説明

試料内部欠陥の評価方法

【課題】 表面より十分に深い位置にまで欠陥を有する試料であっても、欠陥の有無を的確に評価できる試料内部欠陥の評価方法を提供すること。
【解決手段】 本発明は、モリブデンを含むモリブデン含有溶液に試料を浸漬する浸漬工程と、試料が浸漬されたモリブデン含有溶液を減圧する減圧工程と、試料を乾燥する乾燥工程と、試料中の前記モリブデンの分布を検出する検出工程とを含む試料内部欠陥の評価方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料内部欠陥の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックス層と金属層とを積層した積層電子部品等においては、製造過程において内部に欠陥が生じる場合があり、このような欠陥は、製品の性能を低下させる。従って、このような内部欠陥の有無を評価することは、製品の性能を評価したり、製品における性能低下の原因を調べる上で重要である。
【0003】
このような試料内部の欠陥を評価する方法として、従来、下記特許文献1に記載されるものが提案されている。同文献1には、特定の金属元素の塩を含有する液体を塗布し減圧又は加圧下で加工により生じたマイクロクラックに含浸させ、次いで含浸させた金属元素を加熱、乾燥または熱分解により付着固定し、前記マイクロクラックを含む破面をEPMAにより分析し付着固定した金属元素の分布を調べることにより、試料の内部欠陥を評価する方法が開示されている。
【特許文献1】特許第3159332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の試料内部欠陥の評価方法では、金属元素の塩を含有する液体を試料のごく表面近傍(例えば表面より数十μmまで)までしか含浸させることができないため、試料内部欠陥の評価も試料の表面近傍の欠陥のみについて行うことができるにすぎなかった。
【0005】
特に上記試料が積層電子部品等のように、当該試料の表面から十分に深い位置にまで欠陥が生じるものである場合には、上記特許文献1の評価方法では、試料内部の欠陥の有無を評価することができない。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、表面より十分に深い位置にまで欠陥を有する試料であっても、欠陥の有無を的確に評価できる試料内部欠陥の評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、モリブデンは積層電子部品の材料に余り用いられず、また、モリブデン含有溶液のpHも調整しやすく、このモリブデンを含有するモリブデン含有溶液に試料を浸漬させて減圧することが、上記課題を解決し得る上で有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の試料内部欠陥の評価方法は、試料を、モリブデンを含むモリブデン含有溶液に浸漬する浸漬工程と、この浸漬した試料をモリブデン含有溶液とともに減圧する減圧工程と、試料を乾燥する乾燥工程と、試料中のモリブデンの分布を検出する検出工程とを含むものである。
【0009】
この評価方法によれば、試料をモリブデン含有溶液に浸漬させて減圧すると、試料中に欠陥がある場合には、試料が減圧されて試料内部の欠陥中にモリブデン含有溶液が容易に浸入し、さらに試料表面から十分に深い位置までモリブデン含有溶液を浸入させることができる。そして、この試料を乾燥させると、モリブデンが欠陥中に固定される。こうして得られる試料についてモリブデンの分布を検出すると、試料表面から十分に深い位置の欠陥についても評価することができる。
【0010】
上記試料内部欠陥の評価方法は、試料が積層電子部品である場合に特に有効である。積層電子部品においては特に表面より十分に深い位置に内部欠陥が存在している場合があるが、その場合でも試料における内部欠陥の有無を評価することができる。また、積層電子部品には一般にモリブデンが用いられないため、積層電子部品中のモリブデンが欠陥として評価されることがない。
【0011】
上記試料内部欠陥の評価方法において、上記モリブデン含有溶液のpHは5〜7であることが好ましい。
【0012】
例えば鉛を主成分とする試料は、モリブデン含有溶液のpHが高くても低くても鉛が溶出されやすく、評価方法そのものが欠陥を生じさせる可能性もある。このようにpHに敏感な試料をモリブデン含有溶液に浸漬する場合であっても、pHが上記範囲内であると、試料において欠陥が発生することを防止できる。言い換えると、評価方法そのものが試料において欠陥を生じさせることを十分に防止することができる。
【0013】
上記試料内部欠陥の評価方法において、上記モリブデン含有溶液のpHを調整するpH調整剤として、水酸化ナトリウム又はアンモニアを用いることが好ましい。
【0014】
本発明の試料内部欠陥の評価方法において、これらのpH調整剤を用いれば、試料の溶解等が十分に防止される。
【0015】
上記試料内部欠陥の評価方法において、上記モリブデン含有溶液が、モリブデン酸アンモニウムを含み、かつ上記モリブデン酸アンモニウムの濃度が25体積%以下であることが好ましい。
【0016】
上記モリブデン含有溶液が、モリブデン酸アンモニウムを含むと、モリブデン含有溶液は例えば、pH5.4を呈することとなる。このため、モリブデン含有溶液によって試料が溶出することを十分に抑制することができる。また、上記モリブデン酸アンモニウムの濃度が25体積%以下であれば、濃度が25体積%を超える場合に比べて、試料の内部までモリブデンをより十分に浸入させることができる。
【0017】
上記試料内部欠陥の評価方法は、上記減圧工程後、試料をモリブデン含有溶液から取り出して水洗する水洗工程を更に含むことが好ましい。
【0018】
このように減圧工程後、試料をモリブデン含有溶液から取り出して水洗すると、試料の表面に残存するモリブデン含有溶液を除去でき、より的確に試料内部欠陥を評価することができる。
【0019】
上記試料内部欠陥の評価方法は、上記モリブデン含有溶液が更に界面活性剤を含むことが好ましい。
【0020】
モリブデン含有溶液が界面活性剤を含むと、試料をモリブデン含有溶液に浸漬させる場合に試料の濡れ性が向上し、モリブデンを試料内部欠陥中により容易に浸入させることができる。よって、試料内部欠陥をより確実に検出することができ、得られる評価結果をより信頼性の高いものとすることができる。
【0021】
前記検出工程において、前記試料中の前記モリブデンの分布をX線マイクロアナライザにより検出することが好ましい。
【0022】
この場合、モリブデンがX線の発生効率にも優れることから、試料内部の欠陥をより確実に検出することができ、特に微細な欠陥の有無も検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の試料内部欠陥の評価方法によれば、表面より十分に深い位置にまで欠陥を有する試料であっても、欠陥の有無を評価できる。従って、試料の緻密性、耐湿性、耐水性の評価を的確に行うこともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0025】
本実施形態の試料内部欠陥の評価方法は、試料をモリブデン含有溶液に浸漬する浸漬工程と、試料が浸漬されたモリブデン含有溶液を減圧する減圧工程と、減圧工程を行った試料を乾燥する乾燥工程と、この試料中のモリブデンの分布を検出する検出工程とを含む。
【0026】
この評価方法によれば、試料をモリブデン含有溶液に浸漬させて減圧すると、試料中に欠陥がある場合には、試料が減圧されて試料内部の欠陥中にモリブデン含有溶液が容易に浸入し、さらに試料表面から十分に深い位置までモリブデン含有溶液を浸入させることができる。そして、この試料を乾燥させると、モリブデンが欠陥中に固定される。こうして得られる試料についてモリブデンの分布を検出すると、試料表面から十分に深い位置の欠陥についても評価することができる。
【0027】
(浸漬工程)
浸漬工程は、試料をモリブデン含有溶液に浸漬させる工程である。
【0028】
上記試料は、特に限定されないが、上記試料としては、チップコンデンサ、アクチュエーター素子、NTCサーミスタ、フェライト積層素子等の積層電子部品を用いることができる。
【0029】
上記試料の中でも、モリブデンを含有しない試料が好ましい。上記試料がモリブデンを含有しないものであると、評価する際に、試料に含まれるモリブデンが欠陥として検出されなくなるため、より的確な評価結果を得ることができる。
【0030】
上記積層電子部品は、一般に部材を積層し焼成した後、端子を取り付けたり、メッキを施すことによって得ることができる。このため、上記積層電子部品は、焼成の際に積層表面から十分に深い位置にクラックが生じたり、メッキ等が施されたときにメッキ液が積層電子部品の表面から十分に深い位置に浸入する場合が生じ得るが、本発明の評価方法によれば、これらの内部欠陥の有無を的確に評価することができる。また、積層電子部品には一般にモリブデンが用いられないため、積層電子部品中のモリブデンが欠陥として評価されることがない。
【0031】
上記モリブデン含有溶液は、モリブデン酸アンモニウム{(NH〔Mo24〕・4HO}を含むことが好ましい。モリブデン含有溶液のpHは後述するように5〜7であることが好ましいが、モリブデン酸アンモニウムを用いると、pHが5〜7を示すこととなるため、モリブデン含有溶液によって試料が溶出することを十分に抑制することができる。
【0032】
モリブデンを溶解させる溶媒は、水であることが好ましい。換言すればモリブデン含有溶液がモリブデン含有水溶液であることが好ましい。溶媒が水であると、モリブデンをより十分に溶解させることができる。このようにモリブデンを溶解させることができると、上記試料を当該モリブデン含有水溶液に含浸させた場合、モリブデンイオンを試料の内部にまで十分に浸入させることができる。
【0033】
モリブデン含有溶液の溶質として、上記モリブデン酸アンモニウムを用い、且つ溶媒として水を用いた場合、上記モリブデン含有溶液は、例えばモリブデン酸アンモニウムの白色結晶を砕いて、高温(80℃〜100℃)で水に溶かすことによって得ることができる。
【0034】
また、上記モリブデン酸アンモニウムを用いた場合、このモリブデン酸アンモニウムの濃度が25体積%以下であることが好ましい。モリブデン酸アンモニウムの濃度がこの範囲であれば、試料の内部までモリブデンをより十分に浸入させることができる。一方、モリブデン酸アンモニウムの濃度が25体積%を超えると、モリブデン含有溶液が飽和して溶液中に析出物が生じる場合がある。なお、上記モリブデン酸アンモニウムの濃度は、上記範囲であれば適宜選択できる。
【0035】
モリブデン含有溶液のpHは5〜7であることが好ましい。例えば鉛を主成分とする試料は、モリブデン含有溶液のpHが高くても低くても鉛が溶出されやすく、評価方法そのものが欠陥を生じさせる可能性もあるが、pHが上記範囲内であると、pHに敏感な試料をモリブデン含有溶液に浸漬する場合であっても、試料において欠陥が発生することを十分に防止することができる。言い換えると、評価方法そのものが試料において欠陥を生じさせることを十分に防止することができる。更に好ましくは上記pHが6〜7であり、pHが7であるときが最も好ましい。
【0036】
なお、モリブデン含有溶液のpHが上記範囲内にない場合、pHを調整するために、pH調整剤を用いることが好ましい。pH調整剤を用いれば、本実施形態の試料内部欠陥の評価方法において、試料の溶解等が十分に防止される。
【0037】
上記pH調整剤としては、水酸化ナトリウム、アンモニア等が挙げられる。上記モリブデン含有溶液がモリブデン酸アンモニウムを水に溶解して作製された場合は、pH調整剤としてアンモニアを用いることがより好ましい。なお、pHを調整するのは、モリブデン酸アンモニウムを水に溶解した後に行う。
【0038】
上記モリブデン含有溶液は、界面活性剤を更に含むことが好ましい。界面活性剤を含ませると、試料をモリブデン含有溶液に浸漬させる場合に試料の濡れ性が向上し、モリブデンを試料内部欠陥中により容易に浸入させることができる。よって、試料内部欠陥をより確実に検出することができ、得られる評価結果をより信頼性の高いものとすることができる。
【0039】
(減圧工程)
減圧工程は、試料が浸漬されたモリブデン含有溶液を減圧する工程である。
【0040】
このように減圧工程を行うことによって、試料内部の空気を除去し、モリブデン含有溶液を十分に浸入させることができる。換言すれば、試料内部の空気をモリブデン含有溶液とを置換することができる。
【0041】
試料内部の空気を十分に除去することができれば、モリブデン含有溶液を十分に試料内部に浸入させることができるため、微小な欠陥部分であったとしても、検出することが可能となる。
【0042】
上記減圧工程の条件としては、減圧したときの試料を含むモリブデン含有溶液周辺の圧力が1×10−1Pa〜1×10Paであることが好ましい。圧力が1×10Paを超えると、試料内部の空気が十分に除去されない傾向にあり、1×10−1Pa未満であると、空気を除去する効果の向上が認められなくなる傾向にある。
【0043】
また、モリブデン含有溶液を試料内部に浸入させる効果やコスト面を考慮すると、減圧する時間は10〜20分で十分である。
【0044】
上記減圧工程に用いる装置としては特に限定されないが、例えばロータリーポンプ等を用いることができる。
【0045】
(水洗工程)
上記減圧工程後、モリブデン含有溶液から試料を取り出して試料に対して水洗工程を行うことが好ましい。
【0046】
このように減圧工程後、試料をモリブデン含有溶液から取り出して水洗すると、試料の表面に残留するモリブデンや、付着した不純物などを除去することができ、より的確に試料内部欠陥を評価することができる。
【0047】
(乾燥工程)
乾燥工程は、上記減圧工程又は水洗工程を行った試料を乾燥させる工程である。
【0048】
このように乾燥工程を行うと、試料表面及び試料内部の溶媒が除去され、モリブデンが試料表面及び試料内部に付着し固定されることとなる。
【0049】
上記乾燥工程における温度条件は、80℃〜100℃であることが好ましい。温度条件が80℃未満であると、特に試料内部に浸入している水分が十分に除去されず、モリブデンが試料に十分に付着しない場合が生じ得る。また、温度条件が100℃を超えると、水分が活性化され過ぎるため、モリブデンが偏って試料に付着する場合が生じ得る。なお、乾燥工程は、室温から徐々に温度を上昇させて行うのが好ましい。
【0050】
この場合、上記温度で乾燥させる時間は、8時間以上であることが好ましい。このように比較的温和な温度条件下で時間をかけて乾燥させることにより、モリブデンを試料に付着させることができ、より精度に優れた評価をすることが可能となる。
【0051】
なお、上記乾燥工程に用いる装置としては特に限定されず、公知の乾燥機を用いることができる。
【0052】
(破断工程)
破断工程は、試料を破断して、モリブデンが深く浸透した面を露出するために施す工程である。
【0053】
すなわち、上記乾燥工程又は水洗工程を行った試料が積層電子部品である場合において、この積層電子部品の積層方向に垂直な破断面若しくは平行な破断面を観察したい場合、当該試料を切断する工程である。
【0054】
この切断する方法は特に限定されないが、例えばニッパやカッター等で、または長尺の試料は道具を使わずに切断することができる。
【0055】
また、切断面は平坦であることが好ましい。後述する評価において、切断面が平坦であると、評価装置にてX線分光器の焦点の合う範囲が広がり、広範囲にマッピングできる利点がある。
【0056】
(検出工程)
上述した試料の評価は、試料に付着したモリブデンの分布を検出することによって行われる。特に試料の欠陥部分にはモリブデンが多く含まれることとなるため、モリブデンの分布を検出することにより、欠陥の分布を知ることができる。
【0057】
上記評価を行う装置としては、超音波探傷、X線透視、X線CT、X線マイクロアナライザー(EPMA:Electron Probe Micro-Analyser)等が挙げられる。この中でもEPMAを用いることが好ましい。これらの装置によれば、試料の内部の欠陥の有無を的確に評価できる。従って、試料の緻密性、耐湿性、耐水性の評価を的確に行うこともできる。この中でもEPMAを用いることが好ましい。EPMAによれば、モリブデンがX線の発生効率にも優れることから、試料内部の欠陥をより確実に検出することができ、特に微細な欠陥の有無も検出することが可能となる。また、EPMAによれば、元素マッピング分析等することができるため、試料の表面から深さ数mm以上の位置における欠陥の有無や緻密性を評価することも可能となる。
【0058】
また、上記EPMAを行うときは、試料にカーボン蒸着を施すことが好ましい。カーボン蒸着を施すことによって、EPMA解析時に試料がチャージアップすることを防止することができる。
【0059】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0060】
上記実施形態においては、検出する元素としてモリブデンを用いているが、塩化バリウム、硫酸アンモニウム鉄、硫酸銅等を用いることも可能である。
【実施例】
【0061】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0062】
(試料)
試料として、チップコンデンサA、B及びアクチュエータ素子を用いた。
【0063】
(モリブデン含有溶液の調製)
モリブデン酸アンモニウムを純水中で加熱しながら溶解させ、濃度20質量%のモリブデン含有溶液を作製した。なお、このときのpHは5.4であった。
【0064】
(実施例1)
チップコンデンサーAをモリブデン含有溶液中に浸漬させ、チップコンデンサAを含むモリブデン含有溶液ごと真空ベルジャーの中に載置し、1×10−1Paで20分間減圧した。次いで、試料1を含むモリブデン含有溶液の環境を常圧に戻し、モリブデン含有溶液から試料1を取り出し、これを純水で洗浄し、乾燥機内に投入して80℃で8時間乾燥させた。乾燥させた試料1を破断し、縦1mm×横0.4mmの破断面を設け観察面とした。この試料1をX線マイクロアナライザー(EPMA)用試料ホルダーに観察面を上にして取り付け、カーボン蒸着を施し、EPMAにて観察を行った。得られた結果を図1に示す。図1(a)の二次電子像ではわからないが、図1(b)に示すように同じ場所のモリブデン分布図によれば、内部欠陥が白い点の集まりとして観察できる。
【0065】
(実施例2)
試料としてチップコンデンサAの代わりにアクチュエータ素子を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてEPMAにて観察を行った。得られた結果を図2に示す。実施例1と同様に、内部欠陥が白い点の集まりとして観察できる(図2(b))。
【0066】
(実施例3)
試料としてチップコンデンサAの代わりにチップコンデンサBを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてEPMAにて観察を行った。得られた結果を図3に示す。実施例1と同様に、内部欠陥が白い点の集まりとして観察できる(図3(b))。
【0067】
(評価結果)
図1〜3に示す結果より試料の欠陥部分にモリブデンが付着していることが確認された。特に図2及び3に示す試料の破断面においては、欠陥が広く分布していた。このことから、実施例1〜3によれば、試料の表面から数mm内部にある欠陥であっても検出することができ、試料の表面から十分に深い位置まで欠陥を評価できることがわかった。
【0068】
以上の結果から、本発明の評価方法によれば、上記試料内部の欠陥部分を評価することが可能であり、本発明の試料内部欠陥の評価方法は、例えば、試料の緻密性、耐湿性、耐水性を判断する方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は、実施例1に係るチップコンデンサAの内部欠陥を示す図である。(a)は、EPMAによる二次電子像であり、(b)は同じ場所のEPMAによるモリブデン分布を示す図である。
【図2】図2は、実施例2に係るアクチュエータ素子の内部欠陥を示す図である。(a)は、EPMAによる二次電子像であり、(b)は同じ場所のEPMAによるモリブデン分布を示す図である。
【図3】図3は、実施例3に係るチップコンデンサBの内部欠陥を示す図である。(a)は、EPMAによる二次電子像であり、(b)は同じ場所のEPMAによるモリブデン分布を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデンを含むモリブデン含有溶液に試料を浸漬する浸漬工程と、
前記試料が浸漬された前記モリブデン含有溶液を減圧する減圧工程と、
前記試料を乾燥する乾燥工程と、
前記試料中の前記モリブデンの分布を検出する検出工程と、
を含む、試料内部欠陥の評価方法。
【請求項2】
前記試料が積層電子部品である、請求項1記載の試料内部欠陥の評価方法。
【請求項3】
前記モリブデン含有溶液のpHが5〜7である、請求項1又は2に記載の試料内部欠陥の評価方法。
【請求項4】
前記モリブデン含有溶液のpHを調整するpH調整剤として、水酸化ナトリウム又はアンモニアを用いる、請求項3記載の試料内部欠陥の評価方法。
【請求項5】
前記モリブデン含有溶液が、モリブデン酸アンモニウムを含み、かつ前記モリブデン酸アンモニウムの濃度が25体積%以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の試料内部欠陥の評価方法。
【請求項6】
前記減圧工程後、前記試料を前記モリブデン含有溶液から取り出して水洗する水洗工程を更に含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の試料内部欠陥の評価方法。
【請求項7】
前記モリブデン含有溶液が更に界面活性剤を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の試料内部欠陥の評価方法。
【請求項8】
前記検出工程において、前記試料中の前記モリブデンの分布をX線マイクロアナライザーにより検出する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の試料内部欠陥の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−112971(P2006−112971A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−302031(P2004−302031)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】