説明

試料分析チップ及びこれを用いた試料分析方法

【課題】ウェルへの送液を行う試料分析チップにおいて、送液方法が簡易でかつ低コストな試料分析チップを提供すること。
【解決手段】基材に複数のウェル102と、各ウェルに繋がる流路と、流路に連絡し、溶液を注入する注入口とを有し、該基材を回転させてウェルに溶液を配液する試料分析チップであって、前記流路は、前記注入口と連絡し、回転中心側に設けられた主流路103と、各前記ウェルと前記主流路をと連絡する側路105とを有し、前記ウェルの一部の親水性が異なることを特徴とする試料分析チップとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学反応の検出や分析等に用いる試料分析チップ及び試料分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばDNA反応、たんぱく質反応等の生化学反応の分野において、微量の試料溶液を処理する反応装置として、μ−TAS(Total Analysis System)やLab−on−Chipと呼ばれる技術が知られている。これは、1個のチップやカートリッジに複数の反応室(以下、ウェル)や流路を供えたものであり、複数の検体の解析、あるいは複数の反応を行うことができる。これらの技術はチップ及びカートリッジを小型化することで扱う薬品を少量にすることが出来、様々なメリットがあるとされてきた。
【0003】
そのメリットとは例えば従来使用していた強酸や強アルカリ薬品の分量が微量化することで人体への影響や環境への影響が格段に低くなること、また、生化学反応等に用いられる高額な試薬類の消費量が微量化することで分析、反応に費やすコストを低減できること、などが挙げられる。
【0004】
チップやカートリッジを用いて生化学反応を最も効率よく行うためには、複数のウェルにそれぞれ異なる種類の薬品や検体、酵素を配置し、これら薬品や検体、酵素と反応を起こす試薬を一本ないし数本の主導管からまとめてウェルに流し入れ、異なった複数の反応を生じさせる必要がある。
この手法を用いれば、複数種の検体を同じ試薬で同時に処理をしたり、また逆に一種類の検体に同時に複数の処理を施したりすることが出来、従来かかっていた時間や手間を大幅に減らすことが可能である。
【0005】
この種の手法を用いる際、複数の反応場に等量のサンプルを送液する技術と、各ウェルの中身を混ざり合わないようにする技術が重要となる。このようなウェルへの送液を行うチップについての先行技術としては以下のものが挙げられる。
【0006】
特許文献1では、液溜めから遠心力を用いてウェルへの送液を行うチップにおいて、ウェルを独立させるために流路を変形、密封している。そのため流路を押しつぶす機構が必要であり、自動化が困難である。また、従来の遠心送液チップのように中央の液溜りから周囲のウェルに遠心送液を行うと、各ウェルへの送液量にばらつきが生じてしまう。
【0007】
特許文献2では、遠心方法を自転+公転を織り交ぜることで各ウェルへの送液量にばらつきを解決している。しかし、この手法もチップが自転+公転するための複雑な機構とスペースが必要となる。
【0008】
特許文献3では液体貯留部と遠心方向に伸びる流路を有するウェルを複数連結させた分析用媒体が公開されているが、この文献ではウェルの親水性などには注視しておらず、ウェルに詰まった空気との押し合いで流体を制御するとある。この手法では各ウェルに送液された液体が主流路方向に流れ込むことで、隣り合うウェル同士の独立性が低下、あるいはウェル内で反応する溶液量がばらつき、反応のたびに結果に差異が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2004−502164号公報
【特許文献2】特許第3699721号公報
【特許文献3】特開2008−83017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のような従来技術の問題点を鑑みて、本発明はウェルへの送液を行う試料分析チップにおいて、送液方法が簡易でかつ各ウェルから逆流による主流路への流れ込み現象が起きにくい、低コストな試料分析チップを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記のような問題を解決するために為された本発明の請求項1に係る発明は基材に複数
のウェルと、各ウェルに繋がる流路と、流路に溶液を注入するための注入口とを有し、該
基材を回転させてウェルに溶液を配液する試料分析チップであって、前記流路は、前記注
入口と連絡し、前記ウェルより回転中心側に設けられた主流路と、前記ウェルと前記主流
路とを連絡する側路を有し、前記ウェル部は、その内部で、一部の親水性が異なることを
特徴とする試料分析チップである。
【0012】
請求項2に係る発明は、前記ウェル部が、底面とその壁面で親水性が異なることを特徴とする請求項1に記載の試料分析チップである。
【0013】
請求項3に係る発明は、前記ウェル部が、回転中心側の主流路とは逆側の壁面の面積の少なくとも半分以上の親水性が異なることを特徴とする請求項1ないし2に記載の試料分析チップである。
【0014】
請求項4に係る発明は、前記ウェル部が、回転中心側の主流路とは逆側の壁面の少なくとも半分の表面官能基が、化学的に親水化処理された表面官能基を有することで、回転中心側の表面官能基とは異なることを特徴とする請求項1ないし3に記載の試料分析チップである。
【0015】
請求項5に係る発明は、回転中心側の主流路とは逆側の壁面の少なくとも半分の親水化処理をされた表面官能基を有する箇所が、プラズマ処理またはコロナ放電処理によって、酸素官能基を表面に有することを特徴とする請求項1ないし4に記載の試料分析チップである。
【0016】
請求項6に係る発明は、前記ウェル部が、回転中心側の主流路側の壁面の面積の少なくとも半分の表面官能基が、撥水化処理された表面官能基を有することで、回転中心側とは逆側の壁面の表面官能基とは異なることを特徴とする請求項1ないし3に記載の試料分析チップである。
【0017】
請求項7に係る発明は、ウェル部の、回転中心側の主流路とは逆側の壁面の少なくとも半分の親水性が異なる表面を、回転中心側の表面形状とは異なる形状を有することを特徴とする請求項1ないし3に記載の試料分析チップである。
【0018】
請求項8に係る発明は、前記形状変化を、表面粗さの違いにより形成したことを特徴とする請求項7に記載の試料分析チップである。
【0019】
請求項9に係る発明は、前記表面形状を、ナノインプリント法により微細な構造を持つ表面を有することで形成したことを特徴とする請求項7に記載の試料分析チップである。
【0020】
請求項10に係る発明は、前記ウェルの表面粗さが、Ra=0.16以下であることを特徴とする請求項7ないし8に記載の試料分析チップである。
【0021】
請求項11に係る発明は前記ウェルの表面粗さを、回転中心側の主流路とは逆側の壁面の少なくとも半分にブラスト処理をすることで形成したことを特徴とする請求項7ないし8に記載の試料分析チップである。
【0022】
請求項13に係る発明は、前記側路が、回転中心方向に対して傾いて形成されていることを特徴とする請求項1ないし12に記載の試料分析チップである。
【0023】
請求項14に係る発明は、前記主流路は前記ウェルより回転中心側に設けられ、隣り合うウェルの間で回転中心方向に対して一つの山を有するように形成されていることを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の試料分析チップである。
【0024】
請求項15に係る発明は、試料分析チップの前記ウェルが回転中心に対して円周状に配置されていることを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載の試料分析チップである。
【0025】
請求項15に係る発明は、前記主流路が、回転中心方向に対して傾いて形成されていることを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載の試料分析チップである。
【0026】
請求項16に係る発明は、前記試料分析チップは前記ウェル及び前記流路を形成した第一の基材と、該基材と張り合わせた第二の基材とを有する請求項1ないし15のいずれかに記載の試料分析チップある。
【0027】
請求項17に係る発明は、前記基材のいずれか一方が光透過性材料で形成されていることを特徴とする請求項16に記載の試料分析チップである。
【0028】
請求項18に係る発明は、第一の基材が光透過性の樹脂材料であり、第二の基材が金属材料であることを特徴とする請求項16に記載の試料分析チップである。
【0029】
請求項19に係る発明は、請求項1ないし18のいずれかに記載の試料分析チップの前記主流路に溶液を注入する工程と、該試料分析チップを回転させて溶液を前記各ウェルに配液する工程と、を有する試料分析方法である。
【0030】
請求項20に係る発明は、請求項19に記載の試料分析方法において、前記ウェルに配液する工程の後に、ミネラルオイルを前記各ウェルに配液する工程を有することを特徴とする試料分析方法である。
【0031】
請求項21に係る発明は、請求項19又は20に記載の試料分析方法を用いたことを特徴とする遺伝子解析方法である。
【発明の効果】
【0032】
本発明による試料分析チップによれば、簡易で機能的、かつ安全安価な反応チップを実現することができる。さらに、1種類の検体に対して複数の処理を施すことができる。
【0033】
また、本発明による試料分析チップによれば、製造工程において、分注した試薬を回転中心側の主流路とは逆側の少なくとも半分の箇所に保持でき、主流路方向に対する流れ込みを防止することが出来る。
【0034】
主流路からウェルに遠心力によって送液された際、ウェルとその一部の親水性が異なるため、ウェルからの逆流による側路への流れ込み現象を抑えることが出来る。そのため、隣り合う他のウェルの溶液同士の接触を防ぐことで、溶液同士のコンタミネーションを抑えることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の試料分析チップの一様態を示す平面図である。
【図2】本発明の試料分析チップのウェルの一様態を示す平面図である。
【図3】本発明の試料分析チップの一様態を示す平面図である。
【図4】本発明の試料分析チップの一様態を示す平面図である。
【図5】本発明の試料分析チップの一様態を説明するための斜視図である。
【図6】本発明の試料分析チップの一様態を説明するための斜視図である。
【図7】実施例1における試料分析チップのウェルの一様態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の試料分析チップを図面に基づいて説明する。
図1は本発明の試料分析チップの一様態を示した平面図である。本発明のチップは、基材101上に複数のウェル102と、ウェルに溶液、例えば液体試料を送液するための流路を有している。流路は、各ウェルに送液するために、少なくとも各ウェルと連絡する一つの主流路103を有し、さらに主流路とウェルをつなぐ側路105を有する。流路には液体試料を注入するための注入口を有する。図1の様態では、主流路の端部に注入口(INLET)及びもう一方の端部に空気の脱出口を兼ねた出口(OUTLET)を有している。
【0037】
本発明の試料分析チップは当該チップを回転させることにより生じる遠心力により、各ウェル102に配液するものであることから、中央部に回転軸の貫く点(以下、中心点)のある円盤形状であることが好ましいが、チップを貫く回転軸に対して回転可能に形成されていれば特に制限はない。円盤形状であれば、その中心が回転軸となるようにして、その円盤形状のチップに同心円状になるようにウェルを配置することができるため、スペースが効率的である。均等にウェルに配液するには遠心力を均等に掛けることが重要であるが、チップを、INLET/OUTLET107の領域を除き、中心点を軸とする回転対称性を持つように設計することで容易に実現することができる。すなわち、N個のウェルがあるとすると、N回対称となるようにすると、均等に遠心力を掛けることができる。もちろん、各ウェルの配液量を異ならせる場合には、この限りではない。また同心円状にウェルが配置されていることにより、基材を回転させることによって、一箇所の検査領域で全てのウェルの分析が可能である。
【0038】
主流路103はウェルよりも中心点側に形成されている。さらに、本発明の試料分析チップでは、この主流路が、隣り合うウェルの間で中心点方向に一つの山を有するように形成されていることを特徴とする。ここで隣り合うウェルとは、主流路からウェルへの送液流路が前後しているウェルを意味する。また、中心点方向への山を有するとは中心点方向への極大点(主流路山部103a)を持つことを意味している。このように、隣り合うウェルの間で中心点方向に一つの山を有するように形成することで、主流路に注入された液体が、チップ回転時に主流路山部で自然と途切れるため、各ウェルへの配液量のバラツキを低減することができる。
【0039】
ウェル102と主流路103との連絡箇所、即ち主流路103と側路105との接続箇所は、主流路の山部と山部の間の谷部130bであることが好ましい。谷部とは主流路の山と山との間で最も中心点から距離が遠い箇所である。この箇所でウェルと主流路を連絡することにより、配液時の主流路への溶液の残留を減らすことができる。
【0040】
また主流路103と、ウェル102との連絡口は、後述する試料分析チップを用いた処理方法に記載するように、チップを回転させる前の段階では、ウェルに溶液が浸入しない程度の幅及び断面積である必要がある。表面張力が関係するため用いる溶液にも拠るが、例えば溶媒が水であるとすると、2×2mm以下であればこの条件を満たす。
【0041】
また、ウェル102内に空気を残留させないために、ウェルの中心点に最も距離が近い点で主流路と連結することが好ましい。つまり、側路105を形成する場合には、ウェル側の中心点に最も近い点と、主流路側の谷部を結ぶように形成することが好ましい。
【0042】
さらに、本発明の試料分析チップでは、図2に示すように各ウェル102部が、ウェルとその一部で親水性が異なるような処理が施されている。
【0043】
したがって、製造時にウェルに試薬を固定する際に、各ウェル内の回転中心側の主流路とは逆側の壁面の少なくとも半分の箇所301部に、確実に分注試料を固定することができる。そのために、各ウェル内の301部に処理を施すことで、表面官能基の違いを利用し、親水性の違いを有するようにすることが重要である。
【0044】
このための方法としては、各ウェル内の301部に親水処理を施すことにより、分注された試薬を保持することができる。親水処理の手法としては、プラズマ処理やコロナ放電処理などが挙げられ、どちらも一般的な手法と言える。これら処理によって、表面に酸素官能基を有するような構造を形成することで、親水性の異なるウェルを有する試料分析チップとする。
【0045】
上記の処理は、各ウェル内の回転中心側の主流路とは逆側の壁面の表面積50%以上80%以下で行われていることが好ましい。
【0046】
また、別の方法としては、各ウェル内の301部の表面形状が異なるウェルを形成することで、ウェル内の一部の親水性を変化させることで、分注された試薬を保持することができる。
【0047】
このための方法としては、ウェル内の表面粗さを面積に対し変更することで、側路との表面粗さとの違いにより、分注試薬をウェル内に保持することができる。
本発明での表面粗さの指標としては、算術平均粗さ(Ra)を使用することができる。
【0048】
また、形状の変更としては、ナノインプリンティング法により、301部の表面に、ナノスケールの微細な構造を形成することで、親水化表面を形成できる。これにより、分注された試薬をウェル内に保持することが可能となる。
【0049】
また表面粗さの違いを形成する手法として、ブラスト処理がある。ウェル内の301部の表面にブラスト処理を施すことで、表面粗さを大きくすることで、親水性の異なる構造を形成し、分注された試薬を保持することが可能となる。
【0050】
上記の表面形状、粗さ変更は、各ウェル内の回転中心側の主流路とは逆側の壁面の表面積50%以上80%以下で行われていることが好ましい。
【0051】
図3は本発明の試料分析チップの別の一様態を示した平面図である。図3の様態では、主流路の路幅が主流路山部103aで狭く、主流路谷部103bで広くなっている。主流路山部103aに該当する領域に存在する溶液が少ない方が、配液バラツキが少ないため、山部の主流路の断面積は、他の部分の断面積よりも小さいことが好ましい。したがって、山部の流路幅を狭くする、及び/または、深さを浅くすることが好ましい。また同様の理由で山部に近づくにつれて主流路の断面積が小さくなるようにすることが好ましい。
【0052】
さらに、主流路谷部103bの路幅を広げることで、各ウェル102への配液量を制御することができる。したがって、図3の試料分析チップのように山と山との間の流路をチャンバ様とし、主流路山部から隣接する主流路山部までの主流路の容積を任意に設計すれば、同等の容量のサンプルを両山部に挟まれた谷部から連通するウェルに送液することができるため、任意量の溶液を各ウェルに設定することが可能である。
【0053】
またウェル102の容積は1μl以上100μl以下であることが好ましい。1μlより小さいと、遠心力が十分に働かず、ウェルへの送液が行われ辛く、また100μlよりも大きいと、試薬の混合性が低下したり、ウェル内の温度の均一性が低下する、といった現象が生じる可能性がある。
【0054】
また図3の様態では、側路105は中心点の方向から傾いて形成されている。このように側路を傾斜させて形成することにより、遠心力を掛けたときにウェルの空気が側路の内側に沿って主流路方向へ移動し、一方溶液は側路の外側に沿ってウェル方向へ移動するため、スムーズにウェル内へ溶液を移動させることができる。傾斜させる角度としては、中心点の方向と側路との為す角が10度から80度の間であることが好ましい。10度以下だとウェルからの排気とウェルへの溶液の浸入が干渉して溶液の浸入を阻んでしまう場合があり、80度を超えると、側路方向への遠心力が弱く、溶液がウェルへ移動しない場合がある。
【0055】
図4は本発明の試料分析チップのさらに別の一様態である。図4の試料分析チップでは、主流路103の山が中心点方向に対して傾いていることで、側路105に対して主流路の左右の基材平面での面積が不均等に設計されている。側路105に対して左右の主流路が路幅の狭い流路側と、広い流路側が存在し、広い流路側にウェルとの連絡口である側路105が形成されていることで、ウェルから側路へ移動した空気と、主流路の溶液の入れ替わり時に面積が大きい主流路側に偏って気泡と液体の入れ替わりが生じる。このため主流路への残液を減らすことができる。したがって、各ウェルに接続する側路及び主流路を上記のような構成とし、主流路が路幅の狭い流路側と、広い流路側が山部を境に交互に形成されるようにすることで、各チャンバ様主流路で同様の現象が同時に生じるために、配液のバラつきを減少する事ができる。
【0056】
次に本発明の試料分析チップの製造方法について説明する。
【0057】
図5は本発明の試料分析チップの構造の一様態を示した斜視図である。
本発明の試料分析チップはウェル及び流路(主流路及び側路を含む)を形成した第一の基材401に、第二の基材402を張り合わせることで作製することができる。第一の基材及び第二の基材の少なくとも一方には試料分析装置の具備するチップ回転機構によってチップを回転させるための回転手段として、例えばチップ回転機構に固定するための担持部405を有する。また注入口及び空気の脱出口を兼ねた出口(INLET/OUTLET)のための貫通孔を第一の基材及び第二の基材の一方に、少なくとも一つ形成する。貫通孔は基材を張り合わせたときに主流路の端部に一致する。以下では、説明の便宜上、蛍光反応等を検出、測定する際に測定する面に位置する基材側を「上側」、下側に位置する側を「下側」とする。
【0058】
基材としては、試料に影響を与えないものであれば特に制限はないが、特にポリプロピレン、ポリカーボネート、アクリルのいずれかを含む樹脂材料を用いれば、良好な可視光透過性を確保することができる。ポリプロピレンとしては、ホモポリプロピレンやポリプロピレンとポリエチレンとのランダム共重合体を使用することができる。また、アクリルとしては、ポリメタクリル酸メチル、または、メタクリル酸メチルとその他のメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、スチレンなどのモノマーとの共重合体を使用することができる。また、これらの樹脂材料を使用する場合、チップの耐熱性や強度を確保することもできる。樹脂材料以外としては、アルミニウム、銅、銀、ニッケル、真鍮、金等の金属材料を挙げることができる。金属材料を用いた場合、加えて熱伝導率及び封止性能に優れる。なお張り合わせる基材のうち少なくとも上側基材のウェル底部を透明とすることで、蛍光等の検出・分析を外部から行うことができる。なお本発明における「透明」及び「光透過性」とは、形成した際の可視光域(波長350〜780nm)の全平均透過率が70%以上であるものとする。
【0059】
ウェルや流路を形成する基材の加工方法としては、樹脂材料の場合には、射出成形、真空成形等の各種樹脂成形法や、機械切削などを用いることができる。金属材料の場合には、厚手の基材を用いた研削加工やエッチング、薄手の金属シートにプレス加工や絞り加工を施すことで形成することができる。
【0060】
また、第1の基材として特開にポリプロピレン、ポリカーボネート、アクリルのいずれかを含む樹脂材料を用いた場合、良好な光透過性、耐熱性、強度を確保することができる。また、第2の基材の厚みが50μm〜3mmの範囲にある場合、良好な光透過性、耐熱性、強度を確保でき、凹部の加工を確実に行うことができる。
【0061】
また、第2の基材の厚みが20μm〜300μmの範囲にある場合、第1の基材の熱伝導性及び封止性の双方を満足することができる。第1の基材の厚みが300μmよりも大きいと、熱容量が大きくなり、熱応答性が低下するおそれがある。
【0062】
図6に本発明の試料分析チップの断面図を示した。第一の基材401には、チップを貫通する溶液の注入口203と、注入液がチップに流れ込むための主流路となる溝103と、チップの外周部に延びた各ウェルと連通する側路となる溝105と、チップの外周部のウェルとなる窪み102とが成形されている。このウェル102部は、回転中心側の主流路とは逆側の壁面の面積の少なくとも半分以上の親水性が異なる表面を有している。なお図6の断面図は注入口(INLET/OUTLET)からウェルまでの経路を模式的に示したものであり、主流路及び側路の形状はこれに限られない。注入される溶液をすべてのウェルに充満するためには、主流路の容積は、各ウェルの容積の合計より大きい必要がある。ただし、ウェルに試薬501が固定されている場合、その分反応ウェルに入れる液体試料の量が減るため、流れ込む流路の容積をその分減少してもよい。蛍光反応や測定のため、第一基材側で検出測定を行なう場合には、ウェルの凹部が平坦な台形になっていることが好ましい。
【0063】
基材を張り合わせる前に、ウェル102に反応用の試薬501を固定する。各ウェルで異なる試薬を用いることができる。各反応ウェルにそれぞれ異なる試薬を固定することによって、1つ検体(試料)に対して複数の処理を施すことができる。また、実際反応を行うための試薬の一部を各ウェルに固定し、残りの試薬は液体試料と一緒に導入するようにしてもよい。ウェルに試薬を固定する際に、各ウェル内の301部に、試料の分注を行う。また、試薬をウェルに固定した後、ワックス502を滴下してもよい。具体的には、ワックスをホットプレート上に溶融させ、ピペットを用いて乾燥させた試薬を覆うように滴下する。このとき、ワックスは数秒で固化する。ワックスは、試薬をウェルの凹部に固定させる役割を有する。
【0064】
基材の張り合わせ方法としては、一方の基材に接着層として樹脂コーティング層を設け、これを溶融させて両基材を接着する方法が挙げられる。樹脂コーティング層は、熱伝導率の高い金属材料基材に設けて溶融接着することが好ましい。樹脂コーティング層の材料の材料としては、PETやポリアセタール、ポリエステルやポリプロピレン等の樹脂材料を用いることができる。
【0065】
この張り合わせ方法においては、微細加工しやすく、蛍光測定に好適な光透過性の樹脂材料を第一の基材に用い、第二の材料としては熱伝導率が高く樹脂コーティング層を設けて溶融接着による張り合わせが容易な金属材料を用いることが好ましい。また金属基材表面に樹脂コーティング層を形成することにより、材料を選定する際に金属基材自体の耐薬品性は考慮しなくて良い。
【0066】
また、基材表面に樹脂コーティング層を形成する際、樹脂コーティング層の下地としてアンカー層を形成することによりレーザを用いた融着が可能である。アンカー層にはレーザ波長光を吸収するカーボンブラック(光吸収性材料)が練り込まれており、レーザ光を照射することにより発熱して樹脂コーティング層を溶融接着することができる。あるいは、アンカー層にカーボンブラックを添加することに代えて、樹脂コーティング層にカーボンブラックを添加したり、樹脂コーティング層の表面を黒色に塗装したりしても良い。例えば波長900nm程度の赤外光フォトダイオードレーザーの光を照射することによっても樹脂コーティング層を効率良く溶融することができる。レーザ溶着は、熱溶着と異なり、チップを加熱する必要がないことから、チップやチップに固定されている試薬に殆ど影響を与えずに基材の張り合わせをすることができる。
【0067】
次に本発明の試料分析チップを用いた試料分析方法について説明する。
【0068】
本発明の試料分析チップは、例えば、DNA、たんぱく質等の試料において生化学物質の検出や分析に用いることができる。各ウェル103に試薬を固定し、液体試料を各ウェルに配液する。この場合には各ウェルで異なる試薬を用いることができる。あるいは試料を各ウェルに固定し、液体試薬を各ウェルに配液する。この場合には各ウェルで異なる試料を用いることができる。
【0069】
例えば、各ウェルに異なるSNPsプローブと酵素を固定する。これによって、多種類のSNPs同定反応を1つの試料分析チップの内部で同時に行うことができる。具体的に、第1の基材のウェル部の回転中心側の主流路とは逆側の親水性が異なる部分にそれぞれ異なるSNPsをピペットで滴下し、第一の基材401を遠心装置で2000〜3000rpm、5分程度遠心し、液面を平坦な状態にして乾燥させることでウェルに固定することができる。
【0070】
次に第一の基材401と第二の基材402を張り合わせた本発明の試料分析チップに対して、まず、注入口403(107)から試薬等の溶液を主流路103に注入する。この段階では、主流路のみが溶液で満たされ、前述のように側路には浸入していない。これは、溶液の表面張力と、ウェル側には空気の抜け穴がないことによりウェル側からの空気圧があるためである。試料分析方法に用いる試料分析装置にはこのような溶液注入手段を備えていてもよい。
【0071】
次に、試料分析方法に用いる試料分析装置には試料分析チップを回転させるためのチップ回転機構を有する。チップ回転機構には、公知一般の遠心装置を用いることができる。試料分析装置に試料分析チップを設置し、回転機構によりチップの中心点でチップの垂直方向を回転軸として、チップを回転させる。回転速度としては溶液に掛かる遠心力が前述の空気圧と表面張力に打ち勝って、ウェルに流入する回転速度が必要である。チップの形態にも寄るが、約1000rpm以上であることが好ましい。チップの回転速度が約1000rpmより小さいと、ウェルに溶液が流入せず、液量が一定にならないおそれがある。
【0072】
試料の配液後、各ウェルの混液や汚染を防ぐために、試料・試薬の反応を阻害しないオイル(ミネラルオイル)を同様の工程で各ウェルに配液してもよい。オイルには先に配液した溶液よりも比重が軽いものを用いる必要がある。チップを回転させ、遠心力によって配液した際に、側路側で各ウェルの栓の役割をするためである。
【0073】
ワックス502を試薬の固定に用いる場合には、試料分析装置に電熱線等からなるヒータやペルチェ素子を用いた温度制御手段を備えていてもよい。ワックスの融点以上にチップを加熱することでワックスを溶融させ、ウェル内で試薬と溶液(試料)を混合させることができる。また当該温度制御手段は、例えばPCR反応等の試薬の反応制御にも用いることができる。
【0074】
その後、ウェルで試薬及び試料を混合し、反応状態を蛍光検出等の手法によって分析することができる。試料分析装置は、試料分析チップの基材上側のウェルの位置で測定を行なうための検出測定手段を有する。回転機構によりチップを回転させて、所定のウェルを測定することができる。
【0075】
以上のように各工程で試料分析チップに作用させる機構を備えることで、省スペースかつ試料分析の容易な試料分析装置とすることができる。
【0076】
次に本発明の試料分析の例を説明する
【0077】
遺伝子解析の1例としては、例えば体細胞変異の検出や、生殖細胞変異の検出が挙げられる。遺伝子型の違いによって、発現するタンパク質の種類等が異なるため、例えば薬の代謝酵素の働きの違いを生み、結果として薬の最適投与量や副作用の出やすさ等に個人差が生じる。このことを医療現場で利用し、各患者の“遺伝子型”を調べることで、オーダーメイド医療を行うことができる。
【0078】
・SNPsの検出
ヒトゲノムの中には、その約0.1%に個人特有の塩基配列の違いが存在し、SNP(Single Nucleotide Polymorphism)と呼ばれており、生殖細胞変異のひとつである。SNPの特定方法の一つとして、例えば蛍光を用いたPCR‐PHFA(PCR−Preferential Homoduplex Formation Assay)法が利用されている。PCR‐PHFA法は検出変異部位を増幅するPCR工程と、増幅断片と対応プローブによる競合的鎖置換反応工程から成り立っている。当該方法によれば、蛍光試薬の発光差によって変異を検出するが、本発明の試料分析チップを用いることで、各ウェルの配液バラツキが少ないので、正確なSNPs検出を行うことができる。また上記以外のSNPs検出方法としてインベーダー法(登録商標)、Taqman(登録商標)PCR法等についても同様に本発明の試料分析チップを用いることが可能である。
【0079】
以下に、本発明を用いてワルファリン(抗血液凝固剤。心臓病や高血圧用の薬として用いられる)に対する副作用に関与するSNPについてPCR−PHFA法を使った解析例を説明する。
【0080】
血液などから得られる検体核酸を精製して、溶液試料とする。本発明の試料分析チップに注入前または注入後配液前に、検体核酸の増幅を行う。なお、ワルファリンに関与するSNPの検出にはVKORC1やCYP2C9内のSNPが議論されることが多く、CYP2C9*2やCYP2C9*3などが有名である。検体からこれらのSNPを含む遺伝子断片をマルチプレックスPCRにて増幅する。
【0081】
上記の検出方法では、一つのSNPを判定するために2つの検出用のウェルが必要となるので1検体試料につき10個以上のウェルが形成された試料分析チップを使用すると良く、それぞれのウェルにSNPs検出用の試薬を固定する。
【0082】
上記PCRにより核酸が増幅された試料を、各ウェルに配液充填する。各ウェルを温調し、前記試薬に混入された蛍光試薬の発光差によって変異を検出する。一つのSNPに対し2つのウェルのうち一つのみ陽性反応ならばホモ、二つ陽性ならヘテロと判定することができる。
【0083】
・K−ras遺伝子変異の検出
上がん細胞に特徴的な変異、または分子標的薬に抵抗性を示す変異はそのほとんどが体細胞変異である。生殖細胞変異(SNPなど)の場合、どの細胞でも共通の変異が見られるのに対し、体細胞変異では変異を起こした細胞でのみ変異が見られ、変異を起こしていない細胞(通常は正常細胞)では変異は見られない。
【0084】
つまり、試料のうちの多くは正常細胞で一部変異細胞が含まれる場合、多くの正常な遺伝子中に存在するわずかな変異遺伝子を検出しなければならず、この点が生殖細胞における変異検出と異なる点で、体細胞の遺伝子変異検出をより困難にしている点である。
【0085】
K−ras遺伝子は変異ががん細胞に存在すると分子標的薬がほとんどの患者群で奏効しないことが示された遺伝子であり、この遺伝子を簡便、迅速、安価、高精度に検出することが希望されつつある。
【0086】
以下に、K−ras遺伝子のPCR−PHFA法での解析例を説明する。
【0087】
上記遺伝子変異の検出用のウェルにはプローブ核酸を含む試薬が固定される。K‐ras遺伝子の検出は野生型と13種類の変異があるので少なくとも14のウェルが形成された本発明の試料分析チップを使用し、当該ウェルのそれぞれに対応した試薬が固定化されていることが好ましい。
【0088】
大腸癌などのがん細胞を採取し、検体核酸を精製して、溶液試料とする。本発明の試料分析チップに注入前または注入後配液前に、検体核酸の増幅を行なう。
【0089】
上記PCRにより核酸が増幅された試料を、各ウェルに配液充填する。
【0090】
ウェルを温調し、前記試薬に混入された蛍光試薬の発光差によって変異を検出することができる。
【実施例】
【0091】
以下に本発明における実施例を示すが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0092】
<実施例1>
本発明の試料分析チップおよびこれを用いた処理方法の一例として、ウェル部が、回転中心側の主流路側と、その逆側の壁面とで、親水性が異なるウェル形成の実施例を示す。
【0093】
ウェル部の回転中心側の主流路側と、その逆側の壁面とで、親水性が異なるウェルを形成するための基材として、アクリルの射出成型を用いた。図7(a)、(b)に示すように、同基板上には回転中心側に向かう幅1.0mmの主流路602と、半径2.5mmのウェル601を切削加工により形成した。ウェルと主流路部の開口部の面積603は1.0mmで設計した。
【0094】
ウェル内の主流路側の壁面を撥水化処理するための手段として、スチレンブタジエンゴム、有機溶剤、イソヘキサンシクロヘキサンガスの混合溶液を用いた。回転中心側の主流路側とは逆側の壁面(撥水処理を行わない面)をテフロン(登録商標)テープで覆い、その上から前記溶剤を噴霧した。噴霧した後、溶液を十分乾燥させた後、テフロン(登録商標)テープを剥離させた。
【0095】
該アクリル基材上のウェルには下記表1の試薬類表のSNPsプローブ試薬を回転中心側の主流路とは逆側の部分に3μl固定し、また別のウェルにはそれぞれPCR反応を行うための酵素、及びSNPsの蛍光検出に用いるインベーダー反応用酵素(表1)をピペットで回転中心側の主流路とは逆側の部分に3μl滴下した。上記試薬類は、回転中心側の主流路側とは逆側の壁面(撥水処理を行わない面)に分注することで側路への流れ込み現象が起こらなくなった。分注後、試薬類は乾燥固定させた。
【0096】
同様の操作を、撥水処理をしていないウェルに対して行ったところ、主流路側に試薬の流れ込みが見られた。これにより、主流路側の壁面を撥水処理したことにより、回転中心側の主流路側と、その逆側の壁面とで、親水性が異なるウェルが形成されたことが分かる。
【0097】
上記の処理は、各ウェル内の回転中心側の主流路とは逆側の壁面の表面積40%以上80%以下がテフロン(登録商標)テープで覆われている(撥水化処理されていない)事が望ましい。40%未満では試薬容積が撥水化処理されていない面積よりも大きくなり流れ込みが発生するという点から好ましくなく、また80%を超えると、撥水化された面積が、試薬をウェル内に留めるには足りず、流れ込みが発生するという点から好ましくない。
【0098】
乾燥固定後、ウェル内の試薬の確認を行うと、この段階ではウェル内の主流路側の撥水加工をした壁面、及び主流路には試料は浸入していなかった。これにより、主流路側と、その逆側の壁面とで、親水性が異なることで主流路に試薬が流れ込まないウェル形成が可能であることが分かる。
【0099】
また、上記のアクリル板に、ウェル部の、回転中心側の主流路とは逆側の壁面の面積の少なくとも半分の親水性が異なる表面を、回転中心側の表面形状とは異なる形状を有することで形成した実施例を示す。
【0100】
ウェル部の、回転中心側の主流路とは逆側の壁面を、回転中心側の表面形状とは異なる形状を有する手段として、研磨剤で磨くことで表面粗さを小さくした。研磨剤、脂肪酸、有機溶剤の混合溶液を用いて、ウェル部の、回転中心側の主流路とは逆側の壁面を磨き、Raが小さくなるような処理を施した。
【0101】
該アクリル基材上のウェルには下記表1の試薬類表のSNPsプローブ試薬を回転中心側の主流路とは逆側の部分に3μl固定し、また別のウェルにはそれぞれPCR反応を行うための酵素、及びSNPsの蛍光検出に用いるインベーダー反応用酵素(表1)をピペットで、研磨剤で磨いた回転中心側の主流路とは逆側の部分に3μl滴下した。上記試薬類は、回転中心側の主流路側とは逆側の壁面(Raが小さい面)に分注することで側路への流れ込み現象が起こらなくなった。分注後、試薬類は乾燥固定させた。
【0102】
【表1】

【0103】
同様の操作を、回転中心側の主流路とは逆側の壁面と、主流路側の壁面で同じ形状を有するウェルに対して行ったところ、主流路側に試薬の流れ込みが見られた。これにより、主流路側の壁面と回転中心側の主流路とは逆側の壁面の形状を異なるウェル形状にしたことにより、回転中心側の主流路側と、その逆側の壁面とで、親水性が異なるウェルが形成されたことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の反応チップは、例えば核酸等の試料において生化学物質の検出や分析に用いることができる。特にSNPの変異を検出できることから、がんなどの遺伝子、生殖細胞や体細胞遺伝子の変異を検出する手法へ利用することができる。また、複数の溶液を混合する容器、反応容器として利用することが可能である。
【符号の説明】
【0105】
A101・・・基材
102・・・ウェル
103・・・主流路
103a・・主流路山部
103b・・主流路谷部
105・・・側路
107・・・INLET/OUTLET
301・・・親水化処理部
401・・・第一の基材
402・・・第二の基材
403・・・INLET/OUTLET(貫通孔)
405・・・担持部
501・・・固定試薬類
502・・・ワックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に複数のウェルと、各ウェルに繋がる流路と、流路に溶液を注入するための注入口とを有し、該基材を回転させてウェルに溶液を配液する試料分析チップであって、前記流路は、前記注入口と連絡し、前記ウェルより回転中心側に設けられた主流路と、前記ウェルと前記主流路とを連絡する側路を有し、前記ウェル部は、その内部で、一部の親水性が異なることを特徴とする試料分析チップ。
【請求項2】
前記ウェル部が、底面とその壁面で親水性が異なることを特徴とする請求項1に記載の試料分析チップ。
【請求項3】
前記ウェル部が、回転中心側の主流路とは逆側の壁面の面積の少なくとも半分以上の親水性が異なることを特徴とする請求項1ないし2に記載の試料分析チップ。
【請求項4】
前記ウェル部が、回転中心側の主流路とは逆側の壁面の面積の少なくとも半分の表面官能基が、化学的に親水化処理された表面官能基を有することで、回転中心側の表面官能基とは異なることを特徴とする請求項1ないし3に記載の試料分析チップ。
【請求項5】
前記親水化処理をされた表面官能基を有する回転中心側の主流路とは逆側の壁面の面積の少なくとも半分が、プラズマ処理またはコロナ放電処理によって、酸素官能基を表面に有することを特徴とする請求項1ないし4に記載の試料分析チップ。
【請求項6】
前記ウェル部が、回転中心側の主流路側の壁面の面積の少なくとも半分の表面官能基が、撥水化処理された表面官能基を有することで、回転中心側とは逆側の壁面の表面官能基とは異なることを特徴とする請求項1ないし4に記載の試料分析チップ。
【請求項7】
ウェル部の、回転中心側の主流路とは逆側の壁面の面積の少なくとも半分の親水性が異なる表面を、回転中心側の表面形状とは異なる形状を有すること形成したことを特徴とする請求項1ないし3に記載の試料分析チップ。
【請求項8】
前記形状変化を、表面粗さの違いにより形成したことを特徴とする請求項7に記載の試料分析チップ。
【請求項9】
前記表面形状を、ナノインプリント法により微細な構造を持つ表面を有することで形成したことを特徴とする請求項8に記載の試料分析チップ。
【請求項10】
前記ウェルの表面粗さが、Ra=0.16以下であることを特徴とする請求項7ないし8に記載の試料分析チップ。
【請求項11】
前記ウェルの表面粗さを、回転中心側の主流路とは逆側の壁面の少なくとも半分にブラスト処理をすることで形成したことを特徴とする請求項7ないし8に記載の試料分析チップ。
【請求項12】
前記側路が、回転中心方向に対して傾いて形成されていることを特徴とする請求項1ないし11に記載の試料分析チップ。
【請求項13】
前記主流路は前記ウェルより回転中心側に設けられ、隣り合うウェルの間で回転中心方向に対して一つの山を有するように形成されていることを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の試料分析チップ。
【請求項14】
試料分析チップの前記ウェルが回転中心に対して円周状に配置されていることを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の試料分析チップ
【請求項15】
前記主流路が、回転中心方向に対して傾いて形成されていることを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載の試料分析チップ。
【請求項16】
前記試料分析チップは前記ウェル及び前記流路を形成した第一の基材と、該基材と張り合わせた第二の基材とを有する請求項1ないし15のいずれかに記載の試料分析チップ。
【請求項17】
前記基材のいずれか一方が光透過性材料で形成されていることを特徴とする請求項16に記載の試料分析チップ。
【請求項18】
第一の基材が光透過性の樹脂材料であり、第二の基材が金属材料であることを特徴とする請求項16に記載の試料分析チップ。
【請求項19】
請求項1ないし18のいずれかに記載の試料分析チップの前記主流路に溶液を注入する工程と、該試料分析チップを回転させて溶液を前記各ウェルに配液する工程と、を有する試料分析方法。
【請求項20】
請求項19に記載の試料分析方法において、前記ウェルに配液する工程の後に、ミネラルオイルを前記各ウェルに配液する工程を有することを特徴とする試料分析方法。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の試料分析方法を用いたことを特徴とする遺伝子解析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−185000(P2012−185000A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47508(P2011−47508)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】