説明

試料処理装置及び試薬貯槽の液レベル測定方法

【課題】試薬を入れた、1以上の試薬貯槽の液レベルを容易に測定できる試料処理装置及び測定方法を提供すること。
【解決手段】所定の位置に配置された複数の試薬貯槽(12)を含む試料処理装置である。この試料処理装置(10)は、1以上の試料担体(20)を収容する1以上の移送容器(16a、16b)を移送するための移送機構(22a、22b)を含む。試料担体には1以上の試料が配置される。さらにこの装置(10)は、試薬(42)を入れた試薬貯槽(12)の液レベル(44)を測定するセンサ(34)を含み、このセンサ(34)は移送機構(22a、22b)に配される。さらに本発明は、試薬(42)を入れた試薬貯槽(12)の液レベル(44)を測定する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の位置に配置された複数の試薬貯槽を含む試料(特にプレパラート試料)処理装置に関する。この装置は、さらに、1以上の試料担体(スライドガラスないしプレパラート)を収容する1以上の移送容器を移送するための移送機構を含む。1以上の試料がこの試料担体に配置される。さらに本発明は、試薬貯槽に入れた試薬の液レベルの測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この装置及び方法は、好ましくは組織学の領域で用いられる。組織学は、患者の組織試料の検査に関する領域である。最も一般的な手順は、組織試料が患者から採取され、パラフィンに包埋され、こうして調製された試料ブロックからミクロトームにより薄い切片に切り出される。そして1つの切片がそれぞれ1つの試料担体(スライドガラスないしプレパラート)に載置される。続いて次のプロセスで、顕微鏡による診断評価に供される前の試料の処理が、具体的には染色処理がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】EP1153882A1
【特許文献2】DE10052833A1
【特許文献3】DE2435663A1
【特許文献4】US2007/0012113A1
【特許文献5】EP1237003A2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この処理の間、試料を載置した試料担体は、移送容器及び移送機構によって試薬を満たした試薬貯槽内に浸漬され、試薬貯槽から取り出される前に所定の時間だけその中に保持される。そして移送機構により、さらに別の試薬貯槽に移送される。このような処理プロセスの制御は、好ましくはコンピュータ制御によって行われる。それぞれの試薬貯槽は、適正な量の試薬でそれぞれ満たされていることが重要である。試薬貯槽に満たされる試薬が多すぎる場合、移送容器と試料担体によって試薬が押し出されて試薬貯槽からあふれる可能性がある。その結果、試料処理装置及び/又は周辺エリアが汚染される。特に他の試薬貯槽が、入れすぎた試薬貯槽からあふれた試薬で汚染された場合が大きな問題となる。このことは、試薬貯槽が複数の平面で上下に配置された装置において特に問題となる。このような、ある試薬貯槽の試薬により他の試薬貯槽が汚染されることを防止するため、従来技術では所定の機械的オーバーフローを持つ試薬貯槽が用いられている。試薬があふれた場合は、このオーバーフローによりあふれた試薬は制御されて排出され、他の試薬貯槽、装置、及び/又は周辺エリアを汚染することを防止している。このような機械的オーバーフローの欠点は、試薬貯槽からあふれた場合のみしか対応できないことである。しかし試薬貯槽が十分な試薬で満たされておらず、したがって試料が十分に試薬に浸漬されず、試料の所望の処理が保証されない場合も同様に問題である。
【0005】
本発明の目的は、試薬を入れた、1以上の試薬貯槽の液レベルを容易に測定できる試料処理装置及び測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、請求項1に記載の特徴を持つ装置及び請求項9に記載の特徴を持つ方法により解決される。
本発明の第1の視点において、所定の位置に配置された複数の試薬貯槽と、1以上の試料を配置した1以上の試料担体を収容する1以上の移送容器を移送するための移送機構と、を含む試料処理装置が提供される。該試料処理装置は、試薬を入れた該試薬貯槽の液レベルを測定するための1以上のセンサを備え、該センサは該移送機構に配置され、該センサは、該複数の試薬貯槽までの垂直距離が一定となるように該移送機構に配置されている、ことを特徴とする。(形態1−1)
本発明の第2の視点において、試薬を入れた複数の試薬貯槽の液レベルを測定する方法が提供される。該方法は、センサにより1以上の試薬貯槽の液レベルを測定するステップを含み、該センサは、液レベルを測定する該試薬貯槽の上にある移送機構によって移動されると共に、該センサは該試薬貯槽に対して一定の垂直距離を保って移動される、ことを特徴とする。(形態2−1)
なお、特許請求の範囲に付記した図面参照符号は、専ら理解を助けるためであり、図示の態様に限定することを意図するものではない。
有利な実施形態は従属項に記載のとおりである。以下に本発明における可能な形態を示す。
(形態1−2)
前記液レベルは、前記センサによって非接触式で測定されることが好ましい。
(形態1−3)
前記センサは超音波センサであることが好ましい。
(形態1−4)
前記センサにより測定された情報を評価する評価ユニットを備えることが好ましい。
(形態1−5)
前記移送機構は、前記移送容器を前記試薬貯槽内に導入し、また前記試薬貯槽から取り出すためのグリッパを含むことが好ましい。
(形態1−6)
前記センサは、前記移送容器が前記試薬貯槽に導入される前に該センサにより該試薬貯槽の液レベルを測定できるように、前記移送機構に配置されることが好ましい。
(形態1−7)
前記移送機構を制御する制御ユニットを備え、該制御ユニットは前記センサによって測定した前記試薬貯槽の前記液レベルが少なくとも所定の最小液レベルである場合にのみ、前記移送容器を該試薬貯槽の中に導入するように該移送機構を制御することが好ましい。
(形態1−8)
1以上の前記試薬貯槽の前記液レベルに基づいて生成された少なくとも1つの情報をユーザに出力する出力ユニットを備えることが好ましい。
(形態2−2)
前記センサが各試薬貯槽の液レベルに関する情報を有する信号をそれぞれごとに生成するステップと、該信号は評価ユニットに伝送され、該評価ユニットにより所定の最小液レベルと比較されるステップを含むことが好ましい。
(形態2−3)
前記移送機構は、前記センサによって測定された前記試薬貯槽の前記液レベルが少なくとも前記所定の最小液レベルである場合にのみ、前記移送容器を該試薬貯槽の中に導入するように、制御ユニットにより制御されるステップを含むことが好ましい。
(形態2−4)
前記移送機構は、前記センサによって測定された前記試薬貯槽の前記液レベルが多くとも所定の最大液レベルである場合にのみ、前記移送容器を該試薬貯槽の中に導入するように、制御ユニットにより制御されるステップを含むことが好ましい。
(形態2−5)
1以上の前記試薬貯槽の前記液レベルに基づいて生成された少なくとも1つの情報を出力ユニットによりユーザに出力するステップを含むことが好ましい。
(形態2−6)
1以上の前記試薬貯槽の前記液レベルが前記評価ユニットによりユーザに出力されるステップ、及び/又は前記センサにより測定された該試薬貯槽の該液レベルが所定の最小液レベルよりも少ないとき、ユーザに対して1つの情報が出力されるステップ、を含むことが好ましい。
【0007】
(発明の効果)
本発明によれば、この試料処理装置は試薬を入れた試薬貯槽の液レベルを測定する1以上のセンサを含む。センサは、複数の試薬貯槽までの垂直距離が一定となるように、移送容器を移送するための移送機構に配置される。これにより、ただ1つのセンサで、装置内のすべての試薬貯槽の中の液レベルを測定することができる。
【0008】
(好適な実施の形態)
センサによる液レベルの測定は、非接触法によることが有利である。それにより、センサの汚染が防止でき、それによって液レベルの測定に誤差が生じる可能性が防止される。センサのメンテナンスも同様に低減できる。
【0009】
センサは超音波センサであることが特に有利である。このような超音波センサは標準的な部品であり、低コストで調達できる。
【0010】
さらに、センサによって得られた情報を評価する評価ユニットを設けることが有利である。これにより、試料処理装置を外部の評価ユニット、特にコンピュータに接続する必要がなくなる。これにより、コンパクトで低コストな装置とすることが可能となり、センサで測定された情報を評価する別の装置も一緒に持ち運んだり、あるいは2つ以上配置することなく、試料処理装置を別の場所との間で移動することができる。
【0011】
センサは、移送容器が試薬貯槽の中に導入される前に、センサでその試薬貯槽の試薬の液レベルを測定できるように移送機構の上に配置することが好ましい。こうすることにより、センサによって得られた試薬貯槽内の液レベルの情報の評価が所定の範囲に達していない場合は、試料担体を含む移送容器が試薬貯槽内に浸漬されないようにすることができる。したがって、例えば試料担体に載置された試料が一部しか染色されないで使用不能となるようなことが防止される。
【0012】
さらに、センサが移送機構の上に、複数の試薬貯槽までの垂直距離が一定になるように配設されることが有利である。その結果、試薬貯槽の液レベルを測定するコストが低減される。
【0013】
さらに、移送機構を制御する制御ユニットを備え、この制御ユニットが、センサによって測定した試薬貯槽の液レベルが少なくとも所定の最小限の液レベルである場合にのみ、移送容器を試薬貯槽の中に導入するように移送機構を制御することが有利である。これにより、移送容器の試料担体に載置された試料が部分的にしか処理されず、使用不能となることを回避できる。
【0014】
1以上の試薬貯槽の液レベルに基づいて生成された少なくとも1つの情報をユーザに出力する出力ユニットを設けることが好ましい。この情報は例えば、移送容器を浸漬する予定の試薬貯槽の液レベルが所定の範囲にない場合にそれを伝え、貯槽容器の液レベルを適切に調節するようにユーザに要求する信号であってもよい。出力ユニットはスクリーン画面であることが好ましい。
【0015】
代替的又は追加的に、この出力ユニットにより、1以上の試薬貯槽の液レベルを連続的にユーザに表示することにより、1以上の試薬貯槽の液レベルが許容範囲を超えてしまい、装置がまったく運転できなくなるか、限定された方法でしか運転継続できなくなる前の適切な時期にユーザが予防的に介入できるようにすることができる。
【0016】
本発明の更なる側面は、試薬の入った試薬貯槽の液レベルを測定する方法に関する。これは、センサによって1以上の試薬貯槽の液レベルを測定することができる。このセンサは、移送機構により、液レベルを測定する試薬貯槽の上を移動される。
【0017】
センサは、各試薬貯槽ごとに液レベルに関する1つの信号を生成し、その信号を評価ユニットに送り、信号は評価ユニットで所定の最小液レベルと比較される。その結果、試薬貯槽に十分な試薬が含まれていない場合は容易に検知することができる。信号は電気信号であることが好ましい。
【0018】
センサによって測定された試薬貯槽の液レベルが少なくとも所定の最小液レベルにある試薬貯槽内にのみ、移送機構が移送容器を導入するように、制御ユニットによって移送機構を制御することが特に有利である。これにより、試料が一部だけしか試薬に浸漬処理されず、それ以降評価不能となることを避けることができる。
【0019】
さらに、センサによって測定された試薬貯槽の液レベルが多くとも所定の最大液レベルにある試薬貯槽内にのみ、移送機構が移送容器を導入するように、制御ユニットによって移送機構を制御することが有利である。これにより、移送容器が浸漬された試薬貯槽がオーバーフローすることを防止できる。
【0020】
さらに、1以上の試薬貯槽の液レベルに基づいて生成された少なくとも1つの情報が、出力ユニットによりユーザに出力されることが有利である。1以上の試薬貯槽の液レベルがユーザに出力され、及び/又はセンサによって測定された試薬貯槽の液レベルが評価ユニットに記憶された最小液レベルよりも少ない場合に情報がユーザに出力されることが特に有利である。これにより、ユーザは迅速に介入して試薬貯槽に少なくとも最小液レベルに達するように試薬を供給することができ、試料処理の中断が短時間ですむ。
【0021】
独立方法クレームに記載した方法は、クレーム1に係る装置に同じように展開可能である。特にこの方法は、装置の従属クレーム又は対応する方法に記載の特徴により展開できる。
【0022】
本発明に係る更なる特徴及び利点は、添付の図面とともに以下の発明の詳細な説明における実施例の説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る試料処理装置の一実施例の概略斜視図である。
【図2】図1に記載の装置の詳細な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、試料処理装置10の一実施例の斜視図である。装置10は、所定の位置に配列された複数の試薬貯槽を含む。このような試薬貯槽の1つに、代表的に符号12を付して示している。試薬貯槽12はキューベットとも称する。図1に示すこの実施例では、試薬貯槽12は14aから14dまでの4列に配列されている。試薬貯槽列14aから14dは互いに平行に配列されており、全体として試薬貯槽12はマトリックス状に配列されている。このマトリックス状の配列全体の試薬貯槽12を、試薬貯槽領域又はキューベット領域とも称する。
【0025】
本発明の他の実施例として、試薬貯槽12は異なる配列でもよい。特に、試薬貯槽12はいくつかの平面をなして上下に配列してもよい。
【0026】
試薬貯槽12は、例えば試料を染色する試薬で満たされている。このような試薬は特に溶液であり、染色液であり、水でありうる。
【0027】
さらに、図1には2つの移送容器16a、16bが示されている。移送容器16a、16bは好ましくは移送バスケット16a、16bであり、ラックとも称する。移送容器16a、16bのそれぞれの幅は、試薬貯槽12の長さにおおよそ対応する。各移送容器16a、16bは、上端部に把手18a、18bを含む。この把手18a、18bは、移送容器16a、16bを試薬貯槽12に浸漬したとき、試薬貯槽12の上に突き出るように構成される。
【0028】
移送容器16a、16bにはそれぞれ少なくとも1つの試料担体(スライドガラスないしプレパラート)を収納することができる。そのような試料担体の典型例を符号20で示している。試料担体20は特にガラス製試料担体であり、スライドガラスないしプレパラートとも称する。各試料担体20には、処理すべき試料が少なくとも1つ配置されている。このような試料は特に生物学的材料の薄い切片である。
【0029】
試料の処理、特に生物学的材料の染色は、次のように行われる。まず移送容器16a、16bが試薬貯槽12に浸漬され、所定の時間だけ保持される。次に試薬貯槽12から取り出し、別の試薬貯槽12へ移送し、浸漬する。試料の処理ではこのような操作が複数回行われうる。
【0030】
ある試薬貯槽12から他の試薬貯槽12への移送容器16a、16bの移送は、移送ユニット22a、22bを用いて行われる。図示の実施例では、装置10は移送容器16a、16bを移送する2つの移送ユニット22a、22bを備えており、移送ユニット22a、22bは移送容器16a、16bを同時に移送することができる。代替的に、装置10は1つの移送ユニット22a、22bを含んでもよい。
【0031】
2つの移送ユニット22a、22bは2つのレール24a、24bに載せられている。2つのレール24a、24bはキューベット領域の対向する2つの側に、互いに平行に配置されている。各移送ユニット22a、22bはそれぞれ1つの第1の直線軸26a、26bを含む。第1の直線軸26a、26bの各端部には、それぞれ1つのスライド機構28a から28dが配置されている。移送ユニット22a、22bのスライド機構28a 、28cは第1のレール24aに乗っている。直線軸26a、26bの反対側のスライド機構28b、28dは他のレール24bの上に乗っている。スライド機構28a から28dをレール24a、24bの上で移動させることにより、移送ユニット22a、22bをx軸方向へ移動させることができる。直線軸26a、26bはx軸に直角のy軸方向に走っている。
【0032】
移送ユニット22a、22bはそれぞれ移送スライドヘッド30a、30bを含み、これらはy軸に沿って移動可能なように各直線軸26a、26bに載せられている。移送スライドヘッド30a、30bはそれぞれ相手の移送ユニット22a、22bに向いた面にグリッパ(持ち上げ手段)32a、32bを含む。グリッパ32a、32bは、x軸、y軸両方に対して直角であるz軸方向に移動可能である。
【0033】
移送容器16a、16bを移送する場合、グリッパ32a、32bを少なくともその一部が移送する移送容器16a、16bの把手18a、18bの下方にくるようにする。そしてグリッパ32a、32bを持ち上げる。グリッパ32a、32bは移送する移送容器16a、16bの(逆U字状の)把手18a、18bの上部梁(横バー)部材の下部に係合する。移送する移送容器16a、16bがグリッパ32a、32bによって、移送容器16a、16bの下端が移送容器16a、16bを運び出す試薬貯槽12の上にくるまで持ち上げられる。次に移送容器16a、16bは、各移送ユニット22a、22bによってx軸及び/又はy軸方向に移動され、次に移送容器16a、16bを浸漬する試薬貯槽12の上に移動される。そして移送容器16a、16bが試薬貯槽12の底部に乗るまで、グリッパ32a、32bとそれに支持されている移送容器16a、16bをz軸方向に下降させる。グリッパ16a、16bは好ましくはさらにもう少し下方に移動し、そして移送容器16a、16bの把手18a、18bの下方でx軸方向へ引き離される。なお把手18a、18bは、その一対のアーム部分が移送容器16a、16bの両端から延在しており、移送容器16a、16bと一体に構成されている。
【0034】
この実施例では、2つの平行レール24a、24bと2つの移送ユニット22a、22bで構成された移送機構は、互いに直角な3つの直線軸を持つ直線的移送機構である。代替的に、他の移送機構でも同様に適用可能である。
【0035】
各移送ユニット22a、22bはそれぞれ1つのセンサ34を含む。図1では、第1の移送機構22aのセンサは移送スライドヘッド30aでカバーされているので見えない。センサ34により、試薬の入った試薬貯槽の液レベルを測定できる。試料担体20にある試料を染色するとき、それぞれの試薬貯槽12が適正な量の試薬で満たされていることが重要である。もしもある試薬貯槽12の試薬量が多すぎる場合、移送容器16a、16bを浸漬したときに移送容器16a、16b及び試料担体20により試薬が押し出されてあふれてしまう。その結果、装置10及び/又はその周辺が汚染される。試薬貯槽12がいくつかの平面で上下に配置されている装置の場合、ある試薬貯槽12からあふれた試薬は、その下に配置された試薬貯槽12の試薬を汚染するであろう。
【0036】
もしも試薬貯槽12の試薬が少なすぎると、移送容器16a、16bによって試薬貯槽12に浸漬されたときに、試料担体20にある試料の全体又は少なくとも一部が試薬に浸漬されない。その結果、試料は全く、あるいは少なくとも一部が染色されず、特に顕微鏡試料の場合はその後使用不能となる。試薬貯槽の液レベルが低すぎる原因は、例えば試薬が消費されてしまったか、ユーザが試薬貯槽12への補給を忘れたか、間違った試薬貯槽へ補給した等が考えられる。したがって試薬貯槽12の液レベルは所定の最小レベルから所定の最大レベルまでの間である必要がある。
【0037】
センサ34は、第2の移送ユニット22bの移送スライドヘッド30bに備えられ、移送容器16a、16bが試薬貯槽12に浸漬される前に試薬貯槽12の液レベルに関する情報データをセンサ34で測定できるようになっている。試薬貯槽12の液レベルに関する情報データ測定は、非接触式で行われる。これにより、センサが汚染することがなく、洗浄やメンテナンスを最小限にできる。液レベルを測定するセンサ34は特に超音波センサ34である。図1では超音波センサ34から発する超音波は符号36で示されている。センサ34を移送スライドヘッド30bに配置することの利点は、センサ34と試薬貯槽12との距離が一定であることである。これにより、試薬貯槽12の液レベルが低コストで測定できる。
【0038】
上記の説明は第1の移送ユニット22aにも当てはまるものである。
【0039】
本発明の代替的実施例として、液レベルを測定する複数のセンサ34を、各移送スライドヘッド30a、30bに備えることができる。代替的に、センサ34は移送スライドヘッド30a、30bのスライドガイドを成す直線軸(ないし直線軸の桁部材)26a、26b上に備えることもできる。
【0040】
更なる代替的実施例として、センサ34は試薬貯槽領域の上の独自の移送機構により、駆動されてもよい。
【0041】
さらに、各移送ユニット22a、22bは評価ユニット38を含みうる。この評価ユニット38もまた移送スライドヘッド30a、30bに備えることができ、センサ34で生成された試薬貯槽12の液レベルに関する情報データを伝送する適切なライン40によりセンサ34と接続される。センサ34により生成されたデータは特に電気信号であり、電線40により評価ユニット38に伝送される。この電気信号は、好ましくは4から20mAの範囲であり、所定の最大液レベルに比例している。
【0042】
評価ユニット38により、センサ34で生成された情報データが評価される。特に、センサ34で測定された液レベルは、評価ユニット内に記憶された所定の最小液レベル及び最大液レベルと比較される。測定された液レベルを最小液レベルと最大液レベルと比較した結果、移送容器16a、16bを浸漬すべき試薬貯槽12の試薬が多すぎるか少なすぎる場合、移送容器16a、16bは試薬貯槽12に浸漬されない。好ましくは、試薬貯槽12の中へ移送容器16a、16bを浸漬することを停止することは自動的に行われ、装置10を制御するための図示しない制御ユニットによってプログラムが停止される。プログラムには、どのシーケンスで、どの移送容器16a、16bがどの試薬貯槽12に浸漬されるか、そしてどの移送容器16a、16bがどの試薬貯槽12の中でどの程度保持されるかが記憶されている。移送容器16a、16bに配置された試料の処理は、試薬貯槽12の中の試薬液レベルが適正な範囲にあるとき、つまり最小液レベルと最大液レベルの間にある場合にのみ続行される。
【0043】
追加的又は代替的に、測定された液レベルに関して生成された情報は、図示しない出力ユニットを介してユーザに出力できる。特に、それは試薬貯槽12の液レベルが最小液レベルよりも少ないか、最大液レベルよりも大きい場合に、ユーザに表示される。そしてユーザにその試薬貯槽12の液レベルを適切に調節するよう要求することができる。追加的又は代替的に、音響信号でユーザに伝えることもできる。
【0044】
追加的又は代替的に、1つ又は複数の試薬貯槽の液レベルを同様に出力ユニットによりユーザに出力することができる。この出力ユニットは表示スクリーンであることが好ましい。これにより、現時点での各試薬貯槽12の液レベルを連続的にユーザに表示することができ、ユーザは試薬貯槽12の液レベルが最小液レベルよりも少なくなる前にあらかじめ処置することができる。適切な時期に試薬貯槽12に試薬を供給することにより、試料処理の中断を避けることができる。こうして、装置10の不稼動時間をなくすか、少なくとも減少することができる。
【0045】
さらに、試薬貯槽12の液レベルは、追加的に又は代替的に図示しない中央評価ユニットに送り、更なる処理のためにアクセスできるようにすることができる。
【0046】
図2は、図1に係る装置10の詳細な斜視図である。同一の構造又は機能を持つ要素は同一の符号で示している。
【0047】
試薬貯槽12は試薬42で満たされている。試薬貯槽12の試薬42の液レベルは線44で示している。試薬貯槽12の液レベルは、試料担体20が試薬貯槽12に浸漬される前に超音波センサ34で測定される。
【0048】
本発明について、好適な実施の形態及び実施例に関連して説明したが、記載された解決原理に基づき、特許請求の範囲の枠内において、図示された部材ないし方法ステップの、当事者に自明の修正、変更ないし置換えが許容される。
【符号の説明】
【0049】
10 試料処理装置
12 試薬貯槽
14a、14b、14c、14d 試薬貯槽列
16a、16b 移送容器
18a、18b 把手(移送容器の)
20 試料担体(スライドガラスないしプレパラート)
22a、22b 移送ユニット
24a、24b レール
26a、26b (スライド機構の)直線軸(ないし、桁部材)
28a、28b、28c、28d スライド機構(レール上の)
30a、30b 移送スライドヘッド
32a、32b グリッパ
34 センサ
36 超音波
38 評価ユニット
40 ライン(電線)
42 試薬
44 液レベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の位置に配置された複数の試薬貯槽(12)と、
1以上の試料を配置した1以上の試料担体(20)を収容する1以上の移送容器(16a、16b)を移送するための移送機構(22a、22b)と、を含む試料処理装置であって、
試薬(42)を入れた該試薬貯槽(12)の液レベル(44)を測定するための1以上のセンサ(34)を備え、
該センサは該移送機構(22a、22b)に配置され、
該センサは、該複数の試薬貯槽(12)までの垂直距離が一定となるように該移送機構(22a、22b)に配置されている、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記液レベル(44)は、前記センサ(34)によって非接触式で測定されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記センサ(34)は超音波センサであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記センサ(34)により測定された情報を評価する評価ユニット(38)を備えることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載の装置。
【請求項5】
前記移送機構(22a、22b)は、前記移送容器(16a、16b)を前記試薬貯槽(12)内に導入し、また前記試薬貯槽(12)から取り出すためのグリッパ(32a、32b)を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一に記載の装置。
【請求項6】
前記センサ(34)は、前記移送容器(16a、16b)が前記試薬貯槽(12)に導入される前に該センサ(12)により該試薬貯槽(12)の液レベル(44)を測定できるように、前記移送機構(22a、22b)に配置されることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記移送機構(22a、22b)を制御する制御ユニットを備え、該制御ユニットは前記センサ(34)によって測定した前記試薬貯槽(12)の前記液レベル(44)が少なくとも所定の最小液レベルである場合にのみ、前記移送容器(16a、16b)を該試薬貯槽(12)の中に導入するように該移送機構(22a、22b)を制御することを特徴とする、請求項4〜6のいずれか一に記載の装置。
【請求項8】
1以上の前記試薬貯槽(12)の前記液レベル(44)に基づいて生成された少なくとも1つの情報をユーザに出力する出力ユニットを備えることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一に記載の装置。
【請求項9】
試薬を入れた複数の試薬貯槽の液レベルを測定する方法であって、
センサ(34)により1以上の試薬貯槽(12)の液レベル(44)を測定するステップを含み、
該センサ(34)は、液レベル(44)を測定する該試薬貯槽(12)の上にある移送機構(22a、22b)によって移動されると共に、
該センサ(34)は該試薬貯槽(12)に対して一定の垂直距離を保って移動される、
ことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記センサ(34)が各試薬貯槽(12)の液レベル(44)に関する情報を有する信号をそれぞれごとに生成するステップと、該信号は評価ユニット(38)に伝送され、該評価ユニット(38)により所定の最小液レベルと比較されるステップを含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記移送機構(22a、22b)は、前記センサ(34)によって測定された前記試薬貯槽(12)の前記液レベル(44)が少なくとも前記所定の最小液レベルである場合にのみ、前記移送容器(16a、16b)を該試薬貯槽(12)の中に導入するように、制御ユニットにより制御されるステップを含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記移送機構(22a、22b)は、前記センサ(34)によって測定された前記試薬貯槽(12)の前記液レベル(44)が多くとも所定の最大液レベルである場合にのみ、前記移送容器(16a、16b)を該試薬貯槽(12)の中に導入するように、制御ユニットにより制御されるステップを含むことを特徴とする、請求項9〜11のいずれか一に記載の方法。
【請求項13】
1以上の前記試薬貯槽(12)の前記液レベル(44)に基づいて生成された少なくとも1つの情報を出力ユニットによりユーザに出力するステップを含むことを特徴とする、請求項9〜12のいずれか一に記載の方法。
【請求項14】
1以上の前記試薬貯槽(12)の前記液レベル(44)が前記評価ユニットによりユーザに出力されるステップ、及び/又は
前記センサ(34)により測定された該試薬貯槽(12)の該液レベル(44)が所定の最小液レベルよりも少ないとき、ユーザに対して1つの情報が出力されるステップ、
を含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−160153(P2010−160153A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1977(P2010−1977)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(500113648)ライカ ビオズュステムス ヌスロッホ ゲーエムベーハー (45)
【Fターム(参考)】