがって、より高感度で、再現可能で、特異的な新規のホスホリパーゼA1またはA2活性アッセイへのニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明の一目的は、分子被覆率が、蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質の8から30分子/nm2の範囲にある蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質で被覆した固相である。
【0030】
本発明の一実施形態において、前記基質は、疎水性部分、リン酸部分および疎水性部分に直接または任意の連結基を介して結合した蛍光性部分を備える。
【0031】
本発明の別の実施形態において、基質はグリセロリン脂質である。
【0032】
本発明の別の実施形態において、前記基質は、sn−1脂肪酸アシル鎖の末端および/またはsn−2脂肪酸アシル鎖の末端に標識付けされている。
【0033】
本発明の別の実施形態において、前記基質はベンゾ(d,e,f)フェナントレンまたは4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセンで標識付けされている。
【0034】
本発明の別の実施形態において、標識基質は、ドナー蛍光団でsn−1脂肪酸鎖に、およびアクセプター蛍光団でsn−2脂肪酸鎖に、または逆に標識付けされている。
【0035】
本発明の別の実施形態において、標識基質は、蛍光団でsn−1脂肪酸鎖に、およびクエンチャーでsn−2脂肪酸鎖に、または逆に標識付けされている。
【0036】
本発明の別の実施形態において、前記固相は微粒子、好ましくはビーズである。
【0037】
本発明の別の目的は、試料中のホスホリパーゼA1またはA2活性を評価する方法であって、
−ホスホリパーゼが蛍光標識ホスホリパーゼ基質を開裂可能にするのに効果的な条件下で本明細書上記の蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質で被覆した固相と試料を接触させること、
−時間の関数として蛍光発光を検出すること、を含む方法である。
【0038】
本発明の別の目的は、
−本明細書上記の蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質で被覆した標識基質を含む第1の容器、
−緩衝液を含む第2の容器、を備えるキットである。
【0039】
本発明の一実施形態において、前記キットは対照および/または較正物質をさらに備える。
【0040】
本発明の別の目的は、本明細書上記の方法に従って対象からの試料中のPLA1またはPLA2酵素活性を測定することを含む、PLA1またはPL2活性関連疾患を有するまたは有する危険があるまたは発症している対象を確認する方法である。
【0041】
本発明の一実施形態において、前記PLA2活性関連疾患は心臓血管疾患および/または心血管系イベントである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明のホスホリパーゼ活性アッセイは、連続的、蛍光測定、反応速度論的活性のアッセイである。それは、固相(例えば微小球体、ビーズ)に被覆した蛍光色素標識基質の分子の、試料中に存在するホスホリパーゼによる加水分解の経時的測定に基づく。
【0043】
本発明の一目的は、蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質で被覆した固相であって、分子被覆率は、1平方ナノメートル当たり8から30蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質分子、好ましくは1平方ナノメートル当たり15から30蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質分子、より好ましくは1平方ナノメートル当たり20から30蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質分子、および一層好ましくは1平方ナノメートル当たり20から25蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質分子の範囲にある。
【0044】
本明細書において使用される場合、用語「分子被覆率」は、1平方ナノメートル当たりの蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質分子の平均数または1個の蛍光色素標識基質分子によって保持される平方ナノメートルの数を指す。
【0045】
分子被覆率は下記方法によって算定することができる:(1)蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質分子の数を算定する(例えば分光光度定量によって)、(2)固相の表面を算定する(平方ナノメートルで)、次いで、(3)蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質分子/固相表面の比の数を求める。
【0046】
本発明者らは、固相(微粒子の場合)の消失がコーティング段階の間に生じないことを仮定して第1の計算を行った。本発明者らは、被覆率を求めるこの第1の方法によって1平方ナノメートル当たり8から11蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質分子の分子被覆率が、本発明の方法を行うために必要であると判断した。
【0047】
しかしながら、(1)固相として微粒子を使用する場合、コーティング工程の間に微粒子の消失があること;および(2)蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質分子の数字を求める場合に緩衝剤としてNaClを使用すると、恐らく緩衝液中で基質が沈澱するために基質分子の正確な数を過小評価することを、本発明者らは見出した。
【0048】
そのような欠点を克服するために、本発明者らは先の方法に基づいて、本発明の固相の分子被覆率を算定する別の方法を開発した:すなわち
−固相が微粒子である場合、コーティング工程の間の消失をモニターし、それにより、さらなる精度で固相の表面を算定するために、微粒子の初めの数、およびコーティング工程後の微粒子の最終数を、Burker血球計数器を使用して集計する。
−分光光度計測定を使用して蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質分子の数を求める場合、沈澱を阻止しそれによりさらなる精度で蛍光性基質分子の数を算定するために、非陰イオン界面活性剤、例えばTween20などの界面活性剤をNaCl緩衝剤に添加する。
【0049】
分子被覆率を求めるより正確なこの方法によって、本発明者らは、先の方法で算定された平方ナノメートル当たり8から11蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質分子の分子被覆率は、算定された平方ナノメートル当たり8から30蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質分子の分子被覆率に対応すると判断した。
【0050】
したがって、本発明の一目的は、蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質で被覆した固相であり、ここで、分子被覆率は、1平方ナノメートル当たり8から30蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質分子の範囲にあり、分子被覆率は、(1)基質の沈澱を阻止するためにNaCl緩衝剤に界面活性剤を用いて分光光度定量を使用して、蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質分子の数を算定すること、(2)固相が微粒子である場合、Burker血球計数器を使用して、コーティング工程後微粒子の数を求め、固相の表面を(平方ナノメートルで)算定すること、次いで、(3)蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質分子/固相表面の比の値を求めることにより求められる。
【0051】
本発明の一実施形態において、固相は蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質のみで被覆される。
【0052】
本発明の別の実施形態において、固相は、ホスホリパーゼA1またはA2基質の少なくとも99%,98%,97%,96%,95%,90%が蛍光色素で標識付けされたホスホリパーゼA1またはA2基質の混合物で被覆されている。
【0053】
本発明の別の実施形態において、固相は、分子被覆率が1平方ナノメートル当たり8から30蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質分子の範囲にある、ホスホリパーゼA1またはA2基質の少なくとも80%が蛍光色素で標識付けされたホスホリパーゼA1またはA2基質の混合物で被覆されている。
【0054】
本発明の別の実施形態において、固相は、分子被覆率が1平方ナノメートル当たり8から30蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質分子の範囲にある、ホスホリパーゼA1またはA2基質の少なくとも70%が蛍光色素で標識付けされたホスホリパーゼA1またはA2基質の混合物で被覆されている。
【0055】
本発明の別の実施形態において、固相は、分子被覆率が1平方ナノメートル当たり8から30蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質分子の範囲にある、ホスホリパーゼA1またはA2基質の少なくとも60%が蛍光色素で標識付けされたホスホリパーゼA1またはA2基質の混合物で被覆されている。
【0056】
本発明の別の実施形態において、固相は、分子被覆率が1平方ナノメートル当たり8から30蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質分子の範囲にある、ホスホリパーゼA1またはA2基質の少なくとも50%が蛍光色素で標識付けされたホスホリパーゼA1またはA2基質の混合物で被覆されている。
【0057】
本発明の別の実施形態において、固相は、分子被覆率が1平方ナノメートル当たり8から30蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質分子の範囲にある、ホスホリパーゼA1またはA2基質の少なくとも40%が蛍光色素で標識付けされたホスホリパーゼA1またはA2基質の混合物で被覆されている。
【0058】
本発明の別の実施形態において、固相は、分子被覆率が1平方ナノメートル当たり8から30蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質分子の範囲にある、ホスホリパーゼA1またはA2基質の少なくとも30%が蛍光色素で標識付けされたホスホリパーゼA1またはA2基質の混合物で被覆されている。
【0059】
本発明の別の実施形態において、固相は、分子被覆率が1平方ナノメートル当たり8から30蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質分子の範囲にある、ホスホリパーゼA1またはA2基質の少なくとも20%が蛍光色素で標識付けされたホスホリパーゼA1またはA2基質の混合物で被覆されている。
【0060】
本明細書において使用される場合、用語「〜で被覆した固相」は、基質が直接結合する(例えば被覆される、結合する、固定される、捕捉されるまたは取り込まれる)ことができるまたは、官能化して基質を受け入れる(間接結合)ことができる任意の支持体を指す。基質は、それが溶液中でホスホリパーゼに接近できるように被覆される。
【0061】
固相は、ポリマー、樹脂、金属またはガラス、およびこれらの組み合わせなどの天然または合成物質、有機または無機の物質から構成することができる。
【0062】
本発明によると、前記標識基質は固相に安定化される。一実施形態において、前記標識基質は、固相に非共有結合で結合されている。
【0063】
固相の例は、これらに限定されないが、ラテックス(ポリスチレン)ビーズ、ガラスビーズ、磁気ビーズ、鉄ビーズ、金ビーズなどの微粒子;またはシート、マトリックスまたは試料容器を包含する。試料容器の例は試料ウェル、管、プレートまたはバイアルを包含する。
【0064】
本発明の一実施形態において、前記標識基質は、ビーズ、好ましくはラテックスビーズに固定させる。
【0065】
前記ビーズは普通の大きさ、例えば0.5から7μm、好ましくは1−6μm、好ましくは2−5.5μm、より好ましくは3−5μm、好ましくは4−4.5μmである。
【0066】
本発明によると、蛍光標識ホスホリパーゼ基質は、ホスホリパーゼA1およびホスホリパーゼA2から選択されるホスホリパーゼによって開裂し得る。
【0067】
本発明の一実施形態において、前記基質は、疎水性部分、リン酸部分および疎水性部分に直接または任意の連結基を介して結合された蛍光性部分を含む。
【0068】
本発明の一実施形態において、前記基質は陰イオン、陽イオンまたは中性であってもよいグリセロリン脂質である。好ましくは、前記グリセロリン脂質は陰イオンである。
【0069】
前記グリセロリン脂質は式:
【化2】

を有する。
【0070】
基質の疎水性部分は、R1およびR2などの1種以上の疎水性尾部を含むことができる。ただし、R1およびR2は同一または相異なっていてよい。各疎水性尾部の正確な長さおよび/または組成は、選択的に変化し得る。いくつかの実施形態において、R1およびR2はそれぞれ同一または相異なる飽和または不飽和のC6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、C20、C22、C24またはC26n−アルキル鎖であってよい。
【0071】
各疎水性尾部は、アルキル、アリールもしくはアリールアルキル基またはそのような基の組み合わせを含んでよい。アルキル基、またはアリールアルキル基のアルキル部は、飽和または不飽和でもよく、コンフォメーションが直鎖、分枝もしくは環状、または直鎖、分枝および環状の組み合わせであってもよい。アリール基またはアリールアルキル基のアリール部は、単環式、多環式、または、二もしくは三環式などであってよい。疎水性部分は2つ、3つまたはさらに多くの疎水性尾部を含んでよい。疎水性部分を含む炭素原子は、様々な置換基で置換されていてよい。結果として得られる標識ホスホリパーゼ開裂基質が評価されている特定のホスホリパーゼによって開裂し得る限り、疎水性部分を含む鎖は、事実上任意の型の連結を介して分子の残りに結合されていてよい、
【0072】
一実施形態において、ホスホリパーゼA1活性が評価されている場合、疎水性尾部R1はエステル結合によって分子の残りに結合されていなければならない。
【0073】
別の実施形態において、ホスホリパーゼA2活性が評価されている場合、疎水性尾部R2はエステル結合によって分子の残りに結合されていなければならない。
【0074】
本明細書において使用される場合、単独または別の置換基の一部としての「アルキル」は、親アルカン、アルケンまたはアルキンの単一炭素原子から1個の水素原子を除去することによって誘導される、明示された数の炭素原子(すなわち、C1−C6は1から6個の炭素原子を意味する)を有する飽和または不飽和の分枝、直鎖または環状の一価の炭化水素ラジカルを指す。典型的なアルキル基は、これらに限定されないが、メチル;エタニル、エテニル、エチニルなどのエチル;プロパン−1−イル,プロパン−2−イル、シクロプロパン−1−イル、プロパ−1−エン−1−イル、プロパ−1−エン−2−イル、プロパ−2−エン−1−イル、シクロプロパ−1−エン−1−イルなどのプロピル;シクロプロパ−2−エン−1−イル、プロパ−1−イン−1−イル、プロパ−2−イン−1−イルなど;例えば、ブタン−1−イル、ブタン−2−イル、2−メチル−プロパン−1−イル、2−メチル−プロパン−2−イル、シクロブタン−1−イル、ブタ−1−エン−1−イル、ブタ−1−エン−2−イル、2−メチル−プロパ−1−エン−1−イル、ブタ−2−エン−1−イル、ブタ−2−エン−2−イル、ブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1,3−ジエン−2−イル、シクロブタ−1−エン−1−イル、シクロブタ−1−エン−3−イル、シクロブタ−1,3−ジエン−1−イル、ブタ−1−イン−1−イル、ブタ−1−イン−3−イル、ブタ−3−イン−1−イルなどのブチルを包含する。具体的なレベルの飽和が意図される場合、「アルカニル」、「アルケニル」および/または、「アルキニル」の命名法は以下に定義されるように使用される。いくつかの実施形態において、アルキル基は(C1−C6)アルキルである。
【0075】
本明細書において使用される場合、単独または別の置換基の一部としての「アリール」は、親芳香族環系の単一炭素原子から1個の水素原子を除去することによって誘導される、明示された数の炭素原子(すなわち、C5−C15は5から15個の炭素原子を意味する)を有する一価の芳香族炭化水素基を指す。代表的なアリール基は、これらに限定されないが、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサンセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as−インダセン、s−インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタエレン、オバレン、ペンタ−2,4−ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントオレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなど、および様々なこれらのヒドロ異性体に由来する基を包含する。いくつかの実施形態において、アリール基は(C5−C15)アリールであり、より一層好ましいのは(C5−C10)アリールである。特に好ましいアリールはシクロペンタジエニル、フェニルおよびナフチルである。
【0076】
本明細書において使用される場合、単独または別の置換基の一部としての「アリールアルキル」は、通常、末端またはsp炭素原子である炭素原子に結合されている水素原子の1個がアリール基と置き換えられた非環式のアルキル基を指す。代表的なアリールアルキル基は、これらに限定されないが、ベンジル、2−フェニルエタン−1−イル、2−フェニルエテン−1−イル、ナフチルメチル、2−ナフチルエタン−1−イル、2−ナフチルエテン−1−イル、ナフトベンジル、2−ナフトフェニルエタン−1−イルなどを包含する。具体的なアルキル部分が意図される場合、アリールアルカニル、アリールアルケニルおよび/または、アリールアルキニルという命名法が使用される。いくつかの実施形態において、アリールアルキル基は(C6−C21)アリールアルキルであり、例えば、アリールアルキル基のアルカニル、アルケニルまたはアルキニル部分は(C1−C6)であり、アリール部分は(C5−C15)である。いくつかの実施形態において、アリールアルキル基は(C6−C13)であり、例えばアリールアルキル基のアルカニル、アルケニルまたはアルキニル部分は(C1−C3)であり、アリール部分は(C5−C10)である。
【0077】
本発明の一実施形態において、R1およびR2鎖は、標識ホスホリパーゼ基質の疎水性部分が天然のリン脂質の疎水性部分に対応するようにリン脂質を含むと一般に知られているアルキル鎖の中から選択される。適切なn−アルキル鎖の限定されない例は、以下の脂肪酸などの一般に存在する脂肪酸から誘導されるものを包含する:ミリスチン酸(長さ−不飽和C−C結合の数:14−0)、パルミチン酸(16−0)、ステアリン酸(18−0)、オレイン酸(18−1 cisΔ)、リノール酸(18−2 cisΔ12)、リノレン酸(18−3 cisΔ1215)、アラキドン酸(20−4 cisΔ1114)、エイコサペンタエン酸(20−5 cisΔ111417)。
【0078】
本発明の一実施形態において、前記陰イオン性グリセロリン脂質は、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルメタノール、ホスファチジルセリンおよびホスファチジン酸の群において選択される。
【0079】
本発明によると、基質は、sn−1脂肪酸アシル鎖の末端および/またはsn−2脂肪酸アシル鎖の末端に蛍光団で標識付けされてもよい。本発明の一実施形態において、基質は蛍光団で直接標識付けされる。本発明の別の実施形態において、基質は連結基を介して蛍光団で標識付けされる。前記連結基には、例えばアルキル鎖などの疎水性連結基が好ましい。
【0080】
本発明の一実施形態において、ホスホリパーゼA1活性が評価されている場合、基質は、少なくともsn−1脂肪酸アシル鎖の末端に蛍光団で標識付けされる。
【0081】
本発明の別の実施形態において、ホスホリパーゼA2活性が評価されている場合、基質は、sn−2脂肪酸アシル鎖の少なくとも末端に蛍光団で標識付けされる。
【0082】
本発明によると、蛍光団は、アッセイ培体中で検出可能な蛍光発光シグナルを生成することができ、蛍光発光シグナルは「自己クエンチ」することができ、かつ水性媒体中で蛍光を発することができるという特性を有する任意の蛍光団であってもよい。
【0083】
本明細書において使用される場合、「クエンチ」は、減少が達成されるメカニズムにかかわらず、特定の波長で測定される蛍光基の蛍光強度の減少を指す。具体的な例として、クエンチは、分子衝突、FRETなどのエネルギー移動、蛍光基の蛍光スペクトル(色度)の変化または他のメカニズムによってもよい。減少の量は重要でなく、広範囲にわたり変動してもよい。唯一の必要条件は、使用されている検出システムによって減少が測定可能であるということである。したがって、指定された波長でその強度が何らかの測定可能な量だけ減少する場合、蛍光発光シグナルは「クエンチされる」。
【0084】
理論に束縛されることは好まないが、本発明者らは、基質が膜二重層に詰め込まれる場合、近隣のリン脂質から蛍光団が接近すると、モノマーの分子のものと比べて分光特性の変化をもたらす(エクシプレックス形成またはクエンチングのために)と述べている。蛍光団脂肪酸は、ホスホリパーゼ触媒反応によってグリセリン骨格から遊離する場合、水相中に存在するウシ血清アルブミンによって取り込まれる。これらの特色によって、モノマーアルブミン結合蛍光団脂肪酸の蛍光発光のモニターにより、敏感なホスホリパーゼアッセイが可能になる。この蛍光測定アッセイは生成物形成を間断なくモニターし、アッセイの感度は、放射性標識リン脂質を用いる従来の固定時間−点アッセイのそれに近づく。
【0085】
そのような蛍光団の例は、フルオレセイン、ローダミンおよびロードールなどのキサンテン、シアニン、フタロシアニン、スクアライン(squairanines)、ボディピー色素、ピレン、アントラセン、ナフタレン、アクリジン、スチルベン、インドールもしくはベンズインドール、オキサゾールもしくはベンゾキサゾール、チアゾールもしくはベンゾチアゾール、カルボシアニン、カルボスチリル、ポルフィリン(prophyrin)、サリチラート、アントラニラート、アズレン、ペリレン、ピリジン、キノリン、ボラポリアザインダセン、キサンテン、オキサジンもしくはベンゾキサジン、カルバジン、フェナレノン、クマリン、ベンゾフランまたはベンズフェナレノンである。
【0086】
適切なローダミン色素の例は、これらに限定されないが、ローダミンB、5−カルボキシローダミン、ローダミンX(ROX)、4,7−ジクロロローダミンX(dROX)、ローダミン6G(R6G)、4,7−ジクロロローダミン6G、ローダミン110(R110)、4,7−ジクロロローダミン110(dR110)、テトラメチルローダミン(TAMRA)および4,7−ジクロロテトラメチルローダミン(dTAMRA)を包含する。
【0087】
フルオレセイン染料の例は、これらに限定されないが、4,7−ジクロロフルオレセイン、5−カルボキシフルオレセイン(5−FAM)および6−カルボキシフルオレセイン(6−FAM)を包含する。
【0088】
市販の蛍光色素の例は、これらに限定されないが、5−カルボキシフルオレセイン−ビス−(5−カルボキシメトキシ−2−ニトロベンジル)エーテル−アラニン−カルボキサミドスクシンイミジルエステル(CMNBかご型カルボキシフルオレセイン(SE);5−カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(5−FAM,SE);5−(および−6)−カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(5(6)−FAM,SE);5−(4,6−ジクロロトリアジニル)アミノフルオレセイン(5−DTAF);6−(フルオレセイン−5−カルボキサミド)ヘキサン酸スクシンイミジルエステル(5−SFX);6−(フルオレセイン−5−(および−6)−カルボキサミドヘキサン酸スクシンイミジルエステル(5(6)−SFX);6−(フルオレセイン−5−(および−6)−カルボキサミドヘキサン酸スクシンイミジルエステル(5(6)−SFX);フルオレセイン−5−EXスクシンイミジルエステル;フルオレセイン−5−イソチオシアナート(FITC、「異性体I」);フルオレセイン−5−イソチオシアナート(FITC、「異性体I」);フルオレセイン−5−イソチオシアナート(FITC、「異性体I」);フルオレセイン−6−イソチオシアナート(FITC、「異性体II」);Texas Red(登録商標)スルホニルクロリド;Texas Red(登録商標)スルホニルクロリド;Texas Red(登録商標)−X、STPエステル、ナトリウム塩;Texas Red(登録商標)−Xスクシンイミジルエステル;Texas Red(登録商標)−Xスクシンイミジルエステルを包含する。
【0089】
本発明の一実施形態において、前記基質はベンゾ(d,e,f)フェナントレンまたはボディピーFL(4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン)などのピレンで標識付けされる。
【0090】
リン脂質は従来の合成法を使用して調製することができる。リン脂質の合成は、Phospholipids Handbook,G.Cevc編,Marcel Dekker(1993),G Hermanson,Bioconjugate Techniques,Academic Press(1996)、SubramanianらARKIVOC VII:116−125(2002)に記載されている。例えば、リン脂質は、選択された脂肪酸無水物との3−置換ホスホグリセロ化合物の反応から調製することができる。代替として、リン脂質は、天然起源(例えば卵黄、脳または植物起源)から抽出することができるか、または(例えばSigma−AldrichおよびAvanti Polar Lipidsから)購入することができる。適切なホスホグリセロ化合物の例は、グリセロ−3−ホスフォエタノールアミンおよびグリセリン−3−ホスホセリンを包含し、そのどちらかは購入(例えばSigma−Aldrichから)して得る、または天然起源から抽出によって得ることができる。脂肪酸無水物は脂肪酸から調製され、これは従来法によって合成する、天然起源から抽出するまたは購入することができる。
【0091】
本発明の別の実施形態において、前記基質は、sn−1またはsn−2脂肪酸鎖の一方に蛍光団で標識付けされ、かつ、クエンチャーは、残りのsn−1またはsn−2脂肪酸鎖に存在する。
【0092】
理論に束縛されることは好まないが、本発明者らは、これらのリン脂質が膜二重層に詰め込まれる場合、近隣のリン脂質分子から分子内で2個の蛍光団が接近すると、モノマーの分子のものと比べて分光特性の変化をもたらす(クエンチング)と述べている。FRET(Forster共鳴エネルギー移動)は、初めの励起ドナーからアクセプターへの励起状態エネルギーの距離依存的移動であり、ドナー分子はアクセプターの吸収と重なる、より短い波長を、通常、放射する。ドナー(蛍光団)およびアクセプター(別の蛍光団またはクエンチャー)が所定距離、通常10−100Å内にある場合、FRETが発生する。エネルギー移動が50%である、ドナーアクセプター距離はForster半径(Ro)と呼ばれる。この距離内で、ドナーがクエンチャーにその共鳴エネルギーを移動させる場合、ドナー蛍光発光の減少が見られる。ドナーアクセプター距離がForster半径を上回ると、FRET効率は劇的に落ちる。
【0093】
sn−1およびsn−2脂肪酸アシル鎖に標識付けするために使用することができるFRETドナーアクセプター対の例は、これらに限定されないが、7−ジエチルアミノ−3((4−ヨードアセチル)アミノ(NBD)(ドナー)とN−(7−ニトロ−2−1,3−ベンズオキサジアゾール−4−イル(アクセプター)または7−ジエチルアミノ−3((4’ヨードアセチル)アミノ(NBD)(ドナー)と9−ジエチルアミノ−5H−ベンゾ[アルファ]フェノキサジン−5−オン(ナイルレッド)(アクセプター)である。
【0094】
ホスホリパーゼA2活性を求めるために使用される基質の例は、グリセロリン脂質であり、ここで、NBD蛍光団は、非加水分解性のエーテル結合でsn−1位で共有結合され、ナイルレッドはエステル結合でsn−2位で結合されている。
【0095】
ホスホリパーゼA2活性を求めるために使用される基質の別の例は、グリセロリン脂質であり、ここで、ボラポリアザインダセン蛍光団、好ましくは4,4−ジフルオロ−4−ボラ−3a−,4a−ジアザ−s−インダセン(ボディピー)は、非加水分解性のエーテル結合でsn−1位で共有結合され、エステル結合でsn−2位で結合されている。
【0096】
ホスホリパーゼA1活性を求めるために使用される基質の例は、グリセロリン脂質であり、ここで、ボラポリアザインダセン蛍光団(好ましくは4,4−ジフルオロ−4−ボラ−3a−,4a−ジアザ−s−インダセン(ボディピー))は、sn−1位でエステル結合で共有結合され、sn−2位で非加水分解性のエーテル結合で結合されている。
【0097】
本発明の別の実施形態において、ホスホリパーゼA1活性が評価されている場合、基質は、sn−2脂肪酸アシル鎖の末端に蛍光団として置換または無置換ピレンで、およびsn−1脂肪酸アシル鎖にクエンチャーで標識付けされる。
【0098】
本発明の別の実施形態において、ホスホリパーゼA2活性が評価されている場合、基質は、sn−1脂肪酸アシル鎖の末端に蛍光団として置換または無置換ピレンで、およびsn−2脂肪酸アシル鎖にクエンチャーで標識付けされる。
【0099】
これらの基質は蛍光団として置換または無置換ピレンを含むが、そのような蛍光発光はクエンチャーによってクエンチされるので、これらは蛍光性ではない。ホスホリパーゼA1またはA2の影響下で、クエンチャーは開裂され残りの基質から空間的に分離され、それによりホスホリパーゼA1またはA2活性に比例する蛍光強度の増加を可能にする。
【0100】
蛍光団として使用されるピレンは、より低い極性、消光波長と発光波長間の大きな隔たり、水溶液中で機能する能力、ならびにより高い濃度でのエキシマーの形成およびより大きい波長への発光波長の同時シフトという利点を提供する。
【0101】
この実施形態によると、クエンチャーの例は、これらに限定されないが、1個以上の、特に2個のニトロ基、例えば2,4−ジニトロフェニル残基などで置換されたフェニル残基を包含する。
【0102】
この実施形態によると、蛍光団およびクエンチャーは連結基を介してsn−1およびsn−2脂肪酸アシル鎖に結合されている。
【0103】
一実施形態において、sn−1またはsn−2脂肪酸アシル鎖に蛍光団を結合するために使用される連結基は、エーテル(R1−OR2)(式中、R1およびR2は独立して選択され、1から12の炭素原子を有する炭化水素から誘導され、mは1から4の整数である。)から誘導することができる。好ましくは、R1およびR2は、nが2から12の整数である(CH2)nである。好ましい連結基の例は(CH2)−O−(CH2)10である。CH2鎖を含む連結基は、それらが特別の代謝安定性を有しているので特に好ましい。
【0104】
別の実施形態において、sn−1またはsn−2脂肪酸アシル鎖に蛍光団を結合するために使用される連結基は、炭化水素R、好ましくは(CH2)(式中、oは1から20、特に2から6の整数である。)から誘導してもよい。これらの連結基もまた、代謝的に安定している。
【0105】
一実施形態において、sn−1またはsn−2脂肪酸アシル鎖にクエンチャーを結合するために使用される連結基は、C(O)−(CH2)またはC(O)−(CH2)−NH(式中、pは1から20、好ましくは2から6の整数である。)から誘導してもよい。好ましくは、前記連結基はC(O)−(CH2)−NHである。これらの連結基は代謝的に安定しているので、特によく適合している。
【0106】
当業者は、本発明の基質を調製するために有機合成化学の従来の反応および方法を使用するであろう。
【0107】
固相に被覆することができる蛍光標識基質の実施例は下記の通りである:Aventiによって商品化された蛍光グリセリン系脂質(ホスファチジルコリン(NBD)、ホスファチジン酸(NBD)、ホスファチジルエタノールアミン(NBD)、ホスファチジルグリセロール(NBD)、ホスファチジルセリン(NBD));molecular probesによって商品化された蛍光リン脂質(ホスホコリンボディピーD−3793、D−3795、ホスホコリンボディピーFL D−3792、D−3803およびD−3771ホスファチジン酸ボディピーFL D−3805、ホスホエタノールアミンボディピーD−3813、ホスホコリンボディピーD−3806、ホスホコリンDPH D−476、ホスホコリンNBD N−3786およびN−3787、ホスホコリンペリレンH−3790、ホスホコリンピレンH−361、H−3818、B−3781およびB−3782、ホスホエタノールアミンピレンH−3784、ホスホグリセリンピレンH−3809、ならびにホスホメタノールピレンH−3810およびO−7703)。
【0108】
本発明の一実施形態において、蛍光色素標識基質を含む溶液で固相を被覆する方法は、以下の通りである。蛍光色素標識基質を、ガラス容器内で10%メタノール/90%クロロホルム(体積/体積)中で超音波処理を使用して可溶化しストック溶液を調製する。
蛍光色素標識基質の正確なモル濃度を、5点の標準曲線(メタノールで1/100および1/1600に稀釈、階段式稀釈、係数2)を通る吸光度によって標準曲線の助けを借りて求める。ここで、蛍光色素標識基質は、10%メタノール/90%クロロホルム(体積/体積)溶液をメタノールで1/100に稀釈したとして定義されたブランクを用いて超音波処理したストック溶液から調製する。
【0109】
固相が微粒子である場合、メタノール中の10%微粒子懸濁液を、メタノールで稀釈(1:5体積/体積)し、続いて超音波処理することによって調製する。コーティング溶液は、メタノールに蛍光色素標識基質(ストック溶液からの)を添加することにより調製する。次いで、コーティング溶液は50mLガラス管中の微粒子メタノール懸濁液(1:1体積/体積)に添加し、次いで、溶媒は、緩やかに振盪(400rpm)しながら37℃で終夜蒸発させる。被覆した微粒子は、微粒子の乾燥ペレットに150mM NaClを添加し、続いて超音波処理することにより1度好ましくは2度または3度洗浄する。被覆した微粒子を1日から5日間静置し、次いで、再洗浄する(4000から8000g)。
【0110】
被覆した微粒子を遠心分離によって回収し、上澄みは吸光度測定(ブランク150mM NaCl)によって収率を決定するために保管する。
【0111】
コーティングの収率(通常75から85%)は、微粒子に加えた初期のストック溶液から洗浄上澄み全体で検出された基質の量を減じることにより求めた。
【0112】
固相がプレートである場合、コーティング溶液はメタノール中の蛍光色素標識基質を添加することにより調製する。コーティング溶液はプレートに添加し、次いで、溶媒は、緩やかに振盪(400rpm)しながら37℃で終夜蒸発させる。被覆したプレートは、150mM NaClを添加することにより1度好ましくは2度または3度洗浄する。1から5日間被覆したプレートを静置させ、次いで、また洗浄する(4000から8000g)。
【0113】
被覆したプレートを遠心分離によって回収し、上澄みは吸光度測定(ブランク150mM NaCl)によって収率を決定するために保管する。
【0114】
コーティングの収率(通常75から85%)は、プレートに加えた初期のストック溶液から洗浄上澄み全体で検出された基質の量を減じることにより求めた。
【0115】
本発明の一目的は、試料中のホスホリパーゼA1またはA2活性を測定する方法であって、
−ホスホリパーゼが蛍光標識ホスホリパーゼ基質を開裂可能にするのに効果的な条件下で、本明細書上記の蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質で被覆した固相と試料を接触させること、
−時間の関数として蛍光発光を検出すること、
を含む方法である。
【0116】
本発明の一実施形態において、試料は、尿、血清、血漿試料、全血、気管支肺胞洗浄液、痰、関節液、羊水、腹腔液、脳脊髄液、胸水、囲心腔液および肺胞マクロファージから選択される生物学的試料である。
【0117】
本発明の文脈において「試料」は、細胞培養試料または対象から単離された生物学的試料であってよく、対象から得られた体液および/またはホモジネートまたは可溶化組織などの組織抽出物を、例として、限定されずに、包含することができる。組織抽出液は、組織生検および剖検材料からルーチン的に得られる。
【0118】
ホスホリパーゼが蛍光標識ホスホリパーゼ基質を開裂する効果的な条件は、当技術分野で周知であり、例えば20から40℃の温度である。
【0119】
本発明の別の実施形態において、本明細書の上記の本発明の方法はまた、細胞培養試料中のホスホリパーゼA1またはA2を測定するために使用されてもよい。
【0120】
本発明の別の目的はまた、試料中のカルシウム依存性ホスホリパーゼA1およびA2活性を測定するための改良方法である。
【0121】
カルシウム依存性ホスホリパーゼA2は分泌されたホスホリパーゼA2(sPLA2)である。
【0122】
カルシウム依存性ホスホリパーゼA1は、ホスファチジルセリン(PS)−特異的PLA1(PS−PLA1)、膜関連ホスファチジン酸(PA)−選択的PLA1s(mPA−PLA1アルファおよびmPA−PLAlベータ)および内皮リパーゼ(EL)である。
【0123】
試料中のカルシウム依存性ホスホリパーゼA1またはA2活性を測定する前記方法は、
a)ホスホリパーゼA1またはA2酵素活性がブロックされる条件で標識基質を前記試料と接触させるステップ、
b)経時的に蛍光発光を読み取るステップ、
c)溶液を添加してホスホリパーゼA1またはA2酵素活性を発生させるステップ、
d)経時的に蛍光発光を読み取るステップ、を含み、
ここで、標識基質は本明細書の上記の通りである。
【0124】
本発明の一実施形態において、本方法が行われる温度は、20から40℃、好ましくは24から36℃、より好ましくは28から32℃、最も好ましくは30℃である。
【0125】
本発明の別の実施形態において、ステップa)は、少なくとも1種の二価イオンキレート剤の存在下で実施される。
【0126】
前記二価のイオンキレート剤は、限定されないが、ジアミノエタンテトラ酢酸(EDTA)またはエチレングリコール四酢酸(EGTA)を包含する。
【0127】
一実施形態において、前記二価イオンキレート剤はエチレングリコール四酢酸(EGTA)である。
【0128】
本発明の別の実施形態において、二価イオンキレート剤の濃度は、1mMから20mM、好ましくは2mMから10mM、より好ましくは3mMから6mMである。
【0129】
本発明の別の実施形態において、蛍光発光は経時的に読み取る。例えば、30秒から5分、好ましくは60秒から3分、より好ましくは90秒から2分である。蛍光発光は、使用する蛍光団によって判断した波長で読み取る。
【0130】
本発明の別の実施形態において、ホスホリパーゼA1またはA2酵素活性を発生させる溶液は、過剰のCa2+二価イオンを含む。
【0131】
二価イオンの例は、これらに限定されないが、塩化カルシウム(CaCl2)、臭化カルシウム(CaBr2)、硫酸カルシウム(CaSO2)、フッ化カルシウム(CaF2)、ヨウ素酸カルシウム(CaI2O6)またはヨウ化カルシウム(CaI)を包含する。好ましくは、前記Ca2+イオンはCaCl2である。
【0132】
本発明の別の実施形態において、溶液中のCa2+イオンの濃度は1から10mM、好ましくは2mMから8mM、より好ましくは4mMから7mMである。
【0133】
本発明の一実施形態において、ホスホリパーゼA1またはA2酵素活性を発生させる溶液は手作業で添加する。本発明の別の実施形態において、ホスホリパーゼA1またはA2酵素活性を発生させる溶液は自動的に添加される。
【0134】
本発明の別の実施形態において、反応のpHは、6から10、好ましくは7から9、より好ましくは8から9である。
【0135】
本発明の別の目的は、
−本明細書の上記の固相に固定させた標識基質を含む第1の容器、
−少なくとも1種の緩衝液を含むアッセイ緩衝剤を含む第2の容器、
を備えるキットである。
【0136】
一実施形態において、前記キットは、
−本明細書の上記の固相に固定させた標識基質を含む第1の容器、
−少なくとも緩衝溶液、1種以上の二価イオンキレート剤およびウシ血清アルブミンを含むアッセイ緩衝剤を含む第2の容器、
−Ca2+二価のイオンを含むホスホリパーゼA1またはA2酵素活性を発生させる溶液を含む第3の容器、を備える。
【0137】
本発明の一実施形態において、固相に固定させた標識基質は、懸濁液、水溶液、乾燥した形態、または凍結乾燥した形態で存在する。
【0138】
本発明の一実施形態において、アッセイ緩衝剤は酢酸塩、ADA、AMP、AMPD、AMPSO、Bicin、ビス‐トリスプロパン、グリシルグリシン、HEPES、HEPPS、HEPPSO、リン酸塩、POPSO、TAPS、タウリン、トリシンおよびトリエタノールアミンなどの緩衝液を含む。
【0139】
本発明の一実施形態において、アッセイ緩衝剤は、これらに限定されないが、ジアミノエタンテトラ酢酸(EDTA)またはエチレングリコール四酢酸(EGTA)を包含する二価イオンキレート剤を含む。好ましくは、前記二価イオンキレート剤はエチレングリコール四酢酸(EGTA)である。
【0140】
本発明の別の実施形態において、二価イオンキレート剤の濃度は、1mMから20mM、好ましくは2mMから10mM、より好ましくは3mMから6mMである。
【0141】
本発明の一実施形態において、アッセイ緩衝剤は、ウシ血清アルブミン、好ましくは脂肪酸を含まないウシ血清アルブミンを含む。
【0142】
一実施形態において、アッセイ緩衝剤中に存在するウシ血清アルブミンの範囲は、0.05%から10%、好ましくは0.075%から5%、より好ましくは0.1%から0.5%である。
【0143】
本発明の別の実施形態において、アッセイ緩衝剤はNaClをさらに含む。一実施形態において、アッセイ緩衝剤中に存在するNaClの濃度は、10mMから500mM、好ましくは100mMから250mM、より好ましくは130mMから170mMである。
【0144】
本発明の一実施形態において、キットは少なくとも1種の較正物質および/または少なくとも1種の対照試料をさらに含む、または備える。
【0145】
PLA1活性を測定する方法で使用される較正物質は任意のPLA1であってもよい。
【0146】
PLA1較正物質の一例は、Sigma Aldrichからのヒト膵リパーゼ(膵液からの)BCR693である。較正試料は、一般に、PLA1酵素でスパイクをつけた、試験試料以外の同一の性質の試料である。
【0147】
PLA2活性を測定する方法で使用される較正物質は任意のPLA2であってもよい。
【0148】
sPLA2較正物質の一例としては、試験試料以外の同一の性質のヒト試料にスパイクをつけたハチ毒(bv−sPLA2)から抽出されたsPLA2が好ましい。例えば、試験試料が血漿または血清試料なら、較正物質は、ヒト血漿または血清にスパイクをつけたsPLA2を含む試料になる。
【0149】
PLA2較正物質の別の実施例には、哺乳動物血清、好ましくはウシ血清または血漿または血漿にスパイクをつけたハチ毒(bv−sPLA2)から抽出されるsPLA2が好ましい。
【0150】
前記較正物質は相異なる濃度:例えば0.15mg/ml、0.2mg/ml、0.25mg/ml、0.3mg/ml、0.35mg/mlおよび0.4mg/mlで準備してもよい。
【0151】
対照試料はネガティブおよび/またはポジティブコントロールであってもよい。
【0152】
ポジティブコントロールは、例えば、既知のPLA1またはPLA2活性を有する試料、または既知の濃度のPLA1またはPLA2を含む試料である。例えば、sPLA2活性を測定する方法において使用される正の対照はbv−sPLA2の公知の濃度を含む試料である。較正物質に関しては、ポジティブまたはネガティブコントロールのために使用された試料は試験試料以外の同一の性質のものである。
【0153】
好ましくは、ポジティブな試料中に存在するPLA1またはPLA2の濃度は較正物質中に存在するPLA1またはPLA2の濃度とは異なる。例えば、ポジティブコントロールのsPLA2の濃度は0.275mg/mlであってもよい。
【0154】
ネガティブコントロールは、例えば実質的に健常の提供者からの試料である。本明細書において使用される実質的に健常の提供者とは、PLA1またはPLA2活性関連疾患と診断されていない、または、PLA1またはPLA2活性関連疾患の症状を示さない提供者を指す。
【0155】
本発明の方法の1つの特別の利点は、最小検出限界が約0.001pmolのホスホリパーゼ酵素であるという、その感度である。
【0156】
本発明の別の目的は、本明細書の上記の本発明の方法に従って対象からの試料中のsPLA2酵素活性を測定することを含む、sPLA2活性関連疾患を有する、有する危険がある、または発症する対象を確認する方法である。
【0157】
本発明の文脈において、「対象」は好ましくは哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、人類以外の霊長動物、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであってもよいが、これらの例に限定されない。
【0158】
一実施形態において、前記sPLA2活性関連疾患の例としては、炎症性疾患、癌、敗血症、重度の火傷、重い外科手術または重傷領域を含む他の損傷、糖尿病性機能障害、急性肝不全、膵臓炎、神経変性疾患、自己免疫疾患、例えば、SLE、変形性関節炎、リューマチ性関節炎、多発性硬化症、重症筋無力症、グレーヴズ病、尋常性乾癬、拡張型心筋症、糖尿病、ベヒテレフ病、炎症性胆汁疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、特発性血小板減少症紫斑病(ITP)、プラスチック貧血、特発性の拡張型心筋症(IDM)、自己免疫性甲状腺炎、グッドパスチャー症候群、動脈性および静脈性慢性炎症を包含するが、これらに限定されない。
【0159】
別の実施形態において、前記sPLA2活性関連疾患は心臓血管疾患および/または心血管系イベントである。
【0160】
前記心臓血管疾患および/または心血管系イベントの例は、メタボリックシンドローム、症候群X、アテローム性動脈硬化症、アテローム血栓症、冠動脈疾患、安定および不安定狭心症、卒中、大動脈およびその分枝の疾患(大動脈弁狭窄症、血栓症または大動脈瘤などの)、末梢動脈疾患、末梢血管疾患、脳血管疾患、および何らかの急性虚血性心血管系イベントを包含するが、これらに限定されない。
【0161】
一実施形態において、sPLA2活性関連疾患を有する危険があるまたは発症している対象は、実質的に健常な対象である。これは、対象が、虚血性症候または無症候性虚血を伴う若しくは虚血を伴わない無症候性冠動脈疾患などの疾患;安定性または労作性狭心症などの心筋壊死を伴わない慢性虚血障害;不安定狭心症などの心筋壊死を伴わない急性虚血障害;ST部分上昇型心筋梗塞または非ST部分上昇型心筋梗塞などの心筋壊死を伴う虚血障害を示さないことを意味する。
【0162】
別の実施形態において、sPLA2活性関連疾患を発症する危険がある対象は、虚血性症候または無症候性虚血を伴う若しくは虚血を伴わない無症候性冠動脈疾患などの疾患;安定性または労作性狭心症などの心筋壊死を伴わない慢性虚血障害;不安定狭心症などの心筋壊死を伴わない急性虚血障害;ST部分上昇型心筋梗塞または非ST部分上昇型心筋梗塞などの心筋壊死を伴う虚血障害を示す対象である。
【0163】
別の実施形態において、本明細書の上記の方法は、本明細書において上に定義される実質的に健常な対象であって、虚血性症候または無症候性虚血を伴う若しくは虚血を伴わない無症候性冠動脈疾患などの疾患;安定性または労作性狭心症などの心筋壊死を伴わない慢性虚血障害;不安定狭心症などの心筋壊死を伴わない急性虚血障害;ST部分上昇型心筋梗塞または非ST部分上昇型心筋梗塞などの心筋壊死を伴う虚血障害を示す対象のsPLA2活性関連疾患を発症する危険性の判定を可能にする。
【0164】
最近公表された調査(参考文献1−9参照)は、第1三分位(調査集団の下位33%)に対し、第2および第3三分位(調査集団の上位67%)においてsPLA2活性値に関連する心臓血管疾患(CVD)の危険性の増加を示している。したがって、sPLA2に起因するCVDの危険性が有意に増加する個体を識別するためのより保守的な手法は、集団の50番目の百分位値であってもよい。
【0165】
現在のsPLA2活性試験において、この閾値は、女性および男性それぞれについて、39.7U/mLおよび33.5U/mLに対応する。
【0166】
本発明の別の目的は、本明細書において上記の本発明の方法に従って対象からの試料中のPLA1酵素活性を測定することを含む、PLA1活性関連疾患を有するまたは有する危険があるまたは発症している対象を識別する方法である。
【0167】
本発明の文脈において「対象」は、好ましくは哺乳動物である。哺乳動物はヒト、人類以外の霊長動物、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであってもよいが、これらの例に限定されない。
【0168】
一実施形態において、前記PLA1活性関連疾患は、酸リパーゼ疾患、ウォルマン病またはコレステロールエステル蓄積症(CESD)を包含するが、これらに限定されない。
【0169】
本発明は、以下の限定されない実施例を考慮すればより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】グリセロリン脂質の加水分解におけるホスホリパーゼ作用部位を示す図である。
【図2】リン脂質被覆ビーズの分子被覆率に対する405nmでのバックグラウンド蛍光発光を示す図である。
【図3】sPLA2活性(起点での傾き)対リン脂質被覆ビーズの分子被覆率を示す図である。
【図4】リン脂質被覆ビーズにbv−sPLA2量を増しながら添加した後に得られたプログレス曲線を示す図である。
【図5】リン脂質被覆ビーズに66fmolのbv−sPLA2を添加した後に得られたプログレス曲線を示す図である。
【図6】相異なる量のBSAの存在下でリン脂質被覆ラテックスビーズの405nmでの蛍光発光(平均+/−SD)を示す図である。
【図7】本発明の方法によるsPLA2活性測定におけるトリグリセリド干渉を示す図である。
【図8】本発明の方法によるsPLA2活性測定におけるヘモグロビン干渉を示す図である。
【図9】本発明の方法によるsPLA2活性測定におけるビリルビン干渉を示す図である。
【図10】1−ヘキサデカノイル−2−(1−ピレンデカノイル)−sn−グリセロ−3−ホスホメタノールリポソームへヒト血清試料30μLを添加した後のプログレス曲線を示す図である。
【図11】公表された方法を使用したbv−sPLA2標準曲線を示す図である。
【図12】本発明の方法を使用したbv−sPLA2標準曲線を示す図である。
【図13】年齢40−59歳の男女のsPLA2活性の累積比分布を示す図である。
【図14A】本発明の方法を使用したbv−sPLA2標準曲線を示す図である。
【図14B】ミカエリス−メンテンモデルをあてはめた本発明の方法を使用したbv−sPLA2標準曲線を示す図である。
【図15A】Assay Design kitを使用したbv−sPLA2標準曲線を示す図である。
【図15B】Cayman kitを使用したbv−sPLA2標準曲線を示す図である。
【図15C】本発明の方法を使用したbv−sPLA2標準曲線を示す図である。
【図16】Assay Design法および本発明の方法を使用したヒト試料中のsPLA2活性の比較を示す図である。
【0171】
実施例
1−本発明の方法によるリン脂質被覆固相の調製
【0172】
材料および試薬
β−py−C10−ホスホグリセリン(β−py−C10−PG)をMolecular Probes/Invitrogenから入手した。φ4.15μmポリスチレン微小球体(ビーズ)はMerck/Estaporから購入した。96ウェルプレートをNuncから購入した。他の全試薬はSigma−Aldrichtから入手した。
【0173】
実験プロトコル
全ステップは光に直接暴露しないでガラス器具中で実施した。
【0174】
ガラス容器内で10%メタノール/90%クロロホルム(体積/体積)中で超音波処理を使用してβ−py−C10−ホスホグリセリンを可溶化した。β−py−C10−ホスホグリセリンの正確なモル濃度を、5点の標準曲線(メタノールで1/100および1/1600に稀釈、階段式稀釈、係数2)を通る342nmでの吸光度によって標準曲線の助けを借りて求めた。ここで、標準曲線は、10%メタノール/90%クロロホルム(体積/体積)溶液をメタノールで1/100に稀釈したとして定義されたブランクを用いて超音波処理したストック溶液から作製した。
【0175】
メタノール中の10%ビーズ懸濁液を、メタノールで稀釈(1:5体積/体積)し、続いて超音波処理することによって調製した。コーティング溶液はメタノール中のβ−py−C10−ホスホグリセリン(ストック溶液からの)を添加することにより調製した。コーティング溶液は、50mLガラス管内のビーズメタノール懸濁液(1:1体積/体積)に、またはプレートのウェルに添加し、次いで、溶媒は8時間緩やかに振盪(400rpm)しながら37℃で蒸発させた。次いで、ビーズおよびプレートは、ビーズ/リン脂質の乾燥ペレット又はウェルに150mM NaClを添加し、続いてビーズを超音波処理することにより3度洗浄した。ビーズおよびプレートを遠心分離によって回収し、上澄みは342nmでの吸光度測定(ブランク150mM NaCl)によって収率を決定するために保管した。上澄みで測定した342nmでの吸光度が、全上澄みで測定した吸光度の合計の4%未満となるまで、洗浄ステップを繰り返した。コーティングの収率(通常75から85%)は、ビーズまたはプレートに加えた初期のストック溶液から洗浄上澄み全体で検出された基質の量を減じることにより求めた。分子被覆率は、nmで表わす単位面積当たりの分子数として定義した。ビーズおよびプレートは、光から保護し、ガラス容器中に1mLのアリコートで4℃で保管した。
【0176】
2−sPLA2活性アッセイにおけるリン脂質被覆ビーズの分子被覆率の影響
相異なる分子被覆率を有する1%のビーズ懸濁液10μlを、190μlの10mM Tris−HCl pH8.5、0.5%BSA、6mM EGTAおよび100mM NaClに添加し、405nmでの蛍光発光を355nmで励起して、撹拌装置および30℃に制御したサーモスタットを装備したFluostar Optima蛍光計で180秒間記録した。次いで、蛍光発光シグナル(任意単位)は、アッセイに添加したβ−py−C10−ホスホグリセリンのモル数に対して標準化した。この分析の結果の代表的な例は図2および表1に示される。
【0177】
【表1】

【0178】
図2中に示されるように、標準化したバックグラウンドは、分子被覆率の増加とともに、7−15分子/nmの範囲の分子被覆率に対しおよそ2500−3000FUの最小値に低下した。
【0179】
ヒト血清30μlにスパイクをつけた精製ハチ毒sPLA2(bv−sPLA2、SIGMA−ALDRICH)660fmolを、190μlの10mM Tris−HCl pH8.5,0.5%BSA,5mM CaCl2および100mM NaClに添加した1%のビーズ懸濁液10μlと混合した。355nmで励起した405nmでの蛍光発光を撹拌装置および30℃に制御されたサーモスタットを装備したFluostar Optima蛍光計で180秒間記録し、起点での傾き(FU/秒で表す)をプログレス曲線から抽出した。相異なる分子被覆率を比較するアッセイの結果の代表的な例は、図3、および表2に示される。
【0180】
【表2】

【0181】
図3に示されるように、4分子/nm未満の分子被覆率を有するリン脂質被覆ビーズを使用する場合は、sPLA2活性は認められなかった。この観察は、リン脂質がその濃度で適切な二重層として組織化されず、そのため酵素によって認識されないということによって説明することができる。
【0182】
次いで活性は、分子被覆率が4分子/nm2に達したときに認められ、被覆率が増加するにつれてわずかに増える。
【0183】
コーティング収率(データ示さず)とsPLA2活性アッセイのバックグラウンドおよびシグナルとあいだのより良好な折衷は、10分子/nmに集中した。しかしながら、分子被覆率を求める方法は、特に分子数が10より大きい場合、分子/nm2の数を過小評価に導いた。本発明の記載において説明される分子被覆率を求めるより正確な方法に従って、このように、ホスホリパーゼA1またはA2活性を求める本発明の方法において最も効果的であるためには、分子被覆率は8から30蛍光リン脂質分子/nmでなければならないと本発明者らは規定した。
【0184】
ヒト血清30μlにスパイクをつけた、5種の異なる量の精製bv−sPLA2(25、33、41、50および66fmol)を、190μlの10mM Tris−HCl pH8.5、0.5%BSA、5mM EGTAおよび100mM NaClに添加した、1%ビーズ懸濁液(分子被覆率91分子/nm)10μlと混合した。355nmで励起した405nmでの蛍光発光を、撹拌装置および30℃に制御したサーモスタットを装備したFluostar Optima蛍光計中で50秒間記録した。53秒で、150mM CaCl2溶液20μlを混合物に添加し、355nmで励起した405nmでの蛍光発光はさらに125秒間記録した。
【0185】
これらのアッセイ中に得られたプログレス曲線の代表的な例を図4に示す。
【0186】
図4に示されるように、bv−sPLA2の量を増やしながら、リン脂質被覆ビーズに添加した後に得られたプログレス曲線は、アッセイが濃度のこの範囲において定量的であることを実証する、より急激な傾きを示す。
【0187】
ヒト血清30μlにスパイクをつけた、精製bv−sPLA2 66fmolを、190μlの10mM Tris−HClpH8.5、0.5%BSA、5mM EGTAおよび100mM NaClに添加した1%ビーズ懸濁液(それぞれ分子被覆率8.4および9.1分子/nm)10μlと混合した。355nmで励起した405nmでの蛍光発光を、撹拌装置および30℃に制御したサーモスタットを装備したFluostar Optima蛍光計で50秒間記録した。53秒で、150mM CaCl2溶液20μlを混合物に添加し、355nmで励起した405nmでの蛍光発光はさらに125秒間記録した。
【0188】
これらのアッセイ中に得られたプログレス曲線の代表的な例は、図5に示す。
【0189】
図5中に示されるように、sPLA2活性(起点での傾きとして本明細書で説明される)は、アッセイにおいて使用される、リン脂質被覆ビーズの分子被覆率によって直接影響を受ける。従って、洗浄を包含する調製方法、分子被覆率の測定、およびアッセイに添加されるリン脂質被覆ビーズの量は、敏感なsPLA2アッセイに対して重要である。
【0190】
3−sPLA2活性アッセイにおけるBSAの影響
1%ビーズ懸濁液10μlを、190μlの10mM Tris−HCl pH8.5、6mM EGTAおよび100mM NaClおよび相異なるBSA濃度(それぞれ1%、0.5%、0.25%、0.1%、0.05%および0.001%)に添加した。355nmで励起した405nmでの蛍光発光を、撹拌装置および30℃に制御したサーモスタットを装備をしたFluostar Optima蛍光計で100秒間記録した。
この分析の蛍光発光平均値の代表的な例を図6に示す。
【0191】
図6に示すように、BSAの濃度は発明の方法の蛍光発光において主要な影響がある。BSAによるリン脂質被覆ビーズ複合体の再編成および/または架橋は、これらの観察について説明することができる。
【0192】
4−本発明の方法の性能特性
【0193】
材料および試薬
β−py−C10−ホスホグリセリン(β−py−C10−PG)はMolecular Probes/Invitrogenから入手した。φ4.15μmポリスチレン微小球体(ビーズ)はMerck/Estaporから購入した。他の全試薬はSigma−Aldrichtから入手した。
【0194】
実験プロトコル
sPLA2活性は本発明の方法に従って測定した。
【0195】
96−ウェルプレートにおいて30℃で緩衝剤(10mM Tris−HCl pH8.5、0.5%BSA、6mM EGTAおよび100mM NaCl)200μlの存在下で、ラテックスビーズ(1%ビーズ懸濁液10μL)に固定させた1−ヘキサデカノイル−2−(1−ピレンデカノイル)−sn−グリセロ−3−ホスホグリセリンに血清試料30μlを添加した。
【0196】
バックグラウンド蛍光発光は、撹拌装置および30℃に制御したサーモスタットを装備したFluostar Optima蛍光計で、355nmで励起した405nmで90秒間記録した。この反応は、CaCl2溶液(55mM)20μlの注入によって開始させ、蛍光計によって自動的に実施した。CaCl2注入後に355nmで励起した405nmでの蛍光発光を90秒間記録した。得られたプログレス曲線は非線形回帰を使用してあてはめた。バックグラウンドレベルの減算の後、1分の最終点を得られたあてはめ曲線式から求めた。標準検量線は、X軸上のsPLA2濃度に対してY軸上の6つのsPLA2較正物質のそれぞれについて得られた1分の最終点をプロットすることにより得られ、次いで、各試料の1分の最終点は標準検量線を使用して標準化した。
【0197】
sPLA2活性は、標準化した蛍光発光値を1分で遊離した生成物の量(nmol)に変換することにより、U/mlとして表される。試料はすべて二重反復で試験した。
【0198】
4.1 アッセイのダイナミックレンジ
アッセイのダイナミックレンジを、既知の量の精製ハチ毒sPLA2(bv−sPLA2)でスパイクをつけたヒト対象からの血漿試料のアッセイから求めた。
【0199】
アッセイの直線性:>0.99(較正範囲にわたって)(二次多項式あてはめ)。線形応答は、sPLA2活性の血漿アッセイにスパイクをつけた連続希釈したbv−sPLA2タンパク質から求めた。
【0200】
アッセイ感度:
最小検出限界は10U/mLである(アッセイの比例領域において確実に測定することができる、bv−sPLA2酵素の最低濃度、すなわち0.025pmolから求めた。)。最大検出限界は、250U/mL(アッセイの比例領域において確実に測定することができる、bv−sPLA2酵素の最高濃度、すなわち0.5pmolから求めた。)である。
【0201】
別のアッセイを、ウシ血清(0.001pmolから167pmol)にスパイクをつけた広範囲の既知の量のbv−sPLA2を使用して実施した。図14Aにおいて示されるように、10U/mLから250−280U/mLの間の線形応答が観察された。全範囲のダイナミック曲線はミカエリス―メンテンモデルを使用して、最もよく適合した(図14B)。このようにこの試験は、本発明の方法において観察された最小検出限界:sPLA2酵素の0.001pmolの測定を可能にした。
【0202】
4.2−アッセイ繰り返し精度(アッセイ内のばらつき)
アッセイ内のばらつきは、同一日に単一ロットの試薬を使用し、同一のアッセイプレートでの10回のアッセイランの較正範囲にわたって分布する、ヒト対象からの8つの血漿試料の%CVから算定した平均%CVによって評価した。
【0203】
表3に示すように、個々のヒト血漿試料のアッセイ内のCVは4.61から13.59%の範囲であり、平均アッセイ内のCVは8.46%であった。
【0204】
【表3】

【0205】
4.3−アッセイ精度(アッセイ間のばらつき)
アッセイ間のばらつき
アッセイ内のばらつきは、アッセイ基質および試薬の2つの相異なるバッチを使用して、相異なる3日に相異なる2つの蛍光光度計で2人の作業者によって実施した、ヒト対象からの8つの血漿試料の%CVから算定した平均%CVによって評価した。(表4参照)。
【0206】
個々のヒト血漿試料の全アッセイ間のCVは1.05から13.08%の範囲で、平均のアッセイ間のCVは5.24%であった。
【0207】
【表4】

【0208】
繰り返し精度検討:
ヒト対象からの1組63個の血漿試料で行った繰り返し精度検討において、ある日に求めた結果を、別の日に実施した2つの連続的な測定からの結果の平均と比較した。
【0209】
試料のsPLA2活性レベルは22.1から213U/mLの範囲であり、繰り返しの間の平均%CVは5.1%であった。
【0210】
線形回帰分析において、相関係数r=0.987(傾き0.973および切片2.1U/mL)であり、第1の測定値は二重反復平均結果と非常に相関があった。
【0211】
4.4−凍結/解凍効果
4つの血漿試料を、4回の凍結/解凍サイクル(−80℃から4℃)各々の後に分析した。
【0212】
表5に示されるように、sPLA2活性値に決定的な傾向は観察されなかった。つまり試料を4回凍結し解凍してもよいことを示す。
【0213】
【表5】

【0214】
4.5−試料安定性検討:
2つの新たに収集したヒト血漿試料を、ベンチ上(室温)および4℃で保管し、1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、72時間および18日後にアッセイした。
【0215】
表6に示されるように、1時間−72時間にわたってsPLA2活性値に決定的な傾向は観察されず、試料がその時間の間非常に安定していることを示した。
【0216】
【表6】

【0217】
4.6−好ましいマトリックス
10人の健常の提供者からの血液試料をドライ、ヘパリン、クエン酸塩およびEDTAの試料採取管に同一の日に収集し、標準手順に従って処理し−80℃で保管した。
【0218】
EDTA血漿および血清に傾向が観察され、利用可能な場合これらの2つの試料採取管が好ましいことを示している(表7)。
【0219】
【表7】

【0220】
4.7−干渉物質
溶血icteriaまたは脂肪血症による可能な干渉を、正常血清試料へのヘモグロビン、ビリルビンおよびトリグリセリドの添加により解析した。
【0221】
トリグリセリドを増やした試料は、23mmol/Lもの高いトリグリセリドに対して干渉を示さなかった(図7参照)。
【0222】
ヘモグロビンの吸収波長は、アッセイで使用する蛍光色素の吸収波長と部分的にオーバーラップする。ヘモグロビンを増やした試料は、ヘモグロビンとの部分的な干渉が2g/Lから始まることを示した(図8参照)。
【0223】
ビリルビンを増やした試料は、500μmol/Lもの高いビリルビン濃度に対して測定可能な干渉を示さなかった(図9参照)。
【0224】
5−本発明の方法および先の公表された方法の間の比較
【0225】
材料および試薬
1−ヘキサデカノイル−2−(1−ピレンデカノイル)−sn−グリセロ−S−ホスホメタノールはMolecular Probes/Invitrogenから入手した。他の全試薬はSigma−Aldrichtから入手した。
【0226】
実験プロトコル
sPLA2活性は下記に公表されたプロトコルに従って測定した。
【0227】
血清試料の30μlを、10mM Tris−HCl pH8.7,0.1%BSA,10mM CaCl2の存在下で1−ヘキサデカノイル−2−(1−ピレンデカノイル)−sn−グリセロ−3−ホスホメタノールリポソーム5mmolに添加した。蛍光発光を、撹拌装置および30℃に制御したサーモスタットを装備したFluostar Optima蛍光計で、355nmで励起して405nmで60秒間記録した。
【0228】
基質の100%加水分解は、0.1Uのハチ毒PLA2を用いて1分間で得られ、1分の反応終了時の蛍光発光の値(Fmax)は、したがって2nmoles/分(Vmax)の活性に対応する。試料(nmol/ml/分で表す)の活性(A)は、式:Vmax.FA=E.Fmaxから与えられる。基質の加水分解が50%を超えたら、試料を希釈する。血漿のない状態において基質の加水分解はネガティブコントロールとして使用し、PLA2活性から演繹される。
【0229】
5.1−特異性
蛍光発光は、10mM Tris−HCl pH8.7、0.1%BSA、10mMCaCl2の存在下で1−ヘキサデカノイル−2−(1−ピレンデカノイル)−sn−グリセロ−3−ホスホメタノールリポソーム5mmolに30μLヒト血清試料を添加した後、355nmで励起して405nmで経時的に記録した。図10に示したように、これらの11のヒト血清試料は、非常に緩慢な初速度が示すようにsPLA2活性をほとんどまたはまったく示さなかった。
【0230】
しかしながら、これらの11のヒト試料のプログレス曲線の最初の数秒間のバックグラウンド蛍光発光は非常に異なり、16000から39000蛍光発光単位の範囲であった。これらのデータは、ヒト血清試料中に存在する未知因子が、ホスホリパーゼ酵素アッセイの基質として使用されるリポソームの構造に非常に影響を及ぼす場合があり、そのため、ホスホリパーゼ活性の測定に影響を及ぼすという、明白な実証である。
【0231】
本発明の方法は、先の公表された方法より特異的である。なぜならば、バックグラウンドのレベルが、
●測定され、蛍光発光シグナルのレベルから減じられる、
●同一反応混合物中で、同一ウェル中で、同一試料の存在下で、バックグラウンドおよびシグナルが測定されるので、よりよく測定される、
●固相へのリン脂質基質の固定化により非常に減少させられる、
からである。
【0232】
5.2−感度および直線性
検出下限は、バックグラウンドの平均+/−3SDと定義され、本発明の方法では10U/mLである。既存の方法の検出下限は、同様に定義(バックグラウンドの平均+/−3SD)され同一単位で表して、200U/mLの範囲にある(データ示さず)。
【0233】
本発明の方法は先の公表された方法よりはるかに敏感である。本発明の方法の感度の増加は、既存の方法と比較して10から20倍である。これは主として、酵素反応が試料の添加によって開始するので、自動注入が、先の公表された方法より10−20秒早く蛍光発光の検出を可能にすることによる。この主要な改善により、初速度がより高速の場合には、反応速度論プログレス曲線の早期時点への到達が可能になる。
【0234】
本発明の方法または公表された方法のどちらかを使用し、bv−sPLA2酵素を増やしながら(試験全体で同一の連続希釈)スパイクをつけた、ヒト血清(試験全体で同一の試料)30μL中のsPLA2活性を求めた。次いで、標準曲線を両方の試験のためにプロットした。図11および12に示すように、公表された方法の直線性は0.03nMのbv−sPLA2までに限られたが、本発明の方法を用いたところ、試験全体のsPLA2範囲内で直線性が観察された。
【0235】
5.3−再現性および繰り返し精度
公表された方法の再現性(アッセイ間のばらつき)および繰り返し精度(アッセイ内のばらつき)は実施例4において使用したものと同様のプロトコルを使用して求めた。
【0236】
個々のヒト血漿試料のアッセイ間のCVは28.3%から32.1%の範囲であり、平均で30.2%のアッセイ間のCVであった。
【0237】
個々のヒト血漿試料のアッセイ内のCVは4.6%から40.9%の範囲であり、平均で25.0%のアッセイ内のCVであった。
【0238】
実施例4.3に示したように、平均のアッセイ間のおよびアッセイ内のばらつきは、それぞれ5.24%および8.46%である。
【0239】
したがって、本発明の方法は、それぞれ6倍および4倍の利得を持ち、先の公表された方法よりはるかに正確でより反復可能である。
【0240】
本発明の方法において、ピペットで移すステップの回数が少なく、反応を自動開始し、プログレス曲線を自動解析することが、先の公表された方法と比較してより良好な再現性および繰り返し精度を説明できる。
【0241】
5.4−Secretory Phospholipase A2 Kit(カタログNo 907−002、Assay Designs,Inc.5777 Hines Drive,Ann Arbor,MI 48108,USA)およびsPLA2 Assay Kit(Cayman Chemical(カタログNo.765001))と本発明の方法の直接比較
これらの2つのアッセイキットは基質としてチオ−エステルリン脂質を使用する比色測定法である。sPLA2酵素はsn−2位でチオエステル結合を加水分解し、遊離のチオールがDTNBを使用して検出される。前記キットの欠点は、
−生物学的試料中の高濃度の遊離チオールによる低い感度および
−遊離チオール汚染物質による不十分なロバストネスである。
【0242】
sPLA2活性は、本発明の方法を使用してまたはSecretory Phospholipase A2 Kit(Assay Design、カタログNo 907−002)およびsPLA2 Assay Kit(Cayman Chemical(カタログNo.765001)を使用して、求めた。
【0243】
sPLA2標準を使用するsPLA2活性の測定の比較
Secretory Phospholipase A2 Kit(Assay Design)をキットに付属する説明書に従って操作した。sPLA2 Assay Kit(Cayman Chemical)をキットに付属する説明書に従って操作した。本発明の方法は上記プロトコルに従って実施した。
【0244】
Assay Design kitで提供される1600U/mL sPLA2標準溶液を、sPLA2活性の独自の起源として使用し、この標準の連続希釈液は3つのアッセイすべてにおいて試験した。
【0245】
Assay Design kitの説明書に従って、提供されるsPLA2標準溶液は、それぞれ20、40、80、160および320倍希釈であった。
【0246】
説明書(Assay Design kit)に従ってキットを操作した後に得られた405nmでの吸光度値および傾き(405nm/分での吸光度値、Cayman kit)を、表10および表11にそれぞれ示す。
【0247】
図16に示すように、吸光度対sPLA2標準希釈を両方の比色測定に対してプロットすると、線形応答が観察された。Assay Design kitの活性単位で表し、両方のアッセイに記載の感度に一致した場合、両方のアッセイの線形範囲は5から80U/mLの間に含まれる。
【0248】
【表8】

【0249】
【表9】

【0250】
本発明の方法の線形範囲にするためには、それぞれ3000、6000、12000、24000および48000倍の正確な同一sPLA2標準を希釈しなければならないが、Assay DesignまたはCayman kit(表12)と比較した場合、本発明の方法は150倍高い感度を示す。
【0251】
【表10】

【0252】
このようにして、本発明者らは、Assay DesignおよびCaymanキットと比較して、本発明の方法が150倍高感度であることを実証した。
【0253】
ヒト試料中のsPLA2活性の測定の比較
本発明の方法の全ダイナミックレンジ(31.6から213.6U/mL)を包含する、既知のsPLA2活性の8つの相異なるヒト血清試料中のsPLA2活性を、本発明の方法またはSecretory Phospholipase A2 Kit(Assay Design)もしくはsPLA2 Assay kit(Cayman)の使用のいずれかを使用して求めた。得られたsPLA2活性値を、以下の表13にリストし、図16に示す。
【0254】
【表11】

【0255】
上の実施例に示すように、またAssay DesignまたはCayman kit法の原理により予想されるように、Assay DesignおよびCaymanからの比色定量キットは全くヒト血清試料中のsPLA2の測定に適しておらず、すべての8つの試験試料は範囲外であった。
【0256】
チオエステル加水分解に基づく競合アッセイは、生物学的試料および環境中の高濃度の遊離チオールにより非常に低い感度および非常に不十分なロバストネスを示す。Assay DesignおよびCaymanアッセイは、精製sPLA2について本発明の方法の100から300分の1の感度である。Assay DesignおよびCaymanアッセイは、これらの試料中の高タンパク質ゆえの高濃度の遊離チオールのために、血清または血漿などの生物学的試料と適合しない。
【0257】
6−本発明の方法による見たところ健常の対象からの試料中のsPLA2活性の測定
本発明者らは、40−59歳の臨床的に関連する年齢層において見たところ健常の男性(n=240)および見たところ健常の女性(n=150)からの合計390の試料において、その年齢、性別および民族性によるsPLA2活性の分布を調査した。
【0258】
参照集団は黒人 n=215、白人 n=108、ヒスパニック n=65、他=2という民族的背景によって表された。
【0259】
sPLA2活性は本発明の方法に従って測定した。
【0260】
96−ウェルプレートにおいて30℃で緩衝剤(10mM Tris−HCl pH8.5、0.5%BSA。6mM EGTAおよび100mM NaCl)200μlの存在下で、ラテックスビーズ(1%ビーズ懸濁液)に固定させた1−ヘキサデカノイル−2−(1−ピレンデカノイル)−sn−グリセロ−3−ホスホグリセリンに血清試料30μlを添加した。
【0261】
バックグラウンド蛍光発光は、撹拌装置および30℃に制御したサーモスタットを装備したFluostar Optima蛍光計で90秒間記録した。反応は、蛍光計によって自動的に実施し、CaCl2溶液(55mM)20μlの注入によって開始した。蛍光発光は90秒間記録し、プログレス曲線は非線形回帰を使用してあてはめた。バックグラウンドレベルの減算の後、1分の最終点は得られたあてはめ曲線式から求めた。標準検量線は、X軸上のsPLA2濃度に対してY軸上の6つのsPLA2較正物質のそれぞれについて得られた1分の最終点をプロットすることにより得られ、次いで、各試料の1分の最終点は標準検量線を使用して標準化した。
【0262】
sPLA2活性は、標準化した蛍光発光値を1分で遊離した生成物の量(nmol)に変換することにより、U/mlとして表される。試料はすべて二重反復で試験した。
【0263】
解析した全集団において、sPLA2活性は10.6から79.9U/mLの範囲であり、幾何平均sPLA2活性は35.1U/mLであり、メジアンは36.9U/mLであった。第95および第99百分位は、それぞれ男性で46.1および52.5であり、女性では61.6および72.4であった。
【0264】
年齢、性別および人種または民族性によるsPLA2活性の百分位分布は表8に示される。解析した母集団中の母集団の年齢で補正した平均sPLA2活性は、表9に示される。
【0265】
試料(中央の90%)から算定された基準範囲は、女性で29.6−54.0U/mLおよび男性で19.6−51.2U/mLであることが見出された。
【0266】
最近公表された調査(参考文献5、6、7および9参照)は、第1三分位(調査集団の下位33%)に対し、第2および第3三分位(調査集団の上位67%)においてsPLA2活性値に関連する心臓血管疾患(CVD)の危険性の増加を示している。したがって、sPLA2に起因するCVDの危険性が有意に増加する個体を識別するためのより保守的な手法は、集団の50番目の百分位値であってもよい。
【0267】
現在のsPLA2活性試験において、この閾値は、女性および男性それぞれについて、39.7U/mLおよび33.5U/mLに対応する。
【0268】
【表12】

【0269】
【表13】

【0270】
男女の累積比分布は図13に示される。
【0271】
参考文献
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11− Lambeau G, GeIb MH. Biochemistry and physiology of mammalian secreted phospholipases A2. Annu Rev Biochem. 2008;77:495−520. Review
12− Kim Y., Lichtenbergova L., Snitko Y, and Cho W. A phospholipase A2 kinetic and binding assay using phiospholipid−coated hydrophobic beads. Analytical biochemistry 1997, 205: 109−116.
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14− Brain A., and McConnell H., Allogeneic stimulation of cytotoxic cells by supported planar membranes. 1984 PNAS 81:6159−6163. 15. Das A, Cilento E, Intracellular surfactant removal from phagocytized minerals. 2000, Inhalation Toxicology 12:765.


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子被覆率が8から30蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質分子/nm2の範囲である蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質で被覆した固相。
【請求項2】
前記基質が、疎水性部分、リン酸部分、および疎水性部分に直接または任意の連結基経由で結合された蛍光性部分を含む、請求項1に記載の固相。
【請求項3】
前記基質がグリセロリン脂質である、請求項1または2に記載の固相。
【請求項4】
前記基質が、sn−1脂肪酸アシル鎖の末端におよび/またはsn−2脂肪酸アシル鎖の末端に標識付けされている、請求項3に記載の固相。
【請求項5】
前記基質がベンゾ(d,e,f)フェナントレンまたは4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセンで標識付けされている、請求項1から4のいずれか一項に記載の固相。
【請求項6】
前記標識基質が、ドナー蛍光団でsn−1脂肪酸鎖に、かつアクセプター蛍光団でsn−2脂肪酸鎖に、または逆に標識付けされている、請求項1から4のいずれか一項に記載の固相。
【請求項7】
前記標識基質が、蛍光団でsn−1脂肪酸鎖に、かつクエンチャーでsn−2脂肪酸鎖に、または逆に標識付けされている、請求項1から4のいずれか一項に記載の固相。
【請求項8】
前記固相が微粒子である、請求項1から7のいずれか一項に記載の固相。
【請求項9】
前記固相がビーズである、請求項1から8のいずれか一項に記載の固相。
【請求項10】
試料中のホスホリパーゼA1またはA2活性を測定する方法であって、
−請求項1から9のいずれか一項に記載の蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質で被覆した固相と前記試料を接触させること、
−時間の関数として蛍光発光を検出すること、
を含む方法。
【請求項11】
キットであって、
−請求項1から9のいずれか一項に記載の蛍光色素標識ホスホリパーゼA1またはA2基質で被覆した標識基質を含む第1の容器、
−緩衝液を含む第2の容器、
を備えるキット。
【請求項12】
対照および/または較正物質をさらに備える、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
請求項9に記載の方法に従って、対象からの試料中のPLA1またはPLA2酵素活性を測定することを含む、PLA1またはPLA2活性関連疾患を有する、または有する危険がある、または発症している対象を識別する方法。
【請求項14】
前記PLA2活性関連疾患が心臓血管疾患および/または心血管系イベントである、請求項13に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2012−517219(P2012−517219A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548729(P2011−548729)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051624
【国際公開番号】WO2010/092068
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(511194382)
【Fターム(参考)】