説明

試料作製のための装置及び方法

【課題】試料交換回数を減らし装置の稼動率を向上することで、試料作製の経済性を向上したイオンビームエッチング装置を実現する。
【解決手段】試料テーブル100は、試料104を取りつける受容機構106とマスク105及び、少なくとも1つの位置決めユニット101、102、103を備えている。試料104はマスク105に対して相対的に位置決め可能である。試料テーブル100は、1つの試料104がイオンビームにさらされている間、残りの位置決めユニット101、102、103がイオンビームから回避される様に配置し、回転機構により試料104を順次エッチング加工する事ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の記載)
本出願は、2011年2月9日出願のオーストリア特許出願第A168/2011号の優先権主張に基づくものであり、同出願の全記載内容は引用をもって本明細書に組み込み記載されているものとする。
【0002】
本発明は、イオンビームエッチング装置内の試料(サンプル)を処理(加工)するための試料テーブルに関するものであり、該試料テーブルは、受容機構とマスクを有する少なくとも1つの位置決めユニットを備えており、この際、前記受容機構内には、イオンビームエッチング過程中に該試料テーブルの方向へ配向されているイオンビームに関して試料が取り付け可能であり、更に前記試料は、該試料の位置について前記マスクに対して相対的に位置決め可能である。
【0003】
更に本発明は、イオンビームエッチング装置内の試料作製のための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
(背景技術とその分析)
イオンビームエッチングは、試料作製(試料調整)のために頻繁に使用される方法であり、それらの試料の構造が典型的には引き続き走査型電子顕微鏡(REM)並びに透過型電子顕微鏡(TEM)において検査される。特にこの技術は、半導体や金属やセラミックスやプラスチックなどの多岐にわたる、研究、材料研究、並びに品質管理において使用される。当該方法を実行するために試料は、イオンビームエッチング装置の試料テーブル上に取り付けられ、1つの又は複数のイオンビームのビーム路内において調節される。イオンビームエッチング装置は、典型的には10−6mbarの基準圧力で作動する高真空装置である。イオンとしては、多くの場合はアルゴンイオンが通常は1〜10kVの加速電圧で使用される。この際、電子顕微鏡内の画像解像度の品質は、基本的に作製試料の品質の良さに依存する。特に周知のイオンビームエッチング法のもとには、実際には特にイオンビームスロープ(斜切)エッチング(Ionenstrahlboeschungsaetzen)、REM試料のイオン研磨(Ionenpolieren)、ワイヤ(プロフィル)カッティング法(Drahtabschattungsverfahren)、並びにTEM標準試料のイオンビーム作製がある。最後の2つの方法がTEM試料のために使用されるのに対し、イオンビームスロープエッチングはREM横断面試料を製造するするために使用される。スロープエッチングでは、試料の側面(Profile)がイオンビームを用いて露出され、この際、試料の領域は、試料の表面上に配置された又は試料の表面に対して調節されたマスク(Maske)により、イオンビームによる材料切除から保護されている。イオンビームスロープエッチング法は、高品質のREM試料の製造において特に効果的であると証明されており、この方法では、少なくとも2つのイオンビーム、好ましくは3つのイオンビームが互いに所定角度のもと試料表面へと案内される。この方法は、特許文献1において開示されている。
【0005】
従来技術から公知の或いは目下市場に存在するイオンビームエッチング装置は、各エッチング過程後に手動の試料交換が必要であるという短所をもつ。多くの場合、試料交換は、真空室(真空チャンバ)の換気と開放、並びに真空の新たな設定を要求する。スルース(通過機構)を用いて動作するイオンビームエッチング装置では、各試料交換時に試料の送り出しと送り入れが必要である。この所謂スルース過程は、同様に装置領域の換気とエア抜きを要求する。この種の試料交換には時間がかかり、装置のフル稼動能力(Auslastung)を減少させ、試料のスループットを減少させ、従って試料作製の経済性を減少させることになる。またこの種の装置を、利用者よる手動の試料交換が必要とされることなく、比較的長時間にわたって連続的に(例えば一晩中)フル稼働させることは不可能である。それに加え、各試料交換は、換気が原因で空気粒子による汚染の可能性をもち、それにより装置点検が比較的短い期間で必要となる。
【0006】
特許文献2には、薄層のエッチングのための試料把持器が記載されており、該試料把持器では、回転円板上の複数の試料が選択的にイオンビーム内へと位置決めされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO 2008/106815 A2
【特許文献2】DE 2 313 096 A1
【0008】
尚、上記特許文献1、2の全開示内容はそれらの引用をもって本書に組込み記載されているものとする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、背景技術から公知である上記短所を排除することである。特に本発明により、装置のフル稼動能力が改善され、従って試料作製の経済性が向上され、そして試料交換の回数ができるだけ少なく抑えられるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の視点により、イオンビームエッチング装置内の試料を処理するための試料テーブルであって、該試料テーブルは、少なくとも2つの位置決めユニットを備えた交換テーブルとして設けられており、前記位置決めユニットは、各々につき受容機構とマスクを有し、前記受容機構内には、イオンビームエッチング過程中に該試料テーブルの方向へ配向されているイオンビームに関して試料が取り付け可能であり、前記試料は、該試料の位置について前記マスクに対して相対的に位置決め可能であり、該試料テーブルは、該試料テーブル上の前記位置決めユニットの各々が前記イオンビームエッチング装置のイオンビームに対して配向可能である位置決め位置の間において交換を可能とする機構を有し、1つの前記位置決めユニット内の前記試料が前記イオンビームにさらされており、それに対して各々の残りの前記位置決めユニットは前記イオンビームから回避されている、との形式を有する前記試料テーブルにおいて、前記位置決めユニットは、共通の真空チャンバ内に配置されており、少なくとも、前記イオンビームエッチング装置の前記イオンビームに対して配向されている1つの前記位置決めユニットと、前記イオンビームから回避されている各々の残りの前記位置決めユニットとの間には、少なくとも1つの保護用分離部が配設されていることを特徴とする試料テーブルが提供される。
【0011】
本発明の第2の視点により、上記試料テーブルを含んで構成されることを特徴とする試料テーブルフランジが提供される。
【0012】
本発明の第3の視点により、イオンビームエッチング装置内の少なくとも2つの試料を順次的に作製するための方法であって、
以下のステップ、即ち、
(a)上記試料テーブルの少なくとも2つの位置決めユニットに試料を固定し、これらの各々の位置決めユニットにおいて前記試料を手動で調節するステップと、
(b)真空チャンバ内に前記試料テーブルを配置するステップと、
(c)前記試料テーブルの移動によりイオンビームに対して前記位置決めユニットの1つを配向し、この際、この位置決めユニット内の試料は前記イオンビームにさらされ、それに対して各々の残りの前記位置決めユニットは前記イオンビームから回避されており、そしてイオンビームエッチングを用い、前記イオンビームにさらされている前記試料を処理するステップと、
(d)前記試料テーブルの移動により位置決め位置を交換し、前記イオンビームに対して次の前記位置決めユニットを配向し、そしてイオンビームエッチングを用いて前記試料を作製するステップと、
(e)ステップ(c)及び(d)を、イオンビームエッチングを用いて全ての試料が作製されるに至るまで繰り返すステップと、
(f)必要に応じてステップ(c)から(e)を繰り返すステップとを含むこと
を特徴とする方法が提供される。
【0013】
つまり上記課題は、本発明に従い、試料テーブルが、交換テーブルとして設けられており、少なくとも2つの位置決めユニットと、該試料テーブル上の前記位置決めユニットの各々がイオンビームエッチング装置のイオンビームに対して配向(位置合わせ)可能である位置決め位置の間において交換を可能とする機構とを有すること、1つの前記位置決めユニット内の試料が前記イオンビームにさらされており、それに対して各々の残りの前記位置決めユニットは前記イオンビームから回避されていること、前記位置決めユニットは共通の容器(真空チャンバ)内に配置されていること、及び、少なくとも、前記イオンビームエッチング装置の前記イオンビームに対して配向されている1つの前記位置決めユニットと、前記イオンビームから回避されている各々の残りの前記位置決めユニットとの間には、少なくとも1つの保護用分離部が配設されていることにより解決される。
【発明の効果】
【0014】
本発明に従い、共通の容器(真空チャンバ Rezipient)内に複数の位置決めユニットを配置することにより、例えば真空室である装置領域の換気及び開放が、実行された各試料作製の後には、もはや不必要である。前記装置領域の換気及び開放は、全ての試料がイオンビームエッチングを用いて完全に作製された後に初めて実行することができる。複数の位置決めユニットが共通の容器(真空チャンバ)内に配置されているので、これらの位置決めユニット上に取り付けられた試料は、真空チャンバ内の真空状態を中断することなく相前後して連続的に作製することができる。未使用時間も著しく減少されるが、その理由は、利用者による試料交換のための手動介入が必要とされることなく、イオンビームエッチング装置のフル稼動が比較的長い時間(例えば一晩中)にわたって可能なためである。
【0015】
従って、上記課題に対応する効果、即ち、装置のフル稼動能力が改善され、従って試料作製の経済性が向上され、そして試料交換の回数ができるだけ少なく抑えられるという顕著な効果が得られている。
【0016】
本明細書に添付の図面の簡単な説明は、以下のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】垂直方向の回転軸線と全部で3つの位置決めユニットを有する、本発明に従う回転可能な試料テーブルの第1実施形態の斜視図である。
【図2】図1による試料テーブルが配設された試料テーブルフランジの斜視図である。
【図3】図2による試料テーブルフランジが取り付けられた開放状態のイオンビームエッチング装置の側面図であり、図3において試料テーブルフランジは、90°傾動された第1調節位置にある。
【図4】図3によるイオンビームエッチング装置を示す図であるが、図4において試料テーブルフランジは第2調節位置へと旋回されている。
【図5】図3及び図4によるイオンビームエッチング装置における閉鎖状態の真空室の断面図であり、図5において試料テーブルフランジは稼動位置にある。
【図6】垂直方向の回転軸線と多数の位置決めユニットを有する、本発明に従う回転可能な試料テーブルの第2実施形態の俯瞰図である。
【図7】水平方向の回転軸線と多数の位置決めユニットを有する、本発明に従う回転可能な試料テーブルの第3実施形態の側面図である。
【図8】水平方向の回転軸線と多数の位置決めユニットを有する、本発明に従う回転可能な試料テーブルの第4実施形態の側面図である。
【図9】スライドレールの形式の、本発明に従う試料テーブルの第5実施形態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態の概要について説明する。
【0019】
試料テーブルは、好ましくはフランジハウジング内に取り付けられ、該フランジハウジングは、イオンビームエッチング装置の真空室(真空チャンバ)に真空気密状態で接続することができる。位置決めユニットの位置決め位置(Positionierungen)の交換により試料は、好ましくは順次的(Sequentiell)にイオンビームにさらすことができる。1つの試料がイオンビームにさらされており且つ作製される間(処理位置)、各々の残りの試料はイオンビームから回避されている(待機位置)。試料の作製完了後に、作製されたこの試料は、処理位置から待機位置へと交換(位置決め位置の交換)され、先にイオンビームから回避されており且つまだ作製すべき試料が待機位置から処理位置へと交換される。
【0020】
イオンビームエッチングを用いた試料作製は、好ましくは順次的に行われる。また、装置領域(真空室)の換気及び開放を含んでいる手動の試料交換を必要とすることなく、1回目の作製処理手順サイクル(作製プロシージャ)による各試料の第1作製過程後に、全ての又は選択された試料の2回目の又は更なる作製処理手順サイクルを実行することが可能である。例えば、熱に対して敏感な(即ち熱に弱い)試料を処理する場合には、多くの場合、試料を損傷させないためにイオンビームエッチング中に休みを入れる必要性がある。従って本発明により、熱に対して敏感な試料は、休みを入れるために待機位置へと交換され、引き続き、2回目の又は更なる作製処理手順サイクルにより完全に作製することができる。所定の適用においては、待機位置にある熱に対して敏感な試料を冷却することが必要でありえる。イオンビームエッチング装置用の冷却装置は、当業者にとって周知である。また所定の試料においては、通常は高エネルギーのイオンビームを用いて実行されるイオンビームエッチング過程に続き、試料を更に短時間の間、より低いエネルギーのイオンビームを用いて処理(加工)することも必要でありえる。より低いエネルギーのイオンビームを用いたこの処理により、先に露出された試料表面の洗浄効果が得られる。本発明により、多数の試料を任意の順番で異なった作製パラメータを用いて処理する可能性が得られている。
【0021】
試料テーブルは、少なくとも2つの位置決めユニット、好ましくは少なくとも3つの又はそれ以上の位置決めユニットを含んでいる。試料テーブルがより多くの位置決めユニットを有するほど、イオンビームエッチング装置のフル稼働能力はより高くなる。例えば10個までの位置決めユニットを有する試料テーブルは有利であるが、その理由は、それによりイオンビームエッチング装置のフル稼動能力を高くでき、それにもかかわらず試料テーブルはコンパクトなサイズ(handliche Demension)を有し、更には例えばイオン源のために必要な整備期間を維持することができるためである。しかしこのことは、試料テーブルが10個より多い位置決めユニットを含んでもよいことを除外するわけではない。
【0022】
好ましい実施形態において、試料テーブルは、1つの回転軸線の周りで回転可能な回転ディスクを含んでおり、この際、複数の位置決めユニットは、好ましくは同じ角度で互いにずらされて回転可能な該回転ディスク上に配設されており、これらの位置決めユニットは、該回転ディスクの回転により好ましくは順次的にイオンビームに対して配向(位置合わせ)可能である。従って回転ディスクの回転により位置決めユニットは、これらの位置決めユニットに固定されている試料と共に処理位置へと或いは待機位置へと交換される。この実施形態は、特にコンパクトな構成をもち、それに加え、多数の位置決めユニットを省スペースで試料テーブル上に格納できるという長所をもっている。水平型回転テーブル或いは試料ルーレット(Probenkarussel)の形式による第1下位変形例において回転ディスクの回転軸線は、実質的に垂直方向(鉛直方向)に配向されている。垂直型回転テーブルの形式による第2下位変形例において回転ディスクの回転軸線は実質的に水平方向に配向されている。
【0023】
本発明に従う試料テーブルの他の有利な実施形態では、試料テーブルが、縦長に形成された可動式の支持台(Auflage)を含んでおり、この際、複数の位置決めユニットは、長手方向(縦方向)において好ましくは規則的な間隔をもって縦長の支持台上に配設されており、これらの位置決めユニットは、長手方向における支持台の移動により順次的にイオンビームに対して配向可能である。
【0024】
有利な下位変形例では、複数の位置決めユニットが固定されているスライドレールとして支持台が形成されている。
【0025】
イオンビームに対し、照射位置にあるその都度の位置決めユニットの正確で且つ目標に合わせた位置決めを可能とするために、試料テーブルは、回転ディスクの回転のために或いは縦長の支持台の移動のために、制御可能な駆動部を有する。この駆動部の制御は、周知の方式による制御機構或いは制御機能を介して行われる。この駆動部は、真空室の外側又は内側に配設することができる。有利な変形例においてこの駆動部は制御可能な歯車駆動部であり、その機能方式は当該分野に関連する当業者には良く知られている。例えば、回転ディスクの回転のためには駆動部の駆動歯車が、回転ディスクの外側縁部に設けられた歯部と噛合する。上記支持台の長手方向(縦方向)の移動のためには駆動部の駆動歯車が、例えば、長手方向において支持台に沿って延在する歯部と噛合する。別の変形例において駆動部は、直接的に回転ディスクの駆動軸に係合することもできる。また、回転ディスクを、真空に適した歯付きベルトを用いて動かすことも可能である。真空に適した歯付きベルトは従来技術から周知である。
【0026】
イオンビームエッチング法の実行中には、イオンビームを用いることにより、処理位置にある試料から連続的に材料が切除(abtragen)される。この際、これらの材料粒子が待機位置にある試料に当たり或いは積もり、結果的にこれらの試料を汚染する危険性があり、その際にはこれらの試料の品質を低下させることになる。従って、イオンビームから回避されている位置決めユニットをそのような汚染から保護するために、本発明に従い上述のように位置決めユニットの間に保護用分離部が配設されていることは大きな長所である。保護用分離部の材料の性質に関しては、保護用分離部が、真空に適しており且つ容易に洗浄できる材料から製造されていることが重要である。真空に適したこの種の材料は、当該分野に関連する当業者には良く知られている。保護用分離部もイオンビームエッチング過程中には少なくとも部分的にイオンビームにさらされているので、摩滅(Abnutzung)を減少するために、極めて低いエッチング速度(Aetzrate)を有する材料とすべきである。実際には、硬金属(ハードメタル)、特に鋼材(スチール)が特に有利であると証明されている。
【0027】
第1変形例において保護用分離部は、永続的に試料テーブル上に配設されている。保護用分離部は、好ましくは、試料テーブルと溶接結合されている、又はネジ結合機構又はその他の固定機構により永続的に試料テーブルと結合されている。
【0028】
別の変形例において保護用分離部は、位置決め可能に配設されている。位置決め可能な保護用分離部の第1下位変形例において保護用分離部は、バネ機構を用いて開閉可能である、折り畳み可能な又は旋回可能な又は摺動可能なカバー(Abdeckung)を含んでいる。カバーとしては、例えば、カバーの摺動又は旋回又は折り畳みにより、又はベローズ(Faltenbalg)の形式のカバーの押しつぶしにより開口部が開放され、該開口部を通して位置決めユニットの交換を可能とするカバーとして理解される。前記バネ機構は、試料テーブルの移動により、例えば、移動する位置決めユニットによるか又はレバーを用いて作動することができ、それによりカバーが開口部を開放する。次の位置決めユニットが処理位置へと交換されると直ぐに、バネ力によりカバーが再び閉鎖する。
【0029】
位置決め可能な保護用分離部の第2変形例において保護用分離部は、真空に適しており且つ実質的に垂直方向に延在してオーバーラップする薄片(Lamellen)、又は薄片カーテンの形式の帯材(Baender)を有する被覆部材を有するカバーを含んでいる。位置決めユニットの位置決め位置の交換時には、これらの位置決めユニットが保護用分離部のカバーの薄片を通過することができる。
【0030】
位置決め可能な保護用分離部の第3変形例において保護用分離部は、開閉用の固有の駆動部が付設されている、少なくとも1つの折り畳み可能な又は旋回可能な又は摺動可能なカバーを含んでいる。カバーとしては、上記の変形例のように、カバーの摺動又は旋回又は折り畳みにより、又はベローズの形式のカバーの押しつぶしにより開口部が開放され、該開口部を通して位置決めユニットの交換を可能とするカバーとして理解される。ところで、バネ機構を備えた上記変形例と比べ、この変形例の短所は、より多くの制御技術的な手間が必要になるということであるが、その理由は、カバーの開閉が位置決めユニットの交換と時間的に同期して行われなくてはならないためである。
【0031】
簡単に行うことのできる実現化として各位置決めユニットは、各々隣接する位置決めユニットから1つの保護用分離部により分離されている。この際には目的に適うよう、保護用分離部が永続的に試料テーブル上に配設されている変形例が使用される。
【0032】
本発明に従う試料テーブルの特殊な実施形態は、正に3つの位置決めユニットを設けることにあり、これらの位置決めユニットは、回転ディスク上で互いに120°の角度をおいて配設されており、この際、これらの3つの位置決めユニットの間には、各々、回転ディスクに対して垂直(normal)に配設され且つ回転軸線に対して半径方向に延在する保護用分離部が配設されている。
【0033】
本発明に従う試料テーブルは、好ましくは、真空フランジ部材(Vakuumflansch)として構成されているフランジハウジング内に配設されている。この際、試料テーブルが(内部に)配設されたフランジハウジングは「試料テーブルフランジ」とも称される。この試料テーブルフランジは、イオンビームエッチング装置の真空室(バキュームチャンバ)にフランジ結合される。従って本発明は、本発明に従う試料テーブルを上述のように含んでいる試料テーブルフランジにも関するものである。
【0034】
更に本発明は、本発明に従う試料テーブルが使用されるイオンビームエッチング装置内の少なくとも2つの試料を順次的に作製(調整)するための方法に関するものでもある。
【0035】
本発明に従う方法は、少なくとも、以下のステップを含んでいる:
(a)本発明に従う試料テーブルの少なくとも2つの位置決めユニットに試料を固定し、これらの各々の位置決めユニットにおいて前記試料を手動で調節するステップと、
(b)真空チャンバ(Rezipienten)内に前記試料テーブルを配置するステップと、
(c)前記試料テーブルの移動によりイオンビームに対して前記位置決めユニットの1つを配向(位置合わせ)し、この際、この位置決めユニット内の試料は前記イオンビームにさらされ、それに対して各々の残りの前記位置決めユニットは前記イオンビームから回避されており、そしてイオンビームエッチングを用い、前記イオンビームにさらされている前記試料を処理(加工)するステップと、
(d)前記試料テーブルの移動により位置決め位置を交換し、前記イオンビームに対して次の前記位置決めユニットを配向(位置合わせ)し、そしてイオンビームエッチングを用いて前記試料を作製するステップと、
(e)ステップ(c)及び(d)を、イオンビームエッチングを用いて全ての試料が作製されるに至るまで繰り返すステップと、
(f)必要に応じてステップ(c)から(e)を繰り返すステップ。
【0036】
ステップ(d)の位置決め位置の交換は、好ましくは順次的に行われる、即ちシーケンシャルな順番で試料が作製される。
【0037】
上記方法ステップから良好に認識できるように、全ての試料は、真空チャンバ内に試料テーブルを配置する前に、即ち真空チャンバ(真空室)を閉鎖して真空状態にする前に、各々の位置決めユニットにおいて手動で調節される(ステップ(a))。試料保護用のマスクは、好ましくは位置決めユニットにおいて固定位置を有する。各々の試料は、各々のマスクに対して相対的に位置決めされる。イオンビームエッチング法の実行中には、調節済みの各々の試料とマスクのユニットが位置決め位置の交換によりイオンビームに対して相対的に位置決めされ、該当試料がイオンビームを用いて処理される。上述のように、全ての又は選択された試料は、2回の又は複数回の作製過程(Durchlaeufe)により何回にわたっても処理することもできる。
【0038】
上記のごとく、本発明において下記の形態が可能である。尚、下記の各形態は本願の特許請求の範囲の各請求項に記載した各々の構成要件にも対応している。また本願の特許請求の範囲に付記されている図面参照符号は専ら本発明の理解の容易化のためのものであり、本発明を後続段落で説明する具体的な実施形態に限定するものではないことをここに付言する。
(形態1)上記第1の視点のとおり。
(形態2)前記試料テーブルは、1つの回転軸線の周りで回転可能な回転ディスクを含んで構成され、前記位置決めユニットは、好ましくは同じ角度で互いにずらされて回転可能な該回転ディスク上に配設されており、前記位置決めユニットは、該回転ディスクの回転により好ましくは順次的にイオンビームに対して配向可能であることが好ましい。
(形態3)前記回転ディスクの前記回転軸線は、実質的に垂直方向に配向されていることが好ましい。
(形態4)前記回転ディスクの前記回転軸線は、実質的に水平方向に配向されていることが好ましい。
(形態5)前記試料テーブルは、縦長に形成された可動式の支持台を含んで構成され、前記位置決めユニットは、長手方向において好ましくは規則的な間隔をもって縦長の前記支持台上に配設されており、前記位置決めユニットは、長手方向における前記支持台の移動により好ましくは順次的に前記イオンビームに対して配向可能であることが好ましい。
(形態6)前記支持台は、スライドレールとして形成されていることが好ましい。
(形態7)前記試料テーブルは、前記回転ディスクの回転のために或いは前記支持台の移動のために、制御可能な駆動部を有することが好ましい。
(形態8)各前記位置決めユニットは、各々隣接する前記位置決めユニットから1つの保護用分離部により分離されていることが好ましい。
(形態9)前記保護用分離部は、永続的に配設されていることが好ましい。
(形態10)前記保護用分離部は、位置決め可能に配設されていることが好ましい。
(形態11)位置決め可能な前記保護用分離部は、保護用カバーを含んで構成され、該保護用カバーは、バネ機構を用いて開閉可能であることが好ましい。
(形態12)位置決め可能な前記保護用分離部は、保護用カバーを含んで構成され、該保護用カバーは、オーバーラップする薄片を有することが好ましい。
(形態13)位置決め可能な前記保護用分離部は、開閉可能な保護用カバーを含んで構成され、該保護用カバーには、開閉のための駆動部が付設されていることが好ましい。
(形態14)3つの位置決めユニットが、前記回転ディスク上で互いに120°の角度をおいて配設されており、これらの3つの位置決めユニットの間には、各々、前記回転ディスクに対して垂直に配設され且つ前記回転軸線に対して半径方向に延在する保護用分離部が配設されていることが好ましい。
(形態15)上記第2の視点のとおり。
(形態16)上記第3の視点のとおり。
(形態17)前記ステップ(d)の位置決め位置の交換は、順次的に行われることが好ましい。
【0039】
以下、添付の図面に図示された(本発明を制限するものではない)具体的な実施形態について、本発明の更なる長所と共に詳細に説明する。
【0040】
図1は、イオンビームエッチング装置用の回転可能な試料テーブル100の形式をもつ本発明の具体的な第1実施形態を示しており、該試料テーブル100は、垂直方向(鉛直方向)の回転軸線Lの周りで回転可能に支持されている(水平型回転テーブル)。試料テーブル100は回転ディスク107を含んでおり、該回転ディスク107上には全部で3つの位置決めユニット101、102、103が互いに120°の角度でずらされて配設されている。個々の位置決めユニット101、102、103の構造は、当業者にとってそれ自体公知であり、上記特許文献1に記載されているようなイオンビームスロープ(斜切)エッチング法のために構成されている。各位置決めユニット101、102、103は、例えばネジなどを用いて2つの平面(レベル)において調節可能な受容機構106を含んでおり、該受容機構106上に試料(サンプル)104が取り付け可能であり、更に各位置決めユニット101、102、103は、保護用のマスク105を備えたマスク保持器108を含んでいる。これらの3つの位置決めユニット101、102、103の間には、各々、回転ディスク107に対して垂直(normal)に配設され且つ回転軸線Lに対して半径方向に延在する、ここでは金属保護板の形式の保護用分離部109a、109b、109cが配設されている。図2及び図5からよく見てとれるように、保護用分離部109a、109b、109cは、エッチング過程中に切除される試料材料による、待機位置にある位置決めユニット101、102、103の汚染を防止する目的をもっている。試料テーブル100を回転させるために該試料テーブル100には歯車駆動部110が付設されており、この際、駆動部歯車111が、回転ディスク107の外側縁部112に設けられた歯部(非図示)と噛合する。
【0041】
図2は、図1による試料テーブル100が内部に取り付けられた試料テーブルフランジ120の斜視図を示している。図2からよく見てとれるように、位置決めユニット101、102、103の1つだけが外方へ突き出ており、従ってイオンビームにさらされて(エクスポーズされて)おり(処理位置)、それに対して各々の残りの位置決めユニット101、102、103は、試料テーブルフランジ120のフランジハウジング121内に配置されており、従って待機位置にある。図2において位置決めユニット101は処理位置(加工位置)にあり、それに対して位置決めユニット102、103はフランジハウジング121内にあって待機位置にある。この際、120°の角度で試料テーブル100を回転させることにより、これらの位置決めユニット101、102、103は、自身の位置(ポジション)を交換する、即ち待機位置から処理位置へ、或いは処理位置から待機位置へと交換し、この際、この交換は、好ましくは順次的(sequentiell)に行われる。待機位置にある各々の位置決めユニット101、102、103は、対応する保護用分離部109a、109b、109cにより、エッチング過程時に発生する切除された試料材料による汚染から保護されている。
【0042】
図3及び図4は、各々、図2による試料テーブルフランジ120が取り付けられた開放状態のイオンビームエッチング装置の側面図を示している。試料テーブルフランジ120は、イオンビームエッチング装置200の運転開始時には、イオン源が配設されている真空室201(真空チャンバ Rezipient)に真空気密状態で接続されている(図5参照:図5は、試料テーブルフランジ120が接続された閉鎖状態の真空室201の断面図を示している。)。3つの試料104は、真空状態にする前で且つイオンビームエッチング過程の開始前に試料テーブル100の位置決めユニット101、102、103上に取り付けられ、それに引き続き、手動で各々のマスク105に対して相対的に調節される。この調節は、一方では各々の受容機構106上に試料104を正確に取り付ける(接着する:貼り付ける)ことにより、また固定位置決めされているマスク105に関しては位置決めネジを用いて行われる。試料のこの先行調節は、1回の処理手順サイクル(試料テーブル100を一回転させること in einem Durchgang)による全ての試料の好ましくは順次的なイオンビームエッチングを可能とし、或いはまた、必要な場合には2回目の又は更なる処理手順サイクルにより全ての又は選択された試料の好ましくは順次的なイオンビームエッチングを可能とする。図3において試料テーブルフランジ120は、90°傾動された第1調節位置にある。図4において試料テーブルフランジ120は第2調節位置にあり、この第2調節位置は、試料テーブルフランジ120が引き続き支持レール204を用いて水平方向において真空室201の方向へスライドされ、該真空室201に真空気密状態で接続されることになる位置をも意味している。試料調節のためにイオンビームエッチング装置200は更に双眼鏡或いは双眼顕微鏡202を有している。
【0043】
3つの試料の取り付け及び調節の後、試料テーブルフランジ120は、イオンビームエッチング装置200の真空チャンバに接続され、試料室が、高真空(通常は少なくとも10−6mbar)を作り出すためにポンプ排出(abpumpen)される。図5は、試料テーブルフランジ120が接続された閉鎖状態の真空室201の断面平面図を示しており、この図では、試料テーブル100が(太線で)強調されて示されている。位置決めユニット101は処理位置にあり、それに対して残りの位置決めユニット102、103は待機位置にある。エッチング法は、上記特許文献1から公知の上記イオンビームスロープ(斜切)エッチング法に従って行われる。それによると、上記特許文献1で記載されているように、イオン源203内に組み込まれている3つのイオンビームが、互いに所定角度のもと、位置決めユニット101の試料104の試料表面へと案内されている。それらの試料は、位置決めユニット101、102、103が試料テーブル100の回転により各々の処理位置或いは待機位置へもたらされることにより順次的に作製(調整)される。
【0044】
図6は、回転可能な試料テーブル300の第2実施形態の俯瞰図を示しており、該試料テーブル300は、上記試料テーブル100と同様に垂直方向の回転軸線を有するルーレット式の水平型回転テーブルとして形成されているが、同じ角度で互いにずらされて回転ディスク307上に配設された多数の位置決めユニット(301、302、303、304、305;n個)を有している。例えば、回転ディスク307上には10個までの位置決めユニット(n=<10)を配設することができるが、その理由は、このようにするとイオンビームエッチング装置のフル稼動能力を高くでき、それにもかかわらず試料テーブル300はコンパクトなサイズ(handliche Demension)を有し、更には例えばイオン源のために必要な整備期間を維持することができるためである。試料テーブル300の位置決めユニットは、それらの原理的な構造について上述の位置決めユニット101、102、103に対応している。位置決めユニット301は処理位置にあり、それに対して残りの位置決めユニットは待機位置にある。試料テーブル300を回転させるために該試料テーブル300には同様に上述の歯車駆動部110が付設されている。図6において矢印306は、位置決め位置(番号1、2、3、4、5。。。nと記入されているところ)の交換時における試料テーブル300の回転方向を表し、矢印309は、位置決めユニット301に取り付けられた試料へと配向されているイオンビームの方向を表している。複数の位置決めユニットを備えた回転ディスク307は保護ハウジング308a内に配設されており、この際、処理位置にある位置決めユニット(ここでは位置決めユニット301)は保護ハウジング308aの外側に位置し、イオンビームにさらされており、更には、所定角度をおいて互いに配設された位置決め可能な2つの保護カバー308b、308c(鎖線)により、残りの位置決めユニットから遮蔽されている。保護カバー308b、308cは、詳細に上述したように、折り畳み可能な又は旋回可能な又は摺動可能なカバーとして実施することができ、例えば、バネ機構を用いて又は駆動部を用いて開閉可能である折り畳み式ドアの形式として実施することができる。
【0045】
図7は、回転可能な試料テーブル400の第3実施形態の側面図を示しており、該試料テーブル400は、水平方向の回転軸線を有するリボルバ式の垂直型回転テーブルとして形成されている。試料テーブル400は、同じ角度で互いにずらされて回転ディスク407上に配設された多数の位置決めユニット(401、402、403、404、405;n個)を有している。例えば、回転ディスク407上には10個までの位置決めユニット(n=<10)を配設することができるが、その理由は、このようにするとイオンビームエッチング装置のフル稼動能力を高くでき、それにもかかわらず試料テーブル400はコンパクトなサイズを有し、更には例えばイオン源のために必要な整備期間を維持することができるためである。試料テーブル400の位置決めユニットは、それらの原理的な構造について上述の位置決めユニット101、102、103に対応している。位置決めユニット401は処理位置にあり、それに対して残りの位置決めユニットは待機位置にある。試料テーブル400を回転させるために該試料テーブル400には同様に上述の歯車駆動部110が付設されている。図7において矢印406は、位置決め位置(番号1、2、3、4、5。。。nと記入されているところ)の交換時における試料テーブル400の回転方向を表している。イオンビームは、出射開口部409(俯瞰図として図示されている)を通じて出射し、位置決めユニット401に取り付けられた試料へと配向されている。位置決めユニットは、イオンビームが回転ディスク407の水平方向の回転軸線と平行に且つ回転ディスク407の平面に対して垂直(normal)に配向されているように回転ディスク407上に配設されている。図6に関して上述したように、本実施形態においても、複数の位置決めユニットを備えた回転ディスク407は保護ハウジング408a内に配設されており、この際、処理位置にある位置決めユニット(ここでは位置決めユニット401)は保護ハウジング408aの外側に位置し、イオンビームにさらされており、更には、所定角度をおいて互いに配設された位置決め可能な2つの保護カバー408b、408c(鎖線)により、残りの位置決めユニットから遮蔽されている。保護カバー408b、408cは、詳細に上述したように、折り畳み可能な又は旋回可能な又は摺動可能なカバーとして実施することができ、例えば、バネ機構を用いて又は駆動部を用いて開閉可能である折り畳み式ドアの形式として実施することができる。
【0046】
図8は、回転可能な試料テーブル500の第4実施形態の側面図を示しており、該試料テーブル500は、水平方向の回転軸線を有するリボルバ式の垂直型回転テーブルとして形成されている。試料テーブル500の原理的な構造は、試料テーブル400の構造(図7参照)に対応している。試料テーブル500は、図7の試料テーブル400とは、イオンビームが水平方向の回転軸線に対して垂直(normal)に配向されているように複数の位置決めユニット(501、502、503、504、505;n個)が回転ディスク507上に配設されていることにより異なっている。例えば回転ディスク507上には10個までの位置決めユニット(n=<10)を配設することができるが、その理由は、このようにするとイオンビームエッチング装置のフル稼動能力を高くでき、それにもかかわらず試料テーブル500はコンパクトなサイズを有し、更には例えばイオン源のために必要な整備期間を維持することができるためである。図8において矢印506は、位置決め位置(番号1、2、3、4、5。。。nと記入されているところ)の交換時における試料テーブル500の回転方向を表し、矢印509は、位置決めユニット501に取り付けられた試料へと配向されているイオンビームの方向を表している。試料テーブル500を回転させるために該試料テーブル500には同様に上述の歯車駆動部110が付設されている。本実施形態においても、複数の位置決めユニットを備えた回転ディスク507は保護ハウジング508a内に配設されており、この際、処理位置にある位置決めユニット(ここでは位置決めユニット501)は保護ハウジング508aの外側に位置し、イオンビームにさらされており、更には、実質的に平行に互いに配設された位置決め可能な2つの保護カバー508b、508c(鎖線)により、残りの位置決めユニットから遮蔽されている。保護カバー508b、508cは、詳細に上述したように、折り畳み可能な又は旋回可能な又は摺動可能なカバーとして実施することができ、例えば、バネ機構を用いて又は駆動部を用いて開閉可能である折り畳み式ドアの形式として実施することができる。保護カバー508b、508cは、真空に適しており且つ実質的に垂直方向に延在してオーバーラップする薄片、又は薄片カーテンの形式の帯材としても形成することができる。
【0047】
図9は、試料テーブル600の第5実施形態の側面図を示している。該試料テーブル600は、リバーシブル式(往復両方向可動式)で長手方向(縦方向)において摺動可能な縦長のスライドレール607を含んでいる。複数の位置決めユニット(601、602、603、604、605;n個)が、長手方向において規則的な間隔をもってスライドレール607上に固定されており、長手方向(矢印606)におけるスライドレール607の移動により順次的にイオンビーム(イオンビームの出射開口部609への俯瞰図として図示されている)に対して配向可能である。例えばスライドレール607上には10個までの位置決めユニット(n=<10)を配設することができるが、その理由は、このようにするとイオンビームエッチング装置のフル稼動能力を高くでき、それにもかかわらず試料テーブル600はコンパクトなサイズを有し、更には例えばイオン源のために必要な整備期間を維持することができるためである。長手方向におけるスライドレール607の移動のために試料テーブル600には上述の歯車駆動部110が付設されており、この際、歯車駆動部110の駆動部歯車が、スライドレール607に設けられた歯部と噛合する。この実施形態において、複数の位置決めユニットを備えたスライドレール607は保護ハウジング608a内に配設されている。保護ハウジング608aは、両方向(長手方向の前後方向)におけるスライドレール607の長手方向摺動を可能にするために、長手方向において図9に図示されているよりも大きくサイズ決定されている(一点鎖線により示唆されている)。処理位置にある位置決めユニット(ここでは位置決めユニット603)は保護ハウジング608aの外側に位置し、イオンビームにさらされており、更には、実質的に平行に互いに配設された位置決め可能な2つの保護カバー608b、608c(鎖線)により、残りの位置決めユニットから遮蔽されている。保護カバー608b、608cは、詳細に上述したように、折り畳み可能な又は旋回可能な又は摺動可能なカバーとして実施することができ、例えば、バネ機構を用いて又は駆動部を用いて開閉可能である折り畳み式ドアの形式として実施することができる。保護カバー608b、608cは、真空に適しており且つ実質的に垂直方向に延在してオーバーラップする薄片、又は薄片カーテンの形式の帯材としても形成することができる。
【0048】
尚、本発明の全開示(特許請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、更にその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更、調整が可能である。また、本発明の特許請求の範囲の枠内において種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせないし選択が可能である。即ち、本発明は、特許請求の範囲及び図面を含む全開示、技術的思想に従って当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
L 回転軸線
100 試料テーブル
101〜103 位置決めユニット
104 試料
105 マスク
106 受容機構
107 回転ディスク
108 マスク保持器
109a〜109c 保護用分離部
110 歯車駆動部
111 駆動部歯車
112 外側縁部
120 試料テーブルフランジ
121 フランジハウジング
200 イオンビームエッチング装置
201 真空室(真空チャンバ)
202 双眼鏡或いは双眼顕微鏡
203 イオン源
204 支持レール

300 試料テーブル
301〜305 位置決めユニット
306 試料テーブルの回転方向
307 回転ディスク
308a 保護ハウジング
308b、308c 保護カバー
309 イオンビームの方向

400 試料テーブル
401〜405 位置決めユニット
406 試料テーブルの回転方向
407 回転ディスク
408a 保護ハウジング
408b、408c 保護カバー
409 イオンビームの出射開口部

500 試料テーブル
501〜505 位置決めユニット
506 試料テーブルの回転方向
507 回転ディスク
508a 保護ハウジング
508b、508c 保護カバー
509 イオンビームの方向

600 試料テーブル
601〜605 位置決めユニット
606 試料テーブルの移動方向
607 スライドレール(支持台)
608a 保護ハウジング
608b、608c 保護カバー
609 イオンビームの出射開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームエッチング装置内の試料を処理するための試料テーブルであって、
該試料テーブル(100、300、400、500、600)は、少なくとも2つの位置決めユニットを備えた交換テーブルとして設けられており、前記位置決めユニットは、各々につき受容機構(106)とマスク(105)を有し、
前記受容機構(106)内には、イオンビームエッチング過程中に該試料テーブルの方向へ配向されているイオンビームに関して試料(104)が取り付け可能であり、
前記試料(104)は、該試料の位置について前記マスク(105)に対して相対的に位置決め可能であり、
該試料テーブルは、該試料テーブル上の前記位置決めユニットの各々が前記イオンビームエッチング装置のイオンビームに対して配向可能である位置決め位置の間において交換を可能とする機構(107、307、407、507、607)を有し、
1つの前記位置決めユニット(101、301、401、501、603)内の前記試料(104)が前記イオンビームにさらされており、それに対して各々の残りの前記位置決めユニットは前記イオンビームから回避されている、
との形式を有する前記試料テーブルにおいて、
前記位置決めユニットは、共通の真空チャンバ内に配置されており、
少なくとも、前記イオンビームエッチング装置の前記イオンビームに対して配向されている1つの前記位置決めユニット(101、301、401、501、603)と、前記イオンビームから回避されている各々の残りの前記位置決めユニットとの間には、少なくとも1つの保護用分離部が配設されていること
を特徴とする試料テーブル。
【請求項2】
前記試料テーブル(100、300、400、500)は、1つの回転軸線(L)の周りで回転可能な回転ディスク(107、307、407、507)を含んで構成され、前記位置決めユニットは、互いにずらされて回転可能な該回転ディスク上に配設されており、前記位置決めユニットは、該回転ディスクの回転によりイオンビームに対して配向可能であること
を特徴とする、請求項1に記載の試料テーブル。
【請求項3】
前記回転ディスク(107、307)の前記回転軸線は、垂直方向に配向されていること
を特徴とする、請求項2に記載の試料テーブル。
【請求項4】
前記回転ディスク(407、507)の前記回転軸線は、水平方向に配向されていること
を特徴とする、請求項2に記載の試料テーブル。
【請求項5】
前記試料テーブル(600)は、縦長に形成された可動式の支持台(607)を含んで構成され、前記位置決めユニット(601〜605)は、長手方向において縦長の前記支持台上に配設されており、前記位置決めユニットは、長手方向における前記支持台の移動により前記イオンビームに対して配向可能であること
を特徴とする、請求項1に記載の試料テーブル。
【請求項6】
前記支持台(607)は、スライドレールとして形成されていること
を特徴とする、請求項5に記載の試料テーブル。
【請求項7】
前記試料テーブルは、前記回転ディスクの回転のために或いは前記支持台の移動のために、制御可能な駆動部を有すること
を特徴とする、請求項2〜6のいずれか一項に記載の試料テーブル。
【請求項8】
各前記位置決めユニットは、各々隣接する前記位置決めユニットから1つの保護用分離部により分離されていること
を特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の試料テーブル。
【請求項9】
前記保護用分離部(109a、109b、109c)は、永続的に配設されていること
を特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の試料テーブル。
【請求項10】
前記保護用分離部は、位置決め可能に配設されていること
を特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の試料テーブル。
【請求項11】
位置決め可能な前記保護用分離部は、保護用カバーを含んで構成され、該保護用カバーは、バネ機構を用いて開閉可能であること
を特徴とする、請求項10に記載の試料テーブル。
【請求項12】
位置決め可能な前記保護用分離部(508b、508c、608b、608c)は、保護用カバーを含んで構成され、該保護用カバーは、オーバーラップする薄片を有すること
を特徴とする、請求項10に記載の試料テーブル。
【請求項13】
位置決め可能な前記保護用分離部は、開閉可能な保護用カバーを含んで構成され、該保護用カバーには、開閉のための駆動部が付設されていること
を特徴とする、請求項10に記載の試料テーブル。
【請求項14】
3つの位置決めユニットが、前記回転ディスク(107、307、407、507)上で互いに120°の角度をおいて配設されており、これらの3つの位置決めユニットの間には、各々、前記回転ディスクに対して垂直に配設され且つ前記回転軸線(L)に対して半径方向に延在する保護用分離部(109a、109b、109c)が配設されていること
を特徴とする、請求項2〜4及び8〜13のいずれか一項に記載の試料テーブル。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の試料テーブルを含んで構成されること
を特徴とする試料テーブルフランジ。
【請求項16】
イオンビームエッチング装置内の少なくとも2つの試料を順次的に作製するための方法であって、
以下のステップ、即ち、
(a)請求項1〜14のいずれか一項に記載の試料テーブルの少なくとも2つの位置決めユニットに試料を固定し、これらの各々の位置決めユニットにおいて前記試料を手動で調節するステップと、
(b)真空チャンバ内に前記試料テーブルを配置するステップと、
(c)前記試料テーブルの移動によりイオンビームに対して前記位置決めユニットの1つを配向し、この際、この位置決めユニット内の試料は前記イオンビームにさらされ、それに対して各々の残りの前記位置決めユニットは前記イオンビームから回避されており、そしてイオンビームエッチングを用い、前記イオンビームにさらされている前記試料を処理するステップと、
(d)前記試料テーブルの移動により位置決め位置を交換し、前記イオンビームに対して次の前記位置決めユニットを配向し、そしてイオンビームエッチングを用いて前記試料を作製するステップと、
(e)ステップ(c)及び(d)を、イオンビームエッチングを用いて全ての試料が作製されるに至るまで繰り返すステップと、
(f)必要に応じてステップ(c)から(e)を繰り返すステップとを含むこと
を特徴とする方法。
【請求項17】
前記ステップ(d)の位置決め位置の交換は、順次的に行われること
を特徴とする、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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