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試料中の微量物質の分析方法及び分析装置
説明

試料中の微量物質の分析方法及び分析装置

【課題】試料中の極性物質の含有量が極く微量であっても、分子中の炭素数が5個以上である極性化合物を定性あるいは定量することができる試料中の微量物質の分析方法及び分析装置を提供する。
【解決手段】試料中の微量物質の分析方法において、前記微量物質は、分子中に炭素を5個以上有する極性化合物であって、前記試料中の前記微量物質を抽出した抽出液を、エレクトロスプレーイオン化法にて定性または定量することを特徴とする試料中の微量物質の分析方法である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は試料中の微量物質の分析方法及び分析装置に関し、詳しくは分子中の炭素数が5個以上である極性化合物を、定性あるいは定量する試料中の微量物質の分析方法及び分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、試料中に微量含まれている高級脂肪酸、高級アルコール、高級アミン等、分子中の炭素数が5個以上である極性化合物を、定性あるいは定量する分析方法としては、ガスクロマトグラフィーが一般的に汎用されている。更に高感度に分析するためには、このような極性物質を誘導体化した後に、同様にガスクロマトグラフィーにより分析する方法が知られている。
【0003】しかしながら、前記極性物質の試料中の含有量が1ppm以下の極く微量になると、誘導体化した後のガスクロマトグラフィーによる分析方法では、必ずしも満足いく感度が得られない。
【0004】本発明者らは、分子中の炭素数が5個以上である極性化合物を定性あるいは定量する分析方法について鋭意研究を続けた結果、前記極性化合物を誘導体化せず、抽出液をそのままエレクトロスプレーイオン化法よる液体クロマトグラフ質量分析装置にて定性または定量したところ誘導体化した後のガスクロマトグラフィーによる分析法に比べてより高感度な結果が得られることを見出した。
【0005】さらに、前記極性化合物が含有されている試料の主体が、ポリエチレン等の熱溶融性ポリマーである場合には、試料ごと高沸点溶媒で溶融し、冷却して前記熱溶融性ポリマーのみ沈殿させ、除去し、前記極性化合物の抽出液を得る前処理を行うことにより、ソックスレー抽出等のような通常溶媒(クロロホルム等)での前処理を行った場合と比較して、回収率が向上し、より精度の高い定量が可能であることがわかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、試料中の極性物質の含有量が極く微量であっても、分子中の炭素数が5個以上である極性化合物を定性あるいは定量することができる試料中の微量物質の分析方法及び分析装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の上記課題は下記構成によって達成される。
【0008】1.試料中の微量物質の分析方法において、前記微量物質は、分子中に炭素を5個以上有する極性化合物であって、前記試料中の前記微量物質を抽出した抽出液を、エレクトロスプレーイオン化法にて定性または定量することを特徴とする試料中の微量物質の分析方法。
【0009】2.試料中の微量物質の分析方法において、前記試料は、熱溶融性ポリマーを主体として前記微量物質を含有するものであり、前記微量物質は、分子中に炭素を5個以上有する極性化合物であって、前記試料を高沸点溶媒とともに加熱して溶解し、前記溶解した後に、冷却して前記熱溶融性ポリマーを沈殿させ、前記沈殿した熱溶融性ポリマーを除去して前記微量物質を抽出した抽出液とし、前記抽出液をエレクトロスプレーイオン化法にて定性または定量することを特徴とする試料中の微量物質の分析方法。
【0010】3.前記微量物質の分子中の炭素数が8個以上であることを特徴とする上記1又は2に記載の試料中の微量物質の分析方法。
【0011】4.前記微量物質が、高級脂肪酸、高級アルコールまたは高級アミンであることを特徴とする上記1又は2に記載の試料中の微量物質の分析方法。
【0012】5.前記熱溶融性ポリマーがポリエチレンであることを特徴とする上記2〜4のいずれかに記載の試料中の微量物質の分析方法。
【0013】6.前記高沸点溶媒が、トルエン、キシレン、クロロベンゼンまたはデカヒドロナフタレンであることを特徴とする上記2〜5のいずれかに記載の試料中の微量物質の分析方法。
【0014】7.前記試料中の微量物質の含有量が、1ppm以下であることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の試料中の微量物質の分析方法。
【0015】8.前記試料中の微量物質の含有量が、0.1ppm以下であることを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載の試料中の微量物質の分析方法。
【0016】9.試料中の微量物質の分析装置において、分子中に炭素を5個以上有する極性化合物を試料中から抽出する抽出装置と、抽出した抽出液をエレクトロスプレーイオン法にて定性又は定量するエレクトロスプレーイオン化法による液体クロマトグラフ質量分析装置とを有することを特徴とする試料中の微量物質の分析装置。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の詳細について説明する。
【0018】本発明の分析方法及び分析装置において、定性あるいは定量する試料とは、分子中の炭素数が5個以上、好ましくは8個以上である極性化合物である。また、試料中の含有量は、好ましくは1ppm以下、より好ましくは0.1ppm以下である。
【0019】該炭素数5個以上(好ましくは8個以上)の極性化合物としては、好ましくは、高級脂肪酸、高級アルコール、高級アミンが挙げられ、夫々下記により好ましい例を挙げる。
【0020】高級脂肪酸のより好ましい例としては、カプロン酸、カプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリストレイン酸、ミリスチン酸、ペンタデシ酸、パルミトレイン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、リノレン酸、リノール酸、オレイン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、エルカ酸等が挙げられる。
【0021】高級アルコールのより好ましい例としては、ヘキサノール、ヘキサンジオール、ヘプタノール、オクタノール、オクタンジオール、ノナノール、デカノール、デカンジオール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、エイコサノール等が挙げられる。
【0022】高級アミンのより好ましい例としては、ヘキシルアミン、ヘキサンジアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、オクタンジアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン等が挙げられる。
【0023】また、本発明において試料とは、液体、固体のすべての形態をとるものであり、抽出液とは、上記微量化合物が含有されている液体試料そのもの、及び固体試料から抽出、溶出、溶融等の前処理を行うことにより得られた液である。
【0024】試料の主体とは、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリエーテル、等の有機系のポリマーであり、好ましくは熱溶融性ポリマーであり、さらに好ましくはポリエチレンである。
【0025】熱溶融性ポリマーと高沸点溶媒の組み合わせとして好ましいものは、ポリエチレンとキシレン、ポリプロピレンとメシチレン、ポリエーテルスルホンとクロルベンゼン等であるが、この組み合わせに限定はされない。
【0026】本発明に用いられるエレクトロスプレーイオン化法は、質量分析計におけるひとつのイオン化手段であり、その特徴としては大気圧にて試料を霧化し、高電界をかけることにより正負イオンに分離することである。イオン性化合物、高極性化合物、生体高分子等を高感度にイオン化することが可能である。この技術は、上野民夫・平山和夫・原田健・編「バイオロジカルマススペクトロメトリー」(東京化学同人、1997)、分析化学(1997)、46(6)、421−428 Anal,Chem.(2001),73(13),3028−3034第15回シクロデキストリンシンポジウム講演要旨集、(1997),35−36等に記載があり、本発明ではこれらの技術を採用すればよい。
【0027】前記試料を高沸点溶媒とともに加熱して溶解する際の溶媒量としては、試料の5〜20倍程度であり、好ましくは10倍である。溶融または溶解する時間については10分〜60分程度であり、好ましくは30分である。
【0028】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。下記する装置を用い、下記する各条件にて実験を行った。
【0029】(装置)
液体クロマトグラフ装置:ヒューレッド・パッカード社製(HP1100)
エレクトロスプレーイオン化質量分析装置:サーモクエスト社製(LCQ)
【0030】(液体クロマトグラフ条件)
カラム:GLサイエンス社製ODS−2(長さ150mm、内径4.6mm)
流速:1ml/min.
溶離液:A:0.1M酢酸バッファーB:メタノール グラジェント: 0分 10分 20分 A 10% 0% 0% B 90% 100% 100%
【0031】
(エレクトロスプレーイオン化条件)
Sheath Gas Flow Rate 80arb Aux Gas Flow Rate 20arb Spry Voltage 4.5kV Capilary Temp 280℃ Capilary Voltage −40V Tube Lens Offset −50V
【0032】(装置)ガスクロマトグラフ装置:ヒューレッド・パッカード社製(HP5890)
【0033】(ガスクログラフ条件)
カラム:ヒューレッド・パッカード社製 HP−1(長さ25m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)
キャリアーガス:He 80kPaスプリット比:1/20ガスクロマトグラフィー検出器:FIDインジェクション温度:250℃検出器温度:280℃オーブン温度:200℃から5℃/分で昇温して、250℃にて10分保持する。
【0034】実施例1キシレン10mlにステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸を約0.1ppmになるように溶出させ、1mlの溶離液を加えメタノールにて20mlにメスアップする。この試料を上記液体クロマトグラフィーエレクトロスプレーイオン化質量分析装置と測定条件とを使用して、各脂肪酸の分析を行った。
【0035】液体クロマトグラフィーエレクトロスプレーイオン化質量分析にて得られたクロマトグラムを図1に示す。図1から各脂肪酸が検出されていることがわかる。
【0036】比較例1キシレン10mlにステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸を約0.1ppmになるように溶出させ、メタノールにて20mlにメスアップする。この試料を上記ガスクロマトグラフ装置と測定条件とを使用して、各脂肪酸の分析を行った。
【0037】ガスクロマトグラフ装置にて得られたクロマトグラムを図2に示す。図2から各脂肪酸が検出されていないことがわかる。
【0038】実施例2ポリエチレン(京葉PE社製G1900)を約1g精秤し、キシレン10mlを入れ30分リフラックスする。この溶液を冷却することでポリエチレンを析出させ、上澄みをろ過し、メタノールにて洗浄を行い、得られたろ液を濃縮する。濃縮液に1mlのクロロホルムと溶離液Aを加えメタノールにて20mlにメスアップする。この試料を上記液体クロマトグラフィーエレクトロスプレーイオン化質量分析装置と測定条件とを使用して、ポリエチレン中の脂肪酸の分析を行った。
【0039】液体クロマトグラフィーエレクトロスプレーイオン化質量分析にて得られたクロマトグラムを図3に示す。図3からポリエチレン中に添加されているオレイン酸等が検出されていることがわかる。
【0040】比較例2ポリエチレン(京葉PE社製G1900)を約1g精秤し、クロロホルム150mlにてソックスレー抽出を2時間行い抽出後のソックスレー管をメタノールにて洗浄を行い、得られた抽出および洗浄液を濃縮する。濃縮液に14%BF3/メタノール液を3ml加え、100℃にて5分間加熱し、石油エーテル/蒸留水を加え分液し油層成分を濃縮しメタノールにて20mlにメスアップする。この試料を上記ガスクロマトグラフ分析装置と測定条件とを使用して、ポリエチレン中の脂肪酸の分析を行った。
【0041】ガスクロマトグラフ装置にて得られたクロマトグラムを図4に示す。図4からポリエチレン中に添加されているオレイン酸等の検出感度が悪いことがわかる。
【0042】実施例3分析の繰り返し制度を確認するため、実施例2と同一の操作を6回行った。その定量結果(ポリエチレン中の脂肪酸の定量値およびCV値)を下記に示す。
【0043】
オレイン酸/ppm ステアリン酸/ppm ベヘン酸/ppm n=1 0.56 0.64 0.64 n=2 0.64 0.58 0.61 n=3 0.75 0.62 0.52 n=4 0.66 0.55 0.72 n=5 0.72 0.71 0.59 n=6 0.69 0.68 0.65 平均 0.67 0.63 0.62 CV値 9.9 9.5 8.4
【0044】上記結果より、CV値(各定量値の標準偏差×100/各定量値の平均値)が10以下であり定量可能なレベルである。
【0045】比較例3ポリエチレン(京葉PE社製G1900)を約1g精秤し、クロロホルム150mlにてソックスレー抽出を2時間行い抽出後のソックスレー管をメタノールにて洗浄を行い、得られた抽出および洗浄液を濃縮する。濃縮液に1mlのクロロホルムと溶離液Aを加えメタノールにて20mlにメスアップする。この試料を上記液体クロマトグラフィーエレクトロスプレーイオン化質量分析装置と測定条件とを使用して、ポリエチレン中の脂肪酸の分析を行った。
【0046】液体クロマトグラフィーエレクトロスプレーイオン化質量分析にて得られたクロマトグラムを図5に、ポリエチレン中の脂肪酸の定量値を下記に示す。図5R>5及び下記結果と、実施例3の定量値とを比較すると明らかなように、各添加剤の回収率が低い。
【0047】
オレイン酸/ppm ステアリン酸/ppm ベヘン酸/ppm n=1 0.02 0.04 0.04 n=2 0.03 0.03 0.05
【0048】
【発明の効果】本発明によれば、試料中の極性物質の含有量が極く微量であっても、分子中の炭素数が5個以上である極性化合物を定性あるいは定量することができる試料中の微量物質の分析方法及び分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】脂肪酸の液体クロマトグラフィーエレクトロスプレーイオン化質量分析にて得られたクロマトグラム
【図2】脂肪酸のガスクロマトグラフィー分析にて得られたクロマトグラム
【図3】溶融再沈法による脂肪酸分析により得られた、液体クロマトグラフィーエレクトロスプレーイオン化質量分析のクロマトグラム
【図4】溶融再沈法による脂肪酸分析により得られた、ガスクロマトグラフィー分析のクロマトグラム
【図5】ソックスレー抽出法による脂肪酸分析により得られた、液体クロマトグラフィーエレクトロスプレーイオン化質量分析のクロマトグラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】試料中の微量物質の分析方法において、前記微量物質は、分子中に炭素を5個以上有する極性化合物であって、前記試料中の前記微量物質を抽出した抽出液を、エレクトロスプレーイオン化法にて定性または定量することを特徴とする試料中の微量物質の分析方法。
【請求項2】試料中の微量物質の分析方法において、前記試料は、熱溶融性ポリマーを主体として前記微量物質を含有するものであり、前記微量物質は、分子中に炭素を5個以上有する極性化合物であって、前記試料を高沸点溶媒とともに加熱して溶解し、前記溶解した後に、冷却して前記熱溶融性ポリマーを沈殿させ、前記沈殿した熱溶融性ポリマーを除去して前記微量物質を抽出した抽出液とし、前記抽出液をエレクトロスプレーイオン化法にて定性または定量することを特徴とする試料中の微量物質の分析方法。
【請求項3】前記微量物質の分子中の炭素数が8個以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の試料中の微量物質の分析方法。
【請求項4】前記微量物質が、高級脂肪酸、高級アルコールまたは高級アミンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の試料中の微量物質の分析方法。
【請求項5】前記熱溶融性ポリマーがポリエチレンであることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の試料中の微量物質の分析方法。
【請求項6】前記高沸点溶媒が、トルエン、キシレン、クロロベンゼンまたはデカヒドロナフタレンであることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の試料中の微量物質の分析方法。
【請求項7】前記試料中の微量物質の含有量が、1ppm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の試料中の微量物質の分析方法。
【請求項8】前記試料中の微量物質の含有量が、0.1ppm以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の試料中の微量物質の分析方法。
【請求項9】試料中の微量物質の分析装置において、分子中に炭素を5個以上有する極性化合物を試料中から抽出する抽出装置と、抽出した抽出液をエレクトロスプレーイオン法にて定性又は定量するエレクトロスプレーイオン化法による液体クロマトグラフ質量分析装置とを有することを特徴とする試料中の微量物質の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2003−121415(P2003−121415A)
【公開日】平成15年4月23日(2003.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−312073(P2001−312073)
【出願日】平成13年10月10日(2001.10.10)
【出願人】(000001270)コニカ株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】